1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月十五日(木曜日)
午後一時二十八分開会
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本日の会議に付した事件
○精神衛生法の一部を改正する法律案
(中山壽彦君外四名発議)
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001・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 只今より厚生委員会を始めます。
本日は精神衛生法の一部を改正する法律案を議題にします。先ず提案理由を提案者の一人である中山委員からお伺いすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/1
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002・中山壽彦
○中山壽彦君 精神衛生法は第七国会におきまして、皆様の御賛同を得て成立をいたし、昨年の五月一日から施行になつたのでありまするが、施行後約一年間の経過から見まして、多少不便を感じ、又不都合な点も生じて参りましたので、この際その点を更に整備いたすべく、この一部改正法案を提出することといたしたのでございます。
まず精神衛生衛議会の構成につきまして、現行法における十五名の正式の委員のほかに他の審議会と同様に、必要がある場合には臨時委員をも設けることができることといしたいと存ずるのであります。
次に市町村長が保護義務者になつた場合の医療保護に要する費用の負担関係を改めることにいたしました。現行法におきでましては、この場合だけ特に全額を都道府県の負担として、特別な取扱をいたすようになつておるのでありますが、私人が保護義務者である場合と何ら区別をすべき理論上の理由もなく、又、この規定のために浮浪者の多く集まる大都市を持つ都や府県に対して不当に負担を多くする結果ともなりまするので、かかる費用負担の帰属を定めている條項を削除することにいたしたいのでございます。又、この際、解釈上疑義を生じている向きのある検察官の通報義務に関する規定につきまして、誤解を生じないよう、その表現を改めることにいたしました。
この法案の内容は、以上の三点でございますが、精神衛生法の運用に関しまして、二十六年度予算には、国立の精神衛生研究所設置に要する経費が計上されることになつております。精神衛生研究所は、精神衛生法施行上重要な役割を持つものでありまするが、法の体系の上から、これに関する事項は別途厚生省設置法に挿入することといたし、今回の改正案からは除外いたしました。以上がこの法案の提案理由でございますが、何とぞ御審議の上、御賛成下さるようお願いいたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/2
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003・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 以上のような提案の理由でございますが、御質問がございましたらどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/3
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004・藤森眞治
○藤森眞治君 内容の説明を一つお願いしたいのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/4
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005・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 参議院法制局第一課長の中原課長から内容の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/5
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006・中原武夫
○法制局参事(中原武夫君) 十四條を改正いたします第一段の問題は、臨時委員を新たに精神衛生審議会に設けるための規定でございます。現在は精神衛生審議会の委員は十五人で、その任期は三年として、その委員は精神衛生に関して学識経験があるもの及び関係行政機関の公務員のうちから厚生大臣が任命するということになつております。精神衛生に関する問題は非常に広範多岐に亙りますので、十五人の委員だけで審議が盡されない場合が予想されますので、必要があるときには臨時委員を置くことができるようにいたしたいのでございます。
次の二十五條の改正規定は、実質的な変更は全然ございませんで、ただ表現を改めただけでございます。現在の二十五條の解釈につきまして、主として弁護士のかたが主張されておられる異論があるのでございます。それは現在の二十五條は、検察官は被疑者又は被告人について精神障害があると認めたときは、当該事件について不起訴処分をし、それから裁判が確定したのちにはその旨を都道府県知事に通報しなければならないと書いてございます。この條文は検察官が精神障害があつてそれは罪にないから公訴を提起しないと、そういう決定をしたときに、或いは又裁判が確定したのちにその旨を知事に通報してくれ、こういう規定でございます。ところがこの前段の意味を検察官は被疑者について精神障害があるということがわかつたときには常に当該事件について不起訴処分をしなければならないのだ、こういう意味を二十五條は持つておるという解釈をする向が出て参つたのであります。精神障害者につきましては、刑法ではそれが心神喪失の状態にある場合には罰しない、それが心神耗弱の状態である場合にはその刑を軽くする。こういう規定がございます。それから又その取扱につきまして、刑事訴訟法には検察官が公訴の提起をするときには、犯人の状況を考えて自由に公訴を提起するかしないかを決定することができるという規定がございます。第二十五條と、今申上げましたような異論を唱える人の解釈によつてこの刑法と刑事訴訟の現在の規定を考えますと、この二十五條によつて刑法も刑事訴訟法も精神障害者に関する限りはその取扱が変更されたのだ、つまり精神障害がある場合には、常に不起訴処分をしなくてはいけないのだ、万一検察官が精神障害者の事件において公訴を提起したときには、それは違法な公訴提起であるということで争うのだ、こういう主張に結論付けられるのであります。書きました二十五條は現在そういう刑法や刑訴の取扱を変更するという意味は持つておらないのでございます。ただ事件になつた精神障害者がそのまま社会へ放り出されてしまうことは困るから、そのときには知事に通知してもらいたい、こういう意味だけの規定であつたのであります。そういう誤解が生じましたのは、幾分前段の表現に不明瞭な点がありましたので、今回そういう誤解を生じないように表現を改めたのでございます。
四十九條の二項を削りましたのは、今提案理由の中で詳しく申されましたように、たまたま市町村長が精神障害者の保護義務者になつた場合に、その費用は全額都道府県が負担するという不合理な規定が現行法には入つているのでございます。現行法によりますと、保護義務者が精神障害者の医療保護のために支出した費用は精神障害者本人か、その扶養義務者が負担する、これが原則になつております。この原則だけで申しますと、若し本人も負担ができず、又扶養義務者も負担ができない、こういう場合にはこれは生活困窮者になるのでございますから、その医療費は一様に生活保護法から出るということになるわけでございます。そのことは保護義務者が一般私人であろうと、市町村長であろうと何ら変更を加える必要のない事柄であります。ところが現行法の第四十九條の二項にはその原則を破りまして、たまたま市町村長が保護義務者になつた場合には、それは当該都道府県が全部費用を負担するのだ、こういう例外を作つてあるのでございます。このために理論上おかしいばかりでなく、事実上も大阪とか東京のように浮浪者が多く集つて来る都なり府は、本来はよその府県で見るべき人間をたまたま流れ込んで来たということだけの理由で、全部自分が負担をしなければならんという不都合な結果を生じて参つたのであります。現実の運用におきましては、大体そういう浮浪者で市町村長が保護義務者になつているものにつきましても、八割くらいは四十九條の二項を働かせずに、生活保護法で面倒を見ているというのが実情でございます。四十九條の二項を削除することによりまして、不合理な点を是正すると同時に、現在事実上行われております医療費負担の形へ法文を戻して行こう、こういうのが今度の改正案の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/6
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007・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) この法案におきまして、何か以上の御説明をお聞きになつて御質問ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/7
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008・長島銀藏
○長島銀藏君 まだ少し早いかも知れませんけれども、只今の御説明で大体了承いたしたと思いますから討論を省略いたしまして、直ちに採決にお入り願いたいという動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/8
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009・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 只今長島委員から、質疑を打切り、討論を省略して直ちに採決に入られたいとの動議がございますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/9
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010・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。それでは質疑、討論を省略いたしまして、採決に入ることにいたします。精神衛生法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに御賛成のかたの御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/10
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011・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 全会一致でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
中山 壽彦 長島 銀藏
石原 幹市郎 上條 愛一
藤森 眞治 常岡 一郎
松原 一彦 川村 松助発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/11
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012・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 署名洩れはございませんか。署名洩れはないと認めます。
なお本会議における委員長の口頭報告につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/12
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013・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないと認めます。速記をとめて下さい。
午後一時四十五分速記中止
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午後二時三十七分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/13
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014・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 速記を始めて下さい。それでは本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十八分散会
出席者は左の通り。
委員長 河崎 ナツ君
委員
石原幹市郎君
川村 松助君
中山 壽彦君
長島 銀藏君
上條 愛一君
常岡 一郎君
藤森 眞治君
松原 一彦君
事務局側
常任委員会專門
員 草間 弘司君
常任委員会專門
員 多田 仁己君
法制局側
参 事
(第一部第一課
長) 中原 武夫君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01319510315/14
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