1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年五月十一日(金曜日)
午後一時五十五分開議
出席委員
委員長 安部 俊吾君
理事 北川 定務君 理事 猪俣 浩三君
佐瀬 昌三君 花村 四郎君
古島 義英君 牧野 寛索君
眞鍋 勝君 山口 好一君
田万 廣文君 上村 進君
梨木作次郎君 世耕 弘一君
出席政府委員
法務政務次官 高木 松吉君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
—————————————
本日の会議に付した事件
会社更生法案(内閣提出第一三九号)
破産法及び和議法の一部を改正する法律案(内
閣提出第一四一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/0
-
001・安部俊吾
○安部委員長 これより会議を開きます。
本日の日程中まず会社更生法案を議題といたします。政府側より提案理由の説明を聴取いたします。高木政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/1
-
002・高木松吉
○高木政府委員 ただいま議題になりました会社更生法案につきまして、提案の理由を説明いたします。
会社、特に株式会社が近代の企業形態の代表的なものであり、現在の経済社会においていかに大きな役割を果しているかということは、いまさら申し上げるまでもないところであります。ところが、この会社が一たびその事業に破綻を来した場合にはどうなるかと考えますと、終局的には、申すまでもなく破産ということになります。破産をいたしますと、その財産を換価して債権者に分配することになりますから、通常その企業は解体され、関係当事者はもとより、社会的にも大きな損失をこうむることになります。それでは破産をさせずに事業を更生させるためには現行法上どういう方法があるかと申しますと、まず第一に、破産予防のための和議の制度があります。この制度はいわゆる強制和議の性質を有し、強力な制度ではありますが、何分にも画一的、包括的な制度であり、またその性質上からも会社にはあまり用いられていないようであります。次には、御承知のように、商法の規定による会社の整理の制度がありますが、この制度は補助的手段としてはかなり強力な措置を認めておりますが、整理自体はあくまでも任意的なものであつて、整理の成立を強制しない点が特徴であります。それだけにまた弱力であるためか、これまたあまり用いられていないのであります。そこで窮状にある会社、ことに株式会社についてその事業の維持、更生をはかるため、何かそれに適合した強力な制度が必要であるということが、かねてから痛感されておつたのであります。英、米等におきましては、早くからこのような制度が広く行われ、特に米国におきましては、その運用の実績において著しい成果を収めている模様であります。政府は一昨年八月以来この研究に着手し、法制審議会に諮問して調査審議を重ねて参つたのでありますが、このほどようやく成案を得るに至りましたので、ここにこの法案を提出いたした次第であります。
この法案の目的とするところは、経済的に窮境にあるが、なお再建の見込みのある株式会社について、その会社または一定の資格を有する債権者もしくは株主の申立てにより、裁判所の監督のもとに更生手続を開始し、更生計画を作成して会社の資本構成を変更し、あるいは新会社を設立する等の方法によつて債権者、株主等の利害を適当に調整しつつ会社の債務を整理し、もつて会社の事業の維持更生をはかることでありまして、その対象はさしあたり株式会社に限定いたしたのであります。次に説明の便宜のためこの法案の特徴とも申すべき点を中心として簡単に説明いたしますと、大体次の通りであります。
第一点は、手続開始の原因を広く認めていることであります。すなわち早期に更生をはかることができるようにするため、会社に破産の原因たる事実の生ずるおそれがある場合のほか、会社がその事業の継続に著しい支障を来すことなしには弁済期にある債務を弁済することができないときも、会社から手続開始の申立てをすることができることにしていることであります。
第二点は、強度の強制和議の性質を有することであります。すなわち更生計画の成立を容易にするため、権利者のうち多数の者の同意があれば、一部の者が不同意であつても、更生計画は成立し、またある組の権利者について多数決が得られないときでも、その組の者に対してある程度以上の権利保障の措置を講ずれば、その組の多数決を得ないで計画を成立させることができることにしていることであります。
第三点は、会社の資本構成の変更、新会社の設立等と債務の整理とを結合させていることであります。すなわち会社更生の方法として単に債務の減免等によつて整理をするだけでなく、新株を発行し、または新会社を設立して、その株式を元の債権者に與えて債務を決済するというような方法で更生することができるように考えていることであります。第四点は担保権者を手続に参加させることであります。すなわち、担保権者の参加なしには更生計画は成立しがたいことが多いので、その権利を保護しつつ、手続に参加させることにしていることであります。
第五点は、株主を手続に参加させることであります。すなわち、会社の資本構成の変更等と債務の整理とを結合させる結果、計画が株主の権利に影響を及ぼすことが多いので、株主をも個個に手続に参加させることにしていることであります。
第六点は、債権者、担保権者及び株主の有するそれぞれの権利の性質に従つて計画の條件に公正衡平な差等を設けなければならないこと等、各権利者の利害の調整をはかつていることであります。すなわち異なつた性質の権利を有する者が手続に参加するので、その有する権利の性質に従つて計画の條件に公正衡平な差等を設けるべきものとし、株主は債権者より有利に、また、債権者は担保権者より有利に取扱つてはならないこととし、この順序を破つた更生計画は、かりに多数決で可決されても、裁判所は認可しないというようにして、各権利者の利害の調整をはかつていることであります。
第七点は、租等税の徴収手続との調整をはかつていることであります。すなわち、租税その他の請求権を有する者も、手続に参加させ、手続が開始されると一定の期間その滞納処分等を中止し、また徴收権者の同意があれば、徴収の猶予等ができることにしていることであります。
第八点は、免責の制度をとつていることであります。すなわち、更生後の会社の法律関係を明確にし、なお更生を容易ならしめるため、債権の届出をしない者は、その権利を失い、また更生計画の認可決定があつたときは、計画によつて認められた権利及びこの法律で定められた権利を除いて、会社はすべての債務から免責されるものとしていることであります。
第九点は、更生計画の遂行の確保をはかつていることであります。すなわち、更生計画の確実迅速な実行をはかるため、計画はできる限り手続係属中に遂行し、新会社設立の場合は管財人があれば、管財人が発起人の職務をも行うことにしていることであります。
第十点は、裁判所の裁量権を広く認めていることであります。すなわちこの手続は、営業継続中の会社を対象としており、また関係人の利害が錯雑しているので、迅速公平な処置ができるように、裁判所に広い裁量権を認めていることであります。
第十一点は、監督行政庁等の手続への関與を要請していることであります。すなわち更生計画は経済界の実情に適合したものでなければならないので、会社の監督行政庁、証券取引委員会その他の行政庁の関與を求めることになつていることであります。
以上でこの法案の大略の説明を終りますが、なお詳細の点は、別に政府委員から説明いたさせます。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/2
-
003・安部俊吾
○安部委員長 次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案を議題といたします。政府側より提案理由の説明を聴取いたします。政府委員高木松吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/3
-
004・高木松吉
○高木政府委員 ただいま議題になりました破産法及び和議法の一部を改正する法律案について提案の理由を説明いたします。
政府は一昨年来法制審議会に諮問して、破産制度の改善につき調査を進めて参つたのでありますが、このほど免責制度の採用を中心として一応の成案を得ましたので、この法案を提出した次第であります。
この法案における改正点の最もおもなるものは、破産における免責の制度の採用であります。わが現行法のもとにおきましては、破産者は、破産手続終了後におきましても、破産手続において弁済されなかつた残余の債務につき、なおその弁済の責に任ずることになつていますので、終生債務の重圧のもとに苦しんで悲惨な一生を過さなければならないことが多いのであります。このようなことは破産者によつて不幸であるばかりでなく、社会的に見ましてもすこぶる好ましくないことでありまして、破産者といえども特に責めるべぎ行為もなく、忠実に破産者としての義務を果しているような者に対しては、破産手続において弁済されなかつた残余の破産債権につきその責任を免除し、その者がすみやかに更生して社会のために活動することができるようにすることが必要であると存ずるのであります。
従来におきましても、債権者が破産者に対して破産手続終了後残余の破産債権につきその責任を追及するということは、はなはだまれであつたのでありますが、このような免責の制度がとられますと、破産者は免責を得るために誠実に行動する結果破産財団の確保ができて、かえつて債権者のためにもなることが考えられるのであります。英米等では相当古くからこの制度が行われており、わが国でもかねてから識者によつてその採用が強く要望されていたのであります。
次にこの案の骨子を申しますと、免責は破産者の申立てによつて行うものとし、この申立てがあると裁判所は期日を定めて破産者を審尋し、利害関係人に異議を述べる機会を與えます。裁判所は破産者に詐欺破産の罪に当るべき行為がちると認めるとき、破産者が虚偽の債権者名簿を裁判所に提出し、または裁判所に対しその財産状態につき虚偽の陳述をしたとき等、一定の事由があるときは、免責不許可の決定をします。裁判所が免責許可の決定をし、その決定が確定しますと、破産者は破産手続による配当を除いて破産債権者に対する債務の全部についてその責を免れます。ただ例外として租税、破産者が悪意をもつて加えた不法行為に基く損害賠償、雇人の給料の一般の先取特権のある部分等の特殊の債権については免責されないことになつております。また免責の決定が確定したときは破産者は当然に復権し、詐欺破産につき破産者に対する有罪の判決が確定したとき、または免責が不正の方法によつて得られたときは、裁判所は免責取消しの決定をすることができることになつております。なお免責制度の採用に伴い、従前原則として破産債権とならなかつた破産手続開始後の利息の請求権等を劣後的破産債権とし、強制和議によつて破産手続の終了した破産者も当然復権することとする等、破産法の他の規定に必要な改正を加えることにいたしました。
次に破産法改正要点の第二は、小破産の金額、破産犯罪に関する罰金の金額等の引上げであります。現在破産法に規定されておりますこれらの金額は、いずれも大正十一年に同法が制定されました当時から変更されていないのでありますが、今日におきましては、もはや実情に適しないものとなつておりますので、物価その他の経済事情の変動、他の法令の規定との均衡等を考慮して、これを五十倍から百倍までに引上げようとするものであります。
破産法改正要点の第三は、他の法令の改廃に伴う法文の整理であります。すなはち裁判所法の制定または改正に伴い区裁判所が廃止され、裁判所書記及び執達吏の名称が変更される等他の法令の改廃があつたことに伴い、破産法における関係法文を整理する必要がありますので、このための改正をしようとするものであります。
次に和議法の改正要点について申しますと、その第一は罰則における罰金額の増額であり、その第二は破産法の改正に伴う法文の整理でありますが、これらにつきましてはあらためて説明をいたすまでもないと存じます。
以上がこの法案の提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/4
-
005・安部俊吾
○安部委員長 これにて両案についての提案理由の説明は終りました。なおこれら両案に対する質疑は後日に行うことにいたしたいと思いますから、さよう御了承願います。
それでは本日はこの程度にとどめまして、次回は来る十五日火曜日午後一時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02219510511/5
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。