1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十六日(土曜日)
午後三時三十二分開議
出席委員
委員長 松永 佛骨君
理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君
理事 亘 四郎君 理事 金子與重郎君
理事 福田 昌子君
高橋 等君 堀川 恭平君
松井 豊吉君 清藤 唯七君
岡 良一君 堤 ツルヨ君
松谷天光光君
出席政府委員
厚生事務官
(薬務局長) 慶松 一郎君
委員外の出席者
参議院議員 中山 壽彦君
参議院法制局参
事
(第一部第一課
長) 中原 武夫君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 山本 正世君
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五月二十五日
委員佐々木秀世君、田渕光一君、寺本齋君及び
今野武雄君辞任につき、その補欠として亘四郎
君、渡邊良夫君、堀川恭平君及び苅田アサノ君
が議長の指名で委員に選任された。
五月二十六日
亘四郎君が理事に補欠当選した。
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五月二十六日
覚せい剤取締法案(参議院提出、参法第二二
号)
三月二十八日
工業用悪水流出防止対策費国庫補助の請願(横
田甚太郎君紹介)(第一六五〇号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
理事の五選
小委員の補欠選任
閉会中審査に関する件
覚せい剤取締法案(参議院提出、参法第二二
号)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/0
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001・松永佛骨
○松永委員長 これより会議を開きます。
まず閉会中審査の件についてお諮りいたします。来る二十八日をもつて今国会は一応終了する予定でございまして、以後は閉会になると存じますが、閉会中の審査をする必要が生じた場合並びにそれに伴い委員の派遣を行わねばならなくなりました場合につきましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、そのように決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/1
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002・松永佛骨
○松永委員長 御異議なしと認め、両件に関しましては、委員長に一任せられたものと決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/2
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003・松永佛骨
○松永委員長 次に理事並びに小委員補欠選任の件についてお諮りいたします。
去る二十四日委員の堀川恭平君及び亘四郎君が委員を辞任されましたのに伴い、現在理事は一名、遺家族、傷痍軍人等の援護に関する小委員は二名の欠員になつておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、選任の手續に関しましては、先例により委員長より指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/3
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004・松永佛骨
○松永委員長 御異議なしと認め、再び委員に選任されました亘四郎君を理事に、同君及び堀川恭平君を遺家族、傷痍軍人等の援護に関する小委員に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/4
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005・松永佛骨
○松永委員長 次に覚せい剤取締法案を議題とし審査に入ります。まず提案者より趣旨の説明をお聞きしたいと存じます。中山参議院議員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/5
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006・中山壽彦
○中山参議院議員 ただいま提案されました覚せい剤取締法案の提案理由を御説明申し上げます。
ヒロポン、プロパン、アゴチン等の商品名によつて代表されております覚醒剤は、その薬理作用として中枢神経興奮作用、血圧上昇作用を有する点から、本来は、ナルコレプシー(睡眠発作)、麻酔剤催眠剤の急性中毒、抑欝症、一部の低血圧症等の治療用として、また健康者の能率増進、疲労回復の目的に使用さるべきことを意図して製造されたものであります。
しかるに覚醒剤は、習慣性となる性質を持つており、その過度の運用を續けますといわゆる覚醒剤中毒症状を呈して、全般的に刺戟性衰弱というような疲労状態から幻覚を伴う精神もうろう状態に発展し、遂には覚醒剤中毒による精神病へと移行する反面の弊害を伴つておるものであります。
わが国における覚醒剤の普及は、不幸にして前者の正しい使用の道を選ばずに、防止すべかりし後者の弊害への道を歩み、せつかく製造者が目ざした医療界への貢献の努力は、逆に社会を毒するの結果となる思わざる方向へと進みつつあるのであります。
今日覚醒剤の使用は、医療目的より、むしろ覚醒剤耽溺者が自己の快感を満足させるための使用、また青少年が好奇心を満たすための使用、あるいは麻薬中毒者が麻薬の代用に充てたるめの使用がその大部分を占めておる状態であります。その結果ただに運用者個人の健康状態が破懐されて行くばかりでなく、それらの中毒者は覚醒剤の獲得費用を得んがために、また覚醒剤中毒による幻覚、妄想にかられて、犯罪行為に出ずる例が次第にその数を増して、社会的問題を惹起して参つたのであります。專門家の調査によりますと覚醒剤中毒者の七五%は中毒性精神病へ移行するといわれ、また統計によりますと、東京警視庁管内のみで青少年の覚醒剤に関連する犯罪は昨年度三千件を数え、中毒者は青少年三万人、成人を加えると六万人と推定されておるのであります。
その弊害が目に見えているにかかわらず、あえてそれを運用せざるを得えないのは、性格的に弱点を持つ人々の責任であつて、薬品自体の責任ではないのでありますが、その濫用が社会悪の根源ともなるに至りますと、医薬品本来の存在目的も、より強い青少年の教育目的、犯罪予防の目的にその一部を讓らざるを得なくなるのであります。
これらの弊害を防止せんとして、主管省においては、現行の薬事法規の許す範囲において、できるだけの努力を払つて来たのであります。すなわちその製造面におきましては、まず一般の使用に便利な錠剤、散剤の製造を禁止して注射液のみを許可し、さらに製造一割当制をとり、進んで昨年の十月二十七日からは製造の全面中止の勧告を行つて製造業者の協力を求め、また販売面におきましては、劇薬及び薬事法第四十一條七号の医薬品に指定することによつて医師の処方箋、指示書によらない譲渡を禁止し、薬品の表示書に習慣性となる旨、医師の指導によつて使用すべき旨を記載せしめることによつて、使用者の注意を喚起することに努めて来たのであります。
しかしながら、これらの措置の根拠となつている薬事法は、もともと医薬品が使用者の責任において正しく使用さるべきことを前提として、不良医薬品の取締りを内容としているのでありますので、今回覚醒剤の場合のように使用者の誤つた使用によつて混乱を来す場合のことまでは予定もせずまた規定もしていないのであります。
従つて二年にわたる行政官庁、製造業者、販売業者のせつかくの協力にもかかわらず、密造、横流し、不当使用はその跡を絶たず、中毒者を子に持つ親たち、教育者その他青少年の補導に当る人達を中心として覚醒剤の根本的取締りを要望する世論はいよいよ高くなつて参つて来たのであります。この世論にこたえるべく昨年秋から本年にわたつてようやく参議院厚生委員会で得ました成案が、この覚せい剤取締法案であります。
覚醒剤は、その医療上の効用を有しながら、その習慣性のゆえに弊害をもたらす点において麻薬と似ておりますので、大きな流れを麻薬取締りの方法に準ずることとし、覚醒剤の特異性と、麻薬取締法運用上の経験から生れる手續上の改善とを織り込んでこの法案を構成いたしました。
次に法案の内容の骨子を申し上げます。
第一に覚醒剤の用途を医療用と学術研究用のみに限定することといたしました。従つてその製造もこの二つの用途に必要な数量に制限することとし、輸入は禁止することといたしました。製造された覚醒剤を政府発行の証紙によつて封入することと相まつて、必要以外の覚醒剤が氾濫することを防止できることとなるのであります。
第二、覚醒剤を取扱い得る者については、指定制をとり、製造業者、医療機関、研究者についてそれぞれその施設ごとに資格のあるものを指定することといたしました。そしてこの指定を受けた者の間においてのみしか、覚醒剤を讓り渡し、讓り受けることができないことといたしました。使用数量の僅少なことと、横流れの防止のために、販売業者の段階を認めず、製造業者から直接医療機関または研究者の手元へ流すことといたしました。このことは、次に述べます所持禁止の原則と相まつて不正覚醒剤の摘発を、容易に可能ならしめることとなるわけであります。
第三に、一般的な所持禁止の原則をとり、右に述べました取扱者とその業務上の補助者、郵便または運送の業務に従事する者、医師から施用を受ける病人の看護に当る者だけが覚醒剤を所持できることといたしました。これによつて現在取締りの盲点となつております不正所持が直接規律の対象となるわけであります。
第四に、讓り渡し、讓り受けにあたつては都道府県発行の讓渡証、讓受証の記入、交付を要件とし、また医師が施用のために交付する場合には、医師の署名のある証明書を交付することを要件として合法的に動いた覚醒剤の証明手續を規定しております。
第五に、経過措置としまして、公布と施行との間に一箇月の余裕を置き、その間に製造業者、医療機関、研究者の指定を行うこととし、また法施行当時に所有している覚醒剤については、法施行後一箇月を限つて指定を受けた製造業者、医療機関、研究者に対して讓渡ができることといたしました。すなわち公布の後二箇月の間に、それぞれ処置されることを予定しておりますので、この法律による全面的な取締りは、公布後二箇月を経過してから行われることになるわけであります。
以上が、この法案の提案理由及び内容の骨子でありますが、何とぞ御審議の上御賛成を賜わりますようお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/6
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007・松永佛骨
○松永委員長 次に、本案の質疑に入るのでございますが、議案熟読の必要もあり、これを明日に持ち越したいと存じます。
次会は明日午後一時より開会することとし、本日はこれをもつて散会いたします。
午後三時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004237X02919510526/7
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