1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十二日(土曜日)
午後二時二十八分開議
出席委員
委員長 花村 四郎君
理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君
理事 山口 好一君 理事 猪俣 浩三君
佐瀬 昌三君 古島 義英君
松木 弘君 眞鍋 勝君
武藤 嘉一君 石川金次郎君
加藤 充君 梨木作次郎君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
検 事
(法制意見第一
局長) 岡咲 恕一君
検 事
(法制意見第四
局長) 野木 新一君
検 事
(中央更生事務
局少年部長) 池田 浩三君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
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四月二十一日
委員淵上房太郎君辞任につき、その補欠として
森下孝君が議長の指名で委員に選任された。
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四月二十一日
更生緊急保護法案(内閣提出第一三五号)(参
議院送付)
保護司法案(内閣提出第一三六号)(参議院送
付)
同月十九日
矯正保護作業の運営及び利用に関する法律制定
反対に関する請願(大西弘君外五名紹介)(第
二六六九号)
同(山崎猛君外五名紹介)(第二六八三号)
安来町に簡易裁判所設置の請願(木村小左衞門
君紹介)(第二七四九号)
同月二十一日
不良出版物等の取締強化に関する請願(橋本龍
伍君紹介)(第二八一四号)
宮崎地方法務局延岡支局庁舎新築に関する請願
(佐藤重遠君紹介)(第二八九八号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
第六九号)
更生緊急保護法案(内閣提出第一三五号)(参
議院送付)
保護司法案(内閣提出第一三六号)(参議院送
付)
土地台帳法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第一四六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/0
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001・花村四郎
○花村委員長 これより会議を開きます。
本日はまず土地台帳法等の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか——御質疑がなければこれより討論に入りますが、討論に入ります前に、修正案が委員長の手元に提出されておりますので、提案者より趣旨の説明をお願いいたします。佐瀬昌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/1
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002・佐瀬昌三
○佐瀬委員 私は自由党を代表いたしまして、土地台帳法等の一部を改正する法律案に対する修正案を提案いたします。
原案にあります附則第一項を次のように改める。
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
というふうに原案を修正いたすのであります。従つて修正された点は「この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する」というのを「公布の日から施行する」というふうに改めただけで、その他は原案通りであります。修正案を提案した理由は、原案をごらんになればわかりますように、すでに四月一日は経過いたしておりますので、單に施行の便宜上「公布の日から施行する」というふうに改める次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/2
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003・花村四郎
○花村委員長 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。これより討論に入りますが、討論はいかがいたしましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/3
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004・佐瀬昌三
○佐瀬委員 討論は省略の上で採決に入られんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/4
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005・花村四郎
○花村委員長 それでは討論は省略し、これより採決に入ります。まず修正案についてお諮りいたします。ただいまの修正案について賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/5
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006・花村四郎
○花村委員長 起立多数。よつて修正案は可決されました。
次にただいまの修正部分を除いた原案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/6
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007・花村四郎
○花村委員長 起立多数。よつて本案はただいまの修正案通り修正議決いたされました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/7
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008・花村四郎
○花村委員長 次に民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか。——御質疑がなければ、この際修正案が提出いたされておりますので、提案者より趣旨説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/8
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009・佐瀬昌三
○佐瀬委員 私は自由党を代表いたしましてただいま審議に相なつておりまする民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案を提案いたしたいのであります。原案にありまする民事訴訟法の一部を改正する法律案を次のように修正する。「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」、以下の内容につきましては提案された原案を速記録にとどめまして、修正された点だけを便宜ここで申し上げておきたいと思います。まず第一に本文の末尾、すなわち附則の前にありまする民事訴訟法第四百九條ノ二及び四百十九條ノ二に関する改正原案はこれを全部削除すること。それから附則の1については「この法律は、昭和二十五年六月一日から施行する。」また2については「この法律は、昭和二十七年六月一日から、その效力を失う。」かように修正する次第であります。
以上の修正案の理由については簡單に申し上げておきたいのでありますが、本法案は恒久立法とせずに、臨時立法として内容を改める関係上、法律の呼称をさきに申し上げましたごとく、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律というふうに、特例立法たることを表明するためにかく改め、しかして内容につきましては、民訴四百九條及び四百十九條の各二の改正は恒久立法として必要な改正であつたのでありますが、かく臨時立法として改正する上においては必要がないので、これを全部削除いたした次第であります。また附則につきましては、原案は「この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。」とありましたが、すでにこの四月一日は経過いたしておりますので、これを六月一日と改めると同時に、原案は恒久立法でありましたが、これを臨時立法として昭和二十七年六月一日からは效力を失わしめる必要から、かく2において法律の有效期間を限定した次第であります。
以上の趣旨を十分おくみとりの上、御審議賜わらんことを切に希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/9
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010・花村四郎
○花村委員長 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。これより討論に入ります。討論の通告がありますからこれを許します。佐瀬昌三君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/10
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011・佐瀬昌三
○佐瀬委員 自由党を代表いたしまして簡單に討論をいたしたいと思います。
最近上告事件、特に民事上告事件がきわめてその量と質とにおきまして従来と線を異にし、ふえかつ難件が山積したために、最高裁判所の各判事の負担量が非常に重く相なり、迅速に国民の権利義務の争いを解決する上において遺憾な点が見られたのであります。しかもこのままの状態においては、さような傾向が年々増して来るように思えるので、何らかの便法をここに考えなければならないという現況に迫られたのであります。もとより上告事件を最高裁判所が最終の護法の府として国民の納得するように明快な裁判を下すことは、よつてもつて国民の権利利益の保護に万全を期するゆえんであり、また最高裁判所の新憲法下における重大な任務もそこにあるのであります。しかしながら今申し上げましたように、事務が過重な負担となり、ために裁判官等の健康を傷つけるというような、はなはだわれわれの関心を寄すべき事態も発生しておりますので、本国会においてはかかる上告を審理する上においても、特例を設ける必要を十分認めるに至つた次第であります。しかしながら飜つて上告をあたかも制限するがごとき印象を與える措置に対しては、一方において国民の基本的人権を尊重し、真理を重んじ、また最高裁判所の権威において国民の納得するような審判を下す上から見ますると、多少さような要求に反するのではないかという懸念も生じまするので、かかる特例法は長く存続せしむべきでない。何らかそこに合理的な解決をはかつて、一方においては最高裁判所の権威を維持するとともに、他方においては国民の権益の擁護に十分な対策を講ぜなければならぬという両者の調節点を、私どもはさきに申し上げました修正案にこれを発見し、しかして原案をしかく改めることによつてかかる目的はとりあえず暫定的ではあるけれども全うし得るものであると考えて、この修正案と原案がこの際はやむを得ざるものとして賛成する次第であります。附則に有效期間を二箇年と限定されたその趣旨にかんがみまして、またこの改正法の内容を裁判所においては適正に運用せられて、過誤のないようにされんことをここに期待するとともに、すみやかに完全なる解決が近き将来に行われるべきことを待望して、私は本案の修正案並びに原案に賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/11
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012・花村四郎
○花村委員長 加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/12
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013・加藤充
○加藤(充)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本法案に反対いたすものであります。
反対の第一理由は、人権の尊重、主権の保護ということは、今日最も関心を置かれなければならない重大な問題であります。いわゆる手が足りないというようなことは、そういう人権の保障という一大眼目を毀損するようなおそれのある立法の、何ら正当な理由になるものではないことは明らかである。ちようどこれはたとえてみまするならば、角をためて牛を殺す類いである。牛を殺すために角をためる類の立法がまさにこの法案だと確信いたします。この一角から憲法の裁判制度による人権の保障が侵害されるのであります。
大体に言つて第二の理由は、二年間ということでありまするが、この二年間という規定そのものが、この人権の保障に対する重大な影響を持つ本法案の中で、いいかげんなきめ方をされてしまつたということは、だれしもがいなめないことだと思うのであります。従いまして二年間だけ特例だというようなことならば、決してこれは合理づけられもしないし、またその期限を設けたということは何ら気休めにもならないのであります。二年間すれば整理ができるかといえば、先ほど言つたように、その整理は保証されない。また看過することのできないのは、二年間に整理ができたとすれば、今持て余しているようにたくさんの量になり、重要な質を帯びた問題、こういうものが二年間の間にそれだけ私は私権が侵害されたということに相なるということを忘れてはならないと思うのであります。しかもその間に整理ができないというようなことになれば、これはだれが再び延期等々の措置をおそれる必要がないと断言できるか。二年間内にまた全般的な民事訴訟法の改正が行われるということに相なりまする場合に、この特例を持つたということ自体が、その全立法的な改正措置の際に、この特例をくみ入れた内容のものになされるおそれがある。これは今までの経験に徴して明らかなのでありまして、逆に言うと、この特例を出すことによつて民事訴訟法の改正というよりも、人権の侵害ということに対してみれば、非常に改悪的な立法の理由になる。こういう意味合からもこの特例というものは出すべきじやない。第三に、今申し上げましたように、戰時中この上訴訟制度がいろいろな制限を受けましたが、そういうふうな戰時中の措置がいかに司法のファショ化の道であつたかということは明らかなのでありまして、そういう意味合いにおきまして、この特例も司法のフアシズム化への道を開いたものであると断言してはばからないものであります。フアシズムの芽ばえというものは、そのフアシズムが枝を張り根を張り大きな幹を繁らす前に、その双葉のうちにつみとらなければならないということは、遠く例をナチス・ドイツにとれるばかりじやなしに、日本のあの戰時中のフアシズムの成長発展の兇悪な歴史的な経験に徴して明らかだと思うのであります。
しかも第四の理由といたしましては、現在の最高裁判所の信任投票の制度並び過去行われましたその経験の実績から徴しまして、この最高裁判所の特例による一種の権限の限定、同時にそれは権限の拡大ということになり、最高裁判所の枢密院化であり、また逆に言えば枢密院のいわゆる再現化への道をこの特例が開いたものだと断定せざるを得ないのであります。
以上のような四つの理由から日本共産党はこの法案に対して絶対反対の意を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/13
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014・花村四郎
○花村委員長 石川金次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/14
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015・石川金次郎
○石川委員 社会党を代表いたしまして、ここに本案に対して意見を申し上げたいと思います。私は修正案に賛成であります。
本年われわれは上告の権利を制限することについては反対であります。しかし現実の最高裁判所の実情を見て参りますと、何らかの措置を講じなければならぬと私たちは考えるのであります。従つてこの修正案において現在の最高裁判所の苦悩をわれわれは軽減してやることができ得ると信じて、この法案に賛成するのであります。ただこれに対して人権が蹂躪されるいわゆる上告権の制限の結果、人権が蹂躪せられるのじやないかという御議論もあるようでありますが、しかしどんなに上告いたしましても、上告に対する適切な時期に裁判がございませんと、かえつて人権が侵されるという結果に相なるのでありまして、今日の実情から見まするならば、修正案がやむを得ないものであると賛成するのであります。しかも本案の修正案は臨時的暫定的な特例でありまして、その間においてわれわれはよき制度の移行に努力しなければならぬと考えて、修正案に賛成するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/15
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016・花村四郎
○花村委員長 討論はこれにて終了いたしました。
これより採決に入ります。ただいまの修正案通り、修正議決いたすに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/16
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017・花村四郎
○花村委員長 起立多数。よつて本案はただいまの修正案通り修正議決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/17
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018・花村四郎
○花村委員長 次に、更正緊急保護法案を議題といたします。本案は昨日参議院より送付され、本委員会に本付託されたのでありますが、参議院において修正いたされましたので、その修正部分について政府より説明を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/18
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019・池田浩三
○池田政府委員 更生緊急保護法案につきまして参議院で一部修正がございました。その内容を御説明申し上げます。修正の点は、附則中の二箇所でございますが、その第一点は、附則の第一項のこの法律の施行の日が「昭和二十五年四月一日」となつておりまして、この点、審議期間との関係で、「公布の日」に改めるというように修正になつたのでございます。第二点は、その附則に新たに六項を設けるものでありまして、これはただいま御説明申し上げました施行の日と関連を持つものでございます。当初政府におきましてこの法案を準備いたす際には、別途提案になりまして目下御審議中の改正の地方税法、これと時を同じゆうしていずれも四月一日に施行、発足という姿を予想いたしまして、條文が準備されておりますが、現行の地方税法中に、現行司法保護事業法による司法保護事業に対する地方税の免除という條文が十三條十一項中にございますが、この施行期日が予想の通りには参らないことになりましたので、その食い違いを埋めますために、現行地方税法中の十三條十一項に、「司法保護事業」とあるのを、この法案の「更生緊急保護法による更生保護事業」と読みかえる趣旨の附則を置いて、その間の間隙を埋めようという趣旨なのでございます。いずれもこの施行期日の関係でございまして、この修正は、現在の審議状況におきましては、最も妥当な姿だというふうに考えられるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/19
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020・花村四郎
○花村委員長 これより質疑に入ります。御質疑はありませんか。——御質疑がなければこれより討論に入ります。加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/20
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021・加藤充
○加藤(充)委員 日本共産党は、以下述べまする三点ないし四点の理由から、この法案に反対いたします。
第一は、この法案はいわゆる六箇月のお礼奉公をさせることに相なつて来るというのは、仮釈放にならない者は、どうせその官僚的な、圧制な、いわゆる獄卒、獄吏に対して、覚えめでたくない者であることは、仮釈放の制度から見て明らかであります。従つてそのような者に対しましては、事実は強制的に——こういうふうな身寄りのない者、資力のない者は、緊急保護ということで——更生とか保護とか名前はりつぱですけれども、結局出てからもここに勤めなければならない、収容されるのだという制度まで行きますと、これが背景になりまして、刑務所における一般の服役者に対しまして、心理的な、外形的な強制をやる、懲役労働の強化に相なる危險なしとせざるものであります。しかも出て参りましたときに、そこにまた六箇月勤めねばならぬということになりますれば、これはお礼奉公に相なつてしまうのであります。このことについては、あとから理由を多少附加いたします。
第二の点は、本法案の中の費用の負担の問題ですが、費用の負担能力のない者からは一応とらないということにはなつておりして、恩惠的な條文も見えることは見えるのですが、見のがすことのできないのは、寄付金の募集ができるというくんだりであります。これは強制的なものではないかもしれませんけれども、生活の資力のない者が作業所に収容されて、働いた乏しい収入の中からこれを寄付というような名目で——外部のものからも寄付を募集するのに、内部の者が寄付に応じないという理由は成り立たないじやないかというような口実、その他の方法をもちまして、実質上その作業所の乏しい収入の中から強制寄付を命ぜられる。すなわち出さなければおさまりがつかないようなものになりますと、結局働いた金の中から、その間にかかつた費用をとつて行くというようなことになりますから、言葉ではどぎついようでありますけれども、監獄部屋の再現性が、この法律によつて危惧されないということにはならないと思います。従いましてこれがさらに一転いたしますと、従来のいわゆる免囚保護事業というものが、食えない者を皮肉にも、悪辣にも食つていつたという、こういうふうな事態が、この法案によつてなお絶滅を期されていないという点。
第三の点は、保護事業を営むその作業所におきまして、保護事業でありながら、しかもそこに収容される者はまつたく資力のない者を対象にしておるのですが、結局そこは刑務所外の作業であつて、しかも懲役ではないのでありますけれども、最低條件である労働基準法もこれを行わないでもよろしいというような、非常にこれを適用すること、これにのつとることが回避され、これを合理づけるような條文のある点は見のがせないことであります。進んでこれはせつかく資力のない者が服役を終つて出て来たのでありまするし、それの更生を保護するのであります。そして緊急に六箇月の期間に一人前にするのでありますから、最低の基準よりももつと高いものを與えるべき積極的な意図がこの法案に盛り込まれなかつたこと、これが反対の第三の理由であります。
第四といたしましては、現在の犯罪者は、先ほど政府からお届け願いました統計を見ましても、これはやや古いようで、二十三年度でありますけれども、やや有資産、それから無資産というものを比べますと、実に犯罪者受刑者の九九・六五%、ほとんど一〇〇%が無資力者であるということであります。これは少年保護処分の普通ないし余裕のない者というような統計が、今申し上げた成年者の受刑者の数字と違つて出て来ている点は興味深いものでありまして、その点から判断いたしますと、現在の成年者の犯罪者というものは無資産者が全部であります。というのは、働いても低賃金、ベースのくぎづけ、また働こうとしても首を切られる。多少働けば一切のものが重税の対象になる。このたびの地方税の改正というような立法は最もその優たるものでありまして、そこへもつて来てとうとうたる不景気、こういうような結果は全部が裸鳥のように毛をむしりとられ、収奪されて、結局落ち行く先は一家心中か犯罪入獄の道しか許されてないわけであります。従つてこれらの無資産者いわゆる犯罪人は、簡單に言つて現在の内閣の秕政、惡政の結果だといつて間違いはないと思うのであります。こういう点から見て、犯罪者の累増あるいは無資産者の受刑者、釈放者が多いということに対する多少の保護を與えるという、いわゆるこの邪政、惡政を欺瞞するために、鬼の目にも涙があるというようなジエスチユアを示すものが本法案立法の根本的なねらいであると私は思うのです。しかしながら今申し上げました内容の点等からいたしまして、無資産者は刑務所にたたき込まれる、刑務所に追いやられる。出て来てみれば、そこで無資産者は保護作業所に収容される、そこを卒業すればまた不景気のすさまじいこの実社会、そこから無資産者は逆手にまた刑務所に強制送監されざるを得ない。いわゆる刑務所から刑務所への中継ぎに作業所があるだけでありまして、そのたらいまわしの政策、実に無慈悲なものがこの法案の中に見届けられることをまことに遺憾とするものであります。
以上申し上げました四つの点が、わが党がこれに反対をする理由の主なるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/21
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022・花村四郎
○花村委員長 次に佐瀬昌三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/22
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023・佐瀬昌三
○佐瀬委員 私は自由党を代表いたしまして、本参議院修正案並びに原案に賛成するものであります。戰後犯罪現象がきわめて寒心にたえないものがあるということは、その原因は経済的貧困、あるいは道義の頽廃等いろいろありましよが、世界共通の現象であります。わが国もすでにこれらの犯罪防止、なかんずく再犯防止のためには、第五国会において犯罪者予防更生法を立法いたしまして対処して参つたのでありますが、この法律の運用において、またさらに再犯者の防止を徹底せしめるためには、新たな立法的措置が必要とされている。本法案はかかる輿望にこたえて、ここにわれわれの審議の対象となつたのであります。もちろんこの法律の適用の上において、あるいは濫用されんか、刑法にいわゆる人権保障のための罪刑法定主義の精神も没却されないとは限らないのでありますけれども、しかし国家再建のための基盤としての法的秩序を確立するためには、かような緊急的措置としての立法が欠くべからざるものであることは言うをまたない次第であります。しかも内容を見ますに、一定期間、すなわち六箇月というように保護の期間を限定し、また保護さるべき者の対象も限定され、保護の方法についても相当愼重に立案されたものがあるのであります。従つて刑事政策的に、また社会政策的に、この運用にしていわゆる官僚化なく、適正にいたされたならば、よつてもつて再犯防止のため大いなる効果を発揮し得るものと確信してやまないものであります。
なお修正案は、施行期日に関する立法技術上の問題でありまて、これまた異論のないところでありますがゆえに、私は以上の理由によつて修正案並びに原案に賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/23
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024・花村四郎
○花村委員長 石川金次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/24
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025・石川金次郎
○石川委員 社会党を代表して原案に賛成し、本修正案に賛成いたします。
本案の必要なことにつきましては、佐瀬委員から申し上げたところに同感であります。また佐瀬委員が指摘いたしましたように、本法の実施に当りましてよほど注意いたしませんと、官僚化と申しましようか、取扱う者の官僚的な独善に相なりまして、この法の性質までも殺してしまうのでありますから、こういうことのないようによくこの点を警告いたしたいと存じます。本来この法は社会法の一つでありまして、重要な法でありますから、この運営にあたつては、行う者がみずからその点を心して運用の任に当つていただくように強く期待して賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/25
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026・花村四郎
○花村委員長 討論はこれにて終局いたしました。これより採決に入ります。本案に賛成の諸君の御起立を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/26
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027・花村四郎
○花村委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/27
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028・花村四郎
○花村委員長 次に保護司法案を議題といたします。御質疑はありませんか——加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/28
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029・加藤充
○加藤(充)委員 第四條の規定の規定の一部について質問をいたします。
第四條の三項に保護司になり得ない者の欠格條件が掲げてありますが、こういうふうな団体というようなものが現存しておるのか、またおらないのか、しておるとすれば、それはいかなる団体なのか、その点を確かめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/29
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030・池田浩三
○池田政府委員 第四條の三号に該当する団体があるかないかということにつきましては、現在私どもの存じております範囲においては、政党としてはそういうものがあるとは考えておりません。また「その他の団体」の点でありますが、団体としても、かようなものは、現在私どもの存じておる範囲ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/30
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031・加藤充
○加藤(充)委員 この点あの戰時中に、民主主義者や自由主義者、その他の進歩主義者、あるいは戰争をきらう者といつたような者を、いわゆる好ましからざる者として全部これを除外し、圧殺し、投獄して行つた経験を持つのですが、最近そういう傾向がまた強くなつて来ておる。団体は今ないと言うが、団体に所属しない者でも、いわゆるレツド・マークで一切の好ましからざる者を追放して行く、ロツク・アウトして行くという傾向が強い。そういうようなことのために時の政府が、しかも反民主的なフアシヨ的な考え方を持つた政府が、保護司というようなところまでそういう分子をロツク・アウトしてしまうということになると、たいへんなことに相なりますので、その点を嚴重に注意して本條の適用をやるべきであるという希望を、私は強く主張するものです。これは保護司の任免の欠格條項の一つでありますけれども、もう一つ、それではこういうようなものに過去に加入したというような事実がありました場合においては、保護の対象にはなり得るのか得ないのか、その点を第二に御質問したいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/31
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032・池田浩三
○池田政府委員 第四條第三号の運用についての問題でございますが、この点は十二條の解嘱についてその第三項に特別に聽聞方式を規定いたしておりますが、欠格條項第四條の一号二号につきましては、これはもう非常にはつきりした事案でありますので、特に聽聞方式を設けておりませんけれども、この第三号につきましては、ここで聽聞方式を解嘱の場合に設けるという愼重な手続をとつておるのであります。これはただいま御指摘のような趣旨で特に書き込んだものでありましてこれの運用には十分愼重を期しております。あとの方はちよつとわからなかつたのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/32
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033・加藤充
○加藤(充)委員 保護司になるならないの問題ではなくて、こういうようなものはこれの保護——といつてはおかしいが取扱いの対象になれるかなれないかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/33
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034・池田浩三
○池田政府委員 保護の対象と申しますと、保護司法の保護司が指導監督なり補導援護、保護観察を行いますが、その保護観察の対象は犯罪者予防更生法の三十三條に規定されておるものだけでありまして、ただいまの御質疑の事案といえども、三十三條に規定いたしております仮釈放中の者とか、仮退院中の者とか、あるいは少年法第二十四條第一項第一号の少年保護観察処分中の者といつたようなことになりますと対象になる、そうでなければ対象にはならない、こういうことになると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/34
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035・石川金次郎
○石川委員 今加藤委員から質問がございました第四條の第三号についてお尋ねします。
ただいまの御説明によると、「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体」が現実にないとおつしやつたのでありますが、現在ないならば、なぜこの法をこしらえなければならないのか、では近々できるという予定を政府は持つておるのか、持つておるならば、いつできるという予定を持つておるのか。その時期がわからぬで、いつか出て来るであろうことのみを予定してかくのごとき立法をするならば、その理由いかん、この三つを御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/35
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036・池田浩三
○池田政府委員 この点は、新憲法は国民全部が十分にこれを尊重し、その精神を生かして行くように考えなければならないわけでありますが、保護司はやはりこの法律に規定いたします保護に従事いたすものでありまして、国民一般で考えるよりも一層その点は十分に考えて行かなければならぬ身分の人たちである。こういうことを前提といたしまして、そうしてこの表現の問題でありますが、これは公務員法の表現をそのままとつたものであります。日本国憲法は、どこまでも尊重して行かなければたらないものだ、将来かようなものがいつできるか、その発生の時期の予想などはつかない現在におきましても、やはり日本国憲法は尊重して行かなければならないもの、かように考えまして、その條文を設けたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/36
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037・石川金次郎
○石川委員 憲法の思想を守らなければならぬという意味でこれを立法した、公務員法にあるから、こういうのでありますが、公務員法にあろうとなかろうと、それはよろしい。私がお尋ねしておるのは、ただいまの御説明によつては、そのような政府破壊を目的とする暴力政党も暴力団体もないとおつしやるから、ないならば、何の必要があつてこの法律に書いてあるのかというのです。何の必要があるのですか。そうすると、あなたはこう言うのです。憲法の思想を守らなければ保護司が務まらないというのでありますが、それは言うまでもありません。公務員といい、保護司といい、裁判官といい、国民だれ一人憲法の思想を守らなければならぬことは言うまでもないのであります。ここの第四條第三号に書いて参りましたのは、何かしらこのような政党があるだろうということを予定して書いたように見える。あるいはこのような政党ないし暴力団体が発生するということを予定して書いておるように見える。現にないならば、そうして出てもおらぬし、出る憂いもないならば、法律などは必要としない。必要としないものをなぜここに書くのか。現実に必要に追られたものを立法化するのが法なのです。それは何年か後来るかもしれぬ、来ないかもしれぬということをなぜ書かれるか。憲法を守るのは別のもので、こういうことを書く必要はない。憲法を守らなければならぬ、法を守らなければならぬということは、これは言うまでもない。それをなぜこう書かなければならぬかということを聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/37
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038・池田浩三
○池田政府委員 御質問の御趣旨はよくわかりました。私どもも差迫つて必要のない規定であればこれは書かないでいいじやないかということも一応考えるのでございます。この條文を検討いたしますとに、そういう観点からも研究を重ねたのでございます。ただ新憲法をどこまでも尊重しなければならない。そうして保護司の事務に携わる方々には十分適格な方を充てなければならないということもまた考えなければならないことでございます。それで多少この公務員法の規定の形よりも、その運用の点において、すなわち解嘱に関する規定で特に形をかえておりまして、先ほど加藤委員の御質疑の際にお答え申し上げましたような條文を含んでいるのでございます。それで結局必要の程度いかんという問題になつて参るのだと存じますけれども、今後将来あるいはかような規定も必要な場合が出て来るのじやないかということをおもんばかりまして、たいへん気の長い話でございますけれども、そういつた観点からこの條文を設けておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/38
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039・石川金次郎
○石川委員 そうすればこの第四條の今問題になつております三号は、日本国憲法を守らぬ者と書いても同じですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/39
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040・池田浩三
○池田政府委員 それはこの三号の規定の仕方は、守らない場合の具体的な非常に限定した場合、こういうふうな解釈でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/40
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041・花村四郎
○花村委員長 他に御質疑はありませんか。——なければこれより討論に入りますが、討論はいかがいたしましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/41
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042・佐瀬昌三
○佐瀬委員 この際討論を省略して、ただちに採決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/42
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043・花村四郎
○花村委員長 ただいまの佐瀬君の御動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/43
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044・花村四郎
○花村委員長 御異議なければ討論はこれを省略し、これより採決に入ります。
本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/44
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045・花村四郎
○花村委員長 起立多数、よつて本案は原案の通り可決いたしました。
この際お諮りいたします。本日採決いたしました四案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/45
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046・花村四郎
○花村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後三時二十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100705206X03319500422/46
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