1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年三月十一日(土曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 川野 芳滿君
理事 大上 司君 理事 北澤 直吉君
理事 小峯 柳多君 理事 小山 長規君
理事 前尾繁三郎君 理事 川島 金次君
理事 橋本 金一君 理事 河田 賢治君
理事 内藤 友明君
岡野 清豪君 奧村又十郎君
鹿野 彦吉君 佐久間 徹君
高間 松吉君 田中 啓一君
塚田十一郎君 苫米地英俊君
中野 武雄君 西村 直己君
三宅 則義君 田中織之進君
松尾トシ子君 宮腰 喜助君
竹村奈良一君 中野 四郎君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
出席政府委員
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
国税庁長官 高橋 衛君
委員外の出席者
專 門 員 黒田 久太君
專 門 員 椎木 文也君
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本日の会議に付した事件
酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出第四
七号)
有価証券移転税法を廃止する法律案(内閣提出
第四八号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
五一号)
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
五二号)
富裕税法案(内閣提出第五三号)
通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
五四号)
資産再評価法案(内閣提出第八三号)
相続税法案(内閣提出第八四号)
所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関す
る法律案(内閣提出第八五号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/0
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001・川野芳滿
○川野委員長 会議を開きます。
これより酒税法の一部を改正する法律案、有価証券移転税法を廃止する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、所得税法の一部を改正する法律案、富裕税法案、通行税法の一部を改正する法律案、資産再評価法案、相続税法案、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案の税制改正関係九法案を一括議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。田中織之進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/1
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002・田中織之進
○田中(織)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました税制に関しまする九法案中、有価証券移転税法を廃止する法律案に対しましては賛成をいたしまするが、他の八法案に対しましては、反対の討論を行わんとするものでございます。
まず本委員会に付託せられましたところの今回の税制改革諸法案は、いわゆる昨年八月二十六日のシヤウプ勧告によりますところの、税制改革に関する根本的改革の一応の仕上げに属するところの法的な措置でございまするが、われわれは一箇月余にわたる本委員会におけるこの法案の審議過程におきまして、政府がシヤウプ勧告案に基いて立案いたしたという今回の税制改革の諸法案が、著しく勧告の趣旨から逸脱しておる面が見受けられるのであります。ことにシヤウプ勧告におきまして、日本の租税体系の上におきまして、いわゆる中産階級以下の勤労大衆に対する課税軽減のための処置が、強く要望せられておるような面につきましては、具体的には所得税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げたいと思いますけれども、特にこの所得税を中心といたしまして十分盛られておらないと、われわれはかく断定せざるを得ないのであります。ことに政府が、この税制改革の上に二十五年度の予算案を組み立てまして、昨日衆議院におきましてはわれわれ野党の一致した反対にもかかわらず、多数の力をもつて衆議院を押し切りましたこの六千六百十四億の超厖大予算、この予質におきまして相かわらず大衆收奪の租税の上に組み立てておきながら、片一方におきまして、自由党の党略的な二十五年度における減税の宣伝を行つておるのでありますが、われわれは、昨日反対をいたしました予算案につきましても申し上げました通り、遺憾ながら何ら減税として見るべきものを発見し得ない。そういう観点から、われわれは有価証券の移転税を廃止する法律案以外の各法案に反対せざるを得ないのであります。ことに政府が盛んにから宣伝を行つておりまするところの二十五年度における減税、これは国税の面におきまして、予算面からは前年度に比べまするならば、約九百億の減税を行つた、かように申しておりまするけれども、事実まだ法案すら正式には国会に提案せられないのでありまするが、地方税に関する法律案を検討いたしまするならば、地方税における相当大幅な増徴が行われるのでありまして、われわれは政府のこういう数字的魔術によるところの減税、から宣伝に対しましては、国民の前にその欺瞞性を暴露しなければならない、かように考えるものであります。ことにわれわれが注目をいたさなければならないのは、二十五年度において国税の面においては、なるほど二十四年度よりそれだけの減税を行うような形に相なりますけれども、その比較になつておりまする二十四年度の税收というものが、一体いかなる形において行われておるかということを、われわれは突かなければならないのであります。二十四年度は、前年度よりも著しき租税の増徴になつておる。しかも二十五年度においては、掛声に応ずる意味からもある程度の減税を行わなければならないという意味から申しましても、徹底的な増徴を行つておるというこの事実を見のがすわけには行かないのであります。従つて二十四年度中に相当額の増徴を行つて、それをちよつぴり雀の涙ほど二十五年度において減らしたからといつて、われわれはそれが実質的な意味における減税にはならないということを、ここに申し上げざるを得ないのであります。すでに御案内の通りに、二十四年度におきまする自然増收の部分につきまして、これを第六国会における補正予算におきまして、二百十三億というものがすでに見込まれておる。さらに申告所得における若干の減收を見込まなければならないといたしましても、本年三月の年度末における租税のいわゆる超過收入分というものを、現在の末端の税務署における相当徹底的な徴税攻勢の見地から検討いたしまするならば、われわれはやはり相当の租税の徴收超過分を認めざるを得ないと思うのであります。そういう見地からいたしまするならば、二十五年度における政府の減税ということは、われわれはまつたく実質を伴わないいところの、一つのから宣伝であると主張せざるを得ないのであります。
さらに、今回の税制改革を政府が立案するにあたりまして、その前提となつておりますところの国民所得の算定の問題について考えてみましても、生産あるいは物価その他いろいろの角度から検討いたしましても、政府が安本当局をして推定せしめたと言われる三兆二千五百億というような、厖大なる国民所得額に達するというようなことは、われわれはこれを信ずることができないのであります。これはただ、ただいま申し上げましたところの減税という宣伝技術の問題、また二十五年度予算において、国民から收奪しようとするところの租税その他の関係から申しまして、ただ紙の上において、この程度の国民所得の増加を見込まなければ、これが減税という、そういう効果を国民の前に植えつけることができないという、一つの数字的のからくり以外の何ものでもない。この租税計画を立てる上における前提となつておりますところの国民所得の算定の問題につきましても、われわれはこれを見のがすわけには行かないのであります。
さらに全体といたしまして、今回の税制改革の基本的な問題について申し上げまするならば、いわゆるドツジ・ラインによりまして資本蓄積を強行せんとする面から、政府が法人税の軽減その他の面を強調し、その反面低額所得者に対する実質的な増徴の面が見受けられるということでございます。さらにこの点は、先般の大蔵委員会における私の最終質問において、大臣にただしたのでありまするけれども、現在においてもそうでありますが、特に今後において相当入つて参りますところの外国資本、あるいは日本に参ります外国人の日本において所得する資産に対する課税の問題等におきまして、まつたく野放しの状態を呈せんとしておるこの事実でございます。こういう点におきましても、今回政府が提出いたしましたところの税制案の検討にあたりまして、基本的にわれわれが検討しなければならない問題として指摘をいたしたのでありまするが、こうした面に対する政府の本委員会における答弁もきわめて不満足であります。そういう意味におきまして、ただ日本の国民だけがこうした租税の面において零細化される傾向を持つ反面、巨大なる外国資本の関係において、日本の民族的な国民生活の面における重圧が、やはり租税体系の上からも今後加わるのではないかという危惧の念を持たざるを得ない。こういう点からもこの税制案に対しましては、政府にさらに根本的な検討を要求しなければならないというのが、われわれがこの税制改革諸法案に反対せざるを得ない一つの根拠でございます。
次に八つの法案の個々につきまして、われわれはその反対の理由を簡單に申し上げたいと思うのでございます。まず所得税法に関連をいたした問題につきましては、なるほど基礎控除の若干の引上げ、あるいは扶養控除の所得額によるところの一万二千円の引上げ、あるいはいわゆる総合所得と申しますか、合算課税の廃止の問題、あるいは扶養家族の範囲の拡大等、われわれは必ずしも反対する必要のない面も見受けるのであります。それにもかかわらずわれわれは、現在政府が提案いたしておりまするところの基礎控除二万五千円が、現在の国民生活の生計費の実態、あるいは物価の現状その他の関係から申しまして、これはなお低きに失するということを申し上げざるを得ないのであります。さらに税率の問題につきましても、五万円以上二十万円までは七段階にわかたれております。しかしながら二十万円以上五十万円までは一足飛びに進んでおるのであります。さらに五十万円以上は一率五五%ということになつておりますが、現行の所得税における累進課税を五十万円以上五五%で打ち切つたというところに、いわゆる国民の常識から申しますところの高額所得者に対する政府のきつい思いやりはございますけれども、勤労所得に対する勤労控除が、従来の二割五分から一挙に一割五分までに引下げられてるというような事実と比較対象いたしまするならば、これに対しましてわれわれは反対せざるを得ないのであります。われわれは先般の委員会におきましても、この五十万円以上五五%というのを少くとも百万円までは五五%にして、百万円以上は五五%の線を引上げることによりまして、五万円から二十万円あるいは三十万円までに至る所得者からは、実に詳細にわたつてしぼり上げようとしている問題について、租税の、面における若干の減收はあろうけれども、考慮したらよいのではないかということを申したのであります。またカーブの引き方によつて、五十万円と百万円に引上げることによつて、租税総額における減少というものをカバーし得ることは、何らむずかしい技術を要しない問題であると思う。そういう点からも、これは十分再検討すべきであるにもかかわらず、これが行われておらないという点をわれわれは指摘せざるを得ないのであります。ことに農民あるいは中小企業者等の零細なる所得者に対しまして、総論的な部面において私が指摘いたしましたように、シヤウプ勧告におきましても、これらの農業所得あるいは中小企業者の所得における勤労所得的な取扱いの点におきましても、われわれは今回政府の立案いたしました程度のものによつては、十分勧告案の趣「旨そのものが生かされておらないという点も指摘せざるを得ないのであります。
さらに法人税の問題について申し上げますならば、今回は法人に対する超過所得の面を改めまして、一律三五%の課税を行つたことでありますが、われわれは政府の答弁にもかかわらず、中小の法人税に対する一律三五%課税の点につきましては反対であります。同時に大きな所得をあげておりますところの規模の大きな法人、または業種によつてはうんと收益をあげているものに対しても三五%で切つているということ、すなわち上の部分に対する累進率を持つておらないということに対しましても、われわれは遺憾ながら賛意を表することはできないのであります。さらに重要な問題は、中小企業あるいは農業等の面における零細なる生産者の保護のために、政府が助成政策としてとり来りましたところの農業協同組合、あるいは中小企業協同組合等のいわゆる特別法人に対するところの課税を、全部法人課税一本にいたしまして、同率課税を行おうとする政府の処置に対しましては、賛意を表することができないのでございます。
次に所得税の補完税という意味合いにおきまして、政府が今回設定いたしましたところの富裕税の問題につきましても、われわれはこれに賛意を表することはできないのであります。この点につきましては、先ほど所得税の面において申し上げた点と同じように、富裕税の対象に相なりまする五百万円以上の高額所得、これといわゆる五十万円以上五五%の一律課税で参りまするところの、この中間の層に対する税としての捕捉の問題につきましては、欠ける点があるばかりでなく、われわれは現在政府が提出いたしておりまするような、この富裕税のこうした程度の累準率に対しましては、遺憾ながら賛意を表することはできない、かよう申にし上げざるを得ないのであります。
さらに資産再評価税の問題でございまするが、これは一応形式的には、任意ということになつておると思いますけれども、私は実際的には資産再評価は強制せられる結果に相なると思うのであります。これは一応任意という建前になつておりますけれども、一面においては、減価償却というような点を認めないということによつて、これは強制再評価と同じ結果に相なるのであります。そういうような関係で、勢い大蔵大臣の答弁のいかんにかかわらず、物価への影響というものをわれわれは考えざるを得ないのであります。そういう点におきまして、資産再評価の問題につきましては、あくまで任意のものたらしめなければならないという、わが党の基本的な態度からいたしまして、私は実質的には強制に相なりまするところのこうした再評価税に対しましても、反対をせざるを得ないのであります。
次に相続税法案に対しましても、われわれはこれに反対せざるを得ないのであります。一見いたしますると、きわめて社会化された形式を整えておるのであります。しかしながらたとえば免税点につきましても、これは大蔵大臣の説明によりますと、従来のようないわゆる家族制度が新憲法によつて改められて参りました関係から、個人というものを建前といたしまして、免税点も考慮しておると、かように申されるのでありまするが、一人十五万円、今日の貨幣価値におけるこうしたものを考えて参りまする場合に、われわれはこの免税点は低過ぎる。これをもつと引上げなければならないという点を考えなければならないのであります。ことにこれは総論的な反対論の中に申し上げましたが、今後日本に参りまするところの第三国人によりまして、日本の国内にいて資産が所有せらるるという形式が進んで参りまする段階におきまして、われわれは日本の国民全体の立場において、この一見社会化されたところの相続税法について、新たなる角度から検討しなければならない問題があり、また今日の日本の経済の社会化がきわめて不十分な段階におきましては、これは物を持てる者の立場においても、考え直さなければならない点があるということを指摘いたしまして、この相続税法案に対しましても反対するものであります。
次に酒税法の一部改正法律案でございますが、若干の増徴を行うということでございますが、われわれは現在の酒税の税率の関係から見ましても、これは酒の業者の声を聞くまでもなく、すでに酒の消費、あるいは従つて売れ行きに大きな影響を持つて来ておる段階におきまして、これ以上増徴するというようなことに対しましては、われわれは反対するものでございます。むしろ酒税の面における増收を期待いたしますならば、私は税率を引下げるといたしましても——先般これは第六国会であつたかと記憶いたしますが、同じこの大蔵委員会において私が指摘したのでありますけれども、いわゆる水割りの関係において酒税の増收を期待し得る部分が相当あり、こまかい数字は本日は申し上げませんけれども、私はこの面からむしろ税率を引下げても増收を確保できるような他の方法が——これは徴税技術上の問題で解決できる問題でありますが、あるということを指摘いたしまして、この酒税法の一部を改正する法律案に対しても、われわれは反対をするものでございます。
次に通行税の問題でございますが、これは非常に古い歴史を持つておるものでございまして、今回三等の鉄道運賃等に対しまして、これを廃止するということにつきましては、われわれは必ずしも反対をするものではございません。しかりながらこれはもつと全面的に、いわば一種の人頭税でありますから、そういう点から考えなければならない問題である。さらにこの関係は、現在の第三次吉田内閣に相なりましてから引上げられましたところの、旅客運賃の関係等を考えて参りまする場合に、すでにこれは運賃の引上げの面にこうした問題が織り込まれておるのである。そういう点からこの三等の旅客運賃についての廃止は当然のことである。われわれはこれにつきましては、與党の自由党の諸君とともに、海上運賃の二等についての免税の処置についての修正を企図いたしたのでありますが、遂にわれわれの意図がいれられない。われわれはあくまでこうした人頭税的な、ある意味において封建的な色彩を持つておるこうしたものにつきましては、これを全廃すべきである、部分的な廃止ということでは不十分であるという意味において、遺憾ながらこの通行税に関する改正法律案に対しましても、われわれは反対を表明するものであります。
最後に手続法の関係の問題でございます。所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案でございますが、これは以上申し述べた基本的な法律にわれわれが反対いたす意味におきまして、ことに特別法人税を廃止する関係から、関係法令の中に、たとえば農業協同組合、中小企業協同組合法等の関係の分を、これは法人課税一本にいたしまする関係から整理しようということは、われわれはこれを特別法人税という形において、一般の法人とは課税率も下げたものを存置すべきであるという建前をとつている関係から、これの全部ではございませんけれども、こうしたものを全部関係法令の整理に名をかつて、一拳に落してしまおう、こういう観点に立ちましてのこの手続に関する法規ではございますが、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案に対しましても、われわれは遺憾ながら賛成することはできないのであります。
ただこの九つの税制関係の法案のうち、有価証券移転税法を廃止する法律案は、証券民主化という意味における大衆的な資金の調達ということが、今日日本の再建のためにきわめて重要な施策として取上げられておる段階において、きわめて適当な処置であるという意味において、その点に対しては賛意を表するものでございます。
私の討論を終るにあたりまして、私が重ねて指摘しておきたい問題は、本委員会の審議の範囲外の問題ではありますけれども、この国税と片一方の輪をなしておりますところの地方税の関係におきまして、今回の税制改革案による関係において、相当の増徴が行われるという点であります。ことに地方税の関係につきましては、間接税は若干の軽減を見るのでありますが、附加価値税あるいは固定資産税と、地方税の面における直接税が増徴せられるのであります。そういう関係から中小企業に対する重圧、また協同組合に対する影響の重大なることをわれわれは考えなければならないのであります。昨日も予算の討論において、わが党の稻村君から指摘いたしたのでありますが、全国に散在いたします三千有余に上る各種協同組合の半分は、すでに赤字の状態に苦しんでおるのであります。これが今後中央、地方を通ずる税制改革の関係から、さらに税の面からも重圧を加えられて、ほとんど全滅の悲運に逢着せざるを得ないのではないかという点でございます。今日政府の手放しの楽観論にもかかわらず、国民経済における、ことに中以下の層に対する重圧が加わつておる段階におきまして、一応予算案が通つておる段階でございますけれども、政府はこれらの点を勘案いたしまして、少くともわれわれが反対をする各税法案は潔く撤回せられまして、さらにわれわれの意見を十分いれて、今会期は五月二日まであるわけでありますから、この間に出し直すことを政府に強く要求して、私の討論を終るものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/2
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003・川野芳滿
○川野委員長 北澤直吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/3
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004・北澤直吉
○北澤委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外税制改正に関する八法律案につきまして、賛成の意を表せんとするものであります。
今回の税制改革はおおむねシヤウプ税制使節団の勧告の基本原則に即応しまして、しかも政府当局の多大な努力によりまして、わが国現下の財政経済諸事情に適合するように、これに適切と認められる調整を加え、わが国現行税制全般にわたつて根本的な改正を行わんとするものでありましたが、さきに第六国会を通過いたしまして、本年一月より実施せられました所得税の暫定的軽減、取引高税及び織物消費税の廃止、物品税の改正等と一体となりまして、わが国にいまだかつて見ないところの近代的な、合理的な税制を樹立せんとするものでありまして、その大体の構想輪廓におきましては、何人といえども反対する人はないと確信するものであります。公平な立場にあります学識経験者におきましても、一致して今回の税制改革に賛意を表しているわけであります。もし万一これに対して反対する者がありとするならば、それは單に反対せんがための反対であり、党利党略に利用せんとするものであると言われても、弁解の辞はないと思うのであります。ただこの場合一言いたしておきたいことは、ただいま議題となりました国税に関する九法案と一体をなすべき地方税の改正案が、諸般のやむを得ない事情のためにまだ国会に提出に相なつておらず、そのために地方税法の改正とにらみ合せながら、国税の改正を審議する上におきまして、多少遺憾の点があつたことでありますが、この地方税法の改正案は、なるべくすみやかに国会に提案になるように、政府当局の善処を希望する次第であります。
次に今回の税制改正の特徴について申し述べまするならば、第一は、昭和二十五年度の予算におきましては、公共事業等の建設的投資をしながら、総合予算の均衡を確保し、経済安定をはかる方針を堅持しつつ、歳出の面におきましては相当大幅な縮減を断行し、これによる財源をもつて国民租税負担の軽減、合理化をはかることといたした点であります。これによりまして、国税の軽減額は、昭和二十四年度当初の予算に比較しますれば、九百億円以上に上るのであります。地方税におきましては四百億増徴するわけでありますが、国税と地方税と合せますと、国民所得に対しまして二・三%の減税となつておるわけであります。ただいま社会党の田中委員より、今回の税制改革はシヤウプ使節団の勧告の線を逸脱しているというふうな討論があつたのでありますが、これはシヤウプ使節団の勧告を日本の国情に適合するように、政府がせつかくの努力をもつて調整を加えたものでありまして、シヤウプ勧告をそのままうのみにせず、これを日本の国情に合うように調整を加えた政府の努力に対しまして、われわれは敬意を表するのであります。たとえばシヤウプ勧告によりますと、基礎控除の引上げは二万四千円となつておりますのを、今度の改正では二万五千円と上げております。またシヤウプ勧告におきましては、三十万円を越える所得について五五%となつておりますのを、これを政府の努力によりまして、五十万円を越えるものについて五五%、こうなつております。また勤労控除につきましては、シヤウプ勧告案によりますと一〇%になつておりましたのを、これも政府の努力によりまして一五%と引上げたのであります。また酒税につきましても、シヤウプ勧告案におきましては相当の増税を主張されておりますが、これも政府の努力によりましてあまり増税せず、造石高の増加によつて收入をはかる案を立てたのであります。また資産の再評価につきましても、シヤウプ勧告案におきましてはこれを強制することになつているわけでありますが、これは日本の実情に合いませんので、この資産再評価についてもその最高限度をきめて、その範囲内において任意に再評価をすることにいたしたのであります。そういうふうに今度の税制改革は、シヤウプ勧告の線を守りながら、これを日本の国情に適合するように適切な調整を加えたのであります。先ほど社会党の田中委員は、今回の税制改革は減税というのはから宣伝である、実際的には減税になつておらぬ、こういう主張でありましたが、これはとんでもない間違いであります。ここに所得税の例をとつてみましても、たとえば給與所得者について申しますならば、扶養親族が三人で月收一万円を有する者の現在の所得税負担は、月に千百九十五円でありますが、今回の改正におきましては六百八十三円となりまして、結局四割二分八厘だけ軽減されるわけであります。また扶養親族が四人で月收一万五千円を持つております者の現行の負担は、月二千六百九十一円でありますが、今回の改正におきましては千百五十八円となりまして、差引き千五百三十三円の軽減となり、軽減の割合は四割五分八厘、こういうわけになります。これをもつて單なるから宣伝と言うのは、事実を曲げるもはなはだしいものであります。もちろんわれわれといたしましても、今日の経済界の不況に際しましては、この程度の減税では必ずしも満足するものではありませんけれども、無暴な戰争によつて一敗地にまみれました悲惨な敗戰国のどん底の状態から、主として一箇年四億ないし五億ドルに上るところの米国の対日援助によりまして、今日の状態まで祖国日本の復興再建を達成したのであります。今後アメリカ政府の日本に対する援助は漸滅し、数年後にはこれを期待し得ない状況となつたこと、従つて日本としましては一日もすみやかに経済の自立を達成して、いわゆる竹馬経済、すなわち他力依存の経済を脱却することの急務であること、また経済の自立なくして政治の自由なく、日本国民の待望しまするところの対日講和條約を締結するにも、他力依存の日本経済態勢を一日もすみやかに自立依存の経済態勢に切りかえる必要があること、そのためには万難を排してインフレーシヨンを收束せしめ、経済を安定して、貿易の振興をはかる以外に道がないことなどを考えますならば、二十五年度はこの程度の減税でしんぼうするほかはないと思うのであります。いくさに勝ちましたイギリスにおいてさえ、国民勤労大衆の基盤の上に立つ労働党内閣の指導のもとに、輸出かしからずんば死かというスローガンを掲げまして、極度の耐乏生活を国民に要請し、貿易の振興をはかりまして、経済再建に百方努力しておりますことは、これはわれわれにとつて他山の石とすべきであります。昭和二十五年度の日本の国民所得と租税との比率を見ますと、地方税と国税を合せますと二三%でありますが、昭和二十四年度のイギリスの比率を見ますと四〇%であります。同じくいくさに勝ちました国でありまするお隣の中国における今日の国民大衆の生活状況を見ますと、長年にわたる外国との戰争並びに内職のために、文字通り塗炭の苦に呻吟しておる状態であります。しかしながら政治の要諦は、国民負担の軽減にあることは申すまでもないのであります。従いまして政府におかれましては、今後各方面にわたつて中央、地方を通じて経費を節約し、国民負担の軽減に努力し、特に所得税、物品税、酒税等の税率の引下げを実現せられるように、努力せられんことを希望する次第であります。また農業協同組合、中小企業協同組合、漁業協同組合等につきましては、まだスタート早々でありまして、その組合の基礎が必ずしも強固でありませんので、私はここ数年間はこういう組合に対しまして、課税上の特別の考慮を拂う必要があると思うのであります。この点につきましても今後政府当局の御考慮をお願いしたいのであります。
次に今回の税制改革の特徴の第二は、負担の公平化をはかることに重点を置いていることであります。社会党等におきましては、社会政策は自分たちの專売であるかのごとく言つているのでありますが、これはとんでもない間違いでありまして、今度の税制改革におきましては、社会政策は相当の程度に織り込まれていることをわれわれは看取するのであります。たとえば所得税制度におきましては、基礎控除の引上げ、勤労控除をシヤウプ勧告の一〇%から一五%に増加したこと、扶養控除の増額、それから扶養家族の範囲を拡大したこと、農業及び中小企業の專従者に対する扶養控除によりまして、税の軽減をはかつたこと、それから不具者等に対する特別の控除を認めたこと、それから法人税におきましては、超過法人税を廃して、小規模の法人企業に対してある程度の特別の控除を與えたこと、それから富裕税及び相続税によりまして、高額の財産所持者に対して重税を課したこと、汽車の三等乗客に対して通行税を免除したこと、下級のタバコの値下げをしたこと、さらに直接税に重点を置いて、大衆課税の性格を有する間接税を整理したこと、こういうことは今回の税制改革において、社会政策的税制改革であるということが言えるのであります。
第三に、今回の税制は負担の公平を期しながら、一面において資本の蓄積に重点を置いていることであります。今日日本におきまして、最も不足しておりますものは資本であります。ところが資本と労力というものは、これは車の両輪あるいは鳥の両翼のごときものでありまして、そのいずれの一つを欠きましても物の生産はできないのであります。日本は労力は非常に豊富でありますけれども、この労力の生産性を向上するためには、どうしましても技術、設備の改善をはかり、原料を確保する必要がある。これはどうしても資本にまたなければならないのであります。日本の技術はアメリカ等に比べまして、五十年も遅れておるということを言われておりますが、日本経済自立の基盤でありまする貿易の振興のためには、日本の労働の生産性を向上し、国際競争に勝利を占めなければならないのであります。このためには資本の力にまつほかはないのであります。今日の日本の段階におきましては、分配の公平をはかることもちろんでもりまするが、それにもまして必要なことは、生産を増加して分配の源でありまするところの国民所得を増加することが大事であります。この意味に一おきまして、今回の税制改革が資本の一蓄積に重点を置きました点は、われわれはこれに賛意を表するのであります。今回の改正におきまして、高額所得に対する税の累進の停止、法人税の軽減、配当所得に対する源泉課税の廃止、資産再評価等によりまして企業の内容の強化をはかり、資本の蓄積をはかつておるのが注目されるのであります。また今回の税制改革に伴いまして、外資の導入につきましても、この税制上特別の考慮を加えることになつておるのでありますが、これも時宜に適するものと思うのであります。共産党を除きましては、外資の導入に反対する政党はないと確信するものであります。
以上申し述べましたように、今回実施せんとしまする税制改革は、税制そのものとしては近代的合理的でありまするが、これを今日のような日本の状況におきまして実施するには、運用上慎重の考慮を要するものがあると思われるのであります。政府当局の善処を切に要望する次第であります。たとえば青色申告制度のようなものにつきましては、よく納税者を指導しまして、円滑にこれを実施するように特段の御配慮をお願いしたいのであります。また税制は法律をもつて定めましても、これを運用するのは政府当局であります。特に第一線の税務署に、この徴税というものが一任されておるわけであります。従つて政府の運用上の手心いかんによりまして、税の徴收というものは非常な影響を受けるわけであります。政府の説明によりますと、昭和二十五年度の申告納税の徴收歩合は、農業所得におきましては九〇%、営業所得におきましては七〇%、その他七九%、合計七三・七%というようになつております。実際の課税額、それから実際に徴收しまする税額の間には、それだけの開きがあるわけであります。従いまして、この税法の運用というものにつきましては、政府の責任はきわめて重大だと思うのであります。従いまして政府におきましては、この上とも徴税機構の能率の向上をはかり、なるべく税法通りに実施し、徴收歩合の向上をはかつて、そして正直者がばかを見ないように税制の確立を希望する次第であります。
以上をもちまして私は自由党を代表しまして、今回の税制改革九法案に対しまして、賛成の意を表するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/4
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005・川野芳滿
○川野委員長 宮腰喜助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/5
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006・宮腰喜助
○宮腰委員 私は民主党を代表して、ただいま議題となつております諸税法案のうち、所得税法の一部を改正する法律案、富裕税法案、相続税法案、法人税法の一部を改正する法律案、資産再評価法案、酒税法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案に対しては反対するものであり、有価証券移転税を廃止する法律案に対しては賛成するものであります。
まず最初に所得税法の一部を改正する法律案について意見を述べます。先般と今回の税制改革を通じての大きなねらいは、国税全体の税体系を直接税中心に持つて行くという意図のようであります。申すまでもなく近代的租税制度は、直接税なかんずく所得税中心主義でありまして、従つて政府が取引高税その他の間接税を撤廃あるいは軽減し、重点を直接税に移したということそれ自体には私も賛成であります。しかしながらここに考えねばならないことは、この所得税中心が最もよい近代的な租税制度であるという根拠は、この税が最もよく国民の担税力に比例して課税し得るという点でありまして、それは必然的に次の二つの措置を伴わねばならないのであります。それは何かと申しますと、第一に、国民の多数を占める広範な低所得者層に対しては免税の措置を講ずること、第二には中所得者以上に対しては適度に累進的な税率を適用すること、以上の二点であります。もしこの二つの原則が十分に貫かれていないと、所得税中心主義はかえつて国民の担税力に逆比例し、大衆を直接的に收奪する邪悪な租税体系になるのであります。この最もよい例が現行の所得税でありまして、しかも政府の提出されている改正案のごときは、この不合理を一層助長しているものであると言わなければなりません。
まず低額所得者層の免税という点より見ますと、改正案によれば基礎控除は二万五千円であります。給與所得者の場合はこれに一五%の勤労控除を加えましても、独身者の免税所得は年額二万九千円にすぎません。この程度の所得階層は現在はほとんどないといつてもよいくらいでありまして、大部分の低所得階層には免税の措置が講ぜられていないわけであります。しかもこれは国税の場合のみをとつて申し上げたのでありまして、明年度から増徴される地方税をも考慮に入れますと、市町村民税、固定資産税あるいは事業所得者に対する附加価値税等の課税の累進的性格よりしまして、月額六、七千円以下の低所得者に対しては、必ずや現在よりも二倍程度の租税の増徴がなされるのであります。
もう一つの面である所得税の累進的性格という点について考えてみましよう。政府はこの改正案によつて従来の税率を改め、課税所得五十万円までは従来通り小刻みに税率を引上げ、しかも五十万円以上の大所得者に対しては税率五五%どまりというはなはだ不可解な体系をとつております。なるほど非常に高額な所得者に対しては、富裕税を徴收するという建前になつておりますが、これはほんの申訳的なものにすぎず、現行制度に比べて中小所得者の負担はほとんど軽減されないのに、大所得者の負担が著しく軽減されていることは何人の目にも明瞭であります。これは單に税收の確保というような逃げ口上によつて済まされることではなく、勤労者、農民、中小企業家の犠牲の上に富裕階級の利益をはかるという吉田内閣の性格を、最も露骨に現わしているものであります。所得税が現在のように大部分中小所得階層の負担に帰し、しかもその最も真髄と言われる適度の累進性を失つている状態においては、われわれは政府の堅持している直接税中心の租税制度を近代的、合理的なものとして受入れるわけには参りません。このような改正案によつては、今後ますます納税者と徴税当局との摩擦を強め、徴税が社会的不安を生む最大の動因とならないと、だれが保証し得ましようか。これが私の本案に反対する根本的理由なのであります。次に富裕税法案について意見を申し上げます。この富裕税は五百万円以上の財産所有者に対して〇・五%ないし三%の課税をなすものでありますが、率直に言つてかかる税を設けた政府の意図がどのようなものであるか、私ははなはだ了解に苦しむものであります。すなわち所得税の補完税として最高税率五十万円超五五%の所得税の累進的性質を矯正するものとしては、あまりにも弱いものでありまして、むしろ大金持に対しては特別に課税するのだという一種のゼスチユアーにすぎず、その意味で一層偽善的で大衆を愚弄するものと言わざるを得ません。
次に相続税法の一部を改正する法律案について意見を申し上げます。この税は従来の贈與税及び遺産税を一本にまとめて種々の改正を施したものでありまして、租税負担者を財産相続人あるいは讓受人に改めたことを初め、種々の点で従来よりも一層合理的なものになつている点が多々あることは、私もこれを認めるにやぶさかではありません。しかしながら問題となるのは改正税率があまりにも高率である点と、免税点があまりにも低過ぎるという点でありまして、これらは他方において所得税がもし十分に累進的性格を持ち得たならば、ともに矯正し得る点であります。従つて私は所得税をより累進的なものとし、相続税は全般的により緩和すべきであると主張し、政府原案には反対するものであります。
次に法人税法の一部を改正する法律案について簡單に意見を申し上げます。今回の改正案は超過所得、清算所得に対する課税を廃止して普通所得一本として、税率は現行の三五%そのままとしており、新たに積立金に対する二%課税がありますが、大体においてこれらによつて、企業の負担が相当程度軽減されているようであります。またその他に貸倒れ準備金を認めたり、損失の繰越し、繰りもどし、たなおろし資産の経理等の面において、確かに従来より合理化されている点が多いようであります。これらは私としてもまことにけつこうであると思いますが、問題となる点は、企業に対してはこのほかに資産再評価による課税がなされるのでありまして、これをもあわせ考えますと、法人に対する租税收入は昭和二十四年度予算額五百億円に比べて、明年度は五百三十一億円とむしろ増加しているのであります。これはさなきだに不況にあえいでいる企業に対して、重大な影響を與えるものでありまして、私のはなはだ一憂慮にたえないところであります。さらに今回の改正による重大な問題は、農業協同組合その他の特別法人に対する課税を、一般法人と同様に扱うことにした点であります。政府の説明によりますと、従来とも特別法人に対する課税の税率は、一般法人のそれに近づけつつあつたのであるから、これは当然の措置であるとのことでありますが、これは單なる一片の法律論にすぎず、まつたく経済の実情を無視した暴挙であると言わねばなりません。経済的基礎のきわめて薄弱である農業協同組合等は、とうていこの重圧に抗し得るはずはなく、農村はますます不況の底に沈倫するより道はないように思われます。この点がこの改正案の最も大きな難点であります。
次に資産再評価法案についてであります。私の最も心配いたしますのは、この資産再評価が、経済諸條件の均衡による新価格体系の形成と矛盾するものではないかという問題であります。すなわち再評価を行う以上、その償却額は商品価格に織り込まねば無意味であり、しかもその織り込みは好ましくもなく、また現状では不可能であります。この理由で再評価そのものがかえつて企業を弱体化するおそれがあり、しかも再評価益に六%の課税を行うということは、一層企業に重圧を加える結果になるわけであります。法案の條文には再評価は任意ということになつておりますが、これは再評価の倍率を企業の任意とするだけであつて、再評価をすること自体は実質的には強制となつております。それゆえ私は経済界の現況にかんがみ、今回の再評価法案には反対いたすものであります。
さらに酒税法の一部を改正する法律案について申上げます。従来もこの種の税は殆んど課税の飽和点に一達しておつたのでありまして、これ以上税率を引上げるということは、いかに国庫收入の要請とは言え道徳上許さるべきではありません。しかもシヤウプ勧告にさえ、明年度の酒税收入は八百億円とされているのに、一千三十億円と二百三十億円も上まわるような増徴の仕方は、決してわれわれの賛成し得るところではありません。さきにタバコの価格を引上げた結果がタバコの売れ行き不振を来し、かえつて財政收入上大きなマイナスの結果を招いているのと、同一のはめに陷る懸念があると思われるのであります。
次に通行税法の一部を改正する法律案につきましては、三等の旅客運賃並びに急行料金の免税は私も賛成するところであります。但しここに希望いたします点は、三等の旅客運賃が現実にこの通行税の分だけ値下りになつて、大衆の負担を軽減することであります。がしかし船舶の二等は汽車の三等に相当するものであり、これに対する修正を承認せざる限り反対であります。
さらに有価証券移転税法を廃止する法律案につきましては、取引高税、不動産取得税等の諸流通税が廃止されつつある現状において、有価証券の取引流通を円滑ならしめるという趣旨で賛成であります。
最後に所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案は、單なる技術的なものであり、取り立てて言うほどのことはありませんが、前法令に反対する以上本案にも反対するものであり、以上をもつて私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/6
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007・川野芳滿
○川野委員長 河田賢治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/7
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008・河田賢治
○河田委員 私は日本共産党を代表しまして、ただいまの所得税法案並びに他の八法案に対して、すべて反対の意を述べるものであります。
政府は今度シヤウプ博士の税制改革にのつとりまして、大幅な税制改革をやつたのであります。シヤウプ博士の勧告を取入れたことについて、北澤氏が盛んにこれを弁護されておりましたが、しかしシヤウプ博士の知恵を借りなければ日本の税制改革ができないというようなことでは、あまりに大自由党の方々としても面目ないではないか。また政府としても面目がないではないか。他人の知惠を借りなければ日本の税制改革ができないということは、これはまつたく日本の税制において自主性をなくしておる。これが私の最も諸君に言つておきたい一つのことであります。
ところで今度の政府の税制改革も、盛んに九百十三億円減税というようなことを蔵相あたりは言つておりますけれども、しかしただ一つだけのものを見て、ちようど一本の木を見て森を見ないと同じように、一方を見て他の方を見なければ何の減税でもない。御承知の通り国税にしましても、ある面では減税になつているであろうが、実質上の国民生活からいえば減税になつていないものがある。これは私は後にそのことに触れますが、こういうふうに国税においては若干減少したが、地方税においては増徴する。御承知のごとく今日法案が出ないという——各資本家団体やあるいはいろいろな国民の諸団体から、今日の地方税の改正問題また自由党の改正案というものが出まして、いまだにこの国会に地方税が出ない。こういうふうに出ないところの問題は、やはりこの法案の中にきわめて莫大な増徴が見込まれておるということ、この意味から従つて国税だけを減る減るといつても、地方税で増徴されれば、これはプラス、マイナス同じなんである。あるいはマイナスの方が多いのである。同時にまた税制改革という点だげでなく、やはり税制は政府の経済政策の一環なのでありまして、税金で減らしても、国民大衆のふところから出る金は同じなのであるから、たとえば税金によつてこれまで補給金をまかなつていたものを、今度は直接大衆自身が、独占資本の物価のつり上げられたものを買わなければならぬときは、これは生活にとつて同じなのであります。鉄やあるいはソーダ、肥料、電力料金の値上げ、あるいはマル公の米の値段、主食の値段の値上げ、こういうものによつて、結局大衆生活自体の実質上の問題になれば、これは減税になつていないのであります。こういう点から私たちは一つのポンプだけを小さくしても、他に大きなポンプの穴をつくつたならば、これは決して国民生活の実際における減税でないということを、私ははつきり述べておきたいと思うのであります。
以下時間の関係もありまするから、若干諸法案について申し述べまするが、特に所得税につきましては、御承知のごとくきわめてこれは大衆課税である。千六百九十四万人のうち、二万、円以下の所得のあるものが大体九〇%を占めておる。これ以外に免税点以下になるものが相当あるのでありますが、こういうふうに二万円以下のものが九〇%を占める。こういうところにまで今日大衆的な課税をしておるということ。それから第二には、今日の所得税がやはり生活に食い込んで来ておるということ。これは先ほど御承知のごとく、基礎控除におきましても月二千八十三円、扶養控除が千円、これが免税点、これがいわゆる最低生活の大体の基準になる。ところがこういうようなわずかなものによつて生活ができないことは、これはもう自由党の諸君といえども御承知のはずなのであります。ところが失業者にしましても、たとえば一日働きに出て二百八十円以上とればこれに税金がかかつて来る。こういうふうなきわめて今日の勤労大衆の、特にまた低い層の中の生活にまで食い込んで来ておるところの税金というものは、まつたく惡税と言わざるを得ないのです。特に基礎控除の引上げ、あるいは勤労控除のシヤウプ勧告以上の引上げと言つて、北澤委員は盛んにこの税制改革の功績を誇つておられたようでありますが、しかし第二次吉田内閣におきまして、勤労者の三千七百円ペースを六千三百円ベースにかえまして、物価が上昇したために、従つてこのときに税制改革をやつて、やはり勤労者の税金を物価とスライドさせて引下げるのが当然だ。このことを実はお忘れになつていた。そうして基礎控除の面におきましても高い税金をとる。従つて三千七百円のペースのときと、今日の六千三百円ベースを比較しましても、二人の家族では十三倍の重い税金になつておる。改正されてもそうなつておる。また独身者にしても十二倍の重い税金になつておる。こういうふうにベースを改正されたとき、当然改正すべきものを改正せずに、苛歛誅請求な重い税金をかけておつて、そうして今日ちよつと減らしたからといつてこれを功績にされるのは、わずか二年ばかりの前のことを、昨年なすべきことをなされなかつたということを、お忘れになつておるのではないかと私はこう言いたいのであります。
それから第三に、所得税につきましてやはり不公平な課税、これは税率にはつきりと表われております労働者あるいは農民、中小商工業者、この間にも若干の不公平がありまするが、特に五十万円以上の所得者は五五%で税率を打切つておる。もちろん私たちは今日五十万や百万円程度の所得者を、そう大資本家と言つて目に角を立てるのではありませんけれども、とにかくわずかに五十万円のところでピリオツドを打つて、そうして大所得者もほとんど同じにしてしまつた。こういう点における税制の不公平があるわけです。政府はこの税制改革にあたつて、公平な負担をさせるということを盛んに主張されておりますが、こういうところにおいては、断じて公平な点は現われていないのであります。それからまた青色申告所得の、いわばちよつとした特典を與えるというようなえさによつて、とにかく裸申告をさせる。今日御承知の通り中小商工業者やあるいは農民等もあまりに税の苛酷なために、いろいろな方法でいわゆる若干の脱税と申しますか、あるいは何かやつてはおりまするけれども、これは生きんがため、食わんがため、生活を守るための脱税でありまして、大口高額所得者の脱税とは別個な見地から見なければならぬ。ところが今日こういう低額な所得者に対しまして、青色申告あるいは帳簿の嚴密な記帳、こういうことを申しつけて結局裸申告をさせる。これが結局税金についても、また実質上昨年以上の税金がかかつて来ることは言うまでもない。従つて今日政府が減税と申しましても、実質上中小商工業者やあるいは農民、その他一般の市民諸君の青色申告並びにこれから来るところの問題につきましては、実際の課税における減税ということはあり得ないということを、私たちはここに断言し得るのであります。また今日の徴税方法にいたしましても協議団制というようなものを設ける。あるいは罰則を強化する。これは明らかに今日の政府の徴税方式というものが、反民主的な方式を取つておるのでありまして、こういう点についても、われわれは決して納税者のほんとうの民主主義の原則を、この中に盛られていないということを見るのであります。法人税につきましては、先ほど各委員からも発言がありましたから簡單にとどめますが、とにかく今日の事態においては、若干やはり独占的な企業に対して、中小企業の利益を守らなければならぬ。そういうものはごく低度の累進税率を設けるとか、こういうことが必要でもあり、また先ほどから他の委員から発言がありましたように、農協あるいは水産業、あるいは消費者生活協同等の特別法人が、やはり一率の法人税を課せられるということは、これまた今日の時代に逆行するところの課税方針であるということを、われわれは明らかにしておきたいところであります。
それから相続税につきましては、先ほど申しましたように五十万や百万の資産あるいは所得等は、われわれは大したものでないと思うのでありますが、できればそういう生活を国民すべてがしなければならぬ。アメリカにおきましても、最近ストライキによりまして獲得しました炭鉱労働者の賃金を見ましても、大体月十五万円くらいになるのでありますが、そうすれば一年百五十万円になる。日本の資産家が五十万や百万持つてわあわあ騒いでおるのでありますけれども、そういう点から見ましたならば、われわれ国民生活が低きにあるがために、もつともつとすべての国民生活を高めて行く。従つて相続税におきましても、御承知のごとくシヤウプ博士は日本でできるだけ富の集中を防ぐ、こういうことを言われておる。もちろん一所に富が集中することを防ぐことは言うまでもないのでありまするが、しかし今日の状態におきましては、相続税におきましてもやはり低額なものに対しては相当ゆるみを持たし、高額なものに対しては十分徹底的に税金を取る。もちろんこれは税率だけの問題である。しかしこれにはやはり税務行政から行きましても、大所得者あるいは相続者には、やはり脱税の拔け道はあるのでありまして、われわれは実際上の問題から入つて、相続税における低額所得者の利益を守つて行く。こういう点を主張しておきたいのであります。さらに富裕税は、御承知のごとく所得税の補完税として新設されたのでありますが、これは高額所得着すなわち五百万円以上の者から、財産に対してわずか一万円程度の、あるいは一万円以下の税金しかとらないのでありまして、富裕者にも五五%の所得の累進税率をしたからといつて、これで一つの幻想を與えておるわけであります。政府の、シヤウプ勧告、つまり外国人の知惠を借りたこういう見えすいた高額所得者に対する幻想を與える富裕税というものに対しては、われわれは反対せざるを得ないのであります。
通行税におきましては廃止されたのでありますが、これはもちろん賛成である。通行税なんというものはみな廃止すべきである。急行料金についても同様であります。同時に今日の運輸行政の面におきましては、御承知の通りいろいろな妙な遊山車を出しおります。そうしてそういうところには楽をさして、一般の通勤着はまつたく殺人的な車に乘せておるわけであります。こういう点で私たちは、單に通行税を廃止するというだけでなく、運輸行政全体とにらみ合して、一等車などを廃して、そうして通行税なんかも全部廃してしまう、こういうふうにして私たちはもつと大きな観点から、これに反対するわけであります。
それから酒でありますが、酒は今度若干値上げになります。酒とタバコが御承知のごとく日本における典型的な間接大衆課税になつております。われわれはこういう値上げに反対すると同時に、少くとも現在のように酒を飲ますのでなく、税金を飲ますというような酒税などは、タバコの税金とともに廃止する、そうして原価の二倍程度にこれを引下げることを要求するものであります。それから資産再評価の問題でありますが、これは御承知のごとく資本の再生産を確保するための評価がえであります。ところが先ほども申しましたように、今日の労働者には労働力の再生産を確保する評価がえをなされていない。これは政府の賃金のくぎづけによつて現われております。こういう一方的な問題でありますが、ともかくこの資産再評価によつて、今日日本の企業、従つて日本の経済をまるきり裸にすることである。採算の有利な大資本に外資導入の準備がされるということ、それから減価償却の増大、従つて利益が減少する。あるいは税金が減少する。こういう点、従つて生産品の増嵩を口実に、独占的な資本の物価のつり上げ、あるいは賃金の切下げ、首切り、こういうことは必然になつて来るわけであります。また税金あるいは金融あるいは資本が、大独占資本の方へ移動して行くということによつて、中小企業は金融の面からも、この資産の評価がえによる企業の倒産ということは、もう必然の状態であります。従つてまた審議会におきましても、再評価を通じて日本の企業の再編成、すなわちどこはつぶすか、どこは残そうかというようなことが、一連の独占資本家やその代理人たちによつて決定されるということは同様であります。従つてこういうふうにして、今日外国資本と結合しないところの日本の民族産業が、これによつてますます破壊され、中小企業は倒産する。労働者の賃金の切下げあるいは首切りは増大する。こういう結果を招くこの資産再評価法案に対して、われわれは反対せざるを得ないのです。特に外国の資本で優遇する。あるいはこの資産再評価によつて外資導入の準備をする。この前大蔵大臣は外資導入によつて、大いに日本の経済復興をするということを言われておりましたが、最近あるところから聞きますと、たとえばストレプトマイシンというものが、アメリカにおきましては今日きわめて多量にあり余つておる。こういうものを、最近日本では何億というほど買うそうであります。ところがこのたくさん余つたという裏面には、さらに向うの技術が発展して、新しいストレプトマイシン以上のものができておる。ところがその古いものを日本へどんどん輸入する。それからまた日本のある特定な薬会社、こういうところへ外資が入つて来るそうしてこの薬が入り切つたときに、外国資本がどんどんその古い專売特許の機械を売りつける一向うでは新しいものがどんどんできておる。そうして売りつけた機械がすえつかつたころになると、新しいものをまたどつと入れる。これが今日の外国の独占資本のやり方なんであります。こういうことを喜んで、皆さんは日本の外資導入ということが、いかにも日本の経済を発展させるというようにお考えになつておりますが、実はこれは外国の恐慌、外国の古いいわゆる陳腐化したところのこの技術、こういうものの導入にほかならない。従つてこういう点から言いましても、われわれは外資導入、これに伴う外国品の課税の問題、こういう問題にも反対せざるを得ないのであります。大体主要な法案の内容について反対いたしましたが、以上のごとく税制改正は大衆の負担の方法を若干変更する。しかしながらまたどうして国民大衆からしぼりとるかということの改正にすぎないのであります。直接所得から巻き上げる税金を減らせば、間接税でもつて税金を巻き上げるとか、あるいは中央政府の税金を減らせば、地方の税金を増すとか、あるいは国家財政を收縮して、独占資本によつて物価をつり上げ、直接労働者や農民等からしぼりとり、中小企業を倒壊させる。こういうふうにして一連の経済政策、徴税政策を通じて、すべて大資本すなわち独占的な資本の強化に役立たせるにすぎないのであります。こういう面から、従つて個々の税制を一條々々改革しましても、他の税制全体あるいは政府の経済政策との関連において見なければ、いかに税制がりつぱでありましても、その裏には幾らでも穴があるということをわれわれは認めるものであります。同時に今度の税金の徴收におきましても、軍事的な予算を昨日通しましたが、これの裏づけとして今度の税制改革がなされておる。従つてこれを実施し、この税制によつてこれを徴收して行きますれば、相当やはりフアシヨ的な政策をとらざるを得ない。政府は合理化とは申し公平とは申しておりますけれども、今日この改革の中に、徴税の方式におきましては、御承知のごとく納税者を抑圧するところのいろいろな法令が追加されております。これは討論の際にも明らかにしましたし、また罰則強化等も行われる、こういう意味においてこの税制改革による徴税方式が、まつたくフアシヨ的なものに漸次転換しつつあるということを指摘しておきたいのであります。従つて今日御承知のごとく中小商工業者が税金問題で苦しみ、今や死活の問題となつて全国各地で闘つておりますが、これが税制改革の後においては、この懲税方式による場合には、何ら解決されていないということを私はここに指摘しておくものであります。わが共産党は間接税を廃止し、直接税一本で最低生活を保障するために、昭和十二年当時の千二百円の免税、これに物価指数をかけました大体四十万円というものをもつて免税点とする。こうして酒やタバコ等を原価の二倍程度に引下げる。間接税は廃止する。これによつて大衆の購買力をつくり、国内の需要を満たす。中小商工業の滯貨の処分やあるいは生産増強、従つて企業の安定をはかることができるのであります。このような税制改革によつてのみ、真に国民生活の安定と向上をはかることができるのであります。こういう税制をやつたならばすぐに收入が減るとおつしやる。それをここで皆さんは心配しておられる。ところが御承知の通りシヤウプ博士の勧告にも、所得税だけでも二五%から一〇〇%の脱税がある。他の物品税あるいはその他一切の間接税においても、莫大な脱税があるということを指摘しておる。この点を皆様がお読みになり、また今日各地におけるあの税務官僚たちの收賄や詐欺、こういうものをごらんになれば、今日いかに莫大な脱税があるかということをわれわれはよく知つておる。おそらく皆さん自身が自分でどの程度のことをおやりになつておるかということは、おわかりになると思います。私はこういう脱税を完全に捕捉するならば、先ほども申しましたところの直接税一本方式をもつても、十分税收を確保することができると思うのであります。現在の吉田内閣の財政政策すなわち軍事的、植民地的予算に適応して收入を得るための今回の税制改正の諸法案に対しましては、勤労する全人民とともに、また日本の完全なる独立と平和と自由とを守らんとする真の愛国者とともに、断固反対するものであります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/8
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009・川野芳滿
○川野委員長 内藤友明君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/9
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010・内藤友明
○内藤(友)委員 私はきわめて簡單に申し上げたいと思います。友党の農民協同党も一緒に申してくれということでありますから、私どもの所属しておりまする党と農民協同党を代表いたしまして申し上げたいと思います。
ただいま提案になつておりまする九法案のうちで、有価証券移転税法廃止に関する法律案のほかの法律案には反対いたします。先ほど来田中君、宮腰君からそれぞれ述べられましたから、私は重ねてこれを申し上げようとは思いませんが、政府は今度の税法におきまして国民の負担の公平ということと負担の軽減、この二つをやるのを立法的手段としてあげられたのであります。しかしその内容を検討してみますると、はたしてそういうことになつておるかどうかということは、長い間この委員会におきまして討議せられました跡を顧みますると、しからずという結論が出るのであります。與党の皆様の御質疑を静かに聞きまして、またわれわれも足らぬところはお尋ねしたのでありまするが、どうしてもこの二つの眼目は、これが一年たちますると、実際にこの法律からいろいろなことが現実に事実として現われて来ると思うのであります。でありますからこの点は私は述べません。とにかく負担の公平にもならぬし、軽減にもならない法律だという結論になるのであります。そこで私が申し上げたいのは、去る七日に私は大蔵大臣に対しまして、これらの立法の立案の態度並びに心持をただしたのであります。その答えを先ほど速記課に参りまして書き取つて参りましたが、大蔵大臣はこう申されました。「われわれは資本主義自由経済をモツトーとする財政経済をやつておるのであります。当然今度の税制もそういうふうにやつておると考えております。」こういうお答えであつたのであります。ここで私どもが考えなければなりませんのは、今度の税法全般を通じて考えてみますると、大臣のお言葉の通り各條章の言葉の中にその思想がにじみ出ておることは、これはもちろんはつきりしております。たとえて申しますると、五十万円以上の所得者につきましてはその税率を百分の五十五一本にしましたり、また大企業の法人を特に優遇したり、あるいは富裕税というものをつくられたのでありますが、その税率というものは驚くほど過小にしたり、さらに農業者、漁業者、小市民あるいは中小企業者が、資本主義自由経済に対してその生産と生活とを防ぐ唯一の協同組合、この協同組合に対する法人税というものを、従来の特別扱いを廃止して営利法人と同一にしたということ。これは数え上げて行きますると限りないのでありまするが、とにかくこれらはいずれも自由経済思想からの資本主義経済政策に立脚しておるものと考えるのであります。言うまでもなく自由経済の門を入りますと、そこに展開する社会は資本主義の経済社会であります。この社会は驚くべき魅力を持つておるのであります。とうとうとあらゆるものを利潤の前に屈服させずにおかないという強い力を持つておるのであります。ために文学も教育もさては宗教もその本来の使命を失わしめ、ひたすら利潤追求の手段となり終らしめるのであります。ために文化はすたれ、道徳は乱れなどなど。しかしこれはほんとうのそういう社会の姿でありますので、この資本主義自由経済の前に、農業でありますとか中小企業というものの運命はどうなるのか。問題はここにその深刻なものを見出すのであります。御承知のごとく資本主義自由経済社会におきましては、資本というものを投下すればするほど、それに応じましてその企業は発展し繁栄するものであります。しかし農業や中小企業にはその原則は根本的に当てはまりません。農業には報酬漸減の法則というものが嚴粛に適用されております。これは何といたしましてもいたし方ないものであります。従つて農業本来の性質からいたしますると、資本主義社会から哀れな姿で消え去るべき宿命を持つておるのであります。ことにわが国の農業は零細な家族経営でありまして、自由経済社会から一たまりもなく葬り去られるのであります。思えば長い間私どもは農政運動をやつて来ました。この農政運動は、資本主義に圧迫され搾取され、資本主義発展の犠牲となりました農村の解放であつたのであります。それを今現実に大蔵大臣から、資本主義自由経済の基礎観念から今度の税制を改正したのでありますというお言葉を聞きまして、感慨無量なものがあるのであります。もはや私どもは多くを申しません。しよせん現在の政府が農業政策を立てましても、それは一日暖めて十日冷やすことになり、結局農業は破局へ急ぐだけのことであります。かようにただいま検討されておりまするこの税制、この税制のもとにおきましては農業も中小企業も断じて救われません。こういう簡單な重大な理由でこれに反対するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/10
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011・川野芳滿
○川野委員長 討論は終局いたしました。これより採決に入ります。酒税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、所得税法の一部を改正する法律案、富裕税法案、通行税法の一部を改正する法律案、資産再評価法案、相続税法案、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案の八案を一括議題として採決に入ります。右八案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/11
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012・川野芳滿
○川野委員長 起立多数。よつて右八案はいずれも原案の通り可決いたしました。
次に有価証券移転税法を廃止する法律案を議題として採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/12
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013・川野芳滿
○川野委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決せられました。
なお報告書の件につきましては委員長に御一任願いたいと存じます。
以上をもちまして税法改正九法案に対する審査を全部終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704629X03119500311/13
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