1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十六日(水曜日)
午後一時三十五分開会
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本日の会議に付した事件
○警察法の一部を改正する法律案(内
閣送付)
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001・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) これより地方行政、法務連合委員会を開会いたします。
警察法の一部を改正する法律案の予備審査を行います。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/1
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002・小笠原二三男
○小笠原二三男君 昨日も地方行政委員会におきまして法務総裁に対して質疑をしたわけでありますが、私昨年当選して参つた議員で、第一回国会における警察法の審査の過程について十分承知しておりませんので、警察制度の根本的な当時の考え方と、今回警察法の一部改正をするに当つての考え方とが変つておるのかおらんのか種々説明をお願いしたわけでありまするが、そのあとで第一回の国会における警察法の改正にからむ委員会の審査記録を見てみますと、やはり昨日私のみならず同僚議員も疑問をしました警察の民主化そのものが地方分権にあるという趣旨に基く自治体警察を中心とする問題がどうもはつきりしておらんのであります。そこで今回当時の政府責任者でない法務総裁に伺うのは如何かと思われますので、当時関係しておられた加藤さんあたりに記憶を新たにして頂いて御説明願いたいのでありまするが、それは自治体の警察は国家事務を委任せられたものであるか、これは初めから地方自治体固有の事務であるかという点において、第一国会においても非常に論争になつておるようですが、ところがどの答弁のところを見ましても速記を止めてとあつてその最も大事なところがちつともないのであります。それで経過が残余ながら私に素人でわからんので、そこでその当時のこういう建て方をした根本的な考え方について、先輩同僚議員には御迷惑でありましようけれども、御説明を願うと共に、今回の問題に関連する部面を御説明願いたいと考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/2
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003・加藤陽三
○政府委員(加藤陽三君) 私からお答えいたします。当時警察の事務が国家事務か自治体の固有事務かということにつきましては非常に論議があつたのであります。ここにおいでになります委員長の岡本さんあたりも熱心にその質問を展開されたと覚えております。いろいろありましたれども、私の記憶によりますると、最後の結論は国家事務でもあり、固有事務と見るべきものでもある。両方の政策の如何によりましてどちらにも規定すべき事務であるという結論に相成つたと私は記憶しております。一言申上げて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/3
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004・小笠原二三男
○小笠原二三男君 その考え方が今日においてもその通りの考え方で一部改正の法律案を御提案なされておられるのかどうか、法務総裁に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/4
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005・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 今回の警察法の改正は、この題目にも警察法の一部を改正する法律案、こういうふうに書いてある次第であります。これは過去三年余りの現行法の実績から考えまして、治安上必要な技術的な修正をいたしたい、こういう程度のものでありまして、地方分権を建前といたしまする自治体警察というものにつきましては、特にこれに手を触れるという考えではなく、これを自治体警察をして国家の治安の要請に応えしめるために多少の手を加えるという考え方でございまして、根本におきましては、現行警察法の精神をできるだけ活かして参りたい。こういう趣旨で立案をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/5
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006・小笠原二三男
○小笠原二三男君 それではくどいようですが、再三申上げる通り、私素人でわからんのですが、国家固有の治安問題とか、或いは地方自治体だけに関する治安問題とか、こういうようなことが明確に分けられるものであつてそうして国家固有の警察事務というものがあり、又自治体の持つ固有の警察事務というものがあり、これら両者を合わしたものが国家地方警察である。こういうような考え方になるのか、この点お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/6
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007・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 警察というものは一つでございまして、ただこの警察が現実に維持経営されておる、それを法律の上から考えまして、これは自治体の固有事務と観念すべきものであるか、或いは国家によるところの委任事務と観念すべきであるか、こういう問題が提示されました場合に、現行法の解釈としては、警察というものはその双方の性質を持つておるものである、こう今解釈をいたす、これがまあ通説になつておるのであります。これは警察の中に国家固有のものと認められる部分と、それから自治体固有のものと認められる部分と二つのものがある、こういうわけでなく、一つのものについて二つの性質を備えておる。こういうふうに考えるのではないか、こう存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/7
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008・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そうすると自治体警察が所管しておる中にも、国家固有の事務で委任せられた部面がある。それは具体的には非常事態宣言等で総理大臣の所管になるような事項を指すものである、こういうふうになるわけですか。それから第二点としては、国家地方警察の性格も又同様に自治体警察の性格があり、やはり国家固有の事務そのものもある。こういう考えになるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/8
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009・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) これは、警察の各種事務の内容に立入りまして、この部分は固有事務と観念すべきものである、この部分は国家からの委任事務と観念すべきものである、こういうふうな考え方ではございませんので、警察の事務全体を一体として考えました場合において、それは国家の委任事務たる性質もあるし、又自治体の固有事務たる性質もある。一つの警察が二つの性格を兼ね備えておる。こういうふうな考え方ではないかと存ずるわけであります。そこで自治体警察につきましても同じ事務をやつているのでございまするから、当然考え方としてはそういうことも成立ち得るわけでありますが、併し御承知の通り国家地方警察は国家の経営するところでございまするから、国家につきましては特に自治体の委任事務というような法律的な観念を入れる余地はございません。併し社会的な性質といたしましては、かような事柄は自治体がやる場合においては自治体の固有事務と観念すべきではなかろうか、そういつた性質も社会的にはあるわけでありまして、法律的な表現といたしましては、無論全部国家事務である、こう言わなければなりません。その実体において地方的な公共団体的な性質を持つたものも勿論ある、こう存ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/9
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010・小笠原二三男
○小笠原二三男君 くどいようですが、それでは端的に伺いますが、非常事態宣言を発して総理大臣の支配下に入るときの警察と、日常における国家地方警察と、自治体警察と、この三者の違いと申しますか、こういうものの関係はどういうふうに考えられて日本の警察制度というものが維持せられているのであるかという点をお伺いしたい。結論的には、日常においては規模の大小はあるでしようが、日本の警察制度は自治体警察制度の精神において行われるものである、こういう考えに対してどういうお考えをお持ちであるか、御所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/10
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011・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 国家非常事態におきまする特別措置といたしましては、内閣総理大臣によりましてその地方のあらゆる警察が一時的に統制されるということ、だけでございまして、従つて内閣総理大臣の指揮によつて警察力が発動する、こういう形になるわけでございますが、併しこのことはそれによりまして警察が自治体の固有事務であるか、或いは国家の委任事務であるかというその本来的な性格を変えるものではなかろうと存じまして、非常事態の宣言がある場合においてもない場合においても、すべて警察というものは、自治体警察については固有事務の色彩もあり、又委任事務の色彩もある、こう解釈されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/11
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012・小笠原二三男
○小笠原二三男君 結論的に申しました部分について……。私その前々から考えているのですが、国家といい地方ということ、全体であり部分であるような関係にある言葉を以て国家地方警察とする警察の性格が十分私には納得が行かんのです。国が予算を出し、そして国会が法律を以て国家地方警察の構成なり、或いは国家公安委員会等が、その維持管理に当るというような、そういう行政上の部面から言えば、それは形式的には国家警察でありましようけれども、併しその行う事務自体は、自治体がやり得ない、村落における能力のない自治団体と共同して一つの警察の組織として運営管理して行くという部面から言えば、これは必ずしも国家権力を背景とする警察というふうにも考えられないのじやないか、こういう疑問を持つておるわけなんであります。そこでこの点が明確にならないと、ただ單に昨日法務総裁の言うのには、現下の治安を維持するという関係から一部警察法の改正をする、そして内容は自治体警察廃止になつたものを、ただ單に国家地方警察に吸收すると、こういうような内容を含んでおりますと、我々としては何かこの国家権力を背景とする中央集権的な警察制度に移行するのではないかという素人流の疑義を持つておる。又持つわけであります。そこでその一方警察民主化のための地方分権というこの原則も確立するということにおいてその調整如何という質問を申上げましたところが、それは理論ではなくて現実の問題として調整すべきものであるというお考なんですが、私その根本的にその点がわからんのです。警察制度の持つ理念というものを理論というものによつて維持せられない限り、現実的な調整でその都度々々ものが考えられて行くということであれば、警察の地方分権というそういう根本命題から外れた集権的な一つの改正であると言われる部面に対して、そうでないというその反駁ができないのじやないかと考えられるのであります。そこで私はやはり根本的にはこの自治体警察、国家地方警察を具体的に取上げた、根本的な日本の警察の民主化、その原則を貫く新らしい警察制度の理念なり、理論というものから、この改正法案を考えなくちやならんじやないかというひとりぎめで、たどたどしくこの問題を質問申上げておるわけなんで、このよつて立つ基礎の考えがはつきりしない限り、私はこの改正案がいいとも悪いとも率直に推し測ることができない。こういう点があるのでお伺いしておるのでありまするから、法務総裁としまして率直にもう少し根本的な警察制度の問題について御説明が願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/12
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013・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 私自身としましては昨日来率直に申上げておつたつもりでございまするが、実は今の御質問を伺いまして、漸く御質問の御趣旨が私自身にはつきりいたしました。私のお答え申しておつたことは、或いは御質問の趣旨と多少食い違いがあつたために御満足を得られなかつたと思います。只今の御質問の御趣旨は次のように承わつた次第でございます。即ち現在の警察法において、警察の根本的な考えとして地方分権というような重大な原則がある。これに対しまして今回の改正はどういう関係に立つか、この点をはつきりしたい、こういう御趣旨ではないかと存じます。御承知の通り現在の警察法におきましては地方分権ということが、これが警察の民主化のための根本原理と相成つておるのでございまして、これは現在の日本の警察制度というものを如何に改正いたす場合におきましても、私はどうしても持続しなければならん原理である、こう考えておるのであります。そこでこの地方分権ということによる警察の民主化、この原理が警察法の上におきまして、如何に具体化されるような措置が講じられておるかということを考えて見まするというと、原則的にできるだけ自治体警察というものを進めて行く、そうして自治体警察を維持することの非常に困難である、或いは不可能であると認められるような自治体のための国家地方警察というものを補充的な措置として考えて行く、こういうふうな考え方になつております。而してその自治体警察におきましては、それぞれ独自の公安委員会を持ち、そうしてこれが自主的に警察を運営して行く、こういう形で地方分権並びに警察の民主化を行うのでありまするが、国家地方警察におきましてもやりその精神は決して異なるものではないわけでありまして、もとよりこれは各府県について一つの国家地方警察の單位を作つておりまするからして、各町村ごとにということには参りませんが、併しその府県におきましては府県知事の推薦により府県議会の承認を得て任命するところの都道府県公安委員会というものがありまして、これが地方的なあらゆる事柄について考え併せながら警察の運営管理の責任に当る、こういう方法によりまして、地方分権なり、又警察の民主化ということを推進いたしておるわけでございます。従いまして現行警察法の考え方といたしましては、ひとり自治体警察においてのみ地方分権が行われておるというのではなくして、国家地方警察におきましても、やはりその運営面におきましては厳格な地方分権が採用せられておるわけであります。さような次第でございまするから、自治体警察が廃止をせられたる場合におきまして、国家地方警察がこの部分の警察を担任いたしまする場合におきましても、従来の他の部分と同様に、地方分権の考え方に立ちました都道府県公安委員会の運営管理の下にその警察が運用されるわけでございまして、地方分権という警察法の根本精神は毫もこれによつて損われるものではないと、こう私としては考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/13
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014・小笠原二三男
○小笠原二三男君 そんなら一般に東京都なり、大阪なり五大都市、或いはそういうものに準ずる大都市を除いて、一般の農村で大多数のそういう府県において自治体警察は五千以上の市街的町村或いは市、これだけにあつて、それだけの規模で維持せられておる。然るに運営管理は都道府県單位で都道府県の公安委員会が独立してこれを行なつておる。だから共に自治体警察の性格を持つておるというのでありまするが、そういう私例に挙げましたような府県等においてはやはり一種の規模が大きいということにおいて小さいものよりは集権的でないかということが言われるのじやないかと思うのでありまするが、それは私の意見でありまするから質問申上げませんが、率直に言うて、今回の改正法のように、五千以上の市街的町村が一時にやめるという場合に、これを国家地方警察に吸收するという安易な方法のほかに、関係町村を集めて組合立の警察として或る種の規模を持たせて自治体の警察の育成強化をして行くという方法もあろうかと思うのでありまするが、これらについて政府としましてどういうお考えを持つておられるか。又国警長官、本日御出席の田中警視総監等においては、これらの問題が問題となつたかどうか、なつたとしますればどういうふうにこれらが解決を見たのであるか、この点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/14
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015・大橋武夫
○国務大臣(大橋武夫君) 廃止せられまするところの町村を各單位、例えば各府県ごとに一つの組合を組織せしめまして、そうして自治体警察というものを作つてはどうか、こういう問題ですが、この問題につきましては立案当時におきましても相当研究いたされた次第でございまするが、御承知の通りにこの五千以上の町村において今回仮にこの警察法改正が成案通り成立いたしました場合におきまして、廃止されるような、そういう希望を持つ町村というものは恐らく各府県におきまして、府県の区域内で散在的にあるだろうと思います。そうしますると、これらの散在した地区を結合いたしまして一つの組合警察を持つということは、これは連続しました地域について一つの單位の警察を持つということは、これは非常に能率的な運営が可能でございまするが、飛び飛びのものを幾つか合せて、そうして大きな單位にする、これは無論別々に行くよりは能率的な運営に可能であろうと思いますが、併しその場合においては、むしろやはり現在あるところの国家警察、それと一緒にして、そうして地域的に繋りを持つた、そういうものにするほうが適当ではないか、こういう考えでこの案になつた次第でございます。なおこの間におきまして、いろいろ各自治体警察の当事者等と話合つたこともございますが、その辺の様子につきましては齋藤長官より申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/15
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016・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 只今衆議院から連絡がございまして、衆議院の地方行政委員会におきましてこの警察法の一部を改正する法律案について本審査を行なつておりますから、午前に続いてこれから午後のほうをやりたいと言つておりますので、法務総裁の退席を許したいと思います。御了承願います。なお今日は昨日小笠原君から御発言がごいましたので、参考人として警視総監の田中榮一君、大阪市警視総監の鈴木榮二君、それから京都市警察本部長の永田圭一君、三かたが見えております。なお政府委員は残つておりますから、それについて御質問を続けて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/16
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017・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 只今小笠原委員の御質問になりました町村警察の組合の推進の問題でありますが、これは今法務総裁からお答えになりました通り現行法におきまして組合警察を作る途を認めております。現在これによつてできておりまする警察が二十一でございます。関係町村が四十六ということに相成つております。従いましてこの問題につきましては同法を改正する必要はないと、こういう結論になつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/17
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018・小笠原二三男
○小笠原二三男君 法務総裁に対する総括的な質問はできなくなりましたので、細かい審査の前提になる立案の経過等について質問したいと思うのですが、よろしうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/18
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019・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/19
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020・小笠原二三男
○小笠原二三男君 では総括質問を省略いたしまして、我々非公式に幾多の団体からさまざまな要望を聞いておるのでありまするが、自警連の共同になる国警長官の示された試案に対する試案等が出ておつたのでありまして、今回の改正法案と比較しますと、いわゆる調整がとられて一つの枠となつた具体的な部分があるわけでありまするが、先ほど来しておりました自治体警察側の主張が結果として入る、或いは入らなかつたというような、具体的な事項について、その入らなかつた部分の問題についてはどういうお考えで調整し、又これを是とせられたのであるか、自警連側からこの際その経過について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/20
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021・田中榮一
○参考人(田中榮一君) それでは自治体警察側を代表いたしまして、私から概略御説明いたしまして、なお不足の分については他の参考人から御説明いたすことにいたします。
今回の警察法の改正につきましては、いろいろ各委員にも非常な御配慮にあずかりまして、自治体警察側といたしましても各委員の非常な御配慮に対しましては全自治体二万五千を代表いたしまして謹んでお礼申上げたいと思います。今回の警察法改正に当りまして、自治体側のとりました根本的な態度といたしましては、今次の警察法、新らしい警察法の精神から出発いたしたのであります。この新らしい警察法の精神は大体私は二つに分かれると思うのであります。一つは旧来の警察制度のいわゆる権力の集中化、一元的な警察権力、これを分散いたしまして、地方自治の一環として警察権力を地方に分権化するということが第一の狙いだろうと考えております。次に狙いはいわゆる警察活動なるものはその警察に従事する警察官が国民に、マ元帥の書簡には人民と書いてございますが、いわゆる人民に責任を負う、飽くまで国民に対して、警察活動に対して責任を負う、これが第二の精神であろうと思うのであります。そこで第一のこの地方分権化の問題につきましては、その精神に基きまして警察法第四十条の第一項に、市町村は、殊に市街的形体を有する人口五千以上の町村は自治体警察を維持する、自治体警察を持つ、警察を持つんだ。而してその自治体内における法律執行並びに治安維持の責任を負う、責任を持つというのが、これが地方分権化の第一でございます。それからなお地方分権化の精神から出ました第二の点は、日本の警察は国家地方警察と自治体警察の二つある。この双方の間には何らの指揮命令の関係もない。いわゆる相互が自主独立をいたしまして、国家地方警察は自治体警察を指揮命令することはできない。又自治体警察は国家地方警察の指揮命令をすることはできない。但し両者の能率を増進するために、或る意味の技術的の相互の連繋を保つことはこれは支障ない。これが第一の精神から出た原則だろうと思うのであります。それから第三の点につきましては、いわゆる警察長並びに公安委員会の組織、又警察長任命の形式が国民の意思から出発しておるというのが、これが第二の原則から出た新らしい警察制度の精神であろうと思うのであります。かような点から当初新聞紙上に発表されましたような、漏れましたような事柄につきまして、若しこれが実現されるといたしましたならば、現在の警察法の精神に停るような態勢に相成りまするし、極めて重大なる問題だろう、かように考えまして、政府並びに国警側と自治体警察と十分に折衝いたしまして、只今お手許に御提案になりましたような警察法一部改正の原案ができたのでございます。これらの問題につきまして、一々細かに御説明申上げますると非常に時間がかかるのでございまして、只今小笠原委員の御質問の要点でありまする自警と国警との、話合いの上で漏れた分はどの部分であるかという御質問に対しましてお答えを申上げたいと思います。で、この自警、国警の間におきまして、事務的の折衝をいたしまして、大体におきまして両者の意見が一致をいたしたのでございまするが、ただ一点一致を見なかつた点は、人口五千人以下の町村は、御承知のごとくに只今国警の管轄となつておるのでありまするが、若し人口五千人以上の、市を除く人口五千人以上の町村が財政的の事由、その他の事由によりまして住民の一般投票によつて自己の警察を維持しないことができるというような、若し国民に、住民にその自由が仮に許されるといたしましたならば、同様に人口五千人以下の町村におきましてその町村民の自由意思によつてその従来国家地方警察の管轄内にあつたその町村が地域的に隣接の自治体警察と組合警察を設置すること若しできるならばその途も開いてやつたほうが民主的ではないか、人口五千人以上の町村においてその自治体警察を一般住民の投票によりまして維持できるできないを決定させる自由が仮に與えられるといたしましたならば、同様に人口五千人以下の従来国警の管轄内にある小町村におきまして、隣接の大きな自治体警察に組合警察として合致したほうがすべての運営において、経費の点において、又人員の配置の点において、又警察活動の運営の点において、そのほうが極めて合理的であるというような観的から、その住民が是非隣接の大きな自治体に組合警察として合併したいというような希望がございますならば、それも一つ許して頂いたらどうだろうか、かような希望を持つておつたのであります。いろいろ政府と折衝いたしました結果、この点については一応留保されたのでありますが、自治体警察側といたしましては、今なお熱烈なるその希望を持つておるのであります。而して然らば人口三千の自治体警察と隣接の人口四千の自治体警察と組合警察を作つたらどうかということでありますが、これでは結局人口七千の自治体警察ができるということに過ぎないのでありまして、やはり現存する大きな自治体警察としての経験を持つた大きな自治体警察に、地域的に隣接したその大きな自治体警察に、組合警察としての希望を実現させることが最も合理的ではないかと考えたのであります。従いまして人口五千以下の二つのものが集まつて、新らしく自治体警察を作るということは、これはむしろさせないほうがよいのではないかと考えるのであります。それからいま一つは、若しこの人口五千人以下の町村において、隣接の大きな自治体警察に組合警察を設置することを仮に認めるとした場合におきまして、若しこれが理論的に拡充、拡大されたような曉におきましては、国警の地域が全然なくなつてしまうのではないかというようなことも、一応理論的には私は考えられると思うのでありますが、実際問題といたしましては、さようなことは絶対にないと確信をいたしております。又一面におきまして、然らばそういう組合警察を設置させるよりは、むしろ根本的に或る市へ隣接の小さな町村合併の方法を講じた上で、自治体警察にしたらどうかというような御意見もあるのでございますが、町村合併という、問題は、町村財政の委讓の問題もございまして、いろいろ具体的な問題がございまして、この問題については非常に困難であろうと考えております。従いまして現在の自治法の規定からいたしまして、町村の一部事務の、組合の規定を活用いたしまして、大きな自治体に隣接の五千以下の町村といえども一般住民投票によつて、これを組合警察たらしめるという途を開いて頂いたならば、一層合理的な方法ができるのではないかと考えるのであります。それからなお現在組合警察で合理的な運営をしておるところが相当ございまして、現在神奈川県下におきましても、四つの組合警察ができておりまして、それぞれ合理的な人員の配置、それから経費の節減、それから警察活動の運営の合理化というような点におきまして、かような組合警察が現実に各所に現在できておりまして、なお各県の状況からいたしましても、現在組合警察を希望するようなところも具体的にございまして、自治体警察側といたしましては、人口五千人以下の町村といえども隣接の自治体警察と組合警察として合併する意思があつた場合におきましては、その町村民の一般投票により、その自由意思によつて自治体警察たらしめるというような途を開いて頂くことが一番私は民主的じやないかと考えておるのであります。現在では人口五千人から以上の、いわゆる市を除く人口五千人以上の町村のみが国警に変る途が開かれるならば、同様に又国警の管轄内の町村が、逆に自治体に移行するという途を開いて頂くことは私は最も公平であり、且つ又最も民主的ではないか、これこそ本当に住民の自由意思を尊重した制度ではないか、かように考えまして、一応漏れました点だけを御説明いたしまして、なお御質問によりまして、又お答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/21
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022・相馬助治
○相馬助治君 この際田中警視総監にお尋ねして置きます。先ずその前に、この警察法の改正案が問題と相成りまして、その直後において全国自治体公安委員会のいわゆる全公連それから全警連が立上つてこれに対して反対の運動を起しました際に、一般の地方の公安委員及び地方自治体警察の人々はこの二つの反対の動きに対して非常なる注目をいたしましたと共に、先般田中総監並びに鈴木総監が本参議院において陳述された速記というものが全国にやはり伝わりまして、非常にこれらの人に意を強うせしめていたと、こう思うのでございます。ところがその後だんだん事情が変化いたしまして、国警側において田中総監等とたびたびの打合せをいたし、何か一種の妥協案が出たことによりまして、最近に至りまして地方においては、すでに田中総監は全警連の意思を代表していない、こういう極論までする者が現に現われていることを、私は一、二の実例によつて知つているものであります。ところが只今田中総監のお話に、町村組合警察の提唱或いは又人口五千を区切りとして国警に吸收されるという案があるならば反対のことも認めらるべきではないかという進んだ意見が開陳されまして、やはり依然として田中総監は自警連の意思を代表している者であるとして、私は先ず一応敬意を表するものであります。そこで私は率直にお尋ねして置きたいことは、全警連の代表者として田中さんは、この警察制度改正の法案が出たことによつて、全国の自治体警察の警察官はこれを喜びとしているか、或いは然らずか、これを総括的には如何なる状態において把握されているかということを第一点お尋ねしたいのでございます。次に具体的問題として、地方自治体警察の警察官にしてこの改正法案の提出を喜びとしている者があるとするならば、それは如何なる点についてこれらの人は賛成をしているのであるか、次にこの警察法改正法案が提案されたことをいけないとして反対している向きがあるとするならば、それは如何なる点を注視して反対しておるのであるか、以上についてこの際田中総監の見解を承わつて置きたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/22
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023・田中榮一
○参考人(田中榮一君) お答えいたします。私どもといたしましては、全国一千六百有余の自治体警察を最初から代表いたしまして、自治体警察側の立場をはつきりいたしまして政府並びに国警側と折衝を続けておつたのでございます。そこで今回発表になりました警察法一部の改正案につきまして、第一線の警察官が如何なる感想を持ち、如何なる考えを持つているかという御質問でございまするが、何分にも九万五千の多数の警察官のことでございまするから、その考え方、その思想、その感じ、感情というものは必ずしも同一ではないと考えております。又いろいろの利害関係もございまするので、全部が全部必ずしも一致した気持であろうとは毛頭考えておりませんが、大体におきまして今回の警察法改正に当りまして、自警連の会長といたしまして、下部構成員である自治体警察長の意思を十分に承け継ぎまして、その意思を代表いたしまして今回の改正案の研究に国警と一体となつて従事いたしたのでありまして、従いまして第一線の警察官なり、又公安委員さんがたの思想、感情等は、私どもといたしましても十分代表いたしまして、その意思を反映いたして本改正案に臨んだのでございまして、従いまして大部分の、殆んど全部の自治体警察官にとりましては、本改正案に対しましては賛成であろうと考えております。ただ一部におきましては、警察法の改正によりまして或いは自治体警察が廃止されるのではないかというような心配をしておる者もありまするし、又一部若い警察官の中には国警に行きたいという希望を持つておる者もあるようでありまして、併しこれらの者につきましては一一これらの希望を聽取いたしまして、この大きな警察法の改正案に臨むことは到底不可能でありまして、私どもといたしましては、国家の治安維持を如何に確保して行くかという大きな線に向つて邁進いたしたのであります。それから又自治体警察の廃止にしましても、住民の一般投票にまつてそれを決定するということに対しましては、これは公安委員なり警察長又は警察官がこれに対して反対を唱え、又これに対して賛成をする必要はないのでありまして、又なすべき筋合いのものでもないと考えておりますので、この点につきましては、自治体警察側としましては満腔の賛成の意を表明いたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/23
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024・相馬助治
○相馬助治君 この際齋藤国警長官にお尋ねいたします。実は法務総裁がその席においでになりますれば、法務総裁にお尋ねしたいことなのですが、おいでになりませんのであなたにお尋ねしますが、今朝ほどの新聞で初めて承知したのですが、衆議院の地方行政委員会においての委員の質問に答えて、大橋法務総裁は、本格的な改正はこの後においても考えていないということを言明されたということを初めて承知いたしたのでありますが、今までしばしば政府の説明を聞いておりまして私どもが大体納得いたしておりましたことは、今回のこの改正法案なるものは差当り必要とするものを改正するにとどめて、本格的なる改正はあとの機会に讓るのであると、こういうふうに了解していたのですが、法務総裁の言明がこれと反しておるのでありまするが、事実はどうなつていますか。齋藤国警長官はこれらの点について如何なるお考えであるかということを先ず第一点お尋ねしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/24
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025・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 本格的な改正、或いは暫定的な改正というような事柄について法務総裁はどういう答弁をせられたか、又政府はどういう考えでいるかということでございましたが、国警長官としての考えではありません、法務総裁は、私の承知をいたしておりまするところによりますと、最初いろいろの案考え、その後だんだんと研究を進め、各方面の意向をも聽取いたしまして、今日のこの改正を以て最もよろしいものだと考える、こういう御答弁であつたと私は考えております。従つて只今本格的な改正を行おうという考えは持つておられない、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/25
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026・竹中七郎
○竹中七郎君 議事進行について。今日は連合委員会でございます。ので、成るべく地方行政委員はあとにしまして、法務委員のほうでやられんと、だんだん長くなるのですが、その点如何お考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/26
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027・相馬助治
○相馬助治君 只今の竹中委員のお説に私は至極賛成でございます。従いまして法務委員のかたからどんどん意見を出して頂きたい。ただ私どもこうやつてやつておりますのは、折角多用中国警長官を初めとして両警視総監並びに政府委員のかたがお見えになつておる、而もこれに対していささかも質疑がないとするならば、これは甚だしく遺憾の極みでございますので、かように質疑をしておるのでございまして、どうぞ只今の竹中委員のお説の通りに委員長はお運びを是非とも私どもはお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/27
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028・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 竹中君にお答えいたします。実は今日は法務委員会で伊藤委員並びに鬼丸委員から御質問があるはずたつたのです。ところか今日御出席になりませんので、地方行政委員会のかたがたに御質問をお願いしておるのでございます。その点御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/28
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029・竹中七郎
○竹中七郎君 私も誤解いたしておりまして、折角法務委員のかたが二人おいでになりますから、そのかたがたの御意見を尊重して上げるために地方行政のかたは簡單にやつておいてというような考えを持ちましたので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/29
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030・吉川末次郎
○吉川末次郎君 私も全く竹中さんのおつしやることに賛成なんで、法務委員会との合同委員会でありますから、私は本日法務総裁に質問することを昨日申上げて置いたのでございますが、先ず法務委員のかたの御質問が終つてからと思つておりまして、他に用事がありましたので遅れました、その間に法務総裁私の質問を待つておられたそうですが、お帰りになつて、罪は私にあるのでありますが、私の質問したいことは、主として大橋法務総裁或いは吉田首相にお尋ねしたいのですが、お留守でありますから、罪は私にあるのでありますが、私質問したいと思つておりますことのうちで、御在席になつておる政府委員のかたがたからもお答えを得られるだろうと思うことだけを御質問いたしたいと思います。私の質問はこの法案の具体的な条項につきましては、後日審議が進捗いたすにつれましてその都度申上げたいと思いますが、先ずそういう条項に関する具体的な法文についての質問を展開いたします前提といたしまして、極めて大ざつぱな政治的な問題について主として承わりたいのであります。
第一にお伺いいたしたいことは、法務総裁がいられませんから、国警長官の齋藤さんで結構であります。又聞く必要があれば法務総裁から聞さたいと思いますが、会期が非常に切迫して来ました今日において国会へ御提出になつた、そうして参議院はまだ正式に付議されておらんのでありますが、できるだけ早く審議をして通して上げたいというので委員長は予備調査を今日やつていらつしやるような段階にあるわけでありますが、これは重大法案であります。新聞等も言つておりますように極めて重大なる法案であります。警察制度の改正そのことが法律的、制度的に重大であること以外に、今日の政治的段階においてはもう一つ大きな政治的な重大制がそこに加わつておると考えるのであります。それは何であるかと言えば、即ち平和会議の開催及び講和条約の締結後マッカーサー元帥が占領政策として実施した憲法の改正、実質において新憲法の制定でありますが、その他幾多の民主主義的な政治を実施した、それを講和後においては日本の為政者特に保守主義の政治家が元へ戻してしまう、或る一面ではこれを反動革命をやるんであるという言葉もはやつておるのでありますが、反動革命という言葉は少しくジヤーナリステイックでありますが、そういう保守政治家がやろうとしているところの、ジヤーナリステイックな表現を以てするならば、反動革命の一環としてその前駆として先ずこの警察制度を反動化し、逆転させて、そして一つ血祭りの一番初まりにするという意味において非常な注意が集中されておると思うのでありますが、(「ノー」と呼ぶ者あり)この重大な意味を持つたところの警察制度の改正案をばこういう時機、切迫している議会の閉会間際において提出されたのはどういうわけなのか。私はこれは非常に立法府の議員として慎重審議して、今一部に少くとも反動革命の一環としてその前駆としての現われであるというようにも見られているのでありますから、それを併せ考えて、我々は非常に愼重な態度で以てこれに対さなければならんと思うのでありますが、なぜこんなにこの重大な法案をばこんな閉会間際にお出しになつたのであるかということについて、齋藤長官は齋藤長官だけの一つ御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/30
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031・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 会期切迫しております折から、誠に申訳ない次第と存じておりまするが、実は本改正法案はもつと早く提案をいたしまして御審議を煩したいと、かように希望をいたしておりました。自治体警察側とのいろろいろな話合い、いろいろな点からだんだん遅れまして、三月になつて成案を得たのでございます。併しながら四月からは地方選挙のために議会が自然休会になるということが決定をいたされましたので、当時といたしましては相当の補正予算を伴うものと考えておりまして、補正予算と同時に出したいという意向であつたのであります。二十六年度予算審議中に補正予算を出すといいますことは、これは自家撞着でありますから、二十六年度予算の審議が済んだときに出したい、かように考えておつたのでありましたが、二十六年度予算の審議が終りますと間もなく休会ということが決定されておりましたから、休会明けの五月早々に出したいというので延期になりましたので、非常に申訳ない次第であります。ただ補正予算は五月の残りの会期にはどの省といえども出さないという大蔵省の方針でありましたので、然らば臨時国会まで待つかという問題でありまするが、折角成案を得ましたし、この改正案が日本の警察全体にとつて治安の維持の面から申しましても、只今田中総監から申されました通り、自警側におかれましても賛成をしておられるものであります。従いまして成るべく早く御審議を願えるならばこれに越した仕合せがない、かように考えておるのであります。私のほうといたしましてはここに五千人の定員外に置く増員を考えておりまするが、これも実際ものの役に立ちますまでには八九カ月を要するわけでありまするので、成るべく今年度内に働き得る警察官を出したいと、かように考えておりますのも、一つは早く審議が願えれば仕合せだと思う次第でございます。これは私に対する御質問とは思いませんけれども、本改正案は法務総裁もたびたび御説明をしておられます。又只今田中警視総監が民主警察の根幹をなすマツカーサー元帥の書簡の趣旨に従つて審議をしたということを只今立証されたのでありますが、我々といたしましてもこの民主警察を反動的に持つて行こうという態勢の内容は一つも盛られておらない、かように考えております。この民主主義警察の線に沿いながら自警、国警、お互いに唇歯輔車の関係でうまく行くということがこれで確定をするならば、これに越した仕合せはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/31
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032・吉川末次郎
○吉川末次郎君 いろいろ再質問したいことが今のことについてたくさんありますが、まだほかに大分質問したいことがありますから、再質問を留保して、次の質問に移りたいと思うのでありますが、第二にお尋ねしたいことは、このリツジウエイ、いわゆるリツジウエイ声明に基きまして、講和後いろんなこの占領政策に対する再検討を行うというようなことになりまして、それに対しまする用意として、吉田内閣は政府部内に特殊の委員会を作られた、その委員会の顔触れを見ますると、いずれもこの間まで戦犯で追放になつておつたところの人でありまして、そこにも吉田内閣の反動性が実に現われておつて、これは私は重大な問題だと考えるのであります。そういう全般を通じての一つの反動的な傾向、反動性は何も含んでおらんと今齋藤長官はおつしやいましたが、積極的な反動性を含んでおるか否かということは、これはまあ一つの問題でありますが、そういう形において実は現われておらん、むしろマッカーサー元帥が残して置いた憲法、その他の民主的な改革というものを制度的にやりながら、その制度の新精神をば発展滲透して行くということに対する何らの積極的手段をとらないで、そうして制度は成るほど民主主義的になつておるけれども、頭は少しも変らん、中身も少しも変らない、そうしてその頭の切換えをさして行く方向に日本の一切の終戰後の政治が進展しでいないということの形をとつておるということが私は一番重大な問題であるということをこの委員会でもすでに申上げておるのでありますが、その共通のことを又これにも感じておるわけなのであります。それで先ずそういう底意を以てここに第二点としてお伺いいたしたいことは、政府がリツジウエイ声明に基く対策としての特殊の委員会を作つたり、まあ自由党の選挙対策等においてもいろいろ御研究になつておるところだろうと思うのでありますが、伝えられるところによるというと、警察制度のこういう改正を先ず先駆としまして、そのほか各種の、いわゆる反動革命的なカウンター・リボリユーシヨン的な政策が考えられておる、そうしてその一つとして国家公安委員会の廃止ということが伝えられておるのでありますが、これについて齋藤長官は国警長官としてどういうようにお考えになつておるかどうかということが聞きたいのです。大体マツカーサー元帥が残して置きました民主的制度の一つといたしまして、各種の、今日までの旧憲法時代になかつた委員会の制度というものがありまして、公安委員会のごときもその一つであります。或いは人事委員会とか、その他多数のそうした形のものがありますが、これはアメリカにおきましてもいわゆる三権分立以来の大事件と言われておりまするコミツシヨン・ガバメントのシステムというものは、日本人には、全く古い行政法や政治学や憲法を習つて来た人には理解することのできない新制度でありますが、ところがその新制度の精神を理解さすという方法にすべてものを持つて行かないで、それを国民になじみがないからといつてすぐ廃止してしまう。例えば人事委員会などでもすぐそういう議論が起つておるのであります。それと相並んであなたの御管掌になつておるところの国家公安委員会の廃止ということもこの吉田内閣の反動革命の一つに一般に伝えられておるのでありますが、そういうことが考えられておるのかどうか。又そういう意見に対しては、あなたはどう思われるか、あなただけの御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/32
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033・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 政府におきましては国家公安委員会を廃止しようという考えは全然持つておられないではないか、新聞にそれらしいような臭いのことが伝わることもありますが、私も一々詮索をして見るわけでありませんけれども、そういうような考えは持つておられないと信じております。私自身の更に立場からへ……立場と申しますとおかしいのでありますが、政府の方針ということを離れまして、警察自身の立場から考えて見ました場合におきましても、国家公安委員会制度は存置すべきものである、これは民主警察制度の眼目であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/33
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034・吉川末次郎
○吉川末次郎君 なおお尋ねしたいことが非常に広汎な大きな意味においての政治的なことになりますから、そういう点はできるだけ省略して細かいことを齋藤長官にお聞きしたいと思うのですが、ともかく民主的な制度というもの、折角立てられた制度上の民主主義というものを実質的に、精神的にこれをデイベロツプさせるという方向に持つて行かないで、すぐそれから来る、国民の不慣れから来るところの欠点に対して、そらこういうところの欠点が起つて来たというので以て、昔の制度がいいというような、殆んど多くの為政者が、保守主義的な為政者が考え勝ちで、これが非常な日本の政治上当面しておる最大の危機だということを一昨日もこの委員会で申したのでありますが、これと同じ精神に基いて一昨日小笠原委員からお尋ねして御答弁があつたのでありますが、それに附加えて更に御答弁を願いたいと思うのであります。即ち今度の警察制度の改正案の内容の一つといたしましては、自治体警察を、町村における自治体警察をレフアレンダムによりて廃止さする意思の決定、廃止さしてしまつて、これを国家地方警察に吸收するというのが、この案の重大な項目の一つになつておるのでありますが、それはそのことにも私は今申したことの大きな日本の政治の当面する欠陷が包含されておると思うのでありまして、ともかく英米の警察制度から見まするというと、申すまでもなく天降的なものでなくして、居住民の自発的な意思に基いて、いろんな番人を置いて警備に当らせたというようなことからだんだんと発展して行つたものでありますが、その自治的な警備、自治的な精神を如何にして日本の地方行政や警察制度の中に発展さして行くかということが新憲法の精神であり、現段階における我々の役目でなければならんと思うのでありますが、先ほど申しましたようなことで久しく專制政治に慣らされて来ましたところの日本の人間、特に農村の封建性、明治になつても、なお封建的な政治が行われ、農村においては、この封建制度が強かつたのでありますから、それを又新憲法の精神に基いて、村の者が自分たちの手で警察をやつて行くんだというようなことは、今日までの日本人には非常に新らしい考えであり、併しながら、それを活かして行くのでなければ、新憲法の精神は、日本の国民の間に実現されて行かない。ところがすべての面において何かそういうことで欠陷が起つて来る、或いは非常な民主的な自覚が、殆んどマジヨリテイ的なものが足りないのでありますか、それが財政の面や、すべての能率の面において、これはお上に任してしまうというような考えになり勝ちであり、又そういうようなことになりまするというと、奇貨おくべしとして、待ち設けていたというような態度で以て、これを受入れて吸收したいというような御精神が、非常にあるのじやないかということを、私はまあ観取するのでありますが、それで昨日小笠原委員が聞かれました財政面、或いは能率の面等において、自治体警察が多少の欠陷を現わすというようなことがあつたとします、又早々の時代でありますから、私はあり勝ちだと思うのでありますが、そういうときに、それをやめさせてしまうとか、或いは国家地方警察へ吸收してしまうというようなことを待つてましたとばかりそういう態度をとらないで、その自治体警察を、民主主義的な自覚に十分でない自治体警察を、警察制度精神に副うた民主主義的な警察へ発展さす方向は、どれだけの具体的な手段を今日まで日本の警察行政においてとられて来たかどうか。地方に参りまするというと、公安委員というようなものが組織されておつても、わざわざやはり昔の官僚的な警察行政の頭で以て、そういう公安委員のようなものに口ばしを入れさせたくなくて、警察長がわざと村のお寺の坊さんのような者を集めて来て、公安委員の三人のうち、坊主を一人頼んだから、二人は、一人は日蓮宗、あとの一人は浄土宗ということで、三人わざと坊主を頼んで三人とも坊さんになつておるところがあるのでありますが、そういう立場から、官僚的な立場から、三人、わざとして来ている傾向がある。そんなことを考えないで、その民主主義的な発展をさす方向へどういう努力をせられたか。能率上欠陷があるならば、これは小笠原議員も言われたかと思いますが、隣接しているところの自治体警察、或いは自治体警察を持たないところの村落等が組合を組織して、そうしてそのユニットを大きくして、能率を発揮して行くということができるということは当然考えられなければならんと思いますが、そういうようなことについても、どれだけの積極的な手をお打ちになつたかどうかというような点について御質問申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/34
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035・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 民主的警察を更に伸ばして行くことについてどういう方策をとつたかという御質問でありますが、自治体警察のほうにおかれましては、自治体警察の先ほども話がありましたように、公安委員会の全国の連合会、或いは警察長の全国の連合会というようなものをお作りになりまして、お互いに切瑳琢磨をせられ、そういつた意味における精神面或いは実際面において御研究になつたり、いたされたことは、私は相当大きな効果があつたと考えておるのであります。我々のほうから、自治体警察側に対しまして、こういうようにやつたらよかろうとか、或いはこういうように日本人はしなければならんとか、こういつたいわゆる指導的な事柄は、旧来の警察法を一本化しているかのように依然として国家地方警察は、自治体警察に対して、何らかの精神力を與えるかのような誤解を受ける虞れもありますし、又そういつた関係もありまして、そういうふうな宣伝、強化というような面は、私どものほうはいたしておりません。ただ自公連或いは自警連のほうと緊密な連絡をとつておりまして、お互いに非常にその経験の交換というようなことをいたしておつた次第であります。併し何と申しましても、民主的警察の精神に対しまして、現行警察法の中に、自治体警察を本当に活かして行こうとするのには、十分でないという点が相当ありましたので、それらの点の改正が、今回の改正の主要な眼目の一つをなしておるのであります。例えて見ますると、自治体警察の警察官の定数を、今までこれは一定基準を設けて、その基準で束縛しておつたのでありまするが、自治体警察が、その地方の状況によつて、もつと警察官を殖やしたいと考えても殖やすことはできない、或いは小さい自治体警察で、もう少し少くて、そうしてむしろほかの警察の御援助を得て、ふだんはもつと経済的にしてやつて行きたいと考えましても、やはり全国九万五千というものが満たされることが、又全体としての必要性もありましたから、警察官の数を減らすことはできるだけしないようにしてもらいたいというので、その減らすことも制限を加えておつたというような状況であります。こういう事柄は、自治体自身のあり方に反するわけでありますから、自治体の地方的な要求、財政状況、その他によりまして、必要とする適当な警察官を置けばよろしいというふうに改めたのもその一つであります。又中小の自治体警察におきまして、ふだんはあまり事件がない、併し大きな事件が起ると非常に費用がかかる、自治体としては予算におのずから限度がある、追加予算にも困難を感じる。国家地方警察、他の警察の援助を要求をして解決をするという途はありまするが、現行法ではそういつた費用は、自治体警察が拂わなければならないという立て方では、自治体はその費用が持ち切れない、そういう面を改正をいたしまして、今後はその自治体警察にはふだんの警察を維持するのに必要とする限度の警察官で賄い、どうしてもそれで処理できんというときには、これは国費で援助を求めてやつて行けるということになりますれば、いわゆる自治体警察が財政上困るとか、力が弱くて困るという非難の声がなくなつて行く、自治体警察が存在しながら、存在の意義を十分全うしながら、他の警察との関連において治安の維持上、国家的にも又地方的にも遺憾の点がないというようにすることが、私は自治体警察のあるべき姿において、そして、本当に自治体警察の精神を活かして、長く存続せしめるゆえんだと考えておるのであります。自治体警察に対する今日の法制上のあり方が、自治体警察の発達して参りますことに対する致命的な欠陷を持つておるということがありますならば、その致命的な欠陥を捉えて、自治体警察制度そのものが、悪いかのように国民が印象付けられるということであつては相成らんということが、今度の改正の大きな観点であります。知事の国警に対する出動の要請の点につきましても、これは私はやはり警察法の致命的な欠陷だと考えておるのでありまして、これは全く例外的な場合でありまするけれども、当該自治体の区域内における警察のあらゆる制度が、その公安委員会の專権であつて、而も国家の利益と全然相反するというような場合においても、これに対して国も、或いはその他の機関も当該公安委員以外からは是正する方法がないということでありまして、万一かような場合に際会したときに、むしろその点を改正するということよりは、これが自治体警察の弊害であるとか、或いは弱点であるとかいうことになることを私はむしろ恐れているのであります。あの規定の適用は恐らくそうだろうと思いまするけれども、理論の上におきましてもここに警察法上、国の治安の面から見ても、地方の治安の面から見ても何ら欠陥がない、どこにも盲点が存在していないというように持つて行かなければ、自治体警察の健全な発達が図れないのじやないかと、かように考えておるのであります。今度の改正におきましても、その他例えば関連犯の点につきましても、自治警がそれぞれ千数百に独立をし、そのほかに国家の管轄区域が跨がつて置かれる、関連犯等については非常に不便がある。この不便をやはり是正することが今日の自治警、国家その他の警察体制を維持しながら、うまく犯罪の捜査がやれるというようにいたしたことが、又自治体二本建の警察の弊害として指摘せられることを除去するゆえんである。これが民主的警察を育てて行く道だと、かように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/35
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036・吉川末次郎
○吉川末次郎君 御答弁一応承わつて置きます。更に又極めて広汎な諸問題に関連いたしますから、国務大臣等の出席を持つて再質問する機会を得たいと思いますが、もう一つ二つだけ質問して終りたいと思います。その一つとしてお尋ねしたいことは、これはむしろ国務大臣よりも、具体的、技術的なことでありますから、あなたにお尋ねして置けばいいと思います。これも又二つの委員会で今日まで数度言つたことでありますが、やはり今まで申しましたことと同じように、制度は民主的になつているけれども、その制度の真精神が少しも国民に知らされておらん、又為政者も、それを理解さすことの積極的努力をしておらん。憲法についても、制度上の改革だけ行われて、例えばその教育についても旧憲法の講義をしていたところの先生が、全然法脈も違えば、又旧憲法は国家主権、君主主権の精神の憲法であつたのが、新憲法は人民主権を精神とする憲法になつているのに、平然として旧憲法時代のまま教壇に残つて、その大学に引続いて、何らの良心の呵責を受けないで新憲法の講義を続けているのが今日の実情であります。このように教育上からも基本的な矛盾があるのでありますから、そういう先生に教わつて来たところの公務員が又わかりそうなこともないのでありますが、それはいろいろな面において現われておるのであります。例えば警察制度においても、たびたび言つたことでありますが、マツカーサー元帥の書簡に基いて、新警察法ができたのでありますが、マツカーサー元帥の書簡の精神が理解できてないものでありますから、飜訳された言葉が非常なミス・アンダスタンデイングになつていることであります。それは個々に例を挙げて今まで申したことでありますが、自治体警察という日本の法律語になつて一般に今日、あなたも今たびたび言つておられるのありますが、その原語はミユニシパル・ポリスです。ミユニシパル・ポリスとはこれは都市警察であります。日本に「都市問題」という地方行政の雑誌がありますが、これは飜訳して「ミユニシパル・プロブレムズ」とその雑誌の英文に書かれております。このミユニシパリティーという言葉に自治体というような意味が全然ないわけではありませんが、明らかにその原語の趣旨では、人口五千以上の市街的形体を呈しているところの自治体において作るところの警察なんであります。このミユニシパル・ポリスという言葉を略してMPとする。あなたであつたか誰であつたか、とにかく政府から来て、警察制度改正の内容として内談的に話されたときにMPという言をたびたび使われた、そのミユニシパル・ポリス、即ち「都市警察」と訳すべき言葉を「自治体警察」と訳しておられることが語学上の重大なミステークであつて、そういう語学上のミステークによつて自治体居住民及び国民を言葉から来るミス・コンセプンヨンに陥れて、観念上の錯誤を来たさしめているのです。もう一つは「国家地方警察」という言葉の原語でありますが、この間からも私もたびたび言つたように、それはナシヨナル・ルーラル・ポリスです。国家というならばネーシヨンという言葉もありますけれども、普通今日まで日本の法律語等で国家と言われて来たのはステート、ドイツ語のデア・シユタートという言葉が飜訳されて国家とされている。日本人が通常国家主義であるとか、国家のためであるとかということは、ドイツ哲学から出て来るところのデア・シュタート、英語のステートという言葉の飜訳から出ている。ところが、このナシヨナルルーラル・ポリスとは何であるか、即ちルーラルとは「都市」に対立する人間の社会生活形態である「農村」という意味なんです。それを「地方」と訳しておられる。このナシヨナル・ルーラル・ポリス、即ちNRPは全国農村警察と飜訳すべきものなのです。飽くまでも都市の警察ではないところの農村の警察です。このマッカーサー元帥の書簡に基いて作られた警察制度の精神は、自治体警察の警官の数にしましても、十二万五千のうち、即ち九万五千人は、あなたの言葉や、法律の言葉で言う自治体警察、その実即ち都市警察、そうしてあとの三万がいわゆる国家地方警察である。この警察法の条文を見ましても、又その他の面においても自治体警察と訳されているミユニシパル・ポリスが、むしろ新らしい警察の主体であるということは、私は十分理解できると思うのであります。それでその自治体警察、即ち都市警察に收容することができず、又これを一單位の警察に作ることができない農村地帯においては、これを府県單位で別の公安委員会を作つて、その警察行政を行うの仕組としている。又ここにナシヨナルという言葉はこの場合は「全国」と訳さなければならない。国家と訳すると、ドイツ哲学で言う国家は神様のようなものである。国家のために死ぬのが人生の理想である、国家は最高の道徳であるというような、そのドイツ哲学で教えられて来たところの「国家」と同じものであるという錯覚を日本人は起す。ところがNRPというのは、都市に收容できないところの農村地帶のポリスをば、全国的にこれを收容しようというのが、私はこれがマツカーサー元帥の警察制度、書簡の精神であり、又それに基いたところの警察制度の精神でなければならんのに、これをドイツ哲学の国家至上主義に基く日本人の国家観念を利用して、利用するというと非常に語弊があるかも知れません、或いは無意識的に用いられたのかどうか知りませんが、ともかくもこれを「国家地方警察」と訳されたのですから、封建性の強い農村の人たちが昔の我々が教えられて来た国家主義、国家至上正義の観念に結び付けて、何でも国家は偉いのだというので、警察官に国家地方警察と、自治体警察とどつちへ行くかと聞かれると、自治体警察のほうへ優秀な警察官が志望しないで、多くのものが国家地方警察へ行きたいということになつて、又意識的にも昔の官僚主義で以て、できるだけいわゆる国家地方警察のほうへ優秀な警官を收容するようなことをせられた。事実そういう点を、地方を廻つて見ていろいろと我々観取することができるのでありますが、ともかくその言葉の訳し方からしてすでにマツカーサー元帥の書簡の真精神を把握していない。それほど日本の今日の国民、殊に官僚諸君というものはドイツの行政法で頭を叩き込まれて来たものですからわからないのです。それと同じことをやつていると思うのでありますが、それでこの機会にその言葉を一つ直して頂きたいと思う。即ちマツカーサー元帥の書簡にあるミユニシパル・ポリスを都市警察と誤りして直して頂きたい。国家地方警察を全国農村警察と飜訳して頂き、その言葉が、ここに原語の意味通りに都市警察と訳され、或いは全国農村警察と的確にここに私は飜訳されて、これが法律用語になるならば、それは今いろいろデイスカツシヨンされているところの問題なんかも将来解決する幾多の問題がここにあると思うので、それで今のように、自治体警察はこれを都市警察とお変えになることの御意思があるか、国家地方警察というのは全国農村警察とお変えになるところの御意思があるかどうかということを承わりたい。それからこれも附つ加えて申上げますが、これは曾つて私が言つたことでありますが、ミニシパル・ポリスを日本語に訳して自治体警察と誤訳をして、この飜訳を又英文に飜訳して我々の手許に配つおられるこの英文のポリス・ローの中に、原語がミユニシパル・ポリスとあるのにかかわらず、自治体警察と訳して、その言葉通りの逐語訳をして、そうしてこれをオートノマス・ポリスとかなんとかというような、とんでもないこういう滑稽なことをこの国警本部はしていらつしやるわけです。これを見ても如何に新憲法を初め新憲法に基くところの民主的精神というものが今日のいわゆる為政者や官僚諸君に理解されていないかということを私は実に遺憾であると思うのですが、ともかくも今の言葉を直されるところの意思があるかどうかということをちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/36
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037・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 吉川委員の学殖の深いことについてはかねがね敬意を表しているのでありますが、この点につきましては私は全面的に賛成いたしがたいところがある。今の市町村警察を自治体警察と呼ぶのがいいか、都市警察と呼ぶのがいいか、これは現在のあり方から考えますれば、都市的な部面を担当いたしますから都市警察という名前を使うことも適当であろうと考えまするが、大体自治体がその警察を持つという本来の性格から考えますならば、これは都市と言わず、或いは農村と言わず、現在の警察法では五千以下は持ち得ませんけれども、そういう観念的な面から申しますならば、むしろ自治体警察と呼んだほうが将来への発展性もあり、又警察の本来の立場からもいいのではないかという考え方もいたされますし、又国家地方警察の部面におきましても、県の国家地方警察はルーラル・エアリアを担当いたしておりますが、そのほかに国家公安委員会、これもやはナシヨナルという言葉を使つておりますが、ナシヨナル・パブリック・コミツテイでありますが、ただ農村的な警察の部面をやるだけでなくて、自治体警察側から若し望まれるならば、その学校施設において警察全体の教育もやりまするし、或いは通信施設も完備いたしますし全国的な犯罪の鑑織或いは犯罪統計というようなものも掌つておりますし、單に農村だけの警察ということではなくて、それぞれ分立した自治体警察だけではやれない仕事をここでやる建前をとつておるのであります。元帥の手紙には当時これは警察の知識を殆んど持つていなかつた人が飜訳したと私は考えますが、この文字を内容に合せて忠実に訳されたものと思います。御承知の通り、これは片山内閣のときに外務省の専門家が訳されのであります。そこにおいてやはり国家地方警察或いは自治体警察或いは都市警察といろいろ言葉を使つておられますが、国家地方警察は必ずしも相対的な、農村警察という意味では、この元帥の手紙にもそうは受取れない面もあるのであります。この一説に、「事態の実情から見てで、地方における治安を維持するためには、国家地方警察力の維持を必要とし、且つ各地方政府に属する警察が十分に処理し得ない非常事態に対処するため、中央政府が使用し得るナシヨナル・ルーラルポリス」、これは農村警察というのでなしに、やはり国家地方警察と訳することが、この場合はいいのじやないかと思いますが、これを設置する。従つて中央政府が全国的に使用し得るそういう警察を設置する必要がある。こういう提案に対しては、私は全面的に賛成であるということで、この手紙は書き始まつておるのでありますが、この手紙の中にもいろいろの言葉が使つてありますが、都市のことをローカリティー、地方というものに書いたり、又この警察法も実はこちらで作つて飜訳したのではありませんので、むしろ初めから向うから原文を示されたのでありますが、そこにこの自治体警察というものをオートノマス・ポリスということは初めから使つてないのでありまして、どの言葉が適当であるかどうか、これは十分御審議を頂きまして、改正すべき点もあるならば、御改正をお願いすることも、私はやぶさかではありませんが、我々の研究の結果といたしましては、必ずしも只今おつしやいましたような解釈をすべきであるという結論には疑問を持つわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/37
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038・吉川末次郎
○吉川末次郎君 私が今申しましたようなミユニシパル・ポリスを都市警察と訳し、ルーラル・ポリスを農村警察と訳すべきものであるということは、これは言葉の上から明白だと思うので、それからこれは私だけでなしに、大阪の鈴木君もそこにいらつしやる田中警視総官も、何か私的の談合において私のこう言つていることと全く同じような意見を吐露されたことがありますが、これは一つ語学的にも十分研究をし、これは委員の我々のほうで改正案を出してもよろしうございますが、とにかくこれは間違いである、ルーラルという言葉は農村という意味です。ルーラルが農村でないということは、誰が言えることができるでありましようか。あのウエブスター辞典を見ても、明らかだと思うのです。農村という言葉をわざと地方というように訳して、そこヘドイツ哲学の国家至上主義の国家をつけて、そうして警官も国民も錯覚に陷らしめていることは明らかです。而もさつきも申したことでありますが、あなたのほうから我々の手許に渡されているところの英訳のポリス・ローのチャプター三でありますが、この自治体警察はMP、ミニシパル・ポリスなんです。それをポリス・オブ・オートノマス・エンテイテイ、全然違う言葉で、即ち自治体という日本語を逐語訳的に訳して、原語と違う言葉をそこに使つて、ここに我々に出していらつしやる。こんなことは非常な間違いだと思うのです。これはどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/38
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039・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 只今挙げられましたポリス・オブ・オートマス・エンテイテイと申しますのは、これは私どものほうで訳したのではなくて向うから示めされたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/39
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040・吉川末次郎
○吉川末次郎君 いや、それはどうもおかしい。全然ミユニシパルという意味と違う。それはそれとしまして、お互いに研究することとして、最後に一つお尋して置きたいと思うのですが、本年の三月の二十日に参議院で以て自治体警察の代表者をお呼びになつていろいろ証言を行わしめられておるのであります。私は不幸にして欠席いたしまして、甚だ相済まんわけでありますが、速記録を見ますというと、大阪の警視総監であります鈴木榮二君がこういうことを言つておるのであります。これについての一つ御所感を承わりたいと思うのでありますが、非常に長いのでありますから、ちよつと抜いて一部読まして頂きたいと思いますが、一昨々年の一九四九年にマツカーサー元帥が九月二日の休戰記念日の声明の際警察制度は変える必要はないのだということをはつきりと声明しておられるのであります。ちよつと簡單にこの点を読上げて見ますと、これは一九四九年九月の二日でありますが、渉外局特別発表として皆さんもすでに御承知と思いますけれども、「この警察力の行使における地方分権という法律に定められた原則に基礎をおいた効果的な警察制度の建設についても少なからぬ進歩がみられた、日本国民は以前にもまして警察力が如何なる支配者層の手中にもなく、みずからの手に握られていること、又彼らの指示によつて地方の治安維持のための法的武器を提供するものであることを理解するようになつて来た、一国の国内秩序の保持は、法律に定められた安全措置に従う限り、各地方団体がその地方的責任に応じて警察力を運営する方法の如何にかかつていることを国民はよく心得ている、ここでも現在の国家財政の不手際のため、ここでも現在の国家財政の不手際のためという言葉が入つております。いろいろな困難を経験しているが、この問題は先にも指摘したように、すでに解決の方向に向つている。又この問題とは別に、警察法に盛られた新らしい理念の具体化についても大きな進歩が見え、警察業務は現在自制と寛容と推奨に値いする能率を以て運営されている、警察国家再現の危険とか、現在のようた機構と陣容の警察制度では、治安の維持ができないという危険は全然ない。」ということをまあマッカーサー元帥が言つていることを引用しまて、それからだんだんと鈴木君は言葉を進めて「国家地方警察が自治体警察を支配するような、いわゆる上位に立つような改革というものは、これは自治体警察を抹殺するような方向に向うのであります。」と言つて、この警察制度の改革を、そういう立場から反対をしておるわけであります。それから又この警察制度の改正について、これは条文が発表される前の大橋法務総裁の車中談を基礎にして言つたものと考えるのでありますが、「殆んど全条を通じまして国家地方警察を拡充強化されて、現在の国家地方警察の性格を変えまして、国家地方警察的なものにしようという意図が非常にはつきりあらゆる線に出ておるわけであります。こういうことを言つております。又殊にこの国家地方警察の官僚諸君のためにこういうことをまあ言つております。非常に、「これは結局国家地方警察の中に入つておる人の多数は元の内務省系統の優秀な官吏が多いのであります。」国家地方警察に入つている人は、私もその通りだと思います。齋藤さん初め皆優秀な人だと思うのでありますが、「そういう人たちは現在のような農村警察で甘んじられない、やはり国家警察的な仕事をやりたいというのは御尤もな点であろうと思います。あまりにそういう人たちが残つております。従つてそういう残つておる人たちは寝ても覚めても村落警察なんかに頭を突込んでは仕事の張合いがない。」こういうようなことを言つて、又更に無意識的にこれらの優秀な国家警察にいられる元の内務省の官吏諸君は「自分は自治体警察の上に立つておる、立たねばならんという考え方を持つておる人たちがおる。現行法を研究すると到るところに壁がある、この壁をぶち破つて中央集権的なものにしなければならないというのが、このたびの案ができ上つた根拠ではないかこういうようなことをまあ言つておるのであります。この言に対する御感想を一つ……。(笑声)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/40
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041・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 只今読上げられまた中に、いろいろたくさんのことが盛られております。先ず一九四九年に元帥が今日の警察制度及びその運用を與えられておりますにつきましては、当時我々も非常に感激をいたしたのであります。先ほどから申しまするように、一九四六年の今日の警察法大改革の基礎をなしまする元帥の手紙の精神を更に活かしまして、自治体警察がそのいつまでもあるべき姿を一層発揮して行けるように、現行法の足らないところを改めて行くということは、これは現行法に逆行する改正ではない現行法の精神をよりよくして行くという改正でありますから、この改正に対しましては私は全面的な賛意を得られるものと考えておつたのでありますが、果してさようなことであつたのであります。当時の手紙はどういう事柄に対する、当時の声明はどういう事柄に対する声明でありましたかは存じませんが、今日御審議をなされておりますこういう改正が不必要だという御趣旨ではなかつたと、かように考えております。それからこのたびの改正は国家地方警察が自治体警察の上位に立つことを意図しておるというようにそこに述べられておりますが、これは鈴木総監がさように感じられたのであろうと思つておりますが、我々の本旨とは全く違つておりましたので、数次、会合の席上この改正の本旨をお話をいたすととにいたしまして、十分納得を得たのであります。文字の使い方その他によつてそういう誤解を招くような虞れが或いはあつたかも知れなかつたのでありますが、解決を得ました案はそういう誤解を起さない言葉にいたしたのでありますが、併し本旨は全然変つておりませんので、従つて当初からさような考えは持つておらなかつたのであります。又国家地方警察の職員が優秀な者が多いというお褒めの言葉に対しては非常に感謝をいたしまするが、併し、今日の職責で甘んじているということは全然ないのであります。国家地方警察の職員が自治警察のかたがたと連絡協調し、互いに立場を認めながら一緒になつて全国の治安の維持に邁進をしよう、こういう決意でおるわけでありまして、これを昔の警察に返したり、或いは自警の上に立つてこれに君臨したり、さような考えは一人も持つていないことを明らかにして置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/41
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042・吉川末次郎
○吉川末次郎君 なおいろいろ質問したいことがありますが、国務大臣も御出席になつておりませんから齋藤長官に対する再質問も留保いたしまして、本日はこれで私は打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/42
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043・竹中七郎
○竹中七郎君 自治体側も三人見えていますからお伺い申上げたいと思いますが、東京都のほうの警視総監のほうは割合に関係がおありにならんと思います。大阪並びに京都のかたにお尋ねいたしたいと思います。警察法の一部の改正に関連いたしまして、自治体警察側といたしましては、或いは全体でございますが、一般平衡交付金の問題並びに最低の基準の定員確保は殊に必要なるものがあると思いますけれども、この点に関しまして自治体側の警察といたしましてはどんな御要望を持つておられますか。この点につきましてお伺い申したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/43
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044・鈴木榮二
○参考人(鈴木榮二君) 只今の自治体警察の財源の裏付になつておりますところの平衡交付金の問題につきましては、私の希望を申述べさして頂きたいと思います。この中小自治体が財政難のために出発の当初から苦しんでおつたことは皆さんの御承知の通りでございます。従つてこの中小町村警察が財源難のために、国家地方警察に警察権を信託する、まあ抛棄すると申しますか、任してしまうというような輿論は当初から絶えず起つておりまして、我我もこの自治体警察の連合会の仕事をしておりまして、会合ごとにこの議題になるのでありまして、今のような地方平衡交付金の基準單価では町村の財政当局は到底現実に支弁しておるところの町村警察の維持費に満たない。特に出発当初におきましては、初度調弁費等がたくさん要つたのでありますから、特に目立つたと思いますけれども、すでに出発後三年になりましても予算支出におきましては平衡交付金の基準單価を知つておるものは、これでは町村財政当局が警察を維持することに納得しておらないということを、我我は現実の資料を以て見ておるわけであります。そこで御承知のこの二十五年度の本決定は、仮決定の際は十八万二千円余でありましたが、本決定になりましてから十六万三千円に切下げられております。約二万円の切下げをやつてるわけです。而も一般公務員はこの一月からベース・アップをしまして相当の人件費が上つておるにもかかわらず、自治体警察の財源である基準單価が二万円どういうわけで切下げられたかということを地方財政当局に聞きますと、結局金がないから仕方がない。地方財政平衡交付金の外枠が縮小されておるからその比例で抑え込んでしまつて、それで十六万三千円になつたのだというような無責任な財政処理をやつております。これはマッカーサー元帥が言われました国家財政の不手際がここに現われておる一つの例でありまして、中小自治体警察が、挙げてこれを国家地方警察に投げ出すという輿論が起るのは理の当然であります。そこで私ども自治体の人たちと絶えず仕事をしておるものは、この自治体警察を政府は潰する方向に持つて行くのかどうか、そういう財源を苦しめて置いて、首を吊して足を引つぱるというような政策をやるのかということに非常な疑惑を持つておるわけであります。そこで我々といたしましては如何ほど使つておるかということを実地について調査しますると、單価二十万円約使つておるわけであります。これは贅沢しないで、必要経費で平均二十万円を使つておる。これが地方財政平衡交付金の基準単価は十六万三千円になつておりますから、こういう大きな町村、特に貧弱町村は自己財源を警察のために振向けるということは非常に困難であります。ここに中小自治体が警察を国家警察に投げ出すというような熱烈なる要望が一部出て来るわけであります。それでこの方向が違つておるのではないか。憲法の精神が地方分権に方向がきまつておる。又地方自治を育成強化することが日本の民主化の唯一の行くべき途であるというこの際におきまして、こういう地方自治体として最も重要な警察という業務を簡單に投げ出すというような方向に持つて行くことは、これは由々しい問題である。地方自治を破壊する第一歩が始まるんじやないかというふうに心配するわけであります。そこでこの警察が、中小自治体が能率が上らんとか、或いは腐敗とかいうような将来改善すべき問題を捉えまして、本質論の地方自治を抹殺するような方向に持つて行くことは由々しい問題である、財政問題でこの警察権を拠棄するという危険を與えましたならば、これはこの財政当局が地方自治を圧縮するような方向に国家財政を持つて行くのじやないか。即ち中央政府の都合によつて地方政府の、特に警察という業務を弾圧して、これを押出して国家地方警察のほうに投げ出すように押しやるような政策をやるというようにさえ我々は邪推するわけであります。まさかそういうけちな考えのかたは中央政府にはおらんと思うのですけれども、二十五年度の地方財政のさような現実を明らかに皆さんがよく御覧になると思うのであります。そこで私は五千以上の町村が投げ出すということにこのたびの改正法案が出ておりますけれども、これを立てました国の肚の底は一般人民投票によつて投げ出すということになれば必ずこの現在のような地方財政の交付金の額では恐らく投げ出すものが滔々として出て来るだろう。従つてこれでは財政上の理由によつて警察権が国家地方警察に移動する、とんでもない派生的な原因から本質的な自治権の一部が国家地方警察のほうに移動する。これは日本の民主化に逆行するような印象をさえ国際的にも国内的にも與えるわけでありますから、是非これを食いとめなければならん。これを食いとめますには、二十六年度におきまして近く八月の中旬に決定する地方財政平衡交付金の基準単価が現実に即した二十万以上の單価に切替えなければならん。この單価を確保するためには、別に教育費を削つたり、或いは衛生費を削るというような、他の業務を創るようなけちな考えでなしに、この平衡交付金の枠をこの前の閉会の際に参議院の全部のかたの御決議になつたように百億以上に枠を拡げて、それによつて警察費の單価を確保しなければならんのであります。或いは現在の調査によつたらもつと必要な枠を確保しなければ地方自治は憲法の予期するような方向に持つて行けないのじやないか。そういう財政上の関係から日本の民主化の基礎が阻まれたり、或いは逆行するというようなことをしましたならば、国民大衆はそういうことを望んでおらない。特に貧弱町村におきまして警察権を折角終戰後歴史始まつて以来もらつたようなこの大切な警察権をたつた三年の間にこれを投げ出すということを好んでおる人は一人もないと思うのであります。維持できないような財政上の負担があまりに自己負担において過重であるから、これによつて税負担が引下げられるのならば投げ出すというような安易な途を選ばそうとするわけでありますから、これはどうしても国家財政の不手際を是正しまして、平衡交付金の合理的な基準単価をきめるということを私は国会の皆さんに心からお願いいたしまして、これによりまして、たとえ人民投票によつて投げ出す途を設けましても、この裏打ちがしつかりしておりましたならば、決して自治体は好んで投げ出すものはないと確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/44
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045・竹中七郎
○竹中七郎君 ついででございますから、鈴木総監にお伺いいたしたいと思いますが、私はこの間のマツカーサー元帥の証言の中にありました、日本人は勝者に対してはどうも非常に卑屈である。こういうことを言われまして、この前の勧告と申しますか、書簡によりまして日本は警察国家である、これを打破と申しますか、解消するために、かようなふうにやらなければならんという書簡が出た、この際におきまして五千人であつて七、八人の警察官で実際やれるかやれないか、こういうことをその当時におきまして実際御研究になつたかどうか。そしてそれが問題になりまして、私一年間各町村ずつと廻りましたが、経済問題ではなしに、そのほかにいろいろ経営問題がある、又人事交流の問題におきまして七、八人のものでありまして、これをあなたがたのような大きい自治体が拾つてやつたり、或いは出してやつたり、そういうことをできるか。或いは地方警察がしつかりやられたならばこういう問題が出て来なかつたのじやないかと私は思うのでありますが、この点につきまして鈴木総監の御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/45
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046・鈴木榮二
○参考人(鈴木榮二君) その定員の少い警察でその管内の治安の責任が万全を期し得るかという御質問のようでありますが、これは私は極端に言えば一人の警察官でもその対象となる、その人口なりその地域が大きければ十分それで間に合うと思うのであります。で、十人でも八人でもその人口に比例しておおむね置かれた警察組織でありますから、それで一応の平時における治安は前の、旧制度よりはずつと確保されておるわけであります。ただ以前は内務省一本の全国警察でありましたから府県警察部長の命令一下どこの部隊もどこへでも集結できるような態勢でありました。又他の府県から殆んど人は移動できるような組織になつておりましたので、背後関係が非常に能率的に活溌にやれたことは間違いないのであります。併しながら警察法五十四条の後段に国家地方警察と自治体警察とは協力の義務を負うという法律がはつきり明示されておりまして、協力ということによつて、その六人の警察官が自分の力で及ばないような事件が起きた場合、即ち騒擾事件。ような事件が起つて現実の人員によつて治安する場合、或いは必要な殺人事件が起つて、これが逮捕が困難な場合、こういう場合は直ちに国家地方警察の協力を求め得る。このたびの警察法の改正にありますように、自治体相互間におきましても遠慮なく協力を求め得るという法的根拠が明らかになる、こうなつて参りますと、六人ではなくして十二万五千の背後が絶えず協力態勢にあるわけであります。警察は別に自分の営業ではありませんから公共の秩序のためにそこに別に国内も何もない、国内の地域におきましてお互いに協力するということは、上からの命令があろうがなかろうがやることが民主主義社会の当然の根本理念ではないかと思うのです。従つてその法律の明示があり、又この法の改正法案がはつきりとその点を合法化しておりますから、この改正案と合せまして、現実にでもそれは事実隣の家から火事が出ておるにもかかわらずこれを消しに行かないという人はないのでありますから、そういう意味におきまして、その府県或いはときと場合によつては相当広域の警察力を、その六人の警察官で鎮圧できない事態に対しまして協力態勢に持つて行くことが可能であります。又そういう考えでなかつたならばこの民主主義社会というものは到底すべてのものは一人で、独立国のように全部賄われるというものはないのでありますから、特に警察のような機動力の要る仕事は、ほかの固定的な仕事と違つてこの機動力の要る仕事におきましては、常時その非常態勢の準備はそこのユニットだけではできておらないのであります。全部総合的な、連合軍としてお考え頂いたならば少数の警察が弱いというような考え方は出て来ないのであります。人事交流につきましてはこれはいささか私個人の意見になるかもわかりませんが、全体の自警内部の代表的な意見とすると、人事交流ができないために非常に困るというような希望が強いので、と申しますのは、古い府県單位の警察が一挙にマッカーサー元帥の書簡によつて全国千六百余りの單位に分れまして、警察で小さいのは五人から大きいのは二万四千という大きな組織に分かれたわけでありますが、特にこの中小自治体におきましては、初めからその小さい警察で勤めるという約束じやなしに、府県單位の警察に就職したいお気持の人がそのストップ令のように現場に止められたわけでありますから、諦め切れないわけであります。初めからこの約束で一生勤めるという約束で入つて、旧制度の警察がマツカーサー元帥の革命的な指令によつて分散解除されたこの釘付けの状態に対しまして、ちよつと性質が違うわけであります。そこで警察官はおおむねにその点で非常に悩みを持つております。できれば人事交流が円滑に行つたらいいのじやないかということは個人個人皆言葉で言わんでも皆共通の考えを持つております。併し我々は一歩退いて、これは個人の意見でありますが、考えまするのに、若しこの人事交流を実際に意企したとするならば、その大きな組織を持つておるものが人事交流の親分になるわけであります。例えば国家地方警察が、自分のほうが親元になつて人事交流ができれば人事を以て国家地方警察がその自治体警察を支配することができるわけであります。結局その人に採つてもらわなければならんとするならば、平素から大いに実力的にその人の傘下に入り間接的に応援できるわけであります。又大阪警視庁がほかの警視庁の者を自由に交流すればこれは向うのほうに行く者はない、大阪警視庁に来る一方であります。そうすると大阪警視庁は管下から悪い者は採らないでどうしてもいい者を引抜いて採る、或いはこういう悪いほうをやつて、いいほうを採るという、大体の組織の関係におきましては常識であります。いい者はやつて悪い者を採るというほどそれほど雅量がないのが普通でありますから、そうすると、いい者は立身出世できるが、併し悪い者は残る。そうなると中小自治体はだんだん吸上げられて行つて、いい昔は残らない。結局中小自治体は人的にも枯渇してしまつて、いい者はやめるとか、行くかということで、半分強迫されて行く。大きな所へ行けば立身出身できるので、立身出世を期しておるものが大きな所に流れ込む、こういう落ち着かない気持では自治体が強化できない。そういうことになりますと、運営上大きな所は小さい所を絶えず人事面から支配できるという恐ろしい結果になりますから、私は断じて、この問題は暫らく眼をつぶつて、新らしい警察官がその自治体で一生暮すという決心を持つて入つてもらいたい。今の警察が不満であれば巡査からもう一遍入り直す、それ以外に方法はないのであります。これは法律でも、何でもなしに総司令部の施策として非常に強く我々に示されております。私個人としてもその理念をよく了解して賛成しておる一人であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/46
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047・竹中七郎
○竹中七郎君 今の問題で少数の警察官であつてもお互いに助け合えば別に差支えないということを言われましたが、経費面に関しますると、その経費におきましては実際その必要がなくて、それに対しまして警察官はいろいろな問題におきまして非常に不合理な経理面が出て来るのでありますが、これは民主化であつて、そういう無駄があつても仕方がないとお考えになりますか。今の警察官は衞生方面におきまして非常に事務が多端であつたのでございますが、現在は保健所ができましてそういう問題も相当少くなつておる。こういうときにおきまして、この点に関しましてどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/47
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048・鈴木榮二
○参考人(鈴木榮二君) 小さい警察の経費は非常に弾力性がないというのはこれをどうすればよいかという御質問のように御了解してよろしいですか。小さい警察は御承知の通り確かに経費面に彈力性がありません。従いまして平衡交付金も小さい警察に対しては割増をして與えております。基準單価を拡げましてもそれに対して倍率を少しよくしまして、この小さい組織に対しましては経費が相当高くかかるというので、平衡交付金の或る程度の配慮がありますけれども、そんなことくらいでは到底間に合わない、結局全体的には小さい警察には自分の力で及ばない場合には、先ほど申しました通りに弁当を持参で頼んで来てもらえるようにする。先ほど申上げました協力というものは弁当持参で行く協力であります。今度の法案にも国家地方警察が弁当持参でやつて来る、或いは自治体同士で応援した場合には、連絡をよくして、そして自分のほうから要請したようなかつこうで、弁当代を自分のほうで出す。そういうふうな運用ができるうということになつておりますので、小自治体は応援を求めた場合の賠償は全然要らんわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/48
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049・竹中七郎
○竹中七郎君 この警察法の一部改正に対しまして、大体自警連のほうでは賛成だと言われますが、この点につきまして、折角京都からおいでになりました永田さんに御意見を承わつて置くことが我々審議の上におきまして非常に便利と思いますので、お伺い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/49
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050・永田圭一
○参考人(永田圭一君) 私永田でございます。先ほどから田中さんと鈴木さんから殆んど申し盡されましたが、三つの点がまだ了解点に達せずに保留されたままになつております。それは警察が固有の町村、固有の権限であるのにかかわらず、至上命令的な法律というようなもので頭からこの権限を五千以上とか、五千以下で縛つてしまうべきではない、五千以上のもの五千以下の町村であつても、欲つすれば與える。欲つせざればやめさせていいじやないか、又小さい人口の町村で到底やつで行けないというならば、組合警察を作つて行けば自治体警察の運営ができるのじやないかというような考え方で、妥結案の前にも意見を述べたのでありますが、これは留保されております。それから財政的裏付が十分でない。自治体警察で警察がもうやめたい、警察は要らないというのは、お金の点だけで皆がそう言つているのでありまして、一旦警察を自分の自治体の固有の権限として持つたものは、すべて継続して行きたいのだ、けれどもお金が十分でないために、止むを得ず国警のほうに引取つてもらいたいというような考え方、そういう面でなつておりますので、これも是非ども何らかの機会に御配慮が願いたいということ、この点が残つておる問題の第二でございます。それから先ほど吉川さんからいろいろとお話を伺いまして、実は国警の管轄区域が、五千以下の農山漁村ばかりでありまして、この農山漁村の警察でありますのに、どうも世間では国家地方警察本部というものが東京にありますために、全国の警察を管理しておる、又代表しておるかのごとくに誤解をされまして、今日まで交通法規であるとか、或いは少年の不良化防止の問題であるとか、国策に影響のあるような大きな問題が自治体警察の代表者が何の意見も聞かれずに農山漁村式の交通の法規を作られたり、或いは治安問題、その他の犯罪の大部分は自治体警察の管轄区域内にあるのであります。ただそれで犯罪統計その他が国家地方警察本部に統計上の数字がまとめられおるだけのためにいろいろの、先ほど吉川さんが縷々お述べになりましたような大きな錯覚に陷つていろいろと間違いが起つております。これを何らかの機会に一つ是正して行きたい。こういうような考えを持つておりますので、私この次の公聽会に出席して意見を述べることを、先ほど委員長からお話がございましたので、まとめまして二十三日に参りまして皆さんがたに聞いて頂きたい、かように思つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/50
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051・小笠原二三男
○小笠原二三男君 只今京都市のかたがお話になりましたが、私も素人で国警長官といいますと、国の全体の警察を何かやるかのように考えておつたのですが、いやそうではなく、警察法第十二条による国家公安委員会の任命になる国警長官というふうに考えておつたのが、従来政府委員となつて出て来られて、政府責任者かおらないというと、これは補佐として説明されたり、御意見を述べられたりするので、どうも齋藤さん個人を申上げるのではありませんが、どうも国警長官というものは二足の草鞋を履いておるもので、どうも訳がわからんと思つておつたのですが、本日お伺いしても相当政府側としての意見を吐露せられておりますが、私はこの際自警連側のほうが、この法案に対して中心的な意見を述べられたようでありまするが、それを聞いた場合に政府委員である齋藤さんではなくて、国家地方警察の長官である齋藤さんとして、国家地方警察側はこの法案に対してどういう考えを持つておるかという点を政府委員の立場を離れて一つお聞きしたいと思います。と申しますのは、国警長官の試案なるものが前に出ておる。それと今出ておる一部改正法案は違つておるのでありまして、この点国家地方警察側と政府側が完全に意見が一致したものであるか、又国家地方警察官内における治安維持、或いは非常事態宣言があつた場合に、国家公安委員会が国内治安を確保するという場合に、当面の責任に当る国家地方警察側、特に国家地方警察本部の長官として御意見があるのじやないかと思うのです。この際端的に一つ主張をお伺いして置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/51
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052・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 国家地方警察本部の長官として申上げます。この改正案につきましては、只今御指摘されました私の試案というものとこの案と違つておるというお話でありましたが、私の試案というものは未だ曾つて持つておりません。出ておりました試案と申しまするのは、政府か研究中の案であります。これはむしろ政府委員の立場で作つておつたものであります。併し国家地方警察自体といたしましても、全く同意見でありまして、政府の案とそれから国家地方警察の考え方と違つておる、或いは不満足という点はございません。ただ一つ私の責任におきましては五千の増員を、純増一万人欲しいと言つておりましたのが、五千人になりました点が違つておるのであります。これは最初の案は二万人ということでありましたが、そのときにも実際新規に採用するのは一万人と考えておつたのでありまして、あとの一万人は自治体警察が若し廃止されるならば、その枠に入つて来られるための定員と考えておつたのであります。それが今度別枠になりましたから純増一万人というのが、国家地方警察本部及び国家公安委員会の要望であつたわけであります。併しこれは先般法務総裁が言われましたように、財政の都合その他から五千人という決定をされたのでありますが、その代りに装備、施設或いは活動費というものを潤沢にみることによつて増員を当分五千人でやれるように考えて参りたいという政府のお話でありましたから、どうせ一万人の枠が法律できめられましても、本年内には五千人程度しか実際採用は困難であろうと考えましたので、装備、施設或いは活動費等において相当増額をせられるならばやれないこともなかろうというようにも考えまして、一応五千人と政府のきめられた案に対して従つて行きたいと、国家公安委員会も私も考えておつたのであります。他の点につきましては国家地方警察本部の側から考えましても、この案が極めて適切であると、かように信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/52
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053・小笠原二三男
○小笠原二三男君 では次に政府委員である齋藤長官にお伺いします。昨日法務総裁に私質問しました際、即ち提案理由の説明を聞きますと、現下治安の実情に鑑みて法改正をするのであるという点を指摘しまして、質問いたしましたところが、私の質問の通り、或いは吉田総理、法務総裁、かねがね言われておる通り現下治安の秩序には何ら不安はない、この提案理由の趣旨は将来の問題に備えての方針である、こういう御説明であつたのであります。ところが政府委員であられる齋藤さんの細目に亘る御説明の中に、定員増五千名という問題を説明する中に、現在の定員においては国家地方警察の責任から見て十分でないということを主張しておらるる、そうして又現下の治安、の実情に鑑みて警察学校、警察大学等の或る分の定員を現場に五千人持つということにしておるのだ、こういう御説明であつたのですが、政府委員のこの現下の治安の実情ということは法務総裁がおつしやるような将来のことではなくして、現在国家地方警察の責任の立場から、この管下における或いは自治体に協力するという事態に備えての今々の治安維持の問題上から、私は一万人なり五千人なりの定員の増ということを説明されたのではないかと考えるのであります。で、政府委員でない国警長官の齋藤さんの昨日の御説明によりますと、どうしても一万人くらい欲しい、五千人は絶対欲しい、こういう主張は将来の問題ではないのじやないかと思われるのですが、その点如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/53
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054・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 現在将来と申しましても、将来の間近に考えられます将来はまあ現在と同じことだと考えるのでありますが、例えば昨今表面に現われておる治安の状況というものは表面的には心配はないということは法務総裁も言われた通りでありまするし、私もさように思うのであります。むしろ昨年の朝鮮事件が始まりました前後から当分の間のほうがいろいろな表面的な事件も非常に多かつた。いろいろな集団的な暴行事件、或いは個々の原因不明なる事件、例えば発電所の事件でありますとか、列車妨害事件でありますとか、通信線の切断事件でありまとか、いろいろな事件がございました。これらが心配すべき原因から来ておるものであるか、或いはそうでない普通の窃盗とか、或いは特に怨みを持つた事件であるということが明確になりまするならば安心でありまするが、その点がどちらも明確でないというときには国民自身も極めて不安を持つのであります。警察自身においてなお更でございます。而うしてかような事件が今後もないかということを考えまするとき、近き将来のことを講和会議の前後或いはその後国際の諸情勢というものを考えてみまして、ああいうような事柄或いはそれよりももう少し繁くああいう事件が起つて来ないことが確保できるかというとなかなかこれはできないのであります。むしろ表面的な活動が極めて平靜であります半面に、いつかも或る会合の席でお話申上げましたように、裏面的な組織或いは活動というものが相当熱心に進められておるようなことがあるのであります。これが現在の治安の状況と申しまするか、或いは将来の治安に備えてと申しまするか、言葉の使いようだと思います。将来そういうような事故が起つたときに備えてということにもなりましようし、現在におきましても極く近い場合に備えてというのであれば現在の場合ということにもなるわけであります。のみならず、今日の普通の犯罪の事件にいたしましても人員不足のために、例えば農村地区にありましても、普通の窃盗或い蔵破りというようなそういつた普通の犯罪の捜査におきましても、人員不足のために被害者に対して非常に不満足を與えておるという状況でありまして、先般も申しましたように、曾つて置いておりました駐在所が千近くも今ずつと欠員状態に置いておるという状況から考えまして、又将来は治安の対象になりませんでした地方におきまして、今後治安の対象としてどうしても考えて行かなければならない地域が相当殖えて参つたという点から考えましても、これは今日当面の問題につきましてどうしても一日も早くこういう欠陥を埋めまして、国民の御安心の行くようにいたしたいというのが私どもの考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/54
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055・小笠原二三男
○小笠原二三男君 国警長官としては国家地方警察の責任維持の点から現在の定員では十分でないということで増員を主張せられておるにかかわらず、自治体警察のほうは定員の枠を解いて、そして自由に自治体警察にこれを任せる。そこで全体的にはまあ治安維持はできるということが私にはちよつと納得行かない。国警長官として自治体警察の定員を自由にするということは自治体警察の定員が殖えるという予想でこの法を考えたものであるかどうか、この点をお伺いしたいのですが、私仮に地方公共団体にそのまま定員を任せる場合には、手続上は条例のようなもので定員がきまるんじやないかと思うのですが、財政的な先ほど来の自治警側の主張等からいろいろな公安委員会等当事者の主張が出されても、定員を減らすというような場合が起つて、自治体警察が弱体だと言われる、それがますます弱体化して行くという場合も予想した場合に、国家地方警察の定員増で飽くまでもこれを確保したい。自治体警察のほうは野放しだということで、いわゆるこの治安維持という問題が十分であるのか、この点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/55
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056・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 自治体警察がその定員を自由にするということにいたしました場合に、定員が増加されるか減員されるか。この見込につきましては三人の田中君、鈴木君、永田君の諸君からも、或いはお話があると思いますが、仰せの通り自警、国警お互いに援助をし合つて今日まで治安が保たれておるのでありますから、国全体の警察官の数というものは私といたしましても無関心ではおられないのであります。殊に非常事態の場合のことを考えました場合になお更然りであります。併しながらこの制限の枠を外しました場合、今日まで聞いておりましたところは、むしろ増加を要望するというほうが非常に多かつたのでありまして、殊に中都市、戰災を受けた中都市におかれましては、なお更であります。こういうところでは私は恐らく増加を見ると考えておるのであります。先ほど鈴木警視総監が話をされましたように、むしろ小さな警察におきまして財政その他の理由から今後国家地方警察の応援援助は国費でなされるということであれば気楽に応援要請をし得られる。従つて日常の警察事務を処理するためにもう少し減らしてもいいというところが私は出て来るだろうと考えます。併しながら総体におきましては、私はやはり幾らか殖えるようになるのじやないだろうか、我々といたしまして、一番関心を持ちまするのは、機動的に動き得る警察官の数如何というのが、一番の問題でありまするから、中都市以上の警察が、私はこれはそう減らないと考えておりまするが、これが減らなければ心配はないと考えております。中小以下におきまして財政その他の理由、又私が先ほど申しました理由で、ふだんから十分な人数を持つていない、人がないというところで減少されました場合には、それだけ日常におきましても、国家地方警察の警察官の手が忙しくなるわけであります。応援に余計出かけますから忙しくなると思いまするが、その程度は今度の増加の場合にも考慮いたしておるのであります。若し予想外に自治体警察の警察官の数を又減少し、国家地方警察が応援に出かけることが非常に多くなるという事態が若しあるといたしますならば、それはそのときに又対処をして行くべきだと考えておりまするが、今度五千人の増員を頂きまするならば、只今の観測といたしましては、さほど総体としては自治体警察は減ろうとは考えておりませんから、十分であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/56
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057・小笠原二三男
○小笠原二三男君 どうも自治体警察のほうになると、そういうことだけは警察法の精神である自治の真義に照らして一生懸命おやり頂くようですが、併しそれはお見込なのでありまして、どういうことになるかということは、法律の建前から言えばこれはわからんことです。私は国家地方警察が定員増を主張すると同様に、地方自治団体における警察もその増員を要望しておるというような、結果として殖えるじやないかというような考えがおありになつたとするならば、その財政的な裏付を持つて自治体の定員の増という問題も考慮せられて、そうして定員を確保して行くということが、国家全体の治安維持という点からは、論理的にはそういうふうなことをやるのが正しいじやないか、それを地方の場合はそれをまあ金の裏付の問題等もありましようが、その地域の治安の実情という問題等もありましようが、自由である。こういう点は国警と自治警とを対等に見比べた場合に、私は法律上の体裁から言つてどうも納得できないと思う。この点一つ御所見があつたらお伺いしますが、第二の点として技術的に今回そういう、ふうに枠を自警に対しては開放する、こうして自警のほうが自主的に自治体だけの意向によつて定員を殖やしたという場合には、平衡交付金はそれに伴つて流れて行くように地方財政委員会の話合いができて、この法案が出て来ておるのであるかどうか、その点お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/57
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058・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 現在の法律におきまして、御承知の通り、地方財政が確立したならば……都市警察の警察官はこれを定員を自由にするということが書いてありますが、私はこれは自治体警察の本質であろうと考えております。それが国家的要請からして、幾らまでは必ず持たねばならん、こうきめることが私はよろしくないのではないか。国家的要請からそれでは足りないと考える場合には、これは別の方法で国家地方警察の警察官を増して、その不足に応えるということにすべきものだと私はさように考えておるのであります。自治体警察の区域内の治安の維持を、当該自治体に任せます、そして国はこれに干渉をしないという建前をとつておりまする以上は、自治体警察の警察吏員の不足によつて、当該自治体が犯罪の取締その他が十分できなくて困るということであれば、それは当該自治体において処置せられる問題である。国が非常に困る、国として放置ができないという場合、併しながらその場合には自治体警察が応援要請によつてやられるという方法でやられるならば、そのために国警が手を要して下足を訴えるというのであれば、国警を増すべきであるという、かように考えます。又、そのために国の治安上非常に重大な事柄について、どうしてもやれない、応援要請もないという場合には、このたびの改正によりましてそういう、どうしても放置できないという重大な事案の際には、知事の要請によつて出動するということになつておりまするから、そういう見地からいたしまして自治体警察の定員は自治体の自由にする。恐ろく私は先ほど申しますように、戰災を受けて人口の少なかつたときにきめられた定員のところでは、増員の要求が非常に多かつたわけでありますから、私はこの場合においては増員がなされると思つているのであります。九万五千の枠を外しました一つの大きな点は、九万五千を増さなければ自治体警察官の定員の調整ができない。どこか余つているところから廻さなければ、不足のところへ埋められない。然らば幾ら増してよろしいかと考えました際に、これはむしろ自治体においてどれだけということをきめられるべきものでありますから、予測はつかない。こんなものに一定の幾らという枠をきめる必要は今日もはやない。現在の警察法で九万五千と限られておりまするのは、当時地方財政が確立するまでは従前の通り、県費と国費で持つという建て方になつておりましたから、そういう関係で制限の枠が……、そういう理由が一つの理由でもあつただろうと考えるのであります。私はこの自治体警察の本旨に従い、それで又国全体の警察の心配も除去する途が設けられておるというのであれば、本来の姿に返るのが望ましい、かように考えるのであります。増加された場合の平衡交付金の問題、これは地方財政委員会のほうとも話をいたしておるのでありますが、今日は釘付けをされた定員になつておりますので、これを合理的な都市の人口の大きさによりまして、警察官一人に対して人口何人という割から逆算いたしましたその警察官の基準定員、例えば人員三万から五万までは、警察官一人当り八百人とか千人とか、これをきめまして、そうしてその合理的なと考えられる基準までは平衡交付金の対象に置く。その他に特別な理由がなくて、特別の理由も又勘考すべきものだと思います。人口だけでなく、特に警備対象が多いとか、少いとかいろいろな問題がありますが、その基準警察官の数を更に超えてした場合には、これは平衡交付金の対象としてはいいであろう。そういう合理的な基準定員というものを作るように、これは自治体警察の連合会のほうにおかれましても、研究を、来年度において予算編成までに地方財政当局と我々と自警と一緒になつて、合理的な基準を設けるように努力をいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/58
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059・小笠原二三男
○小笠原二三男君 今話を聞くというと、意地悪く聞きますと、先ほど鈴木警視総監でしたかが申されたように、やはりこれは自治体警察の定員増を図ろうとするものも地方自体で見るというようなふうになつて、生殺しにされるというような結果になるのじやないか。現在地方財政平衡交付金の枠というものが、国会における決議があつてもなかなか容易でないというふうに一方政府側が抑えておる今日において、齋藤さん或いは自警連のかたがたが今後努力して、そうして定員増なり、自由に治安確保のために自治体警察が警察官を持つということは容易でないのじやないかと思われる。これは相当我々意見があるところでありますが、本日はまあこの程度にして、逐条審査のときもつとこれは申上げてみたいと思います。ただ今の御説明の中に、自治体警察がどうしても定員が減らされる、地方の財政上どうにもならんというので減らされるという場合には、別の方法でこの増員を図らなければならんと思うという御説明があつたのですが、その別の方法というのはどういうことを指しておるのですか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/59
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060・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 私が申上げましたのは、自治体警察の定員が地方財政その他の関係から減らされて、そうしてそのために国全体の治安上困るという場合に別の方法と申しましたのは、これは国家地方警察の警察官を増すしか手はないと考えております。併しこれは予測せざる事態現象が一齊に起ると私は考えません。で、部分的に地方々々に、或いはそういう自治体警察もできるかも知れないという場合であります、そういう場合に応援要請に役立つように我々のほうで配置換えをする、長い傾向としてだんだん減つて来るということでありまするならば、その又傾向に順応して適正な、今度は応援に堪えられるような国警の定員を考えて行かなければならない。かように考えておるのでありますが、それは併し万一の場合であります。見通しといたしましては、私は減ることはないと、全体としてはむしろ若干殖えるであろうと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/60
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061・小笠原二三男
○小笠原二三男君 再三しつこいようですが、殖えるであろうということは地方の責任、或いは地方財政の負担において殖える結果になるのであつて、これは我々から見れば政治的に非常に重要な問題であると思うのですが、まあ国警長官の立場から、政治的な意図を持たずそういう予想をせられるということについて何ら我々追及する筋でもありませんからこの程度にいたしますが、最後にこの、先ほど来治安ということでこの増員の問題についていろいろその必要性を強調せられておる説明を聞きますと、必ずしも一般犯罪の増というようなことじやなくて、暴動なり、騒擾なり、こういう安寧秩序を乱るという意味の、いわゆる今言う国内治安、国内治安という問題を主として考えて御説明になつておられるようですが、この際お伺いしたいことは、昨日法務総裁にも伺つたのですが、国家地方警察或いは自治体警察の予備隊である国家警察予備隊が七万五千、現在訓練せられたものが配置についておるという問題と関連してですね、この国家地方警察なり、自治体警察なりの定員の増なり、或いは治安維持のための各種の法律改正なりというものについていろいろ私たちは考えられる点がありますが、長官はどういう関連性を持つてです、この予備隊並びに国家地方警察というものとの関係を考えておられるのか、お伺いしたいのであります。昨日法務総裁は国家警察予備隊は実力行使の部隊であるということで、それを理由として別個のものであるというふうにお話になりましたが、私は実力行使の部隊であろうとは考えるけれども、人を殺すということを目的とする実力行使の部隊ではないので、やはり治安維持のために必要がある場合にこれは働くための部隊であると考えておるのでありましてこの観点に立つて質問しておるのでありますから御所見を承わつて置く次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/61
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062・斎藤昇
○政府委員(斎藤昇君) 私といたしましても、国家警察予備隊の存在しておりますることを前提といたしまして考えておるのであります。若しあの予備隊がないといたしまするならば、やはりあれに近いだけの今度は、これは我我自身の予備隊と申しまするか、やはりそういう実力的な存在は必要だと考えております。今別の系統になつておりますけれども、これは一つの系統であつても、別の系統でありましても、この力の存在の必要なことは同じだと私は考えておるのであります。で、法務総裁も述べられましたように、警察予備隊は団体的に出動をして実力を行使することを目的としておると言われたのでありまするが、日常的な警察の仕事には従事をしないのであります。今予備隊の施設、装備、訓練のいたし方にいたしましても、例えば騒擾と申しましても、或いは集団暴行と申しましても、この予備隊が出動をいたしまする騒擾というようなものは、普通の警察を以てはやつて行けないというような事態に出動をいたして、鎮圧をするべきものと考えるのであります。できるだけ普通警察を以て処置し得る限りは、普通警察で処置をすべきでありまして、今まで起りましたようないろいろな諸事件、或いは闘争だとか、その他御承知のいろいろ事件がありましたが、ああいう場合におきまして、予備隊がそれじや出動してよろしいかどうかと申しますると、実はむしろこれは普通警察において処置をすべきだと考えておるのであります。ただ実力行使と申しましても、予防的な意味もありましよう、例えば関東大震災のときには軍隊が八カ師団出動したと考えておるのであります。大震災、大水害というような場合には警備、予防という意味から、やはり大きな実力部隊が必要である、私はさような場合に備えるものだと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/62
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063・小笠原二三男
○小笠原二三男君 本日はこの程度で長官に対する質問は終りますが、この前にお願いして参考人のかたがたが出ておられるのですが、十分な質問ができなかつたわけでありますが、この際現下治安の実情に鑑み、遠くから再三おいでを頂くわけに行かん責任者のかたがたでもありますので、この前の国会において参考人としてお話になつた趣旨が、この法案が出たが故に変つておる、私は前言は、この部分は撤回しておるというような部分がありましたら、鈴木さんにお尋ねして置きたいと思うのであります、又主張する部面もありましたら、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/63
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064・鈴木榮二
○参考人(鈴木榮二君) この前の妥結におきまして我々の理念が国家地方警察側もよく理解されまして、お互いに合理的な了解点に達したわけであります。併し懸案になつた点につきましては、田中総監が言われた通り、五千以下の町村を組合として自治体警察を作ることについて法の追加改正が実現してないわけであります。そういう点は我々又今後の皆さんの御協力を待つ次第であります。それから地方平衡交付金の問題、それから先ほど今国警長官に御質問になつておりました自治体警察の枠を外すというその財政的裏付がないのじやないかという問題、これは重大な問題でありまして、国家地方警察の五千人の増員につきましては、すでにその議会の予算が留保せられておるそうでありますが、それが本案が通れば使えるように現在の予算からでも流用できるというような話も漏れ聞いておるわけであります。そういうふうに国家、政府のほうの組んだ予算におきましては、国家地方警察におきましてはそういうふうな便利の運用が予定されておる。而し自治体警察の枠を外すという問題は、ただ抽象的に外すという問題が法案に出ておりましても、地方の平衡交付金の増額ということは未だ確保されておらないのでありまして、それと相関的にどの程度までその定員を合理的に増員する場合におきましては、裏付をするかという点は、是非この法案の実質的な内容でございますから、十分見届けて頂きたいという点であります。それから今朝ほど問題になつておりましたつこの警察というのは、一体自治体固有の事務か、国家事務かというような議論でありますが、私どもの自治体のほうの警察というものは、行政法的に申しましても、新憲法の精神から申しますと、この警察権というのは当然町村の固有の業務であると思うのであります。地方自治法におきましても、公共の秩序を維持するということは、町村の五千以下とか五千以上にかかわらず、市町村の公共の秩序を維持するということは、当然の義務としてたしか地方自治法の二条に掲げております。又条例も作れるわけであります。御承知の集会禁止のような条例も、普通であれば法律で問題になるような治安警察法の少し燒き直したようなああいう条例さえ市町村であればできるわけであります。それほどの強力な条例も作り、又これの執行の裏付を自治体警察がやるわけでありますから、警察権というのは町村固有の業務でなければそういうことができない。現在国家地方警察と自治体警察がやつておる業務の内容は全然その運営面においては同じであります。そこに何らの差等はないのであります。そういう点から申しましても、ただ運用面におきまして応援に来てやるとか、それだけの余裕があるから応援に行つてやるとか、国費のほうのルートが都合よく出るから応援費用は手弁当で行つてやるとかいうことは、結局国民全体の税金を、そういう方法で運用しておるに過ぎないのでありまして、別に自治体のほうだけに政府が恩恵を與えたというわけではなく、これは結局国民から出た税金を、地方の税として取るか、国税として中央へ集めるかの財政技術上の問題である。その本質は個々の市町村住民の税金が、中央のほうに直接徴税されておるか、或いは地方税として、或いは中央に徴税されたものは平衞交付金として町村に還元されるかということの違いでありまして、結局その財政的基礎におきましても、町村住民の直接、間接の税金によつて我々国家地方警察並びに自治体警察に維持されておる業務の内容におきましても全然現在差別がないという点から見ましても、これは地方自治体の固有の業務であるということは、私は決して行政学上疑いなき事実であります。従来こういう国の事務であるとか、町村の事務というのは観念的に区別してどこがやるかわからぬようなことを、よく言う中央集権の弁明に使う人がありますけれども、私はそうは思わない。やはり個人々々の国民の基本的人権から出た、第一次的な地方公共団体の町村が、その自分のなし得る仕事を、全部一応なし得る権利があると思うのであります。その身近かな町村の公共団体のなし得るすべてのものをなしても、なおできない公益の仕事、軍備であるとか、或いは外交であるとか、国全体としてやらなければならぬような仕事につきましては、国固有の仕事と言い得るかもわかりませんが、併しこういう地方自治法に明らかに書いてあるような、而も警察法に自治体警察としてはつきり原則的に都市は警察を持たなければならん、農村地方は取りまとめて国家地方警察がそれを管理するというような便宜論で五千の線を引いたのでありまして、これが絶対的な理念的の線ではないと思います。そこでこの五千の政策的な線を国家地方警察がやるかやらないかということについては、今後組合警察として国家地方警察の現在管理しておりまする地域を自治体としてまとめる方向に行くほうが、自治体警察を育成するゆえんであり、又民主化の方向ではないかと思うのであります。そこで飽くまでも国家事務であるか、地方事務であるかということを観念的に考えるよりは、我我はこの自治権が具体的に警察権を含んでおるということを理解いたしまして、これは固有の事務であるということを前提にして自治体警察の育成に御協力願いたい。私はそういう希望を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/64
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065・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) ちよつと田中総監から補足したいことがあるそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/65
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066・田中榮一
○参考人(田中榮一君) 先ほど小笠原委員から極めて今後の自治体警察の存亡に関する重大なる御発言がありまして、その際もお答えいたして置きましたが、足りなかつた点を補足したいと思います。先ほど自治体警察の定員の枠が外されたならば殖えるか、減るかというようなお話がありましたが、又それに対しまして国警長官から殖える場合もあるかも知れん、又減るかも知れんが、殖えるだろうというお答えだつたのでありますが、私どもの今の見方からしますると、減るところもあるのではないかと考えます。その理由は、結局一般平衡交付金の裏付が政府が誠意を持つてやつて頂いたならば減るのではなかろうかと考えておりまするが、従来は誠に私どもは残念でありまするが、政府の一般平衡交付金のやり方につきましても、私どもは非常に残念な点があるのであります。一例を東京都にとりますと、成るほど東京都は財政がいいから一文もやる必要がないと言つて殆んど一文も頂いておりません。現在皆様の御承知のこの議会を警備しておりまする警察は全部警視庁の警官であります。これがために毎日百数十名の警察官が派遣されております。その他都内におきまする国家的な重要な施設、警備対象等に対しましては、警視庁は相当な人員を出しましてこれを警備いたしております。これはむしろ東京都というよりも、むしろ国家のためにやつておるということであります。それに対しまして、恐らく年間、これを予算的に計算いたしますと四億円程度の警備費を扱つてると一応考えられます、これに対しまして、政府からは一文も一般平衡交付金の交付もないのであります。それから又小さな町村におきまして、大体小都市におきましては平衡交付金が十九万円程度交付されておりますが、中都市の定員四、五十名の都市におきましては、大体十五、六万円というようなことになつております。むしろ小都市は比較的いい。これは結果のことでありますが、定員四、五十名のところが比較的虐待されておるということであります。そこで二十五年度の一般平衡交付金の平均は十七万六千円になつております。大きな町村で十九万一千九百六十円、中町村で十五万八千六百円、小さな町村で十六万三千六百円となつております。これに対しまして自治体警察の実際の二十五年度の経費の平均額は大中小を引つくるめまして平均が十九万一千二百円というふうになつております。そこで今後仮に人口が増加いたしましてお隣の神奈川県の川崎のごときは、発足当時は二十一万五百五十七名の人口であつたものが、昨年十月一日の国勢調査の人口が三十一万九千二百三十名、約十万人以上の人口が増加いたしております。それに対しまして現在定員が六百二十六名、若し昭和二十三年の警察法施行令の別表第二の標準によりまするとこれが九百四十名、差引三百十四名の増員ができることになるのであります。併しながらこの三百十四名の増員ということは財源的にこれを見るならば極めて大きな予算になるのでありまして、私どもの希望といたしましては昭和二十三年の警察法施行令に規定いたしました別表第二というのがございます。これが現在の警察官の定員配分の基準になつておりますが、これは町村は八百名に一名、それから十万未満の市は六百五十名に一名、それから十万から二十万の市は五百名に一名、それから二十万から二十五万が四百名に一名、仙台市が三百五十名、福岡市が三百名、京都市が二百五十名、横浜、神戸、名古屋が二百名、大阪が百五十名、東京都特別区が百三十名というふうになつておりまするが、少くもこの定員配分の基準額程度までは増員した場合には一般平衡交付金の配分が確保されるような方法が若しできなければ、実際問題として人口が増加して定員を殖やそうと思いましても殖やすことができないのでございます。従いましてこの今回の警察法の一部改正と極めて密接な関係にある問題は、この一般平衡交付金の確保ということが一番重要な問題でございまして、是非これにつきましてこの警察法改正と同様な重要さを以て一つ御審議を願いたいと思うのであります。それからもう一つ、或いはこの一般平衡交付金が若し確保されないならば、定員の枠が自由になつた場合に減るんじやないかということも一応考えられるのでありまして、殊に今回国警五千人の増員ということは国家が予算を計上して、国家が世話をするのでありまして、自治体警察は実際問題としまして誰も世話ができないのでありまして、みずからが生きて行かねばならんという状況でございますので、是非この最低基準の維持と言いまするか、今私が申しました警察法施行令別表第二の定員配置の基準表以下は下らんような方法を一つ講ずるようなことを併せて御考慮願いたいと思います。今回の警察法改正につきましては、この最低基準の維持という問題と、それから組合警察設置の問題、それから一般平衡交付金の交付の確保というこの三つの点は、この警察法改正に極めて密接な関係があり、又今後の自治体警察運営の上に重大な点があるのでございますので、これにつきまして十分一つ国会におきまして御審議を願いたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/66
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067・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 先ほど永田本部長から述べられましたことにつきまして補足をいたしたいという所がございますので、許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/67
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068・永田圭一
○参考人(永田圭一君) 先ほど竹中さんのお尋ねにお答えしました中で、警察予備隊のことで漏らしましたのですが、丁度小笠原さんが今お尋ねになりましたので思いつきまして補足させて頂きたいのてあります。それは全国の各地にすでに予備隊がたくさん分駐されております。ところが未だこの予備隊は、非常事態が起つた場合における応援その他の調整連絡の処置が何ら講ぜられておりません。国家非常事態の際には国警は総理大臣の統制下に入るということが出ておるのでありますが、すでに予備隊のできました所は、あちこちから国警の駐在所の巡査を集めてもらうよりも予備隊に来てもらうほうが非常に効果的でないかと思うのであります。この点についても今度の警察法の改正に補足して何か要望を入れて頂きたい。かように思うのであります。一言申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/68
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069・中田吉雄
○中田吉雄君 田中警視総監に資料についてお願いして置きたいと思います。警察法の改正につきまして一般的な、或いは逐条的な質問は後に讓りたいと思いますが、先刻の御発言で神奈川県が組合警察として四つくらい模範的に成功しておる事例があるということを申されたように思いますが、神奈川県だけでなく、あちこちにあると思いますので、これは極めて注目すべき現象であると思いますので、一つ全国的な規模における調査、並びにその機構運営等を知るに足るような一つ資料がまとまりましたらお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/69
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070・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) それではその資料の取寄せを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/70
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071・小笠原二三男
○小笠原二三男君 国警長官、或いはその他なお特に法務総裁或いは関係大臣等まだお聞きしたい点がございますが、本日はこの程度で散会されることの動議を出しますが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/71
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072・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) 御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/72
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073・岡本愛祐
○委員長(岡本愛祐君) それではこれで散会いたします。
午後四時五十七分散会
出席者は左の通り。
地方行政委員
委員長 岡本 愛祐君
理事
堀 末治君
吉川末次郎君
竹中 七郎君
委員
石村 幸作君
岩沢 忠恭君
高橋進太郎君
安井 謙君
小笠原二三男君
相馬 助治君
中田 吉雄君
西郷吉之助君
石川 清一君
法務委員
委員長 鈴木 安孝君
理事
鬼丸 義齊君
委員
齋 武雄君
岡部 常君
国務大臣
法 務 総 裁 大橋 武夫君
政府委員
国家地方警察本
部長官 斎藤 昇君
国家地方警察本
部総務部長 加藤 陽三君
事務局側
常任委員会專門
員 武井 群嗣君
常任委員会專門
員 福永與一郎君
常任委員会專門
員 長谷川 宏君
参考人
警 視 総 監 田中 榮一君
大阪市警視総監 鈴木 榮二君
京都市警察本部
長 永田 圭一君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014718X00219510516/73
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