1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月十日(土曜日)
議事日程 第十号
午後一時開議
第一 未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査に関し国際連合に謝意を表明することに関する決議案(若林義孝君外二十七名提出)(委員会審査省略要求事件)
第二 行政書士法案(本院提出、参議院回付)
第三 郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
第四 厚生保險特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 アルコール專売事業特別会計から一般会計への納付の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
米国の食糧輸出禁止対策に関する緊急質問(足鹿覺君提出)
日程第一 未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査に関し国際連合に謝意を表明することに関する決議案(若林義孝君外二十七名提出)
日程第二 行政書士法案(本院提出、参議院回付)
日程第三 郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
日程第四 厚生保險特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 アルコール專売鴨事業特別会計から一般会計への納付の特例に関する法律の一部を改正法律案(内閣提出)
社会教育法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
公立学校の教育公務員と地方公共団体の議員との兼職についての臨時措置に関する法律案(参議院提出)
農地調整法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
午後一時三十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/0
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001・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
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002・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、足鹿覺君提出、米国の食糧輸出禁止対策に関する緊急質問をこの際許可せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/2
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003・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/3
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004・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
米国の食糧輸出禁止対策に関する緊急質問を許可いたします。足鹿覺君。
〔足鹿覺君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/4
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005・足鹿覺
○足鹿覺君 私は、日本社会党を代表いたしましてアメリカ農務省が政府手持ちの小麦等の外国向け輸出の二月中における中止の措置を講じましたことに関連をいたし、食糧の輸入確保対策を中心とし、食糧問題につきまして、この際政府の所見をたださんとするものであります。
政府は、さきにドツジ公使の食糧統制の継続を勧告いたしましたいわゆるドツジ書簡の趣旨に反し、麦類の統制撤廃を内容とする当面の食糧政策を明らかにしたのでありまするが、その具体的措置に関しましては、その後何らの意思表示をすることもなく、今なお麦類の自由販売対策を固執していたずらに世上の不安を高めつつあるのであります。思うに、政府が麦類の統制撤廃を決定するに至りました根拠は、当時外国食糧の輸入によつて国内の需要を十分にまかない得ると考えたことによるものと存ずるのであります。しかるに、本年一月十日決定を見ました外国食糧の輸入計画は、米麦を合せ二言五十三万二千トンでありまして、昨年五月の計画に比し約五十万トンの減少を来しておるのであります。その修正輸入計画に対し、昨年上半期における輸入実績はその約三五%にすぎず、残余の六五%が本年の一月から六月までの間に輸入されなければ、需給計画はまたもや破綻することとなるのであります。
そこで、私のお伺いいたしたい第一点は、去る二月一日外電の報道いたしました、アメリカ農務省による政府手持ち小麦等の外国向け輸出の二月中における中止措置の影響についてであります。この措置に関しましては、わが国に対し全然無影響であると推測するものもあります。その真相がきわめて把握しがたいので、一説によりますれば、十万トン程度の影響があるとも伝えられておるのでありますが、これらにつきまして政府の所見はいかがであるでありましようか。この措置による直接的な影響のいかんを問わず、世界輸出小麦の約半分を占めておるアメリカの小麦輸出が、かく何らかの制限を受けるということは、世界食糧貿易の今後のあり方について、きわめて重大なる事実を示唆するものであると思うのでありますが、これについて安本長官、農林大臣の明確なる御所見を承りたいと存ずる次第であります。
次に輸入資金の問題を見まするに、現在のわが国の手持外貨は約六億ドルの巨額に達するということも一つの楽観材料であるかのごとくいわれておりまするが、政府の不手ぎわなる輸入措置の遅延、外国商品の値上り等によりまして、その実質貨幣価値は下落しているのであります。しかもこの外貨とて順調に行けば本年六月ぐらいで使い果し、あとは輸出による外貨資金の取得に制約されざるを得ない状態になることは明らかであります。しかるに、わが国の貿易は加工貿易方式を基本とせざるを得ないのでありますから、この加工に必要なる原材料の輸入が絶対に不可欠でありまして、むしろ輸入資金はこの方面に優先的に充当されることが必要であり、早晩食糧輸入との問に強い競合関係が成立せざるを得ないのであります。しかも、昭和二十五年における貿易輸入量の四四%は、今なおアメリカの援助輸入に依存しておる実情であります。援助資金の削減ないし廃止は遠からず予想されるところでありますが、政府は、加工原材料の輸入と競合しつつ、なおかつ十分なる食糧を輸入するに足る商業資金の調達について、はたして成算を持つておられるのかどうか、大蔵大臣の真撃なる御所見を承りたいと存ずるものであります。
第三に、私は輸入価格の高騰を指摘いたしたいのであります。ここに一例として、昭和二十六会計年度の予算案作成に際し輸入補給金の算定に政府が使われた小麦の価格と、その後の値上りとの比較を申し上げますと、アメリカ小麦九十七ドルが現在は五七ドル、アルゼンチン小麦が九十四ドルから百二十二ドルと、約一〇%ないし三〇%の値上りを示しておるのであります。今輸入資金を固定して考えますと、小麦の現実の輸入は値上り分だけ減少せざるを得ないし、また輸入補給金を固定して考えまするならば、小麦の輸入が予定通り行われました場合には、輸入小麦の配給価格はそれだけ高騰して、民生の安定を脅かすこととならざるを得ないのでありますが、政府は、かかる事態に際し、外麦買付資金及び輸入補給金を増額する補正予算の用意を持つておられるやいなや、または価格の騰貴に反比例いたしまして、その輸入数量を倒減せられるつもりなりや、安本長官、大蔵大臣に対し、それぞれ御所見を承らんとするものであります。
次に重要な問題といたしまして船腹の不足があげられると思います。現在世界的な船腹不足を反映いたしまして、運賃の値上りはなはだしく、朝鮮事変前と比較いたしまするならば、五割ないし六割の値上りになつておるのであります。これが対策として新造船計画その他が考慮せられつつあるようでありますが、これが達成には五百位円ないし六百億円の資金を要します。かつ技術的にも、自国船の急激な増大は、先般も決議案が可決されましたけれども、なかなか困難であろうと存じます。つまり輸送の面からも食糧の輸入は著しく制約を受けるのではないかと考えられるのでありますが、経済安定本部長官の、この点についての御所見を承りたいと存ずるのであります。
次に食糧の供給状況と買付競争について言及いたしまするならば、東南アジアにおける米はもとより、四大輸出国その他の小麦の供給力も、冒頭において述べましたように、アメリカ小麦の輸出中止の措置その他によりまして、かなり弱体化しているのでありますが、これに対し、逆に世界各国の備蓄輸入買付競争は一段と激化しておるのでありまして、わが国の外国食糧輸入に一層の困難を加えつつあることは申すまでもありません。
以上、これを要約して結論的に申し上げますならば、政府の外国食糧依衣政策の前途は決して楽観を許さないということであります。これらの惡條件の克服に対して、政府は目下いかなる対案有しておられるや、われわれの最も憂慮し、かつ聞かんとしておるところでありまするので、関係大臣からそれぞれ明快なる御答弁を求めんとするものであります。(拍手)しかも、食糧輸入のかかる惡條件にもかかわらず、政府はなおかつ麦類の統制を撤廃するの暴挙をあえてなそうとしておるのであります。かりに現在の客観條件におきまして麦類の統制が撤廃されるといたしまするならば、そこに、いかなる事態が発生いたすことでありましようか。これについて特に政府の反省を求めると同時に、農林大臣の責任ある御回答を煩わしたいと思うのであります。(拍手)
まず生産者の立場からいたしまするならば、麦類の供給不足による食糧需給の逼迫によりまして、米に対する供出が強化せられることは、ほとんど必至の情勢であろうかと存ずるのでありますが、農林大臣は、参議院の江川君に対する答弁に際しましても、また予算委員会におきましても、しばしば農家保有米がだぶついておると放言をされておりますが、農林大臣は、この御言質の立場から米の追加供出をおやりになる考えがあるのでありますか、その御構想について承りたいと存ずるのであります。このため特に單作地帯の生産者のこうむりまする惡影響は、きわめて大なるものがあると思うものてあります。しかも、この状態が早急に解消せられないことは明らかであります。主食の大宗である麦類が再び統制の対象になることは必至であろうかと思われますので、この再統制の移行による混乱は、当然農家の作物編成等、農業経営及び農家経済に少からぬ惡影響を及ぼすことになるのは必至でありまして、その責任はあげて政府にあると私は申し上げたいのであります。(拍手)
しかし、最も手痛い打撃をこうむるものは、いうまでもなく消費者大衆でありまして、主食用としての麦類の出まわりは減少し、あるいは偏在を来して、価格は脇貴し、価格体系のバランスは破壊され、思惑取引が再脱し、国民食糧の安定は危うくされるものと思われるのてあります。かかる社会不安の醸成に対しまして、政府当局は、外麦あるいは内麦の手打ち分によつて適切なる価格操作を行い、善処するやに灰叩いたしておるのでありますが、しかし先ほどすでに申し述べました通り、外麦の輸入に対しては多くの制約があることは自明であり、また国内産麦の政府貫入れも、価格が生産費を保証し、かつ実需者の買付する価格に比し右利なものである場合においてのみ予定の数量を把握することができるのでありますが、私の考えまするところでは、思い切つた二重価格制でも採用しない限り、麦類、特に大麦、裸麦の予定量の買入れ完遂は、はなはだ疑問であると思うのであります。はたしてその自信ありやいなや、特に農林大臣におただしをいたしたいと思うのであります。
最後に、簡單ながら本問題に対する私見を申し述べまするならば、第一に、主食の国民自給度の向上こそ緊急の要務であり、このためには価格の適正化、特に菱類については現行対米価比率を維持することが絶対必要であると同時に、米麦に対して民主的かつ計画的名国家管理を実施して、生産者をして安んじて増産にいそしましめ、一方適切な消費者規正を続行し、主食最低二合七百を維持することが必要であると考えるものでありますが、この点について政府の真撃なる所見を承らんといたすものでありまして、以上をもつて私の質問を、終りたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/5
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006・廣川弘禪
○国務大臣(廣川弘禪君) 私に関する方面のみをお答え申し上げます。
輸入状況、買付その他については安永長官からお答えになるそうでありますから、これを略します。麦の統制を廃止して影響をだんだんとお尋ねでありますが、私どもといたしましては、三相会議で決定いたした通り、麦の統制はこの七月から廃止する予定でおるのであります。その統制を廃止すると、非常に食糧事情が混乱するのではないかというお話でありますが、米はやはり統制を続けて参りますので、基礎の米をそこの程度に置きすえておきますれば、麦の需給というものは決してそう惡くなるとは私は考えていないのであります。
それからまた、食糧の自給度を高める上において農産物の価格を上げなくちやならぬのではないかというお話でありますが、われわれ自給度を高めるために米の価格を上げたのであります。また麦につきましても最低価格をきめてありますので、これより下ることはありませんから、われわれは安心いたしておるのであります。またこの前申し上げた通り、いもの統制をはずしましてから、いもの価格が非常に上つておりまするので、それだけ農家に利益を與えておるのであります。自給度を高める上について、麦の統制をはずすことによつて必ず貢献するものと信じておるのであります。
それからまた、米、麦等の、主食の問題について二重価格制をとる用意があるかというお話でありますが、現在のところ、とる考えは持つておりません。しかし、再来年度等におきましては、食糧庁その他に関する費用については私は別に考えたいと思つておる程度であります。(拍手)
〔国務大臣周東英雄君〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/6
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007・周東英雄
○国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。
二月一日の米国農務省の発表ということを外電が伝えておりますが、これに関しましてはまだ公電を入手しておりません。総司令部等に対して、ただしておりますが、その方におきましても、今日までのところ、まだ確実な報告を入手いたしておらぬのであります。しかし、かりにこれが正確なものといたしましても、政府手持ちの小麦ということは、おそらくCCC、商品金融機構の手持ちの小麦をさしておると思いますが、今日まで二月中に積出しを予想されておる民間輸入のものは、このものに関係はございませんから、約十万トンは別に心配はございません。また援助資金によるところの九万トンの問題も、これは米国陸軍省が買い上げて出すものでありますから、直接にはこれと関係がございませんので、心配はないかと考えております。
第二点の船舶の問題でありますが、この点については、御心配の点ごもつともでありまして、私どもも、これに対して憂いを同じゆうするものであります。政府といたしましては、でき得る限り船舶の増強に努めております。現に民間におきましての買入れの船舶につきましては、すでに大体十隻ほど契約が成立しておりますし、なお十一隻ほどは契約が進行中で、確実な見込みのあるものであり、その他七、八隻はこれから引合い中であります。また民間の傭船につきましても、七隻ほどできかけております。その他につきましても、目下傭船等について懸命の努力を続けておりますので、この船による必要な食糧の輸入については万全を期したいと考えておりますし、いろいろな場合におきまして国民の生活安定に必要な食糧の輸入については優先的に考えて行きたいと思いますので、御心配さることながら、ただいまの農務省の発表に関する限りにおいては直接に影響するところは少いと考えております。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/7
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008・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
輸入資金につきましては、食糧については御承知の食糧管理特別会計に潤沢なる資金を持つております。しかして食糧以外の加工原材料につきましては、日銀のユーザンス制度あるいは市中金融でまかなつております。日銀のユーザンスも、最近では二千数百億円に上つておるのであります。輸入金融についての御心配はいらないと思います。
次に、小麦の価格が上つたから、来年度において二百二十五億円の補助金では足りないのではないかという御建議でもります。お話の通り、輸入の小麦の価格は上つて参りました。これは主として船賃の暴騰によるのであります。従いまして、私らは、できるだけ日本船をふやすようにし、しかしてまた小麦協定に入りましたならば相当麦が安くなりますので、小麦協定に入るように努力いたしておるのであります。ただいまのところ、御心配の程度のことはないと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/8
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009・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/9
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010・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
日程第一、未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査に関し国際連合に謝意を表明することに関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。若林義孝君。
〔若林義孝君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/10
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011・若林義孝
○若林義孝君 ただいま議題となりました未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査に関し国際連合に謝意を表明することに関する決議案につきまして、提案の趣旨を弁明いたします。
まず案文を朗読いたします。
未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査に関し国際連合に謝意を表明することに関する決議案
同胞引揚に関する諸問題解決について終戰以来五年有余にわたる連合国の終始変らない好意は、日本国民として衷心より感謝に堪えないところである。
さきに第七回国会において、「未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査等を国際連合を通じて行うことを懇請する決議」が議決されるや、連合国軍総司令部は、直ちにその趣を国際連合に伝達せられ、且つ、戰時捕虜問題の信義に際しては、特にわが国民代表五名をオブザーバーとして出席を許されたことについては日本国民の感銘殊に深いものがある。
第五回国際連合総会において、戰時捕虜問題を人道上の見地から広く国際的平和的に解決するための措置が採択されたことにより、国民はひとしく感激を新たにし、既にその肉親との再会に光明を失つていた留守家族は更に希望を新たにするに至つた。
国民はこの国際連合総会の決定が捕虜問題を平和的に解決する最後の途であることを信じ、一すじに今後の成行きに絶大の期待をかけている。
この措置によつて、未帰還同胞及び抑留中死亡した者についての調査が今後綿密に進められ、且つ、残留者の帰還が一日も速やかに完了することは日本国民の念願である。
本院はここに陽動敵をもつて、わが国民を代表し、世界の平和及び基本的人権と自由の擁護の高い理想に基く国際連合の努力に対し深甚なる感謝の意を表明する。
右決議する。(拍手)
海外残留者の引揚げは、終戰直後より引続き行われたのでありますが、集団引揚げにつきましては、昨年二月シベリア方面よりの引揚げが行われまして以来まつたく中止せられ、三十万を越えまする未帰還者の消息は、そのときからまつたく留守宅にもたらされることなく、留守家族の不安動揺は極度に達しておるのであります。かような状況におきまして、引揚げの促進並びに残留者と死牧者の実情調査につき、もはや国際連合に訴えるのほかなきに至り、昨年、第七国会の末期五月二日、本院におきまして、未帰還同胞の引揚促進並びに実体調査等を国際連合を通じて行うことを懇請する決議が、大多数の賛成をもつて議決されたのであります。本決議は、連合国軍総司令部の好意により、ただちに国際連合に通達せられ、国連におきましては、各段階の種々なる経緯を経て、遂に去る十二月十四日、捕虜問題の平和的解決のための措置なる決議が、総会におきまして大多数国の賛成を得まして採択せられるに至つたのであります。この間、英、米、濠三国の特別なる努力、その地組部の消息は、連合国の好意により特に国際連合にオブザーヴアーとして出席を許されました国民代表から、本院の海外同胞引揚に肥する特別委員会に対して、きわめて詳細なる報告があつたのでありますが、この報苦から推測いたしましても、国際連合がわが未帰還同胞の問題に了解を深め、いよいよ真劍にこの問題の解決に乘り出して参つたことは明らかでありまして、国民諸君とともに、まことに感銘深き事柄てあると信ずる次第なのであります。
この国連総会における決議におきましては、その文中にあります通り、今なお捕虜を抑留している諸政府に対し、これをすみやかに帰還せしむべきことを要望するとともに、本年四月三十日までに今なお抑留中の俘虜、抑留中死亡したる俘虜の消息を公表することを要求いたして、かつこの捕虜間組を平和的に解決するため、三人からなる特別委員会の設置を定めておるのであります。
あらためて申すまでもなく、私どものこの問題は、今日のところ解決の緒についたばかりではありますが、国連の手を通じて解決をはかることが、今日の日本としてもはや真に最後の手段であると確信しておるのであります。全国民、ことに留任家族は、国連総会のこの決議と、三人委員会の活動とに一道の光明を認め、これに全幅の信頼をかけるに至つておるのであります。
かように、わが国の捕虜問題が、国際連合の諸国間に真劍に問題とされて解決の方向が示されましたことは、わが国民の国家再建の努力が国連諸国間に認められ、国際的の仲間入りの第一歩を踏み出したことになるのでありまして、その基礎をなすものは、わが国民が終戰以来ポツダムも宣言を忠実に守り、ある場合には真に歯を食いしばつて耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、平和国家建設のために拂つた真劍なる努力の結果にほかならないことは、特に申す必要はないとも存ずるのであります。
今回の捕虜問題に関する国連総会の決議は、その冒頭にうたつてあります通り、問題を解決するにあたり、国際協力を達成し、すべての人に対する人権及び基本的自由の尊重を助長奨励するを目的とし、高遠なる理想に根底を置くものでありまして、かような理想に導かれる方向をその進路とするわが国の努力、国民の真情にこたえたものでありますことは、実に感激にたえないものがあり、もしそれ問題の調査のため国連よりわが国に調査員を派遣せられるが、ごとき場合には、朝野をあげてこれに協力すべきであることを確信するものであります。かような国連の真剣なる努力に対し、留守家族のみならず、国民あげて感謝すべきであると信ずるのであります。
ここに本決議案が上程せられるにあたりまして本案に対する諸君の心よりの御賛同を願つて趣旨の弁明を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/11
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012・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これより討論に入ります。高田富之君。
〔高田富之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/12
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013・高田富之
○高田富之君 私は、日本共産党を代表いたしまして本案に反対の意を表明せんとするものであります。
先般非公式オブザーヴアーとして国連へ出られました中山君の御報告によりますれば、ルクセンブルグ、フランス、オランダなどの諸国は、この問題は相手国と個別に折衝すべきであると、いう考えを持つておつたとのことであり、またアラビヤ・ブロツクにおきましても、本問題は政治的意図を持つものであるから、これを取上げれば戰争になる危險性があるというようなことで、本案を取上げることを喜ばなかつたというような様子があつたことを報告せられております。なお最後の採決のときにも、ソビエト同盟を初めとする五箇国がこれに反対し、インドを中心とする八箇国が棄権しておるということが報告せられておるのであります。私もまた、このような問題は国連へ持ち出すべき問題ではないと考えるのであります。なぜならば、国連憲章の第百七條には、旧敵国に関する行動で、それについて責任を有する政府が、戰争の結果としてとつたものには關與しない旨の規定があるのであります。従つて本問題は、一九四六年十二月の、ソ連地区引揚げに関する米ソ協定に基いて行わるべきものであつて国連が關與すべき問題ではないと考えるのであります。不幸にしてこれが今回国連で決議せられましたことは、将来の国際紛争の種を一つふやしたことでありまして、日本国民として、まことに遺憾にたえないところであります。
中山君その他二君は、国連へ、ソ連地区になお三十七万人残つておるという説をひつさげて参られたのでありますが、不幸にして、われわれ日本の国会議員は、だれ一人、まだこの三十七万残留説を裏づけるべき詳細な論拠と資料の発表を受けておらないのであります。昨年の十二月十一日、外務省の情報部から、ソ連地区からの未帰還者約三十七万のうち、八月三十一日現在に判明したものは三十一万六千三百三十九人であるという発表がありまし、た。当時外務委員会におきまして、自由党の佐々木盛雄君から、この問題についてはいろいろと問題があるから、ぜひこの数字の内訳、残留地区別の内訳、その他納得の行くような発表を願いたいという、まことに、ごもつとも、かつ熱心な御要求がありました。ところが、これに対しまして政府当局は、これを拒否いたしました。その拒否した理由といたしまして、ただいま三人の代表が国連へ行つておる、しかも各方面から見たいろいろな資料をたくさん持つて行つておるので、はたしてどの程度の数字を関係国に話されたか、まだ連絡がないので、今のところ発表を差控えたい、こう言うのであります。
そこで私は、さらにこの問題につ旨ましては、党派を越えて佐々木君に協力して、さらに強く発表をお願いいたしたのでありましたが、遂に政府から、できるだけ早く発表いたしましよう、というような旨の回答がありました。ところが、その後待つておりましても、一向に発表がない。そこで、案は昨日も引揚対策特別委員会におきまして、外務当局に対し、私は真劍に、これを即時発表して全国民の前に明らかにしてもらいたいということを要求いたしましたところ、外務当局は言を左右にして誠意を示さず、あまつさえ委員長は、横暴にも私の質問を中途で停止せしめるという暴挙に出ておるのであります。
しかるに、ソビエト同盟におきましては、御承知の通り昨年の四月二十日に、受刑並びに調査中のもの、その他合計二千四百六十七人を除く、総数五十一万四百九人の送還を完了せる旨発表いたしております。(「帰つていないぞ」と呼ぶ者あり)もしこの数字が信用できないとおつしやるならば、ぜひとも私ども全体が納得できるように、これに対立する政府発表数字の根拠と資料を即時発表する当然の業務があるのであります。(拍手)私は、重ねて本議場において、政府が即時私どもを納得せしめる貸料と、詳細なる発表あらんことを要求するものであります。
一体、こういうふうな問題を取上げます際に、常に人道上の見地云々を唱えられるのでありますけれども、現在までにすでに引揚げて来られた諸君が六百万円を越えております。これらの帰つて来られた諸君は、生業を失い、あるいは住むに家もない非常に困苦欠乏の中にありますのを、これをほとんど放置して顧みず、あまつさえ、ソビエト同盟から引揚げて来られた諸君に対して仕赤のレツテルを張りまして、せつかく就職いたしました職場からレツド・ページによつて追放し、生きる権利まて剥奪しておるではないか。これが人道上許せる行為と言えますか。(拍手)従来、衆参両院の引揚特別委員会あるいは考査特別委員会等におきまして、たとえば徳田要請事件であるとか、その他いろいろな問題を取上げまして、反ソ、反共宣伝にうき身をやつして来られた。しかしながら考えてみますと、こういうことを取上げて大騒ぎをするときには、きまつて人民大衆が大きく高揚しようとするときをねらつた、これは明らかな一つの政治的策謀であつたと私どもは考えざるを得ません。(拍手)今日この決議案がここに上程されましたのも、思うにダレス特使の来訪の機会に国連に対する感謝をいたしまして、国連軍への協力、あるいは進んで新たなる反ソ、反共——への心構えをつくらんとするものであり、單独講和を目ざす一つの政治的な企図であると私は考えます。(拍手)かくのごときことは、ほんとうは国際連合憲章に対する私は冒涜であると思う。
私どもは、未帰還者の遺家族諸君の心境に対しましては、諸君に劣らず深く同情しております。(発言する者あり)これらの諸君に同情しますからこそ、二度と再び戰争を起すようなことのないように、われわれは断固として平和を守らんとするものであります。従つて私たちは、真に平和的な公正なる方法による引揚げ促進につきましては、今日まで常に先頭に立つて活動して参りましたし、今後もまた活動するものであることをはつきり断言いたしまして、反対の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/13
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014・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/14
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015・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。
この際林国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣林讓治。
〔国務大臣林讓治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/15
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016・林讓治
○国務大臣(林讓治君) ただいま御可決になりました決議につきましては、政府もまつたく同感でございます。この機会に、政府といたしましても今後さらに引揚げ問題解決のためにあらゆる努力をいたしまする決意のありますることを申し上げまして、この決議に対する政府の所信を披瀝いたします。(拍手)
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第二 行政書士法案(本院提出、参議院回付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/16
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017・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第二、行政書士法案の参議院回付案を議題といたします。
—————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/17
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018・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/18
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019・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて参議院の修正に同意するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/19
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020・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第三、郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案、日程第四、公正保險特別会計法の一部を改正する法律案、日程第五、アルコール專売事業特別会計から一般会計への農夫の特例に関する法律の一部を改正する法律案、右三案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長夏堀源三郎君。
〔夏堀源三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/20
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021・夏堀源三郎
○夏堀源三郎君 ただいま議題となりました郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案、厚生保險特別会計法の一部を改正する法律案及びアルコール專売事業特別会計から一般会計べの納付の特例に関する法律の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に閲する法律案の提案の趣旨について申し上げます。
昭和二十六年度郵政事業特別会計予算におきましては、歳出総額五百七十一億七千七百二十四万五円に対し、この会計固有の歳入額は五百三十五億九千三百四十一万円でありまして、差引三十五億八千三百八十三万五千円の歳入不足を生ずることになるのでありまするが、これは本特別会計の固有業務が公共的性格のものであるのにかんがみましてこの料金が低慶になつております関係上、給與改善等に要する経費の財源に不足を来すことになつたものであります。本会計におけるこの不足金に対しましては、総合均衡予算の建前からいたしましてこれを一般会計からの繰入金をもつて補填することにいたし、なおこの繰入金につきましては、この会計が独立採算制の建前であり、かつその経費の性質にかんがみまして、後日この会計の財政状況が健全な状態になりましたあかつきには、これを一般会計に繰りもどすことにいたしておるのであります。
次に厚生保險特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。厚生保險特別会計におきましては、昭和二十六年度以降、結核患者用病床を増設いたしまして、健康保險事業の福祉施設を拡充し、結核対策の充実を期したいと考えておるのでありますが、しかし、これに要しまする経費に、この会計の財源のみをもつてしては不足をいたしまするのて、従来の業務取扱いに関する経費のほか、福祉施設の経費につきましても、一般会計からこの会計に繰入れることができることにいたそうとするものであります。
次にアルコール專売專業特別会計から一般会計への納付の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
アルコール專売事業特別会計におきましては、昭和二十五年度におきまして、この会計の同年度末においての固定資産及び作業資産の価額の合計額が、昭和二十四年度末におけるそれらの資産の価額の合計額より減少しました場合ば、その減少額に相当する金額を、昭和二十五年度において、この会計から一般会計の歳入に納付し、当該減少額に相当するこの会計の固有資本を減少することになつておるのでありますが、昭和二十六年度以降におきましても同様の措置をする必要がありますので、今回所要の改正をいたそうとするものであります。
これらの三法案は、いずれも二月二十五日、本委員会に付託され、同三十日、政府委員より提案理由の説明を聽取上、同三十一日より二月七日に至る間、ほとんど連日にわたり各委員より熱心な質疑を行い、大蔵大臣、郵政大臣、その他政府委員からそれぞれ答弁があり、愼重審議を続けたのでありますが、その詳細に関しましては速記録に譲りたいと存じます。
次いで質疑を打切り、二月八日、討論採決に入りましたところ、まず郵政事業特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案につきましては、三宅則義委員は自由党を代表し、宮腰委員は民主党を代表し、松尾委員は社会党を代表してそれぞれ賛成の意を表せられ、竹村委員は共産党を代表して反対の旨討論せられました。
〔議長退席、副議長着席〕次いで採決いたしましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決すべきものと決定いたしました。
次に厚生保險特別会計法の一部を改正する法律案及びアルコール即売事業特別会計から一般会計への納付の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、三宅則義委員は自由党を代表し、天野委員は民主党を代表し、田中織之進委員は社会党を代表してそれぞれ賛成の意を述べられ、竹村委員は共産党を代表し、希望條件を付して賛成の旨討論をされました。次いで採決いたしましたところ、起立総員をもつて原案の通り可決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)。副議長(岩本信行君)討論の通告があります。これを許します。柄澤登志子君。
〔柄澤登志子君登壇〕
〔「共産党は何でも反対するんやな」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/21
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022・柄澤登志子
○柄澤登志子君 日本共産党を代表いたしまして、ただいま上程されました郵政事業特別会計の歳入不定を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案に反対の意を表明するものであります。
ただいま反対の理由を申し述べるのに対しまして社会党の席からすらも、何でも反対するというお声がございました。しかし、この給與を上げるためにということが主になつておりまするところの本法案につきましては、私どもは絶対に賛成することはできないのでございます。なぜかならば、先第九臨時国会におきましてこれは浅井人事院総裁すらが、実施する自信を持たない給與であるということを強力に主張なすつたのであります。田村郵政大臣も、特に現業関係を持つておりまするところの郵政におきましては、現業の実情を知らずに閣議において賛成したことは申訳ないということすら委員会で言明された給與法であります。(拍手)当然であるならば、第十通常国会におきましては、まずこの給與法から改正すべきであります。なぜ人事委員会を開かない、なせ労働委員会を開かない、なぜ郵政委員会を開かない——関係委員会は何ら開こうというところの誠意を見せずに、突如として大蔵委員会にこの法案が出され、そうして今日ここは上程されたのであります。われわれは、こういう美名をもつて、労働者の給與を上げるためであるというような、かかる美名のもとに、この間違つた給與法、実施の自信のないような給與法を二十六年度全体において承認するというような、この第一歩を踏み出すところの本法案には、絶対に賛成することができないのであります。
給與の実施の状況はどうなつているかといえば、千円ベース・アップの内訳は、最低は二百数十円しか上つておりません。最高は一万数千円上つております。このような、ものすごい職階制が、職場においてはどうなつているかと申しますれば、下部の現場を守つておりますところの、あの郵便配達夫であるとか、ほこりつぽい原簿を整理しておりますところの従業員であるとかに対しましては、ものすごい圧力となつてかかつて来ておるのであります。超過勤務すらが職階制になつております。———————お茶を飲んで監督しておるところの十三級の職員が六千円の超過勤務手当をとつており、汗水流して時間外二時間も三時間も働いているところの現場の労働者諸君が五百円ももらつていないというような、かかる不当な給與制度なのであります。
さらに最近はどういう状況が出ているかといいますと、原簿整理三千件を一日にやらなければ、お前の給料のうちの同割しか働いていないというようなことを言つてこの職階制の、月六千円も超過勤務手当をとるような係員が、下の現場の五百円しか手当をもらわないような労働者に対して圧力を加えて来ているのであります。
さらに郵政省は、その貴重な一般会計から繰入れますようなこの赤字の予算をもつて、給與簿制度というものを確立するために講習会を開いておられます。この給與薄制度が実施されますと、どういうふうになるかと申しますと、現に今実施されておるのでありますが、十分間遅刻いたしましても二時間の遅刻になる。無届で遅刻いたしましたときには、これも欠勤になります。早退した者も、無届の場合は欠勤になる。欠勤というのは、給與がもらえないのであります。つまり労働の完全なる搾取であります。しかも居残簿というものと、それから命令簿というものがあるのでありますが、この講習会におきましては、命令簿は、この予算の裏づけのない場合には支拂わないということが前提になつております。居残簿というものは鉛筆で書けといつて講習をしているということであります。
かかる不当な労働強化、ちようど、かつての大戰中にありましたような、かかる不当な労働強化、一番現場を守つているところの二十六万の労働者のうちの三級、四級あるいは五級というような、こういう人たちが、三千円、四千円あるいは五千円というような、生活の保障もできない状態に置かれて、超過勤務をせざるを得ないような状態に追い込まれて行く、このような給與制度に対しましては、まずこのような欺瞞的な、一般会計から繰入れることによつて従業員の給與を保障するこいうような法案を出す前に、すべからく給與法を改正すべきである、こういうふうな観点から、私どもは、とうてい賛成することができないのであります。
さらに第二の理由といたしましては、そもそも郵政省の赤字の原因というものは、どこにあるかと申しますれば、これは、あの各省設置法案、つまり逓信省を分割して独立採算制にした、あの電通省、いわゆる吉田首相の言うところの自衛と平和、これのために国連に協力するという、この協力の最も重要な一つの機関として、完全にこれに協力させるためには、赤字になることがわかつておりながら、政府は電通省と郵政省に分離したのであります。この分離が最も赤字の原因になつております。これが原因であることから目をそらしまして、一般人民大衆から取上げますところの税金を労働者の給與に持つて行つて支沸うということによつて、あの低賃金に悩み、首切りにおびえている従業員諸君と、さらに人民大衆を分離させまして、今給與ベースを上げてほしいという労働者の要求を粉砕しよう—諸君は、あの全官公の労働者の諸君を首切るときに、国民の税金の多いのは官吏が多いからだと言われた。しかるに、今はどうかといえば、官吏を首切つたたけ警察予備隊をふやしておられるではないか。そういうような矛盾した根本的な理由を解決せずに、給與を上げるということで一般会計から入れ、国民の負担を多くすることに対しましては、わが党といたしましては賛成することはできないのであります。
最後に、郵便特別会計とか、あるいけ預金部資金特別会計運用法というようなものが今後続々出されるそうでありますが、このような零細な国民の預貯金が、郵政省の要求であるところの、第五国会以来のあの決議がまつたく無視されまして、完全に大蔵省に支配され、郵政省はまつたくの隷属的な地位に置かれておることに対しまして、おそらく官民もに、與党の諸君も郵政大臣もこれに対しては闘わざるを得ないであろうのに、かかる法案をもつて欺瞞されて、これで屈服するということはできないと思うのであります。
以上三点の理由をもちまして、本法案に反対の意を表明する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/22
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023・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
まず日程第三につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/23
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024・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に、日程第四及び第五を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/24
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025・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/25
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026・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、社会教育法の一部を改正する法律案、参議院提出、公立学校の教育公務員と地方公共団体の議員との兼職についての臨時措置に関する法律案、右両案を一括して議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんこと望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/26
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027・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 副永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/27
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028・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
社会教育法の一部を改正する法律案、公立学校の教育公務員と地方公共団体の議員との兼職についての臨時措置に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。文部委員会理事岡延右エ門君。
〔岡延右エ門君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/28
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029・岡延右エ門
○岡延右エ門君 ただいま議題となりました社会教育法の一部を改正する法律案につきまして本案の概要及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、去る二月七日、参議院より本院に送付せられ、文部委員会に付託となつたものでありまして、第五国会において制定されました社会教育法のうち、次の三点につき改正しようとするものであります。すなわち、社会教育法の第五條、第六條におきましては、教育委員会が社会教育に関して果すべき仕事を列挙しておるのでありますが、その仕事を行うべき職員については、社会教育法には何らの規定がないのであります。また教育委員会法の中にも特別の規定がなく、わずかに教育委員会法施行令に社会教育主事に関する規定が見られるだけであります。教育委員会の仕事は、大別すると学校教育と社会教育とにわけられるのでありますが、学校教育の分野におきまする指導主事に関しましては教育委員会法、教山口職員免許法、教育公務員特例法等に規定されましてその設置、資格、身分の取扱いが明確にされているのであります。社会教育の分野における社会教育主事に関しましては全然規定がないのであります。しかも、指導主事の職務の重要性と、社会教育主事の職務の重要性とはまつたく同等であつて、差別はないのであります。従いまして、社会教育法の中に社会教育関係者の設置、職務、資格に関する規定を、教育公務員特例法の中にその身分の取扱いを加えて明確にしたのでありまして、まずその第一の点は、社会教育主事及び社会教育主事補を法律上の機関としたことであります。第二の点は、社会教育主事及び社会教育主事補の職務を規定したのであります。第三の点は、社会教育主事及び社会教育主事補となるために必要な資格を新たに規定したものであります。以上が、本法案の改正の要旨であります。
次いで文部委員会といたしましては、本案について愼重に審議をいたしました後、共地党渡部義通君の反対討論があり、採決をいたしました結果、多数をもつて本案の妥当なるを認め、可決いたしたような次第であります。
次に、ただいま議題となりました公立学校の教育公務員と地方公共団体の議員との兼職についての臨時措置に関する法律案につきまして、本案の概要及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案は、二年十日、参議院より本院に送付され、文部委員会に付託となつたものでありまして、その内容は、従来教育公務員特例法第三十三條及びそれに基く教育公務員特例法施行令第十六條の規定によりまして、公立学校の教育公務員は地方公共団体の議会の議員をその残任期間中は兼職ができることになつておりましたところ、このたび地方公務員法の施行に伴いまして、教育公務員特例法第三十三條及び同法施行令第十大條の効力を失うことに相なつたのであります。かようなことになりますと、従来の兼職議員は失格いたしますことになり、それはまた既得権の剥奪をも意味することに相なりますので、ここに本法案を提案いたしまして、地方公務員法の施行にあたりまして、地方自治法第九十二條第二項の規定にかかわりませず、教育公務員で地方公共団体の議会の議院を兼ねている者は、その残任期間中は兼職ができるということにいたしたのであります。以上が本法案の趣旨及び内容であります。
本委員会におきましては、愼重審議の結果、討論を省略いたしまして、全会一致をもつて可決いたした次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/29
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030・岩本信行
○副議長(岩本信行君) まず社会教育法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/30
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031・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に公立学校の教育公務員と地方公共団体の議員との兼職についての臨時措置に関する法律案につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/31
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032・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/32
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033・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、農地調整法等の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その信義を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/33
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034・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/34
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035・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
農地調整法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長千賀康治君。
〔千賀康治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/35
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036・千賀康治
○千賀康治君 ただいま上程になりました、内閣提出、農地調整法等の一部を改正する法律案に関しまして、農林委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告いたします。
この法律案によりまして農地調整法並びに公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律の一部を改正いたそうというのでありますが、改正の要点は次の二点にあります。
すなわち第一点は、現在の農地委員今本の委員は、市町村、都道府県とも、おおむね、八、九月ごろまでに任期満了することになつておりますが、四月以降に行われます予定の地方選挙におきまして、これらの農地委員が立候補いたしまして、そこに欠員が生じ、委員の数が定数の三分の二に達しなくなりますと、現行農地調整法によりまして補欠選挙を行う必要が出て参りますが、御承知のごとく、政府はただいま農地委員会、農業調整委員会等を統合した農業委員会に関する法案を立案中でございますので、その選挙が遠からず行われることと相なつております。ゆえにこの際、農地調整法中のその部分に関しまする條項を改正いたしまして、農地委員会の委員の任期満了前六箇月以内に委員の欠員が生じましても、その数が各階層の定員のそれぞれ二分の一に至らないうちは補欠選挙を行わないというようにいたしておるのでございます。
第二点は、このことに関連いたしまして、公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律の第三十一條によつて本年三月四日まで有効とせられておりまする市町村農地委員会委員選挙名地の有効期間を、さらに一箇年延長いたそうというのであります。
この法律案は、二月二日委員会に付託と相なりましたが、案の内容自体は至つて簡單なものでございまするので、提案理由を聞くにとどめまして質疑も討論も行うことなく、二月十日ただちに採決を行い、全員の賛成を得まして、本法律案はこれを可決すべきものと決定いたした次第でございます。
以上、御報告をいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/36
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037・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/37
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038・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
これにて議事日程は議了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01119510210/38
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