1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十六日(土曜日)
午後一時五十二分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君
理事 中村 幸八君 理事 高橋清治郎君
小川 平二君 澁谷雄太郎君
中村 純一君 福田 一君
南 好雄君 金塚 孝君
加藤 鐐造君 風早八十二君
出席国務大臣
通商産業大臣 横尾 龍君
出席政府委員
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(通商機械局
長) 玉置 敬三君
通商産業事務官
(資源庁鉱山局
長) 徳永 久次君
委員外の出席者
通商産業事務官
(通商振興局経
理部長) 石井由太郎君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 大石 主計君
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した事件
ニツケル製錬事業助成臨時措置法案(内閣提出
第一七七号)
緊要物資の売抑に関する法律案(内閣提出第一
七九号)
自転車競技法を廃止する法律案(河田賢治君外
二十五名提出、衆法第三号)
請願
一 電気法規変更に伴う二重監督排除の請願(
岡田五郎君紹介)(第八九〇号)
二 鉱毒災害防除費国庫補助早急交付に関する
請願(佐藤重遠君外五名紹介)(第一二五
八号)
三 空知川上流北落合地区に発電所設置等の請
願(佐々木秀世君紹介)(第一五七八号)
五 電気法規変更に伴う二重監督排除の請願(
西村英一君紹介)(第一六六四号)
六 アルコール専売事業の機構改革に関する請
願(今澄勇君紹介)(第一六九四号)
七 只見川上流未開発電源を東北地区に編入の
請願(安部俊吾君外二名紹介)(第一七三四号)
九 鉱業用自家発電施設返還に関する請願(神
田博君紹介)(第一七九八号)
一〇 桐生繊維製品検査所伊勢崎支所設置の請願
(藤枝泉介君紹介)(第一八三七号)
一一 水力発電所の帰属変更案反対に関する請願
(岡田五郎君紹介)(第一九二三号)
一二 渡川発電所開発促進に関する請願(渕通義
君紹介)(第一九二四号)
一三 川原、石河内第二両発電所復元に関する請
願(渕通義君紹介)(第一九二五号)
一四 電気事業再編成に関する政令運用の請願(
渕通義君紹介)(第一九二六号)
一五 農事用電力の使用に関する請願(佐々木盛
雄君紹介)(第二〇一二号)
一六 鉱毒災害防除費国庫補助早急交付に関する
請願(渕通義君紹介)(第二〇三三号)
一七 西横山及び西平両発電所施設返還に関する
請願(福田一君紹介)(第二一一九号)
一八 新百貨店法制定に関する請願(田中伊三次
君紹介)(第二二五三号)
一九 けい肺法の単独立法化に関する請願(中村
又一君紹介)(第二三八五号)
陳情書
一 火力発電所設置に関する陳情書
(第四八五号)
二 中小企業対策に関する陳情書
(第五六〇号)
三 公益事業委員会に関する陳情書
(第五
六五号)
四 只見川電源開発に関する陳情書
(第五八二号)
五 鉱業法中大理石掘採に関する陳情書
(第六二八号)
六 電気事業再編成に関する政令運用の陳情書
(第六四
三号)
七 公益事業委員会の電力再編成指令に関する
陳情書
(第六八三号)
八 同
(第六九〇号)
九 同
(第六九一号)
一〇 日米経済協力に関する陳情書
(第六九八号)
一一 同
(第六九
九号)
一二 中小企業振興対策に関する陳情書
(第七〇三号)
一三 木材輸入促進に関する陳情書
(第七〇八号)
一四 電気事業再編成の善後措置に関する陳情書
(第七一八号)
一五 日本発送電株式会社への出資設備復元に関
する陳情書
(第七五六号)
一六 けい肺法の単独立法化に関する陳情書
(第七六三号)
一七 大淀川発電所返還促進に関する陳情書
(第七九六号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/0
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001・小金義照
○小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。
まず請願及び陳情書を議題といたします。この際請願及び陳情書審査小委員長より報告を求めます。中村小委員長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/1
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002・中村幸八
○中村(幸)委員 請願及び陳情書の審査について、小委員会の決定を御報告申し上げます。
まず初めに一言申し上げておきまするが、休会前に処理いたしまして以降、当委員会に付託せられました請願は十九件、送付せられました陳情書は十七件でございますが、本日の請願日程中第四及び第八は内容がそれぞれ厚生及び農林委員会の所管でありますので、この二件は本日正式に付託がえの手続をとりました。よつて本小委員会は残余の請願十七件及び陳情書全部につき審査いたしましたが、請願日程中第一、第二、第五、第一一及び第一六の各請願はなお研究すべきものがございますのでこれを保留とし、残余の第三、第六、第七、第九、第一〇、第一二ないし第一五及び第一七ないし第一九は、それぞれ採択の上内閣に送付すべきものと決定いたしました。なお陳情書につきましては、その御趣旨を尊重する意味におきまして、全部了承すべきものと決定いたしました。以上御報告を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/2
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003・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして小委員長の報告は終りました。ただいまの報告の通り本日の請願日程中第三、第六・第七、第九、第一〇、第一二ないし第一五及び第一七ないし、第一九は、それぞれ採択の上内閣に送付し、陳情書は全部了承することに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/3
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004・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。それではそのように決定いたしました。
なおこの際お諮りいたします。請願及び陳情書の報告書作成等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/4
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005・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。御一任いただいたものと決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/5
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006・小金義照
○小金委員長 次に去る一月二十二日、本委員会に付託せられました自転車競技法を廃止する法律案について、提案者の提案理由の説明を求めます。風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/6
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007・風早八十二
○風早委員 自転車競技法を廃止する法律案の提案理由を説明いたします。
競輪は、今日国営または公営の三大賭博のうち、最大の地位を占め、昭和廿五年の総売上げ高も競馬五十三億円に対し、競輪約二百九十九億円で、車券を買う者が競馬の場合と違つて、広汎にサラリーマン、労働者、学生その他一般大衆に広がつておりまして、その弊害の面もまた最もはなはだしいことは、全国からこれが廃止の輿論が起り、ことに家庭婦人団体等からの陳情請願が殺到したことによつても明らかであります。さきにその弊害にかんがみ、一時中止されたけれども、再開後も車券の売上げは、増加の一途をたどり、昨年十一月十三億、十二月二十三億、本年一—三月三十億、四月三十五億、五月にはすでに東京後楽園の競輪だけでも、五億一千五百万円、二十万人以上の入場者があつたといわれます。われわれは、このような競輪の流行が、ますます大きな害毒を国民生活に與え、国の独立にも重大な影響を及ぼすことを憂慮し、次の理由により、これが即時廃止を主張するものであります。
第一は、地方財政の問題であります。通産省調査によると、昭和二十三年末の競輪開始以来先月末まで、車券総売上高約五百億円、そのうち約十九億が国庫納付金、そのうち三割が自転車の助成金、約四十億が自治体収入となつているのであります。自転車業界の窮状を克服し、窮迫している地方財政の増収に寄與するというのが、自転車競技法の目的となつております。地方財政の窮迫の原因は、第一に第九国会で、衆議院地方行政委員会が満場一致の決議で、平衡交付金の増額を要求いたしたように、平衡交付金が大幅に削られ、従来の地方配付税、国庫補助金の半額ほどしか交付されず、しかもこの交付金さえ返還しなければならないという点に求められねばならないのであります。第二に、地方民の生活の破綻、地方産業の衰退、多額の国税で、地方税はもはや地方民にとつて耐えがたくなり、その徴収がまつたく困難となつているところから来ております。これは中央財政が厖大な終戦処理費や軍事基地化、外国の軍拡の下請のための費用に使われ、それのしわよせが地方財政にかかるだけでなく、地方財政そのものが軍用道路の建設や警察動員などに使われて、六・三建築の費用が不足し、まつたく破綻に瀕しているからであります。従つてこれを回復する方法を自転車競技法に求めるというようなことはまつたく一時の糊塗策にもならないのであります。それだけでなく、いつ中止されるかもわからない競輪に、地方財政を依存させることはきわめて不安定、かつ危險な話であります。
第二の理由は、不正、腐敗であります。競輪場開設、経営をめぐつて暴露された官公吏、地方財界、業界、地方ボスから中央政府にいたるまで不正、腐敗事件、レースのやおちようをめぐる不逞ボス、これらに結びついた極右暴力団の跳梁、選挙の腐敗等、今や競輪は不正、腐敗の温床になつております。
第三は、かつて宇都宮、鳴尾競輪に見られた放火殺傷事件、多数の検束騒ぎなどによつて引起された社会不安の問題であります。しかもこれがいつ繰返されるかわかちないのであります。しかもその場合被疑事実と関係ない人が多数検挙されているという人権蹂躙も多数に起つております。
第四に、道義の頽廃の問題であります。最近頽廃的な映画の輸入やこれに刺戟されたエログロ映画、演劇の氾濫と相まつて、これが国民の健全な文化生活に與える恐るべき悪影響は、單に犯罪を助長し、家庭生活を破壊するにとどまらず、民主独立の日本の将来に重大な害惡となるであろうことは火を見るよりも明らかであり、今日すでに見られる植民地的な様相の大きな原因の一つとなつております。以上廃止の理由を述べたのでありますが、最後にこの法律廃止後の問題について、特に次の点につき適切な考慮を政府において拂われんことを要求するものであります。
第一、設置された競輪場その他付属施設は、リクリエーシヨンへの利用、ないしは公園の設置にあてる。
第二、競輪関係者の失業対策。
第三、廃止に伴う地方財政の赤字対策を適切に行うこと。
〔委員長退席、中村委員長代理着席〕
以上がこの提案理由の説明であります。何とぞ皆さん方の御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/7
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008・中村幸八
○中村委員長代理 以上で提案理由の説明は終了いたしました。本案につきまして質疑を許します。加藤鐐造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/8
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009・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は賭博行為を伴う各種の競技等につきましては、大体反対の考えを持つておるのであります。社会党といたしましても、最近いろいろドツグ・レースあるいはその他の競技法の提案が出て参つておりますので、こうした問題については今後反対するという立場を明確にいたしておるのでありますが、しかし現在までに施設されたものにつきましては、これを、ただちに廃止するということについては、いろいろの問題が残されると思うのであります。ただいまの提案者の説明によりますと、廃止後の処置についていろいろあげられておるのでありますが、私は競輪法の廃止に伴う問題の一番大きな問題といたしましては、競輪法が設置されてまだ日が浅いので、この競輪場の設置について相当多額な設備費が費されておるのでありますが、その償却がまだ十分に行われておらない段階にあり、従つてこれをただちに廃止するということは、地方の財政負担の上に大きな負担をかける、こういうことを心配するのであります。そこで提案者はこの競輪法を廃止したあとの競輪場の使用等についてはいろいろ述べられておられます。もとよりこれもけつこうでありますけれども、しかしわれわれは国がつくつた法律でありますので、相当この施設に要した費用を補償してやる方法を講ずる必要があるのではないかと思うのであります。その点について何らの御説明がなく、廃止に伴う地方財政の赤字対策ということだけがあげられておりますが、施設に要した費用のいわゆる赤字問題と申しますか、あるいはまたその償却が行われておらないものに対するところの補填の方法を考えておられるかどうか、質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/9
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010・風早八十二
○風早委員 今お尋ねの点でありますが、ここにいよいよ廃止後の具体的な措置については三つあげまして、その第一に、設置されました競輪場その他の付属施設はリクリエーシヨンへの利用に供する、あるいは公園の設置に充てるということをいつておるのでありますが、その場合の費用というものはもちろん新しくかかるかもしれませんが、しかしながら競輪場及びその付属施設は相当の財産にすでになつておるのでありまして、それの処分の中で十分にまかなえるものとわれわれは見通して、こう書いておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/10
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011・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 競輪場は收益を上げることを目的として設置されたものでありますが、今提案者の御説明による・リクリエーシヨンあるいは公園施設への利用という点だけでは、收益の対象とはおそらくならないと思うのであります。多少はあるかもしれませんけれども、それはほとんど地方財政の上に影響するほどの収入というものは上げられないと思うのであります。そこで私は先ほど質問をしたのでありますが、その点さらにその負担を補償をしてやる必要はないとお認めになるかどうかを重ねてお伺いいたしたい。
それからもう一つ機械局長についでにお伺いしたいたとは、所によつて違うでありましようけれども、競輪場を設置した費用が大体どのくらいかかつておるかという点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/11
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012・風早八十二
○風早委員 そういうこまかい数字の問題は、もし機械局長から御答弁があればそれに讓りたいと思いますが、社会党がそもそも競輪法というものをつくられた元祖でありまして、その社会党が今日ただちにこれを廃止するということに無条件に賛成されるということを期待するのは無理かもしれません。しかしながらもともとこの競輪法の立法の理由というものをこの際にあらためて想起していただき、かつそれがその後の数箇年の実情によりましてどういう結果を及ぼしておるか、それをひとつお考え願いたいと思います。私は特にここではその欠陷の面をたくさん指摘したわけでありますが、ここにあげておりますように、地方財政の窮迫をこれでもつてまかなう、その一部にするということが大きな目的にうたわれておつたわけでありますが、そういう点では、ここにもるる述べてありますように、実際地方財政負担の軽減にもなつておらぬわけであります。しかもこれによつて失われるところは——非常に大きい。地方財政というものをほんとうに健全にするためには、その地方民の生活がゆたかになり、安定するということが先決問題でありまして、実はせつかく地方財政を豊富にしようという目的でやられて、それでほとんど今まで数箇年で約四十億しか地方自治体の收入になつておらない。これに反して、失われるところは、精神的、物的両面から、もうほとんど無限であつたと考えてよいと思う。それについてこまかいいろいろの実例をあげなかつたのでありますけれども、これはいろいろな輿論を通じて皆さん方十分に御了承のことと思つて省いたのでありますが、これによつていろいろな悲劇が地方民の上に起つておることは言うまでもありません。風教上の問題にしましても、少年犯罪者の大部分というものは競輪場でつかまつておる、こういうことがあるわけであります。また実際に離婚というような家庭争議の問題でも、その大部分というものが、やはり競輪が原因になつておるということは、大阪の地方裁判所の堺支部の調べでもわかるのです。また一か八かをねらつた大穴がまんまとはずれて、そのまま競輪場の柵で首をくくつたという実例も川崎の競輪場であるわけであります。こういうことは枚挙にいとまがない、こういつた害惡の面を社会党とされましてもどう考えられるか、まずこういう法律は廃止されるという腹をきめてから善後措置というものはおのずから出て来るのであつて、その点でただいまの御質問は、ただその善後措置をどうするかということで反対されるということは、私もはなはだふに落ちない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/12
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013・玉置敬三
○玉置政府委員 建設費用につきましては、その個々の条件によつて非常に違うと思いますが、一箇所五、六千万円から一億までの見当だと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/13
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014・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 時間の関係もあろうと思いますから、簡單に切上げたいと思いますが、もう一度機械局長にお伺いしたいことは、今風早君の言われた地方財政の上からそれほど助けになつておらないという点は、どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/14
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015・玉置敬三
○玉置政府委員 先ほども御指摘のような非常な金額に達しておりますので、実施をしておる府県市町村はこれが非常に助けになつて、それぞれあるいは学校でありますとか、庶民住宅でありますとか、そういう面にこの金が使われておるということは事実だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/15
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016・中村幸八
○中村委員長代理 他に御質疑はございませんか——それでは本案につきましては討論を省略いたしまして、ただちに採決をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/16
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017・中村幸八
○中村委員長代理 それではただちに採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/17
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018・中村幸八
○中村委員長代理 起立少数、よつて本案は否決せられました。
なおお諮りいたしますが、本案の報告書作成の件につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/18
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019・中村幸八
○中村委員長代理 それではそのように決定いたします。
それでは暫時休憩いたします。
午後二時十九分休憩
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午後二時二十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/19
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020・中村幸八
○中村委員長代理 これより再開いたします。
緊要物資の売拂に関する法律案の質疑を続行いたします。なお高橋清治郎君は質疑の通告を撤回せられましたので、次は風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/20
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021・風早八十二
○風早委員 昨日小川委員からいろいろ質疑があつたので、論点としては一応重複するところはありますけれども、別の角度からお尋ねしてみたいと思います。
まず第一に、この緊要物資の売拂に関する法案が、当面は具体的にはニッケルだけを対象にされるという御趣旨の御答弁があつたと思いますが、その点は大体間違いなのだと考えてよろしいか。と申しますのは、やはりパルプの問題があると思うのです。将来はいろいろな物資について、やはり同様の法律を適用される見通しを持つておられるのではないかと思うのですが、そういう点を、主として、具体的に対象になる品目別にあげていただきたいと考えるわけです。さらにニッケルの場合に、いろいろフエロニツケルとかマツトとか、そういうものはこれは含んでおるのかどうか。そういう点を確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/21
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022・首藤新八
○首藤政府委員 目下のところニッケルに限定いたしたいというふうに考えておりますが、しかし今後情勢の変化によつて、あるいは追加しなければならぬものが出て来るのではないかというふうな模様はあるのであります。しからば、この追加するものがどういうものであるかということに相なりますと、コットン・リンターであるとか、あるいは合成ゴムであるとか、そういうものが一応考えられております。しかしこれはもう少し情勢を見なければわからぬのでありまして、当面はニツケルだけにとどめたいと考えております。
なおこの機会に申し上げておきたいと思いますのは、この緊要物資として扱いますのは、民間貿易で獲得のできないもの、しかも国内で非常に必要性の高いもの、そういうものをこの制度によつて政府が輸入いたすという建前を原則といたしておりますから、民貿で輸入できますものは、価格のいかんにかかわらず、こういう措置はとらないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/22
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023・風早八十二
○風早委員 昨日小川委員は、主として財政法との関係でこの法律案を論じておられましたが、しかし問題はむしろニツケル生産の助成法案との関係だと思います。私どもが伝聞しておるところによれば、ニツケル生産の助成法案の立案過程において、当局が考えておられました方針が、今回のこの売拂に関する法律案によりまして非常にかわつた。あるいはすでにかわつたことが今度はあらためてこの法案で盛られたと言つてよいのか、その辺の事情がよくわからないのですが、これは具体的に申しますと、つまり今までの最初の考え方は、とにかく国際価格は非常に安く入つて来る。トン当り四十万円なら四十万円で安く入つて来る。それを国内で高く売る。つまり国内の市場価格並で売つて、その差額を十分に活用しよう、こういう御趣旨があつたのだと伝聞しておつたのであります。それが、これではどうもまつたく逆になつておるという感を受けるのでありますが、その間の事情は、どういうわけでどういうふうにかわつたのか、それらの点について若干御説明を願えればありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/23
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024・首藤新八
○首藤政府委員 御指摘の通り、当初この前の法案をつくつた場合には、これを適当な価格で売つて、利益を助成金の方にまわすという意思は相当持つておつたのでありますが、その後情勢が非常に変化いたしまして、特に最近は日米経済協力という線が大きく浮び上つて参つたのでありまして、しかもこれはどうしても協力しなければならぬという段階にあるのであります。しかも日本の価格は朝鮮事変以来御承知のごとく非常に暴騰しまして、現在のところ国際価格よりも相当高値になつておる。そこで今後この日米経済協力をいたしますためには、何といつてもその前提となるものは国際価格とマツチすることが絶対的要請であります。しかもこの協力に対する製品の受注はことごとく入札に付されるということになつておりまする関係上、一層原価を安くしなければならぬということが条件になつて参るのであります。しかもこのニツケルの獲得はいろいろ方法を講じたのでありまするが、どうしても民間の貿易では獲得が不可能だということがはつきりいたしました。司令部のあつせんによりまして、三百トンばかりが近く入ることになつておりますが、これは全部ガリオア資金でありまして、しかもその用途は、特需用として使用するということが一応うたわれておりますので、当初のこの利益を助成金にまわすという方針を根本的にかえざるを得ないということに相なつたのでありまして、従つて、近く入りまするこの三百トンはことごとく特需向けに使用されるのでありまして、現在御審議をお願いしておりまするところのニツケル製錬助成法によつた製品は、一般民需の方にこれを振り向けたいと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/24
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025・風早八十二
○風早委員 今と同じ問題になるわけでありますけれども、そうしますと、情勢の変化というのは、言うまでもなくこれは日米経済協力の線が最近強く出て来たので、やはりこれに即応するためであるというふうに理解しておつていいか。ところがそうなりますと、やはりこれは特需を特に優遇するという考え方でなければならぬと思います。今のお話だと、特に民需にまわすというようなお話のように承りますが、その点はどういうことになるか伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/25
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026・首藤新八
○首藤政府委員 御指摘の通り、全部を特需に限定して使用するのでありまして、先ほど申し上げましたごとく、現在御審議をお願いしているニッケル製錬助成法によつて生産された製品は民需の方に充てるということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/26
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027・風早八十二
○風早委員 そうしますと、この売拂いに関する法案が適用されるのは、これは主として特需となるのですね。初め抽象的にお尋ねしますが、昨日の質疑応答の中でも、特需は特需であつて、民需は民需であつて、特需関係の問題が民需の一つまり国内一般の需給関係には関係がないというような御答弁が、これは次官ではありませんが他の政府委員からあつたと思うのです。ところがこの点は非常に問題だと思うのです。やはり資金の面からしましても、その他具体的にやはりその経営経営の競争があるわけでありまして、その相互の競争条件からしまして、非常な利益を得るものと、一般の市価並ではなはだありがたくないものと、その関係が、片方が有利になればなるほど、競争の条件から行きますと、民需関係には非常に圧迫になりはしないかということを懸念するわけですが、この特需と民需の関係を、ただ観念の上でなく、もう少し具体的に説明してもらいたいと思います。かつ、特にニッケルにつきましては、問題が競争入札ともなれば大体落ちるところがきまつておるし、その落ちるところは大体どのくらいで押えられるか、相場がもう立つておりはしないかと思うのであります。そういうふうな点についての具体的な見通しを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/27
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028・首藤新八
○首藤政府委員 特需と民需を別個に考える根拠でありますが、これはこういう理由だという断定はいたしかねますけれども、少くとも推定されますのはアメリカの軍備拡張が時間的に相当制約されておるのと、かつ一定の予算の範囲内において計画を途行しなければならぬという状態に置かれておりますから、勢いその調弁価額も相当の制約が行われるのではないか。しかも日本といたしましては、実は経済協力という線からと、もう一つは貿易の促進という両面から、できる限りこれに協力いたしたいという考えを持つておりまする関係上、その価格も連合軍のいわゆる一定の調弁価額のわくのうちに該当するような価格をできるだけ推進いたしたいという考え方から、この特需に対しては別個の扱いをすることが当然ではないか。特需と民貿はその間におのずから根本的に事情を異にいたしておりまするので、民貿の原材料に対しては、そこまで援助する必要はないのではないかというふうな考え方を持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/28
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029・風早八十二
○風早委員 特需に関してはその事情が非常にはつきりしたと思います。つまり調弁価額は押えられるということですね。相当押えられるので、場合によつては損失もあるわけで、今までもそういうふうな例は相当あつたわけでありますから、そういう意味でやはり特に特需用に比較的安くまわすという御趣旨はよくわかります。それはそれで特需関係だけを切り離して考えればよくわかりますが、その結果がまた民需に影響しないか。横流れの問題は一応別問題といたしまして、とにかくそうやつて特需のメーカーがあつて、これが一定の利益を保証せられる。片方は相かわらず原料難で、天井知らずに上つて行くわけですから、その間にやはりこちらが有利に保証されればされるほど、競争条件として民需側のメーカーは非常に不利になりはしないかという点を政務次官はどう考えておられるかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/29
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030・首藤新八
○首藤政府委員 今御質問のようなことも、結果的にはあり得るかと思います。しかしそれに対しましては、別個に課税上の措置によつて、かりに特需によつて非常な不当な利益を得たといたしましても、特需の利益に対しましては別個に課税をして、不当な利益の獲得ができないような措置を講ずることに大体内定しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/30
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031・風早八十二
○風早委員 かりに四十万円のものがいろいろな諸掛を加えまして入札で最後に落ちる場合、どのくらいの相場になる見通しを持つておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/31
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032・首藤新八
○首藤政府委員 このニツケルを配給をいたします場合の価格は、入札ではないのでありまして、輸入原価に諸掛を加えたものを売値として、一定の価格でそのニツケルを必要とする製品を受注した業者に配給するという建前をとることになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/32
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033・風早八十二
○風早委員 そこでそれは大体どのくらいになる見通しですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/33
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034・首藤新八
○首藤政府委員 まだ近く入る予定の現物も入つておりませんので、原価並びに諸掛が幾らにつくかということは、はつきりしていないのであります。入着いたしますれば、諸掛その他実費を計算する建前になつておりますから、その上ではつきりいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/34
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035・風早八十二
○風早委員 しかし大体経済協力の線で、しかもアメリカの市価というものが大体きまつておつて、そう大きな変勅はない現状のもとで、日本に対する特需の調弁価格というものもおよそ見当はついておると思います。ですからそれから逆算しまして、大体どのくらいで売渡しをすればよろしいかということもわかる。つまりどのくらいの利益率を含まして問題を解決発展さして行こうかという点は、大体見通しが立つておらなければならぬと思います。そういう意味で、これはどつちからでも大体の計算はできるのではないかと思うのです。価格そのものを今何銭何厘まではつきりしておくという必要はないかもしれません、またできないかもしれませんが、大体どのくらいな利益は保証するという積極的な面からお答え願いたいと思うのです。損をさせるということはおそらくないのではないかと思いますが、とんとんで利益なしにでもサービスさせるというような方針であるのか、そうでない限りは大体どのくらいの利益率を含まして考えておられるか、そういう点をお示しおき願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/35
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036・首藤新八
○首藤政府委員 ニツケルの価格は、大体輸入原価が四十万円、それに運賃諸掛を加えて五十万円程度内外であれば配給できるのではないかと一応考えております。但し御指摘の個々の受注した製品の価格はどの程度であるか、あるいはまたどの程度の利益を確保するのかというようなことは、まつたくむずかしい問題でありまして、また現在の段階ではさようなことは一切判明していないのであります。そこまでの段階には到達していないのであります。またかりにそういう状態に相なりましても、入札は自由でありますし、各企業体の意志によつて価格を出します関係上、一定の利益をどうするということは実際上実行は不可能であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/36
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037・風早八十二
○風早委員 ではもう一つ。たとえば新居浜のごときはニツケルの国内需要のほとんど大部分を一社一経営でまかない得るような生産計画を立てておるわけです。それがこの法案の実体だと思うのですが、その場合に、その中に特需関係のものが二割とか三割とかあると思います。その場合のその特需用に生産せられたニツケルは、市場に出る場合、今の五十万円という値段との関係はどういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/37
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038・首藤新八
○首藤政府委員 ただいま審議中でありまするニツケル製錬助成法によつて生産されたものは、さような特殊の措置によつて特需に向けるというようなことは現在考えていないの、であります。先ほど申し上げましたごとく、この措置を講じまするのは、民間の力で輸入できないもので国内で必要なものということが原則でありまして、そういうものにこの緊急物資の特別基金を使うという建前をとつておりますから、これらの方法によつて輸入したものだけは、先ほど申し上げたような特殊な方法をとりますけれども、それ以外のものは全然放任いたしまして、このニツケルの方は政府の方で一定の価格を付して販売するのでありまするが、それは特需といなとを問わず、全部統一した価格で販売させるという建前をとつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/38
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039・風早八十二
○風早委員 この前私はおそらく聞き漏らしたか、聞き誤つたかしりませんが、別子で月百トンの生産計画でつくられる場合に、そのうちの何割かは特需向けとして予定されていると大体了解しておりましたが、そういうことはなく、全部民需ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/39
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040・首藤新八
○首藤政府委員 それは場合によつたならば特需にまわることがあるかもしれませんが、しかしそういうことになりましても、政府で決定した一本の価格で販売するということに相なるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/40
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041・風早八十二
○風早委員 政府で決定した一本の価格というものは、その五十万円とは別途に、つまり原価から来た価格という意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/41
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042・首藤新八
○首藤政府委員 その通りでありまして、原価を計算いたして、そうして何箇月間にそれらの償却金を積み立てるかという一応の結論を得て、同時にその会社の毎月の生産量もあわせ計算いたしまして、それで適当な価格を構成いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/42
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043・風早八十二
○風早委員 次に横流しの危険があるという問題ですが、これについてどういう措置を講ぜられるつもりかという小川委員の質問に対して、これはお答えがなかつたように思う。今までいろいろ考えている軍の発注証明書というようなものだけでは十分ではないということは明らかだと思いますが、具体的にどういう有効な措置を講じようとしておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/43
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044・首藤新八
○首藤政府委員 昨日も答弁いたしたと考えておりまするが、臨時物資需給調整法を適用いたしまして、それによつて違反者に対しては適当な処罰をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/44
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045・風早八十二
○風早委員 もう一点。それは今度の輸入ニツケルの融資関係であります。つまりニツケルの輸入代金の問題でありますが、これについては援特を通じてやるというお話があつたわけでありますが、特にこれは国家財政でまかなうというところに今度の法案の趣旨があるわけです。その点われわれとしては非常に重大な問題だと思いますので、はつきり説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/45
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046・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど申し上げましたごとく、ニツケルの輸入はこの国会で御承認をいただきました緊急物資輸入特別会計によつて獲得いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/46
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047・風早八十二
○風早委員 その額は大体どのくらいを見込んでおられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/47
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048・首藤新八
○首藤政府委員 御承知の通り、二十五億円が法律で決定いたしたものでありまして、これをできる限り有効に回転いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/48
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049・中村幸八
○中村委員長代理 次は加藤鐐造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/49
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050・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は緊要物資の売抑に関する法律案について簡單に二、三の点をお伺いしてみたいと思います。第一に、昔から法三章ということがよく言われますが、この法律案は法一条でありまして、きわめて簡単な法文で、その内容を捕捉するのに苦しむのであります。今の風早委員の質問と政務次官の御答弁の内容によつて見ますると、大体原材料をできるだけ安く入れて、これを業者に安く売り拂う。そうして加工なり製造なりさせるということであります。そこでこの製造する場合、加工する場合のいわゆる加工料をかせぐことになるわけでありますが、これは日本の産業の特質としてやむを得ないことでありますが、その加工料が問題だと思うわけであります。ただいまの御答弁によると、そういう点についてはわからないというお話ですが、しかしこの法律はきわめて簡單な条文でございまするが、これから判断いたしますると、それはきわめて安い加工賃金をかせぐということになるのではないかと思うのであります。ことに競争入札ということを考えますると、結局その加工賃金なりあるいは生産費というものは圧縮されて、いわゆる労働賃金にそれが転嫁して、労働賃金の圧縮になるというふうに私は考えるのであります。その点どういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/50
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051・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど来申し上げておりまする通りに、今度の受注は競争入札であります。従つて価格はさのみいい値段で受注がされようとは考えられませんが、しかしながらあくまでも入札は自由でありまして、強制的ではないのでありますから、もしその企業が引合わないということになりますれば、入札する必要は毫末もないのであります。またかりに企業体が、どうしても入札をすることが必要だという企業体それ自身の事情によつて、安値で入札したという場合、その結果が労働者の労賃に影響を與えることもあるいはなきにしもあらずということは考えられますけれども、しかしそれは日本の現在の経済界において、労働賃金というものは大体水準がきまつておりまする関係上、ある特定の会社が不当に賃金に圧迫を加えますれば、当然その企業体におけるところの労働者は離職して、他の産業の方に転職するということも起り得るでありましようし、またその企業体が特にそういう賃金の引下げをやろうといたしましても、社会通念から考えて全般的にそういうことになつていない以上は、それを適用しようとしてもおよそむずかしいのじやないか。結局そういうことになれば、やはりその他の面において、企業の合理化であるとか、諸掛の節約であるとかいうような面に重点を置いて、労銀の抑制等までして安値の入札をしようというようなことは考えられないのではないかというふうに一応考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/51
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052・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私の心配いたしますことは、こうした形において軍需用品の受注というものがだんだんと範囲を拡大されて来る。従つて日米経済協力というものがそういう形において遂行されることになりますと、私は日本経済再建の建前から申しましても、われわれの考えておるところと非常にかけ離れたものが現われて来るのではないかと思うわけであります。私は過日十六日のマーカツト経済科学局長の声明を見ましても、あの声明ともこの行き方は違うという感じがいたすのであります。こうした形でいわゆる軍需用原料の発注がどんどん拡大されて、そうして特需発注が全般に及んで来るのではないかということが予想されるのでありますが、その点についてどういうふうに考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/52
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053・首藤新八
○首藤政府委員 政府は加藤委員の考え方とはまつたく反対の考え方を持つておるのでありまして、先ほど御指摘のようにあまり安値で入札しますれば、結論的に労銀にまで圧迫を加えて行かなければならないような窮状に陷らぬとも限りませんので、かような措置によつてなるべく安い原料を提供し、そうするごとによつて労銀その他に影響なく、安値で入札できるであろうという構想のもとにこういう法案をつくつておるのであります。従つてそういう御心配はない、またあつてはならないという意見で進んでおるのであります。なお全般的な特需にだんだん範囲が拡大して行くのではないかという御意見でありますが、この法案はすでに何回も申しましたことく、ニツケルそのものが極端に稀少物資でありまして、しかも民間では獲得できない、そうして時価と輸入価格にあまりに大きな開きがあるということから、かような特殊の方法をとつたのでありまして、その他の物資は一応民間貿易で全部が獲得できることに相なつておりますので、従つて国際価格よりも非常に高値であるということは予想できないのであります。ですから、かりに範囲が広くなりましても、こういう特別措置を講ずる必要は認められないのであります。ただ先ほどもどなたかの質問にお答えいたしたのでありますが、将来これと同じような措置を講ずる必要があるかもしれないと一応考えられておりますのは、コツトン、リンター、合成ゴムというようなものでありますが、その他のものはほとんど民間貿易で十二分に間に合うであろうという考えを持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/53
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054・風早八十二
○風早委員 関連して質問いたしますが、今通産次官は加工料の問題に関連して、競争入札たから不利だと考えるならば、受ける必要はないと言われますけれども、その点はなかなかそう簡單に不利だと考えて引受けないで済むような事情ではなかろうと思うのですが、そういう点は、はなはだ実情を無視しているか、あるいはしいてそう言われるのか、よくわかりませんが、その点は全然お答えのような実情ではないと考えるわけです。もう一つ不利である場合に、それを賃金におつかぶせるというようなことは、かりに一つのメーカーがやつても、これは一般の標準というものがあるのだから、それは通用しないだろうという趣旨の御答弁でありましたが、これもまた今実際に、これこそが問題になつておるのであつて、業者の実情を無視されてはいないか。業者は必ずこれを合理化であるとか、あるいは諸掛の節約であるとかいうような面に振り向けるのではなくて、必ず賃金を切り下げる。あるいはうんと労働強化をやらせるという面で負担を転嫁して行くことが一般なんです。もちろんそれだからこそ、やむを得ずいろいろな争議が起つているわけです。こういう面もまつたく実情を無視されたものではないかと考える。だからといつて、正常な賃金を與えるために、もつと正しい意味での企業の合理化をやる、あるいは諸掛を節約すると言われますが、そういう合理化をやることができるのは、相当資金に恵まれた、ごく一部の大メーカーだけであつて、実際中小のメーカーとしては、町工場としては、融資問題は——この間も皆さん方も行かれたと思いますが、中小企業議員連盟の大会でも、異口同音に融資問題、金詰まりを訴えておるわけであります。であるから、企業の合理化などは、できない。そうなると、板はさみとなつて注文は受けなければならないわ、合理化はできないわとなりますと、これは中小メーカーはみすみす没落するという悲惨な状態に陥らざるを得ないわけであります。そういう点で非常にこれは中小メーカーに対しても、不親切であり、また特に労働者に対しましては、非常な圧迫になる一つのこれが契機ではないかということを憂えているわけでありますが、結局結論として次官の言われたことは、あまりにも実情を無視していないかということであります。
〔中村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/54
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055・首藤新八
○首藤政府委員 繰返して申しますが、この受注の入札はあくまでも自由でありまして、絶対的に強制ではありません。従つて各企業体が、この程度ならばこのくらいの利潤があるという価格をそれぞれれ算定して、入札をいたすのでありまして、決して強制ではございません。従つておそらく労銀に食い込んでまで安値で入札をするという業者は、目下の社会情勢から見たならば、私はないのではないかといろふうに考えても間違いはないものと思います。風早委員は最近労働争議があると言われますけれども、それは賃金を上げるための積極的争議が大部分でありまして、賃金を引下げられることを防止するための争議は至つて少いのではないかというふうにも見られます。ただ国といたしましては、ただいま申し上げたごとく、自由入札でありますから、せつかく日米経済協力という線を推進するという場合に、はたして先方の希望するような価格で、希望するような物資が集まるかどうかという点を政府も若干の危惧をいたしておるのであります。これがためにできる限り労銀その他を圧迫しないように、そうして安値で製品の供給ができるようにという考え方からこういう法案をつくり、かつまた一方におきましてはすでに御承知と思いますが、鉄鋼のごとく運賃その他の悪条件によつて日本の製品が非常に高くなつておりますから、これらもできるだけ原価を安くしなければならない。それにはできる限り原料の獲得地を近距離にすることが絶対的条件でありますので、東南アジアの各地の資源の開発その他に積極的な方途を講じまして、そうしてこれらの安い資源を獲得いたしまして、そうして安い製品をつくり、日米経済協力の線にできるだけ協力いたしたいという一つの考え方のもとに、あらゆる施策を進めておるのが偽らざる現状であるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/55
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056・風早八十二
○風早委員 あなたは事ごとに実情に反したことを言つておると思います。その中の一つをあげておきますが、賃金の問題に関する争議において、これを上げるための争議、あるいは下げられるのに反対の争議、こういう問題については、これは私の記憶によれば経済評論の六月号だつたと思いますが、中山伊知郎氏が今までの労働委員としての統計数字を用いてこれを分析して、ことに最近朝鮮事変以後はほとんど圧倒的に賃金を下げられることに対する反対の争議、ほんとうにせつぱ詰まつた争議がほとんど大部分であり、これが今の特徴だということをはつきり指摘しておるのです。これはもう少し上の方はかりでなく、下の方も見ていただきたい。実情に全然反しております。その理由というのは、特に特需関係でこれが起つておるのです。つまり先ほど加藤委員も指摘されましたように、要するに加工料というものが非常にめちやなものであつて、その負担を労働者におつかぶせるということが今一般に行われておる通念なんです。そういう点を無視されて非常に甘く考えられるならば、これはやはりいろいろな不測の災いを招くということを考えなくちやならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/56
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057・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 首藤政務次官の御答弁のように万事参りますれば、私はしごくけつこうな話であると想いますが、これはいろいろ問いおることもあるのですが、わが国に與えられる選択権の範囲が非常に狭いというような見方が行われるのではないかということを私は非常に心配しておるわけであります。そこで先ほどの御答弁によりますと、いわゆる稀少物資のきわめて限られた小範囲のもののみが対象として行われる。たとえばコツトン、リンター、合成ゴムというようなきわめて小範囲のものであつて、無限に拡大されるということはないのだというお話ですが、しかし私はたとえばマニラ・ロープであるとか、皮革とかいうようなものにまで、そうした民間必需物資の生産設備というものがその方面に相当大幅に利用されるのではないかと思うわけであります。そういたしますと、当然この民需の方が圧迫されて、あるいは物価騰貴を来し、国民生活を圧迫し、そうして日本経済再建の意図というものがそこからくずれて来るのではないかという心配をしておるわけであります。そういう点と、もう一応御答弁願いたいのは、はなはだしく民需を圧迫するところまでは行かないのかどうかという点を明確に御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/57
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058・首藤新八
○首藤政府委員 特需の受注に対しましては、あくまでも国内の余剰能力を物需の受注に充てたいということを原則的に考えております。国民生活を特需のために不安に陥れても、なおかつ特需をとるのだということは、極力排除いたしたいという建前をとつておりますから、御指摘のような事態は何ら起らない、また起してはならないというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/58
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059・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 最後にもう一つお伺いいたしたいことは、この適用品目の指定が、すべて通産大臣の権能にゆだねられておるわけでありますが、これはもう少しいろいろな方面の意見、ことに民間の学識経験者、あるいはまた実際に関連した産業に携わつておる人の意見を十分に徴してやるべきではないか、そうして決定し、指定する必要があるのではないかと思うのであります。たとえばそのために審議会というような適切な制度を設けて、一つの諮問機関にするというような行き方については、全然考えておられないのかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/59
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060・首藤新八
○首藤政府委員 御意見のような審議会は、つくる必要はないのではないかというふうに考えております。これは先ほども申し上げましたごとく、この法案を適用いたしまするのは稀少物資であつて、民貿で輸入できない外国産の原料ということが原則となつておるのであります。国際価格と日本の価格は非常に相違しており、日本の価格は独特の高値であるという場合に、これを適用しよう。いわゆる民間でできないことを政府でやろう。またそれが必要であり、かりに民間で輸入できないものでも、価格が国際価格と同一であるものは、この法案によつて適用しようということは考えていないのでありまして、繰返して申しますが、非常に民間では輸入できない、しかも国際価格と内地の価格と非常に相違がある、どうしても政府がやらなければ輸入できないというものに限つて、この法案を適用することにいたしておりますので、学識経験も必要でないし、また審議会も必要のないものであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/60
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061・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 稀少物資であつて、従つてどうしても政府が輸入する以外に通がない、そうしてだれの意見を聞かなくても当然わかつておるというお話でしたが、私は必ずしもそうは行かないと思います。ことに先ほど御答弁になりました、いわゆる余剰能力を利用するのであるからして、民需方面も圧迫しないということをおつしやいますけれども、はたしてそれが余剰能力であるか、あるいは民需生産の領域にいかに食い込んで来るかということは、それほど明確にわかつて来るものでもないと思うのであります。従つて私は今の御答弁は当らないと思うのであります。しかし、しいてそういう機関を設ける必要はないとおつしやる理由は他にありはしないか。すなわち私はこれが一切の命令のような形でつくるために、そうした諮問も何も必要はない、こういう事情によるのではないかと思う。その点、御答弁ができなければしいて求めませんが、御答弁ができればひとつお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/61
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062・石井由太郎
○石井説明員 事務的な問題と考えますのでお答えいたします。法律に、「政令で定めるものは」と書いてございますが、これは品目だけでございます。たとえばニツケルでございますとか、カドミウムでございますとか、品目だけを掲げるわけでございまして、政令の形といたしましては、ただこの法律を通じて、時価よりも低い対価で売拂うことのできる品物を左のごとく定めるというだけのことになりますので、きわめて簡單に内閣の措置で行えると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/62
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063・小金義照
○小金委員長 それでは緊要物資の売拂に関する法律案につきましては、大体の質疑を終了いたしました。あとは補充的に御質疑を許す場合がございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/63
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064・小金義照
○小金委員長 次にニツケル製錬事業助成臨時措置法案を議題といたします。本案につきましては、去る二十四日質疑は終了いたしておりますが、なお補充的質疑の通告がありますのでこれを許します。加藤鐐造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/64
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065・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は一昨日大体のことは質問いたしたのでございまするが、局長がおられなかつたために十分質問をすることができず、納得の行かない点が残つておりまするので、その点を一応御質問いたしたいと思います。私が最も納得の行かないのは、過日も申し上げたのでありますが、価格の問題でございます。局長の御答弁によると、早ければ七箇月、少くとも十箇月以内に大体危険の対象と予定されておる五億四千万円がカバーできる、こういうような腹案のようですが、しかし私はそのあとの価格の問題について、特にどういう方法で押えて行かれるかという点について、具体的な答弁がありませんでした。マル公でもつくつて安く押えるということが私は一番いいのではないかと思うのでありますが、この点、重ねてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/65
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066・徳永久次
○徳永政府委員 この問題につきまして、先日私お答え申し上げました記憶では、必要によつてはマル公を設置するごとく物価庁とも相談を進めておりますということを申し上げたと思います。が、実はそのつもりでおるわけであります。指定業者はそうたくさん数のあることではありませんので、特別積立金がなくなりましたあとは、それを引いた値段で売らせてしかるべきだと思うわけであります。行政指導で行こうかとも思いますけれども、しかしその必要によつて、その分についてマル公をしくということも、政府としてはそういう構えでおらなければ実効も上げがたいという事情もございます。そうなりますと物価庁の協力をいただかなければならぬということにもなりますので、物価庁にもそのつもりで相談をいたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/66
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067・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 マル公をつくつて押えるということは、私は最もいい方法であると思うのでありますが、そこで物価庁と相談してというお話でありますので、実は物価庁の御意見もこの際承つておきたいと思いますが、今急に呼ぶということもできないようでございますから、これはあとまわしにいたしまして、特に私は繰返し強く要望しておきたいことは、このきわめて少数の事業者を指定するのでありますから、これは独占企業体になるわけであります。それがニッケル価格を自由にするということになると、これは非常に重大な問題でありますので、これは必ずそういうふうにしていただきたいと思うわけであります。
そこで問題は、先日来大体鉱石の輸入価格は八十万円で、製錬価格が百二十万円と見積つて二百三十万円ぐらいに売りたい、こういうことを言つておられました。私はまず第一にこの百三十万円という原価の見積りというものが、はたしてどういうふうに見積つておられるか、適当な見積りであるかどうかきわめて大ざつぱで、実際最密に見積つたならば、はるかに安かつたというようなことになりはしないか、いわゆる原価計算の点についてひとつできるだけ詳細に伺つてみたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/67
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068・徳永久次
○徳永政府委員 ちよつと数字を訂正してお答え申し上げたいと思います。私、先日来、生産費が、償却費を拔いたものとして、鉱石代が約八十万円、それから製錬費が同じく約八十万円見当と申し上げておるわけでございます。鉱石代は、これは買付のかけ引によつて、売手のあるとで、値段がきまることでございますから、私どもの十分監督をしなければならないと思つておりますことは、製錬費の原価計算の問題に相なるわけでございます。これにつきましては、前にもちよつとお断りしましたように、戦前におきまして実は仕事をいたしておつたわけであります。その際に事業を行つておつたものの原単位がどうなつておつたかというようなデーターもございます。それから戦時中マル公も行われておつたといつたようなデーターもあるわけでございます。そういうものによりまして計算いたしておるのでありますから、この査定そのものも実は私の方というよりも物価庁がその方の専門家でございますので、物価庁の担当官とも相談し、検討してもらいまして、そして到達いたしております原価計算の数字が、鉱石代を抜きにした製錬費が約八十万円——七十六万幾らであつたと私は記憶いたしております。そういうことに相なつておるわけであります。物価庁の専門家も見てくれた数字でございますので、ただいまあなたの述べましたその後の電力代、その他もかわるということも予想されないこともございませんが、最近における物価事情——石炭代、コークス代、電力料金、そういうものを前提といたしました場合に、さような査定の数字が出ておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/68
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069・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 その物価庁の見積りの原価計算は、今そこで読み上げていただいてもすぐ私の方で書きとるわけに行きませんから、この次の委員会までに資料として提出していただきたいと思います。
そこで、今おつしやつた製錬コスト八十万円と見積りましても、もし二百三十万円が販売価格として決定されますならば、トン当り七十万円という利潤が出て来るわけなのであります。償却費がその中に入るという話でありますが、その償却費は、問題となつておりますいわゆる積立金がそこから出て来るのでありましよう。そういたしますと、きわめて短い期間に、最低七箇月あるいは六箇月とおつしやるかもしれませんが、おそらくあなたのおつしやる最低の期間に償却できるわけであります。私は、昨日も申し上げましたが、今日ニツケル鉱石の輸入の見通しが、日米経済協力あるいはそこから具体化されて参りまする南方の資源開発等によつて、明るくなつて来ておるということは否定できないのであります。先行ききわめて不安だと言われまするけれども、しかし私は毎日の新聞によつて報道せられるどころを見ましても、明らかに見通しは明るくなりつつあると考えられる。それから私はその後いろいろな業者あるいは専門家について調査いたしてみましたけれども、それほど短期間に償却を終るというような補償の形をとらなくてもよいということが一般の、少くとも住友の別子鉱業を除いた他の業者の意見でございますが、私はそういう点に大きな疑問を持たざるを得ない。あくまで先行き不安でそれだけの補償をしなければならないと言われますけれども、それでは私は納得できない。ただ将来のことはわからないとおつしやつたけれども、今日のいろいろな状況な判断、こと日米経済協力の問題がだんだんと具体的に現われつつありまする今日、そこまで不安を持つ必要はないと思うのであります。その点もう一度局長の見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/69
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070・徳永久次
○徳永政府委員 私どもこれをなるべく早目に建設費と申しますか、金額が積立金によつて積立て完了するようにしたいという動機は、考え方が二つあるわけです。一つは御承知のように国際情勢、今御指摘がございました日米協力の線から、ある程度具体化されつつあるという動きも確かにあるわけでございます。しかしながらニツケルの取得が困難であつたという事情は、ニツケルに対しまする軍需の増大ということから来ておるのでございますが、国際情勢がどのように変化いたしまして、平和と申しますか、国際的な冷たい戰争がなくなつてしまうということが考えられぬわけでもないだろうというのが一つでございます。もう一つは、この法案の組立て方が御案内のごとくに、万一の場合に国が補償するという考え方をとつておる。なるべくならば国の補償にならないで済むことに努力することが私どもの責任ではなかろうか。そうなりますと、建設費は極力節約するごとく指導するのもわれわれの責務でありまするし、さらに事情が許すならば、なるべく早目に目標額の積立てを完了するようにやることがいいのではないかということを考えるわけであります。すべて事情が許すならばということでございますが、この法案のみそとなつておりまするそういう積立金を入れましても、現実の市価よりも安いもので供給し得るというようなことをこの法案の骨子に考えておるわけであります。その条件を破らないで行く限りにおいては、消費者においてもある程度がまんしていただけるのじやないかということを考えております。消費者として今非常に高い物を、この事業が再開されてからは、それまでよりも安く買えるのだということがある限り、積立金の金額が三十万でなく五十万になるとか、あるいは七十万になりましても、その以前にたくさん取得していた価格よりも相当安くなるということになるならば、消費者としてもがまんしていただけるのじやないかということを考えまして、そういう条件がこの際においてもありますならば、許す限り早く積立てを完了する意味において、積立金額の単価を考えたいというつもりでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/70
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071・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 現在の価格が、いわゆるやみ価格が高いから、それよりも多少でも安くすればいいという考えは、私は少し間違つていはしないかと思う。ニツケルが非常に高いのはだんたんとストツクがなくなつて、しかも国内生産がとまつておるという事情によるので、従つて私はこういう方法でやりますならば、ニツケルのような使用範囲の広い物資は、やはり国内価格に及ぼす影響というものも大きい。一つの製品のコストの中に、ニツケルの占める部分というものはあるいは低いかもしれませんが、しかしながら使用範囲がきわめて広いので、物価全体に及ぼす影響というものは相当大きいわけです。日本の物価騰貴がアメリカ等の物価騰貴をはるかに越えておつて、国際価格になるべくしわよせをしなければならないという今日の事情から考えましても、何も無理にやみ価格に近いものにしなくてもよろしい。今局長が政府の補償をできるだけ軽くしたいということで、きわめて短期間に償却する方法をとつたとおつしやいましたけれども、私は政府の補償は一つの見通しの上に立つて、今申しましたような大体入手の見通しが明るくなつて来ておるという見通しがつきましたならば、私はできるだけ期間を長くして価格を引下げることが必要ではないかと思う。今冷たい戦争が続くから、できるだけ早く危険区域をのがれなければならないとおつしやいましたけれども、冷たい戦争が続くから、私はだんだんとニツケルのような重要物資の——いわゆる日米経済協力も実現の線が強く出て来て、入手の見込みも強くなつて来ると私は断定する。おそらく私はそれが常識だろうと思う。そういう点から言つて、どうも局長の御答弁は、何べん繰返してお伺いしても納得できないものがあるのであります。そこで原価計算の資料を出していただきますれば、それで大体のコストの点は判明いたしますので、価格の点は一応この程度にとどめておきます。
もう一つお伺いしたいことは、いわゆる五億四千万円という金額をカバーしたあとで、もう補償する必要がなくなつたあとでも本法は存続されるのかどうか。その必要がなくなつたときには、ただちに本法を廃止されるおつもりであるかどうかということをお伺いいたしておきたいと想います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/71
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072・徳永久次
○徳永政府委員 最後のお尋ねにお答え申し上げます前に、先ほどの私の御答弁をちよつと補足いたしたいと思います。冷たい戦争が続いております間はこの事業が成り立つであろうということは、私どもは感じておるわけであります。ただそれがいつなくなるかもしれないからと、私は反対に申し上げたつもりであります。国際情勢のことをわれわれ全然予測つかない。そういう意味で申し上げたつもりであります。
それから積立てが完了した場合に、すぐこの法律を廃止するかどうかということでございますが、それはこの法律によりまする以後の監督ということも必要になつて参りまするし、積立が済んだからすぐ廃止するというような見通しは持つておりません。ニツケルその他も十分にチエツクするようなことが必要になつて参ると思います。そこらの点で十分目的を達したという時期にはなるべく早目に廃止いたしますけれども、完了したからすぐ廃止という意味には、私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/72
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073・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 取消しの場合にのみ公聽会の制度を設けて、指定の場合に設けられないということについては、指定の場合には、これは局長の御答弁ではなかつたから、あらためて局長にお伺いしたいのでありまするが、御答弁は、純技術的な問題を基準としてきめるのであるから公聽会の必要はない、こういうことでした。私はこれは実に不可思議千万な御答弁だと思う。公聴会というものは、何も常識論を聞くだけではなかろうと思う。高度な技術的な鑑定を要するものならば要するほど、やはり専門家の意見を聞く必要があると思う。そこではたして現在の通産省の技術陣営をもつて、この高度な技術の問題がすべて手落ちなく、不公平なく鑑定できるかどうか、調査ができるかどうかということをお伺いしたい。またかりにそれができましても、なおきわめて少数の人に許して、独占企業体になつた結果、他の指定に漏れた業者は非常に圧迫される——というよりも、今の状態においてはできないことになつて、私はこの指定の場合の決定に至る調査は、きわめて厳密に行われなければならないということを考えます。民間におけるいろいろな人の意見を聞くということも必要ではないか、そういう意味における公聽会が必要でないともし考えられるならば、その理由を局長から承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/73
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074・徳永久次
○徳永政府委員 前回にお尋ねになりましたのは説明員がお答え申し上げたのでありますが、その点に対する私の考えを申し上げますと、一応この法案をつくります際に、他の法令の前例によつたことだと思うわけであります。その点は私ども若干問題にしたわけでありますが、従来の法制の普通の考えで言いますれば、行政処分をする際に事前に審議会等にはかるということでなしに、行政処分そのものは国が行い、それに対する不服につきましては民主的にさばきをつけるというために、不服の申立てあるいはそれに対する処分は公聴会を開いてやる。それから理由を文書によつて明らかにするというような手続によるというのが、従来の法制の組立ての通例でございますので、本案を起草いたしました際にも、法制局等とも相談の結果、かような通例の組立てに従つてつくり上げられたというぐあいに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/74
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075・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 過日来ほとんどすべての質問者から質問があつた問題でありますが、この製錬事業を行うにあたつて、過去に実績を持つておる業者が引受けるかどうかという点についての問合せをしたということをおつしやいました。これは過去に実績を持ち、現在多少の設備を持つておつて、多少の改良、増設、補修等をやればできるという、そうした業者全般にわたつてこの問合せを発せられたかどうかという点を承つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/75
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076・徳永久次
○徳永政府委員 この点は過去の統計に出ております全部の経験者、輸入鉱石を原料とする製錬の実績を持つておる業者すべてにやつたつもりでございます。具体的に私の記憶いたしておりますところを申し上げますと、たとえば一番大きいのは別子鉱業であります、ずつと小さくなりまして古河鉱業あるいは日費も実績を持つておるわけであります。われわれ去年の秋ごろからニツケル対策を考えるにあたりまして、仕事を始めていただけないものかということの相談をそれぞれにいたしたのであります。ある社ではすでに設備を転用されておる、ある社では自分のところは意思がないというような返事を受けたのでありますが、統計に上つておりました実績を持つておる業者には、すべてわれわれは間違いなく問合せをやつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/76
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077・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 そのすべての実績を持つておる業者に問い合せた結果、結局やろうという意思を表示したものは別子鉱業と日本アルミとの三社であつたという結論であつたと思いますが、しかし私の聞くところによりますと、実績を持ち、さらにその鉱石が輸入さえできればぜひやりたいというのですでに設備しておる会社が、何らの問合せを受けなかつたという事実もある。たとえば日本冶金はそういうことを言つておるのでありますが、日本冶金の場合は、十分間合せをせられたかどうか。あるいはまたこの資料の統計によりますと、志村化学工業は最近の生産実績を持ち、しかも金属ニツケルの生産をやつておるわけでありますが、こういうところまで実際に問い合せられたかどうかという点をもう一度お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/77
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078・徳永久次
○徳永政府委員 具体的なお尋ねでありますので、具体的にお答え申し上げます。日本冶金が鉱石から純ニツケルをつくつたという実績は統計に現われておりません。実は先般来御相談申し上げた際に、自分のところでは、社長の結婚式のときにニツケル製品を自分のところでつくつたのを配つたというようなお話はお聞きしましたけれども、統計上は出ていないのでございます。それから日本冶金に問合せをいたしませんでした事情は、若干デリケートな点がございます。私ども計画をお持ちだということは大分前から耳にいたしておつたわけであります。その計画の内容をなしますものは、鉱石の熔鉱炉製錬とコンバーター製錬はほかの非鉄金属製錬をやります某社に頼む、電気分解はまた別なある社とある社に頼むということで、それぞれの遊休な設備なり技術なりを使つて純ニツケルをおつくりになる計画をお立てになつておるのだというふうにわれわれは伝え聞いておつたものですから、そういう話が具体的に定まるには、常識としましてそう簡単に行かないであろうということで、話がまとまれば何とか言つていらつしやるのじやなかろうかというふうに考えておりました。こちらから御計画があるそうですかというふうに聞くのもいささかデリケートなので、さような本人だけの仕事でないものですから、そこの点でわれわれは差控えたというような事情にすぎないのであります。
それからなお具体的に御指摘のございました志村化学工業は、終戦後スクラツプを原料としてそれの電気分解をやつておるだけであります。ここにおきましても鉱石から製錬する実績を持つておつたわけではありません。電気分解そのものは、配付資料に掲げました以外でもやつておる業者も出て参つておりますが、それは比較的やさしい問題のようでございます。鉱石を処理する——ニツケル鉱石、これも硫化ニツケルではなしに、珪酸ニツケル、日本の入手し得る南方のものはほとんどそうであります。それを処理し得る技術というものが割合にむずかしい問題だと聞いておりますが、十分の経験を持つた者ということになると戦前の実績を持つている会社ということになるわけで、それについてはすべて問合せをしたという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/78
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079・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は個々の会社の陳情みたいなことになりますので、できるだけそういう質問は避けたいと思いますが、しかしこの委員会においてしばしば委員諸君の間で一つの大きな議論として質問されました別子鉱業、大体千五百トンの生産のほとんど大部分が別子鉱業に振り向けられる、こういう行き方については私は疑問を持たざるを得ない。いろいろ伝えられているところによると、通産省がこの計画を立てた当時から、別子鉱業の意見ばかりを聞いてやつているといううわさも飛んでいるのであります。私は別に局長の答弁をどうこう疑うわけではありませんけれども、またこれは経験ある技術者の意見を聞くという点からやられたのでありましよう。しかしながらいろいろなうわさを聞くと、われわれは疑いを持たざるを得ない。私は常にこうした技術上の問題をわれわれが委員会において議論する場合に、われわれは専門家ではないのでございます。従つてわれわれ専門家ではない、専門的な知識を持たない者がこうした法律の審査に当る場合は、まず実態を詳細に調査することが最も早道であり、的確な道であり、またわれわれの責任上からいつて間違いのない道であると考えて、実態調査をいろいろな場合に主張して来たわけであります。私はもし当局の答弁によつて氷解できないときには、この審議を延ばしてでも実態調査を主張しなければならないと思うのです。ある人はもしこの法案がこの国会において審議未了になつて、次の臨時国会にまわされるということになれば、そのときにはすでにこの法律の必要はなくなるのだということを言う人がいるのであります。それはなぜかというと、すでに住友においては多額の金を費して設備をしているのだということも聞いているのであります。私はもしそういうことに疑問を持つならば、住友鉱業の工場に行つて、その実態調査をして、その事の経緯を明らかにした上でないとわれわれはこの法案には賛成することができない、通すわけには行かないということになつて来るのです。私はそういう点をいろいろ考えてみますれば、軽々にこの法案を通すわけに行かないという結論になるのであります。しかしながら私どもはニツケル製錬が急を要することは知つおります。そこでいろいろと政府側が一部の業者と結託したということが後に現われますれば、これは一官庁の責任ばかりではなしに、それを知らなかつたわれわれ議員の責任もなつて来るわけであります。
〔委員長退席、高木委員長代理着席〕私は最後に別子鉱業との関係について、特に別子鉱業を対象として企画された、いわゆる結論を先に出しておいて逆算の形でいろいろとこの法律をつくられたのではないかという疑いを持つ点について、もう一応御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/79
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080・徳永久次
○徳永政府委員 立案の責任者は私でございますので、経緯をこの前申し上げましたが、重ねて申し上げます。ニツケルの輸入が日本に十分に行われるようにということがわれわれ一番最初に努力したことであります。去年の夏以来入らなくなつたのであります。そのような状況に対し、たびたび司令部へ日本の必要量を陳情して、その確保方をお願いしたのであります。いろいろのデータもそろえて何回となく折衝もいたしたわけであります。司令部の責任者から、自分たちも日本のニッケルの不足で困ることはわかるのでいろいろ努力をしている、しかしその数量をとる自信はないのだというふうに、いわばある程度の引導を渡されたという事態に今当面いたしたわけであります。われわれといたしましては、輸入の安いもので国内の需要がまかなえることが一番望ましいわけであります、その努力をやつたのでありますが、それがある程度入つても必要量を確保できないことになりますと、われわれとしましては供給確保の責任を持つているつもりでございますので、第二の策をとらざるを得ないことになるわけであります。それで先ほど来お尋ねのございました既存の実績を持つておりまする業者に対しまして、事業を再開することを考えてもらいたいということをそれぞれの業者に当つて見たのでありますが、先ほど来お答え申し上げましたように、実績を持つておつた業者で、場合によつてはやつてもよろしいという返事を得ましたものは別子鉱業だけでございます。それから既存の実績は持ちませんが、先ほど御指摘がございました日本アルミは既存の実績を持つているのでなしに、太平鉱業が技術研究所でいろいろな研究を進めておりますが、その技術をもつて自分のアルミナをつくつておつた際の遊休設備を転用するというような方式で今度新たに出て参つているわけでありますが、私どもといたしましては既存の実績を持ち、あるいは新たに事業を計画しておる人からは、やればやれぬことはありません、しかしながらこれは先ほど来申しましたような経済的な危険と申しますか、国際情勢のいかんによる危險をはらんだ仕事でありまして、相当の巨額の投資をして、それが未回收のうちにつぶれるかもしれないというような危険をはらんでおりますので、その点について政府側として何らかのめんどうを見てもらいたいという要求があつたわけであります。その一番手取り早い方法と申しますか、簡易な方法、これは実はアメリカでもやつている方法でありますが、アメリカでも日本と同様にニッケルに苦しんでおります。そのためにニカロというニツケルの鉱山がありますが、これは過般の戦争中に仕事をしておつたことがありますが、その仕事のやり方は私企業でやつておりません。政府の責任においてやつておつたのであります。これは日本の産業復興公団及び復興金融金庫、両方の機能を兼ね合せたようなR・F・Cという機関があるわけでありまして、そこでやつているという仕組みであるわけでございます。私どもは事業の性質から考えて、そういう方式によることが適当ではなかろうかということをまず最初に考えたわけであります。さような意味でこの四月から清算に入りました産業復興公団というものは、ある程度機能を停止といいますか、制約されておりましたが、それに仕事をさせてもらおうという動きを、このニツケルの製錬の保持の目的のために日本側と司令部側と十分の折衝をしていたのでありますが、これがうまく成功しますと、こういう特殊な任務を與えてもらうことも可能であろうということで、その成り行きを見守つておりましたが、今年の一月か二月の初めになりまして、どうも脈がなくなりそうだという事態が相当はつきりして来たわけであります。そこでそれにかわる案をつくつて考えるべきではないかということで、いろいろな形の案というものを考えまして、司令部と折衝したのでございます。三月の末に司令部の相当の責任者との間にある一応の了解を得ておつたのでありますが、不幸にして司令部全体の了解を得るに至らず、前九国会にお答え申し上げましたような運びに至らなかつたのであります。四月以降またあらためて新規出直して、司令部とその他の関係者に対して考え得るすべての案というものを提出して、その利害得失というものを説明して、そのいずれを選ぶかということで司令部と折衝を行つたのであります。その結果御提案申し上げた案というものが承認を得るという見通しがつきましたので、急遽国内的に大蔵省その他と話合いをつけまして、まとまつたというような経緯をたどつているわけであります。
以上いずれの案をつくりますのにも、この事業をやる際に危険がどの程度あるものか、それは建設費が幾らになるかということと、及び鉱石代がどのくらいになるかということでございますが、それらの資料というものを、私どもとしては別子鉱業から見積りを出させたことは事実でございます。これは先ほど申し上げましたような事情から、そこからとらざるを得ない事情にあることは御了解いただけると思うのでありますが、ただその数字の点等については、私どもとしてはたとえば生産費なら生産費の数字というものをもらいましても、それの過去における全体の検討、それから時価の見積り、材料費の見積り等については、われわれとしても最善を盡し、十分公正な判断をしているつもりであります。重ねて申しますが過去において最大の実績を持ち、なお国においてギヤランテイーの措置のとれる限りやれる意思を持つている別子鉱業からとらざるを得ないという事情はお察し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/80
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081・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私がもう一つお伺いしたことで御答弁がなかつたのでありますが、別子鉱業がすでに必要な設備をしているといううわさを聞いておりますが、その点局長は知つておられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/81
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082・徳永久次
○徳永政府委員 先ほど来の経緯で申し上げるごとく、この法案は司令部との間に三月末に成立することを実は予想いたしておつたわけであります。別子鉱業は、先ほど来申し上げましたけれども、簡単に実は立ち上つたわけではないのであります。去年の秋以来やつてくれ、やつてくれと言いましたけれども、しかしながら何らかの政府の補助がなければやりませんということでありました。それは司令部との折衝でその必要性を司令部は認めまして、脈はありそうだということを認めましたので、別子鉱業に復旧計画を立ててもらう段取になり、しかもその法案が三月末には成立するかもしれないという状況にあつたのであります。それは御案内のごとく、三月までにおいて成立しなかつたのであります。その後におきまして、会社部内におきましては三月末には成立しなかつたけれども、なお政府側が何らかの代案を司令部との間にまとめる努力をしているということは知つておつたわけであります。さようなことから、四月になりまして、この復旧計画を、次の五月の国会を待つか待たぬかということが社内としても重要問題になつたように聞いております。その社内としての結論は、政府側においてもいろいろな努力をしておられたし、一応は司令部との関係において何らかまとまるのではないかという判断のもとに、一日も早く設備ができることの方が望ましいというので、準備だけでもかかろうじやないかというふうに決定したと私どもは了承いたしている。現地におきまして建設工事がどの程度進行しているかということは、私はまだその後におきまして現場の事情は詳細に了知いたしておりませんけれども、そう大規模に進んでいるものではない、政府側で何とかなさるであろうということの意思決定いたしましたのは四月になつてからのことでございますので、そう大したことは進行していないと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/82
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083・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私は実態を調査したわけではないからどの程度進んでいるか言明はできませんが、相当進んでいるという話を聞いております。そこで住友別子鉱業と政府当局との間に暗黙の了解があつて、工事は進めているとおつしやいますが、しかし補償する制度は、法律が国会を通過しなければできない、政府さえ腹をきめればできるというような言葉が暗黙の間に聞きとれるのでありますが、そうしますと国会においてこれが通過しない場各、ただちに政令でもつてやるということになつておるかどうか、その点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/83
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084・徳永久次
○徳永政府委員 政府が何とかするから、今から仕事にかかりなさいということは、私の方は言つたわけではございません。会社側として、政府は司令部といろいろ折衝しておられるので何とかまとまるのではなかろうかという判断で、一日も早くできることの方が、一日も危機を切り抜けられるということになりますので、準備は進めた方がよろしいということに会社として意思を決定しておるということでございます。政府といたしましてこの法案がこの国会におきまして不成立になる、私どもとしてさようなことは希望いたしませんけれども、さようなことになりました場合に、政府としてほかの方法で実現させるかどうかということは、かような内容のものでありますから、国会の了解を得られぬ限りできるものではないと思います。さようなことは考えたことも実はないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/84
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085・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 そうしますと、そういう事情を十分承知の上で別子鉱業が設備をどんどん進めたといたしますならば、私はかりに補償がなくても、鉱石の輸入さえあれば別子はやるという腹をきめてやつていると判断できるのであります。また専門家の間にも、先ほど申し上げたようにそういう見解を持つておる人もある、私もそういうふうに断定せざるを得ないのであります。局長はどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/85
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086・徳永久次
○徳永政府委員 それは私ども会社当事者にも聞いたこともないわけでありますが、万一法案が通らなかつた場合に、企業としてどういう態度をとるか。自己の危険においてその事業をやるという態度をとれば、それも供給を確保できるという意味においてはけつこうだと思いますけれども、しかしそれがやれないという場合に、それをやらすだけの手段のないときに、結果として、私どもとしては一定量のニツケルの供給につきまして確保の責任は持ち得ないという立場に追い込まれることを非常に不本意に思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/86
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087・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 過日も申し上げたわけでありますが、別子鉱業が実際に補償がなくてはやれないと政府に対して言明したかという私の質問に対して、そういうことは言つておらない。そうすると、政府はまつたく親切心でこうもしてやらなければやらないだろうということでおやりになつたことになる。私は実際に実態も調査しておらないし、別子の人にも聞いておらないからわからないけれども、こうしなくともやれると言つておるにもかかわらず、ここまで親切にしてやらなければならない理由が私にはどうしても納得できない。危険だからそうしてやろうというのならば、すべての業者にそういうふうに親切になさいますか。こういう補償をしてくれと言わないのに、やりますかどうかということを聞いておる。補償をしてくれなければやらないということを言明したならば、こういうこともやむを得ないだろう。言明しないのにこういう方法をとられる理由がどうしてもわからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/87
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088・徳永久次
○徳永政府委員 私この前お答え申し上げましたが、具体的な対策そのものを別子鉱業が要求したのではありません。何らか国においてめんどうを見るということでございませんと、私企業としてもとうてい立ち上れるほどの仕事ではございませんということは、再三にわたつて意思表示はあつたわけであります。われわれは私企業で何とかやつてくれぬかという説得をしたわけでありますけれども、危険の存する理由をあげて説明されれば、われわれとしても今の日本の置かれておる環境から見まして、国が何らかの処置をとる必要があるというふうに判断をし、国が何らかの処置をとつてもらいたいという要求がもつともな要求であるというふうに考えまして、案としては先ほど来申し上げましたごとく、いろいろな案を実は考えてみたわけであります。この案はその中の一つとしてのものでありますが、関係方面から了解を得られた唯一の案であるというふうに私ども了解しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/88
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089・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 この別子に割当てられたものを製錬するのに要する電力の量は、どのくらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/89
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090・徳永久次
○徳永政府委員 ニツケルの事業につきましては、電気は割合に多く食うのでありまして、アルミニウムとほぼ同様で、トン当り二万キロか二万二千キロであります。アルミウムと同じくらいの電気が食われております。ただ全体的に見まして、一トンのニツケル地金に必要な電力量は二万二千キロワツト・アワーでありまして、全体の生産量が、こういう基礎金属でございますので、月百トンとしましてもそう大きな数字ではないと思います。アルミニウムは最近増産いたしまして、昨年度月当り二千トンぐらいつくつておりますが、今年度はそれを三千トンぐらいにふやそうとしておるわけであります。さようなものに比べまして、トン当りの電力消費量は大きうございますけれども、生産量が少いので、何とかなるであろうというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/90
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091・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 少いとおつしやるけれども、トン当り二万二千キロですと百トン二百二十万キロになります。これは相当な量だと思うわけです。新たにこの割当てをとるということは、今日の電力需給の関係からいつて、何とかなるというほどそう簡單な問題でもなかろうと思いますが、大体この話はついておりますか。別子と公益事業委員会との間に話がついておりますかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/91
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092・徳永久次
○徳永政府委員 このニッケルの国内生産の確保につきましては、実施の主務官庁は私の方でございますけれども、関係のありまする安定本部とはしよつちゆう連絡をとつておるわけでありまして、電力の割当てにつきましては、総供給量は公益事業委員会がきめますが、その産業別配分となりますと安定本部及び通産省がきめる、そういう扱いになつておるわけであります。
なお御参考までに申し上げますが、アルミにつきましては、別子鉱業の分は四坂島なり新居浜において電気を使うということになるかと思いますが、同じ電力を使う四国におきましては、アルミニウムは昨年度月当り四百トンを本年度は七百トンにふやそうとしておる事情でございますし、日本になくて困つているニツケル百トン分の電力の融通がつけられないというふうには私ども考えていないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/92
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093・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 いろいろお伺いしたいこともございまするけれども、私はこうした問題はやはりここでいろいろ押問答をしても、結局明確なる解決の道のない問題が多いと思います。たとえば価格の問題にいたしましても、指定の問題にいたしましても、先ほど私が申し上げたように、詳細に実態の調査をした専門家の意見を聞かなければ、実際は私ども責任を持つて賛否を決しかねるような問題でございます。そこで私はこうした問題を解決するために、この法案にはございませんが、私は一つの審議会制度を設けて、そうした各種の決定の問題を諮問するという一つの修正案を出したいという意向を持つている。ニツケル製錬事業審議会ともいうべきこの審議会に諮問する範囲というものは、すべていわゆる大臣の権限にまかされている決定事項でございますが、第一に、この第二条第一項の指定の問題、第二は第四条第一項事業計画の変更の問題、第三は第五条第一項の指定業者の指定取消しの問題、第四は第六条または第七条第一項の政令の制定と改正及び廃止の問題、第六は第七条第一項第三号または第二項の規定による指定の問題、第六には第八条の規定による補給金の決定の問題、こういうことを諮問する。さらにまたこの審議会は事業に関する重要な事項について関係行政官庁に建議することができるという権限も與えられている、こういう一つの権限を持つた審議会を設けるという制度が私は必要ではないかと思う。そこで審議会の構成等については、他の例も考えまして行政官庁の職員と、それから事業に関して学識経験のある者、特に学識経験のある者という規定は、従来直接関係業者の中から選ばれる場合が多いのでありまするが、私は問題を扱うこの審議会の性格にかんがみて、この学識経験のある者は事業を行うものを除くその他のいわゆる学識経験者から選び、通産大臣が任命する、こういうふうにしたいと思う。そういうふうな委員会制度に関する修正案を提出したいと私は考えておるのでありまするが、この点について通産大臣の御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/93
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094・横尾龍
○横尾国務大臣 先刻から加藤議員のいろいろな点についてのご質問を伺つておりまして、いろいろと御心配をされておることに対して厚く感謝するものであります。ただいま御発議の審議会というものを設けたらどうかというようなお話であります。実はこれを法文化しまして現在の法に入れますと、この短かい期日中に先方のオーケーも得られないと思いますので、これは省議として御趣旨に賛成し、追つて早い機会においてこれを法に組み入れるということに努力をしたいと思うのでございます。さように御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/94
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095・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 修正する場合に、時間に非常に無理があるから、省令でこの措置をとりたいという大臣の御趣旨はわかります。しかしこれはやはり他の法律の場合にもこういうことは明記されておりまするので、もしこの国会においてこの修正をしなかつた場合に、来るべきできるだけ近き機会において修正案を出す意思があるかどうかという点を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/95
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096・横尾龍
○横尾国務大臣 早い機会において、これを法制化いたしたいことは、先刻申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/96
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097・高木吉之助
○高木委員長代理 以上で本案に対する通告者の質疑は終了いたしました。
本日はこの程度で散会いたします。
午後四時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03419510526/97
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