1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月七日(水曜日)
午前十一時二十五分開議
出席委員
委員長 前尾繁三郎君
理事 野村專太郎君 理事 藤田 義光君
池見 茂隆君 大泉 寛三君
尾関 義一君 角田 幸吉君
川本 末治君 黒澤富次郎君
佐藤 親弘君 高橋 等君
山本 久雄君 床次 徳二君
山手 滿男君 久保田鶴松君
松澤 兼人君 立花 敏男君
大石ヨシエ君
出席政府委員
全国選挙管理委
員会事務局長 吉岡 惠一君
地方自治政務次
官 小野 哲君
地方自治庁次長 鈴木 俊一君
総理府事務官
(地方自治庁財
政課長) 奧野 誠亮君
委員外の出席者
総理府事務官
(全国選挙管理
委員会事務局選
挙課長) 金丸 三郎君
衆議院参事
(法制局第一部
長) 三浦 義男君
專 門 員 有松 昇君
專 門 員 長橋 茂男君
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三月七日
委員門脇勝太郎君、小玉治行君及び佐藤親弘君
辞任につき、その補欠として山本久雄君、高橋
等君及び中島守利君が議長の指名で委員に選任
された。
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三月六日
平衡交付金算定基準の改正に関する請願(南好
雄君紹介)(第九二四号)
地方財政平衡交付金法における教育費測定單位
の改正に関する請願(上林與市郎君紹介)(第
九二五号)
地方税法の一部改正に関する請願(小金義照君
外一名紹介)(第九二六号)
遊興飲食に対する標準税率引下げに関する請願
(河原伊三郎君外一名紹介)(第九五〇号)
木材引取税の課税並び徴收の是正に関する請願
(野原正勝君紹介)(第九六一号)
北海道市町村上下水道事業起債認可に関する請
願(椎熊三郎君紹介)(第九七二号)
遊興飲食税の撤廃に関する請願(淺香忠雄君紹
介)(第一〇〇〇号)
船員の不在投票制度改正に関する請願(門司亮
君紹介)(第一〇〇一号)
地方財政の窮状打開に関する請願(河原伊三郎
君紹介)(第一〇〇二号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
四五号)
公職選挙法の一部を改正する法律案起草に関す
る件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/0
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001・前尾繁三郎
○前尾委員長 これより会議を開きます。
地方税法の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。立花敏男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/1
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002・立花敏男
○立花委員 お聞きしたいと思いますのは、市町村民の課税所得に対する課税の部分ですが、これはまあ任意規定になつているわけですが、課けようによつては非常に苛酷な徴收になるんじやないかと思いますが、大体これで幾らくらいの税金の増額をお見込みになつているのか、それをひとつお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/2
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003・奧野誠亮
○奧野政府委員 お話は市町村民税の所得割の課税方式につきまして、課税総所得金額を課税標準とする課税の方法をとつた場合に増收いかんというお話ではないかと思いますが、そういたしますと、何に比較するかということが問題になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/3
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004・立花敏男
○立花委員 現行です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/4
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005・奧野誠亮
○奧野政府委員 所得税額を課税標準として、標準税率による課税を行つた場合の收入金額と比較して参りますと、現在見込んでおりますいわゆる第二の方式を採用する市町村が三〇%くらいであろうというふうな計算でやつて参りますと、なおまた制限税率が一〇%くらいでありますけれども、七%くらいの平均で課税をするであろうというような見込み方をいたしますと、五十五億三千八百万円という数字が出ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/5
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006・立花敏男
○立花委員 七%というこの見込みのパーセンテージはどういうところから出て参つたのか。これはシヤウプ勧告によりましても累進課税ができるんだと思うのですが、累進課税というものをお見込みになつて七%という数字をお出しになつたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/6
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007・奧野誠亮
○奧野政府委員 七%といいますのはもちろん平均税率であります。課説総所得金額を基礎にいたします課税にあたりましては、累進税率をとるのがほんとうであるというような考え方をしている。従いまして、かりに最高のところを一〇%にとるといたしましても、平均はそれよりも下つて参るわけであります。これで大体制限税率の七割ぐらいのところで推計するのが穏当でなかろうというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/7
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008・立花敏男
○立花委員 現行の所得税を対象にする市町村民税の場合の累進の問題が問題になつたのですが、今度の場合は累進の問題はいささかの疑念もないと思うのですが、重大な問題なのでもう一度確かめておきたいと思いますが、この場合は累進が建前だと今奧野課長は言われたのですが、間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/8
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009・奧野誠亮
○奧野政府委員 その通りもあります。もとより非常な例外的に比例税率を用いた場合に、それが違法であるかと言われましたら違法ではございませんが、しかしながらこの種の課税標準を採用いたしました場合には、累進税率を採用することが公平であるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/9
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010・立花敏男
○立花委員 累進の問題に関しましては、何か特別にある制限をお置きになる予定かどうか。全然地方の議会に累進の方式をおまかせになるおつもりかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/10
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011・奧野誠亮
○奧野政府委員 制限税率の規定がございますので、それを越えることは違法でございますけれども、それ以上はまつたく地方議会が適宜累進の段階を決定してしかるべきものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/11
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012・立花敏男
○立花委員 下の方の限界はかまわないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/12
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013・奧野誠亮
○奧野政府委員 お話の通りであります。ただ課税総所得金額を基礎といたしますので、課税をしないような率といいますか、そういうことは不穏当であろうと思つておりますけれども、税率はいくら低くてもさしつかえないものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/13
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014・立花敏男
○立花委員 課税をしない部分が問題だとおつしやられるのですが、その点は今度の課税所得を対象にする場合に、非常に問題があるのじやないかと思う。と申しますのは、大臣の説明要旨の中にお書きになつておるのでは、基礎礎控除額のみを控除したとなつておりまして、その他の控除がないわけなんです。たとえば扶養控除もございませんし、勤労控除もございません。こうなつて来ると、やはりある程度免税点を設けなければ、いかに率が低くなりましても、非常に苛酷な税率になるのではないかと思うのですが、なぜ総所得金額から單なる基礎控除額のみを控除したものを課税対象となさつたのか。今言いましたような、家族に対する扶養控除あるいは勤労者に対する勤労控除、これをなぜおやりにならなかつたか、勤労控除の問題はもちろん勤労者だけの問題で、あるいはお抜きになつたのではないかと思いますが、家族の問題は重要な問題で、何か特別の問題だから抜いたという問題ではないと思うのですが、扶養控除をなぜ控除なさらないのか。また勤労控除をなさらないとするならば、なぜ勤労控除を控除なさらないのか、これをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/14
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015・奧野誠亮
○奧野政府委員 建前はやはり課税総所得金額でありますので、いろいろな控除をした後の金額というものを課税標準にすべきであると考えております。ただ当該市町村の財政上特別の必要がございまして、広く所得割を負担してもらえるようなものには、なるべく広く負担してもらつて、收入を上げたいというふうな団体につきましては、その選択によつてこのような方式を採用することができるようにしたいというふうな考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/15
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016・立花敏男
○立花委員 そうしたら、やはり控除するのは、もちろん財政上特別な必要があると書いてございますが、控除をするのは基礎控除だけであつて、家族に対する控除も認めない、あるいは勤労控除も、これは他の税法では認められておるのですが、この場合に限つては認めない、そういうような建前なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/16
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017・奧野誠亮
○奧野政府委員 扶養控除しないものを課税標準に採用することもできるということにしているわけでありまして、地方団体の選択にゆだねているというわけでございます。ただ今おつしやつたように、扶養控除をしないことを建前にしておるかと言われますと、そうではございませんで、することを建前にしておるわけであります。ただ例外的に現在の所得税法の改正の結果、市町村によりましては、所得税を納めないでよい人たちが非常にふえて来たわけであります。しかしながら当該市町村の財政運営の立場からいいますと、なるほど所得税は納めないでもよいかもしれないけれども、市町村民税の所得割はもう少し広い範囲の人に負担してもらう方がいいじやないかということが考えられますので、その団体の財政上の必要がある場合には、その式の課税方式がとれるということにしておるわけであります。そこで、それじや小さい子供たちが、たくさんあつても、そういう事情を無視して課税するのか、こういうふうに疑問を持たれるといけないわけでございますが、そういう場合には、もとよりその市町村がそれぞれの納税義務者の特殊な事情を十分にしんしやくいたしまして、課税額につきましては、適宜しんしやくを加えて行かなければならないだろう、また行くであろうということを考えておるわけであります。ただ一律的な所得税法の改正の結果を、そのまま市町村民税の所得割に持ち込みますことは、市町村の財政によつては穏当ではないと考えられます場合もございますので、このような例外的な方式を採用できるように、緩和いたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/17
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018・立花敏男
○立花委員 こういう例外的なものだけを取り出して、非常に明細に書いてあることは、私どもは納得できない。こうなつて参りますと、あらゆる町村が財政的に非常に困難しているわけでありますから、どうしても扶養控除と認めない、勤労控除も認めないという形の市町村民税がとられる可能性が、非常にあるわけであります。そういうことになつて参りますと、家族があれば、より一層苦しい生活の中から、家族の控除は全然認められないで、税金がとられて行くということが起つて参ります。勤労者の場合ですと、今までは二割五分、改正されて一割五分になつておりますが、この控除が全然考えられない。そうなつて参りますと、家族の多い勤労者は、勤労控除も認められない上に、また扶養控除と認められない、それに頭割り税金がかかつて来る、こういうひどい結果になるのですが、こういう方法をなぜおとりになつたのか。私どもはどうしてもこれは納得できない。家族に対する扶養控除を認めることは現在の税法では原則なんです。これを認めないというような措置、これをすら非常に不当だと思うのですが、さらに勤労者に対する勤労控除、これも今の所得税法では認められておるのですが、勤労控除も認めない、こういう税法をどうしておとりになつたか。しかも市町村民税は源泉徴收でやるんだというようなことになつて参りますと、これは前にも申しましたように、まつたく所得税とかわらない。本質上も形式上もまつたく所得税と同じものなんです。所得税と同じものが、家族に対する控除も認めない、勤労者に対する控除も認めない、所得に対して百パーセント源泉徴收される、こうなつて参りますと、労働者はほんとうに奴隷的な状態で、人間扱いされていないと言つてもいいですが、なぜこんなものをお認めになつたのか。ここに書いてあるところでは、財政上の特別の必要がある町村においてはと書いてあるのですが、ただ單にこれだけの理由で、こういう基本的な生活の問題に重大な危惧を及ぼす形にまで、とつてもいいということにならないと私は思います。財政上特別の必要がある町村におきましては、平衡交付金の交付の問題がありますし、あるいは特別平衡交付金の道が開かれておるわけなんで、それを考えないで、しかも扶養家族があるかないかも考えないで、勤労控除も認めないという形でやることは、この税法がまつたく勤労者の收奪税法であると言つても過言でないと思う。なぜこういうふうに、特に勤労者に対して、あるいは家族の多い者に対して、苛酷になるような税法をおきめになつたのか。これは今度の改正案の根本的な問題にも触れると思うのですが、この点をひとつ根本的に御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/18
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019・奧野誠亮
○奧野政府委員 市町村民税でありますので、ある程度課税の仕方というものは市町村にゆだねてもよろしいじやないかという考え方も立て得るだろうと思うのであります。しかしながらなお市町村間に均衡を確保したいという考え方のもとに、課税総所得を一律に採用しながらも、そこにいろいろと問題がありました場合には、市町村が独自に課税総所得金額を計算し得る道も開いておるわけであります。この課税総所得金額を採用いたします場合には、ことさらに標準税率の定めを設けませんで、最高税率の規定だけをおいているわけであります。言いかえればそれぞれの所得段階におきまして、その市町村が最も適当だと思うような課税額を適宜決定してよろしいというように、言いかえれば地方税本来の性格にのつとつた彈力のある規定の仕方をいたして参つておるわけであります。そこで立花さんに一言御説明申し上げたいのは、勤労控除の問題はこれは当然收入金額から一五%控除したものをもつて、所得金額として計算をするというふうに、所得税法で取扱われておりますので、いわゆる所得金額と言います場合には、勤労者につきましては收入金額から一五%控除したものであります。最高三万円というような制限をおいております。ここで、控除する控除しないの問題は、一つは災害控除であります。災害にかかつたり、盗難にかかつたりした場合の控除であります。第二は医療控除であります。お医者さんにかかつた場合に、その医療費の幾らかを控除するという問題であります。その次は扶養親族があります場合に、扶養親族一人について一万二千円ずつ控除するという問題であります。第四に基礎控除と言われております二万五千円ずつを一律に控除するという問題、これだけがいわゆる総所得金額から控除をするかしないかという問題に当てはまるわけであります。そのうちで扶養親族があつても控除しないのはけしからぬじやないかというお話がありましたが、なるたけ控除するということが望ましいという建前をとつております。ただ扶養親族の中に、いわゆる家業專従者の問題がございまして、三十、四十の血気盛んのむすこさんでありましても、おやじさんと一緒に働いています場合には、所得税法の計算におきましては、おやじさんの所得とみなされます反面に、三十、四十の血気盛んのむすこさんを扶養親族として、一万二千円ずつ控除して行くというような計算の仕方をとつておるわけであります。こういうふうな計算の仕方をいたします結果、町村によりましては、所得税の納税義務者というものが、半減するというようなところも出て来るわけなのであります。その町村におきましては、財政上余裕があるなら、たいへんけつこうなんでありますけれども、どうも財源に苦しい、他の税種につきまして相当な標準税率の超過課税をやつて行かなければならない、その場合に町村を見渡して所得税はなるほど納めてないけれども、所得割をある程度負担してもらつてもさしつかえないじやないかと思われる町村がありました場合には、一々扶養親族の控除をいたしませんで、基礎控除だけをとる。そういたしますと課税総所得金額というものは残つて参ります、ので、ある程度の所得割の負担もしてもらえる、こういう場合には市町村にある程度の選択の余地を残しておいた方が、むしろ市町村の実情に適した所得割の課税ができるのではなかろうか、こういうふうな考え方を持つておるわけであります。しかしながら扶養親族の性質によりまして、控除してしかるべきものにつきましては、もとより減免の規定を適用しながら、その市町村の実情に即した課税方式が、採用されて行くであろうということを、われわれも期待いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/19
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020・立花敏男
○立花委員 いくら聞きましても、その町村の財政上の余裕があるかないか、單にそれだけの理由からその家族にとりましては、根本的な問題でありますところの扶養親族、これに対する控除が認められないというふうにいたしますことは、これはやはり行き過ぎじやないかと思うのです。日本においては家族制度が非常に長所であり、美点だと言われておりますが、家族制度そのものは世帶主の負担に負うところが非常に多いので、従つて扶養控除というものは根本的に認められているわけなのです。日本には家族の個々の成員に対する社会保障制度というものも完備しておりませんし、どういたしましても個々の扶養親族に対しましては、世帶主が責任を負わなければいけないという建前になつておりますので、結局扶養控除が認められているわけなのです。その基本的な家族を保護しておくための扶養親族に対する控除、こういうものがただ單に町村の財政が苦しいから、こういうものは認めなくてもいいのだ、またこういうものを認めないことにしておいても、その決定は町村でやるのだから、あまり無理なことはしないだろう、そういうふうなことでこの重大な問題をはずされては、これははずされる方にとりましてはまつたく死活問題で、安心してこの税法に賛成することはもちろんできません。またできないのが当然だろうと思うのです。政府の方でこの地方税法のようなものを原則的におきめになる場合は、やはりある一定度の限界というものをおつくりにならなければいけないので、その場合はやはり扶養控除の問題などは、当然認めるという建前のもとに、最低の線をお引きにならないと、ただ基礎控除だけが最低の線で扶養控除はその町村の任意にまかしてもいいのだというようなものではないと思う。現在の一家の生活、扶養親族が多いか少いかが、非常に重大な問題になつておりますので、この場合に扶養控除をやらなくてもいいというような措置は、明らかに行き過ぎであり、勤労者の家庭をこういうところから破壊するものだと思いますので、この扶養控除をやらなくてもいいという考え方を、ひとつ御訂正願いたいと思います。家事專従者があるから、扶養控除は認めないのだと言われますが、これはおのずから別の問題なので、別の方法で解決なさればいいので、家業專従者の認定がむずかしいから、扶養控除もこれは控除しなくてもいいのだということには参らないと思う、扶養控除の問題は、もつと本質的な問題で、家族全体の死活の問題であり、また扶養親族にとりましても、ほんとにこれは生きるか死ぬかの重大問題なのです。そういうものを家業專従者の問題と混同されて、家族の扶養は控除しなくてもいいのだというようなことでは、これは小さい問題のために、本質的な問題が無視されるということになると思うのですが、もう一度お考えをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/20
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021・奧野誠亮
○奧野政府委員 立花さんのおつしやるように、建前は扶養親族控除も行うということにしております。私たちの考え方では、なるたけ市町村税につきましては、法律の上では彈力のある規定のし方が望ましいというふうに考えておるのでありまして、ここで法律ができました結果、それがそのまま市町村の税法になつてしまうわけではないことは、十分御承知だと思います。そこで個々の団体につきまして財政上特別な必要がある場合に限つて、この方式を採用できるわけでありますけれども、その場合におきましてもしばしば申し上げましたように、個々の納税者の実情に応じて、減免なり税種のきめ方を私はして行くものであろうと考えておるわけであります。市町村長が勝手にきめてしまうわけじやございませんで、当該市町村の住民の代表からなりますところの当該市町村の議会において、十分そういうことは論議されるであろうと考えておるわけであります。なおまた国におきまして地方財源全体を調整いたします場合に、具体的には地方財政平衡交付金の配分額を決定いたします際には、かりに課税総所得金額をとつておる町村があるといたしましても、その団体の課税力というものを、それでは測定いたしませんで、やはり一般的にとられますところの所得税額を課税標準として、一八%の標準税率を課税した場合に、どれだけの收入があるであろうかということを基礎にして計算をいたしているわけでございますので、その団体の通常の財政需要というものは、地方財政平衡交付金で不足額が補われるということになつて参るわけでございます。従いまして例外的な方式を採用いたさなければなりませんのは、何か特別な財政需要がありまして、他の面において増税をしなければならない。それならむしろ所得税の納税義務者が少な過ぎるから、所得割の課税方式によつて所得金額に課税する方針をとろうではないかというようなことも考えられるわけでございます。またその団体の生活の実態から考えてみるというと、この式の課税方式が望ましい、言いかえれば所得の少い人にもつと負担を軽くしたいという場合もあるだろうと思います。あるいは若干重くしたいという場合もあるかもしれません。そういうふうな課税方式を採用したいという団体があります場合に、第二の方式を、しかも第二の方式の例外的な方式をつくつて行くということになるのじやなかろうということを考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/21
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022・立花敏男
○立花委員 私は例外としても認めるべきではないと思う。これは扶養家族の生きる道を断つことなのです。一体どういう建前で扶養控除をお認めになつたのかお聞かせ願いたい、これは根本的な問題だから、ひとつ次官がお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/22
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023・小野哲
○小野(哲)政府委員 これは所得税法の関係になりますが、先ほど来奧野政府委員から説明いたしておりますように、扶養控除等の制度を認める課税方式は、これを建前として堅持して参つておるのであります。立花さんの方はどうも但書の例外的措置の方を、本質的の課税方式のようにおとりになつておるようであります。この点誤解のないように願いたいと思うのであります。市町村民税における所得割の問題につきましては、シヤウプ税制報告書にもございますように、また現行地方税にもありますように、三種類の課税方式が認められておりまして、しかも市町村の公共団体としての本質的な性格から考えて、本来ならばわくまできめないで、市町村の自主的の判断によつて課税方式を採用するというようなところまで行くべきことが理想的ではありますけれども、やはり市町村間の課税の方式の均衡というような点から申しまして、地方税法においてわくをきめ、基準を定めるということは、これまたとるべき方法であろうと思うのであります。従つて扶養家族の控除の点については、理論的根拠等については、奧野君からも説明いたしたと思いますが、地方税法の建前といたしまして、いわゆる世帶主中心主義から、個人主義的な税法の考え方にかわつて来ておるという点から判断いたされまして、家業の專従者に対する課税の問題を、お考え願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/23
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024・立花敏男
○立花委員 そうしたら地方税法では、扶養控除を認めないということは、あなたは原則ではないとおつしやいますが、今言われました課税の考え方が個人主義的なものにかわつて来ておる、だから扶養控除はあまり重視しなくてもよいという考え方なのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/24
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025・小野哲
○小野(哲)政府委員 ただいまの立花さんの議論は飛躍するようでありまして、私は何も扶養控除を認める必要はないとは言つておらない。原則として認める、こらはつきり言つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/25
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026・立花敏男
○立花委員 これは原則として認めていない、原則としてやはり市町村の財政の苦しいときは基礎控除だけでよい、扶養控除はしないといつておる。それは明らかに詭弁でございまして、財政上苦しい場合は基礎控除だけでよいのだ、扶養控除は認めないということははつきりと書いてある。私はいかに財政上苦しくても現在の社会情勢では扶養控除まで認めないという考え方はいけないということを言つておるので、あなたたちは財政上苦しければ、市町村にこの採用はまかせてあるから、扶養控除は認めない場合があるのだということを言つておられるけれども、これは原則上認めたことにはならない。おそらくこれは三〇%以上はこういう課税所得の対象にする方式をおとりになるだろうというお見込みでございますが、おそらくその中の大部分は基礎控除だけで行つてしまうのではないか。現在の市町村の財政の苦しさからいいますれば、どういたしましても税收を多くしなければいけませんので、扶養控除を認めないという町村も何十パーセントか出て来るのは、これは当然見越される。あなたたちは平衡交付金も出さない、地方起債も許されない。そうして税金で取立てて、しかも財政が苦しいという理由で、扶養控除まで控除しないでやつてよいという税法をおつくりになつておる、だからこの線に沿つて町村が動くのは明らかなので、町村の住民はいくら家族がありましても、その家族に対する控除は従来通り認められないという状態が起つて来るのは当然であるし、またそのつもりで税法は改正になつたことは明らかであります。そうでなければこんなものをつくる必要はないと思います。そういう場合に原則をいくら守つておるとおつしやられても、実際上原則を守らない、扶養控除もできないで税金を課されるという状態が起つて参ります。起つて来るような情勢になつておるから起つて来る。だからこういう税法の改正をおやりになる場合は、いかなる財政上の根拠ある場合でも、扶養控除というものは控除しなくてもよいというようなことを、お書きになつてはならない。財政の苦しい場合、特別の財政の必要のある場合は、平衡交付金なりあるいは特別平衡交付金の形で、国家が補填してやればよいので、扶養家族の生活権を奪うような税法の改正は、たとい特例であるといつてもやるべきではない、こう思うのであります。これは今度の税法の根本的問題ですから、もつとはつきりした御答弁を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/26
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027・奧野誠亮
○奧野政府委員 先ほど申し上げましたように扶養親族の立て方によりまして、町村によりましては所得税の納税義務者というものが半減するような団体が、生じて参つているわけであります。その際に、その町村といたしましてさらに相当の財源を必要とするというような場合におきまして、しかも所得税は、家業專従者が多い結果になるがゆえに、所得税の納税義務を負わない、しかしながら他の町村の住民と比較して考えてみました場合に、この際ならある程度の所得制を盛つてもらつてもよろしいのじやないかというようなことも考えられます町村において、この方式が採用されるであろうと、われわれは想像しているわけであります。立花さんは何か所得税法の扶養控除なり、あるいは医療控除なり、あるいは災害控除なりというものが、まさに個々の担税力に即応した理想的なものだということを、頭に置いて考えられているのではないだろうかというふうに、私は非常に疑問に思うのであります。私は現在の所得税法の規定を、そのまま一律に個々の納税義務者にあてはめました場合に、必ずしもそれが適切ではない場合がたくさんあるだろうと思うのであります。そういう場合にはそいうふうな制限を無條件におつかぶせられませんで、具体的にその市町村の議会において納得いたされますような個々の課税額をきめます方が、むしろその市町村の実情に適応した結果が得られるのではないかと考えられるのでありまして、かりに基礎控除額だけしか控除いたされませんで——無條件に医療控除あるいは災害控除をいたしませんで、個々の納税義務者につきまして、小さい子供がたくさんある、いかにも気の毒だというならば、それは何割を減額するとかいろいろな方法がとれるわけです。この市町民民税の第二の所得割の課税方式につきまして、例外を設けておりますのは、しばしば申しますように、さらに所得税の課税において彈力性を付しただけでありまして、これが一律に適用されるわけではありません。こういう方式を適用した場合には、さらに住民の担税力に即応しますように、いろいろなくふうが試みられるであろうということを、われわれは考えているわけであります。また扶養親族といいましても、一歳、二歳の子供もございますし、あるいは十五歳、十六歳の子供もございますし、あるいはまた老人もございます。あるいは三十、四十の血気盛りのむすこさんでありましても、單に世帶主と一緒に仕事をしているというがために、扶養親族として扱われているというものもあるわけでございます。あるいはまた非常な金持が病気にかかつて、医療控除を受けている。この資産家から医療控除をした額を、所得割の課税標準にとることが、ただちに適切でないという場合もあるだろうと思うのであります。言いかえれば、非常に彈力性のある課税方式を採用しておるのでありまして、当該住民の代表からなる議会において、個々の住民の実際の担税力に即応した課税方式というものは、さらにくふうされるであろうということを、十分お考え願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/27
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028・立花敏男
○立花委員 その考え方は根本的に実情に合わない考え方で、彈力性を持たすのであれば、最低限度をやはり一応設定した上で彈力性を持たしていただきたい。現在の勤労階級、現在の住民大衆がどういうふうな状態に置かれておるか、これは毎日々々、一日々々生活を圧迫されている状態に置かれているわけなのであります。そのときに最低生活を守るという線をはずしてしまつて、彈力性を與えたのだからそれでいいだろう、地方の議会できめればそれでいいだろうというふうな考え方は、これは扶養家族が餓死してもいい、生活費がどこから来るかわからないという状態に置いて、これは彈力性を與えたのだ、自由裁量の余地を與えたのだということは、まつたくこれは机上の寢言でございまして、こういうことで住民の生活が守れるとは思わない。現在の住民の生活が毎日々々非常に経済的に圧迫されているという実情を無視して、彈力性を與えたからこれでいいのだ、現在の所得税法の扶養控除というものも理想的じやない、私はこれが理想的だから置いておけとは言つていない。それが少くともわが国の現在の状態では、法制上の最低を守る線になつておる。だからそれをはずすことは問題だ。少くともその上に立つて、彈力性を與えるのなら問題ないのですが、最低の線をはずしてしまつて、まつたく武裝解除してしまつて、そうして彈力性だけをもらつて実際の生活ができなくなる、こういうことは勤労者を苦しめる改正である。私は決して所得税法の扶養控除が理想的だから、これを置いておけと言つているわけではございません。少くとも現在の状態ではこれは一応法制化された——もちろんこれはブルジヨア的な税制なんですが、その上でも一応これは最低の線が引かれておるところだ。これをはずすことは、いかなる名目が與えられようと、これはどうしてもはずすことはできない。これが現在引かれておる最低線なんだ、これを上げることこそ問題で、これをはずして税の対象から扶養控除もやらないというようなやり方は、これは間違つておる。しかもあなたたちがおあげになつている地方財政の苦しさ、そういうものは一般化しております。しかもこの原因がどこにあるかも明らかである。その問題を解決しないで、最低線をはずしてしまつて、しかも財政的な困窮という根本的な問題が解決されませんと、どうしてもやはり最低線をはずされて、線がどんどん下へ来ることは明らかであります。そういう情勢を無視されて、この扶養控除をはずされるという考え方には納得できないと思うのですが、これは次官にひとつ御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/28
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029・前尾繁三郎
○前尾委員長 今は質疑ですから、あまり議論なり、討論にわたらぬようにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/29
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030・小野哲
○小野(哲)政府委員 立花さんの御所見は十分に拜聽いたしたのでありますが、この税法案は立花さんのおつしやるように、決して寢言を書いたものではないと私は確信をいたしておるわけであります。国会において十分に愼重な御審議を煩わしたいことを、私どもは望んでおる次第であります。
なおまた扶養控除の問題につきましても、立花さんの御所見として承つておるのでありますが、私どもの考え方は、先ほど来奧野政府委員から詳細にわたつて説明をいたしましたように、そのねらいがどこにあるかということを十分に御了得が願いたいのであります。立花さんは勤労者あるいはまた困窮の者に対して、この例外的の規定がただちに適用されるものであるという先入主のもとに、御所見をお述べになつておるやに伺うのでありますけれども、この点につきましては、地方税法の建前あるいは地方自治の運営という基本的な問題から考えまして、必ずしも立花さんの御所見には私ども同感の意を表しがたい。従いましてこの選択課税の第二方式をとる場合におきましても、具体的に個々の地方住民の生活の実態を最も身近な地方公共団体が十分に調べました上で、課税をいたすことになりますのと、また制限税率が一〇%ということにいたしております関係上、その限度における累進課税も行い得る建前になつておりますので、必ずしもそのしわが勤労者諸君にのみ寄るとは考えられないので、むしろ富裕の人たちの場合において考えてみますと、医療控除その他の控除等がある場合におきましても、担税力の点にかんがみまして、所得割の形式によつてさらに御負担を願うということも考え得るわけでありまして、單に一方的な見解のみによつては、この点については判断をいたしかねるのではないか、個々の具体的の事情に応じて地方公共団体が適正な課税をして行くという建前をとることを私どもは期待し、またそうなければならないと、確信をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/30
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031・立花敏男
○立花委員 りくつは言いませんが、今まで市町村民税の所得割がかからなかつたものも、この方式によりますと、所得割がかかつて来るという場合が生ずると思うのですが、それはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/31
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032・小野哲
○小野(哲)政府委員 これは市町村民税の関係から申しまして、所得税の改正等に伴つて、さような場合があり得るとは想像いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/32
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033・立花敏男
○立花委員 それで十分ですが、今までは所得割がかからなかつたものが、この改正によつて所得割がかかつて来るということがやはり問題です。その場合に問題になりますのは、扶養控除を認めるか認めないか、扶養控除を認めれば、従来かからなかつたものはやはりかからないと思う。ところが扶養控除を除きますと、今までかからなかつたものも、今度はかかつて来るというふうになりますので、その結果からだけ判断いたしましても、やはり課税の対象が非常に広くなつて来る。今まで納めなくてもいいようなものも——今までの所得割の納め方も、非常にひどいと思うのですが、そういうものをすら越えて、なお所得制を納める部分が非常に広くなつて来る、こういうことは決して改正じやないと思う。大臣の説明の中に、必要に応じて所得割の負担を広く住民から求めることができる、こうお書きになつておるのにも明らかなように、市町村民税を負担する納税者をより広くしよう、言葉をかえて言いますと、今まで納めることができなかつた者——納めることができなかつたと申しますと語弊がありますが、今までは所得割を納めなくてもいいような者からも、なお所得割をとろうというのが、このねらいなんです。そのために扶養控除がじやまになるから、扶養控除はやらないでもいい、家族のある者も納めろというふうに、今度改正しているのです。そうなつて参りますと、根本的にやはり扶養控除を認めない、原則上いくら認めるとおつしやつておられましても、これは認めないことになるわけなので、こういうことはいくら特別の場合だとおつしやられましても、やるべきことじやない、その他の方法でやるべきで、扶養控除ははずすというような考え方はやるべきじやない、これはいかに美辞をお使いになろうと、基本的な生活権を直接脅かすことになる。扶養親族の生活権を直接脅かすことになります。こういう場合は、いかなる場合でもやるべきじやない、別にシヤウプ勧告においてすら、第二の方式に扶養控除は控除せよということが、はつきり書いてあるのです。しかもそれを今度の改正では、單に特例だ、地方財政が苦しいからという理由だけで、扶養控除ははずしてもいいというようなことをおつくりになつているのですが、これはシヤウプ勧告そのものの線からすら、はずれておるわけです。日本の政府が非常な英断をもつてやつたわけですが、そのやり方が勤労者にとつてはたいへんなことだ。生命線を脅かされるのだということになるわけです。小野さんはシヤウプ勧告の第二の方法に、扶養控除もやれとお書きになつていることは御承知だと思うのですが、なぜそれを特別の例外の場合はいいのだというふうに、特に例外規定をお設けになつたのか、これをお聞かせ願いたい。
それからあなたは、私がこれをはずせばすぐ全部にかかつて来ると考えておるとおつしやられましたが、もちろん地方の條例でありますし、いろいろな場合も起つて参りまして、直接負担にならない場合もあるだろうと思う。しかし税法上でそういうことを一旦規定した以上は、可能性だけは少くともあるわけなんで、そういう可能性を與えること自体が、間違いであるということを言つておるのでありますから、具体的に税金となつて現われるかどうかは、おのずから別な問題で、一般的に地方税を規定いたします税法の中で、そういうことができ得るような可能性の道を開くことすら、私は間違いである、こう言つておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/33
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034・小野哲
○小野(哲)政府委員 シヤウプ第二次勧告の中で、扶養控除を必ず差引くのだということが書いてありましたかどうか、私ちよつと今ここに持つておりませんし、はつきりとした記憶を持つたておらないわけでありますが、要は扶養家族の控除の問題につきましては、一面やはり均衡の問題も考えて行かなければならないのじやないかと思うのであります。あるいは嫁入り前の娘さんあたりの場合もありますし、あるいはまた血気盛りの青壯年が扶養家族の一人になつている場合もあろうかと思うのでありまして、さような具体的な場合を考えますると、扶養家族の扶養控除の問題につきましても、地方税法におきましては、具体的な考慮を排拂つてしかるべきものであるし、それがかえつて均衡を保持するゆえんではないか、かように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/34
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035・立花敏男
○立花委員 シヤウプ勧告にどう書いてあるか知らないというのは、これは重大な失態です。シヤウプ勧告にはつきり書いてあります。そういうことを知らないでこうい重大な規定をおつくりになることは、ぼくは軽率だと思う。ぜひひとつ見ていただきたい。
それから扶養控除を除くことが、均衡の問題だとおつしやいますが、單に均衡という問題だけから、扶養控除全体を認めないというような考え方は、全然ぼくは間違いだと思う。均衡上であれば、均衡を害するような具体的な問題の事例を、特例として処刑すればいいので、扶養控除を全然認めないというような考え方は、均衡の問題とは何ら関係がない。現在におきましても、年齢が非常に低い者におきましても、收入の多額にある者に対しましては、やはり税金もとつているはずなんで、扶養控除もやつていないはずなんです。こういう均衡の問題と、扶養控除全体を課税対象のわくからはずすという問題とは、おのずから別の問題で、別に処理されるべき問題です。それを扶養控除全体を控除しないというふうな考え方とすりかえてもらつては私困ると思う。そういう点で、何か考え方に混乱があるのじやないかと思うのですが、もう一度御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/35
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036・奧野誠亮
○奧野政府委員 所得割の第二の方式を採用いたします際にも、所得税の課税標準になりますところの総所得金額を採用するということが原則であります。しかしながら、場合によりましては、総所得金額から基礎控除額のみを控除した額を、課税標準にすることができるわけでありまして、その場合にはやはり個々の納税義務者の実情に応じまして、適宜な課税方式をさらに当該市町村の議会において、くふうせられるであろうということを考えておるわけです。ただ扶養控除をしないと、非常に無理な課税がただちに行われるのだというふうな前提をとつておられるのじやないかと私思うのですが、今政務次官もお話になりましたように、二十過ぎたばかりの娘さんが、工場に勤めていると、給與をもらつているわけでありますから、所得割がかかります。反面に商売をしているうちで、血気盛りのむすこさんがこれに協力しておる。それらが所得税法の建前では、扶養親族の扱いになりますために、所得税か課税されないというような結果になつて行く。どうも常識的に担税力を考えて行つた場合には、税法を形式的に当てはめた結果、所得税の納税義務はない。片一方はたまたまはつきりした月給をもらつているために、所得割が課税されて来る。これはどうも不均衡で、むしろ公平に課税しようと思えば、商売をやつている人も所得割を課税できるというような彈力のある規定にしておいた方が、適当ではないかと考えておるわけです。そういう彈力のある規定にした結果、ただちにその規定が市町村に適用されまして、個々の納税義務者に課税される額がきまつて行くわけじやないんです。彈力ある規定にした結果、当該市町村におきまして、さらにくふうを凝らす余地が出て参るわけであります。そうしてわれわれは均衡のとれた課税が行われることを期待したい、こういうふうな趣旨のもとに、この改正を行おうとているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/36
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037・立花敏男
○立花委員 あなたも次官と同じことを言つていると思う。私はこれを改正すれば、すぐに税金となつて現われるとは言つていないのであります。こういう改正をやれば、その可能性が生れるということを言つているのです。そういう可能性をつくるべきじやないと言つているのです。もちろん個々の扶養家族の中に、あなたの言われるように、血気盛りになつて、八百屋の手伝いをしておるむすこもたるでしよう。しかしそういう場合は例外的に処理すべきであつて、それがたまたま扶養家族の中にあるから、子供の扶養控除は一切認めないのだ。そういうものが例外的にあるから、すべての扶養控除を認めないというふうな考え方は、飛躍し過ぎているのじやないか。そういうことになりますと、当然扶養控除を受けるべき者も受けられない可能性が生れて来る。そういう可能性はなくすべきじやないか。だからあなたの言われるような例外の場合もあると思います。そういう場合はそれとして、例外的に処理すればいいので、一般的な扶養控除を除外するというふうな考え方は間違いだ。こういうことになりますと、当然扶養控除を受けなければならない者の生活が脅かされる可能性が出て来る。私は直接税金となつて現われるとは言つていないのです。そういう可能性が生れて来る。だからそういう可能性が生れて来るような税法の改正は、やるべきじやないということを言つておるのです。あなたたちがいくら強弁されようと、課税対象から扶養控除を除く——基礎控除だけにとどめて、扶養控除はやらないというような考え方は、一般の住民はおそらく、直感的に納得いたしません。扶養控除をやつてもらつても食えないのに、扶養控除を認めないということを、一本だれが納得しますか。しかも小野さんからも返事がないんですが、シヤウプ勧告の第二次方式には扶養控除を除くということを、はつきり書いてあるじやないですか。それをあなたたちは扶養控除をやらないという例外をおつくりになつておる。シヤウプ勧告は、扶養控控除は除くとはつきり書いてある。そんな特例をおつくりになるべきではない。いかに市町村の財政が苦しいからといつても、それは別途の方法で考慮さるべきであつて、ほんとうに扶養控除を受けなければ生活が維持できないような人の生活権を奪うような措置はやるべきではないと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/37
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038・小野哲
○小野(哲)政府委員 いろいろと御所見を承つておるのでありますが、要は地方自治というものに対する考え方、それから地方税の本質的な考え方、この両面から御判断を願わなければなるまいかと思うのであります。立花さんから住民が納得づくでというお話がありましたが、その点は私も同感であります。従つてたとえば今回の第二方式を採用しようという場合におきましては、おそらく当該地方公共団体の議会で、十分に論議を盡されることになるわけでありまして、その場合において、担税力がはたしてありやいなやというような点から考えて、一体かような方式をとることが必要であるかどうかということを、きめることになるであろうと思うのであります。従つて、本来ならば市町村民税の税率等につきましても、その地方公共団体に全部まかせるという建前が、地方自治の本旨に沿うゆえんではないかと思うのでありますが、それではあまりにわくをはずし過ぎることに相なりますので、この法律では、さような場合における選択の道を開いておる、こういうことになつておるわけであります。この点についてのお考え方は、多少われわれの考え方と違つておるのではないか、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/38
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039・立花敏男
○立花委員 あなたたちは地方議会、地方議会と言われますか、地方議会が前に設定されました地方税法を地方條例でやります場合にどういう方法をとつたか、おそらく御存じだろうと思う。決して地方議会は完全に地方住民の意向を反映し、地方住民の生活を反映した決定の仕方をしていない、これは事実なんです。そういう場合に、いたずらにこの生活を守る最低線である扶養控除の問題をおはずしになつて扶養控除はやらなくてもいいんだ、やるかやらぬかは地方の議会にまかせておけば、いいんだとおつしやいますけれども、その結果としましては、おそらく扶養控除が控除されない形になることは明らかなんです。しかしその問題は別といたしまして、私の言いたいのは、私どもはこのシヤウプ勧告そのものを信用しておりません。これが最良の税制であるとは考えておりません。しかし政府は、これによつて地方税法をつくりながら、しかもこれ以上のことを住民に押しつけようとしておるということです。あなたたちは、私がお尋ねしている問題にお触れになつておらない。シヤウプ勧告は明らかに——これはあなたの方からいただいたシヤウプ勧告の本なんですが、この中には、住民税の三つの方式の(b)といたしまして、「住民の国税たる所得税の申告書に記載してある基礎控除および扶養控除後の所得金額に対する課税。」とはつきり書いてある。私どもは、日本の税金は日本人がきめるべきで、何もシヤウプさんにきめてもらわなくてもよいと思うが、あなたたちはそれを金科玉條にしてこれをおきめになつた。そのシヤウプ勧告にすら第二の方式では、扶養控除を除いたあとの金額に課税しろ、こう書いてあるが、あなたたちはこれ以上のことを押しつけようとしておる。地方の財政が苦しいとか、特別な場合だとかそういうへりくつをつけまして、最も基礎的な基本的條件であるところの生きる権利、扶養家族の生きる権利である扶養控除すら、控除しなくてもいいというようなものをおつくりになろうとしているが、これは重大なあなたたちの態度の誤りだと思うのです。小野政務次官は、何回も私が尋ねているのにお答えにならないのですが、シヤウプ勧告の私が今読み上げました点を御存じの上で、こういう基礎控除を控除しないという特例をおつくりになつたのか、シヤウプ勧告に基礎控除をしないで特例をつくつてもいいとあるから、特例をおつくりになつたのか、一体どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/39
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040・小野哲
○小野(哲)政府委員 立花さんは、地方税法の運用にあたりまして、地方議会が住民の意思を代表しておらぬというふうなお考え方のようでございますが、われわれはあくまでも議会主議にのつとりまして、法律の運用をして参りたいという考えを持つておりますので、この点につきましては全然所見を異にいたしておりますことを、この際明らかにしておきたいと思います。なおシヤウプ第二次勧告の中に、扶養控除を必ず差引けというようなことが書いてあるというお話でございますけれども、私の見るところでは、課税標準の三つの選択方法についての解釈が、ここに書かれてあるものと思うのであります。どういうふうな方法によるか、その方法によつてはこういうふうな内容が考えられるという一つの解釈を、書いておるものと考えておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/40
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041・立花敏男
○立花委員 あなたはこのシヤウプ勧告の第二方式までごまかそうというのですか。私が今読み上げましたところをもう一ぺん読み上げます。第二方式として「住民の国税たる所得税の申告書に記載してある基礎控除および扶養控除後の所得金額に」課税しろ、こういうふうにはつきり書いてある。ところが何かそういうことが書いてないというように言おうとされているのですが、これはごまかし得ないと思うのです。こう書いてないとすると、あなたが基礎控除を控除することを原則として認めているのだと最初にお述べになつた言葉は、あれはごまかしなんですか。そうすれば扶養控除までもあなたはお認めにならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/41
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042・奧野誠亮
○奧野政府委員 シヤウプさんがお書きになつている真意というものは、シヤウプ博士に聞かなければわからないのであります。ただここに書かれてありますのは、標準金額という言葉を使いましても、課税総所得金額とは何ぞやということが、明らかには出て来ないのでありまして、そこで課税総所得金額につきまして、わざわざ括弧でくくりまして、「(課税所得金額とは基礎控除、扶養控除及び勤労控除を差し引いた純所得金額である。)」というふうに、説明をしているわけであります。地方税法におきましても、原則的にはその方式を採用いたしているわけであります。ただ例外的な規定を設けているわけでありまして、シヤウプ博士は、わが国の所得税法の規定の改正に伴つて生じます市町村民税の課税方式につきまして、さらにもつと例外方式を採用して行くことはけしからぬとは、決してどこにも書いていないと思うのでありまして、むしろ扶養親族の取扱い方が改正されるならば、それに伴いまして市町村民税の課税につきましても、実情に適合した方法がとれるように彈力のある改正方法を行つて行かなければならぬのではないか、例外規定を設けて行かなければならぬのではないかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/42
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043・立花敏男
○立花委員 実際もう盗人たけだけしいというか、非常にあいまいなごまかしの返事をなさつているのですが、私たち聞いておりますと、あなたたちに良心があるのかどうか疑いたくなる。現在の情勢では、扶養控除を控除してもらつても生活ができない。その場合に、扶養控除をしなくてもよいというような税法をおつくりになること自体が、間違いではないか。それがすぐ税金に現われて来るかどうかは別問題といたしまして、あなたたちは、地方議会は住民の意思を十分に反映しているとおつしやいますが、たとい反映しているといたしましても、そういうふうに扶養控除を認めなくともよいという法律をおつくりになること自体が、間違いではないかということを言つているのです。あるいは言葉をかえて言いますと、扶養親族は扶養控除をやつてもらはなくとも生活ができるとお考えになるのか。これが問題なんです。おそらくこれに対しては、できるとは断言できないと思うのです。だからそういう場合に、扶養控除を除くようなことはおやりにならない方がいい。そういう現実に立脚いたしまして、シヤウプ勧告にすら扶養控除を除けということが書いてありますので、これがいつまでたつても金科玉條だとは私どもは初めから考えておりません。しかしシヤウプ勧告が出ましてから、扶養控除を除いてもよいような情勢の変化はないどころか、かえつて扶養控除をもつと多くしなければならない情勢が起つておりまして、扶養控除の率も引上げられているわけであります。扶養控除を除いてもよいというような客観情勢の変化は全然ございません。逆の現象が起つているわけです。その場合に、地方税法で扶養控除を除いてもよいというような規定をおつくりになることは、明らかに矛盾している。こういうことを言つておるわけなんで、もつと良心的に問題を扱つていただきたいと思います。それからまたこのシヤウプ勧告について、あなた方がごまかしをやつているということを、勧告の原典自体から指摘したいと思うのです。これは第二次勧告ですが、市町村民税に対する項の中に書いてあります。「誤税総所得金額の一定割合で誤税しなければならないであろう」。しかし均等割の制限税率は、現在の標準税率まで引下げるべきである、こういうふうにこの課税総所得金額の課税方式をとる場合あるいは源泉徴收をやる場合、そういう場合には均等割の制限税率は現在の標準税率まで引下げるべきである、こういうふうに書かれておるわけなんです。これは第二次勧告ですが、しかもあなたたちのお出しになつておる税法の改正ではこの源泉徴收をやる。この扶養控除まで控除しないで課税所得に課税する。シヤウプ勧告の前二つ述べております点は、改正案で出して来ておりますが、均等割を下げるという問題はお出しになつていないのです。ここにもやはりシヤウプ勧告のあなたたちに都合のいい方だけは、一方的に改正点として出しているが、税率を引下げるという問題についてはちつとも出しておられない。源泉徴收をやるということ、あるいは課税総所得を対象とすること、これと重大な関係があつてシヤウプが勧告しております課税税率を引下げるという問題は改正案では何ら触れてない。こういう点からしましても、シヤウプ勧告自身をすらあなたたちは一方的にひんまげておやりになつておる。なぜそんなにシヤウプ勧告をひんまげてまで、勤労者大衆の負担になることを考えなければいけないのか、税金をよけいとることを考えなければいけないのか、どうも私どもは納得できない。この私が最後に指摘しました均等割の制限税率を現在の標準税率まで引下げるべきであるという勧告を、この部分だけ、なぜ無視されたのかという点をひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/43
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044・小野哲
○小野(哲)政府委員 シヤウプ第二次勧告の趣旨はできるだけ取入れたいということで、いろいろ研究をして参つたのでありますが、ただいまお話になりましたように均等割を標準税率まで下げるということもシヤウプ勧告にありますので、いろいろ検討いたしたのであります。二面また市町村民税の税收見込みの点も、具体的にやはり判断をしなければなりませんので、所得税の減税等とにらみ合せますと、この際は予定の税收を得るために、さらに市町村民税の所得割をふやしたり何とかすることは、極力避けて参らなければなりませんし、一般の住民の担税力の点も考慮に置かなければなりませんので、シヤウプ勧告の中でとり得るものは、極力とるわけでありますけれども、二十六年度の地方財政計画と見合つて、具体的の問題としては取捨選択をせざるを得ない実情にありまするがために、ただいまお話のように均等割については標準税率まで下げる方式をとらなかつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/44
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045・前尾繁三郎
○前尾委員長 立花君、午前はこの辺でやめていただきたいと思います。それから皆様に申し上げておきますが、午後政府の逐條説明を聽取して、委員の出席の都合もあるようでありますから、まだ残つております一般質疑も並行してやつて行くことにいたしたいと思います。
それでは暫時休憩いたしまして、午後一時半から再開いたします。
午後零時三十五分休憩
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午後二時四十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/45
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046・前尾繁三郎
○前尾委員長 それでは再開いたします。
まず公職選挙法の一部を改正する法律案起草に関する件を議題といたします。
すでに去る二月二十日の委員会におきまして、選挙に関する小委員長より小委員会の成案について報告があつたのでありまするが、その後種々お打合せいたしました結果、小委員会の成案に、さらに公務員の立候補制限に関する第八十九條第一項に一号を加えまして、「地方公務員法附則第二十項に規定する公営企業に従事する職員で、政令で指定するものについても、在職中公職の候補者となることができるようにしたいということでありましたので、小委員会の成案にこの点を加えたものを、ただいまお手元に配付いたしました。この案につきまして御質疑があればこれを許します。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/46
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047・前尾繁三郎
○前尾委員長 ほかに御質疑ございませんようでありますから、本案を本委員会の成案とし、委員会提案の法律案とすることについてお諮りいたしたいと存じますが、採決に入りまする前に右の案について討論を行いたいと思います。立花敏男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/47
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048・立花敏男
○立花委員 一緒にやられますと、どうも社会党の修正案に反対しなければいけないのでありますが、私どもは社会党がお出しになつているこの「地方公務員法附則第二十項に規定する公営企業に従事する職員で、政令で指定するもの」これを改正するという問題には部分的には私ども賛成なんで、目下の選挙法において消防団長の立候補を許すというようなことをやられた一方、市電の従業員あるいは水道の工夫、こういうものの立候補を許さないというのは大きな矛盾でありますという点から、小委員会におきましてもこれらの人たちの立候補を認めろということは社会党と一緒に主張して参りました。この部分には賛成なんですが、しかしこれが一緒に出されまして、これを修正点を含む原案ということになりますと、私どもは賛成するわけには参らないということを言つておきたいと思います。またその原案に対する修正部分も決してこれで終つておるのではございませんで、このほかに修正すべき部分が非常にたくさんありますので、この社会党のお出しになつた分、指摘された分だけが、この改正案に対する修正案であるという幻想を、労働者諸君が抱かれましては、あるいは一般市民がそういう考えを持つようになりましては、これは大きな錯覚を與えることになりますので、そういう点では非常に考慮を要する修正案の出し方ではないか、こういうふうに考えておる。
しかし修正案の部分はそれくらいにいたしまして、全体として共産党といたしましては、遺憾ながらこれは反対なんで、賛成するわけには参りません。それは現在の公職選挙法自体が、非常に政治的な基本的な権利である選挙権、あるいは被選挙権に対する非常に多くの制限を含んでおるということを、共産党は常に考えておりますし、またそれに対しましても、小委員会で意見を求められました場合でも、共産党の改正の意見を書類にして提出してあります。それが実は今度の改正案にはほとんど取入れられていない。逆に今度の改正は部分的な改正も含んでおりますが、しかし非常に大きな改悪を含んでおります。そういう意味でどうしても私どもは賛成できません。その改悪の点はあとで触れたいと思いますが、共産党が出しました根本的な現在の選挙法に対する修正は、まず第一に選挙区制の根本的な革をするということ、知事の選挙にいたしましても、あるいは市長の選挙にいたしましても、それは非常に小さい選挙区に分割されて選挙をやらざるを得ない立場になつておるのですが、そういうことは廃止いたしまして、やはり全選挙区を一区にするという形で、大選挙区の形をとるということ、これは根本的に現行の選挙法では改正されなければいけない点だと思いますので、これをまず第一に共産党は主張したわけです。従つて大選挙区にいたしまして、やはりこれは比例代表制に改正すべきである、こういう根本的な点に触れ得ないところが、やはり現在の支配階級の弱みである。こういう問題に触れ得ないというところに、今度の選挙法改正が結局改正と申しましても字句的な改正にすぎない、あるいは改悪に終るというような点が現われて来ているのじやないか、こう思います。どういたしましても私どもはやはり大選挙区で全国一区で比例代表制にすべきである、こういう根本的な改正を行うことを主張いたしたいと思います。
それから年齡の点につきましては、やはり満十八歳以上にすべて選挙権を與えること、たとえば十八歳、非常に低いようですが、実際はアメリカなどにおきましても、十八歳ぐらいから兵役にとつておりますので、現在でも満十八歳といえば、一人前の社会的な職業にもついておりますし、まして兵役にとられるくらいでございますから、一人前の男としてもやつて行かれるわけなんで、こういうものには当然選挙権を與えるべきである。現在の選挙法におきましては、特に被選挙権などにおきましては、知事ですか、参議院議員ですか、そういうものにおきましては三十何歳というような、非常に青年たちの政治意欲を害するような規定がございまして、こういうものはいつまでも置くべきじやない。特に現在のように、日本の国家の推進のエネルギーとして、青年のエネルギーが重要視されなければならない場合に、三十五歳まで被選挙権を制限するというような考え方は、明らかにこれは時代の要求に合致しない選挙法であると考えますので、やはり選挙権、被選挙権、ともに満十八歳以上にはすべて與えるべきだ、こういうふうに考えます。こういう根本的な問題にも今度の選挙法の改正は何ら触れることがない、また触れることができないというのが実態だろうと思うのです。
それから次にはやはり根本的な問題ですが、居住に関する制限、三箇月以上というのがございますが、こういうものは日本の領土に居住しておる以上は撤廃すべきである。居住に関する制限などは、選挙権とは何ら関係のないことなので、こういうものはよろしく撤廃すべきである、こういうふうに考えます。
それから日本の国内に居住しております少数民族の問題でございますが、やはりこれはどういたしましても民族平等の建前から、こういう人たちにも当然選挙権を與えるべきである。具体的に申しますと、日本に約六十万以上の朝鮮人がおりますが、この人たちには当然選挙権を與えるべきだ。この人たちに対しましては、選挙権以外のことを除きましては、大体日本の国民と同じように扱つております。この間神戸事件が起りました場合に、長田区長に会いましたが、その場合も何ら差別をせずに扱つておるのだ、今後も一区民として日本人と同じように扱うのだということを言つておりますし、まつたく日常生活あるいはその他の生活の上で何ら区別がありませんのに選挙権が剥奪されておる。こういうようなことは非常に民族の平等を阻害し、また両民族のこれからの提携を妨げることになると思いますので、ぜひひとつ選挙権を與えるようにしていただきたいと思います。これもおそらく現在の支配階級の考え方では、少数民族をこういうふうにほんとうに平等に扱うことは、不可能なことだと思いますが、これは理念としては、どういたしましても主張いたしたいと思います。選挙法の中にも少数民族に対する選挙権を與えることを、実現するように要求いたしたいと思います。
それから選挙はどういたしましても、公営の徹底を期さなければいけないと思いますが、この改正されました選挙法の中には、かえつて公営と逆行するような点が見えるわけです。ほんとうに人民に基礎を置いた民主主義的な選挙法であれば、公営の徹底が一番よろしいのでございまして、それに背反するような選挙法の改正は、私どもは納得することができない。ところがこの選挙法の改正には、市長あるいは知事あるいはその他の各級の議員の選挙に対しまして、葉書が出せるように改正したということになつておりますが、しかしその葉書は無料でなくて有料なんです。この問題を追究いたしますと、出せないのを出せるようにしたのだから、これは改正じやないかと言われるのですが、出せる場合でも、有料と無料とは根本的に違いますので、同じものを無料で出せるようになさつたならば、これは改正と言えるかもしれませんが、有料となつて参りますと、金のある者は出せても、金のない者は出せないということになつて参ります。また全体的に見ましても、選挙において候補者の負担すべき金がそれだけよけいにかかるということになつて参りますと、これはやはり公営の精神に逆行するのではないか、今こそ選挙の公営を徹底いたしまして、民主勢力の各級議会への進出をはからなければいけないときに、公営に逆行するような改正案が盛られておるということに対しましては、これは徹底的に反対をいたさなければならないと思います。
それから次に申し上げたいことは、これは現行の公職選挙法によりますと、投票所あるいは演説会場、こういうところへ警官が立ち入ることが許されておりますが、これはどういたしましてもやめていただきたい。最近の政府のとつておりますやり方は、言論の圧迫、武裝警官による演説会場の彈圧、あるいは私服警官による演説会場へのスパイの潜入、こういうことは公然と行われておるのでありまして、しかも選挙法のような重大な基本的な政治的な権利である場合に、官憲がそういう会場に立ち入ることを許しているというような條項は、私どもは残しておくことに賛成するわけには参らない、従つてこれは現在の選挙法から除くように改正していただきたいと考えておつたのですが、これも認められておりませんので、この点からも私どもは改正案に賛成することはできない。
それから選挙に関する言論出版の自由の問題、特に新聞雑誌等に対する表現の自由の尊重ですが、これがやはり現在の公職選挙法を立案するときから問題になつておつたのですが、いまだに十分に徹底されておらない。これも今度の改正にあたりましては、根本的に言論の自由を認めるというふうにやつていただきたいと思うのですが、これもやられておりませんので、私どもはこの点からも反対いたします。またこれに対しまして重大な罰則があるのですが、これももちろん私どもは納得することができない、憲法に許されておりますところの表現の自由が、こういう基本的な選挙の問題に関しましては、特に尊重されなければいけないのに、選挙の場合にこういう表現の自由を制限するような條項がありますことは、私どもは賛成するわけには参りません。
その次に私どもが反対いたさなければなりませんのは、職業に基く一切の選挙に関する制限の撤廃がやはり行われていない、御承知のように国家公務員あるいは地方公務員に対しましては、被選挙権が剥奪されておりまして、その人たちは職を辞さなければ立候補できないということになつておりますことは、御承知の通りであります。社会党がお出しになりました、今度の修正案に含まれております地方公営企業の人たちだけが問題ではございませんので、全国数百万人の公務員が、被選挙権を剥奪されておるということは、遺憾ながら私ども納得することはできない。多少の特例というのではございませんので、日本の人口の何パーセント、全体の数にいたしまして二百何十万という人が、被選挙権が剥奪されておるということは、遺憾ながら納得することはできません。この人たちによろしく平等に選挙権、被選挙権を與えるべきである。地方公務員、国家公務員は決して奴隷ではございません。選挙権を與えないという理由はちつともないわけなんで、被選挙権を堂々と與えるべきである。当選したあとで職務の関係上兼職を禁止することは妥当かと思うのでありますが、最初から地方公務員であるがために、国家公務員であるがために被選挙権を與えないというりくつは、どこにも私は成り立たないと思う。その他、職業に基く一切の選挙に関する制限の撤廃を主張いたしたのですが、これも改正案には何ら盛られていない、こういう重大な問題には何ら触れられていないことは不満でありますので、私どもは賛成することができないのであります。
それから今度の選挙法の改正が非常に反動的である、その意図において非常に反動的であつたということは、この改正案の最初の案には、街頭演説あるいは連呼、こういうものを午前の六時から午後の十時までに限定する、それ以外はやつてはいけないというような、規定をつくろうとなさつたのであります。これは私ども共産党の反対で撤回されたようでありますが、そういう意図をもつて最初の案がつくられたということ、こういうふうに選挙に関する不要な干渉と申しますか、制限と申しますか、こういうものを非常に考えておつたということ、それからこれは社会党からお出しになつたと思うのでありますが、議論の中に出て来たと思うのですが、ビラを、共産党があまりたくさんあるから、ビラを張らさないようにしようじやないかという意見もあつたようですが、こういうふうに何ら必要のない制限をやろうとしておる。しかも民主的な選挙方法である街頭演説、あるいはメガホンによる連呼、あるいは新聞紙などの古紙を利用したビラ、ポスターこういうものまで制限しようという考え方、これは現在行われております選挙のやり方から見まして明らかに民主団体のとつております選挙方法を制限しようという考え方が現われておりますので、私どもが主張いたしておりますところの一切の制限を撤廃するという考え方と逆行すると思いますので、この改正案には反対を表明いたさざるを得ないのであります。
それから最後には、公職選挙法だけではなしに、あるいは国家公務員法において、地方公務員法において、いろいろな勤労者に対する政治活動の制限あるいは選挙に関する制限があるわけでありますが、こういうものはやはり一切含めて、この際まとめて撤廃すべきである。選挙に関する、この基本的な人権であるところの選挙に関する権利、こういうものを一括して、平等に労働者にも與えるべきであるという主張をやつて参りまして、たとえばこの公職選挙法、日鉄法あるいは公企労法、あるいは教育関係法あるいは国家公務員法、こういうものに含まれております選挙に関する制限、これを一括して撤廃すべきであるというふうに主張いたして参つたのでありますが、これも遺憾ながらいれられてないようであります。
以上述べましたように、現在の非常に根本的に不備な公職選挙法、これに対しまして改正をすべき点が多々あるわけなのでございますが、党がせつかく求められて意見を出しましたが、こういう問題を何らお触れになつてない、しかもお触れにならないばかりか、かえつて逆行の改悪も含んだ案をお出しになつておる。社会党のお出しになつた修正案も、非常に部分的なものでありまして、これを含んでの修正原案にはもちろん賛成することはできないということを、明らかにしておきたいと思います。問題は、こういう修正案が出て参る根拠なのですが、実はもう選挙自体があまりやつてもらいたくないというふうな考え方があるんじやないか。すでに議会におきましても議会から共産党を締め出す、議会における共産党の発言を抑圧するという形がはつきり出ておりまして、選挙だけではなしに、選挙で選ばれました議会においても、共産党に対する活動を制限するという考え方が現われて来ておるのでありますが、これが反動勢力が力を増して行く以上は、不可避なる現象であり、これこそが反動勢力が孤立して行く現われであると思いますが、この公職選挙法の改正は、明らかにそれを現わしておると私は思う。そういう意味で日本が外国の植民地になつて、ますます孤立して行けば行くほど、こういう選挙法に対する根本的な修正は行われずに、むしろ改悪が行われて行く。今度の改正案は日本の反動勢力が明らかに孤立しつつある、民主主義の仮面をみずから脱ぎ捨てつつあるという、一つの歴史的な証拠だと思います。そういう意味で共産党は、この改正案には絶対に反対をいたします。もちろん社会党の修正案を含めました改正案には、絶対反対をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/48
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049・前尾繁三郎
○前尾委員長 ただいまの立花君の発言中に、社会党の修正案というお話がありましたが、社会党の修正案ではなしに、本委員会の成案として追加をいたしたわけでありますから、御了承を願います。床次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/49
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050・床次徳二
○床次委員 私はこの法案には賛意を表するものでありますが、この機会に事務当局に三点ばかり将来の選挙法改正のためにお願いしておきたいと思います。今度の改正は、これは来るべき地方選挙に対する応急のものでありますが、やはり根本的にはもう少し研究すべきものがあると思うのであります。特にお願いいたしたいのは、投票の方式であります。今まで投票はおのおの選挙人が書くことになつておりますが、やはり将来の投票におきましては、印刷に候補者の名前があるものに対しまして、これにしるしをつける、符号をつけるという方法に対してもつと積極的に御研究を願いたい。今後十分準備ができますれば、あるいは今度の選挙においても、もう少しいろいろ考え方もあつたろうと思うのでありますが、今後の研究問題として、これを選挙管理委員会においても、十分お調べを願いたいと思うのであります。
第二に公務員の選挙に対する権利の問題についてでありますが、ある程度まで今回の改正においてわくが広げられたのでありますが、しかしもつと均衡をとる余地があるのではないかと私ども考えております。残されたものもあると思うのでありますが、これはそれぞれ関係当局におきまして、ひとつお調べをいただきたい。われわれも修正する余地があると思いますが、関係当局においても、これをお考えいただいておく必要があると思うのであります。
第三点は選挙の管理の費用の問題でありますが、これは往々にして地方の負担になりやすく、管理委員会におきましても、ずいぶん事務当局ではお困りのようでありますが、この点は十分お考えおきいただきまして選挙の負担がいたずらに地方にかからないようにお考え願うとともに、でき得る限り選挙費用が少くて済む方法をさらに考えていただきたい。
以上三点を要望いたしまして、私は賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/50
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051・前尾繁三郎
○前尾委員長 他に通告がありませんので、討論はこれにて終局いたします。
それではお諮りいたします。本案を当委員会の成案とし、これを委員会提出の法律とするに賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/51
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052・前尾繁三郎
○前尾委員長 起立多数。よつて本案を本委員会の成案とし、委員会提出の法律案とすることに決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004720X02019510307/52
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