1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十七日(木曜日)
午後二時五十四分開議
出席委員
委員長 安部 俊吾君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君
花村 四郎君 牧野 寛索君
松木 弘君 武藤 嘉一君
山口 好一君 石井 繁丸君
田万 廣文君 上村 進君
世耕 弘一君
委員外の出席者
参 考 人
(朝日新聞社常
務取締役) 神戸 岩男君
参 考 人
(毎日新聞社常
務取締役) 原 爲雄君
参 考 人
(日本経済新聞
社常務) 福島 俊雄君
参 考 人
(北海道新聞社
取締役) 的場 利貞君
專 門 員 村 教三君
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五月十七日
委員梨木作次郎君辞任につき、その補欠として
立花敏男君が議長の指名で委員に選任された。
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五月十七日
商法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
律の整理等に関する法律案(内閣提出第一六五
号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
新聞事業における株式譲渡制限等に関する特例
法案起草に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/0
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001・安部俊吾
○安部委員長 これより会議を開きます。
まず新聞事業における株式譲渡制限等に関する特例法案起草に関する件を議題といたします。
去る五月十日の本委員会における決定に従いまして、本件に関しまして参考人よりその意見を聴取することにいたします。参考人の方に申し上げます。本件につきましては、本委員会といたしましては、商法の大改正との関連におきまして重大なる関心を持ち、小委員会を設置して、その調査立案に当つておるのでありまするが、特に本件につきましては、直接利害関係人たる立場にある新聞界の代表として、その御意見を承りたいと思いまして、本日ここにおいでを願つたようなわけであります。どうぞ忌憚のない御意見を開陳されますようにお願いいたします。なお委員の諸君よりも質疑があると存じまするが、御発言はすべて委員長の許可を得て、かつ簡明にお願いいたします。なお本日御出席を予定されていました光田参考人は、御都合によりまして出席されておりません。
まず朝日新聞社常務取締役神戸岩男君より承ります。今のわが国の新聞事業が株式の譲渡制限を行うようになつたのはいつごろですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/1
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002・神戸岩男
○神戸参考人 新聞社はそれぞれ歴史が違うわけでございまして、いつからそれぞれの新聞社が制限をしておるかということは、一々の新聞社について調べてみないとはつきりいたしませんので、ここに詳しい資料は持つておりません。しかしそもそもは新聞社というものは、おい立ちから考えますと、あるいは個人の組織で出発したものもございますし、また合名組織あるいは合資組織、そうしたものから出発したものが多いように考えております。だんだんと組織というものが整備されるにつれまして株式会社組織に変更になつて来て、現在におきましてはほとんど大多数の新聞社というものは株式会社になつておるわけであります。それでただいま申しました個人組織ないしは合名、合資、そういう組織においては株式というものはむろん存在しておりません。しかしこの株式にかわるところの出資関係、ひいてはこれが経営上の発言権を裏づけるものでありますが、そういうものの譲渡についてはおのずから制限があるわけであります。それで株式会社になりまして初めてその株式の譲渡について問題が起つて参ります。私は朝日新聞でありますが、朝日新聞の関係から申しますと、株式会社になりまして、そこで定款というものができました。この定款に最初から讓渡を制限する規定を設けておるのであります。それで歴史的にいつから始めたかとおつしやいますと、大体以上のことで御推測になれると思います。現在ほとんどの新聞社というものは制限規定を持つております。数から申しますと、新聞社ができた最初から大体この制限規定を持つておるところが多いと考えてさしつかえないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/2
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003・安部俊吾
○安部委員長 なお外国の方における新聞社の株式の譲渡に関して制限のあるような参考資料がありますならば、その点も参考に聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/3
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004・神戸岩男
○神戸参考人 私の新聞社に調査研究室というのがございまして、そこでもつて調べました資料に基きまして申し上げますが、ごく大まかに申しますと、アメリカ、イギリスそれぞれやはり新聞社におきまして、譲渡の制限を実施できるような仕組みになつておるのでございます。アメリカにおきましては、大体が株式の譲渡を自由にしなければならないという建前を持つておるそうでございますけれども、実際の面におきましては、それぞれ新聞社が個々にその伝統を守るというために、いろいろな方法をもちまして、あるいは定款において、あるいは信託という方法によりまして譲渡を制限しておる例が多々あるようでございます。またイギリスにおきましては、私よくその法律関係はわかりませんが、パブリック・カンパニー、つまり公会社と申しますか、そういうものとプライヴエート・カンパニーと申しまして、私会社と申しますか、そういう二つの種類に会社がわかれておる。ところがこの私会社という方は非常に株主の数も制限されておりまして、しかもその株式の譲渡についても制限をすることに初めからなつておるのだそうでございます。公会社の方は、これは定款において譲渡の制限を規定すれば、制限を実施できるということになつておるのだそうでございます。それでイギリスの新聞社におきましても、それぞれやはり有名な新聞社を初め多数の新聞社が制限規定を定款の中に設けてやつておるのでございます。個々の新聞社の名前は申し上げませんが、大体そういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/4
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005・安部俊吾
○安部委員長 なおこの新聞事業に関する株式会社の株式を譲渡制限しなければ、どういうような弊害があり、またどんな点が最も困難であるかというようなことがありまするならば、その理由をお話くだされば都合がよいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/5
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006・神戸岩男
○神戸参考人 制限をしない場合にどういうことになるか、これは根本的には、新聞というものは御承知のように言論の自由ということを根本に考えてやつている仕事でございまして、この言論の自由を守るために、実際に新聞を発行します場合の編集方針だとか、その他たとえば編集権の問題、いろいろな面におきまして自由を阻害されないような工夫が凝らされているのです。やはり新聞社も一つの会社として立つておりまする以上は、そういう編集上の問題だけでなく、経営的にこれを見た場合においても、新聞の自由というものを守らなくちやならない、またそれが阻害されるおそれのある面があるわけでありますから、それを防いで行かなくちやならないということになるわけであります。そういう意味におきまして、株式会社の株式の譲渡というものが、もし融通無擬に他人の手に渡るということになりますと、そもそも一つのオピ一二ヨン・グループと申しますか、そういうものからスタートしてできている言論機関というものの伝統が、たとえば株主総会においてくつがえされる。ことに異分子が大きな株数を占めた場合に、これが株主総会におきまして、大きい発言をする、これがそれまで持つていたところの新聞社の伝統を打ちこわしてしまうというおそれが多分にあるわけでございます。一つの例を申し上げますれば、往年国民新聞において、その名前をあげることはどうかと思いますが、ある相当有名な人が株を買い占めまして、そうしてほとんど一夜にして新聞の性格を一変してしまつた。それは社会にも決していい結果を及ぼさないという事例かあるわけでございます。こういつた例は外国においてもいろいろあるそうでございます。この点が一番大きな事由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/6
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007・安部俊吾
○安部委員長 つまり言葉をかえていえば、伝統あるような最も公正な言論の機関であるものが、何か機関新聞のようなものにするためにいろいろな買収行為によつて株を買い上げられては困るというようなことですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/7
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008・神戸岩男
○神戸参考人 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/8
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009・安部俊吾
○安部委員長 それから朝日新聞社は現在どんな方法で譲渡制限しておるのですか、今やはり譲渡制限しておられるのですね、その方法を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/9
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010・神戸岩男
○神戸参考人 朝日新聞におきましては株式の所有というものの範囲を限定しております。その範囲と申しますのは、朝日新聞の従業員並びに特に取締役会において認めた者というふうな範囲になつております。そうしてこれを取得しました者がその株式を譲渡します場合には、取締役会の承認を経なければならぬということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/10
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011・安部俊吾
○安部委員長 取締役会の承認という場合には何かそこに一つの基準があるでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/11
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012・神戸岩男
○神戸参考人 それはあるのでございます。その基準と申しますのは、従業員並びに役員が株を所有する。それが基準の基準になつておるわけでございまして、しかもその従業員と申しましても、入社年数の非常に浅い者は持てないことになつております。それから今度株を持つた者がたとえば停年になりまして退社をいたします。その場合にやはり満十五箇年以上在社した人で退社したというふうな人は、その人の希望によつて退社後もそれを持続してその人の一生の間持つておることができる。しかしながらその人がなくなつたときには、その株の譲渡については取締役会においてこれをきめることになるわけです。それから多年社におりまして、社に特に功労があつたというふうな人には、たとい在社の年数が十五年に満たなくても、そういう人には株を持つてもらうということもございます。しかし大体根本的には新聞社に長年勤めた者ということが基準の基準になつておるようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/12
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013・安部俊吾
○安部委員長 なお先ほどのお話の中に、近代そういう株式会社組織になつて来たということでありましたが、その株式会社組織以外の企業形態では経営するようなことはお考えになつておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/13
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014・神戸岩男
○神戸参考人 それは現在の実際の経営形態と申しますか、それを新聞社についてみますと、新聞協会というものがございますが、これに現在加盟しております日刊新聞社の総数が百十社、その中で株式会社の形態を持つているものが九十二社ございます。それから有限会社が四社、合名会社が一社、合資会社が一社、それから個人経営が六社、社団法人が五社、任意組合が一社、こういう割合になつておるのでございます。それで株式会社以外の形態においても、新聞社が経営できるということは、今申しましたことによつてでもわかるわけでございますけれども、しかし百十社のうち九十二社というものが株式会社の形態をとつているということは、新聞の経営については株式会社の形態が一番便利であるということの証左になると考える次第であります。それでだんだんと組織の大きい新聞社になりますほど株式会社以外の形態をもつてしては、おそらく経営至難ではないかと考えられるのでございまして、相当有力な新聞になりますと、それは全部株式形態をとつておるわけでございます。有限会社というふうなものもあるいは合資、合名にしましても、出資関係からみますと、あまりに大勢の者がこれに参與することはできないような仕組みになつておりますし、大体現在の新聞社におきましては、従業員に株を持たせて、そして自分の新聞社の事業というものに熱意をもつてもらうというふうな考えも持つておるのでございます。少数の出資者だけに株を持たせておくということは実情にもそぐわないのであります。やはり株式会社の組織が一番適切だと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/14
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015・安部俊吾
○安部委員長 なお各委員諸君からも御質問がありますからしばらくお待ちください。
次に毎日新聞の常務取締役原為雄君に伺いますが、毎日新聞では、現在どういう方法で譲渡制限をやつていらつしやいますか。またその制限の内容につきましても御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/15
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016・原爲雄
○原参考人 毎日新聞におきましては定款第七条に定めまして、「本会社の株式は日本国民である本会社の従業者が之を保有するものとする」ということにいたしております。「但し特に本会社事業に関係があり役員会の承認した者はこの限りでない。株主で前項に定めた資格を失つた時は遅滞なくその所有株式を本会社の同意を得て前項で定めた有資格者に譲渡せねばならない」「本会社の株式は本会社の同意を得なければ譲渡又は質権の目的とすることが出来ない」ということで定めて、その通りやつております。大体役員並びに従業員が全部株を分担して持つているわけでございまして、社外の株主というものは一人もおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/16
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017・安部俊吾
○安部委員長 たとえば大阪毎日であるとか東京毎日であるとか、同系統のもの、あるいは傍系の新聞というようなものもあることになるわけですね。そういう新聞社間で株式をお互い保有しておるようなことがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/17
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018・原爲雄
○原参考人 本社は毎日新聞は大阪が本社でございまして、東京も本社と申しておりますが、商法的には大阪が本社で東京、西部と三社ありますが、これは一本の株式会社毎日新聞となつております。それでこれは一本の株式になつております。ほかのものは毎日新聞としての名義の株は持つておりません。各その傍系会社の個人の株になつておりまして、毎日新聞の保有しております株は持つておりません。従つてその傍系会社の方も毎日新聞の株は持つておりません。但し新聞でなくて定款に定めてあります本会社の事業に関係があつたものにつきましては、たとえば毎日新聞の社会事業団というようなものには株を持たしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/18
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019・安部俊吾
○安部委員長 毎日新聞社の現在株式の分布状況をもしおさしつかえなければその社内株、もしくは社外株の割合、あるいはどんな状態になつておるか。また他社の例はどうなつておるかお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/19
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020・原爲雄
○原参考人 毎日新聞の場合を申し上げますと、資本金が五千万円であります。株式総数が五十万株、そのうち社内株数が五十万株、百%社内で保有いたしております。これを一々各社の名前を申しませずに総括して申し上げますと、株式数の全部社内株のものが十二社ございます。九〇%以上社内株のものが七社、過半数以上社内株のものが二十三社、過半数社外株のもの四十一社、不明のものが十一社あります。それでここに朝日新聞の場合を申し上げますと、資本金が三千五百万円、株式総数が三十五万株、そのうち社内株数が三十五万株、これも百%社内で所有いたしております。日本経済の場合も一千五百方円の株式で十五万株、社内所有が十五万株、これも百%であります。大体東京の場合はほとんど百%所有いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/20
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021・安部俊吾
○安部委員長 ありがとうございました。
次に日本経済新聞社の常務取締役福島俊雄氏にお尋ねいたします。日本経済新聞社におきましては、株式の譲渡制限の方法及びその内容はどんなふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/21
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022・福島俊雄
○福島参考人 新聞事業の株式の譲渡の制限については、皆様のお手元に差上げてあるはずでありますが、その中に日本経済新聞の定款が書いてございます。それによりますと、ただいまの朝日、毎日と大した差はございません。「本会社の役員、従業員並に取締役会に於て之に準ずるものと認めたる者に非ざれば本会社の株主たることを得ず」というふうに規定してございます。それで結局私の方の株主も、取締役会が承認しなければ株主になれないわけでございますが、ただ株主が第一項の資格と申しますか、役員、従業員、あるいはこれに準ずる者という資格を喪失をいたしましたときは、三箇月を限りまして、取締役会の承認を得て、この株を一定の資格を有する者に讓つてもよろしいということにしております。それでここで疑問が起ることは、一定の資格とはどういうことだということでございますが、これは結局第一項の役員、従業員並びに取締役会でこれに準ずるものと認めたという者に譲ることができるわけでございます。そうしてなお社をやめまして譲り渡さなくちやならぬという場合には、一箇月の期間を定めてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/22
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023・安部俊吾
○安部委員長 そうすれば、むろん制限されておるから、新聞社の株式は取引市場に上場されて、そこでもつて売買するということはないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/23
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024・福島俊雄
○福島参考人 これは取引所の方でもごめんをこうむるだろうと思いますが、われわれの方もまたごめんをこうむりたい問題でございまして、大体がこういう流通性のない株でございますので、そういうことは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/24
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025・安部俊吾
○安部委員長 それでは社内株で制限している場合におきましては、新たなる資金調達の面では、そういう点において非常に便利が悪いということがあると思いますが、その点はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/25
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026・福島俊雄
○福島参考人 ただいまのところ新聞社の資本というものは、私の社においては特に必要を認めておりません。ただ先般社債を発行いたしました。その基準になりまする資本金があれば事足りるものでございますから、社債発行によりまして資金を調達いたしまして、さしあたり今増資の問題を考えておりませんが、実は一昨年五百万円から一千五百万円の三倍増資をいたしました。しかしこれは社員全員の協力によりまして、三倍一千五百万円は完全にできたわけでございます。今後とも多少の増資という問題がありましても、十分に資金調達はできると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/26
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027・安部俊吾
○安部委員長 それからこれは外国の例でありますが、たとえばある新聞社の発行人の背後に財閥というものがあつて、そしてその財閥の宣伝機関であるとか、あるいはそういうような傾向のある、それを読者に明らかにするために、一箇月に三回くらい、株主はだれだれであるとか、あるいはどういう人がこの新聞社にこういうような関係があるということを、論説を掲げるページに広告しなければならぬというような法律もあるのであります。かつては三井系であるとか、岩崎系であるとかいつたような、いわゆる財閥の資本によつて支配された新聞というものが、あつたかないか、現在はそんなことはないだろうと思いますが、あるいはありますか、そういう点に関する御意見はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/27
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028・福島俊雄
○福島参考人 ただいまの財閥のお話になりますと、これは日本経済が最も関係の多いものでありまして、実は日本経済は、昔中外商業と申しまして、その前は中外物価新報と申しました。明治九年に三井系の益田孝氏主宰による個人会社でできたものでございます。その後時勢が変転いたしまして、明治四十四年に株式組織に直したのでございますが、そのときに、引続き三井家において中外商業の株を全株持つたのであります。それで大体歴代社長も三井系の野崎広太、あるいは添田壽一という方が社長になつておられたのでありますが、多分昭和十五年でございましたか、時勢の力もありましたし、われわれの要望もありまして、三井家においては、この全株を中外商業の役員及び従業員に渡したのであります。そういう歴史を持つておりまして、他にはこの日本経済ほど財閥が完全に掌握しておつた新聞はないように考えます。私の方は百パーセント財閥の力が入つておりました。しかしこれは昭和十五年をもつて完全にまた百パーセント財閥の力がなくなりまして、ただいまは役員、従業員全員が百パーセント持つておることになつております。他の方では先ほど朝日の神戸さんからお話があつたのですが、国民新聞においては財閥の力が一時的に入りまして、例の徳富蘇峰氏が昭和四年の一月に、非壯な訣別の辞を国民新聞紙上に書いたのです。そうして徳富ざんは国民を去られたという問題はあります。がこれも百パーセント資本力をつぎ込んだという問題ではございません。ただその財閥が非常に干渉いたしまして、遂には蘇峰氏の筆にまで交渉した。そこで蘇峰氏が国民新聞読者諸君各位に告ぐということで、自分の筆勢まで不自由にされた、これではやり切れないから、自分は新聞道のために、自由擁護のために、退くという訣別の辞を書かれた問題があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/28
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029・安部俊吾
○安部委員長 それから先般各新聞社で社員の整理があつた。それで社員の持株の処理について、何かいろいろ係争があつたというようなことを聞いたことがありますが、その実情はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/29
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030・福島俊雄
○福島参考人 先ほど申し上げました小さな陳情書ですか、この中にも、ただいま委員長のおつしやいました先般の整理云々というのは、きつとこの最後の方にございます赤色分子の粛正という問題かと考えますが、これについてお答えいたします。新聞社の例のレッド・パージというものは、ここにもこまかい表がございますように、朝日新聞が百四名の整理者、それからその株主がその中で四十八名、その持株数が三百五十というふうに、ずつと書き出しておりますが、他の新聞はそれほど問題はなかつたようでございますが、とにかく私の方は身近な問題でこれを強く感じたのかもしれませんが、定款に規定してあるにもかかわらず、私の方の粛正メンバーの中の株主八名というものは、株を引渡さぬ。そうしてこれは強行してこれを取上げるということも考えたのでございますが、なるべく穏便にということで進んでおりましたうちに、株主総会がちようどあつたのであります。それで株主総会にそのうちの八名が出て参りまして、株主総会の席上で、昔のいわゆる総会荒し的な行動をやつたのであります。そういうことがございましたけれども、結局私のところのレッド・パージをされた人は、他社のことは知りませんが、非常にすなおな人たちでありましたので、一度それがあつたきりで、あとは社の方に株を提供いたしましたから、これを競売いたしまして、その金額を各人に渡しまして、円満に解決をしております。ただそういう際に譲渡制限がございませんと、そういう分子の割込みがあつて、総会などが常に混乱するという危険もあろかと考えております。しかしこれはたまたま昨年レツド・パージがありましたので、ここに例としてレッド・パージが取上げられておりますが、われわれはむしろ時勢がかわれば、最右翼と申しますか、白色の方がこわい場合があるのじやないかと考えております。もつとも白色、赤色といいましても、それよりもなおこわいのは、山吹色の金権の方がこわいかもしれませんが、やはりわれわれはそういうところで譲渡制限を続けて行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/30
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031・安部俊吾
○安部委員長 改正商法では少数株主の権限が大分拡大されるようでありますが、このたびの特例法は、その施行の期日は商法の実施と一緒でなければいけないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/31
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032・福島俊雄
○福島参考人 われわれはあくまでも一緒にやつていただきませんと、その何箇月間の間隙があります際に、従業員の中には、あるいは病人をかかえて苦しんでおる者もありますし、いろいろなことがあつて、どういう好餌に目がくらんで、株を渡さぬとも限らないのであります。社としてはいろいろ福利施設、金融施設などをやつて、そういうことのないように防いでおりますが、しかし何か野心を持つ者がありまして、これに好餌を與えれば、あるいはそういうことがないとはいえないのでありまして、われわれは改正商法の施行と同時に、やはりこの特例を設けていただきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/32
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033・安部俊吾
○安部委員長 次に北海道新聞社取締役的場利貞君にお伺いいたします。北海道新聞社の方では株式譲渡制限を撤廃したというような話を聞いておるのでありますが、その間の事情に関して承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/33
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034・的場利貞
○的場参考人 北海道新聞社では、昨年の九月まで社内株に限つておつたのであります。社内株に限つておつた際は、もちろん各社と同じように、株は役員もしくは従業員でなければ持つことができない。またこれを譲渡する場合は、取締役会の承認を得なければならないという制限規定を設けておつたのであります。ところが昨年の秋に、従来の一千万円を三千万円に増資する場合に、全部を社内で消化できない関係から、社外に一部を出したのであります。社外に一部出すについて、株を社内だけで保有しなければいけないという規定は、当然取りはずさなければならない。そこでそういう規定はとりはずしたのでありますが、それと同時に譲渡制限、つまり譲渡する場合に役員会の承認を得なければいけないという規定も、実ははずしたのであります。これは私どもとしてはあくまでも廃止したくなかつたのでありますけれども、改正商法がすでにでき上つて、その解説なり、いろいろな主要点なる部分を拝見し、研究した結果、どうしてもとらざるを得ないと観念をして、実は涙をのんでとつたのでありまして、決して喜んではずしたのではないのであります。でありますから今度の特例ができ上れば、ただちに元へもとして制限規定を設けるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/34
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035・安部俊吾
○安部委員長 もう一点伺いたいのですが、譲渡制限を行うことによつて、既存の比較的大きな大新聞、そういう新聞が保護されるが、戦後の新興新聞といいますか、これからだんだん発展し得る新聞社が、資本の調達等の面でその発展を阻害されるようなおそれがないかという点もあるのでありますが、その点はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/35
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036・的場利貞
○的場参考人 この特例は任意でありますから、必ず制限しなければいけないという筋合いのものではないのであります。ただかりに制限するとして、今のお話のように比較的大きな新聞が、比較的小さい新興紙に影響を與えるかどうかということになりますと、新聞社は先ほどお話がありました通りに、ある社は社内株に限つている、ある社は社外に一部株を出しているという種類のものがあるのでありますが、社外に株を出している新聞社でも、いわゆる公募株ではございませんで、縁故株であります。その新聞社もしくはその新聞社の役員が信用し、この人ならば株を持つても、編集権にも経営権にも圧力を與えないという、信じ得る人に限つて株を出しておるのでありまして、そういう事情を考えてみますと、その社あるいはその社の役員とのつながりというものは、おのずからあるものでありますから、これによつて既存新聞が新興紙に圧力を加えるとか、影響を及ぼすというようなことは、全然ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/36
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037・安部俊吾
○安部委員長 委員の皆さんから御質問がありましたら、どうぞ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/37
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038・牧野寛索
○牧野委員 この新聞事業の株式譲渡の制限は、結局は大株主の資本家にその会社を支配させることを避けるという目的であると思うのですが、さつき日本経済の福島さんからお話があつたようですが、株式の制限はしても、三井なら三井がその会社に多額の資金を貸す。そうすれば、どうしても金を貸した人は社長なり重役を入れるというのは、これは一般会社の実態であろうと思います。重役は株を持たぬでも重役になる。そういうことがあるかどうか、そうなれば、会社は株式を譲渡せぬでも、やはり会社の実権がその資本家に握られはしないかという心配があるのですが、どんなものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/38
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039・福島俊雄
○福島参考人 それは三井なら三井というものが、自分は入らずに、ある人間に株を資金を供給して持たしたというふうな問題が、一番大きく取上げられて考え得ると思います。先ほどおつしやいました金を貸して云々、そういう場合には、取締役会においてそういう重大な問題は審議いたしますので、一、二の取締役がかつてなことはできないわけでございます。ですから、かりに考えますと、社内の株をだれか社に席を置いた者が、三井の金をもつて買うという場合が一番多いかと思いますが、これは一応机上ではそういうことは考え得ると思いますが、社内の株をそう自由には――新聞社の株式というものはここに表に出ておりまするように、資本金が一番多くて五千万円、これが毎日新聞でございますが、あとはそれ以下でずつと少うございます。それで株を買い占めるといいましても、この譲渡制限というものの特例が設けられるならば、取締役会がこれを抑えて参ります。ことに改正商法によつては取締役会というものの権限が強大になりまして、一、二のかつてなふるまいは許さぬ仕組みになつておるのでございますから、なおさらその点は安心していいのじやないかと思います。なお現在譲渡制限を各新聞社がやつておりますが、この間、私は寡聞かもしれませんが事故があつたということは一つも聞いておりません。むしろわれわれが知らない範囲で、野心家が介入しようとするのをこの定款に特例を設けておるためにしりぞけておる場合はあるかもしれませんが、この制限を設けているために何か変な事故があつたということは聞いておりません。これは結局経営者が高い倫理を持ち、そうしてその事務的処理において節度を誤らなければ、問題は起らぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/39
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040・牧野寛索
○牧野委員 その点はよくわかりました。大新聞社はそういう場合があるでしようが、私も株式譲渡の制限というのは、新聞の公平を守るためにけつこうだと思つております。しかし地方の新聞は往々にして、制限してもそれがやはりさつき言いましたことくに、また今福島さんからお話がありましたように、人を入れて株を買うというようなことによつて、実権を握られる場合が相当あるのじやないかと思うのですが、そういう場合には制限する方法等も相当考えて行かなければならぬのじやないかと思つておるのですが、その点は心配ないのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/40
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041・福島俊雄
○福島参考人 それはどうも個々の問題でございまして、その新聞社がそれを欲するならば、やはりそこに行くよりしかたがないとは考えます。しかしわれわれとしては、欲し在ものがそういうはめに陷らないようにこの譲渡制限の特例を設けたいという考え方でございます。もし新聞社がそれを欲しておるならば、ただいま商法でそういうことをしてはいかぬという規定はないようでございますから、ちよつとその問題は別になりはしないかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/41
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042・佐瀬昌三
○佐瀬委員 どなたからでもけつこうでありますが、パーセンテージからいうと企業形態は株式組織が多いように承つたのでありますが、それ以外の企業形態があまり新聞経営において採用されない根本的理由はどこにあるかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/42
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043・福島俊雄
○福島参考人 私がお答えするのは僭越かもしれませんし、皆さんのような法律の中から生れておいでになつたような専門家の前で法律論をやるのは、ちよつと不逞のやからのような気がするのでありますが、結局合名、合資、有限、この形態の中では合名が一番封鎖的な集団企業であります。それが少し解放されて来たのが合資会社、有限会社になるということをわれわれは教わつております。そこへ行きますと資本の調達の関係その他から見まして、やはり株式の組織の方が最も公開的な集団企業だと考えます。特にわれわれが一番困りますことは、合名会社のごとくに人間の死亡あるいは社員の脱退ということによつて新聞紙の性格がかわるようなことは避けたい。やはり代表的な新聞ともなりますれば永久に永続して、終始一貫公明なる性格を持つたもので続けたい。これがために人的結合によつて結ばれておるああいう合名、合資、有限というような組織よりも、もつと資本的に結ばれて、しかも資本と経営というものが分離できるといつたような株式組織が一番合理的じやないかと考えております。
〔委員長退席、田嶋(好)委員長代
理着席〕
そのために各社とも株式組織になつておると考えております。なおそこで資本の調達その他公開的集団企業というような観点からすれば、それじやこの譲渡制限は矛盾じやないかという御質問が出るかもしれませんけれども、これは公開をして、そして一番都合の悪い部分だけちよつと制限をしていただく。そうすると新聞社の関係においては理想的な形態になるだろう、こう考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/43
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044・佐瀬昌三
○佐瀬委員 資金調達が主要な原因をなして株式組織が採用されておると思うのでございますが、この社内株数はパーセンテージの上から見ると、各社とも平均して非常に多いと思うのですが、今福島さんのおつしやられたようにただ一部のものを社外から調達するために、あるいは社内株数が多少流れるということになるかもしれないのでありますが、社内株数が多いということは、やはり資本を社内に求める、社外にはあまり求めないということになると思うのですが、もし社外に求めることが少いということであるならば、むしろ企業形態そのものをかえて行つた方が非常に合理的じやないかと私は考えますが、その点はどういう事情になつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/44
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045・福島俊雄
○福島参考人 先ほどから申し上げておりますように、人間の死亡、脱退というような社員の変動によつて新聞の性格が常にかわるということが、われわれにとつては一つの大きな問題でございます。先ほど資本の構成について、私の方の日本経済は今後それでは資本を求めるのに困るじやないかという委員長からのお話がございまして、そのときもお答えしましたように、大体もう資本の点については各社ともでき上つております。何かいることがあれば、あるいは社債、あるいは増資という形態をとれるものでございますから、今あらためてこしらえるというならわれわれも一応有限会社、合資会社、合名会社を考えるかもしれませんが、しかし現在こういう形態をとつておる以上、そうして今言つた人間の動きによつてあまり影響をこうむらないのには、やはり株式組織の方がいいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/45
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046・神戸岩男
○神戸参考人 ただいまの御質問に私ちよつと補足的に申し上げておいた方がいいかと思いますが、それは今おつしやいました株式会社の場合における株のあり方が、従業員の範囲内だけに限定されている、こういうふうにわれわれは譲渡の制限をしたいのだというふうにお考えでありましたら、それは少しきゆうくつ過ぎるのでございまして、株式の譲渡の制限ができることにしていただきたいという趣旨は、いきなり従業員の範囲にしか株は持たないのだということを意味するのじやないのです。もう少しそこはその新聞社新聞社に応じまして、譲渡の範囲というものはそれぞれにきめて行つてよいただ好ましからざるところへ株が流れ込んで行つては困るのだというふうにお考え願えれば、あなたの御質問に対する回答も理解できやしないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/46
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047・佐瀬昌三
○佐瀬委員 これは社の経営の内部に関する質問で恐縮なのですが、さしつかえない程度で御説明願えれば仕合せだと思うのであります。本来の言論のための事業という以外に、附帯事業にかなり広いいろいろな事業が各社で行われているのではないかと思うのですが、資金を使う面から見てそういつたような配分状況と言いますか、それはどういうふうにいたしておるか。あるいはまたそういう附帯事業については、おもに社債とか何かで資金操作をやつておられるのか、そういう点について現況と申しましようか、さしつかえない限りちよつと参考に教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/47
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048・神戸岩男
○神戸参考人 朝日新聞の場合を簡単に申し上げますが、新聞本来の事業というものは、これは御承知の通り資金の面においてもむろん大部分をこれに充てているわけです。附帶的事業と申しますと、一番近い事業としましては出版事業でございます。出版の方は御承知の通り定期刊行物並びに臨時出版物を出しておるわけです。しかしこういう出版事業と申しましても、これが単なる営利的な出版会社のやつておるようなああいう行き方では行つていないわけです。やはり新聞報道事業というものを母体にしてでなければ出て来ないような出版をやつておるのです。またそれを出版することによつて本来の新聞事業によつては完全にカバーできない分野を補足的にそれでもつてカバーして行く。そういう趣旨でやつている仕事でございまして、従つて出版物によりましては初めから損失を覚悟して出しているものもたくさんあるのであります。資金的に余裕が十分にある場合には、そういう損をしてもどんどん出して行く。それによつて大きな利益を得ようという考えは持つていないわけです。これは一番近い附帯事業でございますが、その次に直接附帯的事業としてやつているものは、継続的事業としてではないものでありまして、臨時的にときどきいろいろな催しをやるというようなこともやります。これはやはり新聞の宣伝のためという眼目もございますけれども、眼目と言いましてもやはり文化の高揚のために何らかの寄與をするとか、何とかそこにいい意味の理由がなければやらないことにしているわけです。そういう事業に対する資金の分布という点をお尋ねになりましたけれども、これには毎月の收入の中から何パーセントをそこにさくというふうな考え方はしておりません。大体半期ごとの予算というものを組みまして、そのときに大体そういう方面にはどれくらいの金額をさくということは、その日その日によりましてきめて行つているようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/48
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049・佐瀬昌三
○佐瀬委員 何か原さんお答え願えないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/49
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050・原爲雄
○原参考人 毎日新聞では朝日新聞のように出版局を持つておりますることは同様であります。そのほかに、佐瀬さんからの御質問は、きつと毎日球団のような形のものの御質問かとも思いますので御参考に申し上げておきます。毎日球団、これは株式会社でありますが、名前は毎日新聞でありまするけれども、この会社の実体は全然別個の独立した会社であります。従つてその株主は、毎日新聞の――私も株主になつておりますが個人の資格で株主になつております。経理方面は全然別個になつておりましてただ新聞の持ちます協力をいたしているわけでありまして、従つて日本のスポーツのためにこしらえたのでありまして、一般の新聞社でやります事業計画にタイアツプしてやつているということでありまして、経理面から資本をそこへ打込むというようなことには形態はなつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/50
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051・佐瀬昌三
○佐瀬委員 改正商法のねらいの一点は、資本と経理の分離ということにもあるのでありますが、この原則を新聞社に適用することができるかどうか、その事情を少しお尋ねしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/51
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052・田嶋好文
○田嶋(好)委員長代理 どなたにですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/52
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053・佐瀬昌三
○佐瀬委員 どなたでもけつこうです。福島さんは法律を大分研究されておるようでありますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/53
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054・福島俊雄
○福島参考人 大体われわれも資本の圧力で新聞社が云々されるのは困ることでありまして、やはり完全に分離して行きたいと考えております。そこで私ちよつとお答えとしてピントがはずれるかもしれませんけれども、先ほど財閥関係にいつての委員長の御質問がありましたときに、財閥というものは今の新聞社にほとんど関係はないと私はお答えしたのでありますが、ただこの表をごらんになつて御疑問をお持ちになると困りますから、これは朝日新聞社の名誉のために私一応申し上げたいと思います。それは朝日新聞はこの表でごらんになりますと一〇〇%社内株になつておりますが、そこに上野精一さん、村山さん一家というような大株主の名前が出ております。これは朝日新聞社が正直な表をお出しになつておりますので、これは財閥じやないか、しいていえば新聞財閥じやないかというお考えの方もあるかもしれませんが、これは現在朝日新聞に関係をお持ちになつておるお方でありまして、新聞財閥とは私言えないと考えております。ことに戦後御承知のように金融臨時措置によつてこういう大金持は今斜陽族に転落しておりまして、特に財閥とは申されないと考えております。ただいまの経営と資本の分離の問題でございますが、私どもの新聞もほとんど完全に資本と経営は分離されておると思つております。何かそういう例はないかと実は本日ここへ参りますについても探したのでありますが、過去には野間一家の報知新聞に対する投資というようなこともございましたが、それから先ほどの国民新聞の問題というふうなこともございましたけれども、どうも経営者の適宜の措置によつておるのでありましようが、そういうことはないように考えております。お答えにならぬかもしれませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/54
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055・田嶋好文
○田嶋(好)委員長代理 今の御質問に対してほかにどなたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/55
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056・神戸岩男
○神戸参考人 ちよつとまた補足的に申し上げます。ただいま福島さんからおつしやいましたように、終戦後は特にそうだと思いますが、資本と経営との分離ということが家際に非常に多く行われていると思うのでございます。それで新聞社の場合には、編集権というものは非常に尊重されておりまして、株主が編集に容喙することを非常にきらうのでございます。ずつと昔の話でございますが、毎日新聞社ができましたときにも、この資本の構成というものは、大阪におけるところの地元の相当の資本家連十数名から資本を仰いでできたんだそうですが、たちまちそういう人々から編集に対するいろいろな希望が相次いで出て、記事に対しても容喙があるということで、そのときの社長さんはどなたですか、実はこういうことになつては非常に困るということを漏らされたそうです。その後そういう関係をはつきり規制されるようなことになつたと私聞いておるのです。同じようなことはどの新聞社でも私は大なり小なりあつたと思うのです。それで朝日新聞のような場合におきましては、定款において、文句はちよつと正確に覚えておりませんが、株主総会は編集上の問題についてくちばしをいれないということを規定しておるくらいなんです。ところがこれは実際に法律的に考えますと、株主総会において発言することをそこで制限することになるのでありまして、まだこれは問題になつたことはございませんが、もしも法律的にこれを問題にした場合には、どこまでこの定款の文句が有効であるか、これは私もひそかに疑問としておるわけなんです。結局経営と資本の分離と申しましても、やはり今われわれがよく指図を受けますGHQのインボデンさんなんかの言われるように、アメリカではオーナーというものが、その新聞の編集方針を決定するんだ、その意見に反対する編集長はやめるべきだということをしよつちゆう言われるわけです。そこらは相当徹底した考え方であつて、それが完全に行われればもう資本と経営とは、ぴたつと一致しているわけです。これを何らの支障なく分離してやつて行くことは今の法律では実際は――実際といいますか、りくつとしてはできないのじやないか。ただ実際上は行われていると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/56
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057・田嶋好文
○田嶋(好)委員長代理 今の点について私からお尋ねいたしますが、そうすると今の神戸さんのお答えの中に、経営と資本の関係は実際では分離しているが、現実の面においてやはり一致する点がある、こうおつしやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/57
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058・神戸岩男
○神戸参考人 いいえ、実際上は分離したかつこうをとつているものは多々あると思いますが、りくつから申しますと、それをどこまでも徹底的にやつて行けるかどうかという点にやや疑問がある、そういうことなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/58
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059・上村進
○上村委員 私が質問しようとしたところは、大体佐瀬さんの質問によつて氷解しましたが、やはり株式譲渡を自由にするというのが新商法の根本になつておる。また資本と経営は分離して行くという考え方になつておるのですが、特に新聞社だけが他の商事会社、株式会社に比べて譲渡を禁止しなければならないという理由が、日本の全国民、またわれわれ立法に参加するものに対してでも納得が行かない点があるように思うのです。というのは資本を維持するための譲渡禁止であるか、思想あるいは文化、そういつたものの統制維持のために譲渡を禁止するのであるかというところへわかれて行くと思いますが、それは資本を維持するための譲渡禁止というならば、これはまたそれでいいと思いますが、いやしくも新聞は新聞社の新聞というよりも、文化的国家におきましては、やはり新聞は国民の新聞でなければならないと思う。その国民の新聞は、やはり広く国民の思想と輿論を反映さるべきであろうと思われるわけです。それが特に資本の譲渡禁止によつて資本の力で、あるいは古い思想、あるいは資本主義的な思想を押しつけるような形の特例を獲得するということが、はたしていいのか悪いのかということが、大きく論ぜられなきやならないと私は思うのです。そこで有力な新聞社の方々がどういうお考えでおられますか。新聞の使命は、むしろ私どもよりも新聞社の方の方がそれこそよくわかつておられるのでありますが、どういう新聞をつくらんがためにこの特例を獲得しようとしておるのかということですね。それが明らかにならないと、新聞社だけが特にこの譲渡禁止の獲得をするといつても、大多数の商事会社、株式会社が法の前の平等を主張し、均一を主張した場合に、それに対して納得さすことができなければ、結局立法府にあるわれわれも、それをそうかといつてすぐ受入れることはできないのじやないかと思う。その点について新聞社においてこういうわけだからこうだということがあつたらば、それをお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/59
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060・神戸岩男
○神戸参考人 新聞社では新聞を発行しておりますが、これがほかの種類の株式会社と一番違う点を考えていただきたいと思います。つまり紙に活字を印刷しまして、これを代金をとつて売り出すという点のみを考えますと、これは一般の商品を製造して販売するのとまつたく同じことになるわけでございます。新聞の場合はそういうものではなくて、二ページの日もあれば、四ページの日もあり、また将来は相当ページ数はふえるときもあると思いますが、この形はいろいろとかわります。しかも毎日違つた記事が出ている。そこに一つの一貫した編集方針というか、主張というか、あるいは一つのグループの意見を代表して、そこに論説の欄のごときはそれがはつきり出ておりますが、そういうものがあの中に盛り込まれておるわけであります。従つて読者や、またなるべく大勢の人の意見を会社の組織の中に盛り込めるようにするのがいいとおつしやるただいまのお話は、もつともでございますが、それはある特定の新聞が一つの伝統を持ち、一つのオピーニヨンを持つて、それを守つて継続的に訴えて行く。それに共鳴する読者は、その新聞を尊重して、それをサポートする気持を持つて購読するわけです。それによつて大衆の気持がわかるわけです。そういう伝統を守つて行けば、それに共鳴する読者が多ければ、その新聞の部数はだんだんふえて行く。ふえて行くということは、つまり大衆の意見がその新聞によけいに反映されているという証拠になると思うのです。これがもし逆でございました場合には、部数はだんだん減つて行くということになる。それを資本的にもそういう伝統を守つて行くような仕組みにしておきませんと、きのう言つたことと、あした言うこととはまるでかわつて来る。それでは一般読者も困ると思う。そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/60
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061・上村進
○上村委員 まだ納得ができませんが、結局新聞社から言えば、現在的な資本を固定して行くということが、譲渡禁止になるわけです。それによつて結局新聞社の利潤を追求することに便宜であるだけでは、譲渡禁止の特例は納得できないと思う。それで、新聞の使命の達成の上においてどうしてもこういう固定的な資本に固めておかなければ、新聞が新聞として文化的に向上しないということでないと、この特例を獲得するのはむずかしいと思う。だから、やはり私どもが新聞に要求するものは、新聞社が利潤を追求するということには関心を持たないわけです。同時にまた新聞社が古い文化、古い思想を押しつけようとするのならば、これに対してもわれわれは関心を持ち得ない。どうしても新聞は文化の先がけであり、言論の自由の無冠の帝王でなければならないと思う。そうして来ると、資本の固定とそれとの関係は、何らそこにつながりかない。だから、やはり経営と資本の分離というのでたくさんではないか。その範囲のわくのうちにおいて新聞をよりよく発行してもらえば、それでよいのじやないか。法律の前に平等であるのに、この特例をつくつてまでも資本を固定しなければならないということが、今朝日社の御説明ではまだ納得できない。その点をもう少し……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/61
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062・的場利貞
○的場参考人 今資本を現状のまま固定する必要はないじやないかとおつしやるのですが、われわれは別に固定しようとは考えていないのです。ただ無制限に譲渡されては困る。新聞社のあり方を十分理解した人ならば、固定しなくても、譲渡してさしつかえないのです。ただ譲渡する場合に制限を設けたいということなんです。
それから今おつしやられたことはよくわかるのですが、われわれ新聞と申しますのは一般新聞のことをいうのですが、ほかに機関紙がある。われわれはあくまで一般紙としての性格を続けて行きたいということなんです。そこで株式を無制限に譲渡を許すことになれば、ともすれば機関紙に転落するおそれがある。私は北海道新聞でありますが、北海道新聞の実例を申し上げますと、昭和二十一年に共産党一派によつて、読売新聞と前後して、経営管理をやられたことがある。その場合に、この共産党一派の経営管理に便乗して社を乗つとろうという動きが相当はげしかつたが、当時定款で株式譲渡を制限しておつたので、取締役会の承認を得なければ譲渡できないという項目でようやくそれを食いとめた実例がある。ですから、今おつしやられたように、新聞社というものは、資本家、経営者一グループの新聞社ではない、全国民の新聞社である。これはよくわかります。編集面において、一面には客観情勢をそのまま記事として盛るという面と、一面においては社の主張を社説、論説などで盛るということがあります。社説、論説などで社の主張を盛るという面においても、われわれは最大多数の福祉ということを念頭に置いて社説を掲げておる。これがごく一部の党派とか、一部のグループとかの福祉のために思うままに新聞を使おうじやないかという意図のもとに株を買い占められて、一般紙が機関紙に転落するというようなおそれのないように、譲渡を制限していただきたいというのが私どもの趣意であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/62
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063・上村進
○上村委員 的場さんの御意見よくわかりますが、しかし的場さんの御意見は、少し緩和されているように思うのです。譲渡の制限説のようですが、ほかの社ではこの譲渡禁止を要望しているわけでしよう。その点で幾らか違うんじやないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/63
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064・的場利貞
○的場参考人 いや、各社とも制限ということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/64
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065・福島俊雄
○福島参考人 ただいま上村さんの仰せですが、各社とも禁止は要求しておりません。これはそこにゆとりを持せまして、社内においても譲渡しなければならぬ場合があります。社員がやめた場合にはその移りかわりがあります。これは全然禁止したら動きがとれませんので、制限だけでございます。なお特に日本経済のようなのは、他社とは違いまして、やめた場合も三箇月の余裕を持たせております。そこに各社それぞれの事情によつて幅があるわけであります。
なお先ほど、新聞社は利潤を追求して云々というお言葉がありましたが、私これについて申し上げたいと思います。なるほど、新聞社は私的な事業でありまして、官製ではございません。もし新聞が官製になりますならば、過去の統制下の新聞のような、国民を悲惨な状況に突き落すような新聞に堕するのであります。これはあくまでも私的事業で、自由奔放に言論の自由を確保しなければいかぬと思います。新聞というものは生産事業ではありません。それから何かの生産を目的とする生産手段に用いる事業でもございません。いわんや、消費分配――なるほど、新聞は毎朝配給し分配はいたしますが、消費分配を目的とする商業ではございません。いわんや、われわれは利潤は追求しておらぬのであります。先ほどからたびたび話が出ておりますが、財閥などに一つの資本的勢力で食い込まれますと、資本家というものは、とかく新聞社の編集、取材に関して容喙するのであります。ことに社運が悪いと、なおさらむだづかいをすると見える。編集費、取材費などをけちけちと削りとる。そうして行きますと、新聞というものは、ますます生気がなくなります。御承知でもありましようが、新聞社は利潤を追求するどころか、実にむだづかいをいたします。それは三鷹事件をごらんになつてもわかりましようし、下山事件をごらんになつてもわかりましよう、あるいは築地事件をごらんになつてもわかりましよう、新聞はずいぶんむだな使い方をいたします。天光光女史の件につきましては、苦々しくも使い過ぎております。そういうふうにして新聞社はむだづかいをいたしますが、そこにわれわれは一つの言論の自由を確保し、そうして正しい指導的な立場をとろうという動きを見せておるのであります。最近の例をあまりひつぱり出しておりますると、当りさわりがあるかもわかりませんから、思いつきました古い例を申し上げますと、昭和四年でありましたか、八月に、ドイツのツェッペリン号が、日本にやつて来たことがございます。そのときに朝日新聞はこれを飛行機五台で迎えて写真をとろうとする、当時の東日、毎日新聞は二台の飛行機でこれを迎えて写真を上空でとろうとする、その場合に東日は新潟に飛行機を待機させ、朝日は霞浦に三台、函館に二台、こういうふうにしてツエツぺリンが日本海から入つて来るか、太平洋から入つて来るかわからない。これはあたかもバルチツク艦隊が日本に参りましたときに、対馬を通るのであるか、津軽を通るのであるか、その辺がわからなかつたと同じようなことで、両社ともにそれは作戦上非常に苦心をしたのであります。ところがツエツペリン号は日本海を通つて北海道の南端を横切つて太平洋に出て、ぐるつとまわつて霞浦に出て来た。その第一報が入りますと、朝日の函館に待機しておりました飛行機二台は、飛び上つてこの写真をとつた。それを持つて来て駒沢の朝日の飛行場に空中からおろして、そうして朝日は夕刊締切りの十分前にようやく手に入れて夕刊に出した。これはツェッペリンが何でもない空の上を飛んでいるたつた一枚の写真をとるために、これほど新聞社はむだづかいをしておるのでありまして、決して単なる利潤追求とお考えになつては困ると思つております。ちよつとそれだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/65
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066・上村進
○上村委員 大体わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/66
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067・田嶋好文
○田嶋(好)委員長代理 ほこにございませんか。――ほかに御質疑かなければ、本日はこの程度にとどめまして、明日は午後一時より開会することにいたします。参考人の方々には御多忙中悪天候にももかかわりませず、わざわざ御出席くださいまして、いろいろ慎重な御意見を承りまして、まことにありがたく感謝いたします。ありがとうございました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005206X02519510517/67
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