1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年十二月十一日(月曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 夏堀源三郎君
理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君
理事 西村 直己君 理事 田中織之進君
淺香 忠雄君 有田 二郎君
川野 芳滿君 佐久間 徹君
島村 一郎君 高間 松吉君
苫米地英俊君 三宅 則義君
宮幡 靖君 内藤 友明君
川島 金次君 米原 昶君
出席国務大臣
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
委員外の出席者
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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十二月十日
外国為替特別会計の資本の増加に充てるための
一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣
提出第四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
外国為替特別会計の資本の増加に充てるための
一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣
提出第四号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/0
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001・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これより会議を開きます。
昨十日本委員会に付託されました外国為替特別会計の資本の増加に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題として、まず政府より提案趣旨の説明を求めます。
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002・池田勇人
○池田国務大臣 ただいま議題となりました外国為替特別会計の資本の増加に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案の提出の理由を、御説明申し上げます。
外国為替特別会計におきましては、昭和二十四年度以降輸出の増加に伴いまして、外貨手持の激増を来し、これがため円資金は、予算に比し著しく不足を生ずる実情にあつたのであります。昭和二十四年度におきましては、右の不足を借入金により、まかなつて参つたのでありまして、今年度におきましては日本銀行の外貨貸付制度の運用により、右の困難は著しく緩和されることと相なりましたが、なお相当の不足を生じますので、貿易特別会計より二百六十億円繰入れるほか、一般会計より百億円の繰入れを行うことといたしまして、この会計の運営を円滑にしようとするものであります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/2
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003・夏堀源三郎
○夏堀委員 質疑を許します。宮幡君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/3
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004・宮幡靖
○宮幡委員 少し大蔵大臣には見当違いの質問になりますのでやめておりましたが、野党からも激励がありますので、一言お伺いいたします。
前国会におきまして、本法案が審議される際におきまして、外為の大久保さんから詳しくいろいろ御説明があり、事務的には何らの疑問がありません。ただ吉田内閣、ことには池田財政の一環といたしまして取行つて来るインベントリー・フアイナンスに対しまする野党各派の反対でありますが、これらについても考えてみますると、りくつになりまするけれども、少々噴飯的な議論があるわけであります。ことに参議院において審議未了になりました当時の参議院の状況を考えてみますると、これら一般会計から繰入れられまする資金もちまして、われわれに言わしむるならば、他の消費的な財政支出に使つて行きたいというような含みを持つておるようであります。極端にいえば、公務員の給與ベースをもつと引上げまして、この繰入れ百億をもつて、これに充当せんとする底意を持つておるようでありまして、実にけしからぬと思います。但しわれわれが考えておりまする範囲におきましては、いわゆるインフレーシヨンの潜在要因というのが、かつて片山内閣の失政より生れました赤字財政に基くインフレとは、その要因が違つております。現在の潜在的なインフレ要因というものは、決して財政インフレではない。他に特需の関係もありましようが、日本の経済が、せつかく今日まで苦心さんたんしてやつて参りました池田財政の安定の基礎の上に立ちまする、いわゆる復興を遂げるための通貨の膨脹であり、その通貨の膨脹は、即生産の拡大である、かような方向をとつておるのであります。従いまして必ずしも通貨量をむやみに押える必要はないが、将来の財政に彈力を持たせる意味におきまして、この百億を一般会計から繰入れますることは、インフレがもし高進した場合の安全弁と申しますか、クッシヨン的な役割をさすためには、ぜひ必要な蓄積であります。しかも世評としては、往々誤解がありまして、この外為会計の中に繰入れます百億は、永久に返つて来ないもののように考えておりますが、すでに日本の経済の国際信用と申しますか、経済の実態は、やや国際通貨基金にも参加を許されるような資格を備えて来た。財政演説その他の演説の機会においても、大蔵大臣から御説明のありましたように、さような場合におきましては、現在の外為特別会計というものはおそらく解消して、名前は違うでありましようが、かつての横浜スペシー・バンクのようなものの設立も考えられる。これは国家的な色彩を持つか、あるいは民間に移すかは将来の問題でありまするが、いずれにしてもさような方式において、外為特別会計というものはなくなる、こういうことが近き将来の見通しとしては言えるわけであります。さような状況において外為特別会計が解消しましたときには、この百億は運用資金として繰入れられたのであるから、必ず一般会計に還元せられるものであつて、むだな消費ではない。むだな消費にかわるのに、有効的な蓄積をして、しかもそれはインフレ抑止のためのクツシヨン的役割をするものである。こう私どもは考えておるのでありますが、従来のお話の中では、むしろ子供に説明するような言葉でありますので、大蔵大臣はわかつておるというような意味で御説明がなかつたと思います。この点につきまして少し詳しく将来の運用等も考えられまして、御説明に賜わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/4
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005・池田勇人
○池田国務大臣 宮幡君のおつしやる通りでありまして、私からつけ加える言葉はありません。あなたので完全に説明ができておるのであります。これから申し上げますと、かえつて蛇足になりますので、おつしやる通りで全部盡きております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/5
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006・宮幡靖
○宮幡委員 私の言う通りだということでありますが、もしこの点について迷われるお方がありましたら、十二月十一日の大蔵委員会の質疑をもつて、よく蒙を開いていただきたいと思うのであります。
次に、これも大蔵大臣にお尋ねするのはどうかと思いますが、さて円資金の欠乏ということが、現段階で参りますと、これからも続くということを一応言わなければなりません。輸出の振興ということに伴いまして、輸入の困難が増大しておるとして、これは野党も指摘しております。これは反対せんがための言葉ではない。貿易については国際経済という観点から行きますと、一応考えなければならない。すでに十一月末において、私のうかがい知り得ました程度では、四億四千万ドルの外貨もしくは外貨受取り勘定を日本が保有する。かような状況になりますと、これの裏づけとなります円資金というものは、当然欠乏して参りますと同時に、今までの貿易が、協定国とはバーター制が主体でありまして、また非協定国も、一部のオープン・アカウントは別といたしまして、エスクロー・バーターであります。かような状況におきましては、輸入というものは著しく困難を感ずると思いますので、貿易方式をかえまして、すなわちバーター制から、何というか現金決済、もつとわかりやすく申せば、ドル決済の方式に移行いたしまして輸入を促進し、従いまして円資金の不足というものは、これに伴い副作用的な効果をもつて解消して行くのではなかろうか。かねてわれわれが片山内閣の飢餓輸出に対する満腹輸出を唱道している、輸入を先にしてしかして拡大された生産のもとに漸次輸出が振う。この線をもう一ぺんやるべきである。これは大蔵大臣に当面お伺いすることは、はなはだ行き過ぎた質問だと思いますが、すでに九月十二日と思いますが、マーカット少将からのユーザンス制度の実施についての大蔵大臣、安本長官、通産大臣に対する覚書等の中にも、この点について言及せられております。逆に貿易特別会計に繰入れます資金も、繰入れを延期したらよかろうというようなところまで、強く言つて来ておるのでありますから、やはり三相御相談の上で、貿易方式の改善についても御協議があろうと思います。そういう意味で大蔵大臣の御所見を伺いたい。バーター制は廃止いたして、順次これを外貨決済の方式に移行するのが、現段階として適当であろうと思いますが、御所信のほどを伺いた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/6
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007・池田勇人
○池田国務大臣 これまたおつしやる通りでございまして、ただ私はバータ一制をやめてすぐドル決済のあれはできるかと申しますと、やはりバーター制を望むところもございますので、ドル決済で自由に買い得るような方法を拡大しながらバーター制を続けて行こう、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/7
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008・宮幡靖
○宮幡委員 この問題については、以上概括論でほとんど盡きておるのでありますが、ただいまの貿易の方式の問題については——きようは時間もありませんので省略いたしますが、当委員会におきまして、十分検討いたしたいと思うのであります。本日は通産大臣もお見えにならぬと思いますので、これは保留いたしておきますが、これらの問題と相互関連としてもう一つ伺つておきたいのは、年末通貨の量を四千九十九億円と算定せられまして、これは非公式の発表でありますが、とにかく公式に国内に流れておる空気であります。その後の状況といたしまして、金詰まりはこれは世評で、あるいは理論的に申すと金詰まりとは言えないこともあるかもしれませんが、世評そのままに受入れますと、どうも年末金融というものは非常に金詰まりだ。しかしながら四千九十九億というものが出て行く段階におきましては、いわゆるまじめな資金の供給を受けようとする方々に、さほどの困難を與えないであろう。これは個人的考え方かもしれませんが、私は推定いたしておりましたが、現在の通貨発行の状況を見ますると、昨年は御承知のように十一月は通貨量が減りまして、十二月に伸びておる。本年は十一月に大体五十八億か八十五億かどつちかでありまするが、通貨がふえまして、そうして十二月を迎えておるのでありますが、これらの傾向を勘案いたしまして、おおむね今まで日銀を中心として、大蔵大臣の財政経済政策の根幹として検討せられました年末通貨の量というものに、何か異状が参つておりませんでしようか。大体あの通りで行く見通しでよろしゆうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/8
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009・池田勇人
○池田国務大臣 今月の初めに、十二月一日は三千五百四十億円程度でございます。それが二、三、四、五日とかなり大量の租税収入がございました。たとえば二日の日なんか百七十一億円の増加が一日にあつた。こういう関係で少し通貨の量が減つて参りました。いつも上旬には減るのでありますが、ただいますが三千五百五十億くらいになつておろうかと思います。そうしますと、昨年のちようど今ごろと大体五百億円余りの増になつております。このまま推移しますれば、昨年は十二月の通貨の増加が五百五十億くらいでございました。従いまして今年はもう一日におきまして昨年よりも五百億円ほど多い。そうしますと、昨年の暮れの三千五百六十億円に対しまして、五百億円ふえますと四千六十億、こういうことになるのであります。お話の通り昨年十一月に少し減つて、そうして十二月に伸びた。ことしは十二月も伸びました。そういうことを見ますと、私は大体四千一、二百億円とこう自分では踏んでおるのでありますが、大体そのくらいでまかなえるのじやないかと思います。それから実際の状況は、この前預金部の方から市中銀行へ預けておりまする百億円の金は、私は一、二、三の三月間に引上げる。そのかわりに金融債の引受けとして二百億円を出すこういう計画を立てて当つてみましたところ、銀行によつては一、二、三月よりも十二月からそれぞれ始めてくれたらどうか、こういうような意見もあるところを見ますと、私は今年の十二月はさしたる金詰まりというようなものはなくて済むのじやないか。また今年内十二月中におきまして、見返り資金の方から出ます電力の方を三、四十億出せるように今交渉を始めております。当然資金も出ましようし、また私企業投資の十七億円ふやしたのも、それからあまり出ておりませんで、ふやした六十億円のうち、二十四、五億しか出ておりません。そうすると三十何億余るのでありますから、月にどうしても十億ずつ出す計算になる、こういうことと、それから公共事業費なんかでも、御承知の通り見返り資金から百十億を予定しておるのでありますが、ただいままで二十四億しか出ていない。こういうようなものも公共事業費の出し方をもつと早くしたい。こう考えますると、そう十二月に非常な金詰まりというようなことはないのであります。またあつてはいけません。政府の支拂いその他を加減いたしまして、できるだけ円滑に年が越せるようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/9
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010・田中織之進
○田中(織)委員 大蔵大臣に二、三点お伺いしたいのでありますが、これは前国会において論議になつた点でございますが、私重ねてお伺いしておきたい。二十五年度の補正予算の編成は、二十六年度の総予算との関連でいわゆる十五箇月予算としてお考えになられたことは、われわれも承知しておるのでありますが、当初政府の方で立案せられました予算に関連した原案では、この外為特別会計へ一般会計から百億繰入れるということは、私はなかつたと承知しておるのであります。それがドツジ公使が参られて、検討を受けてからだろうと推察しておるのでありますが、政府の方で貿易会計の二百億のほかに一般会計から百億、いわゆるインベントリー・フアイナンスとしてこれを外為特別会計に繰入れられるということに、方針がかわつて参りました事情はどういうところにあるのか。これを実は伺いたいと思うのであります。と申しますのは、これは第八国会で朝鮮事変が勃発いたしまして、いわゆる特需関係の需要というようなものが出て参りました。従つて特需に対しましても、国内にある原材料のストツク等の関係とにらみ合せまして、原材料の輸入の促進その他について処置を講じなければいけないのではないかという点は、第八国会で私大蔵大臣に御質問申し上げましたときに、大蔵大臣も特需関係で国内のストツクがなくなつて行くという面は、輸入の増進によつてこれを処理しなければならぬという点について、私の意見に同感を表明せられた。私はすでに第八国会の当時、いわゆる補正予算編成にかかる以前から、すでにこうした事態に対するある程度の見通しを持つておられたと思うのでありますが、しかし政府の方では、その点については原案を作成するにあたりまして、今回のような一般会計からの繰入れというようなことについてはお考えにならなかつたように、政府案というものが新聞紙等に発表せられて、われわれもそれを承知しておつたのであります。今回の補正予算に関連いたしまして、この百億を繰入れなければならなくなつたという事情について、重ねて大蔵大臣のお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/10
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011・池田勇人
○池田国務大臣 当初補正予算並びに来年度の予算を編成いたしますときには、一応朝鮮事変を除いて、骨格予算と申しますか、通常の状態における予算を組んで、それから朝鮮事変の影響を見守りつつ予算を直して行こう、こういう考えで臨んでおつたのであります。第八国会におきましていろいろ議論がございましたが、何分にも六月二十五日に始まりまして、第八国会が終つたのが七月末だつたかと思いますが、どれだけの特需があり、どういうふうなかつこうで出て来るかということがわからなかつた。見通しとしては輸出が相当ふえるから、輸入に対していろいろな手配をしなければならぬということはわかつておつた。あらゆる努力を外貨予算その他につきましてもやつたのでありますが、予想以上に輸出が伸びました。そして輸入がなかなか思うように参りません。しかし八、九月となりました処置によりまして、私は第三、四半期は大体輸出輸入同額くらいにおちつけるのじやないか、第四・四半期——一、三月におきましては輸入の方が輸出よりも多くなる、こういう計画でやりましても、なおかつ百億円ばかり足りない。片一方では日本銀行のユーザンス制度の開始によつて、ある程度日本銀行が外貨を持つことにいたしておりますけれども、それでも足りないという状況なので、百億円を一般会計から繰入れることにいたしたのであります。輸入が予定よりも多くなれば、それだけ外為会計に円資金の余裕が出て来ることになる。私はお話の通り輸入が最もわが国において必要でありますので、極力輸入の増進に向つて進んで行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/11
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012・田中織之進
○田中(織)委員 大蔵大臣は、補正予算並びに二十六年度の予算の編成にあたつて朝鮮事変の影響というものを一応考慮の外に置いて立案をし、その後のいわゆる朝鮮事変の影響というものの推移を考えておつた、こう言われるのでありますが、われわれはすでに第八国会においても、この関係は今後の日本の経済の上に、重大な影響をもたらす筋の問題であるということを、実は指摘して参つたのでありまして、その点から、最近朝鮮事変を契機といたしまする一種のインフレ的な要因というものについても、これはわれわれだつて認めないわけには行かないと考えておるのであります。しかし問題は、今日のインフレ要因というものは、ただ單にそういう国内的な関係だけでなくて、むしろこれは国際経済情勢の変化に基いておることは、言うまでもないのでありまして、そういう点から今大蔵大臣もお認めになられましたように、輸入がある意味において輸出と見合わないというところに、こうした処置を講じなければならない原因を生じたということなのでありますが、輸入の促進のために、現在まで政府が講じられて来ている処置というものは、われわれの承知する限りにおいては、非常に手ぬるい感じを持つておるのであります。今後の輸入促進の問題について、これは当然二十六年度の予算とも大きな関連を持つて来る問題でありますが、大蔵大臣としては確固たる見通しを持つておられるのかどうか。この点輸入の促進について、具体的にどういう手を打たれようとするのか。ひとつ大蔵大臣の持つておられる見通しを、明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/12
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013・池田勇人
○池田国務大臣 私の所管ではございませんが、一応考えておるところを申し上げたいと思います。輸入が昨年度に比べまして、この上半期は非常に減つております。昨年の五、六、七、八は月に七千五百万ドルあるいは九千万ドルを越えた月もございましたが、今年度は上半期から下半期に移りかわりますときも、昨年度よりもかなり下まわつておる。この原因は、ガリオア資金エイドの物資が、御承知の通り昨年度は四億ドルを越えておつたのが、今度は一億二、三千万ドル、こうなりました関係上、月に二千万ドルくらいは減るのは当然でありまして、こういうかつこうで減つております。しかし一月から始めました外貨予算のつくり方が、ある程度大事をとるようなやり方で、そして一・四半期ごとに組みましても、こちらで組んだのが組み方が少い上に、ある程度向うの方でそれを幾分カバーされ、リザーブされるというかつこうであつたり、また輸入の仕方が特定国から特定物件をこれだけ買うのだ、こういうような組み方にあります関係上、値上りを来したり、なかなかきゆうくつであつたのであります。しかるところ最近では自動許可制にいたしまして、どこからでも、どの品物でもというふうな組み方をし、また一・四半期の計画でなしに、長期計画を立てております。そして思い切つて輸入のための予算を組む。大体今までの考え方は、これだけドルが入るから、入つて来たらこれだけ買おう、こういう考え方であつたのですが、このくらいドルが入りそうだから、このくらい買うというように、ほんとうに予算的の考え方でやつておりますので、先ほど申し上げましたように、第四・四半期におきましては、輸入超過を私は見込んでおるのであります。宮幡君が前にも御質問になりましたように、バーター制によらずに、たとえば羊毛なんかでも、何も濠州に限つたことはない。アルゼンチンの方にもあるのだから、ほかの方からもどしもどし買おうとか、小麦なんかでもカナダの小麦が安いから、それを入れようとか、いろいろな手配をこちらの方からする必要があると思います。予算を十分組むこと、並びに業者をして外国に行かせてどしどし買付をやらすこと、また官庁の方でも、できるだけ向うの事情を調べ、早急に商談ができるまうに指導して行く、こうやつて行けば、かなり伸びるのではないかと思います。先物の取引をやらすように予算をつくり、またそういうふうな方向で指導しておりますので、私はこのままで行けば、相当伸びて来ると思います。しかし何分にも今値上り傾向が外国で強うございまして、その点私よほど商賣入根性でやつて行かないと、買い遅れるというふうなことが起つて参りましようが、とにかく相当思い切つた見通しで、どしどし輸入をかはすようにいたしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/13
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014・田中織之進
○田中(織)委員 最近のおしなべての海外市場の物価高の影響もあり、さらにはポンドが再び動揺しておるというような関係から、輸入が非常に困難になつておる事情は、われわれも了解できるのでありますが、どうもその点についての積極的な——これは大蔵大臣は主管大臣ではないという立場もありましようけれども、しかしこれは財政とのきわめて密接な関係を持つておる問題でございまするので、私は大蔵大臣もその点については、特に異常な努力を払つてもらわなければならぬと思います。そういう輸入の停滯その他から参りまする関係は、今回の一般会計からの繰入れに現われておりまするように、結局その責任が一般国民大衆に転嫁されるということになつて来ていると思います。私が先ほど申し上げましたように、当初になかつたものが、今度ドツジ公使の検討を通じて初めて現われて来た。その関係が同時に私は税収入の、いわゆる自然増収の面においても、当初二十五億しか自然増収を見込んでおらなかつたものが、四十三億ふえて六十八億の自然増収を見込んで来たという点は、これは大蔵大臣に言わせれば、われわれの邪推だと言われるかもしれませんけれども、自然増収について四十八億の増加が、当初の原案よりも最終的な案にふえて来ておるという関係は、一方においてこういう面の金融的な処置に出なければならぬという関係を、所得税の自然増収の増加率の引上げという形をもつて、これはもつと平たい言葉で言えば、結局税收入の水増しの面でカバーしておるような結果になつて来ていると思います。そういう点から見まして、特に輸入の増進の問題については、大蔵大臣としても非常な努力をしてもらわなければならない問題ではないか、かように私は考えておるのであります。
さらに私は特需に関連した問題について伺います。特需関係のドル支拂いは円滑に行つておるようでございまするが、円支払いの面が非常に停滯している関係で、特需の関係の品物が納まつても代金がもらえないという関係、ひどいのになると、四箇月ぐらい停滯している向きもあるのであります。特需関係の工場で、給料の遅配を生じておるというような奇現象すら出て来ておるのでありますが、こういう特需関係の円支払いの促進ということについては、この法案とは直接関連がございませんが、大蔵大臣としてはどういう手を打つておられますか。この際お伺いをしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/14
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015・池田勇人
○池田国務大臣 租税の水増しとおつしやいますが、私は決して水増しをしていないと思います。所得税がふえて参りました例を申し上げましても、源泉徴収の税は九月は九十七、八億、十月には百七億というような非常なふえ方で、こういう状態を見込みましてたとえば当初予算におきましては、五、六、七というものを見てやつたのでありますが、そのころから比べまして月十億円くらいずつふえて行く、こういうような状態でありますので、二十五億の見込みが低過ぎる。それからまた法人関係でも九月の決算の状況は、先ほど申し上げましたように、十二月二日には九月、十月の会社の決算が確定して納めるころになります。一日に百七十一億も入る。こういうことは日本始まつて以来例がないことなのでありますが、九月、十月の法人の決算状況は非常によかつた。こういう関係等で、私は租税に水増しがあるというふうなことは全然考えておりません。昔から大蔵省は租税収入には非常につらい気持でやつておる。専売益金なんかでも、おとといでございますか、参議院の予算委員会で、専売益金が七十九億円も減るのはあまり減少を見過ぎる、こういうような非難を受けたのでありますが、私は大丈夫だという考え方で専売収入減少を七十九億見込んだ、こういうような心構えで実は歳入を組んでおるわけであります。社会党の方々が言われるように、決して水増しをしてはおらない。もし水増しをしておるとすれば、予算を施行する上において非常な危険がございますので、そういうことはしておりません。
なお特需関係の支払いの問題でございますが、私は今までそういうことは聞いておりません。政府の支払いはなるべく促進するように、実はこの十一月ごろから事務当局に言つておるわけであります。あまり引締め過ぎて、そうして十二月の二十日ごろとか十五日ごろにどつと支払いをやるということでは困る。十一月には早めに支払つて、十二月に固まらないように指導いたしておりますが、お話の点がありますから調べてみましよう。そう遅れておるとは私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/15
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016・田中織之進
○田中(織)委員 特需関係で品物が納まつて、ひどいのになると四箇月ももらえないという事情で、非常に金融上困つておるという実例は、私の手元に相当出て来ておりますので、いずれ大蔵大臣が調べてくださるということでありますので、私の方からそういう面の資料を出して、これは今後の折衝にゆだねたいと思うのでありますが、この自然増収が、当初の二十五億という予定が、六十八億かふえたことと、今度の百億繰入れとどうも関連を持つておるように、われわれは考えられてならないのでありますが、その点が大蔵大臣とわれわれの見解が対立するのでありますから、これ以上議論しても始まらないのであります。
最後にお伺いをしておきたいのでありますが、この一般会計から特別会計に繰入れにつきましては、前々に国会であつたかと思いますけれども、いわゆる食管特別会計の百七十億の繰入れのときにも、われわれはこれに反対をいたしまして、大蔵大臣に追究をしたのでありますが、その当時たしか大蔵大臣は、これはもう食管特別会計だけを対象にされておつたと、あるいは言われるかもしれませんけれども、これきりでやれないのだということを、予算委員会におきましても、あるいは大蔵委員会におきましても、大蔵大臣は言明されたと思うのであります。今回もわれわれはこういうような方面の処置といたしましては、これは日銀からの借入れで、十分間に合うものだという見解を持つておるのでありますが、問題は二十六年度の予算もいずれ近く国会に提出されると思うのでありますが、こうした関係のいわゆるインベントリー・フアイナンス、一般会計からの繰入れは、今後も大蔵大臣としては考えて行かれるおつもりであるかどうかという点が一点であります。
それからついでにお伺いをしておきますが、今度この外国為替特別会計と見返り資金との関係で二本建になつて、貿易会計の特別会計はなくなることと思うのでありますが、同時に出されておりまする二百億の貿易会計から今度の外為特別会計へ移す関係で、貿易特別会計の方はいわゆる残というか、そういうようなものは全然なくなるわけでありますかどうか。この二点についてお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/16
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017・池田勇人
○池田国務大臣 いわゆるインベントリー・フアイナンスの問題につきましては、従来から均衡予算と均衡財政という立場から論議されておつたのであります。御承知の通り今お話の貿易会計は、昨年二十四年度は四百億円繰入れ、お話のように食管特別会計には百七十億円、私は大体これは安定をしたならば債務償還はしなくてもいい、それからインベントリーもやらなくてもいいというので、実は来年度の予算を一応組んでおるわけでありますが、その後の朝鮮の状況その他から考えまして、片一方で減税をする場合におきましては、片一方である程度のインフレ要因を押える措置をとる必要がある。こうした考え方を少しきつくいたしまして、今明年におきましても、すなわち来年度予算におきましても、一般会計からインベントリー・フアイナンスをやる考えでおります。
次に貿易会計の方は御承知の通り外為会計に二百六十九億円繰入れまして、来年度から清算に入りますが、来年度貿易会計から四十六億くらい一般会計に繰入れるようになると思いますが、数字の点ははつきりいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/17
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018・米原昶
○米原委員 本日は時間の制限をされておりますので、質問をやめにしようと思つておつたのでありますが、田中委員に対する御回答の中に、ちよつと明らかにしておきたい点がありましたのでお伺いします。
先ほどの外貨予算のことについて、こちらで組んだ外貨予算が向うでリザーブというお言葉がありましたが、どういうことなのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/18
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019・池田勇人
○池田国務大臣 こちらで一応予算を組みましてそうして向うと相談することになる。向うは外国の事情をよく知つておりますから、こういう計画をつくつてもこれだけ払えないじやないか、こう向うとしての意見を述べられる場合があるのであります。そういうことを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/19
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020・米原昶
○米原委員 そうしますと、決定権はこちらの同僚審議会できめることになつているわけであると思いますが、そこで聞きますのは、先ほどカナダから小麦を入れようとかいうお話がありましたが、十月、十二月にカナダから十万トン小麦を入れるというような意見が農林省であつた。そういうものは一度は予算に組まれたけれども、それがだめになつたというような話を聞いておりますが、それはどういうような事情でそういうようになつたのか。カナダから小麦を入れる條件はあると思いますが、それより高いものをどうして入れなければならないのか。そういう点を明らかにしてもらいた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/20
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021・池田勇人
○池田国務大臣 私は直接貿易の方をやつておりませんが、そういうふうな方法で、各方面からものを入れてみたらどうかという考えを持つております。実はこの前通産省の武内通商監が向うに行くについて私のところに参りまして、君行つたらひとつカナダの方の状況も調べて来てくれという話もしたのでありますが、何をいつどこからどれだけ入れるかという実際の衝に当つておりませんので、一々外貨予算のこまかいことを覚えておりませんので、今はつきりお答えすることはできない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/21
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022・夏堀源三郎
○夏堀委員長 本案に関してはほかに御質疑はございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/22
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023・小山長規
○小山委員 本案に関しましては、先国会においても質問があり、ただいま補足的な質問がありましたので、この辺をもつて質疑を打切られ、ただちに討論、採決に入らんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/23
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024・夏堀源三郎
○夏堀委員長 小山君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/24
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025・夏堀源三郎
○夏堀委員長 御異議ないようであります。
これより外国為替特別会計の資本の増加に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題として、討論に入ります。宮幡君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/25
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026・宮幡靖
○宮幡委員 私は自由党を代表いたしまして、再度審議にかかつておりますただいまの法律案に対し、全面的に賛成の意思を現わすものでございます。
終戰後の日本の貿易は、御承知のように一時まつたく閉塞の形となつたわけでありますが、昭和二十二年八月十五日と覚えております。片山内閣当時に、貿易の再開が認められまして、日本経済の国際経済べの参加のスタートが切られたのであります。そうしてその貿易方式は完全なる管理貿易でありまして、しかも片山内閣の財政経済政策は、赤字公債によるインフレ経済の激化をもたらしたものであり、これに伴いまして国内物価の急騰と生活の不安とを招来いたしまして、生産は縮小して、いわゆる飢餓輸出の強行さえ余儀なくせられたのでありまして、貿易の振興は盛んに叫ばれましたが、單なるお題目にすぎなかつたことは、皆様御承知の通りであります。
続いて芦田内閣時代においても、インフレはますます高進いたしきて、貿易は沈滯の状態を続け、局面の打開は何ら見るべきものがなかつたことも、これまた既成の事実であります。
わが吉田内閣は組閣以来貿易方式の一大転換に志しまて、連合軍総司令部、ことに米国の厚意による物心両面の援助により、飢餓輸出から満腹輸出へと切りかえ、財政経済政策は超均衡予算を根幹とする惡性インフレの克服、経済安定、国内物価の国際経済へのさや寄せ、自由主義経済に基く拡大生産等に熱意ある各般の施策を断行し、さしもの惡性インフレも収束せしめ、物価の安定、生産の上昇となり、ひいて国際経済への信用が高められまして、貿易振興の基盤を成形した次第でありまして、この功績は天下周知の事実であり、世人の納得するところであります。
かくして輸出の振興による経済自立達成の希望は輝き始めまして、國際信用はいよいよ高まりまして、連合軍総司令部よりは昨秋ローガン構想に基く自立、自由貿易の方式が許されまして、輸出貿易は昨年十二月より、輸入貿易は本年一月一日より発足し、同時に外国為替特別会計も発足いたしまして、貿易は画期的の進展を見、ことに輸出については目ざましき躍進をしまして、十一月末には四千四百万ドルの外貨及びその受取り勘定を、保有し得るような状況になつた次第であります。外貨保有の増大はその裏づけとなる円資金の増大を要することは必然でありまして、外為特別会計の円資金の増加をはかり、国内貿易金融に特段の配慮を要することも当然のことでございます。
すなわち政府は期限付手形制度ユーザンスを実施して、これに対処するの施策を講じた次第でありますが、これに関し本年九月十一日マーカツト経済科学局長は、日本政府の経済三大臣に対しまして書簡を送られ、外為委員会が期限付手形制度を実施する場合には、外為会計内の円資金不足問題が起るが、これは外為会計から貿易特別会計に繰入れる円資金をできるだけ延期し、そうして逆に貿易特別会計から外為会計に円資金を繰入れることによつて、調節ができるとの要旨が示されて、これに基きユーザンス制度を実施して来たことも御承知のところであります。しかして本法律案は貿易特別会計から外為会計に二百六十億の繰入れをしても、なおかつ円資金の不足を予想せられるので、一般会計より百億の繰入れをなさんとするものでありまして、この妥当性を否定する何らの理由もないものと断ぜざるを得ないのであります。野党各派の反対の理由とする一般会計よりの繰入れによる繰入金は、現内閣の財政経済政策の一環として、健全財政方式を堅持する立場において当然のことでありまして、ことに借入金により円資金を調達することを避け、いまだインフレ要素の潜在する現段階において、インフレ抑止のクツシヨン的役割を果さしめんとすることの適切なる措置は、推奨するにやぶさかでありません。ただここに注意すべきことは、輸出振興による外貨保有高の増高の傾向に対応するため、現在のバーター制の貿易方式を改めまして、外貨決済方式に順次移行して輸入の円滑をはかり、あわせて円資金の不足を緩和すべきであると信ずる次第であります。さらにインフレの潜在の要因となるものは、片山内閣当時のような赤字財政インフレとは趣を異にするものであつて、日本の経済規模に順応する通貨の発行なくしては、日本経済安定の基礎の上に復興を達成することが困難であることは、留意すべきであります。
最後に本法案に基く一般会計の繰入金を、他の消費的歳出に振り向けようとする野望のもとに、本法案に反対せんとする諸氏に対して、一言意見を呈するの要あることを痛感するものであります。すなわち一般会計繰入金百億は、これによつて消費し盡されるものでなくして、むしろ外為会計の運用資金の中に蓄積し、将来一般会計へ還元さるべきものであることを知らなければなりません。従つて資本の蓄積の乏しい日本の財政の現状においては、この財源を消費的支出に転用せんとする意図には、根本的に賛意を表しがたい次第であります。その他前に述べました理由により、本法律案の成立を強く支持するものでありまして、自由党を代表し以上をもつて賛成の討論といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/26
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027・夏堀源三郎
○夏堀委員長 田中君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/27
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028・田中織之進
○田中(織)委員 私は日本社会党並びに民主党を初め、共産党を除いた野党各派を代表しまして、本案に反対の意思を表明するものであります。
政府が二十五年度補正予算並びに二十六年度の本予算を編成するにあたりまして、朝鮮事変のこれだけ深刻な影響を考慮の外に置いたということ自体が、政府の財政政策に定見がないということの暴露であります。まさにその意味において、外為特別会計の資本増加のための一般会計からの百億の繰入れも、ドツジ公使の来朝による検討を通じ、初めて頭を出して来るというようなことも、この政府の財政政策について、確たる見通しを持つておらないという無定見を、ドツジ公使によつて指摘されたような感じをわれわれは受けておるのであります。現在になりまして大蔵大臣が申されるように、朝鮮事変の影響に上るところのインフレ要因を抑圧するための今回の処置である、こう言われるのでありますが、私は今日のインフレ要因というものは、こういうものではなくて、先ほども質問のときに申し上げましたように、国際的な経済情勢の大きな変化、ことに最近顯者になつて来ております海外市場の物価高の問題、並びに国内の輸出増進の面が、むしろインフレ要因として、われわれが考えなければならない問題ではないかと思うのであります。それに見合うところの輸入がまつたく停滯しておるというところに、根本的な原因をわれわれは見出さなければならないのではないかと思うのであります。それを根本的な手を打つことなしに、單純な金融的な措置によつて、これを阻止しようとする考え方こそ間違いであると、私は言わなければならぬと思うのであります。さらに輸入の促進のためには、大蔵大臣は主管大臣ではないと言われまするけれども、これが今日の日本の財政金融政策とうらはらの関係にあつて、大蔵大臣としても、特にこの点については重大な責任を負わなければならないのでありますが、われわれの見るところ、そうした面における積極的な努力を見出すことができない。むしろこの点は輸入の増進のためには、政府はその責任を怠つておると、われわれは言わなければならないと思うのであります。しかも政府がその怠慢の責任を、一般会計から繰入れることによつて、カバーしようとすることは、政府の責任を国民大衆全般の負担に帰せしめようとする意図でありまして、これがわれわれの本案に反対するところの根本的な理由であります。しかも大蔵大臣は先ほどの御答弁では、頭から否定してかかつておりますけれども、この外為特別会計への百億の繰入れと、うらはらの関係をなすがごとく、当初二十五億しか自然増収を見込んでおらなかつたものが、突如として四十三億ふえまして、六十八億の自然増収を見込んで、それを含めたものの中から百億というものを、この外為特別会計に繰入れしようとする意図が明らかに見えるのでありまして、一方において租税の収入の水増しをやつて、政府の怠慢の責任を国民大衆に転嫁しようとするこの態度に対しましては、われわれは絶対に賛意を表することができないのであります。池田大蔵大臣は、いわゆるドツジ政策の忠実なる実行者の立場に立つておりまするが、インフレを恐怖するのあまり、これに対する根本的な手を打つことを忘れて、イージー・ゴーイングな方法にのがれようとする態度を、これまた糾彈しなければならないと考えるのであります。ことに従来からインベントリーフアイナンスにつきましては、大蔵大臣もたびたびこれをやらないということを言明して参りましたにもかかわらず、本日の大蔵大臣の御答弁によりますると、二十六年度においてもこの方針を踏襲するということを言明されるにおきましては、今まで大蔵大臣がドツジ政策の信奉の見地からも、われわれ議会を通じて国民に公約して参りましたところのこの約束を、大きく私は裏切ることに相なると考えるのでありまして、そういう点からわれわれは、今後の政府の現在懸念されまするインフレ要因に対しましては、抜本的な手を打つて行くべきだ。ただ單に輸出が増進したことが、現実において輸入がこれに見合うものがないならば、まさに国内の物資のバランスが破れるばかりではなくて、こうした国民の税負担の面における大きな負担を背負わされる結果をも招来するのでありまして、そういう点に対して、政府に今後根本的な処置を講ずべきことを要求するとともに、本案に対しましては、われわれは絶対に反対の意思を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/28
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029・夏堀源三郎
○夏堀委員長 米原君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/29
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030・米原昶
○米原委員 私は日本共産党を代表しまして、本案に対し簡單に反対の意見を述べるものであります。
先ほど自由党を代表しまして、宮幡委員から吉田内閣の政策によつて管理貿易が自主的な民間貿易となり、飢餓輸出は満腹輸出にかわりつつあるというふうに、吉田内閣の貿易政策を謳歌されましたが、現実はまさにそれとは反対だと私は思うのであります。自主的な民間貿易といいながら、事実上は外貨予算の面におきましても、まつたく自主性を失つているのが現実ではないでありましようか。先ほどこちらでつくつたところの外貨予算をリザーブされるというような言葉で、大蔵大臣もその点を表明されておるのでありまして、事実上自由にわれわれが欲するものを、われわれが欲する国から輸入するということができない実情ではないか。しかも朝鮮事変以後世界資本主義諸国における軍備拡張計画に従つて、わが国からも大量の戰略物資が輸出されるという状態であります。しかもそれらの基礎的な物資は、わが国にどうしても残しておかなくちやならぬものまでも、輸出されるというような状態になつておつて、実際上それは満腹輸出ではなくて、まさに飢餓輸出の状態だと思うのであります。そういう形からこのインベントリー・フアイナンスの問題が現実に起つて来たのでありまして先ほど大蔵大臣自身が言つてましたように、朝鮮事変の結果こういうことが起つたのは事実であります。まさに吉田内閣のとつて来ておるところの国連協力、向米一辺倒の政策こそその結果として、その犠牲が今やこの百億のインベントリー・フアイナンスによつて、当然前国会において補正予算に組まるべきはずの、たとえば地方財政に対するところの平衡交付金八十八億円の予定が三十五億円に減額されあるいは歳末手当一箇月分が半箇月分に減額された。そういう形でまさに朝鮮事変の犠牲、国連協力政策の犠牲が国民大衆に負わせられておるのでありまして、そういう形で外為特別会計への繰入れが行われておるのであります。そういう意味において、われわれは絶対にこの法案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/30
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031・夏堀源三郎
○夏堀委員長 討論は終局いたしました。
これより本案を話題として採決に入ります。本案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/31
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032・夏堀源三郎
○夏堀委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)
なお報告書の作成提出の手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。
次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれをもつて散会いたします。
午前十一時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X00219501211/32
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