1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年五月二十日(木曜日)
午前十時四十九分開會
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本日の會議に付した事件
○裁判官の報酬等に關する法律案(内
閣送付)
○檢察官の俸給等に關する法律案(内
閣送付)
○小委員の選定に關する件
○人身保護法案(伊藤修君發議)
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) これより司法委員會を開會いたします。本日は裁判官の報酬等に關する法律案、及び檢察官の俸給等に關する法律案、兩案を一括して議題に供します。前囘に引續き質疑を繼續いたします。質問の通告がありますから先ずその方からこれを許可いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/1
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002・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 私が只今からお尋ねいたしたいことは、前囘の當委員會におきまして、法務廳の政府委員の方に伺つたのでありますが、また了解のできない點がございますので、この際、鈴木法務總裁に伺つて、明確にいたしたいと思います。
裁判官の俸給と、檢事の俸給との問題につきまして、法案が提案されておりまするが、更に又昨日か、一昨日は、一般官吏の俸給の改正案が提案されております。檢察官或いはその他の行政官に關しまする報酬につきましては、さしたる疑問を持ちませんが、裁判官に對しまする報酬については、申すまでもなく、憲法の七十九條竝びに八十條の二つの條章によりまして、裁判官の報酬の支給が決定されまするときは、その報酬は、減額を許さないということに憲法がなつております。
そこで、現在の日本國の社會情勞から見ますれば、先ず以てインフレの殆んど最高潮期とでも申しましようか、諸物價は著しく昂騰しておるのであります。これに對して、朝野擧げて物價の引下げのために、全努力を拂つておるのでありまして、必ずや近き將來においては、この物價というものは、引下げなければならんと思います。若しそれこのままの状態を續けておりまするならば、やがて國家は、その點において崩壞をしなければならんということにも考えられますので、何といたしましても、この點に全力を擧げて、朝野努力をいたしておりますることは、今更申上げますることでもありません。ところが、この最高潮期にあきまして、裁判官の報酬を從來よりも著しく上げて、先ずその安定を圖るということは、當然なことでありまして、私共、本來これを主張し來つておるのであります。裁判官の報酬を高めて行きますることに對しましては、政府原案以上に、私共は熱望いたしておるのであります。
併しながら、この際、若しこの報酬が、本法案によつて決定され、それぞれ各裁判官の報酬の支給が決定されましたといたしました時分には、もはや憲法の保障にかかるところでありまして、今後はこれを引下げることは容易にできない。そういうことになりましたときには、我々の願つておりまする物價の引下げ、そのときが參りましたときに、一般官吏の方は、法律によつて、直ちに下げることはできまするけれども、獨り裁判官だけは、憲法を改むるにあらざれば、全然動かし得ない。こういうような結果になるのであります。而もそれに附隨いたしまして、幾多のこの不都合な點が考えられますることは、若しも何らかの方法によつて、一旦支給と決定いたしました報酬を減額しようというふうな情勢になりました場合にも、報酬にすべて準據いたしてありまする、一時賜金或いは恩給等の權利が、それによつて生じて參ります結果、若しも報酬において減額されるという虞れがありまするというようなことになつたときには、そういうようなことはあり得ないといたしましても、又全然ないとは限りませんと思いますることは、練達堪能なる裁判官を、斯界より失なわなければならないというようなことになりはしないかと思うのであります。と申しまするのは、定められたる報酬によつて、一時金或いは恩給というものが、決定を受けるのでありますから、若しも減額されまするならば、その後に受ける一時金或いは恩給等は、著しく又これに伴つて減額して參ります。それが憲法の保障によつて、現在の地位には、安住いたしておりまするけれども、四圍の環境のいたすところとなつて、動かされるというようなふうな虞れがありまするような場合においては、自然その方面に影響を受けるのであります。他の行政官であるならば別といたしまして、とにかく裁判官は、尊い練達堪能なる人がおりますることは、いよいよこの裁判の國民的信望を高めるゆえんにもなるのであります。これは、もう取返しのつかない裁判の崩壞を來すようなことになりはしないかというようなことすら恐れられるのであります。
或いは又この法律において、何らかそうした場合のことを考慮に入れまして、多少この法文の技術的操作等も考えられんではありませんけれども、そういうようなとき、假に否定いたすといたしましたならば、それ自體が、一つの憲法に背くことになるのであります。從つてその法文自體が、假に作られましても、無效となる虞れがあります。私共は、冒頭にも申上げましたごとくに、現在の社會情勢は、殊にこの新憲法下におきましては、裁判官の地位というものを、あらゆる官吏の高位に持つて行くということに對しては、もう私共の宿願といたすところでありますから、その點にはいささかも異存がないのでありますけれども、なんとかそうした大きな矛盾を目の前に控えて、ここにこの法案を法律として定めますることは、如何にも非常なる危險が、この間に孕んでおるようにも考えられます。
又一面におきましては、裁判官の中から、從來は、司法省でありましたが、今度は最高裁判所におきましても、或いは又法務廳等におきましても、人事の交流は、これに伴いまして、部内の最もすぐれたる人が、往々にして、拔擢されて、本省詰となつて、これは、檢察或いは裁判官にあらざるというごとき、一般の官吏となられ、その方が現におられますることによつて、この部内の事情に非常に精通しておりますから、非常にこの統制がよく取れて參つておりまするけれども、若しもそのそうした本省詰の官吏の方と、判檢事との間において、著しく待遇上において差等ができておりましたときには、從來は、本省詰になりますることは、非常な榮進だと考えられておりましたものが、逆轉いたしまして、今度は裁判官、檢察官の方に替ることを望むようになりはしないか。若しそういうことになりますならば、部内においての事情に精通いたしました者を本省に置くことはできないことになりまして、司法の運營においても大きなる支障を來しやしないかということも考えられます。さればといつて判檢事に對して非常な他の一般官吏よりも待遇を高くして置く、であるからこれに均霑せしむるがために本廳詰の一般官吏に對して、何らかの方法によつてその水準を等しくしようということの操作をいたすといたしましたならば、これ亦他の一般官吏との區別が到底つけ得ないのでありますから、それがためには一般官吏の方が承知しないということになるであろうと思います。で私は若しもこのインフレに對しまする對策といたしまして、後來平價の切下げ、そういうふうな貨幣價値に對しまする格段なる手段を行いまする場合ありとするならば、只今のようなふうな憲法との關係上に矛盾を生じて參りますので、併しながらそうした特殊なできごとを豫想いたしまして法律を定むることはでき得ない。さすれば一般物價の下つて參りますることを我々が豫想されますから、それに對する適切なる法律を作るにあらざれば、餘りにも眼先の見えないことになりはしないかということを恐れるのであります。むしろこのいわゆる憲法との調和を考えますならば、一般官吏よりも確かにこの裁判官、檢察官……檢察官は別でありますけれども、裁判官を高き地位に置くことに對しましては異論はないのであります。そこで一般官吏の給料の定め方につきましてもその點を考慮に入れ、そうして假に法律によつて一般官吏の方は、減額をされることができるといたしましても、一旦定めましたる俸給を更にこれを減額するということそれ自身は、決してよい方法じやない。そういたしまするならばむしろこの本俸というものは或る程度に止めて置きまして、そうして時代の動きに順應いたしましてそれに對する勤務手當、或いは職務手當、それぞれの職に應ずる範圍において、國家の方は生活補給をなし、而してこの大體政府原案、乃至はこれより多少多くても差支えないのでありますから、その程度において私は彼此融通のつきまする方法によつて、待遇することの方が極めて圓滑に行くのぢやないかということを考えるのであります。
或いは又この規定によりまするというと、畫然として一つの報酬額を定め、その他の臨時手當等は一切支給をせない。これが一般官吏と甚だ違うのであるという見方もございまするけれども、これなどは本當は事實に甚だ遠ざかつた定め方だと思います。實際問題としまして、今日本國の檢察官におきましても、裁判官におきましても、全く眼中勞働基準法なんか些かも觸れることはでき得ない。殆んど倍數、或いは數倍の時間を費やして職務に鞅掌されておりまするけれども、尚且つ事件はただ積るのみであります。私共日當見ておりまする裁判官諸公の御努力に對しましては、全く襟を正して敬意を拂つております。これに對しまして國家が報いるに何ら吝むところがあるか。こういうふうに私共思つております。でありまするから、どこまでも待遇を高くし、同時に給與におきましても遺憾のないように、十分はできなくとも、して差上げたいと思いまするし、併しながらこうした憲法が嚴として存し睨んでおります限りにおいては、これとの關係において些かなりとも、不安の状態において法律を定めますることは、如何にもどうも、餘りにも見え透いた感がいたしまするので、大體法文全體を見まするというと、政府の方では唯インフレというものは今後騰るべきものである。騰る場合は九條、十條等にそれぞれの規定がございますが、些かも下る場合のことについては、一點で考慮を拂つていないような感がいたすのであります。この點について私共の了解を行きまするようなふうに政府の方の明快なる一つ御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/2
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003・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) 鬼丸委員から總理大臣に對しての御答辯を御要求になつておるのでありますが、總理大臣は只今止むを得ない公務のため出席できませんので、豫め打合せたところによりまして、私からお答えをいたします。總理大臣も同意見である、こういうふうに御了承願いたいと思います。
裁判官の報酬について將來貨幣價値の變動等に伴つて減額をするような場合については、憲法違反の問題を生じはしないかというお尋ねのように承つたのでありまするが、政府といたしましては、只今の物價を只今以上に上げないことを極力努力いたすつもりでおりまするが、急激に下るということにつきましては、近い將來において考えられないのでありまするし、又御質問のごとき問題が、全體としての近い將來に起るということは、ちよつと考えられないのでありまするから、かなり遠い先の問題としてこれは取扱うべき問題である、こういうふうに考えておるということをお斷り申して置きます。
憲法に言うところの「相當額の報酬」ということは、立法當時における物價その他との比率において考えられるところの相當額ということであつて、これは實質的に解すべきものである、物價指數その他と睨み合つて受けるところの……無論裁判官としての品位保持のための給與というものも入つておりまするが、そういうものすべてを含めて實質的に解すべきものである、こういうふうに考えております。從つて憲法違反の問題を生じないと、政府といたしましては考えておるわけであまりす。
尚お尋ねの中にそういう心配があるから、本俸を上げないことにして、職務手當、調査費その他の名義で報酬か出すことにしてはどうかというような趣旨のお尋ねでありましたが、この點につきましても、政府としては十分考慮いたしまして研究をいたしました結果、この方法をとることができないということから、止むを得す本俸を増額することにお願いをいたしたいということに相成つたわけでありまして、その點も御了承願いたいのであります。そこで、そこまでにして、ちよつと速記を止めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/3
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004・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記中止。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/4
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005・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/5
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006・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 憲法の七十九條竝びに八十條に規定してありまする「相當額の報酬」の「相當」というのは、實質的の報酬であり形の報酬にあらず、故に平價切下げとかそういうふうな特殊な貨幣の名目において制度的に改正されるような場合におきましては、これは殆んど先程申しましたように疑問は起らんと思いますが、その他の場合を考えまして見れば、相當の報酬ということが相當か不相當がということを、その時代々々の物價の高低に從つて判斷するようなものまでも、私は含まれたる憲法の規定とは解し難いと思います。只今の總裁の御答辯の趣旨では、私は憲法の規定に背いて、一旦定めましたる報酬をその後動かすということは、かなりこれは無理があるのでないか。況んや憲法の最終解釋權は最高裁判所にある場合において、問題は裁判官に屬することでありまするから、或る意味においてはその點は利害が相一致する立場にある。敢て最高裁判所が特に裁判所のために有利なる憲法の解釋をするなんということの、汚い私は見方をするのでありませんが、只今の政府の説明の趣旨だけによつて私は、憲法の規定が實質上の報酬を意味するのであるから、物價の著しく低落した場合においては、むしろその額に相應するふうに減額しても、憲法には牴觸せんであろうということは、私は非常に無理な解釋のように聞えます。この點はこれ以上お伺いしましても同じ御答辯だと思います。
もう一つ私はこの際この法案についての心配をいたしますることとしては、すでに物價の高騰によりまして、裁判所竝びに檢察廳の判檢事諸君が、逐次退職されるというような非常に憂うるべき現状にあります。ところが折からこの法案が議會に出て今後は判事竝びに檢事の俸給は著しく増額されるであろう、こういうようなことが一般に傳わつておりまして、私はもとより全部とは申しませんが一、二の人の漏らされておりまする事情を聞いて見ますると、罷めたいのである、もう到底堪え得ないのであるから一日も早く罷めたいのであるけれども、今議會において裁判官竝びに檢察官の俸給の規定が増額されるということになつておるのである、若しこの俸給が増額されたならば恩給とか、或いは一時賜金において著しい變化を生ずるから、先ずそれを獲得してから後に罷めようというようなことを考えられておられる人があると聞いております。これは勿論政府におかれましてもさようなことはないと、恐らく言明されるでありましようけれども、裁判官、檢察官と雖も人間でありまする。やはりこれ亦私共の心配はその點にも實はあるのであります。大きくあるのであります。この點について政府の方はどういうふうなお考えを持つておるのであるか、裁判官、檢察官は他の官吏に比しまして、その點は私共そういうような汚ない考えは持つておらないであろうと思いまするけれども、併し必ずしもそう一律に行かないと思う。この點は政府の方はどういうふうに思つておりますか、伺つて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/6
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007・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) お尋ねのようなことがないとは保證できませんが、先ずそういう考えを持つておる方は少いということを政府といたしましては信じております。むしろ異動上からすでに相當停年に近くなり、或いは病弱でありまするために罷めて頂かなければならんような人につきまして、もつと早く罷めて頂かなければならんのでありまするが、政府は親心を持ちまして、この法律案が通過した後に罷めて頂くように配慮いたしておるような事實は實はあるのであります。鬼丸議員が心配せられますような現象は、この問題から起つて來るとは思はれないのでありまして、むしろ辯護士法が、退職後二年間はその地において、辯護士の登録を受けることが困難になるというような規定を含んでおるということに基きまして、早く罷めて辯護士になりたい、そういうことで近い將來にそういう退職希望者が起ることを恐れておるのでありまして、その點につきましては適當な考慮を拂つて頂きたいと考えておる次第であります。この俸給問題だけで上つたら罷めるというようなことは萬なかろうと信ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/7
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008・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 先程法務廳の總裁の御答辯もありましたが、裁判官、檢察官だけのことではありますまいが、大體勤務手當とかいうものを支給するとかということは、その筋が必ずしも喜ばないという御意見でありましたが、今判事、檢事の時間外の勤務というものは、全くこれは想像以上にやつております。そこでこの時間外の勤務に對します點について、この勤務手當を殊更避けなければならないという理由があるでありましようか。殆んど何晝夜徹宵して事件の取調べを繼続いたしておりますることが毎日のごとくあるのであります。これらに對しまするに相當額の報酬を以て臨みますることは、國民誰か私は異存はないだろうと思います。私の先程申上げましたのはインフレのために時代に應うべく、やはり職務手當によつてというふうに申上げましたけれども、この問題は先程の御答辯で一應この程度で以て諒承するといたしましても、少くとも殊更に判檢事に限つて勤務手當を何故除かなければならないか、その理由が、私共理解できません。働いたことに對しまする報いは當然なことであります。又何といたしましても、現在の判檢事の待遇からいたしましては、到底人材を得ることはでき得ない。そこで俸給その他の手當を増して受入態勢を十分に整えて、先般當委員會においても總裁の御答辯がありましたごとく、何とかしてこの山積する事件に對して、是非、この從來一般の好信用を得ておりますその信用を彌が上にも高めるべく、努力しなければならんのでありましようが、今の實情では甚だその點に對しまして憂うべきものがありますから、今後俸給なり手當なり福利施設によりまして裁判官の待遇を大いに改善いたしまして、受入態勢を整えると同時に、大動員をしてこの山積せる事件の解決をし、一般國民の好信用を失わない範圍においてこれは守つて行かなければならん、かように考えます。その點、政府の御所見はどうでありますか、重ねてお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/8
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009・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) その點は鬼丸議員の御質問の通りでありまして、非常に激務に携わつておりまするし、いずれも皆夜を徹して取締に從事し、或いは調査を繼續しておるというようなわけでありますし、又待遇も一般官吏に比し名目上は少し上げて頂いたのでありますが、この程度で決して足るものでないのでありまして、もつともつと多からんことを希望しておるのであります。その點は鬼丸議員と憂を等しくするのであります。政府といたしましては齊しく國家の公務に從事しております裁判官、檢察官は特に高い地位を保障しておることは勿論でありまするが、齊しく公務に參與せられる人は裁判官、檢事だけでないのでありまして、一般の官公職員は皆然りでありまして、餘りにこの開きを付けるということは誠に苦痛といたすところでありますから、例えば學校の先生の場合は勤務超過手當というものを給しないのであります。先生の仕事の性質は殆んど裁判官と同じことをやつておる。自宅で採點したり、いろいろ仕事をすることも同じであります。それでは學校の先生にも出したらと仰せられますと、國家財政から言うと非常な負擔になる。又超過勤務というものはともかくも官廳に出て來て机に向つて執務する時間を標準にして申すのでありますから、自宅で調べたり、或いは、ふだん頭を使つて仕事をしておりますることについては、全時間が勤務である、睡眠しておる以外の時間は勤務しておると見るべき裁判官或いは檢察官等について、どれだけが超過勤務になるかというようなことを定めますことは、なかなかむずかしいのであります。
それらの點も考慮いたしまして、この際はとにかく本俸だけの増額ということで我慢をして頂こう、又更にインフレの場合に本俸を上げる方を考えるか、或いは超過勤務その他の方法を考えるかというようなことで、第二次的に考えたい、こういうような心構えを以ちましてこの際は超過勤務手當というものを考慮しないという方針を決しまして、提案をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/9
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010・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 ちよつと甚だくどいようでありまするが、先程總裁の御答辯になりました憲法の「相當額の報酬」というものに對しまする、「相當」ということの趣旨に對しまする御説明をもう一囘一つ詳しく伺いたいと思います。相當というのであるならば、平價切下げとかいうような場合を除きました以外の場合における相當というのは、どういう基準によつて見るかということについて尚伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/10
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011・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/11
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012・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/12
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013・中村正雄
○中村正雄君 只今鬼丸議員から質問された點につきまして、總裁の御答辯があつたわけでありますが、一應明らかにする意味で二點だけお尋ねいたします。裁判官、檢察官に對しまして超過勤務手當を出さない、裁判官、檢察官に對しましての生活の保證というものは、これは本俸でやるべきで、職務の性質上、超過勤務手當を出さないという政府の案には、私は贊成するのでありますが、ただ一般行政官との振合上、今度の公務員の給與法によりましても、一般の公務員も相當給與が増額になりますが、その増額された給與に基きまして、超過勤務手當を出すことになる關係上、お尋ねしたい點は、一般の政行官が受けるところの超過勤務手當、これがどの程度に豫算面或いは今後の實際面でなつておるか。若しも裁判官、檢察官と一般行政官吏と、給與において相當の差を設けておりましても、實際上の手取りは、行政官は超過勤務手當という名目で相當な額を取るとするならば、裁判官との差が相當少くなる。こういうことが懸念されますので、一般行政官に對する超過勤務手當の額、及び豫算の見通しにつきまして御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/13
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014・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) その數字的なものになりますと、實は大藏省給與局の方でないとお答えしにくいのでありまするが、大體において一般官吏と、裁判官、檢察官との間においては、超過勤務手當を多く取る官吏もあり、少く取る官吏もありまするから、どの官吏と比較するということを決めないと、ちよつと申上げにくいのであります。極く大雜把なことを申しまして、二、三割乃至三、四割の開きができ上るであろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/14
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015・中村正雄
○中村正雄君 もう一點お伺いしたい點は、この前の委員會のときに午後總裁がおられなかつたので、お尋ねしましたが、答辯は今度總裁が見えてするというお話でありましたが、今鬼丸議員からもちよつと質問がございまして簡單にお答えになつた點でありますが、實は裁判官と檢察官との給與の差、俸給の差というのは、任用資格が同一である現在においては附けがたいという、この前の御答辯であつてわけですが、そういう觀點から行きまして、裁判官なり檢察官の職務にある人が、法務廳勤務になつた場合は、やはり一般行政官としての給與を受ける。從いまして相當に給與の面においては減額され得る。この救濟をどういうふうにやられるかという點につきましてお尋ねしたわけですが、只今鬼丸議員からお尋ねしましたところ、ちよつと御答辯があつたわけですが、具體的にどういうふうにお考えになつておるかという點をはつきりお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/15
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016・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) その點はかなり困難な問題でありまして、法務總裁としては非常に心を實は痛めております。一般行政官吏と法務廳の官吏とが異なるという議論もちよつといたしかねる。そうであればやはり一般の行政官吏と同じ俸給を受けるのが當然でありまして、その點について法務廳の官吏だけが、特別の給與を與えられるというようなことを申上げかねるのであります。只今考えておりまするのは、できるだけ低い給與でありまする判事、檢事、そうして新進氣鋭なる方方には、法務廳に來て働いて頂くというようなことも考えておりまするし、更に判事の方は別でありまして、判事はどうしても行政官にはなれないのでるりまするから、檢事たる身分を持つておる人に對しては、特別の考慮を拂つて、檢事であると共に兼ねて法務廳の仕事をしておるというようなことも考えらるるのではないか、そういう制度についても考えて見るべきではないかというようなことも考慮いたしておりまするが、何れもまだ考慮中であります。具體的にどういうふうにするということを申上げるような段階にはないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/16
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017・前之園喜一郎
○前之園喜一郎君 極く簡單に二、三點お尋ね申上げたいと思います。
第一は先程鬼丸議員から御質問がありました恩給の關係でありますが、これは檢察官、裁判官、その他の一般官吏の恩給にも相當關係するわけでありますが、現在の恩給法というものを近く御改正になるようなことがあるのであるかどうか。若し現在の恩給法がそのまま改正されないということになりますと、新俸給令による恩給額というものが非常に高くなる。多い者は一年十數萬圓の恩給を受けるということになるのではないかと考えるわけであります。國家の財政の面から言つても非常に大きな問題であると考えるのでありますが、そういうような點、特に最近行政機構改革等がありますると、これは檢察官、裁判官のみではありませんが、一般の官吏では相當に退官する者も出てくるだろう、そういたしますと、そういう人々に對する恩給がこの新俸給令で支拂われるということになりますると、非常に大きな額になると思いまするが、そういうような國家の財政に對する見透しは、どうであるかという點についてお尋ねしたいのであります。
更にもう一つは、從來恩給を受けております既得權、この恩給というものは御承知のように誠に今日の金から考えますと、むしろ零細に過ぎるという感じがするのであります。一般に恩給増額の運動も起つておるような現状でありまするが、現在の恩給法がそのまま變更きれんということになりますると、既得權者と、將來恩給を受ける者との恩給額というものに、非常に大きな開きが出てくるわけであります。これについても御意見を伺いたい。
もう一つは、局長さんに御答辯を願つたのでありますが、今日幸い總裁がおいでになつておりまするから、總裁の御意見を承つて置きたいと考えるのであります。私共これは非常に要望しておつたのでありますが、裁判官、檢察官の俸給竝びに報酬が上るということは、實に我々喜びに堪えない次第であります。それと同時に殆んどこの裁判官、檢察官と不可分的な仕事をしておる司法事務官、或いは書記というものに對しても、何らか特別な考慮を拂うべきものではないかということを強く考えるわけであります。同じ所で仕事をしておる、同じように生活の苦しみをしておる同士が、一方は裁判官なるが故に、檢察官なるが故に非常に優遇されておる。一方普通の官吏竝で安い給料で、一般の官吏と違つて不眠不休で仕事をしなければならないという現状を眺めますときに、何とかして司法事務官竝びに書記に對しても、適當なる方法を考えてやるべきではないかと考えるわけでありますが、その點について御意見を伺いたいと思います。
それからもう一つは、これは私共この兩法案の審議をいたします參考に供したいと考えるわけですが、この法案は最初閣議で決定されたものが、その後總裁の御發言によつて變更になつたと私共漏れ承つておるわけであります。それ故に世間では相當ないろいろなデマ等も流布せられておるような状況でありまするが、お差支がなければ、前に閣議で決定されました報酬竝びに俸給の額と、この提案されたものとの差がどういうふうになつたのかということを一つ承りたい。又何が故に一旦閣議で決まりましたものが、そういうふうに變更にならなければならんかということも承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/17
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018・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) お尋ねの第一、恩給法の改正の問題につきましては、政府としてまだ決めておりませんし、又私も主管大臣でないために、責任あるお答えはいたしかねるのでありまするが、近い將來において變更するという考えはないのであります。恩給法のことは、實は始終問題になつておるのでありますが、どうも國家財政の現状では恩給だけて食べて行かれるというようにいたしますためには、非常に増額をしなければならない。それだけで破産してしもうということに相成るのでありますから、敗戰後の日本は遺憾ながらもう本當に老耄して何もできない人を除きまして、働いて食べて行つて頂く、恩給というものはほんの一部分を補うに過ぎないということで、我慢を願う外はないというような實情にあるということを御了承願いたいのであります。裁判官、檢事だけの俸給が上つて恩給が多くなるだろうことは否定いたしませんが、實は判事千二百人、檢事八百五十人、定員も滿ちておらないのが現状であります。上つたといつても、一ケ月、檢事だけについて申しますと百三十四萬圓、今度の法案が通過いたしますれば、支出が殖えるというだけの殖え方であります。これが全遞とか國鐵が上つたというのとは違うのであります。殆んど國家財政には極く僅かの影響しかないというのが實際の實情でありまして、まあ判檢事だけがそういう特別のは給上における、それでも恩給だけで食べて行かれるとは思えない恩典に浴するというえとがありましても大目に見て頂けるのではないか、こう考えるのであります。國家財政の許しますときが參りますれば、固よりこの一般行政官吏の恩給につきましても、増額をすることは考慮いたしておる次第であります。
又行政整理が行われますると、多數の恩給受給者ができるということも豫想せられまするが、政府はこの行政整理を實行いたしまするにつきましては、何よりも恩給では食べて行かれないということを前提といたしまして、配置轉換、その他によつて先ず失業救濟、失業なからしめるということを前提にして考えておりますために、行政整理が手間取つておる次第でありまして、全くこれをただ街頭に投げ出すというような氣持は持つておらないのであります。そういう意味におきまして一つ御了解を願いたいと思います。
それから司法事務官、檢察事務官等も同じような仕事をやつておるのでありまして、裁判官、檢察官が待遇を改善されまするならば、同じように改善せらるべきであるということは全く御尤もでありまして、私共としてはそれを希望いたすのでありまするが、ただ何と申しましても、一般行政官吏の異なるということを申すことは非常にむずかしいのでありまして、その點については待遇については同じ基準に從う外はない。ただ外の官吏よりも厚生施設、その他の待遇が惡いということは否定できませんので、そういう點につきまして十分努力いたしまして、實質上の待遇をよりよくするように努力するということを心掛けておる次第であります。尚これらの人々が不平不滿を持たないように、これは私だけの私案でありまするが、行く行くは司法事務官も檢察事務官も勉強さえすれば、判事檢事にもなれるという途を開いてやろう、それによつて一般高い待遇を受けておる判事檢事に憧れる、そうしてその地位の向上を求めるというような途を開くように、又單に判檢事だけでなくて、その外の官吏の、例えば警察官なども將來大學を出た人を採用するような方針でありまするが、高い檢察官の方にも轉出して行くことができるような途を開く、いろいろそういうことによつてこれらの人々を奬勵したい、こう考えておる次第であります。
それから最後の御質問は、閣議で議が變更されたのではないかという御質問でありまして、このことは衆議院司法委員會におきましても大變御疑問を持たれまして、前後三日間に亙つて總理大臣、官房長官、私及び他の大臣もお呼びになりまして御質問が續いたのであります。從つて詳細なことは一つその速記録等を御參照願いたいと存ずるのであります。ここで簡單に、要點を繰り返しますると、閣議はこのことに關して三囘あつたのであります。四月二十六日の閣議、それから二十七日の閣議と、三十日の閣議であります。二十六日の閣議は私が出席をしておりましたので、原案を提出いたしまして、原案はもつと別なものでありまするが、最後に決定したのが本日提出いたしておりまするような案に落著いたわけであります。その經過、議論の内容は祕密に屬しまするからお許しを願いたいのでありますが、二時間以上も討論を交換した結果、そこに落著いたのであります。それで各閣僚も署名をいたしまして閣議は成立して、私はその晩直ちに神戸に發つて行つたのであります。私は、完全に閣議で決定して、明日は國會に提案されるものと信じておつたのであります。然るに翌日、前の晩にいろいろ數字に手を入れて汚なくなつたのでありまして、誤解がないために更に大藏省給與局長の手で清書して、ガリ版にして閣議に再覧に供するということになつて別れたのであります。副檢事の給與については少し細かい點で數字が決定しておらなかつたので、給與局長の手で決定をして、そしてこれも印刷を追加して出すということにはなつておつたのでありますが、そういう印刷ができて翌日の閣議に、私居らなかつたのでありますが、そこに出された。
ところがこれは夕べの話と違うということを言い出した閣僚がありまして、どう違うかと言うと、みんな檢事は判事より千圓ずつ下なのだというように了解した、そうじやない、その二十六日の閣議では非常に議論をいたしました結果、判事と檢事との間に何らかの形を差をつれなければならない。と言つて今までずつと同じにしているものを、そう急激に差をつけるということは、感情上から見てもその他の點から見ても面白くない。故にこれは同じ年度に卒業し、同じ年度に就職した判事と檢事とは同額の待遇を受けるが、併し判事は一段上であるということは、一番高いところに行くと、それ以上のものには檢事はなれない。そういう段階があるので、判事が高くなつたということが言えるであろう、將來任用制度等を改正し、試驗制度を改正して、判事と檢事は初めから採り方を異にし、これも私だけの私案でありまするが、將來できまするならば、國家試驗というもので辯護士となり檢事となる人を採用する。そうして五年とか十年とか辯護士なり檢事をやつた後でなければ、判事にはなれないというような制度を作つて見たいと考えておるのであります。そうなつたときならば判事はずつと高い俸給を貰いましても問題はない。アメリカの制度等は略々そういうようになつておるのであります。そういうときが來たならば別であるが、今直ぐ差別をつける、昨日まで同じ俸給を貰つておつたのに、今日から千圓づつ違う、そういうことはあるまじきことでありますから、私の提案によりまして、二十六日の閣議において判事の一級俸一萬四千圓という一つの、檢事にない等級を作らう、但しそれから上の方は、最高裁判所の長官は總理大臣と同じ、判事は國務大臣と對等するということで、檢事は一番上の方に行つても檢事總長、これが國務大臣よりも下に居るのであります。ただ俸給だれは十圓安くする、百圓安くする、そういうけちなことを言わずに、國務大臣と同じにしてもよかろうということに落著いたのです。それを幾らか少くしなければ、法務總裁の指揮監督の下に居る檢事總長でありますから、論理は立たないのでありますが、關係が餘り論理的にばかりやるということもどうかということからさようになつたのであります。今檢事長と東京高等裁判所長官との間に開きがある。これは關係方面の意向でありますから、最初から開きをつけておつたのではないのでありますが、關係方面ではアメリカの制度を頭に置いてのことでありまして、判事と檢事は違う、檢事は一段と低かるべきものという御主張がありまして、まあ止むを得ず一昨年か吉田内閣の下に、差をつけたのでありまして、今度GHQの方面におきましても、日本の實状を了解されまして、對等でよろしいということになりましたのでありまするから、この際僅か二十圓の違いですか、五十圓の違いですかをなくして同じにしておこう、こういうことになつたわけであります。そういうことで、決つたので私は安心して、それでも恐らく私の方から言えば、部内では不滿がありましよう、檢事はいくら出世しても一萬四千圓という俸給は貰えない、判事だけが貰える、それからその上の高い所へは、絶對に行けないということになつておるのでありまするからして、それは仰える、こういう決意を持ちまして神戸に立つて行つたのであります。
然るに神戸で調査に從事しておると、長距離電話が掛つて參りまして、閣議で非常な別な話が出て來た、それは一齊に千圓ずつ違うのだ、東京高等裁判所長官と檢察廳檢事長との間に、それから、一號、二號、三號、四號、五號、皆千圓ずつ低い、これは私にとても晴天の霹靂であり、誰もが意外に思つたところなのであります。そういふうに閣議では了解したというのでそれは飛んでもない話だということから、私は總理大臣に當てまして、電話で、同時に傳言をも頼み、又直接電報を打つたのであります。二十七日の閣議において了解せられたところは、二十六日の閣議決定を根本的に誤解しておるものである故に、自分が歸つて誤解を解くから、歸るまでは國會に提案することを、差し控えてもらいたいということを申したのであります。もとより總理におきましても、國會に私が歸る前に提案するということは考えておらなかつたのでありますが、それは先づよろしい、こういう御返事がありまして、安心いたしたのであります。
それで歸つて來て三十日に閣議が開かれましたから臨んで、それは誤解であることを縷々説明して、或る程そうであつたとういことを御了解下さつたのであります。それだからして閣議というものが何も變更したことがないのでありまして、あつたかに傳えられて、そうしてそれが又傳えられたために、檢事諸君の陣營においても動揺を起しまして、千圓ずつ皆低くなつたということでは容易ならんことでありまするから、飛んでもない話であるということで、私共に陳情されたこともありますけれども、そのために動いたのでは決してないのであります。そのために動くというような不見識なことは、閣議として斷じていたさないのであります。どうかそういうことは誤解のないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/18
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019・前之園喜一郎
○前之園喜一郎君 よく分りましたが、恩給の關係についてもう一つ尋ねて要點を承りたいと思いますが、先程申しました現に恩給を受けております者と、將來受けます者の間には非常に開きができるわけであります。これは時勢上止むを得ないというふうにお考えになるのであるかどうか。更に仰せのように、私共も敗戰國の今日でありますから成るべく恩給に頼らないで働ける者は働く、本當に働くことのできない、生活のできない者だけが恩給を受けるということが正しいと考えます。それだけに又そういうような生活のできない者、働きのできない者に對しては、やはり恩給の面において相當に生活ができるように考えてよろしいのではないか。まして將來の恩給を受ける者と、從來の恩給を受ける者と、等しく國家のために貢獻して、殆んど一生を國家のために捧げたという人達が受ける恩給が、そういうふうに開きがあるということには、相當に私は從來恩給を受けている者に不滿もあると同時に、國民の間にも私は納得のできないものがあるだろうと考えるわけであります。そのままにやはりおかれる積りであるか。これはむろん總裁の主管ではありませんが、この點をどうしてももう少しはつきりとする必要があるのじやないか、ある時期には恩給の改正をやるとか何とかいうことがなければ、相當に私は物議をかもすのではないかと考えるわけでありますが、その點について重ねて御意見を承りたいのであります。
次の司法事務室竝びに書記の問題でありますが、これは仰せのように、その他の官吏と區別を附ける理由はないかも知れません。併し實際仕事の面を私共考えまするときに、司法事務官、特に公判書記のごときは、裁判所で記録の清書をするというような暇は殆んどないのであります。自分の家に持つて歸つて夜も日曜も殆んど休まずに清書をする。それでも尚追つ著かないで仕事に追われ勝ちである。これは私ここに申上げるまでもない、總裁も十分に御承知であろうと思いますが、現在家で仕事をしておるとか、或いは家で夜仕事をしておるという者に對して、時間外の手當などは無論貰つていないだろうと考えるのであります。俸給としてここに他の官吏と區別をつけることは困難でありましようが、或いは研究費であるとか、或いは何らかの項目を設けて、そうしてこれを擁護するということは合法的にできるのじやないかと考えるわけであります。この點についてもう一度御意見を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/19
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020・鈴木義男
○國務大臣(鈴木義男君) 第一の恩給の問題は仰せの通りでありまして、できるだけ不公平のないように、それだからといつて、裁判官は檢事の方を下げろという御趣旨ではなかろうかと思います。一般の方面を上げる方向に向つて努力したい、こういう考えを持つておるということをお答え申上げます。
それから司法事務官、書記等の待遇につきましても仰せの通りでありまして、同じ行政官吏の中でも、特に優遇せらるべき官吏に屬するということは認められまするから、許される限りの優遇をするつもりでありますし、同時に仰せのごとき點につきましても、實はいろいろ考えておるのであります。だから只今ここでどういう案ができたということを申上げかねますが、十分に考慮を拂つておるということだけ申上げましてお答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/20
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021・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 兩案に對する質疑はこの程度にいたしまして、午後に讓りたいと思ます。尚この際お諮りすることがありまするが、當委員會に付託されておるところの、民事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、これを小委員會を設けまして、小委員會において詳細な審議を圖りたいと思いますが、如何でありましようか。
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/21
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022・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは小委員會を設けることにいたします。小委員會の數及びその任命につきましては、委員長に御一任願つてよろしうぅございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/22
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023・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では委員長において指名いたします。鈴木安孝君、齋武雄君、岡部常君、松井道夫君、前之園喜一郎君、以上五名の方に本案に對する小委員會を構成して頂くことにいたします。尚以上申上げました五名の方から適當な方を小委員長に御選任願いまして、それを本委員會に御報告願いたいと存じます。
それでは午前はこれを以て休憩いたします。午後一時から再開いたしまして、人身保護法と尚重要な事項について御協議を願いたいと思いますから、それまで休憩いたします。
午後零川九分休憩
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午後二時四分開會発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/23
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024・伊藤修
○委員長(伊藤修君) これより司法委員會を開會いたします。先ず人身保護法案を議題に供します。前囘に引続いて質疑を繼續いたします。只今お手許に配付しております印刷物について御覽下さいますればお分りになりますように、過日お手許へ配付いたしました人身保護法案逐條説明書と題するプリント中、その二十頁の七行目についてお手許に配付したように訂正いたしました。これは説明の誤記でありますから、さよう御承知願いたいと思います。尚お手許に只今配付いたしました人身保護法案中修正案というのを差上げまするが、これは原案の方針では第二十條でありましたかによつて、大體ここに記載してない事項で、必要な事項は、最高裁判所のルールに讓るという方針の下に起案されておりまするが、それではルールにおいてその制定權があるかどうかという點について、疑義がありますので、むしろ本法案においてその點を明かにして、少くとも法律事項に類するような事項は、すべて本法案中にこれを掲げることが適當ではないかと存じまして、只今のお手許に差上げましたような大體の修正案を差上げて置きましたですが、これを併せまして一括して一つ御質疑を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/24
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025・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 この人身保護法案の方の質疑は締切つたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/25
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026・伊藤修
○委員長(伊藤修君) これから質疑を開始いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/26
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027・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 それではこれは提案者の方の修正ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/27
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028・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうです。原案を御審議願う上において多少疑義がありますから、むしろ進んでその疑義の點を本法案に明らかにした方がいいと思いまして、これをも併せて御審議の對象にして頂くというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/28
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029・泉芳政
○專門調査委員(泉芳政君) それでは私からお手許に差上げました修正案について御説明申上げます。
法案第四條は、元來請求書の記載要件が書いてあるのでありますが、請求書には請求の趣旨、理由、それから拘束者竝びに拘束の場所などを開示し、必要な疏明資料を提供するということが書いてあるのでありますが、大體當事者と申しますか、拘束者、被拘束者というものを先ず表わして、それから請求の趣旨、理由というふうな記載をするのが今までの訴訟關係の書類の記載方式のようになつておりますので、四條もさように改めまして、「請求書には、拘束者及び被拘束者を表示し、請求の趣旨及びその理由殊に知れている拘束の場所を開示し、且つ必要な疏明資料を提供することを要する。」というふうに直したわけであります。
それから第七條の第一項、裁判所は、「審問期日における取調の準備のために、直すに拘束者、請求代理人竝びに關係者の陳述を聽して、」「必要な調査をする」というふうに書いてあるのでありますが、この「拘束者、請求代理人竝びに關係者」というような書き方は、今までの法文では餘り見掛けませんので、拘束者、請求代理人等を例示的なものといたしまして、この記載を「拘束者、請求代理人その他事件關係者」というふうに改めたのであります。それから同條の第二項の、「前項の準備調査は、部員をしてこれをさせることができる。」ということが書いてあるのでありますが、裁判所法以前には、会議裁判所の部長とか部員とかいう言葉が使われたのでありますが、地方裁判所では今度單獨制と会議制とありまして、必ずしも部員というものはいつでも存在するというわけではありませんので、「会議體の構成員」というふうな言葉使いに改めたのであります。
それから第八條は、いわゆる一時釋放する場合の方式、手續を書いてあります。「假りに、被拘束者を拘束から免れしめるために、何時でも呼出しに應じて出頭することを條件として、辯護士の保證の下に、又は保證金を立てさせ若しくは立てさせないで、一時釋放その他適當な處分をすることができる。」というふうに書いてありますのを、「何時でも呼出しに應じて出頭することを條件として、」というのを取止めまして、「何時でも呼出しに應じて出頭することを誓約させ、その他適當と認める條件を附して被拘束者を釋放し、その他適當な處分をすることができる。」というふうに改めました。つまりその釋放のときに條件を、辯護士の保證とか、或いは保證金を立てさせるとか、立てさせないとかいうふうに限定しないで、これを廣く、裁判所が適當と認める方法によつてやることにしようというふうに改めたわけであります。
それからその第八條の第二項として、假りに裁判所が釋放した場合、裁判所がその被拘束者を呼出して、その呼出しに應じなかつた場合には、裁判所が被拘束者を勾引することができる、ということは今までと變りはないのでありますが、この規定がありませんと、先程も委員長が申しました通り、人權に非常に影響のある強權力を行使する事柄でありますので、最高裁判所の規則を以てしては、果してよくこれを決めることができるかどうかという點について、相當な疑念も考えられますので、むしろ本法でこれを規定した方がなかろうという趣旨のようであります。第二項として、「前項の被拘束者が、呼出しに應じて出頭しないときは、勾引することができる。」ということをはつきり表わしたわけであります。
從つて第九條の第二項中にもこの請求が、理由がないということで、決定を以てこれを棄却する場合に、裁判所が被拘束者を拘束者に引渡す處分をするのでありますが、その際にもやはり被拘束者を一應裁判所に出頭せしめ、これを拘束者に引渡すのでありまして、任意に出てくればよろしいのでありますが、呼出しに應じて出てこない場合には、この八條の二項によつて勾引して、それからこれを拘束者に引渡すという手續になりますので、九條の二項中に、「前條の處分をしたときは、裁判所は前項の場合に、被拘束者を出前せしめて拘束者に引渡す。」というところのこの「前條」というところに、「前條第一項」というのを入れ、新らしく第二項を附加えたことを區別したわけであります。
次に第十條の第一項中、「前條の場合を除く外、」というこの「前條の」とありますのを、「第五條又は前條第一項の」というふうに改めたのであります。これは御案内のように、第五條の場合には、直ちに決定を以て却下するという場合が書いてあり、それから第九條には準備調査の結果決定を以てこれを棄却するという場合が書いてありますので、これらの棄却しない場合にはということになりますと、前條、つまり第九條の、準備調査の結果棄却するという場合だれでは少し言葉を盡さないのじやないかということから、第五條の疏明を缺いているということで決定で却下するという場合も、第十條の除外例の場合として掲げる必要があるということから、「第五條又は前條第一項の」と改正したわけであります。
それから第十條の第四項でありますが、この人身保護命令といいますか、被拘束者を連れて出頭せよ又は答辯書を出せという、その命令書の送達と審問期日との間には、三日の期間を置かなければならんという規定がありますが、一體その審問期間を、いつまでに開かなければならないかという旨の規定がありませんので、この點は專ら裁判所に期待いたしまして、事柄の性質上、できるだけ迅速にやるようにという裁判所の内部的に命令で賄えるように考えておつたのでありますが、これもだんだん審理の經過に鑑みまして、本法の中へ、義務的の短期間にやらなければならんということを表わす方がいいのではないかという見地から、「審問期日は、第一條の請求のあつた日から一週間以内にこれを開かなければならない。」という制限を設けて、迅速に審理されることを期したのであります。ただ命令書の送達と審問期日の間に置く三日の期間、それから又審理を開かなければならないとする一週間の期間も、特殊な事情、例えば非常に遠隔の地から出頭せねばならんというような場合などにおきまして、事實上これでは短か過ぎるというようなこと、或いは又逆のもつと早くやれるというような事情の場合なども考えられますので、その末項に、この期間の短縮又は伸張のできるという規定が設けられておるのであります。この末項の規定を、今申しました兩方の期間について、それぞれ短縮又は伸張することができるようにする必要がありすので、「但し、特別の事情があるときは、これを」とありますのを、「期間は江々これを短縮又は伸張することができる。」というふうに書き改めたわけであります。
次に第十一條の第二項、これは審問期日に、この事件に關係のある「裁判所の代表者」及び檢事に出頭の機會を與えるという意味で、豫めこれを通告するということになつておるのでありますが、この「裁判所の代表者」という言葉が、今までに餘り用例のない言葉で、熟しない嫌いがありまするから、これを「裁判所の裁判官」というふうに改めたわけであります。
次に第十二條は、辯護人のないときには裁判所が辯護士の中からこれを選任せければならないということになつておるのでありますが、さようにして裁判所が選任しました辯護人に對しては、旅費、日當、宿泊料、報酬などを支給することが適當であり、又實際に行われるのでありますが、これも法文の中に現わした方がよかろうという趣旨から、十二條の第三項といたしまして、「前項の辯護人は、旅費、日當、宿泊料及び報酬を請求することができる。」ということを書き加えたわけであります。
それから第十四條の次に、つまり十四條と十五條の間に一條挿入することにいたしました。それは「第五條、第九條第一項及び前條の裁判において、拘束者又は請求者に對して、手續に要した費用の全部又は一部を負擔させることができる。」という費用負擔の規定でありますが、これもやはり法文に規定した方がよかろうというので、丁度場所を十四條の次に第十五條として入れることにいたしまして、十五條以下は一條ずつ繰下げるということにいたしたわけであります。
それから二十條の、「最高裁判所は、請求、審問、裁判その他の手續について、必要な規則を定めることができる。」、この最高裁判所の規則制定權の規定を、又本法でここに特に規定したわけでありますが、先般來いろいろ審議いたしておりますると、「その他の手續」ということが書いてありまするために、單に裁判上の手續だけについて、最高裁判所は規則を定めることができる、というふうに解釋せられる虞れがある。ところが、たびたび御説明申上げております通り、本法は人身保護法の極めて重要な根幹となる部分を規定いたしておりますので、いろいろ手續その他瑣末な問題については、相當程度この附屬の法令に委ねたものがあるのであります。それらの中で、表現として「手續」と書いたために、それに含まれない虞れがありはしないかということが、相當懸念されましたので、この機會に、最高裁判所の規定制定は、單に手續のみならず、請求、審問、裁判その他の事項にも及ぶのだということを明確にするために、この「手續」という文字を「事項」と改めたのであります。尚先程一條入れましたので、これも一條ずつ條文の順序が繰下がることになります。大體修正の理由は、以上の通りであります。
尚ちよつと附加えて申上げますが、この修正は、最高裁判所などからも本法についていろいろな意見が寄せられまして、それらの意見を参考といたしまして、最高裁判所とも十分事務的に打合せまして、かような修正を見ることになつたのであります。御覧のように主なる事項としては、出頭しない被拘束者を勾引するという一項、それかに審問期日は一週間以内に開かなければならんという點、それから裁判所が選んだ辯護人には旅費、日當、宿泊料等の請求権をはつきり認める、それから裁判の費用負擔の問題、この四點が目新らしく附加えられたわけであります。字句の修正としては、最後に申上げましたルール制定權に關する「手續」という文字を「事項」に改めたということは、相當重大な意味を持つておるのじやないかと思います。以上附加えて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/29
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030・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 尚御研究願うことにいたしますか、何か御質疑がありますか、どういたしますか。速記を止めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/30
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031・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。では質疑は來週の初めにお願いすることにいたしまして、本日はこの程度で散會といたします。
午後二時三十六分散會
出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
理事
鈴木 安孝君
岡部 常君
委員
齋 武雄君
中村 正雄君
大野木秀次郎君
奧 主一郎君
鬼丸 義齊君
前之園喜一郎君
宇都宮 登君
宮城タマヨ君
星野 芳樹君
小川 友三君
西田 天香君
國務大臣
國 務 大 臣 鈴木 義男君
專門調査員 泉 芳政君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100214390X02619480520/31
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