1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十三年十一月十一日(木曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 角田 幸吉君
理事 木村 公平君 理事 松澤 兼人君
理事 長野重右ヱ門君 理事 玉井 祐吉君
淺利 三朗君 中野 武雄君
根本龍太郎君 赤松 勇君
菊川 忠雄君 島上善五郎君
前田 種男君 生悦住貞太郎君
高橋 禎一君 最上 英子君
吉田 安君 船田 享二君
水野 實郎君 相馬 助治君
徳田 球一君
出席政府委員
臨時人事委員長 淺井 清君
臨時人事委員 山下 興家君
総理廳事務官 岡部 史郎君
本日の会議に付した事件
國家公務員法の一部を改正する法律案(内閣提
出第七号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/0
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001・角田幸吉
○角田委員長 それではこれより開会いたします。
前会に引続き國家公務員法の一部を改正する法律案を議題としてその審査を進めます。前会内閣総理大臣より提案理由の説明を聽取いたしましたのでありますが、なお詳細にわたりまして、政府委員より説明するということに相なつております。ただいまよりその説明を求めます。淺井人事委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/1
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002・淺井清
○淺井政府委員 ただいま議題となりました國家公務員法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げたいと存じます。
國家公務員法は、御承知のように新憲法の精神にのつとりまして、新しい基盤の上に國家公務員制度を打立てるために、國家公務員たる職員につきまして適用すべき各般の根本基準を確立いたしまして、職員がその職務を遂行にあたりまして、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で選択し、かつ指導すべきことを定めておりまして、もつて國民に対し、公務の民主的、かつ能率的な運用を保障することを目的といたしまして、昨年秋第一回國会において制定せられたものでございまして、本法施行に必要な諸般の準備のための期間を経ました後に、去る七月一日から全面的施行を見るに至つたものでありますが、同法施行後、わずかに数箇月を経ました今日、同法の一部を改正する法律案をここに提出することになりましたので、その経緯と改正の要旨及び理由につきまして御説明申し上げたいと存じます。
この改正法律案を政府において起草し、このたび國会に提出いたしましたその最も重要な動機は、申すまでもなく去る七月二十二日付内閣総理大臣あてマツカーサー元帥の書簡であります。その書簡は、勤労を公務にささげるものと、私的企業に從うものとの間には、顯著な区別のあることを示したものでありまして、勤労を公務にささげるものは、公共の信託に対し無條件の忠誠の義務を負い、國民全体に奉仕する義務が負わされていることを明記いたしました。また公務員の爭議行為のような、政府を麻痺せしめんとするような行為は想像し得ないものであると同時に、許し得ないものでありまして、すべての政府職員は、普通に知られているいわゆる團体交渉の手段は、公務員の場合には採用できないものであることを理解せねばならないことを指示するとともに、しかしまた一方、この理念は公務員たるものが、みずからもしくは選ばれた代表を通じ、雇傭條件の改善を求めんがために、自由にその意見、もしくは不満を表明する個人的もしくは國体的の妨げられることなき権利を有しない意味ではないこと、及び國家の公益を擁護するために、政府職員に課せられた特別の制限があるという事実は、政府に対し席に政府職員の福祉並びに利益のために、十分な保護の手段を講じなければならぬ義務を負わしめていることが明らかにされているのであります。この書簡を受けました政府は、同書簡の趣旨に基き、とりあえず去る七月三十一日付をもつて臨時措置に関する政令を制定施定いたしまして、公務員の交渉権を制限し、爭議行為を禁止いたしますとともに、國家公務員法により設置されました臨時人事委員会をして、爾後、公務員の利益を保護する責任を有する機関とする等の、臨時の措置を講じたのでありますが、それと同時に、國家公務員法につきましては、これをマツカーサー元帥の書簡の指示するところに即應せしめるよう改正するため、政府は同書簡に基く最高司令部の助言によりまして、この法律案の起草を行つてきた次第であります。從いましてこのたびの改正法案は、あくまでも、書簡の精神と内容とに基いて起草されたものでありまして、このことは特に申し上げるまでもないことであります。
この改正法案によりますと、現行國家公務員法百二十五箇條中、全文改正三十二箇條、一部改正七十七箇條、新たに追加するもの十四箇條でありまして、現行法のほとんどすべての條文について、あるいは全面的に、あるいは一部分について改正が行われることになつておりますが、その改正の眼目となります要点は、おおむね次の三点に集約して御説明できると考えます。
まず改正の第一点は、特別職の範囲が縮小されました点であります。マツカーサー元帥の書簡にあります通り、國家公務員法は、本來日本における民主的諸制度を成功させるには、日本の官僚制度の根本的改革が不可欠であるとの事実の認識のもとに考えられたものでありまして、そういう意図のもとに、職員がその職務の遂行にあたり、最大の能率を発揮し得るように、民主的な方法で選択され、かつ指導さるべきことを定めたのでありますから、官僚制度の根本的な改革を行う上には、國家公務員法をできる限り廣く活用することが好ましいのであります。從いましてこの法案におきましては、政府的任命を特に必要とする職以外の職につきましては、これを可能な範囲において、廣く一般職といたした次第であります。
次に改正の第二点は、人事委員会の組織及び権限を強化いたしました点であります。御承知のように、國家公務員法の運営機関として、本年中には総理廳に人事委員会が設置されることになつているのでありますが、不偏不党、いかなる勢力の制肘をも受けることなく、嚴正公平な人事行政を行うとともに、國家公務員を福祉と利益との保護機関としての機能を果すためには、この委員会は、そのために必要とし、かつ十分な軽限が與えられるとともに、あとう限りの独立性が確保されることを、必要欠くことのできない要件といたしますので、これに関して所要の改正を行うことにいたした次第であります。すなわち、人事委員会を人事院と改め、從來内閣総理大臣の所轄のもとにあつて総理廳の一外局でありましたのを、内閣に置き、他の行政機関に対し独立性を與えるとともに、財政的にもある程度の独立性を與えようとするものであります。またこれに関連いたしまして、人事院規則の制定につきましては、從來内閣総理大臣の承認を経ることとなつておりましたのを、人事院が独立にこれを制定し得ることといたしますとともに、人事院が処置する権限を與えられている行政部門においては、人事院の決定及び処分は、人事院によつてのみ審査されることといたしたのであります。
次に改正の第三点は、服務の規律を強化した点であります。憲法にも明らかに規定されております通り、國家公務員は國民全体の奉仕者であつて、一部のものの利害の代表者であつてはならないのでありますが、この原則に徹しますためには、現行國家公務員法の規定ではなお不十分な点がありますので、所要の改正を行つた次第であります。すなわたまずマツカーサー元帥書簡の趣旨にのつとり、同書簡にいわゆる政府における職員関係と私企業における労働者関係の区別を明確にするため、國家公務員につきましては、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法等の規定の適用を排除し、政府に対する同盟罷業その他の爭議行為及び怠業的行為は、すべてこれを禁止するとともに、國家公務員に対し、オープン・シヨツプ制の原則に基く團結権を認め、また限られた範囲内においてではありますが、交渉権を認めたのであります。次に國民全体の奉仕者である國家公務員が、在職中において、いやしくもその公平と中立性を疑われることのないように、一切の公選による公職の候補者となることを禁止し、また政党その他の政治的團体の役員となることを禁止いたしますとともに、選挙権の行使を除くほか、人事院規則の定める政治的行為を行うことを禁止しようとするものであります。さらに、國家公務員の私企業からの隔離の必要性は、ひとりその企業を代表する地位につくことを制限するのみでは不十分と考えられ、これを合理的な範囲に拡張する必要がありますので、退職後二年間は、営利企業の地位でその退職前五年間に在職していた國の機関と密接な関係にあるものにつくことを禁止することにした次第であります。
以上において申し述べました三つの点がこの改正法律案の眼目でありますが、このほか試驗の方法、懲戒の手続、その他の事項につきまして、公務の能務的かつ民主的な運営に最も緊要と認められまする最少限度の改正を行うことにいたしておるのであります。その詳細につきましては、引続き御審議の進むに從いまして御説明申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/2
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003・角田幸吉
○角田委員長 なお引続き本案につきまして、その改正のおもなる要点に関して説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/3
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004・岡部史郎
○岡部政府委員 ただいま臨時人事委員長から申し上げましたごとく、本改正法律案を通じまして、國家公務員法百二十五箇條のうち、全文改正の箇所が三十二箇條、新しく附加された部分が十四箇條、一部改正の箇所が七十七箇條にわたつておりますが、その概要を逐條的に御説明いたします。
まず人事委員会を人事院に改めましたのでありますが、これに関連してその他の名称についても変更がございます。すなわち人事委員長は人事院総裁に、人事委員は人事官に、事務局は事務総局に、事務局長は事務総長に、人事委員会規則は人事院規則にそれぞれ改めました。また從來の人事委員会が内閣総理大臣の所轄のもとに置かれることになつていましたのを改めて、今回内閣の所轄のもとに人事院を置くことといたしたのでありますが、これに應じまして、從來の法文中「内閣総理大臣」とあります箇所は「内閣」と読みかえることにいたしました。
次に第一條につきましては、括孤の中で「此の法律で國家公務員には、國会議員を含まない。」という規定がありましたのを削りまして、新たに四つの項を加えております。すなわち第二項として、この法律が日本國憲法第七十三條に規定する官吏に関する事務を掌理する基準を定めたものであることを明らかにし、第三項において、何人もこの法律や人事院規則または人事院指令に違反したり、あるいはその施行を妨げてはならぬ旨の規定を設けました。さらに第四項第五項におきましては、この法律のある規定が努力を失い、または無効とされても、この法律の他の規定または他の関係における適用はその影響を受けないこと、並びにこの法律のある規定が、從前の他の法律の規定と矛盾、抵触する場合には、この法律が優先することを規定いたしました。
次に、すでに御承知のごとく國家公務員の職は、特別職と一般職とに分類されるのでありますが、本改正案におきましては、特別職を整理いたしまして、この法律の適用範囲を拡大することにいたしますとともに、人事院はある職が國家公務員の職に属するかどうか、及び一般職に属するか、特別職に属するかを決定する権限を有すること、及び政府またはその機関が、外國人と個人的基礎に基く勤務の契約をする場合を除いては、政府は一般職及び特別職以外の勤務者を置いて、これに給與を支拂つてはならない旨の規定を設けております。
次に人事委員会を人事院に改称致しましたことは前にも一言いたしましたが、名称の変更のみならず、その内容にも相当の改正をいたしてございます。すなわち從前は、内閣総理大臣の所轄の下に人事委員会が設けられておりまして、人事委員長を命ずること、人事委員の彈劾の訴追、その他人事委員会が國家公務員法に基いて行う種々の意見の申出、報告、勧告等はすべて内閣総理大臣により、あるいは内閣総理大臣に対して行われておりましたのでありますが、これを改めまして、内閣の所轄のもとに人事院を置き、意見の申出、勧告、報告等は、國会、内閣、または内閣総理大臣にすることにいたしますとともに、人事院総裁の任命、人事官の彈劾の訴追を内閣において行うことにいたしました。さらに人事院の独立性を明確にするためその権限を強化し、かつこれを具体的に規定し人事行政の民主的かつ公正な運営を期している次第でございます。すなわち人事院は人事官三人をもつて構成されるのでありますが、その資格要件を嚴重にいたしますとともに、その身分の保障を規定し、その給與に関しましても國務大臣と同じ基礎に基くものでなければならぬこと、及び他のいかなる官職をも兼ねてはならぬ旨の規定を設けました。また今事院は、事務総長及び予算の範囲内において、その職務を適切に行うため所要の職員を任命し、かつその内部機構を管理することといたしました。なお、國家行政組織法は人事院に関しては適用されないことといたしております。さらに人事院の予算につきましても、昭和二十七年三月三十一日までは應急予備金を持つことができますのみならず、内閣が人事院の経費の要求を削減する場合には、人事院の要求書は内閣により修正された要求書とともに、これを國会に提出しなければならぬ等、機構的にも、財政的にも、他の行政官廳と異つた地位を與えている次第でございます。さらに從來は人事委員会は、内閣総理大臣の承認を経て人事委員会規則を制定することができたのでありますが、本改正案におきましては人事院規則の制定について、内閣総理大臣の承認を不要といたしましたほか、新たにこの法律に基いて人事院規則を制定し、またはその他の措置を行うことができる事項について、人事院規則がない場合及び人事院規則を実施するため、人事院指令を発することができるようにいたしたのであります。
以上述べましたような人事院の行政的または機構的改正と相まちまして、その権限も單なる勧告的なものだけでなく、指示し、監理し、あるいはまた一定の措置を講ずる権限を認めますとともに、人事院の所掌事項も、明確かつ具体的に規定いたすことといたした次第でございます。しかも人事院が処置する権限を與えられている行政部門においては、人事院の決定及び処分は、その定める手続によつて、人事院によつてのみ審査されることとし、これに行政部門における最終決定権を認めることといたした次第であります。また人事院はこの法律の目的達成上、法令の制定改廃に関して、國会や内閣に意見を申し出たり、あるいは人事院規則の制定改廃や人事院指令を発したり、あるいは法律規則の解釈またはその他の事項について助言を行つたり、さらに訴訟の当事者となるような場合もあり、高度の法制的知識を必要することが多いので、法律顧問を置くことができる旨規定を設けました。
次に從來は人事委員会にその権限に属する事項の庶務をつかさどるために事務局を設けていたのでありますが、これを事務総局といたしまして、その機構を拡充いたし、この法律の目的達成に遺憾なからんことを期しておるのであります。なお事務総局の組織につきましては、人事院規則で規定し得ることといたしました。事務総長につきましても、從來は事務局長は人事委員長の指揮監督を受け、事務局の局務を掌理し、かつ人事委員会議の管理及び人業主任官会議の議長となる旨の規定があつたのでありますが、本改正法案におきましては、事務総長は人事院総裁の職務執行の補助者であり、かつその一般的監督に服することとしますとともに、その有する責任と権限と具体的に明記いたしました。その上事務総局は次官と同じ基礎に基く給與を受けるのでありますが、人事官と同じように他のいかなる職を兼ねることも禁止されております。
次に官職の基準に関する規定の改正について申し上げます。申し上げるまでもなく人事行政が民主的にかつ最大の能率を発揮するように運営されますかどうかということは、前に述べましたような人事院の適切な活動とともに、この官職に関する基準をいかに規定するかということが重大なかぎでございますとともに、この点に関しましては、國家公務員全体、ひいては國民一般にとつても非常に関心事でございますので、職階制、試驗、任免、給與、能率、分限、懲戒、保障、制務等の事項について所要の改正をいたしまして、本法の趣旨の達成に遺憾なきを期した次第でございます。
まず通則について申し上げますと、平等取扱いの原則を徹底いたしまして、人種、信條、性別、社会的身分によつて差別的取扱いをしてはならぬと同時に、この法律の第三十八條第五号に規定する場合、すなわち日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法またはそのもとに成立した政府を、暴力で破壞することを主張する政党、その他の團体を結成し、またはこれに加入したものの場合を除きましては、政治的意見や、政治的所属関係によつても差別してはならないことといたしました。またこの法律に基いて定められる給與、勤務時間その他の勤務條件に関する基礎事項は、國会により社会一般の情勢に適應して変更されることとし、それらについては人事院は勧告を怠けつてはならない旨の規定を設けたのでございますが、このことは現在のような経済の変動期において、單に國家公務員の生活を確保するということだけでなく、あとで述べますような服務や能率ということとも関言いたして來るわけでございます。
さらに人事院は毎年少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて調査し、その結果を國会と内閣に報告いたしましたり、あるいはまた給與を決定する諸條件の変化により、給與を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、國会及び内閣に適当な勧告をしなければならぬのでございます。
またその給與はあとに述べますように、官職の職務と責任の程度に應じて決定されるわけでありますがゐその決定にあたつては、生計費や民間における賃金その他の事情が考慮されることとなつており、その支拂いは人事院規則及び人事院指令に從つて行われ、かつ人事院がこれを監理することといたしておるわけでございます。
次に職階制について申し上げます。そもそも職階制度の最も基本的な概念をクラスということでございます。從來は此の語を「職種及び等級を同じくする官職」というふうにいつておりましたが、これを「職級」という言葉を用いることにいたしますとともに、この法律に規定する職階制と、政府職員の新給與実施に関する法律との関係及びその効力についての規定を設けました。
次に試驗及び任免の事項について申しますと、職員の任用はこの法律及び人事院規則に從つて行われますが、それはその者の受驗成績、勤務成績、その他の能力の実証に基いて行うこと。さらに職員の免職は法律に定める事由に基いて行われなければならぬことといたしました。また職員の昇任につきましては、受驗者の範囲を拡げまして、その官職より下位を官職の在職者の間における競爭試驗によるものといたしました。
さらに人事院は任用のための試驗に関して、その職権により、あるいは人事院規則の定めるところに從つて、臨機の措置をとることができるように規定いたしました。また從來は人事行政上の用語等の定義を、この法律の中で規定しておつたのでありますが、今後これらの用語の定義説明及び使用等については、人事院規則で規定することといたしておる次第でございます。
次に任命権者についてでありますが、改正法はその範囲を明確にし、任命権は、原則として内閣、各大臣、会計檢査院長及び人事院総裁並びに各外局の長に属するものとしました。しかしてその任命権は、部内の機関に属する官職に限られることにいたし、また任命権者がその部内の上級職員に任命権を委任する場合には、その効力が発生する日の前に、これを人事院に提示しなければならないことにいたし、さらにこの法律、人事院規則及び人事院指令に定める要件を備えない者に対しては、いなかる任命権も行使し得ない旨を明らかにいたしました。
なお採用候補者名簿による職員選択の範囲につきましては、技術的考慮も加えまして、昭和二十六年七月一日までは、人事院において高点順の志望者四人以内に制限し得ることにいたしたのであります。
次に職員の給與、恩給及び補償制度等に関するおもな改正を申し上げますと、まず給與に関しまして、第一に給與準則に規定すべき事項として、扶養家族の数を加えましたこと、次に給與簿に関して必要な事項を、もつぱら人事院規則で定めることにいたしたことであります。
第二に恩給制度でありますが、これは健全な保險数理の基礎の上に定められなくてはならないこととし、さらに第三点として、補償制度の立案のみならず、その実施につきましても、人事院において行うことといたしました。
次に職員の分限、制務、懲戒、保障等に関するおもな改正点を申し上げますと、任命権者が職員の休職、免職、復職、退職等のことを行う場合には、この法律及び人事院規則によらなくてはならないという規定を加えたのであります。さらに職員がその意に反して降任され、休職され、または免職される事由を、法律及び人事院規則で定めることにいたしました。
次に休職についてでありますが、まず休職の期間を人事院規則で定めることとし、次に休職中は原則として、職員は給與を受けることができないことにいたしました。
さらに職員の離職に関する規定はこの法律及び人事院規則で定めることにいたしております。
次に懲戒に関しましては、まず懲戒権者でありますが、これは從來のごとく任命権者でありますが、人事院もまだこの法律に定められた調査を経て、職員を懲戒手続に付することができることにいたしております。
懲戒手続に関しましては、從來のごとく刑事裁判所の手続に優先権を認めることを廃しまして、懲戒に付せらるべき事件が刑事裁判所に係属する間におきましても、人事院または任命権者は、同一事件につきまして適宜に懲戒手続を進め得ることとし、また同一事件に関する懲戒処分は、刑事上の責任を免れしめるものでないことを明らかにいたしました。
制務について申し上げますと、まず勤務成績の優秀な職員に対する表彰、及び成績不良者に対する矯正の方法に関しては、人事院において、これに対する適当な措置を講ずることにいたしております。
職員の勤労條件に関する行政措置の要求等に関する審理につきましては、公正を保持する見地からいたしまして、その審理及びこれに基く処置を人事院の職権とし、またこの審理の判定は、すべて人事院のみによつて最終の判定が下されることにいたしました。
さらにこの審理におきましては、職員が人事院から要求された情報の陳述または証言を行うには、職務上の祕密を守る義務から免れ得ることとし、この陳述または証言を拒んだ者には、この法律の罰則が適用されることとして、その実効性を期することにいたした次第であります。
次に重要な点といたしましては、職員の組合その他團体に関する規定を加えたことでありまして、その概要を御説明申し上げますと、まず組合その他職員の團体組織は、オープン・シヨツプ制をとることといたし、この組織を通じて職員はその代表者をみずから選び、勤務條件及びその他社交的、厚生的活動等の適法な目的のため、人事院の定める手続に從つて当局と交渉することができることを明確にいたしますとともに、職員がこれらの團体に関する正当な行為をしたことのために、不利益な取扱いを受けない旨、明らかにいたした次第であります。また、たとえ職員がこのような職員の團体に属していない場合でも、不満を表明し、または意見を申し出る自由は十分保証することといたしました。さらに警察職員等に対しましては、前述の組合その他の團体を結成し、またはこれに加入することを禁止いたしたのであります。
なお、職員の爭議行為及び怠業的行為は一切これを禁止し、これに違反したときは、政府に対して雇用上の権利をもつて対抗することができないことといたしたのであります。
さらに、職員として服務を專念せしめるための諸規程を改正いたしまして、まず職員は人事院によつて認められた場合以外は、勤務時間中、職員團体のための事務を行うことを禁止し、かつ官職の兼職を原則として禁止いたしました。
さらに、職員の政治的行為の制限を強化いたしまして、まず公選による公職の候補者または政党その他の政治的團体の役員、政治的顧問その他これらと同樣な役割を持つ構成員となることは一切認めないこととし、また選挙権の行使を除くほかは、人事院規則で定める政治的行為をしてはならないことといたしました。
また職員の営利企業からの隔離を嚴格にいたしまして、離職後二年間は営利企業の地位で、その離職前五年間に在職していた國の機関と密接な関係のあるものに就職することを、禁止いたしました。
その他の改正点といたしましては、罰則を強化いたしましたこと、及びこの法律施行後、臨時的の任用とされる者の範囲を廣くいたしましたこと、並びに昭和十六年七月一日以前においては、人事院は都、道、府、縣、市、その他の地方公共團体の人事機関の設置及び運営について、協力し得るようにいたしましたこと、さらに労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、船員法、及びこれらに基く命令は、一般職に属する職員には適用しないことにいたしましたこと等がおもな点であります。
なお、改正法附則として規定されております事項を概述いたしますと、大要次のごとくであります。
まず人事院の應急予備金につきましては、昭和二十四年度の会計年度からこれを適用することといたし、次に職員で現に公選による公職にある職員は、昭和二十四年二月一日前にその公職を退ない限り、その日において官職を失うことにいたしました。
次に一般職に属する職員の勤務條件に関しましては、別に法律が制定実施されるまでの間は、この法律の趣旨に矛盾しない範囲内において、労働基準法及び船員法、並びにこれらに基く命令に規定を準用することにいたし、一般職に属する職員を主たる構成員とする現在の労働組合は、これを人事院に登録せしめて、組合その他職員の團体として引続き存続せしめることとし、これに関し必要な事項は、法律または人事院規則で定めることといたしました。
次に、公共職業安定機関に勤務する職員、及び政府の海上企業に從事する船員の人事に関しましても、國家公務員法の規定に合致するように、職業安定法及び船員職業安定法の一部に対し、それぞれ所要の改正をいたしました。
なおこの改正法律施行によつて、さきに公布されました昭和二十三年政令第二百一号は、國家公務員に関しては失効することに定めたのであります。
國会及び裁判所の職員につきましては、昭和二十六年十二月三十一日まで、この法律の定める一般職に属する職員とすることといたしました。
最後に、從來定められて居りました官吏懲戒令、高等試驗令、高等試驗委員及び普通試驗委員会官制、一級官吏銓衡委員会官性、二級事務官銓衡委員会官制、昭和二十年勅令第七十七号等の勅令、並びに高等試驗会員及び普通試驗会員臨時措置法及びこれらに基く命令は、この法律施行の日から廃止することといたしました。
以上をもつて、本改正法律案の趣旨の御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/4
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005・角田幸吉
○角田委員長 これにて本案の趣旨についての政府の説明は終りました。
ただいま労働委員会から本案について連合審査を進められたき旨の申し出がありましたので、この際暫時休憩して、これを理事会にはかりたいと思います。暫時休憩いたします。
午前十一時四十八分休憩
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午後零時五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/5
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006・角田幸吉
○角田委員長 それでは休憩前に引続き会議を開きます。
本日はこれをもつて散会いたします。次会は明十二日午前十時より開会いたします。
午後零時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100304548X00319481111/6
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