1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月十七日(土曜日)
午前十一時十三分開議
出席委員
委員長代理 理事 青木 正君
理事 江花 靜君 理事 坂田 英一君
井上 知治君 大内 一郎君
田中 萬逸君 平澤 長吉君
橋本 龍伍君 本多 市郎君
松本 善壽君 山口六郎次君
椎熊 三郎君 松岡 駒吉君
加藤 充君
出席政府委員
総理府事務官
(宮内庁長官官
房皇室経済主
管) 近藤 直人君
委員外の出席者
專 門 員 亀赴川 浩君
專 門 員 小關 紹夫君
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二月十七日
委員千葉三郎君及び河田賢治君辞任につき、そ
の補欠として椎熊三郎君及び加藤充君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内
閣提出第六号)
日本国憲法第八條の規定による議決案(内閣提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/0
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001・青木正
○青木(正)委員長代理 これより会議を開きます。
委員長が所用のため、理事の私が委員長の職務を行います。本日の議題は、皇室経済法施行法の一部を改正する法律案及び日本国憲法第八條の規定による議決案であります。両案を一括して質疑に入ります。御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/1
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002・加藤充
○加藤(充)委員 簡單に一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、昨年度におきましてのいわゆるお手元金、あるいはただいま問題になつておりまする憲法第八條の規定に基く、あるいは皇室経済法施行法による金の使途内容ですが、見舞金、奨励金というようなことがあるようです。どちらに幾らほどお出しになつたのか、その点を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/2
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003・近藤直人
○近藤(直)政府委員 お答えいたします。皇室経済法施行法第五條によりますと、天皇及び内廷の皇族が賜與し得る金額の限度が規定されておりまして、これは年間百二十万円ということに相なつております。それからこれとは別に、これに加えまして毎年国会で御承認をいただいておりますお見舞並びに奨励の金額は、昭和二十五年度におきましては二百五十万円と相なつております。そのお見舞先、奨励先並びに賜與先につきまして申し上げます。昭和二十五年度におきましては、奨励金は、おもに社会事業団体に賜わつております。これは厚生大臣、法務総裁を通じまして、それぞれの社会事業団体に御奨励のおぼしめしをもつて賜わつておるのでございます。その他日本赤十字社、あるいは中央共同募金委員会等が、その主要なものでございます。それからお見舞関係、これは二十五年度におきましては、熱海市の火災に対しまして、お見舞といたしまして、静岡県知事を通じまして金三万円。その他各地の火災にそれぞれ賜わつております。またジエーン颱風の被害に対するお見舞といたしまして、大阪府知事を通じまして十五万円。その他被害各県の災害のお見舞にそれぞれ賜わつております。お見舞関係は、主としてかような方面に賜わつておるのでございます。それから、そのほかに賜與の関係がございます。これはいわゆる祭祀料といたしまして、国に功労のあつた方とか、あるいは学識者の死亡に際しまして、祭祀料といたしまして賜わる分、それから皇族御縁故の寺院に賜わる賜金、その他皇室に御縁故のありました元宮内官の遺族というような方面に賜わるものが賜金でございます。その金額を申し上げますと、昭和二十三年度におきましては、お見舞、奨励の賜金といたしまして、国会で御承認を得ました金額は百八十万円でございますが、そのうち奨励、お見舞のために百二十七万円の支出になつております。それから昭和二十四年度は、国会が御承認いただきましたのは二百五十万円でございますが、支出した金額は百二十七万円でございます。それから昭和二十五年度、本年度は二月まででございますが、やはり国会の御承認を経ました金額は二百五十万円でありまして、一月までに百九十万円支出されております。それから例の皇室経済法施行法第五條の規定によります百二十万円の分でございますが、これは年々約百万円弱の支出が行われております。以上概略てございますが御説明申し上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/3
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004・加藤充
○加藤(充)委員 割合に詳細なお話があつたのですが、なお私どもはいま少し具体的にお聞きしたいのであります。下世話な話を申し上げるのですが、こういう問題だから下世話な話も意味があろうと思うのです。何か一人頭になりますと、五円足らずの受取りになるけれども、実際いうとそれに基いてべらぼうな支出面がふえて来る、ありがた迷惑な話だというような、これは不届きな国民の一部の意見かもしれませんけれども、そういう意見をよく聞くのであります。金銭ばかりでなしに、そういうふうなものを直接お出しに出て来られるとか、あるいはまたそういうふうなものが伝達されるという場合になりますと、その方面の実際上の、一般的に言えば緊張あるいはそのための肉体的な、同時に物質と関連がありますが、そういうものとがいたいたしく響くほどのことになつているのであつて、どうもありがた迷惑だというような青本巷間で聞くことが多いのであります。私どもはそういうような関係から、いま少し総額とかなんとかでなしに、具体的に個別的に承りたいと思うのでありまするが、きようはもしそういうことが不似合いであり、あるいはまた今その御答弁の準備がないと言われるのならば、適当にまとめてひとつお知らせを願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/4
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005・近藤直人
○近藤(直)政府委員 お答え申し上げます。ただいまのお話でございますが、実は宮内庁当局といたしましても、お話のようなことはときどき伺つておるのでございます。また実際に賜與の金を賜わる場合、あるいはお見舞、奨励の金を賜わる場合、個々の一人一人に対しまして賜わるという場合もございますが、概して一定の基準によりまして、定額を一人々々ではなしに、全体として賜わるというのでございますので、従いましてこれを一人一人の頭割にいたしますと、お話のようなはなはだ不十分なことに相なるかとも思います。しかしながら、これはただいまのところでは、金額をふやすということも問題でございますので、一応従来の例によりまして賜わつておるのでございます。なお詳細な御質問でございますれば、後ほど資料を準備いたしましてお話申し上げてもよろしいかとも存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/5
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006・加藤充
○加藤(充)委員 それではぜひそういうふうにお願いいたしたいと思うのですが、先ほどのお話のように、ほんとうに分割してしまえば何もならないようなものを、ありがたく頂戴をしたというようなことになつておつて、天皇様までそういうことをなさつたのだから、あとはそれに右へならえして、分に応じて出すべきだというような、寄付その他の負担が、いろいろな団体から強制的に、といつても心理的な独制を加えられ、それになびかなければならぬような状態になつて参つて、非常に困つておる。お断りはできないというような形の嘆きを、われわれは町の下つぱの下層の連中から聞くのであります。たとえてみますならば、これは私ども議員が経験したことなのですが、福井の震災のときに、国会から調査に行かれた。ジエーン颱風その他のことで大阪にも国会からわざわざ調査に派遣されたのでありますが、福井のときには多分十万円か何か国会から特別のお見舞として持つて行かれたのだが、大阪の場合は、わざわざ行つたけれども、そういうふうな国会のお手元金の捻出がなかつた。委員長その他の者が、談笑の間でしたけれども、大阪へも持つて行きたかつたというような話もしておりました。こういうふうな間遠は、国会から出したというのと、天皇からお出しになつたというような場合になりますと、いろいろなことで大阪の府民などの感じが違うのでありまして、いい感じもあるじやないかと御指摘になれば、あるいはそういう面もあるかもしれませんが、結局われわれは先ほど申し上げましたように、天皇が出したのだから、あの罹災者にどうしろこうしろというような、日赤その他の寄付行為がそのあと先に必ず出て来る。そういうふうなことで、何か国会が出したよりも、天皇が出した見舞金十万円では、同じ金額を出してもずいぶん違う。むしろそれが大きな負担となつておること、これを締めつけて上からかぶせて行きます場合は、それでも大きな政治的な、あるいはそれを出すという意図は、それなりに達せられるのかもしれませんけれども、それが心服するところまで、実は最近のとうとうたる多数の者の生活の行き詰まりから、そこまで行く値打が発揮されないのでありまするから、また同時にそういうふうな意図をもつて使われるということになるならば、それはむしろ身分的特権を持つた者でなしに、国会その他適当な機関で、国家の予算として計上して、そうして堂々と政府から出すということの方が、はるかに民主的な救血、見舞あるいは奨励ということが徹底して行われるのではないかと思うのであります。今一例として、大阪のジエーン颱風の見舞の問題が御答弁にありましたので、私どもが経験いたしました経験を申し述べまして、むしろ私どもは国会で——これも国会で予算を組むのですが、身分特権ということでなしに、政府が出すべき金は当然出して行くという方向に行くべきじやないかというような気持もするのであります。そういうような面からも、先ほどお約束くださいました具体的な詳細の資料を実は私ども手に入れまして、そしてなお私ども責任のある民主的な意見を申したいと思うのでありますが、きようはその運びになりませんから、私はこの程度で質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/6
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007・青木正
○青木(正)委員長代理 ほかに御質問はございませんか。——なければ両案を一括してこれより討論に入ります。松本善壽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/7
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008・松本善壽
○松本(善)委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする日本国憲法第八條の規定による議決案と皇室経済法施行法の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の意を表せんとするものであります。
まず日本国憲法第八條の規定による議決案につきましては、先ほど共産党の諸君の質問もあつたようでありますが、私はむしろ百二十万円に相なつておりまするこの金額に対しては、この事例から見ましても、非常に少きに失しおるということは、われわれ国民としてひとしく考えておつたところでございます。このたび二百五十万円に上げようということは、むしろ現在の物価指数からいつて、災害あるいは罹災者等の御見舞の意味で給與する額といたしましては、少い。願わくは、私どもはこれ以上の額であるべきであるという考え方を一応しておるものであります。しかしながら現在の社会の経済的な諸般の情勢から考えまするなれば、やはり二百五十万円という一定の数字も一応は納得いたす次第なのでありまして、私は参考の意見としては、むしろこれ以上の金額にしていただきたいと念願するものでありまするが、残念ながら先ほど言つた財政的な面からして、この金額に一応おちついておるというこの案を見ました場合において、私はこの案には賛成をしがたいのでありますが、これ以上の三百万あるいは四百万というような数字なれば、あるいはこの社会的な計数上からいつても納得できるかわからぬけれども、特に災害の場合の罹災者に対する見舞とか、各種の産業の御奨励のためのものでありますがゆえに、むしろ今後とも増額せられるということをお含みいただいて、賛成をしたいと思います。
次に皇室経済法施行法の一部を改正する法律案につきましては改正の要点が、その法の中の第七條の「法第四條第一項の定額は、二千八百万円」を二千九百万円とする。それから第八條の「法第六條第一項の定額は、六十五万円」を七十三万円とする。かような改正の要旨であります。もとよりこの改正につきましては、先般国家公務員法の給與改訂が実施せられて行つて、すでに公務員諸君は、その予算計上を見ておる現在であります。しかるときにおいて、皇室に関しましても、本年度において内廷並びに皇族御使用の職員について、国家公務員並の給與改訂をいたさんとするのは、これは当然であります。この点について共産党あたりから疑義があつたようでありまするが、もちろんこの点については私ども共産党の意向には賛成しがたいのであつて、われわれはもちろんこの点については賛成であります。その内容については、内廷費が二千九百万円、皇族費が七十三万円と、それぞれ増額することは当然のことであると考えておるのであります。むしろわれわれが考えてみまするときにおいて、これ以上の額を計上しなければならない。もしも財政が許すならば、私どもとしてはこれ以上の額を計上したという考えを持たざるを得ないと考えるものでございます。しかしながら現在の財政の状態におきましては、これもまたやむを得ないのではあるまいか、かような考えでおるものございます。従いまして今後これ以上増額をするという含みを持ちまして、この計上されておるところの改正案について、賛成をいたさんとするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/8
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009・青木正
○青木(正)委員長代理 椎熊三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/9
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010・椎熊三郎
○椎熊委員 私は国民民主党を代表いたしまして、ただいま議題となつております両案に賛意をいたすものであります。
この際、賛意の理由の中に一言私見を加えておきたいと思います。ただいま質問の際に、共産党議員の方でございましようか、いろいろの理由をあげて、反対のごとき意思表示をなされております。共産党はもとより天皇制を否認せんとする政党でありますから、天皇の名においてなされる一切の行動は賛成しがたいのでございましよう。その政党としてのやり方、考え方については、私もわかるのであります。しかしながらわが国の国民性、醇風良俗ともいうべき、人をあわれみ、人をほめたたえるのわが国民性の上から申しまして、金額の多少などということは問題ではない。共産党の諸君は、微睡の生活をしておる岩の中には、むしろこんなわずかな金をもらうことによつて、その他の負担を課せられ迷惑をしておるというような発言がありました。いかにこの人々の精神状態が、われわれ日本民族とはかわつて、ひねくれまがつておるかということが、いまさらながら私ははつきりわかつたのであります。私どもは貧乏な生活もやつて参りました。微賤の生活の中にあつても、人のあわれみをともにわかたんとする、人情厚い、この香り高き人間社会の生活というものは、共産主義社会には見られないことであつて、われわれはいつまでもかくのごとき人間らしき生活を守り拔かなければならぬのであります。天皇の名によつてくださるる見舞金、奨励金のごときは、その金額にしてはまことに微細なものでございましよう。ひとり皇室の関係が、新憲法のもと、かくのごとき状態になつたるがゆえではございません。かつて旧憲法のもとにおける天皇の御地位、皇室のあり方、その当時における御内帶金、奨励金、御見舞金のごときも、当時の経済状況から見まして、決して過分のものではない、まつたくしるしばかりのものであつたでございましよう。しかしながらそこに盛り込まれておるところの国民と天皇とのつながり、わが国民性の厚い人情の盛り上つておる点は、われわれとしては世界に比類なきよき間柄であり、よき感覚であり、この感情なくしては、この心組みなくしては、人間社会は決して平和ではない。そういうことを強く痛感いたしまして、先刻の共産党議員からの発言を聞いて、いまさらではございませんが、彼らの考え方、彼らのゆがんだるものの見方、唯物史観に徹して世界革命に発展せんとする暴力主義政党のあり方というものを、この国会の議場において明確に示された点は、私ども政治家として将来大いに参考になることであります。この意味からいたしましても、はなはだ蛇足ではございましたが、私見を交えつつ、ただいま議題となつております両案には、満腔の誠意をもつて賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/10
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011・青木正
○青木(正)委員長代理 松岡駒吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/11
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012・松岡駒吉
○松岡委員 私は両案に対して賛意を表します。その理由は省略いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/12
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013・青木正
○青木(正)委員長代理 加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/13
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014・加藤充
○加藤(充)委員 日本共産党はこの両案に反対するものであります。反対の趣旨は、身分的特権を強化すべきではないということであります。皇室関係の使用人が、いわゆる給與改訂に伴つて、当然スライド的に予算も金額もふえて来るというような御趣旨もあるかに思うでありますけれども、皇室関係の使用人が、一般公務員と比べて特別に高い、昔の宮廷使用人のようなふうには行かなくても、特別に高い生活を受けるということ自体は、やはりこれは公務員の民主的な立場ということからいつても、そこに身分的特権に便乘した、またそういう特権を強化するという意図の中に隠れた反民主的な取扱いだと私は思うのであります。
さらに第二段は、そういうふうな特権を強化することによつて、逆に政治的にこれを利用する、政治的な意図にそれを使うというに至つては、私は民主的な立場から、民主主義の立場からけしからぬとすら考えるものであります。たとえてみれば、先ほどの御説明の中に、ジエーン颱風の大阪の見舞ということが出ていましたが、一千数百億、二千億になんなんとする、大阪自身だけの被害でもそれだけのことになつておるのであります。また失業者の職安のあぶれの数字を調べてみましても、昨年の十月末に三百万の多きに達しておるのであります。また最近では失業のために、あるいはその他の生活の行き詰まりのために、身の危險を冒して、白骨帰還の前例があるさ中に、朝鮮まで非常な危險な仕事に参加して行く人たちもあるのであります。また戰争あるいは災害、その他経済情勢のよからぬために、不十分なために、売る物も何もない弱い御婦人たちは、パンパンとして街頭にあふれて、その数莫大なものがあるのであります。私どもはこういうふうな事柄に対しては、見舞金だとか、奨励金とかいうようなことでなしに、国家が堂々と国家の責任において、明確な立場において、これらの額を増額することには賛成するものであります、また堂々とそういうようなものは増額すべきだと思うのであります。自由党の御見解の中にあつたようですが、この額では少いという——私どもも今申し上げた意味合いで少いと思うです。もつとこれは多くのものを、違つた責任の立場で出すべきだという見解を強く持つものであります。少いものでも、そして少いことについて、いろいろなまいきなことじやなしに、生活に追い込まれて、ごく地味な意味で、何とかならぬものか、政府はどつちへ向いているのだ、施策は不十分だというような声を、いろいろな災害や、いろいろな不幸な目にあわれた人々から聞くのでありますけれども、それに対して国家は十分な施設はやらない。金がないんだ、予算がないんだということになつておる。そこにもつて来て、まことに少いものでございましようけれども、天皇その他の皇族の見舞金というもの、こういうものが出て来る。それで金がないところへ天皇が同情して見舞金を出したのだから、少くてもしんぼうすべきだ。ありがたく、数額にけちをつけずに、その気持だけで潤うべきだということになる。天皇まで出したんだから、皇族まで出したんだから、ほかの者はもつとあるだけのものを出し合いつこしようじやないかというような、宣伝やいろいろな施策やいろいろな手口が、そのあとへ実際上の政治のやり方として続くのであります。これこそ多くの意味合いにおいて責任を回避し、そうして身分的特権を強化しながら、その身分的特権を強化するということを利用して、そうして政治の至らざるところの責任を回避するものですらあると私どもは思うのであります。こういうふうなことは民主主義の大精神からいつて、原則からいつて、ごまかしであると私どもは思うのであります。天皇、皇族のいわゆるお出まし、そうして椎熊君が得意の一席をやりましたけれども、ああいうふうな昔のやり方で、どういうことがやられたかというと、世界にたぐいなき天皇制、世界にたぐいなき人民抑圧、世界にたぐいなき働く人々のほんとうに悲惨な生活が、そのことによつて裏づけられ、厖大なる見舞金その他の御内給金というようなものがある反面に、そういうふうな実情なり実態が打出されたということは、否定できないと思うのであります。それを精神的な国民の醇風美俗だといつておる間に、日本は取返しのつかないことになつて、敗戰後六年になんなんとして、今まで自主権の回復もできにくい、こういうふうな状態になつておるのであります。でありますからして、そういうふうなものをもつと増額すべきである。それは違つた名目の、違つた項目の予算を増額すべきなのでありまして、これを増額することによつて、今のようなやり方によつて、あるいは警察、地方団体あるいは消防団、水防団、日赤奉仕団、あるいは少年団、こういうようなところにいわゆるお金をくださる、見舞金をくださる、奨励金をくださる、こういう連中が今日本を民主的に平和的に再建するときに、こういうようなものが、昔の御内帶金のたんまりあつたあの時代の、人民抑圧の天皇制の組織制度の中に組み入れられ、これが最近問題になつておりまする日本の軍事力、日本の軍隊化、こういうようなことにまでなりつつありはしないかという事例を私はここで一々申し上げませんけれども、身近に感ぜざるを得ないものであります。見舞金、奨励金を増額して、身分的特権を強化して、そしてそれの使い方によりましては、とんでもないことになつて参ると思うのであります。憲法第九條の改正が吉田首相の口から国会の中で公然と問題になつて参りました。また憲法第八條の規定や皇室経済法並びに同施行法というものの新たなる制定とその精神の中には、いわゆる人民主権というような、新らしい憲法の民主主義日本再建への意義づけというものが確かにあつたはずであります。しかもこういうような大精神を躁欄する、あるいは大精神を考えないで、ただ便乘的な精神論、そういうようなことと、物価騰貴というようなことに籍口して、今問題になつておりますような増額というものが軽々になされるならば、金が多いとか少いとかの問題よりも、そういうふうな性格のものが今まさしく重大であるということを、私どもはここで指摘せざるを得ないのであります。従つてこういうようなことは、わずかな金のように見えますけれども、その点からいうと、軽々に看取すべからざるものがあるのであります。しかもその意図が隠されておるということすらも、われわれは疑わざるを得ないような状態にもあるのであります。こういうような点から見ましてわが党はその数願いかんにかかわらず反対をするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/14
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015・青木正
○青木(正)委員長代理 討論はこれにて終局いたしました。
これより両案を一括して採決に入ります。両案に賛成の方の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/15
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016・青木正
○青木(正)委員長代理 起立多数。よつて両案は原案の通り可決いたしました。
この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました両案に関する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004889X00319510217/16
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017・青木正
○青木(正)委員長代理 御異議がなければ、さようとりはからいます。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十三分散会
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