1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月二十五日(火曜日)
午後一時五十九分開議
出席委員
通商産業委員
委員長 小金 義照君
理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君
理事 中村 幸七君 理事 今澄 勇君
江田斗米吉君 小川 平二君
神田 博君 澁谷雄太郎君
高木吉之助君 永井 要造君
福田 一君 高橋清治郎君
田代 文久君
農林委員
委員長 千賀 康治君
理事 足立 篤郎君 理事 野原 正勝君
理事 小林 運美君 理事 井上 良二君
宇野秀次郎君 遠藤 三郎君
越智 茂君 川西 清君
河野 謙三君 中馬 辰猪君
八木 一郎君 大森 玉木君
吉川 久衛君 坂口 主税君
河口 陽一君
出席政府委員
農林政務次官 島村 軍次君
農林事務官
(蚕糸局長) 最上 章吉君
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(通商企業局
長) 石原 武夫君
通商産業事務官
(通商纖維局
長) 近藤 止文君
委員外の出席者
通商産業委員会
專門員 谷崎 明君
通商産業委員会
專門員 大石 主計君
通商産業委員会
專門員 越田 清七君
農林委員会專門
員 藤井 信君
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本日の会議に付した事件
商品取引所法案(内閣提出第七号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/0
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001・小金義照
○小金委員長 これより通商産業委員会と農林委員会の連合審査会を開会いたします。
私が議案の付託を受けました通商産業委員会の委員長でございますので、先例によりまして、本連合審査会の委員長の職務を行います。
ただいまより商品取引所法案を議題として審査を行います。まず政府の提案理由の説明を求めます。石原政府委員。
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—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/1
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002・石原武夫
○石原(武)政府委員 本案につきましては、政府といたしましてはさきに第七国会に提案いたしましたが、時間の関係上審議未了となりましたため、このたび本国会に再びこれを提案し、御審議を仰ぐ次第であります。
昨年来経済九原則及びドツジ・ラインの実施によりまして、インフレもようやく終息し、物価も安定して参り、物資に対する統制も順次解除されつつある状況であります。従つて公定価格制度や配給統制はごく限られた一部の商品についてのみ存続し、大部分の商品の生産及び配給は経済原則によつて規制されることと相なつたのであります。従いまして商品の価格は需要と供給のバランスによつて決定されることとなり、この需要と供給を、なるべく広い範囲にわたつて集中して、公正な価格をつくるための市場の形成が必然的に要求されて来るとともに、現物のみならず、先物についての市場も要求されることになり、ここに商品取引所の設立が業界から強く要望されるに至つた次第であります。
わが国の商品取引所は、古くは徳川時代の米会所に由来し、戰前におきましては米を中心とし、綿花、綿糸、綿布、繭、生糸、人絹糸、雑穀、肥料、砂糖等広汎な種類の商品にわたつて設置されていたのでありますが、戰時に入りこれらの商品について全面的な統制が行われるに及んで、その機能を失い、昭和十六年ごろまでにはことごとく閉鎖または解散されるに至つたのであります。しかして商品取引所に関する法律も明治二十六年の制定にかかる取引所法が数回の改正を経て今日に至つている次第であります。すなわち昭和二十二年証券取引所開設の必要に応じ、まつたく新しい構想をもつて、証券取引法が制定されたのでありますが、商品取引所については、いまだ開設の時期にあらずとして何らのくふうもなされず、ただ一応旧来の取引所法に商品という字句を冠して残されていたのであり、これが現行の商品取引所法であります。従つて商品取引所を新たに開設するにあたつては、まずその根拠法規である商品取引所法を現在の経済の実情に即したものとするため、新たな構想のもとに全面的に改正する必要が生じたのであります。
以下改正をいたしました主要な点について御説明を申し上げます。まず第一に、現行法によりますと、取引所は株式会社組織によるものと会員組織によるものと二者いずれをも認めておるのでありますが、今回の改正案では、会員組織のみが認められることとなつているのであります。株式会社組織によるときは、実際の取引業者にとつて開設の必要がない場合においても、投機的な取引のみを行うことを目的として取引所が設立される危險性がありますし、会社として利益を上げ、配当をふやすために、実情に沿わない売買であつても取引高が多額に上ることのみが念願される傾向を誘致し、また実際に取引を行う者とは別箇な会社の幹部によつて取引所が管理されることとなる等、従来からその弊害が批判の対象となつていたところであつたのであります。従つて今回は会員組織のもののみを認めることとしたのであります。
次に今回の改正の第二点は、取引所の設立にあたつて、免許主義をやめて、登録主義をとることとしたことであります。本法案では取引所の設立の要件はできるだけ法律上明記することとし、法定の要件を備えたものは、特に法律で定めた登録拒否の規定に該当しない限り登録を行うことといたしました。これは官庁の御認可等による自由裁量の余地をできるだけ少くし、業界の自主的な活動にまつ趣旨であります。
次に改正の第三点は、取引所において上場することのできる商品を法定している点でございます。この法案では、綿花、綿糸、綿布、乾繭、生糸、人絹糸、スフ糸、毛糸、ゴムが法定されておりますが、これらは大体においてかつての取引所に上場されていた商品であり、今後においても取引所の設立が妥当または必要と認められるものであります。しかしながら今後のわが国の経済は戰前とはおのずから異なるものがありますので、その他の商品につきましても、取引所を設立することが必要となる場合も予想されますので、本法案では必要の都度政令で商品の品目追加が行われるような道を開いてあるわけであります。
次に改正の第四点としては、商品取引所行政の重要な事項を調査審議するための機関として商品取引所審議会を設置したことであります。これは取引所行政が国民経済全般に影響するところが広く、しかも各方面に関連を有しますので、主務大臣の権限の行使にあたつては、ほとんどすべてこの審議会の議決を経なければならぬことといたし、もつて取引所行政の万全を期した次第であります。また本審議会の会長および委員については、その重要性にかんがみ、学識経験者のうちから両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することとし、その愼重を期している次第であります。
次に改正の第五点といたしまして、本法案では民主化という点から種々の規定がしてあります。すなわちまず第一に証券取引法の先例にならいまして、取引所における各種の紛争を円満に解決するために、仲介の制度を創設しております。これは紡争の当事者の言い分を聞きまして妥当な解決点を見出し、その受諾を勧告いたすものであり、その他にも主務大臣の処分に際しては必ずその事前に公開による聽聞を行う等、行政の民主的な運用を期している次第であります。なほ今回の改正案におきましては、以上のほかにも改正点が種々存するのでありまして、たとえば商品取引所の定義を明確にしたこと、他人の委託を受けて売買取引を行う者を商品仲買人として特に嚴重な規制を加えていること、取引所の取引についても従来と異なり、かなり嚴重な監督規定を設けたこと、定款、業務規程、受託契約準則の必要記載事項を明確にしたこと等がこれであります。要は免許主義を登録主義に改正した等、産業界の自主的な活動を尊重したこと、取引所の業務についてはできるだけその自治にまかしたこと、しかし他面取引所の同民経済上の重要性にかんがみ、売買取引の基準を明確にし、その行き過ぎの是正をはかり、もつて売買取引の公正と委託者保護の徹底を期したことが今回の改正の大綱であります。
なお前国会に提案した法案と異なる点は、訴訟に関する一箇條文を削除したことでありまして、その他は実質的な相違点はありません。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/2
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003・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして政府の説明を終りました。引続き質疑に入ります。小林君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/3
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004・小林運美
○小林(運)委員 ただいま商品取引所法案の提案の理由の説明をお聞きいたしましたが、まず第一に私は提案理由の中に、現在の経済状況がドツジ・ラインの実施によつてインフレが終息したというようなお話でありますが、半面最近の朝鮮の動乱の問題等からいたしまして、逆にインフレ傾向になつた点も相当あると思いますが、そういう関係につきましてこの法案との関係、この法案ではインフレが終息したので、統制をどんどんやめてしまう。そこで取引所を開設するというような根本的な方針のようでありますが、また逆にただいま申し上げましたような情勢になつておる。そういう点について政府は現在の日本の経済状況が、どこまでもインフレが終息してしまつているというふうに断定しておるようでありますが、その辺どんなふうにお考えになつておりますか、時局に対する関係をひとつ御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/4
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005・首藤新八
○首藤政府委員 この法案にありまする通りに、日本の経済界は大体インフレは終息しておると考えておるのであります。ただ最近、朝鮮事変を契機といたしまして、各商品とも、なかんずく国際的商品を中心といたしまして相当活気を呈しておりまするけれども、しかしながら当面において日本の各商品がこれ以上活気を呈しましても、それはすべて裏づけのある結果であります。要するにインフレは裏づけのない、ただ円貨だけを発行しておつたのでありまするが、今回の景気は少くともドルという裏づけがついておるのでありまして端的に言えば輸出今日までよりもはるかにふえたというふうにわれわれは考えておるのでありまして、従つてこの方面の需要がふえて、そうしてこれがために各商命が活気を呈しましてもインフレとは考えていないのであります。むしろ正常な経済、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/5
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006・小林運美
○小林(運)委員 ただいまの説明ではインフレでないというようなお話でありましたけれども、この法案の中の上場品目を、国内産の原料と外国産の原料というような立場からわけて考えてみますと、繭とか、生糸とかいうものは国内原料でありますが、御存じのように最近生糸の値段は、この二、三週間に間に非常に騰貴しで参りまして、現在では十六万ないし十七万円にもなりつつあります。かような原因をわれわれ調査をいたしてみましても、ほとんどその原因がわからない。今次官のお話の範囲では、われわれは了解できない。こういうことが現実に起つておる。この現実の問題に対して次官はどんなふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/6
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007・首藤新八
○首藤政府委員 最近内地の生糸が非常に高くなつておることは事実でありますが、しかしこれは内地から上げたのではなくして、アメリカの需要がふえた、そうしてアメリカの相場が上つたからそれに関連して内地の相場が上つた、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/7
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008・小林運美
○小林(運)委員 次官はそういうようなお話ですが、私は決してそうじやないと思う。海外の需要がふえたというはつきりした資料をお持ちですか。またそういつた事実があるかどうか。それをひとつ次官からはつきりお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/8
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009・首藤新八
○首藤政府委員 この点は本日は農林省の方から責任ある方が見えておりますので、その農林省の方から御返答した方がいいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/9
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010・最上章吉
○最上政府委員 ただいまの小林委員の御質問でありますが、最近生糸が非常に高くなつておることは事実でございまして、これはいろいろの原因があると思うのでございますが、要するに横神市場の滯貨が非常に少い。それはこの春以来繭の不足のために操短、その後は先売り等を相当いたしておりまするために、そういう約定のもので横神市場に滯貨が非常に少いということが一つの大きな原因であると思うのでありまするが、その他に朝鮮事変を契機といたしまして、内外の物価が相当値上りをする情勢にある。ことに海外からの需要も相当旺盛でありまして、アメリカも実は相当生糸の需要がふえるような情勢にあるのであります。ただいま首藤政務次官からもお話がございましたが、現在のアメリカの軍事予算等によりまして相当ナイロンその他の生糸の競争繊維に対する需要が増加いたしておることは事実であります。またニューヨークにあります司令部の在庫も、最近は従来あまり売れなかつたものが相当多量に売れておることもあるのであります。その他フランス、イギリスというようなところからも貿易協定の関係におきまして相当大量の買付が予想され、また一部そういうヨーロッパ方面からの引合いもあるのでありまして、内外ともに需要が非常にふえておるということから生糸がしつておるものと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/10
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011・小林運美
○小林(運)委員 蚕糸局長、むりに次官の言つたことをカバーしなくても、ほんとうのことを言つていただきたい。私はそんないいかげんな御答弁を聞きたくはないのであります。御存じのように私に大体のことはわかつておる。そんなむりをおつしやらなくてもいい。実際、最近ニユーヨークの売れ行き、そういうものはちつともよくない。それは農林省だつて通産省だつて知つておるはずなのです。私はこの商品取引所法をどうこうするのではなく、政府がそういつたいいかげんな市場の見方をしておるから、われわれ国内の産業に関しておる者は非常に迷惑しておる。私はこれは苦言を呈します。こういうことではほんとうに困る。決してアメリカやヨーロッパで現在糸価が高騰しておるほど需要は起きておらない。それをむりにそういうことをお役所同士でいいかげんな御答弁をされては国会の権威からいつても私は非常に不愉快である。そういうことはやめてもらいたい。私のお尋ねするところは、こういつたアメリカの需要でもない、海外の需要でもないのに、現在の糸価が非常に上つておる。しかも毎日の新聞をごらんになつてもわかるように、全然現物はふだんより動いていない。最近の生糸の値段の高騰はからなのである。これははつきりした事実なのです。こういう現在の情勢にあつて、かような取引所を開く場合にどういう影響があるかというところを私はお尋ねしたいのです。これ以上私は次官を追究しません。これは国民が大体知つております。しかもこういう情勢にあつて、こういう法律案を出して、いいかげんなことで済まされると非常に国民が迷惑するということを私は強調いたします。
次に移りますが、この法案には九品目が上場の品目になつておりますけれども、法案によりますと必要の都度品目を省令をもつて追加することができる。もちろん審議会等もありますけれども、その品目の追加ということは、これは非常に重大な問題である。現在ここにあります九品目の中でも、私は生糸とか、繭とかいうものは相当考えなくちやいけないと思う。特にアメリカの関係業者におきましても、生糸や繭の上場についてはかなりの批判があることに政府当局も御存じのことと思う。それであえてここに法律を出しまして、いつでもが上場ができるという態勢におくというところの根拠が私に知りたいのです。どうしてむりにこういうものをすぐやらなければいけないかという根拠をひとつ御説明願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/11
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012・首藤新八
○首藤政府委員 取引所をこの際設置する根拠をという御質問と承つたのでありますが、御承知の通りこの法案に列記してありまするところの商品は、おおむね戰前久しい間それぞれ取引所を設立しておつた商品であります。戰争のためにやむなく廃止になつたわけであります。しかるに終戰後の取引の実態を見ますると、御承知の通り戰前の商社と戰後における商社は、そのほとんどが大体かわつてしまつておるのであります。いわんや、かりに戰前の方が相当残つておりましても、その資産内容がどうなつておるか、今日ではそういう信用状態というものは、きわめてこんとんたる状態におかれております。いわんや、戰後新しくできたところの商社に対しましては、特に信用の問題について大きな不安が残されておるのであります。ことに道義が非常に低下して来た。従つてトラブルが起らぬでも、済むような資産状態を有しながらも、トラブルがいたずらに起つて来る。さらにまた、一つのやみ相場となりまして、特に昨年来金融が梗塞して参つた。従つて個々の取引が、この金融関係から、採算を割つてもやむなく安値で売買をしなければならぬというような情勢にも立ち至つておりまして、中小工業の受ける損害はけだし少くないのであります。従つてこの際大体インフレも終息し、通常の経済状態に近づきつつありますので、こういうおもなる商品を一応法的に取引して、それで一つのスタンダードの相場をつくる。従つてこの標準相場のできますることによつて、従来不当な安値あるいはその他不当な損害をこうむつた小さい業者、あるいはその他の業者も、この標準相場を中心として売買ができますことによつて非常に公平な、かつ日本の国内経済にとりましては大きなプラスになるところの取引ができる可能性があると思うのであります。同時にまた先ほど申し上げたごとく、信用の問題、あるいは道義の問題等々によつて今日まで不円滑であつたところの取引が、取引所に上場することによつて、きわめてスムースにそれが取引される。そうしてそれが結局日本経済の堅実な発展に大きな寄與をするであろうという見解から、取引所をこの際つくることがいいんじやないかという考え方に立つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/12
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013・小林運美
○小林(運)委員 どうも政務次官のお話は、何を言つているのか、ちつともわからぬ。私がさつき御質問したのは、こういう情勢にあつて生糸とか、繭というものは、先ほど来申し上げましたように、外国の需要というものは特別にないのであります。しかも最近の糸価は非常に高騰している。こういつた情勢にあるのに、ほかのものと一諸にここでどうしても上場しなくちやいかぬという理由はどこにあるのかということを私は聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/13
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014・最上章吉
○最上政府委員 ただいまの小林委員の御質問でございますが、現在繭あるいは、ことに生糸の価格が非常な高騰を示しておることは事実でございますが、この取引所の問題につきましては、実は自由経済になりましてから、本年の春以来業者の間でも、ぜひ取引所をつくつて蚕糸業の安定をはかる、ことに先売りその他によりまして経営の安定をはかるということが要望されておるのでございます。先ほど小林委員から、外国の商社が反対しておるというようなお話もあり、私もそういう声があることは聞いておるのでありますが、これがどういう理由で反対されておるのか、そこら辺のところはまだ正確にわからないのでありますけれども、この自由経済になりました蚕糸業におきましては、こういう制度を確立することによつて、非常に経営の安定が得られるという一般の要望でありますので、海外の商社などの反対等につきましては、なお今後とも十分向うの意見も聞き、こちら側の今度の法律に対する新しい見地からのいろいろな規制等もありますので、そういうことにつきまして十分向う側にも情報を伝えて、隔意なき意見の交換をいたしたい、かように考えておるのであります。また現在の情勢がいつまで続くか、これはわからないのでありますけれども、この法律が国会を通りましたならば、その商品取引所の開設実施について、こういういわば不安定なときにやるということがよいかどうかということにつきましては、十分責任者におきまして考慮いたしまして、そういうおそれがないときに十分やりたい、かように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/14
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015・小林運美
○小林(運)委員 局長の答弁も何だか大分お苦しそうですが、最近の、アメリカにおりますある人からの情報によりますと、日本では商品取引所法を決定して、生糸、繭を上場して先物の取引を開始するということに対して、アメリカの関係業界にあげて反対の情勢にあるということを聞いております。これは局長も御存じの通り。そこで私はこの問題をじつくり考えたいと思う。ちよつと考えますと、この取引所が開始されますと、繭、生糸その他の品物の値段が相当程度安定する、ほとんど安定に近いというようにお考えになるかもしませんが、私は例を生糸、繭によつて考えてみますと、現在すでにそういつた弊害が現われておる。現在取引所はないけれども、政府の閉鎖機関の持つている生糸を、現在生糸がどんどん高くなつておるので、これを放出した。最近において一万俵近くの生糸が放出されましたけれども、これがほとんどその役をなしていない。先ほども申し上げましたようにそういうものが一応どこかへ売れて行つておるらしいけれども、これにほんとうに織物になり、定際に売れているのじやない。中間の人たちがからで買つてそうして売つている。これはほんとうの糸価の高騰ではない。空なんです。こういうことが、この取引所ができた場合にもつとこれが合法的に行われて、しかも害がありはしないかということを私は憂える。過去においても生糸や繭の清算取引が行われておつたが、それで大したことはなかつたというふうにあるいは答えられるかもしれないけれども、その当時は、繭糸業に関係いたしましては糸価安定補償法とか、その事態によつて取引所以外に繭糸価の安定をするいろいろな法律があつた。その裏づけがあつてさえも、この取引所のためにかなり市場が混乱された事実がある。こういう事実があるのに対して、現在は糸価の安定ということは全然やつていない。先般私は農林委員会で農林大臣に質疑をいたしましたところが、ぜひ急速に糸価の安定をやりたいというようなお話があつたけれども、これに対しての具体的のお話は一つもない。またわれわれが聞いている範囲では、なかなかこの糸価安定の方策というものも、現在の状態としてはそう急にやり得ない状態にあるのではないかということを私考えます。そこでかような情勢にあつて、ただ今までそういうことをやつて来たから、この取引所をやれば繭糸価の安定ができるというふうにお考えになるのは、とんでもない間違いではないかと私は考える。これに対して政府はどんなお考えを持つていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/15
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016・最上章吉
○最上政府委員 この取引所ができたために糸価が安定するか、あるいは暴騰暴落、なおその変動がひどくなるかというようなことにつきましては、いろいろ意見がわかれるところでございますが、いずれにいたしましても、この経営の安定をはかりまするためには、こういうような制度が必要であり、またぜひ望ましいものであると考えるのであります。なお糸価の安定の問題については、これは蚕糸業に特に造詣の深い小林委員はよくいきさつを御承知でございましようが、政府におきましては、昨年の初めからいろいろ案を立てて、戰前にやつておりましたような最高売渡し価格、あるいは買入れ価格というような制度を設けまして、その間に糸価を安定しようという案をつくつて、関係方面に出したのでございますが、これがなかなか了解を得られない。またこの春は議員の方から議員提出としていろいろ案を練つて折衝していただいたのでございますが、これもなかなか十分の了解を得られなくして、今日に至つておるというのが実情でございますが、この商品取引所法が国会を通過いたしましても、糸価の安定の問題につきましては、今後ともなおその実現をはかるべく最善の努力をいたす決心であります。決して商品取引所法が通つたからといつて、糸価安定の方がおろそかになるというようには少しも考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/16
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017・小林運美
○小林(運)委員 これ以上この問題について御質問するのは蛇足だと思いますが、この取引所が過去においていろいろの欠点を世の中に暴露しておりました。今回のこの法案を見ましても、から売り——いわゆるからの取引が相当行われるのではないかと私は考える。こういうようなことについて、ある程度のものはありますけれども、から売りや、から買いが絶対にできないというお考えで政府はおりますかどうか。過去において生糸や繭の取引の間に何々将軍というのが出て来て、この業界をかなり混乱させた事実があります。こういうような大きな力を持つて来てやられれば、業界はひとたまりもなく混乱される。こういうようなことがこの法案で完全に防止できるかどうか、その決意、方法をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/17
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018・石原武夫
○石原(武)政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねのから売りというお話でございますが、これにはもちろん清算取引を当然認めておりますので、実売りでない売買は認められておりますので、そうした意味で、から売りが認められるというふうに考えられると思います。なおお尋ねのそうしたから売りが行われ、非常に市場が撹乱される、あるいはそうした問題が生じました場合には、この法律でも九十條に実は規定を置いておりますが、さような場合には、政府といたしましても、市場における売買取引またはその受託を制限すると、かような措置は講じ得るようにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/18
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019・小林運美
○小林(運)委員 一応この九十條以下で、さようなことは防止できるようになつておりますが、私は事実はできないのじやないかというのでお尋ねしたのですが、これも政府の取締りその他決意のいかんにもよりますが、私はこれに非常に危惧の念を抱いておるのであります。
次に上場の品目がその都度必要に応じて政令をもつて追加できるということになつておりますが、現在この九品目以外に、雑穀でありますとか、あるいは肥料とか砂糖とかいうものが予想されものでありますが、現在といたしまして、今後かようなこの法案にあります以外のもので、上場の予定されるようなものがありますかどうか、また今私がお尋ねいたしました雑穀であるとか、肥料、砂糖というものにどんなふうにお考えになりますか、その点をお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/19
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020・首藤新八
○首藤政府委員 今のところ業者の方から若干要望されておりますのは、絹織物があります。ほかの商品に対しましては、今のところどの業界からもそういう要望は出ておりません。ことに砂糖はまだ統制が実施されておりまして、取引所の上場物件としてはまつたく適格性を失いでおるのでありまして、全然考慮しておりません。雑穀その他に対しましても、現在のところは何らそういう考慮をしていていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/20
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021・小林運美
○小林(運)委員 この法案で一番重要な点は、一番最初に申し上げましたように、現在の経済の状況に照し、必要のないものでもここに揚げてあるということが私は非常に危險だと思う。しかもこの法律では、それらのことは国会の審議を経ずに、審議会等にはかつて政府がかつて上場できるというところに、最近の法律としては行き方が非常におかしい法律だと私は考える。国会も最近のごとくほとんど一年中ある。それだのにむりに政令でやらなくてもいいのじやないか。また私が先ほど来申し上げておるように、現在生糸であるとか、繭とかいうものは、まだ時期がちよつと早いのではないかというふうに考える。こういう各方面からの考えからいたしまして、こういう法律をきめて、そうしてすぐにこれを実施するというのは危險じやないかと思う。その点について政府はどんなお考えか。また特に繭、生糸は、この法律が実施されて、業者がやつた場合には、これはすぐ上場するおつもりなのかどうか、その点をはつきりお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/21
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022・最上章吉
○最上政府委員 乾繭と生糸に関する面を私からお答えたいします。この法律が通過いたしたならば、業者の意向を十分聞きまして、また関係方面の予解も十分得ました上で、実施することになると思うのでございますが、ただいま小林委員が言われましたように、現在非常に不安定のときでありますので、そういうときにやることが適当ではないということになりますならば、そういう事情がある程度落ちつきました適当の機会にやる、こういうことはなるだろうと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/22
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023・小林運美
○小林(運)委員 そういうようなお考えならば、むりにこの法律案の中にそういつた必要のないものを入れる必要はないのじやないかと私はこう考えるのですが、どうしてこういうことをおやりになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/23
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024・最上章吉
○最上政府委員 必要がないとは少しも考えていないのでありまして、自由経済のもとにおきまして、乾繭、生糸のようなものは、むしろこういう商品取引所の上場商品にするには適格性を持つたものだと考えておるのでございます。ただごく最近の事情といたしまして、朝鮮問題その他を契機といたしまして、非常な暴騰を演じておるのでありますが、この点につきましては、今後の情勢を十分見通しましてまた現在の情勢がいつまでも続くものとも、私どもは考えていないのであります。そういう情勢でありますので、この法律が通りましたならば、先ほど申しましたような適当の機会に上場になるようなことを希望いたしておる次第であります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/24
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025・小林運美
○小林(運)委員 どうもはつきりしないのですが、その辺必要があるのだ、あるけれども現在はいろいろ考えてみる。先ほどは、現在はこういう朝鮮問題等を通じて業界が非常に混乱しでいる。従つて非常に危險な状態にもあるというようなことから考えられれば、そういうような答弁とも聞かれるのですが、そういうようなことから、私はまだしばらくこれは上場を見合わしてもいいのぢやないかというように考えるのですが、その点はどうしてもこれは必要があつて、法律が通つた以上、どんどん上場するかどうか。その場合に、今の局長の答弁だと、業者とも相談してどうこうと言う。業者とも相談するよりは、政府はどういうふうに考えるかということを私に聞いているのです。すぐに上場するのがいいのか、もつとしばらく置くのがいいのか、政府の考えはどうなんですか。業者と相談は別問題として、政府の腹はどこにあるのか、それをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/25
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026・最上章吉
○最上政府委員 これは結局業者が商品取引所を開設することになるのでありますが。政府といたしましては、商品取引所を解説することが適当であるという情勢でありますならば、結局登録を受付けるということに相なるのでありますが、現在は糸価は非常に暴騰しておりまして、多少落ちつきのない状況にありまするけれども、現在の状況がいつまでも続くとわれわれは考えていないのでありまして、この法律が通りましたならば、近き将来において、適当の機会に、乾繭あるいは生糸というような取引所が開設されることになるであろうと考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/26
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027・小林運美
○小林(運)委員 これ以上追究いたしませんが、私は最後に、先ほどもちよつと触れましたが、業界の一部でも、またわれわれの考えといたしましても、ただこの商品取引所があれば糸価が安定するということは決して考えていない。政府も先ほど来、局長の答弁でもそういう点がありました。そこでこの取引所があるために、政府のお考えのように、これで糸価がある程度安定するのだということであつて、将来のほんとうの糸価の安定の施設はこれでいいのだというふうに考える向きがかなりある。私はこれではならぬと思う。そこで先ほど来局長の答弁もありましたように、政府もしかるべき機会に——また現在の状態ではどうかというようなお話でありましたが、先日農林大臣から糸価安定をやるというような御決意はあつたけれども、ほんとうに現在の段階として、糸価安定が何らかの法律的の裏づけをつけるような見通しがありますかどうか。その辺を特に蚕糸局長にお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/27
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028・最上章吉
○最上政府委員 先ほど申しましたように、この商品取引所法が通りましても、糸価安定の問題は長い間の懸案でありますので、この問題についての解決につきましては、今後とも最善の努力をいたす決心であります。これは先日も農林大臣が農林委員会において発言された辺りでありますが、この問題は実は関係方面の了解を得られないということが、唯一の障害でありますので、この点につきましては、今後とも最善の努力をいたして、何らか局面の打開をいたしたい、かように考えるのでありますが、結局今のところいつどういうことでそういうことができる見通しがつくかという具体的のお話になりますと、これはまだちよつとお答えをいたしかねるのでありますが、この法律が通りましても、糸価安定の問題につきましては、従来にも増してその解決に努力したい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/28
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029・小林運美
○小林(運)委員 先日この問題について大臣にお尋ねしたときの御答弁の中に、この十月アメリカで蚕糸関係者の会合があるので、そのときにもこの糸価安定の問題について相談したいというようなお話でありました。ところがニユーヨークにおりますある人からの話によりますと、ニユーヨークでも糸価の安定をしなければならぬということは非常に要望されているのだけれども、そういつた話がちつとも日本からないのだというような話がある。一体これはどうしたことなんです。政府はそういう努力を一体しているのかどうか、向うにはそういつた活がない。この辺がどうも了解に苦しむのでありますが、その辺の事情がおわかりでありましたら、御説明を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/29
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030・最上章吉
○最上政府委員 小林委員も御承知のように、日本の政府が直接外国の政府あるいは外国と交渉することは、現下の段階におきましてはできませんので、政府といたしましては、司令部を通じ、また司令部といろいろ交渉をいたしておるのであります。そういう意味におきまして、政府が直接ニユーヨークあるいはアメリカの政府と交渉するというようなことができないことは、現下の占領下にある日本といたしましてはやむを得ないことであることは御承知の通りでございます。なおこの十月に、ニユーヨークにおきまして国際絹業同盟の総会がありますので、その際には世界中の絹業者が集まる予定になつておるのでありますが、そういう際には、こういつたような糸価安定の問題でありますとか、あるいは宣伝の問題でありますとか、そういつたような絹業の振興をするのに役立つ必要な事項については十分討議をされることが予想されますので、糸価の安定の問題につきましても、海外の業者等が相当議論をし、またこの問題の解決についても、いろいろ議論されることを予想いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/30
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031・小林運美
○小林(運)委員 その辺、私はもう少もざつくぱらんに政府のお考えを聞きたかつたのでありますが、いろいろの関係がありまして、言葉を濁されておるのははなはだ遺憾でございます。しかし私はこの法案を通じて見まして、先ほど来御質問申し上げまして御答弁をいただいたのでありますが、どうも了解に苦しむ点が多いのであります。しかしこれは半面この取引所を開設いたしまして、業界を安定するという大原則は私はよくわかります。しかしこれらも現在の経済界の動向をよく了解して、それに合つたような施策か講ぜられなければ、せつかくのこの法案もかえつて害をなすと私は考える。従いましてこれらの実施の期日あるいは品目の追加であるとか、あるいはこれを中止するというような点については、私は国会が直接これに当らなければならぬと考えておるのでありますが、この法律によりますと、政府が省令でこれを自由自在にやる。審議会というものはあるけれども、今まで私がいろいろの政府の審議会等の実際面から見ても、これは政府の御用機関であつて、決して国民の意思を反映していないというような立場から、この法案に対して——これは討論に近い発言ではございますが、私は一言注意を喚起いたしまして、私の質疑を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/31
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032・小金義照
○小金委員長 ほかに御質疑はございませんか。——千質君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/32
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033・千賀康治
○千賀農林委員長 株式組織にあらずして、会員組織ということです。会員組織の指導原理がはつきりいたしませんが、これは仲買いの会員ということになるのか。主たる利用者が会員になるのか。この点をはつきり御説明が願いたいということ。それからいろいろ商品の項目にわたつて上場品目が決定されておりまするが、大体戰前と同じようだといわれております。しかし戰前といえどもこれらの商品を上場いたしまして、ほんとうに経済界安定のため、あるいはその商品の市場取引の健全な発達をはかるのには、相当な量を取扱う必要があるのでございまするが、戰前と現在と比べまして、商品の価格が非常に大きな相違をいたしております。数百倍から千倍を越すような価格の変動を来しております。そこで受渡しということになりますると、戰前と比べまして、非常に懸隔の大きな金の需要を必要といたします。受渡しのみならず、上場の証拠金等に至りましても、その貸金の需要はおびただしく大きなものであります。業者及びこの会員その他会員の背後にあつて上場し、これがいろいろ受渡しまで完了して行く過程におきましては、非常に大きな金融を必要といたしますが、その金融の自信はついておるかどうであろうか、この金融が少いようでありまするならば、金融の道があいておらぬようならば、大してこれは日本の商品界に貢献せぬということになつて来るのでございます。
それから米穀は、もちろん今は統制中でありますから上場する必要はないのでありますけれども、近い将来にむろんわが党の理想といたしましても、統制をはずれることはもちろんであります。そこで米穀の統制がはずれるときが来ますと、この商品取引所の指定品目にするか、あるいは米穀だけは農林省所管の取引所でもつくろうという構想を持つていらつしやるか。過去におきましても、この米穀の所管が商工省——今の通産省、農林省であるとか、ずいぶんこれには相当に深刻な歴史を持つております。ただいま通産当局はそれに対してどういう理想を持つておいでになりますか。必要がないといえばいうものの、しかしこれは遠からずしてやはり指定すべきものであるので、その点はどんなにお考えになつているか、この際御説明を承ることができれば非常に幸いだと思います。以上三点御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/33
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034・首藤新八
○首藤政府委員 第一問の株式組織と会員組織の相違であります。これは申し上げるまでもなく、株式組織の方は取引を実際やる人以外の方の株主をもつて構成しまして、取引はその他の者が取引をする。これが株式組織であります。会員組織の方は、この法案にありまする通りに会員または仲買人によつて組織されるものでありまして、売買の当事者だけが組織するところの法人であります。そこでしからばこの会員と仲買人の相違はどういう点にあるかということになりますが、会員は自己だけの売買をする。たとえばメーカーが自己の消費するだけのものを取引所で買い、あるいはできた商品を取引所に上場するという、自己だけの計算内の取引をするというのを会員と申すのでありますが、仲買人は第三者の委託を受ける、他人の委託を受けて、そうして売買をする、それだけの相違であります。
その次の金融の問題はどうなるかという御質問でありますが、これは御承知の通り会員にいたしましても仲買人にいたしましても、一定の取引に対するところの保証金の基準がきめられております。従つてこの規定に従つた証拠金を取引所に納めまして取引をするのでありまして、いわば資力のある範囲内の取引をする。これ以上の取引をしますれば、この法案に触れることに相なるのでありますから、必ずしも金融問題に対しさような困難が伴うて来るとは考えていないのであります。
米穀を統制の解除後に取引所でどうするかということでありますが、これは農林省の所管でありまするので、農林省の当局から御返答申し上げた方が適当かと存じます。私は過去における米の取引所またその量、さらにまた価格、その他国民生活に及ぼす影響の重大性等を考えた場合に、統制が撤廃されましたならば当然取引所を設立する必要あり、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/34
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035・千賀康治
○千賀農林委員長 第一問の方は、それで大体わかります。
第二問でありますが、仲買人及び会員が保証金を入れただけやる。そういうようなことは私も知つておるのですが、そうしますとその保証金は個人の信用において自分の所持する資産であるとか、あるいは自分が金融機関から融通を受けたその金を保証金に入れて、それだけの範囲で上場ができる、取引ができる、こういうことでありまして、今の社会の通弊は、商品の価格は非常に上つている。これは為替の関係もあつたり、あらゆる事象から原因をされておりまするが、非常に商品の価格が高い。そのためにメーカーにいたしましても、あるいは主要なる取引者にいたしましても、昔のようなストツクを持つことができない。このことはあらゆる方面に深刻でございます。それでありながら、自分の資力に応ずるだけが上場される。それ以外にあまり金融の方法がないということになりますると、せつかく鳴り音を大きくこの商品取引所が開設をされましても、ほんとうに日本の産業を守るに足るだけの数量を取扱うことができないといううらみはぬぐい去ることができないと思います。これは個人に対するものであつても、あるいは特別な金融措置によつて、そこの決済のためには、強力な金融措置ができるということでありますれば、相当に大きな数量の決済の保証もできるのですが、ただ個人によるということだけのただいまの構想ですと、遺憾ながらこれでは非常に小さい取引しかできない。もちろんインフレの今日でありますから、帳面に載せられて来る金額だけは、昔の取引に比べれば相当に大きな金額でありますけれども、商品の暴騰率に比例いたしますと、非常にわずかな数量の取引がカバーされる制度ができるということになるだろうと思います。この点は現在の取引所法の案のみならず、たとえば今米穀の話をいたしましたが、綿糸も米穀もみな同じですけれども、米穀は上場品目ではありませんが、たとえて申しますと、今公団で米穀を扱つております。その公団の役人たちは、おもに昔の米屋であつたのです。ところがその米屋の人々は、相当な額で政府の補償を受けて、公団の役人にかわつた。その補償を受けた額だけは貯蓄しておると仮定いたしましても、当時米が一俵何十円というようなときに補償された人たちが、現在のような何千円ということになつて来ますと、昔自分の商いを政府に買いとられたその補償額をまるまる持つておりましても、今日それを資本にして米屋を始めてみれば、昔の何分の一で、生活を保つに足るだけの取引ができないということになつて参ります。かような点で米が自由取引になつたならば、一体だれが米屋になり得るのだろうかということは、この方面を通ずる一つの問題になつております。ここにありまする綿糸にいたしましても同じであります。たとえば十万錘の紡績会社が一つあるといたしまして、その十万錘の生産量、一年に綿を使う量は、やはり昔の十万錘と同じでありましよう。むしろ今の方か技術が発達したり、いろいろな点で一年の間につぶす綿の量は多くつぶすことができましても、その商品価格というものは、ほとんど千倍というような価値に暴騰いたしております。そこでこの千倍のものを、みんな自己資金によつて取引をするなどということに、なかなか世の中にあり得るものではない。主として融通を受けてやろうということになりますと、取引がほとんど不可能になつて参ります。同時にこれが上場されておるといたしましても、ほんとうに十万錘生産いたしまする工場が、この取引所によつてある安定を得る、またある危險を脱却しようということになりますときに、たとえば二分の一であるとか、あるいは総額であるとか、大きなものを売つたり買つたりすることになつて行くのでありますが、そのときの決済する貸金は、自己にないことはもちろんでありますし、また自己にそんな大きな信用か激増しておるはずもないでしようから、なかなかその必要な貸金に得られません。どこかに大きな資金を援助する機関がなければ、現在の日本の商品界というものは、とても健全にやつて行けるものではないと思つております。せめてこの商品取引所のごときものが、這般の事情によく通じておりまして、いわゆる通り一ぺんの形の取引という以上に、強力な金融上の援助の手が打てるということになりますと、なるほどこれは日本の商品の守り神であるということになりましようけれども、今首藤政務次官の御説明であると、取引は昔ながら取引でありますけれども、現在の日本のインフレ下——野党の諸君などは、ときどきデフレと言いますけれども、それは一時の現象を言うことでありましよう、大体インフレであることは間違いありません。そのインフレ下におきまするところの商品界の発展を、あまり大きく助長することができないのでにないかというような感じを持ちます。決して私はせつかくの光栄ある商品取引所案にけちをつけようとは考えており摂せんけれども、何かこの点についてもつと強力な手が打てないのか、全然お考えしならないのだろうか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/35
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036・首藤新八
○首藤政府委員 原則といたしましては、先ほど申しました通りに、会員あるいは仲買人の性格あるいは商品取引所の性格から考えましても、それは自己の資力、少くともこれは信用を含んだ資力でありますが、そういう建前でやつておるのであります。と同時に、御承知の通り今日までの取引所のない現在における取引におきましては、ここで三箇月分のストツクをしようという場合におきましては、三箇月分の現物を全部買わなければなりません。ところがこの取引所ができますと、三箇月なり六箇月、大体六箇月くらいの先物が上場されることになつておりますので、ごくわずかな金で六箇月分の手当ができる。そうして、限月ごとにそれだけの品物を引取るといたしますれば、そのメーカーの営業に何ら支障を来さない。従つて金融も今日の何分の一という金額で充足されるということにも相なつて参るのであります。従つてこういう面から考えますと、金融上には取引所に上場することによつて非常に便利になつて来る、プラスになつて来るということが申し上げられると思うのであります。さらにまた、今御説のごとく、そういう事態だけでは金融は立たぬじやないかということも、これはごもつともな御説でありますけれども、しかしその点に対しましては、国家経済の全般から見れば、この商品に対しては国家が何らかの特別措置をもつて金融すべきである。これは国家経済にプラスになるというような状態になるときもあるかと存じます。そういう場合にはそういう適切な手をまた打つ必要もある。また同時にこれは全般の問題でなく、個々の商品にとりましても、その当時の情勢が、ある商品の取引所に対して相当金融の援助をしなければならぬという時期もまたなきにしもあらずというふうに考えられますが、これはそのときその場合の情勢に応じて適当な処置をとるのは、これは法文にうたわなくても、政府のとるべき当然の措置だ、こういうふうに考えておるのであります。従つてここに特別の金融を講ずるということをうたわなくとも、必ずしも取引所の機能を阻害するというふうにい考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/36
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037・八木一郎
○八木委員 ただいまの千賀委員の、所管事項のことに関連してちよつと確かめておきたいのでありますが、ここに列記された九品目の商品ですが、この中の農林省所管に属する乾繭、生糸の所管の範囲といいますか、わかつたようでわからないのでありますが、この所管の範囲を明快に聞かしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/37
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038・最上章吉
○最上政府委員 生糸と乾繭の取引所につきましては、農林省の所管でありますことは第百四十八條において明瞭であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/38
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039・八木一郎
○八木委員 認可、許否、登録その他政令、省令いろいろありますが、一切が商品ごとにわかれて行く、こう承知してよいのかどうかということです。たとえば二十五條、四十二條等の資産上の要件というようなことは、商品ごとに政令できめるとあります。ここでは商品ごとにきめるのであるから、何は何というふうにきめる、所管はやはり商品別に一方は農林省令、一方は通産省令できめて行くのかという意味です。またほかにたとえば九十七條の委託手数料というようなこともあります。省令、政令に属するこういう細目はことごとく所管大臣別でよいかどうか、私に別のように承知しておるのだけれども、そこをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/39
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040・石原武夫
○石原(武)政府委員 ただいまの点は商品ごとに所管大臣の異なるのは御説の通りであります。ただ省令あたりをつくります場合に、あるいは共同省令という形の方が、たとえば申請の手続というようなことになりますと、共通の問題もありますので、形としては共同省令を出すということに相なるかと思いますが、考え方としては今御説の通り商品によつて主務大臣がはつきり違う、こういうことでござい出す。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/40
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041・八木一郎
○八木委員 質問の点は了解いたしました。そこで関連して、生糸のごとき世界市場の八割を占めておる世界的国際的な商品作物の行政は、過去の歴史の沿革から見ても、一元的に行くことがよいのじやないかという主張を私は持つておるのであります。それがどうも二元的になつておるために、さしつかえがあるように今まで見ておる。これは行政の都合で、輸出に関する面だけを切り離して通産省の所管になつておる。このことに大した支障はないようでありますが、やはり一貫して農林省にまかした方がよいのじやないか、行政をなさる側の都合がよいのじやないかというように見えるのでありますが、これに対して伺つておきたい。私の主張としては、タバコあるいはタバコ用の巻紙、塩とか、にがりとか、鹹水とかいうものは大蔵省にまかしておる、米麦、飼料、肥料等は農林省にまかせておると同じように、生糸に関する輸出の部面は農林省に持つて行くのがよい。現にここにおられる最上さんは、ニユーヨークの農林省の出張所長をやつておられた、こういうスタツフがそろつておるのに、輸出に関する事務だけが通産省に戰時統制後の形が残つておる。通商が自由になつて来れば来るほど、国際的な世界的な繭に土台を置いた国際商品という意味で、一つにすることの方がよいのじやないか。これは問題外でありますが、通算、農林両当局がおられますから、その点のお考えを率直に聞かしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/41
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042・首藤新八
○首藤政府委員 これは見方の相違による見解でありまして、あるいは農林省だけの面から考えればこういうことも考えられるかとも思いますけれども、国家全体から見て輸出貿易を一元的に通産省が所管しておるということは、農林省の所管だからといつて生糸その他を切り離すよりもさらに効果的じやないか、通産省としてはそういう考え方を持つておるのであります。これは生糸のみならず、その他食料品等にもたくさん例があるのでありまして、現在の段階で、やはり通産省が扱つておる方が全般から見ていいのだという意見を持つております。しかし一応今の御意見は御意見として拜聽しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/42
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043・八木一郎
○八木委員 農林政務次官が見えましたから参考に何つておきたいのですが、今通産次官は食糧のごとくといいますけれども、米麦その他の主要食糧と肥料、飼料に通産省から除いて輸出に関する部門、輸入に関する部門を農林省にやらしておるわけです。それと同じで国際市場の八割までも商品作物として農村に足があるものですから、これは通商の自由の時代にも農林省の所管になつておつた。ですからこれは当然農林省に行く方が万事都合がいいと思うのですが、お立場上さような御主張になることは了承いたしますけれども、内閣委員長にこの間お話して、簡單な一字句入れるだけだから直そうじやないかというお話もありましたから、ちようどおそろいですからお話を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/43
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044・首藤新八
○首藤政府委員 今日のところでは、議題外でありますから、これ以上私は意見を申し上げたくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/44
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045・島村軍次
○島村政府委員 よく勉強しておりませんが、ただいまの御意見は研究いたしまして、通産省とも協議を進めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/45
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046・八木一郎
○八木委員 私は取引所法が本日の問題ですけれども、一応論議せられた結果、これが最善なりということになつて、われわれもこれを支持しておるわけです。商品界における取引所の法律も、單独立法としてこういうことになつて来ておる。この事務も実際は農林省から通産省へ出しておる人間がほとんどやつておるし、実際上は以前の姿にあるのですから、これはひとつこだわりなく解決してもらいたいという希望を付して関連質問を終りますが、私どもとしても真劍にその方へ持つて行つて解決する用意があるということを御了承願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/46
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047・小金義照
○小金委員長 別に御発言はありませんか。——別に御発言もないようでありますから、お諮りいたします。本案に関する連合審査会はこれをもつて終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/47
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048・小金義照
○小金委員長 別に御異議がないようでありますから、本連合審査会はこれをもつて終了いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100804805X00119500725/48
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