1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月二十四日(土曜日)
午前十時五十九分開議
出席委員
委員長 夏堀源三郎君
理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君
理事 天野 久君 理事 田中織之進君
大泉 寛三君 川野 芳滿君
佐久間 徹君 佐藤 親弘君
島村 一郎君 高間 松吉君
清水 逸平君 苫米地英俊君
三宅 則義君 水田三喜男君
宮幡 靖君 塚田十一郎君
内藤 友明君 宮腰 喜助君
松尾トシ子君 竹村奈良一君
出席政府委員
大蔵政務次官 西川甚五郎君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 佐藤 一郎君
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
国税庁長官 高橋 衞君
委員外の出席者
農 林 技 官
(農地局管理部
特別会計課長) 鈴木 征六君
專 門 員 椎木 文也君
專 門 員 黒田 久太君
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二月二十四日
委員有田二郎君及び大上司君辞任につき、その
補欠として佐藤親弘君及び大泉寛三君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二五号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二六号)
通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二七号)
登録税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二八号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二九号)
印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三〇号)
骨牌税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
三一号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第三五号)
農地証券の償還金の一部を一般会計の負担とす
ることに関する法律案(内閣提出第四〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/0
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001・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これより会議を開きます。
本日は日程により去る二十日本委員会に付託に相なりました農地証券の償還金の一部を一般会計の負担とすることに関する法律案を議題といたしまして政府当局より提案趣旨の説明を求めます。西川政府委員。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/1
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002・西川甚五郎
○西川政府委員 ただいま議題となりました農地証券の償還金の一部を一般会計の負担とすることに関する法律案提出の理由を御説明申し上げます。
自作農創設特別措置法に基きまして、政府が発行いたしました農地証券は、その特殊な性格にかんがみまして、償還財源の許す限り、できるだけすみやかにこれが償還をはかる方針をとつて参つたのであります。すなわち、昭和二十四年度におきましては、自作農創設特別措置特別会計に余裕資金が生じましたので、とりあえず一世帶に対して一定金額を限度として、買入れの措置を講ずることとしたのでありますが、昭和二十五年度におきましては、多年懸案となつていた全額償還を急速に実行するため、この会計の余裕資金のほか、一般会計の債務償還費の一部をも買入れに充てて参つたのであります。しかしながら、一般会計の債務償還費をもつてする償還につきましては、農地証券が、自作農創設特別措置特別会計法の規定により、同会計の負担となつております関係上、会計上の措置として、同証券の負担を一般会計に移すことが必要でありますので、この際目下国債整理基金特別会計において買入れ保有しております分と、次年度以降となる分の償還を一般会計の負担といたしますとともに、なおこの結果一般会計の負担となる金額につきましては、将来自作農創設特別措置特別会計から毎年度、予算の定めるところにより、一般会計に繰入れることとしようとするのであります。これがこの法律案を提出いたしました理由であります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/2
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003・夏堀源三郎
○夏堀委員長 質疑を許します。内藤君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/3
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004・内藤友明
○内藤(友)委員 一、二お尋ね申し上げたいと思うのでありまするが、いただきました資料によりますと、この法律によつて償還を予定されておりまする額は十七億という数字が出ておるのであります。そこでこれは佐藤さん、予算には十七億は計上してあるのでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/4
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005・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 お答えいたします。予算には本年度二億七千四百二十四万九千円の分だけが載つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/5
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006・内藤友明
○内藤(友)委員 そうしますと、足りない分は追加補正予算で認められるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/6
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007・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 この十七億と申しますのは、二十六年の二月以降今後の全部を表わしておるわけでございますので、年々の余裕金から償還するということになつております。すなわちあえて補正予算といわずに、二十七年度には幾らというふうに今後予算化し、ないしは会計に余裕がありまして償還が可能であるたび、ごとにやつて行くわけであります。ですからこの十七億の差額を全部二十六年度に償還をする、こういうことではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/7
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008・内藤友明
○内藤(友)委員 そうしますと、その差額は、二十六年度の予算処置としてはどういうことになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/8
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009・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 先ほど本年度と申しましたのは訂正いたします。先ほどの数字は二十六年度の予算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/9
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010・内藤友明
○内藤(友)委員 そうしますと、これだけを一般会計から出して一時償還をするのでありますが、その後はこの法律によりまして、また買つた人から金をとつて、それを繰入れて行くということになつております。そこでこれは佐藤さんにお聞き申し上げていいのか惡いのか存じませんが、実は私どもは自作農の維持資金というものが、戰争後打切られまして困つておるのであります。正直申しますと、農地改革によりまして自作農になつたけれども、いろいろな経済上の関係でまた転落いたしまして、その農地を持ち切ることができない、こういう状態に実はなつておるのであります。これは農地改革に対していわゆる画龍点睛を欠くきらいがありますので、昔ありました維持資金をどうしても出してもらわなければならぬということを、強く考えておつたのでありますが、実は今日はこれがございません。そこで毎年償還して来ます金を一般会計へ繰入れて来るのでありますが、これをそういう維持資金のところへまわしていただけないものだろうか、どうかという問題でございます。政府が親心からこの農地証券を全額償還なさつても、これは意味ないことになるのではないかと思うのであります。これは佐藤さんお一人でのお答えはちよつといかがかと思いますが、そういうことを実は私ども農村において実地を見ておりまして非常に強く考えるのでありますが、ことに事務をやつておられる佐藤さんがこういうことについてどういうお考えか、それだけでもひとつお漏らしいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/10
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011・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 これはむしろ農林省からお答え願つた方が適当と思いますが、おつしやるようにせつかく自作農創設をいたしまして、それを維持する上にいろいろな困難があることは、私どももしばしば伺つております。これについては過去においてもいろいろと、内藤さんも御承知のように検討されまして、従来もわずかでありますが、金が出ておつたわけでありますが、ただいまのところは打切られております。ただ今回のこの金をただちにそれに振り向けるということは、少し別問題であろうと思います。農地証券をできるだけ繰上げて償還をする。そうしてそれの負担を移すという関係だけの問題でございますので、その問題はむしろ別途に研究すべき問題だと思いますが、農林省の方からお答え願う方が適当かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/11
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012・内藤友明
○内藤(友)委員 それでは鈴木さんから、農林省のお答えをひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/12
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013・鈴木征六
○鈴木説明員 私ども内藤さんからのお話の通り、自作農創設を維持したという問題で一応農地改革は終つたのでありますが、永久にこの制度の精神を生かして、健全な農家が発達して行くというような方向に進むためには、農地改革をやつただけて事終れりということでありはないと思います。それにはいろいろ対策が今後も講ぜられなければならぬと思います。お話の通り今後も農地改革はあり、あるいはその他で自作農創設維持のためにいる資金というようなものも、たとえば一応購入するための資金でありますとか、債務の借りかえでございますとか、あるいは相続の関係というようなものについては、今の市中銀行で借り入れて行くというような方法では、実情に合わぬというようには思つておりますが、この点はさらに大蔵省とも検討をしていただいて対策を講じたい、こういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/13
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014・内藤友明
○内藤(友)委員 大蔵省でも今の問題は真剣にお取上げいただきたいと思うのであります。
それから佐藤さんにもう一つ、例の農業共済の問題でありますが、あれも関連しておる法律が出ておりますから、十分すみやかに御研究いただきまして、あれの目途がつきますれば、あの法律はただちにわれわれ賛意を表するのでありますが、それができない間は、いつまでたつてもこの法律はあのままと、ひとつ御承知おきいただきたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/14
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015・夏堀源三郎
○夏堀委員長 次に、去る二十二日すでに質疑を打切りになりました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、登録税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案、骨牌税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の八税制改正法律案を一括議題として、討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。三宅則義君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/15
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016・三宅則義
○三宅(則)委員 私はただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、登録税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案、骨牌税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案の八法案に対しまして、自由党を代表して賛成の討論をいたしたいと思うものでございます。
わが自由党は国民租税負担の公平と軽減を期するために、シヤウプ博士の勧告案に同調いたしまして根本的に改正を行わんといたしたのでありまして、かつての先国会におきましては、酒税の引下げや物品税の大幅の改正、並びに砂糖消費税及び揮発油税の引下げ等を行つたのであります。さらに給與所得者の源泉徴收額の軽減等は、いずれも大英断をもつて行つたのでございまして、着々その成果を收めたものでございます。今第十国会におきまして、本年度七百四十三億円の減税を行いまして、よくもその公約を実行し得たということは、わが党二百八十名の威力というべく、まことに成功を国民とともに喜ぶものであります。これから八法案は、いずれも負担の一層の公平と合理化をはかるために、税制の簡易化をはかつたということであります。なお欲を言いますれば、條文が千何百條にわたつているのでありますが、これを一層簡素化せしめまして、別に法三章とは申しませんが、約百條ぐらいに縮めまして、一応各人とも申告納税は、これを見ればできるというようにいたしたいというのが、われわれの欲望でございます。なお朝鮮動乱の勃発に伴いまして、国際情勢が変化いたしました関係上、わが国の自立経済の達成のために、また講和会議を目前に控えておりますために、資本の蓄積ということは、今日の日本の急務であります。これに対しまする適当な改正案であることを、まず前提として申し上げる次第であります。
所得税法の一部を改正する法律案につきましては、まず基礎控除を引上げたことでありまして、従来は一世帶の基礎控除は現行二万五千円でありましてこれでは少な過ぎるというわけで、今回は三万円に引上げたのでありまして、最低生活の保障の基礎となつたものであると、私どもは考えるような次第でございます。
二番目に扶養控除の引上げでありまして、従来は扶養親族一人について一万二千円でありましたものを、今回は一万五千円に引上げたのであります。日本の平均の一世帶は五人でございますが、夫、妻、子供三人といたしますれば、事業所得、農民の零細なる方は、基礎控除におい三二万円、扶養控除において四人で六万円、合計九万円が控除せられることとなりますから、日本の農家の大部分の方は国税は免除ということに相なるような次第でございます。地方の各位の福音であることは申すまでもなく、わが党の政策がいかに中小企業、農民の味方であるかということを証拠づけるものであると信ずる次第であります。給與所得者に対しましては、さらに一万五千円の控除がありますから、月收一万五千円の方は、扶養親族四人といたしますれば、現行法では千四百五十八円でありますが、改正法では千百四円になるようなわけでありまして、軽減割合は二割四分二厘となり、事業所得十万円のもの、これは零細なる所得者でありますが、扶養控除が四人でありますと、現行法では五千四百円となつておりますが、改正いたしますと二千円となりますから、軽減割合はまさに六割二分九厘というふうになつて参ります。なお事業所得者あるいは中小企業者等におきましても、二十万円の万にしますならば、扶養親族四人といたしますならば、現行法では負担は三万三千三百円でありますが、改正法では二万五千五百円と相なるような次第でありまして軽減歩合は二割三分四厘となりまして、大幅に軽減いたしましたことは、いかなることから考えましても、まことにその効果きわめて大なるものであるということを言い得るのでございます。二十万円以上五十万円以下の方について申しますれば、現行法では二十万円以下と五十万円以上とには割合に軽減されておりますが、その中間の三十万円ないし四十万円という程度は、割合に軽減が少かつたのであります。今回の改正によりまして、二十万円を越える金額に対しましては、従来百分の五十であつたものを百分の四十と引下げました。また三十万円を越える金額には、新たに百分の四十五という税率を設け、従来五十五万円を越えるものが百分の五十五となつておりましたものを、百万円を越えるものについて百分の五十五といたしましたことによりまして、ここに年收三十万円、四十万円という方々は中堅階級でありますが、この方々の軽減は大なるものであると思いまして、けだし国民の要望を満たしたものといたしまして、私はまことに感謝さるべき法律の改正であると確信する次第であります。
次に特別控除でありまして、これは従来になかつたことを今回初めてやつたのであります。老年者控除は、六十歳以上の老年の者に対しましては、新たに一万天千円を控除する。未亡人の控除は、扶養親族を有しまする未亡人等に対しましては、その所得から一万五千円を控除することにいたしたのであります。さらに勤労学生控除では、一定金額の所得が十万円以下の者、または自己の勤労所得が五万円以下の者に対しましては、これまた一万五千円を控除することになつたのでありまして、これはまことに賢明なる方策であると考える次第であります。さらに保險料に対しましては、御承知の通り生命保險の控除は従来もあつたわけでありますが、一時中絶になつておりましたものを、今後は拂込金二千円までの金額に対しましては控除することにいたしましたから、これまたいずれも社会政策案現の一環とも言うべく、自由党の政策は時宜に適したものであるということを、私は信じておる次第であります。
次に資産所得、扶養親族所得の合併の廃止であります。従来は自己の所得に加えまして、扶養親族の得まする所得を合算しておりました関係上、非常にみんなが迷惑を感じておつたのであります。これがために、その所得が減少し頭痛の種でありましたが、今回の改正によりまして、その制度を廃止いたしたために、納税者の喜びはもちろんのこと、徴收する官吏の方も簡素化いたしまして、その効果一石二鳥と言うべく、まことに民主的に改善せられたということを考えまして、国会として喜ぶべき改正であると信じておる次第であります。
預貯金利子源泉選択制度でありますが、この制度は、資本蓄積の一環といたしまして、預金、公社債の利子等の源泉選択を行うことにしておるのでありまして、その税率は五〇%としておるのであります。これはちようど五十万円以上の所得者と同率になりますから、将来の日本の資本蓄積上には、これがきわめて効果的であるということを私はかたく信ずる次第でございます。
次に青色申告徴收猶予の点等でございまするが、これはシヤウプ博士の勧告案に基きまして青色申告制度を設けた次第でございますが、これは正直な者が真実を申告し、かりそめにも税務官吏の一方的判断によつてのみ決定するような弊を避けまして、公平なる課税をなさんとする趣旨であります。から、最も進歩いたしました制度の一端と言うべく、また再調査、審査請求中のものに対しまして、差押えや公売、強制執行はしないということに改正いたしましたから、青色申告者の権益はまことに擁護せられ、まじめなる納税者の将来に対しましては、まことに利益が拡大されるものと考えまして、これまた特筆すべき改善であるということを賞讃する次第であります。ただうらむらくは、一般の正直な納税者に対しましても、この制度を実現すべく努力いたしたいと考えておりますから、われわれもそれに対しまして、将来の立法措置を講ぜられたいという考えを持つておる次第でございます。
次に申告の時期でありますが、農業所得者以外の申告者に対しましても、毎年七月、十二月、翌年の二月ということに今度改めました。これは従来は事実上毎年一月に確定申告をし、二月に更正決定、三月に納入ということになつておりましたが、一月早々では正月の初めでありまして、申告者の方も、また税務当局の方も、時期が少々短か過ぎるというわけでありましたが、今回の改正によつてこの時期が十分になります関係上、納税者の方もりつぱな計算ができ、また税務官吏の方も調査するのに便利であるということになるばかりか、今回吉田総理大臣、池田大蔵大臣が本会議並びに委員会等において演説せられたところによりますと、大体申告は八割方承認し、二割程度だけは更正決定いたしたいというような線を持つておることは、質疑応答の中にも現われておりますが、私どもはぜひこの適正なる処置によりまして、申告納税を拡充いたしたいと考えておる次第であります。
更正決定のことでありまするが、従来は更正決定は五年以内にやることができるということになつておりましたから、たとえて申しますと、終戰直後から本年までなおそのことは継続し得られたわけでございますが、それではあまり長くかかります関係上、納税者自身に対しまして迷惑をかけるという観点からいたしまして、今回の改正には三箇年以内に限つてなし得るという制度を設け、個人のみならず法人税及び相続税においても、同様三箇年以内にするということになりました事柄は、まことに進歩いたしましたる改正であるということを考えておる次第であります。
法人税の一部を改正する法律案に。きましてこれを簡單に申し上げます。今まで積立金に対しまして二%の法人税をかけておつたのでありますが、これは資本蓄積上おもしろくないという意味合いによりまして、今回廃止いたしました。但し同族会社の積立金に対しましては、現在七彩の法人税がかかつておりましたが、これを五%にいたしまして、非同族会社の子会社に対しましても、同族会社の積立金課税を行わないというように改められたのでありまして、これはけだし会社の経理に有利でありまして、資本の蓄積もまた見るべきものがあると信ずる次第であります。
今後新規に購入いたしました機械、設備等に対しましては、取得後三箇年間に限りまして法定償却の正割程度の特別償却を認めるという制度を設けまして、昭和二十六年四月以降に終了する企業年度につきまして適用せられることに相なつたわけであります。なお割増償却分につきましては、右三箇年間の償却では不足でありました場合には、二箇年間経過後も繰込み償却をなし得るという制度に改めました点は、従来の日本の設備、機械等が諸外国に比しまして二十年も遅れておると言われておりましたのを、一刻もすみやかに回復せんとする立法でありまして企業家といたしまして、まことに勇往邁進でき得るものと確信いたしましてこの法案に賛成いたす次第であります。
次に無額面株式の発行価額のうちにおきまして、資本に繰入れなかつた金額は、額面株式発行の場合のプレミアムと同様に益金に算入しないこと、さらに見返り資金の所有するところの優先株式に対する利益配当に対しましては、所有の計算上損金に計算するものとすること等、適当な改正を行つたのでありまして、わが国経済再建に貢献するところきわめて大なりと言わなければならぬと考える次第でございます。
次に、われわれに関係の深い相続税の一部を改正する法律案によりまして、被相続人の死亡によりまして取得する生命保險中十万円までの金額は、取得者ごとに特別の控除をせられることになり、これが昭和二十六年四月一日以降において適用せられること等は、まことに適切なる改正を言うべく、また扶養親族老中の配偶者も、あわせてこれを含めるということになつたことも、またもつともであると言うべきであります。
次は通行税の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。通行税の一部を改正する法律案は、最近わが国の航空機の運輸が許可せられることになつたのでありますが、航空機の乘客に対しましては、通行税を百分の二十とするということになつております。これは当然のことでありまするとともに、また同時に一方汽船の二等乘客等に対しまする通行税は、今回廃止することとなつたのであります。従来からも汽車は三等、汽船は二等というのが通例の観念でありまして、これらは早く廃止すべきものでありましたが、今回これを改正いたしまして汽船の二等乘客に対する通行税も廃止することになつたのでありますから、これまた適切なるものと考える次第であります。但し日本から外国に旅行いたしまする者、もしくは外国から日本へ来る者というような旅客に対しましては特に非課税としたことも、国際的に考えたことでありまして、もつともなことであると考えている次第であります。
登録税法の一部を改正する法律案につきましては、改正商法が施行せられるようになりましたることから、無額面株が発行せられた場合におきましては、株式会社の登録税の課税標準を資本の金額に改めたことでありまして、これは当然なる改め方でありまするから、しごく穏健なる改正であるということを、私どもは考えておる次第であります。
印紙税の一部を改正する法律案につきましては、現行百円を今度は一千円に引上げたことでありまして、受取書、約束手形、為替手形、売買契約書、貯金証書、借用証書等は百円以上でありましたものが、今回経済事情にかんがみまして千円以上にかかる、こういうことになつておりまして、今までわずか百円の領收書に收入印紙が張つてないというために何十倍、何百倍という大きな罰金をとられることがなくなるのでありまして、これはまことに時宜に適したる改正であるということを、強調いたしたいと思う次第でございます。物品切手に対しましては、現行は十円でありますが、これではあまりに少な過ぎるのでありまして、五十円に引上げたことは、また当を得たものと信ずる次第であります。
次に骨牌税法の一部を改正する法律案でありますが、骨牌税法の一部を改正する法律案につきましては、今までと違いまして、トランプ、花札等の一組に対しまして百三十円を五十円に引下げたことであります。また一面から見ますると、二組以上に骨牌が使用せられるものは、一つのものを二つに切断し得るものに対しましては、二組以上と見て課税するということになつたのは当然というべきでありまして、賛成をする次第であります。
さらに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、先ほども法人税のときにちよつと申しましたが、ここであらためて申させていただいて、締めくくりをつけたいと思う次第であります。
預貯金に対しましてはその利息を百分の五十とする、会社の社内留保に対しまする積立金の百分の二を廃止する、同族会社に対しましては五十万円以上の積立金に対して、百分の七を百分の五にする、機械設備の特別償却に対しましては、三年間に限り法定額の五割を認める、見返り資金で保有する銀行等の優先株に対しまする配当につきましては、資金コストを低下させるために損金に算入すること、また輸入砂糖に対しましては、臨時免税措置が講ぜられておつたのでありまするが、今回これを廃止いたしまして、二十六年四月一日からは砂糖消費税がかけられるようになつたことは、これまた当然というふうに考えておる次第でございます。
以上八法案に対しまして、わが党は現吉田内閣を支持しておる関係上——二十五年度は租税印紙收入は五千百八十八億円でありましたが、二十六年度は四千四百四十五億円に減少いたしまして、七百四十三億円の減税ということが言い得るのであります。その明細をここに申しますならば、所得においては源泉所得において三百十億円余、申告所得において三百三億円余、合計六百十四億円、また法人税は再評価を含めますと二十九億円、相続税一億八千三百万円、印紙骨牌税が一億一千三百万円、合計六百四十七億円になります。但し今度は増加する部分もあります。重ねて再評価を行うことによりまして、法人については約十五億円、輸入砂糖について六十億円、合計七十五億円でありまして、結局差引五百七十一億円が減税となります。さらに酒の引下げ、物品税の改正、揮発油、砂糖の消費税の引下げ等を合算すると、政府が申しております七百四十三億円になるわけでありまして、これは二十六年度といたしましてはまことに適切なる予算であり、またこのことに関連いたしまして改正せられた税法は、しごくもつともだと思うものであります。二十六年度の課題は、第一は講和であり、第二は税の適正化である、こういうことを言われておるのでありまして、わが自由党といたしましては、この税制の單純化もしくは合理化を考えまして、国民大衆諸君の要望にこたえるために、わが二百八十五名は一致結束いたしまして、この達成に努力しておるような次第であります。
私は自由党を代表いたしまして、所得税法の一部を改正する法律案外税制七法案に対しまして、満腔の熱意を示しまして賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/16
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017・夏堀源三郎
○夏堀委員長 宮腰喜助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/17
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018・宮腰喜助
○宮腰委員 私は民主党を代表しまして、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、登録税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案、骨牌税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案の八案に対しまして、希望條件を付しまして賛成するものであります。その詳細なる内容は法律の條文に示されておるので、その内容は申し上げませんが、私は希望條件をお願いしまして、この法案に賛成するものであります。
政府は常に国民生活の安定ということを申されております。しこうして減税もその一つの方法でありますが、今回の減税を見ますると、必ずしもそのようには考えられません。朝鮮事変以来物価はどんどん上昇しておりまして物によつては十割も上つております。しかるに所得税の基礎控除の方は二万五千円から三万円、扶養控除一万二千円を一万五千円に改正したのでありまして、国民生活の安定より考慮したというこの減税は、物価の値上りで打消しとなつております。私はこの基礎控除を四万円、扶養控除を三万円までに引上げていただきたいのであります。また可得税の全体より考えて、大衆にしわ寄せの感じがいたします。ことに五十万円までを数段階にわけて五〇%の限界を設け、百万円より以上を一率に五五%としたことは、政府は資本蓄積という点を考えたかもしれません。しかし大衆の生活安定を考えずに、富裕なる段階に対してこのような措置をしたことは、誤りであると考えるのであります。政府は富裕階級には富裕税をかけるというも、これは單なる税をとるのだというゼスチユア以外にはありません。むしろ富裕税のごときは廃止して、一般の累進税率によるものと改正すべきであります。私は富裕税があるために、資本蓄積には弊害があると思います。ことに今回国税局で富裕税の調査に対しまして、現金を調べるという発表があつたために、銀行からどんどん金を引出し、歳末に至つてとうとうその金が極端になりまして、銀行局からの注意、それから日本銀行からの注意もありまして、相当貸付を制限して、年末に大蔵大臣は四千二百億も出すのだという言明があつたにもかかわらず、暮れの決済ができなくて、とうとう手形決済をこの二十六年に持ち越されておる会社がたくさんあります。そういう意味合いで、この富裕税の調査をする場合に、現金を調べるのだということのために、相当の現金が引出されて、暮れの金融の処置についてそういう不始末が生じたような状態であります。従つてこの現金はみんなたんすの中に隠されまして、流通場裡から影をひそめてしまうおそれがあります。また現金を調べないということになりますと、株券を投げ出して売却し、現金にかえて、この現金をたんすの肥しにしてしまうおそれがあります心政府は証券対策の意味で、証券の民主化なり、あるいは長期資金は株券いわゆる株式市場によつて調達するのだということを再三宣伝しながら、この長期資金の獲得を阻害するような制度、いわゆるこの富裕税のために現金を調べないのだということになれば、結局株券を売却して現金にかえてしまう。こういうようなことのために証券対策に非常に弊害がある。この問題については、各証券会社からも再三忠告を受けております。従つて私は株券の対策上からも考え、あるいは銀行の預金を引出してたんすの肥しにすることを防止する意味からも、むしろ富裕税なんかは廃止した方がかえつていいのじやないか。こういう意味で、将来の法律においてこの富裕税を廃止してもらいたいという希望を申し上げておきます。
また株式譲渡利得税の問題も、私はこれも廃止してと移転税を幾らか上げて、移転税によつて補いをつけた方が、かえつて効果的のように思います。これも一方に損失があり一方に利益がありまするものを、株券の通常の売買は白紙委任状で行われておりましてその市場に流れておる間、三月もあるいは一箇年も白紙委任状で売買されております。従つて最初の売却人と最後の名義変更人の中間に五人も六人もの人がおりまして、結局徴税しようとしても、この中間の株式の売買人はたいてい偽名を使つている。従つて税務署より通告する場合に、この偽名者に通達することはありませんから、結局中間人は脱税してしまう。またこの脱税を防止しようと思いまして、この名義変更を期間を切つて取上げるということになりますれば、これは結局市場における株券の操作が非常にまずくなつて参りまして、結局証券対策にもならぬ。こういう意味合いから、私はこの株式の譲渡利得税は廃止しまして、移転税に切りかえてもらいたいという希望を申し上げておきます。
また法人税に関しては、前回の議会で大体改正になりまして特別利得税というものを廃止したのであります。しかし資本蓄積という点を考慮されたと申しますけれども、今日の朝鮮事変で、農村の状態は物の値上りで米価との均衡がとれない。他方特需会社は多大の利益を上げておるのであります。ことに紡績会社のごときは大正八年以来の景気と言われ、紡績十一社の利益繰越しは約五十五億と申されております。二十五年度は、紡績ばかりでなく、大体の重要産業は配当を復活してどんどん減価償却をしておりますが、今後の産業合理化のために大いに考慮すべきではありますけれども、なお減価償却して相当の利益繰越しをしているので、かかる法人には特別に税を取立てる法律を制定すべきで、大衆税を少しでも軽減すべきであると考えます。
次に通行税法でありますが、これも條文の内容を見るとはつきりわかりますので、この点には触れませんが、あ点もわれわれは賛成するものであります。
また登録税法の問題でありますが、これは委員会でも再三私は平田局長にもお願いを申してありますが、昭和二十五年の春ごろに、登記所のいわゆる收入印紙のはぎとり事件がありまして、その金額は全国で相当の金額になつております。このはぎとり事件を防止する一つの方法として、登録の証紙に收入印紙を貼付した場合に、この貼付用紙を最後には所長の手を経て大蔵省へでも出しまして、検査を受けるという方法であれば、この登録税のはぎとり事件というものはないように考えますので、この点も今後ぜひ適当の措置を願いたいと思います。
それから相続税法でありますが、今回の考え方は今までの相続税法よりも進歩的な、社会政策的な考慮が特に携われております。しかしまた他方相当脱税をされる方もありますので、その点も十分御考慮願いたい。たとえば税の決定で、当初その相続の届をした後、税を納めるまで二年も三年もかかつております。その間に不動産を売却し、あるいは什器を売却して、最後の納税のときになるとほとんど物を売却して、無資産状態になるような脱税方法を講ぜられる。従つて相続税法上から考えても、相続税をとることが不可能な状態になり得る場合があります。特別に相続税をとる場合には仮処分のような形で押えるとか、適当の処置を講じなければ、この相続税の調査の期間が長過ぎるために、脱税を行われる心配がありますから、この点について、今後この相続税法の改正にあたりまして、適切な処置ができるという條項を入れてもらいたいと思います。
印紙税法は、これも本文によつて大体明らかであります。われわれもこの点は大賛成であります。
骨牌税法もその通りであります。
租税特別措置法の一部改正も賛成であります。この内容については各條文に詳細記載されておりますし、また委員会の質問も再三行われておりますので、それに讓りまして、私は民主党を代表して、本案に対しては希望條件を付しまして賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/18
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019・夏堀源三郎
○夏堀委員長 田中織之進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/19
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020・田中織之進
○田中(織)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になつております八法案のうち、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しましては反対の立場、並びに残りの五法案につきましては、あえて反対するものではないところのわが党の態度を表明いたしたいと思います。
われわれが今回出ました税制改正法案の中心的な三法案に反対いたします根本的な理由は、この税法によつて二十六年度の予算編成の歳入計画が立てられておるという点に関連いたしまして、目下予算委員会で審議をいたしております二十六年度の予算案に対しまして、わが党は全面的組みかえを要求し、原案に反対をいたしておる建前が、われわれがこの税法についても反対せざるを得ない根本的な理由の一つでございます。なぜにわれわれが二十六年度の予算に対しまして反対をいたしておるかと申しますならば、朝鮮動乱以後、また現在の緊迫した国際情勢のもとにおける日本のインフレ再燃の問題、及び国内国際を通ずるところの物価上昇に対しますところの的確なる見通しを、政府が予算編成にあたつて持つておらなかつたということが、すでにこの予算案の審議過程中に——いまだ国会にこういうことはなかつたと思いますけれども、大蔵大臣みずから、二十六年度中には本予算のほかに補正予算を提出せざるを得ないということを公言するに至るような、こういうずさんなる予算が出されておるということに、われわれは賛成することができないのであります。こういう形で参。ますならば、国会が一応政府から出しました予算をのんだといたしました後に、国民がこれで本年度の予算が遂行されるものだ、この予算に基いてこれだけの税負担をすればいいものだと考えておつたところに対しまして、さらに情勢の変化に名をかりて新たなる増税が行われることになり、国会が新たなる補正予算を審議しなければならぬというようなことにつきましては、もちろん情勢の変化というものは、昨今はきわめて目まぐるしいものがあることはわれわれは認めるので、見通しについての困難がありますけれども、政府の各機関を動員いたしますならば、ある程度見通しがつけられるにもかかわらず、そのための努力が十分なされておらないことが、すでに予算審議の過程において暴露されたというような現状におきましては、われわれはこの予算を承認するわけには行かない。このことが、われわれが今回提案されておる税制率の基本的なものに対して、反対せざるを得ない基礎的な反対理由でございます。
次に私は税制の具体的な問題についての反対意見を、開陳いたしたいと思うのであります。まずわれわれの反対いたしております所得税の改正案あるいはその他につきましても、たとえば不具者、未亡人、勤労学生等に対する特別控除、あるいは扶養親族の合算税の廃止の問題であるとか、あるいは更正決定の時効の期間の短縮の問題であるとかいうように、部分的にはわれわれはもつともだと考えられる点のあることは、あえて否定するものではないのでありますが、大まかに申しまして、特に所得税につきまして相当の減税を行つておるということが、政府側によつてるる説明せられるのでございます。今回の各税制の改正を通じまして、七百四十三億の減税が行われておるということを説明されておるのでありますが、これは大蔵大臣みずから税法上の減税であるということを申しておりますように、一方において国民所得について水増しの計算を行つておる。また物価の上昇の問題につきましても、国民所得の増加面における物価上昇の要素を取上げておるけれども、生計費の面における物価上昇の面、この面は勢い労働者の賃金の面における実質賃金の低下の問題という形になつて、現われて来るのでありますが、そういう点についての配慮がほとんど行われておらない。従いまして予算上の減税といたしましては、われわれは税收全部で、政府の言われるものよりもはるかに小い程度のものしか減税はされておらない。政府が出されておる一つの資料を見ましても、二十六年度の旧法によるところの税收予定額が源泉、申告を合せまして二千八百四十一億である。それに対して現実に徴收を予想されるのは二千二百二十七億であるから、この間において約六百何がしかの減税になる、かように政府は説明をされておるのでありますが、今申しまするように、現行税率を適用するところの基礎になる国民所得の算定に、われわれは無理があるという点と、それから予算上の関係から申しまするならば、たとえば二十五年度の補正予算において政府が示しておりまするように、二十五年度を例にとつて見ますならば、源泉、申告を両方合せまして二千三百五十四億二千五百万円といたしますならば、二十六年度の改正税率によつてとるという二千二百二十七億との間に、政府が言うように六百億あるいは七百億というような大幅な減税というものが、具体的な絶対的な負担額の上において現われて参らないということも、われわれは指摘せざるを得ないと思うのであります。さらに最近の傾向といたしまして、過年度及び新規の滯納税額というものは、なお一千億を上下するところの線にあるということ自体も、政府の税政見積額において、いわば過大観しておるという点が現われておるので、これらの滯納という形になつて現われておることも指摘しなければならない。さらにわれわれは国民負担の面から考えまするならば、地方税になける国民負担というものを、国税との関係において考え合せざるを得ないのでありまして、二十四年度からいたしますならば、優に約六百億に近いところの地方税の増徴ということが、本年度の予算等を通じて現じて現われて参るのであります。直接二十四年を例にとるまでもなく、二十五年度に比べましても、本年度においてなお百七十九億の地方税の増徴が、一面に現れておるという点を考え合わせますならば、政府が声を大にして、またただいま與党の三宅委員が指摘したような形における減税というものが行われたかどうかということについて、この批判はおそらく賢明なる国民大衆は行うであろうと思いますけれども、わが党は遺憾ながら政府の説明には、賛意を表しがたいという点を申し上げなければならないと思うのであります。
次に私が反対し基本的に理由としてあげまする点は、租税体係の原理でありまするところの負担の公平の原則というものが、蹂躪されておるということでございます。このことは大蔵大臣が本会議における財政演説の中で、資本蓄積のためには、公平の原則にとらわれることなく強行するということを、大蔵大臣みずから申されておるのであります。さらに私はわれわれの従来からの主張でありまするけれども、高額の所得者に対しましては、法人税あるいは所得税の面におきましても、らんと減税あるいは負担の軽減がはかられまするけれども、現実に低額所得者に対しましては、いつの場合にも大した減税がされない。このことは政府がわれわれ国会側に提出されました資料、二十六年度の予算の説明の四十五ページ、六ページに、今回の改正によるところの勤労所得、並びに事業所得についての軽減率の表が出されておるのでありますが、低額者と高額者、これは勤労所得と事業所得の面のパーセンテージが、はつきり政府の示しておるものでも、高額所得者ほど軽減率が高くなつておるという事実は、明らかに私は大蔵大臣が本会議で正直に言つておるところではありまするけれども、公平の原則というものを無視しておると考えるのありまです。そういう点のみならず、第一次シヤウプ勧告に、勤労控除の問題は一〇%にしろという勧告がなされたのを、一五%に政府が努力したという点は、われわれの認めるにやぶさかではありませんけれども、こういう点から申しまするならば、たとえば勤労控除の現行一五%を少くとも二〇%程度に引上げる。あるいは第二次シヤウプ勧告に指摘されておるように、農漁民あるいは中小企業に対しまする勤労控除の実施の問題というような点につきましても、私は同時に政府としては考えなければならない段階に来ておるにもかかわらず、こういう点の配慮がなされておらないという点を指摘しなければならないのであります。
さらに私らは、法人税の問題につきましては、いわゆる朝鮮動乱以後の特需景気によりまして、わが国におきましても相当超過利潤を上げておることが、最近におけるいろいろのインフレの傾向となつて現われて来ておるのでありまして、私はむしろこの点に対する超過法人所得税というようなものの復活を、この段階に至れば政府は当然考えなければならないと考えるのであります。すでにアメリカにおきましても、最近の増税案においてこれを実施して来ておるのであります。ところが政府は、あくまで資本蓄積の名に隠れて、こうしたことについての配慮を行わず、一律に三五%ということで、法人税をまたまた軽減するという傾向が現われて来ておるということにつきましては、われわれ賛成することはできないのでります。一面われわれが主張しておりますように、零細なる勤労者の生活のためにつくておりまする生活協同組合というものに対する免税であるとか、あるいは農民及び中小企業者等のつくつておりまする協同組合等の特殊法人に対しまする法人税の軽減の問題等につきましては、何らこれらの特殊税というものについての配慮がなされておらない。
さらに法人税の問題に関連して申し上げなければならない問題は、中小企業等協組合法によつて、法によつて保護されておるべき企業組合に対しまする最近の課税というものが、きわめて無慈悲に行われる。法に認められたところの企業組合の法人格というものが、その後に出された政令なりあるいは国税庁長官の通達によつて、その立法の精神がともすればゆがめられるというような傾向が、末端の税務署の取扱いにおいて現われて来ておるという点につきましては、私は税制の根本的いなものを立案する大蔵当局の立場におて、考えなければならない問題だと思う。現在企業組合に対する国税徴收の面からの、いわる法人格についての診断が行われておるのでありまするが、これが機械的になされる結果が、中小企業者の一つの自分たちの生活の拠点としてつくられた企業組合、国が中小企業に対する育成の法律として考えられました中小企業等協同組合法の立法精神が、まつたく没却されるというような、副次的な問題を生じておるのでありまして、これらの点につきましては、われわれは法人税の今回の改正にあたりまして、徹底的に政府に反省を求めなければならない諸点であると考えるのであります。
さらに富裕税の問題等につきまして、今回の政府の提案にはございませんけれども、これは現行五百万円以上〇・五%、一千万円以上一%というふうに、以下漸次若干の累進を示しておるのでありますが、現在のような一種のインフレ再燃的傾向にありまして、富裕税の税率につきましては、少くとも現行税率の倍程度に引上げるべき改正を、当然政府が今回の税制各般にわたる改正にあたつては提案すべきであるにもかかわらず、そういう点が出されておらないという点が、税制全般に対する改正に臨む政府の態度として、私は遺憾であると考えのであります。
さらに資本蓄積の一方法といたしまして、生命保險料の二千円以下の分についての控除を今回認めたのでありますけれども、生命保險料についての控除を認めまするならば——むしろかかる生命保險に入るものは、どちらかといえば中産階級以上のものでありますけれども、それ以下の国民階層が当然入つておる、また入らなければならないところの健康保險、その他の社会保險料に対しまする控除、これは政府の計算によりましても、これをはずすといたしましても、せいぜい三十二、三億程度のものであるといたしますならば、それだけの税收は他の面で確保されるのでありまするから、当然これは考慮されなければならないものを、取上げておらないということにつきましても、われわれは賛成できないのであります。
以上申し述べました、たとえば租税特別措置法の一部改正におきましては、同族会社あるいは預金利子の選択課税というような画で、資本蓄積のためには至れり盡せりの方法を講じておりまするけれども、この租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、同族会社の五十万円を越える留保金額に対する税率の軽減の問題、あるいは見返り資金、その他銀行の保有する優先株式または優先出資に対しまする配当に対しまする今度の取扱いの問題等につきましても、遺憾ながらわれわれは賛成することはできないのでありまして、こうした多くの問題を残したところの税制の上に立つて、編成せられるところの二十六年度の予算というものは、やはり従来と同じように大衆課税の上に編成されるということ、しかも二十六年度の予算につきましては、現在の政府提案におきましても、一般中産階級以下の勤労大衆の負担において編成されながら、実際予算の歳出の面を見ますれば、勤労大衆の生活安定のための配慮に欠けるところが多多あるという点を、指摘しなければならないと同時に、この点につきましてはわれわれ国民大衆がこれで減税されたというかりに錯覚に陷つたといたしましても、それが再び歳入を租税に求めるという形で補正予算が出されるということになりますれば、まさにこの七百四十三億の減税というものは、樺花一朝の夢として消え去ることが、財政の責任者である大蔵大臣の言葉によつて、現在すでに予見されるというようなことにつきましては、遺憾ながら国民大衆に忠実であるために、わが党としてはこれらの諸案の中で少くとも三つの基本的の法案、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案の三案につきましては、反対の意思を表明することが国民大衆に親切なるゆえんであると考えて、本案に対して反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/20
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021・夏堀源三郎
○夏堀委員長 竹村奈良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/21
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022・竹村奈良一
○竹村委員 私は日本共産党を代表いたしまして、現在提案されておりますところの所得税法案外七法案に対しまして、反対を表明するものであります。
まず本改正案を提出されました政府のおもなる理由は、改正によつて減税を行うのである、これが根幹をなすのであります。ところがそれがはたして減税になるかどうか、ここが問題でありますけれども、政府は減税をするのだ、すなわち七百四十三億円余の減税であると三宅委員も言つておられますけれども、この減税をなすところの根本原因をどこに置いているかと申しまするならば、政府は常にそれと引きかえに、国民所得の増大ということを強調しておるのであります。現在国民所得の増大といわれておりますけれども、国民所得が増大するのであるならば、それに比例して国民生活というものがもう少しゆたかにならなければならない。ところが実質的にはそうではないのであります。もちろん国民所得は増大しているかもわからぬ。しかし国民の大多数を占めますところの勤労大衆に、この増大分の余徳がまわつているのではなしに、一部の人が独占していることを物語つているのであります。従つて国民所得の増大とは、それは政府がかつてにおこしらえになつた、いわゆる統計数字上における宣伝文だと、私は解せざるを得ないと思うのであります。具体的に減税の実相を申し上げますならば、七百四十三億円の減税だといつておりますけれども、実質的には昨年度の予算と比べますならば、五億五百五十万円しか減税になつておらない。しかも今度の予算において、先ほど田中委員も言われたように、大蔵大臣みずからが予算の補正を行わなくてはならないということは、結局において五億五百五十万円昨年度と比べて減税になつておるといつておりますけれども、これがいつ増税に変化するかわからぬ。もつと根本的に申しますならば、国税は下りますが、地方税を合せますれば百四、五十億の増税になつておるのであります。このことを見のがして、單に減税のために今度の税制を改正するのだということは、これは遺憾ながら空文と言わざるを得ない。この実質的な面を申しますならば、たとえばいわゆる国民所得の向上々々といつておりますけれども、実際物価の面はどうなつておるか。今日物価は御承知のように衣料にしましても、その他のものにいたしましても、少くとも五割、六割の値上げが予定されておるのであります。たとえば勤労所得税の面から考えましても、消費物価が二〇%上つたといたします。そうするとたとえば今まで給料を一万円とつておつた者が、二〇%の消費物価の値上りにつれて賃金の改訂が行われた場合に、はたしてこれが減税になるでしようか。私は政府の出された数字上から一つの例を申し上げておきたい。たとえば今まで夫婦と子供二人で一万円の給料手取りは、現行法においては税金は六百八十三円であります。ところが現在の改正法におきましては四百五十円になつておる。この限りにおいては確かに減税であります。ところが物価が二〇%上つて、二〇%上つただけ給與ベースが改訂されたといたしますならば、今まで一万円の給料取りは一万二千円の給料をもらうことになる。そういたしますと一体税金はどれだけかけなければならないかと申しますならば、一万二千円になります場合に、改正案では七百九十円の税金を拂わなければならないのであります。もちろん政府から言わせますならば、一万円の給料取りが一万二千円になつたのだから、二千円は所得の増大だとおつしやいますけれども、事実はほかの生活物資が二〇%上つておる。二千円上りましたところで、生活上では何らの利益になつていないどころか、税金は七百九十円拂わなくてはならない。そういたしますと、一万円のときに、二〇%物価が上らなかつたならば、税法が改正されなくても税金は六百八十三円であつた。ところが二〇%物価が上つたがゆえに、それによつて二千円給料が上声ましても、改正されて減税になつているのだと言いながら、税金は七百九十円拂わなくてはならない。差引きますれば百七円の実質的な増税である。勤労者は実質的に百七円勤労所得税においては増税になつておる。しかもそれに比例いたしまして地方税がこれに加算されて来る。百七円どころの増税ではない。多くの増税を含んでおるのであります。かりにこう申しますと、この委員会における大蔵当局の説明によりますと、それは物価の指数が少し違うからそれにはならぬ。そこで詳細な説明を求めますと、結局において大蔵当局の説明によつても、こういうふうになつた場合においては、わずかに二十九円の減税だと説明しておるのであります。遺憾ながらこの実態をもつていたしましては、今日の源泉所得税の減税というのは、おそらくこれは何かの宣伝のためではないかと私は考えざるを得ない。
もう一つそこで私が申し上げたいとことは、ともかく今度の勤労者の源泉課税において減税して行こうとするのであつたならば、それはどういう立場のものであるか。たとえば衣料品あるいは生活物資が二割三分値上げいたしましても、賃金の値上げを要求することなく、給與ベースの値上げを要求することなく、たとえど労働組合あたりを解散いたしまして政府の言う通り物価はいくら上つても、現在の賃金でけつこうでございます、現在の給與べースでけつこうでございますとして、唯々諾々と奴隷的生活に甘んじた労働者のみが減税されるということを、これによつて証明されているのであります。
まず勤労所得税はそうでありますけれども、それでは申告所得税は一体どうか。申告所得税におきまして常に一番しわ寄せになつているのは、農業所得でありますけれども、この農業所得の税金は現在安くしていると言われるかもしれませんけれども、地方税を合算しますならば、申告所得の農業所得におきましても、決してこれは安くなつておらない。しかも今日は農業所得に対するいろいろな水増し——所得の水増しというのは全国至るところで行われておる。たとえば農業調整委員のはつきり決定した收穫高以外にやみ所得をかける、こういうことが全国至るところに行われておる。その理由とするところは、各税務当局がこういうことを行うのは農民が記帳能力がないからである、実際における收支明細が明らかにされていないからであるということが、当局の一点張りの答弁であります。しかしながら今日の農業所得者が、はたして記帳能力を持つておるがごとき状態に置かれておつたかどうか。御承知のように連合国総司令部の覚書によりましても、数世紀にわたり奴隷的生活に甘んぜしめられた農民ということが指摘されておる。こういうような長い奴隷的生活に追いやられていた農民が、今日大蔵当局の言うがごとく、あの煩雑な記帳が完全にできるかどうか。これはでき得ないのが当然である。もし日本の全農民がこの記帳を完全にできるようになつたならば、今日の農産物価がいかに工業生産費とのシエーレに悩んでおるか、こういうことに気づくでありましよう。しかもまた今日の税金は国民の大多数から取上げて、それがどういうふうに使用されておるかということを克明に知るでありましよう。こうした自分たちの首を絞めるような税金に対しましては、おそらく記帳能力が完全にできるようになつたならば、その矛盾に気づいてますます現政府反対になるであろうことを、警告せざるを得ないのであります。
続いて私は法人税の点を申し上げたいのであります。法人税は政府みずからが申しておるように、これは資本の蓄積に重点を置いておりますけれども、資本の蓄積の根本的なねらいについて、われわれは昔のことを考える必要がある。かつて戰争時代に紡績会社がただちに軍需工場に転換でき得た事情等を考えまして、今日の政府がねらつておるところの法人税の資本蓄積の重点は、すなわちやがては問題になつておるところの、いわゆる軍需工場復活への含みであると言わざるを得ないのであります。たとえば法人税においても、今年度は予算上から見ますならば、六十三億の増税であるというかもしれぬ。しかしながら今日の糸へん景気、金へん景気でいろいろなこういう会社がどれだけの利益を得ておるか。たとえば新光レーヨン等は七十九割の利益を上げておる。また帝人等は十五割の利益を得ておる。これは二十五年の上半期の決算でありますけれども、この決算から見ましても、わずかに昨年度と比較いたしまして六十三億余の増税では、これでは増税ではない。昨年度の予算と比較いたしますならば、実質的には一千億以上多くとらなければならないことがはつきりしておるのであります。しかしこういう方面から金をとらずして、そして一般大衆からとる。たとえば勤労所得税においても、大蔵大臣は予算上における百三十億の減税だといつておりますけれども、実質的には四、五十億多くとれるであろうということを言明した。このこと自身がいかに大衆から税金をとつて、その使い道は大資本擁護のために使用されておるかということが、はつきりするわけであります。こういうような税制改正に対しましては、共産党は絶対に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/22
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023・夏堀源三郎
○夏堀委員長 討論は終局いたしました。
これより右八案の採決に入ります。まず所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案、三案を一括して採決いたします。右三案を原案の通り決するに賛成
の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/23
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024・夏堀源三郎
○夏堀委員長 起立多数。よつて右三案はいずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)
次に通行税法の一部を改正する法律案、登録税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案、及び骨牌税法の一部を改正する法律案の五案を一括して採決いたします。右五案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/24
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025・夏堀源三郎
○夏堀委員長 起立多数。よつて右五案をいずれも原案の通り可決いたしました。
なお報告書の作成、提出手続等につきましては、委員長に御一任を願います。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後零時二十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004629X02219510224/25
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