1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十五日(火曜日)
午後一時二十九分開議
出席委員
委員長代理理事 内海 安吉君
理事 田中 角榮君 理事 村瀬 宣親君
逢澤 寛君 淺利 三朗君
上林山榮吉君 小平 久雄君
高田 弥市君 内藤 隆君
西村 英一君 増田 連也君
河田 賢治君 寺崎 覺君
衞藤 速君
出席政府委員
建設事務官
(住宅局長) 伊東 五郎君
委員外の出席者
建設事務官
(住宅民住宅企
画課長) 鬼丸 勝之君
建 設 技 官
(住宅局住宅建
設課長) 鎌田 隆男君
建 設 技 官
(住宅局建築指
導課長) 内藤 亮一君
専 門 員 西畑 正倫君
専 門 員 田中 義一君
五月十五日
委員池田峯雄君辞任につき、その補欠として河
田賢治君が議長の指名で委員に選任された。
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五月十四日
公営住宅法案(田中角榮君外十六名提出、衆法
第五一号)
二月三日
自動車に対する道路損傷負担金撤廃に関する請
願(滿尾君亮君紹介)(第三八二号)
の審査を本委員会に付託された。
五月十二日
東北七県の住宅金融公庫融資増額の陳情書
(第七四七号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
建築士法の一部を改正する法律案(淺利三朗君
外九名提出、衆法第五〇号)
公営住宅法案(田中角榮君外十六名提出、衆法
第五一号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/0
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001・内海安吉
○内海委員長代理 これより会議を開きます。
昨日委員会に付託になりました公営住宅法案、田中角榮君外十六名提出、衆法第五一号を議題といたします。この際まず提案理由の説明を求めます。田中角榮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/1
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002・田中角榮
○田中(角)委員 ただいま議題となりました公営住宅法案につきまして、提案の理由、及び要旨について御説明申し上げたいと思います。
御承知のごとく、政府は戦後毎年地方公共団体に建設費の半額に当る補助金を交付して、低家賃の庶民向賃貸住宅を建設させているのでありますが、それは、ただ年々公共事業費予算のうちに、国庫補助金を計上するという予算措置だけに依存するものでありまして、恒久的な国の政策として確立されたものではないのであります。外国の例を見ますると、イギリスでは今から百年前、すなわち一八五一年に早くもシヤフツベリー法と称する労働者住宅法が制定されて、地方団体が低家賃の賃貸住宅を労働者に供給する道を開き、この法律に基く方策は今日まで継承されております。アメリカでも一九三七年の合衆国住宅法によりまして、地方当局による低家賃公営住宅の供給方策を確立しているのであります。西ドイツ、イタリア、オランダその他のヨーロツパ諸国におきましても、公営住宅に関する法律を持つ国が多いのであります。これらの外国の例をまつまでもなく、わが国におきましても、特に戦後の困難な住宅問題を解決するためには、国の助成による公営住宅の供給方策について、すみやかに立法措置を講じて、この方策を恒久的に確立する必要があるのであります。公営住宅法案は、以上の観点に立つて国の補助による公営住宅の建設、補修及び管理に関して規定いたしまして、公営住宅の計画的供給に関する、国と地方公共団体の責任及び公営住宅の建設に要する費用の、両者の負担の限界を明確にするとともに、公営住宅の管理の適正化をはかつた次第であります。
次にこの法案の條文の説明を簡単に申し上げたいと思います。この法案は、四章二十九條と附則五項からなつております。第一章総則、本章は法の目的、用語の定義、国及び地方公共団体の責任に関する事項を規定いたしております。
第一條は、日本国憲法第二十五條の趣旨にのつとりまして、法の目的を明らかにしたものであります。
第二條は、法文中にしばしば出て参ります用語の定義を定めたものであります。
第一号の地方公共団体というのは、普通地方公共団体である市町村及び都道府県をいいます。
第二号に公営住宅の定義をいたしております。この定義によりますと、国の補助によらないで建設し、または今後建設する賃貸住宅は、この法律でいう公営住宅ではありません。ただ後に附則第三項のところで御説明いたしますが、この法律による公営住宅でない公営の賃貸住宅につきましても、国の補助を受けたものにつきましては、この法律による公営住宅とみなして、この法律を適用することにいたしました。なお、ここで住宅の附帯施設というのは、住宅に設ける電気、ガス、給水、排水その他の住宅の機能保持上必要な施設をさしております。
第三号の第一種公営住宅と第四号の第二種公営住宅は、公営住宅を二種類に区別したものであります。第二種公営住宅は、家賃を第一種公営住宅より安くして、家賃の負担能力がないために、第一種公営住宅に入り得ない者、または災害により住宅を失つた低額所得者に提供することとしたわけであります。家賃に関する事項は、後の條文で規定しまして、ここでは入居者の所得と住宅の規格について政令で規定するということにいたしたのでであります。入居者の所得は、経済事情の推移とともに変動することが予想されますし、また家族構成のいかんによつても家賃負担能力に差が生じますので、政令で定める入居者の収入の基準は、相当幅を持たせて規定すべきものと考えております。
第五号に公営住宅の建設を定義いたしまして、公営住宅の建設に必要な土地の取得、またはその土地を宅地に造成することを含ませましたのは、住宅の建設がその敷在と不可分の関係にありますので、この点を注意的に鮮明したものであります。
第六号の公営住宅の供給と申しますのは、公営住宅の建設と管理をすることをいうのであります。公営住宅の建設と管理は、多くの場合同一の地方公共団体が行うのでありますし、またそれが適当であると考えられますので、この法律では同一の者が建設と管理の両面を担当することを予想し、従つて便宜上供給という用語を用いた次第であります。
第七号の共同施設と申しますのは、公営住宅の入居者の共同の福祉のために必要な施設をいうのでありまして、法案の第五條に規定するように、公営住宅を、大体一団地に五十戸以上集団的に建設する場合には、共同施設を建設することが望ましいのであります。共同施設は、住宅の附帯施設のように、個々の住宅の機能上必要なものでなく、住宅を集団的に建設経営するときに初めて必要と認められるものでありまして、その種類は政令で定めることにいたしたのであります。
第九号の事業主体というのは、公営住宅の供給を行う地方公共団体に便宜上つけた名称であります。
第三條は、公営住宅の建設と管理が、地方公共団体の責務であることを規定した條文であります。これは、元来住宅問題は市民なり県民なりの問題であり、また住宅事情の実態を最も把握しやすいのは、市町村または都道府県であり、かつ住宅建設事業の実施機関としても、地方公共団体が適当であるという趣旨に基いて、地方公共団体に住宅供給についての義務を負わせた規定であります。
第四條は、前條の公営住宅の供給に関し必要がある場合に、国及び都道府県が援助しなければならぬ旨を規定したものであります。公営住宅の供給は、地方公共団体の義務でありますから、事業主体たる地方公共団体がその費用を負担すべきであるはもちろんでありますが、地方の財政力には限度があつて、その費用の全部を負担するのは不可能であり、従つて深刻な住宅不足の解決を、地方公共団体だけの責任とすることは、民生の安定上また国民保健上ゆゆしい問題であります。そこで国が費用の一部を負担するとともに、金融上及び技術上の援助を與える義務を負うという趣旨であります。
第二項で市町村が公営住宅を供給する場合に必要があるときは、都道府県もその供給を援助すべき旨を規定しましたのは、特に財政事情のよくない市町村については、国の援助だけでは不十分な場合があり得るので、この規定を設けた次第であります。
第二章公営住宅の建設、本章は、公営住宅の建設基準、建設計画、補助金、貸付金等に関する事項を規定いたしております。
第五條は、公営住宅及び共同施設の建設基準に関する條文であります。建設基準を建設大臣が定めることにいたしましたのは、財政事情や建築技術の発達あるいは国民の生活水準の向上によつて、しばしばこれを改善することが必要であるからであります。従つて、公営住宅の建設基準は、政令で定める規格の範囲内で、その規模、構造、配置等について、必要に応じて改善を加えるととにいたしたのであります。
第五條第二項は、公営住宅を集団的に建設する場合に、共同施設をもあわせて建設せしめようという趣旨でありますが、これは従来わが国の団地住宅の経営において比較的閑却せられていたものでありまして、今後は住宅の建設ばかりではなく、いわゆるコミユニテイの形成に努力を拂うことが必要であると考えますので、この点を強調したいために設けた規定であります。
第六條の公営住宅建設三箇年計画と申しますのは、公営住宅建設事業を、ある程度長期の見通しに立つて計画的に行う趣旨であります。これによつて、国も地方公共団体も、長期的にある程度の予算的見通しをつけるのであります。また住宅の建設は土地の取得を前提といたしますが、年度だけの建設計画では土地の取得が困難なために、せつかくの建設計画も完成しないことがあり得るのでありまして、国会の承認があつた公営住宅建設三箇年計画の範囲内においては、次年度以降に建設すべき公営住宅に必要な土地を手配することができるというのが、大きなねらいであります。第六條第一項及び第二項の規定にありますように、計画は昭和二十七、八、九の三箇年を第一次といたしまして、以後三年を一期として定められるのでありますが、その際都道府県知事の作成する計画資料には、市町村長との協議を通じて、地元の意向も十分反映させるようにしております。
第三項の規定により三箇年計画の大綱は国会の承認を必要とします。国会の承認があつた公営住宅建設三箇年計画は、
第四項の規定により、建設大臣が都道府県の区域ごとに計画を細分して都道府県知事に通知することになつており、都道府県知事は、第五項の規定により、市町村の区域ごとに細分して市町村長に通知することになります。以上の公営住宅建設三箇年計画は予算計画ではありませんが、第六項の規定により、内閣は計画実施に必要な経費をできるだけ予算に計上しなければならないことになつております。
第七條は、国の補助に関する條文であります。第一項において公営住宅に対する国の補助の割合を、第一種公営住宅については建設費の二分の一、第二種公営住宅については建設費の三分の二と区別して規定いたしております。これは、国庫補助金は家賃で償却する額に算入しない建前でありますので、第二種公営住宅を特に低家賃にするためには、第一種公営住宅より高率の補助を行う必要があるからであります。
第二項は、共同施設についても建設費の二分の一以内を補助し得るという規定であります。共同施設の建設は、前にも御説明しました通り、公営住宅の団地経営に必要なものでありますが、共同施設の種類によつては、独立の企業として成り立つものもあり、あるいは地方によつて、入居者のために特別のサービスとして特殊の施設をする場合もありますので、国があらゆる場合に必ず補助金を交付する必要はなく、国の財政事情、共同施設の緊要性の程度などをにらみ合せて補助し得ることとしたわけであります。
第三項は、補助金額の算定方法に関する規定であります。
第四項は、次年度以降に建設すべき公営住宅または共同施設の土地の取得に要する費用をも補助するという規定でありまして、これにより前條の公営住宅建設三箇年計画の遂行が効果的になるのであることは申すまでもありません。
第八條は、前條の特例でありまして、公営住宅建設三箇年計画に基いて公営住宅を建設する場合以外に、本條第一項第一号及び第二号に掲げる程度の災害が突発し、前記計画のわく外で緊急に公営住宅を建設する必要が生じた場合の国の補助に関する規定であります。
第一項は、第一号及び第二号に掲げる災害が突発した場合に、その滅失戸数の三割に相当する戸数については、第二種公営住宅の建設に対し、国が必ず補助するというのでありまして、これは災害の場合に、地方公共団体が政府との折衝に時間を費すことなく、迅速に住宅の復旧建設にとりかかり得るようにするために設けた規定であります。但書の「滅失した住宅の戸数の三割に相当する戸数をこえる分については、この限りでない。」というのは、滅失戸数の三割に相当する戸数以上に、事業主体が第二種公営住宅と同種の住宅を建設する場合には事業主体は必ずしも国の補助を期待し得ないという趣旨であります。たとえて申しますれば、A市において地震で千戸の住宅が倒壊した場合に、四百戸の第二種公営住宅を建設しようとするときは、三百戸までは国は必ず補助するけれども、あとの百戸の分については、国の財政事情その他によつて必ずしも補助は期待できないわけであります。もつとも従来の例をみましても、三割程度の住宅復旧を公共的に解決すれば、他の七割は自力で復興するから、実際上は三割分で補助を打切られても、さして不都合は生じないと思われます。第一項の第一号及び第二号は、補助対象となるべき災害一件の大きさを規定したものでありまして、この種の程度の災害ならば、地方公共団体として大きな痛手であるとともに、政府として住宅政策上、救済の必要があると考えられる戸数であります。
第二項は、この法律により建設された公営住宅または共同施設が、災害によつて滅失または著しく損傷した場合の補助規定であります。災害によつて公営住宅または共同施設が滅失した場合は、事業主体の大きな損害であり、入居者にとつてもせつかく安住し得た住宅が失われれば他に自力で住宅を求め得ない人々なので、これを復旧建設するのが当然であり、公営住宅または共同施設が著しく損傷した場合、これを補修することは、第十二條の家賃の算定方法で、修繕費を普通の修繕を行う程度にしか見込んでないために、事業主体の実質的な財政負担になること当然でありますので、いずれの場合においても補助することができることにいたしたのであります。なお、地震による火災以外の火災によるものを除外いたしましたのは、火災保険の対象になるから補助することは不適当と考えたからであります。第三項は、補助金額の算定方法に関する規定であります。
第九條は、国の補助金の交付の申請手続に関する規定でありまして、その書式並びに提出手続は、建設省令で定めることといたしております。
第十條は、都道府県の補助に関する條文でありますが、これは市町村の財政事情がよくない場合に、国の補助金のみでは不十分であることが予想されるので規定した次第でありまして、第四條に見合う規定であります。
第十一條は、国の貸付金に関する條文であります。地方財政の現状では、補助金のみによる国の援助で、公営住宅を建設することは不可能であり、従つて事業主体の負担する分については、起債または借入金を必要とするのでありますが、いずれにせよ、民間資金の利用は困難かつ不適当な面がありますので、国が通常の條件より事業主体に有利な條件で、必要な建設資金の貸付をなし得ることといたしたわけであります。
第三章、公営住宅の管理、本章は公営住宅の家賃及び修繕並びに入居者に関する事項を規定いたしております。
第十二條は、家賃の算定方法を規定した條文であります。家賃の算定方法は、公営住宅の建設費のうちから補助金を控除した額の元利均等償却額に、修繕費、管理事務費及び損害保険料を加えた額を限度として事業主体が定めるのでありますが、算定方法の細部については政令で規定することといたしました。この場合建設費の償却の條件を、期間二十年以上、利率年六分以下といたしましたことは、特に事業主体が、補助金以外の建設資金を起債または借入金に依存する場合、その償還の條件が、本條による償却の條件よりきびしい場合には、事業主体たる地方公共団体に負担をしいることになりますが、入居者の家賃負担能力を考慮に入れる以上、やむを得ない措置と考えます。また地方公共団体としても、自己の区域内の住宅問題解決のためには、当然この程度の負担をするのが至当であろうかと考えられます。
第二項は、借地の場合には、前項の家賃はさらに地代を加えた額を限度とすることを規定したのでありまして、当然のことであります。
第三項は、個々の入居者に対する家賃の減免規定でありまして、入居者が入居の後に、病気とか失業等によつて所得が減少する場合を予想して設けた特例規定であります。
第四項は、家賃の問題が公営住宅の管理に関する重要事項でありますので、これを必ず條例で規定すべきことといたした次第であります。
第十二條は、前條の特例規定でありまして、物価の変動の著しい場合、また公営住宅相互の家賃が著しく不均衡となつた場合において、家賃の限度を制限し、または一度決定した家賃の度更を認めないとすると、不都合を生ずるおそれがありますので設けた規定であります。すなわち建築の時期により、または地域によつて物価が異なる場合があり、また同程度の質の住宅でも、建設年度により建設費が異なり、従つて家賃も異なることがあり得るので、地方の実情を尊重して、家賃の決定方法、またはその変更について、事業主体の自主性を認めたわけであります。また敷金につきましても、それが家賃額を基礎としている関係上、同様の取扱いといたしました。これらの場合においてもその取扱いについて、全国的にある程度の統一をとる必要がありますので、建設大臣の承認を求めることとし、その場合の手続をも規定しております。
第十四條は、事業主体が公営住宅の入居者に対して不当な金品を賦課することを禁止した條文でありまして、公営住宅に入居する場合に、事業主体が特別な反対給付を受けて、特定人に優先入居を認めたりすることのないよう、その住民に対して平等に入居の機会を與えるために規定した次第であります。但し、敷金については、慣行上広く行われておりますし、家賃の不佛いの場合や、住宅を毀損した場合の担保となるものでありますので、これを徴収し得ることとしたのであります。なお、公営住宅の家賃不拂いの場合には、敷金を債務に充当するほか、地方自治法第二百二十五條による滞納処分をなし得ることはもちろんであります。
第十五條は、公営住宅の修繕に関する條文であります。公営住宅が地方公共団体の営造物であることは明らでありますが、これの使用関係は、事業主体と特定入居者との間の契約に基くものであり、この契約は法令または條例で特別の規制をする場合のほか、一般の賃貸借契約関係を規定する民法、借家法等の民事法の規定に従うべきことは申すまでもありません。第十五條の規定は、賃貸人としての事業主体は特約をもつてするも、公営住宅の建物の主要構造部の修繕義務を免れることができないという趣旨であります。もちろん入居者の責に帰すべき事由によつて修繕の必要が生じた場合は、免責事由となります。これは事業主体が家賃に含める修繕費には、少くとも建物の主要構造部の修繕費を計算に入れねばならぬことを意味することになり、このことは契約当事者の公平という点から考えても当然であります。
第十六條は、入居者の募集に関する規定であります。公営住宅の公共性にかんがみ、特別の場合を除くほかは住宅全体に周知徹底させ、入居の機会を平等に與えるという趣旨の條文であります。
第十七條は、入居資格に関する規定であります。入居資格については、低額所得者の住宅難の深刻な今日、公営住宅の需要は供給をはるかに超過することが予想されますので、初めから一定の制限を設けておくことが妥当であると考えられる次第であります。
第一号は、二人以上の家族構成でなければならぬということでありまして、独身者を除外いたしたのは、現在の情勢では、公営住宅の供給は、当分そこまで手が伸び得ないと予想したからであります。括弧内は、法律上の親族ではないが、親族とみなしてさしつかえない婚約者とか内縁の妻をさしております。
第二号の政令で定める基準と申しますのは、前に説明いたしました通り、政令で相当の幅を持たせて、収入の基準を定めるわけであります。この収入の基準額は、法律の目的から考えて、高額所得者を除外することと、他面家賃の負担能力との関係を考慮して決定すべきものと考えております。
第三号の住宅の困窮については、具体的にいろいろ予想されまして、法律でこまかに定めることは困難かつ不適当である関係上、抽象的に規定した次第であります。
第十八條は、入居者の選考方法を規定した條文であります。入居者の決定に関しましては、ややもすれば不明朗な問題を起しやすいのでありまして、これを適正に行うために設けた規定であります。この場合・単なる機会均等というような悪平等でなく、住宅の困窮度に応じて優先順位を定め、しかる後傷劣の差のつかない者については抽籤等の方法によることにするわけであります。選考基準の具体的事項は、法律で規定するのが不適当であるため、政令に譲り、政令で同居、過密居住、立ちのきを要求されている者、遠距離通勤、家賃として不当な負担を余儀なくされている者等について、具体的に規定されるものと予想されます。なお、選考の問題は、家賃に関する事項と同様に、公営住宅の管理に関する重要事項でありますので、これも必ず條例で定めることといたした次第であります。
第十九條は、家賃等の報告義務を規定した條文であります。
第二十條は、家賃及び選考方法に関する建設大臣の監督について規定したものでありまして、住宅対策上の必要から設けた規定であります。
第二十一條は、公営住宅の公共的性格にかんがみ、入居者に対して特別の義務を課した條文でありまして、公営住宅の保全をはかるためにも必要な規定であります。
第二号は、公営住宅の転貸とか、権利講渡を禁止したものでありまして、貸借関係の錯綜を避けるとともに、入居者が不当な利益を得ることを防止するための規定であります。
第三号は、公営住宅は住宅の不足を緩和するために供給されるものでありますから、住宅以外の用途に供することは、原則として禁止する趣旨であります。しかし特定の場合にその一部を他の用途に使うことは、必ずしも不適当ではないので、但書を設けたわけであります。
第四号は、公営住宅を模様かえしたり、増築したりすることは、公営住宅の機能をそこなつたり、現状回復を困難にすることがありますので、事業主体の長の承認がない限り禁止したのであります。
第二十二條は、明渡しに関する條文であります。第一項各号に列記された事項に該当するような場合には、一般の賃貸借契約関係の場合にあつても明渡しを請求し得る場合が多いでありましようが、公営住宅の公共的性格から、本條において明文をもつて規定したわけであります。なお、明渡しを請求しても、明け渡さない場合には、もちろん民事訴訟法の手続によつて解決を求めねばなりません。
第二十三條は、公営住宅監理員の設置及びその任務に関する規定であります。ここにいう監理員とは、単に家賃の取立てに当る、いわゆる差配のようなものでなく、公営住宅及びその環境を良好な状態に維持するため、入居者を指導し得る識見と知識を持ち合せる者で、事業主体の長の命ずる職員でなければなりません。この職員は、なるべく専任として任命することが適当と考えられるのであります。
第四章 補則。本章は公営住宅の処分及び建設大臣と都道府県知事の指導監督等に関する事項を規定いたしております。第二十四條は、公営住宅の処分に関する條文であります。公営住宅が建設後一定年数を経過し、入居者も安定したあかつきには、公営住宅としての使命を一応果したものと考えられますし、無理に地方公共団体の管理下に置くことは、住宅そのものの保全上からも上策ではないのでありまして、入居者の希望によつては譲渡し得るという道を開くことは適切なことと思われます。
そこで第一項では、公営住宅または共同施設がその耐用年限の四分の一を経過したときは、入居者に適当な価格で譲渡することを認めたわけであります。第二項は、譲渡した場合の売却代金の使途を明示したものでありまして、公営住宅の再生産の費用に充当せしめようというわけであります。政令では売却代金を建設資金について起債償還残額があればその返済に充て、その残額を公営住宅の建設費に充当するように規定することが適当と思われます。
第三項は、災害の場合に住宅を補修することが不適当であるようなときには、公営住宅としての用途を廃止し得るという趣旨であります。第四項は手続規定であります。
第二十五條は、公営住宅の管理に関して、事業主体に対し條例を制定すべきことを義務づけた規定でありまして、地方自治法第二百十三條の趣旨からいつても当然のことであります。第十二條及び第十八條では、家賃と入居者の選考に関しては、條例で定めることを義務づけてありますが、ここではその他の事項についても必要なものを條例で定めることといたしたわけであります。公営住宅の使命から申しましても、これに関する條例を制定すべきことは申すまでもないことであります。
第二項は條例の報告義務に関する規定、第三項は報告の手続に関する規定であります。
第二十六條は、建設大臣及び都道府県知事の事業主体に対する指導監督に関する條文であります。都道府県知事にも指導監督の権限を與えたのは、管下事業主体の公営住宅の供給については、常時監督指導するのは、むしろ建設大臣よりも、都道府県知事の方が適当であるという考えに基いております。
第二十七條は、都道府県知事が指導監督を行う場合に、その費用を国が負担するという規定であります。都道府県知事は、この法律の規定に基いてその権限を行使するものでありますが、その指導監督の費用は国が負担するのであります。その負担の率は、政令により、二分の一以内に定めることが適当と考えられます。指導監督に要する費用の算定方法については、建設費を基準として、政令で規定することといたします。
第二十八條は、この法律を適正に実施するために、国の補助金の交付に関して、一定の期限を加えた規定でありまして、この法律の趣旨にかんがみ、いやしくも適正でないものに対しては、補助金を交付しない、または交付した補助金の返還を命ずるというのは、他の国庫補助事業にも共通の事項であります。
第二十九條は、地方公共団体の実情により、全部事務組合が事業主体となる場合を予想して、設けた規定であります。
附則。第一項は、施行期日に関する規定であります。
第二項は、この法律の施行期日の関係で、昭和二十七年度を初年度とする公営住宅建設三箇年計画の資料の提出についてだけその提出期日を延期した規定であります。
第三項は、この法律による公営住宅だけを法律で規制し、従来の国庫補助賃貸住宅について、この法律の適用を排除することは不適当でありますから、いやしくも国庫補助賃貸住宅である以上は、その公共的性格にかんがみ、この法律による公営住宅とみなして、この法律を適用することにいたした次第であります。
第四項は、家賃については、この法律施行のときにすでに決定しているものは、この法律の規定によつて定めたものとみなしまして、あらためて定める必要がないこととしたのであります。
第五項は、この法律の施行に関する事務の所管について規定いたしたのであります。
以上で逐條の御説明を終ります。本案はすでに本委員会に設けられました起草委員会において、各党の代表者により数回審議を重ねたのでありますが、なお愼重御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/2
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003・内海安吉
○内海委員長代理 ただいま提案者のほか、建設省側から住宅局長伊東政府委員、住宅局住宅企画課長鬼丸説明員、住宅局建築指導課長内藤説明員、住宅局住宅建設課長鎌田説明員、以上出席されております。当局に対する質疑があれば、あわせてこれを許します。質疑の通告があります。西村英一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/3
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004・西村英一
○西村(英)委員 まず條項別に入る前に、本案は議員提出でありますが、本案の議員提出に対しまして、従来公営住宅を取扱つて来ました住宅局長といたしまして、この法案の全体について、これはもちろん今まで取扱つたことをまとめたわけでございましようが、この法案を実施されましたらどういうふうなことになるか、あなた方が希望されるように、これによつて公営住宅をさらに強力に推し進めることができるであろうか、そういうようなことについて、住宅局長に政府の意見をお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/4
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005・伊東五郎
○伊東政府委員 お答えいたします。この法案につきましては、もちろん政府としましても全面的に賛成でございます。従来、御承知のように終戦の年から庶民住宅のことについて国庫補助をやつておりますが、当初は公営住宅のみならず、いろいろな組合などに対しても補助をやつたというような経過もございますが、この数年間の経験によりまして、そういうものは非常に不都合が多かつたというようなことで、公営一本にいたしました。それで公営住宅につきまして、もつぱらこの国庫補助により住宅を建設せしめるということは、非常に適当な施策であると考えております。この法案が成立しましてこれを実施いたしました場合に、従来単なる予算措置としてやつておりましたことが、国策としまして、長期的なものとしてこの政策が確立せられますと、地方公共団体としての当局者としてもまた建設省のわれわれとしましても、非常に仕事がやりよくなると考えます。こまかい点いろいろございますけれども、全般的にそういう考えを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/5
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006・西村英一
○西村(英)委員 住宅局長の御意見はわかりましたが、提案者並びに政府委員の方にさらにお伺いいたします。この法案で最もかんじんかなめのところは、公営住宅を二種にわけてやる、こういうことについてであります。それで私はその前に、公営住宅に対しては建設省が所管いたしておりますが、さらに公営住宅と申しますか、庶民住宅と申しますか、この住宅に対して厚生省はいかなる関係をお持ちになつておるのか。またこのことが第一種、第二種にわけた、あるいはそれ以上に住宅を分離しなければならぬという点にも関係いたしますから、提案者でもよろしゆうございますし、政府委員でもよろしゆうございますが、その点について御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/6
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007・田中角榮
○田中(角)委員 お答えいたします。ただいまの御質問は御審議をお願いする上において非常に重大なることであると思うのでありますが、私の意見を申しますと、私も建設委員会の委員として、皆様とともに建設関係のあらゆる法律の審議にあたつておるわけでありまして、私は現在西村君が言われたように、公営住宅に対しては公営住宅式なものが建設省と厚生省に現在わかれておるというのが実際であります。これは原則的に建設省に統合すべきものであると、私は年来主張しておるわけであります。当然建設省が建設行政の統一及びわれわれ吉田内閣が考え、かつ中外に宣明いたしております政策の第一條、いわゆる行政機構の一大簡素化という問題に対して、各省に分属せられておる建設機構というものは、当然建設省に統合せらるべきものであると考えまして、現在ある厚生省の住宅部門も、建設省の住宅局に統合すべき問題であつて、この公営住宅法を出したことによつて、そういう事態がすみやかに進展することを、あわせて期待をしておるわけであります。
もう一つは、公営住宅に一種、二種とわけましたことは、われわれ建設委員会において、過去におきまして審議通過せしめた法律の中で、この種のものとしては住宅金融公庫法案があります。住宅金融公庫法案を審議いたしますときに、われわれの間でもいろいろの異論があつたのでありますが、その焦点は、まず零細なる収入を持つ人に対して、もう少し公営住宅的なものを與えられないかというのが焦点でありましたが、当時の法律の趣旨といたしましては、あの程度のものになつたわけであります。ところが現在それよりも下のもの、一般的に現在の国民が欲求しておりますところの公営住宅に対しては、ただいま住宅局長が申し述べられました通り、ただ予算的措置によつてのみ、予算のわく内で認められたものだけ、その年度々々において行われるということで満足しておつたわけであります。ところが現在の日本の社会情勢からいたしまして、これが三年、五年ないし六年、十年という間における公営住宅の建設計画というものは、一つの法律をもつてはつきりとこれを明示し、大衆の欲求に対しても明るい希望を持たせるためにも、現在の予算的措置だけで行われておるこの種住宅に対する施策は、法律によるべきものだという重点的な考えから、本法を御審議願つておるわけであります。
なお先ほど申し上げました通り、われわれが十分考え特に国民の議論の焦点になつている生活程度の低い人に対して、ほんとうに国が全額国庫補助を行いたいというような人に対する問題をどうするかという問題を解決するために、一種、二種をつくりまして、現在の全融公庫で行うものを一といたしますと、この一種が二、二種は三というようなものになるわけであります。現在厚生省が行つておるのは、それに比べると四に該当するものだと私は思つております。現在厚生省でも公営住宅に類するような法律案を研究しておるようでありますが、これはまつたく住宅建設という建設行政の一環としての住宅行政を論議する場合、異論なく建設省が主管し、建設省がこの問題を解決すべき問題であります。厚生省は御承知の通り国民の衛生保健、厚生という面から求められるものでありまして、これがまさに全額国庫負担をもつて行わなければならないような、厚生省の担当面から起る企画立案はせられても、これが経営及び実施の方面は、当然本法になつて建設省が主管すべきものだと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/7
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008・西村英一
○西村(英)委員 政府の住宅局長も、ただいまの提案者の御意見の通りでありますか。
さらに第二種以下のもの、そういうものに対する住宅局長の御意見をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/8
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009・伊東五郎
○伊東政府委員 ちよつと先ほどの御質問について、私どもの考えを申し上げてよろしゆうございますか——住宅供給につきまして、厚生省との関係でございますがわれわれはこういうふうに考えております。戦前には厚生省が住宅を主管しておりました。戦後各省設置法ができまして、その建設省設置法によりまして、住宅供給というものは建設省所管ということにした。厚生省はいろいろの厚生行政の関係から、住宅についてもいろいろお考えになつておるわけでございます。特に引揚者の住宅などについてはやつておられたわけであります。しかしこれも住宅の建設の面をやることになりますと、いろいろ事務が混淆して参りますので、これは話合いでの上で、建設の面は建設省で担当しようということで従来やつております。それで引揚者の着きます港などに、応急の収容施設をつくつておりますけれども、住宅としてはやつておらないのであります。それでこの法案では、第一種公営住宅、第二種公営住宅というふうに二つにしておりますが、この第一種公営住宅の方は、従来の二分の一の国庫補助、第二種の方は三分の二国庫補助でありますが、これは特に低額所得者のために第二種を設けたのでありまして、このことは本年度予算におきましても、名前は違いますが、甲、乙と二つのものにわけて、甲の方は家賃の低いものということで、二通りのものをすでに実行しております。この際にも厚生省といろいろ話合いをしたのでありますが、結局両省の了解事項としまして、建設省でこの予算の実行は担当する、そして厚生省はこれに対していろいろ意見を述べて、協議してきめて行くということに話をきめて、現在その通り実施をしておるわけであります。厚生省との関係は大体そんなようになつております。
それからただいまのお尋ねで、ここで考えております第二種の低家賃のものでも、なおかつ家賃が拂えないといつたような者に対してどう考えるかというお話でありますが、大体庶民階層というものは、第二種の家賃はどうやらこうやら支拂える程度ではないかと考えます。しかしもう生活自体が保護を受けなければならぬという人もあるわけでありますが、そういう人たちに対しては、厚生省の生活の保護ということで、住宅費、生活費一切を含めまして、そういう方面の保護を受けなければならぬという事態はあると思うのでありますが、大体におきまして庶民階層は、この第一種と第二種の家賃の支拂いはできる程度ではないかというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/9
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010・西村英一
○西村(英)委員 大体わかりました。もう一つの大きい問題といたしましては、この法案の中の建設三箇年計画、これは計画的に住宅建設をやつて行こうというので、はなはだ進歩的な法案でありますが、この建設三箇年計画を、いろいろな手続を経てきめて、そうして国会の承認を受けるというのですが、その国会の承認を受けるという事項は、どういう事項を受けるのですか。その内容をたとえて申しますると、年度別、各町村別にその戸数並びに予算というものについて、国会の承認を受けるのであるかということが一つと、たとえ国会で承認されましても、その計画は三箇年の間においては必ずかわつて来るものであります。そうしますと、たとえば二十七年度に何戸ときめましても、それが二十七年にできなければ、二十八年にそれだけの数をさらに増加するということで、三箇年にそれだけの義務を果すというようなきめ方になつておるのか。あるいは三箇年ですから、二十七、二十八、二十九と毎年を一期にして、二十七年が過ぎればまた二十八年からスタートして行くのか。そういう国会の承認を受ける内容につきまして、提案者の御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/10
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011・田中角榮
○田中(角)委員 お答えいたします。ただいまの御質問も、私たちが原案を作成する途中におきまして、重要なポイントとして論議をせられたのでありまして、大体私たちが本計画案をつくりました立法の趣旨といたしましては、二箇年計画を作成して国会の承認を得る場合、この承認は、もちろん地域別にこれを得ることが困難でありますので、大体年次別における戸数だけ承認を得たいということであります。これは昭和二十七年度一万戸、昭和二十八年度は二万戸、二十九年度は三万戸というように、少くとも三箇年において六万戸のものを建てるというように、いわゆる社会問題として大きな焦点に浮び上つているところの住宅問題に対して、国はこれだけの施策を行うのだという一つの安堵感を與えるためにも、かかる計画的なものを明示する必要があるということであります。但し私たちはこれまでの法律をつくる以上は、国会の承認を得た年次計画に対しては、国は予算的処置を講じなければならないというのが原案に規定されておつたわけであります。ところが御承知の通り現在わが党内閣でありますが、法律にこういうものを一ぱい規定いたしましても、財政が許されざる場合やむを得ないことであります。その場合に、もちろん現実的な財政面と見合つての問題でありますので、大体将来三箇年計画で見通しのつき得る程度の、理想に立脚した、そして現実的な可能性のある計画を立てて、国会の承認を得る。しかし場合によつてはその戸数が予算的な関係上変動することがあつても、三箇年をトータルいたしました場合、窮極においてはこれだけのものは当然やらなければならないというふうに考えておるわけであります。特に予算編成の上において、これよりももつと重要なる事態が起きて来たような場合に、こういう法律で縛ることによつて、実際予算編成が制肘されるということも考えられますので、特にその面も考慮して、幅を持たせた條文の規定をいたしておるのでありますが、本法律案を提出いたした根本の趣旨からいたしますと、当然国は予算的処置を講じなければならないという気持で提案をしておるわけであります。ただこれをがんじがらめに縛ることは、現実的にどうかということによつて、幅を持たしたというにすぎないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/11
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012・西村英一
○西村(英)委員 提案者の御趣旨はわかりました。次に各條ごとに御質問いたしたいと思います。
第二條の定義の[公営住宅の建設」のところで、「公営住宅を建設するために必要な土地を取得し、又はその土地を宅地に造成することを含むものとする」というのは、ちよつと言葉が抜けておるような気がするのです。公営住宅の建設ですから、公営住宅を建設し、または公営住宅の建設をするために必要な土地を取得し、またはその土地を宅地に造成することであるという意味だろうと思いますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/12
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013・田中角榮
○田中(角)委員 西村君の御意見の通り書いたつもりであります。それから第二條五号の表現の仕方でありますが、造成を含んでおるということで一本にしたのであります。日本語的には主格を二つ置く方がいいかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/13
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014・西村英一
○西村(英)委員 この文句はちよつとおかしいような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/14
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015・田中角榮
○田中(角)委員 第五号の表現がちよつとおかしいというお話でありますが、住宅を建設することは当然でありますので、「又はその土地を宅地に造成することを含む」として、その「含む」に重点を置いて表現したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/15
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016・西村英一
○西村(英)委員 それは字句の問題ですからこのくらいにいたしておきます。第八條の、災害の場合の国の特別の補助について、ただいまも提案者から御説明がありましたが、第一号と第二号では、家屋が滅失されても、地震の場合と火災の場合は戸数が違つておる。これは当然なことであります。しかし災害を受けた土地の全体で、地震、暴風雨、洪水の場合は五百、それから火災の場合は二百、こうなつておりますが、今度は一市町村の区域内におけるところの住宅戸数は、両者とも一割以上になつておる。私はこの考えから行きますれば、第二号の火災による場合は、一市町村の区域内における住宅戸数が五分くらいでないといけないのではないかと思います。実際の戸数を計算いたしてみましても、たとえば二千戸ある場合に、その市町村の一割と申しますと二百戸です。かりに百九十戸焼けますと、その場合は補助が一文もない。これは実際に適用いたしましても、火災の場合はちよつとひどいのではないか思われます。提案者の説明が詳しくありませんでしたが、第一項の但書、「但し、災害に因り滅失した住宅の戸数の三割に相当する戸数をこえる部分については、この限りではない。」の「この限りでない。」ということは、三分の二は補助しないが、若干のものは補助するという意味か、公然補助しないという意味か、その辺の比較が出て来るのです。端的に申しますと、火災の場合、市町村の全戸数の割合の一割ということは、もう少し下げないと実際の場合に適用が困る。この点につきまして提案者の御意見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/16
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017・鎌田隆男
○鎌田説明員 お答え申し上げます。従来災害によりまして住宅が滅失しました場合には、災害住宅として実際やつておりますが、二十四年度までは火災に対する災害は、いわゆる災害にあらずとして、今までやつた例はございませんでした。二十五年度になりまして、火災も天災のうちに入れまして、災害住宅として住宅の建設をやりたいということで、二十五年度初めて三件ございました。それは熱海の火災、それから秋田県の鷹巣、もう一つは長野県の上松、この三件だけ相当大きな火災がありましたのでやつたのであります。確かにお説の通り、この火災に対しましては、風水害その他の天災よりも辛くできておるように思います。初めから辛く考えて来ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/17
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018・西村英一
○西村(英)委員 辛くできておるのはわかつておるのですが、五百戸が二百戸になつておるので、市町村の全戸数の一割というのは間違いではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/18
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019・田中角榮
○田中(角)委員 お答えいたします。私も提案者でありますが、これを読んでみて逆じやないかと思つたのですが、よく読んでみると逆ではないようであります。それは御承知の通り八條の前段の、三割に相当する戸数を越えるものは補助の対象にしないというのは、非常に大きなものでありますので、これを補助の対象にすれば、国が予算的な処置を講ずる場合に、非常に大きな支障になりますことが一つと、もう一つは、実際において今までの例から申しますと、ほとんど自力で行つて来ておるようでありますので、大体はこれで支障がないと考えておるわけであります。それで今鎌田君から御説明申し上げましたように、火災は今まで災害にみなさないというのを、みなすようにいたしましたので、当然国庫補助の対象になるものは、天災による五百戸と、火災による二百戸というふうに現在はしたわけであります。ところが後段の一市町村の区域内の戸数の一割以上であるときというのでありますが、これを五分以上にしますと、非常に小さいものまで国がみな見なければならぬということになりまして、この一割以下の場合は、大体現在の状態では自力でもつてやれるのではないか、ここまで見て来ると非常にたいへんであつて、災害には一戸燃えても補助というような場合が考えられますので、千戸のうちの百戸を五十戸まで下げて行くということまで広げますと、国がはたしてそこまでやり得るかどうかという問題がありますので、一割以上と規定したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/19
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020・西村英一
○西村(英)委員 これは極端じやないかと思うのです。五百戸と二百戸に特別な考慮をして、それから一割の分だけは前者と同じであります。たとえば二千戸あるところの一割というと二百戸になる。そうすると百九十戸焼けたという場合、それについては補助の対象にならぬということでは、千戸の戸数の村は非常に小さい村でございます。それが百戸ならば、これは一割で補助があるけれども、九十戸焼けたというときには一文も補助にならないということになる。一方は三分の二の補助を受けまして、非常な違いになると思うのです。この点はもう少し考えなければいかぬじやないかと思う。段階のあることは了承しなければならぬが、その段階を補助の三分の二につけるか、あるいは戸数につけるか、もう一回提案者の方からお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/20
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021・田中角榮
○田中(角)委員 お答えいたします。二百戸以上と規定いたしておりますので、百九十九戸でも補助の対象にならぬわけであります。だからこの問題の焦点は、二百戸と規定するかどうかという原則論を研究しなければならぬわけであります。私も今ちよつと研究してみたのでありますけれども、「又は一市町村の区域内の住宅戸数の一割以上」というと、五十戸のうち五戸燒けても対象になるわけであります。そうすると、この問題は私たちの現在の考えでは、一号で五百戸と規定した以上、火災の場合は二百戸が妥当ではないか、こう提案者は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/21
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022・上林山榮吉
○上林山委員 関連しておりますので、一言だけお伺いいたしますが、先ほど鎌田説明員の説明によりますと、天災よりも火災の方は軽く見ていた、今まで補助の対象にしなかつたのだ、今回ようやくこれを対象にするようになつたのだから、結局現在においても天災の方を主として見て、火災の方は従として見ているんだ、こういうふうに聞いたのですが、それに間違いはないかどうか。もしそうであるとすれば、五百戸以上の天災の場合は対象になる。火災の場合に二百戸以上ということになれば、結局基準として優遇しておる、こういうふうにわれわれ考えるのですが、あなたの立法理由をもう少しはつきりしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/22
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023・鎌田隆男
○鎌田説明員 お答え申し上げます。ちよつと言葉がたりませんので、もう少し今の御質問に対しまして補足して申し上げます。実際の災害の起る状態をよく考えてみますと、風水害並びに地震は非常に広範囲にわたつて災害がいつも起ります。それから火災は非常に局地に限定されるわけであります。で災害の起る全地域につきまして、地震並びに風水害の方は五百戸と規定いたしましたが、火害の二百戸の場合の方が、地震の五百戸の場合よりも非常にレア・ケースである、なかなか起り得ないという実態からして、こちらの方が多い、こういうふうに申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/23
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024・西村英一
○西村(英)委員 今政府の方から説明がありましたが、私はそういうふうに了解しておつて、なおかつ一割を下げたらどうかということを言つておるので、この点は十分承知していて私は言つているのです。しかし他にも質問があるでしようから、私のこの点の質問は留保いたしまして他の質問者に譲ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/24
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025・田中角榮
○田中(角)委員 西村委員に御相談でありますが、これは留保していただかないで、ここで私の考えをもう一度申し上げますと、これは被戦災地域で二百戸以上という前段の規定がありますから、二百戸以上は全部これの適用を受けるわけであります。あとは二百戸以上でない場合は、一市町村の区域内の住居戸数の一割という場合で、これは実際問題から言いますと非常に小さいものです。そうしますと、二千戸のうち一割が燃えた場合は、当然前段へひつかかりますから、あとは二百戸以内のものを規定して、社会的な情勢から見た場合、百戸のうちの一割の十戸が燃えてもということでありますが、場合によつては五十戸のうち五戸が燃えても、またこれを五分にしますと五十戸の村のうち二戸半燃えても国だということになります。もう少しせんじ詰めると、極端な例になるかもしれませんが、個人の家が一戸か一戸半燃えても対象になるということは、個人に対して国庫補助ということになりますので、今の段階では少し無理じやないかと思いますから、これで御妥協願えませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/25
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026・西村英一
○西村(英)委員 まさか十戸の市町村はないでしよう。政府の説明がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/26
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027・伊東五郎
○伊東政府委員 この問題につきましては、先ほど鎌田説明員からも御説明しましたように、火害について補助することは、根本的に天害対策の場合は非常にむずかしかつた。国会方面からいつも火事の場合に非常に御盡力になりまして、認められたわけであります。しかしわれわれ住宅を担当している面からいいますと、これは一割より五分の方がなおいいと思います。しかし一方財政面から考えますと、法律に低く規定いたしますと負担がたいへんなことになりますし、ケースが非常にふえて参ります。で一割にいたしましても、従来予算折衝で認められているものより相当広げられますので、在来よりずいぶんよくなるわけであります。このほかにやつてかまわないわけでありますが、この程度までは国庫補助がやれるということを法律できめるのでありますから、これだけ従来より非常に改善されるということで、ひとつ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/27
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028・西村英一
○西村(英)委員 ただいま政府の説明がありましたが、法案に協力する意味でこの点は了承いたしました。私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/28
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029・内海安吉
○内海委員長代理 ほかに御質問はありませんか。——お諮りいたします。本法案は田中委員が提案者であり、また本委員会の小委員長としてしばしば会合し、また質疑応答も重ねられた結果、こういう法案が結論として出たのでありまして、この程度において質疑を終了いたしたいと思いますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/29
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030・内海安吉
○内海委員長代理 御異議なしと認めます。よつて質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/30
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031・上林山榮吉
○上林山委員 動議を提出いたします。この際討論を省略してただちに採決されんことを望みます。理由は、言うまでもなく委員長宣言の通り、討論は省略してもいい法案である。こういう趣旨において動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/31
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032・内海安吉
○内海委員長代理 お諮りいたします。ただいまの上林山榮吉君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/32
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033・内海安吉
○内海委員長代理 御異議がなければさように決します。
採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/33
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034・内海安吉
○内海委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
お諮りいたします。本案に関する報告書の作成並びに提出手続等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/34
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035・内海安吉
○内海委員長代理 御異議がなければさようにとりはからいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/35
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036・内海安吉
○内海委員長代理 次に建築士法の一部を改正する法律案(淺利三朗君外九名提出、衆法第五〇号)を議題といたします。本案に関しましては、前会においてすでに質疑を終了いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/36
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037・田中角榮
○田中(角)委員 動議を提出いたします。本法律案もただいま採決をいたしました法律案と同様に、本委員会において小委員会をつくり十分審議をいたしたので、討論を省略してただちに採決に入られんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/37
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038・内海安吉
○内海委員長代理 お諮りいたします。ただいまの田中委員の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/38
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039・内海安吉
○内海委員長代理 御異議がなければさように決します。
採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/39
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040・内海安吉
○内海委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
お諮りいたします。本案に関する報告書の作成並びに提出手続等に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/40
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041・内海安吉
○内海委員長代理 御異議がなければさようにとりはからいます。
次会は来る十七日午後一時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
午後二時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004149X02019510515/41
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