1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月五日(月曜日)
午後一時三十九分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 阿左美廣治君 理事 中村 幸八君
理事 高橋清治郎君
江田斗米吉君 小川 平二君
神田 博君 澁谷雄太郎君
高木吉之助君 中村 純一君
永井 要造君 福田 一君
南 好雄君 村上 勇君
田代 文久君
出席政府委員
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(特許庁総務部
長) 松永 幹君
委員外の出席者
專 門 員 谷崎 明君
專 門 員 大石 主計君
專 門 員 越田 清七君
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二月三日
地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、
繊維製品検査所の支所及び出張所の設置に関し
承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
同日
中小商工業者の不動産担保による長期金融対策
確立の請願(柄澤登志子君紹介)(第二九三
号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
特許法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
四号)
実用新案法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一五号)
意匠法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
六号)
弁理士法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七号)
商標法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
八号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/0
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001・小金義照
○小金委員長 ただいまから通商産業委員会を開会いたします。
本日は、去る一月二十五日本委員会に付託され、同月三十日に提案理由の説明を聽取いたしました特許法の一部を改正する法律案、実用新案法の一部を改正する法律案、意匠法の一部を改正する法律案、弁理士法の一部を改正する法律案及び商標法の一部を改正する法律案、この五件を理事会において決定いたしました通り一括して議題にいたします。質疑を許します。中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/1
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002・中村幸八
○中村(幸)委員 本日議題となつておりまする特許法の一部を改正する法律案外四法案につきまして、先日の委員会において通産大臣からその提案理由の説明を聞いたのでありますが、本日は政務次官もお見えになつておりますし、また特許庁の総務部長も見えておりますので、いま少し具体的に詳細にこれらの五つの法律を今回改正しなければならぬという理由を、補足して御説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/2
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003・首藤新八
○首藤政府委員 今度の料率の改正は、その理由のほとんどが他の物価に比較しまして、この五法案にきめておりまするおのおのの料率はあまりに安過ぎる。しかも今日まで特許庁の支出は大体これらの料率の收入によつてまかなうという建前を堅持して参つたのでありまするが、それが最近料率をすえ置いたことによつて收入は一向ふえない、しかるに一方支出の方は、客観情勢の変化とともに、しかも一般物価の高騰と相まちまして非常にふえて参りまして、このバランスが従来とは全然逆になりまして、常に支出の方が多いようなことになつておりまするので、本来の姿に返したいということで、提案いたしましたような料率に改正していただきたいということであります。この法案の御協賛を得ますれば、大体二十六年度におきましては、收入が一億七千万円、支出は一億五千万円ということで、差引二千二百万円ばかり收入超過ということになるのであります。しかし本年度の経済情勢から見まして、この程度の收入超過は必要でないかというふうな考え方から、一応の新しい料率を決定したということになつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/3
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004・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいま政務次官から今回の法律改正についての補足的な御説明がありました。これとせんだつての大臣の提案理由の説明を照し合して大体了解したのでありますが、私は以下二、三簡單な質問をいたしたいと思います。
まず第一に、ただいまの御説明によりまして、今日は戰前に比べまして物価指数も非常に騰貴しておる。また反面に貨幣価値が非常に下落しておる。従つてこれらと均衡を合せるためにも、特許料あるいは登録料その他の料金の引上げをするのだ、こういう御趣旨のようであります。この点につきましては、私は何ら異議をさしはさむべきものはないと考えるのであります。しかし御承知のように、大体発明家というものは、とかく金には縁のない人が多いのであります。毎年々々何年も長い間かかつて寢食を忘れて一切の家財を発明研究に投入し、発明がようやく完成いたしますころには一文のたくわえもなく、わずかに人の情で露命をつないでおる気の毒な事例も乏しくないように聞いておるのであります。それにつきましても、今回の値上げ程度なら、発明家あるいは権利者の負担が過重とまでは言えないのじやないか、まあまあ大体妥当な値上げじやないかと実は考えるのであります。しかしたとえば第十年分の特許料の千円が三千円となり、あるいはまた第十三年分の特許料二千円が六千円になるということになりますと、あるいは中にはこの特許料を納付することができないような者も出て来はしないかということをおそれるのであります。この場合におきまして、発明協会あたりでその特許料を立てかえて支拂つてやるようにするとか、あるいは気の毒な発明家を何とか救済する方法はないものか、この点をまずお尋ねいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/4
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005・首藤新八
○首藤政府委員 まつたく御説の通りでありまして、われわれも発明家の犠牲という点につきましては格別の関心を持つておるのであります。従つてその面に対しましては、私は先般も畠山発明協会長からいろいろの申出がありまして、実は私ども満幅の賛意を表したのでありまして、何らかの方法で別個に助成金を交付するとかあるいは何らかの形式で、発明家がその犠牲を拂う程度のなるべく薄いような方途を別個に講じたい。実は現在そういうように考えまして構想を練つておりまして、近いうちに何か具体的な措置を講じたいと考えております。
なおそういう意味から料金がいささか高いのじやないかということにつきましては、われわれもまつたくそう感ずるのでありますが、何といつても片一方は長年の間予算措置において、收入をもつて支出をまかなうという建前を堅持して参つた関係上、新しい予算を編成するに際しましても、とかくこれが大蔵省その他関係官庁の非常な関心を持たれることになつておりますので、そういう面からも一応均衡を得せしめるという点に重きを置いて改正した次第でありますから、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/5
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006・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいまの御説明は、発明協会を活用して発明家が困らないようにするため、目下研究中であるというお話でありまして、まことにけつこうなことと存じます。発明協会は国家より多額な補助金をもらつて、発明奬励の事業に專念しておる団体でありますので、政府においても今後とも一層この発明協会を活用して、効果的な発明奬励ができますように督励をしていただきたいと思います。但しただいまのお話の中に、大蔵省方面の意向もあつて、特許庁の支出と申しますか、発明奬励等に関する支出については、国家財政上の特許料等の收入によつてまかなつて行く、收入だけでやつて行くのが従来の例であつた、こういうお話でありました。従来はそうであつたかもしれませんが、そういう考え方では私ははなはだ納得できないのであります。ただいまも御説明があつたように、今日の料金値上げによりまして、二十六年度には收入が一億七千数百万円、支出が一億五千万円、差引二千二百万円の黒字になるというような御説明でありましたが、これは私ははなはだけしからぬ、聞き捨てならぬ御説明と思うのであります。と申しますのは、一体わが国は厖大な人口をかかえまして、国土は狹小であります。資源はきわめて貧弱だ、こういう状況でありまして、今後わが国の生きるべき道はただ一つ、科学技術の振興をはかりまして、能率の向上、あるいはまた物資の有効利用というような面を強調しまして、そうして輸出の振興をはかる以外に方法はないと思うのであります。このためには、百億や二百億の金は惜しみなく使いまして、科学技術の画期的振興をはからなければならないと考えるのであります。しかるに、ただいまの御説明にもありますように、政府はこれに反した方針を今までとつておつた。発明家から高い料金を支拂わせて、その国家收入の範囲内において、わずかにその一部分を使つて発明奬励等の仕事をしておる。こういうお話でありまして、これはいわば政府が発明家を搾取しておると言つても過言ではないと存ずるのであります。私は今回の料金引上げが不当であると申しておるのではありませんが、発明奬励等のためには、特許庁の独立採算というようなことはこの際考うべきことではないと考えるのであります。従つて、特許料あるいは登録料等の收入の額いかんにかかわらず、たとえ特許庁の收入が少くて赤字になつても、発明奬励費というものはどしどし支出してもらいたいと思うのであります。この点については、通産省では、今後大蔵省等とも十分に交渉せられまして、発明奬励費の増額について御努力願いたいと思うのでありますが、現在二十六年度の予算におきまして、特許庁では、発明奬励費というものについて、どういう費目にどの程度の金額を計上しておるか、この点について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/6
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007・松永幹
○松永説明員 発明奬励費といたしましては、二十六年度予算に一千七百万円計上されてございます。二十五年度は一千二百万円でございまして、五百万円の増額になつておりまするが、これは特許庁で発明審議会というものを開きまして、国家的にも重要な発明であり、その実施化を奬励すべきものについて奬励金を交付しておりますが、その実施化補助金の額が昨年度は三百万円でありまするが、八百万円に増額せられているという状況であります。爾余の予算、すなわち自転車競技法の收益による補助金、発明協会に対する発明奬励の補助金は大体前年同様全額計上されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/7
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008・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいまの御説明によると、発明奬励費というものが来年度一千七百万円計上されているそうでありますが、先ほどの通産次官の御説明によれば、特許関係の総收入は一億七千万円ある。そうすると、わずかに特許関係の收入の十分の一を発明奬励費に振り向けているということになるのでありまして、われわれといたしましては、この点ははなはだ納得の行きかねる点であります。この発明奬励ということについては、通産省といたしましては、もつともつと格段の御努力をなさつて、一億七千万円の收入というようなことにこだわらないで、むしろ五十億でも百億でもどしどし使いまして、そうして日本の科学技術が格段の進歩発展を遂げますようにお願いしたいのであります。
なお次にお尋ねいたしますが、今回の値上げによりまして、権利者に対してそれだけ負担をかけるのでありますが、これもやむを得ないことといたしまして、サービスの点が改善されればよいが、サービスの点が一向改善されぬということでは、ただ政府が高い料金を拂わせるということだけで、この点はなはだ遺憾に思うのであります。聞くところによると、特許出願等の件数も、今日では大体戰前の数まで回復しているそうでありますが、ところが、出願して審査に着手いたしまするまでに非常に長い期間かかる。出願後一年くらいで許否の決定があるものはまだいい方で、一年半、あるいは二年とかかるものも数知れない。長いものは三年、五年とかかるということを聞いておるのであります。こういうことでありますると、せつかく発明家が苦心をして発明を完成いたしましても、特許庁の審査官の手によつて許可になるころには、もうすでにその発明が時勢遅れになつてしまう。また場合によつては、第二、第三の新しい発明ができて来ておつて、何の役にも立たぬという話をよく聞き、不平不満も承つておるのでありますが、どうかこういうことのないように、ぜひ審査は促進していただきたいと思うのであります。そこで私のお尋ねしたいことは、今日特許庁には、どのくらいの事件が未処理のままで停滯しておりまするか。またもしそういう厖大な未処理件数があるとすれば、これをすみやかに処分いたしまして、一掃してしまうためには、審査官を増員するとか、あるいは参考資料を整備するとか、その他審査能率を上げるための手段方法を講じておると思いまするが、どういう方法をとつておられるか、その点について御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/8
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009・松永幹
○松永説明員 ただいま特許庁において審査が一年以上停滯しておるのではないかというお話がございましたが、二十五年の十二月末をとりまして、停滯しております件数が九万百二十九件でございます。年間の大体の処理件数は七、八万件でございますので、御説のように一年近く停滯しておるのでございますが、これは最近始まつた現象ではございませんで、昭和十年ごろのノーマルな状況のときにおいても大体七、八万件の手持ちを持つたのでございます。これのよつて来る理由は、予算要求の際に大体その当時の審査の必要とする件数、すなわち出願件数を見合つて、大体審査員の数をきめるのでありますが、実際やつてみますと、出願件数の方が予想よりも多かつた、例年追随して来ましてかような累積になつたのであります。毎年々々従来の累積を処分する計画を立てるのでございますが、実績におきましてはそれが狂いまして、結局前年程度の持越しを持つているというような状態に立ち至つているのでございます。それで特許庁としても、かようなことでは御説の通り非常に出願者にも、あるいは日本の技術にも影響が少くないので、出願があれば、すみやかに審査ができる態勢に行ぎたいと考えているわけでございます。来年度予算においても三十六名の増員を計上せられておるのでございます。昨年は二百九十八名でございまして、今年は三百三十四名でございまして、約一割二、三分程度の審査員を増加せられでおるのでございます。人員の増加のほかにいろいろ能率向上の対策を講じまして、何とかたまつている件数を処理したいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/9
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010・中村幸八
○中村(幸)委員 ただいまの御説明によると、二十五年一月現在で九万百二十九件停滯している。年間の出願件数が七、八万であるから一年以上のものが停滯しているわけであります。平均一年分の停滯としても、中には三年、四年かかるものもあるわけであります。そういうように長くかかるということは、先ほど申し上げるように発明というものの価値が非常になくなる。また一面発明家の発明意欲というものを沮喪せしめることにもなるわけですから、今後格段の御努力をもつて審査員の増員その他に御努力願いたいのであります。私どもの希望としては、出願せられた場合に一、二箇月のうちに処分してしまう、こういうふうにスピーデイーにやつていただきたいと切にお願いするわけであります。
最後にお伺いいたしたいことは、今回の改正法案が特許料、登録料、あるいは過料等の引上げのみを規定しているのでありますが、工業所有権制度自体の改正を近くなされるお考えがあるかどうか、この点を承りたいと思うのであります。御承知のようにわが国の工業所有権制度は世界で類例のないようなりつぱなものだといわれているのでありますが、第二次世界戰争を経まして、わが国の社会状態、あるいは産業、経済界の状態は戰前と一変いたしておりますので、真に実情に即した民主的な法律に改正いたしまして、わが国の経済再建に役立たしめる必要が非常にあると考えるのであります。政府におきましては特許法などの全般的な改正の御計画があるかどうか、もしあるとすれば今日いかなる御準備を進められているか、この点について御説明を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/10
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011・首藤新八
○首藤政府委員 御説の通りでありまして、終戰後経済情勢が急激に変化いたしております。どうしてもそれに即応するような改正を必要とするのではないかというふうに考えまして、実は昨年末工業所有権制度改正調査委員会という新しい機構を設定いたしまして、昨年末第一回の審議会を開催いたしました。続いて今後もこの審議会をたびたび開催いたしまして、御説のように現在の客観情勢に即応するような根本的改正法案をつくりまして、他日提案いたしたいと考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/11
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012・小金義照
○小金委員長 次は田代文久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/12
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013・田代文久
○田代委員 先ほどの説明によりますと、二十六度は一億七千万円の收入で、一億五千万円の支出ということになつておりますが、今度の法案の改正の根本は非常に收入が少いというところにあると言われますが、昨年あるいは一昨年来そういうことであると、不足しておつたということが想像されるのですが、昨年あるいは一昨年におけるそういう不足分のものがどういう形で埋められたか、あるいはそれとも全然わずかの收入だけでまかなつて行かれたかという点を質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/13
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014・首藤新八
○首藤政府委員 支出の面でありますが、それは別個に国庫予算としまして、大体その年度に必要とする予算を国会の承認を経て支出いたしておりますので、收入ということは一応その面では切り離して考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/14
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015・田代文久
○田代委員 先ほども中村委員から言われましたように、科学技術を発展させるということは、日本の産業から申しますと、非常に恒久性を持つた決定的な意味を持つわけなのですが、これは今の説明によりますと、日本の全予算面から申しましても、一億円、二億円というようなことはほとんどゼロに等しいようなもので、これではとても日本の科学技術、産業の発展は期待できないと思います。御承知のように資本主義国における発明あるいは科学技術の発展という方式は個人まかせになつておりますが、それにもかかわらずアメリカなどでは相当りつぱな——その発展のために育成あるいは保護という政策が強力にされておりましようし、また社会主義体制、共産主義体制をとつて見ましても、ソ連における方面でも、比較にならないような態勢で、この発明あるいは発展が進められていると思います。アメリカ並びにソ連その他の国におけるこういう科学技術に対する育成あるいは発展の点でわかつておれば一応説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/15
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016・松永幹
○松永説明員 海外の状況につきましては、戰争以来の状況が詳しくわかつておりませんので、制度改正の必要と、また工業所有権関係のそういつた奬励方策というようなものにつきまして、現在の海外の状況を調査いたしますために、特許庁の長官が一月六日に海外に出張せられまして、英米の状況をつぶさに見て帰られる予定になつております。こちらにあります文献としましては、詳細そろつておりませんので、最近の状況をつまびらかにし得ないと思うのであります。長官が帰りましたらいずれ詳細に御報告できることになるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/16
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017・田代文久
○田代委員 最近のはなくても、以前のやつでも、とにかく差がはなはだしいと思いますが、わかつておりませんか。それからソ連にはその調査には参つておられないようでありますが、大体文献の上でもわかつておられれば伺いたい。それからまたどこにいい点があるか、どの点に非常にまずい点があるかということ、これが私たちの知りたい根本問題でありますから、そういうことをわかつておる限り説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/17
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018・松永幹
○松永説明員 戰争以前の状況といたしましては、わが国の工業所有権制度は、法令及び制度の点におきまして相当世界的水準に行つておつたのであります。たとえば現在におきましても、発明あるいは技術の向上に最も必要な特許の文献の整理、展覧というような点に関しましては、設備及び整理が非常に完全であるというふうに、アメリカからその道の人が来られたときに日本の施設をむしろ感心せられたような状況でありまして、従前の程度におきましては、さほど世界的レベルより下つておるとは思えなかつたのであります。戰争中におきまして非常に科学の程度が進歩したにかかわらず、国内の科学の程度あるいは特許の種類とか程度というようなものが遅れたのではないかというふうにわれわれ心配しておりました。その点につきまして長官の海外出張をまちまして、改善すべきところを改善しまして、世界的レベルに持つて行きたい、かく考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/18
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019・田代文久
○田代委員 ソ連の方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/19
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020・松永幹
○松永説明員 ソ連の方も手に入ります文献につきましては、一応飜訳いたしまして研究調査をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/20
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021・田代文久
○田代委員 個人の能力にはどんな天才でも限界があります。個人にまかせるかあるい集団的、社会的にこの問題を解決するか、また発明されたものを社会的にこれを公開し、どんどん社会のものとして発展させるかというような方式によつて、これは非常に違つて来ると思うのであります。その点で、遺憾ながらこれは本質的な問題でありますが、資本主義国における発明の形式は、個人本位になつておるし、秘密主義になつておるので、自分の属する産業の利益方面ということから頭をぶつけるわけなんですが、それにもかかわらずアメリカあたりでは相当集団的な研究あるいは発明というものが、個人まかせのところから離れてされるというような方式をとつておるのではないかと思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/21
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022・松永幹
○松永説明員 工業所有権の制度におきまして、新規なる発明、考案をいたしまして技術を向上させる。それを進めますために、発明、考案した人間に対して、その考案に対してある程度の報奬を與える。そのかわりその発明したものは個人の秘密にしておかないで、社会一般に知らせるという特許の根本観念におきましては、世界いずれの国をとつても違わないと存ずるのであります。わが国の制度におきましても、英米におきましても、公告をいたしまして発明の内容を一般の人間に周知させる。そうしてその段階における技術の発展に資する。その半面一定の利潤を得ることができる。個人はそれによつて仕合せになるというようなことは、世界各国いずれの国をとりましても、大体基本観念においては同じである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/22
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023・田代文久
○田代委員 日本におきましてある前堤のテーマを與えて、そのテーマに最も効果を上げ得る科学者あるいは発明家というものを集団的に集めて、そうして発明させる、こういうようなことは、日本の国内でも計画的にやつておるのですか、その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/23
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024・松永幹
○松永説明員 現在の技術の段階におきまして、どういつた発明が必要であるか、そうしてまたその発明は今まで発明せられていないが、今非常に発明せられることを必要とするというようなテーマにつきましては、特許庁におきまして関係方面の協力を得まして、作成いたしまして、それぞれの研究機関なり、もちろん個人にも入手せられるようにいたしてございます。本年また情勢の変化によりまして、それが改訂できますれば改訂したい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/24
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025・田代文久
○田代委員 この予算面からしてもそうですし、日本の平和産業の全面的な発展という面から行きましても、このの点は非常に大きな比重を占めるわけでありますが、実際上における取扱いはこんに無視されている。またこの法案自体は精神においてもまつたく逆行しておる。将来の問題としましては、むしろ政府はこういう一切の法案をやめられまして、予算を相当組んで、一切発明家に負担をかけずに、逆にどんどん奬励させるような積極的な法案をつくる方向に持つて行くという計画なり御意思はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/25
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026・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど来今度の新法律は発明家の犠牲に比して高過ぎるという御説があります。確かに一面の理由はあり、われわれはこれに同意いたすものであります。しかしながら発明途上におきましては相当犠牲を拂われましても、その発明が完成して、それが有効なものでありまするならば、その後において報いられる点が発明途上における犠牲よりもはるかに大きい。そこに発明家の熱意があり、また魅力があるのであります。従つて御説のように、発明家に犠牲を少しも拂わせずして、国家がそれを補償するという説には同意しかねるのでありまして、むしろ発明後における無形の大きな報酬といいますか、利益に対して大きな関心を持たせて、そうしてできるだけ各人の持てる能力を発揮せしめるという現在の思想の方が、発明を奬励する上においては有効だというふうに考えておりまするので、ただいま御質問のような趣旨で改正する意思は現在持つていないことを申し上げておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/26
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027・田代文久
○田代委員 ただいまの次官の御説明は、われわれは感覚的に二十年も三十年も古いような印象を受けるのでありまして、発明というものは常にある一個人によつて完成するものでないということは自明の理であります。これはある人が三分の一完成し、その次のたれかが半分やり、またさらに進むというようなことによつて非常に卓越した結果が出るのであります。従つて発明の完成後におきまして莫大な利益を得るようなところに、魅力を感ずるということに重点を置きますと、社会的な、国家的な発明というものは発展しないことは明らかでありますし、またこの魅力と申しましても、今までの実例から申しますと、次官がよく御承知のように、せつかく天才的な発明家が優秀な発明をしましても、その人に企業能力がない、あるいはまた資本的の裏づけのない場合には、二束三文で産業資本家あるいは資本家にとられてしまつております。そういう優秀な発明家は一向報いられないというような実情になつております。従つて現在のような制度並びに次官の考え方自体が、いかに日本の発明を圧迫し、また阻害しておるかということの裏づけになるのでありますけれども、私はそういう感覚で議論しようとは思わないのでありまして、この点は一応これで打切ります。
それから、いただきました表によりますと、戰後措置令による優先権の国籍別出願の件数なんですが、全累計から申しますと、二千六十一件のうちアメリカが千五百三十二件、十二月分の累計だけでも千四百九十六件で、英国が少しありますけれども、アメリカが圧倒的に多いのであります。これは大体どういうことからこういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/27
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028・松永幹
○松永説明員 優先権と申しますのは、戰争中におきます取消しその他の処分を回復し、それから外国においてその期間における特許の出願に対しまして、日本に出願したのと同じ効力を持たすという趣旨でございまして、いずれの国におきましても、日本で特許を持つておつたもの、あるいは戰争中に特許出願しましたもので、日本で特許をとつて置かなくては損だと思いますものは、いずれも同様に日本に優先権の措置令による出願をして来ればいいわけであります。その点は世界各国に制度の内容を知らしてあるわけであります。これが出願して来ると来ないとは、その外国において特許をとつております人間が、それだけの費用をかけて、日本でその製作を特許せられるだけの利益があるかどうかというその人間の判断にまつわけでございますので、この表で見ましてアメリカが非常に多いということは、アメリカで科学技術が非常に進歩しておることと、また日本で特許をとつて置かなければならないと考えられる種類の特許がアメリカに非常にある、これに基くものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/28
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029・田代文久
○田代委員 そうしますと特別に、たとえば有利な條件が與えられておるというようなことはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/29
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030・松永幹
○松永説明員 格別にございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/30
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031・田代文久
○田代委員 もう一つお尋ねしたい。こういうふうに外国の特許権が非常にたくさん入つて来るということは、一面それだけ日本の産業を発展させるような印象を受けるのですが、実はそういうことによつて、外国技術がいろいろ導入されるということは、ただその面から申しますと、形の上では納得できるようですけれども、当然これは資金的な裏づけとか、あるいはひもがつくというようなことが常に考えられるわけです。そういうことによつて日本の産業がいろいろ圧迫を受けるとか、あるいは外国の産業が日本の中で非常に幅をきかすというような危險はお感じになりませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/31
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032・松永幹
○松永説明員 大体世界各国の相互間におきましては、工業所有権につきまして條約を結んでおりまして、日本の国の特許も外国において保護せられる、そのかわりその国の特許も日本においては保護せられるというふうに、相互互惠的に條約ができておるのであります。戰前におきましては、通商條約あるいは工業所有権に基く保護に関する條約と、国によりまして種類の違つておるものもありまするけれども、要するに一年の間は、その国相互間において、相手の国の出願の優先権を認めることになつておるのでございまして、平時におきましても、かりに日本で出願いたしまして、その日から一年の間は、アメリカにおいて日本と同じものを出願するわけには行かない、そのかわりアメリカにおいて出願したものも、一年以内は、かりに日本で同じものを出願しました場合は、優先権がアメリカの方に認められるというふうにいたしまして、相互に一年内は優先権を認めまして、工業所有権に関する保護をいたしておるのでございます。この戰後措置令と申しますのは、平時におきましてはさように一年だけ保護しておるわけでございまするが、戰争中は日本に処分を申請しようと思つてもできなかつたから、その間の分は、平時の條約にかかわらずさかのぼることになつておりますので、そういつた優先権の制度は互惠的に平時においては認められておるのでございますが、戰争中に関する回復についてはやむを得ないかと存ずるのでございます。今後どうなるかということにつきましては、講和條約においていずれ決定さるべきものと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/32
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033・田代文久
○田代委員 そうしますと現在までに、日本人のものでこれを外国で出願し、また許可を得ておるという数字は出ていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/33
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034・松永幹
○松永説明員 その点に関しましては、日本人の工業所有権について保護をしてくれておる国と、保護してくれない国とございます。現在もたとえばアメリカとかイギリスとかいつたようなところは、日本人が特許を出願することができるようになつておるようでありますし、一部の国におきましては、日本人がまだ出願できない、かような状況になつております。ただいままで私の方でやりました調査は完全ではございませんが、国によつて違つておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/34
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035・田代文久
○田代委員 アメリカ、イギリスなんかにどれくらいの件数出願しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/35
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036・松永幹
○松永説明員 二、三十件出願してあります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/36
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037・小金義照
○小金委員長 これにて質疑は全部終了いたしました。委員長から補足的にお伺いいたします。この五つの改正法律案はいつごろから実施したい御希望でありますか、收入との関係もありますので、その点をつまびらかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/37
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038・松永幹
○松永説明員 議会の通過につきましては、なるべく早く通過さしていただきたいと考えております。政務次官から御説明申し上げましたように、本年度予算におきましては非常にアンバランスになつておりますので、またこの値上げの程度がさほどでもないということになりますれば、一日も早く本案を通していただいて施行していただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/38
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039・小金義照
○小金委員長 言葉をかえて申しますれば、年度内でも法案が両院を通過すれば、すぐに実施したい御希望でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/39
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040・松永幹
○松永説明員 さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/40
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041・福田一
○福田(一)委員 関連して……。今まで出願しておつた人の出願料は、この法律が通るとすぐ新法によつてまた追加徴收されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/41
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042・首藤新八
○首藤政府委員 今までの料金で納入してある方は、そのまま追加しないという建前をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/42
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043・南好雄
○南委員 すでに同僚委員から希望があつたことと思いますが、由来特許、実用新案、意匠、商標につきましては、審査が非常におそいという評判であります。現在の機構のもとにおいては、これはやむを得ぬかもしれませんが、こういうふうに料金が改訂になつて参りますと、これを單なる国の收入に向けずに、審査に努力する人たちの実員を増加して、出願した人にもつと早く権利を與えるようにごくふうになつておいでになるかどうか、その構想の一端をひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/43
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044・松永幹
○松永説明員 その点につきましては、先ほど触れましたように、来年度予算におきまして三十六名の審査員の増加が計上されております。現在に比べますと一割二、三分の増加になるかと思います。それをもちまして一方能率の増進等をはかりまして、停滯件数を一応減少する計画を持つております。それで停滯件数が減少すれば、受付けてから審査されるまでの期間が短縮されることになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/44
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045・南好雄
○南委員 それは審査官だけでありますか。特許権については往々にして、実用新案でも同じでありますが、権利関係につきましていろいろの争いが起るのでありますが、こういうものにつきましても單に出願を処理するという意味でなく、そういう問題についてもすみやかに権利を確定させてやる必要があると思うのでありますが、特許関係に関する争訟関係の必要人員についての拡充もまた御考慮になつておいでになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/45
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046・松永幹
○松永説明員 ただいま申し上げましたのは、審査官でございまして、特許、実用新案、商標、意匠に関する審査につきまして御説明申し上げたのでございますが、審判に関しましては、本年度予算は昨年度と同様の四十名でございます。格別増員の予定は持つておりません。しかしながら特許に関します紛争は大部分裁判所の方へ行くことになつております。東京地裁に工業所有権の担当係がこのほど設置せられましたので、その方におきます紛争の解決は促進せられるものと考えております。特許庁におきます審判につきましては、前年度同様の人員でございますが、審査の方に停滯を起すことはないと考えております。しかし審判の性質上非常に愼重に証人等を審査しますので、相当の日数のかかりますものは、やむを得ないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/46
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047・南好雄
○南委員 一応ごもつともと思います。しかしながら裁判官は全能の人ではないので、何と申しましても特許庁における第一審が非常に将来に関係して来ると考えます。單に審査を促進するだけでなくて、工業所有権についてのいろいろの争いについての正当な結論を與えてやらないと、やはり工業所有権の発達に対して一つの大きな障害になると思うのであります。一つの争いが十五年も二十年も続いて行くということでは、ほんとうの意味の工業所有権をはぐくんで行くという意味合いにならぬと思うのであります。もちろん現在のように一つの特許権が一年も二年も審査にかかる、そうして争いが起きると、またそれが二年も三年もかかるようでは、工業発達の一つの障害になつて行くと思うのでありまして、たての反面をながめることなく、両々相まつて工業所有権の発達について格段の御注意をお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/47
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048・松永幹
○松永説明員 いろいろ御指示がございましたが、われわれも現在の状況で完全とは考えていないのでございます。今後とも各種の欠陥は是正いたしまして、工業所有権の制度の確立に進みたいと思つております。どうぞよろしくお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/48
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049・小金義照
○小金委員長 他に御発言はございませんか——別段御発言もないようでありますから、特許法の一部を改正する法律案外四件の法律案に関しましてはこれをもつて質疑は終局いたしました。次会は公報をもつてお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X00619510205/49
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