1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十八日(金曜日)
午前十一時四十六分開議
出席委員
委員長 長野 長廣君
理事 岡延右エ門君 理事 小林 信一君
理事 松本 七郎君
岡村利右衞門君 尾崎 末吉君
尾関 義一君 甲木 保君
高木 章君 根本龍太郎君
本間 俊一君 八木 一郎君
井出一太郎君 坂本 泰良君
渡部 義通君
出席国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
出席政府委員
文部事務官
(大学学術局
長) 稲田 清助君
文部事務官
(社会教育局
長) 西崎 恵君
文部省事務官
(調査普及局
長) 関口 隆克君
委員外の出席者
専 門 員 横田重左衞門君
専 門 員 石井つとむ君
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五月十八日
委員柏原義則君、鹿野彦吉君、佐藤重遠君、平
島良一君及び若林義孝君辞任につき、その補欠
として尾関義一君、岡村利右衞門、本間俊一君、
八木一郎君及び尾崎末吉君が議長の指名で委員
に選任された。
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本日の会議に付した事件
教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内
閣提出第二一号)(参議院送付)
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001・長野長廣
○長野委員長 これより会議を開きます。
参議院で修正の上送付されました、教育公務員特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/1
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002・渡部義通
○渡部委員 過日学術会議の方から、研究者の身分に関する法案が上程されたような場合には、学術会議の方に諮問してほしいという要望がありまして、委員会としてはこれを了承した上に、学術会議代表との懇談会を開いたのであります。その際学術会議の代表の方から、学術会議としては今上程されておるところの教育公務員特例法の一部改正の件について、まだ十分意見がまとまつているわけではないから、意見をまとめた上で、さらに委員会との懇談を開いてほしいという申出が当日あつたわけであります。それでこの点についても、委員会はこれを了承しておつたのでありますが、その後学術会議では、聞くところによりますと、こうした問題を取扱う学問思想自由保障委員会を特に何回かにわたつて開いて、意見をまとめて、委員会の方に申し出るばかりになつており、その懇談の結果、申出がなされることを待つておつたわけであります。私自身からも、先日の委員会において、この点を委員長に注意を申し出て、できるだけ早く学術会議の方との懇談会を開いて、権威ある意見を聞くべきであるということを申してあつたわけでありますが、その点はどういろふろに処置されておるのか、またいずれこの法案が委員会において決定されるでありましようが、これは決定される前にぜひとも、学術会議の方の意見を聴取する必要がある。これは学術会議代表に与えた委員会のいわば公約ともいうようなものがあるばかりでなく、学術会議の権威を尊重する意味においても、ぜひともそれがなさるべきであるという考えを私は持つているのであります。その点を委員長にお尋ねすると同時に、そのようにはかられることを希望します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/2
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003・岡延右エ門
○岡(延)委員 ただいま渡部君が申された学術会議の意見を聞く——諮問という言葉を使われましたが、それは少し強過ぎると思いますが、意見を一応聞こうではないかということが、委員会の意向であつたことは事実でございます。しかしながら、本法案は両院協議会を開く必要のあることは必至でございますし、この法案全体が会期切れのために成立しないという結果を見るおそれが多分にあるのでございまして、かくては多くの教職員の要望に沿うことができないおそれがありますので、この際一応そういつたようないきさつはございましたけれども、本日の午前中に討論採決をするということについては、渡部君も了承されたのでございますから、まあひとつこの点は見送つていただきたい、そういうふうに処置していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/3
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004・渡部義通
○渡部委員 今日の午前中にこれを上げるということについては、まだ私自身ははつきり知つておりません、ただ私の申し上げることは、先ほど申した理由によつて、その処置をとらるべきであるということだけを強調するにとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/4
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005・松本七郎
○松本(七)委員 この法律案は、岡さんの言われるように、両院協議会に持ち込まなければならぬような状態にあるのですが、それだけに、われわれとしてもいろいろな権威のある機関の意見を聞くことが必要ではなかろうかと思う。ただ国会の運営上相当急がなければならないということは、よくわかりますので、万やむを得なければ、いたし方ないと思うのですが、しかし、きようも学術会議の方から、ぜひ意見を述べさせてほしいという申出があつたやに聞いております。あまりそれが時間をとるわけでもないのですし、せつかくこの前来られた方々も、せんだつては個人的意見であつたが、もう一度ぜひ正式の代表の意見を聞く機会をつくつてほしいという御言葉もありましたし、何とか便宜をはかつて、ちよつとだけでも意見を聞いてから、やつていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/5
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006・岡延右エ門
○岡(延)委員 仄聞するところによりますと、学術会議の総会の結論は、まだ出ていないそうであります。そうしてみますると、これをいろいろの機関にかけて総会の結論を出すまでには、相当の時日を要する。現段階においては、これが実情だそうであります。また先ほど松本君の言われた、代表の方が見えて云々という言葉がありましたけれども、それは専門委員室に、まあ正式代表と言つていいかどうか、その点ははつきりわからない程度の方がお見えになつたそうですが、その方は、委員会の措置にまかせるからというのでお帰りになつたそうであります。本日は、とうていその方を呼ぶこともできないような実情であります。この間、松本さんも御承知の通り、本日の午前中に討論採決をしようということに、委員会において決定されたのでありますから、どちらかひとつ、さようにしていただきたいと思います。この意見を十分徴するということができなかつたのは、皆さんと同様、私も遺憾には存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/6
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007・長野長廣
○長野委員長 渡部君から、委員長の意見をも求められるやに承りましたから、御参考までに申しておきますが、先ほど岡君あるいは松本君からお話のあつた通り、学術会議の方からは、今朝代表的と言いますか、そういうふうな人が見えまして、先日来の行きがかりについての結論を聞きたい。しかし、まだいろいろあちらとしては取運ばなければならぬ問題が残つており、必ずしも出て意見を述べるということをしなくともいいやに承りましたが、なお特にその方へかかりました横田専門員がおりますから、横田君から、きわめて簡単に述べていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/7
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008・横田重左衞門
○横田専門員 では私から簡単に事情を申し上げます。小椋という学術会議の部会の一員の方が見えまして、この前の文部委員会の結果、どういうふうにお決めになりましたかということを聞きにおいでになつたわけであります。先ほど岡委員から申されましたように、確かに事情、御意見を聞くということになつておりましたが、なおよく小椋さんにお聞きしてみますと、学問思想自由保障委員会としての結論は出たけれども、日本学術会議全体の代表意見というところまでは、まだ行つておらないのだそうであります。学術会議の代表意見といたしますには、総会を聞いて出さないと、ならないような状態らしいのでありまして、それにはまだ相当な時日がいるということで、こちらの法案の審議もたいへん急がれておるようだからという事情をお話しましたところ、それでは、そこまでお急ぎならば、どうぞ委員会でお決めいただいた結果に私ども従いますということで、帰られました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/8
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009・長野長廣
○長野委員長 大体そういう程度でありますが、渡部君の御心配になつておりまする点も、それらの間に大体了得していただくことができると思います。いかがでしよう、もうこの辺で……。
〔「了承々々」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/9
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010・長野長廣
○長野委員長 では、さよういたします。
本法案に対する修正案が、岡委員より委員長の手元に提出されておりますので、その提案説明を聴取することにいたします。岡延右エ門君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/10
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011・岡延右エ門
○岡(延)委員 私は教育公務員特例法の一部を改正する法律案の参議院送付案について修正案を提出しておきましたが、その修正の理由について簡単に申し述べます。
第一点は、第十四条の修正であります。すなわち結核休職教員の療養期間の問題であります。およそ本条が制定せられました趣旨は、これら教育公務員に対する保護をも兼ねて児童生徒の保健と教育上の配慮に基くものであろうかと思います。ただ、教育公務員の保護には努力すべきではありまするが、他の公務員とあまりにも均衡を失し、また財政的にも不当に地方公共団体を圧迫するということは、現状から言つて決して好ましいものではない。そこで、結核休職教員のために、特に必要と認めるときは、三年まで休職期間を延長できるとされたことは、われわれとしましても、できるだけ保護を実現したいという気持において、その趣旨には賛同いたすものでありますが、問題は、委員会におきましても論議されましたように、特に必要と認める場合の認定は、実際運用上きわめてあいまい、かつ困難なことでありましてむしろこの場合申し上げたいことは、できる、できないということを左右する財政上、予算上のことを明確にすべきだと考えるのであります。三年まで休職期間を延長すれば、結局は予算が必要となるわけでありますから、ここに「予算の範囲内において」と修正することにより、将来予算を増額するにもやりやすくなりますし、また任命権者の方においても、実際上この点が明確になれば、責任を持つて本条制定の趣旨に沿つた措置がとれるものと思うのであります。
第二点は、職員団体に関するものであります。この点に関する政府原案は、市町村の教育行政は、その市町村の責任において実施さるべきものであり、市町村の学校の職員は、市町村の公務員であるとの原則から言つて、他の市町村の公務員同様、地方公務員法の原則に適合するよう団体を結成することにしているのであります。しかも市町村においては、市町村が給与を負担しない学校職員が多いという点をも考慮し、また一方本来の公務員制度の体系を尊重しつつ、都道府県当局と交渉する道を開くために、これらの公立学校の職員がその都道府県内において連合体を結成することを認めたのであります。このような配慮がなされることによつて、一面市町村の学校のうち、小学校、中学校等の職員の給与に関する都道府県当局との交渉が法的に保護され、また他面施設の整備、福祉に関する事項等は市町村当局と交渉できるように、両面について処置ができるようにしておるのであります。そしてこのことは、職員団体の民主化を大いに助長することともなり、また市町村、都道府県の当局も、団体の登録、交渉等の事務についてきわめて容易に双方納得の行くように対処できることにもなるのであります。しかるに参議院の修正は、以上述べました政府原案をそのまま是とするとともに、そのほかに附則第四項にあるような職員団体を認めようというのであります。その趣旨は、もつぱら給与の責任がどこにあるかという実際上の配慮に基くものであろうとは思いますが、その点は連合体を結成することによつて十分措置されるのであります。われわれが、ここで考えなければならないのは、職員団体が真に民主化され、同じ所に勤務する職員が、自分たちの声を率直に開陳できるような方向に運営されることであり、また教育行政全般の責任が、当該地方公共団体にあるという原則に即したものにしなければならないということであります。従つて参議院修正は、これら最も重要なる点を、単に便宜のために改悪したものといわざるを得ないのであります。
以上が修正案の説明でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/11
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012・長野長廣
○長野委員長 岡委員の修正案に関して御発言がございますか。別に御発言ありませんか。なければ本法案に対する質疑を終了することにいたします。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/12
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013・長野長廣
○長野委員長 御異議なしと認めます。
それでは、これより参議院送付、教育公務員特例法の一部を改正する法律案に関しまして、修正案及び原案を一括して討論に付します。岡委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/13
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014・岡延右エ門
○岡(延)委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま御説明申し上げました自由党提出の修正案及び同修正案を除く原案について、賛成の討論をいたさんとするものであります。
修正の理由は、修正案御説明の際明らかにされた通りでありますから、再び繰返すことを避け、結論として、修正案及び修正部分を除く原案に賛成するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/14
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015・長野長廣
○長野委員長 小林信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/15
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016・小林信一
○小林(信)委員 民主党を代表して申し上げますが、民主党といたしましては、ただいまの自由党の修正案に対しましては反対でありまして参議院から送付されました修正案に対して賛成するものであります。
その自由党の修正案に対する反対の点を申し上げますと、教職員の結核療養の問題でございます。ただいま自由党の方から申されました点も了解できないわけではありませんけれども、しかし教職員の実態を考えますときに、他の公務員とのつり合いというような点も、お考えになられたようでございますが、これは教育公務員の置かれておる立場を考えますときに、決して他の公務員とのつり合いが、比でないということが言えると思います。それは教職員が生徒を相手にしておる点からして、結核にかかる率が多いということは、事実が証明しておることでありますし、また教員がそういう病気にへかつておる場合には、常に子供を対象にしておりますので、非常に危険があるのでございます。これは地方公務員法が制定される以前においても、文献省におきましては、その妥当であることを認めて、他の公務員が二年の休養期間を認められたときにも、教職員に限つては、一年延長されまして、三年を至当と認められておるのでございますから、これはやはり、その実績から考えましても、ここに修正された三年ということが至当である。またこの三年を実施するために、できるだけ国家は心配してやることが、教育行政確立の面からも、また国民の保健衛生の面からも、妥当であるわけであります。ただいまの修正案の趣旨の説明の中に、「特に必要があると認めるときは」という言葉は非常にあいまいであつて、一番大事なことは予算というものが問題であるか、予算の範囲内ということをつけることが至当であると言いますが、ただいま私が申しましたように、教職員の実際の問題と、そして国民の保健衛生というような面からして、ますますこの予算の獲得ということは、私たちの責任においても、これは確立して行かなければならない問題でありますから、かえつて予算の範囲内という言葉をつけることによつて、今後その予算を獲得することに支障が起るのではないか、こういうことを考えまして、今日の段階におきましては、残念ではございますが、「特に必要があると認めるときは」ということを加えて、私はこの満三年を獲得することを主張したいのでございます。地方財政の問題もありますけれども、事実各府県におきましては、この点を憂慮されまして地方の責任において二年半なり、あるいは三年なりというものが、すでに考慮されておる。そういう点からいたしましても、この法律がこの程度でありましても、三年を獲得してかえつて予算の範囲内というふうな、非常に立法的にもおもしろくない言葉をつけない方が、教育行政上からいたしまして妥当ではないか、こう考えて、自由党の修正案に対して、私は反対するわけであります。
さらに、職員団体の問題でございますが、これも私は自由党の提案する修正案に対しましては反対でございますいろいろその提案の理由を説明されれたのでございますが、まず現状の実態を考えてみましてなるほど地方公務員法には、一応地方自治体の当該所属職員に対して職員組合をつくらせるような形になつておるのでございますが、実態におきましては、現在はまだ町村に教育委員会というものがつくられておらないのでありましてその給与あるいは勤務時間等におきましては、県の教育委員会が一切責任を持つておるのでございますから、健全な労働組合の育成ということは大事なことであり、しかも昨日も本会議におきまして、自由党の責任といたしまして労働大臣からもその点が主張された点を考えてみますと、やはりこれは、参議院から修正案として出ておりますように、現状におきましては、対等の立場で給与あるいは勤務時間等の問題は交渉できるように、各町村に教育委員会が構成されるまでは、現状のまま県単位を認めて行くということが正しい、こう考えるものであります。この政府、原案なるものが、連合体を認めるという形で、現状をいささか考慮されておるようには思うのでありますが、やはりこれは現状において問題を律すべきであつて、健全な労働組合の育成、そして今の教育民主化、あるいは教育行政の確立というような点を考慮いたしまして、あくまでも対等の立場で交渉できるように、都道府県単位を認めて行くべきだと考えております。しかもまた各町村におきまする教育委員会というようなものも、相当今世論として異見があるのでございます。教育委員会法には、なるほど昭和二十七年の十一月三十一日以後は、町村に教育委員会を置くということになつておりますけれども、しかし地方の実情というものは、あながちこれを了解しておらないような状態でありますので、この問題をもわれわれは再検討しなければならぬという点からしまして、私はこの参議院からまわつて参りました修正案に賛成いたしまして、自由党の提案する修正案に反対するものであります。従いまして、修正案に反対して参議院から送付されました修正案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/16
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017・長野長廣
○長野委員長 松本七郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/17
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018・松本七郎
○松本(七)委員 私は社会党を代表いたしまして、参議院の送付案に賛成し、岡委員の発議による修正案に反対するものでございます。
その理由の第一は、第十四条第一項但書中の問題でございます。この結核療養の問題は、長い間の問題であり、国会でもずいぶん努力し、現在までの内閣も引続いて非常な骨を折つておつたのですが、それがいろいろな関係で、三年にすることができずに今日まで参りました。この問題は、他の公務員との関係、その他を考慮した上で、その均衡を保つ上から、教員の立場を考えてどうしてもこれは積極的に三年にすることが必要だという考えに基いて、政府も今日まで努力されて来たものであることを私は信じておるのであります。それでありますから、参議院で修正いたしましたように、「特に必要があると認めるときは」という条件を付すること自体に、まだ私は不満足なんでありまして、むしろこの教員の結核療養は、積極的にすべてを三年にするということを私どもは目標にしておるのであります。それでありますから、せめてこの参議院送付案にありますように、特に必要があると認めるときは三年にするというくらいのところを一段階として私どもはやつて行かなければならぬと考えております。それを「予算の範囲内において」ということをつけますると、なるほどこれが予算の範囲内であるということは、当然なことでございますから、あつてもなくてもかまわないようでございまするが、しかしこれは、第一には、当然なことは書かない方がいいという理由と、もう一つは、これを書くことによつて、何らか予算を積極的に獲得するというよりも、むしろこれを削るための口実に使われるおそれさえ、私はあると思うのであります。この問題は、国会もあるいは政府も、今まで長い間努力して来た実情にかんがみても、私はこういう文字はここに挿入しない方がいいと考えるのであります。
それから交渉団体のことでございますが、これも今小林さんから言われましたように、教育行政における教育委員会制度その他が、まだすつかり目標通りのところまで行つておらないということと、それから一方には、教育財政の問題が、まだ地方では少しも確立しておらない。どうしても県単位ということで、おそらく将来もこれを中心にやつて行かなければならぬ実情にあるのではなかろうかと思います。それでありますから、その交渉団体というものも、連合体というようなものでは力が弱く、これでは足りない。やはり対等な立場に立てるような状態に置くのが私は当然なさるべきことであろうと思うのであります。そういう意味から、この修正案はむしろ私は不当であり、改悪になると信ずるのであります。そういう意味で岡委員の修正案に反対し、参議院の送付案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/18
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019・長野長廣
○長野委員長 渡部義通君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/19
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020・渡部義通
○渡部委員 日本共産党は、長期休養を要する結核患者の休職期間を、二年から三年に延長するという事柄については、全面的に賛成であり、これはぜひともやらなければならないと考えておるわけであります。その点で、不満足ながら参議院の修正案の方にむしろ賛成し、自由党の修正案には、小林君及び松本君と大体同様の理由において反対であります。
しかしこの改正案全体を通じて見ますときに、私たちはどうあつてもこれに賛成するわけには参りません。もともと現行法そのものが、教員の思想品活動を束縛する本質を持つものでありまして、現行法がかつて上程された当時、すでに教職員大衆の間から強力な反対が起き、わが党としましても、断固としてこれに反対したものであります。しかるに、本改正案は、さらに現行法を改悪しまして、教職員の身分保障や、個人及び団体活動の上に一層はげしい修正を加える内容を持つものであります。すなわち第五条は、教職員がその意思に及して免職、ないし転任される場合には、現行法によりますと、審査受ける側からの請求によりまして大学管理機関は公開審理を行わなければならないことになつており、告発された者が、自分の代理人、つまり弁護人を選んだり、証人を出席させたりするなど、幾多の方法で、自分の利益を守る手続が規定されております。この手続をとり、またこの手続を当局にとらせることによつて、不利益処分を受ける側の当然の権利を、ある程度まで実現することができておつたのであります。ところが改正案においては、これらの事項が大部分削られておる、公開審理等の手続がとられるかどうかということは、大学当局の方に一方的にまかされておる。つまり大学当局は、処分に付すべきものをみずから告発しておいて、被告発者による弁明や反論の機会を、かつてに制限することができるようになつておるのであります。不利益処分者には、さらに人事院に訴える道が残されておるのでありますけれども、実際には、大学当局者による判定というものが、その場合においても決定的にものを言うことは、大体推定にかたくありません。ところが第五条の改正の理由につきまして文部当局がなしたいろいろな説明—これは一々反論はいたしませんが、その説明には何ら根拠というものが考えられない。少くとも非常に弱い根拠であつて、納得させるようなものはありません。文部当局の説明では、少くともこの改正の真実の目的が隠されておる。第五条の改正の真実の目的は、はつきり申しますれば、レツド・パージを手軽にやつてのけようとするところにあると、私たちは考えます。現に不利益処分について、係争事件が諸方に起きました。これを見ますと、たとえば東京大学にしても、水戸大学、神戸大学にしましても、すべてが、実際上組合活動をしたとか、あるいは政治的、思想的な理由に原因を持つものである。これは私は、特別弁護人として東大の公開審理に出ておりますけれども、そういう事実にあることは疑うことができません。しかも過日参議院で、社会党の波多野議員が、レツド・パージの実行を文部大臣に要求したのに対して、大臣は慎重に準備した上に、これを断行する旨答弁されております。その準備の一つこそが、私はこの第五条の改正になつたものであると考えておるわけであります。当局が、改正の理由をどのように述べられようとも、世人は敏感に、真実の目的と、その後に起つて来る危険について、これを見通しておるのであります。だからこそ、日本学術会議でもこれが問題になりまして、学術会議の学問思想自由保障委員会で、ただ一名を除くほか、全委員がこの改正案に反対であるということを私は聞知しております。
次に、第二十五条の六ですが、この改正案によりますと、昭和二十七年十月以降は、教職員組合の道府県連合体を合法的交渉団体として認めない。それぞれの市町村の範囲内でだけ、教職員は合法的交渉団体としての組合を結成すべきであるというようなことが予想されているのであります。これは結局、当局の説明や、また参議院で行われた討論、あるいは自由党等の説明から見ましても、その説明がどのようになされようとも、結局は組合を分断し、組合を有名無実にし、当局によつて教職員の操縦を自由にしようという方針から出たものであります。これは終戦以来、教職員の生活と自由を守つて、教育界あるいは学界の民主化に努力し、民主的、自主的な精神を教職員の間につくり上げることに非常に力があつたところの日教組に対して、あるいは日本勤労者の解放と日本民族のために、今日でも非常に力強く闘つておる日教組に対してこれを破壊しようという意が秘められておることは明らかであるし、実際上このようにされたならば、破壊されるのであります。
「共産党の見方なんだよ、宣伝をあまりやるな」と呼ぶ者あり。)政府は一方では、戦犯ないし軍国主義、あるいは極端な国家主義のゆえをもつて追放された人を、十数万その追放を解除しようとしておるということが伝えられており、これに準じて文部大臣は、同じ理由によつて追放された教職員たちの追放解除をする方針であるということを、この委員会においても言明されました。そうして他方では、今申し上げたように、大学から小学校に至るまでの進歩的な教員の追出しと、日教組の壊滅をもくろんでおられるわけであります。結果においてそうなるのであります。しかるに、このような公然たるフアツシヨ的な術策は、政府の方針だけから出て来ているとは、今日人々は思つておりません。このような教育に対する政策というものも、これは帝国主義者が一層これを切望しておるやり方なんであるということは、皆さんも御存じのように……。(「知らないよ、共産党だけだ」と呼ぶ者あり)イールズ博士のかの言動から見ても、これを見抜いているのであります。イールズ博士は……。(「討論だぞ、宣伝はやめろ」と呼ぶ者あり)レツド・パージ問題をひつ下げて、レツド・パージ問題の必要を宣伝し、主張しながら、全国の諸大学をまわり歩いて、全国の学生や教職員だけではなくて、日本の勤労大衆からはげしい反撃をくらつたことで有名なアメリカ人であります。(「そんなことは数寄屋橋ででもやれ」と呼ぶ者あり)政府は、われわれが、しばしば、今やじつおられる自由党の諸君にも申し上げましたように、軍隊の武力をもつて日本人民を押えつけ、再び軍国主義を日本につくり上げ、日本の物的及び人的な資材を、戦争のために利用しようと強引な工作をやつておるところの者のために……。(「脱線だ」と呼ぶ者あり。)日本の政府は働かされており、また実際上働いております。そうでありますと、このような法案の改正も、実はわれわれはこの働きの一つと見なければなりません。少くとも歴史的にはそのようなものとして、はつきり証明されるでありましよう。このことは、日本の教育の将来にとりまして、また日本の民族の一将来にとりましてほんとうにまじめに考える人ならば、日本の歴史的な悲劇を感ずるでありましよう。
(「共産党はまじめに考えていないじやないか」「簡単々々」と呼ぶ者あり)私はこういう歴史的な悲劇に手をこまねいて見ておるということは、日本人の気持からしましても、誇りからしましても、また民族的な責任からしましても、どうしてもこれは許すことができないという点に、反対理由の根拠を持つているのであります。これがわれわれの反対理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/20
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021・長野長廣
○長野委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより教育公務員特例法の一部を改正する法律案について、採決に入ります。
まず岡延右エ門君の提出の修正案について、採決いたします。岡委員提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/21
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022・長野長廣
○長野委員長 起立多数。よつて岡委員提出の修正案は可決せられました。
次に、ただいまの修正部分を除く原案について、採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/22
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023・長野長廣
○長野委員長 起立多数。よつて原案は修正議決せられました。
なお委員会の報告書につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/23
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024・長野長廣
○長野委員長 御異議なしと認めます。それではさように決しました。
本日はこれにて散会いたします。次会は追つて公報をもつて通知いたします。
午後零時二十九分散会
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〔参照〕
教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)に関する報告書
〔都合により別冊附録に掲載〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005115X02619510518/24
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