1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十五年四月八日(土曜日)
午後四時十一分開議
出席委員
委員長 花村 四郎君
理事 角田 幸吉君 理事 北川 定務君
理事 田嶋 好文君 理事 山口 好一君
理事 猪俣 浩三君 理事 田中 堯平君
佐瀬 昌三君 松木 弘君
眞鍋 勝君 田万 廣文君
加藤 充君 世耕 弘一君
出席国務大臣
法 務 総 裁 殖田 俊吉君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
検 事
(法制意見第一
局長) 岡咲 恕一君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
―――――――――――――
四月七日
株式会社の総会招集等に関する臨時特例の立法
化に関する陳情書
(
第七〇〇号)
戸籍事務費全額国庫負担等の陳情書
(第七四二号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
商法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四
号)
参考人選定に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/0
-
001・花村四郎
○花村委員長 これより会議を開きます。
本日の日程に入ります前にお諮りいたしたいことがあります。商法の一部を改正する法律案について参考人より意見を聽取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/1
-
002・花村四郎
○花村委員長 御異議なければさよう決定いたします。
なお参考人の人選に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/2
-
003・花村四郎
○花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/3
-
004・花村四郎
○花村委員長 殖田法務総裁より、先日の田島委員の質疑に対する答弁の申出がありますから、これを許します。殖田法務総裁。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/4
-
005・殖田俊吉
○殖田国務大臣 田島さんのお尋ねでありますが、まず提案理由の説明にもあるごとく、今回の商法改正は、終戰後におけるわが国の経済民主化に対応するものと思われるが、これについて左の二つの点の質問をしたい。A、終戰後におけるわが国の経済民主化の実情、B、商法の一部改正法案はいかなる点において経済民主化の要請に応じておるのか。これに対しまして私はお答え申し上げます。
Aにつきましては、御承知のように終戰以来私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、過度経済力集中排除法等の一連の経済民主化を企図する法律が公布施行せられましたが、ことに財閥が解体せられて、その持株が多量に放出せられた結果、いわゆる株式の大衆化が行われ、企業の所有が一部少数の者から国民大衆に移りつつあるのであります。従つて将来の企業資金についても、これを広く国民大衆に仰がねばならぬ状況にございます。
Bにつきましては、今回の商法改正案は、右のごとき状況に即応して、株式会社における一般株主の権利を強化し、少数株主の保護に努めているのであります。たとえば株主総会の決議方法を嚴格化するとともに、少数派株主の代表者も会社の取締役たり得る道を開き、かつ一定の資格を有する株主に、会社の会計の帳簿書類の閲覧権を認め、また各株主が直接取締役の責任を追究することができることとしたごときがこれであります。
次にまた外資導入とこの法律案との関係について尋ねたい。われわれは荒廃したわが国の経済のの復興には、外資導入が絶対に必要であると考えておるのである。この法案もまた外資導入を考慮したものと思うが、どうであるか、またこの法案によつて外資導入はどういうことになるか。こういうお尋ねであります。これに対しまして私がお答えいたしたいのは、わが国の経済復興にとつて外資導入の必要なことはお説の通りと考えております。しかしながら外資導入は、單に商法改正によつてその目的を達し得る問題とは考えられません。今回の商法改正の主眼は株式会社について資金の調達の便をはかりますとともに、株式会社企業の民主化のために、米英法上の諸制度をわが国の実情に適するような形で取入れました点にあるのであります。従つてこの改正は外資導入に利便を提供することを直接の目的としたものではないのでありますが、現行法に比べまして資本調達が著しく便宜になり、かつアメリカの法律との制度的類似が存する結果、この法案は外資の導入にも寄與するところがあるものと考えておるのでございます。
さらに、今回の商法改正は一部改正であるが、経済の民主化に対応するためには、商法の全般について改正を加える必要はないか。ことに今回の一部改正は、英米法化の色彩が強いが、わが商法が大陸法系のものであるとすれば、大陸法系から英米法系への商法の全面的改正が当然考えられなければならぬと思う。この点は同じく大陸法系に属するとされる民法についても同様である。政府は将来商法全般、ひいては民法を改正するつもりはないかというお尋ねでありました。これに対しまして私がお答え申し上げたいのは、法律の民主化の一環といたしまして、商法全般、ひいては民法について改正する必要があろうかと考えておることはもちろんでございます。政府はこれらの基本法規の改正に備えて、さきに法務府に法制審議会と申す会議を設けたのでありますが、そのほか事務当局をしてこれか研究をずつと行わせておる次第でございます。以上をもつてお答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/5
-
006・花村四郎
○花村委員長 加藤君より法務総裁に対し質疑の通告がありますから、これを許します。質疑は簡單にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/6
-
007・加藤充
○加藤(充)委員 今の総裁の御答弁について一点質疑をしたいのですが、商法の改正が英米法にきわめて類似したものになつて行くので、外資が入りやすいというふうに言われたのでございますが、英米法に近くなると、どういう外資が入りやすくなるのか、その点が外資一般ということで不明瞭であつたと思うのですが、聞かなくてもわかつていそうな問題ですが、これは松本蒸治さんなんかも、その点について発言をやつている文書もありますので、念のためにお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/7
-
008・殖田俊吉
○殖田国務大臣 りくつだけで申しますと、米英法に近づいたから外資が入りよくなつたと言えないかもしれませんが、ただいま実際問題といたしまして、日本に導入し得る外資と申せば、まずアメリカの外資であります。従つてアメリカの法律に類似した法律を持つということは、アメリカの資本が入りよかろう、こういうことを申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/8
-
009・加藤充
○加藤(充)委員 外資の導入は私どももそのもの自体としては反対ではございませんが、いかなる條件で、いかなる性格の外資が入つて来るかということは、今われわれが最も関心を持つところなのであります。そのことについては、第一次世界戰争の済みました直後におけるドイツの商法改正の経過の間にも、ドイツの学界、事業界がいろいろな苦慮をいたしたことをわれわれは文献で見るのであります。伍堂輝雄氏——これは日本鋼管の取締役だと思うのですが、現状の日本の経済状態なり、あるいは会社の実態から見て、改正された結果、非常に弊害が出るようなことまで冒して、先方の投資家のためのみ考えてやるというようなことだと、日本経済は非常に苦しいことになるのではなかろうか、こういう意見を開陳しておるのであります。私どもはむろん外資が導入しやすくなるということについては、そのこと自体問題ではございませんが、伍堂氏が懸念されておるようなことも、これは日本の国民のだれしも感じる懸念でもあり、憂慮でもあると思うのです。そうして松本蒸治氏も、無額面株というようなものはアメリカの大多数の州で行われておる。しかしアメリカの全部の各州において行われているものだとは思わない。だからそれをとるということはアメリカの多数の州とは一致するけれども、世界の他の多数の国とは違つた法体系を持つことになるということを、無額面株について意見を述べておるのであります。またこのたびの商法改正に盛られております授権資本制の問題につきましても、いろいろ意見を述べておりまして、あの通りやらぬでもいいじやないかというようなことを言われ、引続いて何でもかまわずアメリカ式とかイギリス式にして、授権資本にしなければならないというりくつはないということを松本氏は言われておりますが、この点につはて総裁の御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/9
-
010・殖田俊吉
○殖田国務大臣 何もことごとく英米法によらなければならぬということはないのであります。日本は大陸法系の法律を相当長い間実行いたしておるのでありますから、一つの日本の経済界の慣行と申しまするか、そういうことがきまつておるわけであります。従つてなるべく従来のやり方を保存しながら、また英米法にこれを近づけて行こう。つまり折衷であります。でありますから、何もかも英米法にのつとる必要はむろんないのであります。しかしながら世界の現状を見ましても、当分の間アメリカが経済的に見て最も優勢なる国家でありましようし、また日本はこれとよほど密接な関係を当分の間持続するものと見なければならぬのでありますから、その間、英米と申しますけれども主としてアメリカでありましようが、アメリカの財界と日本の財界とがお互いに密接に連繋し得るがごとき制度を立てることは、これは必要なことであろうと思うのであります。しからばといつてアメリカの資本を迎えるために、あるいはアメリカの投資家の便利のために、日本の商法を改正するというわけでもないのであります。ことごとくアメリカ風になり、そうしたアメリカの資本がどんどん入つて来て、日本の経済を撹乱すると申しますか、あるいはこれを独占するのではないかというような懸念を起される人もあるのでありますが、單に商法改正だけでさようなことはできるとは思いませんし、またそういう懸念のあるほどの條文も見当らぬのであります。かつまた現在の状況といたしましては、日本の財界の状態が急激なる自由経済に復帰するほどに復興しておりません。回復しておらぬのであります。そこへ持つて参りまして、アメリカの自由なる経済活動が日本においてそのまま行われるということは、必ずしも日本の経済にとつて利益ではない。そういうことを考えまして、御承知のように、まだ為替管理もやるのであります。また外資導入につきましても、ことごとく自由というわけではないのでありまして、相当なるここに條件を設けて、好ましき外資が好ましい量だけ入つて来るというような手当をいたす考えであるのでありまして、決して商法を一部改正いたしまして、英米法に近づけようといたしましても、さような御懸念のような事実は起り得ないことと考えております。またそれほどのことを考えて英米、ことにアメリカの資本に日本の財界が席巻されるであろうというような懸念は、この新しい法律の中には織り込んでおらぬつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/10
-
011・加藤充
○加藤(充)委員 これは法務総裁の御答弁で明らかになつたのですが、いわゆる外資導入というのは事実上アメリカ資本の導入以外には考えられない。またあり得ない実情であるということを言われたのですが、そうなると、政府が外資導入、外資導入と言つておるのは、アメリカ資本の導入ということを指して言うのであるというふうにしか事実上理解できないのですが、そう理解してさしつかえないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/11
-
012・殖田俊吉
○殖田国務大臣 あれはアメリカの資本だけに限るわけではありません。南米の資本であろうと、メキシコであろうと、イギリスの資本であろうと、フランスの資本であろうと、歓迎するところでありまして、どこでもお入りを願うのでありますけれども、まず実際問題といたしまして、ヨーロツパの大陸などからドイツの資本はもとより、フランスの資本というようなものが入つて来そうにもありません。イギリスはあるいは来るかもしれません。あるいはオランダ、ベルギーの資本というものも来るかもしれません。しかし一番大きな望みのあるところは、何といつてもアメリカであろうと思います。しかし單にアメリカだけを迎えるためにこれを用意するのではむろんありません。つまり経済的に最も栄えております英米の仕方をまねることが、日本をして経済再建等を容易ならしめるゆえんであろう、こう考えておるだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/12
-
013・加藤充
○加藤(充)委員 食糧輸入の問題について、関税措置が最近問題になつたのでありますが、好ましいだけといつたところで、こういう組織法の一般的なルートがきまり、措置がきまりまするならば、好ましいとか好ましくないとかいうような主観的な問題だけでは、やはり経済の原則というものは防ぎとめられないと思うのであります。そういう問題で、占領管理下にある日本としては、そういういろいろな危惧がありまするが、その危惧が見解の相違である、イデオロギーの相違であるとか言つて、これはむげに排斥できないだけの事実と論拠を持つておると確信いたします。それについて、食糧輸入の関税対策措置と同じような意味合いで、いわゆる外資に対する民族資本の防衛とか保護育成の立場に、政府はどういう処置をおとりになろうと考えておるか、その施策があれば承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/13
-
014・殖田俊吉
○殖田国務大臣 外資導入を便利にするような法制等を設けましても、外資はそんなにはなかなか入つて来ないと思うのであります。実はお願い申しても、なかなか簡單には来ないと思います。それぐらいのことで外資がどんどん入つて参りますれば、かえつて仕合せと思うのでありますが、私はそれは用意をいたしましても、そんなに楽觀はできないと思うのであります。しかしながら、たとえば加藤さんのようなお考えの方もありまするし、またそれも絶対ないとは言えないのでありますから、先ほど申し上げましたように、外資導入に対しまして、特別の措置をする法律を今考えておるのであります。それらによりまして、つまり好ましからざる外資が、好ましからざる量入つて来るというようなことを防ぐという建前の法律をつくりたいと思つております。それからまた、ただいま食糧の関税のお話がありましたが、私もそういううわさのあるのを耳にいたしておるのでありまするが、現在米穀等の関税を云々する問題は、具体的にはなにもないのであります。ことにまた現在におきましては、御承知のような為替のレートでは、これは非常に高い税金がかかつておると同様でありまして、今具体的にはそういう問題は、何にもないのであります。これはそういう問題が将来起つて参りましたときに、お話のごとく、日本の経済、日本の社会を健全に維持するだけの措置は当然講ぜらるべきであります。今からいろいろな想像をいたしまして、そんなに危惧する必要はなかろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/14
-
015・加藤充
○加藤(充)委員 先ほど、このたびの商法改正は、とりわけで日本の民主的な法制、同時に日本の人々の民主的な生活にとつて非常に重要なものでありその全面的なものの一面である。将来の政府の施策いかんという田嶋君の質問に対する答弁がありましたが、この商法の改正が、正直に端的に申して、米法化であるということは、これはいなめない事実なのでありますが、それが日本の民主的な生活——この商法の導入という問題は、こんなことを殖田さんに言わなくても御承知の通り、英米法の商法の導入というものは、会社法とその他の諸法との関係が、今までの概念規定と内容が非常に違つて参りますので、重大だと思うのですが、やはりこのほかの諸生活の面を民主的に法秩序づけるということで、この商法と同じように英米法、とりわけて米法というようなものに進むことが、日本の民主化であり、同時にその法律秩序の整備だというように、あるいはとれるかもしれないという御答弁、だと思うのですが、その点、ひとつ御答弁を明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/15
-
016・殖田俊吉
○殖田国務大臣 その国によりましてその国民性に適合した法律があるわけであります。大陸、ことにわれわれが従来模範といたしておりましたドイツの法体系というものは、理論はまことにりつぱでありますけれども、民主化という面におきましては、これはつまり英米と申しますか、英法系には劣る点が多々あると思うのであります。われわれはほんとうに民主化するためには、やはり大陸法系から少し衣がえをいたしまして、英米法に塗りかえるということも、まことに適当な措置ではないかと思うのであります。ことに商法のごとき、われわれが今日英米の経済に最も密接につながつて行くという点から申しましても、日本の法律がひとり飛び離れて大陸法系の色彩を強くしておるということよりも、かえつて英米法の色彩をもつと取入れた方が、日本の経済の発達のためによくはないかと、こう考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/16
-
017・加藤充
○加藤(充)委員 私はその点で、なるほどそういう面もあると思うのでありますが、全面的には了承しにくいのです。商法の改正を初めとし、その内容は米法一辺倒というようなことになつて行く。あらゆる法秩序、同時にその実質をなす日本人の生活がアメリカ風になつて行くということは、全般の問題じやありませんけれども、殖田さんのおつしやるように、われわれは民族の将来並びに具体的に日本人がどうして生きて行くかというような過去の生活、あるいは今後のいろんな問題がら考えてみましても、お隣の中国あるいはアジアというような問題を考えてみましても、そう簡單には英米一辺倒になることは、どうも問題が多過ぎると思うのでありますが、そういう意味において、日本の民主化というものはアメリカ風の生活をやることであり、同時にアメリカ風な法律、秩序、制度を全面的に輸入するというようなこと——もちろん御答弁は全面的とは言わないということになるのですが、商法の改正が、これはやはり全面的な米法への傾倒であり、米法導入でありますので、その点の関連をいま少し明確に承つておく必要があると思うのです。くどいようですが、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/17
-
018・殖田俊吉
○殖田国務大臣 英米法にばかりよるわけではむろんないことは、御承知の通りでありまして、ことに日本の法律は、もうすでに古く大陸法系に兄事しておりまして、たとい英米法系のものを取入れましても、なかなか大陸法系のにおいは取去られないと思うのであります。民主化という点からいたしますると、どうしても英米法に近づくことはやむを得ないのでありまして、われわれがいかに民主化をはかりたい、今までのドイツ流の法律から拔け出したいと思いましても、ソビエトの法律をまねるわけには参りません。これは全然違う法系でありますから問題になりませんし、さればといつて、支那やインドにわれわれは模範とする法律があるとは考えられません。それは英語で言えばチヤイナ、日本語で言えば支那、それは中華民国でも中共でもけつこうでありますが、どうもそういうわけには参りません。結局われわれは何と申しましても、今日はヨーロツパ流の法律生活を営んでおるのであります。そのヨーロツパ流の法律生活の中で、従来よりも一層民主化しよう、ドイツ法系の衣を脱ぎ捨てようということになれば、新しい衣はどうしても英米法系たらざるを得ないのであります。フランスのごときも、御存じのように非常に保守的な国でありまして、いまだにおそらくナポレオン法系を使つておるのではないかと思いますから、われわれがただちにもつて範とするわけに参らないと思うのであります。でございますから、決して加藤さん御心配のように行き過ぎはせぬつもりであります。ステツプ・バイ・ステツプでいいところをとつて行くつもりでございます。ことにそういう御懸念がありまするならば、十分に御審議を願いまして、惡いところは改めていただいてけつこうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/18
-
019・加藤充
○加藤(充)委員 大分ステツプ・バイ・ステツプで、質問もステツプ・バイ・ステツプにしたくないのでありますがあと一、二点質問をしたいと思うのであります。
昔法廷論争で民法の施行のときに出て参りましたが、民法出でて醇風美俗民族滅びるというような有名な言葉も出て来たのです。また今の御答弁にも明らかになりましたように、ステツプ・バイ・ステツプにしか行かない。それでいくら急速に入れようと思つても、過去になずむということはどの国の歴史上も、とりわけて日本の国情としてはそういうものはやはりいなめないのであるということでありまするが、その点に関連して十分な審議を尽せと言われたから安心いたしました。このたびの商法改正、これは決してステツプ・バイ・ステツプでもなければ、やはり十分な審議を尽せというほどの十分な時間的な余裕すら與えられていないことは事実いなめないのです。その点についてあくまで十分にステツプ・バイ・ステツプにやるとすれば、審議の期間は十分に與えられることが必要でありまして、当会期中に上げろというようなこと自体ははなはだこれはむちやだと思うのであります。ステツプ・バイ・ステツプではないと思うのであります。しかもまたステツプ・バイ・ステツプに行くのであるならば、他の法律家の先輩、あるいは実務家たちが言つておりまするように、一部の暫定的な措置でやはり行けるのではないかと思うのです。あまりに急速に、怒濤のごとく一ぺんに短期間に押しかけて行つてしまつて、ステツプ・バイ・ステツプのものが踏み切れなくなつて、足をかつぱらわれそうなんですが、この点について意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/19
-
020・殖田俊吉
○殖田国務大臣 この改正はそんなに広汎ではございませんけれども、かなり大事な点がたくさんありますので、実はこれを立案しますにも、よほどの手数と時間をかけたのであります。しかし單に事務当局と政府だけの考えではいけないのでありまして、法制審議会を設けまして、朝野の権威を集めて十分に御審議も願つたのであります。相当私どもも準備には手を尽したつもりなのであります。しかしながら、また皆さんがごらんになりまするといろいろ御批判の余地があるかと思います。ここで私どもはせつかくかような改正に手をつけましたので、しかももう着手いたしまして、相当の時間がたつておりますので、すみやかにこれが法案となりまして実際に行われる日のなるべくすみやかならんことを希望いたしておるのであります。しかしながらこれは私どもの希望でありまして、これをもつて国会の御審議を制肘するということは最も愼むべきことであります。さようなことは毛頭考えておりません。でございますから、どうぞ十分に御審議をいただきまして、そうして御納得の行つたところで御可決を願えれば、私どももこれが仕合せであると考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/20
-
021・加藤充
○加藤(充)委員 先ほど外資導入の性格そのものが好ましからざるものが好ましからざる量入るということは好ましくないと言われたのに対して、それについても考えておるということを承つたのですが、好ましからざる外資の性格、並びに好ましからざる外資の量というようなものはどの程度に目安を置くものか、どこに目安をおきめになるのか、今少しく具体的にこの点を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/21
-
022・殖田俊吉
○殖田国務大臣 そこのところは私も実はあまり詳しくは存じないのでありますが、これは外資の導入のための委員会を設けますし、また為替管理委員会というものもありまして、そこで外資を自由には入れない。外資が入つて来ますにつきましては、一応そこで吟味をいたしまして、総合的にこれを検討いたしまして、最も必要な外資から入れる、こういうことになると思います。ことに外資は借金でありまするから、これに元金も拂わなければなりませんし、利息も拂わなければなりませんので、そう自由に取引ができかねるのであります。日本の財界に非常に困る影響を與える場合もありましようし、そういうことをいろいろ考えまして、何でも適当なところできめるのだそうでありまして、私はただそういうことを聞いておるだけでありますからこれはひとつ通産大臣か大蔵大臣にお聞きを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/22
-
023・加藤充
○加藤(充)委員 私はこれ以上殖田さんにその点についてお尋ねしてもしかたがないからやめますが、われわれはその点については、自主権の回復ということが基礎になり、前提になるものであり、これは日本の悲願的なものですらあると思うのであります。それではあなたの本職の方の問題についてお聞きします。先般同僚委員の田中君が御質問したことに関連するのですが、いわゆる台湾募兵の問題で、吉川という元中佐などが帰つて来たら嚴重におきゆうをすえてやる。こういう御答弁を承つておるのです。帰つて来ましたところが、渉外関係からおきゆうを殖田さんがすえそこねておるという話がありましたけれども、前の御答弁のときには、渉外関係になる問題だというようなことを予想しておられなかつたのか。あるいはまた渉外関係になつても、殖田さんがいわゆる自主権でおきゆうをすえることができるのでありますから、帰つて来たらおきゆうをすえるつもりだというのでお話をしたのか、この点をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/23
-
024・殖田俊吉
○殖田国務大臣 その点になると私はなはだ不明でありまして、実は渉外関係が出て来るとは想像しなかつたのであります。ところが渉外関係があるということは、これは聞いてみればごもつともであります。そこで私は自主的にもできないので、その点で御了承願わなければなりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/24
-
025・加藤充
○加藤(充)委員 それで、つかまえてこれを拘束するとか、裁判にするとかいう、殖田さんともあろうさしもの大臣も予想しない突発的なことが出て来たことは、まことに不明のいたすところだという言葉がありましたが、搜査権というような問題、これは裁判権と離れて、そういうようなことについても自主権というようなことがないものでございましようか。ひとつお聞かせ願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/25
-
026・殖田俊吉
○殖田国務大臣 搜査すべき問題について私どもで自主的にきめられない点があるのであります。つまり渉外関係これは私どもは相当に調査はしているのでありますけれども、いろいろな問題を含んでおるのであります。従つて自主的にきめかねておる。しかしながらこれを全然かまわずに置こうというわけではむろんありません。十分注意をいたしております。そうしてそれらの問題が解決されれば、むろんまたそれに従つて処置をすることはもちろんであります。もうしばらくお待ちを願わなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/26
-
027・加藤充
○加藤(充)委員 これは人道にも反し、また三月十五、六日ごろに殖田さんも御承知だと思うのですが、在日華僑の人々が、民族の最高の原則である自主権、民族の自決権というものを、日本人が暴力で爆撃を加えたり、粉碎しようと努力しておるということについては、非常に残念に思うし、将来の善隣友好の関係からも、日本政府に善処方を要望して来ております。またこれはポツダム宣言受諾、履行の関係から発端いたしました新しい日本の憲法においても、戰争の放棄その他そういうような暴力的な、軍国主義的な行き方については、わが憲法においてもこれは嚴重に自粛すると同時に、全面的に否定をいたしまして、一般的に人道的な立場に立ちまして、同時に善隣友好の結びを近き将来に一日も早く結ばなければならない、隣国人の要望もあり、日本の憲法にも明記されておることでもあり、ひとしくポツダム宣言に発端しておりまするこういう問題自体は、その裁判権ということはいたし方ないにしても、それを日本人がポツダム宣言の嚴正なる履行、あるいは日本憲法を自分たちが守つて行くという立場からしても、こういうふうなことについてわれわれの自主的な活動が拘束されるわけはないと思うのですが、殖田さんがうかつにもおきゆうをすえてやると言つてみたけれども、おきゆうもすえられないんだということは——おきゆうということを処罰というものまで私は含めませんが、そういうものまでわれわれは渉外関係まつたく活動の余地がない、憲法みずからの趣旨に沿うて日本の人々が憲法を守り立てて行くという、文化的な民主的な努力、こういうようなものまでが自主権がないということは、たいへんなことになると思うのですが、そうしてまたそのことは、殖田さんの言葉の中で、殖田さんでもあると思つていたことがなくなつてしまつたのだ、とんでもないことになつたというふうには言いませんけれども、そういうことになつているわけでありまして、われわれとしても、また一般の日本国民としてもたいへんな重大関心事だと思うのでありまして、どうも渉外関係が出て来るということは了解いたしにくいのであります。
この際関連して最後に一点だけお尋ねいたしますが、四月六日に私ちようど汽車に乗つて関西を通つたのですが、国際新聞という夕刊紙に大江山鉱山の中国人虐待の戰時中記事が載つておつたのであります。この中国人たちが大江山鉱山に連れて来られたのは俘虜であるのか、あるいはまたヴオランタリーに出て来たものか、あの当時のことですから純粋のヴオランタリーというものはないと思うのです。強制的に日本に連れて来られたものであると思うのです。またそういうふうな記事にもなつておりましたが、これは俘虜であるのか、あるいは俘虜でないとすれば、この人たちに暴虐を加えて、大半の者を虐殺に相当するような殺し方をしてしまつた連中に対する搜査、こういうようなことは、私は俘虜でないとすればできると思うのですが、こういうふうなことについて聞き知つておるのか、あるいはまた調査をやつておられるのか、あるいはまたさつき言つたように、この点についてもいろいろな関係で自主権というようなものがその時代のものについてもないというようになるのか、お答えを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/27
-
028・殖田俊吉
○殖田国務大臣 先ほどの吉川の問題でも私の言葉が足りなかつたのでありますが、そんなに全般的な原則論で自主権があるとかないとかいうことではないのであります。具体的な問題につきまして渉外問題が起つたので、従つて吉川の事件で他の事件を類推される必要はないので、その具体的な問題は何であるかはちよつと申しかねるのであります。
それから今大江山のお話でありますが、これはこの間もどなたからか木曽川の事件も出たのでありますが、たとえば秋田県の花岡の問題、幾つもあるのでありまして、いかにも遺憾なことでありますが、何分あの終戰の前後のどさくさのときであつて、横暴なる日本の軍閥がやつた問題が多いのであります。また軍が直接やりませんでも、軍の背景でいろいろなことが行われておるようであります。今日この問題はむろん搜査をしなければならぬ問題でありまして、そういうことが聞き込みがありますれば、必ず搜査をしなければなりませんので、搜査もしておるのでありますが、なかなか証拠を收集するに困難でつかめないというのが実際の実情だろうと思います。そこで証拠があがりまして、これが犯罪であるというならば、これは決して容赦いたしておりません。どんどんこれは処置する決心でございますし、手の届くものは処置もいたしておるので、ただうわさはずいぶんありましても、手がかりすらもなくなつておる事件がずいぶん多いのであります。それから今のお話のごとく、ほんとうの捕虜でありますれば戰犯の問題になります。戰犯の問題になりますればちよつとわれわれで手が下しかねますが、捕虜でない場合が多いようであります。捕虜でなくして——実際には捕虜と称しておりますけれども、強制の労働者ではないかと思うのであります。従つて犯罪が行われておるとなればそれはむろん追究いたします。十分処置ができるのでありまして、決してそれらについていわゆる渉外の問題はそんなに起らないと思います。聞き込みがあり、手がかりがあれば何とかしたい、これは考えております。やつておるのでありますが、なかなか成績が上らぬというのが現状であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/28
-
029・加藤充
○加藤(充)委員 大体のお話で了承しましたが、幾つもあり過ぎるということはたいへん不幸なことであります。最近の引揚げの問題なんかにつきましても、外国でいろいろ残虐な目にあうたあうたというようなことばかり宣伝しておりますが、戰時中に兵隊がやつたと言つてもいいのですが、戰地から一応隔離された日本の国内において、他民族に対してわが日本の民族がこういうような虐殺、掠奪を加えたということ自体について、われわれは決して他人を責めるばかりに急であつて、われわれの非を認めることに健忘症であり過ぎてはならないと思うのであります。そういう意味で幾つもあり過ぎるということはまことに情ないことで、幾つもあり過ぎるので、しかし調べ切れないということはりくつにならないと思うのでありまして、この点緊急に私は法務総裁の善意ある職権の御活動といいますか、職責を全うされんことを切に要望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/29
-
030・花村四郎
○花村委員長 本日はこの程度にいたし、次会は月曜日午前十時より開会いたし、国籍法案及び国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案の質疑を行つた後、商法の一部を改正する法律案について引続き質疑を続行いたしたいと存じますから、さよう御了承願います。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X02319500408/30
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。