1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月十九日
午前十一時三十七分開議
出席委員
委員長 圖司 安正君
理事 多田 勇君 理事 竹山祐太郎君
岩川 與助君 寺本 齋君
奈良 治二君 細田 榮藏君
宮原幸三郎君 村上 清治君
森 曉君 有田 喜一君
笹山茂太郎君 森山 欽司君
出席国務大臣
国 務 大 臣 周東 英雄君
出席政府委員
経済安定事務官
(総裁官房長) 平井富三郎君
経済安定事務官
(産業局長) 増岡 尚士君
経済安定事務官
(産業局次長) 前谷 重夫君
委員外の出席者
專 門 員 圓地與四松君
專 門 員 菅田清治郎君
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本日の会議に付した事件
臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(
内閣提出第一一二号)
事業者団体法改正に関する件
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001・圖司安正
○圖司委員長 ただいまより会議を開きます。
これより内閣提出第一一二号、臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案の討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。寺本齋君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/1
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002・寺本齋
○寺本委員 私は自由党を代表いたしまして、本改正案に賛成の意見を申し上げます。
従来わが党といたしましては、戰時中からの各種の経済統制は、できるだけすみやかに解除する方針でありまして、需給の緩和した物資については、すでに多くの統制解除を行つて来たのであります。また單に需給の緩和した場合のみならず、統制を解除することによつてかえつて生産能率を上げ、需給の適正化が達成される場合には、進んで統制の解除を断行すべきでありましてこの方針は今後も大いに促進したければならないと信ずるものであります。しかしながら本法によつて配給統制をされている物資の中には、今にわかに統制の廃止を行うことの困難なものがありまして、全面解除を今行うことのできない事情もありますので、四月一日に失効いたしまする本法の効力をなお一箇年延長することは、まことに適当であると考える次第であります。世界経済を離れて生存し得ないわが国民経済の立場は、最近の国際情勢の緊迫のために至大の影響を免れないのであります。従つて今後の物資の需給事情に相当の変化の生ずることも予期せざるを得ないのみならず、近く講和を控えて自立経済の確保が緊争を要するのでありますから、この内外の経済情勢の推移に即応対処するためには、本法の有効期間をなお一箇年間延長するのは当然であります。しかしその際、本法の條項中すでに不必要になつたもの、また不適当なものについては、これを改廃すべきでありまして、今回本法に基いて主務大臣の権限を縮小して、円滑なる運用をはかるよう改正されましたことは、まことに適当な措置であると思うのであります。
なお今回の改正にあたつて特に物資需給調整審議会を設置することとして、従来の一方的な官庁統制の弊害を除去するために、広く民間の学識経験者の意見も求められることにされたことは、本法の民主的な運営に資する上に、まことに適当であると考える次第であります。しかしこの審議会は諮問機関であるために、民間の意見の徹底にはなお足りないものもあり、また審議会の委員の人選において適当を欠くならば、かえつて弊害を生ずるおそれが多分にあるのでありますから、政府当局は特にこの点に留意をされて、万遺憾なきを期せられんことを希望いたしまして、本案に賛成いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/2
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003・圖司安正
○圖司委員長 森山欽司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/3
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004・森山欽司
○森山委員 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案に関しまして、民主党を代表して討論をいたします。
議題となつた本案の内容のうち、期限を一年間延長する点については、われわれは何ら異存はないのであります。しかしながら現在この法規の内容に盛られている自由党の経済政策自体については、われわれははなはだ疑念があるのであります。最近の自由党の政策は、統制撤廃、解除の一途をたどつておるのであります。しかしながら世界経済の動向を見ますならば、特に日本と最も深い関係を持つておりますアメリカの動向等を見ますと、むしろ大勢は逆でありまして、価格面におきましても、あるいはまた割当あるいは配給等の面においても、統制への方向をたどつておるわけであります。世界の経済政策の大勢というものが、東から西に流れておるとするならば、わが国の経済政策の大勢が、西から東に流れておるがごとき感をわれわれは受けざるを得ないのでありまして、私はその意味においてこの法案の内容たる、現在の政府の経済施策そのものが、近い将来において大きな修正を受けるであろう、これは今後の歴史が証明するであろうと思うのでございます。しかしながらともかくこの法案自体といたしましては、これを一年間延長するということについては、われわれは何ら異議をさしはさむものではございません。ただこの法案の中で、物資需給調整審議会なるものを設けているのでございますが、その趣旨は、要するに当初いわゆる自治統制によつてこれを行おうとしたのでありますけれども、事業者団体法等の関係上それを行い得なくなつて、そしてその精神が物資需給調整審議会なる形において現われたのであろうと思うのであります。しかし統制関係においてかかる審議会を設けることは、きわめて危險でございます。かつて物価統制令に基きまして、物価審議会なるものが設けられ、その物価審議会の人選は相当愼重にいたしたにもかかわらず、結果においては非常な弊害が伴つて、統制の機密が事前に漏れるがごとき事例があつたことは事実でございます。そういう点から、物価統制令中でこの物価審議会の條項を削除された経験をわれわれは持つている。しかるにこの際新たに物資需給調整審議会なるものを設けようとすることは、過去においてのわれわれの経験にかんがみまして、これはむしろ好ましからざるものであるとすら考えざるを得ないのでございます。交際において今後物資需給調整審議会が設けられ、いかなる役割を果すかということについては、われわれはその観点から愼重に、嚴重に監視せざるを得ないのでございます。われわれは、この審議会の設置については多大の疑念を持つているのでございます。あえてわれわれのみならず、前会の本法案の審議の課程におきましても、社会党はもとより、自自党からも、この審議会がそういう問題をはらんでいることが強く指摘されたのでございましてわれわれはでき得べくんばこの條文をむしろ削除修正したいとすら考えているのでございますが、せつかくここに政府が御提案なされましたので、私どもといたしましては、この審議会の人選並びに運営について、過去の物価審議会その他統制法上に声ける審議会のわれわれの苦い経験にかんがみまして、愼重を期せられたいという、強い希望條件を付しましてこの法案に賛成いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/4
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005・圖司安正
○圖司委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより本案に対する採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/5
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006・圖司安正
○圖司委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決されました。
なお本案に対する委員長報告書その他の取扱いについては、委員長に御一任願いたいと存じます。
この際周東国務大臣より発言を求められております。これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/6
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007・周東英雄
○周東国務大臣 臨時物資需給調整法の改正につきまして、熱心に御審議をいただきまして、合日委員会を通過させてい介だきましたことにつきましては感謝する次第であります。審議の過程において出ました御意見等につきましては、これが運用にあたりまして十分に考慮に入れまして、万全を期したいと考えております。一言お礼を申し上げます。
なおこの際申し上げておきたいことは、かねがね政府は、国民生活に関係の深い食糧事情の改善について努めて参りましたし、今後におきましても、いろいろ経済の情勢の変化がありましても、国民生活の維持安定に対し、食糧、衣料について量的の確保並びに価格等については、あらゆる施策をいたしまして万全を期する所存でありますが、さきに衣料品の中心である綿製品の原料たる綿花の輸入の見通しと、綿糸生産増加の趨勢とにかんがみまして、従来内需用の綿布として月々三万七千五百梱でありましたが、今後の情勢にかんがみましてこれが増加に努めて行きたいということをかねがね計画し、申しておりましたが、今日政府の考え方を取入れられまして許可が出ましたから、この際参考に申し上げたいと思います。とりあえず一月—三月の期間におきましては、従来四千五百万ポンドでありましたが、これを追加割当として一月—三月分六百万ポンドが増加されました。合計五千百万ポンドになるわけであります。これは従来月三万梱余りですから、今度これが一月—三月四万八百梱余りになるわけであります。さらに四月—六月の期につきましては、私どもの要求の通り、毎月五万梱づつ六月まで出すことを認められました。七月以降はその後の情勢によつてさらに相談する、こういうかつこうになつております。一言御参考に申し上げる次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/7
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008・圖司安正
○圖司委員長 引続き事業者団体法に関する小委員長報告を、多田勇君より聽取いたすことにいたします。多田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/8
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009・多田勇
○多田委員 第十国会における事業者団体法に関する小委員会の経過を御報告申し上げます。
去る十二月十日の本委員会において、多山勇を小委員長とし、奈良治二君、村上清治君、森山欽司君、山崎敏君の緒委員を小委員とする事業者団体法に関する小委員会が、前国会に引続いて設置せられ、その後さらに永井英修、志田義信、細田榮藏の三委員が追加せられて、事業者団体法の改正問題について審議をいたして参りました。
小委員会は、諸般の情勢に考慮を加えながら成案の作成に努めて参りましたが、成案を決定する前に、関係筋の意向を、参酌するため、去る十二月二十六日、総司令部経済科学局反トラスト課に、ジリース課長をたずねて懇談いたしました。その結果、同課長より独禁法及び事業者団体法は正しいものだと思うが、ものには例外もあることだから、例外を裏づける合理的な理由があり、それ以外に解決の方法がなければ例外もやむを得ない。ただそれがやむを得ないかどうかを決定することは非常にシリアスである、との見解を示されました。これによつて事業者団体法の改正に対する新しい希望を與えられましたので、新年に入つて、個々のケースについてあらためて具体的に検討を加える約束をいたして参りました。
その後臨時物資需給調整法、物価統制令に関する政府当局の諸折衝の進行ともにらみ合せるために、事業者団体法に関する交渉はしばらく見送りのままとし、ひたすら成案の完成を急いで参りました。その結果小委員長試案を得ましたので、これについて関係官庁並びに事業者団体側の意見を聽取いたしました。
官庁側からは、二月二十三日の小委員会において、外資委員会、通産省企業局、同通商局、同中小企業庁、農林省、食糧庁、安定本部産業局等の意見を聽取いたしましたが、その概要は次の通りでありました。
外資委員会の意見といたしましては、木試案には賛成である。ただ再考慮を希望したい点は、第五條の第二号及び第九号の再緩和または削除をお願いしたいことである。この点は、外国会社と日本会社とが共同で特許権を利用する場合、現在は各個に特許権を利用し、二重に権利金をとられているので、これを共同でできるようにしてもらいたいことであります。さらに団体法の改正にあわせて独禁法の改正も並行できればけつこうであるということでありました。
〔委員長退席、岩川委員長代理着席〕
通産省調査課の意見といたしましては、輸出についての取引に限定すべきであるが、貿易組合法について、独禁法第四條関係の緩和と、団体法第五條第一項第二号をさらに緩和してもらいたい。この試案では、貿易上の共同行為については改正が不十分であるから、独禁法の緩和とともに再考慮を願いたいということでありました。
同じく通産省企業局企業第一課の意見といたしましては、改正試案には異存はないが、第二條の書き方の点で問題が残つていると思われるから、会社及び共同企業は全部明文ではずしてもらいたい。また第五條第一項第二号の書き方についても検討が願いたいし、第七号の強要することの意味も明瞭になるようにしてもらいたい。さらに第九條第一項後段の読みかえ規定は、削除してはいけないのではないかという点について問題の提出がありました。
同じく通産省中小企業庁協同組合課の意見といたしましては、団体法第六條に規定してある独禁法第二十四條各号に掲げる要件を備える必要がある点を団体法からとりはずして、中小企業等協同組合を事業者団体法の適用から除外して、独禁法の法益侵害の場合だけについて、当該組合が小規模事業者の構成体であるかどうかを問題にするようにしてもらいたい。すなわち協同組合が組合員数をいくらゆるめても、団体法で縛られているのでは何もできないから、協同組合の名で大きなものが何かやる場合だけを押えるように改めてもらいたいということでありました。
農林本省並びに食糧庁側の意見といたしましては、第五條第一項のあとに、独禁法第四條第二項のような形で緩和規定を入れてもらいたいこと、さらに第五條の改正はこの程度でも大いに助かるが、もつと大幅に事業ができるように改正してもらいたいこと、及び第六條の第一項第一号と二号を一本建にする場合には、冒頭の字句に留意しないと、他の号で落ちるものが出て来るとの注意がありました。
経済安定本部側の意見といたしましては、改正試案に賛成であるとのことでありました。
以上が官庁側の意見でありました。
次に三月二日の事業者団体側の意見を申し上げますと、まず日本産業協議会の意見といたしましては、団体法は完全な廃止がよい。もし廃止できねば独禁法と同程度の内容としてほしい、この改正試案には賛成だが、各條について次のように改めてもらいたいとの意見でありました。すなわち第二條では、少くとも事業者の構成する会社その他の共同企業を除外すること。第四條は全文削除すること。第五條は第一項第一号から第四号までは恒久立法として改正を考慮する場合は削除し、当面の必要のためには物調法の改正により、適用除外を行うこと。第五号は物調法の改正によつて、臨時の必要に応じ適用を排除できるようにすること。第六号は特定業者の事業内容、経理等を誤り伝える情報の流布のみを禁ずること。第七号は「助言」の削除と臨時的には物調法の改正により適用の除外をすること。第八号は同様適用の除外をすること。第九号、第十号、第十二号を削除すること。第十二号は必要に応じ、物調法改正等によつて適用を除外すること。第十三号は削除のこと。第十四号は削除または輸出組合法等を設けて、適用を除外すること。第十五号、第十六号、十七号は削除のこと、第十八号は入札に参加して不当にこれを規制し、または不当な影響を與えることだけに限ること等でありました。
日本石炭工業会の意見といたしましては、安定性を維持するために、共同生産ができるように強制をする法規を設けてもらいたい。また共同販売所を地域的に設けるよう強制する法規を設けてほしい。独禁法第四條第二項の緩和規定だけでは、中小炭鉱すら困るのであるから、さらに緩和ができるような規定に改正してもらいたいということでありました。
日本繊維協議会の意見といたしましては、団体法にしばられて活動のできない現状から解放してもらいたいから、団体法はむしろ廃止してもらいたいということでありました。
日本貿易会の意見といたしましては、輸出についてはダンピング防止の必要があり、そのために米国のようにウエツプ・ポメリン法のような統制をする必要があるのに、団体法のためにそれができないから、せめて価格統制ができるようにしてほしい。さらに輸入については、相当困難ではあるが、めくら貿易を避けるためにも、買付団体を一つにまとめる必要があるが、団体法でそれができない。つまり団体法は輸出入ともにじやまであり、ことに検査機関を設けるのに妨げをなしているとのことでありました。
最後に経済同友会の意見といたしましては、産業民主化のためには、予防的禁止規定を廃止して合理化ができるようにしてもらいたいので、届出制度だけを残して、団体法は廃止すべきである。また独禁法の適用は、日本経済の特殊性を考慮して、適用除外規定をつくるべきである。また緊急事態に対処する場合には、適用規定の廃止、あるいは緩和が必要であるという意見が述べられました。
さらに文書をもつて提出せられました日本化学工業協会の意見を申し上げますと、第二條については、共通の利益を増進することをおもな目的とする二以上の継続的な事業者の結合体に改め、第一号中の「会社」並びに第二号中の「財団法人」を削除すること。第四條については全面的に削除すること。第五條については、第一号の政府原案の作成は事前届出行為として許し、第二号については独禁法第四條第二項の條文を但書として付加し、第三号は予備予防事項を削除し、第四号は不当の場合のみを禁じ、第六号は不当な方法で特定事業者に不利益を與える行為以外は認めることとし、第七号では監査することだけを禁じ、第八号では独禁法第四條第二項の條文を但書に付加し、第九号、第十二号、第十五号の行為は事前届出制によつて許容することとし、第十号は削除し、第十一号の行為は事前届出制によりこれを許し、第十六号は削除するようにしてもらいたいとの要望でありました。
以上が事業者団体側の意見でありました。
小委員会におきましては、これら各方面の意見を検討した上、小委員長試案に再考を加えました結果、次のごとき結論を得ましたので、ここに小委員会の決定案を御報告申上げます。
先ほどお手元に配付いたしました事業者団体法の一部を改正する法律案が、小委員会において決定いたしました報告案であります。
これより小委員会の決定案を作成いたしました際の一般的方針並びに改正案の内容要旨について、一応御報告を申し上げておきたいと存じます。
すでに御承知の通り、事業者団体法の改正にあたりましては、広く全国にわたり各方面の意見と要望を聞き、さらに官庁方面の要請をも具体的聽取いたしました上で成案に着手いたして参りましたことは、その都度、中間報告で申上げて参りました通りでありますが、それに加えて、事業者団体法が独禁法の補完立法として生れねばならなかつた諸事情並びにその後の客観事情の変化、必要及び日本の持つ特殊事情等、日本が背負つている種々相と、日本をとりまく諸相に愼重な考慮を払いながら検討を続けて参つたのであります。その結果、事業者団体法の改正案を作成するにあたりましては、独禁法の掲げる第一條の目的をかたく守りながら、しかも特殊の負担をになつている日本の産業経済が、合理的に、健全に、活発な事業活動を遂行できるようにとの建前を、決して失わないようにすることこそ、日本経済民主化達成のためにも必要な出発点であるとの見地に立つて、問題を進めて参つたのであります。従つてこの建前に基いて現行事業者団体法を、具体的にいかに改正するかを問題として取上げ、次のような基本方針のもとに改正案を具体化して参りました。
すなわち第一には、現行の事業者団体法は、法の体系の上にも、形式の上にも、幾多の不備な点を持つているのでありますが、このたびの改正にあたりましては、実質的に必要な点だけを改正することにいたしました。
第二には、現行の事業者団体法の対象となつている団体は、本来の事業者団体だけでなく、広汎に営利事業体をも包含しておりますので、対象を同業組合や産業団体等、本来の事業者団体に、できるだけ限定するように努めることにいたしました。
第三には、現行事業者団体法の広汎にして全面的な届出制度を緩和し、第六條の適用除外団体に対しましては、届出の義務を廃止することにいたしました。
第四には、現行事業者団体法に示されている活動規制は嚴格に規定されておりますので、その内容を独禁法と同一程度にまで緩和するとともに、予備、予防的段階にある行為は、これを禁止行為としないことにいたしました。これを具体的に申し上げますと、現行事業者団体法第四條の規定は許容される活動を限定的に列挙いたしておりますので、これを例示事項として第五條の禁止行為との間に中間領域のないように改め、その範囲を拡大することといたしました。さらに第五條に規定いたしております禁止行為の規定中、独禁法の保護法益と直接の関係を持たず、従つて独禁法の秩序に対する侵害行為と認められない第九号以下の無色の行為に対しましては、形式的に、画一的に禁止を規定いたしておりますので、これを改廃整理して、独禁法の秩序にも反せず、不当でない限りこれを認めることといたしました。
第五には、事業者団体法第六條に規定いたしております適用除外団体は整理して、清算中のもの、あるいは適用団体の解消したもの、法律の廃止されたもの等を本法より取除くことにいたしました。
第六には、以上のような建前で整理を行いましたので、これに伴つて起つて参りました関係條項の改正をいたしました。
以上がお手元に配付いたしました事業者団体法の一部を改正する法律案の改正にあたつてとりました基本方針でありますが、さらに進んで改正案の内容について、御理解に役立てるために、簡單にその要旨を申上げておきたいと存じます。
まず現行事業者団体法の第一條の目的に対しましては、本改正案は何ら触れていないのでありますが、第二條の定義を規定いたしております條文におきましては、現行法において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを目的に含む二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、」と定義を規定しておりますが、本改正案におきましては、このうち、「目的に含む」の字句を「主たる目的とする」と改正いたしました。この点は、従来からも独禁法の補完立法として、事業者の違法な共同行為の場としての事業者団体の活動を規制することを目的としている現行事業者団体法の概念規定が、あまりにも包括的であり過ぎるために、実際にはかえつて事業者団体の範囲が不明確で、本来事業者団体でないものまでがその範囲に含まれる可能性を持つとされて参つたのであります。そこで、本改正案におきましては、この点を「主たる目的とする」ということに改めて、従来の包括的であつた概念規定を限定して、本法に対する不必要な懸念を解消せしめるとともに、その懸念から来る産業活動の萎縮を救うことといたしたのであります。
次に現行法第四條の許容活動條項は、許容される活動を限定的に列挙いたしているのでありますが、この点は本法が初めて国会に提案されました当時以来、現行法第五條の禁止行為條項と、再建の建前で二重に産業活動を抑止するものであると指摘されて参つたのであります。従つて本條の削除を要請する声はまことに強いものでありますが、本改正案におきましては、この許容活動條項を例示事項に置きかへることによつて、第四條と第五條との再建による禁止的性格を取除くことにいたしました。すなわち第四條第一項の「事業者団体は、左に掲げる活動に限り、これを行うことができる。」という條項から、限定字句を削除いたしまして「左に掲げる活動を行うことができる。」と改めたいのであります。さらに第一項の各号については、第三号において括弧内に規定されております「第五條第三項の規定により、自然科学の研究を実施するための施設を所有し、又は経営することの認可を受けた場合において、」の字句は、本改正案においては、第五條第一項第十号の、自然科学に関する施設の所有並びに経営についての條項が削除され、さらにそれに伴つて同條第三項の認可規定も削除されましたので、これを「自然科学の研究を実施するため」というように改めました。
次に第四條第四号について申し上げますと、現行法の限定規定においては意味を持つておりますが、例示となつてはその必要のない「のみ」という限定を現わす文字を削除したことであります。そのほかに「工業標準調査会」が「日本工業標準調査会」とかわりましたので、この点もそのように改めておきました。
次に第四條第十号について申し上げますと、現行法では、「前各号に掲げるものの外、公正取引委員会の認可した行為。」が許容されておりましたが、第四條が例示事項となり、公正取引委員会の認可を必要としなくなりましたので、独禁法と改正事業者団体法第五條の禁止行為に違反しない限り、当該事業者団体の目的を達成するために必要な行為は、これを認めて例示した次第であります。
次に、第四條の第二項並びに第三項について申し上げますと、これらの二項は、現行法第四條第十号の規定に基いて、公正取引委員会が認可をする場合の関係規定でありますから、第十号の認可を必要としなくなつた改正案においては、当然に削除さるべきものとして取除いたのであります。
次に、第五條の禁止行為の條項について申し上げます。現行事業者団体法の第五條第一項第一号におきましては、独禁法の第四條第一項、第二項及び第五條の規定を補完して事業者団体による生産もしくは配分の統制行為を禁止しているだけでなく、それに伴つて事業者団体が「原材料、製品若しくは施設の割当に関する原案若しくは計画を政府のために作成し、又はこれを政府に提出すること。」によつて、政府統制の補助行為をなすことをも禁じ、経済統制の必要ある場合には、政府みずからの手で行えとの原則を示しているのであります。この條項は、戰時の統制団体除去政策を遂行するために特筆された性格面を強く現わしているのでありますが、その後大きな変化を示しつつある今日の情勢においては、むしろカルテル統制の禁止規定としての性格面を強く現わしているものといえるのであります。そこで、本号後段の、政府のために統制団体が補助的行為をすることは、一九四八年二月十六日付連合国最高司令部発、日本政府あて覚書「統制団体除去政策についての解釈及実施に関する件」によつて禁止されているのでありますが、その処置は一応終つている現状でありますので、本号後段の規定は、これを削除することにいたしました。しかも、事業者団体が「割当原案若しくは計画」を政府のために作成したり、提出したりしても、その取捨は、一にかかつて政府の裁量にかかることでありますし、団体のやり方に強制的な点や、統制的な点や、不公平があれば、他の條項によつて取締れるのでありますから、政府の処置にまかした方が妥当であるとの建前から、第一号の後段を削除し、前段において、独禁法の線と一致させることにいたしたのであります。
次に、現行第二号の規定について申し上げますと、本号は、事業者団体が、事業者の当然に不当な取引制限と認められる特定の共同行為の禁止を規定した、独禁法第四條第一項を内容とする協定もしくは契約及び独禁法第六條の国際的協定または貿易協定の当事者となることを禁止した、いわゆるカルテル行為の禁止に関する條項であります。本号において、現行法と記述の方法をかえましたのは、昭和二十四年法律第三十四号による独禁法の改正の際に、独禁法第六條第一項から「事業活動に必要な科学または技術に関する智識又は情報の交換を制限すること」の條文が削除されましたので、第四條第一項各号と、第六條第一項各号を併記する意味を失つた点に考慮を加えて、字句の整備をいたした結果であります。
さらに、本号に「但し、一定の取引分野における競争に対する当該協定又は契約の影響が問題とする程度に至らないものである場合はこの限りではない。」との但書をつけましたのは、本号の規定を独禁法と同一の線まで緩和しようとするもので、現行独禁法第四條第二項の規定を本号の規定の但書としたにすぎないのであります。従つて、本改正案は、現行法の禁止内容を、独禁法第四條と同様程度にまで緩和しようとするものにほかならないのであります。
次に、現行第三号の規定について申し上げますと、本号は、事業者団体が、その構成事業者の取引関係を不当に拘束したり、またはその対価を統制するような契約その他の合意の当事者となることを禁止した條項であります。本改正案におきましては、これらの取引を不当に拘束したり、統制したりするおそれのある契約など、認定が困難で、しかもその限界の不明瞭な事項は本号から削除して、予備、予防的事項は禁止項目にしないことにいたしたのであります。
次に、現行第四号の規定について申し上げます。本号は、独禁法第四條第一項第一号の規定をさらに広げて、事業者団体の対価統制、対価決定、その他対価に影響を與えるための行為を禁止しているのでありますが、これを独禁法第四條第二項の線まで禁止行為を緩和するとともに、予防的行為はこれを削除することとしたのであります。その結果、改正案におきましては「その他対価に影響を與えるための行為を」本條から削除いたしたのであります。
次に、現行第六号の規定について申し上げます。本号は、事業者団体が、ブラツク・リストやホワイト・リストの流布などによつて、「特定の事業者に不当に利益又は不利益を與えること。」を、全般的に、一様に禁止しているのでありますが、本改正案におきましては、営業妨賓行為の動機、その方法並びにその結果のいずれにおいても「不当な場合」だけを禁止するように改めて、活動を円滑ならしめるようにいたしました。
次に、現行第七号の規定について申し上げますと、本号は、事業者団体が、構成事業者に対し、各種の報告の提出を強要したり、または承諾なく、強制的に、助言や監査や調査などして、その事業活動の自由を奪うことを禁じたものであります。本改正案においては、解釈上疑点を残している「構成事業者の承諾なく、その事業内容について助言し、監査し、若しくは調査すること」とある字句中、「承諾なく」はこれを「強制的に」と改めて、文章上の疑点に答えると共に、助言はこれをきくかきかないかは相手の自由であるという見地から、これを本号から削除することといたしました。
次に、現行第八号の規定について申し上げます。本号は、第五條第一項第一号から第七号に至る包括的な規定とも見られ、事業者団体が、事業者の事業活動に、一切の拘束、活動制限を加えることを禁止しているのであります。これは、事業者団体の規模の大小、その行為の効果のいかんを問うまでもなく、事業者の事業活動に拘束を加えることが、すべて不当な取引制限に当るという立前をとつている考え方であると見られるのでありますが、このことは、独禁法に盛られた政策をさらに拡大強化したものであるだけでなく、法理的にもその妥当性に問題を残しているのであります。本改正案におきましては、この点に緩和を加えまして、構成事業者の機能もしくは活動を「不当に制限し、又はその制限に着手」した場合にのみ限定をいたしたのであります。
次に、現行第九号の規定について申し上げます。現行法の第九号は、第十三号の営業行為の禁止に伴う営業用施設の所有、経営の禁止を規定している條項でありますが、改正案の第九号は、現行法の第九号と、特許プールを禁止している第十一号と、融資による事業支配または企業結合の排除を規定している第十二号と、集金を禁止している第十五号と、入札を規制することを禁止している第十八号とを一つにとりまとめました上、建前として、事業者団体の営業行為はこれを認めることとし、その範囲は改正後の独禁法に許されている線を越えてはならないものとして、全体的に緩和を加えたものであります。これを内容的に申しますと、現行第九号においては社債の所有も禁ぜられておりますが、これは株式とともに、前回の独禁法の改正により一部の所有を認められておりますのと、株式ほど事業支配の危険がないことと、資産運営上、この程度は当然承認すべきであるとの見解のもとに、本改正案からは社債を削ることといたしました。
また、現行第十一号の特許権の所有もしくは支配の禁止につきましては、独禁法第二十三條の「無体財産権の行使行為」の條文において「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。」との基本原則が示されておりますので、本改正案におきましては、事業者団体による特許プールを全面的に禁止することの行き過ぎを緩和して、不当な取引制限となるようなものを禁ずることにいたしました。
さらに、現行第十二号は、事業者団体の融資を禁止いたしているのでありますが、ここにいう融資は、事業者資金の貸付のことでありますので、改正案におきましては、その旨を明確にいたしたのであります。
また現行第十五号におきましては、集金を行うことを禁止いたしているのでありますが、改正案では事業者団体の経済行為を独禁法に許される範囲において認める立前をとつたのであります。
〔岩川委員長代理退席、圖司委員長着席〕
また現行第十八号は入札の規制を禁止して入札行為の形式をとらえて禁止行為といたしているのでありますが、これは現行の第五條第四号にも触れることでもあり、積極的には削除することも考えられるのでありますが、本改正案十号に含めて、「事業活動を不当に拘束する」場合以外は、これを認めることといたしたのであります。
これらの整理に伴いまして現行第九号、第十一号、第十二号、第十五号、第十八号は、これを削除することといたしたのであります。
次に、現行第十号の規定の削除について申し上げます。現行法では公正取引委員会の認可を受けた場合以外は、「自然科学に関する研究を実施するための施設を所有し、又は経営すること」を禁止しているのでありますが、事業者団体の研究活動は産業発展のために望ましいことであるばかりでなく、必要欠くことのできない事柄でありますので、本改正案におきましては、これを削除することにいたしたのであります。
次に、現行第十三号の営業行為條項と、第十四号の取引の代理條項とは、これをとりまとめて改正案第十号といたしたのであります。現行第十三号は、事業者団体による「購買、販売、生産、製造、加工、包装、荷扱、保管、輸送、配分、取引の代理、その他の営業」行為を一切禁止しているのでありますが、このことは第二條の定義において、事業者団体に会社や組合等をも含む建前のもとでは問題を残しているのであります。それで、本改正案におきましては、改正第九号と同様に、事業者団体の営業行為を認める建前のもとに、独禁法の制約に基いて、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。」を禁ずることにいたしたのであります。その際、現行第十三号の営業行為の禁止を補う役割を持つている現行第十四号の取引の代理條項をこれに吸収し、「取引上の契約をすること」は営業行為を認める上からは当然認められてよいし、また「その他の常業」の文字に含みがあるものとして、改正第十号には含めないことといたしたのであります。
次に、現行第十六号の事業者団体による商事仲裁を禁止する規定は、これを削除することにいたしたのであります。これは国内産業の円満なる発展のためにも、商事紛争解決のための必要性から見ても、不必要に紛争を助長する懸念を、なくするためにも、国内紛争の仲裁、解決を容認することは、けだし当然のことであるとしてこれを削除することにいたしたのであります。
次に、現行第十七号におきましては、「不当に立法又は政府の政策に影響を與えること」を禁じているのでありますが、あまりに漠然といたしておりますので、「不当な手段により」と改めたのであります。
以上が第五條第一項各号の改正内容でありますが、この改正によりまして第十号が削除されましたので、第五條第三項、第四項、第五項の自然科学研究施設の所有、経営の場合に必要でありました認可関係の條項は、必要がなくなりましたので、本改正案においてはこれを削除いたしたのであります。
以上が事業者団体法の主眼点をなしてゐる第五條の改正内容であります。
次に、現行法第六條の改正についてその内容を申し上げます。現行第六條は、団体法の適用除外団体を掲げているのでありますが、これらの団体も届出の義務を課せられておりますので、本改正案では適用の除外とともに、届出の義務からも解放することに改め、「但し、第三條の規定は、この限りではない」の字句を削除することとしたのであります。
さらに各号の適用除外団体につきましては、すでに解散届を提出して清算中のもの、あるいは適用団体のなくなつたもの、掲示法規の廃止されたものはこれを削除し、法規の改正されたものはその配列を改めたのであります。
次に、現行法第七條の適用除外行為に関する規定につきましては、輸出品取締法によつて廃止せられました重要輸出品取締法と輸出水産取締法を削除し、公共事業令はポ勅で発令されましたので削除することにいたしたのであります。
また、現行法第八條の排除措置規定におきましては、第四條の許容活動が例示となりましたので、冒頭の「第四除第一項各号に掲げる許容活動の範囲をこえる行為又は」を削除することにいたしたのであります。
さらに現行法第九條の手続規定におきましても、本改正案に伴いまして後段の「許容活動の範囲をこえると認める場合」を削除するとともに、第五條第三項、第十三條の削除によつて不要となりました第九條の第二項及び第三項を削除することといたしたのであります。また現行法第十一條の検察官に関する規定におきましては、独禁法第三十五條の改正に伴い「犯罪」を「事件」と改め、さらに現行第十二條第一項第二号中の「第十四條第一項第一号から第四号までの罪」とある「第四号」は、現行団体法第十三條の削除によつて不要となりましたので、これを「第三号」に改めたのであります
さらに、現行法第十三條の資産の処分に関する規定は、現行第五條第一項第十号の自然科学に関する條項が制除されましたので、不要となりましたから、本改正案におきましては削除いたしたのであります。
次に現行法第十四條の罰則規定の改正につきましては、前回の独禁法の改正並びに事業者団体法に関する本改正案の結果に基く手続上の整備にすぎないのであります。
なお改正案の附則第三項の海事仲裁等に関する法律の廃止は本改正案において第五條第一項第十六号の仲裁規定を削除いたしました結果に基くのであります。
以上、やや詳細にわたりましたが、小委員会において検討を重ねました事業者団体法の改正に関する小委員会の結論をここに御報告申し上げた次第であります。
なお改正案に対する今後の取扱いその他につきましては、委員会の決定にまちたいと存じているのであります。
これをもつて小委員長の報告を終ります。
なお本改正案の作成にあたりましては、第二條を根本的に改正して、会社等の企業体を、大体完全に事業者団体法の対象から除外する案も作成いたしてあるのであります。お手元に配付いたしてあります第二條だけを印刷した改正案がそれなのであります。他の條項につきましては、先ほど御説明申し上げました改正案によるのであります。
この条におきましては、第二條中の「目的を含む」の字句を「主たる目的とする」に改めるとともに、「営利を目的とするとしないとを問わず、」を削除し、さらに第一号の例示から「株主」、「会社」の字句を取り去り、新たに第二項として「二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、出資金又は資本金を有し、商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とするものは、これを前項の事業者団体に含まれるものと解してはならない。」の規定を加えることとしたのであります。
この改正によりますと、会社等の企業体は大体において事業者団体法の対象からはずされることとなるのであります。
この両案のいずれを基本として今後の処理に当るべきかについても、本委員会において十分に御検討をお願いいたしたいのであります。
これをもちまして小委員長の報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/9
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010・圖司安正
○圖司委員長 ただいまの小委員長報告に対し質疑があればこれを許します。——御質疑がなければ本日はこれにて散会いたします。
次会は明二十日午前十時半より本委員室において開会いたします。
午後零時三十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004073X01519510319/10
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