1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年十二月十五日(金曜日)
午前十一時十六分開会
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委員氏名
厚生委員
委員長 山下 義信君
理事 小杉 繁安君
理事 井上なつゑ君
理事 有馬 英二君
大谷 瑩潤君
城 義臣君
中山 壽彦君
長島 銀藏君
河崎 ナツ君
堂森 芳夫君
藤原 道子君
常岡 一郎君
藤森 眞治君
谷口弥三郎君
松原 一彦君
労働委員
委員長 赤松 常子君
理事 一松 政二君
理事 原 虎一君
理事 波多野林一君
大屋 晋三君
宮田 重文君
中村 正雄君
山花 秀雄君
川上 嘉市君
田村 文吉君
栗栖 赳夫君
鈴木 強平君
堀木 鎌三君
堀 眞琴君
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本日の会議に付した事件
○健康保險法の一部を改正する法律案
(内閣提出・衆議院送付)
(右法案に関し証人の証言あり)
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〔山下義信君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/0
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001・山下義信
○委員長(山下義信君) これより厚生労働連合委員会を開会いたします。
本日は証人といたしまして慶応大学教授園乾治君、全日本産別労働組合会議保健部長吉田秀夫君、総同盟全国進駐軍労働組合同盟副会長市川誠君の主君に証人として御出席願つております。労働委員会のかたがたの質疑が終りましたのち証人の陳述をやることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/1
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002・原虎一
○原虎一君 質疑はどのくらいの御予定でございますか知りませんが、お忙がしい証人がたくさんおられて我々の質疑をやつておるのを聞いて後に、又証言されるというのはどうかと思いますがね。我々は証人の証言を聞くのならば先に一緒に聞きたい、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/2
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003・山下義信
○委員長(山下義信君) 御尤もでございます。それではそういうふうに計らうことにいたします。
これより証人の宣誓を求めることにいたしますが、宣誓に入ります前に証人に念のために申上げます。
それから宣誓をして頂くのでございますが、もし虚偽の陳述等のありますときは、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律第六條によりまして三年以上十年以下の懲役に処すること、正当な理由なく証言を拒んだときは同様処罰されることになるのであります。但し同法第四條により、民事訴訟法第二百八十條及び二百八十一條の規定に該当する場合に限りまして、宣誓若しくは証言を拒むことができます。それでは証人のかたに順次宣誓を求めることにいたします。宣誓書の朗読を願います。総員御起立を願います。
〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
宣誓書
良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
証人 園 乾治
宣誓書
良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
証人 吉田 秀夫
宣誓書
良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
証人 市川 誠発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/3
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004・山下義信
○委員長(山下義信君) 御着席を願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/4
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005・山下義信
○委員長(山下義信君) それでは市川証人から順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/5
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006・市川誠
○証人(市川誠君) 総同盟の全国進駐軍労働組合同盟副会長の市川であります。本国会に提出せられまして審議いたされております健康保險法の一部を改正する法律案につきまして卑見を述べまして、且つ議員のかたがたの審議の御参考に資して頂きたいと思います。
先ずこの改正法律案は第九臨時国会におきまして提出せられて審議未了になつたものでありますが、私たちは臨時国会に出された当時からもこの法律案に反対の態度をとつているのであります。従いまして同じ法案が今国会に提案せられましたこの法案に対しましては、反対の意見を開陳いたしたいと存ずるのであります。改正法律案の提案の理由といたしましては、健康保險財政の窮迫に対処するために保險料率を引上げると共に、被保險者の資格喪失後における保險給付につきまして六ヶ月間の資格期間を設ける必要があると述べられております。勿論この改正法律案が提案せられるに至りました経過につきまして保險経済の危機ということが重要な要素に相成つておると考えるのであります。健康保險経済の危機につきましてはすでに昭和二十四年度からその事実を指摘せられておつたのであります。二十四年度におきましてもこの危機対策といたしまして、料率の引上げ、或いは一部負担金の制度等をとり入れた方法を採用されたのでありますが、この際にも私たちは一部負担金の制度は社会保險の邪道であるといたしまして強硬に反対をいたしたものであります。従いましてこのような保險経済の危機に対処する対策案として健康保險法の改正が企画せられる場合には、当然我々は抜本的な対策というものが提案されることを期待いたしておつたのであります。併しながら今回提案せられました改正法律案の中には遺憾ながらそれを見い出し得ないのであります。本来健康保險の趣旨といたしましては法律にも示されておりますように、疾病、負傷、死亡、分娩に対する給付をなすことが目的とされております。そうして法律にも法定の給付として各項が明記されております。そのほかに附加給付の制度等の余地も勿論残されておりますが、我々はこの法律に示されておるところの給付は、いわゆる健康保險の趣旨を達成するための最低限のものであると、かように考えておるのであります。このような観点から法定給付に制限を加えるような改正法律案に対しましては絶対に賛意を表することができないのであります。更に又現在多くの労働者が期待しておりますところの新らしい社会保障制度との関係を考えてみまするに、社会保障制度審議会が叡智を傾けて作成いたしました勧告案も政府に提出され、立法化の段階に入つておると聞いております。この勧告の中には社会保險の給付に関しましては、これを拡充すべきであるということを指摘強調いたしておるのであります。更に又総合的な社会保障制度が確立せられる際には、現在の法律としてあります各社会保險関係の法律はすべてこの総合的な社会保障立法の中に吸收されることが望ましいように勧告をされております。こういう点から考えますときには、極めて近い将来に予想し得ますどころの社会保障立法への経過的な期間における健康保險法の改正に関しましては、十分これの吸收に対しまして円滑的な考慮がなされなければならないと考えておるのであります。
以上が総括的にこの改正法案につきましてみました所見であります。以下直接法律案の條項につきまして所見を申上げたいと存じます。
第五十五條に次の一項を加えるといたしまして、被保險者の資格を喪失した場合に、引続いて給付を受ける場合には六カ月以上被保險者でなければならないというような一項が追加するように提案されておりますが、私たちが、この條項を考えましたときに、頗る重大な理由を感ずるのであります。と申しますることは、本来資格喪失の最も大きな理由を考えてみますとへこれは被保險者の労働不能の状態にあるということを指摘いたしたいのであります。疾病に罹り、そして治療の経過中におきまして、資格を喪失した際に、若し引続いての治療が許されずして、健康を速やかに回復して再び就労するの機会を遅延するようなことがありましたならば、これは法が保護せんとする点から考えまして大きな欠陷に相成ると考えておるのであります。正にこれらの者こそ十分に保險の趣旨からいたしまして給付対象者といたして救済をいたすべきものと考えておるのであります。保險経済財政の逼迫を理由に、被保險者の権利をこのように不当に制限することにつきましては反対であります。
更に五十七條に附加えます制限條項に関しましても同様の趣旨で反対をいたすものであります。
次に七十一條の四に関する條項におきましては保險料率の引上げが提案されておりますが、すでに御承知の通り我が国におきまするところの保險料率は各国にその例を見ないほどの高率であるといわれております。現在低賃金政策の下に賃金の遅欠配、ベースの据置等の下におきましてこのような料率を引上げるということは労働者にとつては極めて重大な関心事であります。料率の引上げの問題につきましては、我々が考えまする点を申上げますならば、徒らに保險料を濫費するような、これを助成するのではないかということを危惧するものであります。政府はよろしくこのような二点につきましては診料報酬の点数の合理化等によりまして支出の削減を図つて、そうして料率の引上げについては労働者が実際に受けておる給與、労働者の生活安定という面からもつと慎重な態度をとるべきであると考えるものであります。
更に七十五條の二に千分の三十を千分の三十五に改めると提案されておりますが、この点につきましては、組合管掌の保險料率の幅は別段改正もされておりませんので、事業主の強制負担率の限度のみを引上げることにつきましては、被保險者の立場といたしまして反対いたします。
更にこの際に附加えて申上げますならば、この五十五條の制限條項を設くることによりまして、果して保險経済の危機を打破し得るほどの支出節減が期待し得るかどうかという点について私たちは余り期待を持ち得ないのであります。いろいろ聞きました点によりますれば、この五十五條によりまして六ヶ月未満で給付を受けておりますものにつきましては、療養の給付、傷病手当金等を合せまして推定数字でありますが、一年間に約二億程度の額というように見ておるのであります。更にこれを六ヶ月以上のものが五十五條の適用によつて支出せられておる額を見ますると、約十億程度と承わつております。各六ヶ月未満、六ヶ月以上を分離比較して見ますと、六ヶ月未満の被保險者に対する支出額は六ヶ月以上のものに対する額の約五分の一程度であります。年間約二億程度でありまして、私たちはこの二億の支出によりまして、真に資格を失つて、そして暗い生活の下にある労働者をこの五十五條が現実的に救済しているという事実を指摘いたしまして、各委員のかたの十分なる御考慮を要望したいと存ずるのであります。
特に私は連合国軍要員健康保險組合に関係いたしておりまして、この被保險者につきましてはいろいろな條件がありまして、部隊の都合等によりまして短期間で解雇せられるものも相当数ありまして、傷病者等に対しましてはこの五十五條を極めて有効に活用いたしまして、そうして被保險者に救済の手を伸べ、そして労働條件の維持確保と相待つて連合国軍への十分なる労働提供に資しておるのであります。
以上各條項につきまして意見を申上げましたので総括的に申上げます。健康保險法の改正に関しまして政府といたしましては、国庫の負担を増額いたしまして、そしてこの危機を打開する策をとるべきであると考えるのであります。現状におきましては僅かに事務費三億程度の負担にとどまつております。社会保障制度の勧告にも、事務費の全額国庫負担、給付につきましては二割の国庫負担、更に月額給付につきましては五割の国庫負担をなすべきであると勧告いたしております。私たちがこの健康保險に対しまして国庫負担の増額を主張するゆえんは、種々公団関係においていろいろな赤字等が出されておりますが、これらの赤字はすべて補償せられております。被保險者のみを見ましても、三百三十万以上のこの被保險者、更に罹病者を考えましたときには、それ以上に厖大な労働者及びその家族の健康保險に期待する点を十分考慮されまして、この際国庫負担の増額を断行して、この保險経済の危機を突破して頂きたいということを強く要望いたしたいのであります。
更に又事務的な面につきましては、保險料の滯納の整理を促進すべきであると考えるのであります。保險料の納入率につきましては、昨年度来逐次上昇いたしておるように聞いております。まだ二〇%乃至三〇%程度は滯納の状況にあるように聞いております。この際このような未收の保險料を徹底的に徴收いたしまして、そして收入財源の中に入れるべきでないかと考えておるのであります。
更に又保險経済を維持する対策といたしましては、支出の面につきましては、診療報酬審査の強化を指摘いたしたいのであります。勿論医師の良心的な診療報酬の請求を期待するものでありますが、支拂危機におきますところのこの診療報酬の請求審査に当りましては、人員が少いために非常に厖大な審査書類を扱つておりまして、粗放の誹りを免がれないと考えておるのであります。この際支出削減という点から考えまして、この診療報酬審査の強化を十分御考慮願いたいと存ずるのであります。
更に又健康保險組合、或いは又、政府管掌におきましても厚生省の監督権に基くところの監督を励行いたして頂きたいと思うのであります。すでに私たち連合国軍関係の健康保險組合におきましてもいろいろ資金の流用等におきまして被保險者に対しましてその期待を裏切るような事実があつたのであります。このような点につきましては監督官庁たる厚生省は断乎たる態度を以て監査に臨んで、そうして被保險者の期待するところの健康保險の運営に十分御留意を願いたいと存ずるのであります。私たちはそのようにこの法案に反対の態度をとるものでありますが、併しながら健全なる社会保險の発展について大いに協力を惜しまんものであります。この点につきましては政府が、現在おかれております被保險者或いは扶養者の状態を十分御調査願いまして、政府みずからが、保險経済危機突破のために十分な努力をなして、そうして我々が期待しておりますところの社会保障制度への円滑なる移行につきまして抜本的な対策を是非とも樹立願いたいと考えるものであります。給付の制限或いは一部負担金等の制度によりますところの姑息的な解決をこの際排除いたしまして、健康保險の根本的な対策を樹立いたして、そうして被保險者の期待するものにつきまして十分な給付保障をなし、これらの被保險者が日本の産業の復興再建に十分協力できるような社会的な保障の措置を是非ともとつて頂きたいということを強く要望いたしまして、私の意見開陳を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/6
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007・山下義信
○委員長(山下義信君) 次に吉田証人の御証言を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/7
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008・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) 最初の健康保險の今回の改正法律案につきまして非常に愼重な態度で御審査を願つておりますこの委員会の各位に対しまして敬意を表します。
恐らくは臨時国会におきましても或いは今国会におきましても、政府側からこの健康保險法の改正案につきまして国会以外のいろいろな審議会の動きにつきましてはお話があつたと思うのでありますが、その点私に今御証言になりました市川君と同様に、一応の厚生省の審議会の委員といたしまして自由なこれに対して意見を出しました。社会保障審議会におきましても、又私が委員の末席を汚しております社会保障制度審議会におきましても終始一貫今回の健康保險法の改正に反対して来たのであります。ところがこの二つの審議会とも私が関係しております審議会のいろいろな状態を見まして非常にデリケートな姿を以て一応結論は出して来たのであります。例えば社会保障審議会にこの問題が諮問されましたのは十一月の一日の総会であつたのでありますが、このときには二十七名の全体の委員の中、集まりまして実際に採決に参加したのは十五名だと私は思うのでありますが、その十五名の委員の中この四つの改正案に対しましてそれぞれ賛否をとつたのでありますが、この一と二の問題につきましては、これは十対四で、委員の一人は会長代理でありまして採決に入らなかつたのでありますが、十対四で一応可決をした。その四というのはこれは市川君始め我々被保險者の代表であります。一番重点の料率引上につきましては八対六で否決し去つたのであります。これは恐らく今まで御説明があつたと思うのでありますが、非常にこの決定に御狼狽なさつた政府当局が、それでは委員側から具体的な代案を現在三月の二十七億の赤字を突破する代案を出せという非常に無理な注文がありました。それで六日の日に正式な審議会の形でなしに、対策打合会議という形で行われましたが、事業主代表被保險者代表その他団体の代表からそれぞれ非常にむずかしい問題につきまして一つの代案を出せということは無理でありまして、一つも代案は出なかつたのであります。それで結局こういうものは参考資料としまして、政府側から、これは昨年の七月社会保障制度審議会でやはり依然として健康保險の三十一億の赤字に対しまして何とかしてくれという緊急要請があつた場合に、その打開策としまして出ましたありとあらゆる、いわゆる我々から言いますと改悪の対策が並べられたのであります。これはその当時宮崎局長が言われたのでありますが、大体それにも該当するような参考資料としまして、例えば最低限度を引上げるというようなことについてはいいとしましても、一部負担金を非常に増加するというような場合につきましては、例えば注射料を一割、二割、三割、四割、五割と、医者に行つた場合にその都度料金を我々が拂うというようなことや、或いは歯科関係で言いますと、歯科の補綴の一割から五割までの非常に細分したいろいろな一部負担金を課するとか、或いは往診費を全部被保險者、家族に負担させるとか、その他初診料は我々本人は大都会ですと四十四円、地方ですと四十円というような初診費をまるまる拂つてかかつておりますが、そのほかに百円程度は全部給付以外とする、やはり特別負担金、一部負担金として拂うというようなこと、それから最後には家族の診療を全部創つてしまうというような、現行の健康保險の制度を本質的に切替えるような代案が出たのであります。これは我々どんなに検討しようとしましても、この一つ一つが容易に呑めることじやない。しかし大体この点に非常に動揺を示しました事業主側の一部が政府側に同調しまして、八対四というふうな形で、又審議採決のやり直しということになりました。このとき勿論條件は出たのでありますが、こういう一応の動きを社会保障審議会は示したのでありますが、これ又非常に賛否両論が出たのでありますが、大体におきまして勧告を作成し、或いは勧告を公表しました委員の建前から言いますと、そういう政府側の非常に事務的な形でお出しになつたという今回の改正案については揉めない筈はないと思います。従いまして具体的な採決になりますと、非常にデリケートだというので、或いは皆さん御承知のように審議会としましての意見書が出ていると思うのであります。こういう大体非常にデリケートな状態を辿つて来ておりますから、国会におきましても衆参両院で非常に愼重な御研究と審議の結果が出るということは期待されるのでありますが、その点我々一千万に近い労働者階級が、どれほど社会保障制度に期待しているか。その期待を足下から見事に覆すような今回のこういう改悪案は、非常に矛盾した印象を我々に與えるものであると思うのであります。その点労働者階級及び一般国民大衆の、社会保障に対する期待、或いは社会保險に対する期待、こういつたものを殆んど足下から裏切るような、非常に私たち労働運動の幹部的な立場にある者から言いますとちよつと問題にならんような、そうして社会保障に対する、我々労働者に対する攻勢であるというふうに考えざるを得ないのであります。
それでは現行の健康保險の危機がどうして来たかというようなことを簡單に考えますと、これは昨年の初め以来私はもうすでに健康保險というものは、事業主と我々被保險者がお互いに保險料を出し合つて、而も健康保險の各種の給付を十分賄うという自主的な、そういう共済的な形では、絶対に健康保險の危機は突破できないというふうに考えております。これは将に二十数年来の健康保險の構造的な矛盾、危機からそういつた面に直面していると思うのであります。従いまして大体こういう健康保險の危機を單に事務的に解決しようというような政府当局のやり方は初めからナンセンスでありまして、そのためにこそ国が大幅に責任を持つというような社会保障制度の要請があるのであります。もつと具体的に保險経済の面から言いますと、私は現在のような姿で日本の健康保險が、このような危機の状態にあるという非常に單純な非常に素朴な理由といたしましては、やはり第一に我が国の労働者が非常に低賃金である。働けるだけの十分な給料をもらつていないという点にあると思うのであります。この点は皆さんがたは御存じだと思うのでありますが、大体国家公務員の共済組合自体がもう赤字で、罹病率と、共済組合の中の健康保險の利用率の増加によつて赤字の増加でどうにもならんというような、このことがはつきりと物語つていると思うのであります。このような低賃金でありますから、従つて国際的に言つても千分の六十というような保險料率はないという話でありますが、こういう国際的に見まして最悪最高の料率を課しましても、低賃金なるが故にやはり保險料の十分なる收入はないというのは当然であります。従つてこういつた非常に惨めな低賃金で働いているという、そういう現実的な條件にこそやはり問題があると思うのであります。それからそういう低賃金で働いておりますから、これは従つて罹病率も増大するのは当然であります。殊に最近では二年前に支拂基金という制度ができまして、一応医者のほうの支拂いはスピード・アップするというような仕組みになつたために、非常に急激に、飛躍的に被保險者及び家族の利用件数が増大したのであります。これは御承知の通りでありますが、このことが單に我々被保險者本人のみならず、家族の利用も増大して来ました。こういう統計につきましては恐らく当局からお話があつたと思うのでありますが、こういう二つの事情を考えましても、大体保險経済が賄えないということになると思いますし、更に加えて現行の社会保險診療報酬のとつております点数單位の方式、ああいう支拂い方式の宿命的な矛盾、この矛盾がやはり以前からこういつた保險経済の危機の増大の非常に大きな原因となつておりますが、この一番最後の支拂いの方法の問題につきましては、これは実際には百%今のような姿では審査ができないという致命的な欠陷を持つております。結局患者がいてもいなくても医者の請求書によりまして、それを種本にしまして審査をしなければならんという矛盾がありますし、又本人を一々呼んで、癒つた人を呼んで審査するわけではありませんから、その点では適正ではありませんが、現行の点数單位方式というような宿命的な矛盾が健康保險の危機の非常に大きな要因となつております。
こういうような点から今回の健康保險の改正案の内容は我々社会保障制度に非常に期待しております労働者階級からみましても、非常にその期待を裏切るものであり、又その勧告自体につきましても、率直に申しますと我々労働者側は非常に矛盾した感じを持つておるのであります。例えば六月のあの試案をめぐつた公聴会に出されましたときに、非常にたくさんの要求なり意見があの試案に対して出たのであります。ところが今回の勧告はその公聴会に出された労働組合側の意見は殆んど非常に寥々たる面では取上げておりますが、前の試案を何ら変りはないものが出ております。併し疾病保險に重点をおいて、約八百三十三億のうち半分の医療費に使うという、こういう構想につきましては、全面的に支持しております。従つて健康保險の危機突破の具体的の対策としましては、勧告を即時全面的に実施する以外にないと思います。その点は十分御了解の上で御努力をお願いしたいと思うのであります。
さて今回の健康保險の大体四つの改正案につきまして、市川君と若干ダブると思いますが、簡單に各項目の意見を申上げたいと思うのであります。第一番目の六ヶ月保險料を拂わないと、やめた場合に全然給付しないという、この構想は、審議会におきましては、当局から非常に最近そういう形で濫用する被保險者、労働者が多いというようなことが非常に支配的にそういう意見が多かつたのであります。この言葉は結局一千万に近い被保險者、労働者を罪人扱いする、初めから罪人扱いをして、何か悪いことでもするというようにきめてかかつての考えのように窺われまして、その点でも我々は非常に実は憤慨するわけであります。と申しますのは、大体我が国の労働者が勤めるということ自体が健康保險の給付をもらうために勤めるというようなことは非常に、例えば万人の中一人、或いは一千人の中一人というような、そういう例外的な形ではありますけれども、大体病気になるために勤めるなんという人はありません。これは病気自体は最悪の事態でありまして、誰も予期しておりません。殊に昨年春以来の事業主側の動き等を考えますと、非常に厳重な診断、検診の結果、健康診断の結果採用しております。それで非常に不幸な人たちはその中の何%かが結核に侵されて、やはり会社を休まなくちやならない、工場を休まなくちやならないという人がたくさんおります。従つてこういつた初めから厳重に健康診断の結果、非常に健康な身体であるという認定で入つた労働者が、その後の業務上のいろいろな仕事によつて結核になるというようなこと自体は、私はそういう場合の結核は明らかに業務上の疾病である、これは当然労災保險の適用の対象になるというふうにすら考えておるのであります。その点では第一番目の今回の改正案は非常に非人道的な、非常に酷な方法でありまして、絶対に賛成はできないのであります。殊に社会保障制度の勧告は、大体待期を三日とか、四日とかそういう点ではいろいろ委員会で問題になりました。これは保險料を納めて三日経つた、四日経つたというお話でありますが、保險料を納めても六ヶ月勤めないとどうということは社会保障制度の勧告に非常に逆行します。もう一つ失業保險の一番最後の勧告では、大体失業しまして一年間本人及び家族の疾病の場合の治療を保險で面倒を見るという線を出しております。大体これは保險料なしに大体失業労働者及びその家族の面倒を見るという革新的な方法であります。この点からも非常に矛盾するのであります。それから二番目の妊娠云々という問題につきましては、これはもう保險経済の面から言いますと何も役に立たないと思うのであります。殊に第一番目の六ヶ月保險料を納めないと駄目だということでは、僅かに二十七億の赤字に対しまして一月から三月までで六千万円きり節約されません。この点に問題があると思います。
それから最後に平常保險料率でありますが、これは大体その当時の政府当局の説明によりますと、十二月に一応国会で恐らく公務員のべースが上がるろう、一割くらいは上るだろう。それを一千円と仮定しますと、最近の朝鮮事変の特需景気に煽られまして五百円くらいのベースが、賃金が当然増加するだろうというような見込で言われていろいろな数字計算を出しておりまして、この点は我々がどんなに過去の末端の労働組合の動きを見ましても絶にこういうことにはなりません。と申しますのは、大体この非常に嚴しい暮、或いは正月を前にしまして、例えば昨日、一昨日あたり労働組合のいろいろな連中を集めましても、今年の十月に労働組合の非常に圧倒的な要望で、綿布百万ヤールを実は公団から放出されて、いろいろな大きな労働組合や或いは地方の一般労働組合宛に流したことがありました。この綿布百万十ヤールの中大体一ヤール五十円か六十円だと思うのでありますが、これすらも引取れない労働者がいるのでありまして、それで話によりますと、やはりここ半年から一年くらい全然布団のかわがなくて綿にくるまつているという、そういう労働組合の幹部連中も一応いるのであります。こうした状態を考えますと、それはどんなに特需景気で一部の産業の景気はいいかもわかりませんが、少なくとも政府管掌の対象になつております三百人以下の非常に零細な企業におきまして、少なくとも標準報酬のベース引上げという見込は絶対に私はつかないのであります。この点から言いまして千分の六十というような最高最悪の料率を課するということと同時に、この千分の六十ということ自体にも、この法案にありますように、若し将来どうしても赤字が解消切れないということになれば千分の六十五に引上げるという含みがあると思うのであります。こういう状態から言いましても絶対に呑めません。最近の料率を見ましても健康保險料の滯納、厚生年金の滯納、或いは失業保險料の滯納、労災保險料の滯納、社会保險料の滯納のために、差押えられて潰れて行く企業が沢山あります。この点から言いましても、これはもうすでに日本の政治の問題でありまして、そういうふうに非常に小さい産業を潰している。こういう状態こそが健康保險、或いは社会保險の危機を増大する非常に大きな要因になつていると思うのであります。こういうような点から言いましても、社会保障制度の勧告が千分の四十六と非常に低まつた料率を支持しておる点から見ましても、絶対にこの千分の六十、或いは将来は千分の六十五になるだろうという、こういうような料率の引上げには反対する次第でございます。それについての具体的なそれでは対策はどうかと言いますと、これはどうしても基本的に日本の産業を復興しまして、そういつた非常に零細な企業も十分成り立つて行けるような、そういう基礎條件を作らないことにはこれは問題にならないと思うのであります。そういうことはやはり労働者の雇傭関係を非常に増大し、或いは安定化し、或いはその上で尚且つ働けるだけの労働賃金を與えるということは、これは現在労働組合がやつておりますいわゆる最低賃金制の確立が一番問題だと思うのであります。現在のように最低千五百円、最高二万四千円、千五百円から二万四千円という十九階級に分けておるような日本の賃金の在り方、恐らくは最低一千円ぐらいから最高四、五万円ぐらいまでになると思うのでありますが、こういう状態では大体社会保險自体の経済が成り立つと私は考えておらないのであります。こういう問題がその一番基本的なものでありまして、少くともこの料率の引上げによりまして約三億か四億の節約になる、前の六ヶ月云々の六千万円が出るとしても、高々四億か、或いは四億五千万円ぐらいの節約によりまして、あとの二十数億の赤字は全部二十六年度に棚上げするというようなごまかしの、糊塗した対策では絶対に健康保險は育成できませんし、又いつも繰越せないと思うのであります。従つてこのことは社会保障制度の勧告を待たずに、恐らくこの勧告は二十七年度に一部実施されると思うのであります。二十七年度に実施予定される社会保障制度のその実施を待たずに、一番大事な健康保險政府管掌の三百数十万人の労働者、数千万人のその家族を含めましたその大事な政府管掌の健康保險が瓦解して潰れてしもうような、そういう状態が来るということを非常に心配しているのでありまして、若し勧告の実施を待たずにこういうふうにいろいろな疾病保險が瓦解するということになりますれば、これはどんなカンフル注射をやりましてもあとからでは手遅れになります。そういうようなことによりましても社会不安、或いは労働者の家族の困苦状態を我々は非常に身にしみてわかりますから、その点では少くとも赤字は全額国庫負担、それから若しこれはどうしても駄目だというならば、これは数年来問題になつております我々労働者がただ殆んど税金のように積立てております厚生年金の約三百億近い金を一時融資するというようなことにしまして、もう少し国会が頑張つて頂きたいと思うのであります。
要するにこういう状態でありますから、社会保障制度の勧告のあの趣旨に即応したような形で、全面的に現在の健康艦を中心とするいろいろな社会保險制度の危機の打開に御邁進願いたいことを切望しまして私の意見を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/8
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009・山下義信
○委員長(山下義信君) 続いて園証人の御証言を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/9
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010・園乾治
○証人(園乾治君) 一般の財政の赤字に対する対策としましては、言うまでもなく支出の減少と收入の増加、この二つがあると思うのであります。健康保險の財政の場合にも一般の財政と同様にこの二つの方法以外にはないのであります。支出の減少に関しましてどういうような方法がございますかと言いますと、先ず給付の制限ということが考えられます。いろいろな給付資格を嚴重にするということと、それから又給付する場合に、例えば注射に対して或いは新薬に対して制限をするというような方法が第一に考えられるのであります。
第二には治療の一部分を保險を利用するものが負担するという方法でございます。一例を言いますると診察料を本人が負担するとか、或いは初診料に限つて本人が負担するというような方法でございます。又被扶養者、つまり家族の診療を制限するというような方法も考えられると思います。
それから第三には経営の合理化であります。これは経営に要するいろいろな費用を節約するということも考えられます。それから又いわゆる適正診療をするということでございます。この適正診療というのはしばしば制限診療というような言葉で非難せられるところでありますが、社会保險で実行しますところの診療は、学術上まだ決定していないような疾病に対する治療方法を講ずるということは、結局医学の進歩には貢献しますが、保險の財政を紊乱させるもとであると考えます。従つてそういう診療を適正化するというような方法によつて経営を合理化するというようなことも考えられると思います。要するに支出の減少は給付の制限が第一で、それから費用の一部分を利用者が負担するということが第二で、第三が経営の合理化と、この三つの方法以外にはないと考えます。
もう一つの收入増加を図るためには国庫負担ということが考えられます。国庫負担は経営の事務費の負担をすること、或いは一部なり、できるならば全額を負担するという方法が考えられるし、又給付に要する費用の一部分、例えば一割とか、二割、或いは三割を国庫負担でするというような方法が考えられるのであります。
なお第二の收入増加の方法としましては料率の引上げということが考えられます。従来の保險料率で間に合ない場合に料率を引上げるという方法でございます。この料率引上げということは被保險者側、或いは事業主側、いずれにしましても費用を負担するものから言いますと、相当の苦痛であるということは言うまでもないことであります。殊に政府管掌の健康保險におきましてはその対象は中小企業であることから考えまして、その負担が相当重大に考えられておるということは申すまでもない筈であります。
第三に徴收を徹底させるということであります。これは従来も行われたのでございますが、なおこの徴收を徹底させる方法については、例えばできますならば標準賃金を引上げるとかいうような方法もこの中に加えられると思うのであります。要するに收入増加の方法は国庫負担か、料率の引上げか、或いは徴收の徹底化ということ以外にはないように思うのであります。
今回健康保險法の一部改正が提案せられているのでございますが、その場合に健康保險のこの赤字が今言いましたような支出の減少、或いは收入の増加とそのどつちに原因するかということを一応探究することが必要であると考えます。例えば診療報酬が上つたとか、或いは單価が上つたということが原因であるかどうか。それから又経費が増加して一般の経営費用が増加したかどうかという点、それからなお第三に診療を受けるもの、つまり受診が増加したかどうかということを考える必要があると思います。すでに政府のほうで御説明があつたかと考えますが、私どもの承わつているところでは、この第三に申しました受診率の増大ということが今回の赤字の主要な原因であると考えます。この受診率の増加ということが健康保險に入つておるものがその健康保險を利用するということでございますから、一応非常に本来の目的を達していいことだということが言えると考えますが、なお内容に立入るというと、一般の生活が非常に逼迫しておるために、従来健康保險を利用しなかつたものが利用するというような面もあろうかと考えますが、濫診濫療と言われておるような事実がそういう受診率の増加を惹き起した原因ではないかということをなお深く研究してみる必要があると考えます。必要でない場合に保險加入者が、或いはその家族が医療を受けるというようなこと、又は必要以上の診療を担当者側が行うというようなことがこの受診率の増大ということに影響を持つ重要な点ではないかということを探究してみる必要があるのではないか。聞きますところによると、この受診率の増加ということが相当大きな原因をなしておるのが最近の事情であるというように承知しております。
一般論は大体そんなものでございますが、さて現下の健康保險の赤字に対する対策としましては、いずれの方法によるべきか、国庫負担によつたがよいか、料率の引上げによつたがよいか、或いはこの両者によるべきかという問題が残されると思います。国庫負担ということは誠に結構なことでございます。御承知のように社会保障に関する勧告が先般総理大臣のほうに提出せられましたが、その場合に全国民に対して一定の最低生活を保障する。そうしてその保障する責任は国にあるという意味からいいまして、国庫が健康保險にも相当額のものを負担するということが理論的に誠に結構なことでございますが、現実の問題としまして国庫にそういう余裕がなかつた場合に、国庫負担に頼ることが不可能であるということになつて参ると思います。なお国庫負担の場合に全国民に対してこの負担が均霑せられますならば勿論よいのでございますが、極く制限せられた一部分のものに国庫負担が行くという場合には相当考慮しなければならん問題が残されると考えます。根本においては国庫負担ということがよろしい。併し現状に沸いて国庫負担が不可能であるという面と、それから国庫負担が一部分のものに行くという点を考慮しまするならば、理論的には正しいのでございますが、これを恐らく変えることが不可能であるということになると思います。従つて料率の引上げということは考え得られます。料率の引上げは、保險に加入しているものの側に直接大きな負担を課する結果になつて参りますので、できるならばこの方法に頼らないということがいいのでございますが、先ほども申しましたように、国庫負担になることが不可能である。そうして又赤字の原因が受診率の増大にあるどいうことならば、保險を利用するものが、或る程度の料率の引上げによつて、更に負担を多くするということも又止むを得ない方法ではないかと思うのであります。従つて今回提出せられました健康保險法の一部改正の要点である料率の引上げということも、産業上の負担、或いは被保險者側の負担が相当加わる。殊に政府管掌の場合ですと中小企業に従事しているもの、及び中小企業の経営者であるという点から、相成るべくはそうしたくないと考えますが、止むを得ないというような結論になつて参るのであります。
なお、今回の健康保險法一部改正の第一、第二に上つていますところの、給付の資格條件を厳重にするという点でございますが、これは先ほどもちよつと申しましたように、一種の給付制限ということになるのであります。できるならばこの点もしない方がよいと考えまするが、大体採用せられまして六ヶ月も経過しないようなもの、つまり非常に短期間で解雇せられるというような場合に、健康保險を利用するために雇傭契約を結ぶ。そうして健康保險を利用する実際の効果が発生しました場合に、解雇せられるというようなことがありますならば、健康保險の本来の、或いは合理的な利用方法でないと考えられます。従つて相当期間、例えば六ヶ月が適当かどうか問題かも知れませんが、六ヶ月というような資格制限を設けることも、健康保險の健全な運営、健全な発達という点から言えば止むを得ない方法であろうと考えるのであります。
第二の分娩に関する場合も、これは同様に取扱い得ると思うのであります。殊に分娩のような場合には、例えばもう分娩期が非常に近づいた。そうしてその費用を捻出するために、雇傭契約を結んで健康保險の適用を受けるような場合もないではないと考えますので、たとえそういうような場合の給付は金額が少くとも、健康保險の健全なる運営発達のために、これは制限するのが当然だと私どもは考えておるのであります。この二つの点に関しては以前の健康保險法にもこういう規定があつたのを、一時撤廃をしたというような歴史があるように聞いておるのであります。そうなれば本来のところに持つて行く、回復するということも又止むを得ないというように私どもは考えておるのであります。
以上のことを要約しますると、今回の料率の引上げ、それから給付の若干の制限ということも仕方ないのではないかというように考えるのであります。仕方がないと申しますが、若しこの方法を採用しなかつた場合を考えますると、当然赤字が多いために診療報酬の皮様いが延期せられるということになつて来ると思います。さような状態を続けて参りますると、健康保險全体の制度が破壊せられるということになると思います。又その結果は診療報酬を支拂われるほうの側が不便をするのみならず、そういうことによつて被保險者が健康保險を十分に利用する機会を失い、或いはその制度を破壊せられた場合には、被保險者は全然健康保險料の給付はなく、生活がいよいよ一層困難になるというような状態を惹き起すかも知れないのでございまして、その点から言いまして是非この改正をやつて、健康保險の急場を凌ぐことが必要であると思います。併しそれだけで健康保險が将来に亘つて健全なる運営をし得るのかどうかということについては、なお若干の考慮すべき点があるように思います。それらに関しましては健康保險審議会において今回の改正法律案に関する審議をなさつた場合に、附帶條件といいますか、或いは希望條件といいますかに、三つ加えられておるので盡きると思います。御承知かとも考えまするが、その第一は医療給付に国庫負担金の獲得、並に厚生年金保險積立金の融資ということでございます。つまり医療給付に関しましては国庫負担金を加える、それから先ほどほかの証人からも言われたように、厚生年金保險の積立金をこの健康保險の財政のほうに利用する途を拓くというこの二つであります。この問題に関しましては相当困難があるかも知れませんが、皆さんのお力によつて実現することを国民は期待するものだと考えます。
第二の点は医療内容の適正化でございます。この医療内容の適正化といいまするのは、いわゆる濫診濫療を戒めて、合理的な社会保險としてやらなければならん、本筋の医療をやるということに帰すると考えます。
それから第三の方法は、保險料徴收成績を向上させ、運営を合理化するということでございます。言葉を換えて言いまするならば、一方において收入の増加を図るために徴收を徹底するということと、それから運営の合理化によつて費用を節約する、支出を減少させるということであると考えます。
この三つの希望條件を附するということは、健康保險の発展と、この急場を凌ぐのみならず、将来に亘つて発展させる、健全な発展をさせる方法だと思うのであります。かような方法によつて急場を凌ぎ、且つ正常な発展の軌道へ持つて行くということは、この健康保險を根幹としまするところの、将来の社会保障制度へ行く道として、当然やらなければならん重大な仕事だと考えるのであります。社会保障の計画に関しましては、すでに皆さんが十分御承知のことだと存ずるのでございますが、若し健康保險、或いは国民健康保險、その他の制度も含めますが、ここでは健康保險のみに限つて申しましても、健康保險が根幹となるということが言えます。従つて将来の社会保障制度を実現しまする場合の重要な礎ともなるのでありますから、健康保險のために今回の改正は至当であるというふうに考えるのであります。甚だ簡單でございまするが、私の考えています大綱だけを申し述べて、皆さんの今回の改正案に対する御決定の若し参考にもなるところがございましたら、誠に幸せだと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/10
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011・山下義信
○委員長(山下義信君) 以上で証人の証言は終りました。本案の審議に移ります。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/11
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012・原虎一
○原虎一君 証人に対する質問は許されるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/12
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013・山下義信
○委員長(山下義信君) お許しいたします。ございましたらどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/13
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014・原虎一
○原虎一君 ちよつと園証人にお伺いいたしたいのですが、健康保險の性質から、これは一部労働者の保險であるから、国庫負担というものは全国民に利用させるものでない限力においては、余り奬励すべきじやないという御証言があつたのですが、それは私もそういう点は理解できるのですが、そういう論法で行きますと、一部労働者が負担している、例えば今御説明になりましたように、厚生年金として一部労働者が負担している、これはいわゆる強制であります。任意加入ではない。そういうことも国が行なつておるのでありますから、その間の経済の関連性というものは当然考えるべきじやないか。でありますから簡單に申しますれば、ただ健康保險が一部労働者のためになされておるから国庫負担をするということは間違いである。干渉すべきことじやないという御意見は頷けないのであります。その点はどらですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/14
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015・園乾治
○証人(園乾治君) 表現がまずかつたかと思いますが、国庫負担の場合には、私さつき申しましたときには、社会保障制度のことを念頭に置いたのでありますが、広汎な範囲に国民が利用せられる場合には、当然国庫負担ということが理論的にも正しいということは言えると思います。それから尚先ほどの証言の足りなかつた点を補足するならば、若し国庫に余裕があるならば一部の者が利用する健康保險に対して、国庫負担をするということが認められると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/15
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016・原虎一
○原虎一君 重ねてお伺いいたしますが、私は今申しているのは原則的にはむしろ一部の層のための健康保險というものは、国庫が非常な大きな負担することはこれは許されないということは認められておりますが、反面労働者が強制的に今言います厚生年金というものに、年金保險に入つているその金が国のために使われているわけです。労働者のためにこれが利用されておるというよりか、むしろ国全体のために、国庫のためにこれが利用されているときに、そういう事実があるときに、あなたの今の原則論では納得できないのだがその点は御意見はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/16
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017・園乾治
○証人(園乾治君) 私も同感でございます。厚生年金保險の積立金を、その保險料を支拂つた者に還元融資をするということは誠に結構なことだと思います。併しいろんな点でそれが実現せられないということを残念だと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/17
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018・原虎一
○原虎一君 質問の時間に証人の方々にお答え願うようにして了解を得ているかどうかと思いますが、私は相当な時間を願いたいと思つておりますし、なお証人をお呼びになつたことは、これは厚生委員会の御決定だと思いますが、健康保險は御承知のように事業主も半額負担しておりますし、どうもどうかと私は疑いますが、徴收率が非常に悪いということもこれは事業主を通して徴收しておるのでありますから、そういう点で事業主の証人をお呼びになるべきが至当ではないか。それが事業主は一人も証人にお呼びになつていない。又婦人労働者には非常に影響も多いのでありますが、婦人労働者のほうもお呼びになつていない。こういう点はどういうふうに委員長お考えで証人をお呼びになつたか、お聞きしたいところでありますが、このことは委員会の問題でありますから、証人がおられる席で御答弁を願おうとは思いません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/18
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019・山下義信
○委員長(山下義信君) 証人に対しての御質疑はございませんですか。御質疑がございませねば、証人のかたには御多忙中誠に有難うございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/19
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020・藤原道子
○藤原道子君 委員長、済みませんがちよつと……。社会保障制度審議会へ提案されたときですね、この問題の審議を市川さんにお伺いしますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/20
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021・園乾治
○証人(園乾治君) 社会保障制度審議会ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/21
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022・藤原道子
○藤原道子君 これは何日だつたと思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/22
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023・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) あれは十一月の二十日でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/23
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024・藤原道子
○藤原道子君 社会保險制度ではないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/24
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025・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) 社会保險審議会は十一月一日と十一月の六日です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/25
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026・藤原道子
○藤原道子君 どうも有難うございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/26
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027・赤松常子
○赤松常子君 私も実はこの問題につきましては、経営者側の意見も聞くべきだという考えを持つておりまして、この証人の御決定がきまりまする前後に、ちよつと非公式にではございましたけれども、厚生委員のお部屋に参りまして、私の意見だけを申しておつたのでございますが、そのときもうすでに証人の人選が決つたようで、甚だ私残念に思つた次第でございます。そこで私事業主の人々の御意見もちよつと参考に聞きたいのでございますが、それは社会保險審議会で先ほどの市川証人のお話の中に、これに関する反対が、期せずして労資の代表が反対したということでございますが、その場合の事業主の反対理由の主な点を、一、二わかつていらつしやるならば伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/27
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028・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) 私吉田ですが、これは十一月の一日の社会保險審議会の審議過程でありますが、これは実は朝から夕方までやりまして、非常に一日揉めたのであります。その場合にその委員は大体当座の急場は凌げるというのでありますが、先ほど私が言いましたように、第一の場合で大体六千万円、それから保險の料率を上げようということにつきまして大体四億円くらいの節約にしかならないというと、あとの二十数億の赤字が全部後になつて、二十六年度になるということは、決して根本的に危機を突破するという対策ではないという点に一応同調なさいまして、事業主全部とは言いませんが、約半分近くが我々と一緒になつて否決の方に廻つたということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/28
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029・赤松常子
○赤松常子君 ちよつともう一度……。その反対理由は僅かな金であるからという意味でございますか。それだけの理由にして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/29
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030・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) いや、そのほかに、やはり料率が非常に最高のように高いという負担の問題もありますし……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/30
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031・赤松常子
○赤松常子君 そういう点も、ちよつと事業主の反対理由というのをお聞きしたい。反対のほうにお廻りになつたという……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/31
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032・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) いや、そのほかにも一々いろいろと討論がありましたので、或いは当局のほうにもそういうメモがあるかと思いますので、私から全部というわけにはちよつと参りませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/32
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033・赤松常子
○赤松常子君 つまり料率が高いということは強くおつしやつていたのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/33
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034・吉田秀夫
○証人(吉田秀夫君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/34
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035・山下義信
○委員長(山下義信君) よろしゆうございますか……。それでは証人のかたには御苦労様でございました。
政府に対して御質疑のあるかたはどうか御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/35
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036・荒木正三郎
○荒木正三郎君 先程申しましたように、事業主並びに婦人の被保險者、これらの証言が我々聞きたいのでありますが、厚生委員会としてどういうふうに、委員長はどういうお考えで三人だけの証人をお喚びになつたか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/36
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037・山下義信
○委員長(山下義信君) 原委員にお答えいたします。かねて委員会の運営に関しますることでございますから、この際申上げて置きたいと思うのでございますが、厚生委員会におきましては、本案審議の委員会の運営につきまして、先ず委員長、理事並びに厚生委員会の持つておりまする小委員会の打合会を開催いたしまして、いろいろ御協議申上げました結果、労働委員会との連合委員会を開きますることを、証人の喚問のことを御協議いたしましたのでございますが、その際証人の喚問につきまして種々協議をいたしました結果、主として日傭者関係の方面の意見を聞くということに重点を置きまして、従いましてその方面に明るいかたの証人を喚問する、こういう方向に選考の方針を持つて参りましたのでございます。但し日傭者側のみの片寄りました一方的意見もどうかというので、最も中立的な立場で而も保險学には権威のある園教授を証人として出席して頂く、こういうふうに決定をいたしましたのでございます。且つ又委員会運営上審議の時間等も睨み合わせまして三名という証人の数にいたしました次第でございます。従いましてその節事業主の代表、或いは婦人労働者の代表の意見を求めるという点につきましては、更にそういう点に協議は触れるところがなかつた次第でございます。なお御指摘のことを申上げますれば、当然それらの方面の代表者の意見も聞くべきであるかと存じますが、証人の選考の大体の方針がそういうふうでございましたので、従いましてその議事運営の打合せは厚生委員会の全員の打合せで御承認を得まして本日の議事ということに相成りました次第でございます。大体これは厚生委員会の希望でございますが、連合委員会は本日午前中にとどめておきまして、午後はそれぞれの委員会に移りたい、こういう方針を厚生委員会としては希望をいたしておりました次第でございます。午前中と申しましても、すでに時間が若干経過いたしましたが、いろいろな事情で若干時間のずれますことも御了承を得た次第でございます。従いまして本日の議事進行につきましては、大体以上のような線に副いまして、開会の劈頭藤森委員から議事進行についての発言があつたのでございますが、但し連合委員会の議事につきましては又御提案がありますれば皆様方にお諮りいたしまして、会議によつて御決定を願わなければならんのでございますが、大体委員会の運営方針並びに証人の喚問の事情につきましては以上の通りでございます。お答えいたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/37
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038・原虎一
○原虎一君 御説明で或る程度はわかりましたが、今日中に、午前中にこの連合委員会を終らせたいという御希望はちよつと私腑に落ちないのであります。それから勿論主催が、付託された委員会は厚生委員会でありますから、厚生委員会の協議によつてそれぞれ運営をお考えになると思いますが、大体連合委員会の運営をおきめになる場合においては、連合に参加したところの委員長の意見を徴してきめられることと思います。この点はどうなんですか。厚生委員会の委員長、理事、並びに労働委員会の委員長も加わつて先ほど委員長の言われまするような運営の日程をおきめになつたのであるか、厚生委員会だけでおきめになつたのであるか。その点をお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/38
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039・山下義信
○委員長(山下義信君) お答えいたします。御指摘の通りでございまして、当然労働委員長とも事前に十分御了承を願うべき筋のものでございますが、これはそこまで至つておりません点は私の不行届きでございました。従いまして或いは本委員会の運営につきましては厚生委員会の一方的な希望的打合せになつております点も御指摘の通り十分ございますので、従いまして本連合委員会の議事運営につきましては、どうぞ本連合委員会で隔意なき御意見がございますれば、その御意見に従いましてお諮りいたしまして進めて参りたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/39
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040・原虎一
○原虎一君 十二時三十分ですから晝食を兼ねて一時間乃至一時間余りの休憩を願つて、そうして労働委員長も加えた厚生委員会の理事会を開いて頂いて、運営をして頂きたい。と申します。のは、その前に私はやはり事業主の証人並びに婦人の証人の然るべき意見を徴するようにお運びを願いたい。勿論明日で本会議を打切りたいという運営委員会の希望ではあるようでありますけれども、これは通常国会でありまして、明日打切らなければならんということはないはずだと考える。従つて事業主並びに婦人の証人も喚ばれるということになりますれば、一両日を要することと思いますが、これは然るべく運営委員会とも打合せを、労働、厚生から委員長が話されまして、そういう手続をとつて頂くようにお願いいたします。と申しますのは余りに健康保險の料率の引上げが行われて来まして、料率引上げだけでこの赤字を補填すればいいというやり方については、我々はもう納得できないのであります。この保險料の未收等についての原因がやはり保險料引上げへも影響して来るのであります。これはどういたしましても、ただ足らないから料率を上げるといつて、そうして補えばいいというやり方については納得できません。そういう点もありまして、十分に審議を願いたいと思いますので、どうか今日だけで連合委員会を、而も午前中で打切るという一方的な御決定は取消して頂いて、今申しますように再び両委員長と厚生委員会の理事諸君によつてお打合せを願う。この動議を出しまして、並びに休憩いたしたいというふうに願いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/40
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041・山下義信
○委員長(山下義信君) 只今原議員の動議に対して賛成のお声がございましたが、別に御異議ございませんですか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/41
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042・山下義信
○委員長(山下義信君) 御異議がありませんければ一時休憩いたします。
午後零時三十九分休憩
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午後二時五十二分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/42
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043・山下義信
○委員長(山下義信君) 休憩前に引続き会議を続行いたします。休憩前に原委員から議事進行につきまして御質疑なり又御希望の御意見も出ました。又動議といたしましては、賛成者もございまして成立している次第でございますが、いろいろ休憩間にお話合い等もございましたので、この際議事進行につきましての委員長に対しての御質疑等につきましてお答え申上げて置きたいと存じます。証人の喚問につきまして、更に新たなる証人の喚問の御要望もございましたわけでございますが、御事情なり又理由なり御尤もと存ずる次第でございますが、この点はこの際御希望に応じかねますので、御了承願いたいと存じます。尚連合委員会の議事につきましては、休憩前に引続いて午後も議事を続行することにいたまして、原委員の質疑を御続行願いたいと存じますので、さように御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/43
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044・小杉繁安
○小杉繁安君 原委員の質疑は一時間以内ということでお願いして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/44
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045・山下義信
○委員長(山下義信君) 只今小杉委員から、原委員の質疑の時間につきまして御意見が出たのでございますが、如何取計いましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/45
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046・原虎一
○原虎一君 どういう御事情か知りませんけれども、私の質問はできるだけ短くいたしたいと考えるのであります。併し政府当局の御答弁如何によりましては、やはり時間がかかると思います。でありますから、一時間なら一時間しか許さん、或いは私はそういう御決定をされても二十分で済むかも知れませんけれども、今の私の質問いたしたい点をあらかじめ時間を考えて見ますれば、一時間ではむずかしくないかという考えがするのであります。で、どういう御事情か知りませんが、明日の本会議で本法案を上程されることになりますれば、本日中に御決定願いたいと思うのであります。すでに厚生委員会においては一度討論されているのでありまして、そのほうの時間は殆どないのじやないかというふうに私は想像いたすのであります。従つて厚生委員会のいろいろな事情はありましたでありましようけれども、甚だ我々が納得できない点は、少くとも保險料率の引上という大きな問題が、公聽会もお開きにならないで進められて行く。これはやはり労働関係の委員が関係していないという点もあるのではないかという推察ができるわけであります、今日労働者がただ健康保險だけの掛金をかけているのでは御承知のようにありませんで、厚生年金も掛けておりますし、健康保險も掛けておりますれば失業保險も掛けている。これは所得税、勤労所得税並びに地方税を加えますれば莫大な掛金並びに税を納めているので、労働関係の意見を聽取して頂くということは当然ではないかと思います。勿論法案それ自体は簡單でありますから、結論は出ていると言われますればそうかも知れませんけれども、私どもの承わる範囲においては、私が今申しましたような観点から御審議が進められたかどうかという点について、甚だ納得いたしかねる点があるわけであります。そこで時間を制限されるという点につきましては、別に長い時間を質問いたそうとは思いません。併しながら一時間だけだというふうにきめられるということは、これは労働者関係にとりましては非常に重要な法案でありまして、それを僅か一時間以内に限定され、限定の下に質問しなければならんほど今日のこの法案審議の期限が迫つているとは納得できないのであります。でありますから、議員お互いが理解の下に審議して行くのでありますれば、大体明日以後に本会議を開かないという情勢であるということも議員自身お互いに了解のことである。だから理論的に申しますれば、十分審議をして十八日に又本会議を開かれることも、議員の職責を果すという建前から行けば当然ではないか、それを私はあえて主張いたすものではありません。併しながら一時間しか許さない、こういう御決定の下に質問するということは甚だ私は納得いたしかねるのであります。でありますから、そういう御意向の下にこの連合委員会が進められて行く、こういうことならば納得できますけれども、一つの動議をして私の質問時間を一時間以内に限定するという決定をなさるといたしますれば、私は私としての議員の職責を果す上において、然るべくできるだけの方法を考慮しなければならんということに相成ると思うのであります。この点は委員長十分お含みおきを願つて御進行願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/46
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047・山下義信
○委員長(山下義信君) 大体小杉委員はここの動議でお出しになつて、ここの決議として時間を制限しようという御意見で今出されたのじやないのでありまして、大体そういうような相談をしたと、こういう御発言であつたように思うのであります。従いまして別に決議で時間を制限するというようなことをしないで、なんといいますか、空気といいますか、そういうお話合のありましたことを御参考になされて御発言に相成つたらいいのではないかと思いますが、御異議ありますればどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/47
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048・藤森眞治
○藤森眞治君 私は今朝の厚生委員会の当初においても、先般来の小委員長並びに理事の打合せの内容を申上げ、そうしていずれも再確認をして頂いたわけであります。ところが今原委員のおつしやつておることは、成る程御尤もなる点もありますが、今朝の再確認と今の原議員の言つておられますこと等に関するこれの解釈の仕方は、委員長はどういうふうに御解釈なさるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/48
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049・山下義信
○委員長(山下義信君) お答え申上げます。午前の藤森委員の御発言は厚生委員会側のほうで大体議事運営の打合せのきまりました点を御発言になりまして、御確認を求められたように存じます。今原委員の議事進行につきましての御意見は、連合委員会におきまする、又今日の午前中の議事進行の実情とも相関連いたしまして、御意見が出たかと思いますので、従いまして両委員の議事進行につきましての御意見につきましては、全然無関係とは申されません、関係があることは事実でございます。従いましてその間に意見の食い違いがございますので、その調整等につきまして休憩中にいろいろ御配慮を煩わしたのでございますが、小林委員から大体一時間ぐらいでやつて頂くというような話合がついたというような御発言もありましたので、又原委員からは時間を制限されて、而もそれが委員会の決議のような形でされることは面白くない。非常に長い時間を使うというような考えも持つておらん。並びにそういう只今了解の線に副うたような発言を自分もしたいと思う。非常に角張つたような決議などで時間を制限してもらうということは立てもらいたくない。こういう御意見であつたので、若干の議事進行につきましての考え方に食い違いを生じて参りましたけれども、併し大体の御了解の下にお進み下されば、ほぼなんと申しますか、円満に議事が進むのではないか、かように私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/49
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050・藤森眞治
○藤森眞治君 今原委員のお話にも厚生委員会の御意向がこういうふうになつておるなれば、それも考えて言おう。併し今時間を制限するのでは納得しがたいというような御意思のように承われるのです。厚生委員会としてはすでにたびたび申上げるように打合会できめて、而も今朝冒頭に再確認をしてもらつておる。これで厚生委員会の意向というものは明確になつておると存じます。従つて原委員からの御発言も厚生委員会の考え方をお考え下さればすぐおわかりになると存じます。その点を委員長に伺つておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/50
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051・井上なつゑ
○井上なつゑ君 只今の原委員の問題に関していろいろ御意見が出ておりますのでございますが、先ほどもちよつと原委員とお話ししましたのでございます。で原委員もおつしやつておられますが、この質問に対して政府の答弁如何によりましては、決して御自分が初めに思つておられたように、二時間も三時間もかからずに、御答弁如何によつては三十分で済むかも知れないし、そういうふうに円満にやつて行くことを非常に嬉しく思うというようなお気持であつたように私見受けられましたのでございます。それで今日の席上に気持よくお出ましになつて下さいましたのでございますので、そのことも小杉委員もよく御承知のはずでございましたけれども、小杉委員もきつとそういうことをおつしやつて頂いたのだと私は了解しておりましたのでございますけれども、原委員はそういうようにおとりになつたと思いますけれども、私はきつと原委員のお気持もこうしたことにあると信じておりますので、どうぞ議事の進行をなさつて頂くように希望いたしておきます。(「進行」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/51
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052・山下義信
○委員長(山下義信君) 別段一時間と限つてここで決議をして時間を制限するというようなことの意味ではないのであつて、大体今井上さんの言われましたようなふうにして、議事進行をいたしましてよろしうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/52
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053・山下義信
○委員長(山下義信君) それでは原委員御発言下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/53
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054・原虎一
○原虎一君 政府に対する質問をいたします前に、もう一つ明確にしておきたい点は、先ほど私が希望を申上げました公聽会を開く代りに証人の御出席を求めて証言を得たのでありますが、事業主団体の代表とか、或いは事業主の証人並びに婦人の証人の出席を是非私希望いたしましたのでございますが、それは厚生委員会における御協議の結果この際はそれをしないとされますところの理由について御明確に願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/54
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055・山下義信
○委員長(山下義信君) お答えいたします。先刻お答えを申上げた中にもあつたかと思いますが、正式に厚生委員会を開きまして、証人喚問の議を新たに付議したわけではないのでございま主が、厚生委員会の打合会といいますか、懇談会といいますか、大体皆様がたの御意向を伺いまして、この際は議事の進行上御要望に応じがたいというふうに決定をいたしましたので、正式に採決をいたし、正式の委員会を開会いたしたわけではないのでございますが、大体厚生委員会の意向がさようでございますので、一応そのことを申上げたのでございます。理由といたしましては只今申上げましたように議事の進行上というのが理由でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/55
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056・原虎一
○原虎一君 議事の進行上といいますけれどもこれは抽象的であります。例えば具体的に言いますれば、審議する証人を喚んで公述を聞く時間に日時がない、これも一つの議事の都合であります。それからその必要がないという御意見であるのかどうか、この点を明かに願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/56
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057・山下義信
○委員長(山下義信君) お答えいたします。全然必要はないという意見は出なかつたのでございます。併しながら只今申上げましたように、議事の進行上この際新らしい証人を喚問するということは応じがたい、こういう御意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/57
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058・原虎一
○原虎一君 それでは法案について政府に質問いたします。
第一に私はお伺いしたい点は、二十四年度におきまするところの保險料金の未收額、それから徴收不能額、先ずこれをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/58
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059・友納武人
○説明員(友納武人君) 二十四年度の末におきまして、いわゆる保險料滯納額と申しまするのが十四億四千八百万円余でございます。なお徴收不能額という御質問でございますが、これは現在のところ不納欠損にいたしました額というものは極く僅かになつております。計数で現わしておりませんが、まだこの欠損即ち絶対に取れないものというふうにいたしました額は極く僅かでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/59
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060・原虎一
○原虎一君 そうしますと、年度末はこれだけ十四億四千八百万円の未收額がある。これに対して四月から後におきまして今日までどれだけ徴收されましたか、それをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/60
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061・友納武人
○説明員(友納武人君) 只今の御質問は、この十四億何千万円と申上げました二十四年度の滯納額そのものが現在においてどれだけ取れておるのかという御質問かも知れませんが、その数字は出ておりませんが、と申しまするのは、二十五年度に入りますと、新たに保險料の告知書を切りますので、それと一緒の数字しか出ておりませんが、現在のところの例えば十月末におきまする滯納額というものを申上げますると、約三十億になつております。併しながら勿論昨年度滯納になつておりまする十四億というものは殆んど取りまして、新たに二十五年度の四月に入つてから告知書を切りました分が滯納になつておる、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/61
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062・原虎一
○原虎一君 そうすると今の御説明のように仮に二十四年度末に十四億四千八百万円約十五億ですが、それが二十五年度四月以降において徴收したといたしますと、二十五年四月から十月の間に三十億円の滯納を生じたことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/62
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063・友納武人
○説明員(友納武人君) 只今申上げた通りでございまして、二十四年度におきまする滯納額の十四億というものは解消いたしましたけれども、二十五年度における新たに納入告知書に対する滯納がそういうふうになつておるという意味でございます。この数字は多少附加えて申上げますと、毎年年度の初めには徴收率が悪いのでございまして、例えば二十四年度の例をとりましても、五月、大月、七月というようなところはおのおの三割、四割、五割というような数字になつております。以下月を経るに従いまして徴收率というのは上つて参るのでございます。大体年度末におきまして過去におきまする分を含めて納入命令を出しました額に対して九割相当額ぐらいが入つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/63
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064・原虎一
○原虎一君 この滯納が如何なる事情かは知りませんが、増加して来ておるわけであります。恐らく年度末においても二十四年度の末以上の滯納になることは想像に難くないわけであります。ところが御承知のようにこれは源泉的な手続を以て労働者が納めておる。自己の給料から事業主が引いてそうして納めておるのであります。その滯納というものは事業主が滯納しておるわけです。これらに対して絶えずかくのごとき未納があるということに対して、滯納をなくするためにどういう処置をとられたか。労働者から取上げておりながら、事業主側は納めない。この事実に対して如何なる措置を講ぜられておるか、この点を明らかに順いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/64
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065・安田巖
○政府委員(安田巖君) ちよつと私から補足的に申上げたいと思いますが、昨年も年度末におきまして大体九割の徴收をしておる。そこで今年特に殖えたというわけではございませんで、勿論この保險料の絶対額におきましては昨年より大きいのでありますから、絶対額は若干滯納額は殖えておりますけれども、これらの收納の率といたしましては大体去年の線を追つておるのであります。そこで本年も四月の末日になりましたならば九割取れるだろうという想像をいたしております。御承知かと思いますが、保險料は三月分のものを四月一ぱいに取り、二月分のものを三月一ぱいに取るというふうに一月遅れになつておりますので、技術的に見ましても年度の更新のときには全部を取り切るということは多少無理な点もありまして、そういう意味で毎年滯納額というものを取り切らないでそのまま繰越して行く、こういう操作をいたしておるのであります。
それから滯納が多いことは申訳ないのでありまして、大体今昨年度ぐらいの徴收率に落着いておるわけでありますけれども、これに対しまして私ども社会保險の執行機関といたしましては各府県に保險課がございます。なお又保險課のほかに社会保險課の出張所というものを持つております。それらを督励いたしまして、どしどし督促もしますし、差押えもし、公売もするような処置をとつておるのであります。なお事業主のほうがなかなか金繰り等で支拂が困難な事情がありまして、そういうふうに保險料の拂込が遅れておりますけれども、勿論仰せのように現在の規則といたしましては労働者の分と、それから事業主の分を半々を事業主から納入するということになつております。併しいろいろ実情を見て見ますると、事業主が悪意でそういうふうに遅らされておるものもあるかも知れません。そういう場合には私ども告発いたしておりまするけれども、この前も実はお話したのでありますけれども、実際上遅配等になりますために保險料に廻すべきものをすでに給料の中に入れて拂つておるというのが相当あるのであります。つまり保險料に拂うべきものを給料に入れておるというような事情がたくさんあるのであります。それらの事情を勘案いたしましていろいろと徴收に努力いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/65
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066・原虎一
○原虎一君 次に厚生年金経済の実情についてお伺いしたいと思います。厚生年金の今日余剰といいますか、保險料金の総額が幾らになるか。でその預金をどう利用しておるか。この点についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/66
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067・安田巖
○政府委員(安田巖君) 厚生年金の保險料率は大体千分の三十になつておりまして、年に百十億、まあ月に大体十億くらいが入つて来ると睨んでおりますが、御質問の趣意は、積立金がどうなつているかという点が御趣意かと思いますので、そのことに触れさせて頂きます。現在この保險料で入つて来ましたものは、預金部のほうに入れることになつております。預金部のなかに入れましたところの積立金が、十月三十一日現在で二百八十一億になつております。大体現在でありますと、二百九十億くらいになつておると思いますが、こういう次第であります。この使い方でございますが、御承知のように厚生年金保險の現在の制度は積立金様式をとつております。完全に積立金式でございまして、いわゆる生命保險のほうがよくやつておりますように、保險数理で申しますと、積立金式と申しておりますが、どの時代の人も大体同じような保險料を負担するというような考え方で行つておるわけであります。従いましてこの積立金は結局保險の給付が始まりましたときに、現在の大体の保險料でだんだん進んで行きまして、そうしてこの保險の積立金の運用によりまして給付を完全にやつて行きたいと、こういう制度の下にできておるわけであります。最初預金部に預けるということに法律できまつておりますのは、大体その運用はまあ確実でないと先ず第一いけませんから、確実で、有利にして行きたいというようなことで、現在におきましては法律上預金部のほうへ積立てるごとになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/67
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068・原虎一
○原虎一君 午前の証人、殊に園証人が言つておりますように、健康保險の赤字というものを国庫補助によつて埋めるということは、一部労働階級のために、一部労働者のために国庫補助をするということは、原則的にこれは感心しないという意見がありました。併しながら労働者がやはり相当の額を将来のために厚生年金として積む。この積立金が二百八十一億円に達しておるわけです。これが預金部は預金部の規定に基いて使用しているわけでありますが、若しこれがですね。保險経済全体の枠のうちに置いて操作ができるならば、一時的な健康保險の赤字を直ちに税金の引上げによらなくても、操作の工合によりましてはなし得る。而もそれは同じ被保險者であるわけであります。こういう点について一体厚生大臣はどういう観点に立たれておるのか。大蔵省当局との間における折衝、又厚生大臣自身は一体どういうお考えであるか。この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/68
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069・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 厚生年金の積立金を厚生行政の面に利用してはどうかという御質問であると思います。その点につきましては十分いろいろな方面から検討いたしましたが、関係方面で絶対に許可がございません。ただ来年度は積立金に対しての利子が少し上りますので、それによつての利子は厚生行政に使いたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/69
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070・原虎一
○原虎一君 これはまあ関係方面が了解しないと言えばそれまでですね。それなら然らば私はお伺いしたい。大蔵大臣はどういうふうに了解されて、大蔵大臣も厚生大臣も同一な意見を以て関係方面に当られたかどうかをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/70
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071・安田巖
○政府委員(安田巖君) 私から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/71
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072・山下義信
○委員長(山下義信君) 保險局長の答弁でよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/72
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073・原虎一
○原虎一君 いや、事務当局の答弁では困ります。大臣の答弁を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/73
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074・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 大蔵当局もその通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/74
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075・原虎一
○原虎一君 厚生大臣から大蔵当局も同様な意見であると言いますが、至急に大蔵大臣の出席を要求いたしまして、大蔵大臣の言明を得たいと思いますから、さようお取計いを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/75
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076・山下義信
○委員長(山下義信君) そのように取計います。原委員に伺いますが、大蔵大臣差支えのときは政務次官でよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/76
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077・原虎一
○原虎一君 やはり政治的な問題で事務的な問題でありませんから、できるだけ大臣に、でなければ次官にお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/77
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078・山下義信
○委員長(山下義信君) 原委員にちよつと申上げますが、只今の問題で保險局長が何か補足的な説明をしたいということでありますから、発言を許します。保險局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/78
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079・安田巖
○政府委員(安田巖君) 只今お話になりました厚生年金の積立金の運用につきまして問題が二つあると思うのでありますが、最初お話になりましたのは、厚生年金の積立金を健康保險のほうに廻すことはできないかという点が一つでございます。もう一つは大臣もお答えになり、又原委員もお尋ねになつたことでございますけれども、年金を福祉施設のほうに廻すことができるかどうかという二つの問題かと思います。
最初の第一点につきましては、総合保險といたしまして、厚生年金なり、健康保險なり或いは失業保險でありますとかというものを合同にいたしまして、その資金を運用するというやり方もあると思うのであります。併しその場合でも考えられますことは、現在のように積立金式をとつております場合には、その積立金が最も有効確実に使われることが、これは被保險者の利益であり、そうして又それを一時流用いたしましても、すぐに補填をするという見込がないときにそれを流用いたしますということ、これは被保險者の利益に反することでございますので、その場合に一時流用が仮に許されたといたしましても、それを補填するところの見込みが立つということが必要でございます。例えて申しますと、先ほどから申しますように、年度内に保險料の徴收が一時遅れる。併しながら年度末にいけば九割までいく。その間のやりくりをするために一時それを使うということならば、制度をそういうふうに設けますならばこれも許されるのじやないか、そういう点につきましては、実は厚生年金の積立金を使わないで、現在では国庫余裕金の振替使用ということをやつておりまして、これは当初大臣の提案理由の説明の中にもありましたが、三十億ばかり充てまして、これは無利子でありますが、それを今の徴收成績が上がらないので一時の間に合わせに借りて運用いたしておる次第であります。
それから第二の福祉施設に使う問題でありますが、実はこれは昭和十七年に厚生年金保險制度ができましたときに大蔵省といろいろ協定ができまして、積立金の一部を被保險者の福祉に還元して融資しようじやないかという協定がございました。勿論先ほどから申しますように、積立金は将来給付が始まりました場合に少しでもそれが減つちやいけない。又予定利率を下廻るような運用をしてもいけないから、この場合もそういつたことを考えまして、一部分を運用して還元融資をするという約束であります。これを事業主のほうへ融通するとか、或いは団体に融通いたしましていろいろ福祉施設に使つた例があります。終戰後これをやろうということになつたのでありますけれども、御承知のように預金部資金の運用につきまして覚書が出ております。先ほど大臣がおつしやいました問題はその点でございまして、私どもといたしましては、事務的には大体現在の預金部資金の積立金のうちから二十億ばかりを還元融資してもらうということに話はついておつたのであります。その点につきましては大蔵当局の御賛成を頂きまして預金部資金の運用委員会等にもそのことを諮つたことがあります。そういう問題と二つでございますので、先ほどの大臣のお答えにつきましてちよつと補足させて頂きましたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/79
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080・原虎一
○原虎一君 大蔵大臣が見えるまで他のことをお伺いしたいと思います。
今度の法律改正に基きまして、いわゆる六ケ月以上の一定の療養者、六ケ月以上に亘りまして療養を受ける者が何人ありましたか。二十三年度及び二十四年度ならば統計があるわけですね。それとその疾病の種類別がありますればそれを御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/80
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081・安田巖
○政府委員(安田巖君) 只今の御質問でございますが、六ケ月以上給付を受けるということでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/81
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082・原虎一
○原虎一君 給付を受け療養も受けておりますね。いわゆる療養を受ける者でないと給付を受けるということはないのでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/82
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083・安田巖
○政府委員(安田巖君) 六ケ月以上は受けられるわけですね、現在の建前が………発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/83
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084・原虎一
○原虎一君 もう一度。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/84
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085・安田巖
○政府委員(安田巖君) 先ほどの御質問の趣旨を間違えておりましたら恐縮ですが、御質問は六ケ月以上給付を受ける者の数と、それから疾病別を調べてくれ、こういうお話でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/85
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086・原虎一
○原虎一君 勿論給付を受けるけれども療養も受けるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/86
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087・安田巖
○政府委員(安田巖君) 甚だ言葉を返して恐れ入りますが、療養の給付という意味で、つまり病気になりまして、お医者さんにかかつて療養するのを私ども給付と申しておりますが、結局御質問は六ケ月以上病気になつて、保險の厄介になつておる者は何人おるかということでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/87
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088・原虎一
○原虎一君 それでよろしいのです。專門語で、給付を受ける者で総括されておるわけですからそれでよろしいのです。六ケ月以上に亘つて給付を受ける者の人数、これは二十三年、二十四年、そうしてその疾病の種類がわかつておりますれば知りたい。と申しますのは、こう長くかかる人は恐らく結核病患者が多いのではないか。結核病患者が多いということは、これは健康保險のみならず、国の結核療養という点と併せて考えなければならん。従つて、これは病気の種類をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/88
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089・友納武人
○説明員(友納武人君) 只今の御質問の確定数字をここに持つて来ておりませんが、大体この数字は過去から現在を通じまして同じような数字になつているのでございまして、大体の疾病と申しますのは六ケ月以内で癒つているのでございます。今正確に覚えておりませんが、たしか全疾病の八割五分ぐらいは六ケ月以内で治癒している、若しくは死亡すると申しますか、転機を取つているわけであります。それ以上になつているのは残りの一割ちよつとの者でございまして、それは原委員のおつしやつた通りに結核性疾病若しくは中毒性の患者と申しますか、そういつた者、或いはトラホームというものが多いわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/89
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090・原虎一
○原虎一君 この点は非常に法の改正の要点であります。従つておよその見当の御答弁でありますが、正確なものはないのでありますか。その調査統計というものが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/90
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091・安田巖
○政府委員(安田巖君) 今そういう資料を持ち合せておりませんけれども、この法律の改正の要点は六ケ月以上給付をいたしますものを切るというのではないのでございまして、その点は従来と変りはないわけであります。たた継続給付と申しまして、雇われておりますときに病気になつて、そうしてやめますが、やめますというと被保險者の資格がなくなりますので、保險の関係がなくなるわけでございます。なくなりましてもあと給付を受けることができるというのが今度の五十五條の規定の要点なんでございます。そのときに今度の改正は、ずつと今まで勤めておりました者がやめて、それに対してやめても、保險料も拂わないわけでございます……そういう人は保險料を取らないで給付を見てやるという制度が、あるわけでありますが、その中で勤めてからまだ六ケ月たたないうちに直ぐやめてしまう、病気になつてやめてしまうという人にはその継続給付を打切ると、こういう趣旨でございますので、若しもその点でお許し願えますならば、只今の資料を又別の機会に差上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/91
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092・原虎一
○原虎一君 今私が質問をしております点は、序の口であつて、いわゆる今政府委員が説明されたように一体今まで一ケ月の保險料をかけた者が解雇になつて、或いは退職して、そうして一ケ年の給付を受けた、こういう者の統計が必要なんです。それをやめるとこういうのですか。その統計を御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/92
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093・友納武人
○説明員(友納武人君) 御質問を取り違えておりまして失礼いたしましたが、只今おつしやつたような意味でもう一遍繰り返して申上げますが、被保險者であつた期間が六月以内であつて資格喪失後も給付を受ける者、それから被保險者であつた期間が六ケ月以上であつて、資格喪失後の給付を受ける者、言い換えますれば前に申上げたほうが今度の改正で落ちるわけでございますが、その数字をお知りになりたいというこういう御質問でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/93
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094・原虎一
○原虎一君 そういう質問です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/94
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095・友納武人
○説明員(友納武人君) その数字は勿論出ておりまして、厚生委員会でも申上げたのでございますが、総数二万八千人おりまして、そのうちで被保險者であつた期間が六ケ月未満の者が、その二万八千人のうちで約五千人おるわけでございます。従いまして六ケ月以上被保險者であつて資格喪失後の給付を受ける者が二万三千人になりますか、そういう数字になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/95
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096・原虎一
○原虎一君 これはいつのでありますか。それから五千人の給付の総額。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/96
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097・友納武人
○説明員(友納武人君) この数字はこの法律改正をするためにとりましたので、極く最近の数字でございます。
それから給付の額でございますが、これはちよつと面倒なんでございますが、資料に差上げて置いたのでございますが、一年間でこの資格喪失後の給付に当るものが十二億八千四百万円あるのでございます。そのうちで傷病手当金と申しまして、御存じの通りに療養の給付と傷病手当金になつておるんでございますか、傷病手当金の給付が八億一千万円、療養の給付が四億七千万円、合計いたしまして只今申上げました数字になるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/97
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098・原虎一
○原虎一君 今の、傷病八億一千万円と療養四億七千万円、両方で十二億何千万円かになる。そのうちの幾らが……、それは六ケ月以内のものの全部ですか。六ケ月以内のものが総計十六億円使つておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/98
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099・安田巖
○政府委員(安田巖君) ちよつと申上げますが、一ケ年間に継続給付を受けておりますものが十二億八千万円で、そのうちで今度の法律改正の給付の対象になつておりますものが二億四千万円、六ケ月以上勤務しているのが十億四千万円、六ケ月以上勤務しているものと六ケ月未満のものが給付を受ける比率は四対一であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/99
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100・原虎一
○原虎一君 この二億四千万円という赤字を埋めるために、二億四千万円というものをこの方面で埋める。こういうお考えのようですが、ここにその赤字補填の財源を見付けなければならんところの理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/100
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101・安田巖
○政府委員(安田巖君) この措置をとりましたのは、赤字補填だけの理由ではないのでありますけれども、こういうふうに保險経済が窮屈になりましたということも一つの理由であるということには間違いはないと思います。今の給付を行つておりますうちで一番附加給付的なものはいわゆる継続給付でありまして、結局本人がやめましてそうしてその保險料は全然拂わない。従いましてあとの現に勤めております者の保險料で賄つておる。而も六ケ月以内で以てやめる者が先ほど申しましたように四分の一以上ある。それが非常に保險料の負担の公平という点から考えますというと相当問題があるのではまいかと思います。なお又いろいろ従来の取扱いの実際等を見てみますと、六ケ月以内というのは、本当に入つて来てすぐやめて、あとは保險料なしで治療を二年間受けるというような傾向の人もあるわけであります。これは今申しましたような数字の割合から見ましても、不当に高くなつているという点でお気付きかと思いますが、そういうような点も彼此勘案いたしまして、この点が一番妥当じやないかというようなことで出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/101
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102・原虎一
○原虎一君 これを仮に六ケ月というやつを三ケ月にした場合には、推定してどういう数字が出て来るのですか、この点おやりになつていないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/102
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103・友納武人
○説明員(友納武人君) 調査がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/103
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104・原虎一
○原虎一君 これはこういうことになると思いますので、次官にも私はお願いして置いたのですが……。仮にこれを六ケ月というものを四ケ月にしてみたい。それは数学的にどういうふうになるかということを当局が仮定の下にやつておりますと、問題は早くわかる。今聞いても当局が持つていない。そうすると我々は我々議員の力によつてこれから調べて判断をしなければならない。仮に三ケ月にした場合においては二億四千万円の出費を防ぐために六カ月にするが、これを四ケ月にした場合においては二億円の出費を防げるのか、一億八千万円の出費を防げるのか、これは我々議員が法の改正にあたりまして一つの考えをまとめるためには重要な問題であります。遺憾ながら三ケ月或いは四ケ月において、どういう出費を防ぎ得るかというものを持つておられない……。甚だ残念でありますが、次に移ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/104
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105・安田巖
○政府委員(安田巖君) 三ケ月の場合はこれは大体推定でございますけれども、現在やはり入つて暫くしてすぐやめて給付を続けて受けるという人が相当ございますので、三ケ月ぐらいなら私の推定としては大体半分ぐらいだろうというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/105
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106・原虎一
○原虎一君 半分といたしますと、仮に一億二千万円というものが、何か考えられますれば、これを三ケ月にしてもできるというわけですね。数字上から……。
それからもう一つは、保險経済の上からのみ考えまして、何か健康保險の給付を受けたいから入つて来るのだというて、一、二ケ月保險金を納めればそれで資格を有するからすぐやめて行くという、そういう即ち保險詐欺的な行為の者が多くあるとお考えになることは、私はそういう者はないとは断言いたしませんけれども、そういうお考えを持たれることは甚だどうかと思うのであります。そういう見解の下になされて、経済的の問題は第二義的にお考えだとすれば、私はむしろそういう保險詐欺的行為をするという者に対する当局は処置を講じられなければならん。そういう事実がどの程度あるのか。ただ推定をもつてやられているということになれば、これは見解の、意見の相違になつてしまう。従つてやはり二億四千万円というものの出費を防止したいというだけならば、これを先ほど申しまするように三ケ月にすれば一億二千万円の余計の出費を防ぐだけにあるけれども、即ち政府当局で考えているのは半額になるけれども、私は今日の状態から申しますというと、今までの経済界の情勢から申しますれば、産業によりましては勿論特需関係の工場におきましては、相当に人員を擁している。又絹の方面になりますれば、相当に人を雇いつある。従つて私はそういう問題は比較的少くなつている。丁度職後のインフレで、それから昨年の夏からかけて暮の事業整理時代においては、そういうものがあつたかも知れない。従つてここに私は余りに重点が置かれるということはどうかと思うのです。先ほどの御説明では、僅かの金であるにもかかわらず、ここに、これは保險精神に反する詐欺的行為のものが殖えているというお考えでございますか、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/106
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107・安田巖
○政府委員(安田巖君) 先ほど申しましたように、経済的の見地だけではないのでありますが、併し同時に又こういうふうに保險経済がだんだんと苦しくなりまして、掛金をかけており、現にまだ資格の続いております被保險者に対する給付すら窮屈になつて来たという現状に対しましては、この程度の附加給付的なものを切るのは止むを得んじやないかということを申上げたつもりでございます。なおまあ詐欺的なものは少いというふうなお見込みもございますし、或いは多いというふうな見解もあるかと思うのでありますが、大体この六ケ月以上のものと六ケ月以下のものの比率を見ますというと、これは普通じやないというような、私ども気持もいたしますし、又遺憾ながらそういつたような実例もありますことを遺憾に存ずる次第でございます。
なおこういうふうな六ケ月の期間の制限規定を置きますことは以前にもございましたし、それから現に厚生年金等におきまして、業務上の災害に対する年金の支給が六ケ月という制限期間を設けております。そういうふうなことも考え合せまして、大体六ケ月が至当じやないだろうかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/107
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108・原虎一
○原虎一君 これは政府当局も苦しまぎれにそう言われるのであつて、六ケ月にすれば詐欺的のものも六ケ月間防げるという、推定的なものでありますが、これを仮に四ケ月にした。そうするとやはり政府の考えられる程度のことは達せられるのです。そうして気持の上から申しましても、今まででは一回かけた者でも一ケ月の者でも資格を有する。これを半年にしたというよりか、むしろ三ケ月、四ケ月というふうにすることはこれは被保險者の立場から見ますれば、非常に感じのいいことなんです。それで政府は僅かの金であります。一億円か、一億円足らずのものの出費を防ぐ、ここに私はやはり事務当局の考え方と我々政治家なり労働者の立場で考えるときの違いなんです。この点は私は厚生大臣に十分お考えを願いたいと思います。数字の上から申しますれば、僅かの一億円足らずのものを防ぐために半年にしなければならない。一億円の損失を考えることによつて三ケ月くらいにして国民、被保險者に與える刺激を少くするということは、これは政府側の任務だと考えております。経済上どうしても保險経済上成り立たんというのならばまだしもでありますけれども、これは十分にお考えを願いたいと思います。従つて私は意見を申しますならば、今までの政府当局の御説明程度では、六ケ月ではひどい。どうか厚生委員会におかれましてはこれをせめて四ケ月、できれば三ケ月に下げることが妥当だと、この点の見解に対して厚生大臣にどういうお考えをお持ちであるか、御所見をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/108
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109・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 六ケ月の制限を設けましたのは、先ほど来言われた詐欺的とか、そういうことではないのでありまして、そういう人も中にはあると思います。併し大体相互扶助の考えがまだ不十分でありますし、その精神の涵養が私は適当であろうと考えて六ケ月にしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/109
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110・原虎一
○原虎一君 そこがいわゆるあなたが事業家、或いは政党的に言わせれば、自由党、社会党の違いでありますが、これは党の違いとか、階級の違いと申上げるよりはこれは政府はいつもそうだと思うのであります。成るほど一つの法律に行過ぎがあつた、それをあとに戻さなければならん。これは数字の上から困るということにならばこれは別であります。数字を見れば僅か一億円か二億円の違いであります。一旦いいと思つてやつたが、それはいけない。それを極度にぎゆつと戻すということは私は政治家として考えなければならん。そろばんの上で絶対のものは数字は僞わりませんから、これはそろばんの上のものではし方おりませんけれども、そうでないものをあなたが言われるように、六ケ月が妥当だと考えられる。これは私はこの点については労働者の立場にあるから私は主張するというふうにおとりになるかも知らんが、やはり国の政治はそれがなければ動に対する反動が来るのであります。これは私は余計なことになりますから申上げませんが、急激なるものを取締る取締ると言われまして、これに一生懸命になつておりますと却つて反動が来ると同じことだと考えます。
それから医療單価の、長いところは時間もありませんので申しませんが、二十三年、二十四年、二十五年度におきまして医療單価の変動があつたと思いますが、この医療單価の変動表がありましたらお示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/110
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111・安田巖
○政府委員(安田巖君) 医療の單価は、御承知のように、点数單価主義でやつておりまして、たしか二十三年の八月でございましたが、一点九円できめておりまして、それから三ケ月ばかり後に十月でございましたか、これを十円に引上げまして、その場合も甲地と申しまして、東京とか大阪とかいうような特殊なところは一円高ございまして十一円、それが現在までずつと引続いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/111
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112・原虎一
○原虎一君 そういたしますと医療單価の引上げは二十三年から今日まで、九円を十円に引上げ一回だけだ、こういうことになりますか。それからそれは給付増、この給付増加の資料は出されておりましたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/112
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113・安田巖
○政府委員(安田巖君) ここで申上げます……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/113
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114・原虎一
○原虎一君 大体パーセントで出ておりますれば言つて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/114
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115・安田巖
○政府委員(安田巖君) 総額でございましようか。いわゆる医者にかかる率が上つたとか、そういう総額でよろしうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/115
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116・原虎一
○原虎一君 そうですね。医者にかかる率が殖えた、そのカーブが出ておればいいのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/116
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117・友納武人
○説明員(友納武人君) 受診率は昨年度即ち二十四年度におきまして、例えば被保險者の一般、歯科というふうに分けて申上げますが、被保險者の歯科を除いた一般の診療につきましては年に二回づつ平均かかるというようなことになつておりまして、我々受診率を二というふうに呼んでおります。その数字が本年になりますると二・四というような数字になつております。それから歯科につきましては昨年度は〇・四七、約〇・五でございますが、結局まあ一年間に〇・五回づつ各自が平均かかるどいうのが、本年度になりますと〇・六、それから家族の診療につきましては、同じく歯科を除いた一般につきまして一・六、それから歯科が〇・一七、それが本年度になりますると一・六、〇・二四、こういうふうに増加しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/117
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118・原虎一
○原虎一君 これは被保險者一人が診療を受ける率なんでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/118
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119・友納武人
○説明員(友納武人君) 平均でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/119
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120・原虎一
○原虎一君 平均になつておる……。小杉さんの御希望の時間にひつかかつておる。先ほど申しました点ですが甚だ私は遺憾でありますが、大蔵大臣は二時半から司令部へ呼ばれて行くので来られない。次官が目下連絡中で、これはまあ来られません。来ましたか。おいでにならないでしよう。
それから今申しますように、これは理論的な問題もありますが、ただそろばん上合わないから料率を引上げるのだというようなやり方は考えるべきである。殊になぜ考えるかと言いますれば、来年度、或いは再来年度においては折角御審議になつた社会保障制度が実施されて行く。まあ社会保障制度に対する信頼、或いは便宜感というものを国民に強めて行かなければならんと思います。そういうときに他の融通によつて保險の料率を、なにも国庫から見れば僅かの金です。而も先ほど言いましたように、非常に被保險者の心理を刺激するようなやり方は、これは国のために私はいいやり方じやない、こういう考えを持たざるを得ないのであります。もつと時間を頂いて、今申しますような保險経済は抽象論ではよくないのでありますから、やはり数字に基くと同時にこれが社会保障制度に移る前におけるところの健康保險の改悪をどう防ぐかということは與党、野党を問わずこれは私は真剣に考えるべきだと思います。従つてもつと私は数字に基いて検討を加えて行きたいと思いますけれども、甚だ厚生委員会とは意見を異にいたしまして、非常にお急ぎになつて明日本会議にかけてしまわなければ、暮の忙しいのにこんな小さい法案を審議しているのは議院としても芳しくないように思われるのじやないかというような御意向もあるようにも承りますので、私は何かお邪魔をいたしたのでは申訳ない、大体甚だ遺憾であります。十分な審議の時間を頂けないことは甚だ遺憾でありますけれども、大体要を得たかと思います。ただ最後にお伺いして置きたいことは、二十八億何千万円かの赤字を、この法案による料率引上げ、保險料率引上げ並びにその診療期間の短縮といいますか、資格保持期間の短縮といいますか、そういうことによつて、どういう見込であるか、これを一応お伺いして置きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/120
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121・安田巖
○政府委員(安田巖君) 二十八億の赤字と申しますのは先ほどから申上げましたように純粋の赤字といたしましては十一億ばかりでございまして、あとは保險料の徴收ズレでございます。従いましてこの四月の末に支拂います場合には、それが支障にはなりますけれども、これは翌年に追い送つて参りますというと又これを翌年徴收するという恰好になりますので、その点はまだ何とかなるのじやないかという気がいたします。そういたしますと結局純粋な赤字は十一億ばかりから三億五千万円を引きました大体八億ぐらいが純粋な赤字になるわけであります。この八億の純粋の赤字は千分の六十で、来年度の保險料の收入を計算いたしますと来年度におきましてはマイナスを取返しまして一ぱい一ぱいになる。こういう計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/121
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122・原虎一
○原虎一君 来年度で取返すための、それでは千分の大十になるわけですか。例えば現在八億の赤字であるのをなし崩しに二、三年間でやりますならば、何も料率をそれほど引上げんでもやつて行ける。この点はどういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/122
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123・山下義信
○委員長(山下義信君) 私ちよつと関連して伺いたいのですが、政府の提案理由には、今の純粋八億円赤字ということを言つていないのですが、二十八億の赤字ということが大臣の提案理由になつておりますが、提案理由を変更しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/123
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124・友納武人
○説明員(友納武人君) この赤字という言葉の使い方でございますが、私はその内容を分析いたしまして只今のように申上げたのでございまして、委員会に初め提出いたしましたところの資料を御覧になりますとその点ははつきりいたしておるわけでございまして決して間違つていないと思います。それから今の八億、つまり十一億くらいの赤字が八億くらいになつて来るわけでありますが、赤字がちよつとでもありますと二十八億ということを申しました考え方にも入つておりますけれども、実は非常に徴收との関係で運用が窮屈なんでございます。併し少くとも保險料率にきめまする場合には、滯納があるかちといつてその滯納分が入らないというものまでを、保險料率を引き上げる計算の基礎にすることは、これは私ども不適当ではないかと思いますので、その滯納分は一応とにかく翌年に引き継ぐ、こういう計算にいたしますと八億くらいの赤字になる。併し八億も赤字になるということは好ましくないのでありまして、できれば本当は本年度内にそれをなくして行くことが保險の運営のためから言いますと非常にいいわけでありますが、それでは一遍に保險料率自高く上げるということも好ましくありませんので、何とか一つ来年の初めにおきましては再び又国の資金かたんかを借りて来まして繰替をお願いいたしまして、辻褄を合せながら来年度の終り頃にはその料率で以て理論的にやつて行きたい、こういう計算でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/124
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125・原虎一
○原虎一君 結局御説明を承わると、八億くらいの赤字を料率改訂して埋めるということでありまして、それは今現に三十億からの徴收夫收がある。昨年の年度末を見ましても十五億円の未牧があるので、本年度末にも十億円の未收が、去年と同じならばそれくらいになる。そういう点においての健康保險経済の運営が困難であるからこんどこれを改正されるようなお考えらしい。そこで問題はやはり私は同じ保險をかけておれば、厚生年金をかけているものと健康保險をかけているものとは違わない。多少の違いはありましても違わない。その保險経済の上において融通ができますならば資金の問題であります。先ほど政府当局は勿論回收見込のあるものでなければ年金の金は使うことはできないということでありますが、これは年金の金を今どういうふうに預金部が融資しておりますか、これは我々調べて見なければわかりませんが、果して政府当局が言われるようなふうに融資しているかどうか、これは疑問であります。それからなお政府がやる仕事はどうであるか。薪炭特別会計などにおいても七十億円の赤字が出れば、これを通常会計で埋めている。そういうことがいいとは申しませんが、併しながらそれなどは別な問題と言えばそうかも知れませんけれども、やはりその他公団に大きな穴を開けてそれを埋めている。その今政府がこのくらいのものを先ず保險経済の中で融通をすることに努力し、その何ら私は痕跡を見ずにただ料率を引上げる、或いは資格の取得期間を長引かすというような、この保險経済の範囲内で解決しようということは甚だ遺憾に存じます。従つて大蔵大臣なり次官なりの出席を要求いたしておりますけれども、今きめずなおこれを私は大蔵大臣なり次官なりに出席を求めて政府の方針なり将来の見通しを明確にするという、議員として私は責任があると思う。併しながらそうすればいつのことだかわからない。時間もわからない。出席もわからないわけであります。従つてそういう点をお考えの上で、厚生委員会では然らば例えば私が先ほど申しました通り重ねて申しますならば、二億四千万円のものを一億二千万円なりにすれば六ケ月間かかるものを三ケ月間に威し得るのです。そういうことが被保險者の感情を刺激しないでやつて行ける、こういう点についても恐らく厚生委員会においても討議があつたと思う。なお保險赤字経済の一億なにがしだつて、同時に二十八億の運営に必要なら、二十八億に必要なるものをやはり厚生年金方面から考えましてもできないものではないのでありまして、何ら議員みずからがそういうことに仕向けず、議員みずからが放棄することについては、議員の職責を果すには如何かと思うのであります。そういう点から考えまして、十分に厚生委員会において御審議願つて、できるならば先ほど申しましたように、期間六ケ月というものを三ケ月乃至四ケ月に修正されるように希望を申上げまして、甚だ時間がないということと、大蔵大臣なり次官なりが見えないので、本員は質問を打切ることは遺憾でありますが、いずれ他の機会もあろうかと思いますから、一応私の質問はこれで打切りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/125
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126・山下義信
○委員長(山下義信君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/126
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127・山下義信
○委員長(山下義信君) 速記を始めて。
連合委員会はこの程度で散会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/127
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128・山下義信
○委員長(山下義信君) 御異議ないと認めます。連合委員会はこれを以て散会いたします。
午後四時二十一分散会
出席者は左の通り。
厚生委員
委員長 山下 義信君
理事
小杉 繁安君
井上なつゑ君
有馬 英二君
委員
大谷 瑩潤君
城 義臣君
中山 壽彦君
長島 銀藏君
河崎 ナツ君
藤原 道子君
藤森 眞治君
松原 一彦君
労働委員
委員長 赤松 常子君
理事
一松 政二君
原 虎一君
波多野林一君
委員
宮田 重文君
中村 正雄君
堀木 鎌三君
国務大臣
厚 生 大 臣 黒川 武雄君
政府委員
厚生省保険局長 安田 巖君
説明員
厚生省保險局健
康保險課長 友納 武人君
証人
総同盟全国進駐
軍労働組合総同
盟副会長 市川 誠君
全日本産別労働
組合保險部長 吉田 秀夫君
慶應義塾大学教
授 園 乾治君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014236X00119501215/128
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