1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年三月十九日(月曜日)
午前十時三十二分開会
—————————————
本日の会議に付した事件
○社会福祉事業法案(内閣提出)
○小委員長の報告
○派遣議員の報告
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/0
-
001・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは厚生委員会を開催いたします。本日は社会福祉事業法案を主題といたしまして、御協議いたします。先ず厚生大臣から提案理由の御説明をお伺いいたすこと
にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/1
-
002・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 社会福祉事業法案提出の理由について説明申上げます。
現下の社会情勢により、社会福祉事業は、公的扶助制度の確立と、その専門技術化の促進が強く要望せられ、先に生活保護法の全文改正及び社会福祉主事の設置に関する法律が制定せられたわけであります。而も約二百億円の経費を要する公的扶助その他兒童及び身体障害者等の福祉に関する行政は、今やその一層の強化を要請されつつありまするし、その運営の合理化と能率的組織の整備がますます要求せられているのであります。他方民間の社会福祉事業の分野においても、刷新拡充の必要が痛感されていることは、御承知の通りであります。一方社会保障制度審議会からの勧告のうちにも、社会福祉事業を能率的科学的に運営する民生安定所の設置が謳われ、特別法人の制度確立により、民間社会事業に自主性を與え、公共性を高める旨が述べられております。
ここに昭和十三年に制定せられた社会事業法を廃止して、新らしい社会福祉事業の全分野における共通的基本事項を定め、生活保護法等の既存立法と相待つて、社会福祉事業が公明且つ適正に行われることを確保し、以て、社会福祉の増進に貢献したいと存ずるわけであります。これが本法案を提出した理由であります。
以下、本法案の内容について、その要点を概略説明申上げます。第一に、社会福祉事業を分けて第一種事業及び第二種事業とし、そのおのおのについて、その事業内容を具体的に定義いたしております。なお更生緊急保護法に基く事業及び一定の基準に達しないものは、この法の対象から除いてあります。第二に、社会福祉事業の経営主体の規定でありますが、第一種事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則といたしましたが、宗教法人その他個人で以ても、許可を受ければ、経営することができる途を開いてあります。第三に、事業経営の準則を定め、国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者のそれぞれの責任を明確ならしめ、公私の関係を確立する準則を定めたわけであります。第四に、中央に社会福祉事業に関する重要事項を調査審議するため、社会福祉審議会を設けることがあります。
第五に、福祉に関する事務所の規定を設け、都道府県及び市は、福祉に関する地区を定め、その地区ごとに、生活保護法、兒童福祉法及び身体障害者福祉法に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を掌るものとするものであります。地方行政調査委員会議の勧告を尊重して、町村及び一部事務組合も福祉に関する事務所を設置することができるようにされております。第六に、社会福祉主事に関する規定を設け、社会福祉主事に関する法律を吸收いたしました。第七に指導監督及び訓練の規定を設け、行政の効果的遂行を企図いたしました。第八に、社会福祉法人の制度を創設し、その組織及び運営について一定の基準を定め、災害時における緊急復旧に際しては、公の支配に属する社会福祉法人に対しては、補助の途を講じ得るよう規定してあります。第九に、社会福祉事業の経営と寄附金募集の規定を設けてこれが適正に行われるようにいたしました。第十に、共同募金及び社会福祉協議会の組織及び運営について規定し、共同募金会と、その区域内の公私社会福祉事業関係者の協力による社会福祉協議会との密接な連絡により、社会福祉事業の組織的活動を図ることといたしました。第十一に、従来の各種の課税除外に加えて、新たに登録税の課税除外の規定を設けようとするものであります。
以上、法案の要点について、御説明申上げましたが、何とぞ愼重御審議の上、速かに可決あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/2
-
003・山下義信
○山下義信君 社会局長から具体的な御説明があると存じますが、その前に本案の大綱につきまして、大臣もお急ぎのようでございますし、私も所用がございまして、急ぐかどがございますので、この機会に一、二簡単に伺いたいことがあるのでございますが、質疑をお許しを願いたいと存じます。よろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/3
-
004・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/4
-
005・山下義信
○山下義信君 只今御提案になりました社会福祉事業法案は、私どもが久しく待望いたしておりました法案でございまして、黒川厚生大臣御盡力の下に、この法案が本国会に間に合いまして、ここに提案を見ましたることは、非常に欣快に存ずるところでございます。本員は同僚諸君の御厚情の下に、過日渡米の機会を得さして頂きましたのでございますが、出発前からいたしまして、この法案に多大の関心を持ちまする故を以て、予定の半ばを割きまして、急拠帰朝いたしました次第でございますが、幸いにこの法案の提案理由を承わる当初から委員会に出席することを得まして、誠にこれ又欣快に存ずるところでございます。附属の参考資料のうちにも政府が指摘しておいでになりますように、この法案の因縁につきましては、当参議院が多大の関係を持つておりますのでございまして、而もこの法案が当参議院に先議として提案せられましたることは、彼此勘案
いたしまして、誠に結構に存ずる次第でございます。詳細なことは又審議の過程におきまして申さして頂きたいと存じまするが、要するところ、いろいろな各界の要望がここに注がれまして、この法案が生れて参りました。ただに当参議院の希望いたしまする事項のみならず、或いは社会保障制度審議会の勧告でありますとか、或いは関係方面の示唆でありますとか、或いは民間の諸団体の意見でありますとか、そういうようなものが種々ございまして、それをお取入れに相成つておる。言換えまするというと、私はこの法案を拝見いたしまして、そうしていろいろなことを考えて見ますというと、丁度近代医者が発達いたしまして、人工受精ということをいたしまするが、丁度人工受精のようなもので、いろいろな人の精液が集まつて、そうして母体に授精する。それを受けて頂いて生んでもらつた、こういうような感がするのです。大変上手に生んで下さつて、いろいろな精液が混つているわけでございます。従つてでき上つた法案が多少混血兒のような形がある。併しながら混血兒でありましても、生れて出た以上は、これは取上げて育てにやならん。この法案に明るい陽の目を見せて、健全にこの法案を発達、発展せしめることも、これ又一つのウエルフエアであると私は考えるのであります。とにもかくにも押しなべまして、大変よくできております。御苦心のほどは感謝いたします。従来とも近来の厚生省は、こういう法案につきまして、よいものが最近よくできます。例えば生活保護法でありますとか、その他種々この社会福祉関係の立法ができまして、私は非常にその努力を認めている一人でございます。殊に大臣のお目の前でございますが、最近の社会局スタッフが、身体障害者生活保護法、又今回の社会福祉事業法等々の立法に大いに貢献いたしましたる努力に対しましては、私は賞讃の辞を惜しまないものであります。そこで前提はこのぐらいでございますが、この法案をお出しになる、これが公私の社会福祉事業のいわば基本法、基本という字はおとりになつたけれども、これはそういう性格を持つている。とにもかくにもこの法案は朝野待望いたしておる、斯界が待望いたしておりまする法案でありまして、非常に大きな影響を私は持つ、又持たさなければならんと考えるのでありますが、さてこの法案が通過した後に、この法律を提げて、我が国の社会福祉事業の上に如何なることをなさんとするか、これはこの法律の大半を、伺いますると、いろいろな事務規定がある、その中に大方針に関係のあるようなところも二、三あります。政策といえば政策とも言える。併しながら表面的にこれを見ますれば、我が国の社会福祉事業に対するいろいろの処理の規定である。併しながら処理の規定のこの法律の使いかた如何によつては政策となる。そこで今の内閣がこの法律をお持ちになりまして、御活用になりましてなさる、或いは又他の内閣がこの法律を活用いたしまして、どういうふうにやるかということになると、そこに政策というものが現われて参ります。そこで私は厚生行政に一段と近来御努力を願つて、だんだんと治績を挙げて下されている黒川厚生大臣が、我が国の社会福祉事業の上にどういう政策を持つておいでになるか、又どういう政策を以て我が国の社会福祉事業の上に臨もうとなさつておいでになるか、その政策の御抱負についてこの際承わつて置きますることも、この法案の審議の上に無駄ではないと考えるのであります。それはこの政策に関連いたしまする、十分政策の上に応用し得られまする、又応用しなくてはならないと思われる法律の案文が、この法案の中に先刻述べましたように数カ所散見せられるからでございます。例えて申しますると、私の質疑は漠といたしておりまするから、漠然たる答えになりましても困りますので、一、二具体的に申上げまするというと、言うまでもなく近代社会福祉事業の性格といたしましては、国家社会の責任性が強調されておることは申すまでもございません。昔日の慈善事業或いは民間の福祉事業、或いは政府の恩恵事業的な性格のものでないことは言うまでもございませんから、従いまして、かくのごとき公共性が強まつて参りました近代福祉事業といたしましては、それが公的であろうと、私的であろうと、その性格が共通いたしておりまする以上は、政府といたしまして、決して放任すべきものではない。言うまでもなく自分の所管の中には公的福祉事業がある。民間福祉事業といえども、今申上げたがごとき公共性が要請せられておる立場から言いますれば、政府がそれに対しての一定の指導方針、政策がなくてはならん次第であると考えられます。そこで国の責任としての社会福祉事業を将来どういうふうにやつて行こうとするか、又同様にこの公共企業団体が担つておるところの責任がございます。地方公共団体の担つておる責任がある。その地方公共団体のこの責任はただ地方公共団体のなすがままに任すのであるか、これは地方の自治であるからといつて、なすがままに任すのであるか、国が相当のそれに対して一面には奨励すると同時に、一面には大いに指導、監督、助長をするのであるかどうか、国と、即ち中央と地方公共団体の関係等についてどういうふうに考えられておいでになりまするか、或いは民間のこの福祉事業を発展助長させまするためには、この法律をどういうふうに御活用相成るか、即ち国、或いは地方公共団体との間の密着性をどういうふうに強調なさいますか。或いは密着性は否定して、民間社会福祉事業を民間人の自由にこれは放任するお考えでありまするかどうか。又現在の社会福祉の各種の施設、一万有余に近いところの各種の官民の公私の施設の内容の向上等については、どういうふうにお考えになつておりまするか。この法律の主眼といたしまする一つといたしましては、民間社会事業につきましての政府のなすべき、或いは地方公共団体のなすべき責任を委託、委任の経営で、なお民間社会事業の役務を御使用なさろうとしておいでになるのでありまするが、従来の欠陥等に対しまして、国或いは地方公共団体の責任を明確にする、即ちその責任を民間福祉事業に背負わして、民間の責任において、民間の負担において、政府が不十分の費を以てその役務を購わんとするがごとき不明朗なる、そういうやりかたに対しては、どういうふうに今後改めるお考えをお持ちになるかという点等につきまして、概括的に政府がお考えになりまする我が国社会福祉事業の将来へのプログラム、政策というものにつきましてのお考えを、この際承わつて置きたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/5
-
006・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) お答えいたします。この法案を特に参議院に付託先議お願いいたしましたことは、只今山下委員が仰せられた通りでありまして、私どもは一日も早く慎重に審議して頂いて、可決せられんことを希望するのでありますが、只今の御質問の社会福祉の事業について、どういうふうな政府は考えを持つておるかということを御質問でございましたが、国又は地方公共団体は十分の責任を持つて、この社会福祉の事業を行うべきであると思うのでありまして、従来ややもすれば、社会事業という美名の下に、実は社会事業でなくて、経営者の救済事業見たいな点もかなり多かつたように思いますので、この点は社会福祉の大事な仕事を適正に、そうして公明に正大に実施して行かねばならんという根本的の考えを持つております。つきましては、その地方公共団体、国又は地方公共団体といたしましても、この社会福祉法人の行いまするところの社会福祉の事業につきましては、十分に監督し、それを指導しなくちやならんと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/6
-
007・山下義信
○山下義信君 只今の御答弁では、なお私のお尋ねいたしました点も明確でないのでございますが、例えば民間社会事業の発達助成の上に最も問題になると思いますることは、政府或いは地方公共団体が、当然自分の責任においてなすべき福祉の仕事を、民間社会事業に、福祉事業に委託いたしておりまする点でございます。これは自他ともに認めておりまする今日の現状でございまして、これが一面から申しますと、我が国の社会福祉事業の私は解決の根本中心であろうと思います。こういう状態のこの現状が、一面においては国家社会の公共性を強調しながら、国も地方公共団体もみずからの努力によつて、みずからの責任によつて福祉の実を挙ぐべき、その責任を回避し、又民間社会事業家はみずから口にいたすところの自主性、特徴性というものを放棄いたしまして、積極性を失うて、ただ政府の補助金によりましてこの経営をイージーにやつて行く、又みずからもそれによつて衣食を求めるという非常に消極、退嬰的な姿にありますということが、一面においては公的福祉事業の発達と言いますか、その責任を曖昧にし、回避する姿に相成り、一面には民間の社会事業の特徴というものが、いつの間にかなくなりまして、そうしてただ徒らに政府の請負い仕事を以てかれこれその日を送つておるというような状態に相成つておりますることが、両方が何と申しますか、その結合の状態が非常に不明瞭な不満足な状態になつておりますることが、今日の私は我が国の社会福祉事業の現状の欠点とするところであろうと思うのであります。従いまして若し民間の社会事業を発達せしむるというならば、この法案がお示しに相成りましたように、第一種、第二種と折角区別なされましたこの新たなる試みと言いますか、この区分というもののうちに含まれた意義もさようなお考えがあつての上であろうと思うのであつて、主として第一種というのは、即ち国、地方公共団体が委託し得べき事業を御区分に相成つた。然らばこれらの委託せられましたそのことが国、地方公共団体の責任においてなすべきその十分なる程度の委託でなければなりません。その十分と同じような成果を民間社会事業が挙げなければならんのでありまして、同時に又それらの政府の或いは地方公共団体の委託を受けざるところの純民間社会事業というものが、或いは第二種の方向と申しますか、新たなる分野の方向に発展して参らなければならんのでございますが、それらの点につきまして、政府はどういうお考をお持ちになりますか。従来のごとく極めて経営に困難な、即ち経営費を十分にカバーすることもできないような僅少な事務費であるとか、事業費であるという程度を以てこれを支給いたして、みずから法律に規定いたした、各種の社会福祉立法に規定いたした国、地方公共団体の責任を、かような不十分な費用で民間の社会事業に委託するというような程度で以てこのままにやつて行こうというお考えでありまするか。この民間社会事業というものを相手どつての政府のお考えは、そういう点はどう考えておられるかという点も明確に承わりたい点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/7
-
008・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 民間社会事業を経営するかたに対しまして、委託して国又は地方公共団体が福祉事業を行います場合には、十分に責任を持ちまして、そうして委託したからといつて、その責任を転嫁するというようなことなく、十分に国及び地方公共団体は責任を持つべきものであると思います。なお同時にその民間社会事業家に対して十分その自主性を尊重すべきであると考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/8
-
009・山下義信
○山下義信君 大臣との質疑応答は大綱にとどめて置きます。不満足なことは又事務当局或いは他の機会に承わることにいたしたいと存じますが、私はこの公私共に社会福祉事業に対します御政策の上で、重大な問題は人の問題ではないかと考えるのでありますが、如何に法律や制度の構想ができましても、この組織ももとより重要でございますが、同時にその組織を動かしますものは人でございます。政府におきましては、これらの社会福祉事業関係の人の問題につきまして、どういう心構えをお持ちになつておられますか承わりたい。例えばこの社会福祉事業の従事者の養成機関等につきましても、現状は甚だ不満足な状態でございます。何が足りないといつても、およそ日本の国で、この社会福祉事業が公私共にかくのごとき厖大な領域も拡張し、量においてもいろいろ殖えて来て、そうして人が貧弱になる、かような不釣合いな状態は、この社会福祉関係が極端でございます。その養成機関のごときは微々たるものでございます。私は国立で相当大規模なこの社会事業者の養成機関というものをお持ちになるのが当然であろうと存じます。殊に社会福祉なんという専門ケースを法律で御規定になり、御活用になろうとするには、十分にその需要に応じた養成機関でなければならん、そういう点に何かの御計画がありますか、承わりたいと思います。且つ又養成のみではございません。これらの事業に従事いたしますものの処遇の問題、或いはこれは国の社会福祉に従事いたしますものは、公務員としてのいろいろな保障制度もございましよう、併しながら民間の福祉事業に従事いたしますもの等に対しまする何らかの福利或いは保障というような問題につきましても、政府として考究いたさなければならんと思うのでありますが、そういう点について何らかのお考えがありますかどうか、これは私が思いまするのに、こういう仕事がいつまでもこれが特別の仕事である、特別の有志の、特別の人格者の、特別の何と言いますか、博愛の精神に満ちた人道主義者のやるべき仕事であるといつたような、例えば紀元節や天長節に、僅かにお褒めを受けるというような、従来の表彰的なことではいけないと思う、そこで私は厚生省あたりが主催になりまして、ただ天長節、紀元節に御下賜金のお取次ぎ、この旧態依然たる姿でなくて、社会福祉事業の功績者を如何に処遇しようとするかということも、人の尊重の問題ということがなくてはならん。我が国に文化勲章の制度が設けられて以来、この社会福祉事業に功績を挙げた人なども当然私は文化勲章候補者と推奨すべきだと思う、そういう点に厚生大臣はおぬかりはないと思うのでありますが、これらの事業の関係者の養成或いは福利、或いは功績の表彰等につきまして、国として何らかのプログラムをお持ちになるべきではないかと思うのでありますが、その点を私は承わつて置きたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/9
-
010・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 社会事業の関係におきましては、今年も藍綬褒章授與等につきまして、精神的には国として感謝いたしておりますが、お説の通り文化勲章等につきましては、十分研究努力をいたしたいと考えております。なお先ほど仰せになりました社会福祉に携わるものについての養成につきましては、来年度予算をとつております。来年中には強力に指導ができることと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/10
-
011・山下義信
○山下義信君 お答えは速記録に残しますから、不十分でありますれば、又改めて伺いますが、お急ぎのようでございますから、今一つ承わつて置きます。これも人の問題に関連いたしますが、民生委員をどうなさるお考えでございましようか、この機会に大臣のお考えを承わりたいと思います。これは端的に申しまして、いわゆる民生委員法というものの必要がなくなつたと申しますか、改正する必要があるのでありまして、この民生委員法というものをどういうふうにお扱いになりますか。この附則にそれもありませんし、お考えをこの際聞いて置きたいと思うのでありますが、同時に先般の社会事業法なり、又は本法等によりまして、ああいうふうに民生委員というものが改まりました以上は、殊にこの本法案の実施によりまして、更にそれが明確に相成りまする以上は、すでに民生委員というものを、公務員の性格を持たして扱いますることも不必要でございまするので、あれは一体どういうふうになつておりましようか、前には次官通牒で、民生委員は地方議員を兼ねることができないように次官通牒を出しておいでになりましたが、これはもうお取りやめになりましたのでありましようか。又来月地方選挙のことに臨んでおるのでありますが、私の考えでは民生委員が地方議員を兼ねて一向差支えないと私は思うのでありますが、この地方議員を兼ねることができないといつた問題はどうなつておりましようか。今日改めて明確にいたして置くほうが自他共によいのではないかと考えておりまするので、この際承わつて置きます。なお最後に、この法律案を見まして、私が思いまするのは、一番法律と、何と申しますか、関係が深いように思われる、又どういうふうになるのであろうかと気ずかわれることも大臣から承わりたいと思うのですが、日本赤十字社との関係は、この法律ではどうお扱いになるお考えでありましようか。これも資料を見ましても、資料にありませんので、日本赤十字社が、最近社会福祉事業をやつておりますることは御承知の通りであります。やはりこの法律を施行いたすということになりますれば、当然この法律でカバーせられることは申すまでもございません。黙つておいでになれば、私はその通りに解釈いたしますが、日本赤十字社の社会福祉事業がこの法律の適用を受けますか、受けませんか、この点も明確に願いたいと思うのであります。これは国の政策とも関連いたしますので、特に大臣から御答弁を求める次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/11
-
012・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 民生委員につきましては、その存続は私は従来の社会奉仕の精神に基くところの、本来の民生委員の姿で存続すべきものであると思います。民生委員法につきましては、只今改正につき検討中でございます。次に、赤十字社の関係は、これは社会福祉事業、この法案の適用を受けるものでございます。それから民生委員が来たるべき地方選挙に立候補し得るかどうかということにつきましては、この立候補につきましては差支えないのでございます。それだけお答えいたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/12
-
013・山下義信
○山下義信君 赤十字社は適用を受けますか、この法律の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/13
-
014・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 受けます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/14
-
015・山下義信
○山下義信君 大臣に対しまする私のこの法律の大体の質疑は終りました。私は黒川厚生大臣が、この法律の提案について努力せられましたことについて、重ねて敬意を表して置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/15
-
016・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは木村社会局長から、なお一層法案につきましての詳しい御説明を伺うことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/16
-
017・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この法案の趣旨につきましては、只今大臣から御説明がございましたので、法案の内容につきまして、やや詳細に御説明申上げたいと存じます。資料といたしましてお手許にこの法案の解説を差上げてあるのでございまするが、これで以て大体趣旨は盡しておると思いますが、一応御説明申上げます。なおこの法律案の立案に当りましては、先ほど山下委員からお話がありましたように、この法案の根本的な考えかたにつきましては、当委員会におきまして検討せられました社会事業の振興に関する方策というものを十分取入れるように考慮いたしておるような次第でございまして、おおむねその目的は達成せられておるというふうに考えられ、又あの線に沿いまして、これを運営して行くようにいたしたい、若しこの法案が施行せられましたならば、そういうふうにいたしたいと考えておるような次第でございます。
本法案におきましては、第一章の総則、この一條から五條までの間に、この法律の考えかたというものをおおむね網羅してあるのでありまして、先ず第一條に目的を掲げまして、この法律の制定の目的を規定いたしますると同持に、この法律の性格を明らかにいたしたのでございます。社会福祉事業の全分野におきまするところの共通的な基本事項というものをこの法律できめる。従いまして、それぞれの分野或いは生活保護、或いは兒童福祉、身体障害者の福祉、それぞれの分野におきまするところの特別的な事項につきましては、それぞれの特別の法律で以て規定してありまするので、それらの全体に共通する事項といつたようなものをここで以て規定いたしたいというように考えておることを明らかにしておるわけであります。次に、第二條で社会福祉事業の内容を一応明らかにいたしまして、ここにおきましては、先ほど御説明がありましたように社会福祉事業の中で特別的に重要なる内容を持つておりまするものにつきましては、第一社会福祉事業といたしまして、それから第二社会福祉事業と、この二つに分けた次第であります。第一社会福祉事業に入つておりまするものは、人を預かりまして、そうしてこの中で以て生活をさせるという施設、これとそれから経済的な保護を與えるという仕事、この二つのものを大体第一社会福祉事業といたしました。これは一つは社会的に非常に発言のできない弱いものを対象にいたしまして、而もその生活をそこでさせるという非常に人権に重大な関係があり、これがうまく行われないということは、国といたしまして非常な重大な責任があるといつたような事業につきましては、これを特にそのものを経営いたしまする主体を制限し、確実なる仕事ができまして、これによつて社会的な弱者が不当なる取扱いを受けないようにしなければならないというので、これに対する
特殊な取扱いをいたした次第でありまして、又公益質屋でありまするとか、或いは授産施設でありまするとか、こういつたようなやはり社会的に弱い立場にありまするものに対しまして、経済的な保護を加える仕事におきましては、これのやりかた如何によりましては、却つて社会的に弱いものを搾取するといつたような虞れが多分にございますので、それに対しましては、特に第一社会福祉事業といたしまして、その経営の主体、経営の仕方等につきまして、嚴重なる措置をいたすように者慮いたしたわけでありますので、その他の社会福祉事業につきましては、それぞれの社会福祉事業の自主的な運営ができまするようにいたしまするために、自由にこれが行われる。勿論一定の基準と申しまするか、そういう標準を破らないようにする必要はあります。その範囲内におきましては、自由にこの仕事ができて、これが何と申しまするか、正しく伸びることができるような措置をとりたいと考えておる次第でございます。なおこの法律で以て「更生緊急保護法にいう更生保護事業」、それから期間の短い事業及び特定のものに対してのみ行われる事業、それから非常に規模の小さい事業といつたようなものにつきましては、この法案にありまするいろいろな手続をとらせますることが却つて不利であるというふうに認められます。又更生緊急保護事業につきまして別途法律がございまするから、これから除外いたしたのであります。次に、第三條につきましては、社会福祉事業の趣旨をここに掲げました。これは本法といたしましては、この法を運営いたしまする上におきまして、根本的な考えかたになるものでありまするので、極めて重要な規定であると考えております。この條文によりまして、この條文の趣旨に従いまして、この法律全体が運営されるようにいたしたいというふうに考えたわけでございます。特にその中で重要と考えますることは、「その独立心をそこなうことなく、正常な社会人として生活することができるように援助する」という点が、特に強調せられなければならん点であると考えておるのであります。次に、第四條は、社会福祉事業の経営主体でございまして、これは第一種社会事業につきまして、これが公共の責任の最も重大なものであるというふうに考えまするので、その事業の経営主体を、国、地方公共団体又は社会福祉法人であることを原則とすることにいたしました。その他のものが第一種社会福祉事業をいたしまする場合におきましては、特別な嚴重な制限をこれに加えることにいたしておるのであります。これはずつとあとのほうに、社会福祉事業という章にその内容が規定してございます。次に、第五條に事業経営の準則といたしまして、先ほどからいろいろと御質疑になりましたような点、これを明らかにいたしまして、この法の運営に当りまして、特に考慮しなければならん点を明らかにいたしたのであります。特にここで掲げておりますることは、公私の社会事業の分野と責任を明確にする点を特に強調いたしておるのでありまして、御説明になりましたように、「国及び地方公共団体は、法律により帰せられたその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めないこと。」ということを明らかにいたしました。又「他の社会福祉事業を経営する者に対し、その自主性を重んじ、不当な関與を行わないこと。」、つまり民間の社会福祉事業に対する不当な関與ということによりまして、適当ならざる状態を来たしますことを防止することを明らかにいたしたのでございます。
第二章は、社会福祉審議会でございまして、これは現在ありまするところの中央社会事業審議会、これを改めまして、その内容を明確にいたすようにいたしたのでございます。なおここで特に専門分科会を設けることにいたしてございまするが、専門分科会の中で、生活保護法の施行に関する専門分科会を置くことを明らかにいたしました。その他にも「必要な専門分科会を置くことができる。」ことになつておりまするが、特に生活保護法の施行に関する事項の調査審議に対しまして、従来その調査審議の機関がない。根本的な行きかた等につきましての審議をいたす必要がありまするので、これにつきましての民間専門有識者の意見を聞く必要がございまするので、これにつきましての分科会を特に設けることに規定いたしたのでございます。
次に、第三章福祉に関する事務所でございます。現在社会福祉主事の設置に関する法律ができまして、各都道府県並びに市町村におきましては、社会福祉主事という有給の専門の職員を置きまして、而もこれが特別なる知識技術を十分に備えたものを置いて、そうしてそういう職員によりまするところの専門的な運営をいたすことができるようにいたされておるのでありまするけれども、現在のこの仕事をする末端の機構でありまする市町村、特にその中で町村におきましては、これを適当なものを十分に置く能力を持つていないし、又これを全面的に置かせるということが却つて国全体として見まして、経済的でないというような点を考慮しまして、又一つの地区におきまして、一人の人が仕事をいたしまするということは、仕事がうまく行かない点もあるほかに、弊害を生ずる虞れもあるといつたような点から、こういう専門の職員というものを、一つのチームを作つて仕事をさせるということが最も適当であるというふうに考えられます。それらの点を考慮いたしまして、こういう生活保護、兒童福祉、それから身体障害者の福祉といつたような国の責任に属しまするところの、或いは公共団体の責任に属しまするところの重要なる福祉の事業の実施につきましては、そういうチームを持つた末端組織で以てその現業の仕事を行わせるということにいたしたいと考えるのでありまして、その仕事をいたしまする場所を福祉に関する事務所といたすことにいたしたのであります。この福祉に関する事務所につきましては、地方行政調査委員会議の意向もございまするので、これに十分準拠いたしまして、地方自治の本旨を通すようにいたしたいと考えまして、市におきましては、小さい市では或る程度不十分であると考えられるのでありますけれども、一応全面的に市におきましては福祉に関する事務所を設けさせることにし、町村につきましては、その町村が福祉に関する事務所の設置し得る状況にありますならば、これを設けることができることにし、なお一町村ではできないが、数町村が併せて作るとい
うことを町村におきまして希望いたします場合には、これもできることにいたしまして、町村におきまして、福祉に関する事務所を作らないものにつきましては、その地域に都道府県が福祉に関する事務所を設けまして、これらの仕事をするというふうな態勢をとろうといたしたのであります。その点が第十三條にあるわけでございます。十四條から十六條までは、その福祉に関する事務所の経営を、実際に現業事務が専門的な知識を十分生かすように動かし得るような形にいたしたいというふうに考えまして、先ず現業を行います職員と、その現業に伴います事務を行う職員、又これらの者に対しまする指導監督を行う職員、これらのものを置きまして、そしてこれらが一つの組織になりまして、完全な運営ができるようにいたしたいと考えておるわけであります。なお第十六條におきましては、福祉に関する事務所の職員というものが、他の業務のためにその手を奪われて、福祉に関する現業の仕事が完全に行かないという点がないようにすることを配慮いたしまして、これらの職員がそれらの職務に対しまして、專ら従事しなければならんという専従の義務を課したのでございます。これは特に我々が考慮いたしておりまするのは、対象が社会的な弱者でありまして、特に政治的に何ら発言を有しない者がその対象である、従いまして、これらに対しまするところの援護の仕事が、ままなおざりにされやすいという点がございまするので、特にこれらの点を強調することにいたしたのでございます。
次は第四章の社会福祉主事の規定でございますが、これは現在ございまするところの国会のほうで御提案になりまして制定されておりまする社会福祉主事の設置に関する法律をここに移したのでございます。ただ先ほど申しましたような実情から、市町村におきましては、必ずしも社会福祉主事を設置しないでもいいようにいたしたのでございます。
次に、第五章の指導監督及び訓練でございますが、社会福祉に関しまする仕事をいたしまする人の人物の如何が、その仕事のうまく行くか行かないかということにつきまして極めて影響があります。先ほど山下議員から御指摘になりました通りでございまして、これらの点につきまして、指導監督、訓練というものを制度といたしまして、完全に実施できるようにいたしております。特にこれがいろいろな知識とか、技術とかを講習その他の方法によりまして習得するほかに、仕事に携わりつつその技術を磨いて行くということができるようにするのが最も適当であるというふうに考えられまするので、その指導監督及び訓練につきまして、特別の規定を十九條から二十一條まで設けたようなわけでございます。
次に、第六章は社会福祉法人でございまするが、この社会福祉法人を設けましたのは、社会福祉事業に関しまして、法人といたしまして事業をいたしまするものは、従来民法の公益法人で以てこれをやるようにいたしておつたのでございますけれども、現在の民法の公益法人の規定は極めて古い規定でございまして、現在の実情に合わない、従つて又実際の状況を見ますると、公益法人の中で社会福祉に関しまする仕事をいたしておりまするものの数よりも、その他の数のほうが多いのではないかと思われるような状況であります。而もこれが濫立いたしておりまして、現在必ずしも適当な状態にあるとは考えられない、而もこれに対しまするところの監督が十分に行われないというような現状でございまするので、一面におきましては、社会事業をいたしまする主体に対しまする対世間的な信用というものを確保いたしますると同時に、現在ありまする非常に乱雑になつておりまする状況を整理する、なお将来におきましても、乱雑になることのないようにするという目的を以ちまして、社会福祉法人なる制度を設けまして、従来の民法の公益法人の制度から独立いたしたものといたしたいと思つておるのでございます。従いまして、社会福祉法人につきましては、社会福祉法人の基礎となつておりまするところの資産というものについて、「社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない。」ということにいたしまして、その基礎を確実にいたしますると同時に、これを行いまする人につきましても、役員に対する制限をいろいろと第三節の管理のところで設けたのでございます。又新たに役員の中に評議員会でありまするとか、或いは監事の制度でありまするとかいつたような、従事民法の規定といたしまして不十分でありました点を、これに加えることにいたしました。その他群小の社会福祉事業に関しまする法人が濫立いたしておりまする状況に鑑みまして、これらが合併をいたしまして、更に強固になりますること、並びに無駄な費用を省きますこと、これらを考慮いたしまして、合併の規定を法律の中に設けたのでございます。なお一般的な監督規定を設けまするほか、社会福祉法人が收益事業をやりました場合に、その收益事業が非常に弊害をもたらす虞れが多分にございますので、收益事業に関する規定を明細に設けまして、不当な收益事業をいたしました場合におきまする收益事業の停止がいたされるようにいたしてあるのでございます。
第七章は、社会福祉事業といたしまして、施設を持ちまして事業をいたしまするものの施設に関する規定と、施設なくして行いまする社会福祉事業に関しまするもののその事業の運営につきましての規定を設けまして、第五十七條におきましては、市町村か或いは社会福祉法人が施設を設置しまする場合には、第一種社会福祉事業に関しまするものにつきましては、届出を以てこれをなし得ることにいたしまして、その他のものがいたしまする場合につきましては、第五十七條の第二項で許可を受けなければならないということにいたしまして、その許可の申請に際しまして、第四項にありまするような條件がございまして、これらの條件によりまして嚴重なる審査をいたしたる上で、他のものがやりまする場合につきましては、その後に不正のことが起らないようにいたすことを確保いたしました次第でございます。なお第七章社会福祉事業についてはすべて届出を以てこれができるようにいたしたわけでございます。なお社会福祉事業の内容につきまして、その施設の最低基準でありますとか、専任の管理者の問題でありますとか、それから社会福祉事業に対しまするところの調査、改善命令といつたような点につきまして、以下の各條件に規定がいたしてございます。
第八章は、共同募金と社会福祉協議会の規定でございます。共同募金と社会福祉協議会を立法化いたしますことは、特にこの委員会におきまするところの非常な強い御要望でございましたが、これを立法化いたしますにつきましては、種々苦慮いたした次第でございます。なおここでちよつと申上げて置きまするが、お手許に正誤表を差上げてございますが、正式の正誤表はあとで印刷して出て来ると思いますけれども、何か印刷のほうで都合が悪くて間に合いかねるようでございますから、一応正誤いたして置きます。第七十二條の第一項、「にかかわらず」という下に「、」が落ちておりますのと、それから第四項の「共同募金」という字が「共同募集金」になつておりますし、それから七十五條、七十六條にも「共同募金」という字が「共同募集」という字になつておりますから、お直しを願いたいと思います。共同募金と社会福祉協議会につきましては、これらのものの社会福祉事業におきまするところの現在の主要なる財源は、共同募金がその主要な財源になつております関係から、共同募金というものが特定の人の支配に入つたり、或いはその共同募金そのものが社会事業に対しまする不当な支配を防止することが必要でありますと共に、共同募金の自主性を、各地方公共団体或いはその他の官公庁におきまして、自主性を阻害するような行為をいたしまする虞れがございますので、これらの弊害が出ることを防止いたしますると同時に、各地域におきまするところの社会福祉事業の計画化と、又地域社会の組織化、この二つの目的を達しまするために、地域的な、下から盛上るところの社会福祉に関する組織が必要であると考えまして、この組織に関して社会福祉協議会の規定を設け、この社会福祉協議会と共同募金と関連いたしまして、この両者が表となり、裏となりまして、どちらも社会事業を支配せずして、社会事業が適正に行われることを助けるようにして行きたいと考えまして、種々の規定を設けたわけであります。社会福祉協議会につきましては、第七十四條一ヵ條を設けまして、社会福祉事業の目的と、それから事業目的から、その地域におけるところの社会事業の経営者を大体網羅することが必要であること、それからなおこれに対しまして、関係行政庁がこれを支配することがないようにすると同時に、又これが適正な事業を行うことが必要な規定を設けまして、第七十四條でそれらの点を十分明らかにいたすように努力した次第でございます。なおこの共同募金との関係につきましても、第七十三條におきまして、社会福祉協議会が存在しないところでは共同募金ができないという形をとりまして、そして共同募金が社会福祉事業の財政の主たる源泉であるということによりまして、社会事業全体に対して不当な支配をすることを防止する点を考慮いたした次第でございます。第七十三條の規定は主としてそれらの点を考慮いたしたわけでございます。なお共同募金につきましては、その共同募金そのものの原則ともいうべき各種の事項を盛りまして、例えば共同募金の計画の公告及び届出、それから共同募金の性格といたしまして、寄附者の自発的な協力を基礎とすること。その配分につきましては、社会福祉事業のみに配分をする。そしてこれに対しまして地方公共団体が不当なる干渉をすることがないようにすること、又共同募金の結果の公告及び届出の規定、これらを設けまして、共同募金が本来の趣旨から逸脱することのないように規定をいたした次第でございます。
第九章雑則は、主として罰則でございます。最後にこれは実施命令の一ヵ條が別に設けてあるだけでございまして、主として罰則でございます。
最後の附則でございまするが、この法律の施行は大体におきまして六月一日から施行するようにいたしたいと考えております。社会福祉主事の規定につきましては、現在の社会福祉主事設置の規定によりますと、今年の四月一日から町村全部に社会福祉主事を置かなければならないということになつておりまするので、この法律の案によりますれば、町村におきましては、将来福祉に関する事務所を設けまする町村のみ社会福祉主事を置くようにさせることにいたしますることからいたしまして、この規定だけは四月一日から実施しなければなりませんので、そういうふうにいたしました。なおその福祉に関する事務所につきましては、諸般の準備等もございますので、大体六カ月の余裕を置きまして、十月一日からこれを施行するようにいたしたいと考えております。これに伴いまして、社会事業法と社会福祉主事設置に関する法律とを廃止することにいたします。それから経過規定でございまするが、社会福祉法人についての規定があります。それからここで洩れておりまするものは、生活保護法と身体障害者福祉法と、兒童福祉法との改正でございます。この法律が施行されますると、従来市町村がやつておりました仕事が大体福祉に関する事務所によつてこれをやることになりまするので。これに伴いまして、その福祉に関する事務所の設置主体がそれらの仕事を主としてやるように相成るわけでございます。それらの点につきまして、生活保護法なり、身体障害者福祉法、兒童福祉法の改正を行わなければならんのでありまするが、各種の準備ができておらない関係から、別途、別の法律といたしまして提出いたすようにいたしたいと考えて目下準備を進めておるのでございます。なお兒童福祉法等につきましては、この法律に伴うもの以外のものも改正をいたす予定もあるのでございまして、それらにつきましては、別途法案が提出されることになるわけでございます。
なお税の問題につきましては、登録税法並びに地方税法、それから所得税法、法人税法といつたような各種の法律の改正を必要といたしまするので、それらの点を第二十一項から二十四項までの間に規定いたしてあります。
以上誠に簡単でございまするが、大要を御説明いたしました。なお御質問がありますれば、お答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/17
-
018・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは御説明を伺いましたことに対しまして、いろいろ御質問もございましようけれども、ちよつと審議の順序の都合もございまして、質疑はなお午後に伺うことにいたしたいと存じます。そして丁度看護婦法が大体参衆両院で意見がまとまりまして、形をなしましたので、この際小委員長より御報告願つて、皆様にいろいろと御承認願いたいと思つておりますが、そちらに移りましてよろしうございましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/18
-
019・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/19
-
020・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは小委員長藤原委員より御報告願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/20
-
021・藤原道子
○藤原道子君 それでは私から保健婦助産婦看護婦法の改正に関する小委員会の経過につきまして、御報告をさせて頂きます。
小委員長が河崎さんでございましたが、委員長に就任されましたので、私代つて小委員長となりましたので、その後一月三十日に私がやることに相成りました。そこで二月の三日、九日、十七日、十九日、二十日、二十八日、それから三月の八日までに、通じまして八回の小委員会を開きまして愼重に審議を重ねて参りました。二月の三日及び二月の九日の小委員会におきましては、愼重を期するために、厚生省、産婦協会或いは看護婦法改正研究会、それから看護婦、保健婦の実務に従事している人達或いは日本医師会、官公私立病院の責任者及び経営者、それから全国医療労働組合の委員長などを参考人として出頭を求めまして、広く関係各階層の意見も聽取いたしました。その出頭者の名前は省略さして頂きまして、その間二月の十二日と二十一日と二十六日、三月二日、八日の五回に亘りまして、衆参合同の小委員会を開きまして、厚生省案、即ち看護婦制度審議会の決定案、それから衆議院の案、それから私の小委員長の私案等につき比較検討いたしたのでございます。そこで三月八日の衆参合同委員会におきまして、完全に意見が一致いたしました。そこで別紙お手許に差上げてありまするような保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案、衆議院の法制局で作成されましたものができ上つたわけでございます。
そこで小委員会といたしましては、直接これが参考といたしまして、二月の二十七日にはPHWのオルト看護婦長の招聘によりまして、衆参両院から河崎委員長、それから私、青柳小委員長ほか委員三氏がPHWに参りまして、保健婦助産婦看護婦法の改正に関しまして、意見の交換をいたすべく懇談をいたし、なおオルト氏を参議院の議長サロンにお招きいたしまして、お茶の会を開き、ここでもいろいろ懇親を重ねるようなこともいたしたのでございます。そこで決定いたしました案はお手許に差上げてございますが、大体におきまして、甲種、乙種の差別をなくして、その乙種に付いておりました業務制限が、随分実務の上におきまして支障を来たしておるというような点から、この業務制限を撤廃いたしまして看護婦一本にする。そしてこれは六三三三でございましたのを、これからは六三三二にして看護婦は一本でやる。それからそのほかに乙種はやめましたが「准看護婦」というものを置くことにいたしました。それは高等学校からだけ進学するということでは、日本の実情からどうしても看護婦の数を満たすことができませんので、中学を終つたものが二年の教育を受けて准看護婦になる。そうして三年間実務につきながら勉強いたしまして、六三三二の最後の二年へ編入試験によつて入学することができるということにいたします。今まで乙種から甲種になりますのは非常に困難な途でございましたが、これを改めまして、努力さえするならば容易に看護婦に進むことができるという途を講じたわけでございます。それからこの准看護婦には業務制限を廃しまして、従来は重症であるとか、或いは手術の介助であるとか、それから褥婦の世話ができないということになつておりましたのを、これは医師、看護婦の指導の下にということにいたしまして、この業務制限は撤廃したわけでございます。それから一番問題になつておりましたつまり既得権者と呼ばれておりまする以前の、昭和二十三年施行前に看護婦であつた人たち、この人たちの処置につきましては、いろいろと問題がございました。参議院といたしましては、昭和二十三年度の新法の制定されるときに看護婦であつた人は、これを無條件で看護婦に切替えるということで主張いたして参りましたが、いろいろ衆議院のほうと相談をいたしました結果、小学校、中学校或いは高等学校等、或いは実務についた年数等を通算いたしまして、十三年に満ちたものは、これを厚生大臣の定むる講習を以て看護婦に切替えるというふうに決定をいたしたのでございます。それから当分の間乙種の扱いをどうするかということがいろいろ問題になつたのでございますが、これ又この十三年ということの規定をいたしまして、容易に看護婦になれる途を開いたのでございます。大体は法案によつて御覧を願うといたしまして、そういうことに一応決定を見ましたので、皆様がたの御承認を得たいと思います。そうしてこの法案を以ちまして、皆様の御承認が得られましたならば、直ちに翻訳いたしまして、関係筋との折衝に入りたいと存じております。
以上簡單でございますが、御報告をさして頂いた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/21
-
022・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 以上のような御報告を御理解頂きまして、この参集両院の意見が一致いたしましたのですが、それを法案化いたしましたのが、お手許にございます保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案(衆法制局試案)こうなつておりますのが、それでございます。それでこれを若しも御承認願いますならば、これを今小委員長藤原委員の御報告のように、これを以ちまして関係筋と交渉するわけでございますので、一応お目通し願いまして、藤原委員から御報告申上げたああいう内容を、まあこういう法制化いたしましたものでございまして、前に看護婦法がございますから、それをこういうふうに変えて行くという法制的な表現になつておりますので、内容は先ほど藤原委員が御報告申上げましたような内容で、これは先般来御理解を頂いておる次第でございまするので、法制化いたしますと、何だか大変遠のいた形に見えて来るのでございますが、これは前の法律との関係でこういうふうに訂正する形になつておりますからでございますが、内容は藤原小委員長の御報告のように、参衆両院がその点に立ちまして主張いたしたいという案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/22
-
023・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ちよつとお尋ねしますが、今現在、旧制度のいわゆる看護婦が十三年間を超えました場合に、厚生大臣が定める講習をやると、この講習はどのくらいの予定でございますか、そういうことまでは進んでおりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/23
-
024・藤原道子
○藤原道子君 実はこの講習は、講習を以て切換えるということになりますと、いろいろな不平等が出て参りますので、是非切換えて、あとで講習すればいいじやないかと思つたのでございますが、いろいろな関係でこういうことになりました。この講習は従来受けた講習も生かして、それからいろいろな簡便な方法を以て誰でも受けられるようにして行こうというので、ここには特に何時間ということを入れないで、厚生大臣の定むるということで一致点を見出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/24
-
025・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 もう一つ、この前もちよつと話が出ておつたようでございますが、いわゆる六三を出て二年やります、あの二年のほうの養成機関は、今まで通りでありましようか、或いはそれとも今まで通りと申しますのは、これまでは総合病院でないとできなかつたのが、それを今度はほかの單科病院の集まつたものでやれるというような話が出ておつたのですが、如何になりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/25
-
026・藤原道子
○藤原道子君 その点は従来のような養成機関でございましたら、どうしても看護婦の実数が足りませんので、とても医療機関が運営困難に陷る、それでいわゆる関係筋では相当強い意見がございますけれども、衆参一致した立法府の意見といたしまして、これよりほかに方法がないのだというところで、向うへは一つ了解を求めるようにということで、單科病院でもこの中に入つておると思いますが、連合いたしまして、それで養成機関を持つことができる、或いは医師会その他の養成機関を持てるというふうになつておるわけでございます。それで私はこの准看護婦という制度でなくして、中学校からもすぐ入つて、四年乃至五年で、養成機関を高等学校から行くのと二本建にして、結局は両方とも看護婦、ただ養成機関が二本建というふうにしたいと思いましたけれども、そういういろいろな困難な事情もございまして、中学から二年で実務を経て最終の学科に編入できるということならばというので、私も妥協いたしまして、こういう案になりましたが、この准看護婦がいいか、或いは看護婦助手がいいか、或いは臨床看護婦にするかというふうな、いろいろな御意見が出たのでございますけれども、結局准看護婦ということに一番御賛成が多くて、こういうことになつたのでございます。それで養成機関の点については相当むずかしいかと思いますけれども、日本の実情を十分に話して、是非ともこの点は納得してもらわなければならない、こう考えてそれで「医療法第四條に定める各科を有する病院には、病床数にかかわらずこれを設置することができることとすること。」、二といたしましては、「二以上の病院又は診療所を合して医療法第四條に定める各科の病床を有するときは、これを利用してこれを設置することができることとすること。」、「都道府県又は都道府県医師会等は夜間又は時間制のものを設置することができることとすること。」というふうに、ここへ現われておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/26
-
027・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ほかに御質問如何ですか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/27
-
028・有馬英二
○有馬英二君 大体において先般来小委員会で数回に亘つて、又合同委員会を開いて討議或いは勘案いたしました通り、大体この衆法制局試案、この一一のことは殆んど見てもわかりませんけれども、この要項に收められておるものが、即ちここに法制化されておるものと私は解しまして、これに賛成の意を表します。大体ここで皆さんの御承認を得らるるならば、直ちにその手続を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/28
-
029・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 有馬委員のお言葉もございますが、御提案のような御趣旨に皆様がたの御異議はございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/29
-
030・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 一応これを御承認頂けましたものといたしまして、次の手続に入りましてよろしうございましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/30
-
031・石原幹市郎
○石原幹市郎君 更に今度よく研究して、意見のあるところを申上げるのでありますが、一応これで出されるということはいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/31
-
032・藤原道子
○藤原道子君 そこで私の考えといたしましては、結局翻訳ができましたら、あちらへ折衝するわけでございますが、そのときに衆議院と参議院と一緒にやはり交渉に行つたほうがいいと思うのでございます。そうしてそのときに行つて頂く人も一つ御相談申上げて置きたいと思うのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/32
-
033・石原幹市郎
○石原幹市郎君 小委員のかたが行かれたらいいのじやないですか。そうは行かないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/33
-
034・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 藤原委員は何か御成案でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/34
-
035・有馬英二
○有馬英二君 この点においては小委員長であつた藤原さんもいろいろお考えがあることと思いますから、委員長とよく御協議の上でおきめになつて頂きたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/35
-
036・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 藤原委員それでよろしうございますか……。それじやそうさせて頂きます。
それでは保健婦助産婦看護婦法の一部を改正する法律案につきましては、これで打切りまして、なおもう少し時間を頂戴いたしまして、実はこの間から視察に行つて頂きました派遣議員報告が、もう一部のほうが残つておりましたので、この際追加いたしまして、今日有馬委員もお見えでございますから、有馬委員から御報告を伺うことに
御異議ございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/36
-
037・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/37
-
038・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは有馬委員にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/38
-
039・有馬英二
○有馬英二君 それではできるだけ簡單に要点だけを申上げます。私は第二班の一員といたしまして、社会保險経済及び結核施設の実情について、福岡県と長崎県、熊本県に二月二十四日に東京を出発いたしまして、三月三日に帰京いたしますまで、この三県の現地を調査いたしたのであります。他の議員諸君の御事情で私一人が多田専門員と同行いたしまして、視察に出かけたというようなわけであります。以下この三県の現状について御報告いたします。
最初に福岡県の結核の現状から申上げます。福岡県は全国においても特に結核蔓延の著るしい県に属するところのものでありまして、昭和十七年には全国第十四位にあつたものが、戰後は昭和二十二年には全国第二位に飛躍したという関係、二十三年は第五位、昨年即ち二十四年は第六位を占めておるというような状態であります。死亡数も全国の約二十分の一に相当して、九州地方の結核死亡の三分の一を占めておるというような現状であります。でありまするからして、福岡県の結核死亡の動向は、九州は勿論全国の結核死亡にも大きな影響を有するものであるということが大体了解できると思います。これは近年、昭和六、七年以後の戰時状態から、特に本県の産業が非常な特有な戦時産業の発達、これに伴うところの動員、人口の移動というようないろいろの因子が作用いたしまして、かような状態になつたのであろうと考えるのであります。一々の死亡数、死亡率等は省略いたします。結核死亡の分布はやはり地域的に市部のほうが郡部よりも非常に多いし、高率を占めているのであります。それから御承知のように福岡県は非常な大きい県でありまして、県の中に市が十一もあるというようなところであります。その十一市の死亡率が十九以上を占めておりまして、結核予防特別市に指定されているという実情であります。それからこの市部に県民の約四割以上が居住しているのでありまして、ここに結核が非常に猖獗をしているということは、結局この人口の密集というようなことがやはり大きな原因になつているようなわけであります。県では昭和二十四年から結核撲滅対策というものを作りまして、県政の重大施策として、昭和二十八年まで死亡率半減を目標として闘つているようなわけで、この点は行つて見て、県当局が相当有力に働いているということがうなずかれたようなわけであります。それから各保健所は結核の予防の中心機関として活躍しているのでありますが、これは大体において施設がほぼ完備しているようなふうに見受けられました。なかんずく検診、健康診断、それからBCGの接種等も毎月励行しているようでありました。ただ療養施設が不足なために、患者の九五%が自宅において療養をしなければならんというようなことは、これは感染源を市井に有しているというようなことで、本当の結核撲滅にはまだまだ甚だ遠いという観念を抱かしめたのであります。二十四年度において保健婦の家庭訪問というようなものは前年度より三倍も多くやつている。それから人工気胸も二倍以上に増加をしているというように、相当努力をしているようであります。ただ結核の病床がやはり少い、本年の一月現在で療養所が三千四百十三床、一般病院が千八百七十二床、計五千二百八十五床になつております。でありまするからして、死亡者の七割五分にしか相当しない。結核病床を急激に増床いたさなければならない。こういう方面においてはまだ遺憾な点が多々あるように思われるのであります。
それから社会保険のほうでありますが、細かい数字はたくさん出ておりますけれども、省略いたします。医療のほうでは保險医の指定、それから療術業者との診療契約の締結、改廃というようなこと、講習会を開催して保險医の指導に万全を期しておるようなわけであります。それからただここでもやはり県当局に聞いて見まするというと、保險の面において大学が余り協力しないということをやはり訴えておりました。この点は大学当局が未だに保險料についての理解がないようであるというようなことを言われておりました。それから国民健康保險のほうは一般にこの県はいいのであります。但し御承知のように市町村で以てまだ国民健康保險をやつていないものが非常に多い、実施率が四一%に過ぎない。それから国民健康保險の経済状態は收納歩合が五四・五%ぐらいにしか過ぎない。但し今年度末までには七五%になる見込であるというようなことを言つておられました。ここで県当局の保險課の人から、非常に熱心に当局が特別な誠意を以て保險を遂行するにおいては、なかなかいい成績を挙げることができるものであるというような報告がありました。この点は他の県よりもこの県の保險経済におけるところの方面の努力が、いささか優つておるというように思われたようなわけであります。ただ県当局の意見といたしましては、保險課長以下保險課員は地方事務官の身分を持つておる、ところが職務に関しては知事の指揮監督を受けるというようなことで、身分については知事は何らの権限も持つていない、而も俸給は県吏員よりも非常に低い、約五号俸も低いというようなことで、民生部長及び保險課長等の希望としましては、是非ともこれを県吏員に身分を切替えられたい、そのほうが仕事も都合がいいし、それから待遇も非常によくなるというようなことで、その方面の要望が非常に切なるものがあつたようであります。それからなお県当局の要望といたしましては、結核については結核病床の増加ということが、御承知のように、今年から非常に厚生省がこれについて意気込んで大々的に今度はやられるということであるが、どうも国庫補助が非常に少い、これくらいの国庫補助では到底我々が望んでおるところの増設がむずかしい、厚生省は国庫補助をもつともつと殖やして、そうし
て十分に国費で以て結核病床の増設を図つてもらいたい、こういうようなことを言つておりました。従いまして県当局から言いまするというと、今回の即ち二十六年以後の結核対策、厚生省の結核対策ということについては、なかなか末梢における実施が非常に困難であるということを県当局は申しておるわけであります。
私どもは国立屋形原病院、屋形原結核療養所を参観いたしました。それから社会保險協会経営の仲原診療所という診療所を視察をいたして来ました。屋形原病院は非常に古い建設でありまして、これはたしか大正十四年頃の建設であつたかと思います。現在二百三病床しかないのでありますが、非常に古くて、もう改造しなければならんような域に達しておるような病院であります。医師がたつた二名しかいない、それからして看護婦も非常に少ないようでありまして、ここらも非常に困難を感じておるようでありました。それから社会保險協会の経営しておる仲原診療所という所を見て参りましたが、これはもと産業復興公団が復興金融公庫の融資を受けまして、県内二病院八診療所の一つとして、この診療所が起つたものであるのだそうであります。ところが公団が解散いたしますと、県の社会保險協会がこの経営を委託されまして、県費五百五十万円で修築されたのであります。然るところ公団の資金が凍結せられているので、大蔵省はそれを復金の償還費に充てるというようなつもりであるらしい。それで幾ら交渉をしても、この金を大蔵省が凍結しておつて解除してくれない。それがために地元としてはどうしてもこの診療所を完備できない、建物はできておるのでありますが、内容が全く充実されておらないのであります。こういうことからして、是非とも速かに凍結の資金を解除してもらつて、そうして県の充実費六百万円と、それから未払金が六百六十万円あるそうでありますが、両方合せて一千二百六十万円の資金を以て直ちに二病院と八診療所の完備をしたいということを非常に要望されておりました。これは誠に私どもも同情に値するのであります。これにつきましては、自由党の政調会長なども中に入られて奔走されているんだそうでありますが、今日まだ解決されておらないということで、これは私ども厚生省にも、大蔵省にも十分了解を得まして、速かにこの資金の凍結を解除されて、正しい運行に導くようにしなければならんかと思つた次第であります。
それから次は長崎県でありますが、長崎県は結核死亡が相当の数であつたのでありますが、昭和二十二年に死亡数が三千八十四人、人口一万当り二〇・三であります。それから昭和二十三年には二千八百二十八人、一万当り一八・一、それから昭和二十四年にはやはり一七・一、二十五年には九・四というように、死亡率が年々急速に減りつつあるようであります。集団検診、それからツベルクリンの実施、BCGの接種というものも次第に県民の理解ある協力によりまして進んでおるようであります。ただこの県は、御承知のように、島が非常にたくさんある、そういうところへこの検診或いはBCGの接種というものを行うことが非常に困難である。出張費が非常にかかるというようなことから、他の県から比べるというと、そういうような方面の実施に極めて困難を伴うものがあるということを県当局は言つております。その点は土地の事情上非常に同情に値するところがある。併しながら県当局の多大の努力によりまして、今日かくのごとく死亡率が減少したということは、これは誠に注目に値するところがあると思います。この県は他の県から比べますというと、国立の療養所というものが一つもないのであります。このことは非常に結核対策上県が遅れているということをつくづく感じたようなわけでありまして、それがために県当局の要望としましては、国庫が思い切つて補助する、そうしてこういう方面にもつと施設を増してもらいたいということを言つておりました。それから長崎県の保險の状態、これは一々の数字は省略いたします。他県に比して保險の利用件数が非常に多い。それがために支給総額が相当多いが、これは趣旨の普及が徹底しているのと、それから炭鉱地帯における事業主の経営する医局が多い、そういうために起つておるようである。一件当り点数がむしろ下廻つておるような状態である。なお最近の健康保險財政の危機に対しましては、主として左記の対策を樹立して給付の適正を期しているということであります。即ち保險医の指導については医師会、基金事務所との共催によりまし七、地区別に指導講習会を開催するほか、毎月一回保險医指定前の医師に対して講習会を開催いたしておる。なお不当請求というような点についても増加の傾向にあるけれども、今日においては、だんだんその方面の理解が進んで来て、不正請求の件数がだんだん減りつつあるというようなことであります。それから国民健康保險のほうの現況は、市町村数は百六十でありますが、そのうち六十六が行なつておる。でありますからして、割合に実施数がこの県はいいと言つても差支えがない。直営の診療所を設置しておる市町村が四十一であるそうであります。それから私どもは長崎市立病院、それから市立稻佐養老院、それから聖フランシスコ病院、これはカトリックの病院であります。それから養護施設としての向陽療、教護院の開成学園、それから大学病院というようなところを視察をして参りました。そのうち長崎市立病院というのは、もと伝染病院であつたのを半分だけ結核病棟に当てて結核患者を收容しております。大体において施設は如何にも長崎県は不完全であるという感を抱かせられるのであります。ただ外国人の経営している聖フランシスコ病院、これはカトリックの病院でありますが、病床はたつた七十しかありませんが、非常に清潔な整頓された病院であるということを見て参りました。
次は、熊本県でありますが、この県も結核死亡率から言うと漸次減少の一途を辿つておるようであります。終戰の当時は人口一万当り二二・五七であつたのが、二十五年には一三・三三に低下しておる。でありまするから、全国各府県と比較いたしまするというと非常に低い、約三十五位でありまするから、尻のほうから勘定するのが早いほうであります。言換えて見まするというと、結核の蔓延状況は他の府県から比べると少いということが言えるようであります。どういうわけでかくのごとく一時低下を来たしたかということにつきましては、県当局もはつきりした解釈はできかねておるようでありますが、一般の結核予防に対する理解ということと、県当局の撓まざる努力によるものであろうと私どもは見て参つたようなわけであります。それからこの県もやはり結核病床の増設については国庫の補助がどうも足りない、もつと大幅に国庫補助を要望するというように言われております。それから国立療養所の再春莊というのが、これは七百名以上も收容しておる非常に大きい国立療養所であります。これもいわゆる軍事保護院の遺物として、あの当時の傷痍軍人療養所が今国立になつたのでありますが、患者が非常にたくさん入つておるのでありますけれども、医者が非常に少い。例えば医者は二十二名の定員のうち十六名しか入つていない、それから看護婦も定員が百三十二名に対して欠員が二十八名もあるというようなことであります。又雑役婦が足りない。それから病院が非常に古くなつて腐朽しておる。このほかいろいろな施設に甚だ不完全なところが多いようであります。例えば排水が非常に不完全であつて、水が廊下の横の庭にもうたくさん池をなしておるというような状態であつて、誠に不潔極まるものである、こういう点はもつと厚生方面が改善整備されなければならんというように私どもは見て参りました。なお視察して来たところでは国立療養所と菊池恵楓園癩療養所を見て参りました。それからなお兒童收容施設の肥後学園、それからカトリツクの経営の癩療養所も視察をして参りました。詳しいことはなお一応ここで読上げますと余り時間がかかりますから、速記のほうにこれを廻して記録をしてもらおうと考えております。
社会保險のほうは、昨年四月から本年一月までに一億二千七百二十七万幾らの給付状態であります。又診療費の支払はやはり一億百数十万円を要しておるようであります。健康保險の直営の病院は八代、人吉、天草等にそれぞれ総合病院があります。病床が二百四十七あるそうであります。昨年四月から本年一月までに社会保險関係の患者二万三千人、一般患者一万三千人の診療をしておる、経営は誠によく行つておるらしい、收支相償つて若干の黒字を出しておるというような状態であります。国民健康保險のほうでは、市町村数が三百十でありますが、全体としましては、現在では百五十四の町村が事業を休止しておるというような状態であります。こういうようなことも今回の国民健康保險の改正というようなことによりまして、漸次これがいいほうに向つて行くのではなかろうかというような感じを持つて参りました。ただ県当局の要望としては、国民健康保險に対しましては、給付費の少くとも二割を国庫負担としてもらいたい。それから結核については五割の国庫負担をお願いしたい。なお国民健康保險の運営については長期の貸付金の実施をしてもらいたいというようなことを言つておりました。なお大学病院の保險についての協力は他府県よりもやや良好のように思われますが、併しまだ点数制をとつていない。併し請求の内容の審査は割合可能のようになつて来ておる。これは例えば福岡ではやはり審査が殆んどできないような内容の請求書を出しておるというようなことを言つておりました。この点においては熊本県は福岡県よりはやや当局の理解があるというようなことでありました。
以上簡單でありますが、御報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/39
-
040・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 ちよつと私から希望を申したいと思いますが、折角議員が視察をいたしまして、そうして貴重な材料を持つて来たのを報告されるのですから、こういう場合にはその関係当局はやはり来て、よく聞いておつてもらわんと、あとで書面が出ただけでは折角の貴重な材料が葬むり去られてしまうような気持がいたしますから、今後どうぞ一つ折角の報告の場合には必ず出て来るようにおとりなしを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/40
-
041・有馬英二
○有馬英二君 それに関連しまして、私からも視察の際に私が感じたこと、並びに地方庁で要求されるようなことについては、改めまして厚生当局を呼び出して、一つこれについて十分の意見と、それから厚生方面の何を聞きたいと思います。その点は一つ又後日にお取計らい願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/41
-
042・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 皆さん御異議ございませんですね。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/42
-
043・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ではそういうふうに取扱うようにいたします。一応午前中の会議は休憩いたしまして、なお又一時半から社会福祉事業法案につきましての御質疑を継続いたしたいと存じます。
午後零時三十二分休憩
—————・—————
午後一時五十八分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/43
-
044・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 午前に引続きまして、厚生委員会を開きます。社会福祉事業法案を主題にいたしまして、大体午前は説明を伺いましたから、これから皆様がたの御質疑を御随意になさつて下さいませ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/44
-
045・山下義信
○山下義信君 大体法案の目次の順序に従いまして、主要な点を伺いたいと思うのであります。総則はあと廻しにいたしまして、この社会福祉審議会のことでありまするが、率直に申上げまして、各種の審議会が最近種々なる立法の上に審議会の設置が出て来ておるのでありますが、当初は行政の民主化という面からいたしまして、大いに民意を取入れるといつたような気持で、この審議会の設置というものが一つには行われて参りました。同時に又一面からは政府がいろいろな調査会や委員会や又審議会等を持つておる、それを一つの国家行政組織の中に入れまして、審議会というものも一つの行政組織の一環という形で整理して行くということが行われて参りまして、御承知のごとく今日に至つたのであります。ところが実際問題としては、ただ名前だけ如何にも民主的な運営をするというような名目で設けてはありますが、実際といたしましては、多くの期待が持てないというのが現在の非常に多数ありまする審議会の実情であるかのごとくに見えており、最近は政府のほうにおきましても、関係方面の示唆によりまして、審議会の整理をするということになつておるのであります。我々としまして、この審議会というものを置きますというと、置けば置くだけの価値のある、置く必要のある、置くだけの重要性のある内容と言いますか、存在性を持たせねばならんと思う。一応ただそういうような近頃の流行であるから、こうしておけば、まあ民間の人も納得するだろうというような、あり来たりの考えで置くような審議会はなくてもいいのじやないかという気持がするのであります。これは一つには官僚独善の弊をできるだけ矯正いたしまして、右申上げましたような広く民意を取入れようという考えかたで行くのであります。ところで社会福祉事業法案の上におきましては、民間の社会事業家の連合会というようなものの組織が、要請に答えて本法の中に規定せられてありまして、民間の社会事業家の意見を聞き、民間の機関というものは本法実現の曉には法規の上におきまして、期待し得られるものがあるのであります。政府部内に審議会を置かれる特別の必要なる理由はどこにあるかということを考えるのであります。ところが審議会の任務をどうしておるかということになると、誠に漠然といたしておつて、いわゆる社会福祉の関係ある共通事項の審議をさせるようなことになつておる。それだけのことでは非常に曖昧であります。第六條におきましては、社会福祉の全分野における共通的基本事項その他重要な事項を調査審議すると、こうある。これはどれだけの期待が持てるのか、審議会をどれだけ活用するのか、どれだけ重要視するのか、言換えれば、どういう事項を審議会に掲げようとするのか、午前中の御説明にもあつたかと思いまするが、一つ聞いて置かねばならん。置くならば、しつかりした審議会を権威のあるものにしなければ、折角委員を民間から任命しても、おざなりのことではいけないと私は思うが、そうして一面には話は先に参りますが、專門分科会をいうものを置けるようになつておる。これは第十條ではつきりしている。その他も必要によつて分科会も置けるようになつておる。若しその他の分科会を置くとしますと、どういうものを置きますか、身体障害者専門分科会を置きますか、兒童福祉専門分科会を置きますか、そういうものは置かせないですか。それで専門分科会というものは生活保護法の専門分科会に限りますか、或いはその他の分科会は或いは総合企画分科会として、分科会とかいつたようなものについて身体障害者とか、兒童福祉の専門家を置くか置かんか、方針をどうするか、若し置けば、言うまでもなくそれらの身体障害者福祉法の持つている身体障害者福祉審議会或いは兒童福祉法の持つている兒童福祉審議会との調整はどうするのか。私どもから言えば、今の審議会のありかたの傾向からいつても、若し本法において本当の社会福祉審議会というものを以て、そうしてこれが本当に上からここに審議会を置いて、分科会で各種の社会福祉の分野に関するものを扱うというならば、他の兒童福祉審議会や身体障害者福祉審議会をここで統合しなければならん。そうしなければ両者との間の関係が「まんじゆう」である。つまり二重になる。二重にならざれば、いずれかが軽くなる。そういうことをすることは無意味であると私は考えるのでありますが、この審議会に期待しようとする、権威を持たせようとするところは、一体どこにあるかということを明白にいたして置かなければならん。ただ單に厚生大臣の諮問機関であるというのならば、行政上の職員なんか必要がない。これは関係行政庁の職員とは何を指すか。若し労働省とか文部省とか或いは法務府であるとか、そういう関係のものも入るのだというならば、それらの分科界の社会福祉のものも皆この本法の支配を受けなければならん。そういうものが支配せずして、厚生省所管の社会福祉だけが本法の対象になるというならば、この関係行政庁の職員というような者は、他省の職員を入れる必要はないと私は考える。それでこの関係行政庁の職員というのは何を指すか、何を期待しておるかというのを……。質問が二、三混同いたしましたが、要するところ社会福祉審議会というものを置くならば、我々は多年要望するように権威のあるものにこれをしてもらわなければならんという趣旨なんですから、そういう意味でこの法案審議について、この法案の内容をここで内容付けて行くという意味で御答弁を願いたい。
なお私は自分の質問態度につきまして申上げたいと思いますが、私はこの法案の大体においては結構だと思つておるのでありますので、この法案の内容を十分審議の際に立法府としてこの法案の価値をここで増して行きたい。起案者が考えている以上に、場合によつてはこの法案の価値付けを立法府がして行こう。あなたがたが考えただけを我々が鵜呑みにするのではなくして、ここで政府と国会と両者が協力して、この法案をより以上に価値あるものにして生み出して行きたい。こういう考えの下に質問いたしておるのでございますから、決して揚げ足取りやそういう攻撃の意味は持つておりませんから、率直にそういう方向に御協力の意味で御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/45
-
046・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) お答えいたします。只今社会保障審議会の性格につきまして御質問があつたのでありますが、御意見誠に御尤もでございまして、この審議会が名目だけのものになるようなことがあつては設けた趣旨には反するという考えであります。ここで審議しまする事項は、この法律とそれから他の社会事業に関する法律、これとの関連のあります部面につきまして、他の特殊な分野のときに関係のある、例えば兒童福祉のみに関係があつて、一般の社会福祉と関連のない問題につきましては、それぞれ兒童福祉なり或いは身体障害者の審議会でいたしますが、一般の社会福祉事業全般に共通いたしまするような事項につきましては、例えば社会福祉、保護の問題でありますとか、或いは公共社会事業の組織の問題でありますとか、そういつたような根本的な問題につきましては、本審議会におきまして、基本的な方針等を決定するに必要な御意見を伺うようにいたしたいと考えておるのであります。それから申上げまするならば、兒童福祉並びに身体障害者の方面に一本に統合いたしまして、そうして全体が調整がとれたような運営をいたしますことが最も妥当であると言われるのでありますけれども、現在兒童福祉の問題なり、或いは身体障害者の福祉の問題なりが最近特に取上げられまして立法化され、そうしてこれの運営が特別に問題になつておりますので、この法案の仕事が或る程度見通しが付くようになりますまでは、ここに統合することよりも、統合せずに置くのが適当
〔委員長退席、理事藤森眞治君着席〕
であるというような意見によりまして、暫定的な考えかたといたしましては、かくのごとき形態をとつたようなわけであります。今後各種の審議会というものの運営をやつて行きます上におきまして、この審議会を中心といたしまして、お互いの調整をとるようなふうにいたして参りたいと考えております。なお専門分科会といたしまして、生活保護の専門分科会を特に挙げましたことは、従来は生活保護法の運営につきましての基本的な方針等につきまして、適当な審議会がございませんでしたので、これを各方面の要望に応じまして、ここではつきりいたしたいというふうに考えておるのであります。その他の専門分科会といたしましては、経済法関係或いは庶民住宅の関係でありますとか、庶民金融の問題でありますとか、或いは授産事業の問題でありますとか、そういつたような点の特殊の部門につきましては、分科会を設けて必要なる審議会をお願いしなければならんというふうに一応考えております。これらにつきましては、今後全体の審議会を開きまして、そうしてここで以て御検討をお願いしたいというふうに考えております。我々は差当りすぐ必要であるというふうに考えますのは、現在問題になつておりまする経済法関係の問題につきましては、是非ともやつて頂かなければならんというように考えております。それから勿論この審議会は、実際に社会福祉事業自体につきまして、知識なり経験なりを持つておられるかたがたから、その学識経験によりまして必要なる御意見を出して頂くようにいたしたいというふうに考えておるわけでありまするからして、関係行政庁を入れます場合におきましては、例えば公共の社会事業におきまする各種の財源の関係、例えば大蔵省でありまするとか、地方財政委員会でありまするとかといつたような財源関係につきましてのかたがた等にも入つて頂きまして、そうしてその方面の御意見というものもお述べ頂くというようにいたしたいと考えております。他の省におきましても関係のある部面、例えば文部省、労働省等は一応考えなければならんものではないか、経済法或いは社会強化といつたような面と関連がございますので、そういつた意味において参加して頂くというふうにいたしたいと考えております。これにつきましては、それらの関係分野というものも、社会福祉事業に関する限りにおきましては、やはりこの法案の分野の中に入るのじやないかという御意見でございまするが、これは誠に御尤もであると存ずるのでありますが、現在の状況といたしましては、一応こういうふうにいたさなければならんというような状況にあるわけでございます。運営に当りましては、只今お話がございました御趣旨に十分副うようにいたして参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/46
-
047・山下義信
○山下義信君 わかりました。それでは一つ政府において、この社会福祉審議会を十分権威のあるような運営をするということでございますので、一つ是非そういうふうにしてもらいたいと思いますが、その意味で今局長の御答弁になりましたそういう方向も成るほど当分やむを得ないと思いますが、将来は社会福祉に関する実際の唯一の審議会としなくちや権威がないのであつて、分散したのでは幾ら権威を持たせようとしたつて駄目なんです。でありますから、そういう方向へ一つ今後とも関係者との間の了解なり、御研究を願うとして、又兒童福祉なり、身体障害者という特殊分野においても、やはりこの権威ある審議会の一部門になつているほうが強力になり得るという考えかたもあるわけです。それは今の御答弁でいいとして、私が更にこの審議会の任務として考えて頂きたいと思うことは、午前に厚生大臣に一、二の質疑をいたしましたが、常に我々が申しておりまするように、全体的の計画というものについて私は非常に貧弱に感ずる、これは單に厚生省だけではなく、日本の今日の悲劇と申しますか、欠陷でありますと申しますか、でありますから、我が国の社会福祉に関する全体の計画というような調査をこの審議会でやらせるがよい。恐らくこれは政府の事務当局も御勉強であるというけれども、ここに持ち出して見て、或いは実地計画であれ、或いは対象についての計画であれ、かねて申しまするように、少くとも年次的なプログラムを以て行くというような行きかたがなければ、この社会福祉の分野に従事する者は、政府の目的がどうなのか、政府の計画がどうなのかということをちつとも知らない。知らないのは、ないから知らないのでありますが、それを作らなければならん。そういうような全体の計画を作ることを審議会でやつてもらいたい。ただ單に枝葉末節の事項を掲げて置くというようなことでなしに、根本的な一つの調査事項に当る、或いは又国と地方公共団体との関係でありますとか、或いは国が如何に……これはあとで私質疑いたしますが、地方公共団体の仕事についてどれだけの監督をして行くか、又監督をするがよいか悪いか、或いは又社会福祉法人に委託をする、その委託についての問題なども、この審議会で決定してもらえば非常にこれはいいのじやないかというようなことが考えられるのであります。そういう重大な問題を一つお取扱い願い、それを決定してそれをずんずんとつて行くというようなことにして頂きたいと思うのです。この六條の目的でもよろしいのでありますが、そういう意味に第六條を解釈いたしたいと思うのです。更に私がお考えを願いたいと思うのは、この社会福祉法人その他本法に厚生大臣に相当の権限を持たして、権力を持たしてある、或いは認可といい、或いは解散命令といい、権限を持たしてある。それに対しての若干の不服の申立の一部、どの分であつたかヒアリングなどができるようなことにもなつておりましたが、この社会福祉事業はただ厚生大臣の諮問に答えるだけでなしに、本法に関係のある関係者がいろいろ行政措置等について苦情を持込んで、この審議会で最終の審判をしてもらえるような法律にはなつても、ここでもつて一つの重要事項の調査審議という意味で、少くとも大臣が解散を命令するといつたような重大な場合には、この審議会の意見を聞くくらいのことをしてもらわなければ、この社会福祉法人その他の保護の面が、そういう点において本法では欠けておる。それは生活保護法などの規定から比べて見ると、そういう保護の点も欠けておるやに見受けるから、進んで積極的にこの社会福祉審議会が、そういう点にまで一つの任務というか、仕事を持つて行くというようなことを研究して頂きたいと思うのであります。そういう点立案者でお考えとは思いますが、法案の表面に出ておりませんから、その点の御意見がどうでありましようか、できればこの席で承わつて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/47
-
048・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 只今の御意見誠に御尤もでございまして、各分野におきまするところの共通的基本事項その他重要事項と申しまするか、只今お話がございましたような社会事業の全般的な国の計画或いは地方公共団体との関係の問題、或いは民間事業に対する問題であるとかいつたような事項の基本になりますようなことは、すべてここで以て調査審議するということにいたさなければならんというふうに考えております。それから社会福祉法人の問題につきましても、只今の御意見のように法律上の権限ということでなしに、実際にこれらの専門的な御意見というものをかりる必要が当然あるものでございまするから、運営といたしましては十分に基本的方針をきめまする場合、或いはその方針通りに行かないといつたような場合におきまして、これについての取扱の仕方といつたようなものにつきまして、できるだけ審議会を活用するようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/48
-
049・山下義信
○山下義信君 審議会につきましては、最後に一つ黒木君にお伺いいたしますが、第十二條に、この審議会の運営に関して必要な事項は審議会自体が定めることにしてあります。いわゆる法律が審議会の委任立法する、こういう形体は非常に珍らしい。本員はこの法案によつて恐らく初めてではないか1と思いますが、これは立法上どういうことになりますか、この審議会で定めたものは審議会の規則である。そうしてそれは法律で定めた審議会の運営に関して、審議会みずからが定めたいわゆるプライベートのルールでこの公けの審議会という一つの機関を動かして行く、従来ならば言うまでもなく政令或いは省令に委任して来たのでありますが、この審議会自体に運営等の規則を委任して行くということは、これは法令上どういう範疇に入ることになりましようか、審議会の定めた規則というものは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/49
-
050・黒木利克
○説明員(黒木利克君) お答えいたします。これは従来には例がないのでございますが、社会福祉審議会の議事の手続なり、或いは審議会自体でいろいろ運営の細則をきめる場合は、この法律で審議会の裁量に任したわけであります。これはこの法律で審議会の性格なり、運営の根本に関する目的なり、或いは委員長がなくてはならんと、或いはその委員の資格なり、或いはその他の要件が書いてございますから、その他の細則についてはすべて審議会に委任して参る、こういうような建前で規定をいたしたのでございます。従つて審議会の議事手続なり、その他運営に関する細則で、この法律の性格なり、この法律の規定の範囲内で勝手にきめるということができるような途を開いたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/50
-
051・山下義信
○山下義信君 これは法制局と御研究下さつたのでしようから法理上疑義がないだろうと思いますが、この審議会の定める規則というものは厚生大臣でも如何ともすることができない、この法律によりますと。そうすると審議会自体の運営について、若しこれを省令で定めるというようなことならば、厚生大臣が責任を持ち、この審議会の運営について十分監督はして行けるのでありますが、審議会を厚生大臣が監督するのであるけれども、運営その他重要なことは審議会に任せてしまうと、監督といつても名ばかりでありまして、これはこれでも結構なんで、新らしい方向のこの行き方も非常に結構と思いますのですが、私は若干法理上疑義があるような気持がいたしますので伺つたのであります。ただ単に私的な規則によりまして、審議会は行政機関でありますが、行政機関の運営を今後審議会自体が定めるというこの規則というものが、どういうものの法令上どういう範疇に入るものかということが十分わからなかつたものですからお尋ねしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/51
-
052・黒木利克
○説明員(黒木利克君) 実は第六條で社会福祉審議会は政策の決定にあずからないのだと、単に純然たる諮問機関であるという性格を実ははつきりいたしまして、政府の責任転嫁をしないというような建前をとつたわけであります。従つてそういう純然たる諮問機関の議事その他いろいろな運営につきましては、委員長は勿論、民間の社会福祉事業に関する経験者なり或いはそれに従事する人で、権威のある人にお願いして、できるだけ民間のそういう公正な、立派な御意見を反映せしめたい。従つて審議会の性格なり或いは法律の各條で規定した枠内ですべてその議事の手続なりその他運営に関する細目はお任せするこういう建前をとつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/52
-
053・山下義信
○山下義信君 御趣旨はよくわかるのでありますが、これは前例がございましようか、専門員どうでしようか、こういう前例がございますか。当院におきましては御承知のごとく労働省の設置法をいたしますときに、労働省の部局を作りますることを政令に譲ると、こう設置法の第三條になつておりました。その條文に対しまして、当時の同僚の小野哲君が、部局を設置することを政令に譲るということは不可であるという議論を唱えまして、私どもはそれに賛同いたしまして、非常に紛糾を来して、遂に政令に委任する事項というものを極度に制限し、すべて法律事項に移すということを前例にしたのでございます。参議院は従来こういうことを伝統的に、ああいう立法例を開きますことは非常に慎重な態度をとつておりまして、法律が政令に又省令に委任するということは法理上からいつても疑義がございませんけれども、政令でもなければ、省令でもないというようなものに、政府機関の組織の一環でありまする審議会に運営を委任するというようなことを、全く法理上疑義があるかないかということを明らかにいたしておきませんというと、立法府としての責任がつかないように考えまするので、これは法理上この審議会を作ります根拠は何によりますか。従つてそれの拘束力、法的の効力というものが、どういうふうにこの十二條との間なり、その他の関係がどうなるであろうかということを明らかにしておかなければなりません、かように考えます。これは又後で御説明を頂ければよろしうございますから残しておきまして先に参ります。
この第三章の福祉に関する事務所でございますが、これは大変に御苦心を下さつて、社会保障制度審議会の勧告を十分にお探りになり、非常に御苦心を下さつて我々多とするのであります。主たることはり今朝の御説明で了解いたしましたから多くの質疑はいたしません。これは漸次所望の方向へ時間的に前進して行くところのほかはございません。が、併しこれだけでも一歩前進いたしましたことでよろしいと思うのでありますが、ただ私が憂えますることは、この過渡的なこういう状況を久しきに亘りまするというと、折角の福祉に関する事務の、いわゆる地区といいますか、事務所の設置といいますか、そういうものを要請いたしますそれ自体が非常に混乱に陥る虞れがあると思います。それで言うまでもなく、福祉に関する所管区域の混乱であります。従つてその取扱事務の混乱を来たすことに関連いたしまして監督その他一切が混乱を来たす、こういうことになる。はつきりと一定の人口単位でもつて区域を作るというようなことになると極めて簡単明瞭で、整然としてそれこそ我々の所望でございますが、或る所には地区を設け、或る所は事務所だけでよしとし、設けてもよし設けんでもよろしい、設けたいと希望するものは各町村までも設けることができるというに至りましては、これを一つの県で例えますれば、県自体の地区を設けて定める福祉事務所、又その中にあるところの市の福祉の事務所、又町村みずからが福祉事務所を持ちたいと希望する町村があるならば、無論村で持つて、又町は町で持つというようなことに相成りまするというと、これは福祉に関する事務所と、その辺が含蓄のあるところにしてありますが、例えば福祉地区事務所のあの理想的考え方というものとおよそ縁遠い、而も煩雑なる福祉事務所が設けられることになるのでありまして、その点を本員は憂慮いたしますのでございますが、そういう点に対するお見通しはどういうふうに考えておいでになりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/53
-
054・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 只今の福祉に関する事務所が非常に複雑な形になつておりますことは、現在の地方自治、特に市町村を中心といたしまする地方自治の考え方からかようにいたしたものでございます。従いましてこれが非常に複雑になつており、而も年々変更がされる可能性があるというふうなことになつておりまして、この間にいろいろと仕事の引継ぎの関係でありますとか、その他いろいろと運営のために、却つて事務がうまく行かないという支障が生じますることは只今御指摘の通りでございます。我々といたしましては、この態勢をもう少し整然としたものにするほうが仕事の運営はむしろいいんじやないかというふうに考えております。従いましてこのやり方を以て実際に町村が設置いたしまする場合におきりまして、やはり町村でも本当にうまくやつて行けるというものについてのみやらせるように指導いたして参りたいというふうに考えております。ただ徒らに町村自身がやりたいというだけでは適当でないと考えまして、やりましたりやめたりするようなことがいい加減にできないようなふうに指導いたして参りたい、かように思つております。なおその転換等がいい加減にならないというふうにいたしまするために、町村がやりまする場合におきまして一定の期間内に、而も都道府県知事の承認を受けてこれをやらせるということにいたしまして、その間の混乱をできるだけ少くいたすようにいたしたいと思つておるわけであります。
なお現在町村でやつておりまする事務を、福祉に関する事務所に引継ぐということに相成るわけでございまするが、これにつきましても六カ月間の猶予期間を設けまして、この期間におきまする事務的な指導によりまして、この間の混乱をできるだけ防止するようにいたしたいと考えております。先般来地方におきまするところの事務の整備につきまして、いろいろと厳密なる監査を施行いたしまして、この転換が容易に行くようにいたしたいということも一面考えておるようなふうなわけであります。
〔理事藤森眞治君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/54
-
055・山下義信
○山下義信君 只今の局長の答弁の中に知事の承認の件を十分考慮するということでありますが、私も期待をいたします。即ち本法で申しますと十三條の八項がございまするからして、濫設をいたしませんようによく町村に説いて聞かせまして徒らに複雑煩瑣にならぬことを希望いたします。この点は殊に與党の先輩の中山君もおられますし、地方行政の権威者でおられます石原君もおいでになるのでありますから、どうしても福祉地区行政というものがただ単に地方の一般事務行政を惑乱しようとするのではなくして特殊の行政事務というものを専門化しで行こうという考え方につきましては、御両君におかれましてもよく御了承の点であります。それが政府部内の自治庁関係者のいろんな意見によりまして、かくのごとく歪曲せられまして、不徹底なことに相成つた次第でございまするが、是非社会福祉行政というものを今日の保健所行政のごとく特殊の専門行政化して行かなければならん、一般行政事務とは違うという見地に御了承を頂いて、何も自治権を侵害するのではないという点につきましてお話合いのつきますように、與党のほうでもなお一層この点を御研究御盡力を仰ぎたいと思う。こういう姿のままでは私はいかんと思う。折角の狙いというものがこれでは殆んど水泡に帰する虞れがありまするので、この点は十分與党におかれまして御研究を願いたいと思う。我々の社会党で作ればこういうまずいものは作らんつもりであります。
なおこの保護の決定権につきまして、それにからんで町村に一つの不服があつて、かような事態になつた一原因であろうとも考えられますが、この福祉事務所におきまする事務の中には、保護の決定につきましてはどういう関係を持たせるつもりでございますか、全然関係をしないで行くつもりでございましようか。本法の現段階におきましてはこのような模様でありまするが、これが甚だ遺憾である。私どもはこういうような福祉地区の理想を持つならば、当然関係の各種の福祉立法が持つておりまする保護の決定権はここに集約せなければ意味をなさぬのでありまして、ただ単にサービスのセンターというだけでは意味をなさぬ。本法によりましてはただ単にサービスのセンターというような程度にとどまつておるのでありますが、或いは調査とかそういつたようなことの先般のようなことになつておりますが、そういうことでありまするならば、何も区域を定めて特殊の社会福祉行政地区の構想をいたす必要がない、保護の決定権が漸次こういう中心にこれが集約せられまして、完全無欠なる保護の決定実施がなされるということが狙いである。そういう点が本法におきましては欠けておるように思いますが、そういう点はどうお考えになられましたでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/55
-
056・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 只今の保護の決定権の問題でございまするが、これは当然ここで以てやりまする生活保護法、身体障害者福祉法、この定める各種の措置につきまして全力的なサービスをいたしまする最後のところは、そのサービスの調査いたしました結果によりまして直ちに保護すべきはすべきじやないかということが実質的にはきまつて来るわけでございます。それでここで以て決定をするようにするのが最も適当なのでございまするけれども、一応現業機関の整備ということを以て今日こういうような形態を考えたわけでございます。
なお保護の決定特に生活保護法の保護の決定につきましては、この福祉の事務に関する事務所を設置する主体がその決定権を持つことに一応いたしたいと思つております。従いまして市に設置いたしてやりまする場合には市長、町村に設置いたしてやりまする場合には町村長、それから都道府県に設置してやりまする事務所につきましては都道府県知事ということにいたしまして、それぞれ決定権者から福祉に関する事務所の長に決定権を委任するという形を取りたいと思つております。生活保護法の改正案がまだこの附則に入つておりませんけれども、現在我々が一応考えまして我々部内、並びに政府部内の他の各省等と話合がついた状態といたしましては、この権限を福祉に関する事務所の長以外には委任してはならないという形をはつきりいたしまして、その点の又指導いたしまする際におきましてはこれを委任するように指導いたしまして、運営に遺憾のないようにいたしたいと思つております。只今御指摘の点は福祉に関する事務所が本当に動くかどうかという点の問題でございますので、御意見の通りに我々としましては運用して行きたいということを申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/56
-
057・山下義信
○山下義信君 黒木君に伺いますが、この福祉に関する事務所の所員の定数のきめ方でありますが、法律で申しますと第十五條、これはいろいろお考えになつたことであろうと思いますが、これらのこの事務分量の基準は何か、どういうようなデータでおきめになりましたのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/57
-
058・黒木利克
○説明員(黒木利克君) 根本になりますのは現業の所員でございますので、これらの定員の基礎をいろいろなデータできめたわけなんです。残念ながら生活保護法の被保護世帯のデータしか確実なものがございませんで、児童福祉法その他の被保護児童なり保護者の正確なデータがそれまでに得られませんでしたので、それを最近やりました生活保護法の一斉調査の結果に基く被保護世帶数をデータとして採用したわけであります。そうして大体はアメリカの例を参考にしまして、一人の現業を行う所員がどれだけの被保護世帯を担当するかということを研究いたしまして、アメリカとは事情が違いましていろいろ交通機関の問題がございますから、我が国ではそういう事情をも参酌をいたしまして、地勢の関係、交通の難易というものを参考にいたしまして、大体都市の地帶におきましては八十世帯の被保護世帯を現業を行う所員が担当して、且つその地区内の児童福祉なり身体障害者のケースを担当して十分であろうということで、地域的には大体一人が生活保護の世帯を八十世帯を担当する。郡部におきましては交通の問題等もありますので、それを考慮に入れまして、大体被保護世帯数について一人の担当が六十五ということにいたしまして、その他の児童福祉なり身体障害者の対象になるものが、大体児童福祉については三割程度、身体障害者については五分程度のものを見込みまして、これならば大体担当ができるだろうということできめたわけであります。
それからその他の実は職員として事務を行う所員、指導監督を行う所員とあるのでありますが、それについては特に定数を置かなかつたのでありますが、これは予算的に指導監督を行う所員は一名、事務を行う所員に二名しか地方財政委員会との話合がつきませんでしたので、これは現業を行う所員の定数を基礎にして必要な所員を置くということで、特にこれでは定数の基準は書かなかつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/58
-
059・山下義信
○山下義信君 それでは次に社会福祉主事のことで伺いますが、これは現行法では四十五歳以下という年齢の制限がありましたのですが、これは結構でしよう、おとりになつても私ども異議がないと思います。この社会福祉主事の御説明の中にもあつたかと思いますが、この監督制度というものを一応系統的に簡単におつしやつてみて下さいませんか。この社会福祉主事を都道府県及び市に置く、町村に置くことができるとこうなつております。この社会福祉主事、それから一方は福祉に関する事務所に採用される者の資格は社会主事でございますから、要するところこのケース・ワーカーのこの監督制度の何と申しますかスーパーバイザーと申しますか、このものはどういうふうに、誰が誰を監督する、どの社会福祉主事がどの社会福祉主事を監督するという監督の系統はどういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/59
-
060・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 先ほど福祉に関する事務所の章にございますように、福祉に関する事務所という構想をいたしましたのは、事務所の中に現業を行う所員と指導監督を行う所員、つまりケース・ワーカーとスーパーバイザーとを設けまして、その仕事をやる間に日々の仕事をやりながらそのやりつつあるところを毎日指導監督する。その指導監督を事務所内の指導監督を行う所員にやらせる。つまり毎日、日常の業務を常に行うその事務所の中で監督が行われるという形をここでとりたいと考えておるのであります。なお事務所全体に対しまする指導監督、事務所全体の業務はうまく行つておるかどうかという、これは指導監督はそれぞれ都道府県知事に対しましてこれをやらせるような形をとりたいと考えておるのでございまして、その点はこの指導監督の計画を立てること、それからその実施をすることにつきまして第十九條に規定を設けました。なおこれに当ります指導監督の職員というものは、特別な資格制限を更に二十一條において設けまして、都道府県知事がこの福祉に関する事務所に対します監督を行うことができるようにいたしたのでございます。なお仕事そのものの監督、例えば生活保護法の実施の監督指導、福祉法の実施の監督、身体障害者法の実施の監督、そういう法の施行の面についての監督についての根拠規定はそれぞれの法律にこれを設けまして、これらが統合されまして、全体の指導監督が適切に行われるようにいたしたい、かように考えておるわけであります。
つまり、それぞれの福祉の事務所におきまましては、事務所の中で日常の業務の現業の監督が行われますが、今度は行政全体としての監督がその上にあります指導監督の職員によつて行われる。この監督と申しますのは、単に非違を剔抉するだけでなく、日常の業務のどこにうまく行かない点があるかということを発見しつ、その発見したものをここで補なつて行くというふうな形でやつて参りたいというふうに考えでおるのであります。従来、我が国で行われております、いわゆる指導監督といつたような面とは違つた新らしいやり方をこの際やつて参りたいというふうに思つているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/60
-
061・山下義信
○山下義信君 御答弁は了承いたしました。
今の福祉に関する事務所においてスーパーバイザーがあつて、そうして現業の仕事をやつて行く、これは本法によりまして極めて明瞭であります。それで、それは上級のスーパーバイザーとしては法律では知事若しくは市長、こういうことにまあなつておるわけでありますが、実態はやはり今説明の中に指摘された通りに、それらの監督に当る者は法の二十一條でありますが、特別の又法規で資格が要請されておりまして、その知事の権限を以ちまして専門のスーパーバイザーがいるわけでありまして、それらが上級の行政官庁におかれるのであろうと思うのであります。御説明でもそれに触れられたようでありますが、私はこれは非常に大切なところであろうと思う。こういう制度がうまく行くか行かんかは、結局この指導監督制度というもののしつかりした制度なり、筋が通つていなければ意味をなさん。それで専門家を使うということは、ただ単に末端の専門技術で勘で行くのやらいい加減のルーズなものではなくして、合理性を持たせ科学性を持たせ、特殊の専門的行政としてやるのだからいいのだという、末端のよさではなくて、専門家が専門家を監督して行くのだ、専門家が素人から監督されるべきではないというところに、この福祉行政は、私は画龍点睛のところがある、根本の欠陷は末端には専門家もいないし、たまたま専門家もあつてもそれを指導命令する者が素人であるというところに社会福祉行政が専門化して来ないところがあつて、今回これを是正しようとするのでありますから、当然そういう順次のスーパーバイザーというものの厳然たる存在なりシステムができて行かなければならない、こう思うのであります。そういう場合における、例えば府県におかれます、何と申しますか、身分関係と申しますか、例えば身体障害者福祉司、或いは児童福祉司というようなものと、この福祉の地区、福祉の事務所に配せられますこの社会福祉主事というようなものの関係は、そういう点はどういうふうになりましようか、もう一度明らかにしておいて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/61
-
062・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 児童福祉司並びに身体障害者福祉司、これにつきましては都道府県、並びに今度身体障害者福祉司につきましては市にも置くようにいたしたいと、こう考えているのでございますが、そういう所に置かれておりまする身体障害者福祉司、児童福祉司等は、指導監督をいたしまするところの社会福祉主事と同じようなふうにやるのが適当であろうというふうに考えております。ただ児童福祉司並びに身体障害者福祉司につきましては技術的な指導、技術的な顧問といつたような形、テクニシヤンと申しますか、そういうテクニカル・コンサルタントと申しますか、そういう技術的な指導をいたす、相談顧問をいたすようなものとしての機能も持ちますので、そういうようなふうに運用して参りたいというふうに考えております。まあ実施につきましては社会福祉主事の制度が逐次整備いたして参りますれば、更にこの問題につきましてはこれを整備することを考慮しなければならんのじやないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/62
-
063・山下義信
○山下義信君 それでは、漸次私の質疑は終了に近付きましたが、社会福祉法人のことで承わりたいと思うのであります。なおその前にこの社会福祉法人という特殊法人格を獲得して頂いたことは私は当局の労を非常に多とします。これは私はこういうふうに解釈してよろしうございますか。これは総則でありましたか、このいわゆる社会福祉事業というものを一種二種に分けた、これも私は適切に思う。その一種の性格二種の性格から行きまして、いわゆる国家若しくは社会の公共責任性を強く含めた性格のものを一種として云々と区別なさると、これは非常に私は賛成いたします。従いましてこの一種の仕事をプライベートの場合においては社会福祉法人というものによらなければならん規定は私も至極筋が通つていると思う。そこで社会福祉法人という法人格を持つものと持たないものと、こう出て来る。又一種の中でも必ずしも社会福祉法人によらなくても、原則がそうなつているのでもありますが、私は社会福祉法人という法人格は一種二種というこの差別による経営主体の標識ではないと思います。いわゆる民間社会事業の中においての、何と申してよろしいか、優秀な社会事業はいわゆる一種の仕事に堪え、或いはしておつてもよろしい、この目的でもよろしい、ともあれ社会福祉法人という法人格を法律において標識されたということは、その民間社会事業が国家の公共的福祉の委託に堪え得る力のある、又信用のある、確実性のある事業だというふうに私は思う。或る意味において民間社会事業の優秀なものであるということの言わず語らずの標識になるということが含まれていると、私はこう解釈します。それでなくては意味をなさんのでありまして、それでもう社会福祉法人何々々と、こう名称を掲げれば、これはもうすでにその事業の信用を標識するものである、かように私は考えたいと思うのでありますが、恐らく当局もそういうお考えであつて、従つてこの定款の厚生大臣の認可等については厳重なる條文もお設けになつているのではないかと考えるのであります、私の解釈が誤つているかどうか。つまり私の味わい方が誤つているかどうかという点につきまして立法者の所見を求めてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/63
-
064・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 社会福祉法人につきましては、我々といたしましては第一種社会福祉事業のみをいたしますもののために作つたものとは考えていないのでして、只今御指摘の通り、社会福祉事業というものを本来やる法人ならば、原則として社会福祉法人であるべきだというふうに考えております。ただそのほかの法人が第一種社会福祉事業以外の事業を営みまする場合につきましては、それもできるということに考えておるようなわけでありまして、社会福祉法人になりましたものは、その定款その他から見ましても、それから実際のその後の仕事のいたし方にいたしましても、この社会福祉法人の章に規定いたしておりまするところに従いまして、どこに持つて行きましても立派なものであるということがいつも明らかになつておるような状態で、若しこれが適当でないという場合には直ちにこれが是正されるという状態、つまり対外的に信用していい法人であるということを明らかにしよういう趣旨で設けたことは、只今御指摘の通りでございます。従いまして第二種社会福祉事業のみをやりまするものでありましても、適正なものは社会福祉法人としてなるようにいたしたい。むしろ先ほど申したように社会福祉事業をやりますものは、社会福祉法人がやるのが建前であるという考え方は飽くまでとつて行きたいというふうに考えております。併しそのために社会福祉法人を乱立させるようなことはいたしたくないとこういうように考えております。これらの運用につきましても、十分社会福祉審議会等を活用いたして、運営が適正に行くようにしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/64
-
065・山下義信
○山下義信君 大変明快な答弁を頂きまして満足いたします。この社会福祉法人の設立に当りましては、社会福祉法人といたしましては、法は少くとも最低基準以上の設備なり内容を有することを要請いたしておるのであります。で、この附属資料を頂いた中にあるかも知れません、あれば御指摘下さい。その大体の最低基準というものがございましたらお示しを願いたいのでありますが、この最低基準につきましては、すでに児童福祉法が失敗の歴史を持つておるのは御承知の通りであります。これは最低基準を要求いたしました児童福祉法が、経過規定として暫く猶予する、暫く猶予する、まあぐずりぐずりぐずりぐずりに相成りまして、随分時日を経て最低基準というものを政令でありましたか作りましたけれども、それが果して厳重に励行されているかどうか。率直に申しますれば、殆んど有名無実であります。これは本法も又この要求をいたしておるのでございまするが、その点について実施のお見通しはどういうふうになつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/65
-
066・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 事業の最低基準を作りまする最合におきましては、勿論徒らに理想に走ることなく、而も理想に一歩々々近付くような形でこれをきめるようにいたすべきではなかろうかというふうに考えております。従いまして最低基準をきめまする場合におきましては、現状よりも可能な限り歩を進めるようなふうにきめて参りたいというふうに我々は考えております。これらにつきましても十分社会福祉審議会等を活用いたしまして、その方面の御意見によりまして、実情に合わないような運営はしないようにいたしたいというふうに考えております。
なお社会福祉法人というものにつきましては、やはり一定の、我々が考えまして最低の基準だけのことができるものをこれにいたすようにいたして参りたい。そういたしまして、余りひどいものはこの中に入らないようにするということは、この社会福祉法人のところにございまする「社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない」ということは、やはり適当にやるだけの資産を持つておるということを要求いたすようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/66
-
067・山下義信
○山下義信君 それでは最低基準はこれからお作りになるのですね。そうですね。それならばそれでもよろしうございます。これから作るのでもよろしうございます。若しすでに最低基準というようなものがありまするならば、資料として我々に頂戴いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/67
-
068・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) まだこの必要な資産をどのくらい見るかという点につきましては、これは只今きまつておらないのでありまして、審議会あたりとも十分相談いたしましてきめるようにいたしたいと思つております。又第六十條のほうに施設の最低基準という規定を設けてございまするが、これにつきましては先ほど申上げましたような余りひどいものはいけませんけれども、実情に副わないような基準を作ることのないようにしたい。ただ逐次これが向上いたしまして或る理想に近付くようにいたしたいというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/68
-
069・山下義信
○山下義信君 どうもこれは切替をせにやなりませんので経過規定もございますが、便法もございますけれども、一応この最低基準というものも非常にふるいにかける根幹になると思いますので、これは非常に御苦心の点だろうと思いますが、できましたら資料をできただけでよろしうございますから、遅滞なく頂戴したいと思いますが、若しできなければすでに今日まで行政上こういう基準はお持ちになつておられるのでありまして、十分その点を御留意を願いたいことを申上げておきます。社会福祉法人は、こういう本法によりまして、殆んど本法の内容の重要部分を占めておるのでありますが、かくいたされましたゆえんのものは、ただ単に民間社会事業というものに厳重なる監督の枠をはめようと、いわゆる民間社会事業の一つの粛正をしようというだけでは勿論ないので、粛正ということは自然に行われる副効果であつて、そういうことが狙いであろうはずがない。若しそういうことなら行政措置でもできることなんです。法律がかくのごとく民間社会事業に一つの特殊の法人格を與え、かくのごとく立派なる民間社会事業の育成を望むゆえんのものは、要するところ言わず語らず公けの支配というものが、ここにこの法律を通して行われておる。具体的には民間社会事業の或いは予算、経費の面、或いは民間社会事業の従事員の人事の任免権等に及ばなくとも、かくのごとき種々なる法律によりますところの覊絆が設けられました以上は、もう事実といたしまして公けの支配のなし得る措置が開かれてある。又すでに認可等におきましてなしたといつてもよろしい。或いは定款といい、或いは事業内容といい、非常な制限が加えられております。これは言うまでもなく何のためかと申しますれば、民間社会事業を発達せしめるお考えであろうはずである、従いまして最も民間社会事業の今日萎靡沈滞いたしております原因は、言うまでもなくその財政の赤字であり経営難である。その施設の拡張のために財源に悩んでおりまする実情であります。そうして政府或いは地方公共団体はこれに委託をいたして置きながら、その委託費用たるや実際の費用の半額にも足りないところの実情は御承知の通り、一面には共同募金でそれをカバーさせる、なお足らざるものは民間社会事業家がいろいろな苦面をいたしておるというような事態に置くことは、国或いは地方公共団体の最もこれは改めなければならんところでありまして、本員が午前中厚生大臣に質問いたしました点はそれでございます。従いまして社会福祉法人をかくのごとき新形態に要請いたしまして、分けの支配の筋が通つて参ります母上は、もう憲法第八十九條の抵触は、この本法の制定によりまして、すでに社会事業法によりましてその一角を築いて頂いたのでありますが、なお基本法であります本法においてその点は私は明らかになつたと思う。そこで政府は民間社会事業の役目をお買上げになり、委託せられて参ります以上、その事業に対する公的の補助というものがぐんぐん途が拓かれたのではないかと私は考える。然るにこの法律の中にはそれが明白でございません。当委員会におきまして民間社会事業発達のために、社会事業法の改正をいたしましたるは、全く民間事業の発達興隆を望んだが故でございます。然るに本法におきましてはいろいろこの法案の中に、種々行政上の措置等が多分に織込まれまして、こういう形態になつておるわけでございますが、我々といたしましては、冀くは民間社会事業を法律によつて発達振興するところの法的根拠を望みまするや極めて切なるものがあるのであります。従いまして今後は法によりまして設立せられましたる社会福祉法人に対しましては、十分公けの補助が遠慮なしになし得るのではないかと考えるのでありますが、然るに原案を見ますると僅かに非常時の災害において損害を被つたものの復旧の費用だけを補助してやろう、こういうことが書かれてあるようでございます。これは大変結構ではございますが、只今申上げましたような多年の要望から参りますると、災害非常時だけでなくいたしまして、平生におきましてもその施設の拡張等に対しまして、或いは維持経営等に対しまして、十分公けの補助か御援助がなし得るような途を開かるべきではないかと考えるのでございますが、その点は当局におきましてただ災害非常時のみの復旧費用の補助をするという点にのみ限られました理由はどういう理由でございましようか、午前中に御説明ありましたらばよろしうございますが、なおこの席で承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/69
-
070・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 社会福祉法人等が経営いたしておりまするところの社会福祉事業施設に対しまして、国又は地方公共団体がその施設を利用すると申しまするか、その施設を利用さして貰う。そのために事業の委託をいたしまする事業と申しまするか、いろいろ各種の措置の委託をいたしまするが、それによりまして法の第五條の二号におきまして、御承知のような規定を設けましたわけであります。この場合におきましてこれによつて民間のものに責任を転嫁し、或いは財政的の負担をかけるということにつきましては、第五條の第一号を以ちまして厳にこれを禁止する規定を明らかにいたしまして、この間におきまして従来ありましたような各種の難点をこれで以て整理するように考えております。
なお只今御指摘のありました社会福祉法人に対しまする助成の問題でございまするが、ここに五十六條で以て一応只今御指摘になりましたような災害の緊急復旧の場合につきまして助成をいたすことの規定を設けたのでございまするが、これにつきまして明白な憲法関係といたしましては、これで以て助成はできるということに相成つておるのであります。補助を出すことができることに相成つておるのであります。ただここで災害の復旧の場合だけに限定いたしましたのは、これは現段階におきまして関係方面の意向といたしまして、この点は特に強調されておりまする関係上、この問題がかような條項に相成つておる。従いましてこれにつきましては憲法のほうの制限はこれで以て完全に除去せられたということは言つて差支えないというふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/70
-
071・山下義信
○山下義信君 この委託につきましての條文ですが、これはただ単に委託することができるというだけの條文でありまして、私どもとしてはもつと詳細なる條文があつたらいいのじやないかというような気持がいたしておるのでございますが、政府が民間に仕事を委託するという法的根拠が従来は全然なくいたしまして、そして従いまして委託したものの責任というようなものも非常に不明瞭な状態であつたのでございますが、今回はその委託についての條文が一カ條出されてあつたのでございますが、この委託に関しまする費用の責任でありますとか、或いは委託の取消でありますとか、或いは又そういうことが、委託の中止というようなものが軽々に行われてはなりませんので、そういうこの委託についての契約でありますとか、そういうような若干の、被委託者をして安堵してその事業に精励させるような、若干の法的根拠があればいいと考えておつたんでありますが、非常に省略にされておりますが、これは何か他の省令等によりまして、それらの準拠せられまする、或いは責任や取扱方が安心されまして公共、の福祉のそういう機関とさせてもらうというようなことにつきましての細部に関しまする規定は、他の法で完璧を期せられる考えでありましようか。その点は如何でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/71
-
072・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 委託につきましては一応の考え方をこの五條で以てはつきりいたさせるようにいたしたのでございまするが、実際のそのやり方、手続と申しまするか、手続につきましては只今御指摘がありましたように遺憾のないような措置を講じなけりやならんというふうに考えております。これにつきましてはどういうふうにして、委託するか、委託する場合はどういうふうにするか、その場合のやり方等につきましては、委託が、これは事業を営んでおりまするものと、委託いたしまする国又は地方公共団体との関係でございまして、これは対等な関係の契約ということに相成ります。その間に強制等が伴うことがないようにいたしまして、納得ずくで以てこの仕事がうまく行くようにしなければならんと思つております。その実際の手続等につきましてはこれを明確ならしめる措置を講じたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/72
-
073・山下義信
○山下義信君 社会福祉法人につきましてはなお伺いたい点もありますが、省略いたします。が、関連いたしましてこの社会事業のカテゴリーをおきめになりましたところで、どこでございましたか、第二條でございましたか、第二條の四号でございましたか、四号にいろいろおきめになつおられます。その四号、五号、まあいろいろどこへその線を引くか、どこへ引いても議論はございましようが、私が憂慮いたしますのはこの常時保護を受ける者の牧容保護を行うものは五人以下は認めない、その他のものにあつては二十人以内のような小さなものは、いわばこの法律の社会福祉事業としては認めんと、或いは又実施期間が六カ月に満たない仕事は社会福祉事業とは認めんと、こういうことでありまして、一応まあこれは線も引かなければならんことだと思いますから立法者の御意図もわからんではないのでありますが、私の憂慮いたしますのは、こういう線を引きますというと、我々が非常に心にかけておりまする農村の社会福祉事業というものを考えましたときには、御承知のごとく農村における対象は非常に少いのでありまして、そうどの村にも三十人も収容保護するような施設の必要な村々があろうはずもありませんし、まあ世話をしなければならんような身体障害者やその他の人にしても五人か七人といつたような場合もあつたりいたしまして、又例えば季節保育所のごときも臨時的なものでありまして期間的に申しますれば六カ月以内になることになりますし、時間的にも臨時の社会奉仕的のような仕事はこの中に認められんことになつて参りますので、そういう農村におきまするもの、或いは臨時的な社会福祉運動事業というようなものが、期間や或いは対象の数によりまして、この本法の範囲から洩れて来るというようなことになりますと、若干遺憾と感ずるのでございますが、そういう点につきましては、立法者はどうお考えになりましたでしようか、承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/73
-
074・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 只今御指摘かありましたように、どこでこの線を引くかということはなかなかむずかしい問題であろうと思うのでございます。我々といたしましてもいろいろと考慮いたしたのでございますけれども、どこかで線を引かなければならんというところで、従来の社会事業法の線で以て一応こういう線を引いてみたわけでございます。勿論実施いたしまして、更にこれによつて不都合な事態が生ずるようなことになりまするならば、適切に措置したいと思つております。従来の社会事業法を施行いたしておりまして、この程度のやりかたで以て先ず大した支障はなかつたというふうに考えておりますので、かようにいたした次第でございます。
なお新らしいこういう法律にいたしまして運営いたしてみますれば、或いは不都合が生じて来るかと思いますので、今後の、若し法案が通りましたならば実施の状況を見まして、更に検討いたしてみたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/74
-
075・山下義信
○山下義信君 私は民間社会事業関係のかたがこの点、どういうような意見の一致をみられたか、或いは見なかつたかは寡聞にして存じませんけれども、八十一條を見ますというと、共同募金の配分を受けました者は、その配分を受けた後の一年間は寄附金の募集をしてはならんとあります。御尤もの次第と思います。これが乱れますと共同募金は成り立ちません。御尤もと思うのでありますがこの八十一條の條文を御覧になりましてもわかりますように、その事業の経営に必要な資金を得るための寄附金の募集もならんのでありまして、なかなか厳重な制限規定であります。私はこの一條は要らないのじやないかと思うのであります。と申しますのは六十九條にこの社会事業を営み者が寄附金の募集をしようとする時分には許可を得なければなりません。若しこの八十一條の本法と同様の制限をする必要がありますならば、六十九條でも事足りるのであります。これは八十一條でこういう規定を設けますというと、そうすると、民間の社会事業家の不足の経費をカバーいたしますることは、共同募金以外に途がないということを八十一條できめたことになります。八十一條には例外も何もありません。ただ例外を言うならば、共同募金会自体にただ例外を許しているわけです。共同募金会は何遍でもできるというわけであつて、これも六十九條の例外規定でありますから、この八十一條には例外規定がない。これは共同募金の金額が非常に少額で、とても経費を補うことができないような時分には、民間の社会事業家はどうすることもできないことになります。これはどうしても八十一條の規定が要りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/75
-
076・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この点は共同募金の性格といたしましては、一応共同募金は任意に相成つておりまして、共同募金を受けるということにいたしますと、その共同募金の金を寄附した側、これは一般大衆になりまするが、ここでは再びその目的では募集はされないという趣旨が一つ共同募金の本来の性質として入つておりますので、その本来の性質から見まして、大体その一年間のその必要な資金がどのくらいであるかという点につきましては、勿論福祉協議会等におきまするその事業の必要性の認定というものによつて来るだろうと思われるのでありますが、そういうことで一応認定されましたものに充当される。それ以外のものにつきましてはしないというふうになつておりまするような関係から、これが寄付金募集を許しますると、共同募金そのものの生命を先ほど御指摘になりましたように失うことになりますというようなところから、共同募金の性格を明らかにするという意味でこの規定を置いたわけでございます。従つてこれにつきましてはそれほど強い意味を持つておるのじやないので、共同募金の性質としてはこういうものであるということを明らかに宣言いたしたものでございます。従いまして募集せずして集まりまする金の寄附金の受入れ、これは一向差支えない、任意の寄附がございました場合に、これを受入れることは差支えございませんし、又一方におきまして特別なる、何と申しますか、或る事情に対しまする特別なる同情者がおりまして、これが必要な資金を提供するというようなことにつきましても、何ら妨げないというようなことで以て、それらで以て足りない部分を共同募金で補うとい建前を飽くまで貫くというような考えから、こういう規定をいたしたわけでございます。六十九條によりまして、そういう場合を全部不許可にするという形をとるような形にするよりもむしろこれはこうするほうがよいのではないかというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/76
-
077・山下義信
○山下義信君 これはいろいろ審議を重ねて参りますことになりますると際限がございませんから私は言いませんが、共同募金の配分を受けましたものは配分を受けた後一カ年間はその事業の経営に必要な資金でさえも寄附金を募集してはならんと、こう八十一條で厳然と抑えてしまいます。共同募金を受けるものは優秀な施設でなければ受けられぬはずであります。優秀でない施設のものは共同募金の配分から仮に埋れたといたします。共同募金の配分に洩れたものは許可さえ受ければ、何回でも寄附金の募集ができます。それでこの共同募金の配分というものは、言うまでもなく不足経費をカバーするに十分でありますれば、これは八十一條で申分ございません。八十一條を設けまするには、その前提として共同募金の配分があれば、その施設にはもう経費は十分だという前提がなけらねば、この今後の一カ年間の寄附を禁止するということは成り立ちません。然るに実際問題といたしましては今日の共同募金ではその配分たるものは実に微々たるものであります。従いましてこの八十一條の條文を今日の現状の共同募金、あの配分額に当てはめるということになりますれば、優秀な事業家は共同募金の配分を辞退するほかはございません。むしろ共同募金の配分を受けない者のほうが寄附の募集が許可さえ受ければ自由である。尤も六十九條を厳重にいたしまして、そういうものも許さんということになれば別でございますが、一応法律の上から申しますれば、共同募金の配分を受けまする者は非常に束縛されるということになります。およそ本法の原則といたしまして、それぞれ民間との特殊性を生かす場合、特殊性を生かすということの中にはもとより優秀な民間事業の発達を抑止するということのあろうはずはありません。従いまして共同募金の配分を受けました者でも、その府県府県の募金状況が不振の状態に相成りまして、配分額が非常に不十分であるといつたような場合には、又その事業によりましては寄附の募集をいたさなければならんかもわかりません。寄附金募集ということは民間社会事業にとりましては邪道でありません、これが原則であります。これによつて経営費を得るということが原則であります。今日のごとく、政府の委託を受けて補助金を受けて、事務費を受けて立つておるというのは、これはむしろ便宜的なわき道に入つておるのでありまして、寄附金によつて立つということは、民間社会事業家のこれは不正でもなければ不当でもないのです。それを抑止するというならば、共同募金の配分というものが十分であるという前提がなくてはならんと私は考える。この八十一條の禁止條項というものは一考を要するのではないかと考えるのでありますが、一応私は只今お尋ねをしたのでございます。最後にいま一つ伺いますることは、この共同募金と社会福祉協議会の関係でございます。共同募金をこの立法の中にお入れ下さいましたことは、本員といたしましても、当参議院におきまして非常に共同募金の適正な運営を憂慮いたして来ましたものといたしましては、法的根拠がここにできまして大変喜んでおつたのでございまするが、但しこの共同募金の規定の中には、若し共同募金の経営が適正に行われなかつた、即ちその中に或いは配分の不適正なような事態が多々にあつた、或いは共同募金の事務が紊乱したり、俗にいう共同募金事件等が起きたときのいろいろな監督規定というものがございません。共同募金というもののあれだけの金を扱いまするその厳正な規定というものがこれにはないように見えますが、これは他に何かで補いなさるのでございましようか。ただ厚生大臣が解散を命ずるという最後の厳罰の処分の規定がございますが、平素の責任の帰趨等が明白でありません。例えば役員等につきましても、不当な役員のいろいろなそういう監督制度もないように考えられますが、併しこの程度の立法をして頂きましたのは私といたしましては非常に喜ぶのでございます。ただこの共同募金会と社会福祉協議会との役員の関係というものが本法によりまして明白を欠くのであります。と申しますのは、共同募金の配分を受ける者は共同募金会の役員になることはできないと、こう規定してあります。ところがこの社会福祉協議会というのは共同募金の配分の対象となるかならないか、恐らくなるのではないかと私は思うのであります。若し社会福祉協議会も共同募集の配分の対象になり、或いは配分を受けるということになりますと、そうすると社会福祉協議会の役員はすべて共同募金会の役員になれない、簡単に考えますとこういうことになるように思われるのであります。それならばそれで筋が立つのであります。社会福祉協議会というものと、共同募金会というものと全く二本建にいたしまして、それが一つになつてしまうということを避けまして、社会福祉協議会は社会福祉協議会で権威を持つて独立する。共同募金会は共同募金会として純粋性を保つて行く。ただ両方が緊密なる連絡はするけれども、彼此混同はしないということでありますならば、それで筋が立つと思います。本法ではそれがどういうふうに考えられておるのでございましようか。その点の説明を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/77
-
078・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 共同募金に対しまする監督といたしましては、一応ここに法律を以て共同募金の性格を明らかにいたしまして、なお国及び地方公共団体がその寄附金の配分に干渉しない、つまり業務には干渉しないという立場を取つております。勿論この不当なるこの法律に反するような事故を起したときの措置は、第八十條にございまするほかに、なお共同募金会は社会福祉法人とすることを要件といたしておりますので、この社会福祉法人としての監督は十分にいたしたいというふうに考えておるようなわけでございます。余り監督を厳にするという方面を入れまして萎縮させるようなことはしたくないと思つてこういたしたのでありますが、今後の実情も十分考えて見たいと思います。それから共同募金会と社会福祉協議会との関係でございますが、この二つが密接不離な関係になつておらなければならんことは勿論でありまするが、どちらか一方が他のほうを支配するということになりますれば、これは面白くないと考えまして、両方の役員を成るべくならば一緒にならないほうがいいのじやなかろうかというふうに考えておるのでございます。その両方の連絡につきましては、別途やり方につきまして、実際上共同募金会並びに社会福祉協議会において考慮してもらうようにいたしたいと思つております。将来この両方の関係をどうするかという点につきましては、その実態を十分研究いたしましてこれから考えて参りたいと思つております。ただ両方が対等の立場に立ちまして、そうしてお互いに表裏一体の形で協力するという立場をとらなければならんと思つております。現在の状況で以て社会福祉協議会が若し共同募金会のほうから配分を受けなければ、それは当然福祉協議会のほうから役員になることはできまするし、そういうような相互関係はできることなんでありますが、その受けるか、受けないかということにつきましては、これはその協議会で以て一応考えて頂きたい。必ずしも受けるものともいたす必要がないと思いまするし、受けてはならないものとすることもないのではないか。これにつきましてもまあ今後の運営につきまして、社会福祉協議会なり共同募金会なりの性格がそこなわれないように十分見守つて、又指導して参りたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/78
-
079・山下義信
○山下義信君 社会福祉協議会は第七十四條の一ヵ條しか御規定がない。この場合一ヵ條でも事が十分のようには考えられますが、併し私はこの本法の中で最も重大な点はどこであるかと若し人に聞かれたら、本員は社会福祉協議会の構想であると答えたいと思います。少くとも社会福祉事業の発達、助成、又延いては民間だけでは、ございません。社会福祉事業の組織的活動というものを醸成するということが非常に大きな問題である。こう考えますと、それが立法化されましたのは第七十四條の社会福祉協議会であり、実は我々が望みましたのはこの社会福祉協議会です。この社会福祉協議会によりまして、新らしい我が国の社会福祉の活動形態を望んでおる。又厚生省当局が本法の立法と相表裏一体いたして過去一カ年以上に亘つて、かくのごとき実態を馴致するために非常なる努力をした、種々なる摩擦や種々なる中傷を排撃し敢然として努力し来つたものはこの社会福祉協議会です。私はその間に関係者諸君からいろいろなる中傷や悪罵の中において、敢然として努力されたことに対しては陰ながら私は敬意を表しておつたのです。少々間違つてもいい、少々やりそこなつてもいい。あの努力に対しましては私は蔭ながら喜んでおつた。この社会福祉協議会が今後の我が国の社会福祉の活動の形態になつて来る。これはまあ一條を以て私は少しとはいたしませんが、やや明白を欠きまする点は、この社会福祉協議会の下部組織についてはどういうふうに考えておられるのでありましようか。これは県単位の社会福祉協議会はここで明白でありますが、それ以下の下部の協議会につきましては、全く自由に放任されるお考えであるかどうか、それらの指導やそれらの構想につきましては立案者はどういうふうに考えておるか。私どもといたしましては、この地域社会組織というものはもう町村の末端まであるべきが当然の姿である、それは共同募金の組織が末端まであると同じようにやはり下部組織というものがずつとできて行かなければならんと思うのでありますが、それらにつきましての御構想については将来どういうふうな指導方針をとつておられましようか、立法者の御意見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/79
-
080・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 社会福祉協議会は本来の趣旨が地域社会の組織化という点が中心でございまして、そのためには先ず地域社会としての最小の単位でありまするところの町村にこれが設けられることが当然必要なわけでございます。でこれらのものが集まりまして、そうして府県の社会福祉協議会を作り上げるということになり、まあそうしてここで以て全体の連絡、調整並びに企画調査といつたようなことをいたしまして、そうしてこの地域社会の社会福祉事業の計画化をここでいたそうというふうに考えておるようなわけでございます。従つて下部の組織ができ上りまして、下から積み上つて来るという形のものでなければならないことは言うまでもないのでございますが、そういう実態のものを持ちました場合に共同募金というものがここに併せて置かれる、つまり事業の計画化ということを考えまして、ここに共同募金という制度が実際に設けられるようになる。こういう形をとることに
いたしましてこの法案を立案したわけでございます。従いまして法案に現われましたものは、社会福祉協議会が共同募金というものと結び付きをここで法文に現わしたわけでございます。従いまして社会福祉協議会の実態というものがこの法文の下に書いてありますが、それは只今申しましたような地域社会の組織化という、町村から積み上げて来る組織にしなければならんというその本質になるわけでございます。そういうふうな形に実際上なるように指導いたして参りたいというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/80
-
081・山下義信
○山下義信君 最後は町村でございましたかのうちに、この本法に規定いたしまする社会福祉事業のうちに先刻お尋ねいたしました以外に、更生緊急保護法という更生保護事業が対象から除外されてある。この除外の考え方もこれは行政系統が違うからと言えばそれまでであります。これは刑事処分ですると、刑事政策ですることだから社会事業でないという考え方もあるかも知れません。併しながらこの更生保護事業が社会事業でありますることは世界の通説であります。これはいろいろ刑事制度に関係があるから一応向うへ持つて行つておるが少年法と同じことでありまして、その本質は社会福祉事業であります。ここに除外されてあるのは私どもは奇異に感ずるのでありますが、然るに後に至りまして社会福祉協議会のメンバー、或いは共同募金の対象の中には入つておる。誠にこれは私ども何と申しますか奇異に感じまして、我々はこの社会福祉事業法の掣肘を受けんぞ、その代り金は欲しい、こういうような形に見えるような気持がいたしまして、非常に不愉快に感ずる。若しこういうことが許されるならば彼此皆除外例を求めて金だけはもらいたい。社会福祉協議会には入りたい、配分にはありつきたい、その代り本法によるところの掣肘や或いは監督やそういうものは関係はない、勝手にやるのだということは、非常に面白くないと考えるのですが、これは何か理由がありましたか。若しお差支えなければどういう関係でありましたか、我我はとかく法務府系統の不良少年の取扱等におきましても、こういういわゆる免囚保護事業的なことにおきましても従来ともこの分野の事業でありながら、とかく厚生省の社会福祉系統との間に、或いは児童で申しますならば、児童福祉関係との間に密接な連絡のないことを遺憾といたしておつたのでございますが、これはどういうわけでこういうふうになつておりますか。お差支えなければ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/81
-
082・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 更生緊急保護法にいう更生保護事業がその性格が明確でございませんで、更生緊急保護法によりますれば刑事政策の一端といたしまして、司法保護事業の中の一部分を更生保護事業として特別な法制の下におく、而もこれは国からの依託の事業としてやる建前に相成つておるようでございまして、その面におきましてはやはり社会福祉に関連はございますけれども非常に刑事政策の面が強く出ておるようでございます。従いましてこれをこの本法から一応除外するということは或る程度意味があるのではないかというふうに考える次第であります。司法保護事業全般として考えますれば当然これが一般社会福祉事業でございまして、特にその者が生計が困難でありまして施設の中に収容してそこに生活しなければならん者とか、或いは経済保護的な施策を受けなければならん者とか、又それに対しまして生活が困難であるというような理由を以ちまして生活の相談に応じたり、金銭を與えたりするというようなことをいたしまする場合におきましては、そういう司法保護的な見地を以てやつておりましてもこれが書いてなければ当然本法の中に入るわけでありまして、そういう意味の中にはこの社会福祉事業としてここに入るということになるであろうと思うのであります。更生緊急保護法におきましては、出獄いたしましてから六カ月間だつたと思いますがその六カ月の期間だけ適用されるわけであります。従つて、六カ月以後になりましてなお司法保護の必要がありますれば、これにつきましては当然生活保護の社会福祉事業のほうに入つて参るというふうに一応考えられるのでございます。そういうような関係がありまして、どうもそこのところが更生緊急保護法そのものの性格があいまいでありますために、そういうような規定のこの形になつておるのでございまして、これらの点につきましてはなお十分検討を要する点があるのではなかろうかというふうに思うのでございます。我々といたしましては、その点につきましては完全に法務府の意向にそのまま従つたというだけでありまして、特別な意味を我々といたしましては持つておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/82
-
083・山下義信
○山下義信君 それでは蛇足でございますが、今の更生緊急保護事業もやはり共同募金の配分を受けまする以上は、八十一條の規定に上りまして配分を受けましたのちに一年間は寄附金の募集はして相成らんという、当然この條項の適用を受けるものとこれは蛇足でございますが、それに相違ないと思いますが如何がでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/83
-
084・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) これは当然その通りでございます。保護法の適用は受けるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/84
-
085・山下義信
○山下義信君 本日は本法の審議に当りまして私に同僚各議員の御審議のお時間を多量に頂戴いたしましたのでございますが、非常に寛容な態度でお許しを頂きまして感謝いたします。私の質疑は終了いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/85
-
086・黒木利克
○説明員(黒木利克君) 山下議員の御質問中、審議の議事手続その他運営に必要な事項を誰がきめるかという問題についてお答えいたします。現行法を調べてみますと大体三つの態様があるようでございます。第一は比較的古い法律で、児童福祉法におきましてはこれを命令できめるという規定がございます。その後の優生保護法におきましては優生審議会は会長がこれをきめるという規定がございます。極く最近のものでは法制審議会令という政令で本法案と同じようにこれを審議会自体がきめるという規定がございます。これは事務処理の内部規定に過ぎないからむしろ命令できめるということは廃止したほうがよろしいという法制局の御意見だそうでございまして、本法案におきましてもそれによつて審議会自体がきめることにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/86
-
087・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ちよつと休憩をさせて頂きまして、進行のことにつきまして御相談頂きます。速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/87
-
088・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 速記を始めて下さい。それでは引続き委員会を開きます。それでは今日はこれで閉会にいたします。
午後四時六分散会
出席者は左の通り。
委員長 河崎 ナツ君
理事
小杉 繁安君
有馬 英二君
委員
石原幹市郎君
中山 壽彦君
藤原 道子君
山下 義信君
常岡 一郎君
谷口弥三郎君
松原 一彦君
国務大臣
厚 生 大 臣 黒川 武雄君
政府委員
厚生省社会局長 木村忠二郎君
事務局側
常任委員会專門
員 多田 仁己君
説明員
厚生省社会局庶
務課長 黒木 利克君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01519510319/88
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。