1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年六月一日(金曜日)
議事日程 第四十四号
午後一時開議
第一 土地收用法案(参議院提出)
第二 土地收用法施行法案(参議院提出)
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●本日の会議に付した事件
日本放送協会経営委員会委員任命につき同意の件
日程第一 土地收用法案(参議院提出)
日程第二 土地收用法施行法案(参議院提出)
商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案(内閣提出)
午後二時五分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/0
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001・林讓治
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/1
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002・林讓治
○議長(林讓治君) お諮りいたします。内閣から、日本放送協会経営委員会委員に大原總一郎君、宇野親美君、西彦太郎君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意を與えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/2
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003・林讓治
○議長(林讓治君) 起立多数。よつて同意を與えるに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/3
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004・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第一、土地收用法案、日程第二、土地收用法施行法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員会理事内海安吉君。
〔内海安吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/4
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005・内海安吉
○内海安吉君 ただいま議題となりました、参議院議員岩沢忠恭君外六名提出の土地收用法案並びに土地收用法施行法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず本法案の提案の理由及び内容の概要について申し上げます。御承知のごとく、現行土地收用法は明治三十三年に制定せられたものでありまして、新時代に適合しない点が多々ありますので、この際本法律の全部を改正せんとするものであります。
改正の要点は、第一に、時代の変化に伴つて公共の利益となる事業の種類を整備する必要があり、かつ各事業の根拠法規を、あげて法文において明確にし、私権の保護をはかつたのであります。
第二に、電源開発等の要請にかんがみ、公共事業の施行のために、土地以外に水利権、漁業権その他水の使用に関する権利の收用等に関して明確に規定したことであります。
第三点は、土地を收用できる事業の認定方法及び手続等において、現行法は愼重を欠き、不適当と認められるので、これに要する手続規定を整備したことであります。
第四点は、收用の手続に入る前に、まず收用者、被收用者相互間は、なるべく互讓の精神で調停の申立てや和解を進める道を開いたことなどであります。
第五点は、收用の手続については、現行法においては審査機関の組織構成が非民主的であり、かつその審査手続も官権的、一方的であつて、愼重を欠くものがあるので、これらの点を改め、審査機関は公正中立かつ民主的な機関に改め、審査の手続においてこれを公開し、口頭による陳述の道を開き、当事者双方の意見を十分に開陳できるようにしたことであります。
第六点は、損失の補償については、現行法は金銭による補償だけに限つておるが、耕作者及び農民等を保護するため、替地その他による現物補償の道を開くほか、被收用者に対して補償の完全を期し、その保護をはかることなどであります。
建議委員会におきましては、去る五月二十五日、提案者より提案理由の説明を聽取いたしまして、引続き質疑を行いました。その質疑応答の詳細については速記録に讓ることといたします。
審議に際し、本法案の重要性に顧みまして、学識経験者として金沢東大教授、收用者側より立花国鉄施設局長、被收用者側より江戸川沿岸の森埼玉県宝珠花村長を参考人として招致いたし、意見を聞いたのでありまするが、各参考人の陳述を要約いたしますと、本法案は現行法よりもきわめて民主化されているので、一刻もすみやかに本法案を施行されたいという要望が多かつたのであります。ただ裁定その他の手続に時間がかかつて、時宜を失するおそれがあるから、法の運用にあたつては敏速的確なことが特に留意されなければならない旨の希望が述べられました。
次いで委員と提案者との問にとりかわされた質疑のおもなる点をあげますと、第一に、土地收用委員会は地方にのみ設けられ、中央には委員会が設けられないが、收用の裁定が適正に実施できるかという質疑に対しまして、中央における裁定等に関しては、事業の認定の要件について法文中に明記してあるとともに、関係行政機関の意見の聽取及び公聽会等を行うことを規定しているので適正にできるとの答弁がありました。第二に、土地收用の裁定にあたつて、土地調整委員会の意見に支配されることはないかとの質疑に対し、法文中に土地調整委員会の意見を聞く旨規定してあるのは、同委員会の要望に基くものであつて、もちろん両者の意見が対立した場合には建設大臣に裁定権がある旨の答弁がありました。
かくして討論に入り、共産党を代表して池田峯雄君より反対の討論があり、次いで採決の結果、多数をもつて可決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/5
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006・林讓治
○議長(林讓治君) 討論の通告があります。これを許します。池田峯雄君。
〔池田峯雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/6
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007・池田峯雄
○池田峯雄君 私は、日本共産党を代表して、一言簡單に反対の理由を表明したいと思うのであります。
茨城県の小貝川と申しますと、昨年の大水害で有名な川であります。この小貝川が大利根に注ぎ込む川口をつけかえることによつて小貝川の水害をなくしようという計画は、数年前からあるのでありますが、これを実行に移すためには非常な困難があるのであります。それは、この工事によつて土地をとられる地元民の猛烈な反対であります。この工事計画には、おおよそ三つの案がありました。A案、B案いずれも地元農民の反対によつて実現できず、最後案として建設省が決定いたしましたものは、布川という町の半分を水底に沈めてしまうところの背割堤式という計画であります。この決定が発表せらるるや、町民の反対の機運は極度に高まりまして、町長を先頭に、布川の町を守るためには町民の血潮の最後の一滴まで闘おうという悲壯な決意を固めておるようなわけでございます。
このようなことは、全国各地に見られるところでありまして、たとえば山形県のあるダム建設工事でも、湖底に沒する村の人々が猛烈な反対をやつております。多分自由党の池田正之輔君が期成同盟会長でありまして、湖底の村の方の側に立つて土地收用に反対しているのが社会党の上林君であつたろうかと思うのであります。だから社会党も、この法案に無批判に賛成するのではなくして、大いに反対してほしいと思う次第なのであります。
こういうような問題を根本的に解決するためには、一体どうすればよいのか、この問題は、きわめて重要な政治的課題でございます。今回提出されましたこの土地收用法は、この重要な課題に対する回答になつているかどうか。全然なつておりません。まず、土地收用委員会は県知事の任命制であります。数はわずかに七人、このうち三人の出席があれば、どんな決定でもすることができるようになつております。都道府県会の閉会中は、知事は議会の同意なしに委員を任命することができるようになつております。従つて知事は、いかなる決定でも一方的に遂行できるようになつているのであります。小貝川下流の住民諸君などは、このことを聞いただけで、新しい土地收用法は欺瞞だといつて憤激することは明らかなのであります。
この收用委員会が損失補償の問題も決定するのでありますが、しからばどういう基準で損失を補償するかと申しますと、きわめて漠然と規定されているにすぎません。すなわち第七十二條には、「收用する土地に対しては、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。」、こうあります。私は、提案者並びに政府委員に対し、「近傍類地の取引価格」とあるが、農地の取引価格というものが一体あるのか、あるとすれば一体幾らなのだと、こういう質問をいたしましたところが、政府委員は、現在の賃貸価格の四十八倍でやつておりますと、こう言うのです。固定資産税の課税標準額でも、畑が賃貸価格の一千八十倍です。田は九百倍になつております。それなのに、賃貸価務の四十八倍で收用するなんということは、これはもう実にばかげた値段です。こういう安い値段で土地を收用するということを聞いたならば、全国の農民諸君は、おそらくあきれてものが言えないでございましよう。それが第七十二條でいうところの「相当な価格」であります。
しかも、この補償金に対しまして、政府は税金をとつております。この法律は、明らかに、こういう補償金は免税にするという規定を設けなければならないはずなのに——こういう法律であります。ですから、今後河川改修やダムの建設で土地をとられる人々が反対しても、これを非難したり彈圧することは、今の政府にはできないはずです。これを強行せんとするものが自由党の政府であるならば、自由党は明らかに私有財産を否認する政党であるといわなければならない。(笑声)
この法律は、このように收用委員会が決定した安い価格で自由に土地を收用できるようになつているのであります。そうして、もし関係者がその決定に反対の場合には、補償金を供託し、收用すべき土地にかわる替地を供託することによつて、土地所有者がいやだと言つても、一方的にその土地を取上げ、使用することができるようになつているのであります。私は、この法律が現行法よりも民主的になつたという理由を、ただの一かけらも発見することができません。人民大衆は、今の政府では自分らの生活を守つてもらうことは不可能だということは知つております。布川町の町民が言つております。補償金を幾らくれると言つたところで、補償金をもらつて他に転任した入々が、今どんな暮しをしているか、それを見たら、何といつても反対せずにはおられない、こう言つているのであります。これこそ人民大衆の日常の経験から体得し、本能的にほどばしり出た政府への反抗の言葉であると思うのであります。これは明らかに政治の根本をついた大衆の言葉であろうと思うのであります。資本主義社会では、絶対にこの大衆の要求を満足させることができません。人間による人間の搾取の機構を全人民の手に移した社会主義社会のみが、この大衆の要求を満足させることができるのであります。(拍手)
政府は、この法律によつて、今後大大的に国土の軍事基地化を押し進めて行くのでありましよう。そうして、なつかしいふるさとの地、美しい宝の土地を追われた人々は、生計の道を求めて、かつての朝鮮や満州の人たちのように流亡の民とならなければならないでありましよう。共産党は、かかる国の植民地化、軍事基地化に命をかけても反対し、土地をとられるものに対しては、政府は大衆の要求通り、完全かつ無期限にその生活を保障せよということを強く要求いたしまして、本法案に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/7
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008・林讓治
○議長(林讓治君) これにて討論は終局いたしました。
両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/8
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009・林讓治
○議長(林讓治君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/9
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010・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/10
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011・林讓治
○議長(林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/11
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012・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案を議題といたします。委員長の報書を求めます。大蔵委員会理事小山長規君。
〔小山長規君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/12
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013・小山長規
○小山長規君 ただいま議題となりました商法の一部を改正する法律の施行に伴う銀行法等の金融関係法律の整理に関する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法案は、商法の一部を改正する法律が七月より施行されることに伴いまして、銀行法、貯蓄銀行法、信託業法、担保附社債信託法、無盡業法、銀行等の債券発行等に関する法律及び証券取引法の七法律中、商法を準用している規定等に所要の改正を加えるとともに、金融機関の特殊性にかんがみ、無額面株式の発行を禁止し、また株主の会計帳簿書類の閲覧または謄写に関する規定の適用を排除する等、商法の若干の規定に特例を設けることといたそうとするものであります。
この法案に関しましては、五月二十四日、政府委員より提案理由の説明を聽取し、審議を行つたのでありますが、本一日、自由党より修正案が提出されました。修正案の要点は、相互銀行法及び信用金庫法につきましても、右と同様、商法の改正に伴う所要の改正を行おうとするものであります。
次いで討論採決に入りましたところ、田中織之進委員は社会党を代表して反対の旨討論されました。引続き修正案及び修正部分を除く原案について採決の結果、起立多数をもつて修正議決されました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/13
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014・林讓治
○議長(林讓治君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/14
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015・林讓治
○議長(林讓治君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
明二日は会期終了日でありますが、午後一時より本会議を開きます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101005254X04519510601/15
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