1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年七月二十四日(月曜日)
午前十時二十九分開議
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議事日程 第七号
昭和二十五年七月二十四日
午前十時開議
第一 地方行政調査委員会議委員の任命に関する件
第二 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案(内閣提出)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/0
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001・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 朗読を省略いたします。諸般の報告は
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002・三木治朗
○副議長(三木治朗君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、地方行政調査委員会議委員の任命に関する件。
去る十三日、内閣総理大臣から地方行政調査委員会議設置法第五條の規定により湯河元威君を地方行政調査委員会議委員に任命することについて本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/2
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003・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本件は同意を與えることに決しました。
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004・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 日程第二、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案(内閣提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。法務委員会理事宮城タマヨ君。
〔宮城タマヨ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/4
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005・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 只今上程されました罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案の委員会におきましての審議の経過並びに結果について御報告申上げます。罹災都市借地借家臨時処理法は、元来戦災都市の急速な復興を図ることを目的といたしまして、戰災都市における借地権等に関して特例を認めた法律でございますが、その後これを改正いたし、第二十五條の二の規定を加えて、戰災のみならず、別に法律で指定した火災、震災、風水言等の災害の場合にも同法を適用して、かかる災害地の復興の促進に資することといたしたものでございます。去る五月十三日、長野県筑摩郡上松町に発生いたしました火災及び去る六月一日秋田県北秋田郡鷹巣町に発生いたしました火災につきましては、罹災地域も相当広く、その区域内の借地面積、借家世帶数も相当多いので、それぞれ地元の府県及び町の要望にも応えて、右の災害につき両町に罹災都市借地借家臨時処理法の規定を適用しようとするのが本法案の趣旨でございます。
委員会におきまして慎重審議いたしましたが、その詳細は速記録によつて御了承願うことにいたします。委員会におきましての討論は省略の上、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました次第でございます。右簡単ながら御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/5
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006・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/6
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007・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
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〔堂森芳夫君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/7
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008・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 堂森芳夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/8
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009・堂森芳夫
○堂森芳夫君 私はこの際、医薬分業に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/9
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010・小川久義
○小川久義君 只今の堂森君の動議に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/10
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011・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 堂森君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/11
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012・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。堂森芳夫君。
〔堂森芳夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/12
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013・堂森芳夫
○堂森芳夫君 私は日本社会党の立場から、広く一般国民が重大な関心を持つており、又直接利害関係を持つております日本医師会或いは薬剤師会に大きなシヨツクを與えておりまするいわゆる医薬分業の問題につきまして、数点を挙げまして、政府特に厚生大臣に対しまして質問をいたしたいと思うのであります。第一に究明いたしたい点は、厚生当局が事新らしく積極的にこの問題を取上げるに至りました経過を詳細にお尋ねしたいのであります。医薬分業の事柄は、すでに八十年前の明治七年に医制が定められまして、医薬分離の原則は確立されましたのであります。更に明治二十二年に至りまして薬律が制定されまして、原則的には薬剤師の調剤投與が規定されておりますが、附則において医師の自家投薬を認めることになつております。その後、長い間、医師会・薬剤師会の両団体が激しく論争を闘わせまして、これは国会内においても大きな論議がされて来たことは御承知の通りであります。昭和二十三年に至りまして医師法の改正が行われまして、いわゆる任意分業、即ち患者の自由意思によりまして、みずから好な方法、即ち投薬は医師又は薬剤師のいずれの側よりこれを受くるも自由となつておるのでありますが、概ねの患者は自由意思によつて、医師による診断並びに投薬という一本化された方法が行われまして、己れの信ずる医師に身命を託するという態度をとつて参つておるのであります。私、全国の各地において、今日問題となつております強制分業、即ち医薬分業に対するいろいろな輿論調査の結果を集めておりますが、その細かい数字は省きまして、石川県の商工会議所において集めました輿論調査の結果の一例を申上げますならば、その九〇%が現在の任意分葉、即ち患者が自由に己れの好む医師、或いは薬剤師から投薬を受くるということを支持するような結果が出ておるのでございます。厚生省は最近診療報酬調査会なるものを設けまして、而も当局の意向は、医師の診断料或いは処置料その他技術報酬を決定して、強制分業の根拠並びに前提とするというふうな意向を漏らしております。而もこれは関係方面の提案によるような意向を漏らしておりまするが、果してかかる提案がいつ如何なる形でなされたのであるか。更にこれは公式なるものであるかどうか。医薬分業の実施は我が国の保健衛生上重大な関係がありまして、医師法、薬事法の根本的改正を必要とする外に、健康保険財政は今日非常な危機に頻しているのでありますが、更に強制分業によつてこの保険財政は全く破綻を来たすことが明らかでございます。元来かくのごとき国民全般に及ぼす重大案件につきましては、国会の調査審議の結果を待つべきにも拘わらず、何ら法的根拠なきところの俄か作りの診療報酬調査会というものに強制分業の基礎前提となるべき診療報酬決定を委ねるがごときは、誠に無謀のことと言わねばならないのであります。我々は断じてこのような態度を首肯できないのでありまして、私はここに、この調査会設立に至りまするまでの詳細なる経過を承わり、いつ如何なる形で関係方面から公式の申出があつたかを承わりたいのであります。第二に質問いたします点は、厚生省当局は如何なる立場から根本的にこの問題に対処せんとしているかということをお伺いしたいのであります。そもそもこの医薬分業の問題はすでに三十年来激しい論争が繰返されております。その論点は、国民医療費の軽減、医療の合理化、医療内容の向上というふうな命題が成る程表面は掲げられておりますけれども、その実、医師会及び薬剤師会の両者が互いに利益分配をめぐつて実に執拗な争いを繰返して来たことは否定できないのであります。政府は利益団体でありまする医師会及び薬剤師会の両団体の利益分配の調整という根拠からではなくして、国民保健衛生の向上充実、更に負担軽減の大きな目標の立場から、真剣にこの問題と取組まねばならんことは当然であります。然るに政府は診療報酬調査会のごとく、この問題を依然として医師と薬剤師との間の利益分配の問題として坂上げておるのでございまして、いわば、ただ両者の分配の争いの調整にのみ努め、問題の本質から甚だしく逸脱しておるということは全く遺憾千万であります。かかる態度は国民生活に切実な関係を持つております重要な問題としての坂上げ方でないことは当然でありまして、特に今日社会保障制度は現実に実践の時期に到達しており、医療の社会化は着々として進展しつつある折柄、この問題と真に真剣に取組むべき時期になつておることは申すまでもありません。單に医療当事者の利益分配調整の観点より出発しておりまする診療報酬調査会のごときは全く時代錯誤と言わねばなりません。かかる機関は即時廃止すべきであると思うが、政府の所見を承わりたいのであります。
第三は、医薬分業の大前提ともいうべき医療制度の現実と、薬事行政或いは製薬事業の実態との間には大きな開きがあるのでありまして、この点、厚生大臣の所見を承わりたいのであります。我が国の医療制度は、社会保険、国立施設或いは保健所の発達など誠に見るべきものがあるのであります。更に着々社会化への途を前進しておるにも拘わらず、製薬事業は全くの野放しで、而も巨大資本を持つておりまする十指にも上らないような製薬資本家は利潤追求の野放し経済のままに放置してあるのであります。我々の概算によりますと、製薬資本家が支拂いますところの広告料、宣伝料は年間数十億を下らないことは明らかなのでありまして、製薬資本家は生産費の数倍、数十倍を越えた値段で大衆に売り付けておるのであります。そもそも国民医療につきまして恰かも車の両輪のごとき関係にあるべき医療と製薬事業が、一方は社会化への途を辿り、一方は全く相反した利潤追求の野放し経済の方向に走つておるということは、誠に矛盾した話であります。今日医師が常に用いますクミチンキ、アルコール、軍曹は戰前の五百倍乃至七百倍に騰貴しております。然るに健康保險の点数は戰前の六十五倍に抑えられておるのでありまして、今日の薬事行政の下では、国民大衆は薬を買うのではなくして、製薬資本家の広告料に大切なお金を支拂つておるというのが現在の実情であります。(拍手)従つて従来殺げられておりまする薬事審議会、製薬資本家を擁護する審議会に対し、これを根本的に改組して、真に医療に従事する医師或いは治療を受けるところの国民の代表を加えまして、薬剤の規格、名称を一本に統一し、権威ある機関によりましてこれを公報し、価格の適正化を図り、優秀品を公正な価格で多量に作ること、かかる方針によつて現在の製薬事業を少数の独占的メーカーの手から民主化された統制に切替えねばならんと思うのであります。(拍手)厚生大臣は如何に考えておられるのでありますか。
私は以上の三点に関しまして、厚生大臣の明確な、詳細な、親切な御答弁を承わりたいと思うのであります。(拍手)
〔国務大臣黒川武雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/13
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014・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 堂森議員にお答えいたします。
我が国におきましては医薬分業はお説の通り永年の懸案事項でございますが、昨年のアメリカ薬剤師協会使節団の報告中に、医薬分業を実現すべきであるという勧告がなされております。それに引続きまして、連合国軍総司令部よりも厚生省に対しこの問題の調査方を指示すると共に、本年初頭、日本医師会、日本歯科医師会及び日本薬剤師協会の三団体に対しまして、医薬分業実施について結論を出すようにという指示があつたのでございます。その後、関係三団体間の協議がまとまらないため、厚生省に王師会並びに学識経験者よりなりまする臨時診療報酬調査会及び臨時抵薬制度調査会の二つの調査会を設け、この問題を調査研究することにいたしました。この二つの調査会におきましては、国民の医療費負担を著しく増大させないこと、医療制度関係者の生活を安定させること、及び医療内容を向上させること等の條件を満たすような医薬分業制度が可能であるか、可能であるならばその実施の具体的方法、法制的措置等を早急に調査しようとするものでございます。政府といたしましては、右調査会の結論を待ちまして、所要の措置を講じ、国会の審議をお願いしたいと考えております。
次に、製薬会社並びに薬事審議会等の件につきましては、十分調査研究の上、御趣旨に副いたいと存じております。(拍手)
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015・栗山良夫
○栗山良夫君 前国会において、電気事業再編成の問題、電源開発の問題、電力料金の問題等につきまして調査研究をいたしまするために、特別委員会が設けられましたが、今期国会におきましても引続き電力問題に関する調査のため、三十名よりなる特別委員会を設置せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/15
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016・鈴木恭一
○鈴木恭一君 只今の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/16
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017・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 只今の栗山良夫君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/17
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018・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて電力問題に関する調査のため、三十名よりなる特別委員会を設置することに決しました。
議長が選任いたしました特別委員の氏名を参事をして朗読いたさせます。
〔海保参事朗読〕
電力問題に関する特別委員
秋山俊一郎君 石坂 豊一君
石原幹市郎君 岡田 信次君
古池 信三君 高橋進太郎君
團 伊能君 中川 以良君
橋本萬右衞門君 江田 三郎君
栗山 良夫君 島 清君
三輪 貞治君 森下 政一君
山田 節男君 吉田 法晴君
尾山 三郎君 加賀 操君
野田 俊作君 溝口 三郎君
山川 良一君 結城 安次君
稻垣平太郎君 小川 久義君
鈴木 強平君 西田 隆男君
東 隆君 佐々木良作君
水橋 藤作君 須藤 五郎君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/18
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019・大隈信幸
○大隈信幸君 私はこの際、在外同胞引揚問題に関する調査のため、二十名よりなる特別委員会を設置せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/19
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020・高橋道男
○高橋道男君 本員は只今の大隈君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/20
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021・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 大隈信幸君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/21
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022・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて在外同胞引揚問題に関する調査のため二十名よりなる特別委員会を設置することに決しました。
議長が選任いたしました特別委員の氏名を参事をして朗読いたさせます。
〔海保参事朗読〕
在外同胞引揚問題に関する特別委員
石川 榮一君 大谷 瑩潤君
草葉 隆圓君 長島 銀藏君
森田 豊壽君 安井 謙君
内村 清次君 河崎 ナツ君
小酒井義男君 曾祢 益君
森崎 隆君 飯島連次郎君
高良 とみ君 杉山 昌作君
鈴木 直人君 木内キヤウ君
紅露 みつ君 千田 正君
堀 眞琴君 兼岩 停一君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/22
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023・三木治朗
○副議長(三木治朗君) この際、日程に追加して、電源開発に対する対日見返資金融資の促進に関する決議案(栗山良夫港外五名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/23
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024・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。
本決議案につきましては栗山良夫君外五名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/24
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025・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。栗山良夫君。
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/25
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026・栗山良夫
○栗山良夫君 只今上程せられました電源開発に対する対日援助見返資金融資の促進に関する決議案につきまして、発議者の一人といたしまして簡單に提案の理由を説明いたします。
先ず決議案を朗読いたします。
電源開発に対する対日援助見返資金融資の促進に関する決議案
わが国の電力事情が産業の再建に重大な支障を與えている事実に鑑み本院は、昨年五月十六日に水力電源関発に関する決議を行つた。政府は、この国民あげての要望に応え昨二十四年度から電力関係に対し重点的に対日援助見返資金の融資を行い、これによつて水力発電所二十六ヶ地点をはじめとして四百九十五件の工事が極めて順調に進捗し、電力安定の前途に光明が與えられた。
然るにこれ等の工事継続のため二十五年度においては約百五十億円の見返り資金の融資を必要とするにもかかわらず第一・四半期分すら融資未確定の有様であつて、このまま推移すれば八月以降は全面的に工事打切りもやむなき窮状に迫られている。かくてはわが国経済安定の基盤を危くするのみならず、未完成施設の放棄及び工事現場収拾のための多額の損失と関連産業を含めて多数の失業者とを生じ、当面の経済界に混乱を招くことは必至である。
政府においては電源開発の重要性を改めて自覚し、工事遂行に支障を與えないよう見返資金の融資促進につき必要な措置を講ずることを要求する。
右決議する。
決議案の趣旨といたしまするところは案文によりまして凡そ明らかなところでありまするが、皆様の御了解を深めまするために少しく敷衍して御説明をいたしたいと思うのであります。
昨年以来は電力の不足も解消したかの感があるのでありまするが、その蔭に電力設備の改良整備、十数年振りと言われるところの河川の豊水と、経済界、産業界の不振等によりまするところのかりそめの安定状態でありまして、根本的な電力安定を得た結果でない事実を先ず私共が深く了解しなければならないのであります。天然的な現象でありまするところのこの異常豊水は何時失われるものでありますか誰も保証できないのであります。政府の施策である火力料金制度の重圧が生産や国民生活に大きな影響を與えておりますことは、前国会においてつぶさに討議せられた通りであります。我が国生産の復興が漸くその緒についたばかりの現在、而も金詰りと有効需要の減退に悩む昨今におきまして、辛うじて安定を保つております電力の需給が、一旦渇水や産業の隆昌に見舞われましたときには、如何ような状態に陥りますかは極めて明瞭であります。産業設備の拡充に比しまして著しく長期を要する電源拡充は、到底電力の需用の増加に応ずることができませず、大きな混乱を巻き起しますることは火を見るより明らかであります。かような事態を憂えまして、電力安定の根本策といたしまして、本院におきましては、昨年五月十六日に水力電源開発に関する決議が採択されたのであります。幸いにいたしましてその翌月には関係方面より電源開発工事の認証が與えられ、最大の難点でありました資金につきましても、昨年十二月以降三月までに九十八億円の見返資金融資が行われたのであります。これによりまして、全国に亘り、水力発電所二十六ヶ地点、火力発電所七ヶ所、その他書電線、変電所等多数の工事が起工せられまして、国民に多くの希望を與えて参つたのであります。多数の工事の中には、年度を区切つて竣工して行くものもありまするが、最も重要工事である水力電源の開発は、二年、三年或いは更に長期を要しまして、第二年度に当る今年度は、工事現場におけるところの土建工事にいたしましても、工場における機械器具の製作にいたしましても、活況を呈するときでありまして、従つて資金需要も多額に上り、且つ旺盛であるのであります。特に夏季渇水期は、河川を締切り、ダムの基礎工事を行う好期として、工事の進展上最も大切な時期なのであります。九月の出水期前にこの締切り工事が完了できるか否かは、工程においても平年又は一年の遅延を来たすか否かの分岐点と相成るのであります。かように、年度的に見ましても、季節的に見ましても、開発工事に対して重要な時期に際し、新聞紙上にて散見いたしまするがごとく、電源開発に対する見返資金の融資が停止せられますることは、私共の最も遺憾とするところであります。工事継続のために本年度は見返資金約百五十億円を要するのでありますが、私共の調査によりますると、現在までに本年度見返資金は第一四半期分さえ融資されていないのであります。僅かに只今は前年度の繰越金及び各業者の自己資金によりまして工事を辛うじて繋いでおりまするが、工事継続を更にいたすといたしましても、あと一ヶ月を持たない状態にあるのであります。万一見返資金がこのまま停止される場合におきましては、前述のごとく工事の重要な時期を逸するのみに止まらず、電力安定、延いては我が国経済復興の希望が失われ、設備の未完成により、すでに投資された資金の大部分が無価値となり、工事打切りに伴う危險防止のための応急工事や、工事契約破棄に伴うところの補償、或いは失業労務者に対する帰国手当等、無益の出費を要し、見返資金融資の本来の趣旨とは凡そ反対の結果となるのであります。若しそれ、見返資金の使用法につきまして問題があるといたしまするならば、それはそれぞれ適当に調整すべき方途がおのずからあるのであります。
政府におきましてはこれらの事情を勘案し、本来の目的たる電源開発に支障を與えないよう至急万全の措置を講ずることを要求するものであります。以上が提案趣旨の大要でございます。
電源開発工事は現に全国的に進行中であり、見返資金の融資停止がこのまま続きますならば、やがては国民の身近な問題として差迫つて来ることをお考え頂きまして、是非とも本決議案に各位の御賛同をお願いいたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/26
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027・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/27
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028・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本決議案は可決せられました。
只今の決議に対し通商産業大臣より発言を求められました。横尾通商産業大臣。
〔国務大臣横尾龍君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/28
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029・横尾龍
○国務大臣(横尾龍君) 只今御決議になりました電源開発の問題の決議に対し、政府の所信を披瀝したいと考えます。
政府におきましては、電力不足の現状を打開し、我が国の産業界の再建を図るために、電源開発を強力に推進することとし、昨二十四年度において水カ二十六ヶ所、三十五万七千キロワツト、火力七ヶ所、二十三万キロワツトの建設工事に対し、約百億の対日援助見返資金の融資を仰いだのでございます。これらの工事はいずれも順調に進捗し、一部発電所がすでに完成を見た状況でございます。本年度において、これら継続工事の進捗を図る外、更に将来の需用増加を考慮し、新規工事として約二十方キロワツトの開発を行うべく、これが資金として見返資金から約百五十億円の融資を仰がんとするものでございます。電力開発を促進し、殊に継続事業の順調な施行を図る必要があるので、政府におきましては、本件見返資金の融資の促進について、夙に関係方面と折衝して来たのでありまするが、電力事業の再編成法案の取扱と関連いたしまして、未だ関係方面の了解を得ることを得ないのでございます。政府といたしましては、一方において懸案の電気事業再編成の促進を図ると共に、電源開発に対する対日援助見返資金の融資の早期実現に関し更に一層の努力を傾注し、当院の決議に応じたい所存でございます。さよう御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/29
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030・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十一分散会
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○本日の会議に付した事件
一、日程第一 地方行政調査委員会議委員の任命に関する件
一、日程第二 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案
一、医薬分業に関する緊急質問
一、電力問題に関する特別委員会設置の件
一、在外同胞引揚問題に関する特別委員会設置の件
一、電源開発に対する対円援助見返資金融資の促進に関する決議案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100815254X00819500724/30
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