1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月三十日(金曜日)
午前九時五十六分開会
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本日の会議に付した事件
○結核予防法案(内閣提出衆議院送
付)
○厚生住宅の問題に関する件
○医師法、歯科医師法及び薬事法の一
部を改正する法律案
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/0
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001・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それではこれから厚生委員会を開会いたします。
結核予防法案を議題といたします。昨日に引続きまして質問に入ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/1
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002・山下義信
○山下義信君 私が厚生住宅の問題で緊急質疑をいたしたいという通告をいたしてございましたので、只今日程にお入りになりました結核予防法案の御審議をすることは御異議ないのでございますが、関係当局の御出席いたしました適当な機会に時間は極く僅少で済むことでございますので、差込んで然るべくお取上げを願いたいことをお願いいたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/2
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003・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 山下委員の只今の御提案、皆さん御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/3
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004・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ではそういうふうにいたします。その関係当局のかたのお見えになりますまで藤原委員の引続いての質問お続け願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/4
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005・藤原道子
○藤原道子君 先ず第一にお伺いいたしたいと存じますのは、昨日松原委員の質問に対しまして東医務局長は、看護婦その他の結核の発病については採用時に厳重に健康診断を行なつているので、採用後六カ月経つて発病した者は公病と認定しているという御答弁でございましたが、現状は殆んど全部が共済組合の治療を受けておるというような状態でございますが、長期療養者の中で公病と認定されている者のパーセンテージをお伺いいたしたいと思います。
それからそれと関連いたしまして、今度の予算を見ますると、他の官庁におきましては少いところでもその災害補償費が一割以上殖えておりまするのに、厚生省だけが、殊に一般会計におきまして約半分に減じておりますのはどういう理由でございましようか、これも併せ伺いたいと存じます。それから第三点といたしましては、公務疾病と認定された際に、その身分、生活の保障は当然なされると思いますが、この際定員の補充についてはどういう措置をとつておりますかということにつきましてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/5
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006・東龍太郎
○政府委員(東龍太郎君) 只今のお尋ねの点、昨日松原委員から御要求がありましたので、早速私のほうの管理課に命じまして、目下数字的の資料を作らしておりますので、パーセンテージ等の問題につきましては早急に、多分明日差上げられると思いますが、文書にいたしまして差出します。
それから御質問の第二点は、甚だ遺憾でありますが、私ここですぐにお答え申上げることができないのでございます。これも併せまして十分調べており答え申上げます。
第三の点の長期欠勤者につきましては、これを定員から外しましてそうして補充をいたしておる、それが私どもの方針だと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/6
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007・藤原道子
○藤原道子君 長期に亘る者には補充しておられると言われておりますが、現実は実際そうではないのでございます。たださえ足りない看護婦が過労のために疾病で倒れる。そうすると定員の枠に縛られまして、殆んど補充がなされておりませんから、いやが上にも過労になつて、次々と犠牲者が出て来るという現状で、現地におきましては非常に悲鳴を挙げている実情でございます。この点は厳重にその局長の方針を一つ実現して頂きたいということを強く要望いたして置きます。
それから次にお伺いいたしたいことは、医療技術者についてでございますが、その必要数とそれからその不足数でございますね。医者、レントゲン技師、或いは細菌技術者、看護婦、保健婦等についてでございますが、その必要数とそれから現在の不足数、それから民間と官公立との待遇の比較、それから研修制度及びその設備、それから養成制度及びその設備等につきましてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/7
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008・東龍太郎
○政府委員(東龍太郎君) 只今御質問の多数の項目に亘りましてのお答えをいたすだけの材料を私は持つておりませんが、ただ医療関係者のうち、医師並びに看護婦につきましての数字だけは持ち合せております。国立結核療養所の医師の昭和二十五年度の訓令定員は一千四百九十五名になつておりますが、本年の一月末の調査によりますというと、現員が一千百九十名、即ち欠員が三百五名ということに相成つております。看護婦につきましては同じく二十五年度訓令定員が九千二百三名でありまして、これに対して二十六年の一月末の現員は六千九百九十八名、即ち欠員が二千二百五名ということに相成ります。尤も看護婦につきましてはこのほかに看護婦生徒として本年二十五年度に養成卒業予定の者が千言十五名ございまして、これが看護婦としての幾分の補充には相成ると存じますが、御指摘のように相当多数の欠員が現在ございます。その他の医療関係者の数につきましては、これも正確なる数字を調査いたしまして差出します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/8
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009・山口正義
○政府委員(山口正義君) 保健所におきます医師、保健婦、その他の定員並びに実員の状況につきまして申上げたいと存じますが、只今手許に持ち合せておりますのは医師と保健婦についての数字だけでございますので、それでお許し願いたいと思います。あとの点につきましては後刻調べまして御報告申上げようと存じます。医師は二十五年度の保健所全体の定員が三千百十六省でございまして、昭和二十五年十二月末現在の充足状況は二千三百四十六竹でございます。それから保健婦は二十五年度の定員が六千六百八十二名でございまして、同じく二十五年十三月末現在の充足状況が四千八百七十五名になつておりまして、医師のほうは充足率が七五%、保健婦のほうが七三%、そういうふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/9
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010・藤原道子
○藤原道子君 只今この不足数を聞きまして実に驚くのでございますが、現在でさえこれだけの不足を生じておりますのに、この結核予防法案を見ますると、結核の病床は殖えて来る。保健所はますます拡大して行くということに相成つておりまするが、果してこれでこの法案が通過いたしました場合に、遅滞なくこの使命を達成することができるという確信をお持ちでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/10
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011・山口正義
○政府委員(山口正義君) 保健所員の活動が、只今御審議願つております結核予防法を運営して行きますのにつきまして非常に重要な役割を占めておりますことは申上げるまでもないことで、御指摘の通りでございます。医師の不足につきましては待遇改善その他いろいろの措置を講じて、その充足を図つて行かなければならないのでございますが、先般御可決頂きました予算の中にも、来年度からは保健所の医師に対して研究費の支給をして、資質の向上と同時に待遇の改善という意味を含ませまして予算を計上しているのでございます。勿論これだけではなかなか十分とは申せませんと存じますが、今後できるだけいろいろな努力をいたしまして、医師の充足を図つて参りたいと存じております。
保健婦の活動につきましても、御指摘の通り、現在相当数の欠員がございますので、これの充足を図つて行くことが先ず第一だと存じますが、併しながら保健婦の活動につきまして常々最も問題になります旅費の点につきまして、二十六年度におきましては保健所勤務の保健婦の定員が、先ほど申上げました六千六百八十二名から七千三百五十二名に増加されますが、その増加されました保健婦に対しまして旅費を、従来の年額六千円のほかに結核関係の訪問指導に要する経費といたしまして、一人当り平均一万二百円ずつ計上してございます。従来のものと合せまして結核の訪問指導に使いたいと存じているのでございますが、併しながら只今申上げましたように、欠員が相当ございますので、市町村に勤務しております保健婦、或いは国民保険組合に勤務しております保健婦を何らかの形で、例えば非常動或いは併任、これは地方自治庁との折衝の問題もございますが、そういう形によりまして保健所と結び付けまして、そうして只今申上げました全体の旅費をこれらの国家或いは市町村の保健婦のほうにも支給をし、そうして一体となつて活動してもらおう、そういうふうに考えております。勿論そういたしますと、それだけ結局国家或いは市町村の保健婦のほうから手がそつちへ廻るわけでありますが、全般的には国の保健婦の活動というものについて、やはり支障を来たす虞れがございます。これにつきましては保健婦の今後の補給計画と申しますか、養成計画というものにつきまして、医務局のほうとも御相談いたしまして、新らしい制度をすぐ実行して参りますと、いろいろ不足を来たすという計画を聞いておりますので、これに対してそういうことの起らないように、例えば、試験廃止の時期を延すというような方法をとつて、保健婦の不足を来たさないように医務局のほうと折衝してやつて行きたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/11
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012・藤原道子
○藤原道子君 私は只今の御答弁でも納得ができないのでございます。先日ちよつと伺いましたところによりますと、その保健婦の活動が保健婦の能力を一体どの程度に一つ考えておいでになるか、保健婦を虐待しているのじやないかというように考えるのです。対象人員九十万人といたしまして、これをまあ一日三回くらいの巡回というようなお見通しのように伺つておりますけれども、一体東京とか市街地におきましては実行可能だと思いますけれども、山間僻地、殊に山岳地帯におきましてこれが可能だとお考えになるのでございますか。それからあの数字で行きましても、日曜もあれば祭日もある。それから殊に外勤だけではなく、今の保健婦さんはカードの整理だとか、その他いろいろの雑務に相当時間を食われております。こういう点はもつと明確に、保健婦が活動しやすいように事務を整理しなければならないと存じますると同時に、山間僻地へ参りますと実に保健婦さんは泣いております。自転車もろくにございません。いつぞや私は衆議院にいる頃にこの点を強く追及いたしまして、自転車を何とか出すということでございました、ところがそれは男の乗る自転車でございますので、殆んど保健所の職員が使つてしまつて、保健婦には廻つて来ない。保健婦さんは実に涙ぐましい犠牲の下に保健活動をいたしております。それから雪国へ参りますと橇が欲しい。あの雪の中をこつこつと歩いて保健指導に当ることは到底不可能です。そういうことに対しても少しも考えられない。ただ中央でそろばんを彈いて、このくらいでできるだろうということでお出しになりましても、なかなか地方においてはそれが行われない。殊に何と申しますか、その待遇というものはもうお話にならない。ですから地方は殊に身分の保障と申しましようか、その点が何もできていない。それから保健所、市町村協同組合、これらの保健婦さんがまちまちの状態に置かれておりますために、そこにもいろいろ摩擦が起きているというような点を挙げますると、誠に心細いのでございます。保健婦さん自身もこの頃では絶望いたしまして、やめて行く人が随分多い。これに対して私は保健婦が一年間どれだけの減耗率を示しているかということを伺つているのです。
それから保健指導というものは、先日の参考人も言われましたように、予防対策というものは一貫してやられなければならないのでございますが、一律に平等にやるわけには行かない。個個のケースにおいてこの指導をして行かなければならない、こう思うのでございます。そこで保健婦さんが指導して参りますのを、年三回なんていうことでやつて行けるかどうかということと、併せて保健指導というものをどの程度に局長はお考えになつておいでになるのか、ただ行つて病人を見出して、それを報告して、それで終れりとしておられるか、今後の保健指導を十分にやり、いろいろな審議会等々と相談して、適切に行なつて行くことをも考慮されて保健婦の活動をお考えになつておいでになるのか、その点私はここで明確にお伺いしたいということが一つ。
それから保健婦、看護婦の数が足りない。現在さえ足りないが今後もますます足らなくなるのじやないかと私たちは考えて、いろいろこの制度に関しましての研究を衆議院も参議院も熱心にいたしました。そうして衆参一致した結論を出しまして、これを私は司令部に、その筋のO・Kを取るべく提案をいたしました。ところが私たちがこうしなければ到底保健婦も看護婦さんも充足できないという観点に立つて、衆参一致した意見でこの法案の成立に努力しておりまするときに、厚生省におかれましては、私たちの案と一緒に事務局の案を併せ提出されたということを私は聞いております。それから事務局案が衆議院には示されたのでありますけれども、参議院へは何ら示されなかつたというようなこと等に対しまして、限りなき不満を持つものでございます。一体事務当局案で看護婦や保健婦が充足され、して行けるという自信を持つておやりになつたかどうかということ、この点を東局長にお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/12
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013・山口正義
○政府委員(山口正義君) 保健婦の訪問指導基準をどういうふうに考えたかというお話でございますが、只今藤原委員からもお話がございましたように一応届出の在宅患者九十万人ぐらいというふうに推定いたしまして、それに対しまして、一人の患者につきまして平均年四回訪問する、これは結核という、期間の慢性経過をとるという点から考えまして、一応平均年四回というふうに考えたのでございますが、必要に応じまして、必要な者に対しましてはそれ以上の回数を訪問指導しなければならないと思うのでございます、訪問指導の内容につきましては、単なる届出の連絡とかそういうようなことだけでなしに、実際に患者が療養上如何なることをやつて行かなければならないか、或いは予防といつたもの、人への感染予防上どういうことをしなければならないかという点につきまして細かくいろいろ指導して行かなければならないということは今更申上げるまでもないと考えます。この保健婦の訪問指導のやり万等につきましては、今後勿論審議会等においていろいろ研究して頂いて、改善すべき点は改善して行かなければならない、そういうふうに考えております。そうしまして一応一人の保健婦が一日に平均三軒訪問できるという、そういうふうにできるという考えで予算を計上しておるのでございます。そういたしますと、実働大体一年間二百日というふうに考えますと、六十人の保健婦が毎日この結核保健指導のために動いていなければならんというふうな計算に、まあ計算上はそういうふうになつて来るのですが、そういたしますと、先ほど申上げましたように、現在保健所の保健婦、充足されてあります者全部動かしましても、そういうふうに不足をいたしますので、先ほど申上げましたように、国保、或いは市町村に勤務している保健婦も何らかの形で保健婦と身分の上で連絡を付けてこの旅費を使えるように、そうしてそれらの人たちに手伝つてやつてもらうというふうな方法をとりたい、そういうふうに考えております。
それから保健婦の活動について只今東京都なら一日三軒訪問できるかも知れないが、山間僻地ではなかなか交通機関の関係で思う通りに行かないのではないかというお話、御尤もだと存じますが、その点につきましては、自転車の配給につきまして、只今御指摘があつたのでございますが、私ども今後予算の運用によりまして、保健婦が十分活動ができますように自転車その他の保健所の装備を整備して行きたい、そういうふうに考えております。なお保健婦が国保或いは市町村等、或いは保健所まちまちになつておるので、運営上非常に困るのではないかという御質問でございます。この点につきましては、私ども御指摘の通り以前からいろいろな点で痛感されておりまして、関係当局ともいろいろ折衝いたしております。差当り二十六年度におきましては、すでに国保のほうに保健婦設置の予算が組んでございますので、これを今府県のほうに移すということは困難な状態でございますので、運営の上におきまして、先ほど申上げましたような一体的な運営をいたしまして、連絡を十分にして行きたいと、そういうふうに考えております。二十七年度以降におきましては、若しも府県が保健婦設置の三分の二を負担できるという状態になりましたら、その見通しがはつきりつきますれば、現在国保のほうで設置しております保健婦を府県のほうに移したい、これは府県当局としてもそういう話を大体了解しております。そういう方針で進みたいと思つております。なお保健婦の減粍率をどのように計算しておるかというお話でございまして、或いはこれは医務局長からお話があるかと存じますが、大体計算上一〇%減粍率というふうなことで計算をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/13
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014・東龍太郎
○政府委員(東龍太郎君) 看護婦、保健婦等の数の問題につきまして、将来の看護力の不足を補い得るような制度の改正についての案が参議院、衆議院、両院の厚生委員会の一致した案として提出せられておるのでございますが、それに対しましてあたかもそれに対する対案のごとく、或いは又それに対する根本的な異論を立てておるというふうな印象を与えておりますといたしますれば、これは誠に私どもの手続上の手落ちでありまして、遺憾に存ずるのでありまするが、決してさような意味で厚生省事務当局の案というものが出されておるのではないのでございまして、御承知の通り元来この制度の改正につきましては前国会、前々国会でありましたか、これを改正する意思がないかというふうな厚生委員会の御質問によりまして、私から何らかの改正を必要とする、従つてそれについて審議をいたしますという御約束をいたしましたので、従つて当初は政府提案で改正の法律案を御審議願うという方針で進んで参つておつたのでございます。従つてその当時は厚生省の医務局案なるものもございましたが、一たび両院のほうの御意見が一致いたしたということを伺いまして以来は、私どもの案としては何ら持つていないのでありまして、ただこの国会提出の案について関係方面から、厚生省においてはこれに対してどういうふうな意見を持つかというふうな問合せに接しましたので、事務当局といたしましてはいろいろと各関係局が相談いたしました結果、こういう点についてはこういう考えを持つておるというふうなことを関係当局に披露したのでありまして、これの対案として押し通すというふうな、そういう意図は私は持つておりません。従つてこちらに附しましたのは事務的な程度における意見でありまして、根本の方針、即ち看護婦の充足のための必要と、又これが唯一の方法であろうと言われますその方針については、全く私どもは何らの異論を持つていないのでありまして、この方法以外には恐らく近い将来に看護力を充足する途はなかろうと存じておりますので、従つて万一私どもの今までとりました事務上の手続があたかもその対案とか或いは反対意見を持つて押しておるというような印象を与えておりますれば、それは決してさようでないことを私からお断りを申上げる次第であります。従つて成るべくああいうふうな方針の改正案を作り上げます以外には、当分看護婦数を充たし得るようなことは考えられないと存じます。保健婦の需給の計画につきましては、これは計算のやり方でいろいろな数は出て来ると思いますが、又その資料は私どものほうで作りましたものは差上げてあるかと存じますが、いろいろな仮定の上に立つて、先ず差当りは人口五千人に対して一人の保健婦、この数はこれは決して十分ではございません。もつともつと多ければよろしいのでありますが、現在のところそれ以上の仮定を推計の下にいたしますというと莫大な数の保健婦が足りなくなりますし、又実際の上から見て人口五千に対して一人というのは、堪え得る一つの限度と存じますので、最低水準をとらざるを得ない状態でございます。それと各年度の人口、若しくは将来の推計人口というものから保健婦の必要数が出て参りますが、それに対して現在あります保健婦の数に、将来いろいろな途から保健婦になつて来る数を加え、そうして又実働の一割を減耗と見込みましてそれを差引く。そういうふうな操作を加えて見ますというと、すでに現在におきましても二千人以上の不足があるということに相成ります。これが将来、現在の試験制度がこの昭和二十六年の八月末で現在の法律のごとく廃止になりますというと、一時三千名以上の不足ということが起り得る計算が出て参ります。併し昭和三十年頃まで新しい制度による養成所等を十分に我々の希望するごとく殖やし得たとすれば、昭和三十年頃にやつと今の人口五千人に対して一人という数字だけを確保できるであろうというふうな見込でありまして、それまでの間は二千人以上、或いは三千人以上の不足を来たす。このことは誠に由々しい問題だと存ずるのでありまして、この一時的の非常な不足を補います一つの実行し得る案は、現行の試験制度をなおここ一年間、二十七年の八月末日まで延長するということにいたしますというと、計算上は一千二百名程度の不足が最大であつて、そうして今のような過不足なく行くであろうと言われ、昭和三十年にはむしろ数百名の過剰にもなろうかという計算も出て参るのでありまして、私どもといたしましては、応急の措置としてこの試験を一年延長するということが必要であると考えております。実は看護婦の制度の改正が政府提出の法案に相成りました場合には、この試験制度の延長をも同時に盛込んで行くと考えておりましたのでありますが、国会のほうの御提案と相成りましたので、これはその中には入つておりませんが、併しそれが成立いたしましても、別個にこの法律改正を御審議願いまして、そうして試験の延長を以て一時を糊塗すると言われればそれまででありますが、とにかくそれでもしないよりは遥かにいいと存じますので、さような考えを持つております。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/14
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015・山下義信
○山下義信君 最前御了承を得ましたが、丁度今御質疑が看護婦問題が酣になつておるようでございますが、これはあとお続けになるように考えられますので、この際二、三分拝借いたしまして、かねて通告いたしておりました緊急質問でございますが、本日の日程の前にさして頂くことになつておりましたが、諸般の行き違いがございましたので、この間で挾んで頂きたいと存じて御了承を願つたのであります。これは厚生委員会としても重大な問題と考えますので、一刻も時間の猶予を許しませんように考えられますので、特に同僚厚生委員諸君にも御考慮を煩したいと存じましてこの機会に伺いたいと思います。
と申しますのは、かねて当厚生委員会におきまして問題といたしておりました住宅問題でございます。いわゆる低額所得者の住宅問題、生活困窮者の住宅問題でございます。只今いろいろなところで仮住宅に入つておる、或いは又壕舎のようなものに入つておる。或いは神社、仏閣の床の下におる、そういつた人達に住宅を与えるという問題、これは当然この厚生委員会で取扱うべき問題であり、かねて我々もこれは重大な問題であると考えておつたのでございます。然るに最近の新聞紙上の伝えるところによりますと、三月の十六日の朝日新聞、或いは十八日の同じく朝日新聞、その他毎日新聞等によりますというと、今年の秋までにそういつた困る人達のために安い家を五千四百戸建てるんだ或いは又三カ年計画で全国的にそれに近いような住宅政策を立てるんだということが出ております。大変結構なことであると思つて、この記事を読んで見ますというと、これらの対策のために衆議院の建設委員会におきまして公営住宅法案とでも申しますか、そういうようなものの提案の準備がされてあるやにこの記事の中にも現われておつたのであります。これは一体何たることであるか。一体厚生省は何をしておるのであるか。私は恐らくこの秋までに五千四百戸を建てるというこの計画というのは、私は厚生省が当然やるべき住宅計画ではないかと思うのである。建設省がやる計画じやないのではないかと思うのです。建設省がやる住宅には限界がある。こういう生活困難者のための住宅計画というものは、当然厚生省の所管である。而もこの五千四百戸を建てるというこの計画は、厚生省が持つておつた計画ではないかと私は思う。本員の考えが間違つておるならばここでその誤りを正して頂きたいと思うが、そういう計画を厚生省は持つておりながら、それが私は何もセクシヨナリズムを言うのではありません、ありませんけれども、これが建設委員会の法案として出されるということになりまするというと、厚生委員会の面目はまるつぶれであります。厚生省は建設省に任して置いて、それでよろしいとなさるのであるかどうか、私は非常に怠慢ではないかという感じがするのであります。でありまするから、すでに自然休会を前に控えまして、時日が少いのでありまするから、事実を明白にいたしまして、厚生委員会といたしましてもこれに対する緊急措置をいたさなければなりません。いつも厚生委員会が傍観して指をくわえて見ているようなことではだめだと私は思うのでありまして、いささか言が過激に失するかもしれませんが、一体これは厚生省の所管であるのかないのかこういうことは厚生がやるのであるかやらないのであるか。そういうことをこの際明白にいたして置きたいと思いますので、緊急質問をいたす次第でございます。御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/15
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016・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 住宅の問題につきましては、特に庶民住宅という問題は、民生安定の上から申しましても極めて重要な問題でございますことは、只今山下議員の御指摘の通りでありまして、従来から住宅行政につきましては、特に庶民住宅の問題につきましては内務省社会局時代以来、厚生省に続きまして、これを社会局或いは生活局等におきまして所管いたしておりまして、一般庶民の住宅の建設の促進のために或いは住宅組合法を持ち、又不良住宅改良法等も持ちまして、又住宅のための同潤会といつたような住宅建設の団体等を持ちまして、庶民住宅の建設維持のために努力いたして参つておつたのであります。たまたま終戦直後におきまして、終戦後の戦災都市の復興、戦災地の復興のために、この行政を一元化して促進する目的を以て、戦災復興院が設立せられたのでありまするが、戦災復興院の設立の際におきまして、戦災復興事業としてはあらゆる建設事業を一手に戦災復興院に集中するということが、方針としてきめられたのであります。その際におきまして厚生省といたしましては、住宅行政につきましては住宅行政として一元的にやる必要があつて、これは飽くまでも厚生省が一元的に所管しなければならない。若しこれを持つて行くならば、一元的にやはり取扱わなければならないというような主張であつたのであります。その際これが閣議におきまして戦災復興院に一元的に持つて行くということにきまりまして、戦災復興以外の住宅行政というものは、その当時の資材の状態から殆んどできないというような理由から、全面的に戦災復興院にこの住宅行政が移管せられたのであります。その後戦災復興院が廃止されまして、建設省が設立いたされました際に、当然この住宅行政の所管問題につきましては最初の理由が変りまして、建設省というものと戦災復興院とその目的を異にするのでございまするからして、この際再び考慮しなければならなかつたのでありまするけれども、漫然とこれがそのまま建設省に移管せられて、そうして今日に至つたような状況でございます。建設省におきましては、住宅行政として一般の庶民住宅の建設をいたしておるのであります。多年一般庶民住宅の建設のために予算を割きまして、建設をいたしておつたのでありまするけれども、この建設いたしまする住宅は、住宅の建設ということが主眼でございまして、これに入りまする者の数というものについての考慮が余りいたされてない、つまりこれに入りたいという希望の者、而して住宅を持つていないといつたような者に一律平等に住宅を提供することが目的になつておるようでございました。そういうような住居者の選定の仕方をいたしておつたのでございます。厚生省といたしましては終戦後引揚者、戦災者等で、住宅に困窮いたします者のためには緊急の施設をいたしまして、集団的な住宅を造りまして、これらの人々を収容するようにいたしまして、住宅問題の一部の責任を果して参つて来ておつた次第でございます。併しその後こういう集団住宅というものでは適当でなく、終戦直後のような緊急の際におきましては、そういう既存の建物を改造いたしましてやるというのも止むを得ないんでありますけれども、その後の状況におきましては、こういうような集団住宅というよりは、むしろ普通の住宅をこれらの人々に提供することが適当ではないかと考えられるようになつたのでありますけれども、又これに伴いまして引揚援護庁におきましては、引揚者のための住宅対策をいたして参りまして、引揚者に対しまして、特に無縁故の引揚者に対しまする住宅を建てて参つて来たのであります。かようにいたしまして、一部住宅問題につきましては厚生省もタツチしておつたのでありまするが、住宅問題の主流は建設省にあるというような印象があつたわけであります。只今御指摘になりました通りに厚生省といたしましては一般庶民住宅、つまり高度な住宅でない、一般庶民の住宅、殊に公営の住宅の問題というようなものについては一元的にやりまして、そうしてそのうちで以て低額所得者につきましての住宅というものを考慮するというのが最も適当であると考えたのでありますけれども、現在の状況が一般住宅につきましては建設省が所管するということになつておりましたのと従来引揚者に対する住宅問題と、それから集団的な生活困窮者に対しまする住居の提供事業を、生活保護の関係並びに緊急生活保護の関係で以て厚生省が所管をしておつた関係からいたしまして、低額所得者に対しまするところの住宅につきましては厚生省として計画しなければならんというふうに考えて、その点につきまして検討をいたして参つておつたのでありますが、昨年の五月に全国の民生部長会議におきましても、民生部長から厚生省に対しまして、低家賃の厚生住宅を建設するようにという熱烈な要望決議がございましたし、これらに対応いたしまして、この住宅難に対しまする施策といたしまして、厚生省は低家賃の住宅を建設する計画を立てたのでございます。実情を申しますると、低収入のために住宅に困つておりまする者は、現在学校とか公会堂、神社仏閣或いは国立病院等にも入つておる者があるようであります。その他壕舎、仮小屋に住居いたしておる者もございまして、その住宅困窮の度は非常に著しく、而もこれは一般庶民住宅によりまして救済されないというような実情にあるのであります。これに対しましてどうしても対策を立てなければならんというふうに考えまして、昨年の七月に本年度の公共事業予算といたしまして、厚生省といたしましては低家賃厚生住宅を国が五割、都道府県が二割、市町村が三割という費用負担をいたしまして、市町村又は都道府県にこれを設置させる。こうして低家賃の住宅をこれに供与するような計画を立てたのでございます。この際におきまして、建設省におきましても同様に同じような意図で以てこれが全額国庫負担の国営住宅を予算として提出したのでありますが、経済安定本部におきましては両方の案に対しましてこれを用いなかつたのであります。その後建設省はそのまま、一般庶民住宅だけの線で以て主張しておつたのでありまするが、厚生省におきましては安定本部に対しまして強力に厚生低家賃住宅の予算の獲得につきまして努力いたしまして、漸くこれが認められまして、そうして昭和二十六年度初め、本年の初めになりましてからこれが予算といたしましてはつきり入るという方向に進んで参つたのであります。これに対しましては、身体障害者或いは未亡人、或いは引揚者、こういつたようなかたがたにおきましても、厚生省へこれを強力に推進するということを要望いたしておりましたし、又これの予算を獲得いたしまするためには、相当その方面に活動もされたようでございまして、まあこれらが相待つて一応本年度における低家賃の庶民住宅を建設するという方針はきまつたのであります。でこれは総庶民住宅に対しまする二割ということになつたのでありまして、当初におきましては庶民住宅総数が相当多かつたのでありますけれども、最初の建築におきましては二万七千ということになりまして、只今御指摘になりましたその二割、五千四百ということが低家賃庶民住宅といたしまして決定いたしたのでございます。これを実施いたします方法につきましては、最後まで厚生省といたしましては、これは厚生省が主体になつてやるべきものであるというふうに考えたのでございまするけれども、厚生省といたしましては、これをどういう場所に作るか、それからどこに何戸作り、そこに入るのはどういう資格の者でなければならんか、或いはそれを選定するのにどういうふうな方法で選定しなければならんかという点につきまして最も関心を持つたのでありますからして、この点についての厚生省の意見が貫徹されるならば、あえて何と申しまするか、単なる仕事の所管という問題を固執するものでない。つまり成果さえ挙げれば、結果さえできればいいということで以て、最後にこの建設につきましては、建物を建てることはこれを建設省がやる、建設省の系統でやる。そうして予算は建設省でこれを持ち、これを配付するけれども、これらにつきましてはすべて厚生省と協議の上実施するということに話合いをまとめたのでございます。これによりまして今年の二月十四日に建設省と私のほうとで連名で以て地方に庶民住宅甲型、つまり低家賃庶民住宅の建設につきましての通牒をいたしたのでございます。ここにおきましては、その規格については木造八坪、それから家賃月額四百円以下、設置資格は市町村、都道府県とする。国は建設費の百分の五十以内を補助する。それから市町村が設置し、都道府県が必要ある場合には建設費の百分の二十程度を補助するものとする。それから予算の配付につきましては、建設省は厚生省と協議して配付する。それから入居者の選定法については建設省と厚生省協議の上きめるということを話合いをつけまして、これによりまして現在明年度の低家賃住宅につきましてはこれを建設する準備を進めつつあるのでありまして、地方におきましてこれをどこで所管いたしまするかということにつきましては、私たちといたしましてはやはり民生部が所管するのがいいと思いまするけれども、これは地方の都道府県知事に任せる。併し今申しましたような筋に沿つてやるよういたしたいというふうに考えておる次第でございます。
先般衆議院の建設委員会におきまして公営住宅法案というものの立案をいたしておるということを知つたのでありまするけれども、ここにおきましては、公営住宅についてはすべて建設経営につきましては、一切が建設大臣の系統の下でやるようになつております。我々といたしましては、厚生省といたしましては、庶民住宅というものについてはやはり今でも厚生省が所管をすべきものであるというふうに考えるのであります。併しこれにつきましては現在まだ設置法の規定によりまする所管の問題でございまするので、取りあえず先ほど話合いがつきました範囲内におきまして、公営住宅の中で厚生住宅につきましては厚生省が主になつてやるほうがいいのじやないかというふうに考えまして、その旨を建設委員会に対して私のほうといたしましては回答いたしたのでございます。方針といたしましては、できれば厚生省がやつて行きたい。若しそれができない場合におきましても、先ほど申上げました程度、つまり二十六年度におきましてやりますような方針を変えることは望ましくないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/16
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017・山下義信
○山下義信君 本日は非常に重要法案の審議中でございますから、これ以上は申上げませんが、只今の政府の答弁では私は納得しがたい。低額所得者の、いわゆるボーダー・ラインに対します社会政策的な住宅問題は、これは当然厚生省の所管に属すべきもので、只今の御答弁でありますと、所管におきましても非常にあいまいでありますので、すでに事は急に迫つておりまして、建設委員会の法案によつて厚生大臣が口を入れる権限が殆んどなくなるというような情勢に差迫つておる問題といたしましては、私ども黙過しがたいのであります。この席上では皆さまがたも急に御納得して頂くという時間的余裕もございませんので、この問題に対しまするこの厚生委員会としてのとるべき緊急態度といいますか、善処の方策は、私は委員長、理事に御一任申上げたいと思いまするので、この席でお諮りを願つて御決定置き下されば、この問題に関する私の緊急質疑は一応終りまして、改めましてお取り上げを願います。そのことをお諮り置きを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/17
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018・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 山下委員の御提案に従いまして、これが済みましたら理事、委員長で相談いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/18
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019・山下義信
○山下義信君 私が只今申上げました厚生住宅の問題は、厚生委員会として重大問題としてお取上げを願うことと、如何にこれを取扱うかということについては委員長、理事によつて御善処願いたい、こういう提案をいたしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/19
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020・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 山下委員の御申出は至極御尤もと存じまして、厚生委員会といたしましては、これはよく相談して十分に一つの力となつて適当なところへ推進して行くべきだと私も存じております一人でございまするので、その実を挙げ得ますように理事と委員長で相談いたしたいと存じますが、皆さん御賛同頂きたいと存じます。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/20
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021・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは前に引続きまして、藤原委員の結核予防法案に対します御質疑を続けて頂きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/21
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022・藤原道子
○藤原道子君 私は先ほどの医務局長の御答弁でまだ納得しがたいものがございますが、御退席になつたようでございますので、それは又後ほど伺うといたしまして、先ほどの質問の中の民間と官公立との待遇の比較、そういう点に対して御答弁がなかつたと思うのでございますが、その点をちよつとお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/22
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023・山口正義
○政府委員(山口正義君) 藤原議員の御質問、民間と官公立との医師、保健婦、看護婦その他の待遇の差を御質問かと存じますが、只今ここに手許に資料を持ち合せておりませんので、後刻御報告申上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/23
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024・藤原道子
○藤原道子君 それは後ほど提出して頂きたいと思います。看護婦或いはその数の問題につきましては、まだ了承しがたいものがございますが、それは又いずれ機会を見てお伺いするといたしまして、私は隔離問題について一つお伺いいたしたいと思いますが、結核患者の隔離を要する患者の数、又その推定の根拠を一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/24
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025・山下義信
○山下義信君 私議事進行について発言を求めますが、最前から質疑応答を聞いておりますが、いろいろ細い質疑応答がありまして、いろいろ統計的数字、資料についての質疑応答が相当あるようでございます。政府が即座でお答えになつたのもあるし、あとで調べて回答するとおつしやつたのも多々あるようでありますので、質問者にも伺いますが、又委員長にも伺いますが、一体それらの資料を質問者は本案審議の上に必要として質疑をなしておられるのか、それでその政府のそれらの数字に対する回答は、本案審議中に当委員会に回答されるのか、そういう数字は十日、二十日先でもいいのか、この法案審議のためにぜひ要る数字であるのか、それらの回答が明白にせんければ、質問者は本案に対する賛否の態度を決しがたいというような重要な回答資料として扱うのか、ということをおきめ願えれば、質問するほうもすらすら数字はあと廻しあと廻しで先に質問を進めて行く。我々はこの席に列席してその質問を謹聴いたしておる一人でございますが、折角の質疑応答が無駄にならないように、質疑応答の中には大変数字が入つておつて、あとで調べて回答する、あとで調べて回答するというような答弁もあるようであり、質疑者は、それらの数字があと廻しになつても質疑をずんずん先に進めて行つて、その数字というものはそのときの質疑だけでとどまつておるのか、本案の審議の上にぜひ要るのか、私ども聞いておりまして納得しかねるので、若し必要でないのならば、そういうようなのは省略して、重要な問題を御質疑になりましようし、ぜひ本案に対して賛否の態度を決するために必要な資料ならば、いつそういう回答をするのであろうかということを委員長もお確めになつて、この厚生委員会の審議というものが軽々しくならないように、すべてお運びを願いたいということを議事進行上要望いたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/25
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026・藤原道子
○藤原道子君 山下委員のお言葉でございますが、私は、いつもこの法案を審議するときには急がれまするけれども、結局通過してしまえば、十分実施されようとされまいと、そのままになつておる。私は十分なる決意を以てこの本案を運営して頂かなければ、国民にとつて不幸だと存じます。従いまして納得の行く質疑をいたしまして、その結果本案を通す通さないかということはいずれ御相談しなければならない問題だと存じております。従いまして先ほど来の質問に対して、当局として余りお答えが即座にできないというような態度に対しては、私は不満の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/26
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027・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 藤原委員、質問をお続け願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/27
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028・山下義信
○山下義信君 私は議事進行について伺いますが、委員長は今のような政府の答弁をいつさせようとなさるのでありますか、本案審議中にさせようとなさるのでありますか、後刻取調べてお答えを申上げるということは、いつその答弁をこの委員会にさせるというお考えでありますか、そういう点を私は伺つて置きたいと思います。これは委員会の権威に関しますのですから、審議は、率直に言いますが、今日済ましてもよし、十日かかつてもよい、それは委員会の自主的にきめることでありまして、又多数党諸君の考え方もありましようが、審議が一応速記録にとどまるような表面的な、滑つて行く審議というものは私は賛成いたしません。でありますからこの点は重要だと思つて議員も質疑するでありましようが、その質疑に対して必要な数字というものは後刻取調べて御返事するという政府の答弁があるならば、必ず審議中に答弁させるというふうにして、更に進んで参るのでなければ……、議員の言論を尊重する上において私は大切なことと思うので、かように申すのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/28
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029・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 山下委員のお申出は至極尤もでございまして、藤原委員の御質問に関しての数字については、すぐ御入用でございましようか、そのとき問題に応じまして明らかにして頂きますれば、又当局に私も申上げることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/29
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030・藤原道子
○藤原道子君 私は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/30
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031・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 藤原委員質疑を続けて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/31
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032・山口正義
○政府委員(山口正義君) 先ほど隔離患者の数のお尋ねでございますが、それについてお答え申上げたいと存じます。従業禁止患者は、いわゆる開放性の結核患者、先ほど申上げました九十万人の約三分の一と考えまして、三十万人といたしまして、そのうちその病態の関係上、従業禁止をしなければならない者を約四〇%というふうに推定いたしまして、従業禁止患者の数を一応十一万六千というふうに推定いたしております。それから命令入院をさせなければならん患者の数を一応三万人というふうに推定いたしましておりますが、これは住居の関係上一人当り疊一員半以下のところに住んでいる者を一〇%というふうに計算しております。先ほどお尋ねの点につきましてのお答えを申上げました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/32
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033・藤原道子
○藤原道子君 私はくどく質問するようで、委員諸君も引延しのようにお考えかと存じますが、そうではございません。結局この結核予防法の性質からいいましても、この結核患者の隔離に要する基準を私は明確にして頂かなければだめだと思うのです。それが私たちの議員のなすべき使命だと存じまして、御質問をいたすのでございます。そこで隔離に要する基準の問題でございますが、どの程度にやるのか、結局私は病菌排出者までもこの中に含むべきだと思うのでございますが、これに対してはどういうふうにお考えになつておりますか、それから症状不安、菌が出るときもあれば出ないときもある、こういう人も私は含むべきであると、こういうふうに考えておりますので、その点はどういうふうにお考えであるかどうか、それからこうした場合にも、家庭療養の困難な者から優先的に入院させるべきであるというふうに私は存じますが、これに対して、当局はどのように考えていられるか、それからこういうものを先ず解決して参りますには、絶対條件といたしましては、増床が優先しなければならない、こう思つておりますが、これらについて一つ明確なる御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/33
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034・山口正義
○政府委員(山口正義君) 隔離の問題は、この法案に盛られております点では、従業禁止とそれから命令入所と二通り出ておりますが、従業禁止は、これはその業態、従事しております業態に従いまして、その職場の関係上他に結核を感染させる虞れが非常に大きいという者につきまして従業禁止をするというのでございまして、これはやはり常時菌を排出しておる。それから又仕事の関係上、例えば接客業のように、特に他に感染させる虞れがあるというような者につきまして従業禁止をしたいというふうに存じているのでございますが、一般の工場、事業場における結核患者につきましては、労働基準法に基きましてやはり従業禁止の規定がございますので、それはそちらのほうで運用されて参ると存じております。
それから命令入所の場合は、これは住居の関係上他に結核を感染させる虞れがある、やはり常時菌を排出する者というところに基準を置いて参りたいと存じております。例えば住居の関係と申しますれば、一つの蒲団に二人も四人も一諸に寝ておつて、而も菌を排出しておるというふうな、そういう者から先ず命令入所をやつて行かなければならんというふうに考えているのでございます。勿論結核患者全般につきまして、骨結核のような場合は別といたしまして、他に感染させる疑いを持てるというような場合の結核患者におきましては他との隔離を実施するように十分指導をして行くつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/34
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035・藤原道子
○藤原道子君 それからこれの対象から咽喉結核その他が除かれておりますが、それはどういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/35
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036・山口正義
○政府委員(山口正義君) 只今の御質問の対象とおつしやいますのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/36
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037・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 藤原委員、もう一度おつしやつて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/37
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038・藤原道子
○藤原道子君 昨日から陳情が来ておりますけれども、この法案の対象からカリエスであるとか或いは腎臓結核であるとか、或いは喉頭結核であるとかというようなものが除かれている。これはどういうわけであろうかという陳情が来ておるのでございますが、それに対してはどういうお考えがあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/38
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039・山口正義
○政府委員(山口正義君) この法案の、全体の結核患者の意味は、結核の後遺症は含んでおりませんけれども、結核患者全般を含んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/39
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040・藤原道子
○藤原道子君 わかりました。そこで私はお伺いしたいのでございますが、最近療養所の病院化ということが言われておりますが、どういう構想の下にこれを行われるのであるか。療養所の病院化ということが言われております。そういう点から、今入院患者は非常に不安動揺しておるのでございますが、これは私ども外科的療法を主として病床の廻転率を高めるために行うことではないかと思うのでございますが、そういうことになると、結局は外科的療法をやれば治るというような人たちが多く扱われて、長期に流れる患者がどうしても退院を強いられるというような結果になるのではないかというので、非常に現在患者が、動揺しておりますか、私はこの点からいつて、まだ菌が出ておる者までも退院を強制されるというような事実もございますので、若しそういうことだとしますならば、由々しき問題だと思いますので、この点を特にお伺いして置きたいと思います。
それから診査協議会の運営とその権限について伺いたい。
それから隔離患者の家族の生活保障を徹底的にお考え願わなければ、折角の法案が死んでしまうと思いますので、この点に対してお考え等を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/40
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041・山口正義
○政府委員(山口正義君) 先ほどの御質問でお答え申上げるのを一つ落しておりましたが、結核病床の増床の問題でございますが、これは昨年十月現在の結核療養所の病床は約九万五千ございました。本月末で大体十万二、二千になる予定でございます。一応私どもといたしましては五ケ年計画で十九万床を目途として結核の増床を計画いたしておるのでございます。差当り二十六年度におきましては一万七千三百床の増床を予算上計画いたしております。その中で国立が千五百床、公立が六千九百床、法人関係が千八百床、健康保険関係が七千床、合計一万七千二百床の増床を計画いたしております。
次に療養所の病院化の問題でございますが、これは現在非常に結核に対する療法が御承知のように進歩して参りまして、早期発見、早期治療を行えば病床の廻転率が非常によくなるということは御承知の通りと存ずるのであります。私どもといたしましては、できるだけ早く患者を見付けて、早く治療をし、そうして病床の回転を順調にやつて行きたい、そういうふうには考えております。併しながら決して結核患者だけを収容するというようなことでなしに、やはり今度の計画におきましても、静養、隔離を行うような施設をこの病床の中に織込んで行くということを考えております。この点は今後増床がだんだん実現されて参りますに連れまして、単に外科的手術者だけのものというふうな感じを起させないようにやつて行くつもりであります。
審査協議会の権限と申しまするか、これは一応五人を以て構成しまして、その目的は非常に不適正と思われるような医療を排除して行きたいというのが趣旨でございまして、医療費の給付をいたします場合に、極端な例でございますが、ツベルクリンも陰性であり、レントゲン検査も何でもないのに人工気胸をやろうというような申出があるようなときに、それを排除して行きたいという趣旨でございまして、一応運用の方法といたしましては、単に指導するということではなしに、十分その申請された各事項を民主的に取入れまして、決してこれが治療方針を指示するとか或いは指導を加えるというようなことがないように、ただ本当に不適正な医療が行われないように、それを排除するというふうな趣旨で運用して行きたいと存じております。
それから結核患者の生活保障の問題、これは考えて行かなけければならんことは御指摘の通りでございまして、一応本法におきましては、結核患者の生活保障という問題は生活保護法に讓つてございますが、これは今後審議会等においても十分研究して行かなければならない問題と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/41
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042・藤原道子
○藤原道子君 いま一つ伺いたいのは、国家公務員の健康管理がどのように行われておるか、その予算が、今度人事院能率局の健康課の調べによりますと、昭和二十四年度の健康診断の実施状況を見ますと、全く実施していない、全然実施していない省が五カ所ある。その他検便のみ実施したところとか、或いは聴打診のみを行なつたところ、或いは血沈、間接撮影等、個々まちまちでございまして、殆んど誠意がない状態に置かれておりますので、この点非常に遺憾だと思うのでございます。こういうことでありまするならば、官庁さえこういうことであれば、この法案が一般に実施されたときにも非常に不安だと思うのでございます。従つてこの官庁のどういう実施状況をしておるかということは、これは極く参考のために資料の御提出を、この点は後で結構でございますから御提出を願いたい。今おわかりになつておりましたならば、公務員の健康管理がどのように行われているか、そしてその予算はどの程度がとられておるかという点についてお答えを願いたいという点が一点、それから結核行政はどうして一元化できないか、私はこの一元化が必要ではないかと思う。保健所、療養所、後保護施設その他有機的な連繋が緊密でなければ、絶対に結核対策の進歩はあり得ない、かように考えるものでございますが、この点についてどう考えておられるかということが一つ。
それからいま一つは、結核審議会であるとか、いろいろ持たれるようでございますが、厚生大臣の諮問の委員会では弱いと思うのでございます。従つて私はこの際内閣総理大臣の所管に属する結核対策委員会というようなものが必要ではないか、それはいろいろ関係官庁の省が全部含まれなければ実が挙がらない。厚生大臣の諮問だけでは、この大きな使命を持つところの結核対策を遂行することは不可能だと思うのでございます。従つて費用の点から大蔵省であるとか、或いは栄養資材等の関係から申しまして農林省であるとか、或いは通産省、建設省、文部省等々の関係官庁を含めましたところの内閣総理大臣直属の結核対策委員会というようなものを作つて、この亡国病とも言われる結核を一日も早く駆逐するように一つ推進されたい、さるべきだと私は考えますが、そういうことに対してどういうふうに考えておられるか。
それから最後に今までなぜ私がこういうことを言うかと申しますると、現在でも現行の諸法規におきましてもいろいろあるのでございます。ところがこれが今日まで実を挙げ得なかつたという点、今までの法律でも熱意があり、みんながそのつもりになればもつと私は効果を挙げ得たと思いますが、それが十分に効果を挙げることができなかつた。こうした隘路打開のためにも私はこういう制度を作つて強力に出発することでなければ、こうした法案を作つても十分な効果は挙げ得ないのじやないかと、こう考えますので、このことに対して御質問申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/42
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043・山口正義
○政府委員(山口正義君) 国家公務員に対する結核対策につきまして、現在までの実施状況につきましてはいろいろ不十分な点がございます。御指摘の通りでござりまして、その実施状況の資料につきましては、御要求通り後刻お手許に差上げたいと存じます。
なお国家公務員に対しまする結核対策といたしましては、本法の中にもこれを包含いたしまして十分に実施して行きたい、そういうふうに考えております。この点につきましては、先般人事院規則に基きまして健康診断の規則も施行になりましたので、それに基いて人事院のほうで予算を計上しているのでございますが、その予算の額も、これもあとで御要求によりまして提出いたしたいと存じております。この人事院規則に基きまして国家公務員の健康診断或いはその後の健康管理をやつて行くということにつきましては、先般来人事院と厚生省が一緒になりまして、各省担当の者がしばしば会合いたしまして、今後国家公務員の結核対策をどういうふうにしてやつて行くかということについて打合せをいたしておりまして、只今御指摘の従来の不備の点が是正されて行くように、私ども折角努力をいたしておるのでございますが、今後只今御指摘の線に沿うて私どもも十分やつて行くつもりでおります。
結核対策の一元化の問題でございますが、これは本法が若し御可決頂きますれば、只今御指摘の点、相当解決できると思うのでございます。と申しますのは、従来学校教育法或いは労働基準法その他の法令によつてばらばらになつておりましたのをこれにまとめまして、そうしてそれぞれのところで十分行われないというふうな場合には、本法に基いて健康診断なり或いはその後の対策を実施して行くということになつており、又労働基準法では健康診断だけが規定してございまして、予防接種の規定がございませんので、それをこれに取入れまして、労働者に対しましても一本になつてやつて行くということが実現されておると思うのでございます。なおその一元化の点につきまして不十分な点がございますれば、今後逐次故主をして行かなければならない、そういうふうに考えております。
結核対策審議会を厚生大臣の諮問機関にしないでもつと大きなものに、内閣に設置すべきではないかという御指摘でございますが、これは結核対策は申上げるまでもなく厚生省の所管になつておりまして、厚生大臣が全責任を持つて実施して行かなければならない問題であると存ずるのでありまして、従いまして当面の責任者として厚生大臣がこれに当り、その諮問機関として各省からそれぞれ委員を出して頂き、又そのほかの民間の学識経験者或いは患者の利益を代表されるかたがた、そういうかたがたも入つて頂きまして、この審議会を運営して行きたいと存じているのでございます。
只今御指摘の予算関係については大蔵省も考えなければならんだろうし、食糧その他の問題については農林省が考えなければならん、御指摘の通りでございまして、この審議会の委員の中にそれらの関係のかたがたに入つて頂きまして、厚生大臣の責任の下に、各省の御意見を十分取入れ又各省に協力して頂きまして結核対策を運営して行きたい、こういうように考えております。
それから従来いろいろの法律があるが、それを実施する熱意が足りない。結核問題についてもいろいろ法律があつても、それが実施されないという御指摘の点は、実際今まで存在しておつたと思うのでございます。これはその衝に当ります者の覚悟のほどもございますし、又一般の国民のかたがたの結核に対する認識というものもこれに大きくかかつておると思うのでございます。幸いにいたしまして結核に対する一般国民のかたがたの認識、或いは熱意というものも漸次向上して参つております。今後私ども努力を十分いたす覚悟でございます。又衛生教育によりまして、一般の国民の結核に対する認識というものを更に深めて、そうしてこの法ができまして、それが実際に地について運用されて参りますように私ども万全の努力を払つて参る覚悟でございます。これはここではつきりお誓い申上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/43
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044・藤森眞治
○藤森眞治君 私は一点だけお尋ねして置きたいのですが、第六十條の営利を目的としない法人に対して補助をするという規定でございますが、これについてはすでに小委員会において、この中には医療法人も含むという意向のあるところを承わつておりますが、なおこの本委員会において医療法人をこの中に含むことにしたらどうかということを明確に御答弁願いたいと同時に、営利を目的としない法人というのは大体どういう法人を意味されておるか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/44
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045・山口正義
○政府委員(山口正義君) 本法の第六十條に示してございます営利を目的としない法人の中には医療法人は含みます。そのほかに学校法人、宗教法人というものを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/45
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046・草葉隆圓
○草葉隆圓君 本法案は誠に重大なる法案でありましたために、委員会としては小委員会に付託されて、十分検討して、而も小委員長から詳細なる御報告があつて、更に質疑が続行されておる次第でありまして、大体十分な審議を進めたと存じますので、質疑はこの程度で終了されたいという動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/46
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047・有馬英二
○有馬英二君 只今の草葉委員の御発言は誠に御尤もだと思いますけれども、私はなお小委員会で質問漏れをした二、三の点について特に質問も許して頂きたいと思いますが、もう暫く時間を割いて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/47
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048・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 有馬委員のお申出で続けることにいたします。有馬委員御質問願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/48
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049・有馬英二
○有馬英二君 本法案の第三十六條に、厚生大臣が医療機関を指定するということになつておるが、どういう基準で以て指定するか、どういう人を指定するかということを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/49
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050・山口正義
○政府委員(山口正義君) 結核に対する適正な治療をやつて頂くという意味合いからいたしまして、一応原則として診療科名は内科を標榜しておられるというところ、それからエツクス線の装置を持つておられるということを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/50
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051・有馬英二
○有馬英二君 この指定機関の設置は誠に実際上多大の困難を伴うものでないかという気がいたします。地方の開業医、或いは国立の病院或いは診療所の性質というものを、私は詳しく従来多年に亘つて知つておる一人といたしまして、こういう指定医療機関というものの設定について非常に慎重な考慮を払わなければならん。単にレントゲンの機械があるとか或いは病院が大きいとかいうようなことだけでは適正な治療を行う、或いは診断を行うということが必ずしもそれだけではきまらないものであると私は考えるものでありまして、この点相当この第三十六條の実施に当つて困難を伴うものである。この点はよほどそういう際にはどういう工合にして誰がそういうことを裁定するかというようにお考えでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/51
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052・山口正義
○政府委員(山口正義君) 有馬委員のお尋ねは、単に施設だけで、この面から考えたのでは不適当ではないかという御質問だと存じますが、医師の技倆を云々いたしまして指定をするとか、しないとかいうふうなことは、私どもといたしましては差控えなければならないのではないかというふうに考えまして、一応施設の基準につきまして指定をするかしないかということを考えたのでございます。その場合に三十六條にもございますように、国が開設しておる病院、又は診療所は主務大臣の同意を得ました上で厚生大臣が指定をいたしますし、そのほかの病院や診療所につきましては、開設者の同意を得ました上で都道府県知事が指定をする、そういうふうな建前をとりたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/52
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053・有馬英二
○有馬英二君 私は只今の御答弁では満足いたしがたいのであります。実際において恐らくこれは保健所が中心となつてこういう適正なる治療を行うというふうにしなければならんのではないか。大きい都市では相当結核に関する専門的知識を持つておるいわゆる専門家がおりますけれども、地方へ参りますというと、必らずしもそういう人が、例えば内科であるとかと申しましても、そういう人ばかりあるとは限らないのであります。そういう際に余り内容をよく知らないで、一部の人が指定されるというようなことになると、そこに非常な治療上にも欠陥が生ずるというようなことを私は心配しておるので、これは恐らく厚生大臣にしましても、或いは地方は都道府県知事にいたしましても、これを決定する際には何らかあらかじめその指定の際において根本的な相談をして、よく研究した上でそういうことにすることに違いはないと思いますけれども、この際私はやはり保健所が中心にならなければならんと私は信ずるのであります。その点についてどういう工合にお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/53
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054・山口正義
○政府委員(山口正義君) 御指摘の通りこの運営については保健所が重要な役割を占めるわけでございますが、その各医療機関の内容等につきましては、その地方の医師会のかたがたの御意見を十分伺つて、只今有馬委員から御指摘のございましたような弊害の先ずないように十分運用して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/54
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055・有馬英二
○有馬英二君 本法案の第四十八條に、結核診査協議会というものが置かれると規定してあります。第四十九條には診査協議会は五人の委員から組織されると書いてありますが、この五人というのは、どういう資格を持つた人がこのとき選ばれるのであるかということを御質問いたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/55
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056・山口正義
○政府委員(山口正義君) その五人の中には保健所長、それから若しその地区に結核療養所がありますれば結核療養所の所長、それからその地区の医師会のかたがたから適当な人を選んで頂いて、この五人で構成したいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/56
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057・有馬英二
○有馬英二君 なお法律に規定されておるところによると、第三十四條第一項の……、申請に関する必要な事項を審議させると、こう書いてありますが、なお第三十四條の第一項というのは、「結核の適正な医療を普及するため、その区域内に居住する結核患者が第三十六條の規定により指定された病院」云々、そうするとこの協議会は費用負担についても審議を專ら行うものでありましようか、その点一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/57
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058・山口正義
○政府委員(山口正義君) その費用の負担につきまして、それを負担すべきかどうかということを審査する審議会であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/58
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059・有馬英二
○有馬英二君 これも私は本條の実施に当つて、少からず支障が起るのではないかということを憂慮するものであります。こういう機関は民主的な組織であるということが明らかでありますが、併しここに書いてあるように非常動である、二カ年の任期であるというのは、そういう人たちから見ると、若しその中にその土地で開業しようというような人があるならば、この審議会に入つておるというために事業上に何らかの利益が得られるというようなことからして、他の同業諸君から妬まれる、或いはその間に何らか業務上利益を得るようなことがないとも限らないというような、まあこれは或いは杞憂かも知れませんが、実際においてはそういうことはありがちだと考えます。特に費用を負担するということだけで、或いはそれを負担することがいいか悪いかというようなことだけならば、何もこういう地方の忙しい人たちを求めて協議をさせなくても、こういうことは、保健所の所長に一任しても差支えないのじやないかと私は考えるのでありますが、こういう点においてかなり実行の上にいろいろな弊害或いは支障を来すのではないかということを憂うるものであります。その点について御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/59
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060・山口正義
○政府委員(山口正義君) 私先ほど申上げました御答弁或いは言葉が不十分であつたかと存じますが、費用の負担を審査するというだけでなしに、申請されましたその内容を審査するのでございまして、これは保健所長だけに任せて置いていいのではないかというお説かと存じますが、保健所長だけに任せますと、まあ結核患者に対しますいろいろの負担が相当な額が予想されますので、事後の審査だけではなかなか適正な費用の負担を行うことができません。又本法による適正な医療の普及を図る精神から考えまして、事前の審査を行う必要があると考えられるのでありますが、それを保健所長だけで処理することはなかなか困難だと存じますので、先ほど申上げましたようないわゆる民主的な運用によりましてこれを決定して行きたい、そういうふうに考えておるのでございます。委員はできるだけ専門家のかたに集つて頂きまして、専門的の審査をやつて頂きたい、そういうふうに考えるのでございます。なおお忙しいかたがたをそうたびたびお願いするということは、御指摘の通りにいろいろ不都合があると思いますので、緊急の場合を除きましては月に二回或いは三回というふうな程度のことを考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/60
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061・有馬英二
○有馬英二君 なお政府から示された結核対策に必要なる経費という、この経費の項目につきまして二、三御質問を申上げたいと思います。
結核予防研究所に委託費として一千万円計上されている、どういうことを研究の題目として委託されておるかということを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/61
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062・山口正義
○政府委員(山口正義君) 只今御質問の研究費は、結核予防会におきます総合研究に対しまする委託ということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/62
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063・有馬英二
○有馬英二君 結核の総合研究のため……、ただ財団法人結核予防会にどういうわけで研究費を出しておるか、まだ研究所は、例えば大阪或いは東北、金沢、京都、北海道というように国立の同結核研究所、特に結核研究所というものが設けられておるのでありますからして、私はなぜ政府が財団法人結核予防会だけにそういう結核研究を御委託になるのかどうかということをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/63
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064・小川朝吉
○説明員(小川朝吉君) 結核予防会に対します委託研究費のことにつきまして私から御説明いたします。
結核の研究は勿論お尋ねのように、広く多くの機関で研究をいたすべきでありますが、結核予防会との関係につきましては、特別な事情があるのであります。御案内のように結核予防会は財団法人として、当時の皇后陛下の御下賜金を中心に結成された団体でありますからして、それに対しまして設立当初以来、財団から上りますいわゆる預金等の利子その他の収益五十万円、更に政府の補助金が年々五十万円、その百万円ずつで事業をいたすことで出発いたして参つたのであります。その後引続いて戦争終了までそういう恰好で参つたのでございますが、その間には各方面からの寄附も多大にあり、立派な研究ができるようになつて来たわけであります。ところが終戦後結核予防会の持ちます資産は、主として満鉄でございますとか東拓でございますとかいうような外地の債券が多かつたために、本来の資産そのままのリストのために、研究所の維持が困難になつて来たのであります。それで一応新らしい憲法の考えかたから、一時補助金を政府から民間団体に出すことに対して禁止規定があつたのであります。たまたま結核予防会もどうかという疑義があつたのであります。政府からの補助金を従来のまま継続することにつきまして困難を感じたわけであります。その結果といたしまして、或いは結核予防会の存続が危くなつたのであります。結核予防会は御案内のようにあそこにおきまするいろいろな研究の資材、用具等につきましては、他に求めがたい貴重なものが、多々ございます。同時に政府といたしましてもこの研究所の保全は考えなければならんわけでございます。そこで従来の補助金に返りまして、委託研究ということにいたしたわけでございまして、但しこの千万円の委託研究をいたします経費の基礎的な事項といたしましては、御案内のように結核予防会では相談所を持つておりますし、或いは療養所も附属しておりますし、或いはBCGの製造所も持つているのでございますが、これらを全部払い除けた純研究室の分についての維持経費を中心といたしまして、それが運用できるという最小限度の経費ということになりまして大体一千万円ずつ与えるということにいたしたわけでございます。そういう趣旨から総合的研究という意味でなされているわけでございます。なお二十五年度におきましては、そのほか特別研究費という名目で一千五百万円程度出ておつたのでございます。二十六年度は一千万円、元に戻つたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/64
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065・有馬英二
○有馬英二君 研究費の支出についての歴史的と申しましようか、前からのいきさつを詳細にお話になりましたが、私はこういうような立派な研究所に研究費を支出するということは賛成なんでありますが、なぜほかの研究所にも研究を命じないか、或いは委託をしないか、若し委託をするならば、政府はよろしくそういう研究所にも相当の経費を計上して、研究をなお更に盛んにすべきであると私は考えるのであります。今年の予算内には、そういう研究費はありませんけれども、将来そういう方面に政府は意を用いられて、結核の研究ということはもつと盛んにならなければならんというために、政府の強力なる各研究所における援助を望むものであります。この点について政府の御見解を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/65
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066・山口正義
○政府委員(山口正義君) 単に結核予防会でなしに、全国のできるだけ多くの研究所に研究を委託し、研究を助長して行くべきではないかという有馬議員の御指摘、御説の通りでございます。現在私ここに数字を持つておりませんけれども、科学技術行政協議会のほうにおきましても、いろいろ研究費を計上いたしまして、それぞれのテーマに従いまして各研究所から、研究者から研究を公募いたしまして、研究を委託する方針をとつておりますが、そういう場合におきましても、只今御指摘のように将来結核の問題につきましては十分各研究所、研究者に研究して頂けるように、政府予算を使うというふうに努力して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/66
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067・有馬英二
○有馬英二君 私はたくさん質問をしたいのでありますけれども、時間が許しませんからあと一つ二つ…………、先ほども山口局長から御説明がありましたが、療養所の拡充、増設は二十六年度は一万七千二百床であるということでありますが、これらの予算が十一億七千五百万余円に過ぎないのでございますが、この経費を一万七千二百で割りますというと、一床当りが約七万円くらいにしか過ぎないと私は思うのであります。勿論国立、公立、法人というような方面は二分の一の補助で行く、健保立のほうは三分の一の補助でやるということが書かれておりますから、一様ではないのでありますが、併し一床当り僅かに七万円に過ぎない。これを建築の点から申しまするというと、少なくとも六坪は要るはずで、そうするというと七万円余でありまするから六坪を割るというと、一坪が一万円余にしかならない。これで一体政府が考えておられるような新設若しくは増設の建築はできるのでありましようか、政府のお考えを聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/67
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068・小川朝吉
○説明員(小川朝吉君) 只今の結核病床増設の予算の基礎でございますが、一応新設の場合は七坪ぐらい、或いは簡易施設の場合は六坪ぐらいと考えております。なお増設は四坪乃至五坪という基礎でできております。従いまして簡易施設の場合は一床当り二十五万円の単価になると思います。増設の場合は簡易のものは十二万円ということになつております。これは昨年の予算当時におきます単価としては、大体において節約は実施可能だと思います。今日現在の物価或いは二十六年度の物価としますと、御指摘の通り相当危ぶまれる予算と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/68
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069・有馬英二
○有馬英二君 只今御説明がありましたように、この予算は昨年の六月以前に計上された予算であると思います。実際政府の提出された資料を見ますと、各府県に結核病床が割当られる、二十五年十月二十六日の日附の病床増設計画、これは今日の一万七千二百床から比べまして数が非常に多いのであります。併しこの割当が政府の補助の下に実際において実行が可能であると思つておられるかどうか、それを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/69
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070・山口正義
○政府委員(山口正義君) 御指摘の点につきましては、今後大蔵省と折衝を続けまして、でき得る限りこの線に沿つて増床できますように努力して参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/70
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071・有馬英二
○有馬英二君 先般私は福岡、長崎、熊本の三県を視察に行つて参りました。各県の衛生当局とも懇談をいたしました。結核病床の増設についてどういう工合に末端の衛生機関は考えておるかということを聞いたのでありますが、これぐらいの補助では殆ど増設を引受けるどころではない、先般私は視察報告の際にもこれを附加えて置いたのでありますが、その日丁度厚生当局は見えておられませんでしたから、今日は特にそのことを附加えて申上げます。
末端の衛生当局は、この政府の計上されたような額では到底実行ができない。もつと大巾な増加を願いたい。そうでなければ殆どこれは画餅に帰するかも知れないという言を或る県の衛生課長が私に申しました。特に中央当局の、これは考慮を願いたいというようなことでありました、私はこれは尤もなことであると考えております。実際この予算が計上された昨年の六月、或いは六月前の物価と今日の物価とは非常に違うのでありまするから、この予算で一万七千二百床というような結核の病床は到底なしがたい問題であると私は信ずる。これはよほど当局が大蔵省と折衝をされて、特別にこの予算を補正されない限り、ここに盛られておるところの結核対策が実際において無意味なものになつてしまうということを私は憂慮するのであります。この点について特にこれは当局の奮励を求め又努力を求める次第であります。これは私の希望でありますが、そういう点について政府の御所信を伺つて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/71
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072・山口正義
○政府委員(山口正義君) 療養所の建設費の問題につきましては、只今有馬委員から御指摘の通りでありまして、物価の値上りにつきましていろいろ支障を来たす虞れがございますので、この点は財政当局、大蔵当局と十分折衝いたしましてこの建設に支障のないように努力して参ります決意でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/72
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073・有馬英二
○有馬英二君 BCGのことでありますが、先般の参考人の、特にBCGの研究を多年やられておる熊谷名譽教授からBCGの使用量について、氏自身の多年の、或いは最近の研究から割出したBCGの量のことが特に強く言われたように私は思つたのであります。実は私も昭和十三年以来多年BCGの製造をやつており、又BCGの接種をやつた一人といたしまして、又その当時のBCGの効果というものを非常に私どもは信用しておつた。ところが先般熊谷博士の言によりますと、最近のBCGの製造方法が変つて、乾燥BCGになつて以来、力が非常に弱くなつた。それがために、若し我々が前に用いたような強力なBCGと同じ効果を挙げたいならば、量を遥かに殖やさなければならんことで、この点は小川課長も先般お聞きになつたはずであります。今回BCGの接種を結核対策の主なる、或いは重要なる一つの施策としてこれを取上げておられるのでありますが、この増量のことは、研究者或いはそのほうに当つておる人たちと直ちに懇談を開いて、旧来の通りの量では恐らく満足な成績を挙げられないのではないかと私思いますが、この重大なる結核対策の万全を期するために、速かに政府はそれが最善の処置をとられんことを望みます。これは私の希望であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/73
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074・山下義信
○山下義信君 私は質疑でないのですが、一つお願いしたいことがあります。通常国会の会期でよろしうございますが、若し当委員会に資料がすでに御提出になつておりましたらよろしうございますが、まだでございましたら頂戴したい。政府の予定しておりまする結核予防対策の長期計画と申しますか、二カ年又は五カ年といいますその長期計画のプログラムを資料として頂戴いたしたい。委員長を通じてこれらの資料の要求を請求して頂きたいと思います。それはただ五カ年の病床増設計画だとか、或いは人員の補充、配置計画だとかという平面的な同じことを年々こうやつて行くというような計画でなしに、私のお願いしたいという資料は、本法が成立いたしまして、政府の考えておるような予防対策が実施せられた暁には、昭和二十八年にはどれたけの効果が予想される。即ち結核の予防がどれだけできて、患者数はどう減つて来るか、三年先の死亡数はどう減つて来るかというような活きた立体的の、本法の施行に伴うて逐次効果が現われて来ると思うが、その効果をどう予想しておるか、従つてその予想せられた効果に従つて第三年目にはどうなる、第四年目にはどうなるというプログラムが、これはなくちやならんと思う。政府はそれをお持ちになつておると考えられますから、今国会の開会中でよろしうございますから御提出願いたいと思います。
この機会に私伺つて置きたいのは、今大臣が出席しておいでになりませんが、これは公衆衛生局長等の関係者は十分お考えになつて、方針はきまつておられると思いますから、厚生省の方針を承わりたい。それはこの結核の予防対策の本法を施行する上におきまして、法律で申しますると第三十五條以下であるが、即ち各種の社会保険と生活保護法、本法との関係が、私どもはこの法律の上では納得しがたい、言葉を換えて言えばはつきりわからない。それで本法と各種の社会保険の諸立法、生活保護法との関係を、どういう主義方針でこれらの関係を考えておるのかということが、この法案ではわからん。或いは社会保険を先行させて見たり、或いは生活保護法をより本法に優先させて見たり、一体これらの関係の法律と本法との関係をどう考えておるか、これは非常に私は重大だと思う。本筋から言えば、殊に社会保障り制度の本筋から言えば、かくのごとき対象者は当然医療保険制度のほうに……この結核対策の財政というもの、経費というものの使い方を任して置いて、そうしてこれら各種の社会保険において十分取扱いができかねる部分のみを本法が負担すべきであると私は考える。然るに現在の各種の社会保険というものを活用しないで、切離して本法にこれらの必要な財政を任せるということは、社会保障制度全般の運営の上に私は若干そぐわないのではないかという感じがするのであります。これは打割つて言えば、この結核予防対策のいわゆる経費を握る、予算を握るということを、これを保険に任せることが嫌であつて、いわゆる何というか、縄張争いというか、公衆衛生局がこの予算を握りたいというような考えであつてはならないと私は思う。もとよりそういう考えであろうはずはないと思うが、そういう点に、本法の実施によるところのいわゆる結核予防対策経費関係というものについて、厚生省は一定の方針を持つておるのかどうかということを私は明らかにして置いて頂きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/74
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075・山口正義
○政府委員(山口正義君) 本法と生活保護法或いは社会保険各法との関連についてのお尋ねでございますが、社会保障制度審議会の勧告によりますれば、社会保険によつて結核患者の医療給付を全部やつて行くべきであるということになつております。そういう趣旨に副うて私ども進んで行かなければならないと存じますが、差当り結核対策を当面普及徹底させて参ります関係上、一応今回御審議願つたような筋をとつたのでございまして、只今御指摘のように決して公衆衛生局の繩張りがどうのというような考えは持つておりません。これは社会保障制度の線に沿いまして、従つて将来はやつて行かなければならん、そういうふうに考えております。生活保護法との関係は、これは生活保護法の補足性を尊重いたしまして、本法の中にそれを取入れているのでございまして、生活保護法はいろいろなもので見られないものを最後に見るという建前になつておりますので、そういう建前を尊重いたしまして、本法の中に取入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/75
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076・山下義信
○山下義信君 私は最初の生活保護法の補足性という点は了承いたしますが、社会保険と本法との関係につきましては、この状態のままでは私はいかんのではないか、適当な時分にはつきりしなくちやいけないのじやないかと思うのであります。一例としては社会保険に任したらどうかといつたけれども、それは考え方によれば、本法によるところの筋を本筋にするという考え方もあるかわからないが、将来実施の上においてここは当然問題が発生して来て、相当考え直さなければならん点があるのじやないかということを思うのであります。この点だけ政府も十分運営上注意をされて、その実績上十分考慮を払つておかれるように要望いたして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/76
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077・山口正義
○政府委員(山口正義君) 只今の御指摘に副いまして、私ども今後本法の運営につきましては十分注意して参りたいと存じます。なお研究して参りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/77
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078・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ちよつと速記をとめて下さい。
午後零時十四分速記中止
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午後零時二十五分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/78
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079・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 厚生委員会を続けていたします。
引続き結核予防法案を議題といたしまして議事を進めることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/79
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080・藤原道子
○藤原道子君 私は昨日の要望事項の中へ二、三追加して頂きたいと存じますので、要望事項の第八項の中へ保健所、療養所の医師、保健婦、看護婦の待遇とありますところへ、医師、保健婦、看護婦の下に続きまして、「レントゲン技術者、病理細菌技術者、栄養士等の医療技術者」ということを入れて頂きたい。医療技術者の待遇を改善しというふうにして頂きたいということが一つ。それから十二項に続きまして十三項といたしまして、結核診査協議会の運営を全国的に統一するため、結核の隔離基準を明確にすること、十四項といたしまして結核診査協議会の運営が治療担当部門の運営を阻害しないよう特に注意すること、この二点を追加して頂きたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/80
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081・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 第八項にその藤原さんの御提案のものを加え、なお要望事項の十二項のあとに十三項、十四項の御提案を加えますことにしまして、皆様御異議ございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/81
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082・草葉隆圓
○草葉隆圓君 先も申上げましたが、その後一、二なお御質問がありましたが、大体もう御質問も御終了になつているようですし、殊に本法案は重大な法案で、本委員会は小委員会まで開いて熱心に協議されました結果でございまするから、質疑を打切つて、直ちに討論に入られたいという動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/82
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083・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 草葉委員の御動議に御異議ございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/83
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084・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それではそれに従いまして、これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/84
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085・中山壽彦
○中山壽彦君 本法案は結核の予防治療に対処する極めて重要な法案でありまして、現在結核療養者はもとより、全国民の齊しく今後のこの法案に期待するところは頗る大なるものありと存じます。私は政府当局におかせられて、小委員長の要望されておりまする各種の事項をば、でき得る限り速かなる時期において実施に移され、更にこの法案がその関連する範囲が非常に広汎でありますので、この運用に当りましては、これら関係されている各方面と常に密接な連絡をとられて、法の実績を高度に挙げ得るよう最善の努力をせられますことを強く要望いたしまして、原案に賛成をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/85
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086・有馬英二
○有馬英二君 私は国民民主党を代表いたしまして、ここに討論に入るに当りいささか所信を申上げます。
我が国の結核死亡率が欧米各国の五、六倍にも達して、結核症が国民病とまで言われるようになり、大正八年以来結核予防撲滅策が実施され、又数回の法律改正が行われ、或いは患者の届出制或いは事業場雇用人その他の健康診断等が行われては来ましたが、最近に至るまで殆んどその予防効果が挙らず、結核死亡率は依然として人口万対二十前後を上下して来まして、いわゆる結核予防撲滅無効時代ともいうべき三十年を経過したのでありますが、これは第一に法律で予防法を講じても、実際に即しないときは、結核は決して減少しないということ、第二に結核予防策は社会的、有機的、而も科学に即したものでなければ効力は挙らないということを実証したものであります。ここに我が国結核研究者の必死の予防法研究が多年行われ、その努力の結果、学界から公認せられるに至つた運の結核予防並びに治療対策が案出せられた。これが即ちツベルクリン反応検査、レントゲン検査、集団検診、BCG接種、患者の隔離、早期診断による早期療養、又は治療並びに最近の外科的治療法、或いは特殊薬剤の応用等であります。
最近、即ち昭和二十二年我が国結核死亡率が急に低下し始め、昭和二十四年には一六・九という数字を示すに至りましたことは、幾多社会的、経済的変動等にも基因するでありましようが、昭和十八年以来、学術振興会、結核第八小委員会が五カ年間多数の研究者の共同研究の結果、時の政府に進言したBCG接種を採用し、学齢児童並びに青年期暦等に施行せしめたBCGの効果が、この原因の一つに数えられるに至りましたことは、世界の学界で齊しく認めるところであります。今回政府立案の結核予防法の根本概念が、この我が国結核病学界の研究成績を基礎としておることを以て誠に理由ある、又現行法より格段の進歩を認め得る法律なりと思われるのでありますが、如何なる良法といえども、その実施に当り多くの不備又は欠陥があるならば、徒らに空文に過ぎないことになり、先に我が国がにがき経験をした結核予防無効時代が更に実現せられないとも限らないと思われるのであります。
先ず本法に見られる不備な諸点と、政府提出の資料によりまして窺われる結核対策の改善さるべき点を指摘したいと思います。第一、政府提出の対策に必要なる経費の算出が実際に即しないものが多いということであります。例えば人工気胸の実施の予算は十万人分に過ぎない。これは政府提出の資料を見ましても、非常に過少であると考えられます。又実際の我が国の各保健所で行われるところの結核患者の人工気胸の実施が非常に少ない。この点は我々が平素注目をしておるところであります。又病床の建設或いは増設費は一床当り七万余円にしか過ぎない、仮に一床六坪としても、この予算では坪一万余円にしか当らない、かくのごとき実際に即しない予算の計上は、実行不可能と言つて差支えないかと思われる。第二に、末端実行機関、例えば保健所の不整備が今日のごとき有様では、到底政府の考えておるところの結核対策の実行はおぼつかないものであると思われる。これは人員の不足と技術の未熟等によるもので、政府が技術者、医師その他の待遇を速かに改善しない限り、定員を充たすことができない。又もつと増員しない限り満足の成績を挙げられないと思われる。なお保健婦の活動が誠に不十分であることは、小委員長の報告にも指摘された通りでありますから、この点の実績を挙げることができないかと考えられる。第三は、今回新たに設けられた診査協議会の実行は、誠に憂慮すべきものがあると考えられ、この協議会は各保健所に附随して設けられ、委員は五名であるが、全国七百カ所以上の保健所区域々結核診査を誤りなく行い得る専門知識を持つておるところの医師諸君がどのくらいあるか、或いは開業医諸君が委員は任命されるというような場合には、或いは競争者があるときは、その他のいろいろの弊害を生ずる虞れがあると考えられる。むしろかかる協議会を設けるよりも保健所長に一任したほうが有効ではないかと考えられるのであります。
第四は、BCGの実際面において、政府は近代医学の進歩と一段の接触を図り、その実効をいよいよ顯著ならしめなければ、所期の予防効果が挙らないであろうと考えられる。これは去る三月二十八日の参考人供述の言について、当局は速かに対策を講ずべきであろうと思われる。
第五は、結核予防に関する費用の増加と、研究委託を予防会は限定せず、公私立研究所にもたびたびこれを行い、以て結核予防及び治療の向上と推進を図るべきである。
以上は政府提出の結核予防法案に窺われる不備と政府の施策の現実上の改善さるべき諸点を二、二指摘したに過ぎません。政府はこれらの諸点に特別の考慮を払い、若し本法実施上支障を認めるようなことがあれば、速かに近き将来において改善を行い、以て国民の期待に副わなければならないと思います。最後に本員は結核小委員会の要望事項の実行を政府が堅く約束せられることを條件として、本法案に賛成をするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/86
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087・山下義信
○山下義信君 本員は日本社会党を代表いたしまして、本法案に賛成を表するものであります。今回多年の要望に応えまして、我が国といたしましては画期的な結核予防対策が行われることになり、十分ではございませんが、先ずその第一歩を踏み出すに至りましたことは、御同慶の至りに堪えません。従いましてこれが根本となりまする本法案がここに提出をせられた次第でございます。法案に対しまする幾多の欠点と申しますか、或いは本法実施の上におきまする種々御注意を要しまする諸点等につきましては、すでに我が党の同僚議員から幾多の有益なる質疑、応答が交わされました。その中に十分看取するところが明白でございますから、私はこの際この討論の場合に再びこれを重ねることの煩を避けたいと存ずるのであります。
ただ本法案を審議いたしまする上に、先般有益な参考人を招致いたしまして、それらの意見を聞きました。それらの意見につきましては、我々といたしまして非常に考えさせられる点があるのでございます。政府もそれらの意見につきましては、すでにお耳に入つておると存じまするので、本法運営に十分御考慮を加えられたいと存ずるのでございます。私どもは本法案に賛成いたしまする根本の理由といたしましては、こういう国民医療の問題は、国家がその責任の衝に当つて、いわゆる何と申しますか、施策の中心となつて行くということが、私ども社会民主主義を奉ずる者にとりましては全く同意いたす点でございます。而も本法の実施の上におきましては公的医療機関が中心になる、国家の組織が動いてこの公衆衛生という画期的なる仕事が行われるということは、本法第二十五條からいたしましても私どもの大いに賛意を表するところでございます。一面から申しますると、本法のごとき性格は十分社会主義的な性格が大いに発揮せられてあると存じます。保守政党でありまする現内閣が、かくのごとき進歩的な法案を書いたということにつきましては、反対党でありまするが敬意を表するのであります。但し私どもはこう考える。この種の法案を今後立法いたしまするときには、法案の内容というものがこういうものであつてはならんと私は思うのであります。これは結核予防法案というこの法律の名称を、他の法律の名称に置き換えても、やはり内容はこういう法律の文章で通用するような、いわゆるあらゆる法律に共通的な條文を並べ立てて行くということは甚だ面白くないのであつて、全く結核予防を実施しようという法律になつていない。実施するための何か共通的な、平凡な、ありふれた、当然通則的に行うようなことを一カ條に羅列したに過ぎない。私どもはもつとこういつたような専門行政に属するところの法律は、これを実施して行く種々なる科学性と申しますか、学術的と申しますか、専門的と申しますか、そういうものが多分に織込まれておるなら、法律の箇條は三百カ條になつてもよろしい。この法律を実施するものが見たならば、いろいろなる実際の取り扱い方を専門家が見ても誰が見てもわかるというような法律というものを作るべきではないかと考える。その多くを省令に任す、或いは政令によつてというような行き方でなしに、一つのこの法律をめくつて見るならば、結核予防の関係者が、上は大臣から下は末端の第一線に携る者に至るまで、或いはこの結核対策に協力をいたす民間の団体、或いは個人毎にいたしましても、この法律を繙いて見れば、如何なる処置をとつたらいいか、如何なる手続をとつたらいいか、それには幾らの補助金が来るのであるか、こういうふうにして行くのであるというようなことが明白になるような立法を将来はなすべきではないかと考えるのであります。そういう点に対しまして、本法案はそういう見地から考えまするというと、従来の極めて平凡なる普通の諸立法の体裁をおとりになりまして、内容が極めて空漠たることになつておるのが遺憾でございまするが、将来はそういうふうに御立法を関係者は、殊にこういう専門行政の立法に際しましては御留意を願いたいと思うのであります。
なお本法の実施の上におきまして、十分小委員長の御報告を基礎にいたしまして、要望事項が本委員会で可決もせられたのでありまするから、多くを申上げる必要はないのでございますが、特に在宅患者の対策に対しましては、この法律の上におきましては殆んど確たる見るべきものがございません。これは十分実施上万全の御留意を願いたいと思うのであります。殊に私どもが当局に促したいと思います注意は、一体私どもこの審議をする上に、我々が質疑をしなかつたということにもなるかわかりませんが、この予防対策ということを実施される上においてどういうふうに実際上取扱つて行かれるか。例えば本日の審議の際に藤原委員から質疑に相成りました一例を挙げますると、保健婦の活動の問題でありますが、この保健婦が一線で活動いたしまするその活動の方法、状況等がどういうふうになされて行くかということは、午前中の質疑応答では、我々は十分つかむことができなかつたのであります。その保健婦訪問の予算等を拝見をいたしましても果してそれで実際の運営ができるかどうかということにも多大の疑問がございます。保健婦の一日の仕事の分量というがごときことも、ただ算術で割つて答えを出したような仕事の分量でなくいたしまして、実際に即応いたしたような仕事の内容分量というものが、種々に科学的に御計画に相成らなければならんと思う。私どもは素人でございますからよくわかりませんけれども、これは人を以て言をすてずでありまして、先般の武見参考人が申しておりまするように、これはこの結核対策というものは社会性があるということを言つております。そのことは私どもは一面にはこれはウエルフエアの分野までも関係があるということをすぐに連想をいたします。保健婦がその対象者の家に訪問をいたす、それがどれだけの仕事を携え帰つて、そうしてどういうふうに爾後の処置をなされて、関係者とどういう協議がなされて、どういう処置が行われるかということは、今日すでに御訓練に相成つて、保健所はその御活動をなすつておるのでありますが、どれだけの改善をかような大施策をなされる前に御準備に相成るかということを考えまするならば、従来の保健所のあの活動状況、或いは保健婦の活動に例をとりましたが、それで果して実績が挙るかどうかというような点等につきましても、私どもは一段と当局の御奮発をお願いいたさざるを得ないのであります。しかいたしまして、今回の審議で私どもが危惧いたしまするのは、この結核予防対策がどれだけできたらば実効が挙つたというのか。この施策が成功したというのは、どれだけの成績が挙つたときに成功と言えるか。若し所望のごとき成績が挙らなかつたならば、それは誰が責任を負うのであるか、どこが悪かつたのか、どの部分が悪かつたのであるか、いうまでもなく私ども素人にも、啓蒙して頂いたのであるが、極め手はない。いろいろなる科学上、医学上、その他あらゆる手をお打ちになつたのであるが、どの点が足らなかつたから所望の成果が挙らなかつたかということが明白になる一つの御計画がなくてはならん。然らざれば成績が挙らなかつた場合には、或いは予算が足りなんだのであるといつて、それになすりつけるかも知れない、或いはBCGの効果が不完全であつたというようになすりつけるかもしれない。或いはBCGの効果はあるんだけれども、個々のケースに適合するような考慮が払われなかつたというかむしれない。或いは又それらができたけれども、人員が足りなかつたのであるというかもしれない。あらゆる要件を備えて、この対策を成功させるということは、一面から言えば重点がどこにあるか、極め手がどこにあるかということが不明瞭であるということに相成りますると、先へ行つて成敗を論じまするときに、折角努力した関係者に対しても功績を褒め讃える機会を逸する。若し不成功に終つたならば、その責を追及をし、改善をいたさなければならんのでありまして、本員が先刻この結核予防対策に関する政府当局の立体的なプログラムがあれば、今会期中に頂戴をしたいというのはそこであります。すべて施策をいたします、而も多大な国費を使つていたしまするこれらの施策がいうまでもなく浪費に相成つてはならんのであります。当局が恐らく心を痛められるのもその点であろうと思う。有効適切なる対策を実施して参りまする上におきましては、責任の所在もう明らかにいたさなければならないことでございまするので、そういう点に対しまする政府当局の運営上の両と申しまするか、御留意を切にお願い申上げたいと思うのであります。なお最後に、本法で私どもが少しもの足りないと考えますることは、医療扶助に関連いたしまする諸般の規定というものが、この本法におきましては明瞭でございません。もつと法律でこういう條件の場合にはこうするというような事柄が明白に相成りますれば、なおよいのではないかと考えたのでございますが、これらの点が不明瞭でございますが、これは先刻申上げましたように、今後の運営上に十分御留意を願いたいと存ずるのであります。要するところ、本法はその立法の体裁その他におきまして幾多不十分な点が考えられるのでございまするが、その主要原則でありまする国家の責任におきましてこの事業に着手するという点に対しましては、我が党の主義政策の上から賛意を表するにやぶさかでない次第でございます。
以上当局に実施上の十分留意すべき点を指摘いたしまして、本案に賛成の意を表するものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/87
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088・藤森眞治
○藤森眞治君 私は本案に賛成をいたします。本案が必ずしもこれを以て万全な結核対策ということは言い得ないかも知れませんが、併しながら過去の結核対策から考えますると、非常に躍進した法律であることは間違いないのであります。今後学問も進んで参ります、これに伴うて又この法律にいろいろ改訂を加えて行くことができて来るということは予想されますが、併し今日ここまで結核対策について躍進したということは、国民と共に非常に喜ぶべきことだと考えます。こういう意味におきまして私は本案に多大の賛意を表します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/88
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089・松原一彦
○松原一彦君 私も本案並びに小委員長から報告せられました要望事項、この全部を添えて賛成の意を表するものであります。
この際簡単に所見を申上げます。結核は日本民族の前進を蝕む最大の障害と私は信じております。民族自衛の問題が盛んに唱えられておりますが、民族の自衛は戦争ばかりではございません。この結核による民族を蝕む最大なる障害を、この際何とかして排除せなければ、日本民族の将来が思われるのであります。結核はその中でも最も大きな障害の一つでありますが、併し日本の医療陣営の進歩、その技術、又保健行政がだんだんと進んで参りましたこの実績から見て、私は過去の癩病を今日の程度にまで平らげましたように、結核の方面においても大きな効果を挙げ得ることを信じて疑いません。又そうあつて欲しいと、国民の名を以て私は切に要望するものであります。併し一面から申しまして、今日死亡率は非常に減少いたしております。最近の保健タイムスは、死亡は減少の一途であるということをば明かにいたしておりますが、併しその末項に、岐阜県養老郡上多度村のごときは、結核患者は従来の結核死亡率の一に対する十でなくして、一対十三と高く上つておることを示しております。そうして又厚生省のほうで調査せられましたる結核統計資料の最末尾にあります統計表を見ましても、二十三年に比べて二十四年の結核罹病率は増加いたしておるのであります。死亡率の減少は、今日薬品や外科手術等の進歩によつて確かに顯著にはなりましたものの、その一面に在宅患者の増加、それからその感染率の高くなつたこと、特に住宅が今日のごとく非常に小さくなつて、小さい室にうごめいておるという現状から、私は在宅患者が病源となつて蔓延する今日の結核を戦慄を以て見るものであります。かような意味におきまして、一方においては飽くまでも療養所をば増加し、そのベツドをば多くして、患者の病院への収容を図ることは大切でありますけれども、武見氏も指摘しましたように、八割以上のこの在宅患者に対する系統的な、組織的な実際上の施策が、今後は最も重大であると思うものであります。ここから感染し蔓延いたすのであります。病院に収容しておる者に対する生物学的なこの治療、医療等は勿論大切でありますものの、結核源はむしろ家庭にあるのでありますから、この点に対する施策は今回の法案ではまだもの足らないように思われます。特に医師、看護婦等の待遇を厚うし、第一線に身を粉にして働いておる保健婦に対して、どうか十二分の後援、待遇をお考えになりまして、そうして活動の自由になりますように顧慮せられたいことを申し添えます。
国民として、受けるほうの側に立つて考えて見ますというと、非常に心強いものを覚えるのでありますが、併し一面にはどうもお役人式の、形式的な取扱いが相変らず行われて、折角保健婦が参つて注意を与えても、その栄養物、砂糖とか或いは油とか、その他の物をば病人のために取りに行く、又その手続をすることに非常な困難があるということをば聞いております。面倒がつて遂にできなかつたというようなことをたびたび耳にいたすのであります。どうか今後は保健婦等が、もう切実にこの病人にはこういう手当が要ると認める者に対しましては、登録もしてあることでありますから、その県なり何なりが持つて行つて渡すぐらいのところまで私は親切さがあつて欲しいと思います。これは極く細かなことでありますけれどもが、その細かなところに初めて国民の求める明るさがあるということをば御承知を願つて置きたいのであります。
以上のようなことを大要申添えまして、いろいろ欠陥もあるようでありますが、それは徐々に、刻々直して行くことにしまして、この結核予防法が一日も早く実施せられることを熱望して賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/89
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090・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) ほかに御発言はございませんか……、別に御発言もないようでありますから討論は終局したものと認めて差支えございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/90
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091・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより採決に入ります。結核予防法案につきまして採決いたします。結核予防法案に小委員長の要望事項を本委員会として附けて要望いたしまして、本案を原案通り可決することに御賛成のかたは御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/91
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092・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 全会一致と認めます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
それから委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とせられたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
小杉 繁安 有馬 英二
山下 義信 中山 壽彦
長島 銀藏 藤原 道子
藤森 眞治 上條 愛一
常岡 一郎 松原 一彦
草葉 隆圓発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/92
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093・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御署名漏れはありませんか……、御署名漏れはないと存じます。
なお本会議における委員長の口頭報告につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/93
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094・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/94
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095・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 少し時間を頂きまして、次に医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案を議題に供したいと思います。提案の御説明を今おいでになつております黒川厚生大臣からお願いいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/95
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096・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 只今議題となりました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明いたします。
終戦後国民医療の問題につきましては、医療の向上のため多くの施策がとられ、誠に見るべきものがあつたのでありますが、明治以来懸案とされておりました医薬制度につきましては、未だその解決を見るに至つていないのであります。
一昨年アメリカ薬剤師協会使節団が来朝いたし関係者に対し医薬制度の合理化について勧告がなされ、その後医、歯、薬三団体からなる三志会において進んで医師、歯科師及び薬剤師のおのおのの専門分野において相だに協力すべく種々協議が行われたのでありますが、残念ながらその結論は得られなかつたのであります。
そこで政府は、医、歯、薬の二団体の代表者、医療を受ける側の代表者及び学識経験者からなる臨時診療報酬調査会及び臨時医薬制度調査会を設け、診療報酬及び医薬制度に関し諮問いたしましたところ、両調査会は昨年八月より約半歳の長きに亘り審議の結果、それぞれ答申されたのであります。
政府は、右の答申に基き医師、歯科医師及び薬剤師についてその専門分野を明確化し、それぞれの分野において医療の向上に寄与し、公共に奉仕するようにすると共に一方国民のこれに対する理解、関係施設の整備の実情を考慮し、その実施については、漸進的に行う方針の下に、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正することといたした次第であります。
次にこの法律案の内容について御説明いたします。
先ず医師法及び歯科医師法につきましては、それぞれその第二十二條及び第二十一條を改め、医師、歯科医師は診療上患者が薬剤の交付を受ける必要があると認めたときは、処方箋を発行しなければならないこととしたのであります。
次に薬事法につきましては、その第二十二條を改め、薬剤師による調剤の原則に対し、例外として医師、歯科医は診療上特に必要があるとされる場合及び薬局の普及が充分でない地域で診療する場合、それぞれ省令の定めるところによつて自己の処方箋により、みずから調剤することを認めたのであります。なお、この省令の制定及び改正については、学識経験者からなる審議会の意見を聞いた上で行うことといたしたのであります。
更に第二十二條の改正に伴い、薬局における調剤は正当な事由がなければ、これを拒み得ないこと及び薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方箋によつて調剤すべきことを明かにしたのであります。以上法律案の内容について御説明したのでありますが、先に申上げましたように、これが実施につきましては、諸般の準備もありますので、薬事法第二十二條の改正規定は昭和三十三年から、その他の改正規定につきましては同二十八年から実施することといたした次第であります。
以上この法律案を提出いたしました理由でありますが、何とぞ愼重御審議の上、速かに可決されますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/96
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097・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 本案の審議は次回に廻したいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/97
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098・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。それでは一時休憩いたします。
午後一時八分休憩
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〔休憩後開会に至らず〕
出席者は左の通り。
委員長 河崎 ナツ君
理事
小杉 繁安君
有馬 英二君
委員
草葉 隆圓君
中山 壽彦君
長島 銀藏君
上條 愛一君
藤原 道子君
山下 義信君
常岡 一郎君
藤森 眞治君
松原 一彦君
国務大臣
厚 生 大 臣 黒川 武雄君
政府委員
厚生省公衆衞生
局長 山口 正義君
厚生省医務局長 東 龍太郎君
厚生省社会局長 木村忠二郎君
事務局側
常任委員会專門
員 草間 弘司君
常任委員会專門
員 多田 仁己君
説明員
厚生省公衆衞生
局結核予防課長 小川 朝吉君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X02219510330/98
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