1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十日(木曜日)
午前十一時十七分開会
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本日の会議に付した事件
○昭和二十五年の所得税の六月予定申
告書の提出及び第一期の納期の特例
に関する法律案(内閣送付)
○資産再評価法案(内閣提出、衆議院
送付)
○富裕税法案(内閣提出、衆議院送
付)
○租税特別措置法等の一部を改正する
法律案(内閣送付)
○地方自治法第百五十六條第四項の規
定に基き、税関監視署及び税関支署
監視署の設置に関し承認を求めるの
件(内閣提出、衆議院送付)
○小委員長の報告
○旗等の物品税免税点引上げに関する
請願(第八四四号)
○身辺細貨の物品税を小売課税に改正
の請願(第一二四八号)
○衛生かばんの物品税課税対象明確化
に開する請願(第一五三四号)
○洋画の額縁および画架、絵具箱等の
物品税撤廃または軽減に関する請願
(第一六三四号)
○協同組合に対する課税免除または軽
減の請願(第九九六号)
○農業協同組合に対する課税軽減の請
願(第一一一一号)
○生活協同組合に課税反対の請願(第
一二七四号)
○生活協同組合および労働組合に課税
反対の請願(第一二七七号)
○農業課税の適正化に関する請願(第
一一四七号)
○勤労学生の所得中一部所得税免除に
関する請願(第一五二〇号)
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001・木内四郎
○委員長(木内四郎君) これより大蔵委員会を開きます。
「昭和二十五年の所得税の六月予定申告書の提出及び第一期の納期の特例に関する法律案」を議題としてこれより提案理由の説明を聴取することといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/1
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002・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/2
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003・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 只今議題となりました昭和二十五年の所得税の六月予定申告書の提出及び第一期の納期の特例に関する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
政府は、さきに国会の御審議を経まして所得税法の改正法律を四月一日より施行いたし、改正規定に従つて所得税の六月予定申告書を提出し、第一期の納税をするようにいたしたのであります。目下政府は、昭年二十四年の所得税の申告及び納付の状況に鑑み、その課税上の適正な処理を図るため、万全の努力を重ねているのであります。尚今回の所得税法の改正は、画期的な改正でありまして申告納税に際しまして、改正所得税法の趣旨の一層の周知徹底を図る必要がありますので、これらの事情を考慮いたしまして、本年に限り、所得税の六月予定申告書の提出及び第一期の納期に関し特例を設け、所得税の六月予定申告書は、本年七月一日の現況により、これを記載し、七月一日から同月三十一日までに提出することとし、又所得税の第一期の納期も七月一日から同月三十一日までとして、それぞれ一ヶ月繰り延べることを適当と認めたのであります。
何とぞ御審議の上、速やかに賛成せられるように切望してやまない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/3
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004・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 本案並びに資産再評価法案、富裕税法案及び租税特別措置法案等の一部を改正する法律案を議題として御質議がございましたらお願いいたします。尚地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関監視署及び税関支署監視署の設置に関し承認を求むるの件をも合せて議題として御質議がございましたらお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/4
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005・波多野鼎
○波多野鼎君 資産再評価法案についてですが、この法律案が狙つておつた趣旨が、日本の経済界のこのデフレ的な傾向が強くなつて来るに従つて、最初にこの法律案が問題になつたときと情勢が非常に違つて来ておると思うのですが、そういう点について最初に考えておつたものとどういう点で変つておるのか、その点が一つ。
又効果はどういうところを狙つておるのか、今一つお話を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/5
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006・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 資産再許価に関しましてお話のように、最近の経済情勢の変化に対応しまして考え直す余地があるかどうかというお尋ねかと思いますが、その点は特にそのことを考えていたしたわけではないのでございますが、シャウプ勧告では御承知の通り再評価をすべて強制的にやるということになつてしたのでございますが、政府はその後いろいろな事情を考えまして再評価する、企業の減価償却資産につきましては、法律は最高限だけを示しまして、その範囲内におきまして各企業がそれぞれ自主的に自己の責任におきまして再評価額を定めて、再評価をするということに修正を加えたのでございます。従いましてそのような修正は特にこのような経済情勢の見込みを立てまして、修正を加えたわけではございませんのでございますが、そういうことになつておりまするから、大体におきまして本法を施行しまして、若干の情勢の変化に応じまして、それぞれ企業が妥当なる再評価をするということは実現可能であると考えておる次第でございます。ただ全体の物価水準等に著しい影響があるというような見通しでございますれば、これは又若干問題にすべき点があろうかと思いますが、まあ私共としまして、は、若干の今後における変化はあろうと考えておりますけれども、大筋としましては大体このような基準でそれを最高限としまして再評価をやるということになりますれば、目的を達成し得るのではないかと、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/6
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007・波多野鼎
○波多野鼎君 そこでこの法律は再評価を強制するわけじやないということは何だが、一般の会社或いは法人ですが、こういう側の受ける印象、或いは又この法律ができたことによつて再評価したいと考えておるもの、再評価しないで置こうと考えておるもの、いろいろあろうと思うのですが、どんなようなふうに政府の方では見ておるのですか。再評価したいというもの、しないで置こうと思うもの、この比率の詳しいことは分らんと思うが、大体の感じはどんなものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/7
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008・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 私共は大体の見通しとしましては、この最高限をそれぞれ決めておりますが、全体としましてはその最高限の半額、半分程度ぐらいに総平均しまして、付け替が行われることになりはしないか。その辺のところにいきますれば、この再評価の目的を相当適正に果し得るということになるのではないかというふうに凡そおうまかには見ておるのでございます。ただ最近の情勢によりましても、お話の通り大分産業の状況が変りまして、それぞれ目下具体案を会社におきましては作成中のようでございますが、極く最近聞く事実によりましても、例えば紡績業のごときは最も積極的でありまして、殆んど陳腐化の点の政府の制限がございまするが、紡績業は恐らく殆んど陳腐化を適用するということはないだろうと思いますが、そうなりますと限度いつぱい再評価したいということで計画を進めておるようでございます。その他の各種の産業におきましても、重工業等におきましては尚まだ最近の状況が十分合理的な経営まで至つていない。或いは、将来の見通しがまだつき難いというような点からいたしまして、目下いろいろ案を作成しまして研究をしておられるようでございますが、その方面におきましては私は実際問題としまして、限度よりも或る程度低いところで再評価が行われるということになりはしないかと考えております。
それからその他の一般の中小の企業等におきましても、再評価を認めるわけでございますが、これらの場合におきましても産業の種類によつていろいろ違うかと思いまするけれども、よく研究して頂きますと将来相当な利益が出て来るこの予定がつきます限りにおきましては、再評価をやつて貰つた方が、六%の再評価税を今納めましてもずつと有利なわけでありますから、やはり再評価はやりたいというところが実際問題としましても大多数のようでございます。これは非常に将来の見込が到底立たないというような企業の場合におきましては、結局再評価いたしましても、収益によつてそれに対応するだけの減価償却ができないというような状態の企業におきましては、これはどうも再評価しましても余り意味がございませんので、まあ実際上再評価はしないという企業も出て来るかと思うのでありますが、併し大体いろいろその後会社等にあたつて見ましても、やはり相当再評価はこの際いたしておきたいという気運がまだ私は相当強いというふうに見ておりまして、やはり恐らく執行されまして、いろいろ具体的に問題が展開して参りますれば、最初に申上げました総体としては、五割前後或る程度企業によりましては差異がついて来る、こういうふうなことに落着くことになるのじやないか、又私共としましてもそういうふうになるのが望ましいと、このように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/8
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009・波多野鼎
○波多野鼎君 こういう場合のことは予想されておらないのですか。今物価はどんなふうになるか、いろいろ観測がありましようが、仮に今のようなデフレ的な政策が続くとしますと、再評価をやつた結果、減価償却の面においては有利になりますけれども、これは減価償却の面においては非常に有利になりますが、貨幣資本といいますか、名目資本が非常に膨脹してしまつて、そちらの方の負担、それから株式配当の問題などに非常に影響が大きいと思いますが、そちらの方面では非常な損失を蒙むる、経営上非常にむずかしくなつて来るのじやないか、こういう点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/9
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010・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) お話の通り再評価をやりますと減価償却がそれだけ増えますし、その他に差当つては資本への振替は認めないのでざいますが、それでも現在の資本金に対しましても増加した償却額を適正に計上して、尚且つ利益として配当し得る分がどの程度に残つておるか、これは相当問題だろうと思います。でありますが、何しろ今日の殊に再評価額が多額に出て来るような企業の場合におきましては、表面上は資本金が会社の事業分量、或いはその実態の資本に対しまして非常に寡少になつて来ることになるかと思います。逆に申上げますと、つまり再評価によりまして償却額が余計に増えれば増えるほど、実態の企業の大きさに較べまして、表面上の資本金は比較的少なくなつて行く。従いまして経営が若干向上しますと、売上金に対して或る程度の利益は出て来るということになりますと、その額というものは表面上の資本金に対しましては相当な利益になりまして、或る程度の配当は出て来るということになる場合が多いと思います。従いまして私は差当り資本金を振替えまするまでの間におきましては、お話のような点も確かにございますが、或る程度の配当は尚維持ができるという企業が、やはり相当多いのじやなかろうかと考えておるのでございます。ただ併し現在の表面上の資本金が多い企業は、これはどうせ固定資産にその含みがないというのが大部分でございまして、従つて再評価の償却がそれほど増えないというような場合が多いようでございます。問題はただ三年後におきまして資本への振替を認めておるのでございますが、資本への振替を認めますと、それによりまして名目資本が相当増加する、例えば再評価積立金が、今の資本金に対しまして五倍とか十倍くらいになるような企業が相当あろうかと思いまするが、仮に十倍になります支一全部資本金に振替えますと、名目資本が十倍になる、そうするとそれに対して配当を維持するためには相当な負担になるということに相成るかと思いまするが、その辺のところになりますとまだ今後の、いろいろ経済情勢の推移等も勿論考慮に入れなければならないと思いますが、まあ余程客観的に惡い情勢が出て来るとか、或いは政府の施策その他によりまして尚且つ合理的な経営がその時代になつてうまく行かないという状態になりますれば、お説の通り大分問題があろうと思いますが、できるだけ政府といたしましては、あらゆる努力を傾けまして、その当時におきましては、企業としましては実質の資本の価値に合つた名目資本、それに対して適正な償却もし、尚且つ合理的な配当も或る程度できるというような方向に持つて行くべく、企業の方も努力し、政府も努力する。状況が非常に惡化しない限りにおきましては、そういうことを目安にして今後向つて行くというのが、行くべき途ではなかろうかと思いますが、併し、それは状況の変化或いはその他いろいろの情勢に左右されますので、私共簡單に見通しを申上げることは、必ずしも適正ではないと思うのでございますが、併しそのような方向に持つて行くべきであるということにおきましては、どうもやはりそういうことを申上げるより外ないのじやないかと、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/10
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011・波多野鼎
○波多野鼎君 これはまあ、日本の今後の経済情勢というものについての観測の仕方だと思うのだけれども、まあ仮に為替相場の問題とか、デノミネーションの問題とかというようなものが当然起きる問題、それはいつ起るか分らんですが、当然起る問題であろうと私共思つているが、そういう場合、又この再評価したあとで、資本の大幅の切捨てというようなことになる。そういう危險も非常に多いのじやないかということを考えるのだが、政府側ではそういうことは一応、そういう先のことは除外して、現在だけということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/11
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012・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 昨日もそういうお尋ねがございまして申上げたのでございますが、政府といたしましては目下のところ、そのようなことは予想しないで政策を考えて行くという建前にいたしております。再評価法案自体も、そのような措置は考えないでやつて行くということを前提にして考えております。ただ、そういう措置をやります場合におきまして、デバリエーションといつたような貨幣価値の実質的な切下げ、それに関連しまして、單純な呼称の付替えでなくして、債権債務の如何によつて或る程度切下げ率を下げるということになると、これはなかなか問題が多くなるのじやないか、併し私共はそのような措置は、いろいろこういう修正措置を加えますと殆んど必要が、なくなつて来るのじやないかという意味におきまして、いろいろ不公平になつておる面もございますが、これはむしろ或る程度このような部分的ないろいろの補正等を加えて行きまして、大体できる限り、一遍に無理なことをしないで徐々に修正いたしたい。或る一定のときに自然に安定するといつたような方向に行きますのが、経済政策としても望ましい姿ではなかろうかということを考えます。例えば再評価の措置も実は切下げないで、今の円の価値の不合理を噛み合せて是正するという方向によつて、そういう問題を解決する一つの方途ではないかと考えるのでございます。尚併しデノミネーシヨンと申しますか、單純な貨幣の呼称の付替えでございますと、これは割合に比較的簡單でありまして、実質的に権利義務の関係にあまり変更を加えないということになりますれば、別段このような手段を講じておりましても、支障にはならないというように感ずる次第であります。併し今の御指摘の問題は、私共具体的に的確に将来のことを申上げることは困難だと思いますが、今のところでは、最初に申上げましたような考え方で本案を作成いたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/12
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013・波多野鼎
○波多野鼎君 それから富裕税法について……。富裕税法は、これは所得税の税率を五五%ですか、そこで切つたものの、それに対する補完税というような意味で、富裕税法というものが考えられていると思うのですが、これはいろいろ今までに議論があつた点なんですけれども、非常に名目的になつてしまうのじやないですか、富裕税法というものは施行して見たところで……、財産の隠匿する途が今だつて開かれておるし、特に銀行検査の問題、これはやかましく問題になつた点だが、銀行検査をやらんことになつたのだと思うのですがね、そうなつて来ると、この富裕税法で高額の所得を本当に捉えるということが実はできなくて、單なる申訳的なものになつてしまう慮れがあると思うのだが、そういう点について政府はどんなふうな覚悟で以てこの高額所得を捉えることを考えておるのですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/13
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014・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) この富裕税につきましては、今御指摘のような理由で創設いたしたわけであります。所得税の税率はあまり高くするということは却つていろいろ問題多い、むしろ所得税の税率としましては或る程度のところで止めて置きまして、その代り高額財産所得に対しましては、これは如何にも低い所得税には累進税率は妥当な負担にならないから、別に富裕税を説けて高額所得に対しては重課するということでできておるわけであります。それから富裕税を起しますと自然に所得自体も的確に把握できるということになりますし、又富裕税自体におきまして、適正な課税ということには勿論努めなければならない。相続税と相俟ちまして、私は将来いろいろな税を考察することによりまして、大所得者の所得の捕捉が適正に行く、その反面、税率等はそう目茶苦茶な税率にしないで、適正に捕捉しましても納め得るように是正しまして、適正に掴むというのが今度の改正の大きな狙いになつておるわけであります。そういたしまして、今御心配の銀行預金の利子についてお話がございましたが、これは無記名預金を法律上禁止するという措置は、これは今回見合わすことにいたしたのでありますが、実行におきましてはやはり無記名預金が今後は、銀行としましては認めない考え方で参つております。ただ仮装名義等を用いた場合に、適正に債権者をどうして調べるかという問題は、やはり今後におきましても問題があると考えておるのでございますが、何しろ納税者の数は、富裕税は比較的相当な資産以上でありますから少いと考えております。勿論それから一面におきましては、所得税におきましても、所得七十万円以上の人は全部一年に一遍バランスを出して貰う、十二月三十一日現在の財産と負債の表を税務署に出して貰うことにいたしております。それから又五百万円に満たない正味資産が三百万円以上の人も同様に十二月三十一日現在で資産、負債表を出して頂くということにいたしておつたのでありますが、そのようないろいろな措置を適正に運用して参りますれば、私は相当やはり把握ができるのじやないか、ただ書画、骨董の動産類に投資された場合におきまして、これをどの程度把握できるか、これはなかなか問題かと思いますが、これも毎年の財産の移動状況をよく調べて置きますと、割合にどつかで尻が出て来るのじやないかということも考えておりまして、大所得者については表面上は所得税の税率を低くいたしました反面、所得は的確に申告して貰う。富裕税は税率としましては最高はやはり高い税率でありますが、中のところはそれほどの税率ではございませんので、一つ納税者の協力を得まして、実現して貰うべく極力努めたいと、かような心組みで行きたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/14
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015・波多野鼎
○波多野鼎君 納税者の協力はいいのですがね、やはり法律を作るには、それが本当に法律の趣旨に副つて行われるような法律を作らなければならない。日本には行われない法律が多いのである。だからだんだん遵法精神が麻痺しておるということを虞れられている時代なんですが、この富裕税についても施行上例えば、そういう財産目録というようなものを提出して貰うというような、それだけで一体これが取れるんですか、七十万円以上なんというと相当人数は多いでしよう。これは例の青色申告があのように有名無実になつておる状況の下で、こういうことを考えてみてもこれは壁に描いた餅のようなことになつてしまいはせんかという気がするんですが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/15
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016・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) さつき申しましたように、一部の動産類につきましては、なかなか調査が困難な点が確かにございますが、例えば不動産等でございますと大体はつきりしてい、る。それから株式等も今盛んに転々されておりますが、やはり今後におきましては配当を受領す傾向になりますから、結局いつかははつきり台帳に登録されて来るというふうに考えられまして、株式等もこれは私は割合把握されるのではないかと考えます。ただ譲渡所得税の課税は、従来の株式の短期の転々、これはなかなかむづかしいものでありまして、それを少しでも適正を図るべく、二ヶ月以内の名義書換を強制するような法律案を考えてみたのでございますが、現在とに角名義書換機関が整備されておりません。目下これを直ちに実施しますというと、著しい障害を及ぼすと考えられますので、今回は見合せることになりまして、今後の研究課題にいたしておる次第でございます。併し一年一遍課税しますところの富裕税等につきましては、株式を幾ら持つているという把握は、私は小株式を除きまして割合にはつきりするのではないか、かように思つております。預金等も只今申上げましたように無記名預金をやめるということになると、仮装名義の預金を調べるというのが難点でございますが、これも或る程度分つて来るということになるのではないかと思うのであります。そこで問題として残るところは無記名の公社債、これも大部分「前から申します、と少くなつておりまして、殊に少額のものは、今回の国債償還の一環といたしまして、償還してしまうというような計画もあるようでございますが、大口のものにつきましては、やはりこれこそさつき申しましたように、大体資産の移動によりまして捉えたいと思いますが、登録制を実行せん以上むづかしいものと思います。これも株式の名義書換の問題と関連いたしまして、簡易登録というような方法につきまして、研究の余地が残つております。
最後は現今で退蔵しておるといつたものに対しては、これはなかなかむずかしいのであります。これは実際さつき申しました毎年の財産のバランスと睨み合せまして、それによつて固別的に調べまして、適正に課税するより外ないと思います。書画骨董その他貴金属、こういう方面に逃げるものも確かにあろうと思います。この方面も毎年資産の移動というようなことを調べて参りますれば、やはり相当まとまつて沢山そういう形で所有したという場合におきましては、直ぐは見付からないが、一定の時が経ちますれば、結局どつかに尻が出て来るのではないか。こういうものをよく調べまして、適正を期するようにしたらどうかと考えております。前回の財産税は、非常に臨時的な大きな財産税でございましたので、資産調査のために、相当ドラスティックな措置を行いました。この程度の財産税を課税するために、あのような措置を一般的に採りますことはどうも却つて弊害の方が大きいと考えられますので、今私が申上げまし夫ような趣旨に従いまして、個別的に、納税者毎によく丁寧に調べまして、それによつて適正に把握して行くという方向に向いたい。かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/16
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017・波多野鼎
○波多野鼎君 第三国人の外資導入の関係で、第三国人の所得税額を下げろとか言われておるようでありますけれども、あれはどうなつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/17
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018・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 昨日実は少し要点を御説明申上げた次第でありますが、法律案としまして目下国会に提案する運びに相成りまして、目下衆議院で委員会の審査を受けております。昨日も本委員会で予算、審査で若干御説明申上げたわけでございますが、大体昨日も申上げましたように所得税と申しますか、なかんずく給與所得者等の所得税、この所得税につきまして適正な措置を講じなければなかなか外資が入つて来ない。外資だけ單独に来るわけではございませんで、やはり管理者とか、責任者とか、技術者等が付いて来る場合が多い、こういう場合には付いて来る人の給與所得に対する課税の適正を図らなければ、外資自体も入つて来ないということになりますので、そのような面につきまして、アメリカの所得税の負担よりも尚若干高くなるようでございますが、五割を控除いたしまして適正を図りたい。そういう方法によりまして日本人よりも相当優遇されると思います。そういう措置を講じまして、極力日本に望ましい外資が入つて来るようにいたしたい。そういう点が一番大きな点でございます。尚その外にそれに関連いたしまして学校の先生とか、或いは牧師等の給與所得に対するやはり極力優遇も考えておる次第であります。
それからもう一つのあれは外資が社債に投資される場合におきまして、一般の税率は二〇%でございますが、これを一〇%程度に引下げる。それによりまして社債の投資が助長されるのではないか。株式は御承知のように本年から源泉課税をやめましたので、株式投資につきましては特別の優遇措置を講ずることは必要ないと考えておるのでございますが、そのような点が主たる点でございますが、その他に一二点経済的の措置といたしまして、現在ドル所得者には課税いたしておりません。非円通貨の取引に基く所得に対しましては課税いたしていないのでありますが、近く非課税の取扱は恐らく止めになることと期待しております。止めになるような場合におきまして、いきなり日本の高い所得税を適用いたします相当の負担の増加になりまして、現仕日本にすでに来ましていろいろ日本経済のために、有効な活動に従事じておられるところの外国人達が、日本にこうもおられなくなるというようなことになる虞れがございますので、暫定的に昭和二十五年度、二十六年度の二年間に限りまして、やはり五割の控除をして課税するということにいたしておるのでございます。それに関連いたしまして、一面におきましては、ドルの取引自体も制限するという方向に向つて来つおるようでございますが、そうなりますと、今後やはり新しく二箇年以内に合法的に入国して来られる方々、そういう人に対しましても同様経過措置も必要であろうという意味で、こういう法案を作成いたしまして提案いたしておるのでございます。尚それに関連いたしまして、外国で受けておる分につきましては、その給與所得につきまして強いて課税するということは、どうもやはり実情に副わんようでございますから、家族等が本国におりまして、その家族が外国で直接受取る分につきましては、所得税の課税上所得金額に算入しないで課税するというような措置もなたしております。
以上のような措置を考えまして、極力外資の導入、外国人が日本で望ましい活動が十分にできますように税法上措置いたしたい。こういう趣旨で提案いたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/18
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019・波多野鼎
○波多野鼎君 その問題は後で詳しく聞きたいと思いますが、それに関連して富裕税の問題などについて、終戰直後よくやりました外人名義で事業を営むということが随分沢山あつたと思いますが、ああいうことになる虞れがあるのではないかと思いますが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/19
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020・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) この富裕税の方は、外国人に対しましても特例は設けておりません。日本にある資産であります限りにおきましては、全部課かるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/20
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021・波多野鼎
○波多野鼎君 そうじやなく所得のうちの大部分を外国人名義にすることに、よつて、富裕税の負担を免れる途があるのじやないかという意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/21
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022・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 外国人の名義に名義だけつけて変えますと、その外国人に富裕税がかかつて来るということになるわけでございますが、それは仮装名義でございますれば、勿論よく調べまして否認しまして、本当の所有者に課税するという調査は必要だろうと思います。が併し、実際に外国人の財産ということでございますれば、それはその外国人にかかつて行くということになりますが、今お話のような懸念もございますので、單純な仮装名義的なものにつきましては、やはりこれはよく個別的に調べまして、真正の所有者にかけるということに努力しなければならないと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/22
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023・波多野鼎
○波多野鼎君 外国人に課税上の特権を認めるといのことは、一種の治外法権を認めるようなもので、非常によくないと思うのですが、これは又別の問題だが、そういうことをやつて行くために、非常に税法の施行の上に妙なことになる虞れが多いと思うのです。例えば今自動車の問題なんかでも相当問題になつておると私は思うのだが、外国人か名義で自動車を買つて、そうしてこれを賃貸しするということまでも、相当大規模に行われておるようですが、同じようなことが税法の上でも行われる危険が非常に多いから、仮に外国人に対して税法上特別な待遇をするという場合、そのこと自体僕は反対なんだけれども、まあそういうことになつた場合の措置ですね、これを予め十分考慮しておかないと逃げられてしまいますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/23
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024・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) さつき申しましたように、所得税の特例は、今後五年間続きますと予定しておりますのは、外貨で購入したことが明らかな社債、これに対する所得税の免税と、それから外資と一緒に入つて来ましたところの給與所得に対する所得税の軽減と、その他それに関連しまする学校の先生とか、或いは銀行の従業者たる外国人の軽減とかいうものは、大体すべて給與所得に限ることにいたしております。ただ自由職業だけ若干事業所得が軽減の方に入つて参りまするが、大体におきましては、そういう面につきましては、まあ弊害は比較的少かろうと考えておりますが、ただ最後に申上げました二ヶ年間の暫定的な軽減というのは、今までドル所得があつた人そういう人であるという証明は必要でございますが、その証明がございますれば、暫定的に軽減いたしますので、お話のような懸念もまあなきにしもあらずと考えますが、そのようなことにつきましては、よく一つ実際の所得の関係、帰属を調べまして、十分適正をいすべく努力いたしたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/24
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025・木内四郎
○委員長(木内四郎君) ちよつと念のために関連して承つておきたいのですが、さつきあなたは、所得税の関係で、シャウプ勧告には、無記名証券の登録を強制するという規定がありましたね。それと株券の名義書替え、シャウプ勧告にあるけれども、あれは暫く行う意見はないというように言われたように思うのだが、そうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/25
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026・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 先程申上げましたように、この株の名義書替という問題は、現在のような名義書替機関が整備されておらないときにやりますると、非常に株の流通を阻害する虞れがあります。従いまして、名義書替に関する法律案を、別途に御審議を願つておりますので、この法律案を実行いたしまして、成るべく早く名義書替が、容易にできるような機関を作りまして、その上で、あのような措置をやるかやらないかにつきまして、よく研究しまして、やるという考えでございます。従いまして、この問題は、一応そのような情勢を見た上で、更によく検討するということになつておりまして、将来やらないという方針に決めたわけでもございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/26
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027・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 無記名証券の方も……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/27
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028・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 無記名証券の方につきましても、検討いたして見たのでございまするが、これも株式の名義書替問題等に関連いたしまして、一緒に結論を出した方が妥当ではないかという考え方で、この問題を併せて延ばすことにいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/28
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029・木内四郎
○委員長(木内四郎君) それから外に御質問がなければ、再評価積立金の資本縦入れですね。これについては、別に法律を以て今後決めるということになつておるのだが、繰入れる場合には、やはり課税をするという考えでか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/29
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030・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) この三年後におきましては、四分の三までは再評価積立金を資本金に組み入れることができることにいたしております。尚その後におきましては、再評価税を完納しますれば、再評価積立金を資本金に振替えることができるという法律にいたしております。その際におきまして、資本に組み入れる場合に、組み入れた額を配当と見て税金を取るか取らないかの問題でございますが、その点につきましては、そういう懸念がございますので、念のためにこの法律にはつきりいたしまして、配当と見ては課税しないということにいたしております。再評価税を納めれば、それで全部再評価に関連した税金の納付は完結ということに相成るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/30
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031・木内四郎
○委員長(木内四郎君) それは第何條のところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/31
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032・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 百十九條でございます。「法人が第百九條の規定により再評価積立金を資本に組み入れた場合においては、その組み入れた金額に相当する金額は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上利益の配当又は剰余金の分配の金額としない。」という規定を設けまして、その際に配当と見て課税するというようなことはいたさないことにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/32
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033・木内四郎
○委員長(木内四郎君) この百十九條の規定だと、法人の計算上これを認めないということになるのか、所得を受けた方はどうですか、株主の方にも適用ないということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/33
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034・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 「所得税法の規定による所得の計算上」ということになつておりまして、それも見ないということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/34
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035・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 再評価の方法は大分細かに書いてあつて、むずかしいのですが、大体のところを説明して貰つた方が分りよいと思う。再評価資産の範囲と……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/35
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036・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 大体のところは御説明申上げたのでございますが、ただいろいろ御理解の上におきまして、或いはこれだけは申上げておいた方がよいだろうということを少し申上げまして、尚御質疑があればお答えいたしたいと思います。
この再評価の方法につきましては実は減価償却資産と、その他の資産の場合に非常に違つておるということを一つよく御了解の上にお読み願いますれば、非常に分りよいと思うのであります。減価償却の場合は、主として減価償却がその後殖えるという問題でありまして、従いまして、この点に関する限りにおきましては、再評価を企業の任意にいたしております。それからその他の資産、例えば個人の持つておりまする株式だとか、自家用の住宅とか、土地とかいつたようなものの再評価は、実はこれは減価償却には関係ございませんで、主としてその資産を処分した場合の譲渡所得の課税の適正化と申しますか、それを目標にしまして再評価の方法を定めております。従いまして、そのような資産につきましては、すべて一種の画評価と看做されたものに法律でしてしまつておりまして、企業の減価償却資産の場合と非常にやり方を違えております。その点を先ず最初に御了解願つて法文を読んで頂きましたら、お分りになると思いますが、そういうふうにいたしておりますことを最初に申上げておきたいと思います。
ただ、殊に後者の場合いろいろと問題があるのでございますが、再評価場というのは、一種の、貨幣価値が下落した、反面から申しますと、物価が騰貴したということに応ずる譲渡した場合の譲渡所得のうち、名目的な値上り利益と申しますか、一般的なインフレによる値上り利益を別計算にいたしまして、その部分は前の取得価格と再評価額との差額までは、軍に六%の再評価税だけで済ます、それを超える部分に限りまして所得税を課税しよう、従いまして株式の場合非常にこんがらががつて各方面から承わるのでありますが、株の個々の時価を基準にするわけではございません。昔から例えば消費者物価指数は平均しまして、財産税評価時から七・四倍になつております。
こういうのが貨幣価値が財産税の評価時から比べれば、七・四倍に上つたということは、厳密には問題がございまするが、大まかに言い得ると思います。そうしますと財産税の評価時から持つておりまして、株式に移動のない場合で申上げますと、その株をずつと今まで持ち続けておりまして、七・四倍で売つた人、これは單に物価が上つただけの値段しか実現できなかつたわけでございまして、従つてそういう場合におきましては、実質の所得は零、ただ名目的にやはり七・四倍の値上りで、それだけ債権者というものは損をせずに済んだので、六%の差額を納めて貰う。ところが或る株は平均七・四%高くなつて十倍になつて十倍で売れた、こういう場合は、七・四倍と十倍との差額、その部分が本当の株の売買による利益と見よう、こういう観念でございます。それから再評価額が例えば七・四倍になつておりまして、現実処分した価額が五倍にしか売れなかつた、こういう場合になりますと、七・四倍に対する又課税はいたしてございませんで、現実に売れたところの五倍の線、それを、処分価額とそれから財産税の評価額との差額の六%を納めて貰う、こういう非常にむずかしいのですけれども、こういう方法を採用しておるのであります。従いまして再評価を個々の譲渡資産につきまして、個々の現在の時価を基にして、それから更に今後高く売れれば所得と見るとか、低く売れれば所得と見ないといつたような基準でありませんので、これは実際に或る一定のファンドを投資した、そのファンドが貨幣価値の下落によつて、今の下つた通貨で回收する場合、貨幣価値の下落に応じまして本当に儲けたのであるか、或いは結局同じであるか、或いは逆に儲けていないのか、それを見て譲渡所得の際の課税を合理的に行おう、こういう趣旨かちできておるのであります。従いまして本当に法律の規定、これもややこしいのでありますけれども、すべてそのラインで考えてございますが、中間で増資しますれば、増資した部分をやはり増資したときからの物価騰貴率で伸ばす、その前の部分はその前に取得したときからの物価騰貴率で伸ばす、その両者を、ウエイトをつけて合計する、伸ばす率は全部各株一律に消費者物価指数を探つている、こういうことに相成るのでございます。従いまして譲渡所得に関する部面は、相当そういう趣旨を全部貫いております関係上、株の方も中間増資じた場合とか、合併した場合とか、前からの継続性、その後における貨幣の価値の変動等、すべて調整しまして、再評価額を出しまして、その再評価額を超えて売れた場合、初めて実質所得とみなす、それ以下でしか売れなかつた場合には再評価税だけで済ます、こういうことにいたしておりますことを特に申上げますと、あと法文を御覧願います場合におきまして、大体お分りになのじやないかと思います。ただ法人の場合もう一つ例外がございますが、法人の減価償却資産は今申上げた通りであります。法人の持つております土地とか、株式は、これは主として法人がその土地とか株式を売つた場合に、やはり差額の課税の問題になるのでございます。今までの税法の原則で行きますと、今の低い帳簿価格と売つた値の差額の全額会社の所得になりまして、三五%かかる。これを合理的に調整しようというのが、やはり法人税の土地とか株式の再評価であります。法人は成るべく帳簿価額を基にしまして、損益計算をするのがいいという建前にいたしております。将来はつまり再評価しましたとぎの帳簿価額を基にして損益計算をいたしたい、そういうことを前提にいたしておりますので、個人と違つて、従いまして法人の場合は、これらの資産について再評価するしないは任意にいたしております。一旦つけ替えれば今後は課税の基準になる、こういうことになりまして、従いまして個人とか法人の持つておる株式につきましては、必ず期限までに減価償却、資産の再評償の申告をしておかなければならないということになつております。尚申し遅れましたが、個人の持つておる株式とか土地とか、こういうものにつきまして、申告は直ぐはいらない、譲渡した場合に申告して頂くことになつております。所得税が今までの税法でかかる場合に、再評価の申告もして貰う、これは勿論再評価は法律でみなすことになつておりますから、自分が再評価をするのだという申告ではございません。譲渡して当評価法に基いて再評価税を幾ら納めることになる、所得税はその際に幾ら納める、その申告をして貰うことになつておるのでございます。その点が普通の企業用の減価償却資産は、個人の持つている土地とか、株式或いは自家用住宅の場合と違う点であります。ただ今度譲渡所得税を、所得税で御説明申上げましたように、財産を移転したとき、そのときは一遍清算して譲渡所得課税をやろうということになつております。つまり相続、贈與によりまして土地なり株式が他人に所有権が移転したときは、その場合はやはり現実に売却しなくても、譲渡所得税を課することになつております。そのときの時価に基にして、時価で売つたものと、再評価差額と、そのときの時価の差額までは所得税がかかる、その時価が再評価以下でございますときは、六%の再評価税がかかる、こういうことで、若干他人に売却した場合でなく、相続、贈與等によりまして所有権が移転したときも、やはり同じく申告して、所得税を納付して頂かなければならないことになつております。建前は減価償却資産と個人の單純な減価償却資産以外の資産との間に非常に違つておりますことを、これは大体お分りかと思いますが、尚重ねて申上げまして御参考にいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/36
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037・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 今のに関連して伺いたいのですが、法人の持つている株と、個人の持つている株の評価方法は別にしてやつているのは、どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/37
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038・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 法人の持つている株につきましては、将来はもうつけ替えまして、帳簿価額を将来は基準に損得を計算したい、個人の場合は、個人の株式の損を見る場合は、再評価額を基にしないで、取得価額を基にすることにいたしております。これは一つの問題でありまして、再評価額まで売れなかつたものは、実質上は本当は値下りをして損を受けたのじやないかという見方もありますが、そこまで行きますと、如何にも債権者、預金者とのバランスから見まして適当でないという点を考えまして、結局その損を見ないことにいれしております。法人の場合はすべてそういうことになりますと非常に複雑になりますので、うけ替えたものによりましてすべて損益を計算いたすということになつております。そういうことに関連いたしましてやはり法人の場合は任意にしまして、その反面帳簿価額をつけ替える際には、もう一つは一月一日の各株式の個々の時価、それを超えてはいかんことにしております。さつき申しましたように、一般的な物価騰貴率を乗じて出て来ましたところの株の値段、個人の場合はそれだけであります。その外に法人の場合は、一月一日の時価、この時価を超えてはいけない、この二つの基準を設けまして、その場合それで再評価すれば、今後におきましてはすべてそれを基にして損益を見てやる、ただちよつとややこしいのでありますが、再評価積立金がある間は、その株が再評価額よりも下廻る場合は再評価積立金を先ず取崩して組入れる、その部分は六%再評価税が課されるのが原則でございます。併し再評価積立金から資本に組入れました後はすべて帳簿価額を基にしまして、これで損益を計算する、こういうことに法人の場合はいたしておりますが、かような関係からしまして法人の場合と個人の場合とで評価の方法、程度が違つて参りますことを御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/38
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039・木内四郎
○委員長(木内四郎君) そうすると法人の場合は、株式について再評価するかしないかは自由ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/39
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040・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 自由でございます。自由でございますからしてそれが所定の期間までに再評価するという申告がなければ再評価はできない、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/40
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041・油井賢太郎
○油井賢太郎君 固定資産税は賃貸価格の九百倍となつておりますね。そうするとその問題は再評価と矛盾するような点が起きる場合があると思いますが、いわゆる固定資産税が九百倍の税金を取つておる、再評価は最高限度は実際計算すると六百倍、七百倍までにもならない。そういつたような点が出るんですが、それはどんな工合に調節をなさるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/41
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042・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 固定資産税の方は、昭和二十六年からは、個々の資産の時価により評走することになつておりますが、昭和二十五年度に限りましては、この経過的にすべて賃貸価格の九百倍で評価する一種の法定評価であります。従いまして九百倍が果して妥当であるかどうかということにつきましては、これは十分御審議を煩わさなくちやならんと思うのでございますが、大体において平均的なところがその前後であるということでありますれば九百倍で一律にやる。ただこれを実際上理想を申しますと、やはり個々の資産毎に九百に倍よらないで、それぞれ違つた評価をすべきでありますけれども、これはなかなか一年に一遍ではできない。だから大体のところで法定評価にいたしまして、二十五年度としましてはそれを基にして固定資産税を課して行く。二十六年度以降は更にそれを基にしまして、それぞれ個別的にも妥当な時価を見出しまして、固定資産税を課して行く、このようになつております。従いまして、尚その外の再評価の最高基準、そのことは富裕税等の場合も若干差が出て来ると思うのでございますが、まあそれぞれその法律の趣旨に従いまして若干の差は出て来ても差支えない。併し又そういう場合が多いのじやないかとこのように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/42
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043・油井賢太郎
○油井賢太郎君 そうしますと何ですか、二十六年度からは再評価をすべき制限、その制限を以て時価と見なして固定資産もそれを応用して行く。こういうふうに解釈していいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/43
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044・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) この二十六年度以下は、再評価に基く会社企業が再評価した額、勿論それは再評価額になるのでございますが、これは御承知の通り最高限でありまして、それ以下で自由にできるわけであります。それから、従いまして二十六年度以降が、又参考にはなると思いますが、個別的にやはりその資産の時価が幾らしておるか、それの判定を、市町村評価委員が決める評価に基きまして、市町村が決めて行くということになると思います。従いまして必ずこれに一致するとも申上げ難いと思いますが、毎年その年の一月一日における時価を調べまして、それによつて固定資産税を賦課して行く、このように相成るかと思います。実際は二十五年度九百倍で一律に行きまして、二十六年度においては果して個別的に調査を全部やり換えるだけの事務能力が出ろか、出ないかはこれは一つの問題だろうと思います。その場合においては又或いは暫定的に過渡的な法定評価の方法等の法律案の御審議を願うような場合がなきしにもあらずと思いますから、今のところは大体そのよふな方法で固定資産税を評価して行くということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/44
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045・木内四郎
○委員長(木内四郎君) この際議事の都合によりまして只今議題となつております本法に対する質疑を中止いたしまして、陳情及び請願に関する小委員長の報告を求めることにいたしたいと思いますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/45
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046・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/46
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047・波多野鼎
○波多野鼎君 只今議題となりました請願及び陳情に関する小委員会における審査の経過並びに結果について御報告をいたします。今それぞれの内容を御説明申上げますと、請願第八百四十四号、これは今回新たに物品税の対象となつた旗、のぼり、引幕等は大衆的実用品か、又は手工業的美術工芸品でありますから、それぞれ免税点を引上げられたいという趣旨であります。請願第千二百四十八号は、身辺細貨は家内工業品であるから現行の庫出税を小売課税に改められたいという要請であります。請願第千五百三十四号は衛生かばんの課税に当りすでに課税済の内容品を含めて一括課税対象とすることは二重課税となるから、衛生かばんのみ課税対象とするよう取扱を明確にされたいという趣旨であります。請願第千六百三十四号は美術家の生活困難な現状に鑑みまして、洋画の額縁、画架、絵具等の物品税を撤廃又は軽減されたいという趣旨であります。請願第九百九十六号、同じく第千百事一号、同じく第千二百七十四号、同じく第千二百七十七号の四件は、いずれも農業及び生活協同組合或いは労働組合等は本来非営利的な性質を有するものであるから、社会政策的見地から見て、課税の免除又は軽減を図られたいという要請であります。請願第千百四十七号は農業の課税に当つて、その特殊性を十分認め国税、地方税全般に亘り課税制度を細検討し、農業課税の適正化を図られたいという趣旨であります。請願第千五百二十号は、いわゆるアルバイト学生中には扶養控除の対象から除外される者が相当数に上り、一般学生との均衡を失する結果となるので、勤労学生所得の一定額に対しては学資金として非課税の措置を請じられたいという趣旨であります。以上十件につきまして愼重に審議しました結果、物品税関係四件中身辺細貨の小売課税については、小売業者の立場をも考慮し、政府において適当な処置を取るべきであり、又物品税の軽減についても、次回の改正に当り政府において十分考慮すべきであると認められますし、その他の六件についてもその趣旨がいずれも妥当なものであると認められますので、いずれも採択することに決しました。以上御報告をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/47
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048・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 只今請願及び陳情に関する小委員長の報告を本会議に報告することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/48
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049・木内四郎
○委員長(木内四郎君) 御異議ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/49
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050・油井賢太郎
○油井賢太郎君 只今丁度平田主税局長が見えておりますので、特にこの際確かめて置きたいのですが、実はガソリン税は非常に不当な課税であるというので、この前いろいろ先方とも折衝したのですが、どうも大蔵省自体から持つて来なくてはこれはちよつと困難であるというようなことになつて、そのままになつてしまつたのですか、それで聞くところによりますと、大蔵省でやはりこの点は余り十割というのは適正でないということを認められて、大蔵省自体から先方へ交渉するような運びになるという話もあるのですが、それは事実ですか。そういうふうに又我々もやつて頂ければ大変結構だと思うのですが……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/50
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051・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) ガソリン税の問題につきましては、先般本委員会でもお答えしたかと思いますが、大体予算を見積ります際に、やはり現在の税率で見積りを立てております。ただその基本になります数量につきまして、若干安定本部だけの資料によりますと殖えるのではないか。従つて予算を減らさなくとも修正可能じやないか。こういう意見があつたわけでありますが、併しその点につきまして私共もいろいろ検討して見ておるのでありますけれども、まだ今までの実績にまりますというと、そこまではつきり根拠付けるだけの資料が出て来ていないのであります。従いましてこの問題につきましては、国会でかたつけて頂くのは、少しどうもまだ時期が早過ぎるのではないかと、かように考えております。将来然るべくガソリンの需給状況と最近著しく情勢の変化が起りつつあるやに見受けられますので、そういう情勢をよく見まして、勿論情勢の変化に応じまして妥当な措置を講ずるということはいたしたいと思いますが、現在のところ、国会で大蔵省自体から修正案を出すというようなところまで立至らないということを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/51
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052・木内四郎
○委員長(木内四郎君) それでは午後は一時から建設委員会との連合委員会において住宅金融公庫法案が審議されまするので、本委員会はごの程度で散会いたします。
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午後零時二十二分散会
出席者は左の通り
委員長 木内 四郎君
理事
波多野 鼎君
黒田 英雄君
伊藤 保平君
九鬼紋十郎君
委員
玉屋 喜章君
西川甚五郎君
平沼彌太郎君
油井賢太郎君
高橋龍太郎君
小宮山常吉君
米倉 龍也君
政府委員
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714629X03919500420/52
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