1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年八月七日(火曜日)
午前十時四十二分開会
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昭和二十六年七月二十五日大蔵委員長
において小委員を左の通り指名した。
大矢半次郎君
松永 義雄君
小林 政夫君
油井賢太郎君
森 八三一君
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同日小委員長互選の結果左の通り決定
した。
委員長 大矢半次郎君
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本日の会議に付した事件
○租税特別措置法の一部を改正する法
律案(内閣提出衆議院送付)
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001・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) これより大蔵委員会租税特別措置法の一部を改正する法律案に関する小委員会を開会いたします。
租税特別措置法の一部を改正する法律案は継続審査になつておりますが、これを議題に供します。お手許に全国漁業協同組合連合会会長会議及び全国漁村経済協会から出ておりまする陳情書が配付してありますが、これにつきまして、全国漁村経済協会の及川常務理事を参考人として説明を求めたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/1
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002・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) それでは及川君より御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/2
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003・及川孝平
○参考人(及川孝平君) 非常に詳細なものでございまするので、概略を御説明申上げます。
問題は二つに分れます。一つの問題は現在租税特別措置法の一部改正によりまして、六%の税金がすべての漁業権の補償を受けるものにかかることになつておりまするが、この点について漁業協同組合、いわゆる漁業会の受ける補償金の中で漁業協同組合に継承される分及び漁業会以外のものの受ける補償金のうちで、新らしい漁業制度の改革によつて新漁業権者となるもの、こういうものについてはこの一六%の税金を免税して頂きたいというのが一つの要旨でございます。第二点は、現在の租税特別措置法の規定を以ていたしますれば、いわゆるまだ抜けている点があるのではないか、それ以外に税を課せないと申すのでありますれば、いわゆる法律上まだ脱落している事項があるのではないか、その問題はいわゆる漁業会に対する清算取得としての事業税の問題がございます。それから漁業協同組合、漁業会の会員の清算に伴いまするいわゆる持分の増加、これが各委員の所得になりまするので、この結果生じて来るところの組合員個人に対する所得税及び市町村民税、こうしたところのものが問題になつて参ります。そこでこういうものにつきまして、第一点の趣旨と同様趣旨でございまするが、これをはつきり明文を以て不安のないように規定して頂きたいという問題が第二点でございます。更に追加的に第三番目といたしまして、現在租税特別措置法におきましては、再評価ということになつておりますけれども、これは再評価をいたしまするためには手続的に申告を必要といたします。これをみなす再評価にいたして頂きたい、こういう問題でございます。
以下一、二、三の問題に分けまして、要旨を簡單に御説明申上げます。漁業協同組合及び新らしい漁業権者というものは新らしい漁業制度の担い手であります。従つて又別に国が予定しておりまするところの免許料、許可料というようなものを更に負担して行かなければならない、こういう関係になるのでございます。従いまして、このたび補償金を頂くのでございまするが、これは実質的にはもらつたことにはならない、国からこの大きな制度改革のために一時的に融資を受けたというような実質内容を有するものと存する次第でございます。そこでかような性質のものにつきましては、制度改革を本当に完璧にいたす意味からいたしましても、補償金の交付を受けて漁業を全然やめてしまう、漁業から脱落して行くというような人たちとはおのずから性質が異なるのではないかと考えるのでございます。そこでその種のものにつきましては、特に非課税の措置をとつて頂きたいと考えるのでございます。更に又私たちといたしましては、補償額というものは基準年度を以て定められておりますけれども、インフレが逐次高進している状態におきまして、こういう基準年度と今日の水準と比べて見ますならば、二倍半以上に相成つていると承わるのでございます。そういう筋合を考えて見ますならば、誠に補償額は過小評価であるということも申されるであろうと存ずるのでございます。かかることも裏に考えますならば、この際特にこの漁業制度の新らしい意味合であるところのものにつきましては、格別な、いわゆる免税の措置をして頂きたいというのが第一点の要旨でございます。第二点は、いわゆる事業税並びに所得税、市町民税の問題でございまするが、これはかかる現象はどうして起きて来るかと申しますると、補償を受けるものが個人及び会社の場合においては六%再評価税だけで、ほかに何も課税されることはございませんが、漁業会、従つて又化身であるところの漁業協同組合の関係につきましては、再評価税以外の、別に詳細に別紙Aに書いてございますが、漁業会に対する事業税、これが約十六億に推計いたされます。それから漁業会員、その大部分は漁業協同組合員になるのでございますが、これに対する持分増加を理由とするいわゆる所得税というものが少くとも二十三億、これは二〇%の最小の税率を考えて二十三億でございます。従つて人によりましては、五〇%とられるものもございます。更にこの収得税額を以ていたしますれば、従つて又市町村民税もかかつて参るのでございます。これが少くとも負担力が予想されるのでございます。こういうことは誠に現在の租税体系を研究いたして見ますると、どうもかかるような気がいたすのでございます。これを更に一般の漁業会関係の受ける税額というものは、少くとも以上累計いたしまして五十一億円となります。で、受ける補償金に対する課税比率というものは、漁業会関係の分におきましては、結局三六%に達する、そのほかの個人や法人におきましてはたつた六%である、こういうことに相成ると思うのでございます。こういうことは今次の漁業制度の改革における新協同組合の使命に鑑みましても、又個人つ及び会社とのバランスという点から考えましても、極めて妥当を欠くものど我々は考えるのでございます。然らばこういうような不合理がどうして現われたのであろうかということを少しく述べて見たいと存ずるのでございます。漁業会と協同組合との関係というものは、特にその財産的な関係におきまして彫りまするが、後者は、いわゆる協同組合は漁業会の後継団体の実体を備えておるのであります。にかかわらず、法律の建前におきましては、全く別個の団体として規定されるところに根本原因があるのでございます。この結果漁業会が解散をする、これは漁業権の消滅に基く法定解散をするのでありますが、漁業会が解散をするということによつて事業税の問題が生ずるのであります。又解散をいたします結果、各会員の持分関係というものを具体的に確定せざるを得ないことに相成るのでございます。その結果は持分増加というものがはつきりとここに現われて参るのでございます。今日の税法の建前におきましては、いわゆる所得の発生主義でございまする関係上、どうしてもここに各会員に対する所得税、従つて又市町村民税の問題が起つて来るものと考えられるのでございます。これは全く立法の形式から、かくのごとき実質的な不合理が生じて参る次第と存ずるのでございます。ところが法人の合併による解散の場合におきましては、現行税法におきましては、どうなつているかと申しますると、御承知と存じまするが、再評価積立金というようなものは合併法人に継承せられ、従つて前記の所得税、従つて又市町村民税というようなものは課税されないということに資産再評価法の第百八條できまつておるのでございます。この條理、こり法のいわゆる形式というものは別といたしましても、漁業会と新協同組合との関係というものは現実の実体に照し合せて見まするならば、まきに合併によつて解散する、法人漁業会というものは新協同組合と合併によつて解散するのだというような実質を有するものと我々は考えるのでございます。従つて先に申しました合併の場合においては、所得税その他をかけないというような法の精神、こういうようなものを準用いたしますならば、この場合においても格別な租税体系上の考慮が払われて然るべきではなかろうかと考えるのでございます。更に漁業会の保有しているところのこの問題を突込んで見まするというと、甚だ恐縮でございますが、本来漁業法というものと協同組合法というものが非常にズレたのでございます。本来ならば同時若しくはそれ以前に漁業法ができなければならなかつたのが、それがいわゆる非常にズレまして、この漁業法が非常に遅れた。従つて漁業会の持つておりますところの財産の中で、漁業権の処分だけが今日まで遅れて参つておるということに実は根本的な原因があるのでございます。若しもすでに一遍漁業会の重要財産であるところの漁業権というものが新協同組合に普通の財産のごとく引継がれておつたと仮定いたしまするならば、こういうような所得税その他の問題は起る余地はないのでございます。然るに漁業法が非常に遅れ、又漁業法との切替えをなすまでに日数を要した関係上、どうしても漁業権のいわゆる補償金関係だけが遅れて今日に来ておるというところに、いわゆる問題があるのでございます。現に漁業制度改革上さしたる技術上のいろいろな切替えにおいて、さほどの操作を要しなかつたと考えられる河川漁業権につきましては、現に漁業会から漁業協同組合にすでに引継がれております。引継がれたところのものがいわゆる今度消滅されて、それが補償を受けるということになつておりますので、河川漁業会の場合におきましては、全然前に申上げました事業税、所得税、市町村民税というような問題は起つて来ないのでございます。こういうような問題を考えまするならば、要するにこれは制度の切替えの全く技術的な経過から形式的に起つたところの問題と考えられるのでございます。以上これを要しまするのに、右の課税というものは、右と申しまするのは事業税、所得税、それから市町村民税を指すのでございまするが、これをとらなければならないというようなことを裏付ける実質的な理由はないと考えます。全く法の形式から来るところの不合理ということができようかと存ずるのでございます。第三番目には、みなす再評価にして頂きたいということでございますが、先ほども触れましたが、資産再評価法によりますというと、再評価は申告をいたさなければならない。ところが漁業会の今日の実態から申しまして、極めて事務能力その他に欠けておるのでございます。従いまして、申告その他の煩瑣な手続その他にはなかなか堪え得ない実情もございまするので、この際こうした漁業会の事務能力というようなものを顧慮いたしまして、煩雑な手続を略して、以て折角の減税措置を受けしめるに遺憾なからしめたいというようなことで、いわゆるみなす再評価の問題をお願いいたしておる次第でございます。
以上簡單でございまするが、御説明を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/3
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004・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 今の及川君の説明に対して、御質疑のあるかたは御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/4
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005・松永義雄
○松永義雄君 議事進行なんですが、只今の御説明に対して、大蔵省のほうで何か意見を言われるというようなことがありますか。そうでなくてもいいんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/5
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006・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 今の及川君の説明に対して、大蔵省側の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/6
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007・泉美之松
○説明員(泉美之松君) 只今のお話は四点ほどあつたと思うのでございますが、先ず第一点は、漁業会につきましては、今回の租税特別措置法の改正案による再評価税の課税をしないようにしてもらいたい、こういう御意見でございますが、この点につきましては、ひとり漁業会だけでなしに、個人が漁業権を持つておりまする場合、或いは会社が持つておりまする場合等におきまして、一律に再評価税を課税することといたしたいというのが改正案の趣旨でございまして、漁業会だけについて特に非課税にするということは、我我としましては理由がないというふうに考えております。それから次に第二点の事業税の関係でございますが、これはすでに清算所得に対しましては、この再評価積立金の部分については事業税を課さないというふうに、先月の十六日の地方税法の施行規則の改正におきまして、すでに措置がとられてございます。従いまして事業税を非課税とする旨の規定を特に設ける必要はないものと考えております。次に第三点でございますが、漁業会の会員に対する所得税及び市町村民税の問題でございまするが、これは二つに分れるのでございます。つまり一つは従来漁業会の会員でございまして、今度の漁業制度の改革に伴いまして、漁業協同組合のほうに移る人と、そうでなしに移らないで漁業会から脱退する人、この二つに分れるわけでございます。で、簡單に申上げますと、漁業会から漁業協同組合に移る今の場合につきましては、その漁業制度改革のほうの法律と、それから漁業協同組合のほうの法律の書き方によりまして、漁業会において所有しておつた持分がそのまま漁業協同組合のほうへ移るという構成をとつでおるのでございまして、所得税の、御承知のようにこれはみなす譲渡所得に該当するかどうかということになるわけでありますが、現在の所得税のみなす譲渡所得の場合におきましては、合併或いは解散によつて他の法人の株式又は出資を取得いたしました場合には、その際においては課税しないで、将来取得した株式又は出資を譲渡した場合に課税するということにいたしておりまするので、漁業協同組合に移る人につきましては、この際には所得税も課税になりませんし、従つて市町村民税も課税にならないということに相成るのでございます。ただ漁業協同組合に移らないで、漁業会を脱退して残余財産の分配を受ける人につきましては、これは他の法人の株式乃至持分を取得するわけでございませんので、この人につきましては所得税がかかりますし、従つて所得税のかかつた翌年に市町村民税がかかることになりますのは、止むを得ないことと考えております。次に第四点でございますが、第四点には法人の場合におきましても、漁業権の再評価をみなす再評価にしてもらいたいという御意見でございますが、みなす再評価にいたしましても、やはり申告を要するのでございまして、手数はやはり同じでございます。殊に現在の再評価法の建前におきましては、法人の場合におきましては、みなす再評価という規定はないのでございます。現在の体系をくずしてみなす再評価とするということは、それほどの必要はないのではないか、いずれにしても申告を要するものであれば、現在の形の任意再評価ということにして置いても、再評価の申告自体は非常に簡單でございまして、補償金をもらつたらそれを挙げてそれの額まで再評価すればいいということになつておるわけでございます。手数を要しないわけでございますから、強いてみなす再評価にする必要はない。みなす再評価にすることによつて現在の措置法の規定を直しますと、再評価法にみなす再評価というのがございませんので、非常に規定が煩雑になつて、それだけのために條文の数が二十カ條ほど殖えなければならないというようなことになるのでございます。勿論是非ともそういうふうにする必要がありますならば、二十カ條殖えましても何ら厭うところではございませんけれども、同じく申告しなければならんという点から申上げますと、それほどの必要はないのではないかというふうに感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/7
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008・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 次に本件に対して水産庁側の御意見を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/8
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009・久宗高
○説明員(久宗高君) この前の委員会で漁業制度の詳しい内容について申上げまして、その際この課税問題にも触れたわけでございますが、本日ここに出ております四点につきまして、第一点の問題につきましては、すでに政府部内におきましては、一応法案の内容について打合せが済みましで提出しておりますので、その内容に触れますから、特に意見を申上げることは避けたいと思うのでございます。ただ第二点、第三点につきまして、従来のあの法律の書き方では若干疑義があるのではないかということで、殊に徴税の実務に当られる国税庁方面からいろいろ問題かあらた点でございます。この点についてはつきり大蔵当局のほうからお話合があれば、殊に例えば二の事業税の問題についてもすでに解決せられており、それから三の一番問題になつておりました会員の所得税がどういう時期にどういう理由でかかるかという問題についても、今大蔵当局のほうの御説明で、全部実施の関係でという御意見も含めたものであるならば、そのようにお受取りしていいのじやないかというふうに考えております。それから第四点の問題でございますが、これは私どもも仮にどういう再評価のやりかたをいたします場合に、漁業会の経理が非常に弱体でございますので、何らかこういうような個々の手続を要しないでできる措置をお願いできないものかということを前々からお話ししておつたのであります。よく聞いてみますと、実際にはみなす再評価という場合でも、申告は当然に要するというお話でございますので、その期限なり何なりにつきまして、特別な便宜を図つて頂けるならば、これで結構だろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/9
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010・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 調査課長にお伺いしますが、出資の払戻しで受ける分ですが、これを次に漁業協同組合に持分の増加として引継ぐ場合には課税しないというのは、現行法の下においてそういうふうに明らかに解釈できるのですか、他との均衡上扱いとしてそうしよう、こういうお話なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/10
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011・泉美之松
○説明員(泉美之松君) その点につきましては、現在の所得税法の五條の二及び十條の二の規定からいたしまして、他の会社の株式又は他の法人の出資を取得する場合には、譲渡所得税をその際には課税しな。ただその株式又は持分を譲渡する際に課税するということは、はつきりいたしておると思います。ただ御承知のように、今回の漁業会が漁業権証券をもらつてのちに解散する。片一方におきまして漁業協同組合がありまして、そのほうへ移る漁業会の会員につきましては、漁業会の最終総会におきまして持分の比率をきめまして、その持分につきまして、漁業協同組合のほうから引渡しを漁業会に請求して、そうしてその財産が移ると、漁業協同組合に移る会員につきましては、その持分を持つたまま漁業協同組合のほうに行くという建前になつておるのでございます。その際にその持分というのが出資に振替わるのかどうかという点について、やや疑義があるわけでございます。農林省のほうの御意見を伺いますと、最初は出資に振替えないで行くというような御意見もあつたようでございますが、我々としてはそれが出資に振替わるならば、現在の現行法の規定からいたしまして、その際には課税しない。将来持分を譲渡するときに課税するということになるわけでございます。なお先刻お話がありましたように、国税庁のほうでややこの点に疑義があつた、研究の段階におきまして、そういう点があつたように承わつておりますが、現在はそういうふうに解釈することに統一されておりまして、若し御心配でございますならば、国税庁におきまして、詳細な通牒を各税務署に出しまして、税務署におきまして、そのように間違いが起らないように十分気を付けて参りたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/11
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012・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 水産庁のほうに伺いますが、今主税局のお話によつても、資産の総計の仕方、考えによつては多少問題が残るやに窺われますが、将来実際の処理はどういうようにおやりになるおつもりなのですか発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/12
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013・松任谷健太郎
○説明員(松任谷健太郎君) 現在漁業会と協同組合との関係につきましては、実体的な問題といたしまして、いろいろと従来から漁民の財産である漁業会の資産の分割が協同組合に対してなされたわけでございますが、漁業権を中心にしますところの補償額、このものの分割譲渡の関係につきましても、これを協同組合の組合員が、先ほど説明がございましたように、出資増、出資の形で以て引継ぐか、或いは持分の増加の形で引継ぐかというような問題につきましては、例えて申しますると、ほかの再建整備法その他の関係等もございまして、いろいろと問題が出ておるわけでございまして、水産庁の立場からいたしますれば、漁業権の補償に対する課税の取扱いが、持分増加の形と出資増加の形で以て異なつて取扱われるというようなことになりますると、多少そこに問題が出て来ると思うわけでございまして、こういつた点につきましては、なお大蔵省のほうといろいろと御相談申上げたいと、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/13
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014・小林政夫
○小林政夫君 今の大蔵省の説明だと、漁業会の持分をそのまま新らしい漁業協同組合の出資に振向けるならば、あなたの心配された税金は一つもかからないということですが、実際上の立場としては、新らしい漁業協同組合の出資関係を、そういう資格がなくて新らしい漁業協同組合に入れない人は別として、前から漁業会員であつたものはそのままの持分を新協同組合へ出資させたほうがいいのかどうか。そういうふうに指導して行きたいのかどうか。まあ水産庁としては全額出資ということはむずかしいじやないか、人によつて多少條件が違うような話振りですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/14
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015・及川孝平
○参考人(及川孝平君) 只今泉さんのお話によりますと、結論は單なる徴税延期ということに相成ろうと思います。引継いだときには成るほどかけない、それは徴税延期と考えられるのであります。漁業協同組合の会員がやめたときにはかける、こういうふうに申しますと、事実的にどういうことに相成りますかと申しますと、持分というものは最初に引継いだときから、協同組合が損をしたり何かしますと、実は毎月毎日変つて参るのであります。非常に変動的なものでございます。従つて若し協同組合が、そのものによりまして欠損をして行く、そうして出資ならば出資というものは取崩さなければならないということに相成ります場合に、結局各自の持分が少くなりますから、そのときやめれば観がかからんで済む。或いは漁業組合が非常にいい成績を挙げておつたというときには、その状態において、協同組合から脱退をするなら相当の税がかかるというようなことになろうかと思います。要するに徴税の延期であるということが結論されると思うのであります。それから出資にしたがいいかどうかという問題でございますが、現在の協同組合法におきましては、出資金は加入、脱退が自由である建前から、いつでも脱退するときには出資を持つて行くことになるのでございます。併しながら我々業界の運用態勢といたしましては、これを特別な準備金として、これはやたらにめつたなものに使つてはならない。それは漁業制度の改革のために使うのだという旗じるしの下に、特別な準備金として経理したのであります。そのことはどうなりますかと申しますと、特別な準備金として経理をしますと、これは脱退をするときでも即座に自分の持分というものは持も去ることはできません。解散するときでなければ持分を特も去れないという事情が出て来るのであります。現行の協同組合法におきましては、それでめちやめちやに分けたりなどというような危険が万一にも起らないことを考慮いたしまして、出資は避けまして、極力特別な準備金に積立てて、将来とも漁業制度の改革のために使つて行きたいとこう考えてみるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/15
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016・小林政夫
○小林政夫君 あなたの言われたそのめちやめちやに分散しないで、いわゆる新経営体である協同組合に資金を集中する意味から言つても、脱退すれば税金がかかるのだ。脱退しないでそのまま出資に持込めば税金がかからないというほうが、資金を集中する上から言つていいのじやないか。ただ協同組合の持分の点において、依然として漁業会当時の持分の比率になるというところに問題があるかどうかということの問題ですが、むしろ資金を集めるというそのときにおいては、特異な準備金とか何とかいう措置も考えられますけれども、脱退すれば税金がかかるということのほうが資金集中のためにはいいのじやないかと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/16
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017・及川孝平
○参考人(及川孝平君) 誠に御尤もな点もございます。併しながらその場合におきまして、協同組合の組合員であつたところの者が脱退した。脱退したときに税をとられる。税をとられるから脱退をしないだろうという間接的な効果はございましよう。併しながら本来他の個人や法人がたつた六%のあれで済んでおるのでございます。それとのいわゆる均衡を考えますならば、そこにも問題があろうかと思うのであります。そういう税金がかかると申しましても、脱退は、その税ぐらいで以て脱退の意志を決定したりしなかつたりというようなことは、必ずしもそう参らないのではないかと、こう考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/17
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018・小林政夫
○小林政夫君 あなたの御意見はわかりましたが、それでは水産庁にお伺いしますが、先ほどの話は、結局漁業会と同時に脱退する者もあり、残つて新らしい漁業協同組合に入る人もあり、そのままの出資割合で持込むということは困るという考えがあるかどうか。まあそのまま分けてもらつた持分を新協同組合へ投資するという形でもいいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/18
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019・松任谷健太郎
○説明員(松任谷健太郎君) お話の通り、組合によりまして、いろいろと分割譲渡の場合につきまして、組合員と会員との関係におきまして、出資の形で入る、それが移されるというようなこともございまするし、持分の増加という形で移される場合もあるわけでございます。只今及川君のほうから話がありましたように、この補償金の使途といつたようなものは、御承知の通り制度改革の経済的な裏打ちとして、組合を中心にしまして、分散をしないような自主的な体制を作られて、それを元にしてとにかく将来の漁業経営の切替え、安定といつたような資金に効率的に使おうというようなことで各団体では進んでおりますので、水産庁といたしましては、その線に沿つて十分世話して参らなきやいかんということを考えているわけでございます。従いまして先ほど申しましたように、出資になつた場合と、それから持分増加といつたような場合とにおきまして、税の適用が異なつて参るというようなことになりますると、そこに問題が起るのではなかろうか、かように存するのでございますので、その点につきまして、なおよく相談いたしたいと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/19
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020・泉美之松
○説明員(泉美之松君) この点につきましては、いろいろ問題があろうかと思うのでございますが、まあ私どものほうから申上げるのは如何かと思うのでございますが、漁業会から漁業協同組合へ移る人につきまして、その持分が移るという形がいいのか、或いは出資に振替えたほうがいいのかということは相当むずかしい問題でありますが、我々としてはこの持分、先ほどお話のように持分のまま移つておいて、出資に振替えないで、これを何らか特別の積立金にするという御意見でございますが、出資に振当てましても、いずれにしましても、新らしい漁業制度に基く漁業の発展のために使うということは、いずれにしてもできるわけでございます。特別積立金にして仮に漁業会から漁業協同組合へ移つに人が脱退する場合でも、それを返してやらないというようなことをするのは、かなり漁業協同組合として不公平ではないかと思うのでございまして、やはりこれは出資に振替えるのが適当ではないかと思うわけでございます。というのは、漁業協同組合に移りました場合に、漁業会から漁業協同組合へ移つた人と、そうでない人とがおるわけでございます。そうでない人は勿論漁業会から漁業協同組合に移つた人の持分まで利益を受けるべき筋合のものではないわけでございまして、これを特別の積立金にするというようなことにしておきました場合に、欠損が起きて取崩すというような場合に、損をするのは漁業会から漁業協同組合へ移つた人で別の人は損をしないというようなことは不公平になると考えるわけでございます。やはり出資に全部振替えるべき筋合のものと考えるものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/20
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021・小林政夫
○小林政夫君 幸い水産常任委員長が見えておりますから、今の問題についてあなたの御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/21
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022・木下辰雄
○委員外議員(木下辰雄君) 私ども今大蔵省の意見に実は賛成です。全部出資に振替えるということがよかろうと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/22
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023・小林政夫
○小林政夫君 私もそう思うのですが、今の農林省の考え、或いは漁村経済協会のほうで心配される点がわからないのですが、私先ほど尋ねたようにそのままの形で出資をするということが新しい協同組合の出資比率の問題で何か問題があるように思われるのですが、その点はどうですか、もう一度お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/23
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024・及川孝平
○参考人(及川孝平君) これはそういうことが、出資比率の問題というような問題も起るかと思います。と申しまするのは、漁業会の会員は世帯單位に入つておりましたけれども、今度の漁業協同組合においては従事員も誰でも、そういうものまで一家族の中から何人でも入れるというような関係もございまするので、而も従来の持分、出資の関係を見ますると、一組合百人とか、百五十人というようなものでございまするので、今度証券が入つて参りまして出資に当てられるとしますと、恐らく一人が二万円とか、三万円とかいうようなことになろうかと思います。そういたしますというと、それを漁業協同組合に持つて行つた場合に、いわゆる百人とか、二百人とかいうような人が相当多くの出資を持ち、あとのそれに追付くためには漁業労働者、従事員、そういう人たちとそこに非常に懸隔が出て来る。勿論協同組合においては出資が多かろうが少かろうが、一人一票の発言権はございまするけれども、実際問題といたしまして、出資の懸隔が非常に出て来るという問題は組合運動上必ずしもいい結果は……、悪い場合も起きると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/24
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025・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) それじや速記を中止して下さい。
午前十一時二十五分速記中止
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午後零時十九分速記開始つ発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/25
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026・大矢半次郎
○委員長(大矢半次郎君) 速記を始めて下さい。
本日はこの程度で散会いたしたいと存じます。
午後零時二十分散会
出席者は左の通り。
委員長 大矢半次郎君
委員
松永 義雄君
小林 政夫君
油井賢太郎君
森 八三一君
委員外委員
水産委員長 木下 辰雄君
事務局側
常任委員会専門
員 木村常次郎君
常任委員会専門
員 小田 正義君
説明員大蔵省主
税局調査課長 泉 美之松君
水産庁漁政部長 松任谷健太郎君
水産庁連絡官室
長 久宗 高君
参考人
全国漁村経済協
会常務理事 及川 孝平君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014661X00119510807/26
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