1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月三十日(金曜日)
午後三時十七分開議
出席委員
委員長 安部 俊吾君
理事 押谷 富三君 理事 北川 定務君
理事 田嶋 好文君 理事 猪俣 浩三君
鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君
花村 四郎君 牧野 寛索君
松木 弘君 眞鍋 勝君
武藤 嘉一君 加藤 充君
委員外の出席者
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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三月三十日
委員加藤充君辞任につき、その補欠として河田
賢治君が議長の指名で委員に選任ざれた。
同日
委員河田賢治君辞任につき、その補欠として加
藤充君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
住民登録法案(鍛冶良作君外三名提出、衆法第
二六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/0
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001・安部俊吾
○安部委員長 これより会議を開きます。
本日の日程中、まず住民登録法案を議題といたします。この際御報告をいたします。自由党、国民民主党、日本社会党、公正倶楽部各派共同提案の本案に対する修正案が委員長に提出されておりますが、これは諸君のお手元に印刷物で配付してある通りでございます。
この際おはかりいたします。本修正案は、共産党を除く各派共同提案で熱りますので、趣旨弁明及び質疑を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/1
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002・安部俊吾
○安部委員長 御異議なしと認めます。よつて本修正案の趣旨弁明及び質疑は省略することに決しました。
この際鍛冶良作君より発言を求められております。これを許します。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/2
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003・鍛冶良作
○鍛冶委員 提案者といたしまして、修正案に対する意見を一言申させていただきます。
まず第一に、第四条第一項第九号を削ることにつきましては、提案者においても、さしあたつて政令で定めるべき事項を予定してもおりませんし、将来同項第一号から第八号までに規定する事項以外の事項で、全国共通に住民票に記載すべき事項が生じた場合の便宜を考慮したものにすぎないのであります。しかし将来かかる必要が生じた場合には、法律をもつて記載事項を追加すれば足りるのでありますから、これが削除については異存はないわけであります。
次に第十条第一項中「利害関係人」とあるのを、「何人でも」と改めた点についてでありますが、挺案者といたしましては、住民票の閲覧等をなし得る者を利害関係人に限つたのは、何ら利害関係のない者が、住民票によつて他人の家庭の内部を知ることは適当でないという点を考慮したのでありますが、これを利害関係人だけに限ると、かえつて利害関係人の範囲をどうきめるかについて問題を生じ、市町村の情実による取扱いを可能にする危険もあるし、また戸籍法においては何人にも戸籍簿の閲覧等を許している関係もありますので、第十条第一項中「利害関係人は、」とあるのを、「何人でも」と改めることは、けつこうなことと存じます。
次に二十九条の修正についてでありますが、提案者といたしまして、住民登録事務が市町村の固有事務が市町村の固有事務である点にかんがみまして、国の干渉を排除するという趣旨から原案第二十九条のような規定を設けたのでありますが、住民登録事務全国的にその取扱いが統一されなければ、この制度の円滑な運用が不可能となりますので、修正案の通り、法務総裁に、勧告助言をする権能を与えることが必要であると考えますから、これに異存はございません。
次に、新三十条についてでありますが、住民登録はひとり市町村のみならず、都道府県及び国にとつても大きな利用価値があるのでありますから、修正案のように、国及び都道府県に、市町村に対し報告を求める権能を与え、その利用を便利にすることには異存がございません。
次に、新第三十一条についてでありますが、同条を修正案のように改めることについては、市町村の権限濫用を防止する上から適当であると考えますので、この点も修正に異議はございません。
次に、新第三十三条について、「陳述をせず、」とありますのを「陳述を拒み、忌避し、」と改めることも、法文としてより正確でありますので、この修正にも異議はないわけでございます。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/3
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004・安部俊吾
○安部委員長 ただいまより修正案及び原案を一括して討論に付します。討論は通告によつてこれを許します。加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/4
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005・加藤充
○加藤(充)委員 私は日本共産党を代表して、本法案の原案並びに修正案に反対するものであります。
まず第一番に、原案よりも修正案が、委員諸君の御努力によつて、きわめて良心的に修正を受けたことは、私認むるにやぶざかでありませんけれども、しかし原案に盛られ、そうしてわが党がまさしくその本質をえぐつて、反対しなければならない性格は、修正案によつても遂に抜くことはできなかつたのであります。そのまま残されておるのであります。まず第一番には、本法案は非常に卑屈な法律、日本人の名誉にかかおる法律である。日本人を動物にかえて行く法律ということを申し上げなければならないのは、まことに残念であります。元来外国人登録令その他をごらんになつてもおかりますように、また第二次世界戦争中に、ナチスがその侵略した国々において、どういうふうな住民対策を、この法案に関連するような場面においてとつたかといえば、これはこの法案の性格をみずから明らかにすることができると思うのであります。元来住民登録の厳重な施行をこういう形でやりますことは、自主権を持つた独立国が外国人に対して、あるいは本国がその植民地人に対してやつたことなのであります。ナチスがフランスに侵入し、支配しましたときに、まずまつ先に手をかけたのは、そうしてそのことを強行しておつたのは、やはり住民登録の問題でありました。そうしてナチスは至るところにおいて、被侵略国民、被支配国民の胸に番号をつけさして行つたのであります。ねこの首に鈴をつけるという言葉がありますが、私は、ねずみ自身が自分の首に鈴をつけるようなこういうような情ない本質をこの法案は持つておると思います。
第二点は、本法案は明らかに徴兵、徴用の法律である。こういうことを言おなければならない。もつと悪い言葉で言つて恐縮ですが、これは戦争動員の準備法であり、肉弾製造法であると言えると思うのであります。第四条第一項第九号は、皆さんの修正の御努力によつて削られましたが、第二項の市町村条例に白紙委任されたことは修正ができなかつたのであります。なるほど市町村の自治体法規におきましても、条例に関する規定は自治体本来の権限事務として与えられております。というよりも持つべきであり、持つておりますが、ここに私は指摘しなければならない重要な問題があると思うのであります。この第四条第一項に規定例示されております以外に、いわゆる住民票に記載すべき事項というものがあるだろうか、住民登録ということについて調査に記載すべき事項が、今第四条第一項に掲げられておる事項以外にあるだろうか。政府にあるいは関係当局者に聞きましても、まずまずそういうことは予想されないと言う。いろいろなことはあるが、しかしそれ以上のものをここでさしづめどうかということは考えられないと言うのです。ここに私はぼかしておると思うのでありますが、このぼかしたところに私はこの法案の正体が隠されていると思うのであります。しかも修正によりまして、第一項の九号の政令に白紙委任するところは削られまして、皆さんの努力は多としなければなりません。政令に白紙委任することは削られましたが、この第二十九条第三十条の修正加入によつて、そのことは巧みに補強されて、政令に白紙委任した第一項の第九号が削られても事欠かぬような処置がとられたのであります。すなわち条例できめさせる。そうして国家はこれに干渉する。そうして結局政令できめると同じ目的をこれで達することが巧みに保持されております。
それから第三点は、これは行政植民地化の法律であり、地方行政機関並びに地方行政職員に警察権力を持たせておるのであります。これは植民地の行政機関だけがやり得ることであり、またやつて来たところであります。第三十一条、三十二条、三十三条との関連を見れば、このことはよくわかると思います。そのことについてほかの法令にもこういう刑罰の規定があるではないかということでありますが、しかしほかの法令にもあるということは、必ずしも多額の罰金まで科して行政官吏を警察化して行く、行政吏に制裁権を持たせて行くというような事柄を、積極的に合理づける理由とはならないと思うのであります。一般の人たちに、一般的に義務を新しくつくつて行き、そうして一般的に刑罰を新製して行くというようなことは明らかにこれは————ここではごちやごちや言いませんけれども、憲法の人権の保障の点から見て第一番に問題のあるところであり、違憲の疑いきわめて大なるものであります。ほかの法令の処罰規定、またほかの処罰規定を持つた法令の性格と、この法令の内容、そうしてその刑罰規定を比べてみれば、おのづからそのことは明らかであると思うのであります。しかもこういうような点から見まして、上から統制を加えるということは————二十九条、三十条の挿入は、これは明らかに私は、地方自治体の自主権、自治権に対する中央官庁の統制であり、干渉であると思うのでありまして、自治法の精神に照しましても、この点はわが党としては反対せざるを得ないのであります。
第四点はなぜこのような法律をつくつて行くかといえば、結局、他局の下馬になつて、あるいはしり馬に乗つたり乗せられたりいたしまして、再軍備と戦争政策を遂行して行く現代の政治の姿が、この法律案に明らかに盛られたのであります。再軍備と戦争政策、こういうようなもので、腰の朱ざやはだてにはささないというような、どこかのうたの文句がありますが、それは必ず抜くために朱ざやを持つておるのである。そうしてその朱ざやを抜いたときに、一朝、事鎌倉というときに、そこに動員、徴用が起きる。その動員、徴用の下準備、その基礎準備をこの法律によつて確保するというのが、この法律案のねらいでありまして、こういう意味合いにおきまして、私どもは日本人民肉弾化の法律であり、肉弾製造法であると指摘したゆえんであります。
以上、簡単でありますが、わが党の反対理由を申し述べました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/5
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006・安部俊吾
○安部委員長 猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/6
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007・猪俣浩三
○猪俣委員 私は、この住民登録法案に対する修正案に賛成をいたしましてなおまた修正部分を除きました原案にも賛成いたします。
今、共産党の加藤君は、四点をあげて論ぜられましたが、どうも私どもにはその根拠がぴつたり来ない。これは世界観が違うためにわれわれがわからぬのか、われわれが頭が悪いためにわからぬのか。これは卑屈な法案であり、徴兵、徴用の法案であり、行政植民地化の法案であり、再軍備と戦争政策の法案であるという論旨に至りましては、どうにも理解に苦しむのであります。もちろん風が吹けばおけ屋が喜ぶというような論理の発展がありますれば、さような理由にもなるかと存じますが、どうもわれわれには納得行かぬのであります。
およそ政治の合理化を考え、しかも経済の計画化を考える立場に立つといたしますならば、国民の————共産党の使う言葉ならば、人民の生態を明らかならしめるということが、その前提でなければならない。かような意味におきまして、最も進歩した、合理的な政治なり経済なりの運営をはからんとするならば、まず国民一人々々の生態を明らかならしめることが、何よりも大切なことである。そうしてその根拠の上に立つて、合理的な政治を行うことが民主政治でなければならぬと思うのであります。かような意味合いにおきまして、私は、今までのようないろいろ雑多な、あるいは寄留あるいは世帯人名簿というよろなものを統一いたしまして、ここに整然たる一つの、国民の生態を明らかならしめるところの帳簿をつくる法的根拠であります住民登録法に対しましては、賛成をするものであります。ただ実際の実務に当られる方が、いわゆる非難を受けないように、共産党のようなものが替えておりまして、虎視たんたんといたしておりますがゆえに彼らの口実に乗らぬように、十二分なる注意をもつて施行に当られんことを希望いたしまして、私は賛成をいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/7
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008・安部俊吾
○安部委員長 これにて討論は終局いたしました。
引続き採決いたします。採決の順序は、まず修正案について採決し、次に原案について採決いたします。
それでは採決いたします。修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/8
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009・安部俊吾
○安部委員長 起立多数。よつて本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま決しました修正部分を除く原案について、採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/9
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010・安部俊吾
○安部委員長 起立多数。よつて鍛冶良作君外五名提出の原案は、修正案の通り修正議決されました。
この際、本案の委員会報告書についてお諮りいたします。これは先例によりまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/10
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011・安部俊吾
○安部委員長 御異議なしと認めます。委員長一任に決します。
次会は、明三十一日午後一時より開会することにいたしまして、本日はこの程度において散会いたします。
午後三時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X01819510330/11
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