1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年四月二十四日(月曜日)
午後零時八分開会
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委員の異動
四月二十二日 委員石原幹市郎君辞任
につき、その補欠として鈴木安孝君を
議長において指名した。
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本日の会議に付した事件
○国籍法案(内閣提出、衆議院送付)
○国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を
改正する等の法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○民事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。
国籍法案及び国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。前会に引続いて質疑を継続いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/1
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002・松井道夫
○松井道夫君 これも前々回の委員会ですか、すでに問題になつたことですが、更にお尋ねして置きたいと思います。例えばアルゼンチンの国籍法によりますと、第一章アルゼンチン人としてアルゼンチン人というものはどういうものであるかということが規定してあるのであります。それによるとアルゼンチン人というものを実体的に或る程度把握できる要件が書いてあるのであります。ところがこの国籍法案によりますると旧法の主義を踏襲いたしまして、二條に「子は、左の場合には、日本国民とする」一に「出生の時に父が日本国民であるとき」ということになつておりまして、これがまあ原則であります。父が日本国民であるときということになつておりまして、その日本国民が何者であるかということを実体的に規定の上から把握できないのであります。これは頗る大きな問題でありまするので、今回の改正において実体的にその日本国民を或る程度把握するということが不可能であつたのだろうと存ずるのでありまするが、その日本国民とは何者であるかということについて実体的に立案当局におきまして或る程度の構想があるものと私存ずるのであります。例えば日本の現状におきますると事態は頗る錯雑しておつて、講和会議が正式に締結されて初めて明確になり得るような性格を持つた、例えば台湾人とか朝鮮人とかいつた問題がある。或いはずつと前から満洲なら満洲に行つておつてそこに生れた者、二代も三代も前から行つているという人達もある、それが日本との繋がりがはつしりしない、そういつた形で満洲に行つたような方もあると思うのであります、併しながら先程申上げましたように立案当局として相当研究せられて、実体的に日本国民を把握する点について或る程度の構想をお持ちであると存ずるのでありまするが、その点についてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/2
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003・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 前々回にも申上げました通り、現行法に言つております父が日本人であるとき、この日本人とは何を言うかということにつきましては、明治三十二年現行国籍法が施行される前は成文のこれに相当する規定がなかつたわけでありまして、要するに我が国の歴史と一般通念とによつて日本人とされておつたものを日本人とし、それを基として現行国籍法によつて国籍取得のあつた者を加え、国籍喪失の原因のあつた者を除いた者が現在における日本人だ、かように考えておるわけであります。尤もこういう国内法の関係の外に領土の併合、或いは割譲とか国際法上の原因に基いて日本の国籍を取得した者も入るわけであります。この日本国民というものをどう考えておるかという点につきましてはさよう御了解願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/3
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004・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑ございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/4
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005・松村眞一郎
○松村眞一郎君 国籍を離脱する場合に他の国籍と日本の国籍と二重に持つておる場合だけを想像しておるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/5
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006・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 第十條の国籍離脱は外国の国籍を有する場合に限るという意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/6
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007・松村眞一郎
○松村眞一郎君 これは帰化の場合も同様になるわけですね。帰化をしてあちらの国籍を失うということが條件になるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/7
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008・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) そうであります。第四條の帰化の要件の第五号に「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと」ということが許可條件になつております。二重国籍になることを防止するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/8
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009・松村眞一郎
○松村眞一郎君 日本人が他の国に帰化しよういするときはどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/9
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010・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 日本人が外国に帰化しようとする場合に第八條によりまして「自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」ということになつておりますので、やはり二重国籍は防がれることになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/10
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011・松村眞一郎
○松村眞一郎君 そうしますと、帰化をしようというようなことを考えておる日本人があつたとすれば、先ず帰化をあちらの国に求めるということになつて、その相手国の規定にも又この日本の第四條第五号のごとき規定がないと、実行できないということになるわけですね。私の尋ねます趣旨はこの国籍法の、二重国籍であるとか無国籍であるとかいう問題の解決には、どうしてもこの法律だけではいかないのであつて、やはりその條約がないというと、本当に思う通りには動かないのじやないかということを心配しておりますから、今のようなことをお尋ねしておるのであります。二重国籍ということが行われるのは、やはりそういう関係が余程重要な点じやないかと思うのですが、同時に何か国際上の御考慮があるのですかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/11
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012・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 外国の国籍法におきまして、日本の国籍法案の第四條第五号のような規定を設けていない所もあるのでありまして、つまり外国の国籍を取得しても日本の国籍を当然には失わない、従つて一時的に二重国籍になるという場合も起り得るのであります。でこれは只今松村委員の仰せになりました通り、各国の国籍立法が必ずしも歩調が合つておりませんために、無国籍及び二重国籍の防止を理想としながらも尚こういう場合が起り得るのでありますが、この條約の関係につきましては、御手許にお配りしてあります各国国籍法規集の冒頭に挙げてあります一九三〇年ヘーグで作られました「国籍法の抵触に付ての或種の問題に関する條約」というのがございます。これは主として国籍の抵触、即ち二重国籍の発生、無国籍の発生の防止を目的としてできました條約でありまして、我が国も当時この條約に調印いたしたのでありますけれども、批准をするに至らなかつたのであります。で将来講和條約ができまして我が国の外交上の権能が回復いたしましたならば、更にこれらの條約に加盟するというような問題も現実に起つて来るかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/12
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013・松村眞一郎
○松村眞一郎君 今のお示しになりました條約案には、『日本国第四條、第十條及第十三條中の「帰化を許す国の法律に依り」なる字句を留保す。』とあるのですが、これは留保するということにして批准したのじやないですか、ただそういうことを提案したに過ぎないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/13
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014・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 留保して調印したに過ぎないのであります。批准をいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/14
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015・松村眞一郎
○松村眞一郎君 そうしますと、この日本の態度はどうなりますか、やはりこの態度で進むつもりであるのか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/15
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016・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) この條約の前文にあります通りに、無国籍の場合及び二重国籍の場合を消滅せしめるということを理想として、立法をやつて行くという態度におきましては、現行法もやはりこの改正案も全くこの條約の精神と同一の態度をとつているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/16
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017・松村眞一郎
○松村眞一郎君 憲法の第二十二條の「国籍を離脱する自由を侵されない」という規定は、無国籍になるということは許さないという意味がここに入つておるという解釈ですか。日本の国籍を離脱する、その結果国を離れてしまう、そういうこともまあ国民が皆そういうことを行おうとすると大変困ることになりますけれども、憲法の解釈としてはどうお考えなんでしようか。無国籍にならない場合において離脱する自由を侵されないという、こういうように読むわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/17
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018・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 憲法第二十二條二項の解釈といたしまして、離脱の結果無国籍になるという場合にまで、離脱の自由を許すという趣旨ではない、やはり国籍強制主義と申しますか、他国の国籍を持つている者に対して、自国の国籍を強制する、一度臣民たるものは永久に臣民であるという昔の主義をとらない、国籍非強制の主義を宣言したものと、かように解釈いたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/18
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019・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 この帰化の場合の第四條の規定でありますが、只今松村委員の質問されておりました第五号の場合に他の要件は全部完備しておるのであるけれども、日本国籍を取得することによつてその本国の国籍を失うということにもなりますので、先ず本国の国籍を失うことが帰化の許可條件になるとするならば、それはやはり條件付の許可ということになるのでしようか。少くとも日本本国に国籍を有するに至るならば、その国の法規上当然やはりその国の国籍を失うという規定の存せざる国民の、日本の帰化というものはでき得ないことになるのであるか。それとも或いは帰化の申請が法務総裁にあつた場合に、法務総裁の方からその本国のやはり意見を聴いて、若し日本国の国籍を与えるならば、自国の国籍はやはり当然失うことを承認するとかなんとかというふうないずれか、その点をはつきりしなければ帰化條件を充たさないことになるのじやないか、その点はどういうふうにお考えになるか、それが一点。
それから次の、若し帰化する者の家族の者が二十才に満たざる者であつて、共にやはり日本国民になりたいという希望を持ちましても家族の者が二十才に満たないような場合には、家族はやはり取得することを許さない、こういうことになつては非常に不自然なように思いまするが、当然立法に当りましては考慮されたことと思いますが、その点に対する御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/19
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020・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 第四條第五号によつて日本の国籍の取得により本国の国籍を失うことが要件とされておりますので、丁度この国籍法案の第八條にありますように、その本国の国籍法で日本の国籍を取得すれば現在の国籍を失うという規定がなければ帰化を許すことができない、かような解釈であります。つまり二重国籍の発生防止という理想を貫徹するためにこういう規定になつておるわけであります。
それから家族が殊に妻子が同時に帰化したいという場合でありますが、第六條に簡易なる帰化の條件が規定してございますが、この四條に掲げてあります帰化の條件は、妻子その他の家族の場合には遙かに軽減されております。それから殊に年齢が十五才に満たない、つまり意思能力を持たないというような幼年者の場合には、第十一條の規定によりまして法定代理人が代つて帰化の申請をすることもできることにもなつております。同時に帰化することも可能になつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/20
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021・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 第二の点はよく分りましたが、第一の点に対しまして、現在日本以外の外国の国籍法の規定でそういうふうなことになつております、日本の例えば八條のようなふうの規定を設けておるような国は大略どのくらいになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/21
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022・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 現在分つております各国立法例におきましては、殆んど大部分の立法例がこの第八條に相当する規定を設けておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/22
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023・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 大部分と言いますとやはり若干はあるのですか、それに反対の規定が。それから朝鮮の場合はどういうふうになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/23
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024・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮の場合についてお答えいたしますが、朝鮮人につきましては、我が国の国内法の立場からは現在も尚日本の国籍を持つておる者と解釈いたしておるのであります。従いまして現在におきましては、朝鮮人が内地人に帰化するという問題は起り得ない、さような解釈になつておるのであります。朝鮮人の国籍は将来講和條約によりまして最終的に決定されるわけでありますが、その場合には外国人ということになると思われまするので、帰化の問題も講和條約成立後は当然起ることでありまして、現在のところまだ今は日本の国籍を持つておる者という解釈を採つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/24
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025・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 ちよつと私その点は理解しがたいのですが、ポツダム宣言に基き日本の主権の及ぶ範囲というものは限られておる。日本の主権の及ばない範囲の者の住民、朝鮮人が、日本の国籍を持つことに、法的にはどこに根拠があるのでしようか、それを一つお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/25
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026・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮が日本の領土から除かれることは、ポツダム宣言によつて確定的になつておるわけで、日本が占領下にありまして外交上の権能を停止されております結果、朝鮮に成立しておる独立国を承認する、国家を承認するという国際法上の行為をする能力はないわけであります。又将来講和條約或いは両統治国間の條約によつて、朝鮮人の国籍について特別の定めができるということも想像されるのでありまして、現在の我が国の立場といたしましては、殊に国内法の立場といたしましては、外国の国籍を持つておる者とそう認めるわけには参りませんので、従来通り日本の国籍を保有しておる、かような解釈を採つておるわけであります。
尚先程お尋ねがありました第八條と違う趣旨の立法例といたしましては、中華民国の国籍法の十一條でありますが、自己の志望によつて外国の国籍を取得する場合にも、内政部の許可を得て中華民国の国籍を失うことができるというような許可を必要としておる立法例もあるのであります。併しこれは極めて少数の例外でありまして、大多数の国では、我が国の国籍法の第八條と同じような趣旨を持つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/26
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027・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 後の場合はそれで分りましたが、第一の例えば朝鮮人の日本国籍を持つ者が、日本においては日本人の国籍を持つ者と同様に国内法で認めておるという只今の説明では、ちよつと私は分りませんが、もう少し法律上の、内地の国民法の法的根拠はどこに置いて、そういうことに只今政府のほうでは御覧になつておるのでありますか。現に朝鮮に本籍を持ちます者にして、日本の国籍を持たんがためには、いろいろな方法によつて裁判所の許可を得る、或いは婚姻、養子縁組等の方法によつて現にやつておるのですから、若し只今の説明のごとくであるとするならば、朝鮮人にして日本に住する者は、尽く日本人と同様なる国籍を持つ者というふうなことに解されるには、何かの法的な根拠がやはりなければならぬ。そうして又そういうふうな漠とした一体解釈をしていいのか悪いのか大きな問題と思うから、重ねて法的根拠を一つお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/27
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028・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮人は曾ての日韓併合條約におきまして日本の国民となつたわけであります。その後先程申上げましたように日本の国籍を失うはつきりした原因がまだ生じていない。従つて従来通り日本の国籍を持つておる。こういう解釈をしておるわけでありますが、只今御指摘になりました内地人の身分を取得するかしないかという問題は、これは国籍法の適用を受けるものになるかどうかという問題で、朝鮮人に対しましては、終戦後も戸籍法の適用はなかつたのであります。内地の籍に入りますためには婚姻とか養子縁組その他親族法上の原因がない限りは入れなかつた。現在も朝鮮に本籍を持つておつたいわゆる朝鮮人が、日本に本籍を移すということは認めておらぬ。従いまして帰化もできない。それから本籍を日本に移すこともできないという変態的な状態にあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/28
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029・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 只今の説明によりますると、日韓條約に基いて朝鮮人は即ち日本人になるということによつてその状態が今尚継続しておつて、国内法の上からいつても当然日本人になるというふうに解釈されるならば、今朝鮮に住んでおられる三千万のいわゆる国民というものは、即ち日本人として解釈しておられるのかどうか。そうすると日本国民というものは大変な大きな数字になつて違つて参りますが、そんな一体解釈をしてよろしいのか。もう少し私は法律上の何か国籍法とかいうような問題でなくて、いわゆるポツダム宣言がありまして後に、やはり日本の主権の及ぶ範囲というものはおのずから限られておるのでありまするから、それに基く関係からして、朝鮮人というものは一体日本人なりというふうに依然として国内法的に解釈するということは、私共は何かの法的根拠がない限りは出て来ないんじやないか。或いは扱いの実際においてはそういうことで以て過渡時代としてやつておるかも知れませんが、そのまま一切を挙げて今後いわゆる日本人同様なる法的扱いができるものとは理解し難い、その点もう少しはつきり御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/29
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030・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 非常にむずかしい問題でありまして、十分御納得の行く説明ができないかと思いますが、要するに我が国の国内法の立場から申しますと、先程申上げましたように最終的な国籍の帰属、或いは国家の承認というようなことについての国際法上の行為をする機能がない結果、従来通り日本国籍があるものと認めざるを得ない状況にあると申上げる外はないのでありまして、甚だ変態的な状態でありますけれども、講和條約成立まで止むを得ないのではないかと考えておるのであります。
尚国内法における朝鮮人に対する取扱いでありますが、一応形式的に日本の国籍を保有するという解釈はとりましても、将来講和條約成立の際には朝鮮の独立が認められ、日本の立場からもこれを承認することになりましようし、朝鮮人の国籍ははつきりといたすわけであります。外国人登録令などの関係におきましては外国人に準ずる取扱いをいたしておるわけであります。その外選挙法等におきましても、御承知の通りいわゆる日本内地人とは別個の取扱いを受けておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/30
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031・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 これは実に重大な問題であるので、或いは重大な問題だけ御答弁が一体整理できていないんじやないかと私は思います。殊にポツダム宣言によつてすでに日本の主権の及ぶ範囲というものは限られておつて、その主権の及ばざる地域の国民全体が日本国民なりというようなふうなことは、従来の扱いはそれといたしましても、少くとも戦争終了によりまするポツダム宣言を我々は受諾いたしておりまする限りにおいては、これはやはり国内であると国外であるとを問わず、やはり、その限局せられたる範囲においての主権を管理せざるを得ない。その管理せざることを得ないことがはつきり分つておるに拘わらず、従来そういうふうにしておるのであるからして、やはり主権の及ばざる範囲にある朝鮮人に対しても日本国民としての扱いをすべきものだ、沖縄におります本籍を持つ者はやはり日本国民である、こういうふうに一体解釈していいかどうか、この国籍法の審議に当つてそんな曖昧なことではちよつと理解ができないんですが、重要な問題であるだけ、この点を私ははつきりして置く必要があると思いますので、十分御研究を願つて私は明確なる御答弁を頂きたい。主権の及ばざる範囲の土地に住まつておる者が、そのまま日本の国民なりというふうなことは、余りにも私は奇想天外な答弁であると思います。もう少し一つ御研究を願つてはつきりとこの際政府の御意見を明確にして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/31
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032・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 沖縄に本籍のある者につきましても前回申上げたのでありますが、やはり最終的には講和條約で決定されるのでありましようけれども、それまでは日本の国籍を持つ者として取扱つておるわけであります。而も沖縄に本籍を持つておる者につきましては、従来も戸籍法が直接に適用されておりましたので、現在戸籍法の適用を受ける日本国民という取扱いを受けておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/32
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033・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 朝鮮の本土におるところの境界をはつきりして置いて貰いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/33
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034・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮の本土におる朝鮮人と内地に住んでおる朝鮮人、この国籍の関係であります。これは事実上非常に違うのであります。併しながら法律的に考えますと、本土におる朝鮮人は日本人でない、日本におる朝鮮人は日本の国籍を持つておるという区別を付ける法律的な根拠がないわけであります。朝鮮には御承知のように独立国が成立いたしておりますし、その独立国の側から考えますと、本土におる朝鮮人も、日本におる朝鮮人もすべて向うの国民である、かように考えておるわけであります。二重国籍というのではなくて、つまりそれぞれ国際的に変態的な関係にあるため、日本の国内法の立場からは日本の国籍である、向うの独立国の立場からはその自国の国籍を持つておるという取扱いを受けるという、誠に妙な関係なのでありますけれども、これを法律的に考えて参りますと、そう説明せざるを得ないかと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/34
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035・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 尚二重国籍にあらずと説明されますけれども、説明それ自体によりますとやはり完全にそれは二重国籍であつて、日本に在留する朝鮮人は日本人としての扱いをし、朝鮮に在留しております朝鮮人は朝鮮人として扱うということになりますと、朝鮮の独立国から日本に在留する朝鮮人は朝鮮の国籍を持つものである、こうなる。明らかにそれは二重国籍になる。それでは私はこういうふうな状態でありまするから、変則の時代ではありまするけれども併しながら少くとも国籍を有するや否やというふうな重大な問題は、これは曖昧にして置いてはいけないと思います。只今のあなたの説明ではどうしても理解できない。尚一つその点は特に御研究になつて、今の御答弁をなさつておるのであるかどうか、その点にも疑いを持つ。若し重要な問題であり、そしてまだ明確なる法的根拠がないのであるならば、ないことを一つ率直にここでお聴かせ願わなければ、この委員会で朝鮮の本籍を持つ者であつて日本に在留する者は日本国民である、然らざる者で朝鮮に在留をして朝鮮の本籍を持つ者は朝鮮人だというようなふうなあなたの一個の意見では私は承服し難いと思います。であるからその点は如何にこういうふうな変則時代でありましても、国籍がいずれにありや、日本国民がどの範囲のものでありやということにつきましては、これは一瞬間といえども明確にして置かなければならぬ問題だと思う。でありますから本日ここでということができないならば一つ御研究を願つて、この際明確にして頂きたいということをお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/35
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036・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮人の国籍の問題につきましては、こういう変則的な時代でありますために、非常に重大なむずかしい問題でありまするので、かねがね外務省その他とも政府部内において採上げて研究をいたしておるのでありますが、只今までのところ先程来申上げました御説明の結論に到達しておるわけでありまして、これ以上或いは明確にいたすことは困難かと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/36
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037・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 私はこの際、特にこの問題に対しては余りにも重要なことでありまするから、外務大臣の一つ御出席を願つて明確にしたいと思う。この程度では、只今の説明では私は承服し難い。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/37
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038・松井道夫
○松井道夫君 今の問題に関連しましてちよつとお尋ねしますが、大韓民国を承認しておる国、或いは承認していない国の関係はどういうことになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/38
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039・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 大韓民国を承認しておる国がどことどこであるかということは後程取調べましてお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/39
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040・大野幸一
○大野幸一君 この国籍法において本国法という法はこれはやはり法の地位にあるのか、事実の地位にあるのか。と申しますのは今まで非常に本国法を当事者の立法責任に帰せられるようにも考えるし、法であるから裁判所で職権で取調べるというものであるか、今までどうであつたか知りませんが、現在どう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/40
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041・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 本国法の内容がどうなつておるかということは、帰化の許可、その他の国籍事務を取扱います政府機関の責任において調査いたすわけであります。現在もそういたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/41
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042・大野幸一
○大野幸一君 第九條の場合には二重国籍を暫定的に認めざるを得ないという考えでこれは第九條があつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/42
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043・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 第九條は現行法の第二十條の二及び第二十條の三の規定を整理して一まとめにいたしたのでありまして、我が国の国籍法が血統主義を採り、北米、南米諸国の国籍法は出生地主義を原則といたしておりますため二重国籍が生ずるのであります。そういう場合の二重国籍の発生を成るべく少くするために、国籍留保という特別の意思表示をしなければ日本の国籍を出生の時に遡つて与えないというのが第九條の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/43
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044・大野幸一
○大野幸一君 国籍の留保の申請をした場合はやはり二重国籍を承認するわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/44
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045・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) そうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/45
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046・大野幸一
○大野幸一君 第十一條の法定代理人というのは、これは国内法による法定代理人であるのか、それとも外国法の法定代理人でもよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/46
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047・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 法令の規定によりまして親権者の場合は父方、母方の本国法、後見の場合は被後見人の本国法というのが準拠法になるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/47
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048・大野幸一
○大野幸一君 先程の鬼丸委員の質問に関連するのですが、第三條の日本国民でないということには朝鮮人は今のところ含まないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/48
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049・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 現在のところはそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/49
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050・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 もう少し明確にして置きたいのですが、そうすると朝鮮人にして朝鮮に在住する者は朝鮮人で、日本に在住するものは日本国民だ。こういうことなのですが、若しそうだとすると、日本在住の朝鮮人にして日本の国籍を持つ国民なるものは一体幾らあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/50
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051・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 朝鮮に住んでおる朝鮮人と日本に住んでおる朝鮮人と分けて国籍を別々に考える考え方も一部にはあるのでありますが、私が先程申上げましたように、これを區別して考える法律的の理由がない。従いまして法務府といたしましては我が国の国内法の立場からすれば、従来通り日本の国籍を持つておる、かように解釈をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/51
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052・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 そうしますと日本の国民として国籍を持つ国民の総数は幾らになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/52
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053・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 日本に在住しておる朝鮮人を加えての、つまり日本の国籍を有するものの総数は只今のところ正確には分つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/53
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054・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 それではその数字をお示し願いますか、調査して。日本国民が一体日本国民の総数の人口を知らないというようなことはありえないのですから、政府として日本に国籍を持つ日本人というものの一体人口が何人であるか分らないはずないのですから、それを含めて日本人であるとするならば、その総数は当然分らなければならないわけですから、それを一つ調査願つてここで明確にして頂きたい。どうも私は先程来から政府委員の御答弁によりまして朝鮮人か依然として日本国民として扱わしておるかも知れませんが、日本国民と同様なる取扱となるということの国内法的に考えておられることはちよつとどうしても法的の根拠がない限りは理解できない。もう少しその点を明確にして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/54
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055・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 今の政府委員の御答弁は政府の御見解の確定的のものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/55
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056・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 日本の国籍を持つておるというふうに解釈いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/56
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057・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 日本政府としては……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/57
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058・松井道夫
○松井道夫君 朝鮮人の国籍の問題についてはこれは現在に始まつだのではなく夙に問題になつておることです。私も第六回の国会で施政方針における質疑においてその点に触れておるのであります。現在一番問題になつておることは大韓民国並びに三十八度以北の何と申しますか、北鮮と申しますか忘れましたが、その国と二国が成立しておりまして、そうして例えば大韓民国の政府の見解といたしましては、要するに朝鮮人は朝鮮に住むと日本内地に住むとを問わずこれは大韓民国の国民である、さような見解を堅持しているのであります。たまたま私の質問に対しまして、法務総裁から朝鮮人はすべて日本国民であるという答弁をされました結果、大韓民国のたしか国会であつたと思いますが、相当な問題を起しまして議長が声明を発しておるのであります。その後そういうことがありますのでますます対日感情というものはよくなくなつて来ておる、最近李大統領が渡日せられたりいろいろ貿易の話などもございますのでどうか知りませんが、相当国民感情としては悪化いたしておるのであります。これは将来にとつても重大な問題であるので、政府におかれても十分その間日本と大韓民国の関係その両国の国民感情の融和ということには努力して参らねばならないと思います。それで私も実は鬼丸委員の只今疑問を提出せられたそういつたような感じを持つておつたのであります。只今の話ではそうではありません。それで私は講和條約のときに日本在留の朝鮮人については、その志望によつて直ちに日本人になり得るというような簡易な方法を認めたらどうかということを提案いたしたのでありますが、政府の方ではもともと日本人であり且つ講和條約によつてはつきりするのであるから、そういう点は必ずしも考えてはおらないという趣旨の答弁であつたのであります。政府委員の御答弁の中に内地においての朝鮮人と朝鮮本土においての朝鮮人と別個に考える考え方もあるということを言われたので、実は私はそういつた考え方ができないものかと以前考えておりましたのでその点をお聞きしたいのでありますが、朝鮮におりまする朝鮮人これはすでに国際上の既成事実といたしまして大韓民国ができている。それでその国民は大韓民国に住んでその国民として生活いたす、それを認めておるのであります。而も内地におります朝鮮人の中には大韓民国の代表部が今しきりに国民の登録をいたしておる。現在は済んだかどうか知りませんがそれに積極的に登録した人も沢山あると思うのであります。そういう人達はこれは一つの既成事実として認めて大韓国民として、その他のものはこれは日本人として取扱う、そういつたような區別ができないことはないと私考えておるのでありまするが、併しまだはつきりした論拠を持つておるわけでありませんし、それで只今言われた内地に住んでおる朝鮮人と、韓国におるところの朝鮮人との国籍を日本の立場といたしまして分けて考えるという議論はどういう方面にあるのか、又その根拠はどういうところであるかその点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/58
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059・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) この朝鮮人の国籍の問題について政府内部におきましていろいろ検討いたしております際に、そういう意見が一部から出たという意味で申上げたのであります。我が国の法令上の取扱におきましても外国人登録令等はすべての朝鮮人は外国人に準じて取扱うという態度を取つておりますが、昨年出ました外国人の財産取得に関する政令、いわゆる外国人財産取得令と称しておりますが、これなどは終戦前から引続いて日本に住んでおるものは外国人として取扱わず、それ以外のものは外国人として取扱うとこういうふうに分けて取扱う態度を取つておるものもあるのです。要するに先程来たびたび申上げますように我が国が外交上の権能を持たないという特殊な地位にありますために、只今朝鮮人の法律的な地位に関する問題も非常に錯雑しておりましてむずかしい問題なのであります。内地に住んでいる朝鮮人に対する将来の取扱の問題につきましての松井委員の御意見の点は、いずれ講和條約その他の際に必ず検討される問題だと私共考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/59
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060・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 今国籍法の審議をいたしておりまするときに当つて、第二條によつて日本国民の国籍というものは決る、その第二條中には只今の説明の趣旨とは全然違うものが挙がつて来ておるのです。国籍法の審議に当つて国籍法に書かざる、要件を備えざるものが一般に日本国民なりと説明しておいて、これを我々に審議しろということは甚だどうかと思う。この第二條の要件は完全に只今の説明によりますと要件を備えない日本国民ができて来るわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/60
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061・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 第二條は現行法の第一條、第三條、第四條をそのまま踏襲しておるのでありますが、国籍法は現行国籍法が終戦前から朝鮮人に適用があつたかどうかということは、これは長い間のむずかしい問題なのでありまして、台湾、樺太には国籍法が施行されておりましたに拘わりませず、朝鮮には国籍法が施行されてなかつたのです。で朝鮮人の国籍の問題は、日韓併合條約によつて国際法上の原因によつてすべて日本の国籍を取得した、その後の朝鮮人の国籍の得喪は、もつぱら慣習法と條理によつて決ると、こういう解釈を従来とつて来ておるのであります。そういう関係もありまして、朝鮮人の国籍の問題にいたしますと非常にむずかしい問題が多いのであります。第二條は現行法をそのまま踏襲した規定と御理解を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/61
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062・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 委員長はこの法案は採決の予定かもしれませんけれども、私共尚重ねて一遍調査したい、研究したいと思いますから、本日はこの程度で……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/62
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063・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、どういう御意向ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/63
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064・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 いや尚研究したいのです。で今日は採決に入らないようにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/64
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065・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて下さい。
午後一時十三分速記中止
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午後一時三十一分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/65
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066・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/66
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067・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) この法案は現行国籍法のうち新しい憲法及び改正民法の趣旨に副わない点を改めるということを主眼といたしまして立案したものであります。朝鮮人の国籍問題につきましては法律的に申しますと、先程来申上げました以上に御説明することができないのであります。尚現在の我が国の置かれました国際的地位、その他国際情勢等を考えまして、実際の取扱その他については尚考慮を要する点があると考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/67
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068・松村眞一郎
○松村眞一郎君 もう少し條文的のことをお尋ねしたいと思いますが、この第七條に該当するような事例は今までどのくらいあつたんですか。日本に特別の功労がある外国人だというので、特別の許可をした事例ですね。それともう一つはこういう規定が特に必要なのかどうか、第四條を全面的に除外するというようなことまでする必要があるのかどうか、或いは第四條の一号とかいうようなことだけでいいのじやないかというような考えもあるのですが、ただ條文的の議論をすれば、第四條では、どうしても折角新しく国籍を取得されるとすれば、こういうことはやはり好ましくないということが相当書いてある。それをも除外して特別の功労があれば全面的に第四條はこれを全部適用しないというような大まかな規定でいいのかどうかという点も御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/68
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069・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 改正案の第七條に相当いたします現行法の第十一條によつて、帰化を許可した事例は今まで一件もございません。第七條は、現行法の第十一條にありますのをそのまま踏襲したに過ぎないのであります。ただ勅裁でありますのを、国会の承認と改めたという新しい憲法の精神に副つた整理をいたしたに過ぎないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/69
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070・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それならばむしろ削つてしまつたらどうですか。わざわざ国会でそういうことまで議するということになるというと、もう少し精密に考えないというと、第四條においても、素行善良であるというようなことがなくてもよろしいというような工合になるわけであります。殊に国会がそういうところまで乗り出して、特に功労がある外国人の帰化を許可しなければならんというような権限を与えて貰わなければならん程の必要があるかという点、むしろ削つてしまつた方がいいんじやないか。特にこういうことの適用がないというものであれば、大体この四條の規定で賄い得るのじやないか。若し制限の基準が必要とするならば第一号くらいのものじやないかと思う。五年もいなくてもよかろうというだけで、その外の條件はあつた方がよかろうというように考えるので、素行が善良でなくてもよろしいということは起つて来ないのじやないか。それであるならば、第四條の例外的な規定でやれば法務総裁だけで処理してよろしいのであつて、国会がそれを承認しなければならんというようなことをわざわざ掲げてまで、第七條の規定を存置しなければならんという必要がどうも感じられない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/70
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071・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 第七條によつて国会の承認を得る際には、第四條に掲げてあります要件等をも無論参酌されて承認されることと考えられますので、第四條の規定を全面的に排除いたす、こういう実例が今までないから削除してはどうかという点でありますけれども、或いは将来こういう必要が生ずることも考えられますし、外国の立法例等にもいわゆる大帰化と申しまして、こういう特別な帰化の規定を設けておる例もありますので、特に現行法にありますのを削除する必要もないかと考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/71
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072・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私の申すのは、わざわざ国会を煩わさなければならんような問題を新しく規定するということは、現行法のままでは決してないと私は思うので、第四條の規定のどれを除外しようというのでありますか。国会の承認を求むる場合に、これは「規定にかかわらず」というのでありますから、その規定に当嵌らない場合起るものであつて、当嵌る場合は第四條で行けばよろしい。第四條の條件を備えない者を許可しようという場合に起るのであつて、どれも必要な條項じやないかと私は思うのです。国家に功績があればどの規定は除外してもよろしいとお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/72
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073・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 国会の承認の場合には、すべて国会の判断にお任せするという趣旨でありまして、四條の中のどの点ということは考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/73
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074・松村眞一郎
○松村眞一郎君 どうも意味がよく分らないのですが、第四條で賄い得るならば四條でいいわけで、四條の規定を除外する必要があるので第七條があるというように私は考える。功績があるからといつてどの規定を除外しようというのですか。国家に功績のある人で、四條の中でどれとどれが功績があればこの條件はなくてもよろしいということでなければ、この規定は要らないと思う。むしろ現行法が漠然としておるという考え方なんです。それをわざわざ国会の承認まで持つて行くということは現行法のままではないので、私は新らしい立法になると思う。削つた方がいいという考え方なんです。どの規定を除外するというのですか、「かかわらず」というのでありますから……第四條の規定でいいものであれば何も国会に出す必要はない。法務総裁がおやりになつてよろしい。ですから第四條の規定ではいかないから国会に出そうということになるのでしようが、そうすると第四條の規定のどれを考えておるのですか。どうも私はこれは要らないと思うのですが、第一号の外は。功績があるから二十才未満でもよろしいということで、そういうことを想像するに及ばんじやないかと思いますが、これは「善良である」ということは必要であると思うのでありますが、「独立の生計」というのはこれは或いはなくてもよろしいかも知れないが、だからこの第六号のごときも除外するということもできないでしよう。国会としてどうも理由が私には分らない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/74
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075・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) もとより現行法のままではないのでありまするが、現行法で「勅裁」とありますのは、新らしい憲法によりまして天皇には国政に関する権能がないこととなりました。国権の最高機関は国会でありますので、これを国会と改めたという意味で申上げたのであります。第四條のどの規定という点でありますが、場合により或いは第一号の條件だけを欠いておるという場合もありましようし、第四條の條件だけを欠いておるという場合もあろうかと思います。これはもつぱら国会の判断にお委せするという考えでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/75
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076・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 松村さんよろしうございますか……ではこの程度で一つお願いいたします。
それでは質疑はこれを以て終局することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/76
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077・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では討論は省略いたしまして直ちに採決に入ります。
それでは国籍法案、国籍法の施行に伴う戸籍法の一部を改正する等の法律案、両案を一括議題に供します。両案に御賛成の方の挙手を願います。
〔総員挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/77
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078・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 全会一致両案とも原案通り可決すべきものと決定いたしました。それでは本会議におけるところの委員長の口頭報告の内容につきましては委員長に御一任願います。御賛成の方の御署名をお願いいたします。
多数意見者署名
大野 幸一 鬼丸 義齊
宮城タマヨ 松村眞一郎
鈴木 安孝 松井 道夫
岡部 常発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/78
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079・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記をちよつと止めて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/79
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080・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて下さい。それでは民事訴訟の一部を改正する法律案を議題に供します。前回に引続き質疑を継続いたします……別に質疑がなければ質疑はこれを以て終局することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/80
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081・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では質疑はこれを以て終局いたしました。討論はありませんか。
〔「ありません」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/81
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082・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では討論はこれを省略いたしまして、直ちに採決することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/82
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083・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では本案全部を問題に供します。本案全部に御賛成の方の挙手を願います。
〔総員挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/83
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084・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。尚本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては予め御了承願つて置きます。御賛成の方の御署名をお願いいたします。
多数意見者署名
大野 幸一 鬼丸 義齊
宮城タマヨ 松村眞一郎
鈴木 安孝 松井 道夫
岡部 常発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/84
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085・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では本日はこれを以て散会いたします。
午後一時五十三分散会
出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
理事
鬼丸 義齊君
岡部 常君
宮城タマヨ君
委員
大野 幸一君
鈴木 安孝君
松井 道夫君
松村眞一郎君
政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
検 事
(法制意見第四
局長) 野木 新一君
検 事
(民事局長) 村上 朝一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715206X03019500424/85
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