1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十五日(火曜日)
午後二時三分開議
出席委員
委員長 安部 俊吾君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
理事 中村 又一君
鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君
古島 義英君 牧野 寛索君
武藤 嘉一君 山口 好一君
長谷川四郎君 石井 繁丸君
田万 廣文君 上村 進君
梨木作次郎君 佐竹 晴記君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
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五月十二日
委員牧野寛索君辞任につき、その補欠として吉
田吉太郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十四日
委員吉田吉太郎君辞任につき、その補欠として
牧野寛索君が議長の指名で委員に選任された。
同月十五日
委員小野孝君辞任につき、その補欠として長谷
川四郎君が議長の指名で委員に選任された。
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五月十二日
改正商法施行延期に関する陳情書
(第七〇一号)
人権擁護に関する陳情書
(第七三五
号)
改正商法施行延期に関する陳情書
(
第七四〇号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
裁判所侮辱制裁法案(田嶋好文君外四名提出、
衆法第四七号)
連合審査会開会要求に関する件
公聽会開会要求に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/0
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001・安部俊吾
○安部委員長 これより会議を開きます。
本日の日程中まず裁判所侮辱制裁法案を議題といたします。提出者より提案理由の説明を聴取いたします。田嶋好文君。
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裁判所侮辱制裁法案
裁判所侮辱制裁法
(この法律の目的)第一條 この法律は、裁判所侮辱とその制裁とに関して規定したものであつて、裁判所の威信を保持し、司法の円滑な運用を図ることを目的とする。
(裁判所侮辱と制裁)第二條 裁判所又は裁判官(以下「裁判所)という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、これを妨げ、その命じた事項を行わず、その執つた措置に従わず、その他裁判所の威信を害する行状をした者は、裁判所侮辱とし、百日以下の監置若しくは五万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。
2 監置は、監置場に留置する。
(事件の審判)第三條 裁判所侮辱に係る事件は、その裁判所が審判する。
2 裁判所侮辱にあたる行為があつたときは、裁判所は、そり場で直ちに、裁判所職員、警察官又は警察吏員に行為者を拘束させることができる。この場合において、拘束の時間から二十四時間以内に監置に処する裁判がなされないときは、裁判所は、直ちにその拘束を解かなければならない。
(裁判)第四條 裁判所侮辱に係る事件の裁判は、決定でする。
2 裁判所は、裁判をするについて必要があるときは、証人尋問その他の証拠調をすることができる。この場合においては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)による証拠調の場合の例による。
3 制裁を科する裁判をしたときは、手続に要した費用の全部又は一部を本人に負担させることができる。
(抗告及び異議の申立)第五條 地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所又はその裁判官のした制裁を科する裁判に対しては、本人は、裁判が告知された日から五日以内に、その裁判が法令に違反することを理由として、高等裁判所に抗告をすることができる。
2 前項の抗告をするには、申立書を、原裁判をした裁判所に提出しなければたらない。原裁判をした裁判所は、抗告を理由があるものと認めるとき、その他原裁判を更正することを適当と認めるときは、その裁判を取り消し、又は本人の利益に変更することができる。
3 第一項の抗告は、裁判の執行を停止する効力を有しない。但し、抗告裁判所及び原裁判をした裁判所は、抗告について裁判があるまで、裁判の執行を停止することができる。
4 高等裁判所又はその裁判官のした制裁を科する裁判に対しては、本人は、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。異議の申立には、抗告に関する規定を準用する。
(特別抗告)第六條 抗告又は異議の申立について高等裁判所のした裁判に対しては、本人は、左の事項があることを理由とする場合に、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
一 憲法の違反があること、又は憲法の解釈に誤があること。
二 最高裁判所の判例の相反する判断をしたこと。
三 最高裁判所の判例がない場合に、前條の規定による抗告又は異議の申立についてした高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
2 前項の抗告提起期間は、五日とする。
3 前條第三項の規定は、第一項の抗告について準用する。
(執行)第七條 制裁を科する裁判は、裁判官の命令で執行する。
2 監置の裁判を執行するため必要があるときは、裁判官は、収容状を発することができる。収容状は、勾引状と同一の効力を有するものとし、裁判官の指揮によつて執行する。
3 収容状の執行については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中勾引状の執行に関する規定を準用する。
4 第一項の命令で過料に係るものは、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
5 過料の裁判の執行については、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、執行前に裁判の送達をすることを要しない。
6 第一項及び前二項の規定は、第四條第三項の規定による裁判の執行について準用する。
7 制裁を科する裁判をした裁判所は、制裁の執行の全部又は一部を免除することができる。
(規則)
第八條 裁判所侮辱に係る事件の手続その他について必要な事項は、最高裁判所が定める。
附則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲で、政令で定める。
2 監獄法(明治四十一年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第八條中「労役場」の下に「及び監置場」を加え、同條第一項の次に次の一項を加える。
監置ノ執行ヲ為スニ当リ最寄ノ地二監置場ナキ場合又ハ監置場アルモ其収容能力十分ナラザル場合ニ於テハ拘留場(第一條第三項ノ規定二依リ代用セラルルモノヲ含ム)ノ特ニ区別シタル場所ヲ監置場二充ツルコトヲ得
第九條中「引致状二依リ監獄二留置シタル者」の下に「、監置二処セラレタル者」を加え、同條に次の但書を加える。
但第三十五條ノ規定ハ監置一処セラレタル者二之ヲ準用セズ
第十八條第一項中「及ビ労役場」を「、労役場及ビ監置場」に改める。
第三十二條中「受刑者」及び「但拘留囚」の下に、それぞれ「及ビ監置二処セラレタル者」を加える。
第四十五條第二項、第四十六條第二項及び第四十七條第一項中「受刑者」の下に、それぞれ「及ビ監置二処セラレタル者」を加える。
3 法務府設置法(昭和二十二年法律第百九十三号)の一部を次のように改正する。
第七條第二項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 裁判所侮辱制裁法(昭和二十六年法律第 号)により監置に処せられた者に関する事項発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/1
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002・田嶋好文
○田嶋(好)委員 ただいま議題となりました裁判所侮辱制裁法案について提案理由を申し上げます。
新憲法下におきましては、司法権は国権の最も重要なものの一つであります。国会で制定せられました法律の権威を守ることは、民主主義の基本的な要請でありまして、法律の具体的な宣明を使命とする司法が健全に運営されなければ、健全たる民主国家の建設は、とうてい望むことはできないのであります。この司法の運用に全きを期するには、その重責をになう裁判所をして、よく正義の府としての権威を保持し、よつて遺憾なくその任務の遂行に当らしめることができるようにいたさなければなりません。新憲法実施以来、裁判所は困難な諸障害を克服して、よくその使命を果して参つたのでありますが、これはもとより国会初め関係各国家機関及び国民一般の心からの協力によつて、初めて達成し得た業績であることは申すまでもありません。しかしながらわが国最近の社会情勢を見まするに、国民の一部には司法の重大な使命を十分に理解せず、あるいは裁判所における審理を妨害し、あるいは裁判所の権威をまつたく無規した行為に出る者をも生ずるという遺憾な状態であります。もしこれをこのまま放置するときは、裁判所の威信を失墜し、墜には司法の機能に重大な障害を生ずるおそれなしとしないのであります。このような事態に対し、司法の威信を保持し、司法の健全なる運用をはかるためには、裁判所における事件の審理を妨害する等、裁判所の威信を害する行為を、判裁所侮辱にあたるものとして、これに対し、制裁を科することとすることが、必要かつ適当と存ずるのであります。御承知のように英米両国には長い伝統を有する裁制所侮辱制裁の制度がありまして、司法権運用の上に有力な支柱となつておるのであります。
新憲法の施行後、わが国の司法制度は、御承知の通り重要な変革を見たのでありますが、ここに英米における制度を範としつつ、わが国の実情を考慮に入れまして、裁判所侮辱制裁の制度を設け、これを新しい司法制度の一環として加え、その円滑な運用をはかるために、ここにこの法案を提出いたした次第であります。
以下この法案の内容につきまして、実体的な部分と手続的な部分とにわけて概略御説明申し上げます。
まず実体的な部分について申し上げますと、第一にいかなる行為を裁判所侮辱として制裁の対象とするかが最も重要な事柄であります。英米両国では、裁判所侮辱として制裁の対象とせられます行為の範囲は、きわめて広汎でありますが、この法律案ではこれを最小限度に制限して、直接侮辱行為に限定することといたしました。すなわち裁判所または裁判官が法廷または法廷外で事件について審判その他の手続をするに際して、その面前またはその他直接に知ることができる場所でこれを妨げ、その命じた事項を行わず、そのとつた措置に従わず、その他裁判所の威信を害する行状をした点を、裁判所侮辱として取上げるのであります。
次には裁判所侮辱にあたる行為をした者に対して科する制裁でありますが、もともと裁判所侮辱の行為は、司法の権威を保持し、司法の円滑な運用をはかるために、特にこれに制裁を科するのでありまして、これを犯罪と見て刑罰を科するわけではありません。広い意味におきましては一種の違法行為でありますが、司法の運用のわく内における、いわば一種の秩序罰と称すべきものであります。このような見地から、英米における裁判所侮辱に対する制裁を考慮に入れまして、その制裁は百日以下の監置もしくは五万円以下の過料とし、情状によつてこれを併科できることといたしました。
裁判所侮辱制裁の手続におきまして、最も特異といたします点は、裁判所または裁判官が、みずからの発意に、基いてその手続を開始し、審判をいたし、審判に検察官の関与を必要としない点であります。このことは裁判所侮辱制裁の制度が、もつぱら裁判所の威信を保持し、司法の健全な運用を保護することを目的としたのでありますから、制裁の権限を発動するかいなかを、その裁判所または裁判官の意思によらしめることが妥当でありまして、いやしくも裁判所侮辱制裁の制度を認めます以上、制度本来の建前から当然のことと申さなければなりません。
手続の上における第二の特長は、簡易な手続をとつている点であります。この制裁の性質が刑罰ではありません関係から、一般の刑事事件のような複一雑な手続はとつておりません。これはこの法案において制裁を科する行為が、原則としては、裁判官の面前における最も明白な、証拠調べも必要でないような行為を対象とするからであります。必要に応じて証人尋問その他の証拠調べ弔いたしますが、元来刑罰ではないのでありますから、刑事訴訟法とは全然別の簡易な手続といたしたのであります。
しかしながら、不服申立てその他につきましては、いろいろと慎重に考慮いたしております。通常の不服申立ての方法としましては、地方裁判所、家庭裁判所もしくは簡易裁判所またはその裁判官のした制裁を科する裁判に対して、法令違反を理由として高等裁判所に抗告することができ、高等裁判所またはその裁判官のした裁判に対しては、その高等裁判所に異議の申立てをすることができることとなつております。さらに抗告または異議の申立てについて、高等裁判所のした裁判に対しては、憲法違反等の事由のあるときに、特に最高裁判所に抗告することのできる道も開かれております。なお抗告をするには、申立書を原裁判をした裁判所に提出しなければならないことになつておりますが、原裁判をした裁判所は、抗告を理由があるものと認めるとき、その他原裁判を更正することを適当と認めるときは、自由にその裁判を取消し、または本人の利益に変更することができるので、ありまして、この点非常に幅のある取扱いとなつております。その他、制裁を科する裁判をした裁判所は、制裁の執行の全部部または一部を免除することも認めまして、その執行の面につきましても幅を持たしておるのであります。
その他、この法案におきましては、抗告の提起及び異議の申立てがあつた際の裁判の執行停止に関する規定、裁判の執行に関する規定及び手続の費用に関する規定等が設けてありますが、審判手続その他についての細部の規定は、最高裁判所の規則の定めるところにゆだねるのが適当と思われますので、その趣旨の委任規定を設けてあります。
最後に、さきに申し上げました監置の制度は、この法案によつて新たに設けられまするまつたく新しいものでありますので、附則によりまして、その制裁を執行するために、監獄内に新たに監置場を設けることとし、監置の制裁を受けた者の処遇については、監置が刑罰でない点を考慮することにいたしました。
以上をもちまして、本法案の提案理由の御説明を終ることといたします。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/2
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003・安部俊吾
○安部委員長 これにて提案理由の説明は終りました。なお本案に関する質疑は後日に譲りたいと思うのでありますが、さよう御了承をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/3
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004・北川定務
○北川委員 議題に相なつております裁判所侮辱制裁法案は、まことに重要な法案でありまして、日本弁護士連合会その他各界の意見を徴するために公聴会を開催せられまして、審議の慎重を期せられんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/4
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005・安部俊吾
○安部委員長 ただいま北川定務君より動議がありましたように、裁判所侮辱制裁法案に関しましては、慎重審議をするために公聴会を開きたいと思うのであります。公聴会を開くためには、衆議院規則第七十七條によりまして、あらかじめ議長の承認を得なければなりませんので、さようにとりはからいたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/5
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006・安部俊吾
○安部委員長 御異議なければさようとりはからいます。
なお議長の承認を得ましてから、公聴会の日取り及び意見を聴取する條件を議長に報告するとともに、官報並びに新聞に公告しなければならぬのでありますが、それら所要の手続につきましては、委員長並びに理事に御一任願いたいと思うのであります。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/6
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007・安部俊吾
○安部委員長 御異議なければさよう決します。
この際さらにお諮りいたします。現在警察法の一部を改正する法律案が地方行政委員会に付託となり、目下審議中であります。同案につきましては、本委員会といたしましても、その重要性にかんがみまして、地方行政委員会に対し連合審査会の開会要求の申入れをいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/7
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008・安部俊吾
○安部委員長 御異議なしと認めます。よつてその旨地方行政委員会に申入れをすることに決定いたします。なお連合審査会の開会日時に関しましては、地方行政委員長と協議の上決定いたしたいと存じますが「大体来る十七日、木曜日に開会の予定といたしたいと存じます。
それでは速記を中止いたしまして、懇談会をいたします。
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〔午後二時十九分懇談会に入る〕
〔午後二時三十三分懇談会を終る〕
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/8
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009・安部俊吾
○安部委員長 速記を始めてください。
梨木委員及び上村委員から発言の通告があるのでありますが、講和に関する質問で、要求大臣は吉田総理大臣、法務総裁、こういうわけでありますが、これは委員長におきまして善処いたしますから御了承を願います。
本日はこの程度において散会いたします。明日は午後一時より開会いたします。
午後二時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02319510515/9
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