1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年五月二十一日(土曜日)
午後零時六分開議
出席委員
委員長 石原 圓吉君
理事 鈴木 善幸君 理事 玉置 信一君
理事 林 好次君 理事 砂間 一良君
理事 小松 勇次君 理事 早見 崇君
五島 秀次君 田口長治郎君
冨永格五郎君 二階堂 進君
西村 久之君 水野彦治郎君
委員外の出席者
農林事務官
(水産廳次長) 藤田 嚴君
專 門 員 小安 正三君
專 門 員 斎藤 一郎君
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本日の会議に付した事件
漁業法案(内閣提出第一八六号)
漁業方執行法案(内閣提出第一八七号)
水産物統制改善対策に関する件
請 願
一 丸山漁港修業の請願(原健三郎君紹介)(
第一三号)
二 古平船入濁の拡張並びに避難港指定の請願
(小川原改信君外二名紹介)(第一六号)
三 崎猟船溜築設費國庫補助の請願(鈴木善幸
君紹介)(第三一号)
四 牛根村に漁港築設の請願(前田郁君紹介)
(第七六号)
五 伊座敷港を漁港並びに避難港として指定の
請願(前田郁君紹介)(第七七号)
六 廣島市に瀬戸内海漁業調整事務局並びに國
立水産試驗場設置の請願(平田篤雄君紹
介)(第一〇七号)
七 漁港、船溜に対する國庫補助吊引上等に関
する請願(石原圓吉君紹介)(第一三九
号)
八 宮崎縣下の漁業者救済に開する請願(川野
芳滿君外五名紹介)(第一四〇号)
九 漁業法の一部改正に関する請願(八木一郎
君紹介)(第一四三号)
一〇 通山漁港築設の請願(川野芳滿君外四名紹
介)(第一五七号)
一一 羽幌漁港修築促進の請願(玉置信一君外三
名紹介)(第一八七号)
一二 焼尻漁港築設の請願(玉置信一君紹介)(
第一八九号)
一三 天賣漁港修築の請願(玉置信一君紹介)(
第一九一号)
一四 漁業制度改革に関する請願(石原圓吉君紹
介)(第二一〇号)
一五 暇屋漁港施設拡充の請願(保利茂君紹介)
(第二一五号)
一六 名議屋漁港施設拡充の請願(保利茂君紹
介)(第二一六号)
一七 落石漁港修築促進の請願(体好次君紹介)
(第二五九号)
一八 和田村の船溜築設費國庫補助の請願(奥村
又十郎君紹介)(第三二五号)
一九 政泊船人潤拡張工事費全額國庫負担の請願
(玉置信一君紹介)(第三三六号)
二〇 養蠣業に対する動力船用燃油のリンク制度
復活に関する請願(冨永格五郎君紹介)(
第三三七号)
二一 水橋町漁港施設拡充の請願(佐伯宗義君紹
介)(第三七四号)
二二 野田村に漁港築設の請願(鈴木善幸君紹
介)(第三七五号)
二三 大國熊毛地区の港湾築費國庫補助の請願(
二階堂進君紹介)(第三八〇号)
二四 沖浦漁港修築の請願(宮原幸三郎君紹介)
(第四一四号)
二五 常呂村字常呂ポントマリに船入開築設の請
願(松田鐵藏君紹介)(第四七一号)
二六 宇登港を漁港並びに避難港として修築の請
願(松田鐵藏君紹介)(第四七二号)
二七 漁業災害補償制度設定に関する請願外一件
(銘木善幸君紹介)(第四七三号)
二八 常呂村の鮭鱒養殖事業拡充等に開する請願
(松田鐵藏君紹介)(第四七八号)
二九 久慈漁港修築に関する請願(山崎猛君紹
介)(第五一八号)
三〇 日立漁港修築の請願(山崎猛君紹介)(第
五四三号)
三一 漁船保險対策に開する請願(石原圓吉君紹
介)(第五四四号)
三二 漁業用燃油等配給完全実施に関する請願(
石原圓吉君紹介)(第五四五号)
三三 根付漁業中に「ぼら寄魚業」を繰入れの請
願(石原圓吉君紹介)(第五四六号)
三四 全國水産連合会結成等に関する請願(石原
圓吉君紹介)(第五四七号)
三五 第二水産講習所を水産單科大学に措置の請
願(坂本實君紹介)(第六四六号)
三六 漁港施策樹立に関する請願(石原圓吉君紹
介)(第六四七号)
三七 法人の水産業協同組合加入に関する請願(
坂本實君紹介)(第六八三号)
三八 漁船保險制度存置に関する請願(石原圓吉
君紹介)(第七〇八号)
三九 漁業法の一部改正に関する請願(大柴滋夫
君紹介)(第七〇九号)
四〇 銃網代漁港修築の請願(鈴木幹雄君紹介)
(第八〇七号)
四一 漁業法の一部改正に関する請願(砂間一良
君紹介)(第八〇八号)
四二 名島に避難港築の請願(西村久之君紹介)
(第八八二号)
四三 漁業権に関する請願(砂間一良君紹介)(
第九〇二号)
四四 漁船保險精度存置に関する請願(砂間一良
君紹介)(第九〇三号)
四五 三石船入澗湖拡張工事施行並びに鳧舞船入
澗築設の請願(篠田弘作作君紹介)(第一
〇一三号)
四六 越賀村字荘田方海域に防波堤築設の請願(
石原圓吉君紹介)(第一〇四九号)
四七 小濱漁港拡張並びに改修の請願(奥村久十
郎君紹介)(第一〇五一号)
四八 通山漁港修築の請願(川野芳滿君外五名紹
介)(第一〇五二号)
四九 有珠船入潤改修の請願(篠田弘作君紹介)
(第一〇七七号)
五〇 内水面の専用漁業権撤廃に関する請願(守
島伍郎君紹介)(第一一四一号)
五一 漁区拡張に関する請願(塩田賀四郎君紹
介)(第一一四二号)
五二 漁港法制定に関する請願(志田義信君紹
介)(第一二一一号)
五三 八幡濱漁港修築工事継続施行の請願(小西
英雄君紹介)(第一二一二号)
五四 漁区拡張に関する請願(砂間一良紹介)(
第一二五五号)
五五 漁業権制度改正に関する請願(松田鐵藏君
紹介)(第一三一三号)
五六 安田町に漁業築設の請願(長野長應君紹
介)(第一三八六号)
五七 赤岡町池内の香宗川口に船溜築設の請願(
長野長應君紹介)(第一三八七号)
五八 鬼崎漁港修築費國庫補助の請願(久野忠治
君紹介)(第一六一七号)
五九 漁区拡張に関する請願(守島伍郎君紹介)
(第一六四二号)
六〇 室蘭港漁船及び機帆船繋留
施設築設の請願(篠田弘作君紹介)(第一
七四六号)
六一 追直船入潤築設の請願(篠田弘作君紹介)
(第一七五七号)
六二 漁業法の一部改正に関する請概(石原圓吉
君紹介)(第一七五九号)
六三 漁船技術員養成事業委託費増額等の請願(
鈴木善幸君紹介)(第一七六〇号)
六四 漁業法案に関する公聽会開催の請願外二件
(砂間一良君紹介)(第一七八一号)
六五 漁業制度改革に関する請願(砂間一良君紹
介)(第一七八二号)
六六 鬼鹿船人潤工事費全額國庫負担の請願(玉
置信一君紹介)(第一七八三号)
六七 両津漁港施設拡充に関する請願(風間啓吉
君紹介)(第一八〇四号)
六八 久美濱港修築の請願(前尾繁三郎君紹介)
(第一八〇五号)
陳情書
一 紀伊水道を瀬戸内海区より除外の陳情書
(第五三号)
二 新井田川河口に船溜設置の陳情書外一件
(第五六号)
三 漁業法並びに水産協同組合法の一部改正に
関する陳情書
(第七七号)
四 漁業手形制度実施の陳情書
(第九三号)
五 養殖水産用針金特配の陳情書
(第一二九号)
六 密漁取締強化に関する陳情書(第一四七号
)
七 漁業法並びに水産協同組合法の一部改正に
関する陳情書
(第一六五号)
八 紀伊水道を瀬戸内海海区より除外の陳情書
外二件
(第二六一号)
九 八幡濱漁港修築工事継続等の陳情書
(第四五二号)
一〇 漁業法改正案に関する陳情書
(第四六八号)
一一 漁区拡張に関する陳情書
(第五二七号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/0
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001・石原圓吉
○石原委員長 これより会議を開きます。
水産物の統制改善に関する件、水産常任委員会水産物集荷配給に関する小委員長より報告があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/1
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002・冨永格五郎
○冨永委員 五月十四日に水産常任委員会におきまして、統制撤廃を決議されておるのでありますが、その詳細な内容として、次の通り小委員会で大体きまりましたので、この機会に報告いたしたいと思います。
水産物の統制改善に関する件
一、要 領
(一)水産物の統制に原則として撤廃するも、四囲の客観情勢から直ちに統制撤廃が困難なる場合は國民大衆の食糧に重要なる役割をなす大衆漁並に水産物のみを統制するよう配給制度並に機構等を改善する。
(二)統制する魚類及び水産物を生産する業者には左の裏付けを絶対的に必要とする。
(イ)漁業資材及び燃油並に生産資材の確保
(ロ)漁業並に生産資金の融通
(ハ)漁價並びに水産物價格の適正
(ニ)関係諸税の軽減
(ホ)其の他必要な方法を完全に講ずること。
(三)甲級乙級指定陸揚地を廃し最小限度数の農林省直轄港指指定陛揚地を指定し其他の陸揚地は地方廳の指定とする。
(四)統制する水産物のリンク物資は百%になる様特別の措置を講じ、公平に配給し生産の増強を図ること。
二、出荷機関
(一)出荷機関に鮮魚及び水産製品を出荷する総合機関とする事を原則とするも暫定的に鮮魚及び水産製品の二本建とすることも出来る。
(二)出荷械関には水産業協同組合及び同連合会にして其の責任を十分果し得る設備及び其他の條件を具備したるものに優先的に推定するを原則とし又は生産者並に出荷業者及び水産業に関係ある者を以て組織する法人にして其の責任を十分果し得る設備及資金、人材等を有するものに指定する。但し既存の機関及び今後指定する機関等には行政指導により生産及び金融其の他を十分考慮し総合出荷機関として能力あるものに整理統合せしむる方策を講ずる。
三、荷受機関
(一)荷受機関は鮮魚及び水産製品を荷受する総合荷受機関に限定する。
(二)荷受機関に荷受業者及び漁業者並に水産物の生産者又は之等と関係ある者を以て組織する法人にして、其の責任を十分果し得る荷受能力、設備資金、人材等を絶対的に有する事を條件として指定する。但し既存の機関を行政指導により金融及び荷受能力、其他を十分調査し其の責任を果し得る機関にすみやかに整理統合を必要とする。
四、小賣版賣機関
(一)小賣版賣機関は鮮魚及水産製品総合版賣機関とし登録制を廃し、衛生取扱上支障なき設備及版賣機能等を有する者の届出により都市町村長が適当と認めるものに営業させる様にする。(生産者を含む)
(二)消費者の購入にクーポン制又はこれにかわる適当な方法に依り自己の欲する店舗より購入出来る事とする。
五、割 当
(一)出荷及荷受機関の割当の実施に当つては原則として鮮魚及び水産製品の総合割当制を採用し機動性をもつため其機関の計画の七〇%以内を責任数量として割当する但し水産製品原料の割当ハ別途これを考慮する。
(二)出荷割当責任数量完遂後の残量は出荷機関の申請により地方長官が指示し出荷を認める。
(三)農林省直轄港指定陸揚地の出荷機関に対しては農林大臣、其他の陸揚地より六大都市及び海なし縣等に出荷せしむる場合は農林大臣が地方長官に、同長官が出荷機関に出荷先及び数量等を割当指示し、右以外の都道府縣への出荷機関に付ては地方長官に於て割当指示するものとする。
六大都市等の出荷機関は生産者代表消費者代火及び配給業者代表を以て構成する。
(四)都道府縣の荷受機関に対する荷受割当は右に準ずる。
六、價 格
(一)統制水産物の價格は消費地の末端小賣價格一本建とする。
し荷受分荷機関から遠隔の地区、で運搬費其他止むを得ざる経費を要する場合は地方長官の認定した額を加算することが出来る様措置すること。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/2
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003・石原圓吉
○石原委員長 ただいまの富永小委員長の報告に対しまして御質疑はございませんか。——それでは本案を承認して委員会の決議とすることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/3
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004・石原圓吉
○石原委員長 それでは本案にただいま冨永委員の報告の通りに決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/4
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005・石原圓吉
○石原委員長 次に本日の日程の格請願はすでに審査いたしておりますので、本日は採決いたします。
日程第一ないし第五、第七、第一〇ないし第一三、第一五ないし第一九、第二一ないし第二六、第二九、第三〇、第三六、第四〇、第四二、第四五ないし第四九、第五三、第五六たいし第五八、第六〇、第六一、第六六ないし第六八の各請願は、漁港船だまり修築に関する請願でありますので、これを一活議題として採決いたします。
議題に供しました各請願は採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/5
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006・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/6
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007・石原圓吉
○石原委員長 次に日程第二一、第三八、第四四の各請願に漁船保險制度に関する請願でありますので、一括して議題に供します。
ただいま議題に供しました請願は採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/7
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008・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めてさよう決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/8
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009・石原圓吉
○石原委員長 次に日程第五一、第五四、第五九の各請願は漁区拡張に関する請願でありますので、これを一括して議題といたします。
ただいま議題に供しました各請願は、採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/9
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010・西村久之
○西村(久)委員 異議ではありませんが、もしほかに漁区改正の案が残つておりますならば、それも同様の取扱いを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/10
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011・石原圓吉
○石原委員長 ただいまの西村君の申出のように取扱うことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/11
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012・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めさように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/12
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013・石原圓吉
○石原委員長 次に日程第六、第八、第二〇、第二七、第二八、第三二、第三四、第三五、第三七、第五二、第六三の各請願を一括して議題に供します。
ただいま議題に供しました各請願は採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/13
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014・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めさよ決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/14
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015・石原圓吉
○石原委員長 残余の日程の各請願は漁業法案に関するものでありまして、でき得る限り請願者の意思を尊重して採決したいのでありますけれども、本法案が可決されないのでありまするから、やむを得ずこれを延期をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/15
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016・石原圓吉
○石原委員長 次に陳情書、日程第一ないし第一一を一括議題として採決いたします、日程第一ないし第一一の各陳情書はいずれも委員会において了承するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/16
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017・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めさよう決します。
なお本日採択いたしました各請願に対する衆議院規則第八十六條による報告書の件は、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/17
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018・石原圓吉
○石原委員長 御異議なしと認めさようとりはからいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/18
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019・石原圓吉
○石原委員長 次に漁業法案を日程に上します。富永君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/19
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020・冨永格五郎
○冨永委員 今度御提案になりました漁業法の精神いかん。その内容等につきましては、全國漁業者が重大な関心を拂つておることにもちろん当然でありまするが、私どもこの内容をしさいに檢討いたしました場合に、少くもそのねらいどころは大体二つの大きな点に集中されておると思います。一つは生産増強であり、一つは漁業の民主化であろうと考えられるのでありまするけれども、この生産の増強と漁業の民主化に、少なくとも表裏一体の形において推進されて行かなければならならないことはもちろんでありまするが、しかしながらこの漁業法を通じて監督いたしまする点から行きますると、必ずしもこれが並行し推進されるものとは考えられない点が多々あるのでありまするが、この点生産増強と漁業の民主化の二大眼目とする政府の所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/20
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021・藤田嚴
○藤田説明員 今回の漁業制度改革の根本的なねらいは、ただいま御意見のございました漁業生産増強と、漁業の民主化の二大目標であるわけであります。私どもといたしましては、漁業生産力の発展ということと、漁業民主化の問題は、やはり同時に解決して行かなければならぬというふうに考えておるのであります。ただ漁業生産力の発展と申しますことは、これはもちろん漁獲絶対量が増加をして行く方向に行くわけでありますが、私どものねらいは、從來の漁業権は、ただ一経営單位の、つまり個々の権利の生産力ということを考えておるわけであります。私どもの今回のねらいは、一定水面の総合的な高度利用、こういうような見地からこの漁業の生産力の問題を取上げて行きたい。從つてかりにある一定の漁業権について見れば、それは若干生産力が低下する場合でありましても、それによつて他の漁業が入れることができ、またそれによつて他の漁業がまた考えられるということによつて、全体としての総合的な生産力が増強する場合であれば、そういうふうな方向をとりたいと考えておるわけであります。これはやはり漁業の民主化と、生産力の問題というものは、具体的な実例になりますと、御説のように非常にむずかしい問題が出て來ることも考えられるのでありますが、やはり私どもの考え方としては、漁業の民主化の基盤の上に、初めて漁業生産力というものが発展し得ると考えるわけであります。これはやはり同時に考えて行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/21
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022・冨永格五郎
○冨永委員 ただいまの御答弁によつて、大体今度の漁業法のねらいは二大眼目に集中されるものであり、漁業生産力の発展と漁業の民主化であるという点は明らかにかになつたのでありますが、しからばその漁業法中の一体どういう点が漁業生産力を発展せしめることに重点か置かれておるか、あるいは漁業法中のどの條項がそこに適合するものであるかという点を、御明示願いたいと思うのであります。同様にまた漁業法中のどの條項が漁業の民主化をにかる上において、その中心をなしている條項であるかという点をお伺いいたしたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/22
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023・藤田嚴
○藤田説明員 漁業生産力の増強の問題につきましては、今回の漁業法の改正案では、水面の総合的な高度利用をはかる見地からいたしまして、漁業調整委員会というものを各海区ごとに設置をいたしまして、その調整委員会によつて漁場の総合的な高度利用の計画を立てて行く。そして免許をいたします場合に、從來でございますと、申請者の方からここに漁業権を免許してもらいたいという申請を出して来るわけでありますが、今回はそうでございませんので、ます計画を先に立てて、そして大体ここと、ここと、ここにこういう漁業権を許したいと思うというふうに、大体漁業区域を事前に決定をいたしまして、それを公告する。その公告に從つて免許を受けだいという申請者の申請を受付けまして、それが多数ございます場合に、適格性と優先順位という二つの面からこれを判断する。その調整委員会の意見に從いまして、知事が免許するというやり方を私どもとしては考えているわけであります。それによつて一定の水面の総合的な高度利用の計画をまず立てて、全体の漁業生産力を上げて行くというふうにもつて参りたいと考えているわけであります。それに必要な規定が載つているのであります。
それから漁業の民主化の問題でございますが、この漁業法だけでは解決し得ない、他の施療と相伴いまして解決をしなければならない問題もたくさんあると思うのであります。大体漁業の民主化の内容はどういうことであるか、これを逆に申しますと、現在唱えられておりますところの、漁村の封建性というものはどういう点にあるかということが、問題になると思うのであります。大体私どもの考えておりますものは、封建的な性格のございます面は、まず第一に生産面について考えられる。その主産面につきましての問題というものは、沿岸漁業と遠洋漁業とによつて二色にわかれるわけであります。遠洋漁業につきましては、一つに集中排除の問題、つまり不当な企業の集中を避けて行かなければならぬ、できるだけ多数の者に漁業を経営する機会を與えたいというふうな点が、生産面における民主化の問題であろうと考えております。それに関する規定は、指定遠洋漁業の許可の適格性のところに出て来るわけであります。それからなお経営の民主化の問題、こういうふうな点が取上げれるであろうと思うのであります。
それから沿岸漁業における問題は、いろいろ複雑した形で現れて來るわけであります。たとえば大きな経営者と小さな漁業者との問題、つまり大規模に経営されるところの、漁業権に基く経営者と、小づりその他の関連漁業等小さな漁業者との争い、それからまた部落と他の部落との争い、つまりこれは入漁の関係で出て來るわけででありますが、そういうふうに同じ漁業でありましても、部落間の争い、それからまた不在権者、権利だけ持つておりまして、自分で経営するのでなくて、他に貸し付けて、自分はふところ手で一定の利益が上つて行く、そういう点を拝除して行き、これを解決して行くという問題が、いわゆる生産面における民主化の問題であろうと思うのであります。これに関する方針、たとえば將來において優先順位と適格性によりまして、原則としてみずから経営するものに與えるという順位は、その方から來るものでありまして、さらに漁業調整委員会というものが、こういうふうな問題を具体的に解決することになるであろと思つております。
それからもう一つの問題は、労働面における民主化の問題であります。これにある地方において一つの大きな漁業権を持つており、そうしてその漁業権者に雇傭されることによつてでなければ生計が維持されない、そういうような場合においては、その雇傭関係というのが、それによるにあらずんば生計できないというような拘束からいたしまして、非常にきびしい身分的隷属関係を伴う場合があるのであります。そういうふうな点について、合理的な契約関係にこれを持つて行ということが必要であろうと思う。それとつまり雇傭関係に伴う身分的な隷属関係というものを改善して行く。それはどこに現われておるかと申しますと、漁業の優先順位、漁業免許の優先順位について、地元漁民その他これによつて生計を営んでおるところの從業者の立場というものをいろいろ勘案いたしまして、漁業権者を決定するという方式に現われておるわけであります。
なお次に流血面における問題でございます。漁村は御承知のように從來非常に資金等みずから得るものが少いのでありまして、他にこれを求めなければならないという点からいたしまして、商業資本でありますとか、あるいは高利貸資本というものが極度に漁村に入つて來ておる。ことに最近の金詰まりからいたしまして、そういうような傾向がまたもどつて来ておるわけであります。こういうふうな商業資本あるいは高利貸資本が漁業を支配する。こういうような関係に相なつております点をできるだけ排除する。この問題は漁業法自身だけでは解決できないのでありまして、一方協同組合の確立の問題、他方金融制度に関する機構の確立の問題、こういうふうなことと伴いまして、流通商におけるところの民主化の問題をやつて行かなければならない、さように思うわけであります。なおそのほかに、たとえば漁村の生活の面につきましても、本家、分家というようなことで、非常に身分的な差別待遇というものが、まだ漁村に残つておるわけです。そういうふうなものを漸次ほぐして行くということが、漁業権の免許を通じ、あるいは漁業調整の方式を通じて措置して行かなければならぬと考えております。
さらにまた行政面におきまして從來の免許許可をいたしますやり方は、行政官廳が一方的な自由裁量によつて、許す許さないということを決定する、行政官廳の官吏のいわば独善的な判断でやるというよな非難もよく受けておると思います。そういうふうな点からいたしまして、免許許可をいたします場合にも、行政の運用面の民主化ということを考えなければいかね。つまり漁業調整委員会というものをつくりまして、それによつてその意見を十分考えてやつて行く。免許の権限はやはり知事にあるわけでありますけれども、それに至るまでに十分調整委員会の意見を聞き、さらにこの漁業法の規定中、こういふうな場合は免許しなければならない、あるいにまたこういうふうな條件でやるというふうなきめ方が、事こまかに規定されておるわけであります。そういうふうなやり方で、この行政面のやり方を民主化することによつて、漁業の民主化をはかる。大体私どもの考えておりますのは、そういうような五つの面から漁村の民主化をはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/23
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024・冨永格五郎
○冨永委員 ただいまの御説明を伺いましても、漁業の実体は内容がきわめて複雑であるということは、当局においても十分御理解せられておるものと考えられるのであります。これを今度は漁業法の制定によつて一挙に解決しようとするのでありますから、非常に大きな混乱が起きるだろうということは、想像にかたくないと思うのであります。そうしてまた、その生産力の増強と漁業の民主化とは、よほど手ぎわよくさばかれない限り、逆効果を來すそれが非常に大きいということも、うなずかれるものであることは、当局もよく認護せれておるところだろうと思うのであります。漁業生産力の増強という眼目に対しましては、調整委員会の案をお述べに相なり、御説明くださいましたが、長年の間、いわゆる数十年かかつて、先覚、知識経験者がこしらえ上げた今日の実情を御破算にして、ただ調整委員会のみによつて、これを処置して行かんとするところにも、非常に大きなむりもあるでありましようし、また必ずしも適正ならざる事態が現出するであろうことも想像されるのであります。從つて今当局の説明せられた内容等につきましても、私どもいろいろ意見を持つものでありますが、また別の機会に讓ることにいたしまして、私の質問を一應終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/24
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025・二階堂進
○二階堂委員 ただいまの冨永委員の質問に関連いたしておるのでありますが、本法案の目的とするところは、要するに漁業の民主化ということにあるわけであります。しかしながら、この漁業の民主化というものを期するためには、あくまでも金融の裏づけが絶対に必要ではなかろうかと考えるのであります。先ほど藤田次長も申されましたことく、今日細漁民、沿岸漁業者は非常な金融難に陷つておることは御承知の通りであります。ことに復金の融資が杜絶されて参りました今日におきましては、一層そうでありますが、一面またそういうふうな弱みにつけ込みまして、商業資本あるいは高利資本というものが入り込んで來ておるのであります。結局弱い漁民はこういうものに縛られて行くというような現象が、多々全國の漁村にあるのであります。この金融の問題につきましては、幾たびも本委員会におきまして質問され、また答弁もあつたのでありますが、私はここにさらに次長に対しまして、この民主化の裏づけをなすべき金融の問題につきまして、具体的に、もう一ぺんいかなる考えを持つておられ、るかということをお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/25
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026・藤田嚴
○藤田説明員 漁業の民主化の問題は、これは非常に大きい問題でございまして、これは提案理由によつてすでに農林大臣からもお話のございましたように、漁業法の実施のみによつて解決する問題ではないのでありまして、また漁業内部の問題だけでなくて、必然的に漁業をめぐつて起るいろいろの他の部面の問題も解決をして、総合的にその施策が強力に推進されて、初めてこの問題が解決するというふうに考えるのであります。その大きな問題といたしましていろいろあるわけでありますが、金融問題は最もその重要な問題であると私ども考えております。金融についていろいろの問題が取上げられておるわけでありますが、水産金融と申しましても、これにはいろいろの異なつた対策が必要である。つまり資金の性質が長期資金もございます。あるいはまた短期資金もある。それから協同組合に対する協同組合を通じての零細漁民の金融もあれば、また会社経営に対する金融の部面もある。そういうふうにいろいろわかれるのでありまして、この水産金融の問題というものは、その問題々々によつて具体的に解決して行かなければならぬ、こう考えます。それで本來の協同組合によるとこうの金融の問題は、現在機構といたしましては、いわば農林中央金庫を通じての金融の道は開かれておるわけであります。ただ水産に対する金融が活発に行われておらない、こういう点があるわけであります。またそれが農林中金だけの資金でも、これがなかなかやれないわけであります。從つて設備資金に対する問題については、たとえば農林忠勤の債権を発行して、これによつて財源をこしらえまして、その財源によつて一定の計画に從つて金融をして行く、こういうやり方が設備資金の方面ではとられなければならないというふうに考えております。それからもう一つ別に、いわば運轉資金、あるいはまた半長期の資金と申しますか、あるいは燃料、資材の購入、そういうふうな資金につきましては、これは私どもとして現在考えておりますのは、從來ございますところの漁業の手形制度、こういうふうなものを拡充して參る方向で解決したい。それには、この手形制度の裏づけとなるとこるの問題といたしまして、漁業の積立金制度というものを考え、それを裏づけといたしましての手形制度を考えて行きたい。しかしながら積立金については、これは一時に積立てができるわけのものではございませんから、それまでの過渡的措置として、何らか日本銀行でありますとか、あるいは特殊の銀行からの一定の基金をその裏づけとして、いわゆる保証の基金というものをここに設定しまして、それを担保として一般の銀行から金を借り受ける。この漁業手形に対して、それを割引いてそうして信用をつける、こういうふうなやり方が必要であううと思います。なお特殊な漁業の部門につきましては、対日援助見返り資金の問題、あるいは預金部資金の問題、こういうものについて、水産資金の額を、できるだけ必要な数量を確保する、こういうような問題になろうかと思うのであります。そういうふうにいろいろ分析をいたしまして、現在進めておるわけであります。対日援助資金及び預金部の資金については、現に具体的に安本とも相談をいたしまして交渉をしております。なお司令部方面へも話が進んでおるわけであります。それから漁業の積立金制度の問題につきましても相当話が進んで參りまして、具体化して參つております。なお現在関係方面と今の最後の固めをして、早く決定したいということで着々やつておるわけであります。一番遅れておりますのは、素直に申しますと設備資金に対する融資の方策であります。たとえば農林中金というものをどういうふうに持つて行くか、その問題が一番遅れておるわけであります。これは水産だけでもなかなか解決のできない部門でございまして、農林漁業を通じての一つの新しい法制をつくつて行かなければならない、こういうような関係もございます。これについては現在総務局でもいろいろ立案中でございます。私どもといたしましても、水産の見地からもこれが早くでき上るように、いろいろ相談をしておるわけであります。こういうような関係になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/26
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027・二階堂進
○二階堂委員 ただいまの次長の説明によつて非常に具体的に明らかになつたのでありますが、政府といたされまして、また当局といたされましても、この金融の問題はきわめて大きな問題でありますので、できるだけ早急に最善の努力を拂つていただきまして、そうして困つておりまする幾多の漁民の金融問題の解決に、全力を注いでいただきたいということを要望いたしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/27
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028・石原圓吉
○石原委員長 ほかに御質疑がなければこの程度でとどめたいと思います。なお漁業権の問題につきましては、明日、明後日のうちに継続審議のことがきまると思うのであります。それと同時に現地調査の問題もきまると思うのでありますが、最後の委員会を二十三日の午前十時から開きまして、そうしてそれらに伴う事柄を決定したいと思うのであります。なお現地調査につきましては、その希望の箇所並びに方面等、それぞれひとつなるべく明後日までにお申出を願いたいと思うのであります。本日はこの程度にとどめこれで散会します。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100504562X01719490521/28
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