1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月二十一日(金曜日)
午後零時十九分開議
出席委員
法務委員会
委員長 安部 俊吾君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
角田 幸吉君 鍛冶 良作君
佐瀬 昌三君 高橋 英吉君
花村 四郎君 牧野 寛索君
松木 弘君 眞鍋 勝君
山口 好一君 吉田 省三君
大西 正男君 石井 繁丸君
猪俣 浩三君 田万 廣文君
上村 進君 梨木作次郎君
世耕 弘一君
運輸委員会
委員長 前田 郁君
大澤嘉平治君 理事 坪内 八郎君
理事 岡村利右衞門君 尾崎 末吉君
片岡伊三郎君 畠山 鶴吉君
黒澤富次郎君 前田 正男君
滿尾 君亮君 山崎 岩男君
淺沼稻次郎君 石野 久男君
委員外の出席者
法務委員会専門
員 村 教三君
法務委員会専門
員 小木 貞一君
運輸委員会専門
員 岩村 勝君
運輸委員会専門
員 堤 正威君
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本日の会議に付した事件
鉄道公安職員の職務に関する法律案の起草に関
する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/0
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001・安部俊吾
○安部委員長 これより法務委員会、運輸委員会連合審査会を開会いたします。
運輸委員長と協議の結果、法務委員長たる私が本連合審査会の委員長たる職務を行います。
本日の議題は鉄道公安職員の職務に関する法律案起草に関する件であります。まず立案の趣旨並びに法案の内容について、鉄道犯罪に関する小委員長田嶋君の御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/1
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002・田嶋好文
○田嶋(好)委員 それでは私より鉄道公安職員の職務に関する法律案につきまして、説明をいたさせていただきます。
この法律案をつくるにつきましては、御承知のように法務委員会におきまして、昨年七月から鉄道犯罪及び治安の調査研究に着手いたしたのでございます。爾来日本国有鉄道公安局から、終戦後における鉄道犯罪の総括的な統計資料の提出及びその説明を求め、あるいは代表的重大鉄道事故及び犯罪に関する詳細な報告を求め、現地出張の際は専門員、調査員をして各地の公安状況を調査せしめまして、今日に至つたわけであります。またアメリカの鉄道警察制度を研究いたしまして、特に新刑事訴訟法上の捜査機構との調和につきまして、慎重を期した次第でございます。また関係各機関の意見を十分に聴取いたしました上、すでに第七国会におきましても、小委員会を設けまして、一度その試案を得た次第でございます。閉会後は継続審査の承認を得まして研究を続け、これまた今日に至つたようなわけでございます。この法案は、本国会において小委員会で試案を作成いたしまして十分研究いたし、細部にわたりまして再度関係方面の意見を聴取いたしました結果、関係方面ともようやく折衝が成立いたしまして、本日これを提出するようになつた次第でございます。
提案理由の説明をさしていただきます。
終戦後、道義の頽廃のため、犯罪の激増は一般的傾向となつているのでありますが、日本経済の動脈たる鉄道に関する犯罪も、昨年は実に四十二万件いとうまことに憂慮すべき状態にあります。なかんずく、多府県にまたがる集団的兇悪犯罪、輸送知識を利用する大規模な悪質知能犯の横行は、終戦後における鉄道犯罪の一大特色となつているのであります。
しかるに、鉄道財産を保護し、輸送の秩序と安全を守る鉄道公安職員の捜査権限は、現行法上単に列車と停車場における現行犯のみに限定されておりますため、その機能をほとんど発揮することができない関係にありますから、ここに鉄道犯罪の特殊な性格に応じ、鉄道公安職員の捜査権限を合理的に調整し、もつて鉄道犯罪及び事故を防止して鉄道治安を確保し、鉄道輸送の機能を十分に発揮し、国家再建の一助たらしめんがため本案を提出するに至つたのであります。
以下、法案の内容を簡単に御説明申し上げますと、第一に、鉄道公安職員は、日本国有鉄道の施設内に発生した犯罪、日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について、非現行犯であつても捜査する権限を有することとしたのであります。第二に、鉄道公安職員の捜査は刑事訴訟法の定める司法警察職員の捜査に関する規定に準じて行うのでありまして、日本国有鉄道の施設外で捜査を行うことはできないのであります。第三に、鉄道公安職員は、先ほども申し上げましたように、たとえば、昨年度についで見ましても四十二万件もの犯罪と取組み、日常兇悪犯と戦つており、重要な墜道、橋梁、発電所を警備するにも空手でこれに当つている現状なのであります。その職務の性質上常に危険にさらされているのでありますから、その職務を行うため小型武器を携帯使用することができるようにいたしたのであります。第四に、鉄道公安職員と警察職員とは互いに協力すべきものといたしました。最後に、鉄道公安職員は、法務総裁と運輸大臣が協議して定める基準に従つて、日本国有鉄道総裁が推薦し、運輸大臣がこれを指名するのでありまして、その捜査に関しては運輸大臣が監督することにいたしました。
以上の通りでございます。何とぞ慎重御審議を賜りますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/2
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003・安部俊吾
○安部委員長 ただいまの説明に対して御質疑はありませんか。―滿尾君亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/3
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004・滿尾君亮
○滿尾委員 ただいまの提案理由並びに法律の案文に対しまして二、三の御質問を申し上げたいと思います。
この法案のアウトラインにつきましては、大体私ども賛成でございますか、同じ鉄道犯罪と申しましても、鉄道が輸送業務を遂行いたしますには、いわゆる営業事故と申しまするか、商売に関連する事故と、列車内の暴行その他秩序を維持する関係の事故と、また列車の運行そのものに危険を及ぼすような施設に対する妨害事故、大体こういうように、三つにわけて考えることができるだろうと思います。従来とも営業事故は非常にたくさんの案件を扱つております関係上、大数の法則によりまして何パーセントかの間違いは免れないものでありまして、将来とも多かつたり少かりたりいたしますが、なくなることはないと思います。ただ敗戦後道義が低下し治安が乱れました関係で、この営業事故も非常に増加しておりましたが、漸次落ちつきを示して、私どもはこれは大体減つて行くものと期待しておるのであります。列車内の暴行その他秩序維持に関する事故でありますが、これは終戦直後初めて発生した特別の現象でありまして、戦争前あるいは戦争中の鉄道にはほとんどなかつたのであります。これも今日はよほどよくなつている。現在は公安官が乗り組んでおりますから、その威力のせいでありましようが、減つて来たのではないかと思う。今回の法律の眼目とせられますところは、最近ふえつつあります外部からの鉄道施設に対する意識的な妨害事故であります。たとえば線路に石を並べるとか、材木を並べるとか、あるいは犬くぎが抜いてあるとか、転轍器をわざとひつくり返しておくとか、これは昔からある程度までは子供のいたずらというような形で出ておつたのであります。子供のいたずらも相当ございますけれども、最近の著しい特徴といたしまして、それ以外に積極的に交通を撹乱いたそうという意図を持つて、何者かが妨害を企てている。これに対して国内の交通を守らねばならぬ。この特殊な必要に基いてこの法案をお考えになつたもと考えるわけであります。かような見地から、私もこの法律が必要と考えますけれども、その見地で考えてみますと、第二条に鉄道公安職員の捜査は、「列車、停車場その他鉄道施設以外の場所においては、行うことができない。」ということになつている。今回の改正は現行法に比べますれば、現行犯から非現行犯までわくが広がつており、よほど大きくはなつておりますけれども、第二条の規定を厳格にいたしますと、今申し上げたような外部から意識的な交通に対する妨害事故に対しまして、非常に大きな制約になる。もちろんこの鉄道公安というような制度は、例外的な制度であつて、どちらかといえば現状並びに近き将来に対する経過的なものだと思いますので、これを無制限に普通の刑事訴訟法に基く捜査機関と同じ権限を持たせることは考えておらぬのでありますけれども、二条のように明確に御制限になりますと、私はその機能発揮の上において非常に障害があるのじやないか。たとえばトンネルに対して、あるいは橋梁に対しまして、計画的な妨害事故があつて、それを捜査するということになりますならば、当然その附近の村落に対してある程度出て行かなければ、地域内においては何らの措置はとれないということになります。従いまして原則として、この地域内に活動を制限することにいたされまして、特殊な場合にはこの地域外に出ることができるというように但書と申しますか、例外的なものをここに一項加えていただいて、弾力性を持たせていただかなければ、この鉄道公安職員の働きが十全を期することができないのじやないか。これはあまりにも明確にはつきりお書きになつておるが、これをちよつとぼかしていただきたい。原則としてはその通りであるが、例外的な場合には活動ができる、こういうふうにもお考え願いたい。
それから第五条は「鉄道公安職員と警察職員とは、その職務に関し、互いに協力しなければならない。」これはもつともなことでありまして、どうしても本職の警察の方に御協力を願わなければならぬのでありますが、この五条、六条と並びまして「公安職員の捜査に関する職務は、運輸大臣が監督する。」これはもちろん運輸大臣が監督しなければ困りますが、私はもう一歩進めて公安職員が捜査上の立場におきましては、本来の捜査機関からの指揮を受けてもいいのじやないか。両方から受けてもいいのじやないか。仕事の面については鉄道公安官が鉄道の専門知識をもつて外部の捜査機関に積極的に出て参りまして、自分の専門的な持味を生かしてその捜査の指揮下に入つて、両方総合した捜査陣がここにでき上る、そうして犯罪を追求するという方が効果的ではないか。これで見ますと運輸大臣だけが監督して、本来の捜査機関の方は鉄道公安職員を指揮監督することはできないように考えられる。これはむしろ私はそういう捜査の職務に関する限り、身分上の監督は運輸大臣に限定いたしたいのでありますが、職務執行に関することはむしろ広げてもいいのじやないか、かように考えるわけであります。
それから武器を持つことができるということにつきましては、今日までそれはあまり必要なかつたのでありますけれども、現在のわが国の置かれている立場からいたしまして、近き将来においてそういう時世が来るかもわかりませんので、これも別に異存はないのでありまして、けつこうであろうと思うのであります。
大体申し上げたいことはさようなことでありますが、ただ一、二字句のことについてお伺いしてみたいのであります。第一条に「国有鉄道の役員又は職員で、」と書いてありますが、この役員というのはどういう場合をさして言つておられるのでありましようか。それからまた鉄道公安職員という名称を使つておられますが、これは職員という名称にした方がいいか、あるいは鉄道公安員といろふうにお考えいただく方がいいか、多少ここに研究の余地がありはしないか、そういう人たちは国家の権力を行使する立場の人たちでありますから、その人たちの気持を察しまして、職の一字をとる方がむしろ感じがいいのじやないかという意見であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/4
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005・田嶋好文
○田嶋(好)委員 ただいまの御意見、御質問、まことにごもつともなことばかりでございまして、実はこの小委員会におきましても、お説のような趣旨によりまして、当初立案を急いだわけでございます。そうしてその趣旨によりまして、いろいろ関係方面にも折衝いたしたのでございますが、御存じのように、原則といたしまして犯罪の捜査、検挙というものは警察官がこれを持つ、その趣旨によつて日本の治安を保つて行くということになつております。鉄道の犯罪なるがゆえに鉄道にまかすということは、この警察制度に対する例外になることでありまして、日本の基本的な警察制度の行き方に例外をつくることになりまして、まことにおもしろくないという感じが多分にあるのであります。ですが先ほども説明申し上げました通り、どうしても現在の鉄道の治安を確保するためには、そうした原則論に基く警察機関の発動によつては、保つことができないということが了承されまして、この法律案が作成され、本日の委員会にかかるようになつた次第でございます。従いましてその原則論から申しますと、今承りましたように、まことに不徹底な点はあるのでございますが、この不徹底な点は、十分に法の精神を生かすと同時に、この衝に当るところの職員諸君の活動によりまして、その欠陥を補つて行くことが現在の状況下におきましては、適当なものではないかと考えておる次第であります。
なお第五条、第六条の点でございますが、これも先ほどの説明の意味におきまして御了承が願えると思うのであります。警察官が捜査検挙においては主体になることでありますから、その両者が協力しなければならないということを設けますことは、むしろ警察官に対するこちらからの要望であらなければならぬと考えるのでございます。
また運輸大臣がこの監督に当るという第六条、これも今申し上げましたような点から御了承願えると思うのでございます。
その他小型の武器の携帯の点も、今御説明申し上げましたようなことによりまして、御了承を願いたいと思います。
それから第一条に役員職員とありますが、その役員については一応専門員から説明していただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/5
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006・小木貞一
○小木専門員 第一条の役員でありますが、現在主たる事務所の日本国有鉄道の公安局長が役員になることもあるというような関係で、これを入れた次第でございます。それから鉄道公安職員といたしましたのは、日本国有鉄道公安職員基本規程いうものがございますので、一応その名称を受継いだということになります。
なお田嶋委員から御説明がございましたが、私から蛇足を加えますならば、第二条の規定でございますが、この規定につきましては、私どもが従来研究いたしておりました原案におきましては、地内から五百メートルの範囲においては行動できるように実は立案しておつたのでございまするが、大体鉄道公安職員が司法警察権と申しますか、犯罪捜査ができるというようなことになりますと、一般の犯罪捜査の権限を持つておりまするところの警察職員との職務の調整、そういう調和の点で非常に問題になりまして、これはどうしてもこういう犯罪捜査の本来の職務を持つてやる場合には、その範囲を狭くしなければならぬという強い要求がございましたので、私どももやむを得ずそこまで引下つたのでございまして、もしこれを十分にその職責を果させるためには、私どもは五百メートルまで出て行くようにしたいと実は思つておつた次第であります。ただいま隧道その他の設例で御質問がありましたが、こういう場合には、これはやはりこの二条の規定によりまして制限を受けますので、第五条によりまして一般の警察職員と協力して、こめ捜査を遂行するということで補うより、これはしかたのないものだと思つております。
それから監督の問題でございますが、これは現在刑事訴訟法で法務総裁、検事総長というものは、一般の司法警察職員あるいは特別警察職員の指揮ができないことになつておりまして、協力ということになつておりますし、それから特殊な事項に限りまして一般の指示権と、それから協力を求めるために一般的な指揮ができるという刑事訴訟法百九十三条の規定がありますので、これによつてこの問題は解決するものと思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/6
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007・滿尾君亮
○滿尾委員 大体警察を本位とする原則の例外であるから、例外的な主張を中心として調整したという御説明ごもつともであります。そのことのうらはらの問題といたしまして、私は鉄道の公安職員に任命される人的要素に対する考え方が、その原則論を補う関係にあるだろうと思います。本来ならば、私どもの率直な意見を申し上げますならば、近代文明国家として鉄道の運行に関して鉄道の特別警察を置かなければならぬ、しかもそれを鉄道の負担において置くというようなことは非常に好ましくない。アメリカに例があり、一番典型的な例は中国にあつた。どうも私どもが中国のまねをするような時世になつたことを非常に残念に思つておる。むしろこういうことが一日も早くなくなるような情勢が来ることを望んでおるわけであります。しかししかたがありませんから、これは当分やつて行かなければならぬ。それにつきましては鉄道職員の中で公安職員に任用いたします者について、相当厳格な資格任用をしたらよい。任用される人が一般の司法警察官吏とあまり相去らない知識―経験は無理でありますが、そういう特別の教育機関を鉄道内部に置きまして、資格を認定した上でこの公安職員をつくりましたならば、いわゆる警察の原則ということとそう矛盾せずに調和して行けるのではないか、そうしてまたある時期になりましたならば、それを本来の司法警察官吏の方に吸収していただいて、その一般司法警察官吏のシステムの中で、いわゆる鉄道部門を担当する特別部門として、これが立つて行けるようになれば非常に仕合せであります。こういうところまで一応考えて、どうしても従来の、ただ鉄道の仕事に練達堪能であるふいうだけの者をただちに公安職員に任命するだけでは足りないと思う。従つてさしあたりの問題は鉄道部内に司法警察官吏の職務を行うに足るだけの教育機関を設けさせて、相当程度の高い者を公表職員にしていただく、そういたしますれば警察一本の原則に対して実質的にあまり矛盾を来さないで行けるのではないか、こういうことをひとつ御研究願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/7
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008・小木貞一
○小木専門員 その点につきましては、従来鉄道に鉄道公安局というものが設けられておりまして、その鉄道公安局のもとに特殊な犯罪捜査、犯罪検挙に対する知識を有する人を採用いたしますように公安官採用規定というものがありまして、この規定によりまして厳選をいたしておる次第であります。なお現在では公安官には三箇月間の専門教育を施しまして、この公安官が特殊な知能と技術をもつて、鉄道の治安に当つておる。これらの人は司法警察官と比較いたしまして、現在では決して遜色のないものとわれわれは認めております。これらの人がこの衝に当るわけでありまして、そのお説に対しましては十分こたえ得る確信を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/8
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009・鍛冶良作
○鍛冶委員 私一、二点お伺いしたいのですが、鉄道財産を保護し、輸送の秩序と安全をはかるためだとすれば、日本国有鉄道に限られた理由はどこにあるのか、ほかの私設鉄道でも相当重要なものがあると思いまするが、それらに対してどういうお考えであるか、まずその点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/9
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010・田嶋好文
○田嶋(好)委員 非常にごもつともなお説でございます。日本国有鉄道のみに限らず、私鉄までもやらすということけつこうでございまするが、現在の日本の経済機構その他国家機関からいたしますと、私鉄、国鉄を合せてこういう制度をつくることはちよつと至難ではないか。やはり国家の機関―今国家の機関とは言えないかもしれませんが、国家機関に準ずる日本国有鉄道等の大機関等においてこれを実施する以外に道がない、かように考えるのであります。私鉄はその範囲も狭うございます。従つてこれは司法警察官によつて十分その治安を守られるものと考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/10
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011・鍛冶良作
○鍛冶委員 そうすると、これはまだ実現せぬことですが、近ごろよく鉄道国有を廃止して民営論ということが行われているのですが、民営になつたら一切いらぬという理論ですか、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/11
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012・田嶋好文
○田嶋(好)委員 かりに日本国有鉄道が民営になりましても、輸送にとりまして日本の国を左右するような大機関である鉄道関係は、もちろん現在の状態をもつていたしますなれば、こうした治安確保の機構は必要なものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/12
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013・鍛冶良作
○鍛冶委員 この点は御考慮を願うことにお願いしておきます。
第二は、今満尾さんからも質問があつたのですが、日本国有鉄道の施設外で捜査を行うことができないという問題ですが、この提案理由を読んでみますると、現行法上単に列車と停車場のみにおける現行犯のみに限定されておりますため、その機能をほとんど発揮することができない、これが最も改正せられる提案理由の眼目だと思いますが、この理由にこう書いておりながら、ここでこれに限定されたら、これをつくられる根本趣旨が消えて行くようで、どうも私にはこの点がふに落ちない。これはころいうことをしても提案理由に書いてあるような目的が達せられるのだといろ根拠がなくてはいかぬと思いますが、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/13
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014・田嶋好文
○田嶋(好)委員 その点専門員から説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/14
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015・小木貞一
○小木専門員 先ほども申し上げましたように、私どもが考えております最初の案では、施設外の五百メートルまでは行けるというように実は考えておつたわけであります。それは一般警察職員との職務の調整ということで強く要望がありましたのでこういうことになつたのであります。経過はそういうふうでございます。ところで現在の司法警察職員等指定応急措置法というので現行法ができているわけでございますが、これではただ汽車と停車場における現行犯だけ、こういうことになつております。この法案では非現行犯に対してもできるということで、非常に広くなつておるという点が一点。しかしそういうことにしても職権を行使する範囲を、こういう施設内に限つたら、骨抜きになりはしないかという御趣旨の御質問でありますが、これはまことに私どもしごくごもつともなことだと思つておりますが、この点は第五条の一般警察職員との協力、あるいは刑訴の百九十三条かの警察官との協力並びに協力による一般指揮、こういうことで補つて行くといろふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/15
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016・鍛冶良作
○鍛冶委員 そういうことも考えられないではないのですが、警察官に協力してもらつて目的を達するというのならば、今でも協力してもらえる。特に鉄道公安官というものを強くしなければならぬということは、今の警察に頼つていかぬという何かがあるからだと思うのですが、どうもそれではちよつと十分納得が行きません。普通一般の犯罪を捜査することのいかないことはもちろんでありますけれども、ここに書いてありますように、鉄道の財産を保護し、輸送の秩序と安全を守るためにするのだから、その範囲ならば出てやつてもよいということは、当然理論づいて来ると思うのですが、しかしその目的のためのみに使う、それ以外は使つてはいけないということでよいのではないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/16
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017・田嶋好文
○田嶋(好)委員 お説の御趣旨は、先ほどもお答え申したように、私たちも賛成でありますが、ただ日本には警察制度によつて日本の治安を守るということが原則になつております関係から、その警察官との限界をどこにきめるかということは、なかなかむずかしい問題であります。たとえば鉄道に一つの犯罪が起る。それが逃走しておるのを目撃したといろ場合が起きたことを想像しますと、こうした場合は目撃しておりますから、現行犯でございますから、ただちに鉄道の範囲外までも追つかけて行つて、それをつかまえることはできるのであります。だからこの法律に支障はありません。ところが非現行犯が起りましたときに、その範囲外に出てまで、その捜査をどんどん進めるということになりますと、どうしても権限の衝突ということがそこに起きて参りまして、かえつてそうすることが治安確保にならないのではないか、むしろ複雑な問題をそこに引起して、治安確保の妨害になるのではないかということも、非現行犯のときには想像されるわけでありますから、現行犯の場合には範囲はございませんので、主としてこの法律は非現行犯の場合に適用される法律と見まして、権限の衝突を来さない、特に治安確保は警察官によつてするという原則論に基きまして、この法律を提案したようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/17
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018・小木貞一
○小木専門員 ちよつと速記をやめていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/18
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019・安部俊吾
○安部委員長 速記をやめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/19
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020・安部俊吾
○安部委員長 速記を始めて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/20
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021・滿尾君亮
○滿尾委員 第二条の字句ですが、今のお話で伺つておかねばならぬという感じを持つたのでありますが、「停車場その他鉄道施設以外の場所」の鉄道施設ということはつまり鉄道の用地内と考えてよろしゆうございますか。その点について御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/21
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022・小木貞一
○小木専門員 この施設と申す言葉は新しい言葉でございますが、大体鉄道の用地と考えてさしつかえないものと考えます。列車と停車場と書いてございますが、そのほかに自動車を含むかどうかという問題でありますが、自動車は含まない。連絡船はどうか、連絡船は汽車がその中に入る場合には、汽車はその範疇に入るからいいが、汽車の入らない連絡船は入らない。それから鉄道の附帯事業として、たとえば鉱山をやつている、あるいはホテルをやつている、こういうものは入らない。こういろ考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/22
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023・滿尾君亮
○滿尾委員 ただいまの御説明によりますると、いわゆる鉄道用地という観念から、よほど狭くなつております。国営自動車は日本鉄道公社の経営するものでありますから、国営自動車の車庫その他の施設のありまする用地は、純粋に鉄道用地であります。ホテルももとより鉄道用地であります。しかしそれらのものを全部除くという今のお話によりますと、鉄道プロパーの施設、その関係用地という意味でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/23
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024・小木貞一
○小木専門員 今最後に御質疑になりました趣旨に実は考えられております。この点も原案には列車、停車場(連絡船及び自動車を含む)こういうふうにしておつたのでございますが、外にあまり出て行つてはいかぬ。そんなことは警察がやつて十分じやないかというようなお話がございまして、こういうことになつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/24
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025・滿尾君亮
○滿尾委員 こまかく考えますと、いろんな事例があるのでございますが、もう一つの一番重大な心配は、鉄道の通信線であります。現段階においてはあまり通信線に対する妨害がないのです。列車を目標にしておりますが、この次の段階においては、あるいは鉄道通信に対する積極的な妨害が出るような場合がないともわかりません。鉄道で通信を切られますと、まつたく機能を失つてしまう。従つて鉄道通信に対する防護ということを考えると、この第二条の鉄道川地というような問題は、非常に困つた問題になつて来る。従つて将来の鉄道施設というものは、レール、隧道、橋梁、車両といつたような、ごく常識的な施設がありますが、それにも増して一番大事なものは通信線である。通信線を切られたらまつたく日本はやみになる。こう私は思うのでありますが、これらに対する考え方は、第二条の関連においてはどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/25
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026・田嶋好文
○田嶋(好)委員 私たちといたしましては、現在の段階においては、この範囲をもつて適当とする。お説のように、なおその方面に対する危険性がある場合には、またそのときはそのときのようなことを考えて行きたい。こう思つたわけでありますが、たとえば具体的に通信線を施設の中に入れるか入れないかということになりますと、鉄道線路に沿うた通信線というものは当然この法案の中に含まれる、こう解釈いたしておるわけであります。お説のような場合には、支障は来さないじやないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/26
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027・鍛冶良作
○鍛冶委員 そろすると、もう一つ聞いておきたいのは、鉄道に関する犯罪の予備行為があつたとしましても、施設以外であれば手をつけることはできないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/27
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028・田嶋好文
○田嶋(好)委員 今のような場合、運輸業務の取締りということになりますと、それはできますが、施設外の場合には、それはできないというように御解釈を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/28
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029・鍛冶良作
○鍛冶委員 通信のことを言われたが、鉄道の動力の源泉である発電所に対して、事が起つても、これも行かれないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/29
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030・小木貞一
○小木専門員 施設というのは非常に新しい言葉で、いろいろ疑義を生ずることと思いますが、輸送自体に関係する財産あるいは輸送にどうしても欠くことのできない財産―先ほど設例の通信施設、それから発電施設は当然入るという解釈のもとに入つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/30
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031・片岡伊三郎
○片岡委員 いろいろ御説があるようですが、小委員会でも相当苦心の結果ここまでできたことと思います。そこで今質疑されておるところの非常事態に対するような計画が行われた場合はどうするか、目的に沿はないではないかという結論になるでありましようが、そうなつた場合は、おそらく日本の慣例によりまして、そういう場合は非常手段で行われるのではないかと常識的にわれわれは考えるのであります。でありますから、大体この法案をわれわれは認めてさしつかえないのではなかろうか。運営のよろしきを得たならば、この目的に沿うような結果が招来するのではなかろうかというふうに考えますので、一応合同審査会におきまして、この辺でこれを認めたらどうか、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/31
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032・安部俊吾
○安部委員長 ただいまの片岡伊三郎君の御意見に異議がないようです。それではほかに御意見も御質疑もないようでありますから、本日の連合審査会はこれで散会いたします。
午後一時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100805216X00119500721/32
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