1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年五月十六日(月曜日)
午後三時三十五分開会
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本日の会議に付した事件
○労働組合法案(内閣提出、衆議院送
付)
○労働関係調整法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・山田節男
○委員長(山田節男君) これより労働委員会を開会いたします。本日より一般質疑を開始するわけでございまするが、前回において約束申上げだ吉田総理の御出席は止むを得ん事情で今日時間がないそうでありますので、明日の労働委員会に必ず出るとのことであります。本日は鈴木労働大臣並びに各政府委員が参つておられまするので、労働組合法、労働関係調整法の一部を改正する法律案につきまして、一般質疑をいたしたいと存じます。
私から質問しますが、第一條の第二項にある刑法上の免責の規定ですが、これはピケツチングの場合にこれを持つて行くというような程度に、例えば人身の行動の束縛というようなものまでこれに適用されるのかどうか、こういう見解について労働大臣として御発表願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/1
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002・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) お答えいたします。技術的にピケツチングは暴力的のものであるという決定的の解釈を持つておるわけではないのでございまして、その事態の、そのときの実情に應じて判断する、こういう考え方で臨んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/2
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003・原虎一
○原虎一君 鈴木労働大臣にお伺いいたしますが、順序は幾らか違つて來るかと思いますが、その点は御承解を願つて、先般本会議で私が質問いたしましたときに、二十七條の問題でありますが、御承知のように、要約いたしますれば、二十七條第一項におきましては、労働委員会は七條の違反を取上げる、即ち資本家の不当労働行爲を取上げる。第二項におきましては、事実の認定に基いて、使用者に一つの命令を発することができる。命令は発した日から有効であり、第三項に行きまして、使用者は十五日以内に中労委に再審査の申請をする権利を有する。第四項に行きまして、使用者は命令を受けたとき三十日以内に裁判所に提訴できることになつておる。裁判所は中労委なり、地方労働委の決定に対して、その申請に基いて決定の一部若しくは全部を使用者に対して命令することができるのであります。先般私はこの規定でも尚労働者と資本家とを対等の地位に置くということが法の制定の根本の目的の、重要な一つである。從つて法文の上におきまして対等な扱いをいたしたようでありましても、労働者の生活を資本家の生説が社会的地位の関係、経済的関係等から考えて、当然に実質的な平等を與えるように法はして行かなければならないのであります。今二十七條の解釈からいたしまして、成る程現行法より改正案は幾分進んでおります。併し現行法においても、裁判所なり或いは労働委員会が迅速にやれば從來あつたような、労働者のみが非常な生活上の苦痛を堪え忍ばなければ、現行法の十一條違反が決定されないというようなことはないのであります。労働大臣はこの私の質問に対して、御答弁は即ち二十七條をよく読めば決して労資不平等は扱いをしていないという確信を持つているという御答弁がなされております。
そこで私は然らば実質上において、ここに一つの不当労働行爲即ち七條違反が資本家側、使用者側にあつた。これをこの改正法の條項に照して審理を進めて行きましても、最も早くて三ケ月半を要するのであります。第一に二十七條の第一項によつて、労働者が不当労働行爲によつて首切りされたときにおいて、直ちにこれを地方労働委に出しまして、少くともこれをすぐ取上げて半ケ月、何日以内に処理しなければならないという規定はありませんが、迅速に処理しなければならないという規定になつている。仮にこれを今までの例に見まして、短いものでも一ケ月間かかつている。最も短い期間を見て一ケ月、この決定を使用者側、労働者側に文書を以て通告いたしましても、使用者は必ず中労委に提訴するのであります。その権限があります。十五日経つて十五日目に提訴してよろしいのであります。そうして中労委はこれを審査を仮に一ケ月いたします。それでもう二ケ月十五日要するのであります。中労委の決定を見て、尚且つそれに從えなければ裁判所に出し得るのであります。三十日以内に裁判所に提出すればいいのでありますから、最も短く計算いたしましても三ケ月半はかかるのであります。こういう点から考えて、然らば果して労資対等の立場に置かれているかどうか。公平なる観念において、この法が制定されたかどうかということについて具体的な御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/3
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004・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 原さんの本会議の御質問に対しまして極めて言葉が短かすぎて意を盡さなかつたので失礼いたしましたが、改めてお詑び申上げます。それから只今冒頭におつしやいました労資の対等について、現在の社会の中における力の関係からいつて実質上の対等に置くべきものであるという考え方に対しましても、一應私はそう思うのであります。法全体の組合から申しましても、そういうことをいろいろ考慮したつもりであります。只今御指摘になりました点につきましては、二十七條の法全体の関係から参りますと、最も長くても四十五日で済むということになるのであります。尚その各條項々々の関係等につきましては、政府委員から詳細に説明をいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/4
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005・原虎一
○原虎一君 その計算の相違はいずれの点にあるか。私はこのいわゆる労資対等の立場に置いておくことによつて、その労働者の社会的地位の向上、労働者の地位の向上を図るといういうことが法第一條の目的に出ている。でありますから、それが当然実質的に平等に置くというところに努力が拂われなければならない。どういう計算で四十日間でそういうものが計算されて処理されるか、いわゆる資本家の不当労働行爲によつて労働者が被害を受けた場合、四十日間以内でそれが処理されるということは、私の今日までの條文を見ましたのでは判断ができないのであります。仮にそういたしましても、これは即ち労働権というものと財産権とは憲法によりまして同等に扱われている、この憲法の精神から申しましても、当然これが不当労働行爲というものは資本家が行なつてはならないのであります。これに対して当然迅速という言葉でなくして事実上短期間に処理されるという建前がなければならない。先日の公聽会におきましても、有泉東大教授は、これが果して財産権と労働権を平等のものとして扱つているか否かということに、非常に疑問があるという意味の陳述をしたことがありました。即ち自分の氣に入らないから、或いは労働組合を作つて反抗して來るからという旧観念で資本家がこの労働者の首を切つた場合においては、労働者から見れば労働権の侵害であります。資本家は財産権を保護するために自分の工場に氣に入らん人間としてやつて來るのであります。若し外の取引関係なり或いは訴訟関係におきまして、仮処分をされるというような状態に労働者が置かれた場合に、これに対抗するには労働委員会と裁判所に頼る外に途がないのであります。こういう点から考えましても、憲法の二十八條の労働権と二十九條における財産権というものの精神が、果してこの二十七條に盛られているか、具体的になつているかどうか。仮に今政府、大臣の説明のごとく四十日以内に処理されるといたしましても、余りにも期間があり過ぎる、もつと短縮されなければならない。私の浅い知識でありますが、計算によれば三ケ月以上を要する、こういうふうに考えるのであります。いずれにいたしましてもこの二十七條は外の條項と違いまして、なしてはならないということをなすのであります。今後行われますところの不当労働行爲というものは相当復雜性のあるものが出て來ることは予想できるのであります。今までにおきましても、不当労働行爲に対するものは、労働委員会の決定を容易になし得ないというような復雜性を持つている。そういうものは非常に日数を要して、而もそれが今度は中労委にかけられる、或いは中労委にかけられて中労委の決定を持つて、裁判所に出しておる。こういう点を考えますときに、果して私は労資平等の立場に置かれておるということと、それから憲法に保障されるところの労働権と財産権との均衡の問題等から考えて、甚だ疑わざるを得ないのであります。この点についての重ねて労働大臣の御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/5
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006・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 結論的に申しますると、先程お話した通りでありまするけれども、先ずその日にちの関係におきまして、多少解釈の食い違いがあるようにも存じますので、政府委員から同條の解釈、それから日にちの関係等につきまして説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/6
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007・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) これはもう原さんに御説明申上げるのは失礼と存じますが、我々は十五日以内に再審査を中労委へ申告しなければそれで三十日以内に確定いたします。三十日以内に地裁へ提訴しなければこれは三十日以内に確定する。若しそれを経まして提訴するということになりますれば、地裁の緊急命令によつて処置をしたい、大体こういう建前をとつておるのであります。ただ御質問の趣旨はそういう技術的な点ではないと思われるのであります。大体この際に、こういうふうな規定では十分に労働者の労働権の保護にならないじやないか、例えば財産につきましては、少々この程度の被害がありましても、それは事生命の関するようなものでないが、労働者にとりましては一日といえども生命に関するような問題である。從つてこれの立て方が生温い点があるのだというふうな御質問だと考えるのであります。実はこれらの点につきましては、御質問は御尤もな点がありまするし、我々としましては、一日でも早く解決がつくようにというふうな建前から、労働委員会自身の強制処分権というものも考えて、いろいろ研究いたしたのであります。併しながら今日現行の日本の裁判所制度からいたしますると、双方、まあ我々の部内におきましていろいろ交渉いたしました結果、この二十七條の程度が現行の裁判制度におきましては、ぎりぎりであるということになりまして、止むを得ずこの程度で我々事務当局といたしましては提案をいたした次第でございまして、その点御不満の点が労働側にもあるということは十分了承いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/7
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008・原虎一
○原虎一君 労働大臣は具体的に不当労働行爲のあつた場合の扱い方について御檢討になつていないようであります。從つてこれは私は條章に入つて再び質すことにいたしまして、二十七條関係と労資対等の地位に置くという問題につきましては、一應この程度であとは留保いたしておきたいと思います。
次の問題は、これは今回本会議における私の質問ではありませんでしたが、他の議員の質問に対して、いわゆる正当なる爭議行爲、この中に生産管理は正当なる爭議行爲ではないということを、片山内閣当時におきます鈴木法務総裁も言明されておると、從つて私は鈴木法務総裁の言明というものに対する鈴木労働大臣の解釈、見解をお聞きすると同時に、それのみならず、正当なる爭議行爲の中に生産管理を何故に入れられないのであるか、生産管理というまず定義から、どの程度のどういうものを生産管理といい、この生産管理は正当なる爭議行爲といい得ないという御見解を明らかに願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/8
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009・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 片山内閣の時に鈴木法務総裁が解釈を発表した、だから生産管理は不当である、こう形式的に申上げたわけでもないのでありまして、あの時からそういう解釈をとつておる現在現政府も生産管理の解釈については同様であります。こういう意味で申上げたことと存じます。生産管理が違法であるという説明は、あの時にはそうでありましたが、私共も大体その方向をとつておるのでありまするが、(「鈴木総裁そんなこと言つてないぞ」と呼ぶ者あり)労働権と経営権との対等という点から考えても、そういう結論になるということを言つておつたと存じます。今日私共が言つておりますのも、その観点に立つておるのでございまして、多くのそうした要請を含んでおる、だからして正当爭議行爲とはいわれないと思うと、こう申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/9
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010・原虎一
○原虎一君 そこでもう一度お聞きしたいのでありますが、生産管理とは何ぞや、これが非常に問題になると思うのであります。いわゆる生産管理とはいかなるものを指して労働大臣は言われるのであるか、生産管理に対するところの日本の定義は、現在まちまちであります。労働大臣のいわれる生産管理というものの定義を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/10
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011・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 大体において申しますれば、生産管理という範疇の中には、一般に使用者の指導監督を排して、労働者の方が使用者の管理に属するところの施設等を用いて、自分からこれを運営する爭議行爲というように現在の労働行政においては解しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/11
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012・原虎一
○原虎一君 使用者が生産機関を持つて、その使用者の指導管理を排して、生産を労働組合において続ける場合を生産管理だと、事実の問題におきまして、それがどういう法律に触れるのか、今鈴木労働大臣は違法だといいましたがどういう法律に触れるかということであります。その点を明らかに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/12
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013・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 鈴木法務総裁の言明には詳しく書いてあるのでありまするが、丁度手許に持合せておりませんですが、いろいろケースがありますので、例えば業務妨害というような場合もありましようし、非常に極端なことになりますれば、窃盜というような問題にもなります。それぞれの犯罪構成要件というものがそれに加わつて、初めて違法性というものが出て來るのでありまして、いわゆる生産管理という態様が非常に具体的にはケースが異なつておりますので、生産管理そのものが違法であるということを言明するのは非常に困難かと思います。併し少くとも不当であるとは思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/13
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014・原虎一
○原虎一君 私はこれを重ねてお聞きいたしておるのは、法律的な解釈という問題も大事でありますが、経済九原則、独立採算制、こういう問題におきまして、すてに各工場におきましては賃金不拂、それから解雇、こういう問題が多く起つて参つておるのであります。そこで賃金不拂を続けられておつて、工場主が金策に困つてついどこかに姿を隠してしまう。こういう場合が多々起きて來ることは予想できるのであります。こういう時におきまして、やはり生産増強ということが、國家的使命を果す労働組合としましても重要であります。賃金を拂つてくれれば生産を続けて行き得る。そういう場合におきまして労働者が一時的にその生産機関を善意に保全して生産を続けて行かなければならん。こういう場合にそういう問題が多々起きて來るのであります。それに類する問題が起きて來る。こういうことを一概に労働大臣は生産管理として見て、違法なり正当な爭議行爲にあらずとされては、労働者がたまらない。いわゆる賃金が支拂われないとか、いろいろな工場の状態において、ストライキをすれば労働者も生活に苦しむのであります。或いは國家的に見ましても、社会的に見ましても、生産を続けるのが大事である。ただ金融関係或いは経営者に経営能力が足りないためにどこかに逃げる。こういう場合は往々にしてあるのであります。或いは第三者にだまされて、そうして使用者が使用者の権利を行使することができないということが起きたり、債権者のためにこういうことが起きて來るのであります。こういう場合を捉えまして、一々生産管理だ、労働者が使用者の生産機関に対して、使用者を排して、生産を労働組合なり労働者が続けることが簡單に生産管理だと言われるのでは、そういう問題が起きたときに、これは正当な爭議行爲ではなくなつてしまう。こういう問題に対する一應労働大臣の見解を明快に答えて頂きたいというので質問をいたしたい。この点について労働大臣の答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/14
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015・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 原さんの御指摘のような場合は、一概に生産管理と申しましても随分いろいろな場合があると思います。今例を挙げられましたような工場主がおらない。おらない場合にもいろいろありましようけれども、とにかく原さんの御指摘になりましたような形においておらない。こういう場合に労働者諸君が生産を続けて行くというような場合には、例えば民法上の事務管理に該当するような場合が出て來て、これは合法性があるという場合も出て來ましようし、要するに各場合によつて、いわゆる一般的にいうところの生産管理、つまり違法性を持つたところの生産管理かどうかという判定は、個々に違つて來る場合があると思いますけれども、使所者の意思を排除して、そうして行かうというような場合に起きて來るのでありまして。只今のような場合におきましては、又実情に應じて考え方でもつて、必ずしも形式的に違法であり、不当であるという考えのみを以て臨むということにはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/15
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016・原虎一
○原虎一君 その問題はその程度にいたしまして、次に現行の労働法の第一條にありますところの法の目的、それから改正案の法の目的というものに対する憲法上の見解をお聞きいたしたいと思います。相違があるかないか、あるならばどの点に相違があるか。こういう点を明らかに願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/16
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017・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 御指摘の労組法の第一條、その目的についての御質問でありますが、憲法の二十八條というものと違いがあるのかというのでございますが、その基礎の上に立つておるのでございまして、違いはないものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/17
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018・原虎一
○原虎一君 少し私は表現が違うために、やはり労働者なり一般社会に與える印象が違うと思うのであります。と申しますのは、現行法で行きますれば、御承知のように「本法ハ團納權ノ保障乃團体交渉權ノ保護助成ニ依リ勞働者ノ地位ノ向上ヲ圖り經濟ノ興隆ニ寄與スルコトヲ以テ目的トス」とこういう、或いは今度の改正案よりか少しむずかしい表現でありますけれども、主たる点は團結権の保障、それから團体交渉の保護助成により、そして考働者の地慮の向上を図るのであります。これを目的といたしますが、改正案で見ますと、御承知のように第一條「この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、」労働者の地位を向上させることということが前に限定されておるのであります。限定されておる、いわゆる労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより、労働者の地位を向上させること、これは少しあまり具体的に書きすぎて、労働者の地位を向上するのは、即ち使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するということに置かれておるような感じを強く與える。いわゆる憲法に保障されておるものを保障することによつて、労働者の地位の向上を図るという表現でなくして、具体的な細かい問題を挙げて、それによつてその第一に挙つてくるのが、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するということにより労働者の地位を向上する。こういう点に盡京るところに私は労働者の地位の向上を図る。大きな目的を細かく限定しておる。細かい條項を現わして、これに限定しておるというような法意と思う。これに対して労働大臣はどういう見解であるか、現行法と何ら全く変らんと、こういう解釈を持つておられるならば、私は尚結構であります。私はどうもこの点が改正案は労働者の地位の向上というものを何か一つの事柄の限定したものにして行こうと、こういうふうに細かくなつておるので、そういう印象が強い。その点を明らかに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/18
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019・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 実は私はこの御質問は初めて受けたのでありまして、迂闊であつたかどうか、そういう印象を私自身氣がついておりませんでしたけれども、いま原さんからその点を御指摘を受けますというと、文章的にその儘に解釈して行くと、そんなようにもとれるのではないかという氣もいたしますけれども、立法の趣旨は飽くまでも先程申した通りでありまして、労働者の経営者に対する対等の地位を確立するということだけが、この基本的な権利を保障する唯一の方法であつて、それ以外はいいというような、細かいものでは、ないのであります。併しこれはやはり私自身も少し熟しておらない考えであり、初めての御質問でもありますから、熟しておらないのでありますが、現在の社会機構の下におきましては、先程原さんが御指摘になりましたように、とかく労働者諸君は経営者と平等だ、平等だといつても、現在の社会組織の下においては弱い地位に立つ傾向がある。そういうものを何とか、法律的に是正して、そして対等の地位を立つように、憲法に保障されたところを擁護するという、そういう意味に過ぎないのであつて、極めてその方法論も、こういつた言葉として、部分的に限定したというような意味は持つておらないと、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/19
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020・原虎一
○原虎一君 一人私が質問いたしまして、甚だ恐縮でありますが、もう一つ簡單にお聽きしたいと思います。本会議におきましても御答弁がありましたが、いわゆるこの第一條の二項の但し書に「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行爲と解されてはならない。」これは他にも御質問があろうと思いますが、私は一、二点だけお伺いたします。こういう條項を入れなければならんということは、労働者にとつては非常な侮辱であります。こういうことはなくても、取締るものは取締まられておるのに、前に労働者の社会的地位の向上を図る目的を以て作られた法律だといつて置いて、労働者は何か殊に暴力行使をする人間のごとくここに取扱う。そこでそういう侮辱は先ず忍ぶといたしましても、次の問題は、暴力特に労働組合員が正当な労働組合の行動をしておるつもりで、つい暴力を行使したというような場合におきましても、この條文がありますために、暴力を行使してはならんということが法の第一條の目的の中に掲げてあるにもかかわらず、これを暴力を行使したということによつて、中央におきますところの裁判官、或いは檢察官は、そうでないかも知れませんが、地方の檢察官においては、これを重要視して、この点を同じ日本國民でありながら、労働組合員が行使した暴力をその事情の如何を問わず、一應重く見るということは、それはあり得ると思います。過去におきまして労働組合法のない時分に、戰前におきまして、私共が二、三十年間組合運動をして來た関係から申しますれば、泥醉者の喧嘩は、これの傷害罪は非常に簡單に済ます、労働爭議における暴力行爲は、これは盡く体刑に処す。而も非常に重い体刑にするということは、中央よりも地方の裁判所に行く程重い。或いは交渉中に非常な暴言を吐いたというので、これを懲罰として、一ケ月の懲役にするとか二、三ケ月の懲役にするというようなことがあつたのであります。又今日におきまして、裁判官、檢察官のこの思想の切換えというものは、そういう点から実際を考えますと、この條文があるために、私は非常に労働合員のこの犯した暴力行爲というものをことさらに重く見なければならんという印象を深める。労働大臣であるところの鈴木さん、あなたが第一に、こういう條文をあなたの労働大臣のときに、労働者を侮辱されるような、この條項を入れなければならんということについてのあなたのお考え、これがあるために、裁判官や檢察官が暴力行爲を、労働組合員に限つて重く見るというような虞れは生ずることはないと言われるが、その点を明かにして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/20
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021・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) ここに暴力行爲と申しましたのは、これは原さんのように、実際の体驗を持つた人達の、而も過去におけるそういつた時代の経驗を豊富に持つておられる方から見れば、その御心配、御配慮というものも、一應も二應も御尤もであると考えられる点もあるのであります。ここに暴力行爲と申しましたのは、暴力的行爲がいけないということは、もう社会通念上前からそうでありましたけれども、ここ暫くの間に、現実の問題といたしまして、一部行過ぎがあつたという面もございましたので、現在の段階におきましては、これは挿入して置くということが必要であるという見解の下に挿入したのでございますけれども、今御指摘になりましたような意味に、至るところに今の暴力の意味を敷衍して行くというような考え方は、今日行われる筈もありませんし、運用の面におきましては、十分注意をするつもりであります。
尚実はこの問題につきましては、衆議院におきまして、前田議員からも切実な氣持で御質問がありました。これに対して繰返すようでありますけれども、私は前田議員にお答えしたことを、皮肉でも何でもなしに、原さんにもお答えしたいと思います。私自身といたしましても、日本の労働組合運動が、かかる言葉を組合法の中に挿入しなくてもいいという段階に一瞬も早く來るようにということを、原さんと共に、衷心から待ち望んでいるということだけを申上げて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/21
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022・原虎一
○原虎一君 誠に一人で質問いたして恐縮でありますが、甚だこのそういう御希望の点だけをお聽かせ願つて、私は労働大臣がお考えのようなそういう一部には心配のこともあり、そういう人もなかつたとは否定いたしません。そういう問題は、本会議でも申上げましたように、然らばこの條文にこれを掲げることにのみによつて達するというお考え方は了解できない、殊に私は、日本の組合運動の戰後における動向というものからいたしまして、労働大臣が今の言われたように、一日も早くこれがなくなることのために、ここに掲げる事態であるかどうか、これは見解の相違にもなりますけれども、即ち私は本会議におきまして、殊に総理並びに労働大臣の見解なり所信なりを伺いたいということは、余計なことかも知れませんが、吉田総理並びに民自党内閣は労働大衆から、無條件に反動として労働者に理解なきものとして見られている、それは私は、過去におきますところの傳統と、吉田総理という人柄によつて現わされると思う。そういう場合に、ここにむずかしい日本の経済再建に対するいろいろな條件が、即ち九原則を初めいろいろな條件が、提起されるこのときに、少くとも政府が、民自党と雖も労働大衆の意思を十分に聞いて労働政策をやり、その点に十分に思いをいたすという、口でなくして具体的な政策が現われることは、我々は日本のために切望しておる。反対党の失敗をのみ我々は希望しておるのではない。そういう点から考えまして、如何にも労働大臣が、労働者に取つてこういう侮辱的な條項を入れなければならないようなことを、過去におきます一部の労働組合の内部の行動を取上げて、それを重要視して全体の動向を見失つて、そういうものを掲げなければならんというお考え、私はこのことを掲げることと掲げないことが、どれだけのプラス・マイナスの関係を持つて來るかということは、それに対する現在の労働組合運動の動向に対する見解の相違と、労働者に対する一つの信頼を持たんで、労働階級は非常に危驗なものであるからこれを法律によつて取締つて行くのだという傾向を現す、このことの現われることを私は非常に恐れる。そういう意味からお尋ねいたしております。私はできるならばこういうものは是非とも削除すべきである。現に暴行は嚴重に他の法律によつて取締られておる。労働組合法に限りこういうものを掲げなければならんという日本の労働運動の現状は、過去三年間には一部多少そういうものはあつたかも知れない。然らば資本家則に何もなかつたかといえばこれは大いにあるのであります。でありますからこれは私は取除くべきものだという精神を以てお尋ねしておるのです。併しながら見解の相違であるということになりますればそれまでですが、我々は他の同僚諸君に強く訴えて修正をいたすより外にない。私はこれを以て私の質問を一應打切りまして、尚條文の中に入りまして労働大臣の見解なりを明らかに願わなければならん場合におきましては、委員長を通じて要求いたしますから、必ず御出席を願えるように一應お取計らいを願いたい。一應私の質問はこれを以て打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/22
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023・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 原さんの切切たる労働組合に対する信念と愛情とに対しましては私共にもよく分るのでございます。ただこの字句につきましては、先程も申しましたような一部のと申しまするか、現実に照し合してそれを私たちは挿入したということをお答えせざるを得ないのは極めて遺憾でありますけれども、重ねてお答えいたします。尚運用につきましては御意見のあるところの意をも体しまして、十分の注意を拂いながら運用して行きたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/23
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024・中野重治
○中野重治君 原委員の質問の中にあつた問題で、この間の本会議で大臣の述べられたことと、今日答えられたことと関係する問題ですが、例の生産管理の問題、あれはさつき原委員と労働大臣との間答の結果、大分はつきりして來たように聞き取れるので、労働大臣の方で、この間本会議の席上で述べられた言葉は、誤りであつたことをはつきり述べられるのがよいのじやないかと私は思うのですが、どうですか、それは簡單に説明すればこういうわけです。鈴木法務総裁が言明したことは、不当な生産管理は不当である。こういう話であつたわけです。さつきそれは松崎政府委員が言われた通りなんです。松崎政府委員の方が、問題の把握においては鈴木労働大臣よりも確実なんであつて、それから問答の結果鈴木労働金臣もこういうところへ來られたようですから、だから本会議での、この前の内閣で鈴木法務総裁も生産管理は不当であると言われた通りであると言われたある言葉は、誤りなんだから取消されたらどうか。取消すつもりはないというなら別ですけれども、そうする方が私はこれから話を進めて行く上に工合がいいのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/24
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025・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 本会議におきましては言葉を制約いたしましたので、そうなつたかもしれません。今日の御質問に限らず衆議院におきましても重ねての御質問に対しまして、すべて生産局理は皆片つ端から如何なる生産管理も不当だ、こういう意味ではないのであつて、違法なもの、不当なもの、そういつたもの、違法なものが不当なんだ、こういうように解釈しておりますということはお答えした通りであります。只今原さんにもお答えした通りで、さように御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/25
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026・中野重治
○中野重治君 違法な生産管理は不当である、或いは不当な生産管理は違法であるということがはつきりしたとすれば、生産管理が不当であるということには、今のままではならないのだということは認められたと考えていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/26
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027・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 生産管理そのものの中には不当なものが多い傾向があるけれども、すべてではなくして、そのとき特殊の、今原さんが御指摘になつたような場合もあり、必ずしも形式的に全部だという解釈ではない、こういつた意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/27
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028・中野重治
○中野重治君 そうするとつまり生産管理は一般に不当であるという結論には政府も我々もまだ達していないのだと認めていいのですか。論理上の問題として答えて下すつて結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/28
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029・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) 御質問は、生産管理というものは、一概に全部不当であるという結論には、両者とも達していないのではないかという御質問でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/29
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030・中野重治
○中野重治君 質問の要旨を言います。不当な生産管理が不当である、或いは違法な生産管理が違法であるという限りにおいては問題がない。それは違反という限定がついたときにすでに違法なんだから、だからそういう点で我々が言つておるのは逆に言えば生産管理は違法であるという結論へは我々は達していないのだ、この点で我々は一致しておる、この認めてよろしいかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/30
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031・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) 重ねてこちらから質問申上げて恐縮でありました。我々がこういう議論の起りますところは、生産管理という概念自身がすでにもう不明確な点がございますために、とかくこういうお互いに間違いを起すのであります。從いまして先程松崎課長から申上げましたように、生産管理自身は直ちにそれが違法となるわけではないが、併し我々はいわゆる通常申しまする生産管理、即ち使用者の管理を排除して、そうしてその使用者の器物を利用してやるという場合は、原則として不当になります。併し極めて特殊なときにはこれには正当性というものがあり得るということを申したのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/31
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032・中野重治
○中野重治君 生産管理に関しては、そこまで問題が行けば生産管理とは何かということについて、共通の土台に立たなければならないので、そうすれば問題が又紛糾すると思いますから、それはその程度で止めて、次に今度の改正案では組合專從者の給料のことやなんかで、資本家の方が組合活動に対して財政的な、金銭の援助をすることはいけないという精神で貫かれているように見えます。それについて、そのことは原則的には尤もであるが、現実の問題としてはいろいろ合わんところが生じて來るというふうな意見も聽いておりますが私はそこが少し理解しにくい点を感じるのですが、專從者の給與とか、その他組合活動に対して金銭が会社から組合の方に拂われることが仮にあつたとしても、それはどうして財政的援助になるのですか。ということは、現在労働者が働いてそうして資本家から賃金を受取る。その場合にはこれは資本家が労働者を財政的に援助をしておるということにはならんだらうと思います。改正案に財政的に援助を云々しておる人々となつているけれども、労働者が労賃を受取るのは、これは資本家が労働者を財政的に援助するのだということは考えんだろうと思います。それで專從者の給與が会社から支拂われるとか何とかということは、日本に労働運動が始まつて以來、組合が非常に苦しい鬪いをやつて來た。それを戰爭になつて來てそれは次第に或いは急速に労働組合運動そのものが彈圧されて、そうして戰爭が済んでそういうふうに労働組合の活動を余えて來た連中が打倒されたその結果、組合が復活して組合運動が盛んになつて來て、そこで團体の力で経営者側と交渉して、交渉の結果組合側からいえば交渉に勝つた結果、資本家側への賃金引下げを止めるとか或いは引上げるとか、出すべきものを出させるとかいうことになつて來たのであつて、これは資本家側と労働者との鬪いの結果労働者側において鬪い取られたものである、こう考えるほかないと思います。ところが鬪い取られた結果、資本者側が出すものはこれが財政的援助であるというのは、戰に敗けた者が出すものが、戰に勝つた者に対して援助をするのだという考え方であつて、例えば日本がアメリカと戰爭してそうして木葉微塵にやられてそうして賠償を取られるとか或いは工場が賠償撤去されるという場合に、これは日本政府がアメリカ政府に財政的の援助をするのだというのと少しも変らない。私はこういう場合に資本家側が金を拂うからといつて、それを資本家側が労働組合を財援的に援助をしておるというふうな考え方を持つ者は敗北をすら勝利の立場において一方的に取扱おうとするものであつて、労働組合活動に対する許すべからざる嘲笑だというふうに考えるのですが、やはりそういうものは企業者側が労働者に対して財政的に援助するものだとこう考えるべきものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/32
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033・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) 先ず第一番に労働者諸君と企業者、経営者諸君とがただ單に完全なる絶対に相容れない鬪いの相手、そうして二つきりない段級、こういつた考え方の上に皆さんは立つておられるかも知れませんが、私達はそういつた観点に立つておらない点が一つ。それと直接関係ないとしても、そういう鬪つて勝つたという形で申されましたが、私達はこの問題については現在の社会機構、生産機構の中で平面的に考えまして、專從者の諸君一般の賃金が不当のものでもなければ、或いは経済的補助でもない。こんなことは分り切つておりますが、その経営体の生産自体には何らの関與なく、組合自体の仕事だけに専從する人達のその給與というものが会社側から支拂われまして、それが組合の一つの重要な活動力になつて行くという形体は、私共の常識といたしましてはこれは組合に対する経済的援助である、実質的組合への援助である、こう結論がつけられます。中野さんの考え方はそうでないというふうな考え方でございますけれども、それから先は見解が……、見解以上にもつと根本的に考え方が違うかも知れませんが、見解が違うのでございますので、そういうような形の経営者側の経済援助というものは、この際本來の常道において本來の姿に返すのが、健全なる組合の育成という上から正しいのだという考え方に立つているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/33
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034・中野重治
○中野重治君 そうすると專從者の給與が労働大臣のように経済的援助であつて、経済的援助は本來の形に戻した場合はこれを打切る方がいいというところから打切られていることになると、專從者の給與というものは組合が自分で捻り出さなければならん、捻り出すことが困難であるとすると專從者は数が減る。こうなることは認められるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/34
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035・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) そういう場合もあり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/35
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036・中野重治
○中野重治君 そうすると組合活動が盛んになつて、そうして労資対等の立場においてことが円満に済むためには、專從者というようなものがない方がいい、こう考えられているわけではないだろうと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/36
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037・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) そういつた事務或いは活動に当る人がなくて團体が動くということも考えられないのでありまして、なくて構わないというような考え方を持つているわけでは勿論ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/37
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038・中野重治
○中野重治君 そうするとなくていい筈はない、これは言うまでもないことであるが、ということになると財政援助という言葉によつて、專從者の給與が資本家側から労働者側が受取ることができなくなつていいというわけではない。当然あるのが本当と思われる。その專從者の量なり働きなりが組合側に取つて減ることはあつても殖えることはないということは、政府側においても認めるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/38
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039・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) それは今後組合が專從者というものをどういうふうに運営して行くか、持つて行くかという組合の自主的な問題に入ると思うのでありますが、大体において現在よりは減るという傾向はあるのぢやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/39
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040・中野重治
○中野重治君 そうすると大体において現在よりは減るだらう、併しそれを現在のままの数に置こうなり或いはこれを殖やそうなり、そういうことは組合側の自由だと、その組合側の自由は政府は干渉しようと思わない、併しながら改正されれば減るだろう、こういう関係ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/40
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041・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/41
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042・中野重治
○中野重治君 そうすると次にやはり経済的援助のことについてお尋ねしたいのですが、そうすると労働組合法が政府の原案のように改正されれば、專從者のことに関していえばこれは減る。併し減つて困るので、これを現状のままに止めるなり殖すなりということは労働組合の自由であつて、この自由に対して政府は干渉しようと思わないのだから、專從者の問題に関しては改正案の目的とするところは、專從者が減ることであるというふうになるとこう考えます。
それでこの財政的援助の問題を他の実例について考えて見ますと、現在これは資本家の中にもいい資本家と惡い資本家とあつて、一概に言うことはできないと私共考えますが、政府側が資本家に向つて支拂うべきものを支拂つてないことからして、非常に大きな問題が方々に起きておる。その起きている問題が複雜なものがありますが、例えばこの間通過した労働者災害補償法ですか、あれなんかを見ますと、資本家がこの掛金を掛けていない場合、その経営内の労働者が怪我をした場合はその怪我に対して政府は補償しないというふうになつております。それで資本家がこれはこの場合は惡い資本家ですね。惡い資本家が掛金を掛けていないために、労働そのものから生じた怪我の手当も、その経営の労働者はできないとこういうことになりますが、そういう場合この怪我をした労働者が受取るべき金額を受取つていないことによつて、政府から出すべき補償金が出ないことを、資本家が出していないことでバツクするような関係になりますから、そういうような場合は惡い資本家はその使つている労働者によつて財政的の援助を受けているということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/42
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043・鈴木正文
○國務大臣(鈴木正文君) ちよつと待つて下さい。大分労災関係で條文に入つて参りしたから、ちよつと委員の者から説明させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/43
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044・中野重治
○中野重治君 序でに言います。時間がかかつてもいいのですが、政府支拂が遅れているからというような原因によるかよらないかに拘わらず、労賃の遲欠配がありますね。現在……。あの場合はこれは資本家側が労働者から財政的の援助を受けているということになるかどうか。
それからもう一つは組合費なんかを資本家の方が使つている場合がありますね。或いは会社の会計が組合費を差引くように給料日にやりますから、そういうような場合はこれは非常に積極的な援助を、資本家側が受けているということになりますか。つまりこういうことなのです。政府が政府支拂を怠つているための場合もあるし、又資本家が経営がまずいというところに原因がある場合もあるのでしようけれども、とにかく労働者に渡すべき賃金を渡していない。これは労働者に対する賃金はもう眞先に拂わなければならんという約束があるなしに拘わらず、つまり借金ですね。資本家側が労働者側からの特に労災保險の場合なんかは、自分が出すべきものを出していなくて、自分のところの労働者が怪我をした場合に、政府からこの怪我した人間に向つて、金が來ないわけですから、そういうふうな場合は、資本家側は労働者側から財政的な援助を受けているということにならないでしようか。労働者の金を食つたり使つたりした場合ですね。こういう場合に直ぐ惡い資本家は食つてしまうし、いい資本家は間に立つていて苦しむのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/44
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045・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 大体今私了解したところだけお答えいたしますが、使用者が労働者から援助を受けるということは、この組合法上全然問題がないのでありまして、これは違法ではありません。併し今御質問になつたような例のような場合は、或いは税法違反でありますとか、或いは横領とかいうような問題が起る虞れは非常に多いというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/45
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046・中野重治
○中野重治君 それはそうなりますね。税制違反とか何とかいうようなことになる虞れが多いでしよう。併しながらその税制違反になるにしろならんにしろ、その場合実際の問題として法律上違反になるかならんか私は問いません。そういう場合は明らかに資本家側が労働者側から財政的の援助を受けていることになるまいか、客観的に……。金を借りているのだし、或いは借りている上にそれを自分で使つているわけですから……。私が何故こういうことをお尋ねするかというと、組合專從者の活動というものは、鈴木労働大臣の考えと私の考えとは根本的に違うところがありますけれども、一致した関係でいつても、組合專從者というものは組合活動の本質的な属性だ。或る程度改正されれば減るだろうけれども、減つたのをどうするかということは、これは組合の自主性に任して政府は干渉しない。これは一應、一應ですよ、根本的には承服できないけれども、一應承服する。そういうふうにして労働者側に対する資本家側からの問題は、財政的援助ということでコントロールして行こうという面がはつきり現われている。これは日本の現状においては資本家側が労働者側から、私が今挙げた例のように実質的に財政的援助を受けておる場合が非常に多い。この面を放つたらかして置いて、さつきの面だけ取り上げるならば、これは労働者と資本家と対等の立場で扱おうとしている本來の趣旨に背いていやしないか、明らかに背いておるとこう考えるわけです。それでその点をお尋ねするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/46
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047・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 使用者が労働者に賃金を拂うことは、その場合は使用者は債務者として、労働者は債権者として、賃金を支拂わないということは使用者側の債務不履行という問題が生ずると思います。だから賃金を支拂わないというか、支拂わない賃金をよそに廻して使つておるという問題は、労働者が使用者を援助したという概念には当てはまりにくいと思うます、当てはまらないと思います。むしろ使用者側の債務不履行であるという概念で行くべきじやなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/47
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048・中野重治
○中野重治君 それでそれは援助という概念で包括すべきことではなくて、債務不履行という概念で包括すべきだと、こういうことであればそれは一應それでよろしい。併しこういうことにはなりましようね。それは概念上あとの概念で取扱うべきものであつて、前の私が言つたような概念では取扱うべきものではないと思われる場合にも、そのことが認められた場合にも、実質的に財政的に資本家側が援助されておるのとちつとも違わん結果に陷つているということは認められるわけでしよう。Aの概念で扱うべきか、Bの概念で扱うべきかということによつて、現実に資本家側が財政面で労働者側から援助されておる、その客観性を左右できないでしよう。左右されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/48
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049・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 使用者が組合專從者の賃金を支拂うということは、それはもう組合に対する援助という概念で、やり放しである、もうそれを回收するということはあり得ないわけであります。ところが使用者が労働者に賃金を支拂わない、そうしてその金を外に廻しておる。或る一時期を以て、そこでその横断面を考えますれば、今中野さんがおつしやつたと同じことが出ると思いますが、併し労働者は飽くまで使用者から賃金を支拂つて貰うという債権を持つておるのですから、この債務は永久に続く。でありますから或る一時期における断面を取つて見れば中野さんがおつしやつたようなことは考え得るのでありますが、併し性質は全然違うというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/49
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050・中野重治
○中野重治君 それではその点はまあその程度において分つたとしましよう。併しこういうことは私は、政府側にもよく腹に置いて頂かなければならない。というのは、その際あなたがおつしやつたように労働者側の債権……。何ですか、その金を取る権利というのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/50
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051・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 債権です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/51
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052・中野重治
○中野重治君 資本家が債務者ですか、この債権は永久に続くとおつしやつた、それは永久に続くわけでしよう。併し大事なことは、その際労働者が一日も早く債務者でなくなることが大事なわけですね、そうでしよう。永久に続くということは労働者がもう死んでしまうということなんですから……。だから問題は、こういう場合、これは債務の問題であつて、そうしてその際それが拂われなければ、債権は労働者によつて永久に保持されるのだということだけでは片付かない。若しそれで片付けようとすれば、労働者は全部死んでしまえということは事実ですね。このことはよく腹に置いて欲しいと思います。
その次にやはり財政的援助云々という問題ですが、これは話を少し別にして、大体労働組合と資本家側とがそうがみがみ喧嘩ばかりしていない方がいいということには、政府側も共産党側も意見の相違はなかろうと思う、見解の相違はなからうと思う。そこで資本家側が労働組合を私そう扱つてはならんと思うけれども、この法案にある言葉を使えば、財政的援助ですね、財政的援的をどうしてしては惡いか。財政的援助ということは六・三制や何かの強制寄附とは違つて自発的なものですから、自発的に幾ら援助したつて構わないじやないか。何のために財政的援助を取除こうとするか、財政的な援助を法的に禁止しようとするのか。一つは財政的援助をすることによつて組合の自立性が失われる。組合が毒される、御用組合化する、こういう意見があるかとも思うのです。そういう意見を私聞いたように思いますが、終戰後日本に組織されて來た六百万の労働組合のうち、專從者の給與を資本家側から受取つたことによつて御用組合化した組合が幾つあるか、何十%あるか。私共の聞くところによれば專從者の給與も資本家側に出させて組合が活動して來た結果、資本家側が反撃に出る手段の一つとして、財政的援助の問題を出したのではないか。こういう形で資本家側は悲鳴を上げるか或いは反撃に出て來るかというところまで押して來たところの組合活動においては、專從者の給與は資本家側から出て來ていた。それならば專從者の給與を資本家側が支拂うことによつて、組合が資本家側に懐柔されるとか独立性を失うとか、或いは御用組合化するとかいうようなことは、それ自身ナンセンスになりはしないかと思うのですが、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/52
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053・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) 資本家側から金を受けたから御用組合になつたという実例が幾らあるかという、結局はそういう御質問であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/53
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054・中野重治
○中野重治君 そうです。実例が、つまりその問題を法的に変えねばならんほどそれほど多いかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/54
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055・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) これは私からお答えをいたします。具体的に数字が何%というようなことを申上げるには、これは私の方から申しますれば、組合にとりましてもさような記録はこれは申上げたくないと思うのであります。又もう一つは、申上げたくないというのみならず非常にむずかしい問題だと考えるのであります。第一その御用組合というものは明確に出て來まして資格否認をされた組合の数ということになりますと、これは現在專從者の賃金を受けておるとかいうふうな問題でなしに、今まで御用組合だという判出が出て來ています。又御用組合であるという事実を、幹部とそれから会社との取引の関係でそういう判定を受けた御用組合の数、これはその組合の名誉などを考えずに何件あるということを申上げることはできんと考えるわけであります。ただ私はこの際に申上げたいと思いますことは、今後の改正をいたしますに際しまして、使用者が專從者に金を拂わんことについて、使用者は金面賛成するだろうということを考えましたところが、案外そうでないのであります。で、これは結局会社と組合幹部との縁が切れる、從つて好んで猫を虎にするようなものである、これは最も危險なところがあるのだということを使用者側が言つたことを直接耳にもし、その使用者の團体からも聞いたことがあるのであります。
尚今度の改正に当つてのみならず、組合法施行後、殊に中野委員も御承知の通りに私自身はたびたび労働爭議の間に入つて両者のいろいろな話を雜談的にも或いは正式にも承つたのでありますが、その雜談の際でも、私の感じから申しますと、全國的に大きな組合でありまして、そうして有接使用者が自分が拂つておるわけじやない、例えば全國的な連合團体によりますと、そこに出て來ておりまする使用者が直接拂つておるというわけではないのでありましても、やはり何となく使用者側は自分の会社の金を現に拂つておる者が、そういう状態にあるということにやや安心をしているということがあります。況んや個々の小さい單位の現場の組合によりますと、更にその感が非常に強いようでありまして、却つて私共から言いますると、今度の專從者の給與の打切りについて最も危險しておるものは使用者側でないかということを感じておるのであります。かような場合からいたしましても、組合は決してさような氣持じやない。恐らく今日まで使用者側から自分は賃金を貰つているから御用化したというふうな氣持はないと思います。これは中野委員も大体御指摘のようでありまするが、或いはそうであろうと思いますが、我々から言いますると、使用者側の意図にそういうことがあるということにつきましては、これは使用者側に対して禁止をすべきである。從いまして今度の法案におきましては、第二條はこれらの費用を貰う組合は組合としての資格がないということを定めたのみならず、第七條におきまして使用者側がそれを拂つたらすでにそれは不当労働行爲に当るというふうなことを書いておりまする趣旨の一つも、やはりそこにあるということを御承解願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/55
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056・中野重治
○中野重治君 今の使用者側の話をいろいろ聞いていると、どういう場合に猫を虎にするというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/56
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057・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) これは使用者側の言葉を借りて申上げたのでありまして、決して私がそういう比喩を使つたのぢやないということを予め御了解願つて頂きたいのでありますが、極端な例を言いますと、使用者側は今幹部に金を拂つている、やはり拂つているうちにそれはいろいろ関係があるものでありますから、段々それが係長なり課長になるという見込の男である、こういうふうなことになりますと、何となくその間に情もできておりますし、まあ使用者側から言いますれば、折角金を拂つて猫みたいにしていたのを、それをすつかり断ち切つてしまつて組合独自の立場でその人の生活費を組合員が今日最低生活の保障に足る賃金さえ貰つていないというときに、組合員を増額してまで出して行こうということになりますと、折角おとなしくしている組合が、実際は虎になりはしないか、こういう危惧を持つている、いわゆる野に放すようなことになりはしないか、こういうことを申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/57
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058・中野重治
○中野重治君 そうすると公聽会で聞く使用者側の意見と、今あなたから紹介された或る種の使用者側の意見とでは喰違うように感じるのですが、公聽会で使用者側の意見を聽きますと、援助を打切つてそうして專從者の給與は拂わないようにする方がいい、たとえその事の結果專從者の数が少くなるにしても、というふうに聞きとれるのですが、つまり使用者側にもやはり今まで通り使用者の方から專從者の給與を拂う方がいい、それが猫を猫として置くゆえんだというこういう考の人もあるし、それから猫を虎にしようがしまいが、とにかく專從者を減らして、その点だけでいえば、少くとも組合が不利になるように持つて行く方がいいという考えの人と、まあ大雜把に分ければその点に関しては二通りあるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/58
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059・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) まあ事務的にお答えしますれば二通りあるということをお答えするのがいいと思いますが、ただこの際に御了解願いたいと思いますのは、まさか使用者が公聽会におきまして、組合がおとなしいのを無理にラデイカルにするのであるから我々が支拂うのがよろしいというふうな意見は申すまいと思います。私も公式の席で聞いたわけではありません。ただ重ねて申上げて恐縮でありまするが、今千人くらいの工場で、これは中野さん御專門で御調査したと思いますが、大体專從者というのは普通は七、八人というところなんであります。これが全國組合になりますと場合によりますと、三百人に一名、例えば平面的に非常に廣い逓信省のある施設でありますとか、電産の施設でありますとか、これは集團的に工場におるわけではないのであります。面といいますか細かく田舎にまで、郵便局とか駐在とかいろいろに廣くおりますような組合では、三百名に一名、或いは五十名に一名というふうな割合になつておるのもあります。我々が大体問題にしますのは、これはさようの全國組合におきましては恐らく專從者の数は減さなくても相当負担能力があると思うのであります。その結果が組合の運動に響くのじやないかというふうに心配をいたしますのは、千人程度の或いはそれ以下の小さい組合、而も独立した單位組合、この際に大体我々が見ておりますのは七、八人という程度であります。そうしますとそれらに対しまする千人くらいの工場で支拂いまする賃金総額というのは、今少いところでもやはり六、七百万円、專從者に対しますいろいろな費用を計算いたしましても一人一万円くらいという計算ができると思います。そうしますと使用者が負担しておりまする金額というものは六、七万円で、左程問題にする金額ではないのであります。そこで使用者側にしても、これらの負担を少くしてどうしようというふなことは考えないと思います。ただ電産の場合におきましては政府からも條件を附けられたような恰好もありましたが、事実年額一億何千万円ということも言いまして、政府から貰う金が十何億、或いは八億ということを言いました関係上、非常にあれが会社の経理にも影響を與えるというようなことになつたのでありますけれども、実際問題としてはそういう実情のようであります。從いまして使用者としましては左程負担になるからこれを切れというふうなことよりも、現行法の建前からしましても、公式の場合におきましてはさような答えをやつたのだろうと思います。併し内々と申しますか、只今申しましたような数字から申しましても、若しこの專從者に金を拂つておる、賃金を拂つておいて組合がおとなしくしてくれるならば安いものだ。こういう感じは、これはパーセンテージを上げることには参りませんが、大体あり得るものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/59
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060・中野重治
○中野重治君 それだから專從者の賃金を拂つたからといつて、組合が御用化する虞れはないということになるのじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/60
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061・賀來才二郎
○政府委員(賀來才二郎君) 私先程申上げましたように現在の組合は、これは衆議院においても申上げましたように、逐次しつかりして参つております。又電産につきましてもこの六月一杯で、專從者の給與を受けるということはこれは止めようといつております。組合の指導者、今組合の諸君に聞きましても、この專從者の費用を使用者から受けるということはいいことではない、間違つたことであるというふうに、漸次もうこれは組合員の常識のようになつております。ただ時期的に総同盟に組合辺りでは、今直ちに打切ることは影響があるから経過規定をおいたらどうかという御意見がある程度であります。一部にはこれは使用者から獲得したものであるから当然だというところもあり、それはその方々も眞実はそれはいいことじやないということは御存じでありながら、そういうふうな反対論をされておると、我々は見ておるのであります。
從いまして、このこと自体で直ちに組合員自身が御用化された猫になるということを申上げたのではないのでありますが、使用者側はその意図が多分にあると認めなければなりません。このような状態におきましては、これはやはり組合としては御用組合になる。又事実、形から見ましても自主性ありや、意識的には自主性があると申しましても端的に自主性ありやということになりますと、我々としてはこれは自主性がないものとみなさざるを得ないのであります。特に我々といたしましては、國際的な労働運動に逐次進出しようといたしております日本の労働組合といたしまして、これは特別の事情ありと申しながら、もうすでに三年も経ちましたならば、やはり世界的に例がない、かような状態では我々としては遺憾である。特に世界的の常識からいいましてさようなものはこれは御用化されて自主性がないものである、かように言われて來ております沿革から見ましても、遺憾だと思うのであります。
これは御承知と思いますが、先般参りましたアメリカのギブソン長官が帰りまして、アメリカで日本の労働組合運動の視察の結果談を記者團と会見して話しておりますうちに、日本の労働組合運動で非常に不思議なことがある。一つは使用者が、生産計画に対して自信を以てやつていない。例えて申しますと三万人おる工場にギブソン長官が参りまして、「君のところは今度五割程度生産を上げるということになつた場合は人員は何名増員したらよろしいか」こう聞きますと、実は三千人でよろしいということを言つておる。今度はやはり三万人程度の工場に行つて「今度君のところは生産を半分にするのには人員をいくら減らしたらいいか」と聞きますと。その使用者ははつきりした返事ができないのみならず、到底今の労働組合運動の実情では整理なんというものは思いもよらんという意味のことを言つておる。更にもう一つは、労働組合の問題であるが、労働組合の幹部は使題者側から賃金を貰つておる。こういうことを言つておる。ところがそれに対して新聞記者は「それは労働組合のいわゆる委員長までが、使用者から金を貰つておるのか」と問うたのに対して、ギブソン次官補は「そうである」ということを答えたら非常に皆が笑つたのであります。さような意味におきまして、我々としては梨下の冠と申しますか、恐らく組合は、これは中野委員の仰せのように貰つたからといつて自主性を失うということはないとは信じますが、かような情勢下におきまして、特に使用者が、そういう氣持ちを多分に持つおる際におきましては、やはり自主性を失う虞れがある、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/61
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062・中野重治
○中野重治君 お話は分りました。それでその件についてお聞きしたいのですが、ギブソンさんが、アメリカでそういう報告をしたところ、聞いていた人が笑つたという話ですが、その際日本の資本家が、労働者に自分達が永久的債務者になるような形において労賃を拂つていないということ、或いは労賃を食つておる、その一つの大きな原因は日本の政府自身が支拂をしていないからだということについて報道があつて笑われなかつたですか。なぜこういうことをお聞きするかというと、今お答えによれば政府は労働組合の姿に関しては理想的の姿を描いてこれを要求する。我々は労働組合の無限の発達に対して理想的の姿を描いて、これを一歩々々近付けて行こう。こういう考え方にはあなたとちつとも違いはない。又労働組合に対してだけアイデアに近ずけようとし、それから政府及び資本家の、支拂わるべき賃金を食つているとか、或いは民間に対して支拂をしていないとか、こういうことに関しては何ら触れないということになれば、これは労働組合の理想に照して、理想へともつと近ずけと要求する、要求される値打のあるものであるならば、日本の政府及び日本の惡い資本家は、もう道徳的非難を向け得ないような、そうん根本的に腐れたものであるということをみずから認めるということになると思いますが、そういう面についてお尋ねするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/62
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063・松崎芳
○政府委員(松崎芳君) 私ギブソン次官補の話を申上げましたのは、例として申上げたんでありまして、私が見ました向うの通信は、特に労働関係に興味を持ちましたので、その面だけを見ておりまして、果してさような事実を会見で報告して、その賃金の不拂等で笑つたかどうかは知りませんが、ただ先程申しました使用者側が経営につきまして、現在の日本の使用者側がです、経営につきまして確固たる見通しといいますか、信念というものを持つていないというような話をいたしておるのでございます。それに対して笑つたかどうかは、……恐らく笑つたろうと思います。ただこの際に我々労働省の考え方として申上げたいと思いますのは、労働者側にのみ理想型を言つて、そして使用者側に対しては何ら言わないというふうな態度は、これは労働省として許さるべきものじやないか考えるのであります。当然労働関係の法規におきまして、さような事実がありますならば、これには断固法規の嚴正な施行をすべきでありましようし、更に政府全体の支拂が遅れますために、賃金の遅配があるというふうなことでありますならば、今日までの労働問題の解決というものは、單に労働省のみの解決では問題にならないのでありまして、政府全体といたしまして、総合政策の一環としてこれをやる以外に適正なる解決はできないと考えられますので、これは労働省といたしましても、さような支拂遅延の労働問題に及ぼす影響ということに関連いたしまして、必ず適正に解決するように努力する責任があると思うのであります。ただ我我事務当局としてこの際申上げておきたいと思いますことは、この改正案が仮に通るといたしまして、例えば原委員から先程御指摘がありましたが、我我は労働者が徒らに誤解からして罰を受けることのないようにというふうな意味で、一條二項但し書をおいたのでありますけれども、それが使用者側から逆用されるというようなことがあつたり、或いはこれが官憲の彈圧を起す誤解の因になつたりするということについては、これは我々としては見逃すわけにも参らんのであります。労働組合側に対しまして、是非とも自主性、民主性或いは責任性を明確にして、この経済の興隆に資してもらいたいということを念願いたしますと共に、使用者側に対しましても、労働組合法の運用について徒らに労働組合を嫌う、或いは法文の解釈の末にこだわつていろいろな策を弄するというようなことがあつてはならないと考えるのであります。特に我々としましては使用者側の教育と申しますか、或いは指導と申しますか、或いはその視野について努力をしなければならない。かようなことを考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/63
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064・中野重治
○中野重治君 私はまだ大分お尋ねがあるのでありますが、根本的の問題について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/64
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065・山田節男
○委員長(山田節男君) ではまだ沢山……、もうすでに五時十五分ですが、明日質問を続行したいと思いますが、問題が多ければ明日にして頂いて…、それではお諮りいたしますが、すでに五時十五分になつておりますし、速記者も本朝來非常に疲労しておるようでありますので、本日はこれで散会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/65
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066・山田節男
○委員長(山田節男君) 御異議ないと認めます。明日本会議がなければ十時からやりたいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/66
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067・原虎一
○原虎一君 本会議はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/67
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068・山田節男
○委員長(山田節男君) では十時からやることにいたしまして、やはり総理大臣の出席を是非求めておきます。では本日の委員会はこれをもつて閉会いたします。
午後五時十六分散会
出席者は左の通り
委員長 山田 節男君
理事
一松 政二君
平野善治郎君
委員
村尾 重雄君
原 虎一君
岡田喜久治君
門屋 盛一君
竹下 豐次君
波田野林一君
田村 文吉君
中野 重治君
國務大臣
労 働 大 臣 鈴木 正文君
政府委員
労働政務次官 宿谷 榮一君
労働事務官
(労政局長) 賀來才二郎君
労働事務官
(労政局労働法
規課長) 松崎 芳君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100515289X01419490516/68
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