1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十九日(火曜日)
午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君
理事 中村 幸八君 理事 高橋清治郎君
理事 今澄 勇君
今泉 貞雄君 小川 平二君
神田 博君 澁谷雄太郎君
中村 純一君 福田 一君
南 好雄君 河野 金昇君
風早八十二君
出席政府委員
通商産業政務次
官 首藤 新八君
通商産業事務官
(通商振興局
長) 井上 尚一君
委員外の出席者
議 員 田中織之進君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 大石 主計君
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した事件
ニツケル製錬事業助成臨時措置法案(内閣提出
第一七七号)
緊要物資の売払に関する法律案(内閣提出第一
七九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/0
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001・小金義照
○小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。
本日は、まず緊要物資の売払に関する法律案を議題といたします。本法律案につきましては、去る二十六日大体の質疑を終了いたしておりますが、今澄委員の質疑の保留がございます。この際これを許します。今澄勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/1
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002・今澄勇
○今澄委員 本法律案はさきに大蔵委員会に付託され、施行されておる緊要物資資金特別会計法の特例に関する法律案でありますが、私はこの法律案の前提となる日米経済協力という点について二、三の質問をいたしたいと思つておつたのであります。しかしながら大臣、政務次官がお見えにならぬようでありますから、この法案の前提となるこれらの問題については、大臣なり政務次官がお見えになつてからお聞きをするということにいたしまして、それまでしばらく法律の個々の問題についてお伺いしたいと思います。そこで私はこの法律案によつて、さしあたりニッケルが適用されるというような御答弁でございましたが、引続いて合成ゴム、コツトン・リンター等の物資についてこの法律の適用があろうかと思います。そこで私どもはこれらの適用品目の指定という権限を一行政長官である通産大臣に全部まかせるということについては、非常に大きな問題を今後生ずるおそれはないか。しかも業界にとつては、この指定を受けたものについては、企業利潤のうまみが全然見られないということになりはしないか。なお今後指定せられるだろうと考えられるものは、ダイレクトな軍需用原料であると思われる。たとえばコツトン・リンターにせよ、御承知のようにこれらは硝化綿の原料であつて、合成ゴムもいろいろなそういう用途に使われる。なお将来特殊鋼、マニラローズ皮革等というようないろいろなものにこれが及んで来ることは必至であると思いますが、この品の追加、並びにこれらの特需用の品物を追加することによつて、一般民需用のものに大きな圧迫を加えはしないかというおそれがございますが、局長さんの御見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/2
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003・井上尚一
○井上(尚)政府委員 お答えを申します。第一点の、今後この緊要物資の売払に関する法律の適用品目の追加を見ることになる、その場合において、その品目の指定を政府の一存できめるということは適当でないのではないかという御質問につきましては、本法律の提案理由の説明の場合に通産大臣から申しました通りに、これは元来特需の円滑なる調達を目的とする、そして今日の情勢としましては、特需の原料がだんだん物価高騰の趨勢にあるという場合におきまして、軍ができるだけ廉価に、必要な特需品を調達しようという目的をもちまして、その必要な当該原料を米国から日本へ輸出する。日本の方から申せば、これを輸入する。その輸入の方法として、援助物資特別会計を通じ、緊要物資特別会計に入れる。その緊要物資特別会計に入りました政府所有となりました物資を、その当該軍需の発注を受けましたメーカーに対して、輸入原価に一定のチャージを加えた、きわめて適正なる価格でもつて、特需のメーカーにこれを供給する。こういろ場合につきまして、当該物資の国内相場は非常に高い場合におきましても、国内相場に比べて安い値段でもつて、これを供給するという必要上、財政上の原則の例外としまして、本法律案が提案に相なりましたわけでございます。そういう関係からいたしましても、御承知願えます通りに、どういう品目をこの法律の適用品目に加えて参るかということは、もつばら軍が必要とする特需の原料という観点から、軍の意向といいますか、先方の意思でこれはきまる問題でございますので、そういう軍が必要とする特需の原料を、廉価に米国から輸入する場合の措置であります関係上、わが政府の方で一方的にこれをきめるということによつて弊害を生ずるどいう問題は、ないものとわれわれは考えておるわけであります。従いましてその品目の指定は、政令でこれをきめて参るということにいたした次第でございます。
次に当該原料を用いまして、特需品の生産を担当する企業は、企業利潤のうまみがないではないかという御質問でございますが、この点につきましては、軍の発注官が原価計算あるいは原単位計算をもちまして、その必要とす、る軍品省の調達の値段をきめることに相なりますし、その場合必要な原料が、先刻申しましたようなルートを通じて、政府の緊特会計からの売払いを受けるということに相なります関係上、結局目的が、できるだけ適正な値段で原料を入れることによりまして、軍需の円滑なる調達を期して行こうというのが、軍の意図するところであります関係上、勢いその公売契約といいますか、発注、受注の契約につきましては、もちろん適正な利潤は与えられると考えられるのでありますが、そう莫大な利潤がないということが予想せられるわけであります。こういう点につきましては、その当該生産の用途と申しますか、目的の性質からいいまして、当然やむを得ない点であろうかと考えております。
それから第三の問題としまして、こちらに輸入になります原料が、結局特需の方にまわされるということによつて、一般国内民需を圧迫する結果を生じないかという点につきましては、これは本来特需の用途に供するという目的をもつて輸入になり、またその用途にこれがまわるものであります関係上、本来一応ルートとしましては、民需の方とは切離された関係になるわけでありますが、間接に申しますれば、いろいろニツケルとか、合成ゴムとか、そういう物資が特需用という目的をもつて国内に入つて来ることによりまして、現在ニッケルについて申しますれば、非常に高い市中相場に対して、物価の引下げという面の効果は、実際問題として生じようかと思います。物資の需給関係の点について申しますれば、これは本来民需の方にまわるという意味をもつて入つて来るものではございません関係上、民需を潤すこともなければ、また逆に民需の方からこれを特需の方にまわすことによつて、当該物資の民需方面における需給関係を圧迫するというような結果も、同時に生ずることはない、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/3
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004・今澄勇
○今澄委員 いろいろ詳細な御説明がございまして、大分よくわかりました。私はただ問題にしておるのは、それらのこれに指定された売払い物資だけで、特需の注文の完成品はできないであろう。それらの特需の完成品をつくるためには、副資材その他多数のものがこの売払い法できめられたもの以外にいるだろう。さすればそれらの莫大なものがどんどん注ぎ込まれるから、こういつた安い値段でこういう特需用の専門のものをやつても、それに付随する一切のものがそれと相応して注ぎ込まれて、大きく民需を押えるであろうという意味の質問でありまして、もう一度御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/4
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005・井上尚一
○井上(尚)政府委員 今も申されました通り、結局軍の必要とします物資の生産に必要なる原料の全部が、このルートを通つて参りますれば、民需を圧迫する懸念はないわけでございますが、当面の問題としましては、この援助物資特別会計、緊要物資特別会計を通じて特需用のメーカーに供給になる物資は、今申されました通り、ニツケルとか、合成ゴムとか、コツトン・リンターとか、このさしあたりの問題としましては、大体少数の品目でございます。大体緊要物資特別会計が設けられました根本の理由は、特需用に重要物資がまわる反射的結果として、わが国内の当該物資の需給関係を不当に庄迫することがないようにというねらいが、この緊特会計の設置の趣旨でございます関係上、今後このルートを通つて入つて参ります物資の範囲も、逐次拡大されて来ようかと存じます。なおまたニツケルならニツケルを用いる製品の製造に関連しまして、銑鉄、普通鋼材、その他のいろいろな資材が必要になりまするが、そういう物資の需給関係につきましては、この緊特を通さない場合におきましても、民貿の方からの輸入については、たとえば鉄鉱石であるとか、粘結炭であるとか、そういう原料の搬入につきましては、民貿の輸入の点に十分考慮を加えまして、この特需の受注ないしは生産によつて民需方面が不当に圧迫をこうむるということがないように、十分な方策を講じて参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/5
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006・今澄勇
○今澄委員 政務次官がお見えになりましたので、私は先ほど留保した日米経済協力に関する本法案との関連を質問したいと思います。
まず私はこの法案は日米経済協力をより具体化するためにできたものであろうと思いますが、本法案の審議にあたつては、どうしても日米経済協力の内容と規模について、政府からその真相ないしは真相に近いものを御報告願わないと、この法案についての私どもの審議の前提がなくなると思います。そこで私は日本経済自立のための日米経済の協力であるならば、あえてこれに反対するものではありませんが、日米経済協力を手放しで謳歌して、そのために日本の産業が非常にへんぱなものになるということであつてはならないと思います。そこでやり方いかんによつては、日米経済協力というものは多大の混乱を日本の経済にもたらすおそれがある。そこでお伺いしたいことは、まず第一点として、本法案のような特需に対して優先処置を原料面でとることにより、今私が質問したように、一般的な内需が非常に脅かされて、国民生活が非常に圧迫されるおそれがあるかどうかということ。第二点としては、一特需用の主原料は外国から責任もつて低価格でまかなわれておつても、これらの副原料はどうしてもわが国の負担となる。一例を肥料にとつてみるならば、先般朝鮮方面に輸出の肥料の値段は、関係筋からの仲介があつて、大体六十ドルということでオフアーがあつた。これに対して日本の肥料工業メーカーは、少くとも七十ドル見当でなければ引合わないというようなことで、こういつた自由な取引にまかされておる部面についても、非常に工場原価を割るような肥料の値段であるために、取引がなかなか円滑に行かないで紛争を見ておりますことも御承知の通りです。こういつたような実情から見ても、これらの特需について、競争入札なり、あるいは関係筋の価格に対する意見なりが出て、これが非常に安く出るということになると、国民の民需も押えるし、企業の利潤もないということで、日本の経済に非常に打撃を与えるという結果にならぬとも限らない。これらの点についての政務次官としての御見解をこの際お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/6
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007・首藤新八
○首藤政府委員 日米経済協力に対しましては、いまだ具体的に詳細なとりきめは行われていないのであります。ただ現在まで政府の承知しておりまする輪廓といいますか、大綱は、近くアメリカの方に発注の調整機関をつくり、その分室を司令部の中に置く。さらにそれに即応するところの受注の調整機関を日本政府に置くことが適当ではないか。もう一つは、日本の商品が近来非常インフレ的傾向が濃厚である。今後の日米経済協力の線によつてアメリカが購入するものは全部競争入札にする。決して日本には特典を与えるものではない。従つてこの競争入札にたえ得るような価格に押えることが最も重要な点である。さらにこれがために資材もできるだけ援助するが、その前提として東南アジアの資源開発のために積極的に推進すべきである。それがためには金融点においてもできる限り援助をするという程度のことより現在はまだ判明していないのであります。従つて問題は、せつかく日米経済協力の線から向うの発注が行われた、けれどもその価格はあくまでも競争入札であつて、日本だけ特にいろいろの事情を考慮して特別な価格は付さないということでありますから、アメリカの企業家と同様の立場において入札しなければならない。しかるに御承知の通り、日本の現在の特需物資と目されるものの大部分は、地理的な事情、いろいろな條件がアメリカよりもはるかに不利な状態に置かれておるのであります。たとえば鉄鉱石のごときは、中共との貿易が中絶しておる関係上、アメリカから鉄鉱石も粘結炭も全部輸入しなければならない。しかも昨年の暮まではわずかに七、ハドルないし十ドルの運賃が、一時は二十三ドルまで上つた。最近辛うじて十六、七ドルまで下りておりまするが、しかもこれほど高い運賃を出し、また向うに輸出する場合にも同じような高運賃を払わなければならぬというようなこと、そ一の他いろいろな面において非常に條件が惡いのであります。その條件が惡いにもかかわらず、入札の価格はまつたくアメリカの企業体と同一だというところに最も大きなネックがあるのであります。しかしながら、やはり日米経済協力というものは、日本としてできるだけこれに協力しなければならぬ、誠意をもつて協力しなければならぬ。それにはできる限り、この降路を打開ずるように、政府の手によつてできるだけ援助しなければならぬ。実はこういう気持を持つておるのであります。そこでただいま御審議を願つております緊要物資売払に関する法律案でありますが、この法案を提出いたしました理由は、大体緊要物資というものは、民間貿易で輸入できないもの、要するに政府の手によらなければ輸入ができないもの、そうして内地の価格と国際価格に非常な開きのあるもの、特に民間では輸入できないものということが、一番大きな緊要物資の性格なのであります。このニッケルに対しましても、昨年以来しばしば司令部の方に要請いたし、また民間の手によつて直接契約をいたすべく、あらゆる努力をいたしたのでありますが、いずれもが効果がなく、結局民間では輸入できないという結論に利達いたしたのでありまするが、たま日米経済協力ということから、司令部におきましても、特に特需用としてならば若干の輸入をしようということの了解のもとに、実は三百数十トソが輸入されることに相なつたのであります。さような意味合いから、今澄委員はこれがために民需を圧迫しはぜぬかという御指摘でありましたが、ただいま申し上げましたごとく、民貿のものはあくまでも原則でありまして、あらゆるものは民間の輸入にまつて民需の方に供給できるという建前になつておりますから、かりにニツケル——もう一つ今後想定されるものはコツトンリンター並びに人造ゴムでありますが、これらのものはどうしても民間ではできないのであります。従つて、たといこの三つのものを政府が輸入しまして、そうして適当のところにこれを配給いたしましたからといつて、一般の民需には何ら影響はない、かように解しておるのであります。費用のお話もありましたが、まさしく御指摘の通りそういうことに相なつておるのでありまして、政府といたしましてもできる限りメーカーの立場考慮いたして、少くとも採算点を割らないように、若干の利益を確保されるような値段で契約いたしたいというので、側面的には御協力申し上げておるのであります。これも一種の特需と申しますか、八軍の方でこれを買いとつて、そうして朝鮮に供給するというようなことで、普通の商談とはいささか性格を異にいたしておりまする事情がありますので、そう強くも主張できないのであります。現在メーカーと司令部との折衝は一応直接折衝にまかしておるのであります。少くともこれがために緊要物資は、繰返して申し上げまするが、民間で輸入できない特殊のもの、そして、これがかりに特需の方に余裕がありますならば、その他の民需の方にもできるだけ多量にまわして行きたい。そうして民需物資にあまり圧迫を加えないような方法をとつて行きたいと考慮いたしておるのでありまして、これがために現在のところ民需に圧迫を加える心配はない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/7
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008・今澄勇
○今澄委員 引続いてもう一点だけお伺いします。
日米経済協力の進展は、経済行動の跛行性を招くおそれがある。ある特定の生産だけがどんどん盛んになる。こういつたような特別の法律、あるいはそういう競争入札制度というような点で、日本のある特定の産業だけが盛んになり、局部的に産業が肥大して、日本産業全体としての健全性がそこなわれるおそれがないかということが第一点。第二点は、日米経済協力の期限は一体どの程度であると推定せられるや。われらは、もしこれがここ二、三箇年というような想定であれば、今日設備を新設、拡張して大きく肥大したそれらの特定産業が、今度は急激な反動を招いて、壊滅的打撃を受けるというような問題について、政府としての民通しと対策があらば、この際ひとつお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/8
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009・首藤新八
○首藤政府委員 特需に対するところの受注は、あくまでも生産の余剰をこれに充てたいというのが原則であります。国内物資の供給を枯渇いたしまして、国民生活に不安を与えるというようなことは極力避けたい、でき得るならば各業種の余剰の生産能力をもつてこれに充てたいと希望いたしております。しかし実際問題としてに、ただいま御指摘のようなある特定の産業が非常に活況を呈して、反面他のものが不況を呈するというようなこともなきにしもあらずという杞憂は持つておるのであります。現に昨年朝鮮事変以来、鉄鋼あるいはセメントあるいはパルプ等々、若干の産業のみが非常な好況を呈しており、その他のものはかえつてデフレ的な傾向を帯びておるのであります。従つて今後特需がいよいよ具体化して、ある産業のみが急激に活況を来さぬとも限らないとは考えておるのでありますけれども、しかしながらあくまでも民生安定、国内経済の安定だけははつきり確保いたし、その上で特需をやりたいと思つております。従つて、先ほども申し上げましたごとく、あくまでも余剰の能力だけでこれをやつて行きたい。さらにまた御承知かと思いますが、あくまでも入札は自由でありまして、強制的ではありません。その点は各社とも考慮いたしておると考えておるのであります。なお見通しにつきましては、これは何人もはつきりした断定はつけかねると思いますが、アメリカの軍備拡張や世界の政治情勢から見て、長くとも三年程度で終了するのではないか。従つてこの特需を受注したからといつて、これがために特に厖大な設備をするということは、おそらく各企業体とも自重するのではないかと思います。これがために厖大な設備をするということになりますれば、客観情勢で、そらにこの活況が将来長く続くという見通しがつかない限りは、政府はその点についてかような危険を冒さない処置をとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/9
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010・今澄勇
○今澄委員 それで大体全般的な日米経済協力に関する通産省としてのお考えはわかりましたが、私は御希望通りにならないのではないかという点を恐れます。この法律によつて物資の売払いの価格をきめなければならぬが、これらの価格の決定方法は一体具体的にどういうふうにするか。このたびきめられた三百何トンかの緊要物資は、これは全部特需に振り向けられるのかどうか。来年度の見通しについては、どの程度の物資をこれに指定されるお気持であるか。それから、これらの買付の金はどのような資金をもつて調弁するかというような点について、政務次官なり局長なりからお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/10
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011・首藤新八
○首藤政府委員 この緊要物資の販売価格でありますが、これは原価に運賃その他諸掛実費を加えたものを販売価格といたしたい。しかし政府はこれによつて利益をえようという考えは持つていないのであります。かような意味合いで、とにかくできる限り安く供給いたしたいという建前をとつておりますので、すべてを実費にいたして、その計算によつて得た金を販売価格といたしたい、かように考えております。
なお近く入りまするのは三百三十トンと記憶しております。それから将来の輸入量でありりますが、これは国際的に極端に寡少物資でありまして、明年において幾ばく輸入するかは今日のところまつたく見通しはつかないのであります。しかし先ほど申しましたことく、本来が特需用として輸入されたものでありますので、その点は先方もよく了解しておりますから、特需の需要がふえますれば、少くとも特需に必要なだけの量は輸入が可能ではないかというふうに考えておるのであります。
なお資金でありまするが、今回のはガリオア資金で輸入されるのでありまして、それをこの緊要物資の基金によつて買入れたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/11
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012・今澄勇
○今澄委員 私は、委員外の質問もありますので、これで終りますが、最後に通商政務次官にお伺いしたい。最近の情報によると、米国側の特需の発注にあたつては、今あなたは競争入札と言われましたが、どうも米国の国内市場価格より一割程度安くないと買付けないという方針のようである。こういうふうな厳しい態度であるということは、わが国一部経済人士としてはまさに頂門の一針というような、警告に価すると思います。私はあなたに、こういつたような新特需の日米経済協力の姿であるが、わが国の経済界は、はたしてどのような現状であり、どういつた注意を要し、将来どのようになつて行くかという通産省としての見通しと御見解を承り、私の質問を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/12
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013・首藤新八
○首藤政府委員 入札価格が市価よりも一割安くなければならぬという情報はいまだ入つていないのでありまして、先ほども申し上げましたごとく、単にこの発注は、一般の入札によるということだけより、はつきりしていないのであります。しかしながら少くとも日本の現状から考えますれば、入札にいしたた場合に、相当不利な立場に置かれるのではないかというふうな気持は持つておりまするので、原料面において援助をいたしまするとともに、設備の更新、あるいはその他の合理化の面につきましては、政府に積極的にこれらの方面に指導いたして行きたいというふうに考えておるのであります。同時にこの入札の点に対しましては、率直に申して今澄委員御指摘の通り、いろいろの困難があつて、思うように進行しないのではないかという不安も、まだ若干持つております。だが幸いに東南アジアの需要に対して、できる限り日本からこれを供給してもいいという了解が得られるのではないかというふうにも考えられまするので、今後はそういう方面にも積極的な構想を持つて進めて行きたい。そうすることになりますれば、入札という点よりも、むしろ東南アジアの方の輸出の方が、非常に早く伸びる可能性があるのではないかということも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/13
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014・風早八十二
○風早委員 今の今澄委員の御質問の中で、調弁価格の問題につきましては、ちよつと一点だけ補充質問を許していただきたいと思います。
この前の私の質疑の点について、ちようど今お答えになつておられる政務次官が、この競争入札が不利だと考えられるならば受ける必要がない、こういうお話であつたのでありますが、これは当然受けなければならないというところに、つまり日米経済協力の本件があるのであつて、もし不利であると考えて受けなければ受けないでよろしいといろのであれば、これほむしろ政府の考えておる日米経済協力とは違うのではないかと考えざるを得ないわけでありますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/14
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015・首藤新八
○首藤政府委員 先般も申し上げました通り、この入札を絶対受けなければならぬ、また入札しなければならぬという義務も、また強制権も何もないのでありまして、各企業体のまつたく自由な意思によつて入札もし、また受注もすることになつておるのであります。それ以上政府はこれを強制しようという考えは毛頭持つておりません。従つてあるいは個々の業種につきましては、価格が引合わないということで相談がととのわない場合も数多くあると思いますが、しかしこれは各企業体の熱意と創意とによつて、漸次原価を安くするような整備をもつて、この入札価格に合うような情勢に展開して参りはせぬか、また政府はでき得る限りそういう可能性について指導して参りたいというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/15
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016・風早八十二
○風早委員 そこで言葉をかえて言えば、企業の合理化という点で十分にコストを切り下げることに努力をするであろうというお話ですが、それができるのはきわめて少数の、もう金融その他に非常な便宜があり、能力のある大経営に限られるのであつて、やはり大多数の中小商工業者としては、これでかえつて非常に苦境に陥り、競争條件から行けば倒れてしまう、こういうような不利なものが大多数生ずることになると思うのです。しかしそれでもなおこの合理化ができるかといいますと、正しい意味での企業の合理化ということになれば、設備も拡充しなければならぬということになるのですが、その設備の拡充ということは、またこれは手控えるであろうということは政務次官自身も認めておられるだろうと思う。なぜなれば、特需の期間というものが非常に短期間に予想せられる。そろすれば手控えをするということが一般だろうと思う。そういう意味からいつて、どうも矛盾すると思う。実際上合理化に持つて行くということでなくて、どうしてもこれは賃金の圧迫に持つて行く、あるいははげしい労働強化に持つて行くということが、今日実際に行われておるところであるということは、前々から私は指摘しておるのであります。結局そういうことを最後の逃げ場所に予想しながら、やはりどんな不利な調弁価格でも、これを受けるというところに追い込まれて行くのではないか。これが朝鮮特需の場合におきましては、まだ最初の試みであつて、どさくさまぎれで気に食わない條件では引受けないというものも若干あつたと思いますが、今後、今考えられておる新特需、日米経済協力という表看板のもとに行われる特需に至つては、そういうことは結局許されない。だからその必然の結果が合理化に行くか、賃金圧迫、労働強化に行くかであるけれども、合理化の方は正しい意味では行われる余地がない。少くとも大多数のメーカーにとつてはその余地がないということになりますと、どうしてもこれは労働強化、賃金圧迫に向わざるを得ないという点を指摘したいのです。これはどうせ次官は否定せられるでしようが、こういうことを抜きにして今度の調弁価格の問題は考えられないじやないか、私どもはそう考えるのです。従つて日米経済協力というものの本体がそういうところにあるのではないかと考えるのでありますが、それに対してはどういう弁明を持つておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/16
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017・首藤新八
○首藤政府委員 先般も風早委員から今と同じような質問があつたのですが、風早委員の考えは、日米経済協力の入札価格を非常に強くお感じになつているような傾きがあると考えるのであります。先ほども申し上げましたごとく、内地の民需並びに輸出は、従来通りでありまして、少くとも輸出のごときは積極的にもつと増加させねばならぬという気持を持つておるのであります。その上になお余力があれば、特需の方の生産もやりたいということが今の考え方であります。そういう面からいたしますれば、今までかりに十つくつて輸出、内需に充てておつたが、特需があることによつてそれに三ふえた、あるいは五ふえた、そうしてむしろ多量生産になり、原価が安くなるというふうな考え方を持つておるのでありまして、アメリカ側といたしましても、日本の経済自立をこういう面において援助したいということが非常に強く言われておるのであります。そういう点から考えても、この入札は絶対に強制でない、各企業のまつたく自由である、従つて引合わないものを好んでとる必要もないのであります。同時に労働者に対して非常に圧迫を加えるという御意見でありまするけれども、民需並びに輸出を現状のままとして、さらにその上にプラスされるのでありまするから、労働問題に対して何ら圧迫を加えないのみならず、この日米経済協力によつて発注されただけ日本の生産がふえることになりまするから、むしろ労働條件はよくなつて行くんじやないか、ことに現在の失業者の方面に対しましても、こういう面から考えると相当就職できて労働條件は全般的によくなつて行く、向上して行く、かようにわれわれは構想いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/17
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018・風早八十二
○風早委員 そう言われますと、今度は非常に問題があります。今委員長からちよつと御注意がありましたし、私の質問は済んでおるので、これは補充質問ですからあまり繰返したくないのですが、安本でさえも——これは通産省じやありません。安本でさえも、今度の白米経済協力、新しい特需に対しては自立経済を阻害しないということを前提條件にしてもらいたいということは、すでに新聞紙上でもはつきりしたそういう要望を示しておると思うのです。それくらいに自立経済ということを、日米経済協力についてはアメリカの側がこれを考えておるというようなことがわれわれ普通に考えるられる。正しい意味で自立経済という場合に、これはとんでもない間違いである、そういうことは実はよく政府当局、通産当局は御存じだと思うのでありますがいやしくも一切の中小産業、平和産業をも含むこの産業の面を担当しておられる通産当局として、そういうまつたく別なことを、でたらめなことを言われることははなはだ遺憾千万です。これは一般の民需の上に今度新しくそれだけの注文があつて、それだけよけいに繁昌するんだ、仕事がふえるんだと言われますが、そんななまやさしいものではないことは百も御承知のはずなんです。今度のニツケル自身の例をとりましても、もうニツケルに稀少物資であつてどこへも出さない、アメリカ自身がどんどん保有しなくてはならない。ただ急場の間に合わないから日本でやらした方が有利だというごくわずかな場合に限つて特別に出すだけでありまして、日本に入つて来る限りのニツケルは特需になつている、民需じやない。そうなりますと、入つて来る限りのものはみな特需でありますから、日本の民需には新しいニツケル原料は全然入つて来ないということを、意味しておるわけです。先ほど今澄委員から聞かれ、私どももたびたびこの点を問題にしております特需と民需の関係においても、民需全般に対する圧迫は一目瞭然でなければならぬと思うのです。そういう値段だけの問題でなくして、絶対的に品物そのもの、資材そのものが入つて来ないわけであります。そういうことを考えた場合、特需が……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/18
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019・小金義照
○小金委員長 風早君に御注意思し上げます。御意見ですから討論の際にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/19
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020・風早八十二
○風早委員 特需が民需を圧迫しないと言いますが、特需が入つて来るために民需は全然原材料が失われるということになるんじやないか、そういう点を通産当局として無視されておることははなはだ問題だと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/20
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021・首藤新八
○首藤政府委員 先ほどから繰返して御答弁した通りでありまして、根本的に意見の相違があると考えますから、これ以上……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/21
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022・風早八十二
○風早委員 意見じやない、事実じやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/22
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023・首藤新八
○首藤政府委員 御答弁申し上げることは遠慮したいと思います。ただ今言つたニッケルの輸入もこのままでは一つも入らない。従つてこれを政府の方で輸入すると同時に、それに対しては特需に充てるという一応の條件がありまするので、特需に充てたのですが、しかしいずれにしてもそれだけは日本の経済にプラスになるというふうな考え方を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/23
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024・小金義照
○小金委員長 以上をもちまして、緊要物資の売払に関する法律案に対する質疑は全部終了いたしました。
この際お諮りいたします。この法案について委員外の発言の申出がございますが、これをこの際許可することに御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/24
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025・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。それでは田中織之進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/25
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026・田中織之進
○田中織之進君 本法律案は、先般私の所属しておる大蔵委員会で審議をいたしました緊要物資輸入基金特別会計法に基く法律でございまするので、実は大蔵委員会からは連合審査をお願いしたわけでありますが、大蔵委員会側からの質問者も非常に少いということでございまするので、通産委員会の理事の方が見えましたので、委員外の発言として私の疑問に思つておる点を御解明願つて大蔵委員会からの連合審査はとりやめることに大蔵委員会側としてはいたしたわけであります。以下あるいはこの委員会においてすでに質疑せられた点とダブる点が若干あるかもわかりませんが、その点は委員長から御注意を願いまするならば、省略をいたして若干の質問をいたしたいと思います。
私は、まず第一にごく概括的な問題ついてお伺いしたいのでありますが、この法律の基本になりまする緊要物資輸入基金特別会計は、御承知のように本年度の予算で、いわゆる一般会計から二十五億円の基金を受入れまして、これによつていわゆる民貿では買い入れることるできない、取得することのできない物資を政府自体によつて買い入れようとする特別会計でございますが、その基金の運用の面につきましては、これを操作する関係上、一々予算に縛られては不都合であるという見地から、御承知のように経費予算に相なつておるのであります。しかしこの基金の二十五億円は、御承知のように国民の血税でございますから、この基金がいかに運用されておるかということは、これはおまかせいたしました政府機関の責任でございまするけれども、国民としては非常に関心を持つておるわけであります。すでにこの特別会計が発足いたしましてから二箇月余を経過いたしておるのでありまするが、この特別会計は大蔵省の直接の所管というよりは、むしろ通産省において運用に当られておると思うのでありますが、今日までのこの特別会計の運用の実情はどういうようになつておりますか、政務次官から一応お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/26
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027・首藤新八
○首藤政府委員 御指摘の通り、本国会において十五億円が特別基金として活用されることになつたのでありますが、今日までこれを適用して物資を買い入れたものはいまだ一回もないのでありまして、ただいま御審議を願つておりますニツケル製錬事業助成臨時措置法根が通過いたしますれば、これが初めて適用されることに相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/27
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028・田中織之進
○田中織之進君 それでは次にお伺いいたしまするが、この法律によりまして、政府がこの特別会計によつて買い入れた物資を、時価よりも低く売り渡す品目は政令で定めることに相なつておるのでありますが、政令で定めるのは、売り渡す品目だけでありますか、それとも政令で大体予想される品目は、先ほどからの質疑応答から伺いますと、さしあたりニツケル、コツトン・リンター、ゴムなどが予定されるようでありますが、大体さしあたりのものはその程度のものでありまするか。大体政令によつて定められる品目といたしましては、どういうものを予想せられるか、この際承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/28
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029・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど申し上げましたごとく、近く適用いたしたいという考えを持つておりますのは、コツトンリンター、並びに合成ゴムの二種でありまして、これにニツケルを加えて、当分この三つだけでいいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/29
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030・田中織之進
○田中織之進君 そこでさしあたり第一番に、この法律を適用いたしますところのニッケルの問題についてちよつとお伺いしたいのでありますが、終戦直後から朝鮮動乱の勃発に至るまでの過程において、ニツケルの国内のストツクは若干あつたと私は思うのであるます。それが私の承知する限りにおきましては、朝鮮動乱を契機といたしまして、相当これが輸出されて、現在ほとんどなくなつて来ておる。そこでこうした物資をこの特別会計で買入れなければならないということに相なつたと思うのでありますが、私はこの特別会計はいわゆる狭義の意味から見ますならば、一種の貿易の一環であるとも考えられないことはございませんけれども、少くとも国内にありましはストツクが出て行つて、ほとんどなくなつてしまうまでそのまま放置して、これらの一つの重要な基礎資材の国内の保有量を確保するという点において、政府のいわゆる輸入確保政策というものが、われわれはたびたび指摘するのでありますが、非常に手ぬるいところから、今度は割当物資からこれを買入れなければならぬ、しかもその割当物資は御承知の通り特需に向けられるものに限定されておるのでありまして、その意味から見ますならば、ひもつきで、これを輸入してくれる国の戦略物資として売らなければならぬというひもつきの條件がついて来るのでありまして、こういう点は私広い意味における貿易政策の見地から検討しなければならないものがあるのではないかと思うのでありますが、この点に関する政務次官の御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/30
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031・首藤新八
○首藤政府委員 まつたく御指摘の通りでありまして、実は終戦直後におきましては相当量あつたのであります。御承知の通りニツケルの年間需要というものがごく少量でありますので、昨年まであり、また朝鮮事変が起らなかつたならば、まだ本年ぐらいまでは確保できるという見通しを持つておつたのであります。しかるに朝鮮事変勃発後急激に需要がふえて参りまして、国内のストツクの前途が心細くなつて参りましたので、ただちにこれを確保いたすべく民間貿易業者を懲悪いたしまして、あらゆる方法をとり、また政府といたしましてもしばしば司令部にあつせんをお願いしたのでありますが、何分にもニツケルは世界的に稀少物資でありまして、現在でもカナダあるいはフランスにある二つの会社が独占しておるという状態に置かれておるのであります。昨年以来あらゆる方法をもつて政府と民間と協力して獲得の施策を進めたのでありますが、いずれも目的を達し得なかつたのでありまして、最後に司令部の厚意といいますか、こういう方法で三百数十トンが辛うじて輸入されるという状態になつて参つたのであります。かような関係上、将来とも一般の輸入は少くとも二、三年間は困難ではないか。しかもその間いよいよストツクが底を払いますれば、民需に非常な圧迫を加えるおそれがありますので、別途にニッケル製錬助成法というものを提案いたしまして、今御審議を願つておるのであります。こういう別個の方法によつて生産を確保いたして、そうして民需に圧迫を加えない方法をとりたいという考え方のもとに、現在進んでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/31
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032・田中織之進
○田中織之進君 私は貿易政策、特に輸入対策の問題につきましては、やはり現内閣の政策のウイークポイントがここにあると思う。しかも今政務次官は、今度のニツケルの問題につきましても、アメリカの厚意によるということでございますが、これは占領干にありますから、現在の段階においては政務次官のそういう表現は私やむを得ないと思いますけれども、私らが承知する限りにおきましては、輸入されるものも最初に私が申しましたように、結局ひもつきで出して行かなければならぬ、こういう関係になるのであります。しかも時価と、輸入価格に諸掛、諸経費を加えたものとの差額は、結局これを国民の血税で補填するという形になるのでありまして、これは占領下であるからやむを得ない事情としてわれわれも認めざるを得ないのでありますけれども、これはほんとうの立場から申しますならば、そこに何らかの日本の経済に対するフエーヴアーが与えられておるかどうかについては議論があろうかと思うのでありますが、私は討論のために参つたのではありませんから、その点はこの程度でとどめます。
そこで私お伺いしたいのでありますが、時価よりも安く売り払らうことができるということにしておるのでありますが、結局安く売らなければならぬことからこういう法律が出て参つたのでありますが、大体売渡し価格は、先ほどの今澄委員の質問に対する答弁で、当該物資の買入代金及び当該物資にかかる輸入諸掛、保管料、事務取扱費その他の諸掛の合計額を下らない額ということに相なつておるのでありますが、最近の輸入価格との関係からいたしまして、時価より大体どの程度下げればその間にどの程度の開きが出るか、具体的な問題になつておるニツケルについてひとつ例示を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/32
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033・首藤新八
○首藤政府委員 今回入つて参りますニツケルの原価は、大体四十万円前後と推算いたしておるのでありまして、それに運賃その他諸掛一切を加えましても五十万円内外ならば、販売できるのではないか、国家は一つも損なくして販売ができるであろうというふうに予想しておるのであります。現在の市価は非常にまちまちでありまして、いずれが正確な市価であるかということは把握いたしかねるのでありますが、大体三百万円ないし三百五十万円見当で売買されておるのではないかというふうに推測されておるのであります。
なお田中議員はただいま、安く売ることによつて国民の血税を犠牲にしておるというような御意見のように拝聴いたしましたが、先ほど申し上げましたごとく、国家はこれによつて一つも損をするわけではないのでありまして、一切の費用は販売価格に含まして、その上で販売価格を決定しようということにいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/33
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034・田中織之進
○田中織之進君 これは非常に強力なひもつきで入るものである関係から見まして、輸入される方でも相当むずかい條件があり、この特別会計によつて輸入し、また売り渡したものについては、品物の行方についての厳重な監視が行われるであろうと思うのでありますが、そとに国内の価格と売渡し価格との間に大きな開きがあるという点から見まして、結局これは従来ともすればありがちでございました、そういう方面ではなくして、高い時価の方に流れて行くという傾向が、現在の機構のもとにおいては阻止できないとと思うのであります。そこに私らが申し上げるように、国民の血税によつて買入れたものが、結局特定のものに対して——率直に申しますならば、不当な利得を与える、こういう結果になるのであります。現在すでに関係の業界等におきましては、この関係で入つて参りますところの三百数十トンのニツケルの問題を通じて、あるいはデマもございましようが、いろいろなうわさが飛んでおるという事実は、政府次官もよく御承知のことだと思うのであります。そこでお伺いしたいのでありますが、これは現在においては、国内においてほとんどストツクのないところの稀少物資でありますが、そういう点から一方——これはわれわれは多少見解が違うのでありますが、特需の原料として確保するという点から、ニツケルについては、配給価格につきましても、私はこの際統制を加えたらどうか、こういう点を考えるのでありますが、一方で国内の民需その他の関係の分野は、名目は野放しにしておいて、こういう面を強力に実質上の統制をして行かなければならないところの分野になるのでありますが、本来から見るならば、そういう内需関係と、そうした特殊需要との面を調整するために、こういうものにつきましては、私は当然強力なる統制を加えるべき段階に来ておるのではないかと思いますが、その点は通産省としてどういうようにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/34
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035・首藤新八
○首藤政府委員 御指摘の通り極端な寡少物資でありますこのニツケルを、野放しに販売いたしますれば当然その結果は好ましくない事態が起つて参るであろうことを恐れるのであります。従つてこの配給に対しましては、強度の統制と申しましてもさしつかえのない配給方法をもつて、適切な配給をいたしたい。その方法は軍の方で原単位によるところの使用量を受注者から申請させまして、そうして軍の方で適当と思つた場合、それに相当するところの切符を発行する、この切符を主管庁でありますところの通産省に提出させる、さらに通産省ではそれに再検討を加えまして、適切であるということを認めた場合、重ねて通産省からもそれに対して切符を発行する、そういう方法で配給いたしたい。なお違反行為に対しては、臨時物資需給調整法を適用いたしまして、いやしくもこれに違反した場合には、厳罰に処して参りたい、こういう構想を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/35
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036・田中織之進
○田中織之進君 そこであともう二点ばかりお伺いしたいと思いますが、これはほかの若干の物資についてもそうだと思うのでありますが、片一方の国内の分野は自由にしておいて、こういう特需面だけを押えようとするところに、やはり技術的な困難も出て来るのでありまして、私はこれはやはり現内閣は自由主義を標標する自由党の単独内閣でありますから、そういう点にこだわつておるのではないかと思いますけれども、この点は、たとえば今度のいわゆる日米経済協力関係におきましても、アメリカ側において——もちろんこれは日本なんかと違つて厖大な軍備を持つておる国でありますから、やはりその見地から見まして、発注機関の分局が日本の国内につくられるということになります関係から、朝鮮動乱以来の特需関係から、最近国内の民需関係は、ほとんど重要な原料がこの特需が面に振り向けられたために、非常に窮迫しておるという面があらゆる面に現われて来ておると思うのであります。朝鮮動乱が勃発した直後において、私は大蔵大臣にもこの点を警告を発したのでありますが、特需その他今後予想せられる新特需というようなものに対しまして、向うさんの方では発注機関の分局まで日本の国内につくろうとしておるような時期でありますから、政府といたしましては、統制経済の復活であるとか、あるいは自由経済の本質にもどるとかいうようなことではなくて、正しく、たとえば日米経済協力というものに対応して行くような見地から、やはり新特需あるいは特需関係の発注に対応する特需について、民需との関係で原料資材等の調整をはかり、さらに民貿関係、将来また、政務次官も言われましたように、東南アジア方面等に早急に伸ばして行きたいという御希望を持つておられますならば、そういう面との調整のために、ここにやはり日本の国内態勢といたしましても、政府機関の内部で私はいいと思うのでありますけれども、できれば民間関係の代表者も加えた方がいいと思うのでありますが、適当な新特需あるいは特需等の受注の調整機関を私はここに確立すべきではないかと考えるのでありますが、この点に対する通産者の御意見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/36
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037・首藤新八
○首藤政府委員 自由党は自由経済を原則的な政策にいたしておりますが、しかしながらそれにあくまでもこだわるものでは断じてありません。客観情勢の変化、それに対応するような政治をやつて行きたいということを目標といたしておるのであります。しかしながら現在の段階におきましては、統制をやる必要は、こうまつもない、むしろやることによつて生ずる弊害の方がはるかに多いという見解を持つております。しかしながら、将来日米経済協力の線で急速に需要がふえて参つた、そうしてそれによつて民需に非常な圧迫を加えるというような事態が起りましたならば、その際はあらためてその客観想勢を対象として別個に考慮することにはやぶさかではないのであります。同時にまたただいま御指摘の受注の調整機関でありますが、先ほど今澄君にお答え申し上げました通りに、アメリカ側で発注調整機関をつくり、さらに分室をこちらの政府に設けることになつておるそうでありますので、これに即応するように政府の中に受注の調整機関をつくりたいと、ただいま構想いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/37
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038・田中織之進
○田中織之進君 もう一点お伺いいたします。この法律に従つて、市価より低い代価で売り払わなければならない事情といたしましては、先ほど風早委員から今澄君の質問に関連して指摘せられましたところの、いわゆる入札価格と申しますか、これとの関連があるのではないかという点であります。この点につきましては、政務次官の御答弁を伺つておりますと、もちろん採算の合わないものは何も引受けなくていいのだ、こういうことをはつきり言われておるのでありますが、私まだ実は詳しくは研究いたしておらないのでありますけれども、先般のマーカツト声明、いわゆる日米経済協力に関するマーケット構想というものが発表せられておるのであります。その線から参りますと、政府としては採算のとれないものは、いわゆる特殊需要であろうと、できないものはできないじやないかということを、はつきりすればいいのだというふうに言えるかもしれませんけれども、問題は、あのマーカツト声明を見ましても、そういう形で特殊需要に日本の国内の生産業者が応じないということになりますならば、たとえば今日のニツケルのようないわゆる割当物資、こういう物資なりあるいは資金の面で制約が加わつて来るということが、あのマーカツト声明からわれわれは察知できるのでありますが、私は日米経済協力のほんとうの姿というものは、講和以後の関係として律しなければならないと思うのでありまして、現在講和前の、なお占領が継続されておる段階において、われわれ占領下にあるということの、ハンデイキヤツプが、あらゆる施策に伴つて参るということのやむを得ないことは、われわれは認めるにやぶさかではないのでありますけれども、そういう関係が強く出ておるのであります。そういう点から見ますならば、ここにやはり市価よりも低い代価で売り払わなければならない事情というものは、やはり特需のところから提供するところの価格というものに一つの制約が加わつて来る関係から、勢いそこにコマーシヤル・ベースにのみよつたところの選択の自由というようなものが、日本側に与えられないのではないか。しかし少くとも国内のニツケル等の時価と、そういう特殊需要に向けなければならない原料資材等の価格との間には、こうした方法によつて調整しなければならぬ必要が出て参るといたしまするならば、やはり国内における原料の価格そのものに引き直さなくてもいいといたしましても、特需の発注の価格というものについて、この際政府としては、ほんとうの意味において日本の経済を引上げて行く、日本の生産が、日本経済、再建に役立つというような面に一つのフエーバーの加わつたものにしてもらいたいというような面を、これは政府としては民間の生産業者にかわつて関係方面と折衝しなければならぬ責任もあると私は思うのでありますが、そういう点において今後努力せられる御意思があるかどうかということを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/38
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039・首藤新八
○首藤政府委員 田中議員の御意見通り、日本の経済をあくまでも自立しなければならぬ、日米経済協力によつて、多少でもマイナスになるようなことをやつてはいかぬということは、まつたく政府も同感でありまして、従いまして今回の、ニツケルを時価よりも著しく安い値で売りますることも、国家に損失を来さない範囲内において、なるべく原価を安くして特需の希望に応じたい。いわゆる特需に対しましては、誠意をもつて人事を盡す、要するに企業体のマイナスにならないように、国家経済のマイナスにならないように、少くとも若干ずつのプラスになるよろな範囲内において協力して行きたいというふうな、根本的構想を持つておるのであります。従つて今後とも、人為的にできまする原価を安くする方法につきましては、政府自体においても極力その面の指導に努めまするとともに、関係筋に対しましても、できる限り強力な折衝を続けて参りたいという強い希望を持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/39
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040・田中織之進
○田中織之進君 最後に、それではもう一点お伺いいたしまして、私の質問を終らせていただきます。
それはただいま政務次官もお答えになつておられますよりに、やはり日本の経済再建に寄与するという面が、積極的ににじみ出るような面に向いての努力を続けていただかなければならないのでありますが、先ほど政務次官の御答弁によりますと、民需及び貿易関係等のものは、これはそのままとして、それに特需関係で参りますものは、それだけ一つでも二つでもプラスになるような構想で政府が進めておる、こういうお話でございますが、ところがたとえば今度の緊要物資輸入基金特別会計に基いて入れます物資、今予定されておるようなものは、これはほとんど全部というか、完全に特需関係の資材としてでなければ私は輸入ができないものだというふうに理解するのであります。政務次官の先ほどのお話では、特需に余裕があれば民需方面にも向けられるようなふうに、原材料等の確保をこの特別会計の運用によつてやりたいということを申されておるのでありますが、今さしあたり問題になつておるようなものは、およそ民需とは関係のない、そういう方面に向けられないというような全然余裕のないものだというふうにわれわれには考えられるのであります。しかしこの点は、この特別会計法が本院を通過するにあたりまして、わが党といたしましても、これにはわれわれは、これが日本経済再建のために、どうしても打たなければならぬ一つの手だという意味合いにおいて賛成して来ておるのでありますが、これは国内の国民生活の安定、その他国内の産業再建に面接役立つところの面の物資も、この特別会計において輸入されることが当然予定されておりましたから、われわれはこれに賛意を表して参つたわけでありまするが、現実の運用の過税を見ますと、なかなかそういう面まで手がまわらないような態勢に進みつつあるように察知できるのでありますが、具体的に特別会計の運用にあたりましては、特需方面ではなくて、これは特需を通じて日本経済に寄与するという面は若干あるということはわれわれも否定するものではありませんけれども、もつと直接的な内需、あるいは本来の意味における貿易という面に必要な資材を、この特別会計において確保するというような努力というものは、今後積極的に続けて行かなければならないと私は思うのでありますが、こういう面において、いわゆる特需と民需との調整と申しますか、この特別会計の直接運用によるところの民需の確保、あるいは輸出の振興のために、この特別会計を運用して行くということについて、具体的に何かお考えになつておられるかどうか、この際伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/40
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041・首藤新八
○首藤政府委員 先ほど申し上げましたごとく、日本の現在の貿易は、民間貿易を原則といたしておるのでありましてあらゆるものが民貿で獲得できる態勢になつております。しかも昨年来朝鮮事変勃発後、この機会に日本経済を自立しなければならぬ、それがためにはできる限り民間の貿易業者を最高限に活用いたしまして、そうしてできる限り多量の物資を輸入することが前提であるというような考えのもとに、昨年の七—九においては五億、十—十二においては五億、ことしの一—三においては八億何ぼという厖大な輸入を実は確保いたしたのでありまして、昨年の一・四半期までには、わずかに一億ないし一億二千万ドル程度にすぎなかつたのでありまするが、朝鮮事変勃発後四倍、本年一—三には実に八倍の多額な輸入をやつたのであります。従つて今のところ、ほとんだあらゆるものが民間貿易で充足できておるのでありまして、ただ現状におきましては、ニツケル並びに合成ゴム、あるいはコツトン・リンター、これは今日までいろいろ努力いたしたのでありますが、民間貿易でどうしても入手が困難になりましたので、政府の貿易にしたということになつておるのであります。従つて今後も特需でなく、民需に必要であつて、民間の貿易業者で入手できないものに対しましては、政府はいち早く政府の手によつてこれを輸入いたし、この民間の需要に充てたいという強い希望を持ち、そういう商品がありましたならば、ただちにそういう対策を講じて参りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/41
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042・田中織之進
○田中織之進君 あとそれでは希望だけ申し上げておきますが、確かに去年の二・四半期、三・四半期、本年に入つての四・四半期というように、輸入の総額はふえて来ております。しかしこれは政務次官が申されるように、八倍にもなつた、金額ではまさにその通りになつておるかもしれませんけれども、この間における国際物価の値上りというものは、非常な顕著なものであるのでありまして、必ずしも量的な面において、それだけのものができておるかということについては、これは私問題だと思うのでありますが、要はまだ具体的なとりきめもできておらないという政務次官からの答弁で、今後ますます努力をしていただきたいと思うのでありますけれども、日米経済協力の関係において行われます今後の施策におきましても、私は特に留意していただきたいのは、現在占領下にありまするために、ある程度われわれが正常な場合に、講和ができて、対等な場合において期待できるような、いわゆるコマーシヤル・ベースによる採算的な立場というものを、百パーセントに貫くことは困難な事情はよくわかりますけれども、講和も間近かに迫り、実質上の講和ができておる段階とまで——これはわれわれの国内側で言つているだけではなくて、向うさんの方でもそういうように言つておる段階において行われる経済協力関係におきましては、もつと政府は積極的なやはりプラスを向うに要求して行くという態度をもつて臨んでいただきたいと思います。
それからもう一点、特にこういう民貿でたいていのものは確保できる、しかしどうしても民貿で確保できないものを政府はできるだけ早期に手を打つて確保するということでございまするので、その努力を積極的にやつていただきたいと思うのでありますが、あくまで全体の物資のバランスの上に立ちまして、一面抜けた点のないようこういう手を打つのでありますけれども、これがこういう状態に入るまでの間に政府の打つべき手が欠けておつたというようなことは、私が指摘した通りでありますが、そういうことのないように、特に貿易の伸張という点は、ただ単に国内にあるものを、国民には三度の飯を二度にしてでもとにかく輸出をして行くという、場合によれば、それも必要でありましようけれども、やはりそういうことではなくて、特に原料手当、輸入の面についての積極的な政府の努力を要請して私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/42
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043・小金義照
○小金委員長 これにて緊要物資の売払に関する法律案に対する御発言は全部終了いたしました。
引続いて本案を討論に付します。討論は通告の順にこれを許します。小川平二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/43
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044・小川平二
○小川(平)委員 ただいま議題となりました緊要物資の売払に関する法律案につき、自由党を代表して賛成の意を表するものであります。
過般のマーカット声明において、日本経済協力の方向が明瞭に示されまして、いわゆる特殊需要に対応して、協力の実を上げて行たくめの総合的な対策を急速に樹立することが喫緊の課題となつて参つておるのであります。日本経済協力が純然たる商業的基礎に立つて行われなければならないことが明瞭となりました以上、国際価格と国内価格を調整することが根本の問題であることは申すまでもないと思うのであります。緊要物資輸入基金特別会計によつて輸入をされまする物資は、あるいは国内生産が全然ない、あるいはまた世男的にも稀少なる物資でありまして通常の手段によつては人手が不可能であるか、あるいは著しく困難なもなのでありまして、その国内価格は著しく高騰いたしておるのであります。従いまして、これらの輸入物資の価格を国内価格から遮断をする措置を講じません限り、今後増大を予想される特殊需要に迅速に適合して行くことはとうてい困難と思われるのでありまして、かような際に本法律案を御提出になりましたことはまことに機宜にかなつた措置と申すべきであると思うのであります。これによつて国際収支の改善にも寄与し、日米経済協力が積極的に推進されることを希望いたすものであります。もとよりこの法律案に関連いたしまして、いろいろな問題がございます。この法律を含むところの特需受入れ態勢の進展に伴いまして、国民、経済の均衡が破壊されるような事態が来るのではないか、あるいは民需が影響をこうむるのではないか、あるいはまたさしあたつて、本法の適用の対象になつておりますニッケルのごときは、輸入価格と国内価格との間に非常な開きがある、かような際に横流れを有効に防止して、本法の実効をあげることができるだろうか、かような問題はいずれもきわめて自然に浮んで来る疑問であると思うのであります。これらの問題に対しましては、本委員会において表明されました政府の見通し並びに所信を了承いたし、かつ十分に信頼をいたしまして、本法律案に賛成をいたすものであります。
以上をもつて討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/44
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045・小金義照
○小金委員長 高橋清治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/45
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046・高橋清治郎
○高橋(清)委員 ただいま議題と相なりました緊要物資の売払に関する法律案につきまして、私は国民民主党を代表して一、二の希望を述べて賛成の意を表するものであります。
去る五月十七日の総司令部科学局長マーカット少将の日米経済協力態勢推進強化に関する声明は、かねてのダレス吉田会談により話合いのありましたものを、さらに具体的にその所信を表明されたものとしてわれわれは受取つたのであります。今回本法律案がその第一歩を踏み出した、いわば現実に特需発注の調達価格をいかようにするかということの先鞭をつけたものでありまして、今回予定せられておる品目といたしましては、さしあたりニツケルが想定せられておるわけであります。また追加指定品目もごく限られた稀少性物資、入手困難の資材等を掲上いたしておられるようであります。もとより以上のごとき制約ある品目でありまする関係上、無制限に拡大するということは考えられないし、また調達価格の採算上、その必要がないわけではありまするが、わが国国際貿易の収支の点から申しましても、また大にしては今後経済協力態勢による国家利益が狭められて行かないようにするためにも、あとうればわが国産業活動への寄与を百パーセントにするよう努力いたしてもらわなければなりません。法案それ自体につきましては、法一章でありまして、その真相を把握するによしなき状態でありまするだけに、今後の運用に十分良識をもつて当られるよう願います。ことに当委員会の審議にあたりまして、各委員からいろいろな具体的な危惧の点、あるいはこれに対する質疑等がありましたが、これらのことを十分参酌いたされまして、政府並びに行政当局におきましては、この施行に完璧を期してやつていただきたいと思うのであります。
以上の希望を申し述べまして、私の賛成討論を終りといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/46
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047・小金義照
○小金委員長 次は今澄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/47
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048・今澄勇
○今澄委員 ただいま議題になりました緊要物資の売払に関する法律案につきまして、私は日本社会党を代表いたし、嚴重なる警告を付して賛意を表します。
本法案は先般大蔵委員会に付託され施行されている緊要物資輸入基金特別会計法の具体化でありますが、文字通り法一章でございまして、今ここにその内容に立至つて十分これを批判する材料が提供せられておらないことは遺憾でございます。ニツケルその他今後いかような品目がこういう変則的な受注方式の俎上に上せられて行くのかは想像の域を出ないのでございますが、指定品目は行政長官の一存で先方に対しまして、確定の返事を与え得るというのは、ちと問題が大き過ぎるように考えられるのであつて、あとうればこれを、行政長官の一存によらずして、大きく強力なる機関によつてこれが決定でき得るようにすることが妥当と存ずるのでございます。ことに業界や関係者の立場もいろいろあると思いまするし、かくのごとき割の合わない利潤の薄い加工方式というものは、策を得たるものでないことは申すまでもございません。いわゆるなきにまさるとはこのことでございまして、私はここで少くとも以下三点について注文を述べておきます。
まず第一点は、わが国の内需に対して大きく圧迫をいたさない。すなわちわが国の自立経済計画に影響を与えざるように本律案が運用せらるべきこと。かかる受注方式のための材料に対する厚遇の範囲は、できるだけその範囲を局限して、これをあまり大きく範囲を伸ばすべきでない。第三点といたしましては、現下のわが国特需の実情に見られるがごとく、第八軍の発注はいわゆるオープン・ビッドによる買いたたきの傾向があります。これらの傾向を排して、この際自主的な方法に改めてもらうよう、特に最近の業界の不振に対してつけ込んだような態度が貿易の面のみならず、あらゆる面に見られることは、わが国の自立経済計画に大きく影響を及ぼすことを政府は十分留意すること。以上三点の警告を付して、私は本案に賛意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/48
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049・小金義照
○小金委員長 次は風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/49
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050・風早八十二
○風早委員 私は日本共産党を代表して、ただいま議題になりました緊要物資の売払に関する法律案に対して、絶対に反対の意思を表明するものであります。この法案は日米経済協力の最も露骨な、最初の具体的な適用でありまして、日本の平和産業と労働者を犠牲にして、アメリカの軍備拡張に直接具体的なサービスをしようとするものであります。日米経済協力につきましては、本法案の提案理由、政府の答弁、並びにただいま行われました自由党の賛成討論、いずれにおきましても公然とこれをうたつておるのであります。何かいいことをするかのごとき印象さえ与えようとしておるのであります。しかしながら、日米経済協力とは一体何者あるか。アメリカの軍拡の一環として、しかも下請的な一環として、日本の産業を軍事的に再編成する。一たび日本の産業を軍事的に再編成し、もちろんその反面におきまして平和産業を犠牲にし、崩壊せしめるのでありますが、そうなれば、結局軍需産業となればこれはアメリカの特需というものは、今までの質疑応答によつてもすでに明らかなことくに、きわめて短期間である。してみれば、どうしてもそこから出て来るのは、日本自身が再軍備をしなければならない。それでなければその価値は実現しないのであります。しかしながらいかに再軍備をしましても、それは結局日本自身がそれを使わなければ、またその市場は得られないということになりまして、これは再び日本を侵略にかり立てるものである。この大きな根本的な性格を持つておるのが日米経済協力であります。従つて今度の稀少品目であるニッケルにつきまして、その売払いのための助成法案というようなものにつきましても、やはりこれはアメリカの稀少品目でありますから、アメリカとしては今日の大軍拡のために、ニッケルの製品については非常にこれを必要としておる。またニツケルの生産そのものについても必要としておる。この両面から、実はこの法案と、午後に出ることになつておるところのニッケル製錬事業助成臨時措置法案とはまつたく不可分の関係におきまして、両々相まつてこのアメリカの大軍拡に日本がサービスするということになるのであります。しかしながら、そのサービスの結果、日本の国民経済なり、また労働階級なりにどういう影響を与えるかということを考えてみますると、先ほど調弁価格、あるいは特需と民需の関係につきましてたびたび質疑応答が重ねられまして、これに対する政府の答弁を見ましても、これは調弁価格は競争入札であるということになります。競争入札となれば、どうしてもアメリカにとつて最も有利なところに入札せざるを得ないわけであります。しかもこれがもしも不利な條件で引受けなければならないという場合に、それは引受けなくてもよろしいというような御答弁もあつたのでありますけれども、これはわれわれが質疑の際に申し述べたと同様でありまして、まつたくそういうことは実情に反しておる。どうしてもその結果は、企業の合理化もしくは労働圧迫に向わざるを得ない。しかも企業の合理化ということは事実やらない。それはすでに石川一郎氏もたびたびこの点については警告しておる。今うつかり設備の拡充ということはやれない。つまり特需の期間というものはきわめて短期間であるということを見通しておるのでありますから、その面からこれはとうてい行わるべくして行われない。従つてその結果はどうしても労働の圧迫にならざるを得ない。つまり賃金コストを切下げ、あるいはまた労働を強化する。でありますから、先ほど首藤政務次官が答えられた中で、労働者の雇用がこれでふえるというようなお話がありました。確かに一時的にそういう現象はあるにしましても、全体としましてこの労働強化と賃金コストの切下げということは、争うことのできない必然の結果であると考えるのであります。また特需と民需につきましても、それは何といつても、こういうやり方による特需輸入、ニツケル輸入というものは、結局はこの法案による売払いによりまして、一部の特需生産には不利にはならないかもしれませんが、その反面において、もはやニッケルあるいはニッケル原料というものは、一般の民需用に入つて来ない。こういうことを考えますと、特需と民需との関係において、特需が民需を圧迫するということはきわめて明瞭であると考えるのであります。こういう次第で、この米国軍拡に奉仕して本法案を通すということによりまして、日本の国民経済、平和産業、そうして労働階級に対して重大な圧迫を与えるものである。そうしてきわめて一部の特需産業だけに莫大なる利益を得せしめるものである。こういう階級的かつ売国的な法案に対して、わが日本共産党は絶対に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/50
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051・小金義照
○小金委員長 以上をもつて討論は終局たいしました。
引続いて採決いたします。緊要物資の売払に関する法律案に御賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/51
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052・小金義照
○小金委員長 起立多数、よつて本案は原案の通り可決いたしました。
この際委員会報告書作成の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/52
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053・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。そのように御一任願つたものと決します。
この程度にて休憩いたしまして、午後は一時半より再開いたします。
午後零時三十九分休憩
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午後一時四十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/53
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054・小金義照
○小金委員長 休憩前に引続いて、ただいまから会議を再開いたします。
ニッケル製錬事業助成臨時措置法案を議題といたします。本案につきましては去る二十四日質疑を終了し、さらに同二十六日補充質問も全部終了いたしておりますので、ただちに討論に入ります。討論は通告の順に従つてこれを許します。中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/54
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055・中村幸八
○中村(幸)委員 私は自由党を代表して、本法案に賛成の意を表するものであります。
ニツケルは特殊鋼などの材料として重要なる軍需資材であると同時に、ニツケルメッキその他の材料であります関係上、民需物資としてもまた大切な役割を占めるものでありまするが、わが国にはその資源として見るべきものがほとんどなく、おおむね外国からの輸入にまつほかはないのであります。しかるに最折の世界的軍拡競争によりまして、米国その他の各国が厳重に輸出統制を実施しておる結果、昨年下半期この方民需その他の面におきまして、著しい需給の不均衡と、これに基く市価の暴騰を生じております。幸いにしてわが国は戦時中、外国鉱石を製錬した技術と経験を持つておりまして、当時の設備もなお残存しておるのでありまするが、資源がなく、立地條件を具備しておらないのでありまして、従いまして将来国際情勢の推移いかんによりましそは、ただちに壊滅することが必至でありまするために、いかなる企業家も進んでこれに手をつけようといたす者がないという実情であります。かような実情にかんがみまするとき、この際政府がニッケル製錬事業応対する特別積立金などの臨時特別助成の措置を講じまして、緊急にニツケルの増産をはかり、もつて国民経済の発展に寄与せしめんといたしますることは、まことに当を得た次第であるといわなければなりません。しかしながら、本法案は、結果におきましては、特定の一業者あるいは数社のために、国民全体の犠牲において甚大な補償金を交付する場合もあり得ること、まだそれらの特定業者が将来わが国のニッケル鉱業を独占し得る基礎を、政府の補助によつて確立することとなるおそれなきにしもあらざること、こういう見地から考えまして、製錬業者の指定、あるいは販売価格の決定、製品の処分、補償金額の決定などに関しましては、いやしくも国民の疑惑を招くがごときことの絶対にないように、周利な注意が払われなければならないのでありまして、これらの重要事項の決定に関しましては、審査会のごとき諮問機関の設置が望ましいのであります。またニッケルの用途から申しまして、フエロニツケルがその大半を占めておる点にかんがみまして、輸入鉱石から直接フエロニツケルを製造する事業に対しましても、ニッケル製錬事業と同様に助成措置を講ずべきであると考えるのであります。
私はこれらに対する強い希望を付しまして、本法案に対し賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/55
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056・小金義照
○小金委員長 次は高橋清治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/56
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057・高橋清治郎
○高橋(清)委員 私は国民民主党を代表して、ただいま議題となりましたニッケル製錬事業助成臨時措置法案に対し、強い附帯決議を付して賛成するものであります。
申すまでもなく、ニッケルは近代産業に不可欠な重要基礎物資でありますが、わが国国内ニッケル資源はきわめて乏しく、その大部分を海外に仰がねばならぬ現状であります。加うるに朝鮮動乱以後、ニッケルは重要軍需物資として、各国とも嚴重に輸出を制限したため、その輸入きわめて困難となり、ために国内市価は天井知らずの高値を呼んでおるのが現状であります。かかる際、国の助成及び補償により、国内最低需要量を確保せんとする目的を持つ本法案は、その趣旨においては、まさに時宜を得たものと認めることができます。しかし、しさいに内容を検討いたしまするとき、ニッケル確保の方法にいささか不満な点がありますが、それらの点につきましては、政府側において運用の際に十分留意する旨の答弁がありましたので、これを了承いたし、これが実施に対しましては、嚴重に監視するつもりでおります。よつて討論の終りに際し、次の二点に対し強い附帯決議を付するものであります。
すなわち特別積立金が、積立基準額を越えたもの、積立金の処置、販売価格等は、すみやかに行政府に審議会を設置して措置すること、
二、フエロニツケルについても、金属ニツケルと同様優遇措置を講ずること、以上であります。
右附帯決議を付しまして、私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/57
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058・小金義照
○小金委員長 加藤鐐造君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/58
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059・加藤鐐造
○加藤(鐐)委員 私はただいま議題となりましたニツケル製錬事業助成臨時措置法につきまして、日本社会党を代表しまして賛成するものであります。しかして嚴重なる附帶決議をつけて、政府にその実行を要求いたすものであります。
ニッケルが重要産業中においてもきわめて重要な基礎物資でありますことは、いまさら申し上げるまですないのでありますが、昨年下半期の著しい供給の逼迫によりまして、ニツケルの価格は天井知らずの高騰を呼んでおるのであります。しかもニッケルはそのほとんどを輸入に仰いでおる現状でありまして、朝鮮事変以来、世界的軍拡によつて、各国はニッケルの輸出の制限を強化して、輸入はきわめて困難となつたのでありますが、さりとて一方、わが国において輸入鉱石による国内製錬を実施しましても、カナダなどと比較するときには、量におきましても、また価格におきましても、格段の相違がありまして、一たび情勢の変化により低廉なるニツケルが入るときは、国内製錬業者がいかに努力しても太刀打ちができぬのが現状であります。こういう実情でありますので、私はこれらの点を考慮して、ニッケルの最低需要量確保の目的を持つ本案に賛成をいたすのでございます。しかしながら、この法案の目的とするところには賛成いたしまするが、本案の内容として盛られておりまする確保の方法につきましては、いろいろと危惧の念を禁じ得ないのであります。
まず第一に、指定業者の指定の方法の問題であります。先日来いろいろの角度から政府の意見を聞いて参つたのでございまするが、政府の意向といたましては、別子鉱業にのみ大体やらせるという意向が、すでに本案立法の計画の当初からあるようでございます。もちろん私は、現在事業者の持つておりまする技術あるいは設備の能力というような点も十分考慮に入れて業者の指定が行われることと思いまするけれども、しかし単に一、二の業者にのみこれを指定して、指定独占企業の形でやらせることによつて、従来多少ともこの事業をやつており、また技術を持つており、それに努力をいたして参りました事業者をつぶしてしまうというような結果になりましたならば、私はこれは単にその事業者の不幸のみではなくして、日本の産業の上においても、非常な損失であると考えるのであります。従つて私は業者の指定の場合には、やはり業者の育成、技術の温存というような点も考慮して、指定しなければならない問題であると思うのであります。
それから第二には、販売価格及び生産価格の決定の方法でございますが、これにつきましても、非常に危険が伴うから、できるだけ現状の価格に近いものにして、そうして設備の償却も早く行わせるというような、業者に対する親切が考えられておりますけれども、しかし現在の日本のニツケルの価格というものは、これは物が逼迫しておりますために、国際価格に比較いたしまして、非常に高いものになつておるのである。従つてでき得ることならば、それをできるだけ低い価格において国内に供給するということが、私は必要ではないかと考えるのであります。もとより業者の危険をできるだけ少くしてやる、あるいはまた政府の補償も少くするという点も、考慮しなければなりませんけれども、しかしながら日米経済協力の実行に伴いまして、おそらくニツケル鉱石は引続き入つて来るであろうという見通しのもとにおきまして、これは危険の防止という点のみではなくして、できるだけ安い価格において供給するという点も十分考慮しなければならないと思うのであります。
それから第三には、特別積立金の問題でございますが、この特別積立金は、法律の上では大体四箇年くらいかかつて積み立てるというような構想のもとに規定されておりますけれども、実際には半年くらいで、この積立てが終了できるという答弁を聞きまして、私はこの特別積立金の問題につきましても、いろいろと考慮が払われなければならないと思うのであります。特に特別積立金をオーバーしたあとの積立金の処置、それから補償金の査定の方法というような点についても、いろいろ考慮が払われなければならないと思うのであります。
それから第五には、フエロニツケルに対する助成の措置等につきましても、政府としては現在何ら考慮されておらないようでございますけれども、しかしこれについてもやはりいろいろと考慮されなければならない問題であると思うのであります。こういうような点について、政府側において十分誠意をもつて善処してもらわなければならないと思うのであります。その点につきましては、過日の私の質問に対しまして、大臣から大体私の希望がいれられたような御答弁もございました。それで私は修正案を出す予定でありましたけれども、時間的な関係もありまして、そうした大臣初め政府の答弁を一応信頼いたしまして、次の附帯條件を付して賛成することといたしたのでございます。
附帯條件の第一は、製錬業者の指定及び指定取消しの決定、第二は金属ニツケル販売価格の決定、第三は特別積立金が積立て基準額をオーバーしたあとの処置、第四は生産者価格の決定、第五は補償金決定、第六はその他フエロニツケルの優遇措置等について、この六つの條件を政府が、今私が申しましたような誤りなき方法において処理するために政府の独断に陥ることなく、最も適切なる処置が行われるために、ニツケル製錬事業審議会とでもいうべきものを設置して、これを通産大臣の諮問機関とする、またはいろいろニツケル製錬事業の振興等の問題について建議することができるというような機関を設ける、これを私の附帯決議といたしたいと思うのであります。
さらにこの審議会のメンバーといたしましては、器に官庁側のみではなくして、利害関係者も入れ、あるいは利害関係者以外の民間の学識経験者を加えて構成されんことを要求するものであります。しかもその人選にあたつては、最も公正なる人事を充てられたい。いわゆる統制の拡張というようなことを考慮するのではなくして、真にニツケル製錬事業の振興のために、公正なる人事をもつて充てられたい。これを私は強い附帯決議といたしまして、本案に対する賛成の討論を終る次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/59
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060・小金義照
○小金委員長 次は風早八十二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/60
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061・風早八十二
○風早委員 私は日本共産党を代表して、本法案に絶対に反対の意見を表明するものであります。
先刻通りました緊急物資の売払いに関する法案と、このニツケル助成法案とは、切つても切れない関係なのでありまして、両々相まつて、これは今日政府が最も推進しようとしておられるところの日米経済協力の重要な一環であります。このことを忘れて、ただニツケル生産を助成するのだということだけを切り離して考えたのでは、まつたくその本体を誤ります。また結局この法案を通じて起つて来る結果に対する大きな誤算を生ずるのであります。日米経済協力と申しますと、たいへん言葉は美しいのです。また他面におきまして、日米経済協力で何か日本に利益があるのだ、こういう幻想が非常に振りまかれております。しかし実際は日米経済協力が何ものであるか。これはさきの法案についても私が申し上げました通り、これは結局アメリカが今考えておる大軍備拡張、それの一環に日本を織り込んで行こうという以外の何ものでもないということであります。その結集が日本を望むと望まざるとにかかわらず日本自身の両軍備にも導き、また再侵略という方向へかり立てるものである。このことだけは、今日すでに朗らかに証明せられ、また証明せられつつある事実であると思うのであります。こういう日米経済協力に、頭から政府はもうそれに驀進するというところに、こういう法案がやはり出て来るのであります。
さてこの法案の実際内容に入りますと、これは法案の帳面ずらの問題だけではなくして、その実体に立ち入りますと、結局ニツケル製錬事業助成臨時措置法と申しましても、そのねらうところは、日本の国内ニツケル需要を満たすために、ただただ別子の新居浜工場、これにいろいろな助成をし、また政府が補償する。従つて政府が補償するということは、国民の税金負担に多かれ少かれなるわけでありますが、そういう形で助成をして、そしてそこにほとんど日本の国内需要を全部的に満たすだけの生産をやらせる、この一社に引受けさせるということが、具体的にはこの法案のねらいであることは、すでに明らかであります。実際今日本の需要というものが、年間千五百トンを出ない。ところがこの生産計画によりますと、別子の新炭浜だけでもすでに千二百トンというものを予定しておる。それも一年以内にはどうでもこうでも完成しなければならぬと言われておる。そういうことを見まするならば、これはこの助成ということが、結局は住友系であるところの別子鉱業の新居浜工場、これ一社に非常に重大な利害関係があるということを、われわれは見逃すわけには行かないのであります。しかも問題は、ただその会社をいろいろな助成によつて、こやすというだけではない。その結果は、結局このニツケル生産そのものが、そつくりそのままやはりアメリカの軍拡の一環に持つて行かれるということである。これは政府がしばしば繰返して、これは民需用だ、これは国内の需用を満たすためのものだと言われますが、そんな甘いことで、どうしてこれがやつて行けるか。つまりもともとこのニツケルはアメリカの稀少品目である。アメリカはもう大わらわになつて、今軍拡をやつて、新しい戦争を準備しておる。その場合において、自分の国にこれは比較的まだ足りない物資であるからというので、日本にもつくらせる。またそのニツケルを使う軍需品をやはり日本につくらした方が、もつと安上りであるという場合においては、日本にそれをつくらせる。こういう二点におきまして、ちようどけさほど通りましたあの緊要物資の売払法というものが、結局はアメリカが自分の有利につくりたいという軍需品をつくるためのその特需として、その必要として、アメリカからニツケルを入れて来る。また日本自身でニツケルを新居浜に生産させる。これはまつたくたての両面でありまして、両々まつて結局アメリカの必要とするニツケルを今日本に要求して来ておるわけであります。でありますから、いかに政府がかりに日本の国内の平和的な需要を含めた民需にこれを使うということを予定しておつたとしても——そういうことは私は万々政府としてはほんとうは予定していないと思いますが、予定しておつたとしても、そういうことは事実上通用しないのであります。
〔委員長退席、中村委員長代理着席〕
アメリカはどこまでも軍拡をやるためにやろう、それに協力するというからには、せつかく新居浜がこれで生産が順調に行くようになつたとたんに、その生産物ニツケルはすべてアメリカが買上げるということにならないということは、絶対に保障できない。そういうことを考えた場合には、これはまことにけさほど通りました法案と相まつて、日米経済協力の具体的な現われであるといわざるを得ない。またその意味において、われわれは絶対に反対せざるを得ないのであります。
さらにとの点について社会党の代表として、先ほど審議会をつくつて実際の運営を民主的にやらしたらいい、こういう御意見も出ております。確かにけつこうな御意見であると私どもも考えます。しかし現在そんな審議会を設けて、これを比較的民主的なものにして行くということで、その運営で何とか問題は解決するというような、なまやさしい段階ではない。かりに審議会を幾つつくりましても、実際その根幹は、すでにマーケツト少将が言つている通り、いやでもおうでもとにかく日本をアメリカの一環に入れて行くわけです。その場合に調弁価格でも特需価格でも、これはもうアメリカの市価のさらに一割を下まわるまのでなければ日本に請負わせない。これは至上命令的に出て来ておる。そういう際に、こういう審議会のようなもので、いくらか民主的に運営しようといつたつて、この根本に向つてわれわれが立ち向うことなくしては、どうして問題が解決できるか。この意味におきまして、ただ審議会を設けるということだけで、この減案を通そうとされる態度には、われわれははなはだ承服しがたいのであります。
いずれまた本会議にわれわれが詳細にこの論旨を展開したいと思いますから、以上の簡単な理由によりまして、本法案に対してわれわれ日本共産党は絶対に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/61
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062・中村幸八
○中村委員長代理 以上で討論は終局いたしました。
引続いて採決いたします。ニツケル製錬事業助成臨時措置法案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/62
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063・中村幸八
○中村委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
この際委員会報告書作成の件について、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/63
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064・中村幸八
○中村委員長代理 それでは御一任いただいたものと決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/64
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065・高木吉之助
○高木(吉)委員 私はこの際本委員会の決議について動議を提出いたします。すなわちただいま可決せられましたニツケル製錬事業助成臨時措置法案の運用に関する審査会の設置、並びにこの法案と一体不可分の関係にあるフエロニツケル製造事業の助成について、次の決議を本委員会として決定し、これを内閣総理大臣、大蔵、通商産業両大臣、及び経済安定本部長官に送付せられんことを望みます。
審査会設置並びにフエロニツケル製造事業の助成に関する件
一、フエロニツケル製造事業を助成するため、原鉱石買付に要する外貨資金の割当、法人税の免除等に関し、ニツケル製錬事業に対すると同様の特別措置を講ずること。
二、指定業者の選定、指定業者の販売価格並に補償金額の決定その他本法運用上の重要事項を諮問するため、審査会を設置すること。
右決議する
以上が案文でありますが、その趣旨については同僚議員の討論演説の中に盡されておりますから、これを省略いたします。何とぞ御賛同をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/65
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066・中村幸八
○中村委員長代理 ただいま高木君より、フエロニツケルに関する特別措置、及び本法運用上の重要事項諮問のための審査会設置についての御提案がございましたが、この提案の通り委員会としての意思を決定いたしまして、関係政府当局、すなわち内閣総理大臣、大蔵大臣、通商産業大臣及び経済安定本部長官に対して、それぞれその要旨を伝えまして、本問題に関する行政措置に万全を期するということにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/66
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067・中村幸八
○中村委員長代理 それではそのように決定いたします。
この際お諮りいたしますが、関係当局への送付方、その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/67
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068・中村幸八
○中村委員長代理 それでは御一任願つたものと決しました。
次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこの程度で散会いたします。
午後二時十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004793X03619510529/68
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