1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年三月八日(水曜日)
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委員の移動
三月七日委員西園寺公一君辞任につ
き、その補欠として羽仁五郎君を議長
において指名した。
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本日の会議に付した事件
○商法の一部を改正する法律案(内閣
送付)
○矯正保護作業の運営及び利用に関す
る法律案(内閣送付)
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午後一時五十一分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/0
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) これより委員会を開きます。
商法の一部を改正する法律案を議題に供します。本日より逐條審議に入りたいと存じます。百六十四條までのところを区切りまして御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/1
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002・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 逐條御説明いたしますに先立ちまして、昨日、この法律案が幸いに国会において可決になりました暁に法務府において法律の周知徹底について予算上の措置を講じているかというお尋ねがございまして、一般的なお答えはいたして置きましたのでございますが、官房の方に連絡いたしまして、予算の書面が参りましたので、一応その点をお答えを申上げて置きたいと思います。
大体昭和二十五年度の予算の方では、総額百万円程度のものを、商法の周知徹底に計上いたしておるようでございます。その内容は、主としまして講演会を開催する、或いはラジオを通じまして放送をする、或いは新聞紙上に座談会の発表をお願いいたす、或いはパンフレットを作成いたしまして、希望の方面にこれを頒布するというようなことを計画いたしております。尚、商法は、特に会社法は、国民の企業に非常に深い関係を持ちますので、この宣伝につきましては、私共で独断的に計画は立てませんで、できるならば産業界、経済界、各方面の専門の方にお集まりを願いまして、その協議によりまして、法律の周知徹底のための方策を立てたいと、かように考えております。簡単でございますが、一応御報告いたして置きます。
それから法案の逐條でございますが、各條文について一つ一つ当つて参りまするか、それとも重要なものだけでよろしうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/2
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003・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 大体各條文で御説明願えるならば願つた方がよろしいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/3
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004・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) それでは條文の順序に従いまして、先ず十七條から御説明申上げます。
十七條の改正は、本法律案におきまして、株式合資会社を廃止いたしましたので、その廃止に伴いまして條文を整理いたしたのでございます。
五十三條も同様でございます。
五十六條も、條文は多少長いようでございまするが、全く株式合資会社を廃止するに伴う整理に過ぎない次第でございます。
問題になりますのは五十八條でございまするので、これを簡単に御説明申上げたいと思います。現行法におきましても、会社の解散命令につきましては、五十八條以下に規定がございまして、準拠設立主義をとつております関係上、会社は形式的には設立されたけれども、その会社の存立を許すことが公益的な見地から見て適当でないという場合に、裁判所は利害関係人若しくは検察官の請求によりまして、或いは職権によつて解散を命ずることを得るという制度を採用いたしておるのでございます。改正案におきます改正が大体現行法の五十八條を承継いでおるものでございまするが、特にこの解散が、公益を維持するため会社の存立を許すべからざるものと認めた場合に限つて認められるという公益的な見地からの解散であるということを明らかにいたしました。それから解散の請求権者が法務総裁であるということ、それから従来通り株主、債権者その他のいわゆる利害関係人にもこの公益保持というものに貢献させるという見地におきまして請求権を認めましたけれども、本来の請求権者は法務総裁であるということを明らかにした点、それから解散原因が、現行法によりますると、会社の成立後一年内に開業をなさず又は一年以上営業を休止した場合、それから「会社ノ業務ヲ執行スル社員取締役、又ハ監査役ガ法令又ハ公ノ秩序若ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ為シタル場合」、この二つの場合に限定いたしておるわけでございまするが、第二に述べました「会社ノ業務ヲ執行スル社員、取締役又ハ監査役ガ法令又ハ公ノ秩序若ハ善良ノ風俗ニ反スル行為ヲ為シタル場合」という規定が余りに包括的であるという点を考えまして、五十八條の第一項に掲げておりますように、原因を一号と二号に分けまして、解散を命ぜらるべき場合を明らかにいたしたのでございます。二号の方は現行法の五十八條の一項の原因をそのまま認めたわけでございます。第一号にございます「会社ノ設立ガ不法ノ目的ヲ以テ為サレタルトキ」と申しますのは、会社の目的自体が不法であることを申すのではございませんで、会社の目的は適法であるけれども、不法な目的をなすために適法の目的を仮装して会社が設立されている場合、例えて申しますると、売薬業を営むということを会社設立の目的といたしながら、実は専ら麻薬を販売するというために会社を設立したというふうな場合を考えているのでございます。それから第三号に規定いたしておりまするのは、会社の業務を執行する社員又は取締役が法令、定款に定むる会社の権限を踰趣する。或いはこれを濫用する、又は刑罰法令に触れるような行為をした場合に、現行法によりますると「公ノ秩序若ハ善良ノ風俗ニ反スル行為」というのは、刑罰法令に触れる場合が多いからと考えますが、その場合は直ちに解散を命ぜられるわけでありまして、解散は自然人について申しますれば、死刑の宣告にも当るような次第でございますから、突然の請求によりまして直ちに解散を命ずることはこれは行過ぎではないか。一応法務総裁から書面によつてこれを警告いたしまして、そうして会社の理事者に対して反省の機会を與える。その機会を與えたにも拘わらず重ねてその違反行為があつた場合には、法務総裁は会社の解散を裁判所に申請できるというふうにいたすことが、この会社、特に株主或いは会社の債権者に対する関係を考えますると穏当な計らいではないかと考えまして、三号に、現行法とは相当趣きの異なりました規定を設けたわけでございます。で五十八條の二項は、現行法にありまする規定をそのまま踏襲いたしましたわけで「裁判所ハ解散ノ命令前ト雖モ法務総裁若ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ管理人ノ選任其ノ他会社財産ノ保全ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得」というふうにいたしたわけでございます。もう一つ申し落しましたが、この五十八條の改正で重大な点は、現行法におきましては職権による解散を認めておるのでございますが、裁判所が何人の申請にもよりませんで、職権でみずから会社の解散を命ずるということは、裁判所殊に司法機関としての本来のあり方から申しますると、やや行過ぎではないかと考えましたので、職権による解散は止めまして、専らこの公益の代表者たる立場における法務総裁の申請によるということにいたしたのでございます。で大体これで御了承を得たかと思いまするが、この五十八條の解散は飽くまでも、公益を保持するということを眼目にいたしておるのでございまして、一号から三号に該当するような事実が仮にありましても、公益的見地でその会社の存立を否定する必要がないという場合には、この会社の解散を認められないということになるのでございます。公益的見地と申しますれば、その会社の存立を許して置くことが、結局社会の福祉に合致しないということでございまして、ただ単に会社債権者或いはその会社の株主というものの個人的な利害関係の面からの解散というものは認められない次第でございます。
次に五十九條を法律案では削除いたしております。これは只今申上げましたように、利害関係人も公益保持するという面におきまして、裁判所に会社の解散を申請することを認めておるのでございますが、現行法によりますると、会社の請求によつて相当の担保を供しなければならないということになつておりまするが、これは利害関係人が事実上訴えをいたすことを阻まれる虞れがございますので、この担保の供與というものを改正法律案では一般的に排除いたしたのでございます。
次に、六十條でございますが、この規定は請求が却下せられました場合に「悪意又ハ重大ナル過失アリタルトキ」に利害関係人が会社に対して連帯して損害賠償の責に任ずるというのが現行法の規定でございまするが、これは利害関係人の訴えの提起を事実上阻むという虞れのあることは五十九條と同様でございまするので、削除いたしたわけでございまして、削除いたしましても、若しその利害関係人に別に不法行為上の責任がある場合に、会社に対して損害賠償の責に任ずることはもとより当然でございますから、六十條の規定を削りましても、利害関係人が免れて恥ない、或いは会社が不法行為上の損害を蒙むりながら、それを忍ばなければならないという結果にはならないだろうと考えます。
次に、六十四條の改正でございます。これは第六号の改正でございまして、現行法によりますると「数人ノ社員ガ共同シ又ハ社員ガ支配人ト共同シテ会社ヲ代表スベキコトヲ定メタルトキハ其ノ規定」を登記するということになつておるのでございますが、改正案におきましては、社員と支配人との共同代表を認めないことにいたしましたので、この規定を改めたわけでございます。実際の例を見ましても、社員と支配人との共同代表は殆んどございませんし、又その実績も乏しいかと考えましたので、社員と支配人との共同代表というものを認めないことにいたしたわけでございます。この関係は株式会社におきましてもやはり採用いたしまして、取締役と支配人との間の共同代表というものを認めないことにいたしております。
次に七十七条でございますが、これは只今申上げましたように、社員と支配人との共同代表を認める規定でございまするが、社員と支配人との共同代表を認めないことにいたしましたので、その規定を削りまして條文を整理いたしたに過ぎません。
次に、百六條、百七條の規定を削除いたしましたことにつきまして御説明申上げます。百六條の規定は先程申しましたように、債権者が合併無数の訴えを提起いたしたときは、会社の請求によつて相当の担保を要するという趣旨の規定でございまするが、担保の提供を会社が要求いたしますことは、債権者の訴えの自由を事実上制限する場合もありますので、先程五十九條で申しましたと同様の事由によりまして、この規定を削除いたしたわけでございます。百七條の規定は、これは多少論議があるかと考えまするが、現行法によりますと、合併無效の訴えの提起があつた場合に無效原因たる瑕疵が補完せられている。或いは会社の現況その他一切の事情を斟酌して合併を無效とすることを不適当と認めた場合には、裁判所は請求を棄却することができるという趣旨の規定でございまして、これは昭和十三年の改正によつて認められました規定でございます。規定の趣旨といたしておりますところは極めて適切であろうかと考えまするが、規定の表現を見ますというと「会記ノ現況其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シテ合併ヲ無效トスルコトヲ不適当ト認ムルトキハ」というふうになつておりまして、裁判所の自由裁量権が純粹に法律の解釈適用という範囲を逸脱しまして、会記の、企業の経営政策にまで立入つて、法律上の原因がありながら請求を棄却し得るということを認めるというふうにも解釈される虞れがございますし、本来裁判所は法規を形式的に解釈して、ただこれを形式的に適用するような消極的な機関でありませんでれ法規の精神を汲んで、そうして各具体的な事情を最も適切妥当に判断して、そうして原告の請求を認めないというのが本来の裁判所のあり方でございますから、特にこの際だけにこういう特別の規定を置くということが、果して裁判所の機能を明らかにする上において適当であるかどうかというふうな問題もございますし、裁判所の使命から考えまして、むしろこういう規定を置かないことの方が好ましいのではないかと考えまして、規定を削除いたすことにいたしたわけであります。この規定のみならず、会記法上の訴えにつきまして、ほぼ同様な趣旨の規定が各章にございまするが、この裁判所の自由裁量によるところの請求を棄却するというこの表現は一切削除することにいたしたわけでございます。
次に、百二十二條でございます。これは現行法では「検察官」となつておりまするのを「法務総裁」と改めたに過ぎません。
次に、百三十四條ノ二という規定を新設いたしております。これは現行法におきましては、精算人の任務懈怠の責任につきましては、百三十五条の規定に依りまして、株式会社の取締役に関する規定を準用いたしております。ところが取締役に関する規定を全面的に改めました関係上、取締役の責任に関する規定を精算人に準用いたすことが不適当になりましたので、別に精算人の責任に関する規定を設けた次第でございまして、その実質的な内容は現行法道りでございます。
百三十五條、百三十六條は単に條文の整理でございまして、別段御説明申上げることはないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/4
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005・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 只今までの分について何か御質疑ございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/5
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006・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 株式合資会社の制度を止めましたことは如何なる理由があつたかということ、それから現在すでに設立されております株式合資会社の跡始末について過渡的な何か規定を置かれますか。それから五十八條ノ三にあります取締役或いは社員の刑罰法令に違反する行為についての反覆或いは継続についての公益侵害に対する会社の解散命令の問題でありまするが、これは単なる一社員、単なる一取締役の個人としての行為か、それから会社としての行為の意味であるか、その社員或いは取締役の行為と会社の業務と一体不離の関係になつて、分けて見るわけに行かないというふうな程度のことを想像されての規定であるのかどうか。もとより社員といたしましても、取締役にいたしましても、共に人でありまする限りは、おのおのの行為については、おのおのの行為は当然社員或いは取締役と雖もあり得るのであります。この行為と会社との間において一体不離の関係にある事件、或いは行為に限られるのであるかという点が第二。その五十八條の末項にあります裁判所の解散命令に先立ちしましてなすべき処分については、これは職権を以てもやはり管理人の選任、或いは財産の保全に必要な処分ができることになつておりますが、先程の御説明によりますと、元来裁判所の本質として、請求なきに拘わらず、かような私法的行為に対して、裁判所みずから職権を以てやることは適当でないということと矛盾しております、その点どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/6
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007・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 先ず第一点のお尋ねでございまするが、株式合資会社をなぜ廃止することにいたしたかというお尋ねに対してお答え申上げます。株式合資会社は、鬼丸委員すでに御承知のことと思いまするが、沿革的に申しまして、十九世紀におきまして会社の設立を国家の認許にかけておりましたところ、容易に認許の下らない実情から株式合資会社というものを認めまして、これは性質上無限責任社員ということに重点が置かれまして、国家の認許を必要としない、むしろ株式会社の設立を多少回避するという意味において認めました変態的な沿革を持つた会社であるという点と、もう一つは、組織の上から申しまして株主もおりますし、社員もおりますし、非常に複雑な組織でございまして、果して現在の企業社会において、こういう変態的な会社を認める必要があるかどうかという点が大いに疑問視されるのでございまして、昭和十三年の改正の際におきましても、むしろこれを廃止することを適当とするという意見が非常に多かつた次第でございます。今日になりまして、株式会社につきまして授権、資本、制度或いは無額面株というものを採用いたしまして、これを株式合資会社の方にも適用いたすということになりますと、誠に複雑になりまして、恐らくそういう制度になりました際には、殆んど株式合資会社というものは運用することが困難になるのではないかというふうに考えられるのでございます。又現在ありまするこの株式合資会社の数を検討いたして見まするのに、昨年の三月現在における総数が僅かに九十一社に止まるのでございます。普通の通常の株式会社の総数が十五万三千六百三十六に対しまして、又合資会社が八万二千六百四十四、合名会社が二万五千四百七十五、有限会社が四万三千六百三十という数に対比しますと、甚だ少いと申さなければなりませんので、果してかかる会社の存立を将来にも認めることが法制的に適当であるかどうか、むしろこの際はこれを廃止することが適当であろうと、かように考えて廃止いたすことにいたした次第でございます。尚現在ある株式合資会社は如何ようにするかというお尋ねでございますが、これはもとよりすでに法律によつて設立を認められておる会社でありまするが故に、将来に亘りましては、やはりそのままで存立を認めていくというふうに施行法律では取扱いたいと考えております。又御存じのように、株式合資会社は極めて簡単に株式会社に組織変更もできまするので、会社等にとつては甚だお困りになるということはないだろうと考えられます。
次に、第二のお尋ねでございますが、会社の業務を執行する社員又は取締役が法令定款に違反しまする行為或いは刑罰法規に違反する行為をするというのは、個人たる資格における行為を含むのか、それとも会社の代表機関としての行為に限定されるのかというお尋ねに拝承いたしたのでございまするが、これはもとより会社の業務との関連において行いまする代表社員又は取締役の行為でございまして、個人たる資格におきまする行為が如何に刑罰法規に触れましようとも、それによつて会社自体の運命には影響がないということははつきりと申上げることができようかと思います。
次に、第三のお尋ねでございまするが、これは正に御指摘の通りかと思いますが、会社の解散を職権で裁判所がみずから命ずるということは、先程も申しましたように、確かに行き過ぎかと考えまするが、苟しくも法務総裁から、或いは株主その他の利害関係人から請求がありました以上、その会社に対して適当な措置、例えば財産の分散を命ずるとか、或いは取締役のそれ以上進んだ違法行為を阻止するというために適当な措置をとりますことは、その申請を受けた裁判所としてはむしろ適当なことと考えまするので、実際上は、法務総裁、株主或いは利害関係人から必ず請求をいたすとは考えまするが、万一その請求がないという場合に、手をこまねいて会社の内容がますます乱脈になるのを裁判所が傍観するというのも、これは裁判所のあり方から見ましても、多少積極的に適当な措置を講ずることを適当とするのではないかと考えまして、職権によりまして管理人の選任その他会社財産の保全に必要な処分をこなすことを裁判所に認めた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/7
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008・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 只今の御説明によりまする第五十八條の第三号に対する説明によつて、会社の業務に関する反則ということはよく分りましたが、ところがこの三にありまする定款に定むる会社の権限踰越による行為、それが公益維持のために適当でないという場合に、解散命令を出すべき原因の一つになつておりまするならば、すでに会社自体は定款によつて一つの合法的権限を認め、又その範囲内でなさなきやならんことがあるならば、それが即ち会社の業務であつて、その権限を踰越したという場合の社員或いは取締役は会社自体の行為とはちよつと考えられないふうにも考えられますが、その点どういうふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/8
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009・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 誠に適切なお尋ねでございまして、感銘いたす次第でございます。実は改正法律案の中に、定款に定むる会社の権限を踰越するという場合がいろいろな場合に現われておるわけでありまして、この定款に定むる目的を越えた取締役の行動というものが会社に対して拘束力を持つかどうか、只今お尋ねのように、会社は一定の目的の範囲に権利能力を認められておりまするが故に、その範囲を越えた行為は会社の行為ではない、代表者個人の行為であつて、これによつて会社は何らの拘束を受けるものではないという考え方も確かに一つの考え方であろうかと思います。アメリカ法で申しまするいわゆるウルトラ・バイアレスに関する問題でございまするが、これはアメリカ法におきまする最も重大な法律問題の一つであるように承つております。要するに結論を先に申しますると、アメリカ法における解釈におきましては、定款違反の行為は当然無効であつて、会社に対しては何の拘束力はないという解釈はいたしませんで、一応有効として推定されて会社に対して拘束力を持つ、その定款違反の行為、定款逸脱の行為が無効であるとされるのは、相手方もその事実を明白に知つておる悪意である場合に限られるような解釈をとつておるように承つております。もつと具体的に申しますると、或る行為が果してその会社の目的の範囲内の行為であるかないかということになりますると、極めて明白な場合は、これは、何人でも分るわけですから、無効であることにいたして一向差支ないわけですが、デリケートな問題になりますると、果してそれが権限内の行為であるか、越えたものであるかという点が甚だ問題でございまして、むしろ定款の各規定の解釈ということに相成ろうかと考えます。この場合に定款に関する一番正確な知識を持つておるものは会社の理事者でございまして、この理事者の解釈とその解釈の相手方であるところの一般人との関係に相成るわけでありますが、理事者がみずからこれは定款の範囲内だと、こう確信いたしまして行為しておる場合に、相手方の方で多少疑問を持ちましても、この場合どちらの解釈に表見的な正当性を與えるかということになりますると、一応会社の理事者の解釈は正しいと判定されるのはやむを得ないことと考えます。主としてこの会社と取引きをいたしました相手方、第三者を保護するという見地からウルトラ・バイアレスは有効なものと解釈されるのではないかと考えられます。只今申しましたようなわけで、向うの解釈といたしましては、定款の踰越の行為でありまして、これは有効といたす。そういたしますと、その行為は会社を拘束いたすわけでございますから、そこで法務総裁はこの場合に、そういう行為を将来はやらないようにということを警告する必要があるわけでございまして、若しアメリカ流の解釈をいたしまするならば、この規定は十分意味を持つものであると、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/9
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010・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 最後の御説明に対しまして、尚ちよつと理解しがたいと思いまするのは、この法文の書き方だけで以て、只今御説明の似て非なる行為について、この範疇に属するんだというふうには法文自体では解釈ができないように思うのです。而も明白なる場合と非明白なる場合と区別して、この法文を解釈していいのだというふうには、もう少し何か表現の方法が別にあり得るのじやないかと考えます。只今の御説明だけでは、この法文の書き方自体からは、ちよつと一般人のこの法文の解釈自体からは、如何であるか、かように思います。尚この点、私の研究も浅うございますから重ねてお尋ね申上げます。本日はこの程度にして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/10
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011・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) ちよつとこの説明が足りなかつたと考えますので、補足いたして置きたいと思います。アメリカにおきましてウルトラ・バイアレスの適用の問題がやかましく論ぜられますのは、すでに十分御承知かと思いますが、アメリカの会社法の理論の中に、この具体的理論というものが強くひそんでおるということを見逃がすことができないのでございます。株主が出資をいたしまするのは定款に定められた一定のこの目的のために財産を提供いたすのでございまして、その会社の目的というものが、財産が活用される根拠になるわけでございます。従いまして、その定款に定めるこの会社の目的というものを遵守いたしますることは、取締役に課せられたる責任の中で最も重大なる責任の中の一つと相成るわけでございます。従いまして、この枠を外れたような行動につきましては、取締役は差止命令を受けねばなりませんし、行為の如何によりましては、損害賠償の責任に任ぜなければならないということになるわけでありまして、定款に定められた目的を遵守するということは、取締役に課せられたる非常に重大なる責任であるというふうに考えますならば、その責任遂行を法務総裁が求めますのは、多くの場合に公益に関係のある場合かと思いますが、求めて、そうして尚取締役が依然定款の目的の範囲外のことをやつておるという場合に、解散の命令を申請いたすことになるわけであります。従いまして法務総裁の求めますのは、必ずしも定款違反の行為が有数の場合は限定いたしませんで、多くの場合有数の場合が多いと思いますが、無数の場合でも一向差支えないわけでございまして、定款に定められた目的を取締役をして遵守せしめるというところに狙いがあると、かように御了承頂きたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/11
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012・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 こういう法文が現われまする経過につきましては、只今の御説明でよく分りまするが、併し私共近来の傾向として、やはりアメリカ法に大体真似ているものであるからして、とにかく法文にそれを掲げておりまする関係上、とかく米法によつておる、それに傾いておりまする関係上、どうしても米法を前提といたしますと、日本の法律がそのままでは分らないというふうになりますことは、立法者の立場としては深く今後戒めなければならんと思います。私共特と気が付いておりますのですが、法文に現われておる趣旨では明白でないから、先ず米法を習おう。米法を習うことにあらずんば、国民はその原則を掴み得ないということは、これはもう全然考えて置かなければならんと思います。私共この法律に従うべきものは国民自体でありますから、国民自体がやはりよく米法を玩味しておつて、それでそのまま、即ちその玩味の上に、国民のために作る法律であるということを私共は深く遵法上においては考えて行かなければならんことだと思います。只今の御説明で経過はよく分りますが、どうもこの法文自体については徹底を欠くのではないかと思います。如何でありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/12
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013・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 鬼丸委員の御注意御尤もでございまして、私共将来立法いたしまする際には、たとえアメリカの法律に則つて、或いはその制度を輸入いたしましても、法律として日本に施行せられまする以上は国民の法律でございまするので、国民自体がこの法文を見まして、法文の主とするところを明確に把握し得るというふうな立法をいたさなければならんことは深く感じておりますので、そういう方向に向つて折角努力いたしたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/13
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014・大野幸一
○大野幸一君 私は第五十八條の第二項についてお尋ねいたしますが、五十八條の一項の二号乃至三号の事由があるとき、それが公益を維持するために必要な場合に、会社の解散を一定の人が請求する。そうして第二項ですが、「前項ノ請求アリタル場合ニ於テハ裁判所ハ解散ノ命令前ト雖モ法務総裁若ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ管理人ノ選任其ノ他会社財産ノ保全ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得」、これは仮処分の性質を有しておるのか。私のお尋ねしようとするのは、即ち仮処分の要件は必要としておるのかどうかということです。請求があつた場合において、五十八條第一項の請求があつたという要件と、それから一定の人の請求があつた場合には、「管理人ノ選任其ノ他会社財産ノ保全ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得」という一般の條項、処分の要件を備えておらなくても、請求がありさえすれば、裁判所は自由裁量でやつていいのか。又これが「処分ヲ為スコトヲ得」という意味は、裁判所が全くの自由裁量が、それとも裁判所が一定の事由あり、又その必要を請求者が証明したるときには、その処分をなさなければならん法的義務を負うのかどうかという点を一つ伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/14
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015・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 大野委員のお尋ねになりました改正法律案の五十八條の第一項の第二号、五十八條の第二項の関係は、すべてこの現行法の建前をそのまま踏襲いたしましたわけでありまして、現行法の五十八條の一項と五十八條の三号の規定そのものでございます。で第五十八條の解散の手続は、大野委員十分御存じかと考えまするが、訴えでございまするので、非訟事件として取扱われておるわけでございます。現行法の非訟事件手続法の百三十四條以下百三十五條の五まで規定がございまして、性質といたしましては、解散前の裁判所における処分は、いわゆる訴訟におきまする仮処分ではございませんが、非訟事件手続法の百三十五條の二によりまして、非訟事件における仮処分的取扱いの規定を準用いたしておるわけでございます。重ねて申上げますると、この裁判所の処分は、民事訴訟法における仮処分手続ではなく、裁判所が便宜職権と申しますか、非訟事件は職権的な面が相当多いわけでございます。その面におきまして、裁判所が適当なる処分をいたす権限を認めるものであると、かように御了承を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/15
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016・大野幸一
○大野幸一君 それではちよつと参考までにお伺いいたしますが、これは請求を却下する処分に対して、抗告か何かできるようになつておりますか。なつていないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/16
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017・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 却下する規定に対しましては、抗告ができることになつておると思います。ちよつと続けまして、申請を容れまして、解散を命じました決定に対しましては、非訟事件手続法百三十四條の二によりまして、抗告ができまして、その抗告は執行停止の効力を持つわけでございます。大野委員のお尋ねの申請を容れませんで却下した場合にはどうかというお尋ねですが、これは一般の抗告の例によりまして、裁判によつて、権利を害せられた者は、その裁判に対して抗告ができるという非訟事件手続法第二十條の規定によりまして、抗告ができると解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/17
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018・大野幸一
○大野幸一君 それから百三十四條の二の場合に、清算人が会社に対して連帯する場合、清算人が第三者に対して連帯してその損害賠償の責に任ずる場合を規定してありますが、この規定からは、清算人数名ありまして、清算人相互間の関係においては、この條文に何ら規定していないのであるか。普通一般の原則によれば、行為者は負担分の全部を負担する場合もあり、非行為者は負担分が零の場合もあるがどうか。それともこれは清算人の負担分を平等に解して行くのか、どつちでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/18
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019・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 大野委員の仰せのように、清算人が連帯して責任を負いますのは、会社に対する関係、若しくは第三者に対する関係でございまして、精算人同士の、精算人相互間の関係はこの規定からは生れて来ないわけでございますが、これは民法一般の原則によりまして、任務を怠つた、殊に責任原因を作つた精算人に対して、他の任務を怠つた事実のない精算人が、若しも損害賠償をいたしました場合には、当然全額について求償し得ると解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/19
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020・松井道夫
○松井道夫君 細い点を少しお尋ねしたいのでありますが、五十八條で、現行法は検察官というふうになつておつたのを法務総裁に改めた理由。法務総裁ということになると、法務総裁の手足となつて、会法の解散といつたようなことにタツチする者は、やはり検察官と予定しておられるのか。或いは外の何か機関を予定しておられるのかその点。それかう五十八條第三号に「警告ヲウケタルニ拘ラズ法令若ハ定款ニ定ムル会社ノ権限」をいう文字が使つてありますが、私は何だか耳新らしいような言葉ではないか、「会社ノ権限」、その意味は社員又は取締役の権限を意味するのか、或いは会社の目的といつたような意味になつて来るのか、ちよつと聊か判断に苦しむところがあると思うのです。その点……。それからこの六十條を削除した理由でありますが、また一般原則で不法行為の責任を負わせればそれでいいのだから、六十條を削つたのだ、こういうふうに承つたのですが、更にこれは訴えを起し易くする趣旨になるのだという御説明もあつたかと思うのでありますが、どうもちよつと見ると六十條は「悪意又ハ重大ナル過失アリトルトキ」ということになつておりますので、却つて現行法の方が起し易いのではないかというような感じもいたすのであります。尤もこれが現行法の立場が一般不法行為の責任に加えて六十條を規定してあると思うのであるが、これは不法行為の責任範囲外の特別の責任であるというように解釈せられておるのかも知れませんし、その点御説明申願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/20
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021・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 現行法の五十八條にございまするこの「検察官ノ請求」に代えて「法務総裁」を請求権者にいたしました点でございまするが、これは現行法通り検察官にいたして置いてもさしたる支障はないこと思いまするが、法務府設置法によりまして、法務総裁というものが新たに国の官職として認められまして、これは国における法務全体を統轄する機関、内閣総理大臣及び内閣各省大臣に対して法律上の顧問たる役を持つというふうな点から考えましても、法務総裁をして会社における法規の適正なる遵守を見るということにいたすのがより適当であるという、少くとも検察官にいたすよりは、この法務府設置法の建前から申しまして、より適当であるという点、それから又アメリカの立法例から考えましても、法務総裁をして解散命令を申請いたさせておるという取扱いにも鑑みまして、法務総裁に改めたわけでございます。次に、その法務総裁の権限を補佐すべき機関或いは現実にこれを執行する機関は一体何人が当たるかというお尋ねでございますすが、これは率直に申上げますると、今必ずしもはつきりと確定いたしておるわけではございません。現行法の建前をとりますると、法務総裁の指揮を受けておりまする検察官をして取扱わせるのも一つの方法かとも考えまするし、或いはこれが訴訟の面であるという点を考えますると、折角訴訟につきましては法務局ができておりまする関係で、法務局或いは地方法務局をして行わしめるということも一つの行き方かとも考えまするが、これはいずれ関係法令の整備をいたします際に愼重に検討いたしまして、最も適当と思われる方法を採用したいと考えております。
次に、第二のお尋ねでございますが、「法令若ハ定款ニ定ムル会社ノ権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為」と申しますると、法令又は定款によりまして会社の権限とされているもの、言葉が確かに仰せのように必ずしも熟しない、多少耳慣れない感じがいたすのでございまするが、会社の目的とされている範囲を逸脱し、若しくは濫用する、その権限が法令によつて設定せられている場合、例えば保険業法或いは銀行法その外いろいろあるかと思いますが、そういう場合もございますし、或いは單純に定款だけで定まつている場合もあると思いまするが、これは業務を執行する社員又は取締役の権限ではございませんが、会社の目的として定められている範囲を逸脱し、或いはその範囲を濫用する行為と、かように御解釈になつてよろしいと考えます。
次に、六十條についてのお尋ねでございますが、六十條は私共は法律によりまして、特にこの責任を認めたものというふうに考えております。従いましてこの規定がなければ、申請人は六十條の適用は受けないことになりまして、若し一般行為の原則によりまして責に任ずる場合は、これはもとよりあり得ると、かように御了解を頂いていいのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/21
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022・松井道夫
○松井道夫君 一番初めの法務総裁の関係ですが、従来は検事、検察官は公益の代表という意味で、従来の法律がいろいろでき上つておつたと存ずるのであります。それで公益の代表者として、例えば民事訴訟法は立会検事その他いろいろそういう制度になつておつたと思いますが、法務総裁制度ができましたので、政府とされましては、そういつたものを徐々に検事から法務総裁に置換えて行くというような御方針でおられるか、この点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/22
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023・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) この会社法に関する限りにおきましては、検察官よりも法務総裁をして公益的な解散命令を申請せしむることを適当といたしたのでございまして、現在検察官の持つておりまする公益保持者たる立場における各種の職権を法務総裁に移すのが適当であろうかどうか、実は私はそこまでは十分検討いたしておりませんので、はつきりと責任のあるお答えをいたすことができないのでございますが、一つの重要なる御提言と拝承して研究いたして見たいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/23
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024・大野幸一
○大野幸一君 先程の五十八條の質問ですが、疑問を持ち始めましたから、もう一度お尋ねしますが、会社の解散を命ずる裁判というものに対して抗告した場合に、これが執行停止の効力を生ずるということは明らかでありましようが、五十八條の第二項の保全処分をなしたその裁判に対して抗告をすれば執行停止の効力を生ずるということになると、解散の命令前に保全処分をなす必要があればこそ、仮処分の性質ではないとしても、解散の命令を申立てない間の緊急保全処分なるが故に、この保全処分は即刻効力が生ずるというふうにしなければ、その目的は達せられないように考えるのですが、これはどういうお考えでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/24
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025・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) この商法の改正案が若し可決になりますれば、いずれ非訟事件手続法も改正いたさなければなりませんので、その際現行法の検討をいたしますと同時に、不備な点は十分改めなければならないと思います。只今大野委員のお尋ねの点は、現行法におきましても百三十五條ノ二によりまして、商法第五十八條第三項の規定により、管理人の選任その他会社財産の保全に必要なる処分をなす場合に七十一條ノ五の規定を準用いたしておるのでございます。七十一条ノ五の二項によりまして、管理人の選任をいたすというふうな裁判に対しましては、不服を申立つることを得ずということになつておりますから、この保全処分に対しましては、今お尋ねになりましたような結果にはならないであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/25
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026・大野幸一
○大野幸一君 先程の不服を申立てられた場合に提出するということは解釈上の誤解があつたわけですか、先程御答弁の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/26
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027・岡咲恕一
○政府委員(岡咲恕一君) 先程申上げましたのは解散命令自体ですが、第一項の解散を命ずる裁判に対して不服を申立てられる、或いは解散命令を却下する裁判に対して不服を申立てられるので、二項とは関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/27
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028・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこの程度にいたして置きまして、明日第四章、株式会社をやることにいたしたいと思います。今日区切りがよろしいですから総論だけで終わつて置きます。明日から本格的にお願いしたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/28
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029・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に、日程に掲げてありますところの強制保護作業の運営及び利用に関する法律案を議題にいたします。先ず本案に対するところの提案理由の説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/29
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030・牧野寛索
○政府委員(牧野寛索君) 只今上程になりました矯正保護作業の運営及び利用に関する法律案の提案理由を説明いたします。
この法律案は、これを端的に申しますれば、受刑者の作業は、法律の定めるところによつて課せられるものであり、且つ、本人の矯正保護上重要な意義を持つものでありますから、その運営において遺憾なきことを期するため、これを実施するに当り、拠るべき基準を定めると共に、受刑者の矯正保護にふさわしい仕事を確保することを目的としているものであります。
先づ第一の点、即ち受刑者を作業に服せしめるに当り、拠るべき基準に関する條項につき説明いたします。この條項は、受刑者を人として尊重し、できるだけ人たるに値する條件の下で作業に服せしめることを目的とするものであります。申すまでもなく新憲法は、個人の自由人権の尊重を根本義とし、人道精神を高く顯揚しているのであります。従つて、受刑者が各種法令の制限の下に有する自由人権を尊重し、人たるに値するように遇することは、新憲法の精神に副うゆえんであり、延いては又我が国を文化国家に引上げる道でもあると存ずるのであります。戦後における受刑者の矯正保護は、この精神により運営いたして参り、各般の点において、誠に著しき進歩を遂げたものと信ずる次第であります。
本法律案は、この理念に立脚し、第三條乃至第六條の四ヶ條を設けて、作業運営に当り受刑者を遇する目標を定めているのであります。即ち第三條におきましては、矯正保護作業は、先に申上げました受刑者の基本的人権を害するものであつてはならず、且つ、受刑者の矯正保護に役立つものでなければならないと規定し、更に受刑者に対しても作業に従事するに当り、持つべき心構を示しているのであります。以下三ヶ條に亘り、作業賞與金の給付、作業時間、休憩、休日及び作業実施上の安全衛生等につきまして、受刑者を、各種刑法法規の制限の下において、できるだけ人たるに値するような、処遇をなす目標を定めているのであります。これらの規定により示される精神は、今日の矯正保護作業の実際には相当実現されているところでありますが、この際、法律によりこれを明らかに規定しますれば、人権尊重の憲法の理念を、国法上に明示し得るとともに、将来矯正保護作業の実施に当り、一層の徹底を期し得るゆえんであると考えここに規定した次第であります。
次に本法案の第二の点、即ち受刑者にふさわしい作業を確保することに関する條項につき説明いたします。受刑者の矯正保護上、作業が極めて重大な役割と使命を有するものであることは、今更ここに説明申上げるまでもないことと思います。矯正保護作業の運営に当つては、先ず第一に、いろいろの仕事の中で最も受刑者の矯正にふさわしい仕事を確保することが肝要であります。この点より考え、先ず需要面より見ますれば、受刑者の作業は民需より官公需の仕事をなすことが適当であると考うるのであります。それは、民需に基いて作業を課しますれば、受刑者は一私人の利益に奉仕し、その労働が私利に供せられているという感を抱きがちでありまして、受刑者の精神に思わしからざる影響を與えるからであります。これに反し、官公需に基く仕事を課しますれば、受刑者は、自分の労働が一般公共の用に供せられていると考え、その矯正保護上好結果を来すのであります。次に仕事の質の面より見ますれば、矯正保護作業は受刑者の職業指導の使命を十分に、果すものでなければなりません。この点から見まするに、官公需の仕事は職業指導にふさわしい業種、たとえば木工、洋裁、印刷、皮革工等の仕事が多数ありまして、職業指導を計画的に実施するに最も適しているのであります。
又、官公需による作業によつて相当の収益を国庫にもたらすことになりますれば、刑務所に要する国費の負担軽減も期し得らるることとなるのであります。更に考慮すべきは、現在のごとく矯正保護作業の確保を、全く一般企業との自由競争に放置しますれば、その当然の結果として、矯正保護作業は仕事を手に入れることができず、ために受刑者中に不就業者が継出し、受刑者の矯正保護はもとより、刑務所の治安維持の上からは誠に憂慮すべき事態を来すことが虞れられるのであります。かような次第でありまして、受刑者の作業は專ら官公需の用に供することとするのが、理論上も亦実際上も正当であると考えられるのであります。この受刑者の作業を官公需に求める制度は、いわゆる矯正保護作業の官用主義と呼ばれるものでありまして、アメリカにおいてはすでに一九二六年にこの制度を法律により制定した州もあるのであります。この矯正保護作業の官用主義を実現するにつきましては、これに必要とする官公需の仕事の十分な分量を確実に確保することが必要となるのであります。このためには国家機関に若干の義務付けをなすことも又止むを得ないところであります。かような考えの下に関係各省とも協議を重ねまして、この法律案の第七條乃至第十一條に亘り、これに関する規定を設けたのであります。その大体の構想は、国は受刑者の就業に十分な量の作業を確保する義務があり、地方公共団体はこれに協力することとし、矯正保護作業によつて生産される品物及び受刑者の労務は、優先して国及び地方公共団体の需要に供することを建前としたのであります。
作業確保の手続については、先ず法務総裁は注文案内書を作り、国又は地方公共団体の機関に送るのであります。国の機関はこれに記載されるもので、その需要に適合するものがある場合には、法務総裁又は刑務所の長等にその旨の通知をする義務を負うのであります。この通知により、両者間に通常の随意契約の線に沿ひ協議が行われ、契約が結ばれるのであります。勿論両者の意志が合致しないときは契約は成立しません。地方公共団体にはかかる義務付けをなさず、專らその自発的協力を願うことにいたしますのであります。今日はこの程度の措置で一応矯正保護作業に十分な量の仕事を確保し得るものと考えているのであります。
尚この矯正保護作業の官用主義を実施するに当りましては、政府の労働又は民間企業に関する政策を措置し、これに反しないよう務るべきものはもとよりでありまして、第八條第二項にこのことが規定されています。
以上がこの法律における矯正保護作業の規定の要旨でありまして、この他尚法律案は第十二條に、風水害その他緊急の場合には、受刑者が公共の被害の防止のために就労する規定を設け、又附則には、できるだけ速かに矯正保護作業を完全に官用主義に切替えることに努めなければならないことを規定しております。
以上の次第でこの法律案は今日受刑者の矯正保護上、誠に画期的の意味を有するものと信ずるものであります。何とぞ慎重審議の上速かに御可決あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/30
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031・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 大体提案理由で内容がほぼ分ると思いますが、尚御説明願うことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/31
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032・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 簡單に申上げます。只今の提案理由で大方明らかになつておると存じますが、逐條につきまして補足いたしまして説明をいたします。
この法律の第一條から第三條までは法律の目的と矯正保護作業の理念について規定いたしておるのでございます。第一條のこの法律の目的は、一つは矯正保護作業を運営するに当つて、受刑者は個人として尊重し、その精神にふさわしい環境の下にこれに従事せしめるという、その根本基準を定めること、それから一つは、矯正保護作業にふさわしい作業をこの法律によつて確保するという、この二つを目的としておることをこの法律の目的として規定いたしておるのでございます。
第二條は矯正保護作業の定義でございまして、懲役に処せられた者に課する作業を矯正保護作業というということにいたしております。尚この法律におきまして受刑者とは懲役に処せられて、定役に服する者をいうということにいたしております。従いましてこの法律からは一般の請願作業及び労役場留置につきましては除外いたされるわけでありまするが、精神においては異なるとこころはないと存じております。尚、少年に対する刑務作業、矯正保護作業はこの法律に含まれておるのでございます。
第三條で矯正保護作業の理念を明らかにいたしておりまして、これは矯正保護作業は行刑に関するいろいろの監獄法その他の法令の定める制限の下におきまして、受刑者が持つておりまする基本的人権を害しないようにし、且つ受刑者の矯正保護に役立つものでなければならんということに規定いたしておるのでございます。そうして第二項におきまして、受刑者が矯正保護作業によつて修得しなければならん勤労の風、尚職業技術その他の心構えを規定いたした次第でございます。
次に、第四條から第五條、第六條は、これは矯正保護労働に関する基準を定めたものでございます。労働基準法に準じまして、労働に関する基準を定めたものであります。即ち第四條におきましては作業賞與金を規定いたしております。「矯正保護作業に従事する受刑者には、予算の範囲内において、監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第二十七條第二項に規定する作業賞與金を給するものとする。」といたしております。監獄法第二十七條第二項におきましては、作業賞與金を受刑者に給與することができるという規定になつておるのでございまするが、この本法におきましては原則として、建前として作業賞與金を給するものといたしまして、受刑者の勤労に対しましては作業賞與金を給することを原則といたした次第でございます。
第五條は、作業時間、休暇及び休日について規定いたしたものでありまして、「矯正保護作業における作業時間、休憩及び休日は、受刑者が健康を保ち、修養をなし、元気回復をなし得るように、合理的に定められなければならない。」とし、その詳細な規定は府令に譲つておるのでございます。
第六條は、安全及び衛生についてでございまして、これは労働基準法の安全規則に基きまして、府令におきましてこれを定めることに譲つておるのでございます。
次に、第七條以下第十一條までは矯正保護にふさわしい作業といたしまして、その官業主義の方針並びにその方針によつて実施いたしまする運営の手続きを規定いたしておるのでございます。即ち第七條と第八條は、そのいわゆる官業主義、先程政務次官が説明いたしました官業主義の方針がここに明らかにされておるわけでございます。
第七條は、矯正保護作業の確保といたしまして「国は、受刑者の就業に十分な量の作業を確保しなければならない。」第二項が、「地方公共団体は、矯正保護作業の確保について、国に協力しなければならない。」となつております。この法律の趣旨は、受刑者の労務が法律によつて定められたものでありまするから、国はこれに対して十分な作業を確保しなければならん。その努力目標を、刑罰を科した目的に十分に副うようにしなければならんという点を示しておる規定でございます。
次に、地方公共団体がその矯正保護作業について国に協力しなければならんという点でございますが、これは地方公共団体は地方財政法その他の建前がございまして、国の機関と同一にいたすことができません。併し諸般の理由によりまして、協力の義務はあるものといたしまして、作業の確保について国に協力することに規定いたしておるわけでございます。
第八條は、矯正保護作業の運営でございまして、「矯正保護作業によつて生産される品物及び受刑者の労務は、優先して国及び地方公共団体の機関の需要に供することを原則とする。」、この意味は、矯正保護作業によつて生産されまする品物及び受刑者の労務は、先ず第一に公共の公益に優先して使われることが望ましいというところから、先ず国及び地方公共団体の機関の需要に供することを原則とするということにいたしたのでございます。つまり刑務所は、ここに仕事が三つありまして、国の仕事、或いは公共団体の仕事、或いは一私人の仕事というような場合に、どれを先にするかという場合に、国のものを先ずやらなければならん。それは矯正保護作業として最もふさわしいものだという理由でございます。その理由につきましては、先程提案理由において詳細お述べになりましたような理由からでございます。次に二項は「矯正保護作業を実施するに当つては、労務に関する政府の政策を尊重しなければならない。」、この党につきましても、提案理由において詳細説明されたのでございますが、ここに労務と申しまするのは單なる受刑者の労働のみを申すのではございませんので、この労務によつて生産せられる製品に関するものまで含んでおる意味でございます。即ち矯正保護作業を実施するに当りましては、政府としての施策、国の施策というものを十分に尊重しなければならん。つまり労働につきましては労働者、或いは作業につきましては通産省、その他政府といたしまして採用いたしまするいろいろな政策は、これを十分尊重しなければならんということにいたしておるのでございます。この点につきましては、労働省並びに通産省からの要請もございましたので、第二項としてここに挙げまして、更に詳細の規定を府令に譲ることになつております。
次に、第九條から十一条は、この官業主義の方針の具体的な手続きを定めたものでございます。第九條は、注文案内書の作成及び送付でございまして、「法務総裁は、矯正保護作業によつて生産される品物及び受刑者の労務に関する注文案内書を作成し、これを、国又は地方公共団体の支出の原因となる契約を担当する職員であつて、矯正保護作業の確保について協力を求めるのに適当と認められるものに送付するものとする。」であります。
つまり刑務所、法務府、矯正保護管区におきまして、注文案内書を先ず作成しまして、そうして国の機関或いは地方公共団体の中の特に協力を求めるのに適当と認められる方にこれを送付するという手続きを定めておるわけでございます。適当という言葉が出て参りますが、これは地理的条件その他いろいろな客観的に見まして適当と認められるという意味に解するのでございます。二項は「前項の注文案内書には、矯正保護作業によつて生産される品物の種類及び品目、受刑者の労務の職種その他矯正保護作業の能力に関する参考事項を記載しなければならない。」とありまして、注文案内書の内容をここに記載しておるのでございます。この九條は、国及び地方公共団体の責任義務を定めまするが、併し適当の機関がそれに対して責任を負うというのではありませんのであつて、この適当と思われる、客観的に適当と思われるものに注文案内書が作成されるということをここに規定されておるのでありまして、送付されるということを規定されておるのでございます。
第十條は、需要の通知及び協議でございまして、「国の支出の原因となる契約を担当する職員は、前條の注文案内書の送付を受けた場合において、これに記載された品物又は労務でその属する機関の需要計画に適合するものがあるときは、法務総裁又はその委任を受けた矯正保護管区本部若しくは刑務所の長に対して、すみやかにその旨を通知し、且つ、その品物の購入又は労務の受給について協議しなければならない。但し、災害等の場合において、急速を要し、通知及び協議をする余裕がないときは、この限りでない。」ということにいたしております。つまりこの注文案内書の作成、送付を受けました国の機関の契約を担当する職員は、先ずその機関においてこれが適合するような需要計画がございました場合には、他に注文する前に一応刑務所に通知して、協議をしなければならんという協議の義務をここで規定いたしておるわけでございます。併しその通知、協議の義務も災害或いはその他非常に急速を要する場合等のごとく、余裕のない場合においては、その限りでないということになつております。第二項は、地方公共団体の支出の原因となる契約を担当する職員におきましては、前條の注文案内書の送付を受けた場合には、前項の規定に準じて、通知及び協議をすることに努めなければならない。これは通知及び協議することに努めることに規定されておるわけでございます。
第十一條は供給能否の通知でございまして、需要通知及び協議を申入れました法務総裁、又はその委任を受けた矯正保護管区本部若しくは刑務所の長は、協議に際しまして、速かにその需要に応ずることができるかどうかを決めて相手方に通知しなければならないということにいたしております。
第十二條は、矯正保護作業が公益に奉仕する義務を負ふという建前から出まして、風水害その他の災害に際しまして、公益のために矯正作業に奉仕しなければならないということを規定いたしておるものでございます。「風水害その他の災害に際し、公共の安全を維持するため必要がある場合において、急速を要し、且つ、他に手段がないときは、法務総裁又は矯正保護管区本部若しくは刑務所の長は、関係都道府県知事の求により、受刑者の労務を提供しなければならない。」と規定いたしておるのであります。
これは法務府当局としての義務を規定いたしておる次第でございます。
次に、実施規定といたしまして、第十三條は、注文案内書の作成及び需要通知の手続、その他前條までに申述べましたいろいろの残されたこの法律の施行に関して必要なる事項は法務府令で定めることを規定いたしておるのでございます。
次に、附則におきまして、施行期日を本年の四月一日といたしました。尚この矯正保護作業の官用主義への完全なる切替えをできるだけ速かになさなければならんという規定を第二項に定めておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/32
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033・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは本案に対するところの質疑は次回に譲ることにいたします。
本日はこれを以て解散いたします。明日は午後一時より開会いたすことにいたします。
午後三時三十三分散会
出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
理事
鬼丸 義齊君
阿部 常君
宮城タマヨ君
委員
大野 幸一君
齋 武雄君
松井 道夫君
松村眞一郎君
政府委員
法務政務次官 牧野 寛索君
法制意見長官 佐藤 達夫君
検 事
(法制意見総務
室第一局長) 岡咲 恕一君
刑 政 長 官 佐藤 藤佐君
法務府事務官
(矯正保護局
長) 古橋浦四郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X00719500308/33
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