1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年三月十日(金曜日)
午前十時五十四分開議
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議事日程 第二十四号
昭和二十五年三月十日
午前十時開議
第一 麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第二 帝国石油株式会社法を廃止する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第三 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、電気試験所熊本支所設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所の支所設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第六 日本国憲法第八條の規定による議決案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 恩給法の改正ならびに恩給支拂促進に関する請願(委員長報告)
第八 恩給法臨時特例改正に関する請願(十三件)(委員長報告)
第九 恩給一時金即時支給に関する請願(委員長報告)
第十 傷い者の恩給増額等に関する請願(委員長報告)
第十一 恩給法臨時特例改正に関する陳情(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/0
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001・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) これより会議を開きます。
この際お諮りいたしたいことがございます。通商産業委員長より、中小企業の実態を実地調査するため、宮城県、福島県及び山形県に境野清雄君を三月十一日より五日間の日程を以て派遣いたしたい旨の申出がございました。委員長申出の通り境野清雄君を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/2
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003・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件は決定いたしました。
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004・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 日程第一、麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長塚本重藏君。
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〔塚本重藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/4
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005・塚本重藏
○塚本重藏君 只今議題となりました麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申上げます。
先ず本改正案の提出の理由及びその概要を申上げます。麻薬取締法及び大麻取締法は第二回国会におきまして制定を見た法律でありますが、その後第三回国会におきまして、麻薬に関する犯罪捜査の機関といたしまして麻薬統制主事の中から麻薬取締員を指名し、その権限を昭和二十四年一月一日を以て施行される刑事訴訟法の改正に対応するように改正いたしたのであります。即ち現在麻薬及び大麻の取締は、各都道府県の吏員の中から厚生大臣が任命いたしました麻薬取締員に司法警察権を與えまして、これが取締を行なつておりますが、これが法律の欠陷といたしましては、身分関係は都道府県知事に属しており、捜査の指揮の権限は厚生大臣に属しておりますために、国の一貫いたしました取締行政を行うことが極めて困難な状況にあるのであります。今回の改正案によりまして、国の一貫した行政、即ち官吏をしてこの麻薬取締行政を行わせ、麻薬取締に完璧を期するのであります。以上本改正案の大要を申上げました。
本委員会におきましては、改正の内容は以上申上げますごとく極めて簡單ではありますが、麻薬によりまする犯罪の激増する現状に鑑みまして、本法案の審査は二月十五日及び三月七日の両日に亘りまして極めて熱心に且つ愼重に審議を行なつたのであります。その間におきまする政府委員との間に行われました質疑応答のうち主なるもの二三を御紹介申上げます。
従来の制度実施に当つて麻薬及び大麻の取締に如何なる困難があつたのかとの質問に対しまして、従来は身分関係と命令系統が一致しなかつたために、犯罪が他府県に跨がる場合、そういう場合には若干の困難があつたが、今回の改正によりましてこれらを一致させ、国の一貫した取締行政を行うことにいたしたのである、尚この点につきましては、各国とも国の機関をして行わしめておりまするし、将来国際関係の復活の場合の体制を整える必要からもこの改正を行わんとするものであるとの答弁がありました。又国の一貫した官吏をして麻薬取締行政を行う場合、府県の総合行政との関係如何との質問に対しまして、麻薬取締行政は特殊の行政であり、普通の地方行政とは趣きを異にしており、尚、取締官に対しまする監督は專任者を定めてこれに当らせる方針である。実際上は取締官も漸次習熟して来ておりまするから、別段問題は起らないと思うとの答弁がありました。又最近麻薬犯罪が激増しているのはどういうわけであるかとの質問に対しまして、犯罪が殖えたのは、主として麻薬の密輸入が増加したのと麻薬取締員の熟練によりまして摘発の件数が多くなつたためであるとの答弁がありました。
以上のような質疑応答の後、討論に入りましたところ、石原委員より、今回の改正の趣旨には大体賛成であるが、ただ今後本法を実施する上において、この運営に当つて都道府県の総合行政と、こういう特殊行政との間が円滑に関連が持てるように十分係官を指導教養して行くべきことを希望するとの意見がありました。又藤森委員よりは、この法案に賛成するが、この法案によつて麻薬取締官の職務権限が非常に強化されることになるので、麻薬関係の犯罪を防止するというような善良な取締官を養成することに特に留意して貰いたい、徒らに摘発主義で犯罪を殖やすような行政措置は遺憾であるから、政府としてはかかる弊害のなきように運営上十分注意されるよう希望して本案に賛成する旨の討論がありました。かくて討論を終り、採決に入りましたところ、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/5
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006・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/6
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007・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/7
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008・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) この際、日程第二、帝国石油株式会社法を廃止する法律案(内閣提出)、日程第三、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、電気試験所熊本支所設置に関し承認を求めるの件。日程第四、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所の支所設置に関し承認を求めるの件(いずれも内閣提出、衆議院送付)、以上を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/8
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009・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長高橋啓君。
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〔高橋啓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/9
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010・高橋啓
○高橋啓君 只今議題となりました帝国石油株式会社法を廃止する法律案の当委員会における審査の経過並びに結果について御報告申上げます。
同法の意図するところは、すでに第六国会において帝国石油株式会社法の一部を改正する法律案審議の際に、同社が企業再建整備法により再建整備は完了しておるのであるが、集排法に基く措置が終了していないので、それが終了次第同社の廃止を予定しておつたのであります。かくするうちに、同社は本年二月保有株式の処分等、集排法に基く諸般の措置が終りましたので、従来よりの特殊会社としての性格を変更し、商法に適合する会社としての性格を付與するために、帝国石油株式会社法は廃止し、同社をして商法に適合していない事項を同法に適合させるため必要な定款の変更の決議をするよう規定したものであります。以上が同法案提案の理由及び内容であります。
次に委員会における質疑応答について申上げますが、詳細は速記録に讓ることにいたしまして、質疑の要点を簡單に申上げますと、第一に、採油事業のごとき厖大な資本を要し、国家公益に寄與する事業については国営にすべきではないか。若し民営とするにしても国家が相当の保護を與えるべきではないか。第二点といたしましては、輸入原油との競争に対する政府の対策如何等でありますが、これに対して政府からそれぞれ答弁がございました。その他活溌な質疑応答がございました上に、愼重なる審議の末、討論に入りましたところ、下條委員より、石油鉱業は民間企業でなく国営とすべきで、民営とするにしても、政府が現在考えている保護政策では満足できないとし、又兼岩委員よりは、原則として石油鉱業は国営にすべきであり、現在のごとき政府及び政治情勢では外国資本に利用される公算が大であるとのそれぞれ反対意見が開陳せられました。かくて採決いたしました結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。
次に、只今上程されました地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、電気試験所熊本支所設置に関し承認を求めるの件及び地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所の支所設置に関し承認を求めるの件。右二件について通商産業委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ず電気試験所熊本支所設置に関し承認を求めるの件と申します内容は、九州地方の電気計器の検定業務を実施する電気試験所支所が福岡市にのみあるだけなので、最近著しく増加した要検定個数を処理することが不可能でありますから、電気計器の分布状況より勘案して、南九州地方の中心地である熊本市に支所を設置することを規定したものであります。次に日用品検査所の支所設置に関し承認を求めるの件、この内容を申上げますと、日用品検査所は、輸出品取締法に基き、我が国輸出雑貨の海外における声価の向上を図るために日用品雑貨の輸出に際しての検査実施機関として設置され、その変査を実施しておるのでありますが、この検査は生産地で行うことになつておる関係上、今回特に遠隔地に対しての出張検査の不便を避け、検査業務の能率的遂行を期し、且つ輸出検査品目の増加に対処するため、東京日用品検査所の支所を名古屋市に、大阪日用品検査所の支所を福岡市にそれぞれ設置しようというのであります。よつて右二件ともそれぞれ支所設置の承認を国会に求めるものであります。本委員会におきましては、各二件に関し愼重審議の後、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以ちまして二件とも原案通り承認すべきものと決定いたした次第であります。右簡單に御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/10
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011・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。先ず帝国石油株式会社法を廃止する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/11
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012・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/12
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013・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 次に、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、電気試験所熊本支所設置に関し承認を求める件、及び地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所支所設置に関し承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告の通り両件に承認を與えることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/13
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014・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつて両件は承認は與えることに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/14
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015・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 日程第五、文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の日程第六、日本国憲法第八條の規定による議決案(内閣提出、)衆議院送付)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/15
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016・松嶋喜作
○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
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〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/16
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017・河井彌八
○河井彌八君 只今議題となりました文部省設置法の一部を改正する法律案、日本国憲法第八條の規定による議決案、この両案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。先ず文部省設置法の一部を改正する法律案について報告を申上げます。
本委員会はこの案について二回委員会を開きました。そして愼重審議の結果、昨日全会一致を以て可決すべきものと議決したのであります。
この法律案の提案の理由及び内容について簡單に申上げます。文部省の現在の機構は昨年の六月から発足をいたしまして、まだ一年も経過しないのでありまするが、その後の情勢に応じまして、二つの改革をすることが必要となつたのであります。その二つと申しますのは、第一に、政府全体の方針からいたしまして各種の審議会の整理統合を行うというのであります。その方針に基きまして、文部省におきましては二十四の審議会をば十八に整理総合するということが一つであります。第二には文部省教育施設部出張所を廃止する。この二つであります。そこで本案の内容は法律案について申上げるべきでありますが、簡單にこれをつまんで申上げますると、
第一に審議会等の整理総合につきましては、職業教育及び職業指導審議会をば教育課程審議会に統合いたしますこと、次に教職員養成審議会と教員検定審議会をばこれを整理統合いたしまして、教育職員免許等審議会といたすのであります。それから更に青少年教育審議会と労働者教育審議会をば社会教育審議会に統合いたします。尚、国語審議会とローマ字調査審議会をば統合いたしまして国語審議会といたすのであります。それから、教科用図書審議会と教科用図書検定調査会をば教科用図書検定調査審議会とするのであります。この五項目に亘つておるのが審議会等の整理統合であります。かようにいたしました以上、その運営はどうなるかと申しますれば、元来これらの審議会等は相当な仕事をして来た実績を持つておりまするが、併しこの整理統合をいたしましても尚従来のごとくその機能を十分に発揮させるために、例えば分科審議会を置くとか等のことをやりまして、そうして運営を十分にいたすという当局の言明であります。
第二点の改正でありまする即ち文部省教育施設部の廃止につきましては、明治三十三年以来、全国の主要国立学校に大臣官房建築課の出張所を設けて、そうして、それは国立学校の建築工事の設計或いは現場監督等の営繕関係の仕事をいたして参つたのであります。ところが終戰後に、臨時物資調整法に基きまして物資関係の事務が激増したのでありまするから、これをば先に設置してありました建築関係の仕事とこの仕事とを統合して、一元的に処理せしむるために、昭和二十二年の六月に文部省教育施設局出張所を設置したのであります。その数は全国に八つあるのであります。それを昨年の六月文部省の職制を改めましたときに、文部省教育施設部出張所と改称いたしまして、その出張所には建築課と施設課を置いたのであります。ところがその以後物資関係の事務は段々減少して参りましたから、その結果といたしまして、この施設部出張所を廃止することにするのであります。この出張所を廃止しまする結果、物資関係の事務についてはもうこれはなくなつてしまいまするが、国立学校等の営繕事務につきましては、これはどうしても続れて行かなければならんのでありまするのみならず、まだ相当仕事が多いということでありまするから、それらのことをば全国の主要な国立大学数ケ所に技術職員を配しまして建築工事の仕事を担当せしむるということであります。
この二つの改正につきましては、定員及び経費の上にどういう影響があるかということを問い合せましたところが、定員はこの審議会関係につきましては増減なし。教育施設部の出張所の廃止におきましては、現在百五十一人ありますが、建築関係の九十人はこのまま残つて、施設関係の六十一人が整理せられるということになるというのであります。そうして、その九十人の建築関係の者はそれぞれ八つの地区の国立大学に配置するということにするという説明でありました。経費の関係におきましては、審議会関係におきましては大体三百万円程度の減少であり、出張所廃止については人件費と物件費とを合せまして凡そ八百万円程度の節減になるという趣きであります。施行期日は本年の四月一日とするという要領であります。
かような内容につきまして、いろいろ質疑応答をいたしましたが、極く大要を申上げます。各種審議会関係におきまして、その審議会の事業及びその審議会の活動状況如何、或いはこの審議会を今後整理統合いたしましても、その機能を十分に発揮させる方法はどうかというような点につきましての質問、これに対しましては、当局から資料を提出して十分な説明をいたしたのであります。更に青年の職業教育に関して、或いは又通信教育に関して審議会の仕事はどうなつておるかというような点についても質問がありました。
次に、教育施設部出張出廃止関係の事柄につきましての質問といたしましては、施設部の出張所を廃止する結果、この施設関係の職員六十一人の整理を行う方法はどうなつておるかということであります。これは大体今年の一月二十日以降、欠員を補充せずにあつて、現在若干の欠員がある。その他の者は成るべく各大学或いは地方庁の傭員として採用して、或る時期においてはこれを消化し盡す見込であるということであります。次に技術職員九十人をば営繕関係者として全国の主要国立大学へ分けて派遣するということであるが、これはどういう取扱にするのだ、即ち長期出張等の取扱により場合には、手当であるとか旅費であるとかいうものは相当増大してしまう虞れがあるではないか。
〔副議長退席、議長着席〕
又長期出張というこの方式は、その駐在している大学についてはよろしいが、大学以外の場所においての事務を遂行する上に支障がないであろうかというような質問がありました。これに対して当局は、当該大学へ在勤を命ずるという辞令を出して、そうして出張の旅費等の増加することを防ぐつもりである、それから執務上の権限については本省の命令を以てこれを明確にする、それから勤務上の区署につきましては、当該大学の事務局長の管下に置いてこれを行なつて行くということであります。それから人員の整理はどうするかと言えば、これは別に国家行政機関の定員法の改正によつてこれが更に審議を仰ぐ、こういうことであります。更にこの施設部出張所を廃止して、そうして数個の大学に技術官を派遣するという方法と、明治三十三年にできて実行したように、官房の建築課の出張所のごときものとしてこれを置くということと、どちらがよろしいのかというような質問もありました。これに対しまして、この整理は一般行政整理の方針に基いて実行するのである、而してかようにいたしましても少しも事務の進行には差支ない、こういうことであります。
大体かような質疑応答を経まして、直ちに採決に入るの動議が成立いたしまして、討論を省きまして、全会一致を以て可決すべきものと議決いたした次第であります。
次に日本国憲法第八條の規定による議決案、これの御報告を申上げます。この議決案につきましては、予備審査と共に二回の委員会を開きまして愼重審議の結果、昨日全会一致を以て可決すずきものと議決いたした次第であります。
提案の理由につきましては、皇室経済法第二條の規定によりますれば、天皇その他内廷に在る皇族が一年内になされる賜與又は讓受の財産の価額が百二十万円に達したる後は、すべて国会の議決を要するということになつております。それでこの議決案の内容を見ますると、天皇その他の内廷に在る皇族は、皇室経済法施行法の第五條に規定するものの外、見舞及び奬励のために、昭和二十五年四月から二十六年三月末日までの間に二百五十万円を超えない範囲内で賜與することができるというのであります。即ち昭和二十五年度におきまして二百五十万円を超えない範囲内で賜與のできることを憲法第八條の規定によつて議決を求めるの意味であります。政府の説明によりますれば、天皇及び内廷に在る皇族が特に災害の場合の罹災者よ対するお見舞とか或いは各種の御奬励等のためになさる賜與の金額は、一ケ年に大体二百五十万円程度であると認められる。そうしてこの額につきましては、災害の都度必要に応じて国会の議決を経るということは、これは事実上困難なことであるし、そうしてこの目的もすでに限定せられておりまするから、この際、例年のごとく予め価額を限定いたしまして一括して議決を求めるということを申述べておるのであります。その金額二百五十万円につきましては、前年も二百五十万円でありましたからこれと同額にするという意味であります。
本件につきまして質疑応答の内容を申上げますると、第一には、昭和二十四年度における賜與の種類並びに賜與の金額の標準はどうかということであります。これに対しまして、種類といたしましては、災害の救恤のお見舞、学術振興、発明の御奬励、社会事業、衛生予防事業等に対する賜與というような種類である。そうしてその取扱い方につきましては最も公正な方法をとりまして、金額につきましても多からず少からず適当な額にしておつたという説明であります。それから第二には、貨幣価値が変動の甚だしい今日の状況において、二百五十万円の総額はこれで適当であるかどうかという質問であります。これにつきましては、昨年の後半期以来、大体貨幣価値が大きな変動がなくなつて来たのであるから、前年度の実績に徴しまして二百五十万円で以て差支ないという意味であります。但し昭和二十三年度の議決額は百八十万円でありました。それを二十四年度に二百五十万円といたしましたのは、この貨幣価値の変動に基いて増額したということであります。それから第三には、年々国会の議決額を二百五十万円程度を適当とするならば、皇室経済法施行法第五條の金額の百二十万円に、この二百五十万円を加えて議決してしまつたらどうだというような、法律を改正したならばどうかというような御質疑もあつたのでありますが、併し(「簡單々々」と呼ぶ者あり)この二つの金額は大体性質も異なるのであるから、これを別にする方が望ましい、こういう説明であります。
かようにいたしまして質疑応答を終りまして、全会一致を以て可決すべきものと決定した次第であります。このことを報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず文部省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/18
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に日本国憲法第八條の規定による議決案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/20
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021・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
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〔栗山良夫君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 栗山良夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/22
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023・栗山良夫
○栗山良夫君 本員はこの際、電産争議とゼネスト問題に関する緊急質問をすることの動機を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/23
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024・鈴木直人
○鈴木直人君 只今の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/24
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025・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 栗山君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。栗山良夫君。
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/26
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027・栗山良夫
○栗山良夫君 私はこれから電産争議とゼネスト問題につきまして、緊急な要点について質問をいたしたいと存じます。
去る六日、増田官房長官が新聞記者団との会見におきまして、「重要産業のストライキは單産のストライキと雖もこれをゼネストとみなして、マツカーサー元帥の二月一日ゼネスト禁止命令違反として取締る」ということを言明せられましたが、この言明に対しまして、昨日吉田首相は衆議院の予算委員会におきまして特に発言を求められて、長官の言明と全く同意見であるということを述べられております。従いましてこの言明こそ吉田内閣の卒直な労働政策に対する意思表示であると認めなければなりません。この言明を一見いたしますると、ゼネストという、遅れた日本の国民に対しまして一種の恐怖感を與えるような言葉を使いまして、労働組合員の内部を撹乱し、動搖を與え、又一般国民の電産争議に対する悪感情を誘発せしめんとするところの考えである、即ち政府の電産争議のスト破りであると言わなければならない極めて重要な発言であると私は考えるのであります。
現在電産の労組が、組合員の生活権を確保するために純経済要求の貫徹のために、極めて合法的に展開いたしておりまする争議に対しまして、労働関係の国内法の枠を超えて、明白に国御を納得せしめ得るような理由を欠きましてこれを彈圧せんとしておりますることは、日本の合法的労働運動の発展を阻害し、且つ労働意欲の向上を前提として電力事業の再建に微力を盡さんとしておる電産労働者の愛国的熱情を冷却し、且つこれを蹂躙せんとするものであると言わなければなりません。従つて私は緊急質問の要点を申上げまする前に、只今行われておりまするところの電産争議の真相につきまして、その合法性につきまして先ず一言いたしたいと思うのであります。
御承知の通りに、今次電産争議は、昨年の五月電産の全国大会におきまして決定いたしました賃金ベース改正の純経済的要求貫徹の争議でありまして、全くこれ以外に他意はないのであります。電産労組は五月の全国大会のこの決定に基きまして賃金ベース変更の交渉を経営者団と行なつておりましたが、遂に問題が落着いたしませんために、昨年十一月十日遂に中央労働委員会に提訴いたしたのであります。労働関係調整法第十八條によりまして提訴をいたしたのであります。こういう道順を経て、極めて合法的に、電産労働組合は昨年十二月十日に労働関係調整法の第三十七條によりまして争議権を獲得いたしたのであります。電産は一応調停案が中央労働委員会から発表せられるまで、襟度を広く持ちまして、去る二月七日調停案が労資双方に提示せらるるまで、争議のための争議を行うというようなことを避けまして、靜穏にその推移を見守つて来たのであります。然るに去る三月三日電気事業経営者が中央労働委員会の調停案を全面的に拒否するに及びまして、遂に問題が惡化して参つたのであります。又今次争議解決のために実力行使を決定いたしました去る二月下旬の電産の中央執行委員会におきましては、その活動方針の決定に当り、左右両派が鋭く対立をいたしまして、共産党系約三十名が退場したことは公知の事実であります。退場の諸君は各地区で自由に実力行使を断行したいということを強く主張し、右派の諸君は、このような実力行使は地域人御闘争となり、労働組合の活動の枠を越え、政治闘争へ発展する虞れがあるとして、これを参く排斥いたしました。遂に電産労組としましては、全国的に強い規律と統制力の下に、中央が指導をいたしまして実力行使を行うことに決定をせられたるやに聞いております。これこそ民主的な労働組合としまして現行法規の精神に完全に則る争議行為であると断じなければなりません。又公益事業関係の労働組合といたしまして、その実力行使に対しましては労働関係調整法によつて幾多の制約を受けておるにも拘わらず、労調法に完全に従つて、極めて合法的にその活動を展開いたしておるのであります。このような合法的電産の争議に対しまして政府のとらんとしておりまする対策は、ストライキを、同盟罷業をゼネストと僣称することによりまして、政府みずからが労働法規の枠を越えた非合法の労働行政を行わんとしておるものであります。従つて私はこの争議の取締を行うということにつきまして何としても理解に苦しむのであります。私は首相及び関係大臣の見解を天下に表明せられるために質問をいたしたいのでありますが、特に鈴木労働大臣にお願いをして置きます。私が首相以下関係大臣に質問いたしました点につきましては、重ねて労働行政の担当大臣としまして、各項に亘つてその所信を被瀝して頂きたいのであります。
吉田内閣が労働者の全面的な反対を退けまして成立させましたところの労働関係調整法の中で、争議行為を次のように定義をいたしております。「同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常なる運営を阻害するものをいう」と謳つておるのであります。この定義は公益事業関係の労資間におきましても何ら制限されていないのであります。そうしてこの労調法第七條で定義しておりますところの同盟罷業即ちストライキこそ、現在の日本国内法における最も強い争議行為であることは申すまでもございません。これこそ單一組合のストライキなのであります。従つて政府は現労働組合法又は労働関係調整法その他国内法を以ては、電産争議の取締はできない筈であります。現国内法としての労働関係諸法規の全面的な改正を行わないで取締を強行せんとするならば、それこそ先程私が申上げましたように、政府みずから非合法な労働行政を行うものであると断ぜざるを得ないのであります。そこで政府はこの増田長官の言明に即応するように労働関係法規の改正をせられる意図があるかどうか。又若しそれをせられないといたしますならば、如何なる法規に基いてこれをせられようとしておるのか。それを先ず伺いたいのであります。国内労働関係法の改正なくしてその争議を禁止し得るものは占領軍当局のみであります。即ち占領軍当局は、労働組合に対する極東十六原則の第五項によりまして、「ストライキその他の作業停止は、占領軍当局が占領目的乃至必要に直接不利益をもたらすと考えたときにのみ禁止せられる」と明言しております。この例は有名な二十二年二月一日のゼネラル・ストライキに対するマツカーサー元帥の禁止命令がこれであります。而もこの禁止命令は、その主文の冒頭におきまして、「連合軍最高司令官としての余に與えられた権限に基き、ゼネスト遂行の目的のために連合した諸労働組合の指導者」、重ねて申します、「連合した諸労働組合の指導者に対し、余は、現在の日本の困窮した事態において、かくも恐るべき社会的武器の行使を許さない旨の通告、同時にかかる行動をこれ以上進行させることを中止させるように指令した、」と述べられていることから判断いたしましても、一單産のストライキをゼネストとみなすがごときことは誠に過ちであることは明々白々であります。現に今次電産争議に関する増田長官の言明に対しまして、エーミス労働課長は、「増田長官が如何なる根拠でさような言明をされたかは知らない。單産ストに対してマツカーサー元帥の二・一ストにおける禁止命令を持出すことは好ましくない。」こういう工合に増田長官の言明をきめつけておられるのであります。吉田首相は、増田長官の言明のごとくに、電産の合法的單一組合のストライキをゼネストと僣称して、占領政策違反の行為であると断定せられるのかどうか。若しこのような合法的争議に対して国家権力を以て法律を曲げて強行せんとするならば、政府みずからが、先程からも繰返して申上げておりますように労働行政を曲げて行うことを意味するものでありまして、従つて私は吉田首相に明白に伺いたい点は、増田長官の言明を取消されて電産争議の合法性を確認せられるか、或いは政府のとらんとしておる今度の電産争議取締の措置は、非合法な労働行政であると確認せられるか、この二つよりないと思いまするので、明白にお答えを願いたいと思うのであります。
次に増田長官に伺います。今次電産争議をゼネスト云々と言われますけれども、電産争議は飽くまでも労働関係の諸法規によりまして経済的要求貫徹のための同盟罷業、即ちストライキであります。日本の労働関係法には、ゼネラル・ストライキに関する何らの定義も又その処置も明らかにしていないのであります。私は如何なる理由を以でゼネストと断定するのか、具体的にその理由をお聞かせ願いたいのであります。又長官は電産争議の成行きを見た断を下すと言明しておられますけれども、併しながら電産においては、法規に明らかにないことなので、現に行い又行わんとしておることは、すべて合法運動として固く信じておるようでありますから、断圧することが目的である、即ち組合員を牢獄へ放り込むことが目的であるならば別でありますが、争議の円満解決、事態の惡化を防止する熱意がありまするならば、具体的に法規に基く理由を、こういうストライキをやればこういう断圧をするということを、天下に公表せられまして、大義名分の立つ途を講ぜらるべきであろうと思うのであります。さもなくば徒らに社会混乱を政府みずから誘致するものであると言わなければなりません。電産の過去において行なつたストライキにおいても、多種多様の方法によつて実行されましたから、これらの実績から、具体的に、政府が断圧の対象とせんとしておるところの争議の内容を明示せられたいことを要求するものであります。
次に通産大臣に質問をいたします。現政府は争議の解決に対する具体的な熱意が乏しいと言わなければなりません。このために、円満にして且つ短期に收拾し得る争議を徒らに長引かせ、事態を紛糾させておりますことは極めて遺憾であります。このたびの電産の争議も、会社側が調停案を全面的に拒否したことから発端しておるのでありまして、政府並びに政府の強い統制下にある電気事業経営者の嚴重なる反省を求めますると共に、政府の具体的な解決の方針及びその時期等を承わりたいのであります。エーミス労働課長は増田長官のあの言明の直後に、最後の段階まで追込まないうちに政府は国内の法的機関を広く利用して争議解決のために努力をすべきであると、政府に戒めておられる筈であります。
それから特に通産大臣に伺いたいことは、今度の電産の調停案は、中央労働委員会がその見解を発表いたしておりまするように、電気事業が過去一筒年間営々として経営の合理化をやりました結果、今度の調停案の実施に対しましては、経済の三原則或いは経済の九原則の枠の中で十分に実行し得るものであるということが述べられておるのであります。通産大臣はあの調停案の内容について中央労働委員会の見解と全く同じくせられるかどうか、これを伺いたいのであります。次に、若しそういう工合に中央労働委員会の見解と全く同じような見解をとられるとしまするならば、従来電産の経営は私企業でありますけれども、強い国家の統制によりましてなかなか思うように運営ができなかつたのであります。曾ての電産争議の解決のいつの場合を見ましても、常にその解決を遅らせたのは政府であつた筈であります。従つてこの経済の三原則、経済の九原則が日本の労働條件の改善にいろいろと問題になつておる点でありますけれども、この枠の中で十分にやり得ると中央労働委員会が申しておりまするから、若し今度のこの中央労働委員会の線を是認されましたならば、政府はこの線に沿つて至急に電気事業の経営者に対して問題の解決の促進を指導する用意があるかどうか、何ら中央労働委員会なり或いは電気事業の経営者なりに干渉がましいことをしないと、はつきり言明されるかどうか、その点を伺いたいのであります。次に、電気事業におきましては、先程申上げましたように昨年以来従業員の懸命な努力によりまして着々経営の合理化が行われて参りました。今申上げましたように、経済の三原則、九原則の枠内においても今度の調停案が呑み得るような状態になつておりますけれども、若し従来政府がとりましたところの態度によりまして、基幹産業、基礎産業であるという故を以て、国家公務員或いは鉄道、專売公社のある職員の労働條件と同じような形で電産労働者に臨まんとしておられるならば、それを伺いたいのでありますが、臨まんとせられるならば、これこそ電気事業の発展のために、基幹産業として非常な使命を持ちますところの電気事業の発展のために誠に惜しむべきことである。又日本の民主的な労働組合運動の発展のために政府みずからが非常なる障害をなしておるものであると言わなければならないのであります。
以上の点につきまして通産大臣の具体的な御返事を伺いたいと思います。
私の質問はこれで終りますが、時間が余つておりましたならば再質問の保留をいたして置きます。(拍手)
〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/27
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028・吉田茂
○国務大臣(吉田茂君) 栗山君にお答えをいたします。
政府は合法的の労働運動を取締る又は彈圧するような考えは毛頭ありませんが、併しながら單産ストと雖も、それが公共の福祉に反する或いは国民生活を脅かすというような場合には、單産ストと雖もこれをゼネストとみなさざるを得ないのであります。故に官房長官の言明に対して私は取消す考えは毛頭ないのであります。
更に今日まで私の答弁を留保された各議員の御質問に対してお答えをいたします。
深川議員に対してお答えいたしますが、私は大蔵大臣が過労の結果談話を発表せられたとは考えませんから、休養は勧める考えはございません。
帆足議員にお答えいたしますが、ストレプトマイシンの確保方についての御質問でありますが、政府もストレプトマイシンの輸入及び生産を確保するということは公衆の衛生上又社会政策上重要な問題であると考えますので、財政の許す限り、或いはその他の事情の許す限り、これが確保には努める考えでございます。
油井議員にお答えいたしますが、経済不安の対策は如何という御質問であります。この質問に対しては、真の物価安定、中小企業の繁栄は、先ずインフレーシヨンを抑止するということと経済の安定を図ることによつてのみ達成せられるものと考えるのであります。又安定施策の途上における摩擦に対しましては、金融その他の適当な処置を講じて以てこれが対策といたす考えでおります。
又淺岡議員にお答えいたしますが、御質問は引揚促進に関して徳田書記長から要請云々ということについての御質問でありますが、これに対しまして、政府は、引揚促進は全国民の最も要望しておるところでありまするから、若しこれに反対の言動があり、又法に触れる者があれば、敢然処置をいたす考えでおります。(拍手)
〔国務大臣増田甲子七君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/28
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029・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 栗山さんにお答え申上げます。
私が新聞記者に申上げた言葉は政府一致の見解でございます。政府が予め相談をしたその結論を私が申したのであります。これが第一点、第二点は如何なることを申したかというと、單一産業であつても、それが重要基幹産業であつて、全国的に罷業を行い、国民生活を脅かし、社会を麻痺状態に陷れる段階になれば、政府はこれをゼネストと認める、こういうことを申した次第であります。その他、電産争議等の円満解決、労働條件の維持改善について政府が熱情と誠意とを持つていることは、これ又明瞭に申上げたいところでございます。
〔国務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/29
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030・鈴木正文
○国務大臣(鈴木正文君) 栗山さんの私に対する質問、大体二つに分けてお答えいたします。
前段の方、これはゼネストと認めるかどうかという問題でなくて、現状をどう見るか、又今日までの電産の争議紛争の推移をどう見るかという意味の御質問並びに栗山議員の見解が披瀝されましたが、その前段の点につきましては殆んど同感であります。今日までの推移におきましては、電産組合は法の範囲を守つて、そうして合法的に純粹な経済争議という形で以て折衝を続けて来ておる。今もその折衝を続けて来ておる。だからこそ労働者といたしましては、成規の労働関係の諸法規の規定しておるところの手続によつて中央労働委員会等の機能を動かして、正常なる普通の経済的のストとして、これを一般的な国会或いはその他の政治的雰囲気と切離して、純粹のストとしてこれを解決したいという方向を政府もとつておるのであります。従つて中央労働委員会の斡旋は不幸にして一応成功しなかつたけれども、更に政府も斡旋に乘出しまして、再びこれの調停を取上げ、斡旋の活動を数日来続けておるのであります。同時に経営者側に対しましても、急いで最近の経理の総くくりをして、そうして再び交渉に立つという形において、正常な形でこの争議を解決したいという努力を政府も今日までずつと続けて来ておりまするし、今日もそうであります。
それから第二段の、若し不幸にして、恐らく組合側も望んでおらないでありましようし、政府も切にかかる事態を避けたいという意向を以て努力すること勿論でありますけれども、不幸にしてこれが全国的の規模に拡がり、今日も官房長官からもお答え申上げましたように、全国の産業を或しい国民経済を麻痺せしめるような段階に至つたときには、これは占領政策に反するところの一つの禁止しなければならないストとして扱わなければならない事態も考えられる。そのときにおける政府の見解は一致しておるのてありまして、これは最惡の場合を指しておることであります。私共は、特に労働大臣といたしましては、前段の方式を以て純粹の経済争議としてこれを解決したい。その望みは決して今日も捨てておるのではないのでありまして、努力を重ねて参りましたならば、栗山議員先程御指摘のように、電産の民同派の人達の合法的活動というものに対しましては私共十分敬意を拂つておるのでありまするからして、この方向で解決の望みは持ち得ると今日も考えております。第二段は官房長官と全然同じ意見であります。更に又これに関しまして労働法規の改正というふうなことは目下考えておらないのであります。
それからこの際に先日の油井賢太郎氏の私に対する御質問にお答えいたしますが、その御質問の内容は、中小企業における失業者特に特殊技能者に対してどうするかという問題であります。これは極めて微妙な而もむずかしい問題でございますけれども、政府といたしましては特にこの点には注意いたしまして、公共事業或いは一般の方面への配置転換に、この人達の特技が生きるような方向へ職業安定所の機関を活動して持つて行くということを考えると同時に、一方におきましては職業補導関係において、この人達の特殊の補導、それから更に配置転換の後の重要な産業戰士の中核となつて貰うような補導を進める方針であります。これにつきましては、本二十五年度の予算におきましても或る程度のこれが可能になり得るような措置は講じておるわけであります。
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/30
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031・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 栗山議員の御質問にお答え申上げます。
私は所管大臣といたしまして、本問題が円満にして早期に解決するよう熱望し又努力いたしておるのであります。中労委の裁定についてどういう考えかという御質問でありまするが、私は経済三原則の点から考えまして、ベース八千五百円にいたしますことはなかなか困難ではないかと思つておるのであります。併し会社におきましてできるだけ経済状況をよくし、三原則の範囲内におきまして職員の待遇改善には努力しなければならぬと考えております。その他の点につきましては労働大臣よりお答えした通りであります。
尚この機会に油井議員の先般の御質問にお答えを申上げます。
政府の経済政策は統制を急激に外して自由経済に行つた、そこで価格体系が混乱し、そのしわが中小企業に寄つておる、この際政府は有効需要の喚起に努めてはどうか、こういう御質問であつたと思うのであります。統制経済が国民経済の発展に非常に支障を来たしておりますので、我々はこれをできるだけ早い機会に外して自由に持つて行こう、而もそれにはやはり生産その他の関係がありますので、円滑に移り変ることは当然考えなければならないのであります。この意味において我々は徐々に統制を外しておるのでありますが、今油井議員の言われました非常に価格体系を混乱するというのは、大体において混乱していないと思います。併し特に繊維品につきましてその懸念があるのであります。私は、繊維品が急激に下落いたしましたのは、政府の輸出帶貨を急激に出した結果によるのでありまして、この点につきましては、できるだけ市場の樣子を見ながら出すようにいたしますし、又金融の点につきましても、できるだけ投売その他の起らないように金融の途を付けつつあるのであります。
次に帆足議員のストレプトマイシンの補助金についての御質問でございまするが、政府は今年度補助金を六億三千万円余出しておるのであります。かくいたしますると、大体において二十五年度末におきましては、外国品と大差のない、外国品と殆んど同額の価格で生産できると思つております。尚そういう場合に、それが遅れまして、外国品よりもやはり依然として高く付くという場合におきましては、同年同樣補助金を出すに吝かでないのであります。尚、設備資金につきましては政府より直接に金を出すことはできませんが、銀行その他から金融を付ける考えでおるのであります。
知、木下議員の御質問の、国鉄裁定についての予算上或いは資金上、可能、不可能の問題は、法規裁量が自由裁量かという御質問でありますが、私は自由裁量と考えておるのであります。併し自由裁量と申しましても、大蔵大臣といたしましては、財政法、会計法の精神に則つて判断するのであります。(拍手)
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〔森下政一君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/31
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032・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 森下政一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/32
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033・森下政一
○森下政一君 本員はこの際、三月労働功勢に対する政府の対策に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/33
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034・鈴木直人
○鈴木直人君 只今の森下君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/34
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035・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 森下君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/35
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036・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。森下政一君。
〔森下政一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/36
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037・森下政一
○森下政一君 かねて噂され国民一般に憂慮されておりましたいわゆる三月労働功勢の火蓋が切られまして、いよいよ深刻な樣相を呈せんといたしておりますことは、誠に御同樣遺憾に堪えないと存じます。
去る七日に全鉱連の無期限スト突入を皮切りといたしまして、同じ日に海員組合は二時間の船内作業の停止を行い、続いて八日には、一月以降賃金問題をめぐる経営者側との交渉の決裂状態にありました炭労が全国一齊に七十二時間ストに突入し、昨九日には、民間労組の主勢力ともいうべき電産労組が大口、小口電力並びに官庁電力の停電ストに入りました。更に今朝の新聞によりますれば、炭労は今日もストを継続し、全鉱連は全日から主要工場の熔鉱炉の火を落すように指令したと伝えられております。これに呼応する官業労組では、三日から全逓が遵法闘争を実施し、日教組、国鉄もこれに同調し、全專売が一齊賜暇の合法闘争を強化するに至つております。恐らく勢いの赴くところは、ただこの範囲に止まることなく、更に全国的に拡大されることが憂慮されるのでありまして、全国的に波及して物情騒然たる樣相を呈するに至るのではないかと、かように察せられるのであります。而もその被害の及ぶところがひとり政府に止まらない、その被害の及ぶところがひとり大資本にのみ止まらない、その被害の及ぶところがひとり大企業にのみ限定されるのでなくして、一般大衆がこれによつて蒙むる迷惑の極めて甚大なるものがあることに思いをいたしますならば、政府はもとより拱手傍観するを許されないことでありまして、かかる情勢を惹起するに至つたことそれ自体に対しても、私は政府の政治的責任を問いたいと思うのであります。吉田総理は先刻御列席になつておりましたが、御気分が悪くて御退席になつたそうで、この政府の、かかる状態が惹起し又誘致されんとしつつあることに対する政府の政治的責任、この点に関しては、総理に代つて増田官房長官からお答えを頂きたいと、かように存じます。
私は、かような事態に直面いたしました政府といたしましては、みずから挺身して民間労組の争議の斡旋に努める、否、民間労組の円満なる争議の妥結を図るために努力をするところがなければならぬ、官業労組の攻勢に対しましてはみずから反省して早急にその解決を図るべきである、かように考えるのであります。従いまして拱手傍観を許されない政府といたしましては、先ずかくのごとき、全国的にあらゆる民間労組から争議行為が行われんとしつつあるこの情勢に対して、その原因がいずこにあるかということを、みずから反省して究明するところがなければならぬ、同時に又官業労組の今日の合法鬪争に対しましても、なぜかくのごとく好ましからざる事態を惹起するに至つたか、その真因につきまして政府みずから反省するところがなければならぬと、かように考えるのであります。
政府は果して然らばその原因を何と今日認識しておいでになるか。私見を以てしますれば、私は今日のかかる憂うべき三月労働攻勢が火蓋を切るに至り、而も容易ならぬ情勢を誘致せんとしておりますところの根本の原因が、一にかかつて二十四年度の超均衡予算の実施、この予算実施後今日までに至りました実績に徴しまして、この均衡予算の実施が一つの原因であり、更に新年度予算へ一貫して持越されましたドツジ方式強化にある、勤労大衆の生活への重圧の結果がこれを今日に追込んだと考えるのであります。二十四年度予算実施後、今日までに勤労大衆にもたらしたものは一体何であつたか。重税の負担と、勤労強化と、首切りにさいなまれている耐乏生活でありました。即ちインフレ抑制を目途として、あらゆる購買力を税の形によつて政府は吸收し、吸上げた。長期金融の裏付けのない企業合理化を要請いたしまして、各企業はよんどころなく企業を合理化せざるを得なくなつたのであります。而もその企業合理化が最も好ましからざる形において、方式において、峻嚴に行われました結果、労働は強化され、更に人員整理の余儀ないところに追込んで行つた。成る程超均衡予算の実施によりまして通貨は抑制されたのでありまするが、それは我が国経済が本当に健全化された結果の現象ではなくして、外部的な圧力によるものであつたということは極めて明瞭なのであります。そのことは、今日尚滯貨が増大しており、金詰りが深刻であり、顯著なるデフレ傾向が今日も尚現われておるという事実に照らしまして、極めて明瞭であると言うことができると思うのであります。一般世間の樣相を眺めて見ましても、現に何一つの売行の増大するものはない。不渡手形は街に氾濫しておる。中小企業の倒産が相次いで起つておる。失業者が多きを加えつつある。これらの現象は、只今申しましたごとく、二十四年度以来一貫して政府が堅持しております超均衡予算、いわゆるドツジ方式が必然的に招いたところの結果である、かように考えるのであります。
新年度予算におきましてもインフレ恐怖症の拂拭されない超均衡予算が組まれておるのでありまして、インフレは克服されても金詰りは緩和されない、ますますデフレ的な傾向に陷る、お先真暗の経済情勢に対する失望と、今丁度年末度に際しての徴税強化のために、資金的に弱い中小企業はこれに到底堪えることができなくして、損をすることを承知の上で手持商品の投売をしておるというのが今日の有樣である。より一層この後には恐らく中小企業の倒産が続いて起るでありましようし、より一層失業者が街頭に隘れるのでないかということを憂えるのであります。政府は国税の軽減を吹聽されて、この国税の軽減によつてよく勤労大衆の生活の苦痛を吸收される、かように宣伝されるのでありまするけれども、一方地方税の増徴を睨み合して考えて見ましたならば、勤労大衆の生活苦というものは到底国税の減税だけでは吸收されない。そこで、その必然的な結果といたしまして、必然的な要求といたしまして、民間労組におきましては賃上げの要求が起つて参つたのでありまして、畢竟政府はその財政経済政策の結果に対しまして責任を痛感しなければならぬ、かように私は思うのであります。
池田大蔵大臣が口癖のように、我が国の経済を再建する、安定せしめる、而して画期的な予算であると言われるところの本年度並びに新年度の予算、確かにインフレは先刻も申しますようにいろいろな圧力によつて收束されるに違いない。克服されておる。併しながら残念ながら、このいろいろな特質を讃えておられる予算を一つ引繰り返して裏から覗いて見ますならば、そこには中小企業の犠牲が拂われておる。勤労大衆の苦痛が秘められておる。公務員が大きな犠牲を強いられておる。これらの犠牲において今日現内閣の経済財政策施が行われんとしておるのでありまして、若しこれらの犠牲者に対して政府が積極的に予め用意するところを新らしい予算の中に組んでおりますならば、恐らく今日の事態を惹起することなしに済んだであろうと考えるのであります。
官業労組に対しましては、公務員の給與ベース引上げに頑強に政府は反対しておる。人事院の勧告に対しましても、一向これを顧みることなくして退けてしまつておる。即ち人事院の勧告を弊履のごとくに捨てて顧みない。ただ一方的に公務員に対して犠牲を強いておる。先頃の国鉄裁定に対しましては、公企労法の精神を一方的に歪曲して解釈いたしまして独自の解釈を押付けておる。今日の事態は正にかくのごとくにして惹起されたものと思うのであります。一昨年来実施されて参りましたところの多くの労働関係法規、或いは労調法であるとか、或いは公務員法であるとか、或いは公企労であるとかというものは、今日のような事態を惹起することなしに、これを未然に防止して、事を円満に解決するための一つの体制を整えるための法規であつたと考えられるのでありまするけれども、その折角の法規、その折角の法の精神を蹂躪して、人事院の勧告を顧みない。これでは人事院の存在意義というものを疑わざるを得ないことになる。仲裁裁定に対しましても、政府は法の精神を我々から見れば歪曲した解釈をなしておる。若し政府が今解釈しておるような解釈が妥当であるとしますならば、将来とも衆議院に過半数を占める政府は、常に思うままに仲裁裁定を蹂躪することができるのでありまして、これでは公企労法の精神というものは、何故に仲裁裁定というものを認めるに至つたか、裁定委員会を認めておるか、疑いなきを得ないことになるのであります。こうした無理な政府の一方的な解釈或いは態度が今日官業労組の合法的な鬪争を、遵法鬪争を惹起するに至つたと、かように考えるのであります。私は、言うまでもないことでありますが、各労組の要請というものは盡くこれ経済問題である。経済的な要請である。その争議行為も経済的要求を貫徹するための一つの合法手段としての鬪争に外ならぬのであります。而もその由つて来たるところが、若し私の解釈のごとく政府の財政経済施策にその大部分があるんだという、これを強行するために犠牲を強いられておる階層が到底苦痛に堪えられなくして加えつつある反撃が今日の樣相を惹起しておるのだということを反省されますならば、政府は過般来或いは先般来この壇上で示されておるような、強硬な、彈圧的な態度を以てこれに臨むということでなくして、本当に赤誠を披瀝して円満な解決のために努力すべきである。みずから反省して謙虚な気持でこれらに対して妥結の途を講じなければならぬと思うのであります。今日の新聞の報ずるところによりますると、昨日官房長官、大蔵大臣、労働大臣が協議されて、今後国会共鬪委とは交渉しないというふうなことをお決めになつたようでありますが、これは当面の、恐らく政府から考えれば煩わしいと思われる事態を一応回避することには役立つことと思いまするが、問題の根本的な解決は到底これによつては達成されない。むしろ労組側を刺戟いたしまして、より一層憂慮すべき事態が発生するのではないかということを虞れるのであります。一体政府はかかる事態に直面いたしまして何の解決策を持つておられるか、如何なる労働対策を持つておられるか、お伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)
〔国務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/37
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038・鈴木正文
○国務大臣(鈴木正文君) 只今の御質問の中心的な御趣旨でありました点、つまり財政経済政策が一切の根源である、こういうことに対するお答えは大蔵大臣からもいたすと思いますけれども、日本の経済を安定して、全体として国民生活を安定し、引上げて行くために、いわゆるドツジ予算を中心とした均衡予算の意味ということにつきましては、もうあらゆる機会に政府全体といたしまして委曲を盡して御説明申上げて来たところでありまして、改めて御説明申上げる余地はないと思います。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)今日におきましても、政府はこの線において日本の復興を完成するという決意と方向とは毫も変つておらないということも申上げるまでもないと思います。又一般的な労働攻勢といいまするか、労働界の事情、これは官業方面、或いは一般民間、たまたま同時的に現われて来ておりますけれども、それぞれ性格は異なつておるのでありまして、一般民間の労働争議自体につきましては先程電産の例を申上げた通りでありまして、その合法的で而も妥当な要求というものに対しましては、労働関係の諸法規の手続によつて、そうして妥当な解決を図つて行く。電産については先程申上げましたような推移を辿つております。例えば金属鉱山等につきましても同じような方途の下に次の交渉が開始されるものと期待しております。一つ一つの事態に対しまして、慌てずに、而も誠意を盡して、一つのフアクターに対しまして民間の問題は片付けて行くということが、平凡にして最も可能な力強き解決方法であると考えております。(笑声)同時に官業の方面につきましては、すでに公務員の関係或いは仲裁に対する政府のなし得る可能なる範囲等、これらはもうすでに十分委曲を盡して申上げた通りでありまして、不可能なることにつきましては飽くまでも不可能で、できないのでありますけれども、可能なる面につきましては、政府は予算の範囲内監おいて誠意を盡してその充実を図つて行きたいと考えておる次第であります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/38
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039・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 日本の経済を安定し国民生活を上昇するためには、やはりインフレを收束せしめて産業の復興を図らなければならぬのであります。この意味におきまして私は昨年来均衡予算で進んでおるのであります。何分にも長いインフレに慣らされました国民には、安定への道はなかなか困難なのであります。これは中小企業者のみならず、労働関係者或いは農家の方々も皆同樣の犠牲を拂わなければならないのであります。私のその犠牲ができるだけ少く而もできるだけ早く安定せしむるように努力いたしておる次第なのであります。(拍手、「解決策は何も言わんじやないか」と呼ぶ者あり)
〔国務大臣増田甲子七君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/39
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040・増田甲子七
○国務大臣(増田甲子七君) 森下さんが三月労働攻勢その他についての総理大臣の所見なり、或いは心構え、態度等について、不肖官房長官に代つて答弁をしろというお許しが出ましたから、僣越ながら総理大臣に代つて答弁いたします。
政府といたしましては、原則的に森下議員と全然所見を一にいたしております。即ちこれらの各種の労働争議を政府みずから挺身して円満なる妥結に到達せしむるように努力すべきではないかという点については、全然同感でございます。でございますから、従来から関係各大臣がそれぞれ労働大臣或いは産業大臣において各種單産と折衝し、又使用者側とも鋭意折衝いたしまして、円満なる解決を図りたい、又図つて貰つておる次第でございますから、その点何とぞ御了承を願いたいと思います。要するに政府といたしましては、労働條件のでき得る限りの維持若しくは改善につきましては、殊に物価の低落というような、こういう或いは多少不況というようなこの情勢におきましては、労働條件の低下を防ぎ、最低賃金なりその他労働條件は必ず維持いたしまして、労働者諸君の保護を図つて行くというこの見地に力を入れるべきものであると、こう心得ております。
それから国会共鬪委に対しまして、官房長官或いは政府といたしまして将来どういう態度で行くかということについての森下さんの御質問がございましたから、この機会に一言申添えます。私共はもとより全官公の諸君或いは各種單産の労働組合の諸君とは極めて直接接触すべきものであると、こう考えておりまするから、その趣旨を先ず申上げ、而して国会共鬪委というような、労働法上の団体交渉権なり或いはその他の諸権利があるかどうか疑わしいものに対しましては、一応他の各種單産労働組合なり全官公なりの諸君と我々は接触を重ねなければならないのであるから、第二段にして頂きたい、こういうふうに言つておるのでありまして、もとより全官公なり、或いは單産、即ち労ど法上或いは公務員法上の団体交渉権を持つておる諸君とは、喜んで各産業大臣或いは労働大臣は接触を図り、これからも交渉を続けるつもりでございまするし、全官公等の諸君とは、場合によつては私もみずから喜んで時間の許す限り将来とも交渉なり接触を続けるつもりでございますから、その点どうぞ御了解を願いたいと存ずる次第でございます。(「解決策は持つてない」と呼ぶ者あり)
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〔油井賢太郎君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/40
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041・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 油井賢太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/41
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042・油井賢太郎
○油井賢太郎君 本員は、一昨日の物価安定対策に関する本員の緊急質問に対してなされた先程の池田大蔵大臣、鈴木労働大臣の答弁に関し、簡單な緊急質問を行うの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/42
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043・栗山良夫
○栗山良夫君 本員は只今の油井君の動議に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/43
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044・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 油井君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/44
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045・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。よつて油井君の発言を許可いたします。油井賢太郎君。
〔油井賢太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/45
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046・油井賢太郎
○油井賢太郎君 先程鈴木労働大臣が一昨日の私の質鴨に対しなされた回答は、ピントが狂つておるのであります。私は、最近のようなこの経済情勢によつて大分破産者や或いは失業者というようなものが多くなる、こういう点は今まで内閣或いは現政府において勘案なされておつたかどうか、若し勘案なされておつたならば、予算等の措置においてもそういうことを織込んでおやりになつたかどうか、そういう点をお聞きいたしておるのであります。これに対して大臣の御答弁を更に煩わしたいと思います。
尚、池田大蔵大臣に対しまして、御答弁の中にあるインフレ政策を是正する、或いは金融訟置によつてこれを解決するというような、それだけのお話のようでありますが、現在の経済事情というものは、ひとり繊維製品のみならず、他の産業にも繊維製品の暴落が動機となつた波及するような状況になつております。金融機関だけが一つの措置をとつても、中小企業者に或る程度の金融をいたしましても、原料代にもならないような製品を作つて売出さなくてはならないという現在の状態を、どうして金融だけの面で解決ができるかどうか。而も輸出産業等におきましては、御承知のように、海外筋においては日本の暴落を見て買控えをしている、こういう点についてどういう解決策をおとりになるのかという点。更に又、大蔵大臣といたしまして予算を提出されたその中に、国民所得が三兆二千億円というものが計上されておる。物価を低落させるという現政府の意図であつて、而もその低落が現政府の方途に従つて実現しつつある、そういう際に国民所得が去年よりも殖えるというようなことが実際にあるかどうかということを、大臣はどうお考えになつておるか。予算の組替えさえも今後図らなくてはならない事態が現出するのではないでしようか。こういう点について国民にはつきりと現政府のやり方を明示して頂きたいのであります。
もう一つ最後に、物価が下ることに対しては、現政府は成る程放漫政策で以て、統制を外すというようなことだけでやつておられる。併しながら下つたら統制は外し、或いは下つてるものに対しては何ら対策を講じないというようなことは、結局何らかの機会に上ることがある、暴騰することがある、現在二分の一にも三分の一にもなつてあるものがあります。そういうものに対して何らの方策も示されないで、又場合によつてあべこべに二倍にも三倍にもなつた場合に、現政府はどういうような対策をおとりになるか、こういう点について大臣の御答弁をお願いいたします。
〔国務大臣鈴木正文君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/46
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047・鈴木正文
○国務大臣(鈴木正文君) 油井さんの只今の御質問は二つに分れておるように思います。失業対策、失業者というようなものが出て来る、どんどん殖えて来る傾向にある、それに対して予算的な措置をどういうふうに二十五年度予算でとつておるかという御質問のように思いますが、一つは言うまでもなく、失業が出る以前、只今も質疑応答の中にありましたように、政策を進行して、そうしてできるだけ失業者を吸收して行くと同時に、出さないような方途をとるという、基本的な産業政策の問題であり、それに対する御質問は、むしろそれよりも、それにしても配置転換その他で以て……この段階においては或る程度の離職者というものは予想される、それが二十五年度予算でどういうふうな措置がとつてあるかということをお聞きになつたと存じますが、そうでありましたならば、これはいわゆる広義の失業対策費及びそれが予算に対する裏付けという意味になるわけだと思います。これらにつきましてはすでに委員会その他でしばしばお答えして来た通りでありますけれども、極く総括的に申上げますならば、いわゆる狹い意味の失業対策費というものは約八十億円ぐらい二十五年度予算の中に盛られておる。併しこれは極く狹い意味の失業対策費で政府は従来からそうでありますけれども、こういう戰後の大きな転換期における失業問題には、配置転換とか、或いは公共事業費とか、或いは見返資金とか、そういつたもの全体が失業対策の経費であり、更に推し進めて行きまするならば、政府の財政経済政策全体が雇用を増加して行くという面において広い意味の失業対策というものの性質を持つていると考えているわけでございます。それらを全部総合いたしまするというと、過日も申上げましたように、狹い意味の失業対策、或いは失業保險、或いは見返資金、或いは公共事業等を通じまして、昭和二十五年街におきましては約二百万人以上に亘るところの吸收の計画が実際的に予算の中に盛られておりますということをお答え申上げます。
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/47
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048・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。
統制経済の下におきましてはいわゆる売手市場で、売る人が市場価格を決めるのでありますが、自由経済に移行いたしますると、これが買手市場になつて来るのであります。こういう転換期におきまして、或る商品が非常な暴落をすることはあり得るのであります。殊に今まで闇物資として非常に高かつたものが急激に下ることは、これは予想されるのであります。私といたしましては、こういう場合におきましては、できるだけ金融の道を付けて有り焦りをしないようにすることが一番解決策としてよいことと考えておるのであります。従いましてできるだけの金融を付けております。(「金融だけで解決は付かぬ」と呼ぶ者あり)そうして又片一方におきましては、需要者の方に、それを直接需要を殖やす必要があると思います。従いまして私といたしましては、昭和二十四年度の予算よりも二十五年は非常に直接需要を多くする方法で行つているのであります。私は早晩こういう転換期のごたごたは解決するものと考えております。尚二十五年度の国民所得を三億二千億と計算せられております。これは物価は大体横這いの計算で、而も生産が殖える関係上、昨年よりも六%の上昇と見ておるのであります。で特殊の品物が一時の現象として下つたからといつて、国民所得に何も影響はないと私は考えております。(「認識不足だ」と呼ぶ者あり)又急に下つたものが上つた場合にどうするか、二倍にも三倍にも上つた場合にどうするかという仮定の御質問でございまするが、そういう場合には上つた品物が何であるかによつて考えなければならぬと思います。どの品物がどうなつたかということによつて、そのときの経済情勢によつて措置すべき問題だと考えております。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/48
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049・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程第七より第十までの請願及び日程第十一の陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/49
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050・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
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〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/50
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051・河井彌八
○河井彌八君 議題となつております請願及び陳情について内閣委員会の審査の経過並びに結果を申上げます。
この請願及び陳情はいずれも恩給法の改正又はその施行の適切なることを要求するものであります。委員会におきましては全会一致、請願者の切実なる要請を尤もと認めまして、これを議院において議決して内閣に送付すべきものと決定いたした次第であります。
先ず恩給法の改正並びに恩給支拂促進に関する請願であります。これは退職者にとつては恩給は唯一の生活更生資金であるが、従来から恩給の支給額の決定及びその支給は相当遅延するのが例である、でありますからどうか恩給の支給期間をはつきりして、そして恩給制度の円滑な運営を図り、又恩給金額の大幅の増額をも希望して、恩給法の改正を行なつて欲しい、そして同時に恩給支給が遅れないように促進して欲しいという請願であります。
それからその次は請願と陳情と両方出でおります。これは最も多数から提出されたものでありまして、署名者の数は二万四千五百五十八名となつております。総体の受給者が十七、八万あるに対しまして二万四千五百人の提出者を見ておるのであります。要点は、第三回国会において恩給法臨時特例が改正せられまして、恩給の増額が実施せられたのであるが、困窮の度を加えておる恩給受給者の生活を保障するために、国家公務員に対する賃金ベースを更改せられる度ごとに、現受給者の受額もこれと並行して更改するよう法的措置をとつて貰いたい、又恩給法の不均衡を是正されて、受給者の生活の維持に必要な額を支給せられるように措置せられたいというのであります。この請願は昨年の十一月二十五日の内閣委員会から報告いたしまして、本院においてこれを内閣に送付すべきものと決定せられた請願と内容が同一でありまするから、詳しくは申上げませんが、戰後賃金ベースがしばしば変えられまして、その度ごどに相当な増額を見ておつたのでありますが、恩給を受けておる人々にとりましては、その賃金ベースの増額が恩給の方に響かないのであります。従いまして物価体系の極めて急激な変動のときにおいて、この最も生活上困難な境遇にある人の收入がこれに伴わないということで、非常な悲惨な状態に陷つておつたのであります。それを一昨年の七月に恩給法臨時特例の制定によりまして、初めて三千七百九十一円ベースに合うような算定することになつたので、やつと息を付いたのでありますが、今度昨年の暮に又更に六千三百七円ベースに給與が上つた、ところがその上つたのに対して何ら恩典に浴することができない、こういう実情であつて、恩給を受けている者の生活を実に憐れむべきことであるので、委員会におきましては、それらの点につきまして政府に対して質問をいたしました。それに対して政府は、今期国会において恩給法の臨時特例改正の法律案を出す、それから又予算においてもその措置がとつてあるということの言明を得たのでありまするから、これを速かに内閣に送付いたしまして、その立法の内容を充実するために、これを議決した次第であります。そうしてその場合におきましてどうなるかと申しますれば、恩給の新らしい法律の適用時期をば今年の一月一日から適用するということ、それからその支拂の時期につきましては、できるだけ早く事務上の手段をとるのでありますが、どうしても七月一日までに支拂うことになるであろう、というのは、受給者の数が非常に多いし、又これを取扱う者の数をそう殖やすことができないから、晝夜兼行でやりましても、そのくらいの時期は止むを得ないであろうということであります。予算面におきましては、大体昨年度の恩給額が三十三億四千万円、それを今年度は二十二億八千四百万円殖やしまして五十六億二千六百万円というものが予算案にすでに計上しておるのでありまするから、これを支出いたしまして、そうして増額の恩典に浴するようにしよう、こういうことになつておる次第であります。
それから次に恩給一時金即時支給に関する請願、これは政府は官公署関係労働者を整理したままで失業対策は全く等閑に付しておる、而も整理後四ケ月を経過しているに拘わらず、当然支拂わるべき恩給一時金がまだ支拂われていないのであるからして、速かにこれを拂つて呉れ、こういう請願であります。これも又そういう事実があれば極めて適切なことであると認めたのであります。
最後に傷痍者の恩給増額等に関する請願、これは戰争の犠牲者であるところの傷痍者の保障は、現在僅かに最高年額二千余円を支給されているのに過ぎない、これらの人々の困窮している状況は年と共に深刻の度を加えている、取りわけ治療を要する患者は僅かな恩給を受けているために却つて医療保護が得られないというような非惨な状況にある、であるから傷痍者の恩給の増額、それから恩給受給者の医療保護規定の設定等の措置を至急とつて欲しい、こういう請願であります。御承知のごとく軍人恩給法はすでに廃止せられておるのでありまするが、元軍人の傷痍者につきましては、昭和二十一年二月のポツダム勅令の六十八号によつて、これに対して増加恩給に支給する規定があるのであります。併しそれの内容を法律に照して調べて見ますると、まだまだ今日の実情においてはもつて増加しなければならぬということは極めて明瞭であるのであります。戰争によつて傷痍を蒙むつた人々が助けなくこの僅かな恩給によつて療養をするということは甚だ同情に堪えないのでありまして、請願の趣旨は尤もであると考えたのであります。
かような理由を以ちまして、それぞれの請願はこれを参議院の議を経て内閣に送付すべきものと全会一致を以て可決した次第であります。この段御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/51
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052・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別の御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/52
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053・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十二分散会
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○本日の会議に付した事件
一、実地調査のため議員派遣の件
一、日程第一 麻薬取締法及び大麻取締法の一部を改正する法律案
一、日程第二 帝国石油株式会社法を廃止する法律案
一、日程第三 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、電気試験所熊本支所設置に関し承認を求めるの件
一、日程第四 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、日用品検査所の支所設置に関し承認を求めるの件
一、日程第五 文部省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第六 日本国憲法第八條の規定による議決案
一、電産争議とゼネスト問題に関する緊急質問
一、三月労働攻勢に対する政府の対策に関する緊急質問
一、物価安定対策についての国務大臣の答弁に関する緊急質問
一、日程第七乃至第十の請願
一、日程第十一の陳情発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100715254X02619500310/53
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