1. 会議録本文
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000・会議録情報
公聴会
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昭和二十四年十一月十四日(月曜日)
午前十時三十四分開会
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本日の会議に付した事件
○漁業法案(内閣送付)
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001・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 只今から水産委員会公聴会を開会いたします。
公述に先立ちまして、一言委員長から御挨拶いたしたいと存じます。公述人の方には、御多忙中遠路御会同下さいまして厚くお礼を申上げます。本日の公聴会の議題は漁業法案であります。漁業法案は、前国会の末期に提案された重要法案でありまして、前国会では到底審議ができないという関係上、院議に諮りまして継続審議をいたした法案であります。委員会におきましては、法案の提出前から、各地に委員が出向きまして、いろいろ地方の事情を聞き、且つ公聴会を開きまして業者の意見をお聞きしたのであります。その外この法案に対する陳情、請願も多数ありまして、委員会においては、継続中又は今回に入りましても非常に慎重審議をいたして今日までになつたのであります。最後にこの公聴会を開きまして、皆さんの御意見を拜聴いたしまして、本案に対する修正の決定をいたすことに相成るだろう、かように信じております。本日の公述時間は、委員会の決定によりまして、二十分間ずつといたしております。そうして公述人に対する各委員からの質問も、一名に対して十分間以内と、かようにいたしております。さよう御承知を願います。これから公述に入りたいと思います。間違いました。公述人の公述は十分以内、かように相成つております。さよう御承知を願います。
それでは早速公述をお願いいたします。第一番に、神奈川県の宍戸賢二君からお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/1
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002・宍戸賢二
○公述人(宍戸賢二君) 私は相模湾の定置漁業の従事者の立場から、今度の改正漁業法についての意見を述べさして頂きたいと思います。
私達相模湾の漁民は、この劃期的な改正漁業法の一日も速かに待望をしておつたものでありまするが、今日まで、法案が遅々として議会を通過しないで、而も第一次、第二次、第三次というふうに、聞くところによりますというと、修正されて行つておつて、だんだん私達本当の働く漁師の立場から見ますというと、漁師自体にとつては、だんだん不利なような形になつて行くという気配も見受けられることは、誠に残念だと思つております。特に私達定置漁業に従事しておるものの立場から皆さんに率直に、私達の生活の面から今度の改正漁業法を研究をして頂きますというと、ちつともこの改正漁業法の中には、労働者を本当に育成して行こうという精神が余りに見受けられないということが全般的に見受けられると思うのであります。例えば、私達の、今労働者の生活状態というものは、最低賃金制も保証されておらなければ、現に相模湾の実例から申しまするというと、一ヶ月の基本給が二千円で、これは現金で頂いております。後は若干のお菜分けというものがありまして、そういうものが生活の基本になつておるような状態であります。このようにして漁師自体の生活というものは漁不漁によつて非常に窮迫な状態に陷つております。私達は、こういうこの漁業法の改正に特に歌つて頂きたいことは、本当に漁民を解放して頂く、漁業の民主化ということが基本になつておるという、こういうならば、もつと漁師の立場というものを考えて、法案を練つて頂きたいということが漁師の共通の願いであると私は考えております。で私の働いている真鶴附近の定置くの労働者の如きは、魚があるときは、若干のそうしたお菜分けで潤おわして頂いて、後は二千円の基本給だけで、無いときは一日、例えば現在の経営者共一日幾らかの、大体五十円、金にして五十円のお菜分けを貰つておる。そういうものが毎日毎日続くかというと決してそうじやないのであります。魚があるときは貰え、魚がないときには全然貰えないという日がむしろ多いのであります。にも拘らず二千円の給料と、毎日五十円くらいに相当するお菜分けの、それも三日に一回とか、四日に一回とか、不漁が続くというと一ケ月に二回位しか貰えないというような状態が非常に長く続く場合があり得るのであります。そこへもつてきて、昨年度一昨年度の如きは事業税迄もかかつてきて、この第二種事業税、今度は第二種事業税に漁師はなつたのでありますが、事業税なども掛けられて、非常に税金の面においても苦しめられておる、全然税金どころではない、今、毎日の沖へ持つて行く弁当の餌にさえも困つておるというのが漁師の実情なのであります。
それからもう一つ労働條件の点から見ますというと、船員には船員法が適用されておりまするが、定置網労働者や、それから一般定置網に関係しておる労働者には、ちつとも船員法や、或いは又陸職に働いておる、陸職と申しますと陸上に働いておる労働者の労働組合の人達や、それから従業員組合の人達はいわゆる労働組合法によつて保護されておりまするが、実際に漁師の労働者や或いは従事者はそういう政府の保護、国家の保護によつて育成されておらないというのが実情であろうと私は思うのであります。すべてが政府自体がほつたらかしのような状態で、今全く漁師は本当に自分達の団結の力によつて細々の私生活を営んでおると言つていいのが実情であります。例えば網が毀れた場合、寒中でも海の中に飛込んで網の作業をやらなければならない。皆命懸けで、網の毀れたようなときは海が荒れておるにも拘らず海の中に飛込んで働いておる。監督や経営者の命令によつて飛込んで仕事をしろと言われて犠牲になつて働いておるにも拘らず病気になると、健康保險法も適用されておらないために、自分の金で治療しなければならないというような非常に惨憺たる有様なのであります。こういうことに対しての保護も何らなされてないという状況が、こういうことが実情なのであります。
それから災害の面、災害補償法なんかも、これも何一つ適用されていないというのが、又経営者としても適用さすように努力してくれないのが現状であります。これは独り真鶴ばかりでなくて、相模湾一帯の定置漁業の実情を私達が調べて見ましても、大体そういう傾向がどの漁場にもあり得る実情なんであります。こういう点に対して本法案が、労働者の立場に立つた新らしい法律を一つ盛り入れて頂きたいということは、私達現場に働いておる漁業労働者の痛切な叫びであります。
それから今度の改正法によりまするところの水深十五メーター以上でなければならない、漁業権がこういうふうな関係を規定されるようですが、これは適正であるかどうかというなにがありまするが、私はこれは明らかに不適正だと思います。何故ならば十五メーター以下は共同漁業権だが、それ以上はいわゆる認可ですか、そういうような形になつておると思われるのですが、これでは私達本当の働く漁師の力によつて張つておる小さい網のなにが非常に制約されて来ます。それだけに私達現地、或いは相模湾一帶の漁師のなににも、私が最近よく聴いて見ますると、やはり少くとも二十メーター、二十七メーターぐらいのやはり水深を必要とするということに大体の意見が一致しております。この点だけ一つ十五メーター以上云々というなには是非ともこの二十メーター、二十七メーーター以上というように改正して頂きたいというのが私達の願いであります。
このように私達は労働者の立場に立つて皆さんに意見を述べさして頂きました。
もう一つ私達の最後の願いは、やはり働く漁民の手に、漁民の団体に、漁業権が必ず来るというような法律を特に私は作つて頂きたいと思うのであります。何故ならば、今のような形ではやはり結局漁業権は資本家に握られて行く虞れが多分にあります。今度の改正漁業法によりましても、こういう危險は私達に取つては、これは死活の問題であると思うのであります。例えば一つの例を取つて申上げますというと、現在今までの旧漁業会が漁業権を持つておる漁場でも、自分達が漁業権を持つておりながら、それがやはり経営者の手に入札やなんかの形で入つて行きまして、そうして自分達の本当の権利は活かされないで、奴隷的な労働條件で零細漁民が全く塗炭の苦しみの生活をしているというのが実情でありますから、私達がこの権利を奪われることによりまして、それこそ現在よりもより以上にひどい生活状態に追い込まれる危險性が多分にあるということは、これは私達が予言するのではなくて、漁師全体の本当の叫びであろうと思つております。従つて漁業権は必ず働く漁民の協同組合、或いは漁業の労働組合というようなものに、そういう働く者の手に一つ絶対にくれるように、そうして漁場の管理は働く漁民にさして頂きたいというのが私達の願いであります。何故ならば経営者は経営者の立場に立つていろいろと自分の利潤のみを図つての経営方針を立てて、真にこの改正漁業法の精神に盛られているところの漁村の民主化、同時に生産の高度な発展ということは、結局私はこれは空文に終る虞れがあると思うのであります。やはり労働者に漁業権を持たし、管理権を持たせることによつて一匹でも余計魚を獲つて、一匹でも余計皆さんに食べて頂きたいというのが漁師の叫びなんであります。このために私達がいろいろ過去において経験した実情から見ましても、経営者が本当に自分の利潤のみによつて経営されるときは、決して高度な生産の発展には私はなり得ない実例が多々見受けられておると思うのであります。そういう欠点もありまするから、やはり農地法の改正と同じように、漁場の管理は完全に漁民の手に渡して頂きたいというのが私達の叫びであります。
それから私はこの定置漁業について特に議会の皆さんにお願いしておきたいのは、今まで、今のこの改正漁業法におきましても、私達がよく研究すればする程、先程申しましたようにどうも漁師にとつては不利だ、成る程免許に対しては、免許の権利の優先順位の中には、地元の漁民云々とか、或いは労働條件の著しく悪いものには経営権、漁業権を與えないとかいうような多少の制約を加えられているのでありますけれども、若しこういうことが事実だとするならば、恐らく現在の経営者としては一人も適格者がないと断言しても私は憚らないと思います。悉くが今まで申しましたように悪條件下において漁民労働者が酷使されているのが実情であります。従つて新憲法によるところの人権の尊重という意味においては、現在の経営者は全部零であると言つても私は差支ないと思うのであります。それだけに私達はやはり私達の手によつて本当の漁村の民主化をさして頂き、そうして本当に漁場の経営管理をさして頂くことによつて、全く新らしい劃期的な漁業法の下に漁村が脚光を浴びて行くのではないかということを私達自身が期待いたしているのでありますから、この際願わくば参議院の議員の方々は是非とも私達のこの痛切な叫びをお聞き下さいまして、改正漁業法に全面的な御努力と、そうして熱意を示して頂きたい。今までの政府のやつていることは、みんな私達にとつては不満なことばかりであります。私達は本当にこの漁業法が我々のために改正されるのだということを最初聞いたときには、欣喜雀躍したものであります。ところが一年経つても出来て来ない、この今度の議会でも駄目だ、そうして聞くところによると、民自党やなんぞの政党の諸君が、だんだん現在の漁業法、これも改悪して行こうというようなことを開いておりますときに、私達は是非とも参議院の皆さんにおかれましては、私達のための立場に立つて立派な法案を作つて頂くように努力して頂きたいと私は思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/2
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003・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 有難うございました。時間が参りましたから……。
今の穴戸さんの意見に対する質問がありましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/3
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004・江熊哲翁
○江熊哲翁君 ちよつと質問の前に委員長にお題いしておきます。今の委員長の、時間が来たからと言つて警告を発せられることはいいが、即座に発言を中止させることは、少しやり方が面白くないと重いますから、少し何分か前に定期的に時間を予報して、そうして徐ろに話を遂げて行かないと、まだ大事なものが後にあつたにも拘らず、そこでびちやつと止めるということになると、話される方の公述人に御迷惑でありますから、その点を一つ宜しくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/4
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005・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 大体今のを聞いておりましたが、三分間程過ぎましたから、機を見て私が注意をいたしました。皆さんも時間を見て一つお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/5
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006・矢野酉雄
○矢野酉雄君 今御説明、御意見等がいろいろあつたのですが、漁業方を今度いよいよ国会が作るについてのあなた方の御意見としては、経営者というのでも、大部分の諸君はやはり非常に御苦労なすつて、汗を流して、いろんな困難を乗り哲えて漁業の十分の体験を持つた人が大部分であつて、ただ東京辺りにおつて、資本を投下して、そうしてのうのうとその利潤のみを、分け前を取るというような、そういう考え方はこの漁業協同組合法においてもすでにこれは排除して、そうして漁業法もそれを狙つておりますから、そうするとあなた方は、そういうような経営者はもう水産業から全部駆逐してしまえという御意見ですか。汗を流している実際の漁師の諸君を今まで不合理に、或いは不公平に法が擁護して来ておる。不公平に擁護しておる。それを最も合理的に公明正大の立場から共に生きる、経営者は経営者として一つの分を守り、漁民は漁民としての当然の権利というものが保護せられなければならんというようなふうな考えでなくて、全然漁民だけで、経営者は駆逐してしまうというようなそういうお考えですか。
この点を大事な問題でありますからお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/6
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007・宍戸賢二
○公述人(宍戸賢二君) お答えいたします。
経営者を全然駆逐してしまえということは、私は発言していないと思つておりますが、勿論非常に理解ある経営者も全国にはおありのことと思つております。特に私達が経営者に一片の同情を寄せることは、やはり今度の改正漁業法によりますると、非常に莫大な免許料や許可料を取られるというようなことが、やはり経営者をして苦しめるのぢやないかと思うのです。そのためにも私達は、この政府が取上げるところの許可料、免許料というものを全免して頂きたいと思うのです。やはりそうしないことには、結局働く漁民にも、漁民自身が自営する場合においても、又経営者がやられる場合においても、結局労働者自身の生活の非常な圧迫になるのぢやないかというふうに考えております。従つて私達は決して全面的に何でもかんでも現在の経営者を駆逐してしまえということを申上げておりませんが、この改正漁業法の、特に免許、許可料というものは、私が説明の中にありませんでしたから、一問一答の中に私は述べさせて頂きたい。私は是非撤廃して頂きたいということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/7
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008・青山正一
○青山正一君 そうすればあなたのおつしやることはですね。現行法は漁業協同組合に対して非常に有利であつた。ところが今度の法案は殆んどそういつた零細な漁民とか、或いは中小漁民の生活権を脅かされるようなふうにできておるんだと、だからこういうことでは困るから、一つ漁場の管理は漁民及び団体に渡した方がよかろうと、こういう意見なんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/8
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009・宍戸賢二
○公述人(宍戸賢二君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/9
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010・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外にありませんか。外にありませんければ、次に移ります。静岡県堀江寅藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/10
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011・堀江寅藏
○公述人(堀江寅藏君) 私は靜岡県の浜名湖のある舞阪の漁業協同組合長であります。今度のこの漁業法案の改正につきまして、私は各個々の点においては多少異存の点もありますが、大体において賛意を表する次第であります。
それから二の定置漁業については、私はこれについてあまり知識を持ちませんから意見は申上げません。
三の河川に区画漁業権以外を認めておらないことの可否ということについては、私はこれは河川についても共同漁業権を與えた方がよろしいかと思います。これはやはり河川へ共同漁業権を與える。そうして自治的に管理とか保護、増殖をなさしめた方が生産力の発展に非常に寄與する点が多いだろうとこう考えまして、河川に対しても共同漁業権を與えて貰いたいと考える次第であります。
それから四の真珠業の免許が「ひび」建養殖業、「かき」養殖業と別個に適格性並びに優先順位を規定しておることの可否、これについては私は最も関係の深い「かき」の養殖と「のり」の養殖をやつておりますが、この適格性及び優先順位については、これは適正なことと存じまするが、ただこの漁業権の年限が五ヶ年ということが、これは資材とかその他いろいろの関係上、こういう短い期間では業者として腰を据えて安心して商売ができないというところから、これは十年ぐらいに是非して頂きたいと考えます。
五の漁業調整委員会についての意見は、これは私は適正だと思います。
それから六の免許料及び許可料の問題でありますが、これは第七十五條の免許料又は許可料の財源を以て漁場整理に伴う補償金の交付、それから委員会及び法律施行に伴う費用等に充当するということは、これは漁業制度を劃期的に革新して、そうして漁民の民主化を図り、漁民を解放するという趣旨からして、甚だこれは矛盾しておるように思いますから、これはこの費用は国家において負担して頂いて、そうして免許料とか許可料というものはできるだけ軽減して、そうして漁民の負担を少しでも軽くして頂きたいと、こう考える次第でございます。以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/11
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012・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 何か御質問がございませんか。御質問がありませんければ次に移ります。
ちよつと御注意申上げますが、この漁業法案に対する公聽会の問題として六項目を提出してありますが、これは必ずしも六項目全部をお述べにならんでも構いません。その中で最も必要だと思うことをお述べになつても差支ありませんから、さよう御承知を願います。東京池田文爾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/12
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013・池田文爾
○公述人(池田文爾君) 私は日本定置漁業協会の常務理事をしております池田でございます。與えられました時間が極めて短い時間しかありませんので、單に定置漁業に関する事項だけを取上げて簡単に申述べます。
法案第一條の目的を、読みまするというと、漁業調整機構の運用によつて漁業生産力の発展と漁業の民主化とを明記するものでありまして、今後の漁業の在り方については確かにまさにそうなければならないと考えておるのでありまして、この立案の趣旨に対しましては、全面的に賛成する者でございます。でありまするから、法案の第二條以下百四十五條に及びまする各條項は、いずれも第一條の目的即ち漁業調整機構の運用によつて漁業生産力の発展と漁業の民主化を達成するために設けられたものであると大きな期待を持つて熟読玩味したのでありますが、第十六條の定置漁業免許の優先順位を読んで見ますると、法案の目的とは相容れないような、むしろ逆の感さえ懐いたのでございます。即ち第十六條におきまして定置漁業の免許の優先順位を最終段階的に決定づけておりますために、定置漁業の免許という最も重要な漁業権の帰属に関しまして、民主的であるべき漁業調整機構が何らその運用力を発揮する余地がないという、頗る非民主的な矛盾、即ち法案第一條の趣旨に副わないような結果に陷つておると考えるのであります。漁業調整委員会は、その七割が漁民の選出しました委員によつて構成されておる民主的委員会であるに拘わらず、その運用力を著しく局限するような法案は、法案そのものがすでに非民主的でありまして、仮に調整委員会の判断に任せきれないという考え方から、優先順位をかように法律によつて細かく規定したとしたならば、それは立案者の独善的な考え方であると申さねばならないのであります。法案第十六條の第六項、第九項及び第十項の規定は、漁業協同組合又はこれに準ずる漁民団体に、定置漁業の免許を優先せしめるという法律でありますが、定置漁業権を優先的に漁民団体に與えることが漁業の民主化であると考えることは、定置漁業の特殊性とその実情を無視したか、或いはその実情を知らないで、單に机の上の考え方でありまして、従来の経営者を一概に資本家的ボス扱いにした見方と、定置漁業というものが極めて有利な漁業であつて、今までボス共が利益を壟断していたのだから、今度こそ、零細漁民に利益を取戻してやるというような考えが前提となつておるように思われるのでありますが、若しさような考え方としましたならば、これは大変に間違つた見方でありまして、定置漁業を、一本釣りや地引網と同様、誰にでも容易にできる漁業のように極めて甘く見過ぎた結果でありましよう。今更申上げるまでもなく、定置漁業ほど高度の技術と、経営上の経験と、多くの資本と、辛抱強さを要する漁業は、他にその例を見ないのであります。然るにその半面、局地的の不漁や時化、或いは急潮等の災害を蒙り易いのでありまして、その証拠には、水産庁の資材課に行つて見ますると、殆んど毎日のように何処かの定置漁業者が、災害に上る資材の特配の陳情に来ておるのを見ても分るのでございます。昔から大謀網の親方を、朝大名の夕乞食と申したほどでありまして、若し定置漁業が零細漁民を裕福になし得るよな、損のない、絶対に儲かる漁業であるならば、現在全国定置漁業権の七割以上を占めております漁業組合が、そのように有利な漁業を自ら経営せずに、その大部分を他の経営者に賃貸している事実を、どう解釈したらよいのでありましようか。以上を現実的に考えて見まするというと、定置漁業は極めて多額の資本を要しまするが、これは豊漁に恵まれました場合には、多くの漁利を得ることができる漁業であります。併し不漁が続き、災害に見舞われた場合には、投下資本を全く回収できず、再起不能な痛手を蒙ることがしばしばある不安定な漁業でもあるのであります。而も局地的な不漁は周期的に起り、不時の災害は低気圧の襲来等に伴つて、毎年のように蒙りがちであります。一定の水面に長い間網を敷設し、魚群の沿岸来游を待つて始めて漁獲する定置漁業にありましては、海の豊凶性と災害に罹る率の高いことは、避け難い定置漁法の弱点と申さなければならないのであります。若し不漁や災害に襲われて、巨額の損失を蒙つた場合、利によつて集まる者が多ければ多いほど、収拾に困難を来すことは人情の然らしむるところでありまして、これを逆に申しまするならば、経営の責任を負う者が少ければ少いほど、定置漁業の弱点であるところの豊凶性と罹災に対しまして、何とか善処することができるということになるのであります。即ち朝大名のタ乞食でありましても、それが個人経営者である場合には、他に迷惑を及ぼしませんが、若し零細なる漁民の組合が、不幸にして数千万円の損失を蒙つた場合には、組合及び組合員に及ぼす影響が如何に大きいかということは、思い半ばに過ぎるものがあります。現在定置漁業権の大部分が賃借関係にありますことは、この間の事情を雄辯に物語つておるのでありまして、自営能力がないか、或は自営による損失の危険を避けて、絶対取りはぐれのない貸付料を取る方が安全であるという組合が、絶対多数を占めている証拠であります。
このように申しますと、それならばそのように不安定な定置漁業を経営する者がなぜあとを絶たないのか、やはり利益があるからだろうという疑問が起るのでありますが、経営者の実情を調べて見ますと、一度この漁業に足を突込みますと、損しても得してもなかなか足が抜けないのであります。山ほど借金を背負いましても、経営者でいる間は何とか切抜けて行きますが、止めたら最後その日から生活することができない、生活不能者になつてしまうのであります。ずるずるに明日の漁を楽しみに今日を過しているというのが大多数の定置漁業者の実情であります。然るに漁業法案が、就中漁業権制度の根本的改革をめぐりまして、漁民の間に大きな関心を持たれているのはなぜでありましようか。それは今回の漁業法案では、漁業権の貸付は許さないという條項があるからでありまして、もともと漁業権の本質からいいますると、漁業権は漁業を自ら営む者に與えあるべきものであることは当然であると考えるのでありますが、従来漁業権の貸借問題をめぐりまして、醜い紛争や不当な要求や、利権屋の暗躍が到るところに惹起した例は枚挙に遑ないほどであります。又漁業権という公有水面上に設定されました無形の権利によりましていわゆる不労所得を得るということは、漁業権者が何人たるに拘わらず好ましからざることであります。併し従来漁業権の貸付によつて利益を得ていたものが、新漁業法によりましてそのことができなくなり、みずから漁業を営むにあらざれば再び漁業権が與えられないとなりますると相当の打撃でありまするから、とにかく自営云々は第二の問題とし、表面的に形式に整えて漁業権の再配分に預ろうとすることは当然であります。そこに大きな無理が生じますので、その間隙に乗じまして新たなる悪質ボスが現れるであろうことは想像に難くないのでありまして、それらの例は私も近県におきましてもすでに数件知つております。そうして現に漁村が分裂化する現象を起しておりますことは皆さんが十分御承知のことでありまするが、そのこともやはりこの間の事情を裏書きするものでありまして、御当局の意図します漁業の民主化が法律を惡用する者のために却つて災いされる虞れさえあることは一応考えて見ねばならないと存じます。元来定置漁業は他の遠洋漁業と異りまして、漁場地先の漁村とは切つても切れない関係があります。たとえ経営者に漁業権が與えられましても、その経営者が地元漁民の協力を得られなかつたならばその事業は必ず失敗に終るのであります。又甲の漁場の成功者が必ずしも乙の漁場を経営するに適当であるとは言えないのでありまして、昔から綱漁師釣を知らず、釣漁師網を知らずと申します通り、漁師にもそれぞれ得手不得手があるのでありますから、況んや定置漁業のごとき複雑困難な漁業の経営者を単なる一片の法律によつて優先的に決定するがごときは誠に危險でありまして、もつと実情に即した冷静なる判断が最も望ましいのであります。即ち経営に十分なる資力、修験、労力ある地元漁民の実情等が混然として一体となり、総合的な力が結集された場合、初めて定置漁業本来の真価を発揮し、生産の真の民主化が得られるのでありまして、それには漁業協同組合の自営たると、或いは出資者との共同経営たると、又は個人の單独経営たるとを問わないのであります。ただ前にも申しましたように、定置漁業の経営と地元漁村とは切つても切れない深い関係がありますので、何人が経営するにいたしましても、その経営が順調に運ぶ限り、必ず地元漁民には相当の利潤が均霑される筈であります。要は経営の適否が漁村を繁栄せしめ、漁民の生活を向上せしめ得るのでありますから、経営者の選定は漁業調整委員に任せることが最も妥当であり且つ民主的であると信じます。尚操業中の調整、例えば労働條件であるとか、或いは賃金のことであるとか、いろいろ操業中に適否が出て参りますが、それらの調整は勿論調整委員によつて民主化に逆行しないようにいくらでも善導することができるのであります。以上の見方からしまして、日本定置漁業協会としましては、法律による定置漁業権免許の優先順位中法案第十六條の第六項、第九項及び第十項、即ち漁業協同組合、村張組合、或いはこれに準ずる漁民団体、これらを第一優先にするというふうな條項を削除しまして、それらを誰にやらせるが最もよいかということは調整委員に任せるべきであるというふうに考えておるのであります。
次に定置漁業の水深十五メートルの可否でございますが、只今まで申上げましたように、定置漁業と地元漁村とは切つても切れない関係にありますので、若し地先の漁民団体が定置網の経営に適当な団体であるならば、定置漁業権たると共同漁業権たるとを問わず、その漁民団体の経営に任せることが最も望ましいのでありますから、必ずしも水深を問題にする必要はないと思います。元来共同漁業権は専用漁業権から変つて来たものでありますから、十五メートルくらいにとどめる方が定置漁場との関係上共存共栄の実を挙げることができると思います。
それから漁業調整委員会につきましては、是非とも専門委員を置いて頂きたい。そうして定置漁業の免許の内容等の事前決定をなす場合、免許の申請があつた場合等は、定置漁業の専門委員の意見を重視することを要望いたすものであります。
又免許料と許可料の問題でありますが、漁業権免許に当りまして、多少の免許料を取ることは止む得ないことと思いますが、これによりまして、補償金の交付、委員会及び法律施行に伴う費用の全額を賄うということは、今回の措置が国家の施策という点から見ましても常識的に疑義があります。且つ相当多額に上ります。それらの費用を漁業者に全部負担せしめるということは、それでなくても漁業資金の重圧にあえぐ漁業者に一層の無理を與えることになりまして、漁業生産上大きな支障を来たす原因になると思われます。又漁業の許可は免許と異りまして、権利を與えるのでなく、むしろ取締という面から考えられるのでありますから、これは許可をするための手数料というふうな見方から処理さるべきであつて、原則的には以上の費用は国家負担により賄うべきであると考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/13
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014・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 池田公述人に対して御質問がありましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/14
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015・江熊哲翁
○江熊哲翁君 お尋ねいたしますが、これは原案の漁業権を貸付けることはいけないということに対するあなたのお考えを今少し詳しく御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/15
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016・池田文爾
○公述人(池田文爾君) お答えいたします。漁業権は、現在の漁業法にもありまするが、漁業を営む権利でありまして、漁業を実際に営む者に與えるのが至当であると思います。これを貸付いたしますと、従来もいろいろと弊害が起つておりまして、例えて申しますると、定置漁業というものは非常に資本を要しまするし、又多くの犠牲も拂いまするし、そのように非常に犠牲を拂い、多くの資本を拂つて経営をいたしまするに拘わらず、自分が漁業権を持つていないで、それを貸付けて貰うというと、漁業権者の非常に有利な立場にあるわけであります。ですから、仮に五ヶ年なら五年経つと賃貸漁業権が切れまして、今度わきから更に有利な條件を以てその漁業権を借りに来る者がありますると、今までその漁場を間発した功労とか、そういうふうなことは一切考えずに、そちらの方へ持つて行つてしまうというような、つまり今までの漁業経営者に対して、非常な不利な條件でその賃貸條約を取交わす、いろいろつまり漁業権の貸借という立場からいいまして、片方が非常に不利であり片方が有利のために、そこにいろいろ煩わしい問題が起つて来る。こういうことが非常に考えられるのでありまして、本質的には、漁業権は漁業を経営する者に與えられるべきであると思いまするし、只今も申上げましたように、若しそこにそういう不当な要求、或いは不当な取引きということが十分に監視され、調整されますならば、漁業権を貸付ける、あるいは経営者と共同経営を続けるということも考えられて来るのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/16
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017・江熊哲翁
○江熊哲翁君 経営者という言葉をお使いになつておる、その経営者という意味の中にはいろいろいな人たちが含まれると思いますが、例えば、こういう場合における経営者に対してはどういうふうにお考えになるか。即ち例えば、千葉県なら千葉県の沿岸で定置をやるというときに、その経営者が長野県の人であるというような場合も、資本及び技術を持つておれば大いに差支ない、よろしい、やつてよい、こういうことを意味している経営者も含まれるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/17
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018・池田文爾
○公述人(池田文爾君) 例えば、千葉県の地元の漁場におきましては、その土地の人が経営するということが望ましいのでありまするが、併しこれを非常に局地的に小さく考えますとそういうことになりますので、殊に日本のような小さい国においてお互いに繩張りを固辞するよりは、むしろ千葉県に経営する人が長野県の人であろうが、京都の人であろうが、最もその地元のためになるように経営して呉れる者であるならば、若しその土地の人がその地元のためにならないように経営する人に比べれば、非常にまだまだましであるとこう考えるのであります。でありますから、経営者は必ずしも地元の者に限るというふうな狭い考え方は私は採らないのでありまして、ただ一番望ましいことは、定置漁場というものは地先の漁村と切つても切れない関係にありますから、若し地先の漁業団体が十分の経験と経営能力を持つているならばその漁民に與えることが最も望ましいことと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/18
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019・江熊哲翁
○江熊哲翁君 重ねてお尋ねいたします。その地元に技術、資本というものがあれば、地元の人がやるのが最も望ましいという今のお言葉によりまして、この順位が設けられている。その順位の筆頭に漁業協同組合が置いてあるようでありますが、そのことに対してあなたの御公述は多少御不満なように聽いておつたのであるが、むしろこういう順位は全廃して考えた方がいいのだというように聽き取つたのでありますが、そういうようにお聽きして差支ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/19
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020・池田文爾
○公述人(池田文爾君) 差支ございません。只今江熊委員から仰せになりましたように、その地元が最も適当であればその人にやらせることが一番望ましいのでありまして、それを法律によりまして何でもかんでも優先的に漁業協同組合ならば、外のものは全部措いてしまつてもそれに優先するという規定を設けますと、その定置漁業経営に的確であろうがなかろうが、ただいわば利権を繞りまして、形式だけを整えて、そうして漁業権を得ようとする、そういうものは現に漁村の分裂化によつて十分できております。例えば一つの漁村におきまして、従来一つの漁業会があつたものが、一つの漁業権を繞りまして三つにも四つにも分れて来ている。而も分れてできている漁業組合なるものが、内容を見ますと、そういう何千万円を投ずる資本的の漁業を経営するに足る能力があるか、経験があるかということになると、全然経験のない者までもただその法律の穴を狙いましてどんどんと作つているわけであります。そういう作つている後には、いわば闇のボスが暗躍している、こういう例を我々二三知つております。そういうような危險がありますから、法律によつて一概に優先順位は決めずに、誰にやらせることが一番的確であるかということは、漁民が選び出した調整委員会の判断に任せることが、一片の法律によつて決めるより一番的確であり民主的である、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/20
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021・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外にありませんければ、次に移ります。富山県安居篤孝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/21
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022・安居篤孝
○公述人(安居篤孝君) 私は問題として提供されました六項目の中の第一と第二と第五と第六に亘りまして、與えられました時間内に所見を述べたいと思うのであります。先ず所見を述べるに先立ちまして、只今定置漁業協会の代表者から申出られましたる法案第十六條の改正問題、これにつきまして、私はこの改正要望に対するところの意見書というものを御当院の委員会並びに衆議院の水産委員会に提出いたしました。かるが故に時間もありませんから、今協会代表者の申せられたところの意見に対する私の反駁論は、この委員会に提出してあるところの私の意見書というものをここに公述したことに書入れておいて頂きたいと思うのであります。
次に私の所見の方に移ります。ここに第一として漁業権制度の根本的改革、これについての意見を求められておりまするが、法案の第一條を見まするのに、即ち目的として揚げられてあるところのものが漁業の生産の発展、漁業の民主化、この二つに帰する。二條以下この法案に盛られたところの各條章が、果してこの第一條に掲げられたるところの目的を達成するだけの規定があるかないか、かように検討いたして見ますると、私はそれは到底不可能であるという結論に達せざるを得んのであります。然らば漁業権制度の根本的改革は如何にすればいいか、端的に申しまするならば、漁業の権利である、即ち漁業権とすれば、沿岸の漁業であります。定置漁業というものが、最も目に立つところのむのである。かような権利は悉く協同組合に対して與えるべきものである。然らざればいわゆる根本的改革は駄目だ、できない、かような結論に達するのであります。細述をしておりますると、時間がかかります。でありまするからその要点だけ申上げます。
地方におけるところの、この沿岸漁業なるものは、これは原始産業として農業と共に車の両輪のごとく、鳥の両翼のごとく、地方の末端公共団体の構想というもの、政治、社会、文化、教育、あらゆるものが、この二つの原始産業というものを根柢として、これの地盤の上に現存されているものである。従つてこのあらゆるところの構想、建造物そのものを民主化するということは、即ち民主国としてこの政治を議する殿堂としての最も、あらゆる点から見て必要なことである。その一端をなすところの漁業権の解放もこれに関連して考えねばならない。單なる一つの産業面のみだけに、而してこれを民主化するというような狭い範囲の観点を以てやることはいけない。各員は政治の上に対してあらゆる点において與えられたところの民主国、その民主国をして有終の美をなさしめるという見地の上に法案を審議されるものと私は考えます。かような見地からしてその目的を達するためには、これはこの漁業権制度というものの根本的改革はどうしても協同組合というものに対して與えるものでなくては達することができない。尤も第一次の案はそうであつたのです。第一次案を作られたときには、御当局としましても、恐らくこの極めて民主国という急転したところの国情を眺め、そうして極めて純真なる立場において、この農業と共に車の両輪をなす一つである、この漁業というものに対して、眺められて、そうして実際施行の立場において検討されたものが第一案であります。その第一案においてはそういうふうにできておつたのであります。その点時間が経つに従つて雑音が入り、來雑物が入り込んで来て、第二、第三案も、第三案に至つては実に肯定してしまうことになつた。現行法と余り変らんものになつたのであります。このときにも、私は北陸三県の会議に出ましたときに、私としては絶対に反対である、それが今度第四案において優先順位というものができて、協同組合に優先せしめるという形になりましたけれども、併しこれだけ見ましても、その他の條章において、ややともすれば肯定するところの穴が一杯あるのであります。かるが故にかような蛇足のことはせずに、あくまで端的に、協同組合に対して沿岸の漁業権を與えるべきものである、こう規定すべきものである。そうなくしてはこれは達成することはできない。民主化という所以にならない。時間がありませんからあとは御質問に任せることにします。
第二の問題につきましては、これは五十歩、百歩のものである。最高潮時の身網の水深の程度を二十七メートルに延ばして見ても問題は一つである。大体この規定なるものは非常に矛盾しておるのであります。共同漁業権内に包攝されたるところの定置漁業の身網の水深が十五メートルである、即ち八尋。定置漁業権利において免許されたものは、仮に二十メートルの地区にあると仮定して、この身網の水深は二十メートルである。定置漁業というものにはかけ網というものがあります。かけ網が五十メートルまでの所に来た場合に、十五メートルの身網の水深とするところの、それは共同漁業権内に包攝せられるところの定置漁業として一番延びたところの五メートルの所、この十メートルとというものは相撞着する。若しも定置漁業が二十メートルの身網である。そうして十メートルの所までその身網の末端が来たとする。そういうものが潮時であるとする。そういうときに共同漁業権の範囲において定置漁業というものがある。それは十五メートルの身網である、水深のものに近いとする。そうしますというと、十メートルというものは完全に潮時に定置漁業というものが出て来る。従つて共同漁業権において與えられたところの定置漁業、即ち小規模の定置漁業はなんら用をなさない。而もこれを漁業調整委員会に諮つて見たところが、権利の上において二つのものがある。一方は定置漁業権として直接経営者に免許を與える。一方は共同漁業権内の負担力に基いて、その組合なら組合の定款に基いてそういう定置漁業を営ませるという形を取つておる。これを調節する場合に、極めてそこに困難な問題が生じて来るのであります。定置漁業同士の争いならば話がまだ分る。共同漁業権なら共同漁業権同士の話ならまだ話はつくのであります。この問題は一方共同漁業権という権利の下に行うておるところの行為である。一方は定置漁業権という権利の下において行うところの行為である。これをどうするか。如何なる法律的の根拠によつて行つておるか、それが相撞着しておるのは、いかにせんこれは指示事項では解決できない問題であります。いわゆる委員会に與えられておるところの指示事項では解決ができない問題であります。かような矛盾がある。であるからして、十五メートルを二十七メートルに延ばしても、更に三十メートルに延ばしても結局は同じである。であるからして、定置漁業そのものが身網の末端という水深を根拠とせない以上は到底こういう矛盾は到るところに生じて来る。かるが故に本来これは沿岸の漁業権なるものを一方は個人に押えるというような構想の下に作り、一方には又民主化という意味からして団体に與えにやならんというような二つの相容れざるものを無理に形造ろうとしたところの欠陷、そういう無理なことを無理に合わせようというところの欠点を暴露しておる、知らず識らずに暴露している。かるが故にそもそも漁業権制度の根本的の改革である限りにおいては、さような定置漁業という個人に與えるという一つの観念、民主化するという意味合において協同組合に皆渡そうという観念を引継ぐことなしに一方切つちまう。又これは協同組合に與えるものという頭において立案したならば、こんな矛盾は生じないと思うのである。これはこの問題としまして、次に第五の問題であります。
私はこの調整委員会というものについては極めて至難な問題があると思う。現在規定されているところのこの公表されたものを見ますというと、極めて複雑多岐である。そうして日限を以て追えば、これは民主的において最も遅れているところのこの漁民である。漁民に対して余りに多くの期待を持つて、理想に過ぎている。この立案者の狙いというものは、これはボスに牛耳られることになるかも知れんということを私は考えている。この委員制度においては、従来のボス、網元、船元というようなボスに牛耳られてしまつて、彼らのものになるであろう。そして支配勢力に相も変らず握られて、一般漁民大衆は搾取されるということを予想している。併しながらそれは幾度も幾度も繰返されているうちに漁民は自覚するであろう。自覚して初めてこの運営というものは意味あるものに作り上げてくれるだろう。こういうことを予想する、極めて理想案である。成る程そういうことを幾度も幾度も繰返せば、又も又もやつているうちにこれは駄目だ、我々は団結して、我々は我我のものとしなければならん、ボスの親方や、船元に怒鳴りつけられて、それに従つておる必要はない、自由なる意思でできないということもあるかも知れない。併し最も遅れておる漁民層としては、それはまだまだそういう理想案を今気長にやる場合ではない。今日は飽くまで他力を念願して、彼らが自力に目醒めて自力で行動するということは日暮れて途遠しで、私は飽くまで他力を主にして指導してやらねばならない。かるが故にこの委員会なるものを運営するためには、先ず委員というものの選挙権と被選挙権というものについては大いに検討する必要がある。それはどういうふうに検討するか。そもそもこの水産業団体法というものは、二十年の十二月に、いわゆる戰時統制で以て強行されたところのあの団体法なるものの、取敢えず役員というものの選出方法をあの時松村君が農林大臣で改正をした。かかるが故にあの改正した後において役員を選挙した時に初めて出た者その者を除いて全部この選挙権と被選挙権をも持たない、こういう規定を入れておる。同時に又そういう人は協同組合の役員となることができない。これをも規定している。そうして従来の漁業権を以て地方において封建的な一つの勢力というものを構成しておつた。そういう点をこの新制度の下から放棄して、パージする、この手を打たない以上はやはりここに言うところの漁業権制度の根本的改革などは得てして望むべからざることである。私は第五についてはさようなことを提案する。何となれば又何のためにこういう制度を、現行法を改正して、新法を作らなければならなかつたか。つまり現在あるところの漁業権を取上げて大衆に與えるということが狙いである。取上げられたものを又元に戻すようなことであるならば、こんな改正はする必要はない。取上げるということは、持つておるものを取上げるのである。持つておるものに持たしておいては悪いからだ。そういうように取られたものを、又再び獲得するような機会を與えておくならば、何の必要があつて取るのか。取る必要がない。取る者があれば、取られる限りにおいては、持つている者がある。その持たしておくのが悪い。他から取上げて、それを再び持たすということならば、何のために取上げる必要があるか。これから見ましても、この調整委員会の運営というものを、最も有終の美をなさしめるためには、さような人々をパージして貰う。誠に気の毒なようなことであるけれども、併しそれは今の日本国家そのものを民主国として築き上げようとするためには、そうして最も強く封建的の思想というもの並びに制度、それは冠婚葬祭に至るまで、年中行事に至るまで、封建的のシステム、セオリー、思想、あらゆるものを以てかたまつておるところのこの地方、それを民主化することは最も必要なことである。この末端地方公共団体は国家そのものに先立つて行くものである。これが民主化されんことには国家の民主化ということを言うことには口巾つたいことだと私は思うのであります。かような意味合からして、調整委員会というものの運営という点は、今の法規だけであつても極めてこれは複雑多岐なものである。ボスが跋扈する。そうして漁民の自覚を待つということでは、極めて迂遠極まる話しである。飽くまでここでは他力を漁民の上に加えて、もとより他力本願ばかりにやらしてはいかない。自覚するためには他力を加えて、こうして自覚の道を知らせる。いわゆる根本的に言うとポンプに迎え水をかけてやるというようなもので、こういうことが必要だと思う。
次に免許料を取る。これも私が昨年のこの第三次法案に対する意見を問われた時にも言つたが、一体この漁業制度というものは、これは国家の行政である。行政であるならば、行政費というものを漁民からは取つてはならない。当然これは国庫が負担すべきものだ。若しかようにばらばらな漁業に対する制度であるなら、免許料、許可料、それで賄う。農業の方ならば農民がそれらを賄うが、各自ばらばらにその方面から取らなければならないが、そういうものでない。行政費である以上は、国家が負担すべきものだ。国家が支弁すべきものだ。これではギブ・アンド・テークである。漁業権は貰つた。有難いと思つたら、豈図らんやそれ以上に、入るもの以上に取上げようとする。與えておいて取ろうという、そういうことではいけない。これは飽くまで国家が支弁しなければならん。
私はここに委員各位に特に聽いて頂きたいことがある。今度の法案におきましても生産組合というものができたために、農林中央金庫、あの方も水産の方面においてこの生産組合に加入できることになつておる。これはあの農林中央金庫というものの運営ということにつきましては、あれを大いに検討せんとするものである。折角今漁業権というものそのものの根本的制度改革である以上は、而して漁民に対する協同組合というものに沿岸の権利、皆ことこどく與える、自営せしめるという限りにおいては、資本的においても困ることがある。それは定置区漁業者の諸君の漁業の経営は、いうがごとく貧弱なものじやない。貧弱なものじやないけれども、差当り現在の国家としては、あらゆる方面において金詰りである。そこで私はこの免許料、許可料というものを相当取つておいて、取つてもいいが、これは沿岸漁業というものを自立させる意味において、このものを国家に一つの金庫を作り、その資金に充当する。大体日本人は今迄、私も日本人の一員でありますけれども、余りに中央に依頼をし過ぎている。それは今までの旧憲法時代においては、そうしなければならなかつた。中央集権主義、そういうことをするためには飽くまで中央に依頼させなければならん。よらしむべし、知らしむべからずという体制でなければならなかつた。それで国民は挙つて、国庫に向つて援助してくれ、金融してくれというが、政府は金のなる木は持つていない。然るにこれはもう中央集権をするためには、中央に惹付けなければ地方に威令が行われない。こういう仕組であつた。併し今日は地方分権主義である。民主政治である。地方分権というものを今やつている。かるが故に飽くまでこの機会においては、免許料、許可料というものを取上げて農林中央金庫を中央の監督の下に使わせる。そうしてこれをいわゆる保險というものも兼ねて行わしめる。全く採算的、営利的にこれ携は行つていい。そうして成績のいい網には、どんどんその金庫に資金を投資せしめる。もとより配当が與えられる。ペイイング・システム、かような考えの下に進んで行つて貰う、絶対に保証金というものは要らん。保証金は第一次案には取らんことにすると、第一次案は漸進的な立派なものであつた。取る必要はない。一同のための保証金だ。大体都市と地方とは違う。それから公共の用に供する水面というものに対して、一遍知事に認可申請して、認可してぼかつと取つたものである。而も仕事が遅れた。営業はそのために取消される。引続き二ヶ年やらなければ取消される。そういう性質のものに、一体何の権利があるか。大体物権として取扱うのが無理なんだ。物権としてみなす。そうして土地に関する法律を準用する。みなしていて準用している。大体物権と見る。公共の用に供する、單に観念的に有する権利行為だ。これを物権とみなしている。これは不都合だ。これは木に竹を継いだようなものである。これは権利として、物権としてみなすわけに行かない。大体県で認可して、これを補償して買上げる。何時でも知事に取消される運命にある漁場が沢山ある。現行法において免許を取つても、二ケ年間引続いてやらなければ、免許を貰つても、その年やらなければ取消される。そういうものが沢山置いてある。それを今政府が買上げる。その與えた漁民の免許を取上げて、その補償を国庫で拂つてやろう。百六十億の金を與えてやろう。以て外の話である。少しもこれは権利でない。一銭も貰う必要もない。やる必要もない。これは公営に値するところの公権である。免許を貰つて、営業さして貰つて何の権利の価値があるか。これを物権というもの、一つの所有権とみなしている。そういうようにみなしておつたのが間違いである。かるが故に、これは細説する時間もありませんから、これはもう今言つたことで十分終つている。細説する必要はない。
大体かような意味合の下に、この法案というものを改正をして貰いたい。併しながら私はかように思います。第一次案から今日第四次案に至るまで、随分御当局は御苦労なさつた。御当局の御苦労は、私は実際感謝している。それは今日の国情柄として、主権がないというので、或法案を作つて見ても、それで議会でやられて、そうして通過というわけに行かない。そういうような国情であるから、御苦心の程は十分察します。而して又この法案たるや、常に延び延びになつているから、願わくばこの議会において通過さして頂きたい。頂きたいのでありますが、今私が申上げるように、折角できているものを又根本的にやり直しにして、又いろいろな議論が出て来た。出て来たが、併し最終的にはそこまで持つて行かなくちや、いわゆる漁業権の制度の根本的改革というものは、百年河清を待つがごときものである。かように私は考えるのであります。それで第十六條の優先規定というものは固よりこれを十分に生かす。そうしてこの免許料、許可料というものを取敢えず認めるが、農民の力で以てこの農林中央金庫というものを、独立の一つの金庫を農民の力で以て作らなければいけない。私はこの点について昨年……、英国の炭坑夫というものを見なさい。彼らは炭坑夫で立派な銀行を作つている。こういうふうなものを作らせる。私はかように或るサゼスシヨンをしたことがあるのであります。それでこういう意味合におきまして今度の法案を実施される場合の漁業調整委員会に対するところの今言つたところのこと、パージするという規定を是非入れて置いて貰いたい。そうして料金を、免許料、許可料というもの、こういうものを、皆行政費は国庫で以て支弁する。免許料、許可料というものはそれで銀行を作らせる。金庫を作らせる。この金庫に資金をどんどん出させる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/22
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023・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 大分時間が参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/23
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024・安居篤孝
○公述人(安居篤孝君) かように一つ御配慮を願います。委員各位の御盡力を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/24
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025・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 何か御質問がありましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/25
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026・青山正一
○青山正一君 そうすればあなたの御意見は、つまり協同組合にすべての定置漁業権とか、その他の全部の漁業権を與えなければ漁業権制度は完全とは言われない。要するにこういうわけですね。それであなたの方のいわゆる漁業経営者というものは非常に個人的な経営者が多いのじやなかろうかと思いますが、富山県の場合は。それについて何かあなたの方でこれが惡いとか、あれが惡いとかいうような、あなたが最前から個人に渡すということが非常にいけないというふうな理論も多少あつたように思われますが、そういうような個人の経営者に渡すことがどうして惡いでしようか。その点を一つ承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/26
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027・安居篤孝
○公述人(安居篤孝君) お答えいたします。定置漁業権でありますが、これは漁業会が持つているのは全国で約七割、個人が三割、特に富山県は例外なく個人が持つているのであります。石川県も富山県の方に接続した方面では個人が持つている。一種の富山県流が流れておつたと思うのです。富山県の個人が持つている個人漁業権の経営について非常に惡いという点はどこにあるか。それは封建性であるからいけない。この分子は今漁業改革をしましても、そうして協同組合の一員として打つて一丸としようとしても一丸にならない。水の中に油を溶いたようになる。何となれば彼らはすべて、私も曾てはそうでありますが例えば私のところの舟子はこれは安居家の舟子である。それは親代々受継ぐもので、年中の行事がある場合でも振舞いでもしてやる場合にはその従業者が上下の席順で坐る。こういうふうなやり方があるのです。そういうものが今日この各個人個人の漁業者が今度は連絡しまして、団結しまして、そうして協同組合というものを作つて親方を主にして集つている。そうしてこれらは各乾分を引連れて一団をなしておる。私の所では、これは全国でも有名な漁場でありますが、昨年あたりは二億から漁獲高が上つておる。そういうものが、石川県に至る丁度海岸五里というものの漁場を独占しておる。これは村長、村会議員、市会議員の選挙というと一緒になつて運動しておる。我々の親方だ、そういうことを言つておるのです。この団体の結合力というものは非常に強い。そこで協同組合というものは作つても皆各人がやはりこれらはいわゆる我々の親方である、我々の一団だという観念が抜けない。水に油を入れたように融和しない。私はこういう見地からこれは不完全である、パージ、追放しなければならん、そういう意味なんです。それから漁業会が権利を持つておるということを認めても、これは今日の漁業会というものは二十年の十二月には改正されましたが、富山県の岩瀬あたりでは、その後改選しまして、字も読めないところの者で役員を占めた所がある。そうして専務というものは、文字のできる者を他から連れて来て常務をさせておる。どこへ行つても大概は漁業会というものはそうで、そういう者をパージしなければ本当に漁業権制度の改革はできんと、かように私は思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/27
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028・江熊哲翁
○江熊哲翁君 漁業権制度の根本的な御意見は十分拜聽はいたしましたが、私は少し違つた意味で具体的に一つ簡單にお答して頂ければ大変結構だと思うのでありますが、この定置漁業権の場合の順位というようなものは、今のあなたのお話によれば、止むを得ずこのままやつぱり認めた方がよいのだという結論になるというように今解釈して差支ございませんか。つまり現在のこの法案で修正しておるところの優先順位というものは一応認めるより外仕方があるまいと、かようにお考えになると解釈してよいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/28
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029・安居篤孝
○公述人(安居篤孝君) 定置漁業協会の代表としてさつき述べられました意見につきましては、これは九月一日付を以て日本定置漁業協会という名の下に参衆両院の委員会に宛てて修正要望というものが提出されておる筈であると思います。当然委員各位はそれは御存じであると思うのでありますが、この意見に対しまして私はその修正要望に対する反対意見を出したのであります。そうして各衆参両院に差上げて置いてあります。これで以て今ここに申されるところのことは全部盡きると思います。それをこの記録の中に入れて置いて貰いたいというのでかように申したのであります。何となれば池田さんは先にこの協会の名の下に提出されてあることをここに先に申された。池田さんの発言はその修正要望そのものであつた。それで私は反対意見をすでに出してありますから、ここに重複する必要はないが、併しながらここにやはり公述したものとして附加えて頂きたいということを、すでに池田さんも先に提出した修正要望を重複したのですから、私も敢えて重複する必要はないが、これを記録して置いて貰いたいというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/29
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030・青山正一
○青山正一君 重ねてお尋ねいたします。この法案はあなたのお考とは大変違つておるのであります。この程度の法案でも通した方がよいとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/30
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031・安居篤孝
○公述人(安居篤孝君) それは先に申しました通り、非常い延び延びでありますから、この法案に対して修正すべきところの希望といたしましては、免’許料、許可料というものは或る程度行政費に廻して貰いたい。これは別に金庫制度を作るという構想の下に案を作つて貰いたいということが一つ、委員会の委員長の選挙権、被選挙権というものはそれは二十年の十二月に水産業団体法というものが改正された。その時は役員は民選であつた。上から来る選挙でなく皆選挙することにした、その後において選挙されたところの、初めて出た者を除いてあとの役員は全部パージだ、追放するということ。選挙権も被選挙権も持たせん。そうして個人漁業権を持つておる者に対して、漁夫となつておるところの譜代の漁民、これを共にパージしてしまう。これは譜代の漁民であるかどうかということを検討するためには、協同組合というものを作つて、協同組合の総意によつて、組合の名の下に、お前はだめだ、貴様は代々譜代じやないか、やめろ、これでやつて貰いたいというのであります。この二ヶ條をぜひ入れて貰わなくちや折角作つてもこの法案というものはすでに当局が心配しておられる如くに、委員会というものは相変らず休止してしまう。漁民は愚でありますか……。かような意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/31
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032・江熊哲翁
○江熊哲翁君 分りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/32
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033・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外に御質問はありませんか……。御質問がないようでございますが、もうすでに十二時になりましたから、午前中はこれで休憩にしたいと思いますが……。(「異議なし」と呼ぶ者あり)それでは委員会は休憩とします。午後一時から再開いたします。
午後零時二分休憩
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午後一時三十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/33
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034・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 午前に引続いて再開いたします。
先ず京都府の田中正雄君の公述を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/34
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035・田中正雄
○公述人(田中正雄君) 私は京都府漁業協同組合連合会の専務理事でございます。
京都府における漁業の実態と協同組合の理念に立脚いたしまして、問題に対する意見を述べさして頂きます。
先ず二の問題でございますが、定置漁業の範囲を水深十五メートル以内にするかしないかということにつきましては、例えば二十七メートルという案があるようでございまするが、私は二十七メートル、或いはこれは三十メートルになつても構わないと思うのでございまするが、十五メートルでは余りにも小さいものでございまして、京都府の例に徴すれば、僅か二人乃至三人の漁夫を以てするいけすのようなものでありまするので、これは利用価値そのものにおきましても、極めて低いものと言わなければならないのでございます。従いまして、これをもう少しく大きくして二十七メートル乃至三十メートル程度として、協同組合の地先海面をその組合が有機的に利用するということが、名実共に可能な範囲にこれを拡張することが妥当であろうと思うのでございます。併しながら、先程安居公述人が述べられました通り、定置漁業権と共同漁業権との重複する場合の調整につきましては、これは適切な調整方法を講じる必要があると存ずるのでございます。
次に河川に区画漁業権利以外を認めていないことの可否につきましては、河川にも共同漁業権を認むべきであると思うのでございます。その理由といたしましては、河川漁業の発展維持のためには、増殖を行うことと、遡河魚類の繁殖保護を図ることが絶対的な要件であると思うのであります。法案による区画漁業は増殖を前提とするものでございますが、これのみにおいては、遡河魚類の積極的な繁殖保護は期待し得ないと思うのであります。特に河川は水位或いは流速等が常に変化しますが故に、堰堤などの工作物がない河川では区画漁業すらできない実情であります。従つて殆んどの河川は現在の法案のままで行きまするならば、漁業権によらないところの漁業が行われまして、遡河魚類の繁殖保護は殆んど顧みられない実情に立至る慮れがあると思うのであります。よつて河川におきましても、共同漁業権を認めて、遡河魚類の繁殖保養を図り、水面の総合的利用と生産力の発展を図るべきであると存ずるのであります。
荷共同漁業梅を認める場合に、増殖することを條件とするか否かという問題につきましては、河川又は漁場の実情に照しまして、調整委員の意見を聞いてすることを要件とするかとないかを、知事が決めればそれでいいと、かように考えるわけであります。
次に五の問題の漁業調整委員会についての意見、これは海区調整委員会の数は一律に定数とせず、その海区の実情に照して調整上必要とする人員を置くことができるというふうに改めて頂くことが適切だと思います。その理由は、調整委員は、法案に示しております通りに、その海区における漁業に関する事項を処理する使命を持つものであります。従つてこれを民主的に而も適性に行うためには、委員の数は必ずしも一律に限定することは妥当でないと考えるのであります。
即ち河川の広さ、或いは地理的條件、又漁民の数、漁業の種類等を勘案いたしまして、知事が調整上必要と認めた数の委員を置くことができるということにするならば、更に民主的に調整委員の運営が可能であると、かように考えるのであります。
次に免許料及許可料の可否でございますが、私はこの免許料、許可料を何に使うかという問題を論ずる前に、根本理念といたしまして免許料及び許可料はこれを徴収する制度を廃止せなければならないと思うのであります。併しながら止むを得ない場合には、少額の手数料を徴収する程度に止めて貰いたいと思うのであります。その理由はこの法律は、第一條に示しております通りに、水面の総合的利用、漁業生産力の発展、漁業の民主化を目的としておるのでございます。このことは取りも直さず平和国家の漁業国策があると私は信じておるのであります。従いまして漁民が漁業を行うために漁業権を取得し、又は漁業の許可を得るということは、この法律の目的を果すためであります。広く申しますと、憲法の十二條に示しております通りに、漁民の自由と権利を濫用することなく、公共の福祉のために利用する責任を果すものであります。その責任を果す前提として漁業の権利を得る、或いは漁業の許可を得るのであります。従いましてこの場合漁民は何等特権的なものを得るということにはならないのであつて、漁民といたしましては極めて当然のことであり、自然のことであると考えるのであります。よつて政府がこの漁業を行おうとする漁民に対しては、免許又は許可に際しまして特別の負担を課すべき筋合のものではないと思うのであります。むしろこの漁民の使命を果たすためには、政府は援助を與えるべき性質のものではないかとさえ考えられるのでございます。故に免許又は許可料は徴收せず、必要があるときに免許証文は許可証を交付するのに必要なところの手数料を徴收する程度に止むるべきであろうと思うのであります。
尚補償費として徴收する必要があるということでありますならば、これは免許料、許可料という名目の下に取ることは妥当でないのでありまして、明かに補償に要する費用として徴收するということを明文化して徴收すべきであると思うのであります。勿論この補償費に含んで行政費を賄うといつたことにつきましては、これは反対でございまして、行政費は当然政府において賄つて頂くようにせなければならないと思います。それから補償金は少くとも五ヶ年程度の期間に現金を以て交付して頂くようにして頂きたいと思います。それは経済情勢の変化の極めて多い現状、或いは将来においてもそういうことが予想されるのでございますが、そういう時におきまして、又協同組合に第一順位として免許を與えて、漁業を民主化さして行くというときにおきまして、漁村の実情は金詰りの一遂に悩んでおるのでございます。こういつた状態を一日も早く緩和する一助といたしまして、この補償金等も少くとも組合が、前の組合が持つておつたような漁業権に対しましては、五ヶ年程度の間に現金を以て交付して組合の活動の育成を図るべきだと思うのでございます。
問題に対する意見は以上でございまするが、更にこの法案は速かに適正に修正せられまして、是非とも本国会において通過成立せしめられまして、現にできておりまする協同組合に魂を入れて頂くことについて、最善の努力を拂われんことを特にお願い申し上げたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/35
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036・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 田中公述人に対する質問がありましたら、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/36
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037・江熊哲翁
○江熊哲翁君 なるべく速かにこの法案を通過させて漁民に魂を入れて貰いたいというお言葉がありましたですが、公述人の方の言われるような点が多少とも実施不可能な場合においても、そういうふうにされた方がよいというようにお考えでありますかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/37
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038・田中正雄
○公述人(田中正雄君) 修正意見として申し上げた点が、必ずしも通るとは考えられない場合もあるかもしれないのでございまするが、その場合におきましても、悪いところは今後の経験或いは実績に照しまして、どんどん修正して行かなければならないと思うのでございます。この点は、漁業法に限らず、如何なる政策におきましてもかようでなければならないと思うのであります。従いまして、單に一二点の問題が解決しないがために、漁業法案の通過が遅れて漁民が宙に迷うというようなことがあることは、これは好ましくないことであります。従いまして、我々の考えている点と政府の考えておられる点とが若干食い違うことがあるといたしましても、根本的な問題につきまして公布しない方がましだというふうに、大きな違いがある場合はともかくといたしまして、現在の法案の大部分については、漁民の多くは先ずこれでよかろうというふうな意見を持つている人が多いと、かように考えますので、修正意見については、できるだけ修正して頂くように御盡力を願いまして、只今申し上げましたような事柄において将来修正の余地があるといたしましても、速かに成立させて頂くことを希望いたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/38
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039・江熊哲翁
○江熊哲翁君 よく分りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/39
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040・千田正
○千田正君 免許料及び許可料を徴収してこれを補償金に振り替えるということは不当であるという証人のお話でありましたが、何かこの漁場整理につきまして、補償金を然らばどういう方法によつて生み出して行くかという御意見がありましたならば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/40
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041・田中正雄
○公述人(田中正雄君) 現在の漁業権の中には、持主が分れているのでございます。即ち、旧漁業会が持つているものと個人が持つているものとあるわけでございます。従いまして、漁業会の持つている漁業権というものは、これは漁業会の大切な財産であり、今後漁業会がこれを基礎にして発展して行かなければならない前提として漁業会がこれを獲得したものでございます。従いまして、これらの漁業権につきましては、組合を新しく作ると同時に、同等若しくはそれ以上の漁業権をこの組合に付與いたしまして、その漁業会の生きて行く糧としなければならないと考えるのであります。そこでこの取消した、或いは消滅する漁業権の補償金は、漁業会の場合は自分で出したものを自分で又貰うということになるのでございまして、根本理念から申しますならば、これはあつてもなくてもよいと、むしろ漁業会の希望する漁業権を将来において獲得することが先決問題であるというふうな考え方があろうと思うのであります。併しながら、物権を補償するという旧法の制度からいたしまして、補償金を交付するということにいたしまするならば、消滅した各漁業権の価値等に応じまして、例えば以西底曳が止めたと、残存漁業者がこれを補償するというような角度から、その府県に必要なものはその府県で賄うというふうな建前においてでも、各漁業権にいわゆる補償費として一定年間の間出させるということが妥当であろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/41
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042・江熊哲翁
○江熊哲翁君 今のお話で重ねてお伺いして見たいと思うのですが、以西底曳の場合に補償すると、共助するために関係業者が共助金を供出し合つてやつて行くということが、今のあなたのお話の模様によると、そういうふうになることが妥当のように聞き取れる点もあるのでありまするが、一体この補償というものを、お互が出し合つて補償し合つて行くということが妥当であるというお考えでそういうことを言われておるのかどうか、その点をお伺いをいたします。もう少し分り易く申しますと、外に方法を考えるか、先ずお互が助け合つて行くという形態をとるのが一番よいのだというお考えで言われておるのか、これは止むを得んからそういうふうにするのだというお考えで言われておるのか、その点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/42
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043・田中正雄
○公述人(田中正雄君) 現在の旧法の制度から申しまするならば、国家が当然これを補償すべき責任があると思うのでございます。併しながら、現在の国家情勢からいたしまして、国家に財源がなくて、どうしても何かの形において新しく與えて行く権利に附随して取らなければできないというふうなことであるならば、只今江熊さんのお尋ねのように、新しく権利を取る者がこれを補償して行かなければ止むを得んのではないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/43
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044・江熊哲翁
○江熊哲翁君 もう一つ、大変明快な御説明があるので、欲が出ましてお伺いして置きたいと思うのですが、現在の定置漁業権に、御承知のように順位がありますが、この順位において、漁業協同組合が比較的高い順位に取扱われておる。ところが漁業協同組合が、この際順位が如何に第一位であろうが第二位でおろうが、資金なり資材の裏付がない場合において、順位だけが高くても、実質的に結果的に見て、結局漁業協同組合というものは漁業権を享有することができなくなるのではないかというふうな話をよく我々としては聞いておるのでありますが、これについてあなたはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/44
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045・田中正雄
○公述人(田中正雄君) お説の通り、協同組合に対して第一順位を以て漁業権を政府は與えようという途を開いておりまするけれども、果してこれを獲得するだけの漁業協同組合に能力があるかないかという問題のように伺うのでございまするが、これは京都府の実例を申しまするならば、漁業権の九九%は漁業会が現に持つておるのでございます。そこで全国的なあり方からこれを判断いたしまして、果して持ち得るかどうかということは、私は各府県の実情を審らかに知ることができないのでございまするが、若し持ち得ない、持つ実力がないとするならば、結局この法案が第一順位を協同組合に與えるということにして成立いたしましたといたしましても、空文に等しくなると思うのであります。その場合には、この法案の根本理念を名実共に実施して行くためには、漁業法を離れて、別途に資金を協同組合に対して何らかの方法で貸付ける、或いは国家が援助するという方法を別途に講じなければならない。その講ずる方法を漁業法に織り込むというようなこともあるかも知れませんが、それは現在の経済情勢下において今そういう現状があるのであつて、一旦漁業組合が、権利をこれを協同経営に移して努力をして行くならば、将来においてはそういうことを長く続ける必要はないと思うのであります。一時的な現象においてのみ、なんらかの方法を以てそういう勢力のない組合に対しましては、別途の措置を以て、資金を貸し與えるとか、助成とか、助長する方策を考えて頂けばいいのだと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/45
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046・青山正一
○青山正一君 只今の江熊さんの問題について、私お聽きしようと思つておつたものがあるのですが、その問題は今御回答があつたので、止しにしまして、もう一度はつきりこの席上において確めて見たいのですが、今度の漁業法に基く優先順位というものは、別にあつてもなくても、京都は全面的に漁業協同組合に行くということなんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/46
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047・田中正雄
○公述人(田中正雄君) 只今青山さんのお尋ねの件につきましては、京都府においては少くとも優先順位というふうなものがなくても、漁業権の中九十%、もう少し細かく申上げまするならば、漁業権として価値のあるような漁業権は、全部協同組合の手に撮られる情勢にございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/47
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048・青山正一
○青山正一君 それは京都とか、或いは三重県とか、或いは若狭の一部であるとか、だけれども、他の府県におきましては、優先順位があつても、金融とか資材の裏付けがない場合には、なかなか協同組合に漁業権というものが行かない、こういうわけなんですね。先程の江熊さんの御意見は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/48
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049・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外に御質問がなければ次に移ります。それでは福井県の瀧甚左ヱ門君に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/49
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050・瀧甚左衞門
○公述人(瀧甚左衞門君) 私は福井県の和田村の漁業協同組合長であります。漁業権問題は、当然これは協同組合法案の発令と共に、若しくはその以前に出るべきものと思つておつたのでありますが、これが前後しましたことは甚だ私遺憾に存じておるのであります。併しこれも万止むを得ないとしまして、その基礎が協同組合を余り軽く見過ぎはしないかという点があるのであります。併し昭和二十三年の十月に発表されましたところの第三次案、即ち協同組合制度を認めて貰いましたなれば、これは非常に結構と思うのであります。お尋ねの問題と少し反するかも知れませんけれども、大体事務当局においてこの漁業会、以前の漁業組合が協同組合となり、名称は変つておりますけれども、この漁業会をしてボス的存在として扱つたことが私は誤つておるのじやないかしらんと思うのであります。所によつては漁業会そのもの自体がボスの存在であつたかも知れませんけれども、社会の下積であつたところの漁業者が漸く人並になつたのはこの漁業団体の力であり、これは結束して事に当つた結果であると私は思うのであります。それを今薄弱な団体にしてしまつたなれば、漁村の生命を断つも同様であり、あくまで漁業権は農家における田地田畑のごとく、漁民に下付すべきものであると思うのであります。併し海は田畑のごとく、小刻みに個人々々に分けることは不可能でありますから、漁業協同組合にこれを交付して、組合員が協同に利益を得るようにして考慮せねばならんと思うのであります。一部分のごとき個人の勢力家が取得しておるものと同様に見られることは遺憾千万な次第であります。併し北海道のごとき未開の土地を開拓された農家のように、未知の海岸に移住して海を開いた関係もあるような所は、これは別としまして、御調査の上特例を設けられてもいいとは思いますけれども、内地においては全然立場を異にしまして漁民即ち漁村であり、漁村即漁民であると思うでありますので、成るべく多くの権利を漁業協同組合に委ねることを望むものであります。経営者の場合におきましても経営、非経営に拘わらず、これを漁業協同組合に交付されたいのであります。全国におきまして、或る一方から取りましたなれば、漁業協同組合、或いは前の漁業会はブローカー式のように聞えるかも知れませんが、これは漁業経営者から酷な場代を請求して、これを濫費したり、飲食したりするなればこれは惡いかも知れませんが、当然国家がやらなければならんところの漁港であるとか、船溜りであるとか、その他の漁村施設にまで補助というものが滲透していないのでありまして、地元の漁業協同組合、以前の漁業会は殆んどこれをやつているのであります。そうすると、この財源はどこかに得なければならんのでありますので、仮令漁業組合が又貸しをしましても、その財源によつて今日漁村施設をやるとすれば、決して私は惡いことはないと思うのであります勿論どなたかの意見に、漁業権利者が酷な場代を取つて経営者が引合わんというお話もありました。それは御尤もと思いますけれども、先ず私の地方ではこれは歩合制度にいたしまして、無理のかからん程度に総生産額の中から幾分をこの漁業権利者が取つておるのでありまして、それによつて経営者が破綻するとか何とかいう場合は私はないと思うのであります。又この改正案の第二章第十四條九項に専用漁業権ある市町村も適格性ありという條文が入つておるように思いますが、これは、こういう点は抹消して欲しいと思うのでありまして、全部協同組合に渡されて頂きたいと思うのであります。今日の制度は金が山程できましても田一反、畑一枚買うことはできないのでありまして、いわゆる農村の縄張りになつたのであります。我々はこの公海の縄張りをしようというのではありません。むしろ農家の女男坊でも、散髪屋の弟でも、仕事のない者にはどしどし漁業をさして、一は失業救済であり、一つは食糧増産であり、延いては国家的の問題でありますから、それに対して異存はないのでありますけれども、その大なる所得権は、市町村とか何とかいうことなしに、如何なる慣例がありましても、この際全部地元の漁業協同組合に交付するべきが当然であると思うのであります。
それから第二に定置漁業の範囲が水深十五メートルということが出ておりますけれども、これは私はまあ二様の答弁かも知れませんけれども、大体十五メートルとすれば七尋や八尋でやつておるところの小定置のようなものは殆んど無免許、無許可のあるところがあるかも知れないと思うのであります。これは絶対的に取締らなければならんものなれば三十メートルが妥当ではないかと考えますけれども、ここではこの許可漁業の方と定置の免許の方との両方の連絡を取りませんと、最前富山県の方が仰せられましたような、道網の如きものでやるようなことがあつてもいけない。その連絡が具合よう取れんものなれば、この小定置の許可漁業に属するものは、その深さとか、距離とかいう問題を抜きにして角綱の尻位まで来るようにするのが私は妥当だと思うのであります。これはまあ二様の解釈でありますけれども……。
それから第五の調整委員会の問題でありますが、この制度は先ず大体において政府案でよろしいと思いますが、成るべく海区を少なくして、この隣りの岬まではこうであるけれども、岬を一つ廻つたらこうだということでなしに、一県一つ位の調整委員会の方が私はいいと思うのであります。
それからこの免許料とか許可料とがいう問題でありますが、勿論免許料の方が他の権利者というか、経営者の方に移つた場合には無論これは免許料は幾分取らなければ、これまででも漁業会へ賃貸料を拂つておつたのでありますから止むを得んかと思いますけれども、漁業協同組合に交付された場合には免許料も要らなければ、無論補償金もこれは要らないと思うのであります。協同組合自体がやるものだとすれば何もそんな必要はないと思うのであります。それから許可料についてはあまりにもこれは、歩合とか、或いは料金の程度にもよりますけれども、定置漁業なるものは一定の場所を区切つて、そこには何人も入ることもできない、刺網も一本釣も入ることもできない、いわゆる縄張りでありますが、巾着網でも、底曳網でも、そういうものはどこの海に行くか分らない、何百里沖へ出るか分らない移動性のものでありますから、それから許可料を取るということは本当に矛盾ではないかと思うのであります。そうでなくてさえもこの沖合に出るところの巾着網などの教千貫数万貫取るものは、運搬費、販売手数料に殆んど一割は消えてしまうし、それから所得税事業税に一割から二割以上も消えてしまう。その上に許可料として相当納める日には漁業者に入る金は殆んど半減されるわけでありますから、この許可漁業に対する料金というものは全廃して貰いたいと思うのでありまして、これを取らなければならんことであるならば幾分の鑑札の手数料ぐらいな程度にして、何分とか何割というようなことは絶対行つて貰いたくないのであります。大体私はこれで終りたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/50
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051・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) それでは瀧公述人に対する御質問がありましたら。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/51
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052・田中信儀
○田中信儀君 漁業権り賃貸借を認めよというふうに開きましたが、そうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/52
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053・瀧甚左衞門
○公述人(瀧甚左衞門君) そうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/53
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054・青山正一
○青山正一君 瀧さんにちよつとお伺いしたいと思いますが、この免許に搦んで、協同組合とか、或いは個人の経営者とか、或いは他国の経営者など、数県に亘つて一つの免許を取れば、そういう場合に個人の業者に仮に免許が下りた場合において、先程定置のお方からまあ漁業地先と切つても切れない関係にあるから、そこは円満にやつて行くだろうとか、或いは調整委員会にそういつた点を十分に含めて考えて行けば無理もなしにやつて行けるだろう、こういうふうにおつしやつていたわけですが、若し仮にこうした免許の問題に搦んで、協同組合もその免許を出願した、或いは個人の業者も免許を出願したという場合において、個人に免許の権利が行つた場合において、果して個人の業者が今までその地先の、定置を下した地先の漁民を全部使つているかどうか、今までの例はそういう点はどういうものですか。ちよつとお聽きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/54
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055・瀧甚左衞門
○公述人(瀧甚左衞門君) これまでは、漁業業協同組合以前の漁業権は私営しているか、或いは人に貸しているかで、とに角殆んど使つているものと思います。それで今度も取りようによつては少しブローカーのように聞えるかと思いますが、漁業協同組合自体を発展させる面から云うとそのくらいは與うべきものだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/55
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056・江熊哲翁
○江熊哲翁君 大変御明快な御公述を頂いて感激して拝聽いたしたのでありますが、こういうあなたの御公述のような御意見に対しては、漁業協同組合は加入脱退が自由であるというような点からして漁業協同組合が漁業権を持つということが甚だ妥当でないという説を出す人もあるのでありますが、これに対してあなたはどういうお考えで、どういうことを以て御説明なさつているのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/56
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057・瀧甚左衞門
○公述人(瀧甚左衞門君) 協同組合の加入脱退、これは明文の上から言いますとそうなつておりますけれども、私は先ず昔の浦浜式と申しますか、或いは封建的になるかも知れませんが、漁村には当然強力な漁業協同組合があるべきであり、又拵えるべきであると思うのでありまして、ボスに支配されたり或いはその漁業協同組合の名前は名前であるけれども、その裏には村長であるとか、村の何々が暗躍をするというような弱いものに私はしたくないのでありまして、加入脱退は自由と言えば自由でありますけれども、本当に力あるところの、無論漁村は固よりのこと、その地方の町村でも左右するだけの力あるところの私は組合を拵えたい、又拵えなければならんというので、現在県なり政府で漁村の施設を、漁港、般溜り、或いは油タンク、船揚場というようなものを国なり県なりがやつて呉れて、誰でも働けるようになるならば、或いは協同組合はそこの申合せ団体のような何々クラブのようなものでもいいかも知れませんが、現在は県も政府もそこまで手が届いておりませんので、近い将来にはとてもこれは三年や五年では実現は不可能だと思います。それらの漁業者が利益を得るところの、安心して働けるところの施設をするにはどうしても漁業協同組合でなければならんと思うのであります。私の所も小さい組合で人数から言えば二百人そこそこでありますが、全部これらの手で漁業協同組合の、これまでの漁業会でやつておるのでありまして、青山議員はよく御存知でありますが、そうした財源は殆んど政府や県の補助を仰がず販売手数料、それから定置の漁場料、これ二つでやつておるのでありまして、この加入脱退が自由だからそういう貧弱な薄弱な組合を許可されないというのは、みずから薄弱な組合に導くのじやないか知らんと思うのでありますが、そうして私は漁君を啓蒙して強力な組合を作りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/57
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058・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外に御質問ありませんければ次に移ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/58
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059・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 私は三重県の漁業協同組合連合会理事の里中政吉であります。
第一の点について抽象的に簡單に申上げます。新しい漁業法が生れるというので、和の方の漁業者は改正される漁業法がどんな形で生れるかということに深い関心を持つにおりまして、そうして改正される漁業法は漁業者にとつて不利益を齎す結果のものでないのだという安心感を持つておつたのであります。言わば大きな喜びの期待を感じて見ておつたのであります。ところが昨年水産業団体法が改正されまして、その説明会を各地方において開いたときに、現在議会に提案されております前の第三次案なるものが、一般漁民に公開説明されたのであります。その案を示された漁民の驚きというものは、漁民にとつて実に愕然として色を失つたような状態でありまして、それから漁村は大きな動揺を起したのであります。これがこのまま法律になつたら我々は一体どうなるのだ、生活の職場を奪われることになるのだ、こういう不安同様が起つたのであります。そこでこうしてはおられないというのでそれぞれ浦浜では寄合会議が開かれまして、水産庁に行つてお願いに行こうとか、どににお願いに行こうという問題が上つて参りまして、水産庁の方にもお百度を踏んだような次第であります。今議会に提案されております第四次案なるものも、漁業者が驚いた第三次案から見れば、多少漁業者の意向に副うような形にはなつたと思うておりまするが、漁民が驚いた根本的なものは何等の改善も見てはおらんと思うのであります。即ち漁業の民主化を目的としながら、現行法より非民主的な方向を採つておるという点がこの法案の内容に多々盛られております。又水面の総合利用により生産を増強する目的を持つておりながら、これ又漁村を対象として考えずに、個々ばらばらの権利を與えて、水面を部分的に分割して権利を與え、而して相剋摩擦を起して生産を阻害するようなことが規定されておるのであります。更に又働いても働いても楽にならん漁民から大きな免許料を徴收いたしまして漁業権をやりくりするところの機関の費用に当てんとしておるような次第であります。これらは私共の最も不満とするところであります。漁業者は、漁業法の改正は農地改革のような恰好と同じような、合通ずるものがあつて生まれるのじやないかと期待しておつたのであります。即ち不在地主的な存在の個人独占の漁業権があるとすれば、それを取上げて多くの漁民に共有せしめ、又特定の個人が漁業権を独占しておるような向きがあつたら、これを取上げて同様の処置を採るといつたようなことであるのだ、と考えておつたのであります。ところがこれと反対のような結果を招来するそれぞれの條項がこの法案の内容に包蔵しておるということは、漁民は非常な期待を裏切られたような感を持つておるのであります。それで私共は漁業権のすべては、浦浜に組織されますところの新しい漁業協同組合にこれを與えて貰いたい、さもなければこの法案は通して貰いたくない、かように私共は希望する者であります。
二、三の点は京都府が述べられた意見に私は全面的に賛成いたします。
四の真珠養殖を内容とするところの区劃漁業権がひび建、或はかき養殖というようなものと別箇に、第十九條で個人優先の形において認められておるのでありまして、この中には協同組合、いわゆる漁民の組織体である浦浜の漁民の全部を対象としない、特定の個人を対象として優先権を與えておる。この点は私共最も大きな不満とするところでありまして、この真珠漁業は一応考えて見まするというと、特別な技術が必要かのように考えるのでありますが、現在では資本の面においては経営者が担当しておりますけれども、技術の面はすべて漁村の子弟がこれに携わつてやつておるような次第であります。経営者みずから技術の何たるかも解しえないような状態であります。技術の点から見て現在の経営者でなければならんというような考えの下に作られたように考えるのでございますが、その点は非常に私共誤まつておりやせんかと考えるのであります。更にこういう養殖するところの水面が、これは各浦浜の最も重要な沿岸の共同漁業も行使しなければならん水面でありますが、それが特定の個人に與えられた場合においては、協同組合に與えられたところの共同漁業と牴触いたしまして一方の養殖事業は一定の場所に移動せないところの工作物を設置して漁業を営むのでありまして、共同漁業の方では主として移動性の漁業を行うのでありまして、これは一定の定着性の工作物を設置する所へ共同漁業を営みに行くというような場合に、権利は貰つても共同漁業権を行使することができないという事情が起つて参るのであります。水面を二段階にも三段階にも縦に分割して利用できれば別でありまするが、そういうことは不可能であります以上、共同漁業権を協同組合に與えて真珠の区画漁業権を個人に與えるというような場合に、そこに操業の上においてどちらが優先するかということについて摩擦が生じるだろうと考えます。これは区劃の漁業権を行うところの別の水面で、こちらは共同漁業をやる所だから別だというように区切つて行く場合になりますと、共同漁業権というものはその浦浜に属する水面の大部分をこの区劃漁業権に割かれてしまわなければならない。そうして共同漁業の水面を利用する分野というものは非常に縮小せられる。更に区劃漁業権の権利を與えられる者は特定の少数の人でありまして、共同漁業権を與えられる者は先租代々その漁村に住みますところの全部の漁民であります。そのものが全部の自分の、農村の田地に代るものと心得て漁業を今日までやつて来たところのものを特定の人に独占せられなければならん、こういうような結果になるのでありまして、これでは果して第一の目的にありますところの民主化ということに副うているかどうかという点について、私共は非常なる疑問を持ち又不満を持つ者であります。それでありますがために、この真珠養殖も漁業協同組合を優先にして頂いて、そうしで現在資本の面において協同組合の力が尚足らない点が、技術の面では今日は相当漁業者の子弟が資本家の従業員となつて技術を担当している関係上、これはもう絶対心配のない問題でありまするが、資本の面において、多少今日のこの真珠養殖を全面的に活用して行こうという面においては尚遺憾の点がありますので、これには最前の公述人から申されましたように賃貸権を認めて貰う、そうして協同組合ができる範囲内においては協同組合は自営し、又自分の資本において手の届かないものは現在やつておりますところの経験者にこれを委ねてそうしてやつて行く。そうすればこの共同漁業権を行使する上においてもその損害となるところの代償の幾部分かを区劃漁業権を賃貸するところの事業家が負担して、そうして漁業が円滑に行われるのではないかと思うのであります。そういうような意味合からどうしても区劃漁業権は協同組合に與えるのが至当ではないかと思うのでありまして、特に三重県といたしましては関係が深いので、この点特に希望を申上げます。
それから最後の免許料の問題でありまするが、これは綜合的に見た意見のときに申述べた通りでありまして、行政費を免許料によつて賄うということは絶対避けて貰いたい。修正して貰いたい。
更にこの五のところで、調整委員についての意見について、抜かしましたが、これは一応この方法で進んで貰つても私共はいいのではないか。その七割までが私共から選挙するところの委員によつて構成される以上、これは賛成したい。併し知事が学識経験のある者を推薦する、この人々に対してもリコール制を認めて貰いたい、これをもう一点希望する次第であります。
結論といたしまして、この法案は私共の期待しておりました線から非常に遠い。期待しておりました反対のような結果を生むことになつておる。私共が申しました点を十分取入れて頂かない以上、この法案を通過させて貰つては困ると思うのでありまして、私共の申上げたところの点を修正して頂くならば、この法案を通して、今回の議会に通して頂きたいと思うのであります。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/59
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060・青山正一
○青山正一君 今まではどうだつたんですか。つまり漁業会がその漁業権を持つておつて、三木本などに賃貸して、そうして漁業会の漁業者がその従業員としてやつておつた、こういうわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/60
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061・里中政吉
○公述人(里中政吉君) そうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/61
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062・青山正一
○青山正一君 それからその今まで漁業会の、つまり協同組合などの関係しておつたこの真珠関係の漁業会とというのは幾つありますか、全部で……。それからそれに所属しておる従業者は大分おりますか、漁業会に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/62
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063・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 大きなところで度会で十二村位あります。それから志摩郡で十七、八あります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/63
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064・青山正一
○青山正一君 それでは全部で三十組合が、それに関係しておつたという、こういうわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/64
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065・里中政吉
○公述人(里中政吉君) そうであります。それに対する従業員は、戰前、戰争中、戰後と、この真珠の……戰時中は生産が全然販売価値がなくなつたものでありますからして中止されたような形になつておりましたが、戰後又始めまして、今日の状態では一漁場に十五、六人位の平均ではないかと考えております。大きいところは五、六十人から百人までおります。二、三人ずつでやつておるところもあります。で、関係する漁村は三十ヶ所位でありまするが、やつておる業者は二百人位と心得ております。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/65
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066・青山正一
○青山正一君 どうも有難うございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/66
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067・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 他にありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/67
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068・西山龜七
○西山龜七君 今の御意見を承りますと、全体において修正したようなことにならないと、この法案を通して貰つては困るとかように申されましたが、あなたの御意見は日本の真珠を主体としてのことでありますか。全体を通してやるのですか。その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/68
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069・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 真珠が一番根本的な問題でありまして、その他にこの漁業免許料を調整費に当てるというようなことも含まれるのでありますし、又、この定置漁業権もやはり協同組合に與えて頂かなければ、この法案を通して貰つては困る、こういうことも含まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/69
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070・西山龜七
○西山龜七君 この面につきましては、順位が大体決まつておりますが、そういうような順でも尚且ついけないという、こういうのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/70
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071・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 大体観念的に見まして、個人にも漁業権が與えられるというようなことになりますというと、従いまして他の漁業でも、その生産する上においての技術面或いは資本面から見て、組合がやれないというような場合には、これを個人に與えるのだというようなことにも相成ると思うのでありまして、やはり漁業権というものは、その浦浜を中心にして、組織したところの協同組合に與えるということが、その土地に住む全部の漁業者に共有せしめることになるのであるからして、そういう工合にして頂きたいと、かように思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/71
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072・江熊哲翁
○江熊哲翁君 現在の状態から見まして、漁業協同組合にその漁業権が、真珠養殖の権利が行つた場合に、果して漁業協同組合がこの事業を自営し得る組合は、組合総数の何割ぐらいのお見込でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/72
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073・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 賃貸せずに自営する場合においては、現在の能力は三四〇%のものが自営できるという見透しを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/73
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074・江熊哲翁
○江熊哲翁君 漁業権に関する根本的なお考えについてどうというのでなく、前の沢山な公述人の方々と同一の御意見のようでもありますし、その点はともかくといたしまして、私共他の関係者からの、真珠養殖関係者からの陳情書を見ますというと、この特殊技術というものが高度に考えられて、又この仕事の殆んど全般を左右するという観点からして、この際真珠に関する限りにおいては漁業権は協同組合にやる、ということは全く事実に即応しない行き方であるという強い陳情を受けておるのでありますが、実際今承りますというと、漁業協同組合が自営できるというものは半数以下であるということになりますと、当然の結果として漁業協同組合は漁業権を賃貸するか、或いは他の適当な協同経営の形式を採つてでも行かなくちやならんといつたような、そこに矛盾の面が浮いて来るのでありますが、まあ併し、あなたのお考えの、根本的なお考え方からしてそれは当然であるということにもなるのでありますが、この特殊技術というものの観点からして、殊にこの真珠養殖業が輸出品であり、早急に何とか成果を挙げたいといつたような、関係業者の強い要求があるのでありますが、そういうような要求を何かの方法によつて充たすお見込はつくのでありますか。つまり本当の漁業法の一つの改正の狙いというものは、漁業権の民主化という主要な狙いもありますが、同時に生産の確保ということから出発いたしておるのでありますが、そういつたような観点からしてですれ、この真珠養殖業の本当の成果を挙げるという上から見て、漁業協同組合がそういつた場合に何か適当な方法が考えられるのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/74
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075・里中政吉
○公述人(里中政吉君) 今までの真珠が発展して来た経過を御覧になつて頂くとよく分ると思うのでありますが、今日までこの漁業権は以前の漁業会、漁業協同組合に與えられまして、更に漁業協同組合にこれが引率がれた。この間において現在日本で有名な真珠王とも言われる三木本さんがここに生れておる。その外多数の真珠業者がここに生れておるのであります。そうして日本の真珠は海外に輸出されまして、その真価を認められておる。現在の現行法、いわゆる漁業会にこの権利を與えておいて、現在のこの真珠というものが発展した事実は、ここに嚴然としてあるのであります。然るにこの現在嚴然としてこの真珠が、ここまで発展して来た、これは個人が権利を持つて発展して来たのではなしに、漁業会で持つて発展して来たのであります。そうしてその漁業権を、個人、又漁業会自体も自営したところもありますが、共にこれを自主的な方法においてこの調整を図つていつて、初めてここに真珠というものの真価が認められておるのであります。この事実を私は無視することはできんと思います。然るに今後、現在の形のようなことでいつて、漁業協同組合に権利を與えたならば、この真珠はどうなるのだというような考え方は、過去の事実を否定するものだと私は考えます。事実において漁業会に権利を與えておりながら、今日の成果を見ておるのであります。
もう一つ問題になりますのは、これを個人に與えたならば、若しそういう考え方があつたとして、三木本一人に與えておつたとするならば、外に與える余地がないわけである。何ヶ年の間は現在の現行法から見ますれば……。然るに今日何百人の真珠業者が出て来て、三木本を凌駕するような良品をどんどん作つておる。ここ三年間……。去年あたりからできたものは、過去のものよりも優秀なもので、立派な成果をあげておるものがある。而してこの漁業会が持つておるということは、この水面を解放して、機会均等の立場でその浦浜におる技術を持つ者に、又資本を持つ者には自由にやらしておる。だから新らしくどんどんとその研究者も、又それをやろうと思う者も自由にやれる。そうして多くの真珠業者ができて来たわけであります、今度これを五年間個人に與えたならば、現在経験ある者だけが貰つて五年間というものは閉鎖するわけです。どんな漁師がやろうとしてもできない。これは、協同組合が持つておれば、適当にこの水面を分割して、それぞれ又後からやりたい人にもやらす。先きの方で失敗して行けば、それは止めて、漁業組合に帰つて来る。それを次のやりたいという人にやらすという自主的な、この調整が図られると思うのであります。ところが個人は自分らだけが儲けておいて、後から来る者には渡さない、独占しようという肚で陳情して来ておる、そうして又この漁業をやるのは、單に内水面ではありますけれども、重要な協同漁業となれば、ただ真珠をやつて生産するだけではなく、それを凌駕するだけの外から漁獲が拳がるのです。協同漁業を行使する上においてはそれより以上のものが挙る。然るにこれを個人に筏を敷設して工作物を敷設してしまつたならば、果してその者が自分の個人の権利だというので、協同漁業をやらすかどうか、そこに一つの問題が私は軋轢が起ると思う。漁業協同組合がやるならば、今日は「このしろ」がとれるから、そつちで引取つて呉れ。今日は何を曳くから、こつちに場所があるからこつちに来いというように話合いをつけて、こういう場合にはこう、こういう場合にはこうと話合いをつけて、それは賃貸したり……賃貸といつたところで微々たるものです。使用料です。そのために真珠業者は、御覧なさい、大きなな家を建てて漁村でも一番立派な金持ちです。この人らに追い付く者はどこにもありやしない。漁師が自分らのものを地主的な形において彼らに搾取されておるのであるが、その考えは全然駄目です。外の漁業を邪魔されるところの、その中のほんの一部分の犠牲に対する報酬を貰つておるに過ぎない。それだから無理に、村にそれだけの漁業家をおいて発展させなければいかんというので、あらゆる面に協力して、それでやらして、子弟も進んでその方面に安く労力を提供するようにするとかいうようなことになりますと、初めてこれが成立つて来ると思います。然るに今日ちよつと自分が良くなつて来たからこれを独占して、後から出て来た者は締め出してやる。今そういうことを主張する人は二三年前にでき上つて来た人です。その二三年前にでき上つた人が御木本その他二三十人の人を締め出すことを考えて、こういうことを政府に願つて、こういう法律を作つたとすれば、自分たちは今日そんな立場にはなれない。そういうふうに門戸を閉鎖して、そうして多くの漁民のやろうとするところの意思のある者をそれから締め出すという一つの法案に過ぎないのでありますから、その点一つ御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/75
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076・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 時間も過ぎましたので、次に移ります。栃木県の郡司留吾君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/76
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077・郡司留吾
○公述人(郡司留吾君) 本問題につきまして全国内水面漁業団体中央会を代表いたしまして意見を開陳することを得ましたことを非常に感謝する次第であります。
第一の問題はこれを一と二に分けることができると思います。即ち法案に対し綜合的立場から見た可否、漁業権制度の問題、こう二つに分けますならば、私はこの法案は、第五国会を通過した漁業協同組合に即したところの法律を作らんとするものであつて、宍戸さん或いは安居さんの言葉を借りて言うならば、独占事業の下に従来の封建的隷属性を余儀なくされておりますところの漁民を解放し、漁業の民主化を促進すると共に、水面の高度利用によつて我が国の経済再建を図らんとするものであるから、この法案の趣旨には全面的に賛成いたします。
併し私は内水面の立場から申上げますならば、この法案の中には内水面関係條項というものは僅かに数條にしか過ぎません。内水面の特殊性を生かしておりません。全国の河川、湖沼、池中養殖等、これらは戰後におきまして大なる発展を遂げまして、全国的に概観するならば、その魚族の生棲というものは実に四千万貫以上であると言われております。それから年生産額としては約二千万貫以上、全額は見積れば三十億以上も突破しておるというふうに考えられるのであります。海なし地方における蛋白質の給源として、実際に社会に応ずるの態勢を今日整えております。そうして政治経済を通じ、政府と直結して、そうして今後におけるところの内水面の発達に一大努力を注がんとしておるときに、政府はこれに対して余りにも閑却しておるということが言い得ると思うのであります。
現行漁業法及び改正せんとする漁業法案におきましても、海水面と同一に内水面が規制されており、内水面の特殊性を考慮したならば、もう少し内水面は政治的にも経済的にも非常なる進展をするのではないかということが言い得るのでございます。何故に内水面を海水面と別に規制されなければならないのか、同一でなく、別にしなければならないのか、その理由は何かと申しますれば、海水面にはこの法案第六條に見る如く、秩序整然たる漁業が行われておる。漁場が広大であつて、従つて漁獲の規模も大であります。そうして又漁撈が主であつて、繁殖保護は従であるということも言い得ると思います。それから漁業者の主体というものが全部専業者であつて、従つて取締の面が非常に簡単にでき得るということが一つの海水面における特殊性であるということが言えるのであります。それから内水面におきましては、河川、湖沼等は、一定に限られたるところの水面で以て許可をするのであつて、漁法も規模においても海のそれとは全然異つております。従つて漁撈者の密度というものが非常に大である。いわゆる水のある所は如何なる所でも魚族がおると、従つて漁撈者のいない所は殆んどない。女でも子供でも誰でも漁獲ができる。そうして又、そういうふうな内水面の実情にあるからして、そこには海のそれのごとくに中間搾取的機関というものが一つもないということが言い得るのであります。それで内水面におきましては、河川、湖沼その他におきましても、これは繁殖法が主であつて、採捕は従である。これを採捕を主にするということになりますならば、魚族は「年を出ずして絶滅してしまうということは完全に言い得るのであります。故に繁殖法の施設を行わなかつたならば、内水面の漁獲というものが絶対に上りませんし、生産も上らない。更に漁業者を分類いたしまするならば、年間副業者は僅かに二〇%、季節副業者が三五%、遊漁者が四〇%という相当大巾の役割をなしております。専業者というものは僅かに五%というような数字を示しておるのでございます。それで現在の漁業会におきましては、その一切がまとまつて一つの漁業会という会を成し、漁業組合或いは協同組合にいたしておるところがございまするが、それらが全部まとまつて自主的な運営を行つて、その河川に即したところの繁殖法を行いつつあるがために今日の発展を見ておるというような実情でございます。この繁殖法を行うためには、監視の面というものが非常に困難であります。広範囲でありまするので、誰でもできるというために非常にこの監視の面というものが困難であります。こういうふうな海水面と異つたる内水面の漁業法に対しましては、海水面と切離したところの、いわゆる内水面の單行漁業法を更めて制定されることを我々は望んでおるのであります。この内水面の漁業法を制定するに当つては、漁民代表をして法案起草に参画せしめて頂くということも要請しております。このためには、今審議中の法案から内水面関係の法案を削除して頂きたいということが我々の実際の願いなのであります。そうして漁業権を認めたところのいわゆる内水面單行漁業法を作つて頂くということが我々の主眼なんであります。海水面におきましては共同漁業権を認めて置きながら、内水面に対して何故に共同漁業権を免許するということを條文に出して置かなかつたかということは、我々は実際不可解に堪えない。漁民の民主的自主性を抑圧し民権を尊重せざるところの法案であると我々言わざるを得ないのであります。
この漁業権というものを取上げられたということにつきましては、権利の伴わないところの漁業協同組合というものは、これは現実の問題として成立しない。現在この漁業権の成否如何を繞つてこの漁業協同組合というものの設立というものが進捗していない。この事実ははつきりと証明することができるのであります。内水面において漁業協同組合法を生かさんとするならば、第一に共同漁業権を免許するの漁業法たらしめて頂かなければならないのであります。
尚この漁業制度の問題に対しましては、共同漁業権を認めて頂くという問題に対しましては、更に委員長の手許に陳情して置きました趣意書を見て頂きたいのでありますが、一応これを皆さんの御参考に読み上げて見たいと思います。
「内水面漁業協同組合に協同漁業権を與えよ。内水面漁業法は当初入漁鑑札を県が発行し料金を徴收し繁殖保護に当つたのであるが、魚族は減少する許り経費加重となり其の効果殆ど見るべきものなく昭和初年に於て現行漁業法に改め一河川單位に漁業組合を構成させ専用漁業権を與えたのである。その当時は地方ボスの手に利用せられ漁民の意思は反映せず、加うるに終戰前後に於ける社会秩序の混乱と共に公然行われたる違反漁業(電気、毒物、爆発物)に依り小河川に至るまで密漁濫獲の結果は魚族根絶の状態に陥り、荒廃其の極に達せる河川に対し吾々漁民は復興の一日も早からん事を念願しつつありし処、水産団体法施行と共に逐次漁業会の改組に当り、ボス的努力を一掃し一大改革が断行せられ民主主義の下漁民自らの力を結集し漁業秩序の擁立を呼び天然孵化を強化し、人工孵化場を増設して魚類の繁殖保護を拡大し各種魚族の放流を倍化するとともに、違反漁業密漁の一掃に努め魚族の培養増産に全力を傾倒し来たのである。然して各県下に於いては漁業団体を結合連合会を結成し、各河川の特殊性を活かし増殖産事業を積極的に展開した結果本年度の如く淡水魚の大増産となり海なし地方の蛋白質の給源として其の本領を発揮するに至つたのである。これ偏に吾等漁民に與えられたる天與の漁業権を漁民自らの力において最高度に運営し以て漁業秩序を確立せられたからである。然るところ改正漁業法案が第五国会に提出となり現在尚審議継続中であります。
改正せんとする漁業法に(海水面は漁業権を免許する)
第一二七條(内水面漁業法参照)には吾等漁民に與えられたる專用漁業権を剥奪し漁民の権利を蹂躙し税金の対象たらんとする法案を敢て制定せんとしているこれ即ち民権を尊重せざる憲法違反なりと謂ふ可し。
第一二八條料金の定めに当つては綜合検討するに高率料金を免れず公吏の増加入件の加重等により増殖事業は必然的に不可能ならしめ折角民主化せられたる漁業団体は自主性を失い権利なき協同組合は之れ亦成立せず漁業秩序が再び乱れ密漁、濫獲、違反漁法は公然と行われ責任者なき河川は再び荒廃し魚族根絶は免れず漁民の生活は破壊せられ終戰後の如き河川混乱は免れざる状態に陥ること明かなり。斯くの如き内水面漁業海案こそフワツシヨ的專制政治の再来以外の何物でもない。所謂権力に依つて漁民。権利を剥奪する非民主的改悪法案と謂わざるを得ぬ。漁民自ら犠牲を拂い熱情を結集して確立した漁業秩序を破壊せんとするこの法案に対し断乎として反対せざるを得ぬ。吾々は政府に対し現存する漁業権をやがて結成さるべき漁業協同組合に與える法令たらしむると共に海なし地方の蛋白質の給源たる淡水魚の増殖機関たらしめ日本再建に貢献する漁民としての責任を果させられん事を政府に要請せんとするものである。」
これが我々が漁業権を、是非ともこの法案の中に漁業権を内水面に與えるという法案を、これに入れて頂きたいというのがこの漁業権問題に対する我々の主張するところであります。かくのごとき法案が改めて整理されるということによつて、内水面関係は政府提案の根本趣旨に即するところの法令になるであろうことを、私は約束することができるのでございます。
以下二より六迄の問題でありまするが、審議継続中の改正漁業法案に修正を加えて現実を解決しようとするこの行き方に対しましては、我々はいつの日か内水面の單行漁業法の立法化する運動を今後起こしていきたいと思います。そのためには内水面單行漁業法の立法化する、その間この法律を一応修正してこれを認めてやつて行くより外に方法がないのではないか、こういうふうに我々考えて参つて来たものでありまするが、先ず修正を加えるならば、それは非常に簡單な方法で修正が加えられるのではないかというように考えております。これは暫定的ないわゆる法として、一つ取扱つて頂きたい。そうして漁民的には更に二十五年度に出来なければ二十六年度にというようにして、内水面の單行漁業法を一つ立法化して頂いて、そうしてこれを以て更に内水面漁民の責任を社会的の責任を、一つ果さして頂きたい。そうして日本のいわゆる経済再建に一大協力をさせて頂くような方法を講じて頂きたい、その暫定的ないわゆるこの法律に織り込んで頂きたいとゆうことは、この漁業制度案に関する点をこの法案の中に、二十六頁でありますが、五の六に中央漁業調整審議会というものがあります。その中央漁業調整審議会に内水面の指導機関というものがここに織り込まれておるかどうかということを我々は余りにもそれを見ることができないのです。それで実際において海水面と内水面では鯨と鰯程も違いがありますから、我々はこれを鯉や鮪くらいの大きさにもつて行かなければならん、そうもつて行かなくちやならないのでありますから、是非ともこれを中央漁業調整審議会に、内水面のいわゆる調整委員会を特に独立して作つて頂きたいということを要請したいのです。これは漁民委員七、学経委員を三、漁業団体の推薦により農林大臣がこれを申請し内閣総理大臣がこれを任命する、こういうことを一つ入れて頂きたい。時間がありませんので簡單に申上げますが、漁業調整委員会のことは、これは内水面においては漁業管理委員会に目するものでありますので、当委員会の機構、構成、権限等も、先ず現在止むを得ないであろう。併しこの施行に当つて繁殖法に障害を来たすような定評等のある漁業関係委員会であつたならば、これは我々は反対しなければならんということになつて来るわけでございます。
更に申上げたいことは漁業監督公務員の問題でありまするが、これは七十四條であります。これが一つ内水面には適用させたくないというのが我々の考えでございます。いわゆる内水面はこれを行うとするならば厖大なる人員と費用を要します。故にこれは傍に持つて行つて、この漁業監督公務員という第七十四條の末へ持つて行つて、但し、内水面においては漁業団体の申請又は漁業管理委員会が必要と認めたるときにはこの規定を準用することができるというように挿入して頂きたい、こういうふうに考えております。
それから改正漁業法案の八にもつていつて内水面漁業となつております。これに対しましては一を削除して二を一に改めて、内水面においては共同漁業権及び区劃漁業権を、漁業協同組合に免許することができると、こういうふうに一つ御訂正を願いたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/77
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078・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 大分時間が進みましたから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/78
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079・郡司留吾
○公述人(郡司留吾君) 後は免許料に根本理念におきましては、やはり田中さんと同じような意見でございますが、併し現在の政府財政におきましては、これもなかなか止むを得ないことであるから、免許料、許可料の問題は、これは二十四年度に徴収いたしましたところの免許料、許可料、その範囲を出でない程度においてこれを徴収することを我々は認めざるを得ないというように結論を持つて参りましたので、その点をよく考慮して頂きたい。それに対しては中央調整審議会にですね、この内水面のいわゆる單独な審議機関を一つ作つて頂きたいということを尚要請いたします。
以上のような問題はまだたくさんあるのでありますが時間がありませんので申上げませんが、以上の問題は私の個人の意見ではございません。全国におけるところの内水面漁業の集積したるところの全国内水面漁業団体中央会の創立総会の決議に基くものでありますので、是非とも尊重あらんことを切にお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/79
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080・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 御質問ありませんか。御質問がありませんければ次に移ります。釣魚会の掘田正昭君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/80
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081・堀田正昭
○公述人(堀田正昭君) 私は日本釣魚会連盟会長といたしまして釣魚会連盟の意見をこの機会に述べさして頂きたいと思います。従つて私がここに申上げますのはスポーツ釣人の見地からの意見でございます。それでありますからこの法案の最も重要な部分と考えられます海面の漁業につきましては、特に申し述べるところはございません。それはいわゆるスポーツ釣人が海面の釣をやれないということはなく、それに利害を感じないというのではありませんが、併しながら海面の漁業はです。スポーツ釣人の釣と明らかに分れております。そうして海面に対するスポーツ釣人は海面に対して、内水面におけるようにいろいろな障害を得ないで釣をすることができる状態にありますから、従つて海面に対する限りは特に申上げることはございません。
釣人の立場からして、ここに申上げます意見の、その根本をなす観念は、釣というものがいわゆるレクリエーシヨン運動と申しますか、我が国民の体育、体位向上、健康の保全に非常に大きな役割りをしている、この点が今まで非常に無視されておる憾みがありますので、その点につきまして、その点を根拠としてこの釣に対するいわゆる素人釣人と申しますか、スポーツ釣に対してこの漁業法においても十分の考慮を拂つて頂きたいというのが、私の申上げる意見の根拠になるわけであります。
釣がいわゆる国民レクリエーシヨンとして最も大衆的であり、そうして又健全なる役割をしておるということについては、特に深くこの際申上げることもないと思います。それは最近におきまして、終戰後文部省に釣についての、釣を振興させるという審議会が設けられましたようなことから考えましても、政府においてその点に御注意を拂われることになつている機運が動きかけておると存じます。それは即ち、各方面から釣に対する、今まで余りに無関心に放つておかれました釣に対する認識が改まりつつあることであると思います。これを長く申しますと非常に時間が掛かりますから、ただこの法案に関する部分についての今の釣人という立場からの意見を申述べさせて頂きます。
それにつきましては、日本釣魚連盟からこの参議院及び衆議院両方の国会に請願書を出しておるのでありますが、それには三つの点が挙げられております。その第一点は、現在各河川、内水面におきまして、乱雑に非常に無秩序に入漁料が徴收されております。それによりまして、最も大衆的なスポーツであるべき釣が甚だしく邪魔をされておる。それを、その弊害を除いて貰いたい。それから第二には、海面におけると違いまして、内水面における魚族の方は、先程も隣りの方が申されましたが、保護は非常に特に注意を拂わなければならないのでありまして、その点において注意を怠りますと、甚しき場合を考えますれば、いろいろな魚族が絶えてしまうということさえも考え得るのでありまして、この点は海における魚族に対するのとは非常な違いがあります。従つてその点についての十分な施設をして頂きたい。それからして第三には、スポーツ釣人は、何ですか、極く道楽のようで別にそういうものには何ら保護なり或いは指導なりを與えないでいいように、今まで一般に考えられておつたようですけれども、実はその数は非常に大きな数でありまして、数百万の人間がこの釣によつて健全なレクリエーシヨンの目的を達しておるのであります。従いまして内水面における漁業に関しましては釣人の意見を、つまり釣人に十分な発言権を與えて頂きたい、この三点が釣人としての主張の要点であります。
この法案につきましてこの点について具体的に申上げますと、それはこの問題になつております第三、いわゆる百二十七條内水面に区劃漁業権以外を認めておらないことの可否という、この点に帰着するのであります。釣人の観点からいたしますと、この度の漁業法案のこの点に関する規定は甚だ当を得たものであると思います。それは各河川が釣人に解放されるということを意味するからであります。只今の現状ではこれは釣師の者は皆実験しておることでありますが、どこへ釣に参りましても、そこで、何に根拠しておるのであるか知りませんが、或いは高く、或いは比較的に安い所もありますが、自由に入漁料を徴收されます。そうしてその入漁料は必ずしもそれはそこの魚族の保護であるとか或いは増殖であるとかいうことに対する費用に使われておるものではないようであります。意見といたしましては、その地元の方のいわゆる漁業権と申しますが、その河川に対する漁業の権利をこの法律によつて新しく取上げられるというのは不当であるというような御意見もあるようでございますが、併しその中味を考えてみますと、実は海面における漁業とは違いまして、内水面における漁業の大部分は、それは副業であるというのが事実であると思います。大体すおきまして……。そうしてこの度いわゆる共同漁業権が内水面から除去されますということのその中味は、極く大雑把に言えば、実はその地元民が漁業を営むことをさせないというのではなくて、その漁業の名によつてそこの入漁料を徴収していたことができなくなるということに結局帰着するのであります。地方の方が入漁料を徴収されるのには必ずしも理由がないのではない。それはそこに鮎なり何なり一定の魚を放流するとか、或いは増殖の手段を講ずるとかいうことに使うのであるという御説明もあると思いますが、併し我々釣師が実地に今まで見聞しましたところによりますれば、それは甚だ受取れないように考えられるのが実情であります。勿論放流もされておるようです。併しながら決してそれは魚族保護に十分なだけにされておるとは思いません。又今の入漁料の大部分がそういうことに支拂われておるとも思いません。却つて終戰後いわゆる釣というものが食糧問題と不幸にして一緒になつた関係で、非常に濫獲ということが各地に行われることになつたのでありますが、それには或る意味において相当地方の人が責任を負わなければならないというのが実情のようであります。併しこれは追々直されて行くことと思いますが、併し釣人の立場からいたしましては、各地方の細かいいわゆる漁業組合に入漁料を自由に徴収するような、そういう制度を改めて頂き、そうしてこれは内水面の漁族の保護及び増殖ということは非常に重要な問題でありますから、政府の力によつてそうしてそれを十分に行つて頂きたいと思います。その代りに釣人といたしましては、その費用について十分の負担をすることは覚悟すべきであると思います。今度の法案によりましても、釣人は料金を負担することになるもののようでございますが、それは釣人としては誰も喜んで負担すると思います。併し負担すると同時に釣人に対する発言権は十分に認めて頂かなければならない。従つてこの法案で予見されておりますところの、いわゆる漁業調整委員会においては、釣人の発言権は十分に尊重せらるべきものであると考えております。
只今申述べましたのが意見の大体でありますが、実はこの法案につきましても、いろいろな細かい点については多少の不満もあるわけであります。それは例えば内水面の例外といたしまして、湖沼を原則的に例外にされておりますことなどは、それは行過ぎではないかというふうな気がいたします。又この法案にはやはり罰則がありまして、濫獲に対する罰則の規定はありますけれども、それは爆発物で魚を獲るとか、或いは毒物を流して獲るとか、これは不幸にして最近、特に今年なども非常に各地で行われる不幸なことであるのでありますが、それに対する取締り規則があるにも拘らず、実は電気、電流を通じて魚を濫獲するというようなことについては規定が欠けております。これは勿論他の部分から、いわゆる主務大臣又は地方長官の命令、規則で取締まられることになると思います。併し罰則がそれでは非常に軽くなるのでありますから、我々。希望といたしましては、そのような電気に関するような部分もできるならば嚴重に処罰することをこの法律で規定して頂きたいと思います。それからこれはやや他の法律にも関係することかも知れませんが、この法律の中にも、例えばその中を遡行いたします魚類等の邪魔になるような工作物は取除くことができるという規定がありますが、併し逆に、例えば水力電気のために堰堤を作りまして、そのために魚の遡行することができなくなる。それには魚道と申しまして一種の瀧のような通路を作つてやつて、これに魚を通わせることができる。これをさせるために、これは漁業以外の他の法律になつておりますが、併し現状においてはその作り方が変特に不完全でありまして、ただ申訳だけに作つてあつて、本当に魚道としての役目は果していないというのが現状であります。多くの場合には水をそこに流さなければ役に立たない。その水を流していないというのが多くの場合のようであります。従つて我々の希望といたしましては、この、本法案のような罰則の中に、今のような魚道を作りました場合に、その魚道を完全に役に立つようにさせていないものには罰を加えるというような規定も欲しいという気がいたします。併しこれらは極く細かいことでありますから、全体といたしまして釣師の立場からいたしますと、今の内水面における釣が釣師に解放されるという点において、この法案が一日も早く成立いたしますことを希望する次第であります。
最後に申し加えておきますが、実は内水面における漁業に従事しておられるいわゆる職業漁業の方でありますが、これは多くは片手間の漁業であるばかりでなく、その数も約二十万くらいということであります。併しながらスポーツ釣師の数は、これは統計も何もありませんので分りませんが、如何に少く見積りましても百万を以て数える、何百万の人間のことであります。それに対する健康娯楽に関する問題でありますから、その点について十分の御了解を得たいと存じます。これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/81
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082・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 御質問ありませんか。画質問がないようでありますから、次に移ります。東京、宮城雄太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/82
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083・宮城雄太郎
○公述人(宮城雄太郎君) 私は水産事情調査所の常任理事をいたしております宮城でございます。
本日の公述に当りましては、説問の一について詳細に法の中心的な課題についてお話申上げたいのでありまするが、十分という制約でございますから、先ず要点を先へ申上げまして、多少時間をとりましても、中心点については一応話さして頂きたいと思います。
先ず第一番に問題になりますのは、この法律の目的、即ち第一條の規定でありますが、この法律が漁業者及び漁業従業員を主体とした漁業調整機関に非常な期待を掛けておる。この運用によつて水面の高度利用を図り、併せて生産の増強と漁村の民生化を遂行して行く、こういう狙いを持つておる。これはまあ今度の漁業制度の集中的表現であると思うのであります。ところでこの漁業の民主化というものが一体何を指すのか、先ずこの点が基本的に割り切れない限り、法案の審議は無駄だと思います。何故かようなことを申しますかと申しますと、御承知のように今日までの現行漁業法の制度は、旧藩時代からの封建的な各種の特権をそのまま法制化しておるというところに致命的欠陷がある。この封建性がすべて漁村の経済生活、社会生活を規制しておる。これを一応今回の機会においてはつきりと解消して、これをその漁民の自主的なもので調整させ、そうして漁民の協同性を導き出すことによつて生産の増強を図り、更にこれが挺子になつて漁民生活の安定と民主化が並行して行くという点においては、今回の法案の狙いは正に漁業の社会化を目途としたものであると私は信じるのであります。ところでこの社会化が何で行われて行くかという点では、これはまあ調整委員会の機能によるというところにあるようであります。ところが現実に漁村の民主化を促進するような漁村的雰囲気が現在あるであろうか、ここに先ず問題があると思うのであります。この漁業法案の姉妹法であります協同組合法が昨年施行されまして、今日三千七百の漁業協同組合が設立を見ておりますが、ところがこの役員構成を見ますと、その大半は旧漁業会の会長がそのまま協同組合の組合長になつております。現在におきまして、旧県水産業会が県漁連の組織を持つに至つておりますが、その六割までは旧県水の会長であります。このような現象は、実に漁村の現在の意識の段階を雄弁に物語るものでありまして、そこで、私たちが漁業調整委員会に本当に漁民的な要素が、民主的な要素が期待できるであろうか、この疑問を持たざるを得ないのであります。といたしますると、こういう大切な問題を処理いたしまする調整委員会に対して、我々はできるだけ漁民的な、少くとも今日の貧困を極めておる漁民生活に活を入れるような漁場の再割当をしてくれる調整委員が出せるような條件を先ず考えなければなりません。その点は、法律に要求するに対しては、これは組織と選挙の方法を先ず考えて見る必要があるかと思います。今度の法案によりますると、最初には市町村調整委員会が予定されていたようでありますが、最終のこの法案にはこれが全然欠けております。そのために海区調整委員会での問題は、動もすれば部落対部落、乃至は村落対村落の争いを生み出しまして、そうして自己の部落の中にある封建的な、即ち漁民の生活をむしろ圧迫し、邪魔をしているような階層との間に対立を見ることなく、それがすつかり部落対立にすり換えられる危険性があるのであります。むしろ漁民を自覚せしめるということのためには、一番彼等が事情を知つている自分の村うちのこと、或いは自村の出先漁場の使用の関係をめぐつての不合理を是正することによつて漁民を自覚さして、初めて漁民は民主的な角度に立つのであります。ところが、この町村調整委員会がないために、するりとそのまま、隣の村と俺の村という喧嘩の中にすつかり捲き込まれる。況んや今日の漁民の自覚の段階におきましては、協同組合法の選挙に見ますように、ボスの勢力が希望するところを支持して、これが村のためなんだというところにいつちまう、この危険性が非常に多いのではないかと私は思うのであります。斯かる意味から考えまして、先ず町村調整委員会は絶対にこれを復活して、この中で先ず漁民を訓練することが第一ではないかと思います。更に又この選挙の方法でありますが、この選挙の方法について我々考えなければならないことは、一般選挙の方法が是か、階層的な選挙がいいか、これはいろいろ問題があると思うのでありますが、先ず私はこういう数字を皆さんに申上げたいと思います。日本の漁業経営の経営全体として見ますると、九八%が家族労働を中心にいたしました世帶経営でございます。非常に零細なのであります。にも拘わらず今度は労働の收支の部分から見ますると、三十六万という世帶は賃労働に従事する世帶であります。そうして尚且つ船主及び網主を中心にして労働を営む世帶が十八万あるのでるります。即ち日本の全漁業世帶の大半は、実に年間乃至は季節的な労働に従事しなければ生計を営み得ないというふうに、日本の漁業の階級は分解いたしておるのであります。このような現実から見ましてむしろ日本の漁業を規制して行くに最も軸となるべき調整委員会の選挙は一般的な選挙によるのでなくて、むしろ各々の階層の意見を闘わしめて、この意見が勇敢に調整委員会のばにおいて論議され、この論議の上に日本の漁業の再割当が行われるのが妥当かと思うのであります。この点におきましてよろしく農地改革の事例を参考とすべきかと存じます。
それから第二にこの法律案の致命的の欠陷は、漁業権漁業につきましては、非常に煩瑣に細かく書かれております。ところが現在の日本の漁業を左右いたしますものは実は沿岸漁業でなくして、沖合遠洋漁業が日本漁業の重点なのであります。これらの内地沖合遠洋漁業に対しまして何らの規制がないと言つてもいいほどこの法律案はすげないのであります。僅かに沖合漁業に対しましては五十二條に指定遠洋漁業を規定し、更に六十五條におきまして、これに左の許可漁業の規制を省令若しくは規則を以て定めることができるということに相成つておるようであります。私達ここで一番強調したい点は、過去の漁業制度が非常に封建的でありボス的であつたということは、漁業界の上層部と官僚支配とが結託して来たところにも漁業制度の非常に不備欠陷があるのであります。日本漁業の一番重点を占めまする許可漁業の部分を官庁の権限内に止めて置くというが如きはこれは十分考え直さなければならない点と思うのであります。勿論これらにつきまして調整委員会乃至は中央漁業審議会がタツチするとおつしやるでありましようが、併しこれはいずれも私が先程から憂慮をいたしておる形において選挙されるでありましよう、そのような不十分なものが持つております権限なるものは、單なる諮問機関であつて、他は官庁乃至は主務大臣の権限事項なりでありますから、この点は十分にお考え置きを願いたいのであります。若干数字に亘つて恐縮でありますが、数字を申上げますと、戰前におきまして定置漁業、区劃漁業、專用漁業のいわゆる漁業権漁業によります漁獲高は五〇%であります。内地沖合漁業を加えた場合は二五%、外地漁業、及び海洋漁業の漁獲高は二五%という比率になつておるのであります。ところが戰後の漁業は抜本的に変つております。外地及び海洋漁業の占めております二五%はそのまま内地沖合に集結しておるのであります。而も限られた漁場の中にこの二五%が押込められておるのでありますから、日本の沿岸漁業は非常に危殆に瀕しておる。漁民生活の苦しい点は実にここに掛かつておるのであります。不獲という状態、いろいろ漁民の生活を圧迫いたしますものは政治経済上のいろいろなものもありましようが、この不獲を基本にしておる。この不獲の現われと申しますのは、即ち沖合遠洋漁業と沿岸漁業とのバランスの失われた形において操業されて、資源の日々枯渇して行く状態から来ておると我々は思うのであります。その要点を考えますると、いかにいたしましてもこの許可漁業に対しましては十分な規制をこの法律案の中に盛り込んで置く必要が私はあると思います。更にこれらをいかに盛り込むかということについては後段御質問がおればお答えいたしまするが、一言附加えまするが、漁業権漁業にこと細かに適格性及び優先順位を付けておるように、許可漁業についても細かい規定をこの際盛り込んで置く方が一番親切なやり方ではないか、でない限り現在の経済情勢の中では適当に処分される抜け道の方が多過ぎるのだということを附加えて置きたいのです。
第三に共同漁業権の問題について申上げたいのでありますが、予定されております共同漁業権の第一種の漁獲高は現行の専用漁業権の漁獲高のうち、金額で申しますと根付漁業の方はわずかに三十%のものであります。これは昨年七月の漁業センサス統計でございますが、すなわち漁民の最も重大な関心がありますこの專用漁業権の漁獲高の七割が解放されるのであります。この解放されまするものがそのまま漁民に還元されるならば問題はございません。ところが先程申しましたように、日本の沿岸漁場に最も近接して能力のある沖合遠洋漁業が稼働し、しばしば沿岸漁場の中へまで專用漁業権の内容の中にまで入りこんでいるのであります。そこで底曳機帆船の禁止線突破の問題が漁村の今日の最も大きな問題でありますが、これがこのような状態を考えてみた時に、解放されまする七割の中、だれが見ても憂慮に堪えない点は、おそらくこれらのものは漁民それ自体に有効適切に幸いするために解放されるのでなくて、むしろ漁民より高い者に捧げるという状態というものの解放になりはしないかと心配します。そのような意味におきまして共同漁業権の内容は、少くとも現行の専用漁業権の内容に等しい内容を持つ必要があると思うのであります。更にこの点について附加えておきたいことは、この專用漁業権を解放する意図の中には、旧幕時代からのいろんな特権的慣行をそのまま温存しておるのを一度に御破算にするというような政治的意図のようであります。この点につきましては私も賛成であります。従いましてこのようなことで、すなわち持てる浦浜と持たざる浦浜の不合理な漁民生活の実体、その村の漁場への依存度を勘案してこれを再割当をするということに法律の上では明文化する。あるいは調整委員会の運営をかように規定すること、実はここで持てる浦浜と持たざる浦浜にもすべてを與えるというのではない、半農漁村純粋漁村等のそれぞれの村の国民への依存度によつてこれを調整して行く方策を考えてみたい。しからざれば折角の解放は漁民への解放とは逆になるだろうということを申しておきます。
第三に定置漁業について若干触れたいのであります。私は定置漁業を申上げます前に、企業的漁業権その他の漁業権を含めての基本的漁業権を先に申上げたい。沿岸秩序を維持するものは生産者たる漁民であります。漁場の秩序はむしろ戰後政府の無方針なる許可方針、経営方針のために荒されております。荒しておるものはむしろ経営的企業家であります。かような意味から申しまして、定置漁業に優先順位を付けて誰、彼に與えるということは論議の必要はないと思います。併し私は若干触れて置かなければならない点は、いわゆる漁業権を組合有にいたしましても、十六條の優先順位の六項の四のごとく、漁業権は持つてはおるが、併し当該漁業に従事するものは三分の二以上の常時職員でなければならないという規定が存在する限りは、協同組合に権利をやつても現実に経営できない、できても経営能力のない小組合でしかないというふうな変な形になつて参りますので、かような條文は一切省略すべきだと思います。更にもう一二他の公述人に関連しまして申上げたいと思います。例えば特定的従業者の村張、これは非常に変な立場のものが多いので、むしろ非漁民が漁民を道具にしておるというような組合さえ多々あるのでありますから、これらのものは一番最初に申上げました協同組合第一義的の原則によつて削除さるべきだと思います。このような原則が確立いたしますならば、身網水深十五メートルその他の條件はどうでもいいと思います。ともかく私が主張したいのは協同組合にだけやればいいので、現行の適格性その他を審査いたしましても、社会的な労働法規、例えば労働組合法、基準法、或いは労働者災害補償保険法、健康保険法、厚生年金保険法、失業保険法、こういうような社会法規を採用して経営しておる経営者というものは定置漁業には恐らくないといつてもいいと思います。まずその点から見ましても漁民たちが共同経営することが一番正しい、漁業権の協同組合ヘの帰属が原則であるという建前からいたしますならば、漁業について特例的な措置を設けることはいかがかと思います。かような意味から十九條の二項は削除さるべきものである。これらのものは漁業組合に持たして、そうして漁業組合の組合員に行使せしめるという考えであつて、経験によつてこれらの構成が左右されることは馬鹿々々しいと思います。むしろこの條文は、言いかえるなれば経験という資本能力あるものにこれを與えるという條文に我々は聞えるのであります。そのようなことが法律案の中に織り込まれるについては、本公述人は反対の意見を持つものであると、こういうふうに考えております。
沢山申上げたい点がありますが、時間も超過いたしまして何ですから、結論的にもう一つ申上げたい。免許料のことで、これらにつきましては現在の漁業権すら割当をしようという時代ですから、当然憲法の條文から言つても若干の補償をしなければならない。これらのものの補償は漁業権は協同組合に行くのだという原則さえ決まりますならば、漁民側はこれを要求いたしますまい。併し法律上の見地から但し補償料をお出しになれば至極結構である。従つてこれを再割当する場合に許可料、免許料は取る性質のものではない。
更にもう一つだけ附加えたい。許可漁業で言い落したので申上げたいのであります。政府の見解によりますと、漸次法令を以て、即ち六十五條のあれを以てブロツク毎に年限が来たものから再調整すると言つておりますが、今の漁業の実情を申上げますと、沖合漁業的のものには、弊害が出ると言う立場からこれを一拳に再調整するような英断を、本委員会においてお採り下さることを私は好ましいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/83
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084・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 何か外に御質問ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/84
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085・青山正一
○青山正一君 一つ宮城証人に頭のいいところでお答え願いたいと思います。それは今度の漁業法には不在地主的な建前のものも非常に排除するというような行き方で進んでおります。ところが、この協同組合の賃貸でやつている者もこれは不在地主じやないかというふうに同一視している向きも相当あるように思われますが、その点について一つお話し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/85
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086・宮城雄太郎
○公述人(宮城雄太郎君) この問題は、実はこの協同組合に漁業権を持たせている真の意義の理解は足りない点から来ているのではないかと私は思うのであります。漁業協同組合が権利を持つ限りにおいては、その協同組合が組合員の協同の力を伸ばして行くという建前で持つておるのでありますから、これが賃貸されようがされまいに拘らず、不在権者的なものではないと私は思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/86
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087・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外にありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/87
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088・江熊哲翁
○江熊哲翁君 今科学的に分析された御意見を拜聽して、平素私個人として考えておることに余り大きな誤りがなかつたということを発見したようなわけであります。併し、この法律を今私共がこの国会に何とかして通過させなくちやならないといつたような運命的なものを持つているのでありますが、その際において、あなたはどの程度の修正ならば自分としては納得するであろうということをお考えになるか。その事実を簡單にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/88
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089・宮城雄太郎
○公述人(宮城雄太郎君) 本国会が他から圧力を受けているならそれは別でありますが、少くとも漁民の圧力を身近にお感じになる限りにおいては、本公述人は職掌柄いろいろな漁民にタツチしておりまするので、漁民のすべてが私の意見と同一だとは私は申し上げ兼ねますが、併し少くとも最も貧困なる漁民諸君は、この改革の中途半端なものを毛嫌いいたしております。本能的に嫌つております。先ず第一番に、漁業協同組合に漁業権が来ると言つても、経営能力が俺達にはないのだと、この場合に先ず絶望しております。如何に漁業協同組合に権利があつても、これを利用されるのはむしろ法律の問題でなくて政治の問題であると私は常に主張するのでありますが、これすら理解できない程失望いたしております。この失望している者にどんな形のものでもよいから與えたらよいのかという点については、私はそういう妥協はすべきではなくて、本質は本質として漁民に見せるべきだという立場から、本公述人が公述いたしました形が貫徹しないなら、私個人の考えにおいては、お通しになるべきではないか、こう私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/89
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090・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外にありませんければ、次に移ります。鯨岡稔夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/90
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091・鯨岡稔夫
○公述人(鯨岡稔夫君) 私は鯨岡でございます。漁業経営者連盟の一職員であります。お断りしておきますが、これから公述いたしますことは、私の全く個人的な考えでございます。質問中の第一と第五、第六、この三点についていささか私見を述べさして頂きます。
先ず第一点でございますが、これについて過般大日本水産会の主催でもつて、衆参両院の議員諸公と民主団体との間で、漁業制度改革、漁区の拡張、補給金の打切り、そういつた問題について懇談会を開いたことがございますが、その席上で衆議院の某議員が改正漁業法について、漁業の生産力の発展と漁業の民主化というものは両立しない、絶対に両立せんというような暴論を吐いて、民主団体から総反撃を喰つたことを記憶しておりますが、併しこの非常に反動的な考え方は、独りこの某議員だけの例外的な見解じやなくて、爾後の漁業法の審議経過を通じて判明したのでございまするが、これは恰も海面に出ておる氷山の一角でありまして、この反動的な考え方は、政府の一部においても、又衆議院においては現在非常に大きな固まりとなつて、具体的に表現しますれば、衆議院の小委員会案なるものを以てGHQに目下喰い下つておるそうであります。私は結論から申上げますと、この漁業の民主化と漁業の生産力の向上、生産力の発展というものは両立する。否それどころではなくて、漁業の民主化なくしては漁業の発展というものは絶対にあり得ない。これはひとり漁業のみならず、社会万般のことについても、民主化と生産力の発展、こういつたものは両立する。こういつたことは古今東西の史実に照して見ても明々白々である。ただ似て非なるえせ民主化と生産力の発展というものは両立しない。こういつたことは申すまでもありません。例の衆議院の小委員会案においては、不在地主的な権利者、或いは理由のないところの休業、或いは不当なる集中、或いは不当なる慣行並びに適格性のないところの漁業権については調整すると、それ以外は全部現在のままでよいと、いわば政府の原案を根本的に骨抜きにして、時代錯誤的な現行漁業法をそのままにして置けと、別な言葉で以て表現すれば、漁村の封建的な努力をそのまま温存して置けというような、実に驚くべき反動的な修正案が衆議院において現在作られ、GHQに喰い下つておるということを聞いております。その点参議院の方の漁業法の審議経過は、非常に傾向のよい方が沢山おられまして、大分進行がよいように聞いて、私としては非常に喜んでおります。併し又参議院の方でも、この政府の原案を成るべくいじらんで、そつくりこのままやつてしまえというような、見方によると非常に意気地ないようにも思います。併し、衆議院みたいな無茶苦茶な反動的な動き方よりは、総体的には私はよい感じがいたしております。併しこの政府原案についても、問題は、生産力の発展、民主化ということを政府の原案でただ口頭襌に終らせないで、名実共にこれを徹底して行かなくちやいかんじやないかというふうに考えております。それで先程宮城公述人から 出ましたように、現行漁業法のままで、或いは衆議院の小委員会案のようなふうに行げば、結局は協同組合に管理権を與えても、実質的には従来のボスが漁業権をそのまま握つて、結局は漁業の民主化というものはならん。言葉を換えていえば、生産力は上らん、ボスの見るところの生産力は上つて来るかも知れませんが、真の意味の生産力は上らんということになる。それから改正政府案のごとく、自営をしないものには協同組合に與えんということになれば、先程宮城委員がいうように、この漁業権は一体誰に帰属するかということは、これは問題なく資本のある連中に漁業権というものは皆帰属して行つてしまう。それから共同漁業権の解放というものについても、これは外に大きな枠が嵌められればどうしても中に入つて来る、そうするとこれの大きな犠牲者になるのは誰かということになると、定置漁業権についても、共同漁業権についても、漁業権を收奪されているのは誰か、漁民が收奪していることになる。こういう意味で、一口に言つて今度の政府の改正案ですらも、政府の案は完全に漁民から漁業権を收奪する悪法であるということを断言して憚らないのであります。
次は第五の漁業調整委員会についての意見を少々述べさせて頂きますが、この漁業調整委員会というものは、申すまでもなく新らしいところの漁業秩序を作つて行く、漁民の総意で作つて行く、その場合に具体的にこの調整委員会がそれを決めて行くということになりまするが、問題はこの機能、それからこれの構成の仕方、即ちこれをどういうふうにして、どんな形によつてこれを構成されるかということの選出の仕方、これが非常に問題となります。例えばこれは海区漁業調整委員の構成を見ますと、定員が十名でありまして、七名までは漁民、それから三名は都道府県知事の選任、内一名は公益委員ということになりますが、この公益委員というものが一つ問題であります。それから公益委員を含めた他の学識経験者は都道府県知事が天降り的にこれを決める、都道府県知事そのものが民選になる。そういつた意味において、この海区漁業調整委員会によつて、どういつたことが決められるか誰のためにその調整委員会が動かされるかということは、思い半ばに過ぎるものがあると思います。それからこの選挙の仕方として、延べ選挙になつております。地区とか、業種別とか、それから階層別というような分け方をせず、延べ選挙になつておりますが、これは宮城委員からもお話があつたように、これは非常に問題であります。これはあくまでこの延べ選挙は止めて、その調整委員会或いは審議会の段階に応じて、やはり業種別或いは階層別のものを採り入れて、そうしてこの選挙をして行かなければ、その調整委員会というものは本当の設けた意味がなくなる。それから冒頭に述べた協同組合にあらゆる漁業権を持たした場合、その管理については市町村に漁業調整委員会を設けて。そうしてこの調整委員会がその管理に当つて行く。それから海区或いは連合会、それから中央、そうして市町村は階層別にして、それ以外は業種別と階層別、こういつたような分け方で以て調整委員を選んで行く。さもなければ漁業労働者なり、零細なる漁民というものは、この委員会に出ることもできないし、そうして結局漁民のためにこの委員会というものは運用されないというようなことは、初めから分り切つたことであります。
それから第六の免許料及び許可料の可否について申述べます。これは結論から申しますと、免許料及び許可料は一切取らんということにお願いしたいと思います。これは御承知のように、現在の漁業者が如何に安い魚と高い資材、殊に今度の資材の補給金の打切によつて如何に資産割れになるかということは、これは補給金の撤廃について相当政治問題化したことによつても分るように、それから現在の魚がどんどんマル公を割つている、こういつたところに免許料、許可料というようなものが又出て来る。而も現在漁民は、例えば現在の租税負担から申上げますと、所得税においても、或いは地方税においても、それからこういつた免許料においても、例えば国税においては日本の漁業の九〇・二%を占めるところの自家経営というものは、現在の所得税法上はこの自家労賃というものは必要経費に認められない。そこで以て先ず国税で以て取られる。更に地方税としては、現在は事業税というものの中でも、これも自家労賃というものは必要経費には算入されていない。それから漁業権でこれがある。更に免許料、許可料というものが出る。而も今度のシヤウプ勧告によりまして、この地方税の事業税が新事業税となりまして、この附加価値税の中には、課税標準としましては、漁業権とか、その外自家労賃、こういつたものは全部課税標準の中に入ります。従つて今度のシヤウプ勧告においてさえも、この国税において自家労賃は認められない。それから地方税においては、漁業権についても課税される。漁業権税も掛けられる。更に今漁業法における免許料、それから許可漁業については許可料が掛かる。而もこの許可漁業について最も重要なる事業費産、生産手段であるところの船舶税というのは、御承知のように資産の評価替えによりまして、これは新らしいところの不動産税になりまして、そうして大きく掛かつて来ます。こういつたような、漁民が全然負担能力がない、こういうものに対して今度の漁業法において免許料、許可料、而もこの免許料、許可料というのは、漁業権税としては完全にタブつている。二重の課税になる。こういつたようなものを取るというようなことは絶対不当である。而もこれは一部は補償に当てる、一部は行政費に当てるというように、行政費は漁業権とか、それから所得税とか、そういつた外の税金で二重にも三重にも取つておいて、更にこういつたものに、行政費にも当てますからと言つて、免許料、許可料を取るということは絶対に漁民は納得できないと思います。
それからこの補償の問題についてはどうか。この補償については結論から言えば、この補償は全然とは勿論言い難いと思いますが、殆んど無償に近いくらいの補償で、名目的なノミナルな補償をして、そのためにその免許料、許可料といつたところから捻出するようなことは差控えて頂きたい。こういうふうに思います。非常に簡單ですが、大体このくらいにして置きます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/91
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092・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 何か御質問ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/92
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093・江熊哲翁
○江熊哲翁君 只今鯨岡公述人の初頭において言われた言葉の中に、若干私は委員として釈明いたして置きたい点がありますので申します。その言葉の中に、参議院においては成るべくいじらぬようにしたいという態度を持つてこの法案に臨んでおるということを言われたのです。これは何を証拠にそういうことを言われるかということは私は知りません。又この際それを追求する意思もございません。併しこれは非常に間違いであるということだけを申上げて置かないというと、ここに多数の方々がお出でになつておつて、私共がこの法案に対して如何に真剣に審議をしておるかということについて御了解のないことになる。誤解を招くということを私は非常に虞れるのであります。御承知のように本委員会は数十回に亘つて開かれて、その一部分は、これは速記録などに讓りますが、重大な問題にしばしば触れるので、速記を省略してやつた回数でも恐らく数十回これもあると思うのであります。これらを整理したら非常に材料が整えられるわけであります。殊に本公聽会において多数の公述人の方々から非常に貴重な御意見を承つて、私共大変いい勉強もできましたし、参考にもなつたのであります。これらのことについて、それでは私共からどういう態度を取るか。私共は本日の公述人の方々から貴重な御意見を承りましたが、これらのことは十分検討いたしまして、大部分の案件は私共の方において私共だけの意見としては随分討論をし、その結末を得ているような次第でありまして、決して私共がこの法案をいじらんようにしたいというような気持はみじんもない。私共はこれを最も露骨に、具体的に申上げますと、この法案が確かに、最前言われた宮城雄太郎氏、及び鯨岡氏の御両人の言われたように、これは悪法であるということにおいては、この御両人と我々と同じである。全然同志だ。そういう点においては一つ特に御了承願いたいと思うのです。決して参議院の水産委員会がいじらんようにというのではなく、もう殆んど全文に亘つて書き変えなければならない。ところがいろいろな都合上或いはそういうことが許されないのではないか。併し最小限においての程度にしなくてはならないということで、実は苦心して、私共本日の公聽会においても皆さんのお言葉を一言一句聞き落さないように、熱心に聽いておるつもりなのです。いずれ御意見等は十分承つた上で、私共は更に明後日から引続いて委員会を連続開きまして、働く漁民の御意思に応えたいという努力をしたいと思つている。又そういう熱意を持つているということをこの際申上げて置きたいと思うのであります。別に質問ということの程でもないのでありますが、ただその今鯨岡公述人の言われている言葉から判断して、私は前の宮城公述人の言われたことと多少そこに食い違いがあるのではないかという点を鯨岡さんにお伺いしたいのでありますが、宮城さんの言われました最前の御意見によりますと、それは非常にはつきりした線を示されまして、その線が通らないようなものについては、こういつた法案などは勿論通すべきでないという非常にストリクトな線をお示しになつて、私共これも大変参考になつたのでありますが、今鯨岡さんの御意見によると、その努力をしてこの法案は通すべきであるというふうにも考えられるように私は承つたのでありますが、鯨岡さん御自身はこの法案には、勿論我々としては最大の努力をして皆さまのご期待に副うようにするのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになつておりますか、それをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/93
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094・鯨岡稔夫
○公述人(鯨岡稔夫君) それでは先程の公述の中で今問題になりましたから、それを一つ補足して置きたいと思います。今江熊委員から御質問が出ましたが、私は昭和二十四年十一月十一日金曜日の日本水産新聞、この新聞を読んで、参議院の方では本案についてはこういつたふうにあれしているのではないかというふうに私は読んだのでございますので、それを申上げたのでございます。
それから本法案に対する私の気持などもはつきり申上げますと、私は漁業権はすべて一切協同組合に渡すこと、こういつだごとと、それから調整委員会は市町村にも設けて欲しい、その選び方も延べ全体ではなくて、階層別の選挙にして頂かなければ、結局絶対多数を占めるところの漁民というものの利害というものは蹂躙されるという意味で、市町村にも調整委員会を設けて欲しい。それから免許料、許可料は絶対に取つて貰つては困る。この三点を容れられなければ私はこの法案の通過については真向から反対する者であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/94
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095・江熊哲翁
○江熊哲翁君 御趣旨はよく分りましたのですが、そうしますというと、今日現在あるところの漁業法のままで行つた方が、今後いつの時代に新しい漁業法が生まれるかということはこれは分らないのでありますが、あなたの言われるような結果になる、不幸にしてなるとすれば、その古い漁業法のままで行くということは漁村のために、不完全な、こういつた政府案のような形で通るよりか、より幸福であるというふうにお考えになるわけでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/95
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096・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 外に御質問ありませんか……これで公述は全部終りました。これで閉会したいと思いますが、ちよつと公述人に御挨拶いたします。公述人の各位は長時間に亘つて極めて熱心におのおの各位の長い体験と蘊蓄を傾けて述べられましたことにつきまして、我々委員会としては十分これを尊重して今後の審議に臨みたいと考えております。本日は有難うございました。これを以て本日は閉会いたします。
午後四時九分散会
出席者は左の通り。
委員長 木下 辰雄君
理事
尾形六郎兵衞君
千田 正君
委員
青山 正一君
松下松治郎君
淺岡 信夫君
西山 龜七君
田中 信儀君
江熊 哲翁君
矢野 酉雄君
公述人
神奈川県漁業従
事者 宍戸 賢二君
靜岡県濱名群舞
坂町漁業協同組
合長 堀江 寅藏君
日本定置漁業協
会常務理事 池田 文爾君
富山県氷見群宇
波村漁民組合長 安居 篤孝君
漁業協同組合京
都府連合会專務
理事 田中 正雄君
福井県大飯群和
田村漁業協同組
合長 瀧甚左衞門君
三重県真珠漁業
者漁業協同組合
連合会專務理事 里中 政吉君
全国内水面漁業
団体中央会理事 郡司 留吾君
釣魚会連盟会長 堀田 正昭君
水産事情調査所
常任理事 宮城雄太郎君
漁業経営者連盟
職員 鯨岡 稔夫君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100614562X00519491114/96
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