1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十六日(木曜日)
午後四時三十二分開議
出席委員
委員長 鈴木 明良君
理事 江花 靜君 理事 小川原政信君
理事 船田 享二君
井上 知治君 坂本 實君
佐藤 榮作君 田中 萬逸君
根本龍太郎君 松澤 兼人君
米窪 滿亮君
出席国務大臣
国 務 大 臣 本多 市郎君
出席政府委員
大蔵事務官
(国税庁総務部
長) 正示哲次郎君
厚生事務官
(引揚援護庁援
護局長) 田邊 繁雄君
海上保安庁長官 大久保武雄君
経済調査官
(中央経済調査
庁監査部長) 木村 武君
経済調査官
(中央経済調査
庁査察部長) 吉田 龍雄君
経済調査官
(中央経済調査
庁物資調査部
長) 司波 實君
委員外の出席者
議 員 受田 新吉君
專 門 員 龜卦川 浩君
專 門 員 小關 紹夫君
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四月二十五日
委員池田正之輔君、岡田五郎君、佐々木盛雄君、首藤新八君、田中伊三次君及び渡邊良夫君辞任
につき、その補欠として坪川信三君、奈良治二
君、水田三喜男君、佐藤榮作君、井上知治君及
び坂本實君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十六日
委員鈴木義男君及び松岡駒吉君辞任につき、そ
の補欠として米窪滿亮君及び松澤兼人君が議長
の指名で委員に選任された。
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四月二十五日
行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一八二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
海上保安庁法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一六六号)
経済調査庁法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一六七号)
大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
出第一七六号)
引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法
律案(受田新吉君提出、衆法二〇号)
行政機関職員定員法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一八二号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/0
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001・鈴木明良
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
本日はまず昨日本委員会に付託されました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたし、政府より提案理由の説明を求めます。国務大臣本多市郎君。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/1
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002・本多市郎
○本多國務大臣 ただいま議題になりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の提案理由について御説明いたします。
今回提案いたしました定員法の一部を改正する案は、経済統制の廃止、事務の地方委讓等に伴う定員の縮減を行います一方、電信電活業務、国立医療機関等の必要やむを得ないものについて、最小限度の増員を認めることにより、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものでありまして、その内容は大要次の四点に要約されるのであります。
第一に、総定員においては、八十七万三千二百三十七人が八十七万一千二百七十二人となり、差引き一千九百六十五人の減となつております。これを省別に見ますと、農林、通産、運輸、建設、郵政、安本等、主として経済関係の各省におきまして、合計一万一千四百八十二人を減ずる一方、総理府、法務府、大蔵、文部、厚生、電通、労働の各省におきまして、計九千五百十七人を増加することとなつております。またこれを事項別に見ますと、まず減のおもなものといたしましては、経済統制関係一万一千三十四人、府県委讓四千二百五十三人、引揚援護事務関係二千三百七十五人等があり、増のおもなものといたしましては、電気通信施設の拡充によるもの四千四百四十五人、国立結核療養所の職員三千四百十三人、国立学校職員三百九十一人、国税庁職員一千一百人、職業安定所職員七百三十三人等があるのでありまして、行政目的の転換がはつきりと示されているのであります。なお今回の数字をさきに成立を見ました昭和二十五年度予算に見積られた人員に比べますと、一万五百七十七人の減となつているのであります。
第二には、電気通信省の本省の定員につきまして、引揚援護省の場合と同様、電気通信業務の状況によつて特に必要ある場合には、予算の定める範囲内において政令をもつてこれを増加することができることとした点であります。電気通信事業はその性質上必ずしも他の政府諸機関の場合と同様にその職員数を嚴格に固定しておく必要がなく、ある場合には施設を増強し、職員数を増することによつて、かえつて收益を増大することもあり得ますので、この種の便宜的措置を認めることが適当と考えられるのであります。
第三に、一般行政機関職員を縮減するほかに、さらに終戰処理事業費、特殊財産処理附帶事務費等の支弁にかかる職員につきましても、その数を現行の五千四百六人から二千三百九十二人に縮減することといたしました。
第四は、定員減少に伴う措置といたしましては、まず一律に三箇月の猶予期間を設け、六月三十日までは新定員を越える員数の職員を定員のほかに置くことができることといたしました。さらに統制関係等の人員につきましては、統制解除の時期等に既応して、六月末のほかに九月末、十二月末の、合計三段階を設けて、行政事務の量の漸減に比例して定員を縮小するようにいたしました。また今回の定員減少に伴い退職する者につきましては、先般の行政整理の際と同様、国家公務員法のいわゆるアツピール制度を適用しないことといたしました。これは今回の場合におきましても、相当数の人員が退職することになりますので、この制度を適用することが実際に即しないためであります。なおこの点については、地方自治法附則第八條に規定する職員として、都道府県に勤務している物資統制関係の職員につきましても、同様に取扱うことといたしております。
以上が本改正法案の主要な内容でありますが、これらはいずれも昭和二十五年度均衡予算の実行を確保するとともに、行政機関の規模の適用化をはかるため必要な措置であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/2
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003・鈴木明良
○鈴木委員長 これにて政府の提案理由の説明は終了いたしました。御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、次に受田新吉君提案の引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/3
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004・小川原政信
○小川原委員 この問題には直接関係はありませんけれども、関連いたしましてお尋ねしたいことは、この引揚者が日々の新聞に非常に問題になつておりますし、またわれわれ民族としましても非常な関心を持つておる次第でありまして、これがどういうことが正確であるのか、はつきりしたことが十分わからないのであります。そこで政府として今やつておられます上から考えまして、こういう点が正確であるというお見通しのついている点をお話願いたいのであります。その一例として申し上げますと、三十万人帰らないとか何とかいうことになつておるようでありますが、それが千島の方に、あるいはカムチヤツカの方には、こういう者がおつたとかいうようなことも、新聞に漏れているような次第でもありますし、国民としてこのくらい大きな関心を持つている問題はないのでありますから、政府はこの際この委員会におきまして、これは何も機構に関係のある問題ではありませんけれども、一応正確なことを、詳細にわたつて言うわけには行きますまいけれども、はつきりしている点をここでお聞かせ願いたい、この思つて質問する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/4
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005・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 お答えいたします。政府におきましては、在外邦人の残留の調査につきましては、従来とも鋭意調査を続けております。今後も続けて行く方針でありますが、私の方は引揚者の援護を主管しているところでありまして、そういつた方面は主として外務省等を中心として調査しておりますので、私詳細なことを存じませんから、本日は答弁を差控えたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/5
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006・小川原政信
○小川原委員 何かわかつている点はないのですか。援護の方の関係の方だからわからぬということであれば、これはしようがないが。……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/6
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007・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 私の方は引揚者の応急援護及び帰つてからの定着援護を主として主管しております。従いまして、そういつた御質問のような点は、実は私の方の責任ではありませんので、主として外務省でやつておりますので、そちらの方から詳細お答えになる方が適当ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/7
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008・鈴木明良
○鈴木委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑がなければこの際討論を省略して、ただちに採決いたしたいと存じますが御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/8
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009・鈴木明良
○鈴木委員長 御異議がなければ、これより採決に入ります。本案に賛成の方の起立を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/9
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010・鈴木明良
○鈴木委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
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011・鈴木明良
○鈴木委員長 次に大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/11
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012・江花靜
○江花委員 政府委員の方にお伺いしますが、頂載いたしました大蔵省設置法の一部を改正する法案でありますが、この第三十三條の三の6に、「第一項から第四項までの規定は、第一項に掲げる犯罪を積極的に捜査すべき司法警察職員の責務を軽減するものではない。」この條項についてちよつと御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/12
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013・正示哲次郎
○正示政府委員 ただいま江花委員の御指摘になつた点でございますが、これは今回国税庁の監察官が、刑事訴訟法上の任意捜査の権限を持つことに相なるのでございますが、その趣旨につきましては、前回にもすでに御説明申した通りであります。しかしながらこの国税庁監察官が新しく任意捜査の権限を持ちましても、本来犯罪捜査の責任を持つております司法警察官、これが一般犯罪捜査と同様に、国税庁の職員につきましても、積極的に捜査をすることに何らかわりはない、これは当然のことでございますが、いわば注意的にさような趣旨をここに規定いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/13
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014・江花靜
○江花委員 そういたしますと、つまり今度監察官に司法警察官を付與したい、こういう趣旨は、この犯罪捜査ということに、自分の所属する職員の犯罪についても自主的に、いわば民主的に犯罪捜査を行いたい、何といいますか、官庁組織の上から言つて、同じ系列の中にある職員に対して、つまり官庁全体として見れば、自主的に、民主的におやりになるというような御趣旨かどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/14
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015・正示哲次郎
○正示政府委員 今回新しく規定を設けました趣旨につきましての御質問でありますが、ただいま江花委員のおつしやられました通り、今日税務の執行の全般につきまして、対納税者の関係におきましても、諸般の制度なりその運営の方法は、民主的になつておることは御承知の通りであります。また官庁の内部組織につきましてもかつての封建的な官庁組織ではないのでありまして、今日新しく官庁組織は画期的に民主化されておることは御承知の通りでございます。なおまた今回新税制の施行等にあたりまして、税務職員の心構えと申しましようか、一般的な納税者に対する態度、並びに内部における執務態度等が大いに民主化されなければならぬのでございます。かような意味から申しましても、今回御審議をお願いいたしておりますように、税務の実情に通じました部内の監察官が、いわゆる司法警察職員の強制捜査権を行使しての捜査をまつ段階に至らないような事柄につきましても、いわゆる自粛自戒の実を上げて参るというような意味におきまして、部内の監察につきましては、これはすでに従来もやつておることであるのでありますが、今回御審議をお願いいたしておりますこの法律によりまして、任意捜査の明確な権限を持ちながら、これをやつて参るということは、これはただいま申し上げましたような対納税者の関係、また部内の秩庁の関係から申しましても、非常にいいことではないか、かよう考えておるのであります。御指摘の通り全般的に民主化された今回の制度の運営に資する上におきましても、今回の新しい権限を付與していただくということは、将来非常に有益ではないか、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/15
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016・江花靜
○江花委員 今の私のお尋ねに対しまして、非常に顔を立てていただいたようなかつこうでありますが、これはおそらく部内の職員の犯罪に対する捜査を民主化する、自主性を持つという意味ももちろんありましようけれども、最近税法は——元からそうでありますが、税法並びに徴税というものが非常に高度の技術を要する。そこで一般の司法警察官にそれを期待する——それを熟知しておつて捜査するということを期待することが困難であるからして、やはり同じ部内で税法の法規を專門に研究したり、あるいは多年の経験を持つた者をここに活用したいということの方が重点であろうというふうに私は考えております。ただしからば、その点は非常に捜査の技術的な面について妥当を期するということは期待できると思いますが、反面におきまして、従来の司法捜査というような観点から申しますと、いささか独立性ということが欠けておる。同じ部内にあつて朝晩顔を合している人で、同じ系統内にある職員をお互い同士の立場でこれをいわゆる捜査する。こういうようなことは、従来はあまり本筋のものとは観念されておらない。さればこそこの案にも、第三十三條の二の3には、「国税庁監察官は、第一項の規定による職務以外の職務を行つてはならない。」ということは、いささかそこにその仕事をやりつつ、そういう事項についての捜査をやるということの妥当でないことを明記しておる。はたしてしからば、こういうふうにいわゆる同じ穴のむじなと言つては失礼でありますが、但し捜査の技術の面では救われるかもしれぬが、かえつてまたあまり技術を知つておつては、政治と行政事務との問題のごとく、あまり行政事務のエスパートの人では政治ができないという面があるがごとく、かえつて困りやしないか。その点に関しては現在の司法警察官で技術のまずい点を補つて、現在の司法警察官にそれを期待することができないのかどうか、こういうことに非常な疑問を持つておる。これはおそらく立案者のお考えになつたことではあるまいが、どうも警察官に乗り込まれてちやかちやかいじくられるのはしやくにさわる。われわれ同士でやろうじやないかというようなお考えであれば、これはまたさらに一考を要することであるが、よもやこういうことはお考えでありますまい。ありますまいけれども、そういう点でいろいろ問題の点があります。独立性を保とうとすれば、技術の点で具体的にどうも知識があまり持つていない。そのために非常に捜査が行き過ぎたり、とんでもない方向に行つたりするおそれがある。しかし反面また捜査の独立性、こういうことからいえば、非常に妥協的な、安易な解決をする向きもある。こういうことになる。今まで持つて来られた権限であるならば、私どもこれを剥奪することは、いわゆる何というか——そういう官庁部内の明朗化をはかるというような意味では考えませんけれども、新しく設けるならばかれこれの利害得失を考えて、そうしてもう少しおおらかな気持になれないか。こういうことを私は考えるわけです。この点についてのひとつ立案に当られた政府委員の御説明をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/16
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017・正示哲次郎
○正示政府委員 お答えいたします。江花委員は実は非常に実情はお詳しくいらつしやるのでありまして、すつかり御承知のことなんでありますが、いわば本日は私は勉強さしていただくような意味でいろいろ御指摘でございます。まず第一点でございますが、税務の行政が非常に專門的、技術的である。そのためにたとえば公金費消の問題、あるいは牧賄等の問題につきまして、きわめて技術的な專門的な知識がいるということはおつしやる通りでございまして、まさにそのゆえにこそ、監察官にある程度司法警察職員の権限を與えまして、監察官が部内の監察において牧集いたしました証拠を、司法警察職員が将来これを告発するとか、あるいはさらに強制捜査に移るような段階におきまして、一つの証拠としてこれを保全いたして参る。こういうことになつて参るのでありまして、すなわち従来司法警察官の職権を全然持つておりません監察官の牧集した証拠は、これは証拠力を持たないのでございますけれども、この法律によりまして任意捜査の権限を持つことになりますと、その限度におきまして一つの証拠力を持つて来る。これが今回の法律のねらいでございます。従いましてお話の通りに、税務という一つの特殊な專門的な行政分野につきまして、それらの技術及び專門的な分野に精通しておりますところの監察官がまずもつて一つの最初の段階の捜査にあたりまして、それによつて証拠を牧集する。こういうような立案の根本の趣旨になつておりますことは、御指摘の通りでございまして、なお第二といたしまして、さような場合にいわゆる捜査の独立性というふうなことといかに調和して参るかという点でございますが、この点にきつましては、二つにわけて考えておるのでございます。すなわち監察官として任意捜査の権限でございまするが、いやしくも任意捜査と申しましても、捜査でございます以上、この監察官にある程度の独立性を持たせたい。かような考えを持つておりますことは、ただいま御指摘の第三十三條二の3号の「国税庁監察官は、第一項の規定による職務以外の職務を行つてはならない。」これまた一つのそのための規定でございますと同時に、現在監察官が国税庁長官に所属しておりまして、各国税局において執務いたしております場合においても、いわゆる国税局に派遣をされておる、かような形になつておるのでございます。すなわち現に東京国税局あるいは関東信越国税局に国税庁の監察官が派遣されておるのでございますが、かような場合におきましても、当該国税局長からは何ら掣肘を受けてない。直接国税庁長官に身分的にも所属し、職務上一切の指揮は長官から受ける。かような独立性を持つておるのであります。第二に本来の司法警察職員の捜査の独立性の問題については、先ほど江花委員から御指摘の第三十三條の三の6号、ここに先ほど御指摘のような明文を掲げまして、これによつて国税庁監察官が任意捜査の権限を持ちましても、本来の司法警察職員を制限するものではない。これを半面から申しますならば、司法捜査権というものは、これは今回の制度とは無関係に本来の独立性を持つて行使されるものであるということを明記されておる次第であります。さような趣旨で立案されておりまするし、ただいま御注意にもありましたように、この制度を運用して行く運営の仕方いかんによりましては、いわゆる臭いものにふたをするような弊害があるのではないかという御心配、まことにごもつともなのでありまして、実はこの法案を立案する過程におきまして、大蔵省の内部におきましても、さような面から相当愼重に審議をいたしたのであります。しかし今日この日本経済の安定という大事業を推進して行く上におきまして、税務に課せられましたまことに重大な職責を果して行く根本は、何といたしましても税務に携わる職員の素質を向上いたしまして、負荷されました非常に重大な責務をなるべく正しく円滑に遂行して行くことにあると考えておるのであります。さような趣旨から、この際、当初におきましては多少ただいま申し上げましたような運営上弊害もあるのではないかというふうな多少の懸念もございますが、われわれといたしましては、あらゆる手段を講じまして、部内の自粛自戒の実を上げまして、納税者の方々に対する本来のわれわれサーバントとしての職責を全うして行くように、まず部内におきまして、最善を盡して行きたい。一方におきましては、積極的に職員の素質の向上のための教育訓練の施設を拡充して行くような策も講じておりまするが、同時に不正行為というような非行事件というふうなものを絶滅して行くために、まず部内におきまして、監察上必要な最少限度の権限を確保することによりまして、納税者の方々の御期待に沿いたい。かような気持から立案されておる点を何とぞ御了承いただきたいと思うのであります。御参考までに申し上げますと、米国のインターナル・レビニユーの問題をこの機会に申し上げることは多少どうかと思いますが、すでに御承知と存じますが、向うにおきましては、やはり先ほど江花委員の御指摘のような歳入徴收ということは、特殊な技術的な、專門的な事柄であるという意味におきまして、歳入徴收の事務に当る者につきましては、もつぱら大蔵省直属の監察官が調査をいたし、捜査をいたすという制度が優先的に行われておるということをこの際あわせて申し上げまして、御審議の御参考に資したい。かように存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/17
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018・江花靜
○江花委員 刑事訴訟法という、これは手続法でありますが、非常に複雑な法規を引用してありますので、いろいろお尋ねしたいことが残つておりますが、とにかく臭いものにふたをしないという意味で、ここに犯罪の端緒を得たるときは、ただちに検察当局に通報すべしとかなんとかいう規定を捜入される意思があるかどうか。あるいはまたこれは私の感覚から言えば、なるべく避けたい規定であつて、そうしてこれについてはこの條項だけは期限をつけて、一年なら一年だけに限りこれを認めて実施してみて、成績がよかつたらさらに引続いてやるというようなお考えかどうか。という意味は、今るる御説明いただきまして、御熱意のほどはよくわかります。特にインターナル・レビニユーとかいろいろの問題につきまして御説明がありまして、必ずしもこういうことは容赦ならぬというほどのものではないと思います。ほかにもその例はないわけではありません。ただしかしこういうことは検察官とかそういうものがやるのが本筋のものを、いやしくも国家の官吏が部内に司法警察権、つまり本属長官が職員に司法警察権を行使さして、同じ政府の職員を監督するということは、私は民主的ではないと思う。ただ正しいことを実現したいということは同感であります。これを実現する方法としてこういう制度をつくつてやるということは、あまりゼントルマン的なやり方ではなかろうと思う。そうして部内が次第によつては非常に暗くなるということにもなる。また規定の建前から言ても、上司が司法警察権を一部の者に持たして、他の大部分の者を監視しなければならない、指導しなければならないということは、哀れなことである。それ自体非常に官吏の体面を傷つけるということを考えるわけです。しかし今言つたように、技術的な面が非常に重要であるということが、本案の一つの理想であると思うのでありますが、今のようなお考えについては、これは御意見を拜聽することになりますが、その点をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/18
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019・正示哲次郎
○正示政府委員 第一の犯罪容疑がありました場合には、ただちに検察官なりあるいは司法警察職員に通報するようにということを明記すべきではないか、これはお説として一つの考え方であろうと思います。実は私そのお気持に沿うような意味で、ここに三十三條の三の第六項、及び第五項もやはりそういう趣旨で入つておるのでございますが、大体六項によりまして、本来司法警察職員の職務が軽減されておりません以上は、これまた御承知の通りに証拠の保全というような点から見ましても、犯罪の容疑がございますと、当然司法警察側としては、必要なる連絡及び証拠の保全に関する要求があるのでございます。実はただいま江花委員のおつしやられましたと同じ趣旨を、法律の上からは大体この規定によつて明らかであると存じておりますが、目下事務運営の手順と申しましようか、司法警察側と私の方とにおきまして、この第五項にあります「検察官、都道府県、公安委員会、市町村公安委員会、特別区公安委員会及び司法警察の職員と国税庁監察官とは、第一項に掲げる犯罪の捜査に関し、互に協力しなければならない。」この趣旨からこの協力をいかに具現して行くかということにつきまして、細目はお互いに相談をいたしておるのであります。この点につきましては、場合によりますれば、ただいまおつしやられましたような趣旨を、明確に協定の中にもうたい込むというようなことは、私はけつこうかと思うのでありますが、一応法律の條文としましては、ここにございますようなところで、何と申しましようか、権限としてははつきりいたしておるのでございますから、あとは相互の協力関係の手続といいましようか、そういうような点を協定によつて明記すれば、ただいま御指摘のような協力を達成することができるのではないか、かように考えておりますので、これは意見でございますが、一応御参考までに申し上げた次第でございます。
なおまたこの全体の規定を一箇年程度の臨時規定にすることという趣旨でございますが、私どもは実は今回のシヤウプ博士による新税制並びに先ほど本多国務大臣から御説明のありましたような国税庁職員をある種度増員するようなことも考えておるのであります。目下その増員になるような職員につきましては、嚴重な試験をいたしまして、いわゆる精鋭をすぐりまして、新しい空気を現在の税界に注入いたしたいということで、せつかく努力はいたしております。私どもの衷心からの希望は、かような制度は一箇年、二箇年の間に無用にいたしたいと、実は意気込んでおります。積極的施策は先ほど申しましたように種々講じたいと考えております。ここに実は一箇年ということを明記いたしますまでもなく、実はかような制度は、今申し上げましたような種々の施策によりまして、税界に非違事件あるいは不正行為というようなことがあとを断ちまして、ここに御審議を願つておりますような制度が一日も早くその存在の理由を失うような事態を招来いたすべく、国税庁、大蔵省におきまして、せつかく努力をいたし、またそのために国会の国政調査等におきましても常に御監視を願つておる次第でございますので、どうかひとつさような趣旨に免ぜられまして、ここに一応そういう條文を入れなくとも、われわれとしてはすみやかにかような制度は存在の理由がなくなることを所期して努力して参りたい。かような趣旨でございますから、御了承を賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/19
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020・江花靜
○江花委員 今のお話を聞くと、刑事訴訟法の面ではまだ不十分でありますが、この第三十三條の三の二項に「逮捕、差押、捜索検証及び検視並びに同法」云々ということがありますが、こういうことはおそらく監察官たる司法警察職員は行い得ない。従つてこういう強制手段に訴える場合には、おそらく検察官の指揮を受けるというようなことになると思います。その点で先ほどの連絡のことも十分つくかと思いますが、やはり相互に協力しなければならない、それの裏づけとして犯罪の端緒を得たるときは、ただちに検察官に連絡しなければならない、通報しなければならない。こういうような規定を置いた方がむしろいいような気もします。しかしいずれにしましてもこういうやり方というものはなるべく少くしたい。また技術的という理由で隠れておるのでありますけれども、そんなことをいえば、いかなる官庁でも上司が下僚を監督する場合に、ことに建設省あたり請負師がたくさん入つている、そういうような場合みんな監察官を使つて司法警察権を行使させるというようなことになつては、非常に行政の組織というものの従来の体系を破ることになる。鉄道のやつている車掌とか、特殊な森林警察とかいうようなものについては、場所その他の関係からそういう問題が起きますけれども、この点は、御熱意のほどはよくわかりますが、これにはよほど考慮を加えなければならないところがあるというふうに考えるのであります。私は大体本日のところはこの種度において質疑を終ります。
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021・鈴木明良
○鈴木委員長 次に海上保安庁法の一部を改正する法律案、経済調査庁法の一部を改正する法律案を一括議題といたします。小川原委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/21
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022・小川原政信
○小川原委員 海上保安庁の方にお尋ねしたいのですが、東北地方の酒田は古くからの大きな港でありまして、署があるのですが、それではいかぬので部を置いてもらわなければならぬという考え方を持つておりますが、それはどういうふうに取扱われますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/22
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023・大久保武雄
○大久保政府委員 海上保安庁法の一部改正に伴いまして、管区本部以下の地方機関の設置に関しまして、先般一案をつくつている次第でございます。これはいずれも国会の御承認を得なければならぬ筋合いのものであります。酒田には海上保安署がありまして、海上の治安維持並びに救難の基地にいたしておるのでありますが、東北地方の重要性にかんがみまして、あるいはこの保安署は保安部に昇格させておいた方が適当ではなかつたろうかということも目下実は考えている次第であります。国会の御承認を受けます際、適当な御修正をいただきますれば、海上保安庁としてもさようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/23
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024・小川原政信
○小川原委員 ただいま長官からの説明でよくわかりました。これは部というふうにされたいと考えておりますので、よろしく願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/24
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025・鈴木明良
○鈴木委員長 他に質疑はありませんか。——御質疑がなければこの際お諮りいたします。本日採決いたしました法案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/25
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026・鈴木明良
○鈴木委員長 御異議ないならば、さようとりはからいます。
本日はこれにて敢会いまします。
午後五時十六分敢会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100704889X02119500426/26
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