1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十二日(土曜日)
午前十時五十八分開議
出席委員
委員長代理 理事 有田 二郎君
理事 神田 博君 理事 小金 義照君
理事 澁谷雄太郎君 理事 永井 要造君
理事 村上 勇君 理事 今澄 勇君
理事 有田 喜一君
阿左美廣治君 岩川 與助君
江田斗米吉君 門脇勝太郎君
小西 英雄君 首藤 新八君
田中 彰治君 多武良哲三君
福田 篤泰君 前田 正男君
青野 武一君 加藤 鐐造君
西村 榮一君 伊藤 憲一君
風早八十二君 河野 金昇君
出席政府委員
通商産業事務官
(資源庁石炭管
理局長) 中島 征帆君
委員外の出席者
專 門 員 谷崎 明君
專 門 員 大石 主計君
專 門 員 越田 清七君
四月二十二日
委員松本七郎君及び松井政吉君辞任につき、そ
の補欠として青野武一君及び西村榮一君は議長
の指名で委員に選任された。
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四月二十一日
木材防腐加工処理の法制化に関する請願(有田
喜一君外二名紹介)(第二七八八号)
かんがい排水用電力料金に関する請願(今井耕
君紹介)(第二七八九号)
只見川電源開発計画中の尾瀬ケ原保存に関する
請願(亘四郎君紹介)(第二七九〇号)
四国地方の電気事業再編成に関する請願(小西
英雄君紹介)(第二七九一号)
信越地方の電気事業再編成に関する請願(亘四
郎君紹介)(第二七九二号)
電気料金の地域差撤廃並びに農業電化促進に関
する請願(橋本龍伍君紹介)(第二七九三号)
中小企業の危機打開に関する請願(前田種男君
紹介)(第二八三九号)
同(大泉寛三君紹介)(第二八四〇号)
飛彈川水系三発電所の関西地区帰属反対に関す
る請願(江崎真澄君紹介)(第二八四六号)
電気事業分断反対に関する刑願(堀川恭平君紹
介)(第二八四七号)
元苫小牧市営電気事業復元に関する請願(篠田
弘作君紹介)(第二八四八号)
信越地方の電気事業再編成に関する請願(亘四
郎君紹介)(第二八四九号)
信越地方の電気事業再編成並びに新電気料金制
に関する請願(亘四郎君紹介)(第二八五〇
号)
農業用電力に関する請願(江崎一治君紹介)(
第二八五一号)
尼崎市に小型自動車競走場設置の請願(吉田吉
太郎君紹介)(第二八五六号)
私鉄の電力料金値上げ反対に関する請願(西村
榮一君紹介)(第二八五九号)
電気事業分断反対に関する請願(大村清一君紹
介)(第二八七三号)
安中町所在東邦亜鉛精錬工場鉱害対策に関する
請願(小峯柳多君外二名紹介)(第二八七四
号)
離島における電気事情改善等に関する請願(平
井義一君紹介)(第二八八一号)
九州地方の電力問題に関する請願(平井義一君
紹介)(第二九〇〇号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
臨時石炭鉱業管理法の廃止に関する法律案(星
島二郎君外九名提出、衆法第一九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/0
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001・有田二郎
○有田(二)委員長代理 これより通商産業委員会を開会いたします。
本日は私が委員長の職務を行います。
前会に引続きまして、臨時石炭鉱業管理法の廃止に関する法律案を議題として審議を進めます。質疑を継続いたします。今澄勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/1
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002・今澄勇
○今澄委員 この法案に対する質疑を昨日に引続いて行いますが、配炭公団廃止後の貯炭の推移、あるいは中小炭鉱についての政府の施策その点については、一応昨日のお答えで不満足ながら打切ります。
きようは、しからば昨年九月十五日の配炭公団廃止のときに、貯炭が非常にありましたが、それらの貯炭のその後の処分と、これが及ぼした影響並びにその後の生産炭の銘柄、どのような銘柄がどういう程度に生産されておるか、今資料をいただきましたが、これらの問題について、政府委員の方にひとつ詳しく御答弁をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/2
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003・中島征帆
○中島政府委員 昨年の九月末の五百万トンの貯炭の処分状況は、今日午前中に多分差上げることができると思いますが、昨日申しました通りに、三月末までに百八十六万二千トンの残高となつております。石灰のおもなる販売先は、進駐軍の六十三万六千トン、国鉄の四十六万四千トン、日発が十三万四千トン、官公衛用として八万三千トン、船舶関係が一万九千トン、輸出が千八百トン、日鉄、鋼管、ガス、こういつた方面に十五万四千トン、販売業者におきまして百二十三万三千トン、自然発火その他品質低下等のために、緊急処分の方法で処分いたしましたものが十四万四千トン、さらに生産業者に対しまして売りもどしいたしましたのが十五万トン、これが処分済みのもののおもなる処分先であります。現在残つております百八十万トンのうちの品種別の内訳を申し上げますと、原料炭が一万二千トン、発生炉炭が四千トン、百トン以下は省略いたしますが、一般炭といたしまして、塊炭、切込み炭、粉炭とございますが、総計で上級炭が七万九千トン、中級炭が五十万八千トン、下級炭が六十四万七千トン、合計一般炭が百二十三万五千トンであります。そのほかこまかくなりますが、微粉炭が一万五千トン、無煙炭が二十一万七千トン、煽石が七万三千トン、雑炭といたしまして、これは主として下級炭の雑炭でございますが、二十六万四千トン、これが百八十二万六千トンのおもなる内訳でございます。おもなると申し上げましたが、もう一つ申し上げますと、その差額が三万六千トンという数字が出て来るのでありますが、これが最近予定しております炭であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/3
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004・今澄勇
○今澄委員 概略わかりました。それから本年度の石炭需給の見通しについて昨日伺いましたが、本年度政府のいわゆる四千万トンの大体の見通しについて、特に五千五百カロリー以上の高カロリー炭と、それ以下のものと二つにわけて、低品位炭の大体の生産目標と、これの用途、並びにそれらの中小炭鉱への政府の施策、それから高品位炭が不足するかどうか、特に開らん炭あるいは強粘結炭等の輸入問題も出ておりますが、それらの見通しについて、政府委員の方から御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/4
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005・中島征帆
○中島政府委員 これは本日配付いたしました資料の中に概略出ておりますが、昭和二十五年度石炭需要見込み、これが本年度の四千万トンの需要見通しの内訳でございます。これによりますと、その中の原料炭が九百五十万トン、発生炉炭が三百二十万トン、一般炭の中で上級炭、これは六千五百カロリー以上の炭でございますが、それが千三百六十万トン、残りが中級以下の炭でございまして、向け先も、主としてここにおもなる向け先が書いてございます。原料炭、発生炉炭は産業用、特に鉄鋼でありますとか、ガス、コークス、そういつた方面に主として使われております。一般炭は各種の産業にならして使われますが、一般炭の中で上級炭は特に輸送関係、鉄道であるとか、あるいは電力方面に多量に使われております。中級以下の炭は、普通のボイラー炭として一般の産業、特に中小方面の産業には多く使われておる、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/5
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006・今澄勇
○今澄委員 そこで私はこの表をながめてみて、需要のいろいろな用途が書いてありますが、この需要に対する山元の生産見込みであります。この上級炭は、大体これらの需要に十分即応するだけの出炭量があり得るかどうか、しかも上級炭の値段は、昨日も申し上げましたように、これは漸次上昇歩調をたどつておる。昨日神田君のお話では五%という話だつたが、われわれが実際買い入れておる市場に行つてみると、五%程度ではない。これは相当な値上りになつて、しかも今後なお上りそうなけはいでありますが、これらの価格政策並びに上級炭の生産状態について、政府委員の方からちよつと御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/6
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007・中島征帆
○中島政府委員 上級炭の中で特に問題になりますのは、原料炭でありますが、その原料炭の中でも製鉄用の強粘結炭につきましては、これは今日の生産状況ではどうしても不足するのでありまして、今年の見通しといたしましては、少くとも七十万トンくらいの強粘炭を輪入しなければ、予定の鉄鋼生産には不足するだろうと考えております。それ以外の石炭に関しましては、一応数量的には国内炭でまかなえる予定でございますが、炭価の点につきましては、昨日も申し上げましたが、公団廃止後の値上りという点は別といたしましても、少くとも現状の炭価が相当重要産業に対しまして、大きい負担となつておるということは否定できないのでありまして、これを二割ないし三割という大福な値下げをしなければ、日本の国内産業の今後の自立態勢が確立できないということが、一般に言われておりまして、われわれもその点につきましては、そういうことになるのではないかと思つております。しからばいかにしてとの炭価を引下げるかという点でありますが、最も容易な方法は、これは割高な国内炭のかわりに、値が安い輪入炭を使うということが、簡單な方法でありますが、そういうことによつて国内の重要産業であります石炭鉱業の基礎を崩壊させるということは、将来の日本の経済のために、もちろん望ましいことではございませんので、多少期間はかかりますけれども、できるだけの方法をもちまして、国内の石炭原価を最大限度まで、これを引下げるという方法を講じなければならぬと思つております。その方法といたしましては、結局において、従来かなり荒されておりました坑内を若返りさせまして、さらにこれを機械化による合理化の方法を推進いたしまして、作業能率を上げることによつて、炭価を引下げるという以外にないと考えられますが、それには相当の設備資金がいりますので、この設備資金の獲得のために、今後特別のまた手段を講ずる必要があると思います。今その具体的な方法、並びに金額等につきまして、研究を続けておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/7
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008・今澄勇
○今澄委員 政府委員の方のまことに率直な御答弁でよくわかりました。われわれは今民間各産業界において言われているような、石炭のコスト高によつて非常にわが国の経済が不安定である。しかも政府の行つているデフレ政策によつて、製品の購売力は非常に落ちている。いわゆる原料高の製品安というような時代に、ただいまの日本の炭価を引下げなければならぬ。そのためには合理化資金を投じ、あるいは労働者の労働意欲を上げ、数々の増産施策が講ぜられなければならないというのに、この法案の提出者の代表者であるところの神田君は、これはもはや増産の時代は過ぎたから、この法律は廃止することが妥当であると言われております。われわれは今の政府委員の方の御説明を聞くと、そういう立場に立つて考えるならば、本臨時石炭鉱業管理法を廃止するということは、そういう施策を石炭会社の自由放任にまかしておくということになり、弱肉強食の競争をやらせて、しかも中小炭鉱のみが食われて行くということを是認することになる。この点についてはいかにお考えでありましようか、簡單に御説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/8
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009・神田博
○神田委員 私は提案理由にも申し述べましたように、一部の銘柄については、今お述べになられたような跛行状態と申しましようか、生産と需要とのバランスがとれていない。これは私も認めております。しかしそれは一部の問題でありまして、石炭全体につきましては、需要と供給との関係において、非常なアンバランスになつている。それは逆なアンバランスになつている。すなわち需要が生産よりうんと下まわつている。こういうことを申し上げているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/9
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010・今澄勇
○今澄委員 私の言うのは、たとえば、強粘結炭の七十万トンの輸入が示しているように、少くともこのような特殊銘柄を輪入しなければならないほど不足しているということももつともであるが、さつき言われた六千五百力ロリー以上を上級炭とすれば、少くとも六千カロリーから六千五百カロリーまでの上級炭については、原料炭は総体に需要の方が供給よりも多くて、その値段が上向きであるということを申したのであります。決して石炭全体から見て、これらの六千カロリー以上の原料炭が足らないということは、一部の銘柄だけのもので、全体的には十分に石炭があり余つているのだというようなことには私はならないと思うが、その点はいかがですか。
それからなおもう一つ、この法律案をこういう状態のもとで、もし衆議院を通過させるということになると、臨時石炭鉱業管理法案がなくなつたあとにおいては、そういう状態のもとにおいて政府はどのような方法をもつて、石炭行政をやつて行くつもりであるか。
第一点は、今の、一部のものだけが足らないので、総体的には石炭は十分余つているのだというお言葉は、そういつた観点から見てまことに牽強附会であると思うが、どうかということを神田君に答弁を求めるとともに、政府委員の方には、この臨時石炭鉱業管法案を廃止した後において、政府委員一体行政をどういうふうにして、これらのものとマッチさせるものであるかということを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/10
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011・神田博
○神田委員 言葉じりをとらえるわけではありませんが、牽強附会な答弁はいたしておりません。たんたんとして真実を述べている次第でございます。そこでこれは意見の相違になるかもしれませんが、原料炭の問題につきましては、これは日本の現在の石炭の賦存状態から考えましても足らない。かつても輪入にまつておつたということが事実でありまして、この国管法の存置によりまして、原料炭が急速に増産されるというようなことは、石炭企業に非常な造詣の深い今澄さんも、お考えになつておらないだろうと私も確信しております。そこで先ほど来申し上げておりますように、この法律の廃止によりまして、御心配されるような懸念はないのではないか。かように信じまして提案している。そのように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/11
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012・中島征帆
○中島政府委員 国管法が廃止されました後の、石炭行政の問題でございますが、今日まで国管法によりまして、いろいろな施策を行つておりますけれども、国管法だけでもつて今日の増産の目的が達成されたということはないのでありまして、国管法と併行いたしまして、資金金融でありましても、資材の面に関しましても、各種の行政的な手段を裏づけて、あわせてこの効果を発揮したわけであります。従つて法律的な根拠がなくなりましても、そういう行政的な方面に関しましては、まだ手段が残つておりますし、またわれわれもそういう努力を今後も続けるつもりでありますが、一方におきまして、従来国管法の一つの効果は、各種の資料を炭鉱から供給いたしまして、十分に石炭鉱業の内容を把握するというのが、一つのねらいでありましたが、この点に関しましては、重要産業としての石炭鉱業を、今後政府として十分に認識するためには、やはり何らか別箇の、そういう手段をとり得る制度が必要である。こういうふうに事務当局は考えております。従つて国管法廃止以後におきまして、石炭鉱業に関しまして新しい、また別箇の見地に立つた一つの立法をすることが必要ではないかということで、研究を続けておりますが、これはいまだ具体化するまでに至つておりませんけれども、今後も私どもはその方向に向つて、さらに研究を進めて行きたい。こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/12
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013・今澄勇
○今澄委員 私はただいまの提案者の説明は、まことに当を得ていない説明であると思います。少くとも現下のデフレ政策、非常な縮小再生産の過程において、わが国の国民生活の水準から言うて、当然必要となるべき石炭が、こんなに需要がなくなつたという、一つの大きな政策の失敗に目をおおうた言葉であると思う。どうも政府の石炭に対する政策は無策だ、石炭が産業の米である、これが消長が他産業に関係するところは、きわめて重要な点であるのにかんがみて、どうしても石炭は国家の強力なる支持、強力なる施策、あるいはわれわれをもつて言わしめますならば、統制なくしては石炭産業というものは、現下のわが国の実情に沿わない。われわれが一歩譲つて、それらの国家の強力なる統制を政府が廃止し、あるいは自由党の諸君が議員提出案によって、これらの国家の保護をやめるということであるならば、少くとも電気事業法あるいはその他の産業の法律と同じように、石炭事業法あるいは石炭事業の安定法というようなものでもつくつて、これらの石炭に関する何らかの政府の強烈な支援と支持を與え、そうして石炭産業安定のために努力するところがなければならないが、この石炭国管法廃止に伴つて、それらの法律はもちろん議員提出として用意されているようでもありませんが、もし用意されているならば、どういう構想であるか承りたい。もし用意されておらないとするならば、政府はこれらの問題について全然そういつたものをつくる意思はないのかどうか。この点を御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/13
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014・神田博
○神田委員 ただいま今澄委員のお述べになられました石炭鉱業の安定と申しましようか、石炭のある数量の確保につきまして、政府の強力な管理、統制なくしてはできないというようなお考えについては、私どもは全然同感ではないのであります。やはり石炭も一つの民営の産業でございまして、業者の自主性によつて、民主的な経営によつで増躍することが好ましい。統制や政府の強力な支持によつてやつて行くということは、何らかの意図があれば格別でありますが、特に今日の段階におきましては、その必要を認めない。ことにこの法律の要求しております複雑な管理組織、あるいはまた煩瑣な手続は、石炭の増産、石炭の経営等につきまして、企業の自主性を非常に押えている。こういうような状態のもとでは、決して企業の合理化あるいは石炭鉱業の経営というものは十分やつて行けない。そこが意見の違つて来るところじやないか、かように考えるのであります。なおただいまお述べになられましたような石炭鉱業、ことに石炭が基本的な資源であるというような建前から、また掘つてしまえばなくなつてしまうのだ、こういうような観点から、この石炭の問題を政府として、あるいは賦存状態を十分調査する、あるいはまたこれらの利用等につきましても、十分な研究を行うというような意味におきまして、さらに高い観点から石炭鉱業に対するところの政府の考え方をしたらどうかというようなことにつきましては、われわれ提案者といたしましても、さような考えを持つておりまして、十分検討を加えているということを申し上げまして、御参考にしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/14
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015・中島征帆
○中島政府委員 国管法にかわります新立法に関しましては、先ほどちよつと触れましたが、われわれも一応の構想は持っておりますけれども、これに関していろいろな方面に、各種の意見がございますので、成案を得るにつきましては、なお今後も相当な努力を要すると思うのであります。しかしながら、われわれといたしましては、できるだけそういう方向でもつて、今後も努力を続けたいと考えておりますが、それができなかつた場合ないしは過渡期におきましては、現在あります各種の法規をできるだけ活用するという方法が残されておりまして、現に各種の調査、統計、あるいは鉱業法による施業案といつたような方法、ないしはまた現在残つております電力の需給調整の規則によつて、電力供給の統制をいたしまして、そこで生産の方面の適切な施策を行う。こういう方法がまだ法規的にも残されておりますので、こういう制度をできるだけ活用いたしまして、さらにそれ以外の行政的な手段をもつて、今後国管法の廃止以後におきまして、ギャップがないように努力を続けたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/15
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016・今澄勇
○今澄委員 私は、少くともこれらの石炭の質疑については良心的に、現下の実情に目をそむけない御答弁を承りたいと思うのであります。石炭の自由販売、配炭公団の廃止ということは、今日自由経済を渇望しておる一部の業者においてすら、これはまつたくの行過ぎであつた、少くとも石炭に関する限り大わくは残すべきであつた、配炭公団は残すべきであつたという声が、今日もう輿論として出ている。われわれはこの際、理論として神田君の言われた自由競争、企業一任の意見もこれは承ることができるのであるが、現実に石炭界にそういう声が起つているということは、提案者もよく知つておられることと存じます。政府の説明によると、この臨時石炭鉱業管理法の廃止に関する法律案にかわる石炭鉱業に関する法律案については、まだはつきりしない。もしできなければこれこれこのような他の法律によつて行うというようなことでは、一国の石炭行政としてこれは心寒からしめるものがございます。よし一歩を譲つたとして、産業の合理化、現在の炭価、将来の外国炭の輸入の問題、また石炭資源の賦存の偏在状況、あるいは、わが国工業の規標から見て、石炭産業は今後ますます多事多難である。そこでどうしてもわが国百年の計のためには、電力とともにこれらの石炭政策も、将来大きな目標を求めてやらなければならぬ。私は、少くとも将来は、石炭に対して国管の強力な保護助成をやらなければいけないという声が、国民の中から巻き起ることは明白であると思います。九州などでは、すでに上部の石炭は大体掘り盡して、各炭鉱とも現在相当地底に深く食い込んでおります。これに要する企業費は、ますます幾何級数的に上昇しなければならぬ。ために投下資本も今後ますます巨額なものになろうとしているのであります。一個人企業、あるいは法人企業でこのように巨額なものをまかなうことは非常に困難であるが、それらの点についてはどのように考えられておるか。
なお私は、中小炭鉱へ融資するという点、自由党の政調会が約束した数々の中小炭鉱救済の金すらも、中小炭鉱全体へ全然行き渡つておらないということから見てわれわれは、個人企業並びに法人企業だけで、こんな多額のものが炭鉱に投入されようとは思わない。この点について提案者の神田君はどう思われておるか。
さらに第二点は、見返り資金なり、あるいはその他の資金をこれらの炭鉱に非常に注いでおります。政府は大炭鉱へこれらの国家資金を注いでいるが、それはやはり炭鉱が国家管理されているという公共性と、特に責任を持つという意味において、これに多量に供給したのであるが、自由競争にまかしてそれらの金の返済が、将来十分やれるものであるかどうか。さらに今炭鉱へ出ている見返り資金、その他大体国家が責任を負うべき性質の炭鉱への貸付金の全貌、これが将来の見通しについて、政府委員の御答弁を願いたい。まず神田君から御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/16
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017・神田博
○神田委員 ただいま今澄委員のお問いになりました、あるいはまたお述べになられました石炭鉱業に関する幾多の山積している問題、また非常に御心配されている点につきましては、提案者の私といたしましても共鳴する点が多々あります。だがしかし、石炭鉱業に対する政策の観点が基本的に違つておるのではないか、かように考えるのであります。どういうことでそういうことを申し上げるかと言いますと、この国管法が非常によい立法であつて、今日においてもこの法律がうまく適用されており、今日も石炭企業が成立つておるというような前提のもとで、お述べになつておられるのではないかというように考えられるのであります。われわれは今日、この国管法を廃止する点につきましては、非常な共鳴を得ておるのであります。今澄君のお述べになりますことを聞いておりますと、非常な反対を押し切つてやつておるようでありますが、この点はわれわれと非常に観点が違つておる。今日石炭の問題を解決して行くにあたりまして、この法律を基礎として解決し得る場合を考えますと、先ほど来申し上げましたように、この法律はもともと石炭が戰後の疲弊によりまして縮小生産になつた。そこで急速に増産をしたい。政府と経営者と労働者が三位一体になつて、石炭の急速な増産をしたいということがねらいであつたのであります。今日御承知のように、一部の銘柄におきましては足らない。しかしこれは日本の石炭と賦存状態や炭質から来るところの基本的な問題でありまして、この法律によつて解決し得るところではないのであります。今日この法律は複雑な管理方式を要求し、またそのために煩瑣な手続を要求している。そこで企業者がいろいろ合理化をはかるとか、あるいはまだ切羽を拡大して行くというような幾多の面につきましても、企業の自主性を阻害しているというのが現状なのでありまして、今日全体として石炭は飽和状態になつている。むしろ余つているということは、世人一般の認めるところであります。前には足らなかつた。そこで急速に何らか大きな手を打たなければならない。しかしその際においても、こういうやり方がよいか惡いかということについて、非常に議論があつたのであります。われわれといたしましては、この法律に基かなくても十分増産し得る道があるというような考えをもつて、当時十分意見を述べたのでありまするが、不幸にしてわれわれの考え通りには行かなかつたのであります。今日の段階におきまして、昭和二十二年当時に考えた構想のもとに、あの厖大な石炭局を擁して石炭行政を続けて行くということは、すでに無意味になつたのではないか、かように考えて提案した次第であります。さらに先ほど来問題になつております石炭の企業に占めておる地位、またわが国経済の再建なり、将来の問題といたしましても、石炭をどういうように考えて行くか、どういうように指導して行くかということは、これは新たな別の観点に立つて構想し、そして十分なる見識を持つて考慮されなければならないことでございまして、今日この国管法のもとで、これを是認しながら、これにかわるような法規をつくつて行くというような考え方でありましたならば、それはやはり煩瑣な手続と企業の自主性をそこねるようなことに、相なりはしないかということをおそれるのでありまして、石炭問題の基本的な解決ということは、別個の新たなる観点から考慮すべきものである、かようにわれわれは考えまして、本法案を提案したのであります。さよう御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/17
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018・中島征帆
○中島政府委員 復金融資と見返り資金関係の、現在におきます残高は、前者が全炭鉱で三百五十億ほどございます。見返り資金は本年三月までに出しました金額は、合計四十一億でありまして、これを合せますと三百九十億ないし四百億というものが、政府関係の債権として、今後回收を要するものであります。このうちで見返り費金の回收は、来年度から逐次出て参りますが、復金関係の償還額は大炭鉱だけで、本年度約三十億に上つておりまして、全体を合計いたしますと、おそらく四十億以上になろうかと思います。従つてこれだけの金を返済するために、やはり設備資金にいたしましても、運転資金にいたしましても、相当な金繰り上の問題が生じて参りまして、それだけに石炭鉱業の金融状況が非常に苦しくなる。この点に関しましても、炭価引下げのために.特に特別の金融措置をしなければならぬ、こういう理由が存するかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/18
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019・今澄勇
○今澄委員 今の政府委員の答弁によると、まず四百億の国家資本が入れられてある。しかもこれを計画通り返済するとすれば、非常な重圧をかける。しかも現在の石炭は自由販売になつて、石炭の金繰りについては自己資本によつて、これらの運転をまかなわなければならぬというような状態に業者が置かれておるが、非常に大きな金融的なバックをしなければ、おそらくそれは困難であろうという御答弁でございました。この答弁から考えてみても、神田君が提田者として言われた、現在の石炭は企業の自主性を阻害しておるから、これを放任して自由にやらせることがいい。われわれはイギリスにおける石炭の国家管理の実情からながめましても、私どもは少くともこのような金融の問題一つを見ても、今のように放任して、いわゆる低品位炭鉱が崩壊するということになれば、国家は巨大な赤字を背負つて、これらの産業に投資したものは、国民の負担になる。しかも石炭の将来にわたる長い間のわが国の産業のあり方からながめると、石炭は将釆どうして掘らなければならぬか、一時のデフレ政策で炭鉱がつぶれるならば、日本の全体にとつて大きな打撃となる。統制の惡いところだけ、非常に追究する、あるいは臨時石炭鉱業管理法を、一年半わたつて行うべき責任者であつたところの吉田内閣は、何らこれらの運用について熱意を示さない、運用の欠点のみをあげつらつて、しかも業者が利潤を追求してやまないところの行き方のみでは、石炭の問題は解決されない。われわれはたとい業者がどのような意見を述べようとも、国家の大きな産業の見地から、石炭はかくあるべきものであるという、一つの大きな政策を定めるならば、全国の業者が反対するとも、断じて国家の政治というものは行われなければならない。神田君はこれは業者の方で了解を得たと言われるけれども、われわれは最近国会に出て来る法律がどうも解せないのは、一つ一つの法律が国会の審議は、二日か三日で片づけてしまうけれども、それが各種の業者と談合し、あるいは関係方面と談合し、あるいはいろいろな民間の利害関係方面の談合は長きにわたるが、これが一たび法案となつて国会で審議されるときには.まことにわずかな時日をもつて通過しておるという、いろいろな例がある。私どもは石炭を国管政策については、業者の希望を聞くこともとよりであるが、業者の意見のみに追従するわけに行かない。根本的な石炭行政については、今の金融政策の面についても、そういつたものを露呈しておると思うが、この点に対して神田提出者の意見はどうか。さらに私はこの法律廃止後の石炭金融について、神田君は自信を特つて中小炭鉱を初め、現下の炭鉱側が要求するところの合理化資金、運転資金その他のものを十分まかない得るという自信があるかどうか、あわせてひとつ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/19
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020・神田博
○神田委員 今澄委員にお答えいたします。この法案の提案になりました経緯につきまして、何かわれわれが外部との十分な相談でもつてやつたというふうにお考えのようでありますが、もちろん重要な問題でありますので、外部の意見を全然聞かずにやるというようなことは考えられないことであります。われわれがこの法案を廃止しようということは、この石炭国管法がおい立ちのそもそもの初めから志を持つておるのでありまして、いわば所見を異にしておるのであります。この法案を一年半にわたりまして施行した結果にかんがみましても、これは当然廃止すべきものである。いろいろ片山内閣の際に御苦心されておつくりになつたのでありますが、この片山内閣はつくり放しでありまして、一つも施行されなかつた。芦田内閣に至りましても、ようやく半年そこそこしかこれを施行しなかつた。いわば法案はおつくりになつたが、この両内閣はほとんどこれに基いたところの仕事というものは、見るべきものはなかつたのでありまして、むしろ吉田内閣が一年有半にわたつて、何と言うか、心にもない子を育てておつたというような皮肉な現象なのでありまして、吉田内閣の成立の際におきましても、国管は廃止すべきものである、自由党は天下の公約に従つて当然これを廃止すべきものであるということを、言論界においても叫ばれた。また当時から反対せられておるあらゆる各層各階からも、これは一貫した考え方で述べられて来た問題でありまして、この点につきましては今澄委員も十分私は御了承せられておることと考えます。突如として何か業者と相談をして出したかというようなことをお述べになられたことは、私はむしろ不思議に思つておるくらいなんで、この法律が増産の目標のためにできたんだ。ところが今日は石炭が余つておる。そこで増産のためにできた国管法が今日その使命を果してこれを廃止して行く。これはたんたんたる政治のあり方じやないかと思う。必要があるときには大いに立法すべし、その必要がなくなつたならばこれは廃止すべし、これが民主主義のあり方だと私は考える。
さらにもう一つ、この国管法が廃止になつたならば、中小炭鉱初め石炭鉱業におけるところの金詰りの問題については自信があるかということでございましたが、資金の融通はこの法律のあるなしにかかわらず、これは十分できるだけ考えて行かねばならないことでありますが、金詰りの問題は石炭鉱業だけではないことは、御承知の通りであります。今日金詰りはあらゆる鉱業、あらゆる方面において同じ苦しみをしておるのでありまして、これらの問題をどういうふうにやつて行くかということは、一連の問題としてさらに十分考えなければならない。政府におきましても今いろいろ手を打つておる。またわれわれ提案者同士といたしましても、いろいろ考慮をし、また政府に要望して十分反映さしておる。しかしながらその手がまだ十分盡されていない、打つておる手も効果の現われ方が少いというととは、私どもも認めておるのであります。この金詰りの問題は、單に石炭鉱業だけの金詰りを解決して、日本の今日の経済の段階が十分立つて行くという問題ではないのでありまして、日本の経済の一部である石炭鉱業、全体の一部として、また全体を全体としてそこに金融政策を確立して行く、また生産計画を確立して行くということが必要なことでありまして、特に石炭鉱業だけとつてもつてただちに金詰りを解決する、さような自信があるかどうかということに関しましては、これはないとは申し上げませんが、しからばいかなる手を打つかということであります。これはそのときどきに応じまして大いに努力を重ねまして、それぞれ適切有効なことをやつて行こう、かように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/20
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021・今澄勇
○今澄委員 ただいまるる提案者より説明がありました。私どもは現在の金詰まり、このデフレ政策というものを、まず批判しておるのであります。われわれは、石炭が石炭増産法によつて増産せられ、その増産せられた石炭が十分活用されて、わが国の経済が脈脈と生きるところの政策を政府は行わなければならぬと思う。話の顛末をひつくり返してしまつて、すべて有効需要を押え、デフレを浸透せしめてしまつて石炭が余つて、余つたからその増産法がいらないというような、まことに奈落の底へ追い込むようなものの考え方を、正当なりと考えておられる提案者のものの考え方を、私はまことにどうも不可解に存ずる次第であります。
さて今の金の問題でございますが、これは配炭公団というものが、今日の石炭の販売面に大きな力をいたしておつたということは、片山、芦田両内閣において、石炭行政がなつておらぬと言われたけれども、片山、芦田両内閣において目標を定めた。それらの石炭の生産目標は、着々その実現を見て、しかもこれは各産業へまことにスムースに配分されて、日本の産業経済が一つの完全な軌道に乗りつつあつたということは御承知の通りである。ところが自由党内閣になつてから、これらの石炭は目標すらも失つてしまつた。一体目標は何千トンであるか、何万トンであるかわからない。しかも聞いてみると大体四千五百万トンぐらいは、将来の目安としてはいるだろうというような漠然たることである。しかもこれに対しては、政府の御計画がない。そもそも電気とこの石炭については、わが国産業の基本的な動力源として、どうしてもほかの産業とは違つた観点からこれらの産業を育成し、しかも金詰まりについても特別な処置を講ずるということでなければ、日本の産業は復旧しない。それゆえわれわれは、これらの石炭産業に関する提案者と意見を異にしておるということを、これは討論にわたりますから避けますが、まことにわれわれは遺憾である。どうか提案者は、これらの事態についても、ひとつ冷静、公平に目をとめられたい。配炭公団の廃止のときに、配炭公団が廃止されれば金詰まりで、中小炭鉱はつぶれるということをわれわれが述べたところが、時の自由党の政調の責任者としての神田君は、中小炭鉱に関する金融については、十八億の見返り資金、預金部の融費あるいは信用保証制度の活用、その他項目を七つ、八つ並べられて、中小炭鉱については、これこれの救済策があるということを言われた。しかしながらその後の政府の施策の模様を見ると、何ら政府は手を打つていないということは、昨日の石炭管理局長の説明によつても明らかである。そこでこれらの政策をやるということを約束しておきながら、配炭公団を廃止した今日においても、それらの約束はから約束となつて、今やまことに中小炭鉱業者は塗炭の苦しみにあることは、神田君自身も十分御存じであろうと思います。この委員会において、ただ單なるロ頭禪の説明をするのみで、具体的にはそれらの窮境に対して何らの手を打ち得ないというのが、今までのしばしばの例であります。配炭公団という一つの公的機閏によつて、石炭の配分がなされるというところに問題があつた。さらに私は政府の責任者に尋ねてみたところが、そんな金融政策はのつけから実現するものではない。そういうものは一政党の人気取りとして申されても、たとえばそれが與党であろうとも、政府としてそれらのことが行いがたいということは、前稻垣大臣時代に私ははつきり聞いておる。この金融問題に関して、神田さんから中小炭鉱金融並びに石炭金融について、一つの御抱負を伺いたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/21
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022・神田博
○神田委員 ただいま配炭公団の廃止の点等につきましても、痛烈な御批判があつたようでありますが、配炭公団の持つておりますよい面、これは私ども相当あることを認めるにやぶさかではないのであります。また当時の情勢といたしまして、配炭公団が生れる顕境の際におきましては、需要が非常に活発であつて、そうして石炭が非常に少い。そこで配炭計画を立てて有効需要を割当て、それに少いものをできるだけ順序よく配給しようということが目的でありまして、この公団がまた資金の面等につきまして、石炭業者に対する金融の面を受持つた役割の大きいことも、十分私ども承知しております。しかしながら御承知のように公団を廃止しよう、廃止しなければならなかつた事情は、廃止の当時すでに五百二万七千トンという厖大な石炭を持つておつた。言いかえれば、石炭がもう非常に余つて来ておる。少いものを公平に分配しようという問題よりも、もう配炭公団の資金の能力から考えまして、石炭をこれ以上持ち切れなくなつた今日、配炭公団をあのままにしておいたならば,おそらく貯炭はまだ数百万トンふえるような段階だと私は思う。おそらく配炭公団案が残つておつても、金詰まりの問題はかわらなかつたと私どもは考えております。そこで配炭公団はこの際一日も早く廃止して、そうして業者の目主性に訴えて融通面をスムースにやらせようというのが、配炭公団廃止の理由であつた。われわれ今日から考えますと、むしろ配炭公団廃止の遅かつたことをすら考えておるぐらいであります。御承知のように配炭公団廃止後非常な貯炭のはけ口の問題、あるいはまた大きな赤字を残した問題を考えましたならば、これを今日まで残しておいたならば、むしろもつともつとたくさんの貯炭になつて、そして赤字もまたおそらく倍加されておるのだろうと私は思う。国民負担を増加させる、こういうことになるおそれは十分あつたろうと考えておりますので、配炭公団廃止の問題につきましては、今澄委員とは所見を異にしております。そこで石炭鉱業の金融の問題、また特に中小炭鉱等に対する育成と言いましようか、金融の問題につきましては、この法律のあるなしにかかわらず、政府といたしましても、またわれわれ提案者といたしましても、打つべき手は十分これは打たなければならない。しかし今もお尋ねになりましたように、いろいろりつぱな案は当時も用意されたのでありまするが、御承知のような今日の段階におきましては、日本の政府の官庁というものが、制約されておることは今澄委員も十分御承知だと思う。さような制約のもとにおきまして、志が十分達し得られなかつたということにつきましては、私どもも非常に遺憾に考えておりまた責任を感じております。しかしながら今後におきまして、これらの点につきましてはさらに数倍の勇気をもちまして、十分善処して行きたい、かように考えておる次第でございまして、今後の手並をひとつ十分刮目してごらん願いたい、かように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/22
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023・今澄勇
○今澄委員 お手並をひとつ刮目して拜見したいのでありますが、大したお手並がなさそうなので、質問をしておるような次第なのであります。結局私は、金融の問題については、約束はから約束に終つたということを明白に答えられたと思つて満足します。この配炭公団の廃止は、結局政府の価格政策の失敗である。われわれは統制経済から自由経済への移行、一国産業のその時のあり方を、どのようにきめるかという問題は、場合によれば統制経済から自由経済に移行して行かなければならぬ場合もあるでしよう。しかしその場合においては、それはまた計画的な自由経済への移行でなければならない。その最も中心となるものは価格政策である。ところが政府は補給金を打切つて、一般産業の原価構成要素は漸次上つて来る。全体的には超均衡予算で、これまたわが国の産業がどうなつてもかまわない、一つの大きな均衡をはかろうとするそれらの政策から、結局原価計算要素で石炭価格をはじいたところで、売れないというような状態に追い込んだのは、結局これは価格政策の失敗である。されば価格政策が失敗したから貯炭ができたのだ。その貯炭を抱いておつては融資ができないから、今の日本の銀行の四千億からの預貯金が、ほとんど全部滞貨金融に使われていることは御承知の通りだ。このようにわが国の滞貨金融――生産的な要素へ金を使わずに、滞貨へ金をまわさなければならぬような状態に追い込んだのは、吉田内閣の産業政策の失敗である。これらの一環を受けて石炭は売れなくなつた。このような根本的な価格政策の結果から、遂に配炭公団廃止を昨年九月十五日、議会に諮ることなく政府が單独で強力に行つたことは、自由放任という一つの大きな逃避行へ、政府は価格政策に行き詰まつて逃げ込んだものと、断ぜざるを得ないのであります。されば今度は自由放任で、石炭価格は上ろうが下ろうが自由に放任しておけばよい。そのかわり泣くのは全国無数の中小炭鉱業者である。そのような中小炭鉱業者の血と涙の上に、今日の石炭行政がなされているということを、とくと御銘記願いたいのであります。そこで最も問題になつている価格政策でありますが、現下における石炭の価格についてわれわれは伺いたい。これは宮幡次官でもお見えになつておればよいと思いますが、まず鉄鋼業、それから、造船業、機械工業等、石炭をどうしても使わなければならないところの産業、あるいは輪出産業において、それらのものの、石炭の原価、これはアメリカの鉄鋼業における石炭の原価と、わが国の鉄鋼業の石炭の原価とは、御承知のように二倍から三倍の開きがある。このように高い石炭を使つて、わが国の鉄鋼業がアメリカの鉄鋼業と自由競争のもとに貿易のできようはずがない。われわれは日本の輪出産業においても、あるいは造船業、鉄鋼、機械工業においても、原料となるべき石炭は、これはアメリカと同様これが安くならなければ、日本の産業は成立たない。それらの面においても石炭というものは、これはやはり国家的な一つの管理方式によつて、これらの石炭原価に対する国家の力による引下げを希望するのであります。その点は、炭管法を廃止して自由な企業家の合理化にまかせて、石炭のコストがそのように下つても、石炭鉱業が成立つものであるかどうか。神田委員の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/23
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024・神田博
○神田委員 石炭の原価及び炭価の問題についてのお答えをあとまわしにいたしまして、大分石炭の需要が減つている。そこで需要が減つているから法律を廃止するのではないかというような前提のもとに、お述べになつておられるようでありますが、私どもこの国管法ができる当時の法案審議におきます際、当時の商工大臣でありました水谷君に、るる質問いたしたのでありますが、当時の政府の考えておりました、わが国の石炭の需要は一体どのくらいあればよろしいかということにつきましては、今申し上げたように昭和二十五年度においては四千五百万トン必要だ、また二十二年度には三千万トン必要だ、二十三年度には三千六百百万トン、また二十四年度には四千二百万トンでしたか、こういうようなことをお述べになられたようでありましたが、私当時質問した記憶をたどりますと、私どもはそんなに日本の石炭というものは――これは政府の言うことと私の言うこととは、多少食違うかもしれませんが、有効需要はむずかしいじやないか。なぜかと申し上げますならば、昭和五―九年の平均石炭の生産というものは、大体三千七百万トンくらいであつた。もちろんこのほかに満州からも製鉄所等には入つて来ておつた。しかし当時においては朝鮮、台湾も持つておれば、また中国にも輸出しておつた際でありまして、当時は紡績業を一つ例にとりましても、千二百万錘というような厖大な設備を持つておつた。また軍のいわゆる軍需工場が厖大な設備を持っておつた際でありまして、そういう際においても昭和五―九年は三千七百万トンしか石炭を掘つておらなかつた。そこで四十五百万トンの炭を掘るというようなととは、それは大いに産業が発展するものでございますから、けつこうでございますが、少し甘くものを考えていはしないか。そこで当時私は、昭和二十三年以降のいわゆる石炭の産業別の配炭計画というものを商工大臣に要求した。一体いかなる産業を目標としていかなる量の石炭を配給されるのか。その前提のことを十分拜聴しないと、石炭を三千万トン、あるいはその次は三千六百万トン、四千二百万トン、四干五百万トンいるというような裏づけがわからないから、十分これをお聞きしたいということを、非常に要求したのでありますが、当時の水谷商工大臣はさようなものはつくれないということでございました。だからこの国管法を前提としての、あの当時の論議をたてにとりますと、日本の産業を背景とした、石炭鉱業、石炭はどのくらいあればいいかということについては、一つも裏づけがなかつた架空の数宇である。このくらいの石炭がなかつたならば、民主の安定するような産業は興り得ないというような前提で、仮定の数字だと私は考えておつた。そこでただいま今澄委員から石炭が余つている、有効需要が減退しているということですが、これは今日の段階においてその通りでありますが、これは貿易が思うようにまだ行つておらぬ。昨年と一昨年を比べれば倍くらいになつているようでありますが、昭和五―九年と比べて、オーバーしているというものは少い段階でありまして、貿易が昭和五―九年当時に十分回復し得るならば、石炭の需要もまた活発になる。またただいまお述べになられましたような滞貨融資という問題もなくなるだろう。しかし貿易が十分伸び得ないということは、政府の責任ばかりでそういうことがあるのかというと、もちろんこれは政府を問うことは自由であり、また当然でありますが、これは私は言訳を申し上げるわけでないのでありますが、貿易が十分発展しているかどうかということは、それはこちらの売り手だけの考えでもつて、どうでもなるのではないのでありまして、やはり買手の経済情勢なり、社会情勢なり、幾多の問題がそこにからんで参ります。そういうことを前提として考えますれば、今日有効需要が減退している、滞貨融資が非常に多くて困つている、これはすべて事実であることは私も同感であります。私どもはその打開策を講じなければならないということについて、十分努力はしておりますが、貿易の問題が一番大きな問題じやないか。貿易が十分われわれの望んでいるような段階に入つて参るならば、これは相当緩和されて来るじやないか。こういうように考えるわけであります。そこで今炭価構成、いわゆる石炭企業の健全な、合理的経営の問題につきまして、価格政策をどういうように考えているかというお問いのようにお聞きしたのでありますが、私どもは官製の価格政策はすでに十分経験して参りまして、これらの弊害――一旦きめた価格がもう動かし得ないというような今日の官庁機構、その長所をとらえるよりも弊害の問題が多いものは、すでに国民といたしましても納得し得ない段階だろうと思う。やはりものの一つの価格というものは、総体的にきまるわけでありますし、また需要供給によつて、その他幾多の原因によつて常時動く。そこにまた競争による一つのコストの引下げなり、良品廉価、あるいは量産方式なりが生れて来ると思いますので、どうもいろいろ聞いておりますと、基本的に統制しなければならない、統制することによつて民生が安定するというお考え方と、われわれのように、政府が産業にできるだけ干渉を少くして、業者に自主性を持たせて、そしてそこに創意とくふうと熱意と努力によつて産業を興して行きたい。またこの場合におきましても、力の足らないものについては、政府としてはあたたかい手をさしのべて、そしてその競争によつてコストを引下げるような政治をやつて行きたいという考え方と、どうもこの前提に違いがあるのじやないかというように考えるのであります。いろいろ申し上げますと、意見のようにもなるわけでございますが、結論的に申し上げますと、どうも今申し上げましたように、前提が違つておる、そこでなかなか御了解が願えない、こういうふうなことに相なるのではないかと考えておるのでありますが、私どもの考えは、今申し述べたように、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/24
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025・西村榮一
○西村(榮)委員 ただいま神田委員の御答弁の中に、数字の点について、当時と少し違う点がありますので、私は政治論をぬきにして簡單にお聞きしたのであります。当時石炭管理法が提案されて、その後商工省が立案いたしましたときには、石炭増産五箇年計画を立てました。そこに官庁の人もおられるから御存じだと思いますが、今あなたは昭和二十四年度は四千二百万トンの計画を立てたとおつしやつたのでありますが、当時の計画によりますと、昭和二十三年度は三千三百万トン、当時の現有設備は三千二百八十万トンに対して三千三百万トン、昭和二十四年度は三千五百五十万トンの設備に対して、三千六百万トンの出炭評画をした、このときのカロリーは五千八百万カロリーでありました。そこで今滞貨の問題についていろいろ言われたのでありますが、結局この表によりますと、四千二百万トンを出炭されて、当時三千六百万トンの出炭計画というものは、昭和二十四年度のわが国の産業の規模において、これだけの石炭が必要であるという計画性のもとに、これが出炭計画をされたのでありますが、幸か不幸か石炭はよけい掘り過ぎました結果、今日滞貨ができておるのでありまして、昨年度の四千三百万トンというものは、著しく昭和二十四年のわが国の産業の消化規模にマッチしないものであると解釈しておるのですが、私の当時の記憶が間違つておつたのかどうか、この点きわめて大切でありまして、石炭滞貨の今日の原因がなへんにあるか、ということを探求するのに必要だと思うので、御記憶があれば御答弁を願うし、御記憶がなければいいのですが、一応明らかにしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/25
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026・神田博
○神田委員 数字は、私原稿なしでやつたものですから、今あなたのお述べになつたのがほんとうかもしれません。二十三年度は三千三百万トン、それから二十四年度が三千六百万トン、二十五年度が三十八百万トン、二十六年度が四千万トン、二十七年度は四千二百万トン、カロリーが五千六百カロリーから、最後には六千カロリー、こういうことになつておるようでありますから、これは訂正しておきます。
今西村委員の、この計画を上まわつた出炭量が出たので、そこで有効需要がついて来なかつたのじやないかというような御尋ねのようでありましたが、当時のこの計画は、先ほど私今澄委員の御質問にもお答えいたしましたように、昭和五―九年が平均三千七百万トンの出炭量でありますので、当時の政府の計画からいつても、また当時の産業状態の展望からいつても、計画が多過ぎはしないか。紡績だけで例を取つても、昭和五―九年には千二百万錘であつたが、当時は二百八万錘しかないのに、三百五十万錘の計画をしておるというような状態であります。こういう面から孝えても、計画がどうもちよつとおかしいじやないか。それからまた電力が、昭和五―九年と比べますと、相当これは熱源としてはふえております。これはもちろん消費もふえておりますけれども、二十三年度以降の産業五箇年計画別の配炭計画というものを承知したということを、非常に強烈に私食い下つて述べたのでありますが、とうとうこの表が出なかつた。結局あの当時どの程度必要かということについては、これは朝野ともはつきりした材料を持つていなかつたということは、事実であろうと思つております。今西村委員のお述べになりました、石炭生産が非常に多い、そこで飽和状態になつているから、需要供給の関係がとれないのではないかという、一つの見方も成立つと思います。しかし私が申し上げましたように、それだけの問題ではなく、やはりこれは貿易なんかの問題が大きく作用しているのではないだろうか、こういうことを申し上げているのであります。なお昨年の暖冬異変で、特に火力の消費量というものが減つている、あるいは鉄道電化等においても若干また減つているというような面も出ているのではないか。とにかくわれわれの考えているほど、十分な産業の復興あるいは貿易の進展というものは行つていないということから来ていると思います。いろいろな原因もありましようが、大ざつぱに言うと、そういう考え方についてはわれわれも同感であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/26
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027・西村榮一
○西村(榮)委員 もう一点簡單に……。ただいま神田委員が御訂正になりましたから、私もそれで大体了解いたしますが、結局、そうすると政府の出炭計画三千六百万トンを、計画通り五千八百カロリーで行けば、今日の滞貨はさようできなかつた。しこうして当時立案した計画出炭量三干六百万トンというものは、昨年二十四年度の産業計画にマッチしておつたものであるということを、大体御承認になつたようでありますから、私は関連質問を打切りますが、ただその点において、今神田さんのお話で違つている点は、石炭の滞貨並びに産業不振の原因は貿易の不振による、こうおつしやつたのでありますが、この点は違います。ということは、貿易は、昭和二十三年九月の世界の景気の転換を機会として、アメリカだけを見ましても一七%生産が下つて、二三%価格が下落をいたしております。当然日本の貿易が、昭和二十四年度に行き詰まるということは、昭和二十三年九月にすでに見通されたのであります。それをただいま石炭の滞貨と関連して、貿易が不振だから産業が行き詰まつたのであるというあなたの御見解は、さっきの二十四年度の出炭量の誤りと同じように、きわめて政治的御答弁かと私は考えております。しこうして三十六百万トンという出炭量は、二十四年度の産業規模とマッチした出炭計画であるといたしますならば、四千二百万トンは出し過ぎたというそういうことは、そしてまた滞貨をしたということは、産業の無計画というもので、将来戒めなければならぬ問題ではないか、私はそう考えているのですが、関連質問ですからこの程度にして、あらためて私の見解を申し述べたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/27
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028・神田博
○神田委員 西村委員のお尋ねの貿易、これは言葉のあやになりますが、貿易だけという意味で申し上げたのではないのでありまして、それも一つではないかという意味で申し上げたのでありますから、その点御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/28
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029・今澄勇
○今澄委員 大体時間も参りましたので、午前中の質疑はこの程度にして、今私の質問しました、いわゆる鉄鋼業、造船業、機械工業等の原料となる石炭の單価の引下げの問題につきましては、神田委員並びに政府委員の答弁では、何らの見るべき施策はありません。ただ業者の自主性にまかすというだけでありますが、これらの合理化の具体的な問題であるとか、あるいは石炭の單価の問題等の詳細な問題がございますので、ここで質問は保留して、午前中はこの程度でやめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/29
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030・有田二郎
○有田(二)委員長代理 午前中の議事はこの程度にとどめまして、午後は二時より再開し、本案の質疑を継続いたします。
これにて休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後二時三十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/30
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031・有田二郎
○有田(二)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。
質疑を継続いたします。今澄勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/31
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032・今澄勇
○今澄委員 午前中に引続いてなお若干の点を御質問したいと思います。先般の話では、これは政府の委員の方に聞くのでありますが、非常に炭価が安くなければどうしようもないということで、炭価を将来下げるという具体的な政策はないかという話でしたが、これに対して具休的な政策がおありならば、政府委員の方から企業の合理化をやられるという話だつたが、さらばその企業の合理化をやるには具体的にはどうするか。炭価の引下げは企業の合理化のみならずいろいろの問題があるが、これらの問題についての具体的な詳細な方針をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/32
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033・中島征帆
○中島政府委員 引下げ方策の具体的な方針の一番主眼点は、設備資金を投入いたしまして、炭鉱の内部を合理化することに盡きると思うのであります。その方法は要するに従来、特に戰時中に非常に荒廃しておりましたものが、戦後逐次復旧しておりますが、未だ完全な同復をしておりませんので、それを戰前のレベルに回復するということが第一であります。その次にさらに一歩を進めまして、従来以上に炭鉱の内容を機械化いたしまして作業能率を上げる、こういうことによりましてできるだけ大幅な原価の引下げをはかりたい。これ以外には素材費の引下げでありますとか、その他一般の経費の引下げというようなことがございますけれども、これはまたそれぞれその部面でやるべきことでありまして、炭鉱自体といたしましては、もつぱら設備資金の投入による炭鉱内部の機械化ないしは合理化ということに力を注ぐのが、最も有効であろう、こういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/33
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034・今澄勇
○今澄委員 今の政府委員の説明によつてみると、やはり企業の合理化、設備資金ということで、結局は資金面における炭鉱への強力な援助ということになる。そこで私は提案者に質問しますが、提案者が昨日並びに本日の午前中いろいろ説明をされたが、私は提案者は臨時石炭鉱業管理放の内容を十分覚えておられるかどうか、忘れておられるのではないかと思うところが多々あるのであります。今の資金の面その他金融の面においても、現在の臨時石炭鉱業管理法案による強力命令をもつてやれば、これらのことはできるように法律の中にいろいろうたつてある。それらのことを今次吉田田内閣は一切行つておらないので、こういうような臨時石炭鉱業法の中にあるこれらの命令法規その他のものによつて金融の便をはかり、いろいろの施策を講ずるという部面がとられなかつたのはどういうわけか。それからまたそのような強力な事項があるにもかかわらず、これは無用の長物であるというような御見解は、どのようなとこから出発しておるか、提案者に承りたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/34
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035・神田博
○神田委員 現下の石炭コストの大幅な引下げを考える場合に、設備の改善が問題になつて来る。設備の改善は従つて金融の問題にからまつて来ることでございまして、この点ただいま政府委員からも御答弁がありまして、今澄委員の御指摘の通りでありまして私も同感であります。そこで申し上げたいのでありますが、この法律を温存しておくと申しましようか、このまま置いて政府が強力に支持し、命令し、そうして設備の改善強化をはかつたならばよろしいではないか、こういうような御趣旨の御質問のように承るのでありますが、私どもは先ほどから申し上げておりますように、政府の支持とかあるいは命令というようなことにも、おのずから限度がございまするし、さらにまた政府がやると言いましても、結局は担当しておる者がやるわけでありまして、企業の実態を現に把握し、そうして自主性をもつてその企業を十分知悉し、責任を持つ者がやることがより必要ではないか、法律をつくればすべてが合理化されて行き、金をつぎ込めばすべてが合理化されて行くというわけではないのでありまして、実態に即するようなものでなければならないものであると同時に、十分責任を持つたものが緩急よろしきを得てやるべきものであり、同時にまた今日の石炭の問題は、ただ金融だけによつて炭価が高騰しておるのではないと思うのであります。たとえば輸送費の占める割合は、非常に厖大なものになつております。あるいはまた電力費のトン当りに要する経費というもの相当の問題であります。さらにまた金融の問題と申しましても、金利の問題がこれまた重大な部分を占めておる。数えて参りまするならば、関連産業の協力なくしては、石炭の原価の引下げもできないわけでありまして、やはり総合的な問題だろうと考えております。そこでこれらのものを一連のものとして考えて行く場合におきましても、石炭鉱業に強力な統制命令のできるような法律をつくつて、その法律に基いてやる。そこで合理化されて行く。こういうことはもう日本の多数の国民は支持しておらない。これはソ連では長くやつておるようでありますが、わが国の現状におきましては多くの国民の支持を受けておらない。盛り上る力、創意と工夫と努力、そうして企業の自主性によつて合理化されて行くものである。こういうように考えておるわけでありまして、先ほど来大分立場を異にしておる、こういうような感じを深くする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/35
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036・今澄勇
○今澄委員 提案者の説明は語るに落ちるとはこのことで、少くとも電力の値上り、あるいは地方税によるコスト高、あるいは今申し上げましたいろいろな状態で、石炭の値が漸次上りつつあるということを、提案者自身が認められておるということは、これは私は非常に驚いた次第であります。このような値が上り、需要と供給の関係から一部石炭については、上級炭は非常に需要が多くて供給が少いという、この現実の面からも、このような石炭管理法を廃止するということは話にならない。石炭の値はもとよりそれらの総合的のものである。総合的なものをわれわれが国家的の目標に統一するためには、このような管理法が総合的に使われなければならない。しかもその管理法は條文において強力命令等があり、それらは金融についても一切のものを政府が強力に進める権限が與えられておるにかかわらず、政府は何らこれを行わなかつたということを、みずからが認められたものであろうと思います。われわれはその意味においても、この法律案というものの存在価値を十分見ることができる。われわれはそういう点においては、法律が惡いのではなくて、法律を運用する意思が政府になかつたものといわなければなりません。第二点は、企業の自主性にゆだねられればいいじやないかと、今も提案者は言いましたが.私は今日の石炭を自由に放任してはおけないと思う。提案者は新聞をごらんになつてもわかるけれども、鉄鋼業と石炭業の対立が深刻化したために、日産協の石川一郎氏が調停に入つて、解決すべく奔走しておるという状態であります。この対立はすなわち炭価が高くなり、いわゆる原料炭が高いから、これらの重要産業の基礎がくずれようとしておるのであつて、この事態をどのように見ておられるか。はたして企業家のみにまかしてやつて行けるかどうか、あまりにも無責任な資本家擁護に走つては困るのであります。一国の産業の中において、たとえば原料炭がどんどん上る。これに対して鉄鋼業界では、このような原料炭では採算が成立たないということで、業界が対立する。これは政府の産業政策が失敗したのであつて、原料であるところの石炭に対するところの石炭政策が、あなたの言われたことと反対に、ほつたらかしてあるから調和が保つていないのだ。今日の鉄鋼業と石炭業界との対立の深刻化した姿などは、これはまさしく現内閣の持つ政策の誤りであると確信するのであるが、こういう際に本法律案を、しかもこんなに早急に、重要法案の山積している中に、二、三日で審議しようという提案者の心境を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/36
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037・神田博
○神田委員 石炭のコスト高に伴いまして、また原料炭の需給状態にかんがみまして、わが国鉄鋼業の受ける打撃と申しますか、影響によりまして、石炭業者と鉄鋼業者との、非常に深刻な炭価の問題についての軋轢、相剋といいましようか、対立を見ておる。この事実は私も知つております。そこで私どもの考え方でありますが、こうした場合にすぐ法律にたよつて解決して行こう、これは私どもは考え方としてどうであろうかと思う。今深刻に対立しておるが、そこに切磋琢磨しておると私は思う。利害を異にする産業の経営者がともに切瑳琢磨して、そこに何らかの合理化する道を考えて、そうして日本の産業の高度化なりあるいは能率化をはかつて行く、そこが私どものねらいだと思う。そういう場合に、今今澄委員のお話を承ると、法律を出して政府が補助金を出してやればいいじやないかということが裏にあるのではないか。それが日本の再建を遅らしておる。また日本の官界を腐敗させた。日本の産業界を沈滞させた。それが日本の再建上おもしろくない。企業の自主性を認めて、そうして利害の対立する業者は、真創にそこで努力し合い、研究し合つて、そうしてその結果に基いて合理化して行く。製鉄業がつぶれて石炭鉱業は成立たない。また石炭鉱業がつぶれて製鉄業は成立たない。その切磋琢磨し合うところに産業の進歩があると思う。いわゆる自由な競争による創意、くふう、熱意、努力があつて産業が進歩し、前進して行くと思う。いろいろ承りますと、経済の実態を法律で規定して、あるいはまた国家の財政にすがつて行く。こういうことでは、日本経済はいつまでも竹馬経済と言われ、世界経済に入つて行くことを、ますます至難にして行くのではないか。とにかく業界は業界として十分企業の自主性を、もつてやり合つた後に、政府の助力を必要とするものは政府が考えて行く、これは政府の最後の手であろうと思います。今から法律をもつて規定して行き、命令をかけて行くということは、目本の民主化のためにも、はなはだ遺憾であろうかと考えておる次第でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/37
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038・今澄勇
○今澄委員 提案者の非常に熱心な御説明でございましたが、ただいまの提案者のお話は午前中も私は二度ばかり聞いたのであります。結論として、政府による政策で上からむりに押える統制ではだめだ。企業の自主性を生かして、いわゆる自由放任の自由競争で、価格を定めることが最もよろしいということを、提案者はしばしば申しました。われわれは限界効用説の学説ではないけれども、需給の相対関係から価格をきめるということは、これは最も幼稚な経済学の第一歩であります。このようなことで一国の産業政策が行われるのであるならば、われわれは何をか言わんやである。すなわちこの重要物資については、国家の責任と国民の犠牲を助けるべく、国家が計画的にこれらのものを、国民全体の利益の上から十分統制して参つておることは、世界各国の現在の政策として、これは共通なところである。私どもは手放しな、いわゆる限界効用説の学説そのままに、価値の決定をするところの需要と供給の流れるるにまかせるならば、それは何をか言わんやである。まつたく政治から離れた経済の実態である。私どもは日本の今の石炭というものは、これが重要な基礎物資であるという点においては、どうしてもそのような鉄鋼業との対立を放任しておくことのできない産業であると考えておるがゆえに、このような臨時石炭鉱業管理法が必要である。かように考えるのでありますが、提案者の御意見を重ねて承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/38
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039・神田博
○神田委員 重ねてのお尋ねでありますが、私どもは企業の自主性を持たせたい、そこに合理化の第一歩が出て行くと思う。統制は石炭鉱業に限らず、とにかく日本の今までの経済の仕組みが、戰争を準備し、あるいは戰争に勝ち拔くためであり、あるいは戰後の混乱した物の乏しいという際に、一応たどつて来た筋道でありまして、決して統制経済が全部惡いという観点に立つて、私は申し上げたのではないのであります。また自由放任経済というような、特に放任という字まで御丁寧に加えてお尋ねのようでありましたが、さような考えを持つて申し述べておるのではないのであります。業界が企業の自主性を持つて、そこで切瑳琢磨して、十分な議を盡して、しかる後になおかつ政府が助力をしなければならない、手を打たなければならないというときには、これは打つべきものである。こういう前提に立つておるのでありまして、そこに至らないうちに法律をもつてただちに統制して行く、そこの考え方が違う。私どもは自由経済の面に弊害の出て来ることも、十分承知しておりまして、それらのものは排除して行きたい。経済はやはり自然的に発展し、流れて行くわけでありますから、決して今お述べになられましたような幾多の学説が、そのまま固定しておるとは考えておらない。必要に応じて必要な手を打つて行く。決して放任して弱肉強食にして行くという考え方ではないのでありまして、所詮は立場が違つておるのではないだろうか、こういうような感じをさらに深くする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/39
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040・今澄勇
○今澄委員 大分時間も経過いたしましたし、同僚議員の質問もありますので、質問を留保してこの程度でやめたいのでありますが、結局のところ、この臨時石炭鉱業管理法の廃止に関する法律は、増産が目標であつたから、増産の必要のない今日においては、これをやめるべきものである。そうして鉄鋼業との対立、あるいは硫安工業との対立、すべて石炭に関する補給金を打切られた各産業との対立については、政府はこれらのものがお互いに切瑳琢磨して、その間の合理化をはかることがよろしかろう。金融の部面については、先般の中小炭鉱の金融施策に見られたように、大蔵大臣は水のそばまで馬は連れて行くけれども、その水を馬が飲むか飲まないかは、これはその馬の一存であるというような調子の金融対策である。そこで今提案者はこの石炭鉱業については統制を認めないわけではない、手放しではないと言われるけれども、石炭鉱業に関する石炭企業安定法とか、あるいは石炭企業の振興に関する一つの石炭事業法というようなものを制定して、これとともに出されたという跡も見られない。少くとも私どもこの法律案がこの国会の末期にあたつて重要法案が輻湊する中に、それらの一切の計画なくしてこれが出されたものであるということを、今日質疑の結果確認をいたしました。提案者は自由経済で、野放し放任ではないと言われるけれども、このやり方が石炭企業の野放し放任でなくて一体何でありましよう。われわれは石炭企業が重要産業であり、国家の基幹産業であるということを、この際どうしても主張しなければならぬ。その意味合いにおいては、これらのいわゆる統制法規、この臨時石炭管理法というようなものは、十分これを活用して行かなければならぬものと考えるのであります。まあ大体この程度にして、私はなおその他企業合理化の問題、それから国際的な石炭の貿易の問題、あるいは石炭に関する安定法の問題、その他いろいろな問題がありまするが、これはあまり一人で長く時間をとつても何でありますから、後の機会に質問を留保して、この程度で打切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/40
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041・有田二郎
○有田(二)委員長代理 有田喜一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/41
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042・有田喜一
○有田(喜)委員 ちよつとただいま上程の案に対する質問をする前に、神田小委員長にお伺いしたいのですが、実はこの委員会におきまして、特別鉱害復旧の問題につきまして、小委員まで設けて、いろいろと対策を立て、全会一致をもつて案ができたことは御承知の通りでおりますが、その後小委員長におかれましても、関係方面と相当折衝を重ねて来られまして、その労に対してわれわれは多とするものでありますが、一応その後の経過はどうなつておるか。今日特別鉱害の地域における人々は、今か今かと待ち構えて、非常に不安の念に焦慮されておるようであります。つきましてはこの際経過をひとつわれわれ委員としてお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/42
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043・有田二郎
○有田(二)委員長代理 この際お諮りいたします。ただいま有田喜一君から、特別鉱害についての御意見が出ましたが、神田委員から答弁させることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/43
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044・有田二郎
○有田(二)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。
それでは、ちよつと速記をとめて……
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/44
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045・有田二郎
○有田(二)委員長代理 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/45
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046・有田喜一
○有田(喜)委員 それでは今の特別鉱害の問題は、そのぐらいにしておきます。
臨時石炭鉱業管理法の廃止案につきまして、まず提案者にお伺いしたいのですが、私たちの承知するところによりますと、本法は産業の復興と経済の安定に至るまでの緊急措置として、できたものであります。
〔有田(二)委員長代理退席、小金
委員長代理着席〕
ところがはたして現在のわが国の経済の実相が、経済の安定、産業の復興の段階へ行つているかどうか、これは言うまでもなくさようなことには相なつておらない。賢明なる神田委員は、まさか池田大蔵大臣のようなやぼなことはおつしやらないと思うのですが、それに対する御見解をまず承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/46
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047・神田博
○神田委員 有田委員にお答えいたします。この臨時石炭管理法は、経済の安定と石炭の増産を目標にしたではないか。これは第一條に、それが目的であることを掲げていることは、その通りでございまして、今日これが廃止について、石炭の確保はしたが、経済の安定はどうなつているか、こういうような御趣旨のお尋ねのように拜聴いたしました。石炭の増産については、これはもう議論の余地はないと思いますが、経済の安定いかんということに相なりますと、率直に申し上げまして、経済は安定したとは私は考えておりません。安定しつつある方向に向いている。当時の情勢から考えますれば、どういうところをもつて安定ということにしたかということについても、幾多の議論がございました。もちろん経済の安定は即国民生活の安定であり、日本の経済の再建が少くとも九十パーセント近く行くというところでなければならぬだろうと思つておりますが、この点に関しましては、遺憾ながらまだ安定したとは言えないと思います。しかしこの国管法がどういう意味であるかは別といたしまして、当時と比べましたならば非常に安定しつつある段階に入つておるということだけは、何人も率直に認め得られるだろう、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/47
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048・有田喜一
○有田(喜)委員 今の提案者の意見によりますと、経済はまだ安定していない、そういう、大体私と同じ考えを率直に申されたのでありますが、この臨時石炭管理法なるものは、いわゆるその当時提案された理由が解消されていないと思います。なるほど石炭は今日、ことに二十四年度は相当ゆるやかになつて参つたことは現実であります。しかしその現実であるところの二十四年度の三千七百万トンというものは、あの石炭管理法ができた当時の、二十四年度のいわゆる生産目標である。これは午前にも議論になりましたが、いわゆる三千六百万トンを少し越えた稚度で、昨年度の四千二百万トンというのは、これは誤つてああいう命令というか、ああいう生産計画を立てられた。これは政府の自主性がない結果、ああいうことになつたものと私は承知します。そう考えてみますと、今日の一時的現象をもつてこの石炭管理法の目的が達せられたかどうか。もうこれはやめてもよろしいという考えは、実に何と申しますか、あさはかな行き方だと私は思つております。まつたく昨年度の石炭に多少余剰ができたということは、四千二百万トンという実に厖大たる、むりな生産計画が災いしたのでありまして、それが現政府のいわゆるデフレ政策によつて、有効需要が非常に減退した。それと相まつてそのときの現象が生じたにすぎない。私の見解をもつてするならば、決してまだ石炭管理法の提案された理由は解消されていない。その一時的の現象をもつてこれを廃止するということは、私は納得ができないのであります。政府は一体どういうふうにこのことをお考えになるか、政府の御意見承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/48
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049・中島征帆
○中島政府委員 昭和二十四年度の四千二百万トンの出炭目標は、昨年の二月ごろでありまして、そのころ四千ニ百万トンの出炭を基幹といたしました各般の生産計画を立てる必要が生れまして、それに基いて新しい五箇年計画が立てられたわけでございます。それによつて二十四年度におきましては年度初めよりその出炭目標の達成に努力したわけでありますが、各般の情勢の変化に件いまして、それほどの需要が伴わないという見通しのために,出炭も次第に減つて参りまして、御承知のような三千八百万トン程度のことになつておる、こういうわけであります。そのときの二十四年の五月三十日に、これは添付書類の八にございますが、安定本部の経済復興計画委員会の五箇年計画によりますと、昭和二十五年は四千五百万トンを要する、こういうことになつております。従つて当初予想しました通りに、経済が順調に回復して行けば、当然四千五百万トン程度の石炭の需要が本年度はあり、その程度の出炭も確保できる、こういうふうな計画が一応紙上では立つたわけであります。それで昨年の後半期以来、この需給情勢が変化いたしまして、現実におきましては四千二百万トンは出炭いたしませんで、それの八割程度の減産にとどまつております。しかしながら炭鉱の実力といたしましては、四千万トンないし四千二百万トンの出炭をするということは、必ずしも不可能でない状況にまで回復しております。また本年度の需要見通しとしましては、一応四千万トンという想定を立てておりますが、これは今後の情勢の変化によりまして、あるいは四千百万トンないし四千二百万トンという実際の需要が出て参るかもしれませんが、その場合に対しましては、適切なる行政的な措置をすることによりまして、これに対応するだけの炭鉱側としての準備はできておる、こういうふうにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/49
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050・有田喜一
○有田(喜)委員 ただいま御説明になりました昭和二十四年度四千五百万トン云々の計画は、これは過去の計画であり、ほんとうの計画でない。提案当時の計画は、二十五年度は三千八百万トンということになつておる。昨年は、これを私は政府に自主制がなかつたと申しますが、実は政府は、こんなに大きく計画されてなかつたことは事実である。ところがいろいろな関係で、こういうところへ持つて行かれたように私は承知いたしております。これはもう業界も四千二百万トンは無理だ、また二十五年度の四千五百万トンは無理だということはわかつておる。われわれもそれは無理だと思つている。それを強い力に政府は押しまくられて、こういう無理な計画を立てて、それで業者にはつぱをかけた。その結果これは無理であるということになつて、そうしてああいうような状況になつたのですが、これは私は一時の現象にすぎないと思う。そうして一方デフレ政策によるところの有効需要の減退、その二つが相まつて、幾らか石炭が余裕ができた、こういうことであつたと私は確信する。そういう一時的の現象をもつて、この重要なる法案を急遽出す。そこに私は大きな無理があると思う。提案者の神田委員は、これをどうお考えになるか、提案者の御見解も承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/50
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051・神田博
○神田委員 昨年の四千二百万トン計画は、それ自休がむりな計画であつた。一体政府は腰が弱くて自主性がどうも少し足らなくて、心にもない増産計画をのんだのではないか、率直に言うと……。これに対して提案者としてどういうふうに考えておるか、こういうふうなお尋ねのように拜聴したのであります。私きよう西村君の質問にも答えたのでありますが、昭和五年―九年の日本の出炭量が三千七百万トン、繰返すようでありますが、当時の日本の産業組織から参りまして、当時の産業組織を、今日これを逆に見た場合、一体四千二百万トンの炭がいるかどうかということは、私どもといたしましては、実は消極的に考えております。どうしてのんだかというようなことになりますと、実はさような会議に出ておりませんので、ちよつとお答えしかねるのであります。以上お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/51
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052・有田喜一
○有田(喜)委員 そこで私思うのですが、二十五年度は四千万トンという計画を立てた。これは多少私も肯ける節があるのです。前の計画のように、四千五百万トンというような大きな数でなく、四千万トン、これは政府も多少は根拠を持つておられると思いますが、政府はこの四千万トンというものに対して、どういうような確信を持つておられるか、もう一度政府の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/52
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053・中島征帆
○中島政府委員 四千万トンの出炭目標に対して、出炭ができるかどうかという点と、それからはたして四千万トン出炭した場合に、これが販売され得るかどうか、この二つの面についてのお尋ねだと承知してもよろしゆうございますか――出炭し得るかどうかという出炭能力の点に関しましては、御承知のように二十四年度の初頭におきまして、四千二百万トンの月別計画を立てて、それによつて毎月の出炭を促進して来たわけでありますが、二十四年度の上半期においては若干下まわつた点ぱありますけれども、常に九十何パーセントという実績をあげて来ております。従つてそのままで参りますと、ほぼ二十四年度の四千二百万トン目標の達成ということば、若干の下まわりはありましても、二十三年度の達成率にほぼ近い率をもつて行けたのではないかと、こういうふうにわれわれは当時考えておつたのであります。従いまして炭鉱の現実の力といたしましては、一応四千二百万トンを達し得る程度まで回復しておるというふうに考えてさしつかえないのではないかと考えております。従いまして本年度におきまする四千万トンの目標は、これを達成することは決して不可能ではない。ほかの客観晴勢の非常に大きな変化があれば格別でありますけれども、現在程度の数字であれば、本年度の四千万トンの出炭は、確実に出ると思つております。またそれが出た場合に、需給状況として、過不足がないかというような点でありますが、これは私ども一応想定をいたしました需給に基きまして立てた目標でありまして、大体この程度の数量は、この資料にもございます通りに、それぞれの需要部門別に消化し得る、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/53
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054・有田喜一
○有田(喜)委員 そこでお伺いしたいのですが、この二十五年度の需要見込みというものは大体根拠がある、こういう政府の御見解でありますが、そうすると二十四年度のいわゆる産業別の需要実績は、どういうようになつておるか、それを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/54
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055・中島征帆
○中島政府委員 二十四年度の年間の部門別の配炭実績は、別に集計があるのでございますが、ただいまちよつと手元にございませんので、後ほど調査してお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/55
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056・有田喜一
○有田(喜)委員 ぜひ二十四年度の需要実績をお示し願いたいと思います。私は政府のこの案は、二十五年度は相当根拠を持つておられると思うがゆえに、それを裏づける意味において、二十四年度の実績を見て、はたして需要見通しが四千万トンであるかどうかということの見通しをつけたいのでありますから、ぜひこれは明後日でも御提出を願いたい。ところが、かりにこの四千万トンの需要見通しが、まあ正しいと是認いたしまして、はたしてこのままほうつておいて二十五年度に生産が四千万トンになるかどうか。これは生産の規模なり、能力はあるいはあるかもしれぬ。しかしこの管理法を廃止してしまつて、政府がはつぱをかけずに、そのまま放任しておいて、はたして四千万トンになるかどうか。これも私は大きな疑問を持つのであります。神田委員等も先ほど、戰前が三千万トンだと非常に消極的にお考えになつておるが、四千万トンの需要があるについては、まずどうしても四千万トンの生産を上げなくてはならぬ。そういうことを考えましたときに、私は放任しておいては四千万トンはむずかしい。二十四年度の実績がなるほど四千七百万トン余り出た。とれは上半期に相当はつぱがかけられるから、あそこまで行つた。これを今日のような状態で放任しておくと、とうていその需要まで生産を上げることは私はできないと思う。それに対する政府の考え方をもう一ぺん伺うとともに、あわせて神田提案者の御見解も承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/56
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057・神田博
○神田委員 有田委員にお答えいたします。昭和二十五年度に四千万トン出るかどうか。また需要がどうかというような御趣旨のように承ったのでありますが、私の見るところによりますと、これは結局先ほど来政府側でも裏づけしておるようなわけでありまして、四千二百万トン程度の出炭は、今の出炭能力として確実なものである。問題はそこの需要の問題だというようなふうに答えておられますが、私もこの点については同感でございまして、なおこの需要の問題も、結局はやはり炭価の問題にも影響があることでございまして、今日の高炭価な場合において、あるいはまた将来炭価の下つた場合、それによつても大分これは違つて来る。ことに大ロ等より小ロなんかの問題においては、相当違つて来ると思います。この法案がなくなつてただちに減産されるというようなふうには、私どもは考えておらないのでありまして、先ほど昨年の上半期には大分出炭量が出たが、下半期には出ないじやないかというような御趣旨のお尋ねもございましたが、配炭公団が廃止されるというような雲行きでございまして、今のうちにひとつどんどん掘つて山元にも貯炭なしで、どんどん送ろう。こういうような気風もございまして、それからなお当時は価格がプールせられておつたというような関係もございまして、必ずしもカロリーの一定品位のいいものを出したということも言われないのでありまして、むしろ粗惡炭を掘りやすいところでどんどん出した。カロリー換算してみると、炭量は多くても炭質が惡いのであつて、実際においては石炭のカロリー換算から言えば、量を質に直した場合においては、必ずしもそう大きな量の出炭ではないということにもなるわけでありまして、公団廃止後はできるだけ良質炭を掘る。また粗惡炭でありましても水洗いその他の選別によつて、カロリーの向上を期しておるというような観点から考えますと、出炭量の多い少いという問題は、結局はカロリーにもよるわけでございまして、四千万トンがいいのか、あるいは良質炭の四千万トンと粗惡炭を入れた四千万トンとは、非常に違うということにも相なりますので、配炭公団も廃した、さらに本法の廃止によりまして業者の自主性が高揚されて来る。また煩瑣な手続も緩和され、そこに企業意欲が非常に上昇して参りまして良質炭が出まわる。そこで需要がふえるので、石炭鉱業もそれらの面から裏づけされて行くことを期待している。こういうふうになるようにしたい。こう考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/57
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058・中島征帆
○中島政府委員 先ほど申しました通りに炭鉱の実際の能力としましては、本年度四千万トンの目標達成は非常に容易だと思いますが、一般の経済情勢の各種の條件によりまして、これがそれまで生産できないことにならぬとも保しがたいわけであります。それはむしろ現在におきまして、自由放任の形態をとつておりますから、もしも四千万トンで不足するというような見込みであれば、当然これは設備能力等の関係からいたしまして、鉱業者としてはそれだけの炭を出し得ると思いますが、見通しとして金融関係その他から、それだけの石炭を生産するといたしましても、販売できないというふうなことになりますと、これは自主的にそれぞれ出炭を制限いたしまして、結果においてはそれまで及ばなかつた。しかしながら、それは一方においては、大体実際の有効需要に適合しておつた。こういうふうな結果にならないとは確言できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/58
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059・有田喜一
○有田(喜)委員 どうも御答弁を承つておると非常に心もとないのです。ほかの産業からの需要が多くなつたならば、あるいは増産ができるかもしれないとか、石炭の増産を期待するとか、政府も提案者もあるまいな態度であつて、あまりしつかりした自信を持つておられない。私は石炭業というものが普通の産業ならばほかの産業に追従して行くという消極的態度でいいと思うけれども、言うまでもなくこの石炭は電力とともにわが国の重要な基礎産業である。その基礎産業において事を欠くということになれば、わが国の健全な産業の発達は期待することができない。従いまして万一石炭から生ずるところのわが国の産業の発展を阻害するようなことがあつたならば、これはいわゆる石炭主管庁としての通商産業省の大責任であります。今の御答弁のように非常にあいまいにして、しかもたよりない御答弁では、私は非常にこの案の廃止について危惧を持つ。なるほど昨年度のような一時的な現象によつて、あの国管法を発動しなくてもいいというような状態ならばこれはいい。しかし私は冒頭に申しましたように、昨年度は一つの異常な経済であつた、ほんとうのノーマルな経済ではない。またほんとうにわが国の今日のような異常の経済においては、これは八千万の国民を養うところの自立経済ができない。どうしても有効需要を喚起して、大いにわが国の産業規模をもつともつと拡大強化して行かなければならない。こういうようなことではわが国はジリ貧になつてしまう。さような見地から申しまして、この基礎産業であるところの石炭に対しては、よほど確固たる信念、確固たる施策を持つて臨まなければならぬと私は考える。その点におきましてあまりにも心もとない御答弁でありますので、私は重ねてこの点について政府なり提案者の反省と、それからそれに対してもう少し私の聞き違いのようなことがあれば、その点をはつきり正していただきたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/59
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060・神田博
○神田委員 有田委員にお答えいたしますが、有田委員の前提は、石炭国管法が非常によく活用されておつて非常な効用をなしておるのだ。こういうような前提でお考えになつておられるようでありまして、これは古い話になるわけでありますが、国管法のおい立ちを顧みますと、御承知のことかどうか存じませんが、当時の政府原案に対しまして、民主党の方々が主流をなしまして、いわば骨抜きというくらいな大修正を加えてしまつた案でございまして、御期待されるほどこの案が強力な法規でなくなつてしまつておるのでありまして、むしろ法規の実体から申しますれば、昨年の配炭公団廃止というものは、この法規が浮いておるというようなことでございまして、私ども率直に申し上げれば、むしろ行われない法律を廃止したい。そうして企業者の自主性を高揚し、手続の煩瑣を除いてやつて、さらに国費の節約もできる、そこで一石二鳥になる、こういうように考えておるわけでありますが、これはそれぞれ考えの、あることでございますから、私の方だけ申し上げるわけでございませんが、もつとも現状におきましては、今澄委員のように法の運用は人にあるのだから、運用がうまくないじやないかというような御意見も、たいへんけつこうな御意見でありましたが、この法の生れるときに国管法は不具者の形をもつて生れて来た。一大修正を食つて生れて来ておりますので、そう強力に政府がこの法規によつて、どうこうというようなところまで行き得ないような状態になつておる。さらにそれが石炭の増産に従つてこの法がまさに浮いて来た、こういうふうなことになつておるのではないか。だから実情に即したようなことをやつて行きたい。われわれも必要あらば、決して自由放任経済をとつておるのではないのでありまして、必要なときに必要な法律をつくり、また必要がなくなつた場合においてはその法律を廃止して行く。国会はほとんど常時開かれておるような状態でありますので、その辺のことは水の流れるようなたんたんたる気持で行きたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、一応私の気持を申し上げまして、答弁にかえるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/60
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061・中島征帆
○中島政府委員 先ほど申しましたところに、ちよつと誤解がおありのようでございますので、重ねて申し上げますが、四千万トン達成のできない場合もあるかもしれないということを申し上げましたのは、四千万トンの出炭目標は、現在の生産能力からいたしまして需要等を考えました場合に、きわめて内輪に見積つておる。従いましてこれの達成は一応容易であると考えられるけれども、もしもこの内輪の見積りが、さらにまだ内輪でなさ過ぎるというようなことになりまして、つまり実際の需要というものが下まわるような状況になれば、あるいはこれよりも実績として下るかもしれぬ、こういう意味で申し上げたのでありまして、もしも今後経済が好転いたしまして、四千万トンが四千百万トンないし四千二百万トンというように、需要が実際に喚起されて参りましたならば、官庁といたしましても残された行政措置をもつて、その目標達成のために、需要に適応するようにさらに増産をするという措置は十分いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/61
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062・有田喜一
○有田(喜)委員 私は現在の管理法が完全なものとは考えていない。しかしながら要は運用であります。ところが議会が常時開かれておるから、必要があればすぐ法律をつくるんだ、こうおつしやいますが、なかなかそう簡單なものではない。いよいよ石炭が足らぬというようなときに際会して法律をつくり、議会を通過せしめるについ半年もかかつてしまう。普通の産業ならば、多少それが遅れてもかまわぬが、石炭は重要な基礎産業である。基礎産業の面からそれがくずれて行くとたいへんなことになる。それで私はそうあわててこれを廃止せぬでも、この法案を置いておいて、神田委員のおつしやるように、そのときの情勢によつて大いに増産する必要があるとするならば、いわゆる伝家の宝刀をお抜きになつて、その必要がなくなつたならば、行政手段によつてこれを適当にやる、これがいわゆる真に生きたる行政だと思う。初めから法律をつぶしてしまつて、それからあわてて必要があつたときに、別な法律をつくるということは相当考えものである。またかりに一歩を譲つて、この法案が今日の実情に合わないというならば、何らかこれにかわるべき措置がなければならぬ。ところが、これを放つてしまつてあと何が残るか。今政府委員は必要があつたならば、必要の行政措置をやるとおつしやいますけれども、行政措置ばかりでは行けない。やはり一つの法律に基いた措置でなければならぬ。單なる通産省の局長が、あごで業者にああやれこうやれというわけには、私は行かないと思う。それに対して政府はどう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/62
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063・中島征帆
○中島政府委員 国管法施行の現在におきましても、法律による命令だけでは、実際に強制するということはなかなか困難でありまして、その場合におきまして資金の面あるいは資材の面等について、いろいろ手段を講じているわけでございます。従いましてかりに法律が廃止になりましても、そういういわゆる行政手段をもつて増産を促進するという方法は、これは命令と別個にわれわれはできると思つております。またそういうふうに今後努力もするつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/63
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064・神田博
○神田委員 私からひとつ有田さんの御質問の点につきまして、補足しておきたいと思います。私が先ほど答弁いたしました、法律は必要によつて生れ、またその必要がなくなつた場合においてこれを廃止する、かように簡單にできるものと申し上げましたに対しまして、さように簡單にできるものではないという意味の御意見でございましたが、これはもう有田さんは長らく官界におられまして、立法には特に深い御経験をお持ちになり、また立法府においでになられましたので、われわれもおおむねその御意見に同じ思いでありますが、先ほど今澄委員からの御質問と考え合せますと、いささか御参考になるのではないか。今澄委員はこの法案は突如として出て来たと、こういうことでございまして、私ども別に突如として出したわけでもなければ、淡々としてまあこの程度の立法であるならば、議員立法としてむずかしいものではない、大した時間もかからないで、この法案をつくつたわけであります。そこで石炭鉱業が立法措置を必要とするという場合があるとしますならば、これまたつくるに必ずしも長時間を私は要しないだろうと思つております。今日法律をつくつて行く、あるいは廃止するということは、過去の明治憲法におきまする省令の改廃よりもたやすいのじやないか。お互いがその気持になつて必要の際にはその必要によつてつくつて行く、またその目的が終り、必要がなくなつたという場合においては、どんどん廃止して行く、その方が国民をしておもむかしめるところを十分察知せしめて行くという観点から考えましても、われわれ今後のあり方といたしましては、そういうふうにひとつやつて行きたい。こういうふうに考えておりますので、なかなか一つの法案をつくることはむづかしいことであることも私は十分わかりますが、しかし必要とする場合におきましては、割合に短期間においてできる場合もあるということも、まあ考えられますので、ことに石炭鉱業のごときは基礎的産業でありますと同時に、われわれも将来においてはこの石炭鉱業の自立安定と申しましようか、他の産業に及ぼす影響等も考えて、十分これは何らかの方法を考えて善処したい。ただ今日の段階はこれを法文化するというところまでは行つていないのでありまして、いろいろ先ほど今澄委員にもお答えし、また今澄委員からもそういつたようなお考えの点が、言われておつたようでありますが、われわれもこの法案とは関連なしに、新しい視野から新しい観点から、石炭鉱業の重要性また政府として着眼しなければならないこと、措置しなければならないこと、これは臨時立法ではなしに恒久立法として十分考えて行きたい。このことについてはおそらく今澄委員も、また今お述べになられた有田委員も大方の各委員も、心を同じうしているのではないか、こういうように考えておるのであります。一応お答えしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/64
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065・有田喜一
○有田(喜)委員 政府にお尋ねしたいのでありますが、どうもこの法律の運用については、いろいろ手心を加えなければなりませんが、しかしこれを全部廃止しまして、資源庁ははたして石炭の現状を把握することができるかどうか。どうも私は資源庁として考えても、一方電力の問題がある、電力ももちろん性質は多少違いますけれども、この石炭と同じく基礎産業であります。電力におきましては再編成をやられるということでありますが、これはあくまで政府決定か、少くとも認可されることである。石炭はもう何も自由自在である。あけつぱなしにしてしまう。これは私は基礎産業の上に立つた通産省ないしは資源庁としては、非常に片手落ちであると思う。はたしてこういうものをすぐ廃止して現状把握ができるかどうか。今おつしやるような行政措置として、あるいは金融とかあるいは資材の面とか、あるいはその他でいろいろと補うとおつしやるが、自由にまかしてしまうとそう簡單には行かない。業者にやはり営利の追求ということに専念されて、かえつて石炭が少い方が、営利の目的から言えば好都合の場合がある。かるがゆえに、かような基礎産業に対しては、いわゆる公益的の立場からこれを監督し、あるいはこれを指導し、それぞれの法規の体形をもつて、法規というものをうしろに持つて行政を実情に合うようにやつて行くのが、実際の運用の妙味であります。いかに通産省がいばつてみたところで、法律のうしろ立てがなければ、なかなかそういううまく行くものじやない。こういうことを考えましたときに、おそらく通産省はこれだけの行政をやつておられるのですから、これを廃止せんとするならば、これにかわるべき何かを考えられておつたはずに違いない。それを何も考えずに、これを突如――という言葉が惡ければ今すぐ急いでこれをやめる、そうしてほつたらかしにするということは、基礎産業に対する政府の考え方なり、また提案者の考え方なりに非常に私は疑いを持つ。政府はこれに対してどういうような考えを持つておるか。これは政府提案じやないのですが、あそらく政府が提案ができなかつたのも、ほかに理由があつたと思う。それらのことに対して、政府の率直なる御見解を私は伺いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/65
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066・中島征帆
○中島政府委員 この問題につきましては、根本的にはお説の通りに私どもは考えておるのであります。と申しまのは、石炭鉱業のごとき基礎産業に対して、ある程度の根拠法規をもつて指導育成するということは、これは理想として当然必要なことであるというように私どもも考えております。しかもこの臨時石炭鉱業管理法は、臨時立法であります関係上、早晩廃止ないし有効期間の満了ということは予定しなければなりませんので、その際におきましていかなる制度を持つべきかということにつきましては、先般来われわれも研究いたしておるわけであります。特に先ほどお話になりました通り、鉱業の実態の把握という点は、これは今後行政官庁が常に心がくべき問題でございまして、その点に関しましてかような法律がなくなりますと、若干たよりなくなるというお感じが出るのは、否定しがたいわけであります。それやこれやを考えまして、今後石炭鉱業としてどういうふうな基礎法規が必要かということにつきまして、いろいろ案を考えまして、今研究をいたしております。またある程度の案を持つて、各方面と折衝もいたしておりますが、いまだに確定案をつくるというところまで参つておりません。これにつきましてはなおさらに研究を重ねまして、しかるべきものができましたならば、さらに適正な方法をもつて提案するような運びにいたしたい、かように考えておりますけれども、現在の段階におきましては、そこまで参つておりません。従いまして、もし国管法が廃止になりましたあとで、そのような別個の構想による立法が間に合わなかつたならば、その間におきましては、現在施行されておりまする鉱業法あるいは調査統計の法規を活用いたし、各種の資料につきましては、調査統計の関係からいたしましてこれを收集する。さらに実際の生産計画その他の関係につきましては、鉱業法に基く施業案の提出ということを十分検討いたしまして、その施業案を適当に持つて行くというような方法によつて、ある程度の仕事はできると思つております。なお資材とか電力という面につきましては、これは国管法は直接関係ございません。別個の法律に基いて統制が残つておりますものに関する限りは、国管法が廃止になりましても、やはり統制が継続されるものでありますから、その限度においては、今後もこれらの統制法規に基いて、重点的に資材の配給なり、あるいは適宜な措置はとり得るわけであります。そういうふうに、ほかの方面において残された制度によつてできるだけのことをするということは、今後も続け得る、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/66
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067・有田喜一
○有田(喜)委員 鉱業法で企業の実態なりあるいは行政措置を適当にやるということは――特定のものはともかくとしまして、事業の実態を把握し、また事業を適当に指導するというようなことは、これは十全を期せられないことは明らかである。従いまして、私は政府がもしこの管理法を廃止するならば、何かこれにかわるべき法律を用意されたに違いない。また他にかわるべき法律が用意され、それが通過を待たずして一方だけ廃止するということは、政府としても非常にお困りになるだろうと思う。先ほど来政府の御答弁を聞きましても、もし足らなんだらそのときとこうおつしやるが、もうそのことを言つている間に、だんだんと企業が参つてしまうのです。石炭が一割でも二割でも足らぬという不足時代が来るならば、われわれが一年前に非常に困つたような事熊がまた生ずる。従いまして、私はかわるべき何かほかのものができるまでは、やはりこの法律を残しておいて、適当にあやつるのが適当ではないかと思う。これは局長に尋ねてもしかたがありませんので、通産大臣なり、通産省の責任者に来てもらつてただしたいと思いますが、どうも通産省のやり方は片手落ちだと思う。
さらにお尋ねしたいことは炭価の問題であります。これは今澄君から相当長い質問がありましたから、重複を避けて簡單に聞きたいと思いますが、何と申しましても、現在の日本の炭価は高い。原価的に見れば高くないけれども、戰前と比べ、あるいは国際価格と比べたときには、どうしても高い。これでは第一基礎産業としての使命を果しておらない。しからばどうするかということが、私は大きな課題だと思う。ついては、今澄君が言つたように、いろいろと設備の合理化あるいは機械化その他の問題があるが、同時に、私は石炭鉱業の拔本的な合理的対策を考えなくちやならぬと思う。設備の合理化、作業の機械化、その他技術水準の向上、それに伴うところの金融の十全を期すること、もちろんそれはけつこうでありますが、しかしこればかりではいけない。中島政府委員は機械化をやればいい、こうおつしやるが、この機械化につきましても、最もわが国の実情に沿う機会化をやらなくちやなりません。またこればかりではなかなかうまく行かない。最も手取り早いことは鉱区の統合問題、そういうことも同時に合せてやつて、そうして大いに経営の合理化、企業の合理化をはかつて行かなくちやならぬ。今鉱区の統合ということを言いましたので、それで思い出したのでありますが、この管理法が廃止されてしまいますと、同時に石炭鉱業権等臨時措置法というものがなくなつてしまう。この八月まで何か過渡的に残るようでありますが、こういうものがなくなつてしまう。そうすると、私は石炭鉱業の基礎産業としての角度から見て、不都合な結果が生ずると思う。石炭鉱業はもつともつと合理化へ合理化へと邁進しなければならぬ。ところが合理化の措置は全然講ぜずして、そうして法律を廃止してしまうことは非常に危険だと思う。政府は八月までに何かの方途を講ずる考えがあるかどうか。また考えがなければいかにしてこの石炭産業の合理化をやり、この価格の引下げに対処して行くか。こういう状態で置きますと、日本の鉄鋼業はもちろんのこと、鉄鋼が参るためにわが国の造船も進みません。昨年までは外国から相当注文も受けておりました。ところが鉄鋼が高いために、外国からの造船の注文は入らなくなつてしまつた。のみならず、あの戰後新造船を建設するのに、鉄鋼が高いために非常に船価が高くなつた。これでは外国と競争ができない。国際競争ができない。そうすると一体日本の貿易はどうなるか。日本の経済は成立たない。そういうふうにいろいろと考えてみますと、石炭企業は日本の最も重大なる企業である。しかもそれに対する合理化、これは今日急務中の急務である。それに対する見通しもなければ、ただ口先で作業の機械化をやるとか、あるいは設備の合理化をやるとおつしやるが、現実にはなかなか進んでおらない。ここにおいて拔本的な合理的対策を考究せずして、こういうような基本法を廃止し、また一つの合理化の線を歩んでおるところの石炭鉱業権等の臨時措置法まで廃止すると、私は非常に困つたことになると思うので、これに対して提案者並びに政府の御見解を重ねてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/67
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068・神田博
○神田委員 本法案の廃止につきまして御心配なすつておられるお気持に対しましては、提案者といたしまして、石炭鉱業全体のあり方、またわが国経済の復興へのお互いの考えておりますことが、切々として思いを同じゆうしているわけでありまして、有田委員の御質問まことに傾聴して伺つた次第でございます。さりながらこの国管法を廃止したがために、石炭が出なくなるおそれがある、あるいはまた炭価引下げについても支障になりはしないか、こういうような御心配については、いささか意見を異にいたしております。昨日でございましたか、全国の中小炭鉱の業者が集まつて、またこの金融関係の銀行業者、それに官庁側として大蔵省、通産省が集まりまして、その懇談の席上、私いよいよ石炭国管法の廃止をするということで、若干御説明をいたしたのでありまするが、当日の空気を伺いますと、実に本法の廃止によつて、精神的にもまた実際的にも石炭増産への大きな一つの手だ、今日もう働いていない法律のために、自分たちはやはり重圧を感じている。自由党内閣は石炭行政に非常に熱心にやつてくれたが、今度の廃止法案ほどありがたい手はないだろうという声もあつたわけでございまして、私どもこの臨時石炭国管法が持つ役割が、立案制定された政府の考え方通り十分行つたか行かないかは別といたしまして、とにかく経済も安定しつつある、また石炭の増産が今日むしろ需要を上まわるようなバランスになつている、これにはいろいろ事情はあります。御意見もおありと思いまするが、この際これを廃止いたしまして、たびたび申し上げているわけでありまするが、業者の自主性のもとに、石炭鉱業の能率化をはかつて行きたいという考えでございまして、飛躍的な石炭採掘の合理化と申しましようか、機械化は行われていないことは事実でありますが、私昨年も北海道等をまわりまして、戰前に比べて、あるいは戰後といたしましては、着々として機械化合理化を行つているような情勢でございまして、本法立案の際、もちろん従業員の練度の低いという関係もあり、諸般の情勢も惡いというような環境でありましたが、とにかく一人当り五トン五百くらいの出炭量が今日八トンニ百五十というふうなところまで来ている。これを戰前の條件のいいような場合に引直してみると、大体一人当り十五トンくらいに相なるのではないか、大体採炭量は戰前の率に返つているということを、政府側でも言うているのであります。これはいろいろ見方によつては議論の余地はあると思いまするが、いずれにいたしましても、今日とにかく戰前の状態まで来たということは、やはり合理化の効果が相当現われている。そこで今後の飛躍をして、ほんとうの合理化をして、炭価の切下げまで持つて行かなければならないという段階だろうと思います。さような際におきまして、政府がやると非常に強力であり、また強く聞えるのでありますが、事実は石炭国管法の施行に伴いまして、約八百人からの職員ができて、これは現場で大いに督励あるいは監督、指導もしているようでありまするが、当時は半分以上も石炭鉱業に経験のある民間人を入れて、ひとつ本法施行によって、石炭の増産をやろうということであつたのでありまするが、その後御承知のような段階になつて参りまして、民間の優秀な職員も逐次それぞれ退官、退職しているという段階でございます。いたずらにこの期を暖めておく段階ではないのではないか、むしろこの際このひもを切つてやつて、十分努力し得るようにして行きたいというのがねらいでございます。ただ石炭鉱業の重要性から考えて、将来の問題につきましては、先ほど来申し述べましたように、あり方につきましていずれ構想がまとまりましたならば、またその際にあらためてお願い申し上げたい、かように考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/68
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069・中島征帆
○中島政府委員 石炭鉱業改善の拔本的な施策という点でございますが、これに関しましては、先般通商産業省に設置せられました産業合理化審議会の石炭部会におきまして、その全面的な方策について、目下鋭意研究を重ねております。その一つの大きな内容といたしまして、先ほど私がお話申し上げました設備の改善ないしは機械化による合理化という点が、最も大きな問題となつておりまするけれども、しかしそれ以外につきましても、適当なる合理化方法は十分これを検討の上で実施するように、この合理化審議会において遂行せられることとなろうと考えております。また鉱区の併合の問題でありまするが、これは当国会に提案を予定されておりまする鉱業法の改正の中におきまして、今般廃止になる臨時措置法の規定の趣旨を大体盛り込みました規定がございますので、その新鉱業法の成立のあかつきにおきましては、その運用によりまして、従来通りその目的を達することができると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/69
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070・有田喜一
○有田(喜)委員 先ほど神田委員から、相当労働能率も改善されて、一人当りの能率も上つている、こうおつしゃいましたが、まさにその通りであります。しかし私は單に労働能率ばかりではない、どうしても日本の石炭の価格という点からいうなれば、月一人当りの能率は、八トン余りくらいではいかない、十三トンないし十四トンくらいにならなければいけない、これは政府の方も肯定しているようであります。これは決してなお労働強化をやれとか何とかいうのではありません。御承知の通りアメリカにおきましても、イギリスにおきましても、労務費は生産費の六〇%ないし七〇%を占めております。わが国は戰前は三〇%でありましたが、最近は五五%、アメリカやイギリスに比べて、日本の労務費が別に高いわけではない。しかしながら石炭の炭価はこのように高い。そこでさっきの機械化とか、設備の合理化という問題が出て来たのでありまするが、單にそればかりでは、私はなかなか能率を十三トンないし十四トンまで持つて行くことはできないと思う。それでいろんな視野からこれを携討して拔本的な合理化をやるその一つとして、私は鉱区の統合問題も、その重要なる実際的の課題であると思う。今度は鉱業法を改正されて、そういうふうに持つて来るとおつしやいますが、もちろん鉱業法ができてやられることはけつこうであります。しかしそれは先のことであります。まだ提案になつていない。会期も迫つているから、はたしてそれが通るかどうか疑問だ。ところがこの法律においては、臨時措置法はもうやめられることになつている。そうすると私はそういうふうな合理化に対する、またその他石炭企業に対する、いわゆる基礎産業としてのかわるべき一つの法律体系ができる。そうして同時にこういうものを廃止される。そうされるのが私は最も至当な行き方だと思う。ところがそれを片づけるということになつておることは、私は非常に遺憾にたえない。そこで私は尋ねたいのでありますが、今日の石炭企業に対する、いわゆる経営の合理化の点から見て、資本的に一体どういうことになつておるか。私の記憶によれば、今までは減価償却ということが相当やられておつて、そうしてその償却資金によって、新しい企業権を獲得するとかいうように進んでおつたのだが、御承知の通りのインフレ経済によつて、減価償却が非常に不足しておる。そこへ持つて来て、今回の税法の改正によつて、いろいろ経費がかさんで来る。そうなつて来ると、炭価はますます上る。私は石炭企業というものを経営的に合理化し、資産的にも合理化して、炭価の上らないように、国際価格に負けないようにする、ここに非常にむずかしさがあると思う。ところがこのむずかしさを解決すべき一つの試案も政府は持ち合せておらない。今の話だけ聞いておると、非常に心もとない。それでもし本日御回答ができなければ他日でもけつこうですから、どうして日本の石炭企業を合理化して行くのだ、抽象的でなくて具体的に、しかもその企業を健全化して行くのだ、そうして日本の基礎産業としての石炭企業を守り拔くのだ、こういう確たる一つの政府の案を伺わないと、私は何だか今まで聞いておると、こんなことではたして日本の石炭企業はどうなるのだ。基礎産業としてその使命を遂行することができるのか非常に疑問に思う。これは單に石炭企業ばかりではない。石炭企業がそういうことになつて来るとわが国の産業は興らない。ことに先ほど言いましたように、二十四年度に石炭が多少余つたとかなんとかいうようなことは、一時的な現象である。政府のデフレ経済と、それから四千二百万トンという数字の誤つた計画をされておる結果にすぎない。その一時的の現象をもつて、この法律をたちどころに廃止してしまうということは、非常に危險である。これを廃止するのならば、それにかわるところの方途を政府は確信を持つて立てて、しかる上にこれを廃止しても、日本の産業機構の上から言つても、日本産業再建の上から言つても、大丈夫だということの御確信がなければ、われわれは簡單に賛成することはできない。しかも神田委員は、提案者でありますが、少くとも神田委員は相当の産業に対する経験者でありますから、こういうことに対するしつかりした信念―信念ばかりでなく、一つの具体的にお考えがあると思う。政府の答弁は今日できなければ明後日でもけつこうでありますが、神田委員から石炭企業に対する合理化並びに経営の健全化、あわせて炭価を上げないで、国際価格の水準まで持つて行くというようなお見通し、またそれに対する御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/70
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071・神田博
○神田委員 有田委員のわが国の炭価が国際水準に比べて非常に高い。そこで他産業も圧迫せられて、日本の経済再建がなかなか困難の様相を呈しておる。そこで石炭国管法を廃止するならば、まずひとつ炭価の合理化を考えるような案を持つて来なかつたならばいかぬじやないかというような御趣旨のように伺つたのでありますが、炭価が国際水準に比べて非常に妥当を欠いておるということにつきましては、私も同感でありまして、また遺憾に思つております。そこで炭価を合理的なところまで下げて行くということをいたしますには、いろいろの方法があるわけでありまして、なかなか一手で詰手だというような手は私はないと思う。先ほども今澄委員にお答したのでありますが、とにかく輸送費が非常に高くなつて、炭価に大きな影響を與えておることも事実であります。また電力費の問題も、これまた大きな影響を與えておる。さらにまた従業員の生活方面における物価の高いことが、賃金の面にも影響を及ぼしておりましようし、ことに機械化して出炭量を上げて行くということが大きな問題であります。たとえば今一年間一人当りの出炭量が九十四トンと言われておりますが、これを世界の水準に持つて行くには百七十トンくらいまで持つて行かなければならぬ。とにかく今は平均すると八トン弱になるのでありまして、最近の二月の出炭量から言うと八・二五トンということになるのでありますが、これを百七十トンまで上げるということになると、十四トン強くらいの出し方をしなければ、世界の水準並の出炭量にはならぬわけであります。そこでたとえばこれを急速にやるということになると、どういうことになるかと言えば、石炭の需要は、一体今のままでこれを行うことになれば、これは大きな人員整理問題がつきまとつて来ると思います。それからまた同時に資金資材の面におきましても、石炭鉱業のあの厖大な設備に合理化計画なり、あるいは機械化を全面的に行おうということは、これはなかなか一朝一夕にはできないことだと思う。私どもも乏しいながらも経済人の一人といたしまして、何か新しいシステムで工場を新設するということは、いとやすのでありますが、石炭企業の特質から言つて、一時に合理化して行くということはでき得ないことなので、またできるからやると言つても、それがはたしていいかどうかということは、私は問題になると思うのです。しかしながらそれならば今日の状態でどうかと言えば、先ほど来御心配されておるように、世界水準に比べて炭価が非常に高い。そこに日本の今の産業復興が遅れておる原因があるということでありまして、この辺の調和をどこに置くかということが大きな問題であろうと思う。これらの点につきましてどういう考えを持つておるかということでございました。たいへんいい機会を與えていただいたわけでありますが、これは一言にして申し上げますならば、先ほど申し上げましたように、一手で詰むような手はないのでありまして、資金の面におきましても今立てておるような資金方法でいいかどうかというようなことについても、これは問題があるわけでありますし、同時に輸送費のコストの引下げをやるとか、あるいは電力費の引下げをやるとかいうようなことも、今日の段階におきまして、はたしてそれができるか。たとえば電力費の問題等におきましては、むしろ将来上つても下らないという悪い條件にあることは、有田委員もお認めになつておるだろうと思う。むしろ電力費のごときは、上げないためにどれだけの努力をするかということが問題だろうと思う。それから輸送費の問題におきましても、これを下げるという問題は、これは当分望み得ないのじやないか、さようなことから考えますと、石炭鉱業の炭価の値下り、あるいは合理的炭価をいつ一体決定的なものにするかということは、私はやはり相当期間がかかるのじやないか、こういうふうに見ております。期間がかかりましても、これは原因がもうはつきりしておるわけでありますから、徐々ながらもう一手一手打つて行かなければならないというわけであります。しかしそれらの手がきまらないうちは、この国管法を廃止することは、どうも困るという意見にはならないのじやないか。廃止するものは廃止する。また新しい手を打つものは打つ、私どもの考えにおきましては、たんたんたる心境のもとに不要なものは廃止して行く、また必要なものはつくつて行く。そうして国民の遵法精神を高めながら、日本の民主化をはかつて生産の増強をして行けばいいじやないか、合理化を促進させて行けばいいじやないか、こういうような考えを持つております。さようなことを申し上げますと、それが自由放任じやないかということで、おしかりを先ほど来受けておるのでありますが、決してそれは放任をしておるのではないのでありまして、各産業間の摩擦があるということは見方でありまして、各産業間におきまして真劍に切磋琢磨して、合理化をねらつておる。こういうようにも考えておるわけでありまして、私の考えておりますことを申し上げて、答弁にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/71
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072・有田喜一
○有田(喜)委員 神田委員は私の言わんとするところを、少し聞き違えておられるように思うのでありますが、私が石炭企業の合理化ということを叫びますのは、今日の状況では、石炭企業としては、いわゆる收益という面からいつて成立つていない、十分じやない。石炭企業が合理化されて――、基礎産業でありますから、もちろん合理的な利潤が必要であります。正当な利潤のもとに動くということであれば、おのずから増産もできる。従つて石炭管理法というようなものが、それほど発動せぬでもいいことがあるかもしれない。ところが今申しますように、生産費的に見れぱ、石炭は十分採算が合わないところもあります。しかも増税その他によつて高くなる可能牲が相当ある。といつてそれが国際価格から見れば国際水準に追つつかない。そこで非常に大きな矛盾を来たしておる。私は石炭企業の安定するところまで、早く持つて行かなければならぬと思う。ところがそれに対する施策の見通しもつかないで、こういうものを廃止してしまうことは、さていよいよ基礎産業としての石炭が重要だ、もつと増産をしてもらわなければならぬという場合に行つたときに、自由放任にしておると、何と申しましても営利追求の事業者としては、採算の合わないものはやらない。こうなつて来て、わが国の産業全体を壊滅させる。あるいはこれを不振に陥れる危險が、非常にあることは私は懸念する。それでまず合理化に対する対策が十分に立ち、石炭管理法のようなものを廃止しても十分増産もでき、基礎産業としての使命も十分果せる。こういう見通しがつくならば、われわれもうなづけるのでありますが、そういう見通しが全然つかない。しかもこの管理法を廃止しても、それにかわるべきところの基礎産業としての一つの公企体に持つて行くならばいいが、その用意もない。それで私は提案者の心持がどこにあるか非常に懸念するのであります。提案者は自由放任にしておけば、自然に能率も上るとおつしやいますけれども、なかなかそういうものじやない。もちろん民間の企業者にまかせておいて能率の上る面もあります。まずそれを大いに発揮することが必要でありますが、しかし一面において、公益的な立場からこれに対する一つの制約を加える、これは当然のことである。政府も現に電気事業に対しても、ちやんとそういうことをやつておる。ガスに対してもそれをやつておる。この重要なる石炭に対して、そういう公益的な立場からの監督も何もやらない。そうして放つておくということで、はたして増産ができるかどうか懸念される。日本の現在は、石炭の三千七百トンそこらの産業規模では、繰返して言いますが、日本の経済は自立できないことは明らかである。増産増産といつて、石炭は五千万トンは必要である。こういうところまで持つて来ないと、ほんとうの日本の経済は成立たない。その意味から申しましても、私はこの廃止に非常に疑問を持つ、これは私の見解になりますから、これ以上お尋ねしても、あるいは同じことを繰返すようになるかもしれませんが、提案者も政府もよくお考えを願いたい。なお私は聞きたい点が多々ありますが、共産党の風早委員の番も来ておりますから、私はなお他日に質問を留保しまして、本日の質問はこの程度で打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/72
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073・風早八十二
○風早委員 ちよつと速記をとめて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/73
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074・小金義照
○小金委員長代理 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/74
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075・小金義照
○小金委員長代理 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/75
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076・風早八十二
○風早委員 今回神田委員ほか自由党の議員諸君の提案にかかりまするこの炭管法廃止の法案でありますが、これに対して先般来社会党並びに民主党の各位から、いろいろな御質疑があつたのであります。私はこれを承つておりまして、大体自由党が掲げておられますところの、いわゆる自由経済、これと社会党なり、民主党なりのかつての連合内閣の、いわゆる修正資本主義的な経済方針、この二つが火花を散らしておられるのを拜聴したわけです。しかしながらこれは、実は同じわくの中でのいろいろなやりとりであるような感じを私は受けるのです。そもそも石炭産業の再建という問題につきましては、本来二つの大きな方式があつたわけであります。石炭産業におきまして資本が集積集中せられ、これは戰前からすでにあつたところでありますが、いよいよ独占が支配して来る。そうなりまして石炭生産の発展というものと、いろいろな面から必然的に、根本的な矛盾を来たして参つたのであります。これを解決するために、ほかの重要産業におけると同様、必然的に問題は独占にある、われわれとしてはそう考える。独占の排除、過渡的には国営人民管理という問題が日程に上らざるを得ない、そういう客観的な條件となつておつたのであります。しかも戰後の日本の初期的な段階におきまして、石炭の独占資本の側で、意識的な生産サボタージュをやつた。これに対して労働組合による生産管理の萌芽がある。こういうふうな事実の上に、いよいよこれは主体的にも石炭の国営人民管理という問題が、具体的な日程に上つて参つたのであります。その後の実情を見ますと、巨大な独占資本、炭鉱資本そのものが自立ができない。これは決して中小炭鉱だけではない、巨大な炭鉱資本が自立ができない。みずから資本を集積、集中しながら自立ができないで、巨額な国家の補給金を仰ぐ。そのほかまた復興金融金庫をこしらえまして、そこからきわめて多額な融資を仰ぐ。これはほとんど無担保で、無償に近いものであると、われわれは考えておりますが、こういうような国家財政を荒す事態が、事実として生れて参つたわけであります。そうなると多少の中小炭鉱は言うまでもありません。また国家財政のことでありますから、その源泉は言うまでもなく国民の税金であります。この税金を吸い上げた国家財政を、非常に多額に食わなければやつて行かれない。それならばいつそのことこれは国家にまかした方がよろしい。こういう点から見ましても、国営という問題は当然客観的な條件として備わつて来ておつたわけであります。しかしながらもちろん、單なる国営と申しましても、今の官僚統制機構をそのままにしておきましては、国営ということは意味をなさないのであります。やはり労働組合やその他の民主的な組織、これらが相連合しまして、この石炭の生産に対する根本的な計画を立てる、そうしてこれに従つて運営をさせる、こういうふうないわゆる国営人民管理という問題が出て来るわけであります。私ども共産党としては、すでに法案としても、これは提出したわけでありますが、ほかのいろいろな重要産業に対して国営人民管理をやり、同時にこの石炭に対しましても、また別個に石炭産業の国営人民管理法案というものを出したことは、大体周知のことだろうと思うのであります。これはボツダム宣言の精神に基く財閥解体の根本方針で、結局は国営人民管理になることによつてのみ積極的な、建設的な意味を持つものと、われわれは確信いたしておつたのであります。これに対して、右翼独占資本は頑強に、反動的に抵抗いたしまして、依然として独占の支配を維持しようとする動きを示したのであります。これに対して社会党、民主党並びに国協党三派の――これは大体のところでありますが、石炭国家管理というきわめて妥協的な線を主張して参つたのであります。いろいろ妥協折衝の結果、社会、民主、国協の三派連立内閣のもとで、遂に現行法のような非常に中途半端な国営方式というものに帰着したことは、これまた周知のところであります。従つて戰後の石炭業再建の方式としましては、わが党並びに進歩的な労働組合の、いわゆる石炭産業の国営人民管理案というものと、自由党のいわゆる自由経済――その実は独占資本の維持の方式があるが、この二つは一方はきわめて社会主義的でありまして、他方は独占資本主義的であります。この二つの方式が基本的な事実として出て来ておつたわけであります。これに対して中間三派のいわゆる国家管理方式――事実これは官僚統制主義というものでありますが、これが資本主義的な修正資本主義の要請として出て来ておつたものということが言えると思うのであります。現行法の基礎になっております最後の方式というものは、自由党の自由主義経済、実際は手放しの独占資本でありますが、これに対して多少とも独占支配を抑制しようということを趣旨にしておつた、その限りでは了解ができるのであります。しかしその実際は官僚統制機構をそのままにしておいて、これをむしろ強化しながら、これによつて独占支配を抑制するというようなことは、最初からできない相談であります。言うまでもなく現在の権力の基礎というものは、独占資本にあるのでありまして、官僚統制機構は、要するに独占資本の支配にほかならないのでありますから、その官僚統制機構をもつて独占を抑止するというようなことは、まつたく見当違いでなければならなかつたのであります。現に実際の結果を見てみましても、この官僚統制機構というものは、要するに独占支配の手段となり、独占資本は官僚統制機構と結託して、あるいは直接国家財政を食いものにする。実際文字通り食いものにして参りました。この補給金の問題をとりましても、二十四年度だけでも三百六十五億円、 これは補給金総額二千二十二億円の実に一八%にも当るわけであります。あるいはまた復興金融金庫を通じて、ほとんど無担保で巨額の融資を受けておるというようなことは――これは特に三井鉱山、三菱鉱業に対しては実にひどいものでありますが、そうやつてますます官僚統制機構そのものが、石炭独占資本の強化に役立つただけであると考えるのであります。反面国家統制機構を支配していない、また結びつきがない中小の炭鉱というものは、直接財政的な恩恵にもあずからない、復金融資の恩恵にもあずからない。競争関係から申しましても、ますます不利益な條件に追い込まれ、没落の一途をたどるのみであります。この独占というものが、現段階におきましては権力の実体であるのでありまして、従つて独占というものを廃止するという問題は、権力の問題なのであります。ほんとうに独占を廃止するというためには、やはり今の炭管法ではだめです。そのことはわれわれも十分認める。その点から炭管法に対して一向われわれは賛意を表していなかつた。もちろん人民の権力というものを打ち立てる必要があるのであります。
大体この問題は皆さん方もよく聞いていただきたいのでありますけれども、問題の根本点というものは一体どこにあるか、これを考えておかなければ、ああだ、こうだと言つてみたところでしようがない。われわれは逐一生産から合理化の面まで、突き上げて行きたいと思いますけれども、先ほどからも、これは根本の方式において見解の相違であるということを、神田委員はしばしば今澄委員なり有田委員なりに対して答えておりますが、その見解というものについて、お互いの論拠を明らかにしておかなければ、これはほんとうの理論にならないと考えて、申しておる次第であります。大体この段階におきまして、独占化されておらない中小炭鉱資本に対しては、平均的な利潤を十分に許して、営業の自由を保障し、これに資金資材等の配分を行い、また進んで協同経営化の方向へ持つて行き、技術の向上、生産能率の増進をはかるということを、われわれはかねがね主張しておつたわけであります。しかし今日、いよいよこの国営臨時措置法がとにかく一定の成果をあげまして、今ここでいよいよ自由党の手によつて、これが廃棄せられるという今日の段階におきまして、問題のやはり根本点に一つの新しく加わつたものがあるのではないかと私は考える。つまり神田委員がいわゆる現下の経済情勢にかんがみてと言われる、その現下の経済情勢、これは明らかにあの当時とは違つて参つております。この点を私どもは十分に神田委員からは直接な形では御答弁を得ておらなかつたわけでありますけれども、この経済情勢の推移というものは、どういう点に根本の特徴があるかということを、やつぱりはつきりさして行く必要があると考えるのでありまして、これはこれから一つ一つの質問に結びつけてお尋ねしてみたいと思います。
そこで第二に私がお尋ねしたいことは、この生産の面でありますが、大体政府は今まで公団を通じ、そうしてあの法律を大体使われて、これで統制という形でやつて来ておられたのでありますが、その場合、その趣旨は今回の法案の提案の理由の中にも触れてありますように、一つは安定ということ、一つは増産であります。安定ということについてはこれは一応預つておきます。この増産の点でありますが、増産というものが、一応その目的を達したと言われておる、この点ではなはだ問題の本質をそらしておられる御説明であると、私どもは考えざるを得ないのであります。これは日本の産業をどういう生産数字、経済規模をどういうところに置いて行くかという問題を、はつきり考えを立てていただいて、もう四千万トン以上にいらないというのであるならば、われわれとしてもそれを伺つて上で、話になると思うのでありますが、そういうことがちつともあらかじめ前提になつておらないで、ただ何がなしに、もう増産の目的は一応達したと、こう言われる。この点について、実際はこれは増産の目的を達したという問題ではなくして、今や過剰生産恐慌という間題が、嚴然たる事実として来ておるという、この点をもしも見逃されるならばまた、この点を隠されるならば、実際この問題は解決しないと考えるのであります。まず二十四年度の生産計画は四千二百万トンであつた。しかしこれはすでに厖大な滞貨も出ております。すでに二十五年度では四千万トンに減しておる。こういうところを見ましても、大体二十四年度四十二百万トンというのは一つのピークでありまして、もう事実四千二百万トンの中にも、多大の滞貨その他の矛盾を含んでおつたのでありますけれども、こういう生産というものが、どうして今増産をする必要がなくなつたのか、増産することができなくなつたのか、その点をひとつはつきりしていただきたいと思います。その過剰生産であるという点につきまして、私はあえて過剰生産恐慌であると言つたのでありますが、その点について提案者としてはどういう御所見であるか、まずその点からお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/76
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077・神田博
○神田委員 風早委員から久しぶりに大学の講義を聞くような感じを與えていただきまして、若返つたような気持がいたしました。どういうお答えを申し上げたらよろしいかと思つて、実は拜聴いたしておりましたが、現在の出炭量、昨年の実績は政府の表によりますと三千七百二十九万四千トンというような数字に相なつておりまして、年度末の貯炭が四百二十四万七千トンある。そこで過剰生産と見るか見ないかというようなお尋ねのようでございましたが、私はまだ過剰生産であるとも考えておりません。同時にまた他の一般産業につきまして過剰生産の恐慌というふうに見ているかという御意見もありましたが、一般的なお答えといたしましては、さように見ておりません。その他お尋ねがあつたのかどうか、ちよつと記憶漏れいたしておりますので、落ちておりましたら、またお尋ねがありましたら、お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/77
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078・風早八十二
○風早委員 確かに今神田委員が言われましたように、過剰生産ということは一概には言われないわけです。もちろんこれは石炭をかりに高品位炭、低品位炭にわければ、高品位炭の面では過剰生産と言えるどころか、ますますこれから増産しなければならないという実情にあると思うのです。そういう高品位炭だけをごらんになつていれぱ、神田委員としてはあるいは一向受取れないと言われるのも、それはごむりなかろうと思う。そこで高級炭そのものは、事実今決して十分ではないと思う。これの需要はあるが、ただその価格その他のために事実需要があつても、なかなか、これがうまく行かないというわけでありますが、この高品位炭の増産確保の方法としては、一体どういうことを考えておられるか、この点をひとつ御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/78
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079・神田博
○神田委員 お答え申し上げますが、高品位炭の出まわりが需要を下まわつておつて、値段が騰貴しているということも事実でございまして、高品位炭をどういうふうにして増産するかというような意味の尋ねのようでありましたが、御承知のように今要求されてます高品位炭というものは、日本の石炭の賦存状態から行きまして、そうたくさんあるわけではないのでありまして、戰前におきましても海外よりこれを仰いでおつた。そこで海外から入つて参りますのが、貿易再開以来日が浅いために、十分これが入つて来ておらない。そこでさらに内地の高品位炭を逼迫させておるというのが現状でありまして、われわれといたしましては、できるだけ商品位炭を輸入させなければならない。さらにまた国内の高品位炭の増産も行わなければならない、両面政策で解決すべきものだ、こういうふうに考えております。しからばいかにして国内炭を増産するか、あるいは輸入炭を入れるかというようなことに相なろうかと思いますが、輪入炭の問題につきましては、海外より仰ぐわけでありまして、相手のあることでありますが、貿易勘定によつて、これを入れるという面に努力する。国内炭におきましては、御承知のように製鉄業の急速な再開等によりまして、そういつた現象が出て参つたのでありますが、今後資材の面等におきましては、大体これは政府がめんどうを見なくても、資金の面をめんどうを見ればほとんど自由に、入つて来る筋のものでございますから、資金の面等におきまして、十分勘案いたしまして、できるだけ国内増産を急速にしたい。ただ御承知のように石炭事情は、そう一挙に増産ができるというような條件にはなつておりませんので、増産を完遂するには若干の日が必要である。それらは輸入炭によつて補つて行く、こういうふうなことが、ただいま考えられておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/79
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080・風早八十二
○風早委員 どうもはなはだ雲をつかむようでありまして、それでは御答弁として、はなはだ受取りがたいのでありますが、そのうち一つだけとりまして、それではこの高品位炭の輸入計画については、どういう見通しを持つておられますか、輪入計画そのものをお尋ねします。かつその実現の見通しについても、われわれは確固たる確信を一応持ちたいと思います。その点は政府委員からでもけつこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/80
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081・神田博
○神田委員 輸入炭の計画はどういうふうになつておるかということでありましたが、大体七十万トンほど入れたい。そこでどこの炭を入れるかということでございますが、これは風早さんお好みの開らん炭を入れる。こういうふうな構想であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/81
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082・風早八十二
○風早委員 構想はまことにけつこうでありますが、そうやすやすと問屋はおろさない。そこに行くのにはたくさん問題が未解決でありまして、御承知の通りそう簡單に行かないのであります。もう少し全体として、開らん炭はただ構想だと言われるだけでなく、実際問題として今これからただちに鉄鋼なりあるいは火力発電なり――特に鉄鋼につきましては、実際にどういうふうにやつて行くか、これらの点は重大な実際問題でありますから、開らん炭をただ入れたいと言われるだけでは、われわれ見通しとは受け取れないのでありますが、政府委員からでもけつこうでありますから、もう少し輸入計輸の石炭についての全貌を明らかにし、かつその確信のある見通しを、どのところまでは大体よかろう、どういう準備でやる、及びその入つて来る場合の値段、またその値段と国内の値段との関係、それらについて、若干お尋ねしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/82
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083・神田博
○神田委員 詳細なことは政府委員から答弁があると思いますが、私からちよつと簡單に申し上げたいと思います。開らん炭の輪入については非常に困難があるだろう。そうやすやすとは入らない。おそらく風早さんの方が詳しいのではないかと思つて、この点は私も大いに風早さんの言われたことを、そのまま受取つておるような次第でございます。政府側からこれは答弁していただくことにいたします。
ただ私が申し上げたいことは、国管法を廃止しないということによつて、高品位炭がたくさん出る。廃止によつて出ないというようなものではないということだけを、お答えしておきたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/83
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084・中島征帆
○中島政府委員 輪入炭の計画は、輪出国の方の事情がはつきりこちらで予定できませんので、明確な計画は今出ておりませんが、主として問題になります製鉄原料炭については、現在はもつぱらアメリカ方面から入れておりましたが、昨年の末以来開らん炭が非常に入り出しまして、今日まで約五万トン余り入つております。現在話の出ておりますのは、まだ確定的なことは申されませんけれども、およそ本年中に、七十万トンくらいは、先方としても輪出したいというふうな申出もあります。また日本といたしましても、大体本年の鉄鋼生産計画に対しましては、少くとも七十万トン程度の輸入は必要だと考えておるのであります。もしこの開らん炭の輪入が予期通り参りません場合には、それはまた従来のごとくアメリカ炭に仰ぐなり、あるいはさらに多少の引合いもありますインドその他からの輪入ということも考えられるのでありますが、これは相手のあることでありますので、計画的な数字というものは、現在のところできておりません。なお開らん炭の輪入価格に関しまして、目下輪入しておりますものは、十一ドル四十五セントでございまして、これは三百六十円で換算いたしますと四千百円余りになるのでございます。大体これに該当する国内炭が五千円余りしております。それで一千円ほどの値開きがありまして、それだけ輸入炭というものは価格が安い。こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/84
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085・風早八十二
○風早委員 この価格の問題は、後にまた詳細にお尋ねしたいと思いますから、一応それでその点はあとまわしにしておきますけれども、あともう一点だけ質問いたしたいと思います。それは何といつても大手筋十九社以外の中小炭鉱、特に地域的にも常磐、宇部といつたような方面のところでは、非常な問題を持つておるのでございまして、何といつても高品位炭のみが特に需要があるというような、また値段もよろしいというようなわけでありまして、今競つて高品位炭に移ろうと、あらゆる努力をしておるわけでありますが、そのためには非常なまた犠牲を拂つております。これは常磐のある社でありますけれども、九月以前に三千八百カロリー、塊炭、粉炭の割含が五十対五十であつたものが、四千百カロリーに引上げられた。この両者の割合を四十五対五十五とすることによりまして、歩どまりが一〇〇から七〇%に下つた。また別の社では、今まで塊炭が五千二百カロリー、粉炭が四千五百カロリー、この両者の割合が三対七であつたものが、今度は塊炭は五千二百で、粉炭を四千六百にして、わずかでもカロリーを上げる。その塊炭、粉炭の割合を四対六に引上げることによりまして、歩どまりが八〇%から今度は六五%に下つた。こういうわけで非常な量の面で犠牲を拂つておるわけであります。こういったような下級炭の炭鉱、あるいは炭鉱業者に対する問題を、一体今回の提案者はどういうふうに処置せられようと考えておられるか。この点は重大な社会問題にもなつておるわけでありますから、ひとつ懇切にその抱負を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/85
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086・神田博
○神田委員 配炭公団廃止に伴いまして、価格政策も廃止する。そこで炭価が低品位炭については、非常に下つたために、カロリーを上げなければならない。そのために歩どまりが非常に惡くなつた。言いかえれば、低品位炭を経営しているものは中小の鉱山が非常に多いのであって、これらの鉱山が特に打撃を受けた。そこで、これらについてはどういうふうに考えておるかというような御趣旨のお尋ねのようでございますが、御承知のように、配炭公団を廃止して一手買取り販売、あるいは一連の物価政策も、逐次マル公を廃止して行きたい。そこで配炭公団の廃止とともに石炭の価格統制も廃止して、炭価を市場の決定にゆだねた。それでいろいろの値下りが来ておる、打撃を受けておる、これをどう考えておるかということでございますが、配炭公団を廃止する、また価格統制をはずすという際におきましては、それらの現象が起り得ることも相当考えておりました。それらの現象が起らなかったならば、石炭の自立企業が真に確立して行かないということも一つの考えでございまして、それによつて生じた弱小炭鉱を政府といたしましてどういうふうに見て行くか、ちよつと手をかければ経営が合理化されて、そうして十分市場で採算し得るような立場に立つて行くのだ、そのものまでも殺さないようにしたいというのが、当時の公団廃止、マル公廃止の際のわれわれのおもんぱかりであつたのでありますが、昨日来、今澄委員からいろいろの御質問もございまして、十分手を打つことができなくて、大分休山をしたというふうにも承知しておるのであります。しかしこれらの犠牲によつて日本の一般産業の方面におきまして、あるいはまた日本の経済が正常に踏み出すことができ得たということにも相なるわけでございまして、今後のわれわれの施策といたしましては、企業が不健全なものは、やむを得ないのでありますが、ある程度の援助をする。そこで合理化が促進され、それが苦難の中でも先に明るみを持つているというような施策を講じたいというのが、われわれの考え方でございます。十分手を盡し得なかつた点につきましては、まことに遺憾でございますが、今後もさらに努力いたしまして、これらの問題を解決して参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/86
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087・風早八十二
○風早委員 神田委員は神田大蔵大臣とは違いますから、この中小に対する御見解もおのずから違うだろうと、われわれも期待しますが、今の御答弁では、ただ努力したいと言われますが、具体的に、結局中小の不健全なものはつぶれる。ところが不健全なものでも健全なものになろうとしてあらゆる努力をしておる。これをどういうふうに持つて行つて、実際に使い物になる高品位炭に向けて行くか、これは炭質の問題だけを言つておるわけではありませんで、全体の経営の問題でありますけれども、それらについて、もう少し具体的な方策は――これは持つておられるだろうと思いますが、また後ほどお答えくださいますか。それとも今お答えくださいますか。これは全体を通じる一つの問題になるわけでありまして、決してただ單にこの生産の面だけの問題ではありません。価格の面でも、その他融資の面でも、あらゆる面に通じている問題であります。大体いつも高品位炭層を、いわぱ独占しておる大手筋というものと、大ざつぱでありますけれども、わけてみれば、そちらの方にだけどうも目が向いておられるように、前々からの御答弁で印象を受けるのでありますが、その点はもう少し納得の行く中小炭鉱対策というものをお待合せならば、この際お知らせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/87
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088・神田博
○神田委員 中小企業、ことに炭鉱業者の苦痛、困難というものにつきましては、風早委員のごらんになつているごとと、われわれの見ておりますことと一致しておることと考えております。これはもう放任し得ない段階である。そこで、しからばどういうような具体的方策を持つておるかというお尋ねでございます。まあいろいろな面があるわけでありますが、とにかくとりあえず金融の面をひとつ強力に推進したい。さらにこの金融の問題だけでは解決しない点もあるわけでありまして、共同経営の面にこれを指導するとか、あるいはまた共同作業場の方面にこれを指導するとか、いろいろあるわけでありますが、しかしいずれにいたしましても、金が先だつわけであります。また業者が共同でやるという。一つのつながり、団結力にもよることでございまして、幸いその共同でやろうということについては、こういつた現下の非常に苦難の中でありますので、同艱共苦の間柄でありますから、大分うまく行きつつあるようにも承知しております。
金融の問題は、実は昨日も党本部の政調室に、中小炭鉱業者の集まりがございまして、各関係業者、また金融業者、さらに通産、大蔵両省の金融関係の局課長等にもお集まり願いまして、何とかしてひとつつながりをつけたい。そこを足場をとしてもう一ぺんがんばつていただきたい。こういうようなわけでございまして、きのうもやつたのでございます。それではどのくらい資金の融通の話がついたかといいますと、まだはつきりはいたしませんが、とにとかく幾多の手を打ちまして、これらの中小企業の育成をして行きたい。こういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/88
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089・風早八十二
○風早委員 今もお答えの中にありましたように、この問題は大体価格や融資の面に特につながつて参りますし、また輸入炭の問題にも結局つながつて参るのであります。これからその一つ一つについて質問をし、また最後にもう一度質問を繰返したいと思いますが、時間も大分経過いたしましたから、きようのところは大体承りおくことにいたしまして、次会にぜひとも継続質問を留保するというととで、今日は打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/89
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090・小金義照
○小金委員長代理 それでは時間も大分経過いたしておりますので、本日はこの程度にとどめまして、残余の質疑は次会に譲ることにいたします。次会は明後二十四日午前十時より開会いたします。法案も大分付託されておりますので、二十四日はなるべく定刻から開会いたしたいと思います。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時十一分散会
発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704793X03419500422/90
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