1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月十八日(火曜日)
午前十時五十一分開会
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委員の異動
四月七日委員小串清一君辞任につき、
その補欠として平沼彌太郎君を議長に
おいて指名した。
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本日の会議に付した事件
○関税法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○租税特別措置法等の一部を改正する
法律案(内閣送付)
○国家公務員等の旅費に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○富裕税法案(内閣提出、衆議院送
付)
○資産再評価法案(内閣提出、衆議院
送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/0
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001・木内四郎
○委員長(木内四郎君) これより大蔵委員会を開きます。関税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法等の一部を改正する法律案、国家公務員等の旅費に関する法律案、以上三案を議題といたしまして、政府委員の提案理由を聞くことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/1
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002・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 御異議ないものと認めます。それでは政府委員から説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/2
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003・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 只今議題となりました関税法の一部を改正する法律案につきまして、提出の理由を御説明いたします。
今回改正しようといたしますのは、次の三点でありまして、その第一点は昨年十二月法律第二百二十八号を以ちまして外国為替及び外国貿易管理法が施行され、これに伴い財産及び貨物の輸出入の取締に関する政令が今年六月三十日を以て廃止されることとなつておりますが「この政令中に規定してあります旅客の携帶品に関する事項につきましては、取締上これを存続させる必要がありますので、これを関税法に織り込み所要の條項を加えようとするものであります。
その第二点は、輸入免許前に貨物を引き取る際の関税の担保は、現在では金銭のみに限られているのでありますが、これを拡張いたしまして国債等をも認め得るよう改正を行おうとするものであります。
その第三点は、近時密貿易事件が増加しその質も漸次惡化しつつある情勢に対応するため、犯則事件の調査処分及び罰則上所要の改正を行おうとするものであります。それを少しく詳細に申し上げますと、第一に、輸入禁制品密輸入犯、関税は脱犯、無免許輸出入犯等の罰則について所要の調整強化を図ると共に、これらの犯則の予備及び未遂の処罰の点を明確にいたそうとするものであります。第二に、従来不明確であつた密輸入又は密輸出された犯則物件の処分規定を明確化しようとするものであります。第三には、犯則事件の調査上の問題といたしまして、犯則嫌疑者又は参考人の所持する物件、帳簿又は書類等、本人が任意に提出したものを検査又は領置することができる旨の規定を設けると共に、最近の大規模な密輸事犯は殆んど夜間において行われるのが常態でありますので、裁判所の夜間執行の許可状があれば、夜間における臨検、捜索又は差押ができる旨の規定を設けまして、取締の万全を期することといたしたいと思うのであります。
以上が本法律案を提出いたしました理由であります。
何とぞ御審議の上速かに御賛成あらんことを希望いたします。
次に租税特別措置法等の一部を改正する法律案について提案の理由を御説明いたします。
我が国の経済を急速に復興し、その健全な発展を図るためには、外資と外国技術の適正な導入を図ることが緊急不可欠であることはいうまでもないところであります。先般御審議を願いました税制改正の諸法律案におきましても、かかる配慮を織り込んでいるのでありますが、尚一層この目的に沿うよう所得税課税上の特別措置を講ずることが必要であると考えるのであります。ただかかる課税上の特別措置は、臨時的のものである点を考慮しまして、これを租税特別措置法に規定するのが適当であると認め、ここに本改正法律案を提案することといたした次第であります。尚、この外、所得税法及び法人税法の改正、富裕税の新設等に伴いまして所得税、法人税、富裕税等の課税標準等の特例の改正又は新設を行うことといたしているのであります。
次に本法律案の内容について申上げます。
最初に、外資導入等の場合における所得税課税上の特例について御説明いたします。
この特例は、日本経済の復興を達成するために必要な長期的な外国投資と日本経済の復興と健全な発展のために外資又は外国技術の導入を必要とする事業の活動に必要は特定の個人を優遇するという考え方に立つているのでありまして、その内容は、大体次のごとくであります。
即ち、第一に、外国在住の個人等が適法に外貨で獲得したわが国の公社債の利子所得に対する源泉所得の税率を当分のうち通常の場合の百分の二十の半分、即ち百分の十とすることとしているのであります。
第二に、外資又は外国技術の導入を必要とする重要産業を営む法人で外資による投資額が一億円以上のものに勤務する者で我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者の昭和三十年分までの給與所得につきましては、三百五十万円を最高限度としてその収入金額の五割を控除して計算することとしているのであります。外資又は外国技術の導入を必要とする重要産業の種類は、日本経済の健全な発展を図るために不可欠な発電業、鉄鋼業等の重要産業に限定し、今後の外資の導入状況等を参考としつつ大蔵大臣が外資委員会に協議して定めることとしているのであります。又我が国の技術水準の状況等に鑑み、右の場合の外、重要産業を営む法人の技術者で我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者のうち大蔵大臣の指定するものはこの課税上の優遇措置を受けられるごとにしているのであります。
第三に、外資の導入を容易ならしめるために、その事業活動の結果右に述べた重要産業を営む法人の事業活動を容易にし、外資の適正な導入が促進されることとなる事業を営む法人に勤務する者で我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者の昭和三十年分までの給與所得又は退職所得につきましては、同じく、三百五十万円を最高限度として、その収入金額から五割を控除して所得税を課税することとしているのであります。
又、外資の導入を容易ならしめるために、その事業活動の結果右に申述べました重要産業を営む外資法人の事業活動を容易にし、外資の適正な導入が促進されることとなる自由職業を営む者でわが国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者の昭和三十年分までの事業所得につきましても同様の措置を講じているのであります。
右の法人の事業及び自由職業の種類は、大蔵大臣が外資委員会に協議して定めることといたしているのでありますが、現在のところ銀行業、弁護士業、公認会計士業等を予定しているのであります。
尚、わが国の文化を振興することも急務と考えられますので、外国知識等の普及を図るために、石の特例を併せて新制高等学校以上の教員及び牧師その他宗教の布教に従事する者で我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者の昭和三十年分までの給與所得又は退職所得につきましては三百五十万円を最高限度として、その収入金額の五割を控除して所得税を課税することとしているのであります。
尚、現在外国人の非円通貨から成る所得については所得税を課税していないのでありますが、この取扱は近く廃止される予定であります。この場合における急激な負担の増加をさけ経過的な措置といたしまして次の措置を講ずることとしているのであります。
即ち、我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有しないものでこの措置実施前において合法的にわが国で非円通貨所得を有していた者及びこの措置実施後に合法的に入国した者に限り、その者の昭和二十五年分及び昭和二十六年分の所得につきましては、三百五十万円を最高限度として、その総所得金額の五割を控除して計算することとしているのであります。
最後に、我が国に一年以上居所を有してはいるが住所を有していない者の給與所得又は退職所得につきましては、昭和二十五年から五年間だけは外国において支拂を受ける金額は原則として合算しないこととしているのであります。ただ弊害が生じないようにするために、本国からの送金額は、外国で支拂を受けた給與金額に達するまでは、これをわが国で支拂われた給與金額に合算し、なお、わが国で支拂われた給與金額が我が国におけるその者の通常の生活費に満たない場合には、外国で支拂を受けた給與金額のうちその満たない部分に相当する金額これを合算することとしているのであります。
次に、今回の所得税法及び法人税法の改正並びに富裕税法の創設に関連いたしまして、租税特別措置法について若干の改正を行うことといたしたのであります。即ち今回の超過所得に対する法人税が廃止されたこと、所得税の讓渡所得の課税方法が合理化されたこと等により、従来の規定中不用となつた規定を廃止いたしました。又目下の状況においては、在外財産等の処理が未定でありますので、従来から在外財産等を所有している者に対しましては、その価額が算定できることとなるまで相続税の課税価格に算入しないととこしているのでありますが、改正後の相続税及び新たに設ける富裕税の課税に当つても同様にその課税価格に算入しないことといたしたのであります。尚、今回納税準備預金通帳には、印紙税を課さないことといたしました。
次に、揮発油税の延納の場合の担保の物件の範囲を拡張し、税務署長において確実と認められる保証人の保証を包含せしめることとしたのであります。
以上本改正法律案の概要を御説明いたしましたが、何とぞ御審議の上速かに御賛成あらんことを切望してやまない次第であります。
次に、国家公務員等の旅費に関する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
先ず、本法律案を立案いたしました実体的な理由を申上げますと、第一に、国家公務員等の旅費定額の改訂を行う必要があることであります。即ち、内国族行の旅費につきましては、昭和二十三年七月にその全面的改訂を行なつた後は、本年一月に鉄道貨物運賃の値上に伴う移転料定額の改訂を行なつただけで、その他の旅費は当時の定額のままで据え置かれているのでありますが、最近の宿泊料金等の実情から見ますると、宿泊料、日当及び食卓料については、或る程度の定額引上を必要とする情況に立至つているのであります。又、外国旅行の旅費につきましても、昭和十八年八月に定額改訂が行われたままで今日に及んでいるのでありますが、最近、国庫の負担による海外旅行者が漸増して参りましたので、現状に即するよう全面的に定額を改訂する緊急の必要が生じて参つたのであります。
理由の第二は、現行の国家公務員等の旅行に関する手続に所要の改正を加えようとすることであります。即ち、現行の旅費制度の基礎法規である内国旅費規則及び外国旅費規則におきましては、旅費支給の原因となる旅行命令や、旅費の請求手続等に関する事項についての規定が不明確であるうらみがあるのであります。従いまして、この際、旅費支給をより適正にするため、旅行命令等に関する規定を設けると共に、その他の点につきましても必要な改正を加えることといたしたいのであります。
以上の理由に基き旅費定額の改正及び旅費に関する規則の改正を行う必要かあるのであります。而して従来これりの事項に関しましては、内国旅費規則及び外国旅費規則に基いて適法な処置がとられてきたのでありますが、これは新憲法に基く新たな旅費法律が制定されるまでの過渡的な措置でありまして、本来は法律に規定するを適当とする事項でありますので、今回の改正を機としまして、国家公務員等の旅費に関して全般的な規定を定めた本法律案を提出いたしました次第であります。
次に本法律案の要旨の大要を御説明申上げます。
第一に、従来の内国旅費規則及び外国旅費規則には重複規定が多く、特に別建とする理由もありませんので一本法律案では両者を統合いたしまして、内国旅行の旅費と外国旅行の旅費とを合せ規定することといたしました。
第二に、旅費を支給すべき場合、旅費の支給條件及び計算方法等に関する事項につきましては、概ね従来の規則のやり方を踏襲することといたしましたが、新たに旅費の請求手続に関する根拠規定の外、旅行命令に関する規定を設け、旅行は、電信、電話等の連絡手段では公務の円滑な遂行を図ることができない場合に限り、且つ、予算の範囲内でのみ発令できることを更に明つかにいたしました。
第三に、旅費の額につきましては、別に申述べました理由により定額の改訂を行なつているのでありますが、先ず内国旅行の旅費については、従来における日当一二〇円を一六〇円に、宿泊料甲地六〇〇円を八〇〇円に、乙地四八〇円を六四〇円に、食卓料一二〇円を一六〇円にとそれぞれ三割程度の引上を行うことといたしました。又外国旅行につきましては、海外の実情が未だ的確に把握できない現状にありますので、連合国軍最高司令部職員の旅費定額及びガリオア資金による海外旅行者の旅費支給基準等を参考といたしまして、全面的に定額の改正を行うこととしました。
尚、この定額改訂に伴う所要経費の増加は、これがため特に予算措置を講ずることなく、既定予算の範囲内で賄うことといたしたいのであります。
第四に、旅費定額が旅行実費をこえる場合における所要の調整、労働基準法の規定による帰郷旅費との関係等につきまして、所要の規定を設けることといたしました。
以上本法律案の提案の理由並びに要旨の大要を御説明申上げました。
何とぞ速かに御審議の上御賛成あらんことをお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/3
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004・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 以上三案の外富裕税法案資産再評価法案を合せまして、御質疑がございましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/4
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005・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 それでは資産再評価法案について質疑を申上げます。この資産再評価の提案された理由といたしまして、インフレ下において適正な減価償却を可能にするというのが一つの重要な目的になつておるのでありますが、それと関連しましてこの通貨呼称価値といいますか、変更ですか、デノミネーシヨン、デヴアリユエーシヨンといつたようなものと非常に関係が深くなると思うのですが、そういつたことにつきましての政府の見通しを一つお尋ねたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/5
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006・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 今回の資産再評価の法案は、今お話になりましたように大体におきまして現在における円の貨幣価値に応じまして、固定資産等の帳簿価額を付替えまして、それに基きまして減価償却を適正ならしめる、尚資産を讓渡した場合の讓渡所得に対する価値を合理化する、こういう考え方であります。従いましてどちらかと申しますと、現在の現実の貨幣価値に古いものを置き替えようというわけでございますので、結果から申しますと、むしろこの際今の円価値をそのまま認めまして、それに過去の適当でないものをアジヤストして置こうという考え方をとつておるのであります。今御指摘のデノミネーシヨンその他の問題につきましてもいろいろ議論があるのでございますが、目下政府といたしましてはそのようなことにつきまして、特別の措置をとる考え方は全然持つていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/6
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007・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 それについてでありますが、例えばこれは大蔵大臣にでも聞かなきやいかんかも知れませんが、近い将来においてそういつたものがあるとしたならば、恐らくそうなれば物価なんかも非常に及下がるといつたことになつて、再び資産再評価を行わなければならないというような、非常に面倒な手続が要るのでありますからしてむしろこの際一年とか或いは一年数ケ月の間にそういつた措置がとられる見通しがあるならば、その事業会社或いは個人にしましても、今更一年ぐらいのものをこの際資産再評価する必要はないと考えるのでありまして、その点ははつきりして置かないと非常にやる方としては迷惑を受けると思うのですが、これについてどういうお考えを持つておるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/7
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008・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) この法律案を提案しましたことによつてもお分りかと思いますが、そのような措置を近くやるというようなことは予想いたしておりません。で大体におきまして、現在の貨幣価値につきまして若干の今後における変動はあろうかと思いまするが、それを大きく動かすような措置を、殊にデノミネーシヨン、デヴアリユエーシヨンというような人為的な措置をとるというようなことは今のところ全然考えていないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/8
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009・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 それではもう一つお尋ねしますが、再評価の時期を今年の八月三十一日までということになつておるのでありますが、実際各事業会社に当つてみると、なかなかどの程度に再評価してよいかということが非常に考慮されておるのであつて、早急に実は決まらないのでありまするが、恐らくそういつた事情の下にある会社或いは個人が相当多いと思うが、この八月三十一日というような期限を、多少今年一杯にして貰うか或いは一度再評価をしても又都合が惡い、やはり現状に即しないといつたときは、再び数回に亘つて再評価をすることができるというようにして貰つた方がよいかと思うのですが、そういつた点について御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/9
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010・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 八月三十一日までに全部申請して頂かなければ再評価をできないことになつておりますことはお話の通りでございますが、これは私共やはり再評価というのは非常に会社にとりましても大きなことでございまするし、役所としましてもこの事務を如何に適正に処理するかということは、非常に大きな問題だと考えておるのであります。大体におきまして今の経済の情報、尚将来の情勢等につきましては相当予測困難な面もあろうかと思いまするが、併し従来に比べますと余程判断の基準と申しますか、等につきましても、状況は前と比べまして安定と申しますか、余程落着くべきところに落着きつつあるように考えるのであります。従いましてこのような際に一齊に全部揃つて行うということが、再評価をやる上におきまして必要なことであろうと考えるのであります。各企業の立場から申しましても、やはり相互に企業がどの程度にあるかといようなことにつきまして相当関心があろうかと思いますが、そういう場合におきましても成るべく歩調を揃えて同じ時期にやるという方が結局企業のためにも適切なことになるのではあるまいか。それから又役所といたしましてもこの際一齊にやるのでなければ、なかなかこの事務の適正な処理ということは困難でありまして、やはり私共もこういう根本的な問題に当る、而も広汎な手続につきましては時期を同じくいたしまして、成るべく各企業間におきまして齊一と申しますか、一定の方針に従つて妥当な再評価ができるようにいたしたいと。そういう点から申しますとやはり一定の時期を捉えてそのときまでに一齊にやるということが、再評価をやるにはやはりよいのではなかろうか、こういうのが本法律案提案の趣旨でございます。最初は私共三年間にだらだらにやるような案も実は考えたことがあるのでございますが、何と申しましても今申上げた趣旨によりまして、この際一齊に全般的にやる方かよいということにした方が、やはり結果としてはよいのじやないかという考えで、かようなことにいたしておるのであります。尚時期につきましては八月三十一日が法案の成立等の関係から見まして少し早過ぎやしないかという御懸念があろうかと存じますが、御承知の通り相当法律自体で基準等も明確にいたしております。尚今後におきまして委員会等に諮つて決めなければならない事項は、主として例外的な事項を除きますと、例の陳腐化に関する基準と申しますか、法律で定めました最高限の範囲内におきまして著しく資産が陳腐化等によりまして、基準で定めた額が実際の時価を超過しておると認められるような場合におきましては、一定の基準を設けてその基準以下で再評価をして貰うことにいたしております。この基準ができませんと企業としては具体的に計算しにくいという事情があると思いますが、これも併しながら強制的な場合と違いまして、その程度等につきましては余り嚴重なことをやる必要はなかろうと考えておるのであります。従いましてこの法律が通過いたしますれば、そのような基準等につきまして早速成案を得まして、決定して公表いたしまして、企業が実際にやることに支障なからしめるようにいたしたい。このようにいたしますれば、大体八月三十一日までにやることによりまして支障はないのではあるまいかと、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/10
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011・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 一定の時期に大体歩調を揃えて再評価をやるといつたような考え方はそれは私も賛成ですが、何しろ八月三十一日まてというような短期間ということが、実際問題として会社等におきましても、現在すでに大体の成案ができ上つておるということは非常に少いのであつて、むしろこの法案が全部でき上つてはつきりした見通しがついてから、実際検討するといつた方が非常に多いのだろうと思うのです。そういつた関係から、せめて今年一杯というぐらいの程度にやつて頂ければ非常に結構かと思いますが、そういうことを非常に希望しておるのでございますが、できなければ止むを得んが、そういつたことの方が私はやる方にとつては恐らく都合がよいと考えるのであります。今も陳腐化の問題が出たのでありますが、法案の三十五條でしたか、陳腐化の概念といつたようなものはどういつた程度を陳腐化というか、その点について御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/11
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012・吉田信邦
○政府委員(吉田信邦君) お答え申上げます。陳腐化という概念につきましてはいろいろ議論の余地もあると思うのであります。いわば物理的な陳腐化と申しますか、機械が普通以上に古くなつたという意味の陳腐化もございますれば、又発明その他によつて旧来使つておつた機械の型が古くなつたという場合もございます。或いは又設備全体として例えば地方鉄道で企業をやつておつたところが、自動車が非常にはやつて来てコストが安くなつたために、陳腐化してしまつた部面もいろいろございまして、この際陳腐化の具体的な内容について確定することについてはいろいろ議論が多いかと存じた次第でございます。従いまして法律の三十五條、陳腐化の点を規定いたします際に、陳腐化だけを取出して概念規定からいたしますと非常にむずかしくなりますので、三十五條では「基準日において陳腐化している資産その他の資産であつてその基準日における価額が当該資産について(中略)算出される再評価額の限度額より明らかに」低いというような形で、そういつたいわゆる陳腐化というもののみならず、過剰設備であるとかその他の理由によつて、ともかくも当然あるべき価額よりも現在の時価が低いというものを一括して取扱おうということにいたした次第であります。即ち陳腐化そのものだけを取出さないで、陳腐化した資産、或いは陳腐化に類似するものを引括めまして、要するに時価が、再評価のこの方式で算出したものよりも著しく低いものを一緒に扱つて行こうというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/12
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013・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 その基準日において時価が、と言われるのですが、時価というのは、やはり新らしいそういつた設備をするのに要するところの金額というのか、或いはそれを処分したときの時価、処分するときの価額と言いますか、そういつたところが非常に曖昧かと私思うのですが、而も陳腐化ということを今の御説明によると、著しくというような言葉を使われたのですが、著しくというのは非常に曖昧な考え方で、例えば石油とか或いはそういつたものの施設にしましても、殆んど現在国内に残つておる設備というものは、進んでいるアメリカなんかに比べて競争のできないような立場にあるような設備である、そういうことを言われておるのでありまして、そういつた点から見るとそれらも陳腐化の中に入れても私はいいと思うのですが、そういつたものもやはり陳腐化資産として、安く評価しなければならんということになるのか、そういつたことについてどういうお考えなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/13
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014・吉田信邦
○政府委員(吉田信邦君) お説の通りでございまして、現在の日本の企業の設備は、かなり全般的に陳腐化しているというふうにも見受けられる点が多いのでございます。従いましてこの再評価額の最高限度を算出いたします際にも、減価償却資産につきましては、定率法による償却で現在の価額最高限度を算出いたしております。定額法で参りますと、例えば三十年間のものならば毎年三十分の一ずつ減耗して行くというような計算で出て行くわけですが、定率法で参りますと初めに余計償却して、あとの残存価額を少くするというような方式で計算されるわけであります。従いまして年数にもよりますが、実際よりも二三割がた大体低目に、定率法だと現在の価額は算定されるわけでございます。そういつた一般的な形でまあ全体を陳腐化していると必ずしも言えるかどうか、疑問でございますが、一応再評価の最高限自体も多少堅めに見て、最高限を作つたわけでございます。で同時に今お話もございましたように、時価と申しますものが再取得価額であるか、或いは処分価額であるかということによりかなり大きな差がございます。従いましてここに「明らかに、且つ、著しく低いもの」というふうに規定いたしました点は、処分価額という点から見ても、又再取得価額という点から見ても、あらゆる面から見て明らかに低いというような場合に限つてだけ陳腐化として、最高限を特に低く押えるという方式を考えたらいいのではなかろうか。さもないといろいろ議論が多くなりますし、又我々の側としましても、又これを実際に扱う税務署の側としても、殊に短期間でやるという意味からいえば間に合わないというような点で、まあ大体の考え方としては再取得価額よりも、又処分価額よりも低いというような意味合を考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/14
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015・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 そうしますと、今の御説明を聞きますと、大体日本の現状として現在やつておるような、やられるような事業の設備については陳腐化というようなことじやなくして、大体やはり陳腐化していないというような考えで見ていいわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/15
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016・吉田信邦
○政府委員(吉田信邦君) 一般的に申しますと、全体が何割陳腐化しているかということになりますと、殊に外国との比較等から見ると、計算が立ちませんけれども、一応現在の日本の水準というものがあるだろう、ただ全体としては陳腐化しておるかも知れませんが、これが標準であるというふうに考えて、それ以上にひどいものをここでは陳腐化として取上げる。大体その際に、全体の最高限を算出する際に、そういつた点を考慮に入れて、定率法によりまして、比較的低目の最高限が出るような計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/16
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017・木内四郎
○委員長(木内四郎君) ちよつと一つお伺いしたいのですが、あなたの方で基準日を二十五年の一月一日にされたのですが、再評価の価額をとる時期を二十四年の六月とされたのはどういうわけですか。それを一致させるのがいいのじやないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/17
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018・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 基準日の方は、御指摘の通り丁度一月一日現在で持つておる資産につきまして、その際から遡つてやれるという、非常に重要な法律上意味を持つ基準日でございます。そういうものにつきましては課税上の関係、或いは会社の事務等の関係を考慮いたしまして、全部一月一日に揃えております。ただ再評価の価額水準を見る場合の時期につきましては、実はシヤウプ勧告が発表になりました直前の状態、それを押えるのが適正ではなかろうかと、まあこういう考え方で大体六月をとることにいたしたのであります。で株式等につきましては、勧告の発表によりましていろいろの影響があるかも知れない、従いましてその前の状態を基にして物価水準を見るというのが妥当ではあるまいか、従つて六月の水準が若干その後移動があつたようでございますが、大体におきましてはその程度の指数をとりましても、最近の水準と大差ないということを考えまして、今申上げましたような趣旨で物価水準等につきましては六月の水準を採用することにいたしたわけで、あります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/18
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019・木内四郎
○委員長(木内四郎君) そうするとそれは大体同じことだとおつしやるけれども、株式などは去年の六月からずつと下降傾向をとつて来て、そうするとあとに取得したものも一月一日を基準にして、而も前の高い値段で再評価の税金を納めなければならんということになると、非常に実際と合わないということになりはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/19
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020・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 株式等につきまする再評価額は、御承知の通り再評価いたしまして、その再評価額で直ちに再評価税を課税するのではないのでございまして、その株を処分したり相続した場合におきまして問題になるわけでございます。で再評価額と申しますのは、株を例えば処分した場合におきまして、その再評価額を超えて株が売れた場合におきましては、その超える部分は所得税の課税対象にする。再評価額より以下の部分は、これは六%の再評価税だけで済ませる。それから再評価額以下でしか処分できなかつた場合におきましては、これはもう所得税はかかりませんで、單に実際に処分した価額と前からの取得価額でございますが、或いは評価前から持つているものは財産税の評価額か、それの差額を基にいたしまして再評価税を課税するわけでございます。従いましてお話のように昨年六月の価額が比較的高くなるから、さようなことになるという関係にはならないと思うのであります。尚株式の場合におきましては株価指数ということによつているわけではございませんで、貨幣の一般的な購買力を示しますところの消費者物価指数をとりまして、株の場合の再評価額の物差にいたしております。従いまして先に申しました六月をとりました理由というのは、発表によりまして株価が動いて来た場合、その動きの部分は結果におきまして何と申しますか、再評価差額、再評価額から或いは超え或いは以下になる。その要素中にとり入れた方がいいのじやないか。そういう趣旨でございまして、今申上げましたように六月をとりましたが故に、株にとりまして不利だというようなことは実際問題としてはなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/20
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021・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 今ので大体分りましたけれども、基準日を決めたらその時でやつた方がよいじやないか、シヤウプ勧告も発表されて多少の移動はあるにしても、その時を押えて再評価しろというのをそれを半年ずらしたのだから、ずらしたら基準日の方で両方併せるということがよいじやないかというふうな気がするのですがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/21
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022・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) シヤウプ勧告でも或る資産を持つておる場合につきましていつ持つている資産にするか、いつから再評価の効力を持たせるかということにつきましては、やはり一月一日ということになつていたのであります。ただいろいろな価格水準を見る場合におきましては、さつき申上げましたように大体発表前の数字をとつた方がよいじやないかということであります。非常に大きく差がございますれば、その点につきまして尚又別途の角度から検討を要する問題もあろうかと思いますが、それ程大きな価格水準等につきまして変動がございませんので、今申しましたようにやはり六月をとる方が妥当ではないかという考えであります。株価は御承知の通り非常に大きく動いておりますが、株の場合におきましては株価は指数としてとつておりませんので、今申上げましたようにそれによつて特に不利になるというようなことはないと考えまして、大体六月をとつた方がよいじやないか、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/22
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023・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 この資産再評価の問題と地方税の問題とに関連しておる質問ですが、地方税の固定費産税の関係ですが、課税標準につきまして、課税標準は時価とすることということになつているのでありますが、この時価とは、今度の再評価したものを時価と見るのか、実際の何というか売買できるような価値を時価とするのか、この点についてどういう関連があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/23
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024・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 地方税の要綱でその点は明らかにいたしているかと思いますが、再評価法に基きまして企業が再評価しました額、この額につきましては原則としまして固定資産税の時価を評価する場合の最低価額と申しますか、この再評価法に基きまして再評価されました額を下つてはならないということにいたしております。従いまして再評価法に基きまする再評価額というのが、固定資産の減価償却資産を評価する場合の最低価格になる。併し必ずしも再評価法に基きまする再評価額そのままによるわけではございません。それは企業の場合によりましてはいろいろな点を考えまして或る程度低い価額で評価するというような場合も任意でございますから、建前上は認めておるのでありますが、実際上はできる限り私共はやはり適正な時価まで基準の範囲内において再評価をされることを望んでおるわけでありますが、強制するわけではございません。従いまして再評価法に基く再評価額を全面的に固定資産税について課税標準にするということは妥当ではあるまい。従いまして一方固定資産税におきましては、この再評価法に基きます最高の基準価額、これを相当有力な材料といたしまして、再評価法に基く再評価額を最低といたしまして妥当な評価をして行くということになろうかと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/24
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025・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 そうしますと仮に再評価額というものが、相当現在の経済情勢からいつて適正なものであるというような点からこの法律が出されているのであると考えますが、その時に地方税をかけられて、納税者が再評価額を非常に適正なものであると、現に再評価額として認められておるくらいだから、時価を決定する時にこれと非常に違つたような、うんと高いような時価を仮に地方税で決定される時には、そこに非常に争いができると思うのですがそういう点はどうですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/25
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026・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) これは御指摘の通り固定資産税については地方税法でいろいろ争の場合の手続等も決つております。一番大事なことは市町村に事情の分つた專門家を配置するということだけと考えております。従いまして固定資産の再評価の評価員という職を特別に設けまして、そういうようなものを專らやる職員を市町村に置くことにいたしております。而してその職員に相当する專門的な知識に優れ且つ政治的に左右されない立派な人を適当に選びまして、そういう仕事をやらせる、それによりまして固定資産の評価が適正に行くようにいたしたいというふうに考えております。従いましてさつき申上げましたように資産再評価法に基きます一つの評価の基準ができて参りますが、これは最高限でございますから、これをこのまま適用するわけにも参りませんから、これを一つの基準といたしまして、更に具体的な事情に適応するような妥当な固定資産税に基く賦課をしなければならんと思います。その基準等についてはいろいろ問題がございますが、これらは新しくできます地方財政委員会の大きな一つの任務になろうかと考えております。かようなことにつきましては十分留意しました上で、固定資産税の妥当な賦課ということが必要であろうかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/26
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027・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 それではむしろ時価というより再評価の基準によつて課税するといつたように、地方税の課税の標準を決めた方が明瞭になると思いますが、それはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/27
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028・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 実は強制的に再評価をやるというシヤウプ案をそのまま実行するということになりますと、再評価法に基きます評価額自体を固定資産税の課税標準にするということは、大多数の場合できるのではないかと私は考えていたのでありますが、企業の減価償却資産を再評価法に基く再評価をする場合におきましては、強制によりますということはなかなか個々の企業の実情に副わない、或いは企業の将来の方針等に必ずしも一致しないという場合がございますので、これを任意といたしましたのであります。従いまして再評価法に設けられてあります基準は一つの最高限でおります。その以内におきまして企業が任意の程度に、ものによりまして全部やる、或るものはやる、或るものはやらないということができるわけであります。従いましてこの再評価法に基きます評価額を固定資産税の全面的の評価額とするということは、やはりどうも適当ではなかろうと考え、これは再評価法に基きます最高基準額を基にしまして、やはり地方財政委員会の責任におきまして妥当な固定資産税の課税標準を決めて行くということに行かざるを得ないということに相成ろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/28
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029・九鬼紋十郎
○九鬼紋十郎君 それから再評価税の納税の問題ですが、これは三回に分けて最初のときに三%納税し、次に一、五%その次に一、五%納めるということになつておるのですが、これはむしろ毎年一%ぐらいずつ納めるようにして六年間ぐらいの分納にして貰つたら非常にいいと思います。現在納税者は皆困つておりますので、少しでも税金が軽く済むように細かく分納するというように変更できませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/29
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030・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) お話のような事情もございますので、一応原則としては今お話になりましたように二回に分けまして、而も最初に多く納めて頂くことにいたしておるのでありますが、利益が少いことと再評価による減価償却額の増加額とのこの二つを物差にいたしまして、大幅の延納を認めることにいたしておるわけであります。現在利益が相当ありまして再評価をやつて、再評価額に基いて減価償却も十分できるといつたような企業につきましては、やはりこの際百分の三ぐらいは納めて頂いた方がいいじやないかというように考えております。大体利益がまだ十分上つていない、将来は併し企業の経営をうまく合理化しまして、再評価額に基いて償却を十分行い得る、尚且つ適正な配当もできる、こういう見通しのある企業につきましては、私はやはり限度一杯の妥当な再評価をされることを期待いたしているわけでございますが、そういう企業の場合に今すぐ再評価税を納めで貰うということになりますと、そういう十分な再評価を妨げる結果になりますので、今申上げましたように現在の利益が非常に少い企業につきましては大幅な延納を認めることにいたしたわけであります。即ち法律にはつきり規定しておりますが、従来の税法で計算しました利益、即ち減価償却額を、再評価をする前の帳簿価額で計算しまして出て来ましたその利益の三五%、この三五%というのは法人税相当額でございますが、最初の年度に納める再評価税の百分の三の金額が、この金額を超えます場合におきましては、この超える部分の額は順次繰延べて支拂うことができる、そういたしまして最後に再評価積立金を資本金に振替えます際に、延納いたしております税金を納めて貰うということにいたしておるのであります。予算におきましてもそのような点を考慮いたしまして大体機械的に出て来まする税額の三分の二程度を予算に計上いたしておるのでありますが、この措置によりまして、私は本当に今は納めにくいという企業につきましては延納の措置が講ぜられますので、やはり相当な再評価ができるということに相成るのではなかろうかと考えておるのであります。かような方法によりまして大体御趣旨のような点も考慮に入れたつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/30
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031・黒田英雄
○黒田英雄君 今までお尋ねがあつたかも知れませんが、この法人の再評価した資産で差額を積立つておつた場合に、その再評価後に処分損とか、再評価損を生じたものは、それだけを積立勘定から崩して、そうしてそれに相当する未納の税金があれば免除するということになつていますが、若しこれが未納の税金よりも超過してそれだけの損があつたような場合には、その超過した損というものは免除するとか、或いは還付してやらないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/31
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032・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 御指摘の通り一旦再評価いたしまして、再評価積立金に繰入れた後に、その資産を処分してみたら再評価額よりも下廻つてしか売れなかつたとか、或いは現実に実際の価額が下がりまして、税務計算上認められるような評価減を立てざるを得なくなつたというような場合におきましては、その積立金の中からその資産の処分損、値下り損に相当する分を減額するということにいたしておるのであります。そのような措置をとりまして、その際に未納になつておりまする税金のうち、その減額した積立金に対応する部分を軽減するということにいたしますれば、少くとも再評価税に関する限りはそれですべて何と申しますか、処理が完結したことになるのではなかろうかと考えております。今のお話は処分損があつたときに処分損の金額を更に何らかの形で補填する方法はないか、こういうお話かと思いますが、その際にすでに納付した再評価税までマイナスするのは如何であろうか、その損は積立金を取崩すことによりて解決いたしたいと、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/32
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033・黒田英雄
○黒田英雄君 先ず第一期を納め終つて、そうしてその後に評価損とか処分損があつて、それが評価した全額でなくても、相当な額に達するような場合には、第一期の額を引いた残りの未納の税金よりも殖える場合がないとも限らんと思うんですがね。そういう場合にはそれはいかんと、ただ未納の税金だけを免除してあとは返してやらないのだということは、均衡を失するように思うんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/33
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034・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 未納の分の税金を返すか返さないかという問題につきましては、そうするかしないか、実は部内におきましてもいろいろ検討してみたのであります。ただ未納の税金につきまして返すということになりますと、企業としては再評価積立金は一種の暫定勘定的なものでございますが、やはり企業としましては、相当見通しを立てまして、再評価額につきましては、相当程度の責任のあるところでやつて貰いたいという希望を有するのでございますが、これを一遍積立てたが、後に処分してみたら損が出た、或は時価が下つたらそれから幾らかでも落すことを認める、税金まで納めたのを返すということになりますと、企業として責任のある再評価額を出しまして、再評価するという方向にやや逆行するのじやないかという趣旨からいたしまして、既納の分は返さない、未納の分は併しそういう事情がございますので返す、納めなくてもいいというふうにした方がいいんじやないかと、こういう趣旨でこのよろなことにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/34
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035・黒田英雄
○黒田英雄君 御趣旨は分りました。それからもう一つ伺いますが、これは歳入に関係することになるんですが歳入の方で資産再評価税の収入として、二十五年度には百五十九億が見積られておるようでありますが、この算出の方法は御配付になつた予算の説明に書いてあるんでこれで分りますが、これによると法人の場合を見ますと、再評価倍率は平均九、五一二で算出されているように思うんですがそうしますと大体帳簿価額に対する再評価の額というものが、九・五一倍になるという見込を立てられたように思うんです。併しこれは、法人等においてはいろいろ御説明もあつたように、その会社の利益で以て減価償却できる程度とか、いろんな関係を考慮しなくちやならんと思うのです。実際において果してこれだけの倍率に評価されるものであるかどうか、この点が非常に我々はちよつとこれを見ただけでは疑わしいんですけれども、どういう根拠で以てこれを算出されたかということを伺いたいのです。新しい税でありますし、又再評価というものを、物価指数その他いろいろのものの限度までやるということになつておれば、算出が相当根拠が楽に行くものじやなかろうかと思うのですけれども、それが自由に委されておつて今御説明もあつたようにうつかり多くしておくと、納めた税金は取られてしまうということになると、余程注意してやらなくちやならんと思うのです。そうしますと会社々々の事情によつて、いろいろ違つて来ると思うのです。又これから先の経済状況によつても又非常に違つて来ると思うんですが、余程算出は困難だろうと思うんですけれども、どういう根拠からしてこういう九・五一倍というものが出たものか、それを伺いたいのです。以前戰時特例か何か創設されたときも、歳入の見積りが非常に少くて、後で非常に非難を受けたようなこともあつたか、今度はまあ多いのではないかというような気がするのです。その根拠を一つ伺いたい。むしろ九・五一というものは一番多いものであつて多くはもつと低いのではないかと思う。そうすると平均はもつと低くなるのではないかと思われるのですが、その点を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/35
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036・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 今御指摘の点はなかなかむつかしい点でございまして、私共もいろいろに苦労いたしたのでございますが、結局御指摘のように、企業の減価償却期間は企業の任意ということにいたしましたので、果してどの程度やるかという見込がなかなか実はむつかしいのでございますが、大体におきましてこの帳簿価額に対しましてこの法律で定めております最高限がございますが、その最高限を通用いたしまして出て来ました額の半分程度総平均でやる、或る企業は限度一ぱいでやる企業もあろう、大体三分の一でやる企業もあろう、中には、さつきお話が出ましたように、陳腐化等によつて最高限よりも明らかに低く査定しなければならんところもあると思いますが、そういういろいろな関係を考慮しまして、大体総平均では、全体として最高限の二分の一くらいの程度になるのではないかという見通しの下にこの計算をいたしておるのであります。即ち会社の場合は、その帳簿価額が確か八百六十三億円程度になつておりますが、それに再評価の法律に基きます基準をそのまま適用しますと、一兆六千四百三十億という時価の最高価額になります。併しこれはなかなかえらい数字でございますので、そこまで行きますというのはどうも考えられない。従いましてその半分と見まして、八千二百十七億程度の帳簿価額に附け替えるという見込を立てておるのであります。その最高限の算定をした倍率が丁度九、五一倍になつておるわけでありまして、そのような方法で再評価の額を算定いたしておるのであります。尚この税收入の見地から申しますると、一面これだけ再評価をいたしました結果、それだけ減価償却額が増加するわけであります。その増加する減価償却額につきましては、法人税の收入見積りでそれだけ課税所得が減るという計算をいたしておりまして、その方面で相当の減収額を実は立てておるのであります。ほぼ同額になつておるのでございますが、同額の法人税の減少を、再評価に基きます減価償却額の増による減少額を立てておるので、税收入といたしましては若しもこれに若干狂いがありましても、若し企業が一般的に予想よりも高く再評価しますと、再評価税はこれよりも多くなる、その半面法人税が少し減つて来る。反対に企業が私共予想します総平均二分の一よりも全体として下廻つた再評価をするということになると、再評価税は少し減つて法人税の方が殖えて来る。こういう関係に相成るものと存じまして、歳入全体につきましては若干の出入りがございますが、見積りとしましては適正な見積りになつておるのではないかと思います。併し御指摘の点はいろいろむつかしい点でございまして、いろいろの諸般の事情を考慮しまして、最高限の二分の一程度に総平均になるというところに非常に大きな予測を立てておるということを御了承願いたいと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/36
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037・木内四郎
○委員長(木内四郎君) ちよつと一つ伺いたいのですが、再評価の額ですね、富裕税の課税価額との関係はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/37
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038・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) その富裕税の課税価額は、やはりすべて時価によるということにいたしておるのでございまして、株式につきましては、ただ取引所に上場されておる株式につきましては十二月一ぱいの取引所の相場の平均によることにいたしております。その他の資産につきましては若干地上権等の法定評価が、相続税でございますが、大体におきましては十二月三十一日の時価によるということにしております。従いましてこれは全部そのときの時価を調べまして課税しなければならんことになるわけでございますが、御承知の通り土地家屋等については、現在相続税でやつておりますように、大体におきまして賃貸価額の適正な倍率を地域別に調べまして、それを基準にいたしたい。これは併し飽くまでも基準でございますから、納税者が自分のところは基準より著しく低いということを主張されて、はつきりした材料がありますればそれによるべきであると思います。又場合によりましては基準よりも時価が高いと認めたならば高いものによつて査定することもあろうかと思います。大体その基準を定めましてそれによつてやつて行くというふうにいたしたい。それに固定資産税の関係も睨み合せなければならんと思いますけれども、これは飽くまでも富裕税法に基きまして個別的に適正な時価を生み出して合理的な解決を図りたいと考えているのであります。従いまして同族会社等の株式の場合におきましては、やはりこれは会社の資産を現在の時価に引直しまして、負債を引きまして正味資産を調べてそれの一株式当りで評価するのが原則でありますが、併し相当な事業でありまして同種の会社の株式の売買実例がありますればその売買実例を参照いたしまして、時価を適正に決めたいと考えております。尚再評価とちよつと関係がございますのは、個人事業の企業用の資産でございますが、この資産の場合におきましては、これはやはり再評価法に基きまして、その個人事業者のその資産に対してどの程度の課税をしたか、これも一つの勿論基準になると思いますが、併しこの場合におきましては固定資産税の場合と同じようなものに必ずよるわけじやない、やはり双方調べましてその時価によつてその個人の営業資産を調べて行くというふうに相成ろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/38
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039・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 個々の場合には実際には適切な実例と言つても少いだろうと思うのです。そうなつて来ると何かの基準によつてやらなければならんと思うのですが、そうすると今あなたが言われたように、土地家屋などについては一定の倍率を地域的に相当これは細かにやらなければいかんと思う。地域的にやつて再評価の最高限というようなものは別に標準にしないということですが、ややもすると税務署に適正なものがなければ再評価の最高限をとつてこれはこうだからここまでやらなければならんという危険があると思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/39
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040・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 勿論再評価法に基きます再評価の倍率と申しますか、倍率を適用した価額というのもその際の一つの参考にはなろうかと思いますが、併し再評価額を生み出すためのいろいろな集め方というのは、御承知の通り非常に物価騰貴率を一律に延ばす方法をとつておりまして、これが個々の資産について具体的に妥当である一つの時価だということは私は必ずしも言えないじやないかと思います。従いまして飽くまでも富裕税の納税者等につきまして、個別的に時価を生み出して課税する場合におきましては勿論参考にはなりますが、やはりその土地の事情を更によく調べ納税者の状況等も調査いたしまして、個別的に適正を期せられるものでなかろうかと考えております。殊に土地等になりますと、借地権の分、所有権の分をどう見込むか、家屋等につきましても借家権と所有権の分と最近は大分分割して見なくちやならん状況でありますので、そういうことにつきましても各土地の状況も調べまして富裕税の時価の評価には適正を期したいと考えております。尚富裕税の納税者は現在比較的少く、大体四万九千人程度じやないかと見ておるのでありますが、その程度の数でございますれば随分丁重な調査ができるのじやないか、もつと富裕税の納税者の範囲を非常に拡げまして、相当多数の納税者に課税して貰うような一般的な増税といつたような考え方になりますれば、これはやはり法律で簡易化を期するために、一定の評価規定を設けた方がいいじやないかという考え方もとつたわけでございますが、今回の富裕税の程度でございますれば、むしろそのような評価規定を設けないで、個別的に妥当を期するという方が却つて妥当を期せられるのではないかと考えます。尚将来その点につきましては実行しました上で、或いは土地家屋等につきましては、むしろ簡単な固定評価の方法をとるかとらないか、将来におきまして確かにこれは一つの問題じやなかろうかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/40
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041・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 外にありませんでしたら午後二時まで休憩いたしたいと思います。
午後零時一分休憩
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午後二時五十分再会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/41
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042・木内四郎
○委員長(木内四郎君) これより休憩前に引続き開会いたします。都合により本日はこの程度で散会いたします。
午後二時五十一分散会
出席者は左の通り。
委員長 木内 四郎君
理事
黒田 英雄君
伊藤 保平君
九鬼紋十郎君
委員
玉屋 喜章君
平沼彌太郎君
油井賢太郎君
小宮山常吉君
高橋龍太郎君
藤井 丙午君
政府委員
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
大蔵事務官
(理財局経済課
長) 吉田 信邦君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03819500418/42
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