1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月十一日(金曜日)
午前十一時四十三分開会
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本日の会議に付した事件
○会社更生法案(内閣送付)
○破産法及び和議法の一部を改正する
法律案(内閣送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/0
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001・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開きます。
本日は会社更生法案及び破産法及び和議法の一部を改正する法律案の両法案について政府の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/1
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002・高木松吉
○政府委員(高木松吉君) 只今議題になりました会社更生法案につきまして、提案の理由を説明いたします。
会社、特に株式会社が近代の企業形態の代表的なものであり、現在の経済社会において如何に大きな役割を果しているかということは今更申上げるまでもないところであります。ところが、この会社がひとたびその事業に破綻を来たした場合にはどうなるかと考えますと、終局的には申すまでもなく破産ということになります。破産をいたしますと、その財産を換価して債権者に分配することになりますから、通常その企業は解体され、関係当事者はもとより社会的にも大きな損失を被ることになります。それでは破産をせずに事業を更生させるためには現行法上どういう方法があるかと申しますと、まず第一に破産予防のための和議の制度があります。この制度はいわゆる強制和議の性質を有し、強力な制度ではありますが、何分にも画一的包括的な制度であり、又その性質上からも会社には余り用いられていないようであります次には御承知のように商法の規定による会社の整理の制度がありますが、この制度は補助的手段としてはかなり強力な措置を認めておりますが、整理自体はあくまでも任意的なものであつて整理の成立を強制しない点が特長であります。それだけに又弱力であるためか、これ又余り用いられていないのであります。そこで窮状にある会社、殊に株式会社についてその事業の維持更生を図るため何かそれに適合した強力な制度が必要であるということがかねてから痛感されておつたのであります。英米等におきましては、早くからこのような制度が広く行われ、特に米国におきましては、その運用の実績において著しい成果を収めている模様であります。政府は一昨年八月以来この研究に着手し法制審議会に諮問して調査審議を重ねて参つたのでありますが、このほどようやく成案を得るに至りましたのでここにこの法案を提出いたした次第であります。
この法案の目的とするところは、経済的に窮境にあるがなお再建の見込のある株式会社について、その会社又は一定の資格を有する債権者若しくは株主の申立により、裁判所の監督のもとに更生手続を開始し、更生計画を作成して会社の資本構成を変更し、或いは新会社を設立する等の方法によつて債権者、株主等の利害を適当に調整しつ会社の債務を整理し、以て会社の事業の維持更生を図ることでありまして、その対象は差当り株式会社に限定いたしたのであります。次に説明の便宜のためこの法案の特長とも申すべき点を中心として簡単に説明いたしますと、大体次の通りであります。
第一点は、手続開始の原因を広く認めていることであります。即ち早期に更生を図ることができるようにするため、会社に破産の原因たる事実の生ずる虞がある場合のほか、会社がその事業の継続に著しい支障を来すことなしには弁済期にある債務を弁済することができないときも、会社から手続開始の申立をすることができることにしていることであります。
第二点は、強度の強制和議の性質を有することであります。即ち更生計画の成立を容易にするため、権利者のうち多数の者の同意があれば、一部の者が不同意であつても更生計画は成立し、又或る組の権利者について多数決が得られないときでも、その組の者に対して或る程度以上の権利保障の措置を講ずればその組の多数決を得ないで計画を成立させることができることにしていることであります。
第三点は、会社の資本構成の変更、新会社の設立等と債務の整理とを結合させていることであります。即ち、会社更生の方法として單に債務の減免等によつて整理をするだけでなく、新株を発行し又は新会社を設立し七、その株式を元の債権者に與えて債務を決済するというような方法で更生することができるように考えていることであります。
第四点は、担保権者を手続に参加させることであります。即ち担保権者の参加なしには更生計画は成立し難いことが多いので、その権利を保護しつ、手続に参加させることにしていることであります。
第五点は、株主を手続に参加させることであります。即ち、会社の資本構成の変更等と債務の整理とを結合させる結果計画が株主の権利に影響を及ぼすことが多いので、株主をも個々に手続に参加させることにしていることであります。
第六点は、債権者、担保権者及び株主の有するそれぞれの権利の性質に従つて計画の條件に公正公平な差等を設けなければならないこととする等各権利者の利害の調整を図つていることであります。即ち、異つた性質の権利を有する者が手続に参加するので、その有する権利の性質に従つて計画の條件に公正公平な差等を設けるべきものとし、株主は債権者より有利に、又債権者は担保権者より有利に取扱つてはならないこととし、この順序を破つた更生計画は仮に多数決で可決されても裁判所は認可しないというようにして、各権利者の利害の調整を図つていることであります。
第七点は、租税等の徴収手続との調整を図つていることであります。即ち租税その他の請求権を有する者も手続に参加させ、手続が開始すると一定の期間その滞納処分等を中止し、又徴収権者の同意があれば徴収の猶予等ができることにしていることであります。
第八点は、免責の制度をとつていることであります。即ち、更生後の会社の法律関係を明確にし、なお更生を容易ならしめるため、債権の届出をしない者はその権利を失い、又更生計画の認可決定があつたときは計画によつて認められた権利及びこの法律で認められた権利を除いて会社は総ての債務から免責されるものとしていることであります。
第九点は、更生計画の遂行の確保を図つていることであります。即ち、更生計画の確実迅速な実行を図るため、計画はできる限り手続係属中に遂行し、新会社設立の場合は管財人があれば管財人が発起人の職務をも行うことにしていることであります。
第十点は、裁判所の裁量権を広く認めていることであります。即ちこの手続は営業継続中の会社を対象としており、又関係人の利害が錯雑しているので、迅速公平な処置ができるように裁判所に広い裁量権を認めていることであります。
第十一点は、監督行政庁等の手続への関與を要請していることであります即ち更生計画は経済界の実情に適合したものでなければならないので、会社の監督行政庁、証券取引委員会その他の行政庁の関與を求めることになつていることであります。
以上でこの法案の大略の説明を終りますが、なお詳細の点は別に政府委員から説明いたさせます。
何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/2
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003・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) それでは次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/3
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004・高木松吉
○政府委員(高木松吉君) 只今議題になりました破産法及び和議法の一部を改正する法律案について提案の理由を説明いたします。
政府は一昨年来法制審議会に諮問して破産制度の改善につき調査を進めて参つたのでありますが、このほど重責制度の採用を中心として一応の成案を得ましたのでこの法案を提出した次第であります。
この法案における改正点の最も重なるものは破産における免責の制度の採用であります。我が現行法のもとにおきましては、破産者は破産手続終了後におきましても、破産手続において弁済されなかつた残余の債務につきなおその弁済の責に任することになつていますので、終生債務の重圧のもとに苦しんで悲惨な一生を過ごさなければならないことが多いのであります。このようなことは破産者にとつて不幸であるばかりでなく、社会的にみましてもすこぶる好ましくないことでありまして、破産者といえども特に責めるべき行為もなく、忠実に破産者としての義務を果しているような者に対しては、破産手続において弁済されなかつた残余の破産債権につきその責任を免除し、その者が速かに更生して社会のために活動することができるようにすることが必要であると存ずるものであります。従来におきましても、債権者が破産者に対して破産手続終了後残余の破産債権につきその責任を追及するということは甚だ稀であつたのでありますが、このような免責の制度がとられますと、破産者は免責を得るために誠実に行動する結果破産財団の確保ができて、却つて債権者のためにもなることが考えられるのであります。英米等では相当古くからこの制度が行われており、我が国でもかねてから識者によつてその採用が強く要望されていたのであります。
次にこの案の骨子を申しますと、免責は破産者の申立によつて行うものとし、この申立があると裁判所は期日を定めて破産者を審尋し、利害関係人に異議を述べる機会を與えます。裁判所は破産者に詐欺破産の罪にあたるべき行為があると認めるとき、破産者が虚僞の債権著名簿を裁判所に提出し又は裁判所に対しその財産状態につき虚偽の陳述をしたとき等一定の事由があるときは、免責不許可の決定をします。裁判所が免責許可の決定をし、その決定が確定しますと、破産者は破産手続による配当を除いて破産債権者に対する債務の全部についてその責を免れます。ただ例外として租税、破産者が悪意をもつて加えた不法行為に基く損害賠償、雇人の給料の一般の先取特権のある部分等の特殊の債権については免責されないことになつております。又免責の決定が確定したときは破産者は当然に復権し詐欺破産につき破産者に対する有罪の判決が確定したとき、又は免責が不正の方法によつて得られたときは、裁判所は免責取消の決定をすることができることになつております。なお免責制度の採用に伴い、従前原則として破産債権とならなかつた破産手続開始後の利息の請求権等を劣後的破産債権とし、強制和議によつて破産手続の終了した破産者も当然復権することとする等破産法の他の規定に必要な改正を加えることにいたしました。
次に破産法改正要点の第二は小破産の金額、破産犯罪に関する罰金の金額等の引上であります。現在破産法に規定されておりますこれらの金額はいずれも大正十一年に同法が制定されました当時から変更されていないのでありますが、今日におきましては、もはや実情に適しないものとなつておりますので、物価その他の経済事情の変動、他の法令の規定との均衡等を考慮してこれを五十倍から百倍までに引き上げようとするものであります。
破産法改正要点の第三は、他の法令の改廃に伴う法文の整理であります。即ち裁判所法の制定又は改正に伴い区裁判所が廃止され、裁判所書記及び執達吏の名称が変更される等他の法令の改廃があつたことに伴い破産法における関係法文を整理する必要がありますので、このための改正をしようとするものであります。
次に和議法の改正要点について申しますと、その第一は罰則における罰金額の増額であり、その第二は破産法の改正に伴う法文の整理でありますが、これらにつきましては、改めて説明をいたすまでもないと存じます。
以上がこの法案の提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/4
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005・左藤義詮
○左藤義詮君 ちよつとお伺いいたしますが、只今の政府の説明によりますと、審尋という新らしい言葉があつたのですが、これは何か前例があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/5
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006・野木新一
○政府委員(野木新一君) その審じんの「じん」は当用漢字にありませんので、止むを得ず制限漢字の中に尋問の尋が入つておりましたのでそれを採用したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/6
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007・左藤義詮
○左藤義詮君 もつとわかり易い漢字はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/7
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008・野木新一
○政府委員(野木新一君) 大分考えましたのですが、割合使い慣れていますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/8
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009・左藤義詮
○左藤義詮君 大体法律家は扱い慣れたのをいつまでも用いられますが、適当なものがあればこの法文でなくていいですが、できるだけそういう点は今後法文の民主化といいますか、わかり易くするようにして頂きたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/9
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010・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) お諮りいたしますが、詳細の説明をこれから聴くことにいたしましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/10
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011・一松定吉
○一松定吉君 どうですか、今日はこの辺で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/11
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012・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) それでは本日はこの程度で散会いたします。
次回は五月十四日月曜日午後一時より開会いたします。
午後零時一分散会
出席者は左の通り。
委員長 鈴木 安孝君
理事
伊藤 修君
委員
北村 一男君
左藤 義詮君
齋 武雄君
岡部 常君
一松 定吉君
政府委員
法務政務次官 高木 松吉君
法務府法制意見
第四局長 野木 新一君
事務局側
常任委員会專門
員 長谷川 宏君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X01219510511/12
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