1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十三年六月二十九日(火曜日)
午前十一時六分開議
—————————————
議事日程 第五十三号
昭和二十三年六月二十九日
午前十時開議
第一 保険募集の取締に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第二 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 日本國憲法第八條の規定による議決案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 職業安定法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五、健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第六 温泉法案(内閣提出)(委員長報告)
第七 へい獣処理場等に関する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第八 あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法に関する特例案(小林勝馬君外四名発議)(委員長報告)
第九 國家公務員法第十三條第二項及び地方自治法第百五十六條條四項の規定に基き、臨時人事委員会の地方の事務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第一〇 登記事務の簡易化等に関する請願(委員長報告)
第一一 工業所有権の確保に関する請願(委員長報告)
第一二 弁護士法改正反対に関する陳情(二件)(委員長報告)
第一三 刑事訴訟法改正案に関する陳情(委員長報告)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/0
-
001・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 報告の朗読は省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/1
-
002・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。今次の北陸地方における震災状況説明のため官房長官より発言を求められました。苫米地國務大臣。
〔國務大臣苫米地義三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/2
-
003・苫米地義三
○國務大臣(苫米地義三君) 昨日北陸地方を襲いました地震の被害状況につきまして御報告を申上げます。被害の程度でございますが、昨日午後五時十四分頃、福井縣の九頭龍川下流附近を震源地といたしまする極めて大規模な地震がございました。このことはすでに御承知の通りでありますが、福井、石川両懸下は特に被害甚大の模様でございます。被害の状況は目下調査中でありまして、その詳細は未だ判明いたしませんけれども、國家警察本部よりの報告及び福井縣の知事から内閣総理大臣宛非常電報報告等を綜合いたしますると、大体次のようでございます。
福井縣は福井市、坂井郡、吉田郡、足羽郡、この地帶は家屋の倒壊が多く殆んど全滅の状態でありまして、相当の被害があります。尚福井市外数ケ町村から発火いたしまして福井市の大半は焼失した模様でございます。救助対象の数は約三十万人でありまして、死傷者は今尚不明でございます。福井縣下の被害激甚の個所は、福井市森田、春江、丸岡、金津、松岡、藤原町及びその附近の村落等でございます。石川縣は、石川縣の南部、特に大聖寺町は三千戸のうち全半壊家屋はその約五割に達しております。その他附近町村に相当の被害がある模様でございます。
交通の被害でありますが、鉄道の被害といたしましては、北陸線森田、福井駅間で旅客列車が顛覆し、被害相当ある見込であり、その他貨物列車の顛覆、鉄道線路の破損等のために列車は不通でございます。
通信の被害及び復旧の状態は、逓信省の報告によりますと、通信は電信、電話共大阪、名古屋、東京等より、震災地方に対しまして一時杜絶いたしましたが、直ちに金澤、富山、若狭の各局の非常無線を開設いたしますと共に、鋭意有線の復旧に努力しまして、現在、今朝八時まででありますが、有線の連絡状況は、電信は金澤一福井、大阪—敦賀、電話は東京—金澤、東京—富山、東京—敦賀各一回線、名古屋—敦賀、大阪—敦賀、金澤—福井二回線が開通いたしております。福井電話局は機械が倒壊し、福井郵便局が局舎が半燒いたしまして災害がありましたが、尚貯金保険等の非常拂い等の処置方につきまして現益手配中でございます。
道路、橋梁の被害状態でありますが、九頭龍川各橋梁は殆んど落ちまして、道路の亀裂が甚だしく、敦賀—福井間は自動車交通は可能であります。大体以上の程度が判明しておる状態でございます。
次に中央並びに現地におきまして取つた処置を御報告申上げます。政府といたしましては、今回のこの大地震の被害を深く憂慮するものでありまして、本日直ちに災害救助法による中央災害対策協議会を招集し、應急対策を考究いたしますと共に、関係各省を動員いたしまして必要の処置を取らせる準備を進めております。即ち災害救助法による應急救助費の支出をいたしますると共に、災害の復旧につきましては公共事業費を増額する予定でございます。又金融及び罹災者に対する租税等につきましても必要な應急措置を講ずる予定でございます。食料、木材、薪炭などにつきましても、農林省において罹災者救助に遺憾なきを期するよう各当局に指示いたしております。すでに実施し、又は実施率の救助対策といたしましては、厚生省に災害救助連絡支所を急設いたしまして、次官を中心とした救助対策本部を設けまして、應急救助態勢を整備いたしますと共に、必要によりましては次官以下幹部職員を現地に時派いたし直接指揮に当らせる所存でおります。差当り厚生省は國立病院四ケ所、療養所二ケ所に対しまして救助班を編成し現地派遣方を指示いたしました。又日本赤十字社本社、ララ委員会の関係諸團体に連絡もいたしまして積極的な協力を要請いたしております。又社会局、予防局より係官を昨夜現地に急行いたさせまして、関係方面に対しましては、昨夜來その協力方を懇請いたしておるのでありますが、関係方面当局におかれましても救援列車の出動等懇篤な御援助を得ております。国家地方警察本部におきましては、昨夜係官を現地に特派いたし諸般の連絡に当らせると共に、大阪管区本部長をして、管下の各府縣より動員した應援警察官約八百名を罹災地に急派し、治安の万全を期しております。被害地たる福井、石州両懸におきましては直ちに救助対策本部を設け、災害救助法に基く災害救助隊を動員し救助活動に当らせると共に、隣接府縣に救助應援を依頼いたしております。新潟縣及び富山縣におきましては、福井、石川両懸救援のための協議を直ちに開始いたしますると共に、富山縣におきましては昨夜急遽医療班を編成し、應急援護物資と共にトラツクで以て現地に輸送中であります。
以上取敢えず只今までの状況を御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/3
-
004・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 尚本件に関し、議長は、今朝福井縣知事より左の電報を受領いたしました。「福井市、坂井郡、吉田郡、足羽郡倒壊全減す。ほか相当の被害、福井市ほか数ケ町村より発火し、福井市は五割燒失、目下延燒中。救助対象三十万人、死傷者未だ不明。敦賀、福井間自動車通行可能、救助方取計い乞う。福井縣知事。」
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/4
-
005・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) この際議員派遣の件につきお諮りいたします。北陸の地方の震災についてその被害状況を調査するため、北陸地方に五日間の日程を似て議員五名を派遣することとし、その派遣議員の指名は議長に一任されたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/5
-
006・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件を決定いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/6
-
007・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) この際、日程第一、保險募集の取締に関する法律案、日程第二、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案、日程第三、日本國憲法第八條の規定による議決案(内閣提出、衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/7
-
008・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長黒田英雄君。
〔黒田英雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/8
-
009・黒田英雄
○黒田英雄君 只今上程せられました法律案並びに議決案につきまして、委員会におきまする審議の経過並びに結果について御報告をいたします。
先ず保險業法の取締に関する法律案について御説明をいたします。保險会社が現下のインフレの下におきまして、健全運営を維持しまするためには、新しい契約を大量に獲得いたしまして、保險料の收入を多くしなければならないのでありまするが、その半面何でも契約を取りさえすればよいという氣持から、とかく募集が紊乱いたしまして、保險契約者の保護の見地からも又保險の信用維持の見地からも、このまま放置し得ない状態に立至つておるのであります。又損害保險事業におきましても、自己代理店その他不健全な代理店がはびこる事態が発生いたしておりまするので、適当な調整を加える必要があるのであります。ところで、現在では、政府は生命保險募集人又は損害保險代理店に対しまして、保險業法に基く直接の監督権がないのであります。保險会社に命令して間接的の監督をする外はないのであります。而して保險業法の全面的改正は目下政府において準備中であるのでありまするが、その中には募集に関する規定をも設けるつもりであるのでありますが、現状から見て緊急対策を講ずる要があるのでこの案を提出したということであります。
法案の内容の大要を申上げますれば、第一に、生命保險募集人、損害保險代理店及び募集を行いまする保險会社の役員、使用人は、大藏省に備えた登録簿に、登録を要するのであります。その場合手数料を徴するのであります。保險業法の改正の際にはこれを免許制度にする考えであるということであります。次にこれら以外の者の募集は禁止するのであります。次に保險会社は募集人、代理店が保險契約の募集につい、保險契約者に加えた損害を賠償する責任があるのであります。又募集用の文書図画に記載します事項についての制限、募集事項について必要な規制を加える規定を設け、又代理店が自己又は自己の使用者のため保險契約を募集することを禁止し、大藏大臣の募集人、代理店に対しまする検査監督の権限を規定し、所要の罰則を設けておるのであります。
これが内容の大要でありまするが、討論に入りまして、緑風会の伊藤委員から、募集人又は代理店の登録を拒否する場合、及びそれらのものの業務停止を命じ、又は登録の取消の処分をする場合の手続を愼重にして、誤りなからしめるようにするのと、登録事項を的確にするために修正の意見が提出されたのであります。この修正の意見は、すでに配付されておりまする保險募集の取締に関する法律案の審査報告書に載つておりまするから読み上げることを省略いたすことをお許しを願いたいと思います。
採決に入りまして、先ず伊藤委員の修正を採決いたしましたところ、全会一致委員会の修正とすることに決定をいたしたのであります。次に残余の部分の採決をいたしまして、前会一致本法案は修正可決ということに決定をいたしたのであります。
次に皇室経済法施行法の一部を改正する法律案、並びに日本國憲法第八條の規定による議決案、この両案について御説明をいたします。
先ず皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について御説明をいたします。天皇皇后両陛下を初め、内廷にあられまする皇族の日常の御費用その他の内廷費に発てられまする内廷諸費は、皇室経済法施行法第七條におきまして、その定額を定めて八百万円といたしておるのであります。これは昨年即ち昭和二十二年の初め、当時の物價の状況その他を勘案して定められたものであるのでありまして、その後今日まで変更されておらないのであります。そこで政府としては、現在の物價改訂の影響等を織込みまして、この際これを二千万円に増額することが必要と考えたのであります。次に皇族をしての品位を保持せられる資に充てるための皇族費の年額は、施行法の第八條におきまして二十万円と定められておりまして今日に至つておるのでありまするが、内廷費と同樣の理由からこれを三十六万円に増額しようというのであります。尚この変更につきましては、皇室経済会議におきましてもその必要を認めまして、内閣に対してそれぞれ二千万円及び三十六万円に増額することの必要を認める旨の意見書の提出があつたことは、皇室経済法第四條第四項及び第六條第九項の規定によつて内閣から國会に報告されておるのでありまして、すでに配付せられておりまするから御承知のことと存ずるのであります。
次に憲法第八條の規定による議決案につきまして御説明をいたします。天皇その他内廷にあられる皇族が、一年間になされる賜與又は讓受けの財産の價格は、皇室経済法施行法第五條におきまして百二十万円と定められております。この額に達した後には、その後の期日におきましてなされる賜與又は讓受けにつきましては、價額の多少を問わず國会の議を要することになつておるのであります。併しながら、天皇陛下を初めこれらの皇族方が、特に災害の場合の罹災者に対する御見舞或いは各種の御奨励のため賜與せられる價額は、一ケ年間に百八十万円近くに上ることが見込まれるのであります。前述の百二十万円をその他の一般的の賜與に充当いたしますと、これらの御見舞のための賜與は、その度ごとに、実際の必要に、当面して、一々國会の議決を経ることは事実上困難である場合が多く、又賜興せんとする目的も定まつておりますので、一括して國会の議決をして頂きたいというのが、本案の提出の理由でありまして、昨年度は本案と同樣の趣旨で、年度の途中であつたために、月割計算で議決を経ておつたのでありますが、本案はこれを年額に引直して百八十万円としたに過ぎないのであります。
この両案を一括して質疑に移りましたが、その質疑應答の一二を御紹介いたしますと、先ず本案の増額が現在のインフレ下におきまして果して適当であるかどうか、勿論新憲法におきます國の象徴であらせられる天皇並びに皇族の方の品位を保持せられるために、適当な費用を國が差上げることは当然であると思いますが、自分は皇室の御生計の内容を知らないので、適当であるかどうかを判断するに迷うのですから、具体的に内容を挙げて説明をして貰らいたいという質問があつたのであります。これに対しまして政府委員は、内廷資の内容として、内帑費、内帑費という中には社会事業の奨励及び災害等の御見舞もその中から出るのでありますが、内帑費、皇子費、食品費、旅行費、用度賀、給與、予備費等につきまして、詳細な各費目について説明があつたのでありますり。皇族費の三十六万円につきましては、大体親王、親王妃御二方の御生活を考えると、所要額が七十二万円程度必要であるのであるが、全部国庫から出して貰うということでなく、その四分の三を出して貰うとしますと、五十四万円になるのであるが、これを皇室経済法の規定によりまして親王は全額、親王妃は二分の一としますると、その定額が三十六万円となるので、この根拠で計上をしたということであつたのであります。
次に終戰前に比較しての御生活の変化はどういうふうになつておるかというような御質問に対しましては、以前は宮殿も沢山あり、附いておりまする者も多く、何かと現在に比較して二三倍の規模になつておつたと思う。併し御生活そのもの、例えばお食事だとか御服装とかは、以前から非常に御質素であられたのでありまして、これらは今日と雖も大した変りはないというような説明であつたのであります。
又御所有になつておる私の財産の收入はどの程度であるかとふう質問に対しましては、憲法八十八條によりまして皇室財産は國に属することになつておるので、從つて不動産についてはこれから生ずる收入はない、又お身廻り品或いは由緒ある御調度というようなものは残されておりまするが、これはそういう理由で收入はない、その外、現金として留保せられたものから昨年中に生じました收益、即ち預金の利子でありまするが、これは十数万用程度であつて、到底内廷費をこれから支弁する程の金額ではないというふうな答弁であつたのであります。詳細は速記録を御覽を願うことにいたしたいと思います。
討論に入りまして、共産党の中西君から、國民生活が今日窮迫しておる際に、かかる増額をすることは反対であるというような意味の陳述があつたのでありますが、これは本日後で討論にお述べになるらしいのですから省略いたします。民主党の木内四郎委員から、諸物價が高騰いたしておりまする今日、それが皇室費であると、行政費であるとに拘わらず、これらを改正することは必要であると思う、又政府委員の説明を聽いても、この程度は適当と認めるのであるから賛成をする、憲法第八條の規定による議決案の方についても、同樣な意味を以て賛成をするということの陳述があつたのであります。かくて採決をいたしましたところ、多数を以て原案通り可決いたしたのであります。これを以て報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/9
-
010・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案及び日本國憲法第八條の規定による議決案に対し、討論の通告がございます。中野重治君。
〔中野重治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/10
-
011・中野重治
○中野重治君 日本共産党は、この二つの案に対して反対であります。その理由を簡單に述べます。尚、今苫米地氏及び議長から北陸地方における震災に関する部分的な報告がありましたが、私はその中に地名を挙げられた、最も災害の大きいと見られる福井懸板井群の丸岡町附近に生れた者であります。このことは偶然の問題でありますけれども皆さんも、心に留めて置いて頂きたい。
先ず第一に、この法案の問題とするところは、宮廷費の問題、それから皇室費の問題であります。これはどういうことかというと、要するに宮廷費というのは日常の費用その他であつて、我々の言葉でいえばこれは出活費ということになる。これを二倍半の二千万円に増額するという問題、それから品位保持のための皇室費というものを一・八倍の三十六万円に値上げするという問題であります。そこで、この二千万円の生計費というものを、現在の皇室は家族八人でありますから、一人当りに割ると二百五十万円ということになる。これは國民の現状に比べて甚だ逕庭があり過ぎると我々は考える。それからスライドの問題であるけれども、これは官廳職員について見れば二倍弱にしか上げていない。併しながらこの案では二・五倍に引上げようとしている。この倍率については、すべての人がよくこれを認めて必要な注意を拂わなければならない。尚、本年度の予算全体として見ると、皇室関係費用は一億五千万円計上されておる。この額は、今問題になつておる学校の授業料の増額引上、あれによる全收入に丁度匹敵する。このことは極めて示唆するところが多い。そこで皇室の財産は現在どれだけあるかというと、これは日本政府の発表によれば、現金が千五百万円、私有財産は一億円以上ある。これを使つていない。品位を保つという問題があるが、自身の持つておる金を使つて生活して行くことが品位を保つ人間的方法であつて、これを懐ろに入れて置いたまま他から金を貰つて更にこれの増額を図つてやつて行こうというのは、品位を保つゆえんではない。こう我々は考ええる。(「それは共産党だけの考い方だ」と呼ぶ者あり)これは人間的な考え方である。自分の懐ろに物を持つておつて、それを使わないで、國民がすべて筍をやつておるのに、他から貰つて、それで品位を上げようというのは品位を下げるゆえんである。(「それは共催党だけの考え方だ」と呼ぶ者あり)これを理解しなくちやならん。そこで額の問題であるけれども、アメリカ合衆國の実情を調べて見ると、アメリカでは大統領の年俸は年額七万五千ドルになつておる。國務長官は一万五千ドル、その他の長官は一万三千ドル、國会議員は一万二千ドルである。大統領は國務長官の五倍に過ぎない。日本の実情を見ると、日本の総理大臣は、年俸三十万円であります。とすれば、この五倍としても百五十万円である。共産党はこの場合、総理大臣の二倍くらいが適当であろうと考える。その他はこれを国民の方へ廻すべきである。こう考える。現在御承知のように、世界的に又國内的にも、天皇に関しては退位の問題が日程に上つておる。これを我々はよけて通ることはできん。(「日程に上つてないよ」と呼ぶ者あり)ないというのは一部の人間が耳を蔽うて鈴を盗もうと企らんでおるからである。すべての事情を全面的に考察すると、我々はこの二つの案を含めて根本的に反対し、我々の提唱する方向へ事物を運んで行かなければならん、こう考えるわけであります。これが日本共産党のこの案に総括的に反対する理由であります。具体的な……(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/11
-
012・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これにて討論の通告者は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。これより採決をいたします。まず保險募集の取締に関する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を請います。
〔起立着多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/12
-
013・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/13
-
014・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 次に、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案、日本國憲法第八條の規定による議決案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を請います。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/14
-
015・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/15
-
016・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 日程第四、職業安定法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。労働委員長原虎一君。
〔原虎一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/16
-
017・原虎一
○原虎一君 只今議題となりました職業安定法の一部を改正する法律案につきまして、委員会におきまする審議の経過並びに結果について御報告いたします。
先づ本案の内容について申上げまするが、職業安定法は去る第一回國会におきまして制定せられ、昨年十二月一日から施行されております法律でありまして、この法律は当時御報告申上げましたように、憲法第二十二條に定められました職業選択の自由の趣旨等に鑑みまして、職業紹介事業その他職業の安定を図る事業の整備刷新を図るがために制定せられたのでありまして、公共職業安定所その他の職業安定機関が、各人の有する能力に適当なる職業に就く機会を與えることによつてへ産業の必要労力を充足して、職業の安定を図るとともに、経済の興隆に寄與せんとすることを目的としているものであります。而してこの法律の重要な規定の一つに、労働者供給事業の禁止があります。この禁止規定は、労働者供給事業の本質が封建的な身分関係に基いて、ややもすれば労働の中間搾取を行い、且つ強制労働の弊害を伴い易いので、労働者の権威と自由とを保障し、労働の民主化を推進するためであり、別に労働組合が労働大臣の許可を受けて、労働者供給事業を行う以外は、すべてこれを禁止したものであります。而して職業安定法施行後約半歳を閲しましたが、その間政府においても各方面の協力を得まして、この禁止措置に対して積極的施策を講ぜられたのでありまするが、この実施の過程において種々不備なる点が生じました。これを大体次の二つの点から改めんとするものであります。第一に、違法な労働者供給事業を行う者から労働者の供給を受けて使用することが禁止せられていないため、法の目的の徹底を期し難いので、使用者側の雇入れを禁止し、若し違法雇入れをした場合には、使用者をも罰することとし、第二は、行政廳に、違法な労働者供給事業を利用している工場、事業場その他の施設に対して必要なる調査をする職権がないために、違法な労働者供給事業を利用している者をそのままに放任する結果を來すので、行政廳に取締上必要な立入調査を行うことができるように改正したのであります。要するに本法案の目的とするところは、違法な労働者供給事業の禁止を徹底させ、労働の中間搾取を除きまして、強制労働の弊害を拂拭し、労働者の権威と自由とを保障し、労働の民主化を推進することに寄與せんとするものであります。
而して本委員会は、六月十九日及び六月二十一日に予備審査を行いまして、極めて愼重に審議をいたしましたのでありますが、六月二十二日衆議院から本院に送付せられまして、更に六月二十四日及び六月二十五日本審査を行い、委員諸君と政府委員との間に熱心なる質疑應答がなされたのであります。これから法案の審議の経過の概略を簡單に申上げたいど存じます。
第一に、最近政府当局は、労働法規はこれを改正しないで專ら運用でやつて行くというのであるが、今日本法を改正するは何が故であるか、又法の運用に幾多の努力をして、どうしても効果の挙がらないときに初めて改正すべきであるのに、本法はその実施後僅かに半歳ぐらいで運用を盡したとは言えないとの質問に対し、政府は、労働法規を改正しないというのは、三大労働立法を言うのであて、本法は同じ労働法規でも、労働組合法などとは性質が違うから、労働の民主化を阻害するときは、できるだけこれを取除かなければならない。又半年くらいの実施で完全に運用せられておらないことは事実であるが、それを今回敢えて改正するのは、労働者の権利を擁護し、日本民主化の推進に役立たしめる必要からであるとの答弁がありました。第二に、労働組合法による労働組合は、労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができることになつているのであるが、政府は労働組合を育成して、労働組合に労働者供給事業を行うようにさせた方がよろしいと思うが、政府の所見如何との質問に対し、政府は、現在労働組合に労働者供給事業を行う餘力があるか否かが問題であつて、現在の段階においては、その方面の事業を行うことに育成することは少し困難ではないかと考える旨の答弁がありました。第三に、すでに労働基準監督署に労働の中間搾取の除去のための監督権を附與してあるのに、更に純然たるサービス官廳たる職業安定所にこの種の職権を與え、監督行政に変更して行こうとすることはよろしくないと考える。職業安定所の立入調査の職権と労働基準監督署の監督権との関連如何との質問に対し、政府は、本法案によつて改正せられても、サービス官廳たる職業安定所が監督行政に変更されるものではなくて、これまでのサービス行政を徹底せしめるために、過渡的に違法なる実在について調査するものであつて、どこまでもサービス官廳の範囲を逸脱しない。労働基準監督署は廣義の司法権を持つているが、職業安定所はこれを持たないのであるから、違反事業があれば、監督署と連絡するものであつて、職業安定所は決して監督行政に移行するものではなく、どこまでもサービス官廳たる性質を失うものではない旨の答弁がありました。第四に、労働ボスの排除の点において、労働基準監督署と職業安定所と互いに監督権が衝突するようなことはないかとの質問に対し、政府は、職業安定所はどこまでもサービス官職であつて、その奉仕の精神を十分に発揮せしめる過程において調査の職権を與えるに過ぎないので、司法権を持つ監督署とは両者の建前が異なつているから互いに並立する旨の答弁がありました。第五に、本法案の労働者供給事業は禁止されたものであるのに、その禁止されたものを実在するものとして取扱うのは不可解であるとの質問に対し、政府は、労働者供給事業は禁止されているが、尚他の名目を用いて実在していることは事実であるから、その実在しているものから供給を受ける者を罰することは法の建前として差支えない旨の答弁がありました。第六に、悪質のボスになると、事業場、事務所等を持たないで隠れて供給事業を行うかも知れない。かくのごとき場合には、本法案の改正では調査は不可能となりはせんかとの質問に対し、政府は、違法な労働者供給事業を行う嫌疑のある場合を調査するには、工場等で労働者に直接質問をすること等によつて、親方が事務所を持つておらないときでも、その眞相を知ることができるとの答弁がありました。第七に、労働ボス排除のための本法の罰則は軽きに失せぬかとの質問に対し、政府は、軽いとは認めるが、貨幣價値が下落したからといつて、直ちに変更することは困難であつて、刑罰の変更はそう軽々しくできないし、又貨幣價値の下落ごとにこれを変更するのではその煩に堪えない旨の答弁がありました。第八に、違法に労働者供給事業を行う者と、その者から供給されて労働者を使用する者と双方を罰する両罰主義は至当と思うが、罪の量定をこの両者に対し同一とすることは穏当ではない、使用者に比較的軽き刑を以て罰すべきではないかとの質問に対し、政府は、本法が重罰主義を採つているならば、刑を両者別々にすべきものであるが、本法第六十四條の罰則は、現下の社会観念に照らして軽きに失するくらいである。他の法令に比較すれば確かに軽いのであるから、これを更に軽くするときは、使用者において何らの苦痛を感じなくなる。両者に差等を設けるときは、前段の刑を更に重くしなければならない。刑罰は威嚇主義であるから、正しい労働力を受けようとする者には、刑罰は幾ら重くてもかまわないわけであるから、この程度の刑罰は、罰則は、両者同一刑で差支えなく、あとは司法当局の運用に委せて置く方がよろしい。又他面本法案の罰則は、処罰が本旨ではなく、事業主の封建的な色彩を脱却せしめることを希望する警告的の意味を持つもので、決して刑罰そのものが目的でないとの答弁がありました。第九に、本法案実施のために要する予算は如何、又実際に職業安定所には如何なる割合で配分する考えであるかとの質問に対し、政府は、本法案の労働者供給事業禁止に要する経費として、労働省分として百十二万五千四百八十六円、地方廳分として百四十三万六百円、公共職業安定所分として七百三十五万九千円、合計九百九十一万五千八十六円を予算に計上してあつて、その内訳は廣告費、旅費、消耗品費等である。又その予算は全國の四百五十五ケ所の職業安定所に、單價として一万数千円を振向ける筈であるが、実際には事務の繁閑に應じて適当に割当てる考えである旨の答弁があつたのであります。以上でこの法律案に関する主要なる質疑應答の概要の報告を終ります。右申しました質疑應答の外に、いろいろな角度から、政府側と委員側とに詳細且つ多岐に亘る質疑應答が交換されましたが、これは速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
かくて質疑を終りまして、討論を省略して採決の結果、全会一致原案通り可決せられたのであります。以上を以ちまして労働委員会の審査状況の報告を終りたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/17
-
018・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/18
-
019・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/19
-
020・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) この際、日程第五、健康保險法の一部を改正する法律案、日程第六、温泉法案、日程第七、へい獣処理場等に関する法律案(内閣提出)、日程第八、あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法に関する特例案、(小林勝馬君外四名発議)以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/20
-
021・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長、塚本重藏君。
〔塚本重藏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/21
-
022・塚本重藏
○塚本重藏君 只今議題となりました四つの法律案について、厚生委員会におきまする審議の経過並びにその結果について御報告を申上げます。
先ず健康保險法の一部を改正する法律案について説明します。本法案は去る六月の二十五日本委員会に本付託と相成りまして、二十五日及び二十六日の両日に亘つて審議いたしました。先ず法案の提出の理由並びにその改正の要点を申上げますと、健康保險法におきましては、從來被保險者の権利義務に関する規定等であつて、法律事項と認められる重要な事項に関して、政令に委任した事項が極めて多かつたのでありますが、最近の立法の趨勢に鑑みまして、これらの規定を法律に規定いたしますると共に、概ね次の点に関しましても実体的な改正を図つた次第であります。先ず被保險者の標準報酬に関しましては、現在は最高五千百円の第十七級までと定めてあるのでありますが、最近におきまする賃金の上昇に鑑みまして、更に十級を追加いたしまして、その最高を八千百円といたした次第であります。次に被保險者の資格に関しまして、今般國、都道府縣及び市町村等に使用せられる公務員についても、健康保險の被保險者とするようにいたしたのであります。併し、公務員の中、國家公務員によつて組織されておりまする共済組合に対しては、健康保險事業の実質的代行を認めることにいたしたのであります。次に健康保險の保險医等は、その同意を得て都道府縣知事がこれを指定することにいたしたのであります。次に保險料に関しましては、政府の管掌する健康保險については千分の四十とし、特別の場合には主務大臣が健康保險委員会の意見を聞いて、その一割の範囲内で変更し得ることとし、健康保險組合の場合には、千分の三十乃至千分の八十の範囲内で決定して、主務大臣の認可を受けることにいたしておるのであります。以上がこの度の改正の主なる点であります。
委員会におきましては、愼重審議熱心な質疑が行われたのでありますが、その中主な点を一二申上げますと。
第一に、健康保險は事業主、被保險者、政府の三位一体であるが、國庫の負担がどれ程になつておるか。この質問に対しまして、政府管掌の場合は事業主と被保險者と折半負担であるが、國庫は被保險者一人につき十二円を負担している。組合管掌についても概ね折半負担であるが、事業主の負担の割合が多いのが通例となつている。
第二に、國民健康保險に関する國庫補助金と、健康保險に対する國庫負担金との割合はどういう状況であるか。これに対する答えといたしまして、國民健康保險は主として農、山、漁村を対象とし、健康保險は工場、鉱山等の職場を対象としている社会保險であるから 両者の均衡が取れていることが望ましい。そこで健康保險の國庫負担金も國民健康保險に同調いたしまして、一人当り十二円としておるのである。次に、積立金の状況は如何。收支に余剰があれば保險料率を引下げるべきであるが、政府の所見如何。この質問に対しまして、健康保險は厚生年金とは違つて短期保險であるので、それ程多額の積立金はない。現在ある積立金は、國債又は大藏省預金部に預金されておるのである。戰時中は保險給付費は余るような傾向であつたが、最近はその逆な状態にある。次にそういう状況であるならば、この改定による今後の收支の見通しは如何。この質問に対しまして、今回の改正によつて標準報酬料率共に引上げられているから、今後格別な物價騰貴の変動のない限りは、收支相償う見込みである。次に、国家公務員についても特別な取扱いを止めて、この際健康保險の被保險者とし、健康保險一本にしてはどうかとの質問に対し、御説には同感であるが、現在はその沿革的な事情や厚生年金、恩給等長期保險制度との関係もあるので、取敢えず被保險者とはするが、保險料の徴收や保險給付は行わないことにした。將來社会保障制度が確立されるべきであると思うので、その前提的な意味でかくのごとき改正に止めた次第である。
かような答弁がありまして、質疑を終りまして、討論を省略して、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に温泉法案について御報告申上げます。
本法案は、去る六月の二十五日本委員会に本審査付託となり、同月の二十六日及び二十八日の両日に亘つて審議いたしたのであります。
先ず政府委員より提案理由及び法案の内容について説明がありました。その概況を申上げますと、我が國は世界に冠たる温泉國でありまして、古來温泉は國民の保養又は療養に廣く利用せられて参つたのでありますが、温泉地の発達に偉い、或いは濫掘とか、或いは温泉に関する権利関係が復雜を極め、各種の紛爭を起す等、いろいろの問題が出て参つたのであります。これらの問題を処理いたしまするために、從來都道府縣令を以て温泉に対する取締りを行なつて参つたのでありますが、新憲法の施行により、昨年末これら都道府縣令はその効力を失うことになつたのであります。よつてこの際、從來の都道府縣令の内容とするところを基礎といたしまして、これに若干拡充をいたしまして、温泉の保護とその利用の適正化に遺憾なきを期するために、ここにこの法案を提出せられたのであります。
次に本法案の内容を御紹介申上げますと、この法律案は全部で三十ケ條でありまして、先ず総則におきましては、この法律の目的と温泉の定義を規定しておるのであります。即ちこの法律の目的といたしましては、温泉を保護すると共に、その利用の適正を図りまして、公共の福祉の増進に寄與することにあるのであります。温泉の定義といたしましては、地中から湧出する温水又はガスで一定の温度を有するか又は一定の成分を含有しておるものを温泉と称することにいたしたのであります。次に第二章におきましては、温泉源を保護するために必要な事項を規定しておるのであります。第三章におきまして、温泉の利用の適正を図つて公共の福祉の増進に寄よせしむるに必要な規定を設けております。次に第四章におきましては、行政処分を民主的にするために、温泉審議会に対する諮問と公開による聽聞に関する規定をいたしております。尚最後に附則におきましては、施行期日とその経過規定を設けておるのであります。
以上が本案の内容の大要でありますが、次に本法案について委員会における質疑の主なるもの一二だけを申上げますと、第一に、本法案の第五條によつて許可を取消したものが、公益に必要ある場合の再許可をどうするのであるか。これに対して、公益に必要あるものについては最初から許可を取消すなどというようなことはあり得ないから、その事例はないと思うとの答弁がありました。次に、温泉利用者に健康者と疾病者とがあるが、両者が同一のものを利用するのは衛生上不適当であるが、これについて何か取締りをする方法はないか。これに対しましては、政府といたしましてはその部面については公衆浴場法によつて取締つて行くつもりであるとの答弁がありました。次に、温泉熱を工業用等に利用する場合にはどうするのであるかとの質問に対し、これは地方商工局長と協議をしてその万全を期して行くつもりである。次に本法は温泉そのものを保護しておるようであるが、公共福祉の増進に寄與する点が明確でないではないか、この点について次の四つのことを明らかにすべきである。即ち第一、温泉利用の適正と公共福祉の増進に関する対策はどうであるか。第二に、温泉源の保護よりむしろ温泉営業者を保護する結果となりはしないか。第三に、温泉療養者が眞に療養のため利用できない実情にあるがどう思うが。第四に、温泉が権利のように取扱われておる現状では、独占的な傾向になるので、許可には十分考慮する必要があるが如何。右の質問に対しまして、温泉対策は從來主として警察命令によつて來たのであるが、今後は單に取締だけではなく、積極的に利用増進を図つて行くつもりである。第二点は、温泉源の保護を第一に考えておる。即ち濫掘を防止すると共に、その利用の適正を考慮しておる。温泉の既得権者についても、公共の福祉のために必要であるときは、採取を制限し、調整する等の途を図るのである。第三の点は、療養のための温泉利用についても、学問的研究の成果と相俟つて対策を講じて行くつもりである。第四点は、温泉が権利として取扱われておるのは否めない事実であるが、慣習その他地方的な事情もあるので、今物権として温泉権を設定することは適当でないので、今後の研究に俟ちたい。温泉法施行前の取扱については、附則によつてこれを処理するつもりであるという答弁がありました。
かくて六月二十八日の委員会におきまして質疑を打切り、討論を省略して原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたした次第であります。
次にへい獣処理場等に関する法律案について御報告申上げます。從來へい獸処理場の衞生取締りは、各都道府縣令によつて行われて來たのでありますが、昭和二十二年法律第七十二号、日本國憲法施行の際、現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の規定によりまして、これらの都道府縣令はその効力を失うに至り、且つ各都道府縣令による取締りを以ていたしましては、その取縛りの対象、方法等が一定していないため、取締の徹底と指導の適正等を十分行うことが困難であり、公衆衞生上遺憾の点がありましたので、この際統一的な基準を定めまして、これらの衞生取締を徹底化するため、この法律案を提出せられたのであります。
本法案につきましては、六月の二十七日委員会において審議いたしたのであります。今質疑の主なるものを一二申上げますと、本法の規定するところの獸畜以外の犬、猫のごとき小動物に対する衞生取締りは規定してないが、それはどうか。それは軽犯罪法によつて取締ることに委して行くつもりである。その次に、それであるならば、動物園の動物、象、獅子、虎、熊等については本法は適用されないのか。これらのものは特殊のものであるから本法は適用されない。この点は指導面において取締つて行くつもりであるとの答弁がありました。次に、牛馬等一頭を收容し、又は飼育するものにもこの法律は適用せられるかとの質問に対しまして、これは同樣にこの法律の適用を受けるのであるとの答弁がありました。その他数点の質疑がありました後、質疑を終りまして、討論を省略して原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
最後に、あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法に関する特例案について御説明申上げます。この特例案は本院小林勝馬君の提出になるものでありまして、先ず本案提出者の小林勝馬君より提案理由の説明がありました。その概要を申上げますと、あんま、はり、きゆう、柔道整復等営業法の施行準備期間は僅かに十日間であつたために、各府縣におきましては、従前の法令によつて受験資格を有する者に対する措置として、急遽その資格試験を行なつたのでありますが、遠隔の地におつてその施行を知らず、又は病氣その他の事故のために受験し得なかつた者が相当数に達しておる、同等の能力と経驗を有しながら受驗の機会を失つたために、同法附則第十七條の経過規定による救済に浴せず、そのために今後の生計の道に迷つておる者があることは、公平の原理にも悖り、又本人達に取つても誠に同情すべきものがあるので、この法案を提出したのである。本案施行の日において、学歴経驗等の條件を満たしておる者で受驗資格のある者に限つて、今一度試驗を施行し、合格した者に対しては、同営業法附則第十七條と同樣の救済の途を開く必要があるとの説明があつたわけであります。尚政府当局より、施行準備期間を十日間としたのは、短期間であつたことは認めるが、余り多数の者はないと思つていたので、その措置を考慮いたさなかつたのであるが、そのような実情にあるならば、本案提出に何らの異存はないのであるとの意見が表明せられました。
本案は二條と附則より成り、その内容も極めて簡單であり、且つ又本案提出も妥当なものでありますので、厚生委員会におきましては、質疑、討論を省略いたしまして、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/22
-
023・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) これより採決をいたします。先ず健康保險法の一部を改正する法律案、へい獣処理場等に関する法律案、あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法に関する特例案、三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を請ひます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/23
-
024・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/24
-
025・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 次に、温泉法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/25
-
026・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/26
-
027・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 日程第九、國家公務員法第十三條第二項及び地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、臨時人事委員会の地方の事務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。決算委員長下條康麿君。
〔下條康麿君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/27
-
028・下條康麿
○下條康麿君 只今議題に上りました臨時人事委員会の地方事務所設置に関し國会の承認を求めるの件につきまして、決算委員会の審議の状況を御報告申上げたいと存じます。
この案件は、近く國家公務員法が施行せられるに当りまして、臨時人事委員会の事務を分掌せしめるために、同委員会の地方事務所を札幌、仙台 東京、名古屋、大阪、廣島、高松及び福岡の八箇所に設置いたしまして、それぞれの地域におきます國家公務員の職階制度の調査、試験の施行等の事務を行わせようとするものであります。國の中央行政機関の地方出先機関の整理が今問題となつております今日、かような地方事務所を設けることはどうかという質問があつたのでありますが、この案件の目的とする地方事務所は事実必要がありますのみならず、その規模を見ますると、一箇所に二級官の所長が一名、三級官の所員を五名ずつ配置するに過ぎない小規模のものであります。而もその人員や経費は、悉く中央のものを地方へ差廻す程度でありまして、新たに増員とか増額ということはないのでありますから、これは別に今問題になつております出先機関の整理ということに関係なく決定してよかろうということでありました。國会としてはこれを承認することが適当であるということに決定いたしたのであります。誠に簡單でありますが、以上委員会の経過を御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/28
-
029・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。委員長報告の通り本件に承認を與えることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/29
-
030・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつて本件は承認を與えることに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/30
-
031・松平恒雄
○議員(松平恒雄君) この際、日程第十、第十一の請願及び日程第十二、第十三の陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/31
-
032・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。司法委員会理事岡部常君。
〔岡部常君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/32
-
033・岡部常
○岡部常君 只今上程になりました請願第九百六十二号外一件、陳情第百六十七号外二件の司法委員会における審議の経過及び結果について御報告申上げます。
先ず登記事務の簡易化等に関する請願第九百六十二号の趣旨は、現行の登記申請手続は極めて複雑で、一般民衆の不利迷惑は言語に絶するものがあるから、実質の影響のない形式的な手続を今少し簡易化して欲しい。又不動産登記について添附する書類は市町村役場より発給せられるものが非常に多いから、不動産登記事務は市町村に移管することが適当である。寄留法は現実に即せず、励行されておらんから廃止すべきであるし、各種の願書、届書類に対する進達期間処理期間を制定して、事務の澁滯を防いで貰いたいというのであります。
次に、工業所有権の確保に関する請願千十三号の趣旨は、工業所有権の問題は、個人の権益だけでなく、國民経済に及ぼす影響は極めて重大であるから、特許法、実用新案法、意匠法、商標法の審判事件等に関する特許局の抗告審判に対する不服事件の審判に当る東京高等裁判所に、技術的な知識経験を有する判事を置いて、公正な審判によつて工業所有権の確保を期せられたいというのであります。
陳情第百六十七号及び陳情第二百二十七号は、いずれも弁護士法改正問題についての陳情でございまして、近く國会に弁護士法の改正案が提出せられる由であるが、傳えられるところによれば、判檢事は退職後二年間、前任地において弁護士の開業が認められず、又特別任用の簡易裁勢所の判事及び檢察官に対しては、弁護士となる資格を認められないとのことであるが、第一の点は、職業の自由についての憲法の規定に違反する疑いもあり、法曹一元化の理屈にも反し、判檢事をやめて弁護士となろうとする者の生活権に対する重大な脅威でもあり、民主主義と逆行するものである。又第二の点についても、裁判官、檢察官として実務に從事し、その実力を備えている者であるから、一定の制限の下に弁護士となり得る資格を認めて貰いたいという趣旨でございます。
最後に、刑事訴訟法改正案に関する陳情第四百三十八号は、日本弁護士会連合会長海野普吉君の提出でございまして、今國会に提出されておりまする刑事訴訟法改正案によりますると、事実審理は第一審限りとなつております。又公判中心主義を徹底しておりまするので、この改正案が國会を通過いたしますると、法廷の設備の拡張、裁判官、檢察官その他の職員の増員を図らなければならないし、改正案の内容が現行法に比して優れているといたしましても、我が國の現在の財政上の見地から、物的、人的施設を整備することができるかどうか疑わしい点もありまするから、改正案の実施に遺憾のないよう本案の審議を愼重にせられたいとの趣旨でございます。
委員会におきましては、各件とも愼重審議いたしたのでありまするが、刑事訴訟法改正案は目下國会で審議中でありまするし、弁護士法改正案も近い中に國会で審議される筈であり、又登記事務の簡易化、工業所有権に関する抗告審判に対する東京高等裁判所の処理の問題も、それぞれ法律の改正に当つて國会の審議の対象となる事柄でございまするので、今後における関係法案の審議に際しまして、これを十分参考としまして研究することといたし、その意味におきまして、これを採択いたしまするが、内閣には送付することを要しないものと決定いたしたのであります。右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/33
-
034・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は、委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を請います。
〔起立巻多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/34
-
035・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
〔岡部常君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/35
-
036・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 岡部常君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/36
-
037・岡部常
○岡部常君 内閣に送付することを要しないということに決定いたしたのであります。
〔「委員長報告通りに採決を希望いたします」「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/37
-
038・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 改めて採決をいたします。これらの請願及び陳情は委員長報告の通り採択することに賛成の諸君の起立を請います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/38
-
039・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択することに決定いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/39
-
040・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) この際お諮りいたします。本日、帆足計君より決算委員を、渡邊甚吉君より予算委員を、それぞれ理由を附して辞任の申出がございました。いずれも許可をいたして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/40
-
041・松平恒雄
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として帆足計君を予算委員に、玉置吉之丞君を決算委員に指名いたします。これにて本日の議事日程は終了いたしました。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
午前零時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100215254X05519480629/41
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。