1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十四年十一月十七日(木曜日)
午前十一時二分開議
出席委員
委員長代理 理事 神田 博君
理事 小金 義照君 理事 澁谷雄太郎君
理事 今澄 勇君 理事 有田 喜一君
理事 川上 貫一君 理事 永井 要造君
理事 山手 滿男君
阿左美廣治君 岩川 與助君
門脇勝太郎君 小西 英雄君
高木吉之助君 田中 彰治君
多武良哲三君 中村 幸八君
福田 篤泰君 福田 一君
前田 正男君 加藤 鐐造君
山口シヅエ君 高橋清治郎君
田代 文久君 圖司 安正君
河野 金昇君
出席政府委員
通商産業政務次
官 宮幡 靖君
通商振興局長
通商産業事務官 岡部 邦生君
委員外の出席者
專 門 員 谷崎 明君
專 門 員 越田 清七君
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十一月十四日
冬期間の電力確保に関する陳情書
(第一四七号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
輸出品取締法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二四号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/0
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001・神田博
○神田委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。
前会に引続き私が委員長の職務を行います。
ただいまより輸出品取締法の一部を改正する府立案を議題として討論に付します。討論は通告によつてこれを許します。前田正男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/1
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002・前田正男
○前田(正)委員 私は民主自由党を代表いたしまして、本法案の改正に対しまして賛成の意を表するものであります。
本法案につきましては、現在フロア・プライスが撤廃され、近くはまた自由貿易が再開されるというときにおきまして、一部、ともすれば競争の激化のために輸出品の品質が落ちまして、海外にいろいろと悪影響を與えるという点にかんがみまして、この品質の改善をはかるということは、まことに時宜を得たものといたしまして、私たちはこれに賛意を表するのであります。
しかしながらここで一言つけ加えておきたいことは、品質の改善をはかるために取締りをいたすのはけつこうでありますが、それがためにかえつてせつかく自由貿易が再開されようとしており、またフロア・プライスが撤廃されたこのときに、臨検その他の処置によりまして、当局等があまり立ち入つた干渉をやるというようなこになりますならば、せつかく自由貿易が再開されようという精神に反することになりますので、この点につきましては厳に注意をお願いいたしたいと思うものであります。諸般の政府当局の説明によりますと、運用の点につきましては、十分心得て万遺憾なきようにするというお話でありますので、この点私たちも了とするものでございますけれども、ぜひこの点につきましては、さらに一段の御注意のあらんことを願う次第であります。
なおもう一言簡単につけ加えさせていただきたいことは、貿易の振興をはかるために、品質の改善をするために検査をするということも、まことにその方法としては時宜を得たものでありますけれども、しかしながら根本的には、こういうふうな取締りということだけでは、品質の改善が望めないことは事実であります。すなわちこの方面に対しまして、特に携わつております小企業の人たちに対しまして品質改善に必要なところの十分の設備資金の導入でありますとか、あるいはまた科学技術の指導であるとか、そういつた方面に政府は十分に意を拂つていただかなければならぬと思うのであります。ともすれば労働強化であるとか、あるいはソーシヤル・ダンピングであるとかいうような非難を、わが国の輸出品に対しまして受けるような世評があります。これを切り抜ける道は、要するに労働強化にもならない、あるいは品質を落とすことにもならないで行ける道は、すなわち技術の導入と、製造工程及び製造方式等の能率化であります。科学的管理の必要であることは皆さん御承知の通りであります。こういう根本的な方面の施策を講じなければ、せつかくこの取締りをやりましても、十分の改善はできないのでありますから、この取締りを強化するところの法律案を出すということは、時宜を得ましたことであると思つて賛意を表しますけれども、これに伴いますところの根本的な科学技術の振興及び中小企業の育成に対しまして、政府は十分の御配慮あらんことを切に希望しまして、私は賛成の意を表しまして、討論を終る次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/2
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003・神田博
○神田委員長代理 次は山口シヅエ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/3
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004・山口シヅエ
○山口(シ)委員 社会党といたしまして、政府提出の輸出品取締法の一部を改正する法律案に対する結論を申し上げます。本案の趣旨は、輸出品の海外における声価の向上をはかることを目的といたしまして、
一、輸出品の取締を強化すること。
一、輸出品の指定品目の範囲を拡大すること。
一、検査の対象と責任を生産業者にまで及ぼすこと。等がおもなる趣旨でありまして、これがこの目的達成のためには必要な事項でございます。しかし本案の運営いかんによりましては、悪影響をもたらすことも考慮に入れなければなりません。よつてわが党といたしましては、
一、取締り強化に伴う権力による弊害防止。
一、検査制度の確立に伴う指導の強化
一、中小企業者に対する育成と保護政策等に対しまして、政府はこれを了とされましたので、本案採決にあたりましては賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/4
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005・神田博
○神田委員長代理 次は有田喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/5
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006・有田喜一
○有田(喜)委員 本法案は輸出の振興をはかる一つの方策として、輸出品の声価を上げ、品質の改善をはかるという趣旨のように思われるのでありまして、この意味におきまして、私は民主野党派を代表いたしまして、本案に賛成の意を表するものであります。但しこの際私は強き希望條件を付しておきたいと思います。その一つは、輸出品の声価を上げ、品質をよくすることは、必ずしも取締りの強化のみでは行くものでないと思います。自然に良質の安い品物ができるような下地をつくる事が、根本的に必要だと考えます。ことに最近、合理化々々々と言つておりますが、その多くは労働生産量の増加のみに努力しているようでありますが、私はそれにも増して必要なものは設備之合理化、技術の向上に一段と努力を拂う必要があると思います。ことに中小企業の輸出品に対する地位にかんがみまして、政府はすべからく設備の合理化のために金融の万全を期せられるとともに、輸出指導に万般の措置を講ぜられんことを特に切望いたします。なお、第二の点は、取締りの強化は、その運用においてよほどうまくやらなければ、かえつて業界を萎縮せしめて、輸出振興どころか、かえつてこれを阻害するおそれなきにしもあらずであります。ことに検査の強化は運用上よほど注意してもらいたい。検査員の人柄、技術、その他素質のよい検査官を育成することは、今日最も焦眉の急務だと思います。どうか政府においては真の意味における指導行をやつていただいて、本改正の趣旨を全うせられんことを切望いたしまして、私は本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/6
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007・神田博
○神田委員長代理 次は川上貫一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/7
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008・川上貫一
○川上委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本案に反対するものであります。日本共産党が本案に反対いたします理由は、第一に吉田内閣の貿易政策が日本の復興にとつてきわめて危險なものであり、またはなはだ不利益なものでありますが、本法案はそうした政策を前提として、そういう政策を推進するためにつくられておる点であります。第二は本案の実施によつては、わが国の産業は利益するところがないばかりではない、貿易の発展にも決して役立たないという点が第二の反対理由であります。
吉田内閣の貿易政策の中心をなしますものは、言うまでもなく協定貿易でありますが、この協定貿易は本委員会における政府の御答弁によつて明らかなように、日本にとつてきわめて高価な、買弁的な政策であるとわれわれは考える。すなわち第一にこの協定には自主性がない。相手国が何らの義務を負うものでもない。さらに相手国の将来の経済的変動についても考慮が拂われているものでもない。実際にははなはだ当てにならぬ協定である。しかもこの協定には、政府の答弁によつても明らかなように、日本側では正式に参加するものでもないし、また為替勘定の決済でさえ為替管理委員会は知らないというありさまだ。吉田内閣の唯一の路である協定貿易なるものは、その実態においてはまつたく頼りにならぬ空慮なものである。どこまでも盲協定である。どこまでも盲貿易である。ある人はこういうことさえ言つておる。盲貿易だからいいのだ。もし目が明いたらびつくりするだろうと。その結果はますます日本にとつて不急不要の品物をも相手国の企図によつて背負い込まされる。これは国内産業を圧迫し、崩壞する危險がある。しかもこの危險が国民には耐乏生活を強要する。また集中生産の名によつて中小企業を壊滅さしておる。労働者には首切りと低賃金と労働強化を強制しておる。農民には低米価を押しつける。こういう性格を持つておる。そうしてこの結果は必然的にソーシヤル・ダンピングを行うということになるのだ。かようにして協定貿易の代償は、人民大衆の耐え得べからざる犠牲と、国内産業の不利益、民主的諸国からの反撃、こういうことを招くのであります。かような大きな犠牲にもかかわらず、貿易そのものが前にも述べましたように、空虚な内容である、日本にとつて不利益である。現内閣の貿易政策はきわめて危險で高価なものであるといつてもさしつかえないと思う。こういう貿易政権を推進する基礎の上に、本法案は考えられておるのでありまして、これがわれわれの反対する第一の理由であります。第二に吉田内閣のこの貿易政策は、現内閣が企図しておるように考えられるところのなしくずし講和の一環であるということを特に私は指摘したい。第三はかような政策こそ吉田内閣がねらつておられるであろうと考えられる単独講和の予備工作であると、われわれは考える。第四に指摘せねばならぬことは、将来必ず実現するであろう、また必ず実現しなければならぬ中国、朝鮮、ソ同盟との貿易、これは今日産業資本家を含めての全国民の輿望であり、輿論でありますが、特にこの中日貿易、これをまつたく度外視しての貿易構想である。かような構想のもとに立てられる貿易政権、その貿易政策の前提によりましてつくられる本法案、こういうものは人民大衆の輿望に沿うものでないとわが党は考える。第五は本法案によりましては国の産業の復興と、人民生活の安定を保障するゆえんでない。なぜならば本法案の実施は、何よりも集中生産を促進するために必ず適用される。またすべての生産は国際価格へのさや寄せを強制せられるように適用せられる。中小企業はいよいよ危殆に瀕すると思う。さらに今日の輸出不振というものは、こういうもので解決できるものではない。これはそもそも政府の貿易政策の誤りである。資本主義世界の相対的過剰生産恐慌、その結果としての市場が狭隘なること、その上に自主性がないということ、盲貿易であるということ、さらにその上にむりな飢餓輸出の強行、こういうことが輸出不振の原因である。本法のごときをもつてしては、決してこれを解決することができない。もしも政府にして貿易政策の根本的態度を改めて、かような取締規制のみを強化するなら、その結果は必ず外商に都合のよいように、日本の産業を企画される危險がある。第六に本法はソーシヤル・ダンピングを隠蔽する欺瞞法である。最後にかような取締法はアメリカはもちろんでありますが、そのほかの国々においても、ほとんどその例を見ない。以上の理由によつて日本共産党は本法案に反対しますが、かような政策を平然として行おうとされるところの吉田内閣は、すみやかに退陣されることを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/8
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009・神田博
○神田委員長代理 次は永井要造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/9
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010・永井要造
○永井(要)委員 ただいま御提案になつております輸出取締法の一部を改正する法律案に対しまして、私は民主連立派を代表いたしまして賛意を表するものであります。ただ本員は輸出の振興の面から見ましても、また品質の取締りの点から参りましても、現在の行き方では必ず悲観するものが多分にできるということも考えられるのでありまして、これが実施の條件といたしましては、政府においても適当な手段をとられることは当然でありましようが、まず第一に生産に一番必要な労働者の素質の向上であります。この点は製品に対する大きな基礎となるものであります。従つて優良品をつくるということのためには、どうしても工員の素質を向上さして行くことが必要であると、私は確信するものであります。さらに政府においては優良品の輸出ということに重点を置いておる以上は、現在機械は十数年酷使しておりますために、もう老朽しております。ほとんど優秀な機械はないと申し上げても過言でない状態に置かれておる今日において、外国に輸出をいたしましても必ず品質の面において落ちるということは、はつきりいたしておるのであります。機械の老朽品に対しましては、政府は特に御留意をなされまして、優良なる機械購入等にできるだけ便宜をはかつていただくということが、優良品製造の根幹であると信ずるものであります。なお輸出に対しましては今までいろいろちまたに不満の声があるわけでありますが事務の簡素化ということは、これまた輸出振興の意味から行きましても必要のことでありますが、この点を特に政府におかれましては留意され、一層検査を強化されまして、わが国の輸出の振興に十分なる手を打つていただきたいということを希望する次第であります。輸出品取締法の一部を改正する法律案に対しましては、さような希望意見を述べまして、賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/10
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011・神田博
○神田委員長代理 これにて討論は終局いたしました。引続き採決を行います。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/11
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012・神田博
○神田委員長代理 起立多数。よつて本案は可決いたしました。
次に衆議院規則第八十六條によりまする本案の委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/12
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013・神田博
○神田委員長代理 御異議なしと認めます。委員長に御一任をいただいたものと決します。
次会の開会日時は公報を持つてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
午前十一時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100604793X00919491117/13
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