1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月十九日(水曜日)
午後一時四十三分開会
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本日の会議に付した事件
○結核予防対策確立に関する調査の件
○小委員長の報告
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714237X03019500419/0
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001・今泉政喜
○理事(今泉政喜君) それでは只今から厚生委員会を開会いたいます。先ず結核予防対策確立に関する小委員会の報告を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714237X03019500419/1
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002・藤森眞治
○藤森眞治君 本委員会におきましては、今期国会において、議長の承認を得て、「結核予防対策確立に関する調査」を行うことになりましが、本委員会は、昨年十二月十五日に、これに関する小委員会を設置しまして、私共七名の委員を選任され、これが調査を命ぜられました。従来小委員会は、私が小委員会に選ばれまして、慎重審議を重ねた結果、重要事項に対する一応の基本的調査を完了し、若干の結論に到達することができましたので、ここに御報告申上げる次第であります。
本問題の調査に関しましては、厚生委員会を二回、小委員会を九回に亙つて開催いたしました。小委員会といたしましては、結核予防施設、技術者の確保と技術の向山、一般結核予防事業、結核予防法と社会保障制度の確立等、各般の事項につきまして、政府の関係当局を初め、結核予防協会、日本医節会等の意見を聽取し、これが実相の把握に努めました結果、国民保健上最も緊急にして重要な結核予防対策に関する概括的結論を得ましたので、その大綱について御説明いたしますが、詳細につきましては後程、御手許に印刷してお配りいたします調査資料について御覧願います。
先ず、結核予防対策の確立に関する方策としての基本的目標についてでありますが、これは「方策案」の第一項に「方針」として謳つてあるものであります。
我が国における結核の蔓延は年間死亡者が十四万五千人となつておりますから、結核患者の総数は最低死亡数の十倍、即ち凡そ百五十万人と推定されるので、ほぼ五十人に一人、或いは十世帯に一人の割合に患者がいることになります。然も、結核死亡者又は患者のうち半数は三十才以下の青少年層の現状にあります。これを、すでに結核問題を解決し去つている欧米文化諸国と比較しますと、死亡率についても五倍及至六倍の多きに達していることになります。
結核が長期を要する慢性疾病であるという特質かち、患者及び家族の負担する精神的物質的苦痛は、到底筆舌に尽し得ないものがあります。問題は單に個人にとどまるものではなく、結核の最も恐るべき特質は、その社会的疾病であるというところにあります、結核が貧困の原因となり、失業の理由となり、精神的には社会を荒廃に導き、実質的には、国家社会に與える経済的損失も亦莫大なものであると言わなければなりません。專門筋の計算によりますと、結核による治療療養に要する費用の年間損失の総額はほぼ四百三十四億円に上り、罹患中の生産能力の低下による年間損失は、本人が四百八十四億円、家族関係が四十六億円、総計九百六十四億円と計算されております。
これは結核対策が公衆衛生対策上最も重要な問題であるばかりではなく、社会政策上から言つても、国家経済の再建対策上から見ても、第一に取上げて、その解決に全力を挙げなければならない問題であることは十分明らかであります。
結核予防に関する事項としては、収容施設の増設完備は勿論、生活の改善、予防接種の実施、健康診断の普及と事後措置の徹底、在宅患者の療養指導と保護、予防思想の普及等がその主なるものでありますが、国の予算よりこれを見ますれば、現在、国が結核に投じている経費は二十三億円、これに生活保護法及び政府管掌健康保険の政府負担金中結核に関する医療給付を合算すると約三十七億になりますが、そのうち、積極的予防対策に支出される経費は、僅か一億一千万円程度にすぎないのでありますから、結核予防活動については、現在要請されている最小限度をさえ満足させているとは言い難いのであります。現在の我が国における近代医学を基礎とする結核に対する予防技術は、これを高度に活用すれば、結核患者を五ヶ年乃至十年間に半減せしめることは困難でないとされております。この際、結核予防事業遂行上の活路を打開し、強力な対策を樹立して、積極的にこれを実施することは、結局国家経済に非常な利益をもたらし、国民を精神的にも物質的にも幸福に導くものと考えられます。
本小委員会において審議を重ねられました、結核予防対策確立に関する方策案の内容といたしましては、概略次のごとくであります。即ち、第一項はすでに申述べました通りであります。
第二項 結核予防施設
結核対策の遂行に必要なる結核予防施設には保健所結核療養所、結核病院、保養所、後保護施設があります。保健所は結核予防事業の第一戦機関であることに鑑み、保健所の分布んい再検討を加
え、必要地区への新設又はその支所の設置を行うと共に内容の整備事業の充実を図るべきである。
次に結核療養所病院について見まするに、我が国の必要とする病床数は十五万床であるのに対して現在六万床を数うるにすぎない状態にありますので、国家経済を勘案じて五ヶ年計画を以て十二万床に達せしめると共に、その整備に当つては地方公共団体、公益法人その他民間における施設の協力するものを助長するため補助金を交付し、結核対策の一環を強化する必要がある。
尚、保養所、後保護施設は各都道府県及び大都市に設置し、結核の発病と再発の防止に当るべきである。
第三項 一般結核予防事業
結核予防接種に要する材料費は国庫の負担とし、強制による予防接種は無料で実施することとし、健康診断の普及を図り健康診断の爾後措置の徹底を期し、適正なる治療の普及を図るために結核の外科的療法その他近代療法の実施方策を確立すると共に、結核患者の医療費、生活費の保障のために社会保険の普及と給付内容の拡大を図ると同時に、結核患者に対する生活保護法適用基準を引上げることによつて患者の療養生活を全たからしめる必要がある。
尚、一般開業医師の結核活動に積極的協力を求めること、殊に在宅患者の療養予防生活に対しては、医師、保健婦の指導の徹底を期すると共に、療養所、病院にある患者と同様に主食その他の加配については急速に措置すべきである。
次に、乳幼児の感染防止については結核予防知識の普及徹底を期し、乳児院、託児所、保育所等の施設を強化すると共に、里子制度を確立して患者家族中特に乳幼児に対する感染防止の措置を講ずる必要がある。
第四項、技術者の確保と技術の向上中央、地方を通じて医師、保健婦、看護婦その他結核予防関係技術職員に対する給與の全面的改善を図り、特に医師に対しては特別の措置を必要とする。
尚、医師に対する結核專修の方途を講ずると共に、その他技術者の專門的教育(研修)の充実を図り、且つ技術向上の根本的対策として結核研究機関に対する研究費の補助の増額又ストシプトマイシン、パス等新治療薬の研究並びに生産に対しては積極的な援助を與える必要がある。
第五項 審議会の設置
結核に関する行政的運営の一本化を図ること。
厚生省に結核予防対策審議会
(仮称)のようなのを設置する必要がある。
第六項 結核予防法の改正と社会保
障制度の確立
現在の結核予防措置は、現行法の内容と甚だしく相違して著しい進歩を見ておるから予防事業の徹底を期する上において、速かに現行決に対し再検討を加えて改正を行う必要がある。
これと共に将来社会保障制度の確立に当つては、特に結核予防事業遂行に必要な措置を講ずるべきである。
以上の点について次の方策案を作成しましたから一応朗読いたします。
結核予防対策確立に関する方案
一、方針
我が国に於ける結核の蔓延が国及び国民に與うる損害の甚大なるに鑑み、政府は今後五ヶ年乃至十ヶ年に欧米文化諸国と同程度まで結核死亡率を低下せしめることを目標として、強力なる対策を樹立すること。
二、結核予防施設結核対策の遂行に必要なる結核予防施設は五ヶ年計画を以て完成せしめること。
尚、予防事業遂行上意を要するものは二ヶ年以内に整備を行うこと。
(一) 保健所
結核予防事業の第一線機関たるに鑑み、昭和二十七年を以て人口十万に対し一ヶ所の割合に整備し、必要により結核相談を主とする支所又は相談所を適宜配置せしめること。
(二) 結核療養所、結核病院
昭和三十年を以て、結核病床十二万床に達せしめること。尚、その整備に当つては地方公共団体、公益法人その他民間における施設の協力するもの等にも補助を與え、これら団体法人の熱意を尊重して、結核対策の一環を、担わしめると共に一方国費の節減を図ること。
(三) 保養所
結核の発病防止のため、保養所を各都道府県及び大都市に設置せしめること。
なお、養護学級、養護学校等の施設の増強を図ること。
(四) 後保護施設
結核恢復者の保護と厚生、補導のため後保護施設を、国が設置するほか各都道府県及び大都市に設置せしめること。
尚、公益法人等の設置するもの等に対し、補助を與え事業の助成を図ること。
(備考)
保養所、後保護施設は取敢えず結核病床の五%を目標とすること。
三、一般結核予防事業
結核予防接種並びに健康診断の普及、療養生活の指導等一般結核予防事業を直ちに強化すること。
(一) 結核予防接種
現行予防接種法による結核の予防接種に関する規定は結核予防法に移し健康診断に関する規定と一体化を図り、尚、強制による予防接種は無料にて実施することとし、国庫は少なくともその材料費を負担すること。
(二)健康診断
健康診断の普及を図り健康診断の爾後措置の完全を期すること。
尚、現行結核予防法に基ずく知事の検診権限を拡大すると共に、労働基準法、学校教育法等に基ずく健康診断中結核に関する健康診断は結核予防法のそれ一体化を図り、必要によつて都道府県知事(又は市長)が学校工場等に対し結核の予防指導を行い得るようにすること。
(三) 適正なる治療の普及
結核の外科的療法その他近代療法の普及を図ること。
尚、結核病床の現状に鑑み外来患者の人工気胸療法の普及には特別の努力を拂うこと。
(四) 結核患者
医療費、生活費の保障のために社会保険の普及と給付内容の拡大を図ると共に結核患者に対する生活保護法適用基準の引上げを図ることによつて患者の療養生活を全たからしあること。
尚、在宅患者の療養予防生活に対しては、医師、保健婦の指導の徹底を期すると共に、主食その他の加配については急速に措置すること。
(五) 乳幼兒の感染防止
乳兒院、託兒所、保育所等の施設を強化すると共に里子制度を確立して患者家族序特に乳幼児に対する感染防止の措置を講ずること。
(六) 結核予防知識の普及
学校教育、社会教育を通じ、正しい結核に関する知識の普及徹底を期すること。
(七) 一般開業医師の結核予防活動、殊に在宅患者に対する積極的協力を求めること。
四、技術旨の確保と技術の向上
医師、保健婦その他結核関係技術者の確保を図ると共に技術の向上を図ること。
(一) 官公吏たる技術者の給與の全面的改善を図り、特に医師に対しては、特別の処置を講ずること。
(二) 医師に対する結核專修の方途を講ずると共にその他技術者の專門的教育(研修)の充実を図ること。
(三) X線技術者に対しては、資格法を制定し技術水準の向上を図ること。
(四) 技術向上の根本的対策として結核研究機関に対する研究費の補助の大巾の増額を図ると共に、ストレプトマイシン等新治療薬の研究並びに生産に対しては積極的な援助を與えること。
五、審議会の設置
結核に関する行政的運営の一本化を図るため厚生省に結核予防対策審議会(仮縦)の如きを設置すること。
六、結核予防法の改正と社会保障制度の確立
各般の結核予防事業の運用を容易ならしめるための結核予防法の根本的改正を行うと共に、将来社会保障制度の確立に当つては、特に結核予防事業遂行に必要な措置を講ずること
以上御報告並びに朗読いたしました諸点を総合した結果、結核予防には強力なる施策を確立して、その実施を貫徹する必要がありますので、結核予防対策に関する決議の形で政府を督倒する必要があると考えられます。又一方本報告は結核予防対策の大綱を把握したに過ぎないので、尚、引続き各般の事項に対し精細なる調査を必要とすることを小委員会は決定したのであります。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714237X03019500419/2
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003・今泉政喜
○理事(今泉政喜君) それでは本日はこの小委員長報告を承わる程度で散会したいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714237X03019500419/3
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004・今泉政喜
○理事(今泉政喜君) それではこれで散会いたします。
午後二時零分散会
出席者は左の通り。
理事
今泉 政喜君
藤森 眞治君
委員
中平常太郎君
山下 義信君
石原幹市郎君
井上なつゑ君
小杉 イ子君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714237X03019500419/4
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