1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年三月二十二日(木曜日)
午前十一時十分開議
出席委員
委員長 千賀 康治君
理事 中垣 國男君 理事 野原 正勝君
宇野秀次郎君 遠藤 三郎君
小淵 光平君 川西 清君
川端 佳夫君 中馬 辰猪君
幡谷仙次郎君 原田 雪松君
金子與重郎君 横田甚太郎君
出席政府委員
農林政務次官 島村 軍次君
農林事務官
(農林局長) 藤田 巖君
委員外の出席者
專 門 員 難波 理平君
專 門 員 岩隈 博君
專 門 員 藤井 信君
—————————————
本日の会議に付した事件
食糧管理法の一部を改正する法律案(内閣提出
第七九号)
食糧の政府買入数量の指示に関する法律案(内
閣提出第八〇号)
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定
措置に関する法律の一部を改正する法律案(内
閣提出第一二〇号
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/0
-
001・千賀康治
○千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。
去る三月十九日本委員会に付託になりました、内閣提出、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたし、審議に入ります。
まず本案の趣旨について政府の説明を求めます。島村農林政務次官。
—————————————
農林水産業施設災害復旧事業費国
庫補助の暫定措置に関する法律の
一部を改正する法律案
農林水産業施設災害復旧事業費
国庫補助の暫定措置に関する法
律の一部を改正する法律
農林水産業施設災害復旧事業費国
庫補助の暫定措置に関する法律(昭
和二十五年法律第百六十九号)の一
部を次のように改正する。
第二條第二項第一号を次のように
改め、同條第五項中「原形に復旧す
ること」の下に「(原形に復旧するこ
とが不可能な場合において、当該農
地等の従前の効用を復旧するために
必要な施設をすることを含む。)」を
加える。
一 林地荒廃防止施設(法令によ
り地方公共団体又はその機関の
維持管理に属するものを除く。
以下同じ。)
第三條を次のように改める。
(補助の対象及び補助率)
第三條 国は、農地等(漁港施設に
ついては、水産業協同組合の維持
管理に属するものに限る。)の災害
復旧事業について、当該事業を施
行する者に対し、予算の範囲内
で、その事業費の一部を補助する
ことができる。
2 前項の規定により国が行う補助
の比率は、左の区分による。
一 農地に係るもの
当該災害復旧事業の事
業費の十分の五
二 農業用施設に係るもの
当該災害復旧事業の事
業費の十分の六・五
三 林業用施設に係るもの
イ 林地荒廃防止施設に係るも
の 当該災害復旧事業の事
業費の十分の六・五
ロ 林道に係るもの
(一) 奥地幹線林道に係るもの
当該災害復旧事業の事
業費の十分の六・五
(二) その他の林道に係るもの
当該災害復旧事業の事
業費の十分の五
四 漁港施設に係るもの
当該災害復旧事業の事
業費の十分の六・五
3 前條第六項の事業の事業費のう
ち災害にかかつた施設を原形に復
旧するものとした場合に要すべき
金額をこえる部分(以下「超過事業
費」という。)につき、第一項の規
定により国が行う補助の比率は、
前項の規定にかかわらず、左の区
分による。
一 農地に係るもの
北海道にあつては超過
事業費の十分の四・五
都府県にあつては超過
事業費の十分の四
二 農業用施設に係るもの
超過事業費の十分の五
三 林業用施設に係るもの
イ 林地荒廃防止施設に係るも
の 超過事業費の十分の五
ロ 林道に係るもの
北海道にあつては超過
事業費の十分の四
都府県にあつては奥地
幹線林道については超
過事業費の十分の六、
その他の林道について
は超過事業費の十分の
三
四 漁港施設に係るもの
北海道にあつては超過
事業費の十分の六
都府県にあつては超過
事業費の十分の四
第五條第九号を削る。
附 則
この法律は、昭和二十六年四月一
日から施行する。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/1
-
002・島村軍次
○島村政府委員 ただいま上程になりました農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を説明いたします。
国の自立経済の達成と農林水産業経済の安定とをあわせはかるためには、治山及び治水に基礎を置いた合理的な災害対策がきわめて重要性を持つものであることは、御承知の通りであります。この意味からいたしまして、従来単に補助規程によつて実施されて参つた農林水産業施設の災害復旧に対する国の補助を制度化するために、第七国会において、現行法が成立を見たのでありますが、過去一箇年の実施の経緯及び一般土木災害復旧制度の改正の方向にかんがみまして、所要の改正を加える必要を認めましたので、ここに一部改正法律案を提出いたした次第であります。以下本法律案のおもなる改正の要点について説明いたします。
第一に、現行法において不明確であつた原形復旧事業と超過事業との区分を明確にいたし、災害復旧事業上必要不可欠の超過事業について、新たに一般の改良事業と同率の補助を行うことにいたしたのであります。
第二に、補助率につきましては、第三條第二項の原形復旧事業におきましては、林道の現行十分の五を奥地幹線林道とその他にわけ、前者につきましては、奥地林開発に資するため特に十分の六・五に、また水産業協同組の維持管理する漁港施設につきましては、現行十分の四・五を一般港湾との均衡上十分の六・五に改訂にいたした次第であります。なお第三條第三項の超過事業費の補助率につきましては、それぞれの一般改良事業の補助と同率といたした次第であります。
第三に、一般土木災害復旧事業に関する公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法案との調整をはかつたことであります。すなわち、林地荒廃防止施設及び漁港施設中、地方公共団体またはその機関の維持管理に属するものは、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法案第三條の適用を受けることになつておりますので、本法の適用を除外することといたしたのであります。
第四に、地方財政の実情にかんがみまして、現行法第五條第九号に規定する地方公共団体の義務負担制を廃止したことであります。
以上が本法律案のおもなる改正の内容であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/2
-
003・千賀康治
○千賀委員長 質問を許します。質問があれば御発言ください。御質疑がなければ大体を可として、この程度で質疑を打切ることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/3
-
004・千賀康治
○千賀委員長 御異議なしと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/4
-
005・千賀康治
○千賀委員長 これより農薬取締法の一部を改正する法律案を議題といたし、本日より質疑に入ります。御発言があれば許します。御質疑がなければ、本日は農薬取締法の一部を改正する法律案はこの程度にして、次会に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/5
-
006・千賀康治
○千賀委員長 お諮りいたします。ただいま政務次官が御出席でありますから、食糧管理法の一部を改正する法律案、食糧の政府買入数量の指示に関する法律案、この両法案に対しまする質疑をお許しします。金子與重郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/6
-
007・金子與重郎
○金子委員 次官にお尋ねいたします。食管法の改正、いわゆる麥の統制解除の問題につきまして、数回にわたりましてこまかい数字の点や、いろいろのことにつきまして当局から回答をいただいたのであります。この問題は、きわめて近く採決に入る問題だと思います。きようあたりの新聞を見ましても、インドの食糧の不作、あるいはアメリカの日本に対する食糧援助が楽観を許さないということを言つておるのでありますが、それに比べて、私どもとして、この際にどうしても、この統制を一部解除しなければならぬという納得の行く理由が出て来ないのでありますが、これについて具体的に、一番大きな点から箇條にして、そうして、こういう点とこういう点が実際にはずす必要があるのだという、最も重点的な点について、政治的な立場からひとつ結論的に説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/7
-
008・島村軍次
○島村政府委員 食糧の問題は国民生活、国民経済にきわめて影響の多い問題でありますので、かねて御審議のありました点に対しましても、われわれは十分な調査を進めて参つたのでありますが、私は第一点に、農業者の立場あるいは農業経営の立場から考えますと、従来多年にわたるこの供出制度に対しては、御承知の通り農家自身も相当苦しめられて参つたのであります。しこうして強制供出の制度が今日取上げられて参つたことに対しては、農民自身もすこぶる不安に考え、かつ農業経営の立場から考えますと、統制を漸次緩和することに対しましては、これは全国農民の望んでおるところであると思うのであります。しこうして今回の改正にあたりましても、やはり私は、漸次統制を緩和して、いも類の統制をはずし、さらに雑穀の統制をはずし、しこうして今回麥の統制を緩和するという方法をとつて参りますことは、これは農民の立場から申しますと、確かに期待を持つておると思うのであります。しこうして麥の問題については、統制を緩和して参りましても、国内の生産に対してはほとんど全量のものを買い上げる措置を講じ、これを国民に配給して参る場合に、国民の不安のないような方法をとり得るならば、この際統制を漸次緩和することは、国民経済の上から申しまして、かねて御論議のありましたような点には決してならないという結論を、私は持つておるのであります。しこうして、問題は全体の数量の問題にかかつて来るのでありまして、数量についてはいろいろ御論議もあると思うのでありますが、しかし輸入の点についても、あるいは国内の生産の面につきましても、現在の数字は、たびたび説明申し上げるように、統制を緩和いたしましても、それによつて国内食糧の不安を来すということはないということで、あらゆる角度から研究いたしました結果、ここに統制緩和の方策としての改正案を提案いたしたのであります。巷間伝えられるところによりますと、いろいろ輸入の問題について、ただいま御指摘になりましたような、今日の新聞紙上等の御意見もあるのでありますが、しかし日本が講和会議後におきまして、自立経済を立てる上において、やはり国内の食糧増産を自給態勢に持つて行くという、この大きな国民的な運動と申しますか、国民的の意欲の高揚は、これは必ず出さねばならないし、またさように措置を講じなければならぬのであります。
〔委員長退席、野原委員長代理着席〕
たといここに災害があり、あるいはまた不作がありましようとも、そういう問題についてはそれぞれの措置を講じまして、そうして全体を通じた食糧需給計画について、まずまずこれならば大丈夫であるということの結論が得られるならば、今日提案いたしておりますような制度を講ずることは、これは一般の輿論であり、かつ農民の期待を持つておるところであるという確信を持つて、ここに提案いたしたよう次第でありまして、どうぞこの問題については、御心配の点はよくわかりますが、さような見地において御賛成いただきたいことを希望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/8
-
009・金子與重郎
○金子委員 今までの討議の過程において、本日次官から、この統制を一部解除する必要の理由をただいまお聞きしたのでありますが、第一点は、農業者ことに農業経営の立場から、供出制度というものの重圧をとることの方を農民自体が期待しており、農民の意思もそこにあるのじやないかということ。第二点は、いろいろ杞憂されておる面もありますが、とにかく現段階において、政府が各方面から研究した結果によれば、需給バランス、ことに輸入の面においてはそうした不安がない、再統制をする心配もない、こういうことが第二点と、第三点は生産意欲を向上しなければ、日本の食糧自給度を高めるというこの大きな課題を達成することは至難であり、これを達成するためには、自由経済の形に食糧を置く方が生産意欲は高まる。こういうふうに、ただいまのお話は三点にお聞取りしたのであります。農業経営の立場から、農民自体の意思としても、供出するのはこの際ごめんだ、統制を解除してもらいたいというのが全国農民の希望であるというふうにお話になつておるのでありますが、数日前の農民大会におきましても——農村の各種団体の代表者が中央に集まりまして大会を持つておる。そうして率直のところを申しますと、その大会の決議事項のうち、去る国会におきまして決議になりました農業委員会のごときは、農村団体によつて要求するところが違う、意見が一致しないという関係上、この課題に上つておらないのでありますが、今度の食管法一部改正の問題、あるいはこれに関連しての麥の統制解除ということに対しては、農村の人たち、ことに指導者の人たちは、麥の統制を解除することによつて、あるいは去年のかんしよ、ばれいしよのようなぐあいに、政府の買上げ予定価格よりも現在の飼料が高い、原麦以上に高いというような情勢から参りますと、生産費が政府の買上げ価格を上まわるのではないだろうか。農民自体のこの出来秋の関係からいつて、統制をはずされた方がより高く売れるだろうということも、指導者の諸君はよく知つておるのでありますが、にもかかわらず、この間の大会におきましても、あるいは私どものところに全国の農村から一般に参ります意見も、麦の統制をはずしては困るということが言われておるのであります。また政府の方へも、その意見が先日の大会の決議等で行つておると思うのでありますが、その点が今の次官のお話と違つておるように思うので、あの大会の意思が違つておると思うのか、あるいはそういうことは知らないというのか、その点を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/9
-
010・島村軍次
○島村政府委員 私はむしろ農政の立場から考えますと、この前はずされましたかんしよ、ばれいしよの統制解除の時分にも相当議論があつたのであります。それは一面においては、不安のあるということは事実であります。しかし統制解除後におきまする農業経営の立場、農民の立場から考えますと、かんしよ、ばれいしよの統制をはずしたことは成功であつたと存じます。今回の麦の統制緩和の問題につきましても、もちろん価格の点あるいはその他いろいろな事情を勘案いたしますと、農民団体のお申出の点もよくわかるのでありますけれども、この農民団体のお申出の要点を要約いたしますと、統制は継続すべし、しかしそれは自由な立場においての民主的な措置において、統制方式を解除することが主眼にあるように思われるのであります。農業自身の一個々々の意見もつぶさに解剖いたしますと、私は農民団体のお申出の点はよくわかりますが、むしろこの際かんしよ、ばれいしよの例、あるいは雑穀の例から考えましても、この際はなるべく農民の立場から買上げるという措置が講ぜられるならば、これは確かに農政全般の立場から、私は今回の政府提案が適当である。これは意見の相違かもしれませんが、さように信じております。なお最近における飼料等の食管会計で政府が買上げたものを高く売りつける、これは操作の惡い問題もあるだろうと思いますが、農業経営の立場から申しますと、統制のわくに縛りつけるということはよほど考えなければならぬ問題でありまして、ただ従来戦時中あるいは戦後を通じて、食糧の需給関係からやむを得なかつたためにとつた措置でありまして、納得の行く、いわゆる農政の立場から申しますと、決してこれが農民全部の意思であるかどうかということは、意見の相違かもしれませんが、私はさような考えを持つているのであります。つまり要約いたしますと、先般の農民団体の申出の点は、結論的には民主的に統制の方式をかえることが結論のようであります。その点麦に対する数量の不安もあつたと思いますが、今後において農業経営をうんと伸ばすという考えから行きますと、政府の提案いたしている措置によつて、それらの問題は漸次農民団体の主張に合うような方向に向き得るということを確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/10
-
011・金子與重郎
○金子委員 これは見解が人によつて違いますので、議論にわたりたくないと思いますから、一応お聞きいたしておきますが、そうだとするならば、もし麦の統制解除がかんしよ、ばれいしよの統制解除と同じように、当時いろいろ問題はあつたが、結論において成功だつた、おそらく麦の統制解除もそう行く見通しだというようなお考えであるとするならば、なぜ第三條の二に、政府は必要と認めたときには買えるのだというような、非常に一方的な——これに対しては食確法等の裏づけもなく、ただ政府が一方的に、本年度は食糧事情が惡いから買い上げるぞというようなことをここにきめなければならぬのか。これを農林大臣に言わしめるならば、世界的な兇作が来るとか、あるいは支那のように日本中にばつたが落ちて来れば国民は餓死するだろう、そういうような非常時にはこういうような法律も必要だと言う。これは実に人をばかにした話でありまして、まつたく予想できないような奇想天外な災害を見通して法律をつくるなどということは、非常にふまじめであつて、あれは言葉のあやで、本心だとは解したくないのでありますが、まじめに考えまして、世界の食糧事情から行きましても、あるいは農業経営の立場から行きましても、近くかんしよ、ばれいしよのような形に行くことを望む、またそう行く見通しだとするならば、この三條の二に、政府が一方的に必要としたという程度で買上げできるという法律をつくる根拠が、私には疑問になつて来るわけでありますが、何かこれに対して農林大臣のおつしやつたことと別に——あのふまじめな回答に対しては私ども納得できないのでありますが、まじめな気持で、どうしてつくらなければならなかつたかということを、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/11
-
012・島村軍次
○島村政府委員 ごもつともな点もあるのでありますが、まじめな考え方から行きまして、日本の食糧は、金子さんも御承知のように、外国依存が相当あるわけであります。そこで内地の兇作及び豊作という問題とも関連を持つという意味から、内地的に非常な不作のある場合に、外国食糧の輸入も、この国際経済の推移によつては、現在の段階におきましては、前段申し上げたようなことでありますが、しかし法制の上にこれを存置し、しかも今回の提案の非常に骨子になる点はどうかというと、従来は抜打ち的に米なり、麦の強制供出というものを、たとえば昨年の麦のように、統制をある程度まで緩和すると言つておいて強化したではないかという議論が逆に出るということは、今度の農政とし、あるいは農林省といたしましても、行政の立場から、さような措置を講ぜずして、今回の措置によつて、すなわち第二項にもありますように、事前においてさような天災地変及び外国食糧の輸入が非常に困難な場合におきましては、日本は講和会議後におきましては世界経済に支配されるという点から考えますと、最初御指摘になりました生産増強という、日本の自立経済の点をどこまでも推進することは当然でありますが、同時に今回の措置によつて法制上これを行うことに対しては、これは当然であり、かつさようにすることが国民全部の、消費者、生産者の間に安心感を与える問題ではないかと思うのであります。
なお、さらにつけ加えて申し上げたいことは、現在の占領下におきましては、やはり外国の輸入に相当の依存をしておるのであります。そこで先般の統制撤廃に対するGHQの、今回の法制を認める前提として、将来においてさような万一の場合に備えるための一つの措置としての考え方を取入れるということによつて今回の提案を是認する、こういうふうな意向も参照いたしますと、われわれの提案としては、国民経済の立場から、さような措置をとることも当然であると思うのであります。繰返して申し上げますが、従来の措置とかわりまして、これは国民の納得する点から考えて、どうしても強制供出をお願いせねばならぬという時分には、当時の需給バランスによつて、あらかじめ国民に全部のものをさらけ出した上で、このような情勢であるからという建前の上にやることは、第三條第二項でありましたか、三項でありましたか、さようなことを加えておるのであります。しかし単に法制上のあやであるというふうなことを御論議あるかもしれませんが、そこに政府として十分愼重な措置を考えて、統制の緩和をするが、しかしこれを強化する場合においては、事前においてよく納得の行つた上でその措置をとる、こういう方法をとることによつて、万全の措置であると私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/12
-
013・金子與重郎
○金子委員 次官のお考えは、私にはどうも納得できない点が多いのでありまして、世界の食糧事情が不安になつたとか、あるいは輸入が思うように行かなくて、国内食糧事情が非常に惡い條件に入つた場合には、納得の行く形で事前に買上げを発表して、いわゆる三條の二による買上げをするのだ、だからその方が農民はいいのだと言いますけれども、一体平生においては、ことに最近うわさされておりますところの、麦の対米比率を引下げるというようなことを一面には考えられ、そうして麦の価格を安いように持つて行く方法がとられ、のみならず農民の経営の立場から言つたらば、食糧が不作のときほど相場というものは高くなければならぬものである。要するに一反で五俵とれたものが、不作で二俵半のときには、その必要経費は同じだけ、ないしはより以上かかつておりますので、そうだとしますならば、その価格は倍になつても引合わない。これは生産の立場から見た場合の話であります。それをそういう場合には政府が買上げをするというその価格というものは、何ら民主的な決議が行われるわけではなく、こり前の質問に対する政府の回答の範囲で行きますと、だれが価格をきめるのだということになりますと、価格をきめることに対して生産者の意思が何ら入らない。しかもこの割当はだれがやるのだというと、大体作報がやるのだ。そういたしますと、統制を解いて農家の人たちが自由な立場で耕作したものを、その買上げを前にいたしまして、一箇月や二箇月の間で、作報がどうまわりましたところで、とうていそこに妥当な割当ができるはずもないし、一方において、国家自体の緊急の食糧の供出だということになるならば、今私どもがどういたしましたところで、必ずやそのときには強制的な強い割当、あるいは強い要請をするに相違ないのであります。ということになるならば、決してこういうことは農民が安心して農業経営に携われるというものでもなく、むしろこの問題につきましては、統制というものを、買上げを予定して農業経営の上に織り込む方がはるかに農業経営上安心だ、私どもはそう考えるのであります。
それからもう一つ、ただいまの御答弁で私ども納得行かない点は、統制というものは農民はいやがつているのだ、だからこれをはずしてやることが生産意欲を増すのだとおつしやいますけれども、相場が高くなるときにはこういうふうな処置をとられる。安くなるときにはほつておくのだ。最低だけは政府がきめてやるじやないかというけれども、その最低たるや、政府が対米比率を引下げて最低をきめてやるということになるならば、農民の生産の意欲は当然低まつて来ると思うのであります。ただ、統制のことにつきまして、現段階でやつておるような、生産費を償わないような価格で、一方的に政府が数字をはじき出して、そうしてジープまで飛ばして、百姓から、供出ができないならばやみで買つても出せというようなことを、口に言わぬまでも、実際上そういう結果を現わしておる。そういう統制であり、そういう供出であれば、なるほど農民は、生産意欲も減少しようし、また喜ばないところでありましようけれども、私は統制ということは、必ずしも今のような統制のやり方だけが統制ではなくて、むしろ保護統制をするという立場においても、統制のやり方はあると思うのでありまして、問題は、今までのような政府の、国家全体の食糧事情を農民に負わせるという立場から、大いに生産費を償わない価格で、一方的な数量を割当てて行くから、農民が統制というものは苦しいという考えを持つのであつて、むしろ日本の食糧生産保護の立場からという考え方で統制をして行くならば、何も統制そのものを農民が恨む、あるいは苦しがるということはおそらくないのだ、私はそういう見解を持つておるのであります。しかしながらそれは見解の相違でありますから、これは別といたします。
その次に対米比率の問題について、今の政府はどういうふうにお考えになつておりますか。かりに政府の保証した最低の価格は無制限に買い上げるのだというふうな、ただいまのお話でありますが、その場合における今の対米比率に対して、これより下げようとしておるのか、今具体的にどういう構想を練つておられるか、その点をお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/13
-
014・島村軍次
○島村政府委員 よく御了解を願つておきたいと思いますのは、いろいろ御心配のある点については、これは数量の点が主体になつての御心配でありますが、それならば、今までの統制方式をそのまま継続する場合と、今後政府の提案をしておるこの措置を講ずる場合と、どちらをとるかということになりますと、私はむしろ今回の政府の提案が、農民の立場からいつても、あるいはまた国内全体の需給バランスからいつてもそれは適当だ、かような結論から申し上げておるのでありまして、数量的に考えますと、御心配の点は、あるいは備荒貯蓄というようなことが、将来の農業経営あるいはまた数量の需給調節というような点から行きますと、考えなければならぬ問題だと思うのであります。手取り早い話で、それはお前全体の論にはならぬとおつしやるかもしれませんが、今までの統制というものは、欠点がたくさんあつたことは御承知の通りであります。そこで、たとえば今回問題になりました、先ほど申し上げたように、飼料に一例をとつてみても、百姓は飼料作物というものを望んでおる。しかるに飼料に対する割当が、供出制度そのもののためにゆがめられて、非常に望んでおるが、しかし飼料がなかなか手に入らぬ。それが今度の政府の政策によつて考えますと、七月に麦の統制をはずすが、それまでに買い上げる。そうなりますと、七月以降におきましては、政府が農民の意思によつて買い上げるだけ買い上げる。そうしてその一面、残つたものは自由の売買になつて来るとしますれば、農業経営の立場から行きましても、これは数量的に非常に調節がとれて、むしろ農業経営の立場は確かによくなるものと私は考えております。
そこで、後段お話の、価格の問題が最後に残つて来るのでありまして、あなたのお話のように、今回の提案を一応いかぬというふうな前提に立つた場合に、いろいろせんじ詰めて考えますと、これは最後は価格の問題に関係を持つ問題ではないかと思うのであります。そこで対米比価の問題は、もちろん六四にいたしましたけれども、先般も食糧庁長官から申し上げましたように、昨年の知事会議において、あるいはまた農業調整委員会において発表を申し上げましたように、漸次緩和する。しかし価格は、現在の価格が最低限度だということを示した。しかして一応予算上の数字として六四というものをきめたのでありますが、これはパリテイの指数から行きますと、七十二、三の数字になるわけであります。従来の八二コンマ何がしに比してはもちろん低いことになりますけれども、しかし一般の需給関係から行きますと、やはり麦の対米比率というものは、ある程度、漸次引下げるというのが自然の趨勢であります。そこで農民の立場から言えば、戦時中なり戦後を通じて、供出を強化された今日から行きますと、にわかに対米比率を下げることはけしからぬという議論も、一応は聞えるのでありますが、これは、今申し上げたように、普通の需給の価格に漸次近づけることによつて、自然の経済というものが運行がうまく行くという点から考えますと、何もそう絶対に今八二コンマ何がしに必ず持たねばならぬという結論にはならないと、私は思うのであります。政府の政策としては、もちろん全体の農産物価がパリテイによつて考えられたのでありますから、これほどこまでもパリテイでなくして、生産費を基準とした価格に引上げるということは、農林省自身も努力を重ねておるのでありまして、二十六年度の価格については、たびたび申し上げるように、パリテイ・プラス・アルフアーの価格でありまして、それに対しては、麦の六四は安いという考えは、それは確かに一つの見方であり、かつさように考えられると思うのであります。そこでわれわれは、一応予算上の数字としては六四によつてやつておりますが、できるだけこれを引上げるということに対しては、もちろんパリテイ指数もすでに上つておるのでありますから、これはおそらくある程度上つた数字によつて買上げが行われるものと期待をし、また予想もいたしておるのであります。さらにまた自由経済に移行した場合に、自由と買上げとの両建になつた場合におきましては、需給のバランス上、価格の点については、おのずからおちついた、両方から見た価格がきまれば、その場合には、いろいろな点から十分考えて、農業経営に支障を来さないような価格がおのずから生れて来て、適当な措置が講ぜられるものと私は期待を持ち、さように努力いたしたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/14
-
015・金子與重郎
○金子委員 先ほど次官のお話の通り、統制のやり方がいいか惡いか、あるいはこの統制方式を今度のようにかえることの可否、あるいは農民団体が統制の方式をかえろというようないろいろの意見があるが、その中の少くとも半分以上ないし七、八割の重点は、あなたのおつしやる通り、価格問題にあることは、これは事実であります。
〔野原委員長代理退席、委員長着席〕
それで価格の問頭に対しまして、ただいま御説明によりますと、八一・二を六四に引下げるということでありますが、しかしながらこれは非常に矛盾したことであります。なぜならば、事実日本がどうしても食糧の自給度を今後高めなくてはいけないということは、だれしも異論のないことでありますが、そういうふうに日本の食糧の自給度を高めて行くためにはどの面が一番可能性があるかということになりますと、主穀の点においては、私は米も今後増收の余地がないとは決して言いませんが、その程度たるや、やはり麦の増産計画の方が、食糧の自給度を高める上に、反収の面から行きましても、あるいは今後開かれて来るところの耕作面積に対する期待、この両面から行きましても、伸びる可能性がある。私どもは農政的にそういう見解を持つておるのでありますが、その際、ただ隘路になつて参りますものは、麦の生産費の方が比較的高いということであります。世界的な麦の生産費と日本の麦の生産費を比べてみたときに、日本の麦の生産が比較的高いコストにつくということは事実であります。従つて従来自由経済において、戦前におきましても、日本は常に相当量の関税障壁を設けまして、そうして日本の麦生産を保護して参つたのであります。それが今あなたのお話によりますと、パリテイだ、パリテイだということで、いわゆる物価指数というもの、あるいは世界の指数というものを中心にして、麦を考えますならば、当然日本の麦生産は将来ふえて来ない。日本の麦は、生産に対する相当量の保護政策をとらなければ、その増産ははかれないというふうに考えておるのであります。ことに外国の食糧は、安く買いたくも、向うは相場が高いのだからしかたがない。現段階のような高い値段で買つて、それに莫大な国費を補給いたしまして、そうしてその配給面——消費者の立場からこれを価格調整をしておる。にもかかわらず、同じ国内の農民に払う金に対しては、これを引下げて行かなければならぬ、生産が減つても引下げるのだというふうなところに、私は理論的な矛盾があると思うのでありますが、この点も、ただいまの御答弁においては、どうしても私には納得できない点なのであります。私は、今度の改正にあたりまして、第三條の買上げの條項を見ましても、何ら民主的な運営がなされる予想もつきませんし、かりに麦に対しては、あなたは、農民の納得の行くような価格で、納得の行くような方法で国家が食糧事情に困つたときにこの三條を適用するとおつしやいますけれども、現にこの麦の対米比率を六四に上げるということは、どこも望んでおらない。消費者も知らない、生産者はもちろん全国的には反対をしておる。しかしながら政府の一部の発表によつて、結局これを行使されるということになりまして、どこにも民主的なひらめきも意見も入つておらない。従つて今後この麦の買入れをやる場合にも、おそらくこういう形において一方的に、価格はこうだ、量はこうだということできまつて来ると思うのであります。こういうことで、表面は農民の生産意欲を増すとか、あるいは日本の食糧の自給度を高めるとかいうようなことは、その唱えるお題目と実際の政策とは、まつたく違うということを考えざるを得ないのであります。
そこでもう一つ私が心配なのは、食糧事情が惡いために、政府が第三條によつて買い上げました麦の場合は別でありますが、平時において、この対米比率六四で買い上げました麦を、政府がその払下げをする過程において、はつきりとひもをつけて払い下げるのか。この間のえさのように、農林委員会がはつきり決議をいたしまして、農林大臣もそれに賛成されて、そして特定な団体に特定な価格で払下げろということを政治的にきめましても、実際の問題になりますと、会計法が災いして、特定な人に特定な価格で払い下げることは相当至難だというふうな問題にひつかかつて参るのであります。こういうように、政府が買い上げますと、政府の一つの財産でありますが、それを処分するにあたつて、はたして統制の規則をはずしてしまつて、競争入札というふうな形にするのか、それとも特定な人に、特定な配合方法なり加工方法なりをとつて、ひもつきにして配給ができるのか、その見解をひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/15
-
016・島村軍次
○島村政府委員 ただいまのお話を承つてみますと、ちようどわれわれの議論と一致するのでありまして、そういう措置を講ずる前提として、やはり一部分麦の統制を緩和することは、今の操作がやりやすくなるという結論になると思うのであります。さように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/16
-
017・金子與重郎
○金子委員 私の申し上げているのは、こういう意味のことを申し上げているのであります。政府が対米比率六四なら六四で買い上げる、すなわち一旦政府の資産になりますから、その後におきまして、それを民間に払い下げて消費者の需要に充てる場合に、政府はこれを入札で売るのか、それとも特定な消費者にまつすぐに行つて、中間において特定な加工業者や特定な中間ブローカーが利益を壟断ずるようなことなくできるのか、それとも利益を壟断されても、一応最高価格で売つたものに対してはいかんともしかたがないというやり方にするのか、その二つのうちのどちらをとるのかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/17
-
018・島村軍次
○島村政府委員 七月の買上げまでは現在の方式をとつて、七月からの買入れについてははずします。しかし配給は十一月までは現在の制度を踏襲して行くのでありまして、割当配給になります。その場合に中間経費はなるべく減じて行く。これは当然のことでありまして、なるべく安価なもので、従来と同じような配給制度をとつて行く。それから十一月から後に対しては、先般も食糧庁長官が説明を申し上げましたように米については従来の方針を踏襲するのでありますから問題ないと存じますが、麦についてはどういう措置をとるかということになると思うのであります。それはまだ最後の決定的な案はまだ出ておりませんけれども、できるだけ割当によつて配給して行くというふうな方法をとりたいと思います。それは何となれば、御承知のように、麦は数量的に申しますと、日本の内地麦よりは外国の輸入麦が大部分であります。ほとんど三分の二くらいまで輸入の麦ということになりますから、それは政府が管理して行くのであります。それと内地の麦とを合せてやる場合においては、やはり純然たる野放しにするというようなことにすることは、操作上なかなか困難であるばかりでなく、またそれを望むか、望まぬか、あるいはまた野放しにしてそれがはたしていいかどうかということについては、御指摘のような問題も起ると思うのでありまして、その調整をどうするかということは、十一月までの間に十分検討を加えて決定をいたしたい、かような考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/18
-
019・金子與重郎
○金子委員 最後に、今後の十一月以降におきまする政府の買い上げました麦類については、これを第一次加工機関なりあるいは業者に払い下げるということに対して、はたしてひもをつけるか、あるいはひもをつけないで行くか、あるいはどういうふうにやるかということについて、今のところ政府には具体的な方策がない。十一月までの間に適当に考慮するということであると承りましたが、そこでこの問題に対しましては、将来政府が麦類に対しては、ただいま次官の御説明のように、約三分の二に対しては、国民の血税をもつて莫大な金額を調整金として出しておく。そしてその農家からの買上げは、それとにらみ合せて対米比率六四といふような形で買い上げる。しかもその後において、今後は自由経済にいたしますから、相当相場の騰落があると思います。またその補給金をもらつた小麦ないしはその一次、ニ次製品が、単に麦類は一般国民のかまの中に入れてたいて食べるということだけでなしに、ときには味の素のような高級な加工方面にも入りますし、その他いろいろ直接一般庶民の必要でないような加工過程にも入る可能性が多分にありますので、そうした輸入品に対しては国家がたくさんの税金をそれに使つており、また一面農民は、少くとも出来秋に相場がたたかれるときには、結局政府に安い価格で買い上げてもらわなければならぬ。その後に来るものはどういうように加工されても、あるいはその間において相場の騰落によつて、中間マージンをどんなにむさぼられてもしかたがないということになりますか。またそういうものをたくさんむさぼるようなことになりますれば、それこそ重大問題でありまして、農民の立場からいつて生産意欲を増進するどころのことでもないし、また一面国費をもつて莫大な金をそこに調整金として入れましたものが、中間の一部の事業家の利潤対象になつてしまうということを私どもは非常に恐れるわけでありますが、そういう点に対して、十分御研究願いたいと思ひます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/19
-
020・島村軍次
○島村政府委員 農村の実際をよく御存じの金子さんの御心配は、われわれも非常に心配をいたしているところでありますが、せんじ詰めますと、結局価格の問題になつて来て、そして価格の点について十分の考慮をいたしますれば、今ここで法制を改組して漸次緩和する方法をとることの方が、かえつていいという結論になると私は思いますので、どうぞ御賛成を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/20
-
021・千賀康治
○千賀委員長 川西委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/21
-
022・川西清
○川西委員 ただいま金子委員から、るる蘊蓄を傾けられた御質問がございましたが、価格の点につきましては、私としても同感の点が少くないのであります。そうであるからと申して、農村の多くの者が麦類の統制継続を望んでいるというようなことは、私どもが農村をまわつて一人々々の意見を聞きました際に、大体事実に反することであると考えている次第であります。現在農村で最も苦しんでおり、いやがつておるのは税金と供出であります。この強制供出に苦しんでおることは非常なものでありまして、何をおきましても供出の圧迫からのがれたいという気分でおりますことは、さきに政務次官の答弁にもありました通り、厳然たる事実であります。またこの生産意欲の高揚、農業経営の自主性というような面から申しましても、この供出の圧迫からのがれたいという気分でおるのでありまして、この委員会で、農村の声は統制の継続を望んでいるという一本槍の発言しかなかつたというようなことでは、はなはだ残念でありますので、一言ここに申し上げておく次第であります。
さらにまた民主的な統制というような御意見がありましたけれども、私は大体統制は民主的でないというふうに考えている次第であります。この供出の割当を民主的に行う、だれもが納得の行くような供出割当を行うというようなことは、神様でなければすることができない。たいがいだれかの文句がある。供出制度ということが大体不合理なんです。合理的な供出割当ということは、なんぼ考えても実際にできない話でありますから、その点麦類の統制解除に反対される方も、何か誤解に基いてそういうふうに考えておられるように思いますから、その誤解をすみやかに取去つて、現在の農村の声でありますところの統制撤廃に御賛同を賜わり、また当局におかれては、そういう声を拝聴して、勇往邁進せられんことを希望いたす次第であります。
それから、それに伴つて、なぜこういうような誤解が起るかということは、買上げ数量の八百八十万石を買い上げるということについても不徹底な面もあります。第三條ノニというようなものは、さらに進んでとつてしまう、こういうものがあるから今のような誤解を招くのです。これがあるということは、私どもはあまり好かぬのであります。これをひつかけて統制継続ではなしに、全然逆の裏返しの話でありますけれども、私としてはこういう三條の二というようなものはない方がけつこうであると思う。しかしそう申しましても、当局のお考えもあることと思いますが、私どもの精神的な気分はそうであることを申し上げまして、こういう気持に対しての政務次官のお考えを簡単にひとつ聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/22
-
023・島村軍次
○島村政府委員 第三條の第二項の問題は、御論議があることもかねて承知はいたしておるのでありますが、たびたび申し上げますように、統制を緩和するのには、この規定はいらぬのではないか、さように一応は考えるのであります。しかしどうしてもこの事項は必要な事項であるということに対しては、大臣が申されましたように、法制的には、やはり国内食糧の全体を長い目で見ますと、当然かような措置が講ぜられてよいということと、また今日の混沌たる世界情勢から考えますと、ぜひともこの規定を置きまして、国民にも十分な御了解の上に、強化する場合には、この措置をとつて行くという方法が、万全の措置であると存じているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/23
-
024・川西清
○川西委員 第三條の二の話は、あとからのつけ足しでありますけれども、私の先ほど申しました農民の声を十分考えられまして、この第三條ノニのごとき條文は、ほとんど絶体絶命の場合でない限り御発動なさらないように希望する次第であります。
それからもちろん麦の話ですが、これが事後割当になります場合には、作報が愼重にやつてもらわないと非常に困るのであります。昨年兵庫県の補正の問題が起きました際にも、作報の数字はいつも食糧事務所のよりも非常に辛い。一部保有の農家の数とか、家畜の頭数とか、こういうものも、いつも辛く食い違つている。少数統計の理論とかなんとか申しまして、私どもの非常に理解に苦しむ理論を発表されている。少ししか調べない方がよけい調べるより正確であるというような理論は、どうもわれわれといたしまして納得しがたいのでありますが、そういうふうに制度がかわりました以上、作報の使命は一段と重大になるわけでありますから、その点十分御愼重にやられんことを希望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/24
-
025・千賀康治
○千賀委員長 遠藤委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/25
-
026・遠藤三郎
○遠藤委員 私はこの際三つの問題をここに提示しておきたいと思います。その一つは、現在論議されております統制継続か統制解除かという問題であります。この点については、今、川西委員からもるる説明がありましたが、私どもが農村へ帰つて、農民と直接ひざを突き合せて議論をしておりますと、もう一人残らず、統制を早くはずしてくれと言うのであります。長い間統制で苦しんで来た農民であります。この統制の弊害にはもう懲り懲りしている、早く統制をはずしてくれというのが、農民の一致したほんとうの声であるということを、ここで申し上げておきたいのであります。昨年かんしよの統制をはずすときにも同様の議論がありました。しかしかんしよの統制をはずしたその結果はどうかといえば、今農村に行つて農民と論議してみますと、一人残らずかんしよ生産の農民は、やはりあの行き方がよかつたのだと言つて喜んでおります。その点は、川西委員から今申されましたから、私はもうこれ以上は論議をいたしませんが、統制をはずすことは農民の声である、農民の要望であるということを、腹の中に、自信を持つて置いていただきたい。そのことをまず申し上げておきたいと思うのであります。
第二の問題としては、今統制論が繰返し繰返し論議されておりますけれども、その議論のよつて来るところはどこにあるかといえば、問題は、はたして輸入食糧が計画通りに入つて来るかどうかという点だと思うのであります。この輸入が、ストツプするようなことになり、あるいは計画通りに入らないで、非常に数量が減退して来て、今まで計画しておつた二合七勺の配給ができなくなる。そういうことを予想するとすれば、統制問題というものは、またおのずから強く論議が出て来るのは当然であります。おそらく今統制を継続しろという議論をしておる人たちは、輸入が来ないのではないかということを予想されておるのたと思います。聞くところによりますと、一月——三月の輸入の実績は、計画の半分ぐらいしか入つて来ないというようなデマが飛んでおります。そういうことになれば、国民として心配することは当然であり、統制論が出て来ることもまた当然だと思うのであります。要するに、これから先の輸入のはつきりした見通しが必要だと思うのであります。今後の輸入計画において、はたして今年度に何トン入つて来るか、その月別の配船の計画はどうなつておるか、そういう問題について、国民が安心できるような、正確な、具体的な数字を提示したらどうか。そうして全国民に安心をしてもらつたらどうか。このことを私は要望するわけであります。但しこの数字は今ここで出していただかなくてもよろしいのであります。この次の機会でもけつこうだと思いますから、具体的な数字を、はつきりこの委員会を通して全国民に発表していただきたい。そうして今後の食糧の輸入計画はひとつも心配ないのだということを、全国民に周知徹底させることによつて、この統制論というものはほとんど根拠を失うに至るのではないかというふうに、私どもは考えております。その点をこの際要望しておきたいと思います。
第三の問題は、先ほど金子委員から質問がありまして、政務次官からこれに対して御答弁がありました。しかし、その御答弁はあまりはつきりしておらなかつたのでありますが、それはこういう点であります。十一月になりまして統制配給、計画配給をやめるようになりますと、そのあとの取扱いはどうなるかという問題であります。この点につきましては、統制的に配給するようなことを言つておられましたけれども、その統制的な配給という意味がはつきりしなかつたのであります。私どもは、今後の食糧政策の行き方としては、農民の生産費を一方においてはカバーをし、他方においては配給価格を一定の線に保持いたしまして、消費者の生活の安定をはかつて行く。その両面の機能をはつきり持たせて行か
なければならぬことは当然であります。そこで一定の価格をきめまして、その価格によつて払下げを要望するものがあるときは、すべての人に機会均等を与えて、いくらでも政府は払い下げて行くのだ、それに必要な数量の麦はどんどん外国から入れるのだ。そうしてその価格以上には麦の価格は上げないのだ。そういう保障が得たい。そうすることによつて、消費者の方の生活はきちつと安定して参ると思うのであります。それと同時に、麦の値段がどんどん下つて行くような場合が予想されます。近い将来においては予想されないでありましようけれども、ある時代には必ずそういう事態が予想されます。過去の経験からしましても、そういうことがしばしばあつたのであります。そこで農民の生産費を償う最低の線というものをきめて、その線以下に下るときは、政府はいくらでも買い上げる。そうして麦の値段を一定の幅の中に入れておいて、これよりも下つたときは政府はいくらでも買い上げる。これより上つたときは政府はいくらでも払い下げる。それはたれかれにかかわらず、ほしい者にはすべてに払い下げる。そういう実質的な力を持つた操作をやつて行きますならば、一方において農民の生活が安定し、他方においては消費者の生活がこれまた安定する。そういう方向に日本の食糧政策を持つて行くべきである。こういうことを私どもは年来の主張として持つておるわけであります。願わくば、政府がそういう方向に向つて研究を進められて、来るべき十一月の食糧の大きな切りかえのときには、その用意をせられて、日本の今後の平時における食糧政策の基本を確立していただきたい。どういうことをこの際要望しておく次第であります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/26
-
027・千賀康治
○千賀委員長 他に御発言はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/27
-
028・横田甚太郎
○横田委員 質疑はまだ打切りではないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/28
-
029・千賀康治
○千賀委員長 今は食糧管理法の一部を改正する法律案、食糧の政府買入数量の指示に関する法律案、この両案を議題として、島村農林政務次官に御質疑があればお許しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/29
-
030・横田甚太郎
○横田委員 そこで委員長に聞きますが、食糧庁の長官はこれから来ますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/30
-
031・千賀康治
○千賀委員長 それは希望として伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/31
-
032・横田甚太郎
○横田委員 希望として伺つておくだけではだめです。来るんですか、来ないのですか。聞くところによると、明日質疑を打切るというのでしよう。明日質疑を打切るのに、食糧庁の長官が来ますかということを聞いておるのです。簡単に言いますと、私は次官に聞くだけでは不満足なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/32
-
033・千賀康治
○千賀委員長 申し上げますが、この質問のために、食糧庁長官に特に一日時間をつくつてもらつたことがありますが、そのときにあなたは欠席していたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/33
-
034・横田甚太郎
○横田委員 来ておりました。来ていたけれども、そのときは時間がなくてできなかつたのです。現に木村君も留保しております。あなたは忘れておるのです。もう少ししつかりしてもらわなければ困ります。私はまだ質問をしますから、あとで食糧庁長官を呼んでください。
今日はとにかく島村政務次官に質問して、食糧庁長官に質問して、それから共産党非合法化の本家である廣川農林大臣に質問するつもりです。
ただいま遠藤委員の御発言にもありましたように——大体自由党の意向としては、それが党の根本的な考え方なんですが、こういうことを言われた。統制をはずしてくれというのが農民一般の声であるという、これは事実であると思います。それではどうして一挙に統制がはずせないのか。これは日本の食糧の需給のために非常に不安がある。それゆえにはずせないのだ。それも大体一致しておると思います。そういたしますと、食糧が足りないために、日本の農政は農業政策でなしに食糧政策になつているのだ。そこに農村への圧迫があるのです。だからこれを裏返しに言いますならば、供出がはずせない現在の段階におきまして、統制供出、統制配給がやられておる。それが農村に現われた供出の場合、一体農民がどれくらいの不快な感じ、経済的な圧迫を受けておるか、こういう点について次官はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/34
-
035・島村軍次
○島村政府委員 横田さんから統制をはずすことが農民の声だという賛成の御意見を聞きまして、われわれもまことに同感でありまして、その通りだと思います。それで、ただいまお話のはずせない場合の農民経済上の問題は、要するに価格の点にかかつて来ると思います。今の価格が農民の期待の価格になつていないということは、これはお話の通りであります。しかしこれは消費者という相手のあることでありますし、農民の希望通りにも行かぬというのがこれまでの政策であります。農政の立場から行きますと、生産費を償つた価格になるべく引上げたいという政策を、漸次とりつつあるのでありまして、今回の生産価格においても、さような意味を漸次加えつつあるわけであります。ただ一時にやりますことは、消費者価格に非常な影響を持つことでありますので、そこで政府の方もいろいろ財政的の見地もあつて、今日の政策がとられておる。ちようど消費者と農民との間のいいところをとつておるということが結論ではないかと思うのであります。農民の立場からいえば不十分であります。それはお話の通りであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/35
-
036・横田甚太郎
○横田委員 それでは経済政策において自由でなければならない建前の自由党が、現在農村において統制をやつている。そして供出をやつている。これはほんとうの統制の形や供出の形だと思つているのですか。これは供出でもなければ統制でもないと思う。食糧を農村から集めて来て、そうして町の人に食わす。食わされた人たちは、アメリカの余つた品物を細工するために安い賃金で働かされる、この目的のためにやられているのだと思うのです。だから政府のやつておるところにひとつも統制のにおいもなければ、供出のにおいもないのです。それがいわゆる私たちの立場と自由党の政府の立場との違いなんです。そこはちよつとわかりにくいだろうが、簡単に言いますと、統制というもの、あるいは供出というものは、農村において一方においては米が余つているにもかかわらず供出が済んでおる。片方においては米がないにもかかわらず供出が終つておらない。こういうようなばかげたことがあつてはならないのです。私はそう思う。おそらく次官もその点は同感であろうと思うのです。ところが農村の現実におきましては、米がない人にまだ供出がやかましく言われておる。米の余つている人が供出が終つておる。だから日本の国においては、統制と供出のもとにおいて一千万石の米麦がやみに流れる。これを何とかかんとかごまかすことによつて自由党が選挙に勝つて、そうして天下の政権を握つた、こういうインチキなことが行われている。その点におけるところの政府のお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/36
-
037・島村軍次
○島村政府委員 これは御議論の点だと思います。事実はその通りでありますが、これは割当の公正が期せられておらぬからです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/37
-
038・横田甚太郎
○横田委員 それでは割当の公正はいつごろになつたら期せられるのですか。これは孫子末代まで期せられないのですか。私もここに書類を持つておりますが、供米がどこまで行つても頭打ちになるところがあるのです。全国の統計を見ますと、今年は九十何パーセントも出て、そこで供米が頭打ちになつておる。ところが各府県に行つてもどこでも頭打ちになる。その頭打ちになるときに強権発動をやつて米をかつさらつて来る。この強権発動をやるために生産させるのが日本の農村に対するやり方である、だから悪く言うと、農村の一部の米を持つておる人が一つの権力をつくつて、その権力機関によつて、米のないところからでも米をかつさらつて行くために供出制度がどられている。これが供米の頭打ちの原因になつておる。こういうことを認めるか、認めないかということを伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/38
-
039・島村軍次
○島村政府委員 民主的機関である農業調整委員が、公平に割当をすべきなのが、どうもいろいろな勢力関係か何か知らないが、末端に行きますと、なかなか公平に割当てられない。それである勢力のために左右されたというような弊害も多々あるようでありますが、そういう弊害を漸次改めて行かなければならぬ、こういうことでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/39
-
040・横田甚太郎
○横田委員 それでは政府が提案されましたところの、食糧の政府買入数量の指示に関する法律案のどこに改めた線があるのですか。一体これが食確法から改まつた点は、麦をとらないというところが改まつただけで、あとの点は悪くはなつても改まつていない。決議機関が諮問機関になつた。ところが実際村においては、農民自身に権限のあるものが何もないのです。これは一体どこが改まつておるのですか、どう改めたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/40
-
041・島村軍次
○島村政府委員 法制の上では、お話の通り決議機関を諮問機関にかえたということなのですが、実質的にはその調整委員の意見を聞いて割当てる。これは差異がないのであります。これは結局現実の問題で、法制を超越して割当の公正を期するということは、調整委員の頭の問題になつて来る。また今日までの経過から見まして、漸次改めつつあるわけでありまして、その公平を期するということは、法制上は書くにも書けなかつたことですから、別にその点はかわつておりませんが、そこは御承知を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/41
-
042・横田甚太郎
○横田委員 調整委員の頭ということも言われますし、公平ということも言われますが、その内容を分析して考えてみますと、そういうことは言えないのです。たとえば農村で米をつくつておる。そうしてつくつておるのに対して食う人がおる。食う人には食う分量がきまつている。食うだけの米を先に確保しろ——これは法案の中にも書いてありますね。確保しろ、そうして余つたものを出せ。これが法規の中心です。ところが、前にも述べましたように、災害によつてそれがとれない場合がある。そのときは食確法第八條の規定により、当然減額さるべきものです。食糧調整委員会がどれだけ頭がかたくても、政府に対するごますりであつても問題ではない。負けらるべきはずのものが負けられないところに問題がある。だからあなたの言われる公平の内容とは、農業の作柄を見るというような意味合いにおいて、それを一体どう適用するのですか。もつと簡単に言いますと、供出を買入れと名前を改める。供出を買入れと名前が改められたものであるならば、作報というような、農村の作柄を密告し、そうして農民ににくまれて、とれていない米をとれておるように高く吹きつけるような機関がどうしてあるのか。ここに政府の食糧政策の矛盾があるのではないかと思います。たとえて申しますと、民主化された農村においては、農民は、引合う価格であるならば、十月自分がつくつた米は売るべきはずだ。これはあなたのところの農政局長も、農民というものは、貧乏して来ますと大豆とかいもとかを食つて米を売るものだと言つておるように、これは出すもの、売るものなんです。それを出さないように、売らないように隠すように考えるのは、値段を安くめちやくちやに取上げるからです。それを、ごまかしてはいかぬぞといつて検閲する。もつと惡く言うと、攻奪するところの強盗の手先の一番先頭に立つのが作報です。作報というものは大体そんなものであつてはならないはずですが、実際においてはそうなつておるのです。だから私が要約して伺いたいのは、あなたが言う公平、あるいは調整委員の頭脳、こういうのは一つの形容詞的な言いまわしであつて、現に食糧政策の中心である供出制度をやつておりながら、その供出が供出としての機能を発揮し得ない。それをごまかすために作報がある。この点に対する考えは一体どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/42
-
043・島村軍次
○島村政府委員 どうも頭でやり過ぎていたというような弊害もあつたわけでありますし、農家の收量を把握するこは、実際問題としてなかなかむずかしいのです。私がつくつておる田は三つありますが、三つとも私は知つておりますけれども、作報の人ではなかなか把握できないような状態が現実の情勢です。そこで、なるべく鏡に映るような調査をするには、やはり公平でなければならぬが、公平の見地に立つとやはり作報の調査が一番公平であります。そういうことで、作報にもむろん欠点はありますけれども、これは漸次切りかえるというか、頭の切りかえなり、調査の方法も、理論的にかつ現実に合うように調査をやらすことに努力いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/43
-
044・横田甚太郎
○横田委員 農業をやつておる者はあなただけでない。むしろ私たちこそ苦しんだのです。農業調整委員の中でも、作報のにくたらしさといつたら実際しかたがないのです。そこであなたに聞くのですが、作報の欠点と言われますが、作報の欠点はどんなことかということと、その欠点のあるところの作報が頭でやり過ぎる——これは農業調整委員会も含まれているのです。そこで農村の收量がつかみにくいとあなたが言つておるにもかかわらず、つかみにくい現状のもとにおいて供出を出せと言いつけられます。言いつけられた場合に、それをとりに行く。とりに行つても出ないものについては強権を発動させて、体刑あるいは罰金に処せられた農民の損害は、一体どこで補われるか、この点が私にはわからないのです。これは今も起つているのです。だから今全国において出ておりますように、供米の頭打ち、東北四県は完納おぼつかなしの記事によりますと、供米が東北地方が意外にも供出不振を続け、いまだに二十五万石余を残す実情であり、青森、宮城両県のごときは依然として八〇%台を乗り切り得ないありさまで、この東北地方の供出不振が供出頭打ちの主因となつている。こういつておる。この具体的な問題といたしまして八〇%しか出ておらない。出ておらないところのあとの二〇%は、次官の考えによりますと、頭の行き過ぎなんですか、それとも出さない農民が惡いのですか。それは一体どういう原因なんですか。それを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/44
-
045・島村軍次
○島村政府委員 それは古い調べで、今は大分完納に近いと思つております。実際に少し遅れた事実はあると思いますが、おそらく完納してもらえるものと期待をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/45
-
046・横田甚太郎
○横田委員 これは大分古いと言われますけれども、それじやこれよりもつと新しい資料があるのですか。いつも政府の資料が古いのであつて、新聞の資料の方が新しい。これが日本の農政なんだ。これは三月の九日で、三月二十日前後の新聞におきましても、供出は全部納まつておらない。これは農林省のあなたも知らないし、私の方もはつきりわからない。しかし納まつておらないことは事実であります。納まつておらないところの供米というものは、農民が出さないのか、出せないものをとろうとするところに無理があるのか、その点の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/46
-
047・島村軍次
○島村政府委員 出してもらえるものとして、政府では極力督励をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/47
-
048・横田甚太郎
○横田委員 そんなことを聞いておるのとは違います。出してもらえるものとして督促しておる、それはあたりまえで、廣川さんの念仏と同じだ。出してもらいたいとか、出してもらいたくないとかいう問題ではないのであつて、農民は出すものは出しておる。ところが出せなくなつておる原因はどうですか。これはほんとうにあると思うか、ないと思うか、それを聞いておるのです。
それからこれは東洋経済新報という雑誌の生活読本という特集号になつておるものですが、これにこういうふうに出ております。二十五年産玄米は公定価額で一石五千五百二十九円に決定されておる。これに対しまして消費者価格は、十キロ当り精米にいたしまして五百十五円に定められておる、こうなつておるのです。ここには外国の米の値段が出ていないのですけれども、私の計算によりますと八千円から一万円で買われておる。自由党は自由主義経済が好きなんですから、高く買わされた米であれば、自由主義的な経済の法則によつて、もうけとか営利とかいうものが中心になるのですから、もうかるように売らなければならないのですけれども、なぜ日本の米より一割安く消費者に配給しておるか、四百六十五円で配給しておるが、これは一体どこに原因があるのですかということを聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/48
-
049・島村軍次
○島村政府委員 あなたはこの前の食糧庁長官の答弁をお聞きになつたことと思いますが、実は繰返されると困るということを前提に申し上げたいと思うのです。価格は、消費蔵町嗜好その他の情勢を考えて、日本米と外国米とは味においても違いますし、いろいろ勘案して一割下げて配給しておる、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/49
-
050・横田甚太郎
○横田委員 味においても、日本人の嗜好においても違う、それはよくわかります。わかるのだつたら、なぜ惡いものを高く買つておるか。そういう現実を認めるか認めないかということです。こんな高いものを売つておるものに、いつまでたつてもわれわれはありがたいありがたい、援助してくれる、こんなことを言つていなければならないのか。しかもこういう惡いものを高く買つて、安く売るところの赤字を補うために、日本の農村においては、自分のいい米を安く買いたたかれる。これはわかりますね。そういうような経済的な條件のもとにおいて、どうして日本の農民が供米を出さなければならないという考えになれるかということが一つの問題なんです。だから自由党の人が言うように、供出ということ、統制ということに対しては、農民は心の底からいやがつておる。だからマッカーサー元帥が農村に与えましたところの十六の原則の中にも、恣意的に農業生産を阻害するような統制というものを早く撤廃しなければならない、こう言つておるのです。ところがそれができておらない。なぜできておらないかといえば、片方においては、供出をとつてくれると困ると言いながら、片方の農村においては供出をとつてくれなければ困るという地帯もある。なぜこれがあるかといえば、自由な経済の形になつておらないからである。今年におきましても、惡い米、小麦等の食糧を買うために、日本においてわれわれは二百二十五億の補給金をとつておる。この補給金によつて日本の良質の米との競争をのがれるようにハンデイキヤツプをつけられた米が入つて来る。だから供出論議が本格的にならず、日本の農民が民主化しない。そこで要約すると、このくらいまわりくねつたわけのわからぬ農業政策をやつておる政府に対して、日本の農民がいわゆる生産意欲を増大いたしまして、日本の食糧の増産に寄与するようなことができると思えるかということを承りたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/50
-
051・島村軍次
○島村政府委員 不幸にして全体の数量が不足いたしておりますので、相手から買う場合に、安く買い上げることができないので、いろいろ交渉を進めて、なるべく安く入れてもらうことに努力をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/51
-
052・横田甚太郎
○横田委員 相手のものを安く買えないのは、日本に食糧が足りないからだ。そのためには日本において食糧の増産をやらねばならない、こう言う。これは後ほどにいたしますが、その場合に、足りないから外国から高く買わされた。それがために歴代の日本の政府が、補給金として食糧にどのくらいの金を払つたかということを承りたい。これは計算が非常に複雑で、よほどなれた人でもできない。あるときにはこれはガリオアだと言い、あるときには何だとか言つて、わけのわからないように、計算のできないようにしてある。
そこであなたにはつきり聞いておきたいことは、日本がこういう形において外国から食糧を入れる、あるいは食糧を押しつけられる。これがために外補給金並びに食糧によつてわれわれが負担させられたところの金額は、正味のところどのくらいあるんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/52
-
053・島村軍次
○島村政府委員 昨年度が四百何十億……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/53
-
054・横田甚太郎
○横田委員 何十億なんという数字がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/54
-
055・島村軍次
○島村政府委員 四百と何十億か、はつきりわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/55
-
056・横田甚太郎
○横田委員 わからなかつたら、午後でもいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/56
-
057・島村軍次
○島村政府委員 本年度の予算では、御承知の通り二百二十五億、こういうことは予算を御審議になつておれば、すぐわかることです。あなたは予算委員であつて、私に聞かれる前にすでに御研究になつておるはずだと思います。私は数字をあまりはつきり覚えておりませんので、四百数十億ということで申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/57
-
058・横田甚太郎
○横田委員 あなたはそういうことを言いますけれども、予算委員であろうと、政府のあなたであろうと、廣川さんならよけい知らぬ。なぜ知らぬか。食糧庁長官に聞いてみなさい。長官まで知らぬと言う。たとえばこの米が入つたために、この小麦が人つたために、このとうもろこしが人つたために、この食えない妙な砂糖が入つたために、われわれは非常に困つている。一つは価格の点において困る。一つは日本にえさをやつている。えさをもらつている者はえさをやつているやつに文句を言えなということ。ここに日本の政治の自立性がないというのだ。だから何ぼもらつておるかということを聞けば、ガリオアの場合においては計算ができない、この場合には数字が立てられない、こんなことばかり言つて、逃げているじやないか。だから終戦処理費の計算にしても、お尋ねいたしますれば、あなたは予算委員としてはつきり答えられるとおつしやると思う。池田蔵相に言わせますと、二十億五千万ドルの金が対日援助費として出ておる。まことにありがたいことだと言う。わが日本共産党の正しい、具体的な基礎によつて計算しましたところによれば、日本にアメリカ人が来ているために出した金は、三十億ドルを越えている。それは援助だ援助だという国に対して、もらつた金額よりも、アメリカの兵隊さんが来ておつて、その兵隊さんを日本において訓練して、その訓練された兵隊さんが朝鮮に応召する、こういう使途に出した金の方が十億ドルも多いという計算になる。だから計算のめどが立てにくいので、権威ある政府の役人に対して、何ぼ来ておるかということを聞くんだ。予算書だけでわかるというなら、調べて昼から答えてもらいたい。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/58
-
059・島村軍次
○島村政府委員 あとから申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/59
-
060・横田甚太郎
○横田委員 それからまだあるんですが、午後にしますか、今やりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/60
-
061・千賀康治
○千賀委員長 これをもつて本日は散会いたします。
午後零時五十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101004988X02619510322/61
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。