1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年二月二十六日(月曜日)
議事日程 第十四号
午後一時開議
第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 登録税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第六 相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第七 印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第八 骨牌税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第九 国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第十 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
●本日の会議に付した事件
日程第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 登録税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第六 相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第七 印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 骨牌税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第九 国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第十 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
北海道開発のためにする港湾工事に関する法律案(玉置信一君外二十六名提出)
水先法の一部を改正する法律案(伊藤郷一君提出)
午後二時十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/0
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001・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) これより会議をを開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/1
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002・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案、日程第二、法人税法の一部を改正する法律案、日程第三、租税特別措置法の一部を改正する法律案、日程第四、通行税法の一部を改正する法律案、日程第五、登録税法の一部を改正する法律案、日程第六、相続税法の一部を改正する法律案、日程第七、印紙税法の一部を改正する法律案、日程第八、骨牌説法の一部を改正する法律案、右八案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長夏堀源三郎君。
〔夏堀源三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/2
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003・夏堀源三郎
○夏堀源三郎君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外七法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
まず、これらの法律案の提案趣旨について申し上げます。政府は昨年、中央地方を通ずる税制の根本的改正を行い、国民の租税負担の軽減、合理化をはかつたのでありますが、今日の国民負担の実情から考慮いたしますると、国民の負担はなお相当重いものがありますとともに、一方わが国経済の自立達成上急速な資本の蓄積が要望されている現状にかんがみまして、極力歳出を削減し、本年重ねて大幅の減税を断行し、国民生活の安定、資本の蓄積に資することにいたしたのであります。すなわち、今回の税制改正の基本方針といたしましては、第一に、昨年の減税に引続いて、重ねて本年度において約七百四十三億円に達する減税を断行し、国民の租税負担の軽減、合理化をはかつたのであります。第二に、税制の根本につきましては、昨年すでにその確立を見ておるのでありまするが、今回負担の一層の公平化と税制の簡素化をはかるため、これに若干の補正を行うことといたしたのであります。第三に、朝鮮動乱後の国際情勢に対処して早急にわが国経済の自立を達成するため、税制上資本蓄積に資する各般の措置を講ずることといたしたのであります。
次に、各税に関する改正の大要について申し上げます。
まず所得税法の一部を改正する法律案におきましては、負担の軽減を第一義として、基礎控除を現行二万五千円から三万円に、扶養控除及び不具者控除を現行一万二千円から一万五千円にそれぞれ引上げ、税率につきましては、従来の税率適用上の階級区分の刻みの幅が低額所得のどころで狭く、累進税率の上昇が急激となつておりましたのを修正し、所得階級区分のうち、八万円を越える金額と、十二万円を越える金額との段階を撤廃し、最高税率の適用限度を、従来の五十万円から百万円に引上げることといたし、また新たに担税力の比較的に薄弱と認められます老年者、寡婦及び勤労学生につきましては、これらの者の勤労所得から一万五千円を特別に控除することとし、なお資本蓄積措置の一環といたしましては、生命保険料について二千円を限度として所得から控除することとし、さらに税制の簡素化をはかる趣旨から、従来の資産所得の合算及び扶養親族の所得の合算の制度を廃止することといたしました。そのほか所得税制の補正的改正といたしましては、申告所得税の運営面の改善の一助として、一般の申告期限及び納期を、現行の農業所得者の場合と同様七月、十一月及び翌年二月の三期とし、まだ青色申告制度を助長するための措置といたしまして、青色申告者が再調査または審査の請求をしている問は、督促または差押え、公売等の滞納処分を行うことができないことにいたしました。また従来、更正決定をなし得る期間は申告期限後五年となつておるのを、原則として申告書提出期限から三年とし、その他給與所得者の確定申告書の提出限度を引上げる等、所要の改正を行うことといたしたのであります。
次に法人税法の一部を改正する法律案におきましては、昨年根本的改正を行い、相当大幅な負担の軽減をはかりましたので、今回は若干の規定を整備すずるにとどめ、資本蓄積を促進するための必要な措置につきましては、租税特別措置法の一部を改正する法律案において考慮することといたしたのであります。すなわち法人税法の改正といたしましては、近く改正商法が施行されることに伴い、無額面株式の発行価額のうち資本に組み入れなかつた金額を益金に算入しないことにする等、規定の整備をはかることとし、また同族会社の親会社が非同族会社である場合には、同族会社の積立金課税を行わないことといたしておるのであります。
次に租税特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、税制上資本蓄積を促進するための特別措置として、まずこの際貯蓄の一層の増強に資するため、預貯金及び公社債の利子等に対する源泉選択課税制度を認め、その税率を百分の五十とし、次に会社の社内留保を増加して自己資本の蓄積に資するために、積立金に対する法人税の課税を廃止し、ただ同族会社に対しましては、五十万円を越える留保金額に対する現行の百分の七の税率を百分の五の税率に改めることとし、さらに経済の復興をはかつて行く上に緊要と認められる特定の機械設備または船舶等の新規取得を容易ならしむるため、これらの機械等の取得後三年間は法定償却額の五割増しの特別償却を行い得ることとし、また見返り資金で保有する銀行等の優先株式または優先出資に対する配当につきましては、資金コストの低下に資するよう、所得の計算上これを損金に算入することとしたほか、最近における砂糖の消費の実情に顧み、輸入砂糖に対する免税を廃止することにいたしているのであります。
一次に相続税法の一部を改正する法律案におきましては、資本蓄積措置の一環として、被相続人の死亡により相続人その他の者が取得する生命保険金について、取得者ことに十万円を限度として特別に控除することとしております。
次に通行税法の一部を改正する法律案におきましては、近くわが国で民間航空が再開される見込みでありますので、航空機の乘客に対し通行税を課することとするとともに、汽船の二等舶客の料金に対しましては、その性質にかんがみ通行税を課さないことにいたしております。
次に登録税法の一部を改正する法律案におきましては、近く改正商法が施行せられることに伴いまして、無額面株式の発行価格のうち資本に組み入れられた金額に対して登録税を課することとする等、規定の整備をはかつているのであります。
次に印紙税法の一部を改正する法律案におきましては、最近における経済取引の実情より考慮いたしまして、受取書、手形、売買契約書、借用証書等の課税最低限を百円より千円に、また物品切手のそれを十円より五十円にそれぞれ引上げることといたしたのであります。
最後に骨牌税法の一部を改正する法律案におきましては、さきに物品税の税率を引下げたことと関連しまして、トランプ及び花札に対する税率を、一組につき百三十円より五十円に改めることにいたしたのであります。
以上が提案の趣旨及び改正の大要でありまするが、これによりまして、昭和二十六年度の租税及び印紙收入の予算額は四千四百四十五億円となるので事ありまして、これは税制改正を行わない場合の收入見込額に対しまして約七百四十三億円の減税となるのであります。減税額の内訳を各税について申し上げますると、所得税におきましては、源泉徴収分で三百十億九千八百万円、申告納税分で三百三億千八百万円、合計六百十四億一千六百万円、法人税におきましては、重ねて再評価を行うことによる減收額を含めまして二十九億五千八百万円、相続税におきましては一億八千三百万円、印紙税及び骨牌税におきまして一億一千三百万円、総計六百四十六億七千万円の減收となるのでありますが、重ねて再評価を行うことにより、再評価額におきまして、十五億一千二百万円、輸入砂糖に対する課税によつて六十億円、計七十五億一千二百万辺の増收となりますので、差引五百七十一億五千八百万円の減税となるのであります。これに今回の改正の一環としてすでに実施上ておる酒税の引下げ、物品税の改正、揮発油税及び砂糖消費税の引下げによる減収額百七十一億五千八百万円を加えますると、七百四十三億千六百万円の減税となる次第であります。なお政府におきましては、今回の税制の改正とともに、税務行政の運用につきましてもさらに一段の改善を加え、納税の円滑化、課税の適正をはかるために万全の措置を講ずる所存であるということであります。
これらの法律案のうち、所得税法の一部を改正する法律案外六法律案は、二月九日、本委員会に付託され、同十日、大蔵大臣より提案理由の説明を聽取し、租税特別措置法の一部を改正する法律案は、同十日、本委員会に付託され、同十二日、政府委員より提案理由の説明を聽取し、同日より二月二十二日に至る八日間にわたり、これを一括して質疑を行い、その間十七日には公聽会を開く等、愼重審議を続けたのであります。質疑応答及び公述の詳細につきましては速記録に譲ることにいたしますが、そのうちの若干の点につきまして要約御報告申し上げることといたします。
まず、政府は今回の税制改正による減税額を七百四十三億円と称しているが、予算面ではわずかに五億円余の減税にしかなつておらぬ、政府は水増し課税をしているのではないかとの質問に対して事政府委員より、予算面での減収額が少いのは、朝鮮動乱後、生産増加等により国民所得が増加したのに伴い税牧の自然増が見込まれるためであり、増減税と税收の自然増減とは区別すべきである、またできるだけ所得者ごとに実額調査を行い、税法に従つ、て正確な所得を計算して課税するのであるから、水増し課税ということはない、という答弁がございました。
次に、今回の減税は実質的に国民負担の軽減となつていないのではないかとの質問に対して、大蔵大臣及び政府委員より、消費者物価指数は、二十四年中均を一〇〇とすれば、二十五年十一月は九三・五で、その後幾分上昇の傾向にあるが、それほど顯著ではない、これに対し貨幣賃金は、同じく二十四年平均を一〇〇とし、二十五年十一月には一二五・三となつているので、従つて実質賃金はよくなつており、これよりして、今週の改正は実質的減税といえる、なお今後の物価安定方策については別途極力必要な措置を講じつつある、との答弁がございました。
次に、巨額の滞納が翌年度に繰越されているのは財政の健全性を示すものではない、予算編成画より見て、税率の決定その他について考慮すべきではないかとの質問に対しましては、二十四年度の剩余は、歳出不用額から出ており、税收は小額である、また今年度も税收全体としては大した増收とならない、滞納整理については善処しつつある、との答弁がありました。
次に、基礎控除は国民の最低生活を保障するものでなければならないから、もつと引上げるべきではないかとの質問に対して、最近の国民生活、戰前との比較、戦後の移りかわり、その他財政需要の点から考えて、基礎控除はこの程度が妥当と思う、なお基礎控除と扶養控除とを一緒に考える必要がある、との答弁がありました。
次に、農漁民、中小企業者に対する若干の勤労控除が実行されていないのはなぜかとの質問に対しましては、これらの勤労控除を認めれば、さらに勤労所得者との権衡も考える必要が起きて来る、なおこれによる相当の減收を覚悟せねばならぬこととなるので、もつと研究してみたい、との答弁がございました。
次に、資本の蓄積と国民生活の安定とは両立しないのではないか、朝鮮動乱後の好景気に顧み、法人税の超過所得税を復活すべきではないかとの質問に対しては、資本の蓄積により生産が増加し、国民所得も増加するので、生活も安定するようになる、またわが国では、まだ産業の基礎が堅実ではないので、むしろこれを強固にするように努むべきである。法人税は国税及び地方税を通じて考えるときは、大体において個人所得税と均衡がとれていると思う、という答弁がございました。
最後に公聽会におきましては、公述人として一橋大学教授井藤半弥君は、今回の税制改正案では、專売益金を含めた国税と地方税の合計額と国民所得との割合、またはエンゲル係数による食費を差引いた租税負担能力との割合から見ても、一応租税負担の軽減は行われており、また社会政策的顧慮から減税が行われていることの二点は、賛成であるが、資本蓄積の諸措置については、たとい減税額はわずかでも、大体において大企業、大資本に特典を與えることとなり、他との権衡上、ことに社会政策的に見て反対であると述べられました。十條製紙常務取締役金子佐一郎君は、所得税の改正は妥当であるが、所得年額二十万円ないし五十万円の中産階級の税負担は、所得の半分くらいがとられることとなるので、今後なお改善を必要とする、給與所得者の退職金課税は半額を免税にすべきである、法人税については、退職手当積立金制度、修繕費引当金制度の確立が必要である、なお資産再評価を円滑にするため、再評価税六%の軽減、固定資産税の減免等の特別措置を講ずべきであると述べられました。大阪銀行副社長堀田庄三君は、資本蓄積の特別措置は自立経済達成のための捷径として賛成であるが、さらに無記名定期預金の復活、国民貯蓄組合預金の預け入れ限度の引上げ、貸倒れ準備金の増額、その他預金の秘密性保持のための改善措置を要棄する旨述べられました。京橋税務署長中村末藏君は、今回の税制改正により税務の執行がやりやすくなる旨述べられました。東京大学助教授武田隆夫君は、今日のような国際情勢のもとにおいて減税が行われることはけつこうなことであるが、所得税の基礎控除は、資本主義制そのものの維持発展のためにも、最低生活をまかなうに足る額が必要で、三万円では低過ぎ、その基礎事控除を引上げ、それによる税の不足分は高額所得者の余力に求むべきものであると述べられました。全日本中小工業協議会中島英信君は、(今回の減税案には賛成であるが、まだその程度が低過ぎるので、国民の最低生活を脅かさない程度の基礎控除の引上げ等のほか、特に中小企業に対する顧慮を要望する旨述べられ、最後に総同盟前田正次君は、今回の改正は今後の物価の上昇を考慮するときは軽減にならないとして、俸給生活者の立場から、勤労控除、基礎控除、扶養控除の引上げ、税率の改正、一定限度の退職手当の免税等を要望せられ、法人税の軽減よりも、むしろこれを所得税の軽減にまず振り向けるべきである旨を述べられました。
次いで質疑を打切り、討論採決に入りましたところ、三宅則義委員は自由党を代表して賛成の意を述べられ、宮腰委員は民主党を代表して、希望條件を付し賛成の意を述べられ、田中織之進委員は社会党を代表して所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しては反対、その他の五法律案に対しては賛成の旨述べられ、また竹村委員は共産党を代表して反対の旨討論せられました。
次いで、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたしましたどころ、これらの法律案は、いずれも起立多数をもつて原案の通り可決すべきものと決しました。次に通行税法の一部を改正する法律案、登録税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、印紙税法の一部を改正する法律案及び骨牌税法の一部を改正する法律案について採決いたしましたところ、これらの法律案は、いずれも起立多数をもつて原案の通り再決すべきものと決しました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/3
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004・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。松尾トシ子君。
〔松尾トシ子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/4
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005・松尾トシ子
○松尾トシ子君 私は、社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外七法律案に対しまして、そのうちの所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しましては反対の意を表し、通行税法、登録税法、相続税法、印紙税法、骨牌税法の各一部を改正する法律案に対しましては政府原案通り賛成するものであります。
所得税法、法人税法、租税特別措置法の三改正法律案に反対する理由は、各法案とも、税法のさまつな点においてはかなり微細な検討を遂げ、一応改正の実をあげたかのごとき観がありますが、いまだ時代の趨勢について十分の見通しを立て、これに基いて改正に着手したところの跡が見えないからであります。これは政府が税法案を検討し終えた時期が少し早く、その時分には確実な将来の見通しを立てることができなかつたせいもありましようが、この点を別にいたしましても、もともと政府の経済的動向に対する見込みは、あまりにも甘きに失するうらみがあるのでございます。
さて、その内容に少し触れてみますれば、政府は本年度において約七百四十三億円に達する減税を断行いたし、国民租税負担の軽減、合理化をはかるとおつしやつておりますが、これは学問上、法律上の措置より生じた減税でありまして実質的に国民負担の軽減になつておらないということは、予算を一瞥いたしますれば、ただちにわかる事実でございます。(拍手)本年度と来年度の租税及び印紙收入予算額を比較いたしますれば、わずかにその差額、は五億六千百万円にすぎず、むしろ国民の負担は、両年度とも同等に見る方が妥当ではないかと思われるのでございます。なぜならば、国民感情は、学問上や税法上の措置を要望しておるのではなく、租税体系の原則であるところの公平を期した、真に国民生活上から見た軽減を願つておるからであります。(拍手)その上、国際情勢の緊迫に伴いまして、ごく近い将来、来年度中にも警察予備隊の増強も必至であるとか、うわさされていますし、またその上、專売益金中のタバコ予算見積りの一千百三十億二千七百万円にも、かなりの不安を感ぜざるを得ないのであります。四月一日よりの各種のタバコの値下げは、けつこうでございましようが、その製造本数は、今年度七百八十億本に対して来年度八百二十億本とあつては、その製造量において大差なく、また諸般の事情からして、予算見積額を必ずしも確保できるとは考えられないのであります。本年度タバコの收益減によりまして、補正予算において八十億を切捨てた事実を顧みましても、自信簿にならざるを得ないのであります。
かくのごとき事情が発生いたしましたとき、健全財政の建前をとるならば、歳出を創るか、歳入補填のため、生産増強によつて国民所得がふえたと称して租税の増徴を行うか、一千億円になんなんとしておる滞納を強行に整理するかであることは明らかであります。そして政府の申しておりまする、担税力の比較的に薄弱と認められるところの老人や寡婦、あるいは勤労学生等において一万五千円の特別控除をするとか、あるいは基礎控除や給與所得に対しまして、いささかの改正を行つても、国民にとりましては痛しかゆしの結果になつてしまうのでございます。
なお政府は、今年度におきまして早急にわが国経済の自立を達成することが緊要となり、そのために急速な資本の蓄積が要望されると言いまして、税制上、資本蓄積に資するため各般の措置を講じておられます。たとえば積立金に対する課税の廃止や、物件の耐用年数の短縮や、あるいは無額面株式を発行した場合の発行価額のうち資本に組み入れなかつた金額を、額面株式を発行した場合のプレミアムと同様に益金に導入ないこと、また生命保險契約に基いて支沸つた保險料については二千円程度を所得から控除する等々、これらは勤労階級に対する措置よりも、法人に対する方がはるかに歩がいいように、私には感ぜられるのであります。(拍手)要するに、零細所得者を踏台にしている感が強いので納得ができないのでございます。(拍手)
次に、冒頭ちよつと触れましたように、政府が今回各税法案を提出するにあたつて最も注意を拂わなければならなかつた経済的動向の点について、その欠陥を指摘いたしたいと存ずるものであります。朝鮮事件を契機として変化を見せ始めました世界経済は、明らかに軍拡経済であり、物資の獲得を当面の目的といたしているのであります。この新しい動向は国際的高物価時代を提出いたし、わが国の輸入先である米国その他の国々におきましても、種々の物価抑制政策をとつているにもかかわらず、かなりの物価の上昇が見られているのが現状でございます。輸入先の物価が高くなれば、勢いそれを原料としてつくられるわが国の物価も高くならざるを得ないのでございます。この新しい、そしてしばらくはかわることのない高物価の趨勢は、今後いよいよその傾向を増し、国民生活の上においかぶさつて来ることは事実であります。
わが国の物価は、輸入原料高に押され、またこの趨勢を直接間接に反映して卸売物価が騰貴して来たことは、現実がこれを有力に物語つております。これに対して小売物価はその割に価格を引上げることができませんので、政府は、これをもつてCPSは上らないというよな楽観説をおつしやつているのだと思いますが、この普通の場合には経験しない物価的動向は、何を物語つているものでありましようか。それは、最近の日本の物価は国内の購買力が増したために値上りをしたものではないということであります。それは、まつたく国際物価の上昇が反映いたしまして、わが国の輸入品価格の騰貴、また外国原料をもつてつくられる製造物価の値上り、あるいは一部卸売業者、製造業者の思惑売買に原因して急激に上昇したのでありまするから、国民の多くを脅威しておりますところの国内物価騰貴を押えることは尋常の手段ではできないので、少々の税を引下げたり、特別控除を認めてもらつても、これに追いつかないというのが事実であります。(拍手)また一般中小商工業者は、大衆の購買力が低下して行くので、卸売物価に比べまして、小売物価をそれほど上げても売れませんから、小資本を食いつぶして、ジリ貧になつてしまう兆候が現われているのでございます。(拍手)
こうした現状は、いわゆる普通のインフレーシヨンというべきものでなくして、ある意味におきましては、デフレーシヨンのの高物価と称してもさしつかえないのではないかと思うのであります。(拍手)すなわち、普通にいうインフレーシヨンは、まず通貨の過剩供給によつて国民大衆の購買力が増大し、それによつて小売物価が上昇いたし、次いで卸売物価が高騰するというのが順序でございます。わが国の戰時中のあるいは戰後のそれのように、極端な物資不足と生活の不安から来る通貨に対する信任欠如が原因となつて高物価を招来し、インフレーシヨンに拍車をかける、言いかえれば、通貨の増発に最初の原因を見出し、これによつて推進されるというのが普通の形であるのでありまするが、今度の高物価は、通貨の増発から来たというよりも、第一に国際物価の上昇、第二には卸売物価の思惑上昇におもなる原因を置き、通貨はこの趨勢にあおられまして自然に増発をしつぱなしになつたというのが現状であります。
かくのごとき経済状態がすでに現出いたし、将来ますます顯著になるといたしますれば、国民の各階層別所得は、かに変化するでございましようか。第一に大企業は、経営手腕において欠陥がなければ、ますますその所得は増大するばかりでございます。これは、最近糸へん、金へんの産業が復興いたし、高收益をあげている事実に徴しても明らかなことでございます。第二に中小企業は、まじめな経営をいたしておりましても、大衆に購買力がない関係から、経営はいよいよ苦しく、收入はむしろ激減することは間違いありません。少くとも大企業家の收益率から見ますれば、はるかにはるかに低い收益でがまんをしなければならないのであります。第三に勤労者は、一部の時局産業に従事している者はともかくとして、一般的には低賃金を押しつけられたままでありましよう。少くとも賃金は、物価の騰貴よりはるかに低い率でしかもはるかに遅れて上昇するにすぎないことは、過去の事実に徴しても明らかなのであります。それは小売物価の上昇にも追いつけないほどであろうし、いわば物価の上昇に反比例いたしまして、生活費をみずから切下げなければ生きて行かれない状態に落ち込むといつても過言ではないと思います。(拍手)すなわち、高物価時代の現出に応じて勤労者の実質賃金は低下するという結果になるのであります。
以上の見通しは確実なものであり、国民階層の担税能力は非常な変化を来すはずであります。すなわち大所得階級は、インフレーシヨンの進行によつて利益するところ多大であり、課税の負担力の増大に対しまして実際の課税負担は次第に減ずるということに相なるのであります。これに引きかえて中小商工業者は、同じインフレーシヨンの進行によつても、利益するところははるかに低く、その課税上の負担力は減じ、従いまして課税負担率は相対的に増加するということになるのであります。さらにまた勤労階級は、得るところ、まつたくなきにひとしく、その課税負担は、直接税で少々の減税ぐらいをしていただいても、地方税の圧迫が加わつて、いよいよ加重されることになるのであります。すなわち中小商工業者は、所得においても原材料の上昇、卸売物価の騰貴と小売物価の低迷との挟撃にあいまして利益率はますます小さくなり、一方生活費、経営費は上昇するばかりであり、税負担の能力はいよいよ低下せざを得ない現状に落ち込み、勤労者におきましても、この趨勢はまつたく顯著になるのであります。彼らは、まつたく税負担能力がなくなつてしまうようになり、その生活を極度に切下げなければ今後の税金を支拂つて行けないということになるのであります。
事情がかくのごときである以上は、勤労者の基礎控除、扶養控除等諸種の控除をもつともつと引上げて、税率は引下げ、その税負担を担税能力の限界まで引下げなければならないと私は申し上げたいのであります。中小企業者に対しても、同様の方法により課税と負担能力との均衡をはかるのが至当であると思います。かく勤労者、中小企業者の租税負担を軽減したことによつて生ずる租税上の歳入欠陥は大所得者の負担に転じまして、それによつて国民各階層の税負担を收入と負担力の実情に適合さすべきであると信ずるのであります。(拍手)なおシヤウプ第二次勧告にも示されておりましたように、農漁民層に対しても勤労控除を認め、都市とこれらの階層との間の税の均衡をとつて行かなければならないと思います。(拍手)またそれらによる歳入減の一部の負担は、法人税の増強により、個人と法人間の負担の均衡に資すべきが妥当であると思うのであります。
それなのに、政府の提出いたしました改正所得税法案、法人税濃案、租税特別措置法案は、物価はさまで上らないという建前にその基礎を置きまして、必然的に物価上昇の現在、この国民各所得階層に及ぼす影響についての分析において徹底を欠いておるのは、まことに遺憾の次第であります。従つて、国民各個の担税力の測定において間違つた方向をとつておるとも言えるのであります。来年度及びそれ以降の経済実情にそぐわないとも言えるのであります。言いかえますれば、今度提出の改正法案は、租税負担においては、新らしい性格を持つた物価の上昇によつて著しく変化を来し、負担の不公平を来すことに気づかないものであると言いたいのであります。中小商工業者、勤労者、農漁民等事、所得の低い階級は国民の大多数を占めております。これらの大部分の階層に、負担力の限度を超えた課税をして、いよいよ国民大衆の業務を圧迫し、生活を脅かし、反面資本蓄積に名をかりて、大所得階級に相対的に軽い課税をもつて臨むことは許されません。かくのごとき税法は、再建途上にある日本経済を再び腰碎けにするおそれが多分にあるのであります。(拍手)
来年度予算に見ますれば、一種の消費税と見られておる專売益金を加えて、租税收入は五千五百八十三億六千七百余万円、このうち所得税徴收予算額は二千二百二十七億四千四百万円、これは三九・八九%、法人税額は六百三十六億四千五百万円、一一・四〇%、両者を合せて五一・二九%になります。すなわち総額の半額以上の税額を占めておる両法案は、負担の不公平が明らかに見通される以上、政府の所得税法改正案、法人税法改正案、租税特別措置法改正案は不適当と認めざるを得ないのであります。(拍手)
なお、資本蓄積の一環として生命保險に二千円の控除を認めておりまするならば、社会保險、健康保險等に対しても基礎控除を認めて、勤労者の税の軽減をはかるべきだと考えるのであります。(拍手)さらに税の公平を期するために、一部特需所得者に対しまして超過所得税の創設も考えたらいかがかと思われるのであります。(拍手)
政府は、共産主義と断固囲う意思がおありのようでございます。そうしたら、まずこの税の公平を期すべきだと思うのであります。今の日本経済は、隣には自家用車を持ち、大邸宅を構えて、子供はみんな大学に行き、いい着物を着ておる人があるかと思えば、その隣には、貧しい、子供を大勢かかえた、教養の低い夫婦がおるということであります。その隣の貧乏人が、お隣の金持をながめておる間はよいのでありますが、これに向つて不平不満を言い出したときには、政府が一番こわがつておるところの思想戰に、より深い拍車をかけるのだと思うのであります。不満からこのことが起るので、この税法も、国民が食べて行かれない程度まで強いものを押しつけないで、ひとつ公平をはかつていただかない限りは、真の協力はあり得ないし、真の平和はあり得ないと思います。
こうした意味におきまして、日本社会党といたしましては、所得税法改正案、法人税法改正案、租税特別措置法改正案の三法案に対しては反対の意思を表明し、残余の五法案に対しては賛成をいたすものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/5
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006・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 小山長規君。
〔小山長規君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/6
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007・小山長規
○小山長規君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外七件の法律案につきまして、私は自由党を代表して賛成の意を表するものであります。
現内閣は、組閣以来わずかに二年、しかもこの間に三たびもの減税を行つております。すなわち、第六国会において二百億円、第七国会において七百十三億円、第九国会において六十三億円の減税、合計九百七十六億円の減税を断行しておるのであります。今回さらに七百四十三億円の減税を断行しようというのが、ただいま議題となつておる法律案の内容であります。諸外国が増税に次ぐ増税をもつて臨んでおりますときに、わが国ひとり減税を行い得ますることは、まことに御同慶にたえない次第であります。これひとえにアメリカ政府の終始かわらざる好意、と援助のたまものでありまして、私はこの機会に、国民の名において深く感謝の意を表する次第であります。しかして、この減税を可能ならしめた功績の半ばは国民諸君の勤勉と努力に帰すべきものでありましよう。しかし、この国民に勤勉努力の精神を復活せしめましたのは、わが党の政策であつたと申してさしつかえないと私は思うのであります。すなわち、わが党内閣は、その成立以来、インフレの收束、統制の撤廃、行政の簡素化に全努力を傾注して来たのであります。その結果、国民の勤労意欲は大いに上り、産業は復興し、国民の所得は増大したのであります。しかも一方、昭和二十四年度には、二千億を越えた補給金を、統制の撤廃によつて二百二十五億円に減じ得たればこそ、この大減税が可能となつたのであります。統制経済を金科五條とする内閣でありましたならば、絶対にかかる減税はでき得なかつたであろうと信ずるものであります。(拍手)
法律案の内容については委員長より詳細報告があつたのでありますが、私がこの法律案に強く賛意を表する理由は、次の三点にあるのであります。
第一点としては、大衆負担の軽減をはかつているということであります。すなわち、減税総額七百四十三億円の内訳を見まするに、基礎控除の引上げによつて百八十五億円、扶養控除の引上げによつて二百四十三億円、税率の改正によつて百四十七億円、その他が百六十七億円となつておるのでありまして、減税総額の八〇%近くを一般納税者の負担の軽減に充てておるのであります。これを具体的に申しますならば、扶養家族四人を有する勤労所得者の場合には、十万五千八百八十三円までは無税となるのであります。農工商等の事業者は、同じく九万円までは無税となるのであります。この結果、農民や零細企業者のうち、その七〇%までは所得税を免れたのであります。
第二点としては、老年者、未亡人、未帰還者の夫人、勤労学生に対して特別の控除を認め、課税の軽減をはかる等、社会政策的配慮をめぐらしておる点であります。
第三点としては、生命保險に対する特別控除、予貯金利子に対する源泉選択制度の復活、特定機械設備等に対する短期特別償却制度の新設、法人積立金に対する課税の廃止等、資本の自発的蓄積を奨励する制度を設け、自立経済の達成を税制の面から助長している等の配慮にも心をいたしておる点であります。
反対党の諸君は、政府の税収予算を前年度と比較いたしまして、これは税法上の減税であつて、予算上の減税はわずかに五億円余にすぎないとか、水増し予算であるとか申されるのであります。しかしながら、税法上の減税は、改正前の税法によつてとられるところの税よりも軽い税を国民に課するものでありますから、これこそほんとうの減税なのであります。(拍手)反対党の諸君といえども、特需景気や輸出の増進によつて莫大な利益を上げている会社、法人の存在することを認められるでありましよう。しかるに、今般の改正においては、法人税の税率は引下げていないのであります。従つて、法人税が前年度よりも増加することは理の当然なのであります。
反対党の諸君も、また、收入の増加しない気の毒な人々のおることを認められるでありましよう。これらの人々は、基礎控除の五千円引上げによつて、少くとも一千円の減税に浴するのであります。また扶養控除を三千円引上げることによりまして、家族一人を増すごとに少くも六百円ずつ減税になるのであります。いわんや老年者、未亡人、勤労学生にありましては、右に述べた以上の減税になるのであります。これでも反対党の諸君は減税でないと申されるのでありましようか。(拍手)また賃金ベースの引上げや米価の引上げによつて、公務員や農民の所得は増加するのでありますが、この増加する所得に対して現行の税法を適用したのでは、あまりにも負担が重いと考えられますので、この改正法案は、これを緩和するために提出されたのであります。反対党の諸君の議論は、物価政策に対する非難としては成立つても、税法改正に対する反対論としては、まつたくなつていないのであります。
また共産党の諸君は、こういうことを申されるのであります。物価が上るから賃金が上るのである、しかるに賃金が上ると税がふえる、従つて増税である、こういうふうに申される。たとえば扶養家族四人を有する勤労所得者の場合に、月々の税金は、現行法のもとでは四百八十三円である。この人が二千円昇給して一万二千円になりますと、改正法のもとでも月々の税金は五百四十円になり、五十七円の増税になると言うのであります。これこそ共産党一流の詭弁にほかならない。所得がふえれば税がふえるのは当然の結論でありまして、改正税法は、そのふえ方を緩和しておるのであります。共産党の諸君の言うところを推して行くならば、一万円の月給取りが十万円に昇給しましても、一万円のときよりも安い税でないから増税であるということに相なるのでありますが、そのような大幅減税を、ロシヤかその他でやつたとでも申されるのでありましようか。
また反対論者は、基礎控除や扶養控除の引上げ方が少いと言われるのであります。われわれも、できることなら扶養控除、基礎控除を引上げたいのであります。しかし、かりに基礎控除の三万円を五万円に引上げますると、六百八十億円の減收と相なり、扶養控除一万五千円を二万五千円に引上げれば八百三十億円の減收と相なります。これだけの歳入不足を一体何によつてまかなうかが問題なのであります。物品税や酒税等の間接税にこれを求めまするならば、大衆課税の非難を招きますのみならず、昨年のごとき、やみ酒、やみ物品の氾濫を招き、歳入の確保は期せられないでありましよう。もしまた法人税にこの財源を求めるといたしまするならば、法人税は現在の三倍の重税と相なります。その結果、産業の近代化や増産などは思いもよらず、その結果失業者は増大し、新規卒業生の就職品はなくなり、税は軽いが收入そのものがないという結果に相なる。もしまた財源を歳出の節約に求めますならば、公共事業も、社会政策も、給與ベースの引上げも不十分となり、反対論者が恨まれるのが関の山であります。反対論者は、外為特別会計のインヴエントリー・フアイナンスをやめてこれに充てよと申されるのでありましようが、これはインフレ抑制のための制動機でありまして、インフレの懸念の存在する限り必要欠くべからざる経費でございます。但し、われわれがインフレの完全克服に成功しましたあかつきには、インヴエントリー・フアイナンスの五百億は、たちどころに減税財源に充てることを約束するものであります。(拍手)
最後に、反対論者は次のごとく申されるのであります。今度の税制改正は資本蓄積にのみ重きを置き、大資本家、大企業本位の税制であつて、大衆に負担を転嫁するものである、こういわれるのであります。しかしながら、終戰後の日本におきましては、大資本家なるものが、はたして存在するのでありましようか。試みに課税所得百万円以上の高額所得者が何人おるかと申しまするに、納税者総数千五百三十万人中、わずかに四万五千人であります。千分の三にすぎない。従つて、納税者の九九%までは一般大衆なのであります。また高額所得者に、かりに一〇〇%の課税をいたしてみましても、税收の増加は微々たるものであります。従つて、税は勢い一般大衆にたよらざるを得ない次第でありまして、反対論者の議論は、ためにするの論としか受取れないのであります。(拍手)また特定機械設備に対する短期償却や、法人積立金の課税廃止等、いわゆる資本蓄積のための特別措置による減税は、七百四十三億中、わずかに十四億にすぎない。大企業擁護と申すのには、あまりにおそまつ過ぎるのであります。しかし、これによつて資本の自発的蓄積を促し、立ち遅れた産業を機械化し、経済の自立を達成することができますならば、生産の増大を来し、国民に就業の機会を與え、国民所得を増大せしむるのでありまして、資本蓄積の真の目的は、まさにこの一点にあるのであります。反対論者は、現に就職しておる人々の立場から議論せられるが、われわれは、失業者に職を與え、新規卒業者に就業の機会を與えることも同様に大事なことであると思うものであります。(拍手)そのためには産業を盛んにすることが先決問題であると信じ、そのためにこそ資本蓄積を叫んでおるのであります。反対論者も、少しぐらいは失業者や新規卒業生のことも考えてもらいたいと思う。
以上の理由をもつて、私は議題となりました法案全部に対し心からなる賛成の意を表するものでありますが、さきにも申し述べましたことく、国民の租税負担率は、英米等に比べて決して軽くはないのであります。数字の上だけでは軽く見えるのでありますけれども、国民の感ずる度合いは重いのであります。このような減税をもつてしてもなお税が重いと感ずるのは、要するに国民各自の收入が少いからにほかならない。従つて、政府は深くこの点に思いをいたし、インフレの完全收束に全努力を集中するとともに、行政の簡素化を促進し、近き将来さらに租税負担の軽減、合理化をはかられんことを希望いたしまして、私の賛成討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/7
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008・幣原喜重郎
○議長(幣原喜重郎君) 竹村奈良一君。
〔竹村奈良一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/8
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009・竹村奈良一
○竹村奈良一君 私は、ただいま上程されました所得税法外七税制改正法律案に対しまして、日本共産党を代表して反対するものであります。
政府は、今度の改正によつて、国民負担の調整、軽減を口にして昭和二十六年度の税收総額は、昭和二十五年十二月以前の税法が実施された場合と比較すると七百四十三億円余の減少となると言つておりますが、これは單なる統計数字上における国民所得の増大を予想して示した宣伝文にすぎないものでありまして、
〔議長退席、副議長着席〕
予算から見れば、昨年と比較して、わずか五億五千万円の減税にしかすぎないのであります。それが地方税百七十八億円の増税と差引するならば逆に百七十二億余円の増税であり、しかも二十六年度予算が、政府の意図する再軍備や、あるいは警察予備隊の増強等が行われるとするならば補正増額しなければならないこと火を見るよりも明らかな現状では、地方税合せて現在百七十二億円余の増税は、その十倍もの増税になることは予期しなければならないのであります。そのときには、政府はまたまた国民所得の増大という手品的な数字の上に立つて、課税標準をかつてに引上げ、割当的徴税を行うのが従来の例であります。減税は実質的に国民の生活を向上せしめ、負担の軽減でなければならないことは当然であつて、今回行われる改正も、国民個々の生活をゆたかにし、税金の負担が実質的に軽減されることこそ減税だといえるけれども、そうでない限り、遺憾ながら減税とはいえないのであります。
政府は国民所得の増大と言つているが、その正体は何であろうか。朝鮮動乱の影響を受けて、糸へん、金へん景気をうたわれているけれども、これに反して、大多数の国民の生活は一体どうなつているでありましようか。繊維製品は三割ないし四割の値上げである。しかも値段が上つただけではない。実際には、この値段でも手に入らない。たとえば、機屋は原綿難にあえいでいる。夏物のゆかたは今が染めどきだが、かんじんの生地が手に入らないで困つている。品物は高いだけではない。国民大多数の必要なだけ手に入らなくなつている。糸へん景気はだれのものであつて、物はどこの国の、だれに使われているかということを聞きたくなるのであります。
金へん景気の結果はどうだ。生活必需品の値上りを招いたにすぎなくて国民の大多数は、生活上、これによるゆたかさは一つもない。それどころか、これにより農機具等の値上りで、農民が犠牲を拂つているのが現状であります。これとともに、諸物価の値上りと、これに伴わない給與や賃金で、勤労者の生活は、ゆたかになるどころか、逆に低下しており、農民も生産費を償わない農産物で困り、中小商工業者は、品物の値上りで、資金の入手に困つているのが現状であります。
朝鮮事変の影響は、結果においては何ら国民大多数の生活の向上ではなく、貧困化であり、国民の一部を利益せしめたにすぎないのであります。これに対する国民の不満をそらさんがために、一部国民の利益を、国民全体の所得増大にすりかえ、單なる税法上の見せかけ減税をとなえているにすぎません。また生活物資の値上りに比して、実質的に賃金、給與が改訂されていない現在、それだけ勤労者の生活は、実質的に値上り分は悪くなつているのであつて、微々たる減税が何ら生活上国民負担の軽減にはならないことは、火を見るよりも明らかであります。
ところで、かりに消費物価の値上り分だけ給與ベースと賃金の改訂が行われたとしても、一体どうなるであろうか。それで、はたして税が軽減になるでありましようか。私はその一例を示しましよう。さきに引例したように、現在二五%の生活物資の値上りにより給與が二五%上つた場合の所得税負担、夫婦及び子供二人で、従来は月一万二千円であつた給料者が、現在二割五分の引上げによつて一万五千円になつたならば、一体どうなるか。現行では所得税月一千七十円であるが、改正では七百九十円に減額されることになつている。ところが、さきに言つたように、物価の値上り分だけ、つまり二五%の給料の値上りで月一万五千円になつたならば、今回の政府改正案では、所得税一千四百十七円となつている。これは一体どういうことになるか。給料三千円の値上りは生活物資の値上りによつたものであつて、個人の経済生活面では何ら豊かになつておらないのにもかかわらず、所得一万二千円の折の税金は、改正されないときの一千七十円と比較するならば、逆に三百四十七円の増税になることが判明するであろう。その上に地方税を加算すれば、増税額はますます多くなるのであります。政府のいうごとく、勤労者が減税されんとするならば、いくら物価が値上りしても、生活費が高くついても、給與ベースの引上げや賃金引上げも要求せずに、労働組合も解散して、おとなしく吉田政府のいう通りの現在の所得でがまんして奴隷的生活に甘んじる者のみが減税されるということであります。
申告所得税は、従来から多くの問題を含んでいる。特に農民大衆の怨嗟の的であつて、いくら政府は税法上の減税を行つたといつても、農民の不満は絶えないのである。なぜならば、地方税の過重で、税金そのものは何ら安くなつておらないからである。その上農民に対しては、各地で税法に反して所得に二割、三割の水増しが行われている。
たとえば栃木税務署においては、米一石当りの所得標準に対して三百円高く見積られており、これに対する税務当局の言い分は、実收穫量は事前割当に対して増大している、しかし農民は、実收穫量はわからないので、事前割当しか承知していない、そこで申告は、増收していても事前割当で申告するであろう、よつて増収分を石当り所得標準率に織り込んでおくのである、と言明しているが、広島国税局管内においても、これと同様のことが行われており、佐賀県下各税務署においても行われていることは、国会に陳情されている事実からでも明らかである。この方式は全国でとられておつて、これに従わない者、この基準に反した者には全部更正決定がなされるのである。そこでは、公的機関であるところの農業調整委員会で承認された減収量も、なかなか言を左右に認めないばかりか、保有米を削つて強制的に供出せしめられた者でも、保有米を十分持つているとの建前の上に、前に遊べたように二、三割の所得水増しが平気で行われているのである。
このことが各地で抗議されると、当局は常に、税法に従つて收支の明細がないから所得が判明しないではないかと、青色申告をすればよいかと、つまり農民が記帳していないがゆえに判明しないから、いたし方なく基準によるのだと言つている。ところで、連合国軍の農民解放に関する覚書にもあるように、数世紀にわたる封建的圧制のもとに日本農民を奴隷化して来た経済的桎梏に悩まされて来た農民が、はたして税務当局を納得せしめるような收支の記帳が完全にできるであろうか、これはできないりが当然である。もしこれが完全に記帳できるように全国の農民がなつたならば、生産費を割つた米価や、工業生産品と農業生産物との価格差や、限定された生産数量が天災に左右されながら、常に価格は政治的に押えられ、資本に圧迫されている事家を知り、直接税と間接税でしぼり上げられた税金が農業再生産のために使われずに、長い間大資本家擁護のために使われ、それゆえ世界で一番遅れた農業経営を続けさせられ、今また自分自身の首を絞める——費や、だれのためにかわらないが、命を的の——にかり出されるための準備、すなわち再軍備のための準備に使われるということを知つて、一銭も税金を納めないようになるであろうことを政府は気がついているのかどうか、聞きたくなるのであります。(拍手)
このように、農民にできないことの原因が政府自身にあることをひた隠して、それをたてに、政府自身が税法そのものすら無視した、割当にひとしい水増し基準を強制しながら、異議申立ての事務ふなれから、農民が団体で交渉しようとすれば、これは税法にないといつて受付けないばかりか————しているのである。これは事実上異議申立てを認めないことであり、農民に対する天くだり的課税であつて、表面的な税法があつても、実質的には実行されないのが今日の状態であります。
この基準割当課税は、中小商工業者にも適用されているのであります。たとえば大阪国税局では、二十四年度と比較して、荒物、青果、理髪業等は二五%ないし三〇%増として、東京では確定申告指導と称して、前年より平均三割増しを押しつけ、これを聞かなければ更正決定をし、追徴税、加算税がついて高くなるとおどかし、気の弱い業者は、それで泣寝入りしているのである。このことは、二十六年度の所得税も前年に比し、農民には一〇・四%、中小商工業岩には一五・二鬼の水増しを前提として收入を見込んでいることで証明されるでありましよう。
法人税はどうか。予算では前年度と比較して六十三億六千七百万円の増とはなつている炉、一体朝鮮事変以来、大会社はどれだけ利益を得ているか。大蔵省では二千三十億円余と過小に見積つているが、個々の会社の二十五年上半期の決算に現われだのを見ても、いかに利益がそれ以上であるかを裏書きすることができる。たとえば、二十五年度九月決算に現われた、おもなるものを拾つてみても、新光レーヨンで七十九割、帝国人絹が十五割、富士紡が二十五割、大日本紡が二十割等で、化繊と紡績等十六社では百三十五億円であることからしても、これがほんの一例にすぎないから、特需一般を考えるならば、実に驚くべき巨大な金額になるでありましよう。
まして、この利益は一体どこから来たか。最も安い賃金で生産した品物は、国民に使用されるものではなく、とうとうとして外国に流れ出ているのである。たとえば綿布の各国の輸出状況を比較すれば判明する。イギリスは、二十四年の九億ヤードが、二十五年では八億ヤードに減少し、アメリカは二十四年の八億九千ヤードから五億五千ヤードに減少しているが、日本は、二十四年の七億四千四百万ヤードが、二十五年は十一億ヤードに増大しているのである。しかも、これらの輸出で得たドルは外国為替管理委員会に握られへ現在では五億二千万ドルもそのまま外国銀行に無利子で眠つているところの現状で、これに対しての円資金は、御承知のごとく、本年度国民の血税で補うのである。結局において、大会社の利益は、低賃金と、国民の血程の一部と、衣料不足に悩む国民の犠牲とにおいて莫大な利益をもたらしたものであります。
しかも政府は、これらの利益で積み立てる社内留保を無制限に無税にするというのである。それがどれだけ行われるかは、業種別に利益率と配当を比較すれば判然とする。しかもこの利益は、資産再評価を行い、減価償却を行つた上でのことである。たとへば、紡績業が二十八割の利益で、配当が三割ないし四割、非鉄金属業は百二割で、配当が二割ないし三割、製紙業が二十五割で、配当が三割、鉄鋼業が九割で、配当が一割ないし二割である。これから見ても相当の社内留保が行われえものと見られ、しかも以上の利益率は公表されだ決算上の利益であるか、ら、特に業績のよかつた業種の実際の内部蓄積は、これよりはるかに大きなものであることは、容易に想像されるのであります。それをいくら社内留保しても課税しないとするならば、それこそ大口脱税を合法化するにすぎないといわざるを得ないのであります。その上に、新規買入れの機械には五〇%の特別割増し償却を認めたり、見返り資金で優先株を有する場合の配当は無税としたり、預金利子の源泉選択制を行つて銀行を財産の隠匿場所とし、大特需産業と銀行の擁護には至れり盡せりの保護政策をとつでいるが、平和的小企業の法人には何ら特別な減税にならないことは明らかであります。
以上、国民の生活並びに日本経済の実態の上に立つて、政府の称する減税案なるものが、朝鮮事変で大きく転換した日本の経済態勢、すなわち国際的軍事インフレの波に乘つて、日本の巨大資本に厖大なもうけを約束する立場から、これに見合う資本の蓄積を国民生活水準の引上げに求め、平和産業を破壊し、国をあげて———体制へ追い込む方針を隠すために、数字の魔術によつて国民をごまかそうとしているといわねばならない。(拍手)
特に最後に申し述べたい。古代ローマの支配者は、奴隷に対しては、あわれみとか、救いなどというものはまつたくなかつた。そむく者は、たちまち、むちうたれる、ただ死ぬことだけが彼らの苦痛と貧困とに終りをもたらしたといわれている。この残虐な支配君たちさえも、奴隷の労働力を保持するためにいろいろ手段を用いたといわれる。と同じように、外国の戰争成金どもに奉仕して、わけ前にあずかろうとする日本の支配者も、まつたく人民を——簡單に殺しはしないだろうが、近代化された支配者の巧みなやり方によつて、すなわちここでは減税という掛声で、三反百姓も、日雇い人夫も、場末の燒いも屋も、それぞれの形で、血のにじんだ税金を、いまに何とかなるであろうという、はかない望みに託して、みじめな生活と闘いながら、次から次へと取上げらるるであろう。奴隷の支配者は、むちを持つていたが、近代の支配者は、差押えと称して、トラツクや小型自動車、ピストル、こん棒で—————であろうことを予言して、反対討論を終ります。(拍手)、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/9
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010・岩本信行
○副議長(岩本信行君) ただいまの竹村君の発言中不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の措置を講ずることといたします。
宮腰喜助君。
〔宮腰喜助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/10
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011・宮腰喜助
○宮腰喜助君 私は、民主党を代表いたしまして、所得税法一部改正、法人税法一部改正、通行税法一部改正、登録税法、一部改正、相続税法一部改正、印紙説法一部改正、骨牌税法一部改正、租税特別措置法一部改正の八法案に関しまして、希望條件を付しまして賛成するものであります。
この希望條件は今後順次述べて参りますが、政府は、昭和二十五年十一月の議会において、所得税の臨時特例、すなわち源泉徴収の基礎控除並びに扶養控除の引上げをしたに対し、一般所得税の基礎控除並びに扶養控除等の改正をなし、基礎控除において二万五千円を三万円に、扶養控除一万二千円を一万五千円に改め、さらに旧法においては五万円以下百分の二十より、五十万円まで五五%となつておるものを、五万円以下をそのままとしてへ百万円まで五五%に改め、新たに特別控除制度を設けて、年齢六十五才以上の者について、その者の所得から一万五千円を控除し、扶養親族を有する未亡人並びに勤労学生に対し、一定金額以下の所得を有する者にいずれも一万五千円を控除し、さらに生命保險に対して、年中に拂い込んだ生命保險料のうち二千円までの金額を控除する、また資産所得の合算及び扶養親族の所得の合算制度の廃止、予貯金利子等に対する課税にあたり源泉選択制度を認め、その税率を百分の五十、青色申告者に対しては、再調査及び審査の請求中は差押え公売を行うことができないとする措置、農業所得者以外の納税者の申告時期及び納期を、農業所得者と同様七月、十二月及び翌年二月の三期とすること等、旧来より進歩的な考慮を拂われておるものではありまするも、年額わずか五万円の少額所得者に対し、旧法同様百分の二十をかけているのであります。むしろ、この程度の所得者に対しては無税とし、百万円以上五百万円までの者に対しては、もう少し税率を引上げてもよろしいように考えられるのであります。また、勤労学生の学資かせぎにあたつて得た所得に対しては全免にすべきであります。さらにまた、富裕税のごときは廃止し、一般累進税率によるものと政むべきであります。
富裕税は新税ではあるが、昭和二十五年歳末にあたり、富裕税調査のため現金を調査するとの報が伝わるや、銀行等よりどんどん貯金を引出し、流通場裡より数十億円に近い貯金が退蔵され、資金の足らざる歳末金融に困難を来した例があります。また現金調査が非常に困難であるので、これをもし中止するものとせば、株を売却して現金にかえられて、証券対策に暗影を投げかける心配があります。今日のごとき金融難のときに、もしも株券の投売をやられたとするならば、長期産業資金の獲得は困難になり、経済界の復興途上、重大問題となるのであります。全国にわずか四万八千人くらいよりないという富裕税納入該当者に対し、單にこれらの富裕者に対しても税をとるんだというゼスチユアにすぎない制度はむしろ廃止して一般累進税率によるべきであります。
また、株式譲渡得利税のごときも廃止すべきであります。すなわち、当初の売却人より白紙委任状つぎにて転々とし、最後に名義書きかえした岩との中間の人間がほとんど脱税してしまうので、むしろ移転税を少し上げて徴収する方が、かえつて得策と考えるのであります。
以上、所得税の全体より考えてまだまだ修正すべき点がたくさんあります。政府は、本年度七百四十三億円を減税し、国民生活の安定を考慮したと申されても、事実地方税の増徴と、朝鮮事変による物価の騰貴等により、減税の効果は減殺されております。ことに農漁村においては、特需の恩恵に浴することもなく、漁網や農具、衣類、肥料等の値上りと、食糧、ことにいも類等の統制撤廃で価格が下落し、均衡のとれざる状態であります。この際、大衆所得者保護のため、さらに減税すべきであると考えるものであります。
政府は、今回の改正を正直に実行してもらいたい。七百四十三億円減税したと言うても、朝鮮事変等で物価が上り、おそらく現在の予算を実行しても不足を来すのではないか。そうなつた場合には、当然補正予算を組まねばなりません。また法律も改正しなければならない。事実こういうような場合に、政府は法律も改正せず、あるいはまた、このまま水増し徴税をやつて行く、こういうことを考えることは非常に危險でありまして、政府は、法律では一応減税になるのだといいながら、事実徴收面によつて水増し徴収をするならば、これは決して減税にはなつておりません。(拍手)ことに物品税の一例をとつて申しましても、昨年の予算の中には、わずか四億円とるのだという物品税の品目があります。それを、事実倍以上徴収しておる事業があります。それから考えても、税法は安くなつたと言いながらも、事実において水増し徴税を行われる危險が多分にあるのであります。さらにまた、われわれは新しい行き方として、今までに滯納されておるところの税の徴収については閉鎖勘定という制度を設けてほしい。この閉鎖勘定によつてあるいは何箇年かたつてもなおかつ税を納められない人は、閉鎖勘定からも切り捨ててしまう、こういうような制度も、條件としてお願いしておきます。
さらにまた、税を滯納した場合に、一挙に全部取立ててしまうということは、これは非常に現在の経済状態では不可能な事実でありますので、ぜひとも分納制度を認めてもらう、こういうことをわれわれはお願いしておきます。
さらにまた、一時的に税を微收するということは非常に困難でありますので、ぜひ納税組合をつくりまして、これを法律化していただく。このことについては、大蔵委員の方々も、各党超党的にこの納税組合の問題を協議しつつあります。
次に法人税でありますが、第一に積立金に対する二%の法人税を廃止すること、但し同族会社に対する積立金は五%課税を存置することになりました。このことは、資本蓄積の点より考えて当然であります。第二点は、新規に取得した特定の機械に対しては、三箇年間に限り法定償却額の五割程度の増加特別償却を認むることであります。政府は、産業合理化には資金をあつせんするというも、実際には資金のあつせんをしておりません。また設備資金のような長期貸付は、金融機関では容易にしてくれません。設備改善の点よりも、本條の改正は当然と考えられます。第三点は、見返り資金の所有する優先株式に対する利益の配当を、所得の計算上損金に算入するものとすること等の改正も、当然と考えられます。法人税全体より考えて特別利得税を廃止して一律に三五%と改めた点は、資本を蓄積し、設備改善による産業合理化をはかり、海外市場を拡大するという点より妥当な処置とは考えられるも、朝鮮事変等による特需会社は莫大なる利益を計上されております。これらの特需会社は、一切の償却をしても、一社において数億円の利益を繰越しておるものもあるのであります。これらの会社には特別の税をかけ、一般大衆の税の軽減をはかるべきであります。
また相続税法の今回の改正は、多分に社会政策的意義を有するものでありますから賛意を表するのでありますが、相続人が保險金を十万円ずつ十数人より受け、数百万円の相続があつても税がかからないような点があります。これは他の財産を相続する場合との均衡上不当と考えられますので、今後はこの点をよほど研究し、改正する必要があるのではないかと考えるのであります。
通行税法の一部改正、すなわち汽船の二等の乗客に対する税の廃止は、これも当然かと思います。
登録税法、印紙税法、骨牌税法、租税特別措置法の一部改正、ともに賛意を表するも、ただいま申し上げました以上の希望條件をすみやかに実行して国民生活の安定をはかられるようお願いいたしまして、私の賛成演説を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/11
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012・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
まず日程第一ないし第三の三案を一括して採決いたします。三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/12
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013・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて三案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に日程第四ないし第八の五案を一括して採決いたします。五案の委員長の報告はいずれも可決であります。五案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/13
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014・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて五案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/14
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015・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第九、国民金融公庫法の一部を改正する法律案、日程第十、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事奧村又十郎君。
〔奧村又十郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/15
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016・奧村又十郎
○奧村又十郎君 ただいま議題となりました国民金融公庫法一部を改正する法律案及び開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に宛てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
まず国民金融公庫法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法案の提出理由を申し上げますと、国民金融公庫に対する資金需要は、昭和二十六年度におきましても依然相当の額に上るものと予想されまして、この種資金の円滑な疏通をはかるととは中小企業振興上緊要でありますので、この際公庫の資本金四十億円を六十億円に増額し、もつて新規資金の確保をはかろうとするものであります。
この法案は、二月九日、本委員会に付託され、同十日、政府委員より提案理由の説明を聽取し、同二十一日及び二十二日の二日間にわたり質疑を行つたのでありますが、その詳細に関しては速記録に譲ることといたします。
次いで質疑を打切り、討論採決に入りましたところ、小山委員は自由党を代表し、宮腰委員は民主党を代表し、松尾委員は社会党を代表し、また竹村委員は共産党を代表しまして、それぞれ資本金の増額等につき希望條件を付し賛成の旨討論せられました。次いで採決いたしましたところ、起立総員をもつて原案の通り可決すべきものと決しました。
次に開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるたあの一般会計からする繰入金に関する法律案について申し上げます。
農地の開拓者に対する貸付金の財源は、健全財政の見地から、昭和二十四牟度から引続き一般会計からの繰入金をもつてその財源に充てて参つたのであります。従いましてこの法案におきましては、昭和二十六年度においても、前年度と同様の趣旨をもちまして、営農資金、共同施設資金及び営農促進対策資金の貸付予定額合計十四億二千三百二十九万円を一般会計から繰入れて貸付金の財源に充てることといたし、なおこの繰入金は、将来貸付金が償還されますので、予算の定めるところにより一般会計へ繰りもどすことといたしておるのであります。
この法案は、二月九日、本委員会に付託され、同十日、提案理由の説明を聽取し、同二十日質疑を行つたのでありますが、その詳細に関しては速記録に譲ることといたします。
次いで質疑を打切り、同二十二日討論採決に入りましたところ、小山委員は自由党を代表して賛成の意を述べられ、天野委員は民主党を代表し、田中織之進委員は社会党を代表し、また竹村委員は共産党を代表しまして、それぞれ開拓政策の確立等につき希望條件を付し賛成の旨討論せられました。次いで採決いたしましたところ、起立総員をもつて原案の通り可決すべきものと決しました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/16
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017・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/17
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018・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/18
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019・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、玉置信一君外二十六名提出、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律案、伊藤郷一君提出、水先法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/19
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020・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/20
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021・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。まつて日程は追加せられました。
北海道開発のためにする港湾工事に関する法律案、水先法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員玉置信一君。
〔玉置信一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/21
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022・玉置信一
○玉置信一君 ただいま議題となりました北海道開発のためにする港湾工事に関する法律案について、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、去る二月二十四日、本委員会に付託され、越えて二十六日提案理由の説明を聽取し、これを愼重に審議いたしたのであります。
本法案の趣旨並びに内容を、ごく簡單に申し上げますと、昨年第七国会において制定を見ました港湾法の第四十二條には、港湾の修築に要する経費はその五割を港湾管理者が負担することに規定いたしておるのでありますが、御承知の通り北海道は、冬季間風浪、積雪あるいは氷結等の気象的な惡條件のために、内地の工事と比較いたしまして非常に進度が遅れるのであります。現に港湾整備五箇年計画によるところの昭和二十四年度の進捗率を見ましても、内地は三・三%となつておるのにかかわらず、北海道は二・一%しか進んでいないという現状であるのでございます。いわんや人口の点におきましては、内地に比較いたしましてきわめて稀薄であり、かつ経済的負担力も非常に小さいために、この経費の負担は容易でなく、港湾法が制定されたために、今まで国の拓殖計画の一環として行われて来ましたところの港湾計画が、かえつて停滯し、あるいは中絶されるおそれがありますので、特に北海道における資源開発の前提的要件で、ある港湾工事に対しましては、港湾法制定前と同様、すなわち水域施設または外郭施設につきましてはその経費の全額を、緊留施設または臨港交通施設につきましてはその七割五分を国が負担することにして北海道の総合的な開発をはかり、ひいてはわが国の産業の発展に寄與せんとするものであります。
以上申し上げました通り、本法案の趣旨はまことに適切妥当なものと認められますので、質疑並びに討論を省略し、ただちに採決の結果、全員一致をもつて原案通り可決すべきものと決定した次第であります。(拍手)
次に水先法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法事案は、二月二十日、本委員会に付託され、二十六日提案理由の説明を聽取し、これを愼重に審議いたしたのであります。
本法案の趣旨並びに内容を簡單に申し上げますと、北海道釧路港は、気象の関係上、四季を通じて惡天候の日が多く、とくに冬から春にかけて濃霧が深く、船舶の航行に少からず困難をきわめ、また一方当港への入港船は逐次増加いたしまして、その混雑はますますはなはだしい状態に立ち至つておるのであります。かような実情にかんがみまして、当港に新たに水先区を設けて、港内における海難の防止をはかろうとするのが本法案の目的であります。
以上申し上げました通り、本法案の趣旨はまことに適切妥当のものと認められますので、質疑並びに討論を省略し、ただちに採決の結果、全員一致をもつて原案通り可決すべきものと決定した次第であります。
右ご報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/22
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023・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/23
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024・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
これにて議事日程は議了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
午後四時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X01519510226/24
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