1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月三十一日(木曜日)
午後一時二十八分開会
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本日の会議に付した事件
○司法書士法の一部を改正する法律案
(衆議院提出)
○日刊新聞紙の発行を目的とする株式
会社及び有限会社の株式及び持分の
譲渡の制限等に関する法律案(衆議
院提出)
○住宅登録法案(衆議院提出)
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001・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開きます。
先ず司法書士法の一部を改正する法律案を議題に供します。本案について参考人各位から御意見を伺いたいと思いまして、本日おいでを願つたのでありまいすが、この改正案につきまして参考人各位の御腹蔵のない御意見を拝聴いたしまして、それを参考として本案を審議したいと思うものでありますから、大体御発言はお一人十五分くらいのところでお願いいたしたいと思います。東京土地家屋調査士会副会長の大友萬君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/1
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002・大友万
○参考人(大友万君) 私が東京土地家屋調査士会副会長の大友萬であります。この司法書士法一部改正法律案、この内事につきましては全般的ではございませんが、第十九条第一項中「又は正当の業務に附随して行う場合」を削るとこうありますが、これに対しては結論から申上げますが、反対であります。理由を申上げます。この法律の改正によりまして、従来昨年の土地家屋調査士法が制定されまして以来、土地家屋調査士が行なつて来ました業務におきまして、土地台帳、家屋台帳に基く申告を、他人の依頼によつて行う業務であります、これが十九条中の正当な業務とみなされているのであります。これを削除されました場合、この申告に附随しておりますところの登記関係の業務が全然できなくなるということになるのであります。土地家屋調査士は、土地家屋調査士そのものの利益をモツトーとして行なつている業務でございません。第一に国民大衆の利益のために常に行動をとつておるものであります。法律の改正が単なる司法書士のかたがたの利益のために行われるものとするならば、そこに国民に対しても大きな利益を与える点がなければならんと考えます。この改正によりまして、どういう結果が起りますかと申上げますと、土地家屋調査士法が制定されない前におきまして、土地台帳を家屋台帳法に基いて申告されるところのものが非常に不備であります。従いまして関係官庁におきましてもその取扱が容易でなく、又一般の国民大衆におきましても非常に不安な申告、従いまして利益のない申告をやつておつたという事実がたくさんありましたので、この土地家屋調査士法が制定されまして初めて国民大衆はこの手続については安心されたことと思います。私どもは常に法の精神を活かしなお且つ向上のために尽力しているものであります。いささかも国民の利益或いは進歩性のないものを改正するということは全く反対であります。いわゆるその法律そのものを骨なしにするという結果を考えなければならぬと思います。今日まで前回の去る二十五、六日に国会を通過いたしました、建築代理士会全国連合会からので、土地家屋調査士法の第三条の一部が改正されております。これなども全く詳しく申上げますれば時間がかかりますので申上げませんが、土地家屋調査士法には非常な大きな問題を投げているわけであります。又々ここにこれを改正するということになりますと、法律そのものが何である、必要がないというように考えられることになるのであります。かかるがゆえに第十九条の改正におきましては反対するのであります。簡単に申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/2
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003・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 参考人のかたの御意見に対して質疑がありましたならば、全部の参考人のかたのお話が終りましてから質疑をいたすことにいたします。
次に日本計理士会常任理事の住田金作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/3
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004・住田金作
○参考人(住田金作君) 日本計理士会の常任理事の住田金作であります。私は本日本計理士会の常任理事としてお呼び出しを受けておりまするが、誠に勝手がましくは思いまするが、本法には特に我々計理税務畑を一丸としておりますので、はばかりながら公認会計士、公認会計士補、並びに税務代理士この四者を大体代表さして頂いたものとして発表さして頂きたいと思います。本日の会合を催されたことを私は全会員に代りまして衷心から感謝する次第であります。
この議案につきましては我々といたしましては決して他の職域を害そうという考えは毛頭持つておりませんが故に、ただこの法案の中の先ほどもありました十九条の一項の一部分を抹消、いわゆる司法書士以外のものは登記事務ができないというこの点につきまして絶対に反対をさして頂きたいと思うのであります。その理由といたしましては非常にお忙がしいところを誠に駄弁を弄することを非常に恐縮に存じまするが、この改正の要点といたしましてここに出ております理由を考えてみますというと、昨年の七月にこの司法書士法が改正になりまして実施僅かに一年をまだ経過いたしません。その改正の必要が奈辺にありやということにつきましては、私は私の職域を通じてばかりでなく国民の一人として深く疑う次第であります。何が故に昨年立法されたものが今年それをひつくりかえされるかということにつきましては絶対に我々は承服することができない、合点が行かない点であります。テンポの早い時代といいましても、いかに何ぞいたしましても十カ月、いわゆる一年に足らずして法律をひつくりかえされるということにつきましては、誠に我々といたしましては寒心にたえないのであります。その結果我々の職域に重大なる影響を及ぼすが故に一層この感を深うする次第であります。一年の経過といえども結構なんだという御意見があるかも知れませんが、然らば改正の理由がどこに出て来たか、一年の経過でいわゆる法律実施の経果どういうところに不都合が起つたか、司法書士のお方に対していかなるマイナスの点が起つたかということを明示して頂いたならば、我々はこれを十分検討さして頂きたいと思うのでありますが、不幸にして今日までその点について何らの我々は了解を得るに至りません。それが第一の反対の理由であります。
それからこの改正案の第二といたしまして、衆議院の法務委員会で司法書士の権限は現行法律以上に拡大するものではないということをここに明記されておりますが、現在司法書士の方以外でもできるものが、これを抹消したときに果してそれが権限拡大にあらずして何ぞやと私は言いたいのであります。自分が今行なつている司法書士、それが法律から外されてできなくなつたときにおいて、司法書士のお方々にマイナスにはならんと思う、プラスになると思う。プラスというのは、私の言わんとする権限拡大にあらずして何ぞやと申上げたいのであります。そういたしますと、いわゆる立法の趣旨というものが、どうも我々といたしましては重ねて納得のつかない点であります。決して我々は他の職域を害するという考えは、毛頭そんな卑劣な考えは持つておりませんが、よきにつれ悪しきにつれ二十数年来この職域だけは守つて行きたいと思うのであります。併し我々はこれをやらして頂きたいというのが我々の念願であります。で、それに附随いたしまして、この法律の立法されました昨年当時の事情を暫らく御清聴を煩したいと思うのでありますが、昨年春この司法書士法が初めて代理士法と合併いたしまして司法書士法にいたしまするときに、司法省の民事局に我々業者が呼ばれまして、当初から私はその会の代表者の一人といたしまして末席を汚させて頂いておりましたが、その当時に民事局長室におきましてしばしば司法書士のお方と御議論をし、意見も交換したのであります。併し後に衆議院の法務委員会に参りまして、法務委員会でも再三御審議になつたように思つております。その際我我団体は二回に亘りまして法務委員会で我々の意見を聞いて頂くことができたのであります。その結果におきまして、ときの委員の方々の随分つこんだ御議論もありましたが、とにかく計理士法ができて二十有余年になる、その間よかつたか悪かつたかは知らんけれども、とにかく計理士の仕事の一部として登記をやつておつたのは、これは厳然たる事実であるが故に、今これを抹殺するということは却つて利害関係があるからして、おやかましい委員の方がいらつしやいましたがとうとういわゆる正当なる業務に附随して行うものはこの限りにあらずという取締規定の免除を作つて頂いたのであります。当時の委員各位は御健在であります。果して今日これを抹殺されるかどうか、当時の委員の御関心ありや否や関知する余裕を持ちませんが、私は少くとも立法に当られました委員各位はその立法の当初を考えて頂きましてここで一年にしてひつくり返されるということはどうも我々としては合点がいかない。そういう事情がありますが、それから今年の改正の問題に入つてからであります。衆議院の法務委員会のほうに再三申しまして、小委員長にも委員長にも、ここに御臨席になつておりまする専門員のお方にも、よく我々の意見を申述べさせて頂いたのでありますが、結局なんら得るところなくして終りました。殊に小委員長は我々がこの法案を審議する前に必ずお前なんかの意見を聞く機会を作つてやると公言されたのです。それが今日実行されないで衆議院をパスして参議院へ廻つたということを聞きまして、私は当時の責任者としまして誠に痛憤に堪えない。我々会員は現在におきまして約七千五百名と踏んで頂いたら大差はないと思つております。公認会計士は僅かに三百八十有余名、書士は千八十余者、それから計理士で再登録いたした者が四千百名である。それで税務代理士は登録は五千八十三名と今日なつておりますが、大体五十五、六百と踏んで頂いたら間違いないと思いますので、その間にはこれらの共通の者もありまするが故に、大体我々の計理士の畑におります者は六千五百、最高七千五百と踏んで頂いたら大体間違いないと想うのであります。我々業者といたしましてはよくその職域は守つておりまするが、多年に亘る我々の仕事の関係上、この登記事務が附随的に起つて来ているのは厳然たる事案なのでございます。それは昨年この司法書士法立法当時における司法書士連合会が、いわゆる法律の改正を叫んだときにおけるパンフレツトを見て頂けるならば、いかに我々が悪党呼ばわりをされているかということを私は感ずるのであります。同時に半面を解釈いたしまして、いわゆる計理士が司法書士の職域を害すということはおかしいかも存じませんが、その職域の一部をやつてるということがその半面から私は解釈がつくと思うのであります。いずれにいたしましても、計理士の本業ではないかも知れませんが、とにかく附随業務といたしまして二十有余年やつて来ていることは厳然たる事実でありますが故に、これを是非保持して行きたいのが我々会員の念願であります。昨年この立法を見まして安堵いたしまして業務の遂行ができたものを、ここにしてひつくり返されてしまつて何が故に会員各位に対して顔向けできるかということを日夜懊悩している次第なのであります。どうか立法の善悪は我々はあえてここでは申しませんが、余りに変更のテンポが早過ぎる、或いは又業者の厳然たる事実をどうしても御認識願つて、片一方はマイナスになれば片一方はプラスになる、小を殺して大を助けることもよろしいと思いますが、私の知る範囲におきましては、司法書士の同数以上の者が税務畑にいるということを申上げても間違いないと思います。
どうか委員長初め各位の方におかれましてはこの事実をよろしく御認識願いまして、我々が安心いたしまして業務の遂行ができまするように格段の御同情を願つてやまない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/4
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005・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 次に日本司法書士連合会理事長佐藤半蔵君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/5
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006・佐藤半蔵
○参考人(佐藤半蔵君) 私は日本司法書士連合会理事長佐藤半蔵でございます。本日は我々司法書士法の一部改正につきまして、諸先生の方の御努力をお願い頂けますことにつきまして厚く御礼を申上げます。
今回司法書士法の一部を改正する法律案をお願いいたしました根本の目的は、昨年七月一日に実施されました現行司法書士法の一部について、他の法律即ち土地家屋調査士法或いは行政書士法その他類似的法律の、而も進歩した法律にならつて同類的職業法律の間に差別待遇をしない、規定の調整を図るという立場から、今回の一部改正を取上げて頂いたのであります。昨年七月実施してまだ間もございませんが、私どものこの司法書士法が誠に他の法律から比較いたしまして非常に差別的待遇を受けているという点が主眼となつているのであります。今回の参考人の御足労をお願いいたしましたことにつきまして、土地家屋調査士会の御意見並びに日本計理士会の御意見が、この十九条の但書を抹消することについて、職域を奪われるという御意見もございますが、先ず土地家屋調査士と司法書士との関係を考えますと、土地家屋調査士は国家財政の基礎であるところの、土地及び家屋台帳の正確を期するというのが主眼の使命であろうと存じまして、併し土地台帳法或いは家屋台帳法に伴つてこの土地家屋調査士法というものができ、而して更に不動産登記法の一部が改正されまして、土地家屋の調査、測量並びにこれに関する申告手続というのが、調査士の職業になつておりまして、国民の便益のために曾つて司法書士が取扱つて参りました不動産登記事務の一部を調査士がやれることになつております。それは不動産登記法の第百七条の二にありますが、即ち「家屋台帳法第十四条又ハ第十五条ノ規定二依ル家屋ノ建築ノ申告ヲ為ス場合ニ於テ、別二登録税」を払えば、これが所有権の登記の申請があつたものとみなすという規定がありまして、直ちに所有権保存の登記ができる、こういうことになつております。又同法九十二条の二に「家屋台帳法第十四条若クハ、筑十五条ノ規定二依ル附属家屋ノ建築、家屋ノ増築若クハ滅失ノ申告、同法第十六条ノ規定二依ル家屋ノ所在、種類若クハ構造ノ変更若クハ床面積ノ減少ノ申告又ハ同法第十七条ノ規定二依ル家屋ノ合併若クハ分割ニ関スル申告ヲ為ス場合ニ於テ」別に登録税を払えば、これが構造の変更、又は建物の分合の登記の申請あるものとみなすということによつて、登記の事務まで及ぶようになつております。先ほど申上げましたように、土地家屋調査士の本来の業務はいわゆる土地又は家屋に対する調査、測量というものがその主たる業務でありまするが、ただ公共の福祉の便益のためにこういう面の登記関係まで規定されているのでありまして、これは司法書士ができなくなつた不動産に関する一つの、私どもの従来やつて来た職域ではできなくなつた部分であります。で、司法書士法の十九条但書をとりますことによつて、調査士のお仕事に影響があるかと申しますと、調査士関係におきましては、今申上げました部分については当然調査士がやれるのでありまして、その他について附随的業務としてやる部分はなかろうと存じます。従つてこの「正当の業務」云々をとりますことについては、何ら調査士の職域には影響はない、かように存ずる次第でございます。
なお計理士会の御意見を只今拝聴いたしましたが、やはり十九条の但書抹消について反対の御意見のようでございます。計理士の職業は会計監査並びにこれに関する立案というように考えられますが、元来計理士と司法書士との間の職域の接触面は、主として商業登記に関する問題でございまして、従来におきましては、この司法書士と計理士との職域については絶えず争いが起つておつたのでございます。併し商業登記は原則として計理士はできない、かように私どもは考えております。但し本当の、本来の業務の附随として派生的になされて商業登記がやられる場合には、これは計理士だけにとどまらず、ほかの者でも同様に何人でもできるはずであります。但し弁護士法の関係は別といたしまして、司法書士の職業を計理士の本来の業務に基いた本業として司法書士業務のみやられる部面があるように考えられます。これは従来やられたといたしましても、違法な、司法書士法違反の行為であると考えられます。これに対して既得権とか生活権の問題ということは考慮する余地はないと考えられます。かようにいたしますと、計理士のほうの業務に対して、この十九条を削除いたしますことによつて何ら影響がない、本来の正常の業務から派生するものについてはもとよりこれを排除するものではなかろうと存じます。従つてこの正当の業務について、計理士会のほうで御心配になるような問題はこれをとりましても何ら関係はない、かように存じている次第でございます。
なお後の御参考人のお方の御意見を拝聴した後に又必要でございましたら述べさして頂こうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/6
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007・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 東京法務局長鈴木信次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/7
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008・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 私は東京法務局長の鈴木信次郎であります。
今回の司法書士法一部改正法律案を拝見いたしますと、その改正の要点は三点あると考えられます。即ち第一は先ほど来参考人のかたからお述べになりました第十九条第一項中「又は正当の業務に附随して行う場合」という文字を削除する。第二は司法書士の報酬につきまして、司法書士会でこれに関する規定を定めること、及びこれに附随する規定。第三点は一番末尾にございます、第二十条中「又は第七条第二項」を削る、という報酬についての罰則の削除、この三点になると考えられます。
第一の点につきましては、私は正当の業務に附随して行う場合はよろしいということはむしろ当然でありまして、これを削除しても解釈上同様の結果になる、むしろこの条文を残して事の明白を期する方がよいと考えるわけであります。
第二の司法書士の報酬に関する規定でありますが、この法案の十五条の三によりますと、司法書士会の会員でない者に対してもその効果が及ぶ、この報酬規定に従わなければならないということになつておりますが、会できめた規則が会員外の者を拘束するということは極めて非民主的であり、終戦後の法令においては他に類例のないものではないかと考えます。次にこの点につきまして、司法書士会でこの報酬に関する規定を作成するということになりますと、実際問題といたしまして、どうしても書士の方々の利益というものはその際十分に考えられますが、一般国民の利益はとかく度外視される危険が十分にある。現在一般民衆の間に、次の条項でやや具体的に申しまする予定にいたしておりますが、書士の実際に徴している報酬が高きに失するという声が相当あるという実情に鑑みまして、この危険が決して杞憂ではないと考えるわけであります。以上の理由によりまして、むしろ現行法のように報酬に関する規定は国の法令できめるのが簡明であり、若し現在の規定が実情に副わない、安きに失するというのでありましたならば、法務府令によつてこれを改訂するという方法によつて解決するのがいいのではないかと考えます。現在まで司法書士、或いは司法書士会の方々から私どもの方に対して、この点につきまして、現在の手数料規則による報酬は安過ぎるから値上げをしてもらいたいということは本日までは来ておりません。
次に第三点の、この点についての罰則の削除という点についてでありますが、この点に入ります前に、現在司法書士が相当規定の料金を超えた料金を徴しているという声が一般にありまして、或いは巷間の風評として、或いは新聞、ラジオに対する投書、或いは直接私どもの方に対する投書等に現われているのでありますが、その内容が大部分抽象的で実態を正確に認めるのに非常に困難でありまして、私どもといたしまして、これに基いて或いは刑事上の告発手続をとり、又行政上の懲戒手続をとるというのに非常に困難を感じている次第であります。ただ最近現われました二、三の実例を、いささか冗長になりまして恐縮ですが述べさして頂きたいと思います。本年五月十六日第一東京弁護士会所属弁護士の志方篤さんから私に対しまして次のような書面の提出がありました。その一部を読んでみますと、「近時司法書士中不当なる報酬を請求する者多く、一般市民の非難の的となつていることは、貴官すでに御賢察のことと思います。然るに一般市民はこれを非難しながらも、司法書士の手数料に関し、法務総裁の定めのあることを知る者少く、従つて多くの場合泣寝入りとなつているのが実情であります。司法書士は右の点に関する一般市民の無知識につけ込み、益々不当なる手数料を請求し、これをこのまま放置するときは、一般市民の迷惑この上もないことと考えます。」という前文がありまして以下具体的事実を挙げてあるわけでありますが、本日ここに御列席のようですから以下の点は私からは御説明いたしますのは省略さして頂きたいと思います。
次に本年五月二十四日、これは無名の投書でありますが、その中に、東京法務局府中出張所構内の或る書士は、住宅の保存登記につきまして依頼をしても、一週間たつても十日たつても登記申請書を書いてくれない、人の話によると、何かおつかいものを持つて行くと早くやつてくれる、又或る人は不当な手数料を取られたとか、こんな書士はなくしてほしい云々、という投書が参つております。
次に本年四月三十日受付の、社会大衆党という名義で出されました私あての投書に、土地、家屋、その他各種の登録を登記所でやつているが、人員の不足もさることながらそのうちに蟠居する代書の代書料は実に高きに過ぎる、例えば十坪の売買登記でも実に三、四千円も入費としてとられる。調査するに、代書一人の一日平均収入は数千円となり、実に横暴云々と記載してございます。
次に表われました実例といたしまして、従来東京地方裁判所方面にいる或る書士が、十一件の申請書類につきまして正規の報酬が七百円ということになつておりますのに実際は二千五百円も徴収している。これは具体的に事実が明白となりましたので、去る五月二十三日付で私から東京地方検察庁の検事正あてに告発の手続をいたしております。
更に少し古くなりますが昨年の四月七日の私のメモを繰つて見ましたところが、特別手数料という名前で書状を書いて二千円乃至三千円徴収している者がある、これについては弁護士会でも問題にしているというメモの記載がありました。誰から聞きましたのか遺憾ながら現在失念いたしておりますが、内容から推測いたしますと、恐らく裁判所関係のかたからの御注意であつたと推測いたしております。
なお一般のうわさ或いは投書と申しますか、昨年の十二月の終頃の夕刊朝日新聞の投書欄に、登記所構内の司法書士から簡単な書類についても多額の報酬をとられたという趣旨のものがあつたと記憶しております。
更に現在司法書士の方々は事件簿を備えまして、事件簿に嘱託を受けた順序に従つて受託番号、年月日、件名、嘱託人の氏名、住所、作成した書類の枚数、報酬の額を記載しなければならないことになつておりますが、税務署が課税いたします場合にこの事件簿の記載は採用しないで、この事件簿に記載した報酬の合計額よりもなお相当多額の収入あるものと認定課税しているということも聞いております。
なお最後に昨年度の東京法務局管内の司法書士の皆様の収入、これが先般届け出でられたのでありますが、正規の収入は全部を平均いたしますと一人九万八千九百二十八円、最高は四十七万五千八百九十五円、最低が三千五百九十円、こういう数字が出ておりますが、実際の収入はこれより相当上廻るのではないかという点も想像されるのでありまして、その根拠といたしまして、私の勤めております東京法務局の職員中、多年登記事務に従事した練達の士が退職して書士になりたいという、特に相当の年齢に達しまして、子弟の教育に費用がかかるという年齢に達した者で、退職して書士になりたいという希望を持つ者が相当ありまして、その引きとめに現在非常に苦労しているという実情から逆に推測いたしますと、こういつたことも全然事実無根ではないのではないかというふうな気がするのであります。
以上抽象的なものにつきましてはその真偽がどうかという点については調査の方法がないので具体的に調査いたしておりませんが、一般に相当の非難がある現在、若しこの罰則の規定を削除されますと、今後こういつた事案が起りました場合にその調査証拠の収集という面におきまして、第三者に対して強制力を使うことができないという点でますます困難になる、どうしてもやはり罰則規定は残して刑事手続を進めることができるというふうにして置くことが以上の実情に鑑みまして必要であると考える次第であります。以上要するに今回の改正案の要点三点ともその改正の必要がないと、こう考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/8
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009・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 第一東京弁護士会所属弁護士志方篤君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/9
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010・志方篤
○参考人(志方篤君) 私第一東京弁護士会所属弁護士の志方と申します。私は昨日急にお呼出しの電話があつて参つた次第でありまして、勿論弁護士会を代表して来たものでもありませんし、弁護士会からも意見書が出ておりまするから、弁護士会の立場はその意見書に尽つきていると考えておる次第であります。従つて弁護士会の立場はその意見書によつて御了承願いたいと思います。私はむしろ一般大衆の一人として、司法書士に対する嘱託人の一人としての意見を述べたいと考える次第であります。
一般大衆といたしましてこの司法書士法の改正案のうち、十九条の問題とかその他ほかの職域団体との利害関係、それらは全くこれは問題でないのでありまして、一般大衆としてこの司法書士法の改正案に対して一番関心を持つ点は報酬の点、従つて又その正当な報酬を超過した場合の罰則の削除の問題、これだけに限られる次第であります。従つて私は問題をこの点に限定したいと思います。司法書士の仕事はこれは嘱託人の嘱託を受けて代つて書類を作成するということになつております。これは裁判所なり検察庁なり、或いは法務局に出す書類でありますが、従つて一般の大衆は何も司法書士に嘱託しないでも自分で書いて出せばいいのでありまするから、必ずしも司法書士の手を煩わすことは必要でないということは一応言い得るのであります。併しこれは理窟の上の問題でありまして実際にやつてみますとなかなか煩雑なものでありまして、到底一般大衆がみずからそういう書類を作るということは到底できないのでありまして、必ず司法書士に嘱託をするという関係になります。従つてその報酬の如何ということは一般大衆にとつて非常に関心の深いものとなります。これは殊に昔の名前でいえば登記所、今でいえば法務局、地方法務局、或いはその出張所、ここに出す登記書類というものは実に煩雑なものでありまして、実に細かいことを言う、恐らく全国の官庁のうちで法務局ぐらいうるさいことを言う所はないと思います。これはお隣に法務局長を置いて甚だ失礼ですけれども実情はそうなんであります。実に法律の建前もそうなんでしようけれども、それにしてももつとやかましいことを言わないでも済むんじやないかと我々が考える点は幾らもあります。要するに実情としましては、殊に登記所に出す書類などというものは一般の大衆が自分で書くということはできない。どうしても登記所に出す場合は司法書士の手を煩わす。ところが普通一般の人が登記所の窓口へ書類を持つて参りますと非常にやかましいことを言われてどうしていいかわからないでまごまごしておりますと、代書に頼みなさい、こう言うわけであります。代書に頼んでみると、正規の報酬以外にうんとぼられる。そうしますと一般大衆は何かそこに職員と司法書士との間に悪因縁でもあるんじやないかという感じを非常に受ける場合が多い。現在この司法書士の報酬については法務総裁の定めている手数料規則がありますが、これは一般の大衆は殆んどそういう規則があるということさえ知らない場合が多いのであります。それからこれは日本人の悪い癖でしようけれども、見栄といいますか、およそ人にものを頼む場合に先ず手数料幾らと先に聞かないでとにかく頼んで置いてあとになつて請求を受けてびつくりする、そういうのが、実情でありますが、そんなことで一般の人たちも先ず報酬のことを聞かないで頼む、そうしてあとになつて請求をされる、而もそれが法務総裁の定めてある手数料規則に基く計算からいえば数倍或いは十倍以上になつていても、一般大衆はそれを泣寝入りしてしまうというのが実情であります。これは私たちが法律事務をとつておりますときに、登記所なんかへ書類を出ずその一部の書類を司法書士に作らせるという場合に、私の所の事務員に司法書士の報酬はこうなつておるんだからそれ以上に取られてはいかんぞと言つて出しても、やはり取られて来る、それほどの実情にある次第であります。この間私は大森の出張所に登記書類を出しましたが、この登記書類は殆んど私の方で書きまして、ただこの保証書というものの作成だけを依頼したわけですこの保証書などは現在の法務総裁の手数料規則からいえば百円だろうと思いますがそれを結局千円取られております。非常に極端な例でありますが私は今までそういう目にたびたび会つて非常に憤慨しておりましたので、早速その証拠書類をつけて東京法務局長に対してその当該司法書士に対する懲戒及び告発の請求を出しました。そういうふうな実情でありますが、司法書士の規則、このサービス料というのは高きに失すると思います。これは現在法務総裁の規則があつて而もそれに対して罰則までついていてもこういうことをやつている実情でありまするから、今度の改正案のようにこれを自主的な会則に任せるということであつたら如何なる結果が生ずるか、私は非常に恐ろしいものであると考えております。司法書士の仕事は甚だこれは経費のいらない仕事でありまして、場所も大体官庁の方から提供され、そこにただ机を置きまして資本といえば紙代くらいのものであります。紙と鉄筆とカーボンさえあればできる仕事であります。それに対して非常な暴利を貧つているというのが実情であります。これはやはり一つの司法書士会というふうな団体があつてそうしてこの仕事が独占的な色彩を帯びて来ている弊害であると考える次第であります。従つてその司法書士会の自主的統制に任せる今度の改正案というものについては、私は国民大衆の一人として絶対反対を表明いたしたいと思います。考えようによつては、司法書士会の自主的統制に任せるという考え方はいわゆる法律の民主化、あらゆるものを民主的にして行くという点から来ているのではないかと私は臆測しておりますが、終戦後の法律というものは非常に現在の日本の実情を無視して法律が先走つているということが非常に多いのであります。これは実情に即しないで先走つている。例えば納税の申告制度などというものを考えてみますとこれは明らかでありまして、国民大衆の納税の義務に対する意識がまだ十分でないにかかわらず申告制度をとるということによりまして現在納税申告が甚だ不振な状態にある。従つてその不振な状態が源泉課税をとられる方にかかつて行くと、非常な現在不公平な状態におかれております。これもやはり現在の実情を無視した法律の時代先行性の現われであると思います。この法律なども私は現在の司法書士の素質からいいましては早過ぎると思います。いずれこういうふうな法律にならなければならんと考えますが現在の実情からいつてこれは私は早いと思うのであります。もつと司法書士諸君がお互いに素質というものの向上に努力すべきことが先決問題であると思つております。これは司法書士会の会長を前において申上げるのは甚だ失礼でありますが、実情であります。これはまだまだ司法書士会の自主的統制に任せるのは早過ぎる。もつとその前に司法書士の素質を向上し、現在法務総裁の手数料規則があるにかかわらずこれを無視し、而も罰則がついておるにかかわらずどんどんそういう規則に違反するというふうな実情にある場合に、自主的統制に任せたならばどんな結果になるか、私は非常に恐ろしいと考えております。こういう点につきまして、私は特に国民一般の利益を代表してこの報酬問題及びその罰則の削除の問題について絶対反対を表明する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/10
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011・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 只今までの参考人各位に対して御質疑がございましたならば御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/11
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012・佐藤半蔵
○参考人(佐藤半蔵君) ちよつと追加さして頂きたいと思います。只今法務局長さん並びに第一弁護士会の志方さんの方からお話がございましたのですが、主として報酬の問題と罰則の問題についての御意見のようでありましたが、私どもは他の法律並に調整してもらうというのと、それから会の自主性を認めてもらうということからこの改正を要望いたしましたのでありますが、報酬の額を会員外に及ぼすということが、会のきめた報酬だけではいけないという点にも疑問がありまして、衆議院の方で結局最初の案を変更されまして法務総裁が認可するという規定に変つたのであります。
それから報酬を高く取つているというお話がございましたがこれはいろいろ私どもも調査を進めております。ただ報酬の中に、一般民衆が、手数料のほかに登録税とか或いは郵便切手とかいうものを貼付する場合に、それを全部司法書士から取られたもののごとく解釈されて、これだけ取られたというように考え違いされている面が多々ありますのと、更に司法書士外のいわゆる非司法書士がそういう仕事をやつて無法に取つているという事実がございます。これはいろいろ私どもの方でも今資料を集めておりますが、単に司法書士のみでなくてほかの面にそういう悪い面があるので、それが私どもの業者がやつているということに一般に見られているという点も多々ございますので、その点もこの際申上げておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/12
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013・伊藤修
○伊藤修君 今のに関連しまして鈴木さんにお尋ねしますが、先ほどあなたは数字をお挙げになりましたですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/13
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014・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) どの点でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/14
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015・伊藤修
○伊藤修君 司法書士の収入の点ですね。三つ挙げられましたね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/15
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016・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 昨年度の東京法務局管内におられます司法書士の方の一年間の収入の平均が九万八千九百二十八円、最高が四十七万五千八百九十五円、それから最低が三千五百九十円です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/16
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017・伊藤修
○伊藤修君 これは年間ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/17
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018・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 年間です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/18
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019・伊藤修
○伊藤修君 この収入の中には今佐藤さんがおつしやつたようないわゆる実費というものは含んでいないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/19
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020・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) いないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/20
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021・伊藤修
○伊藤修君 控除された金額でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/21
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022・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうです。現在の規則では手数料規則となつておりますが法案のいわゆる報酬でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/22
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023・住田金作
○参考人(住田金作君) 先ほど司法書士連合会の会長から計理士の本来の業務については何ら不安はないというお話がありましたがこれはもう当然のことでありますので、我々の言わんと欲するところは附随して行う業務というこの点であります。附随して行うのと本来の業務とどういうふうにお前区分するかとおつしやいますと、ちよつと私も直ちに即答は申上げかねるのでございますが、要は現在の法律を改正されまして、いわゆる今の十九条のうち一部削除によりまして、我々が当然なし得たことがなし得られなくなるということに対する不安を持つている次第なのであります。若し不安がないものならばそのままに置いておいていいじやないか、いわゆるこれを削らんというその半面の解釈といいますか、底意といいまするか、そこには結局我々を、シヤツト・アウトしようという考え以外には何ものもないだろうと思うのであります。若しそうでなかつたならば今更こんな事項についてあえてこういうことをする必要はないのじやないかというような感じがいたしております。そういう点について誤解というとあれでありまするが、我々の意見を重ねて表明さして頂いた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/23
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024・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) ほかに御質疑ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/24
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025・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 法務局長にちよつとお聞きしたいのでございますけれども、今おつしやつた最高が四十七万五千円でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/25
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026・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/26
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027・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それから最低は三千五百九十円でございますね。これはどういうところでこれだけの差があるのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/27
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028・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) それは私どもの管内には伊豆七島を含みますから、伊豆七島の登記所で或いは登記所の構内で事務をとつておられます司法書士の方につきまして、まあああいう島でございますから事件が非常に少い、従つてこういう数字が出たものであろうと考えられます。最高はこれは東京都内でありまして相当やはり事件の数が多い、従つてこういう数字が出た、こう考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/28
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029・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 そうするとこれは場所的にいい場所ならたくさんとれるというふうに考えてよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/29
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030・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 場所、それからその方のやはり実際の仕事のやり工合、又その土地で多年この仕事に従事しておられる、或いは開業早々であつたといつた点もこういう結果に影響するものと考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/30
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031・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 その点はわかりました。それじや場所的とそれからその質とによるのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/31
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032・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/32
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033・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 これは法務局の方で場所を指定なさるというわけではないのでございますか。余り素人らしいことを聞きますけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/33
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034・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 場所は現行法規によりますと法務局管内では自由であります。ただ一部私どもの法務局の構内で仕事をしたいという方につきましては、実情を聞きまして余裕があれば、又その方が適任者であれば構内で仕事をするように、国有財産であるところの法務局の庁舎の一部につきまして使用契約を結ぶ、こういうふうにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/34
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035・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 それで平均九万八千円くらいで十万円にはならないのでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/35
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036・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうです。これは勿論規定による正規の報酬でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/36
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037・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 わかりました。
住田さんにお伺いしたいのでございますが、さつきあなたのお話の中に本業ではないかというお言葉がございましたが、本業とそれから副業という言葉はおかしうございますけれども、本業のほうは大変失礼な伺い方でございますが、平均どのくらいということはおわかりにならないのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/37
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038・住田金作
○参考人(住田金作君) 本業とそれから附随して行う業務ということにつきましては、実は我々自体もなかなかその判断に迷うので、ここからここまでがという線がなかなか引きずらいと思つておりますが、只今の問題の司法書士、これは主として商業登記でありまするが、この仕事の質と申しまするか、仕事の範囲といいまするか、我々業者として大体先ず東京なんかで平均いたしまして、計理士の二割乃至三割くらいはこの登記事務であるのではないかと思つております。それから地方へ参りますともうこれは行政書士も司法書士もごつちやでありまして、仕事の八割くらいはこの登記事務ではないかというのが計理士会の調査の結果であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/38
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039・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 重ねて伺います。そうすると本業より附随した仕事の方が収入が多いということになるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/39
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040・住田金作
○参考人(住田金作君) 収入という点に関連して頂きませんで仕事の量という点について御判断をお願いしたいと思つております。一つ大きい本来の仕事がありますのと、登記事務は大体我我にいたしましてもサービスというような観点からいたしておりますので、その登記をしたからこれが幾らというようなふうには大体やつていないと思います。それはほかの顧問或いは嘱託といつう方で大体定額収入を得ているのが普通と申上げて憚らんと思つております。地方に参りますと只今申しましたように仕事の量が非常にごつちやになつておりますので、自然やはりそういう方面の収入が附随して起ると申しますか、或いは逆にいえば本業になるかも知れませんが、そちらの方の収入が多いのではないかと考えております。何しろ非常に九州から北海道の果までおりますので、この問題が早くわかつておりますれば多少そういうことにつきまして数字を以て御説明する資料等も集まつたかも知れないのでありますが、その点が非常に不備で申訳ないと思つておりますが、大体そんな辺で御賢察願いたいと思います。大体の仕事は我々は顧問或いは嘱託として関係している先の主として商業登記の仕事をするというふうに申上げて差支えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/40
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041・伊藤修
○伊藤修君 鈴木君にお尋ねいたしますが、今の数字はどういう資料に基かれたのですか、根拠だけ伺えばいいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/41
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042・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) 昨年度の収入につきまして、各司法書士個人々々から私の方に届出をして頂きましてそれを集計したものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/42
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043・伊藤修
○伊藤修君 そうすると、結局法務総裁の定めた料金をたてにして計算したものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/43
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044・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/44
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045・伊藤修
○伊藤修君 従つてそれは内輪に計算されているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/45
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046・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そこはわかりませんが実際の収入はこれを超えるのではないかと想像しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/46
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047・伊藤修
○伊藤修君 聞くところによると、東京あたりの例えば日本橋あたりは登記所の司法書士の人は月収十万円とか十五万円くらいあるというようなうわさを聞きますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/47
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048・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) その点は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/48
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049・伊藤修
○伊藤修君 年収ではなくつて月収です。そういううわさを聞かれますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/49
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050・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) うわさはあるようですが、うわさですから私何ともここでは申上げることができないのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/50
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051・伊藤修
○伊藤修君 従つてあなたの方のいわゆる役所に勤めていらしつやる方が、そのほうに流れ出るという傾向があるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/51
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052・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そういうことだろうと思いますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/52
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053・伊藤修
○伊藤修君 ついこの間始められた人は家を新築されたとか聞いておりますが、そうではないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/53
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054・鈴木信次郎
○参考人(鈴木信次郎君) そうだろうと推察いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/54
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055・岡部常
○岡部常君 佐藤さんにちよつとお伺いしたいんでございますが、この司法書士会の会員ならざる方というのは大体どのくらいでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/55
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056・佐藤半蔵
○参考人(佐藤半蔵君) 昨年の七月改正になりましたが旧司法書士法時代には強制会でございました、会部が入つておりました。昨年改正になりまして認可となつて聴問の規定ができましたが、法務御当局がこの聴問の規定を活用されないために、殆んどあの現行法の四条の規定が登録制と同じような取扱をされている。で、それがためにだんだん司法書士がふえて来るというような関係、その他法律について満足ができないというような反感の関係がありましたために会に入らん者が多少できました。それからその後いわゆる現行法に基いて認可された者のうもにも或る部分会に入らないというのができておりますが、全国的に平均を見ますれば大体二割ぐらい今会員外の者がございます。併し今度法律改正をお願いいたしまして会というものの自主性が多少認められることになろうと思います。それは試験登録制ということでお願いしたのでありますが、衆議院の方で法務府と妥協いたしまして、これは弁護士連合会の方も最高裁の方もおんなじ御意見で妥協ができまして、やはり認可にすべきだと、で、それについては現在の認可では聴問の規定があるから困るというので、法務府令で、司法書士を認可する場合には司法書士会の意見を聴くということが考慮されるとのお約束ができております。それでこの法律ができますれば、非常に会員以外の者も会に入るというようなことになつて来るでありましようし、又会の理事者といたしましても、今回この法律ができますればすべて会に入れるように持つて行きたいと思います。ただ強制はできませんけれども。そういたしまれば、いろいろの面で現行法の制定後に非常に生じたこの社会的の悪い面も立派に矯正されまして、そうしていろいろの悪評を受けないというように持つて行き得るだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/56
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057・岡部常
○岡部常君 大体の数字は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/57
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058・佐藤半蔵
○参考人(佐藤半蔵君) 大体の数字は昨年の十二月末日の現在で全国の数が六千七百五十四名、このうちの二割が非会員でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/58
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059・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 参考人としまして来ておられます各位に申上げます。今日は御多用事、本委員会のためにおいで下さいまして、本案審査に対し有力なる御意見を拝聴して誠に有難うございました。これを以て皆様に対して感謝の意を表します。
更に提案者に対して御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/59
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060・伊藤修
○伊藤修君 提案者にお伺いいたしますが、この法律を制定された当時、提案者が主として御尽力になつておりましたが、当時におきましては参議院に対しまてつぶさにいろいろな連絡がされているにもかかわらず、今回の改正に対しまして、参議院に対しましてはあらかじめその資料の提供とか、或いは連絡ということがなされていない、突如として会期切迫したこの際こういう改正案を出されたゆえんが我々としてはわからないです。殊に昨年の七月に本法が施行されたにもかかわらず、今日会期切迫した折からかような改正案を出す必要性がどこにあるか。又第三点といたしましては、この改正に当つていわゆる司法書士会の御意見がみだわに司法書士がふえることを阻止すると、言い換えますれば、司法書士会員の充実を図り、その向上を図つて行くという意味において試験制度を設けて、そうして実質的な面においてより以上のものに仕上げたい、こういう考え方で以て先に試験制度というようなものが採用された。然るにそれが今日すべて廃棄されまして、提案されたごとき原案になつて我々の手許に審議を求められているのですが、その理由が私にはわからない。本案によりますと全く骨抜きになつているのではないかと思う。問題は十九条と及び手数料を自主的に定めることはいいか悪いか、こういう二点、先ほど鈴木君が言われたように罰則の問題と三点に帰着する。これだけならばこの改正案を出すことは必要がないのじやないかと思うのですが、その点を先ずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/60
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061・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 伊藤委員の御質疑に対しお答申上げます。会期が切迫いたしておりまする今日、而も御検討の資料などを提出いたさなかつた、でこれは御審議を非常に困難にしておりまする点は何とも申誠ないと思います。ただこの法案につきましては弁護士会、法務府、その他のいろいろの意見を徴するために非常に時間をとりまて、又いろいろこれらの方々の反対の意見などもございましたために、一部修正するの止むなきに至りまして今日に至つたのでありまするが、この点審議が遅延いたしておりまして御迷惑をかけている点は深くお詫び申上げたいと存じます。会期の切迫しておるときにかような法案を出す必要はないじやないかというお言葉でございましたが、御承知のよう本司法書士法は第七国会におきまして制定せられまして、昨年の七月一日から実施せられたのでありまするが、その前後にこれと同等の地位にある、例えば行政書士法とか土地家屋調査士法というような法律が制定せられておりまして、これらの法律と本法と比較いたしまするときに修正改正を加えねばならない点を発見したのであります。申上げるまでもなく議員立法でありまして、この制定をした責任と申しまするか、かような不符合の点がありまするときには、これらをすべからく改正して最も立派な法律を施行するということが親切であり、又そうすべきものであると考えましたので本改正を企てた次第でございます。
第三点の試験制度が最も適当であるにかかわらず、最初は試験制度の方向に向つておつたが、その後認可制度にしてしまつたのはどういうわけかという御質疑でございまするが、これは私らも試験制度は新らしい立法の傾向でもあり、この制度を採用することも結構だと思つたのであります。ところが法務府側や弁護士連合会におきましては、試験制度を採用することは司法書士の数を非常に多くして結局は国民大衆が非常に迷惑をこうむることになるのではないか、試験制度を採用するのはまだ時期尚早ではないかという強い意見がございましたので、これらの御意見を斟酌いたしまして、本改正案のように認可制度をそのまま維持することにいたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/61
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062・伊藤修
○伊藤修君 私は北川さんの考え方の基本において誤りがあるのではないかと思うのです。第一に考えられることはこの法律を制定する当時の考え方として、恐らく今第一弁護士会の代表の方の御意見もあつたごとく、およそ司法に関係するところの一事務を分担している司法書士諸君というものの質的向上を図るということに狙いがあつたと思うのです。してみればその面に法律の目的を集中して行くということならこれは考えられるのですが、本法改正の要点を考え合せますると、今御答弁がありましたことと矛盾するのではないかと思うのです。他の法律との比較権衡からして云々とおつしやいまするが、例えば行政書士法にこれを比較いたしましても、果してこれが行政書士以上のものになつているでしようか。例えば行政書士の場合におきましては、本決のいうごとく従来七条と二十条によつて定められておつたごとき罰則の規定を設けて、金額は当時の立法でありますから五千円かそこらになつておりますが、少くとも罰則という制裁を与えている。本法においてはそれを外してしまつた。又手数料の定め方におきましても地方長官にこれを委託いたしまして、地方長官の認可によつて定める。然るに本法においては自由意思によつて自主的に定める。本来ならば、司法書士諸君のとにかく質的向上を意図するならば、むしろこれに対しましては厳格に処すべきではないでしようか。そうすることの方が却つてその質的向上を促すゆえんとなるのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/62
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063・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 試験制度が新らしい制度であり、司法書士の地位を向上せしむるには最も適当した制度であるとのお説でございまするが、検討いたしますると、司法書士の本質からしましてこれを試験制度にして一体試験の程度を如何ような工合にするか。余りむずかしい法律知識を試験するということになれば、弁護士に類似しているところの職業を国が容認することになる。なかなかこの試験の内容につきまして、実質につきまして非常にむずかしい問題が横たわつておつたのでありまして、これらの点等からしまして認可制度を暫らく維持して置く方がよかろうという法務府や弁護士会の意見に賛成をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/63
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064・伊藤修
○伊藤修君 私のお尋ねしているのはそういう意味じやない。それは前にお尋ねしたことで、今お尋ねしたことは緩和して来るという形はどうして、どういう理由でそれをおとりになるのかとこういうことを、先ほどあなたが御説明になりました他の法律と比較いたしまして云々とおつしやつたから、他の法律より緩和して来るのではないか。その考え方はどういうところから出るのですかとこうお尋ねしておるのです。例えば行政書士法と比較いたしまして、果して行政書士法以上のものに強化されているのか、ゆるやかになつているのかと、その考え方をお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/64
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065・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 先ず報酬の点でありまするが、従来は法務総裁がこれをきめておつたものを司法書士会に自主的に報酬の額をきめさせる。これは司法書士会に或る程度の自主性を認めまして、而もこの自主性だけを認めるだけではいけない、この額を法務総裁に届出まして、法務総裁がこれを認可するという方法をとつたのでありまして、これは司法書士会から行政権の圧力を少しでも少くしようという趣旨に出でたものでありまして、この点も本法の改正では非常に大きな点の一つであると思うのであります。報酬の額を超えて司法書士がこれを受取つた場合には、従来は現行法はこれに二万円以下の罰金を以て臨むことに相成つておつたのでありまするが、これも司法書士会の自治を認めても差支えないのじやないか。殊にこの報酬の点につきましては、第十二条に法務総裁の懲戒権というものを認めておりまして、その最も重い場合には認可を取消すこともできるのであります。罰金二万円と認可を取消す場合とどちらが重いか、これは場合によつては認可を取消される場合が重いとも見られるような懲戒権を持つている次第でありまして、この点も又本法改正の非常に重要な点でありまして、司法書士会の自粛と自戒に待つて、一般大衆に対してはなるべく迷惑をかけないという趣旨に出でたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/65
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066・伊藤修
○伊藤修君 私のお尋ねしているのは、まだそういう内容に入つてお尋ねしていないのです。あなたが他の法律との均衡を失するからこの法律を改正したんだとおつしやるが、他の法律、いわゆるその業態においては殆んど同様とみなされるところの行政書士法においては何らこれは改正されていないのです。それ以上に条件を緩和する理由はどこにあるか、こう申上げるんです。他の法律を比較検討して云々とおつしやるから私は申上げておるんです。他の法律でまだ改正されていないのです。現にまだそれは維持されておるのです。にもかかわらずこの法律おいてそれを緩和して行くという考え方は、これは私はあなたの御説明と矛盾するのではないか、その点を伺つているんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/66
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067・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 司法書士法と先ず比較いたしましたのは土地家屋調査士法でありまして、これは司法書士法が制定せられましてその直後にできた法律でありまして、これらと比較して司法書士法の改正の必要を認めた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/67
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068・伊藤修
○伊藤修君 私は、北川さんも法律家であられるが、本質的において仕事の職務の内容として相比較してとる場合においては、先ず行政書士法を本法と比較の対象にすべきであろうと思うのです。本来ならば行政書士法の方がその職務の内容は軽かるべきはずである、司法書士の方が扱う仕事の面において社会的においても又司法関係においても重くこれを見るのが常識である。その軽かるべき行政書士法においてこれ以上の厳格な規定を設けているのに、ひとり司法書士法にはこれを解放して行くというこのお考え方が私には是認できない。他の法律との比較検討において云々とおつしやるから私はそれを申しているそれをお取消になるなら別としてそうおつしやるから私はその点に納得できない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/68
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069・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 要するに私の言わんとしているところは、司法書士法におけるところの司法書士会の地位をなるべく民主的なものにしよう、そういう趣旨において先ほど申上げました土地家屋調査士法やその他の法律と比較して改正する必要があると考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/69
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070・伊藤修
○伊藤修君 民主的になさるとおつしやるなら自由に解放するということが民主的じやないのです。必ず民主的な裏付としては義務を伴うのです。義務を尊重してこそ初めて民主主義というものが成り立つ。これは私が申上げるまでもないのです。してみますれば、本法中においても他面においては民主的にこれを解放する、その裏付としてはこれに対して行為者に対するところの責任を求めるということが私は立法的の考え方として当然あるべき形じやないかと思う。この点は一つ提案者の御一考を煩わしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/70
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071・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) お説の通りでありまするが、私はたとえて申しまするならば、司法書士が規定以上の報酬を徴収した場合に、これに対して刑罰を以て臨んだ方がいいのではないかというお説でありまするが、私は刑罰権をでき得るならば成るべく施すべきものではない、刑罰以外の方法でこれを制止し得るならばさような方法によらなければいけないと私は考えておりまして、決してこの刑罰を除いたことが義務を司法書士から解除せんとする目的に出たものでないと私は申上げたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/71
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072・伊藤修
○伊藤修君 勿論我々としても国民生活から刑罰という条項をことごとく廃止したいということは理想です。戦争なきことを我々は欲するために軍備を放棄するということも理想です。併し実際の世界情勢及び又国内の国民生活というものはそうではないのです。たまたま起るところのさような義務不履行者に対しましてやはり法は刑罰を以て向うことはこれが今日の立法形態ではないでしようか。理想としてもお説の通りです。我々もそう行きたい、刑罰なき生活を行いたいと思います。併しそれは理想であつて、たまたま法律の目的とするところを肯んじない者に対しましては、やはり我々の共同生活を保持する意味において、公共の福祉を保つ意味においてもやはり刑罰を以て向わざるを得ないのです。それを運営の上において刑罰を以てするか、戒告を以てするか、或いは懲戒を以てするか、この幅を持たしておくことが運営の妙を得るものと思う。例えば弾劾裁判所の場合におきましてもいきなり罷免ということが非常に運営の面において差支えがあることは北川さんもよく御承知の通りです。中間的な措置を置くということも我々の考え方としては当然に考えなければならんことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/72
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073・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 事柄が少しく立法上の体裁その他に亘りますので私この法案に関与しました者として一言北川先生に補充させて頂きたいと思います。実は先ほど来行政書士法との関連を伊藤先生から鋭く御指摘になられているのでございますが、実は行政書士法に関しましても私多少関係した者でございます。当時司法書士法を昨年皆様方に御審査願う際、その後の情勢からいたしますとかなり当時としては旧司法書士法に拘泥いたしまして立案をしたものなのでございます。そのためにその後に出ました土地家屋調査士法というような法律においては、これは全く新らしい制度を立てましたところからかなり大胆に思い切つた法制的な立場をとつて立案したものでございます。幸いにしてこの土地家屋調査士法というものが新らしい制度でありましたが、その必要性を認められまして皆様の御承認を得て立法されたわけでございますが、そうなりますと、それと前後してできましたこの司法書士法の全面的改正というものが如何にもこの不揃いに見えるのでございます。ところがその後行政書士法を作ります際には、行政書士法というものが新たに法律化されたものでございます、従いまして行政書士法の性質上どうしてもその一番近い職業は何かといえば司法書士法がこの法律に当るわけでございます。さようなわけで行政書士法はもつぱら士法書士法をいわば兄貴分としてそれに追随した、従来行政書士というのは各都道府県のそれぞれの規則できめられていたものでございますが、それを一国の法律とする場合にその類似のものは何かといえば司法書士法であるというところから、現在の司法書士法に極めて類似したものを作つた次第でございます。ところがその後土地家屋調査士法というようなものがすくすくと順調に生長いたしますし、更に又これらの一般業法の一番トツプにありまする弁護士法につきましても考えられるところが、大体各業者の自主団体でありまする会とか或いは連合会に対しましてかなり大幅に自主権を認めるという傾向にございますので、司法書士法につきましてもその類型にならいましてこのたび昨年直したばかりのものをその方向から多少修正を加える必要があるというので、このたびの改正案の提案になつたわけであります。併しながらいろいろその間に理想を追うものと、更に又現実と離れこの理想を追い過ぎるじやないかという行き過ぎ論とがございまして、お目にかけましたように極めて場合によつては不十分或いは論理の徹底しないというようなものになつたかと思いますが、いずれにいたしましても現在の段階におきまてはその程度の自主権を司法書士会に認めることが妥当であろうというところから、いろいろと関係筋とも了解が成り立つてその原案ができた次第でございます。従いまして立案の過程において多少ジグザグ・コースをとりましたのでほかの法律をすぐに抵触するとか、いわば均衡を失するとかというようなことは、或る場合には均衡を失し、或る場合には少しも均衡を失しないというような状態にございますが、それは今申上げたようにジグザグ・コースをとつたためにそのような多少ぶざまな点もございますが、その点は伊藤先生におかれても十分諸般の事情、更に又従前の立法過程を私ここで申上げるのもおもはゆいことでございますが、御承知だと思いますが、一言その点衆議院側としての立法に携つた者として弁解をさせて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/73
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074・伊藤修
○伊藤修君 福原君の説明によつて考え方はよくわかりました。
そういたしますと、基本的な考え方というものはこの弁護士、いわゆるこの種の団体に対するところの自治を認めて行こうという方途をとつているということは了承できるのです。併しそれが行過ぎまして弁護士会が自主権をとつたのでそれに追随してその程度までこれを引上げて行くんだという考え方は、それは先ほどの第一弁護士会の方もおつしやつておつたが、未だ時期尚早ではないかと思う。殊に御承知の通り弁護士会は起案されたあなたがよくお分りの通りいわゆる公法人である。それに対する責任の所在というものは明確である。ところが一方司法書士会はいわゆる何らの基本的なものはないと考えられる。いわゆる私の考えでは任意組織になつていると考えるのですが、それでこの種の任意組織に対するこういう団体、公法人でもない、法人でもない任意組合というような形において設立された、この種の団体にいわゆる自主権を認めて行くということが飛躍ではないかと思うのですが、どうですかその点は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/74
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075・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 先ほど私言葉が少し足らなかつたのでございますが、只今の御質問に対して確かに或る程度の飛躍がないかということ、私たちも反省しなければならない点だと考えております。ただ問題は先ほど申上げたように弁護士法につきましては、私は別格のものだと考えています。ただその方向付けに多少類似の点があるのでそのちよつと口がすべつただけであります。併しその後できました土地家屋調査士会というものは実は当時何らの実体もないものでございますが、将来そういうものができるということを予想の下にこれに対して大幅の自主権を認めているという一つの立法例があるわけでございます。これに対比いたしましてこのたびの司法書士法で認めた司法書士会は御存じのように、大正八年でございますが、旧司法書士法で当時の代書人法でございますが、そこで強制設立を認められた会なのでございます。
従つてこの新憲法下でかような強制設立、強制加入というように業者の団体を認めることの全般的な憲法違反、或いはい望ましからざる状態であるというところの指導方針から、これに対しまして全部任意団体に切替えたわけでございます。併しながら過去三十年以上の歴史を持つておりまする司法書士会というものは、今後新たにでき上るであろうと思われる土地家屋調査士会に認められた自治と或る程度同等のものを認めてよろしいのではないかという、こういうのがこのたびの立案の眼目と申せば申せるものなのでございます。従いましてそれが行過ぎに亘らないように実は原案としてはいろいろ考えた点もあつたのでございますが、その行過ぎに亘るのではないかというところの反省をいたしまして、ぎりぎり詰めましたのがお手許にお渡しいたしました法案の内容なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/75
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076・伊藤修
○伊藤修君 それではこの際司法書士会の任意団体の本質を先ず明らかにして頂きたいと思う。そしてさような任意団体に対しまして法務総裁は如何なる拘束力を持つているか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/76
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077・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 伊藤委員のお説のように勿論任意団体でありまして、これに対しまして司法書士法の認めておりますところの法務総裁の権限は大体認可に関する点、報酬を認可する点、或いは懲戒権というような面からいたしまして司法書士並びに司法書士会、司法書士連合会に対して監督権を持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/77
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078・伊藤修
○伊藤修君 任意団体であるというだけの御説明で私はちよつと不十分だと思いますが、もう少し御説明願えませんか、任意団体ということはわかつているのですからその任意団体の本質はどこにあるか、それを一つ福原君明確にして頂きたいと思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/78
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079・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 司法書士会が任意団体であります関係から、それに対しまする法務総裁の監督というものが如何ように徹底的なものであるかということについては、これは司法書士会というものが司法書士という法務総裁の個々の監督を受ける業者の団体であります関係から、これに対しまして適当に指導助成更に監督をするということが必然的にできるものでないかとこう考えております。その法規的な根拠と申しましては、やはり司法書士全般の業務執行に関して必要なる事項を法務府令で定めることが法律上明確にされているかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/79
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080・伊藤修
○伊藤修君 例えば本法によつて報酬を司法書士会において任意にきめて、そうしてそれに対するところの禀申をする、それに対して認可を与えられる、こういうことになつておりますが、仮に経済状態が変動しまして、物価の値下りによつてこれに伴いいわゆる手数料も値下げしなくちやならん、こういう場合においては果してその拘束力があるでしようか、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/80
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081・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) お手許の原案ではその点については必ずしも明確を欠くと思いますが、その点は司法書士会を適当に指導いなしますことによつて、その司法書士会は自律的にそういう点についてはそれぞれ善処するということを期待しているわけでございます。法律上そのような点については、立法の体裁からかなり切詰めておりますから、そういう点を表現上足りないという点は或いはあるかと思いますが、法の精神といたしましては、かようにして書士会のきめます報酬の規定というものが客観的妥当性を持つということについては、法務総裁が極端な場合には認可の点で制肘をするというところからして、必然的に若し極端な値下りのような場合に、それに対する指導的な勧告をするというような形が十分できるものとこう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/81
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082・伊藤修
○伊藤修君 まあこれは一例ですけれども、今申上げたように一たん上げた手数料というものが経済状態の変動によつてこれを下げなくちやならんという場合において、依然として司法書士会がこれを下げなかつたという場合に対しましては、法務総裁はこれに対しまして何らの私は拘束力あるところの発言は得られないと思うのです。何となれば前に認可している、それに対しましてこれを変更するところの勧告は或いはできるかも知れません、それは依然として勧告であつてこれに対する拘束力は何も持たない。これはアメリカあたりでは私が申上げるまでもなく勧告ということに対して大きな力を持たしておりますが、日本の法律生活の場合においては勧告ということはやはり文字通りに解釈して、それに対して何らの、きかない場合に対しての手だてというものは考えられないのです。勧告という文字が最近多く使われますけれども、日本の法律生活の場合においてはこの勧告という文字の上に何らの法的意義を持たないことになつておりますが、そういう場合においての法務総裁の権限というものは非常に私は制約されていると思うのです。そうするとその点においてやはり野放しになるのじやないかという結果を見るのじやないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/82
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083・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 只今の点は先ほど申上げたように、確かな強制力を持ち得るかといえば法文の上からはそのような解釈は出てこないと考えます。併しながら若し極端な物価の値下りその他変動もございますならば、それはそれぞれの法令の定めるところに従いまして、例えば物価統制令というようなもの、その他のことで或る程度そういうものに対しての取締ができるかとこう考えますが、一応この法律ではその点については明確を欠くと言わざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/83
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084・伊藤修
○伊藤修君 そうすると、認可の場合におきまして法務総裁はその条件を付けることができるのですか、これをいつから施行するとか或いは将来の経済界が変動した場合においてはこれを下げろというような条件を付けることができるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/84
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085・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) それは認可権の内容として当然あり得ることと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/85
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086・伊藤修
○伊藤修君 この改正によつて二カ月内に法務総裁が返事をしないと、それが自動的に認可されずとみなされてしまうのですか。その面から見ると、非常に法務総裁に対するところの権限を制約するというか、剥奪するというふうな言葉を使つていいかわかりませんが、至大な法的効果がそこに生じて来るのじやないか。こういういつたい権限を任意団体に与えた例があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/86
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087・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) この点は実は初めての例かと考えます。併しながらさつき申上げましたような土地家屋調査士法につきましては、報酬をそれぞれの会がきめまして、それは何らかような手続をふまんでもできるような形をとつております。併しながら司法書士については、司法書士の仕事の性質上かなり民衆につながりも広い範囲であり又密接であるというところから、そこまで全く自由を認めるということについては如何かと考えますので、これに対するブレーキといたしまして、この二項以下を付けたのでございます。なおその際二カ月というようなことに法務総裁の認可の期間を限つたということは、如何にも法務総裁に対する一種の不信任的な表現ではないかという点も、強くとれるという嫌いもないではないかと思いますが、よく立法にございます「速かに」とか「遅滞なく」というような法律を作るのが例でございますが、できれば法律というものは、成るたけ読めばすぐにわかるようにというふうなところから、少くとも二カ月としたら、これは「速かに」と書いたり或いは「遅滞なく」と書いたよりも、同じ趣旨のことを更に法律の上で明確にしているというところから出した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/87
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088・伊藤修
○伊藤修君 第十五条の三によつて予想されるようにいわゆる司法書士会に属しない者があるわけですね。先ほども参考人のお方がおつしやつたように、そういう報酬規定に従わない者に対してはどうするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/88
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089・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) この司法書士会の会員にならなかつた司法書士がございます場合に、その司法書士のその事務所の所在地の司法書士会の報酬規定に従うことが十五条の三で明示しているわけでございます。従いましてこの報酬規定に従わないような高価なものを取つたならば、これは懲戒事由になりまして、その土地の法務局或いは地方法務局の懲戒を受ける、こういうことになる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/89
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090・伊藤修
○伊藤修君 それは結局は懲戒だけで、先ほど北川さんが御説明になつたように、業務停止とかいうことを予想しておるのですか。それ以外には何ら方法はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/90
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091・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 懲戒だけでございまして、刑罰の規定はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/91
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092・伊藤修
○伊藤修君 この司法書士法の第十二条によりますとですね、一体、その認可というものが法律又は命令でなされておるわけじやないでしようが、そういう司法書士会に属しない者に対しましても、果して懲戒できるのでしようか。十二条との関係において……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/92
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093・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 十二条は司法書士を客体として規定して、懲戒の対象としておるのでございます。従いまして、第十二条は司法書士会が任意加入団体でございますので、それに加入しておる者と然らざる者との間に差はないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/93
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094・伊藤修
○伊藤修君 それはお説の通りで、十二条の表現は司法書士を対象にしておるのですから、司法書士であればこの懲戒権が行使できるというのでしようが、その懲戒権の事由たる、原因たる報酬の規定に違反したということは司法書士会できめたわけですが、それに違反したから懲戒にするということが基本的に考えられるかどうか。原因たる事由として法律上それが賄えるかどうかということをお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/94
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095・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 言葉が足りなくて申訳ありません。これは只今十五条の三を入れますと、司法書士会の会員にならなかつた司法書士に対して、その事務所の所在地の司法書士会の報酬に関する規定に従えということを十五条の三で明示しておるわけです。即ち自分の入つていない司法書士会ではあるが、それの報酬に関する規定に従えという法律上の義務をさしておるわけでございます。従いまして、第十二条では司法書士がこの法律に違反したときは云々とございますので、従つて懲戒の対象になる、こういうふうに解釈いたすのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/95
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096・伊藤修
○伊藤修君 これは先ほど基本的にお伺いした場合ちよつと触れておいたのですが、この第七条をはずしてしまうのですね。そうすると、この二十条によつて賄うところのものは第六条だけになるのですか。第二十条のあとに残るものは第六条の違反だけに対する罰則ということになつて来るわけですね。そうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/96
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097・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/97
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098・伊藤修
○伊藤修君 そうするならば、なぜこの改正法によつた第十五条の四ですね。「司法書士は、その業務に関してその所属し、又は前条の規定により従うべき司法書士会の報酬に関する規定に反して報酬を受けてはならない。」これを七条を削除する代りに二十条でこの十五条の四をなぜ取入れなかつたか。この点は如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/98
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099・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) 事柄の性質上、報酬規定をそのまま自律的に業者がきめて、即ち自粛した報酬額を定めるということにいたしましてそれに従わなかつたから直ちに法律の効果として国家刑罰権を発動するというのは如何かと考えましたので、刑罰権の規定をはずしたと、こういうわけでございます。従つてさつき申しました十五条の三は、これは司法書士会に入らなかつた者に対する命令規定でございまして、十五条の四はそれを更に入つた者と、それから入つていない者についての義務規定を明示しているだけの趣旨でございまして、これに対して罰則を設けるということは、今申上げましたようにそれぞれ会できめたものについて国家刑罰権発動云々ということは如何かと考えてしなかつた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/99
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100・伊藤修
○伊藤修君 では国家刑罰権というと、如何にも死刑まで言うように聞えるのですがね。国家の刑罰権の中にも極く軽いものもあるのですから、軽いものを以て自粛を促す一つの盾にすることも考えられると思うのですが、或る意味においては業務の停止ですか、廃止ですか、取消ですか、認可の取消をされるということは一つの死刑に相当するものです。だから一躍して死刑まで持つて行かずして、やはりこういう行為に対しましていわゆる科刑を以て臨むという行き方のほうが私はむしろ穏当ではないかと思うのですが、私はその点の考え方としては、どうも立法者のお考え方はちよつと行過ぎてやしないかと思うのですが、ここでもう解放してしまうということは、我々としてちよつと考えられないと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/100
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101・福原忠男
○衆議院法制局参事(福原忠男君) この会に自治権を認めまして、自治権の内容として報酬に関する規定を自粛的にきめることができるという権限を法律が与えましたものとしては、先に申しました弁護士法がその一番はつきりした例でございますし、その後それとは多少性質は勿論違うのでございますが、土地家屋調査士法について同様なことが認められるわけでございます。それぞれの会で自立的にきめた規定についての違反につき刑罰権の発動ができるという例はまだなかつたことでございますのて、この場合もやはり前例通りそのような自律的な規定に対する違反に対しては、それぞれ業態からの抹殺、例えば認可の取消し、或いは業務の停止ということで十分事足りるというような考え方の下に立案されているものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/101
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102・伊藤修
○伊藤修君 ですから先ほどの本質問題を明らかにしなくちやいかんと思うのです。これは法律的に考えましていわゆる自治権を与えると言つても、任意団体に対しての自治権を与えるということは非常に行き過ぎである、責任あるところの公法人の組織に対して自治権を与えるというのならともかくとして、如何に民主的と言いながらそこまで行くことはなかなか理想に過ぎるのじやないか。今日の段階においてはやはり第七条というものを存続する必要があり、却つてその方が司法書士会の質的向上ということをむしろ促すゆえんになるのじやないか、かように考えるのです。これは見解の相違だとすればこれは止むを得ないです。
それからこれは第十九条の問題ですが、いわゆる「又は正当の業務に附随して行う場合」と、これを本法において削除するというふうに改正せられておるのですが、これは提案理由の御説明によりますと、弁護士法がそうであるからそれに倣つてこれを削つたという提案理由である、これも私は不満足である、基本的に弁護士法と同様に考えてこれを削るというやり方は、質的において違うことは先ほどからよく申上げておる通りです。その他の理由によつてこれを削除しようというのならこれは別として、先ほど引例いたしました行政書士法には未だにこれが残つておるのです。にもかかわらずただ弁護士法が削除したから云々ということでは私は納得できんと思います。弁護士会の場合においての職務行為の当然の行為としてなされる場合においてこれを削除するならこれは弁護士会の場合においては納得できますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/102
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103・村教三
○衆議院専門員(村教三君) 只今の第十九条の正当業務を削除する点につきましての説明書は、事務当局として念いささか急いでおる最中に書いたものでありまして、正に伊藤委員のおつしやいます通り、余りにも簡単に過ぎ、又誤解を起す点がありまして、極めて不備であつたと申訳ない次第であります。もともとこの正当の業務を削除する点といたしまして、法務委員会におきましては種々の議論があつたのでございますが、結局三つの理由で削除したほうがよいという議論になつたわけでございまして、その第一は、先ほど参考人のかたからいろいろそれぞれの業者の立場からお話がありましたが、衆議院におきまして専らこの条文によつて期待いたしましたものは、そのような広い範囲のものでなかつたのでございまして、司法書士にあらずして司法書士の業務をしておる、例えばその数は少いと思いまするが、計理士、或いは計理士でないかたであるかも知れませんが、そういうかたのうちで職業化して司法書士の仕事をしておられるかたがある、こういうかたを削除するということにつきまして、これらのかたは本来その認可をおとりになつて合法的にお仕事をなさるならいいのでありますから、そういうものに向ける必要があろう、これが第一の削除の理由でございます。第二に、由来この方面の同類的職業の間におきましては摩擦が常に起りまして、業者同士のかたもいろいろとお困りでありますし、又官庁側におきましても行政的に処理することにつきましては困難をされておつたようでありまして、立法的見地からもこの際同類的な職業の間におきまして賛意を得る努力をする必要がある、この場合におきましてやはりそれぞれの目標をはつきり掲げまして、それ以外には余り書かないというような工合の立法をとるほうがよいのではないかということを衆議院で考え、且つ又法制局でもそうした御意見でありましたので、立法例という立場から一応正当業務を削除したほうがよいという点でございまして、事実この司法書士以外にはこの言葉はございませんし、尤も行政書士法にはございますが、これは本来司法書法士に傚つてあとからできたものでありまして、むしろ削除するということよりは行政書士法のほうが司法書士法に追随してよい面も悪い面も共に受継いでおられるような感じを受けておつたのでございますから、そういう立法例の整備という点を第二点に考えた次第であります。尤も第三に考えましたことは、やはりこの種の同業者間のものの業務上の摩擦というものは困難な問題でありますが、本来やはりこれは業者間の協定ということも大事であり、又行政官庁におきましてよく仕事をして頂くということが必要である、ここに一番大切な点があるというので、一応そうした方面に主として御努力を願うことにいたしまして、先ず立法例の形といたしましては余り差別的な待遇を受けたような用語だけは成るべく残したくない、こういう工合にすべきじやないのじやないかというような点あたりが第三点となりまして、大体こういうような事情から「正当の業務に附随して行う場合」を削除するのでございまして、殊に第一点の意味につきましてはくれぐれも御了承を願いまして、決して業務の実態が今にわかに一か悪となり、一が正となるというような問題ではなくして、むしろ他の職業に属する人であつて認可を受けないで非合法的にやつておられるかたがあるとしまするならば、そういう方面の人々をばできるだげ認可を受けて合法的にやつて頂きたいというのが主眼であつたりであります。どうか御了承をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/103
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104・伊藤修
○伊藤修君 問題になるのは今の第一点ですが、そういう非司法書士を取締るということは、あえてこの十九条の但書を抜いても私は結局は残る問題でないかと思います。そういう非司法書士、いわゆる計理士の看板を掲げておつて、その実態は司法書士の業務のみを行なつているということは我々として認めることはできない、それは即ち二十三条によつて十九条の第二項に違反した者は一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する、これによつて私は賄えると思う。これを賄わずして却つて正当業務に附随してなされる行為のほうを外してしまうというあり方はいろいろな誤解を生ずるのではないかと思つております。恐らく立法者の御意見といたしましても、当然その本来行う業務に附随してなされることを禁止しようというお考えではないと思うのですが、ただたまたまそれのみを本業としているところのいわゆる非司法書士を取締るというお考え方だと思いますが、それならば現行法規で以て十分賄えるのではないかと思います。それにもかかわらずあえてこの問題となるところの「正当業務に附随して行う場合」という文字を削除しようというのは、その意図はいわゆる厳格にそれらの附随してなされる行為をも禁止しようということに出ているのではないでしようか。ここに私は反対の大きな根拠があると思うのですが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/104
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105・村教三
○衆議院専門員(村教三君) 伊藤委員のおつしやいます点は御尤もでありまして、事実他の規定の面からもそうした非合法的になされるかたがあつたといたしますと、その方面に対する措置はもとより可能であると思つております。さりながらやはり業者間の問題につきましては、本来行政的な方面の調整ということが大切な問題でありまして、あえてそうした制裁的な面からだけ全部やられるというものでもございませんし、又立法例の点からも将来に向つてやはり調整がうまく行くように、紛争が少くなるように、このように心掛けて立法というものは前進すべきものであると考えまして、そういう点から考えましてやはりこうした削除的に出ることが少くとも一歩前進という点からやはり相当な理由があると考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/105
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106・伊藤修
○伊藤修君 もう一点、一体この罰則を外すということに対しまして……。法務府の人がどなたか出ておられますれば、それに対する御見解を承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/106
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107・平賀健太
○説明員(平賀健太君) 法務府といたしましては、衆議院でこういうふうになりましたので止むを得ないことと思つておるのでございますけれども、率直に申しますと、先ほど参考人の御意見もございましたように、罰則の規定は存置したほうがいいと思つております。と申しますのは、この行政的な懲戒だけでは資料の収集ということが非常に困難でございまして、この懲戒の制裁を加えることが非常に困難になるんじやないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/107
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108・宮城タマヨ
○宮城タマヨ君 私もこの法案について少し二、三カ所腑に落ちないことがございましたが、時間がございませんからそれは省きますけれども、大体からこの法案を審議いたしますのに、あの参考資料がございませんので困つているんでございます。ただ今日の参考人の供述を聞いておりまして、聞き捨てのならぬことがありましたので、ちよつと伺いたいのでございますが、それはさつきの計理士の供述の中に本業ではないけれども、まあ本業に附随していたしますサービスによるところの仕事が二割、三割ある。普通に東京あたりでも……。それから地方なんかに行きますと、それがあべこべにサービスのほうが七割、八割あつて、そうして本業のほうがまあ少いというようなことを、私はそれが聞き誤りでございませんならばそういうように承知したのでございますが、そういうことになりますというと、計理士のほうが司法書士の仕事に随分喰い込んでいる点があるんじやないか、そして而も実収入が司法書士のほうで五十万近くあるというかたもございますが、反対に三千五百円ということが、これは少く見積つて倍としましても、三倍としましても、こういうことで生活ができるかどうかという生活の問題にからみまして、今度出ております司法書士、今度のこの立法案は司法書士にもかかつてその報酬についてのことでございますが、そういうことになりますというと、よほどこの法案は審議いたしますのにも私は材料が欲しいと思うのでございますが、一体先ほど鈴木法務局長がおつしやつたその数字なんかの点についてお調べになつておるのでございましようか。そういうはつきりした材料を出して頂きたいと思います。それから又計理士の収入というものが一体どのくらいございますのでございますか。そして計理士のほうが仕事の量では二割、三割、或いは七割、八割という言葉をお使いになりましたが、実収入の点において一体どのくらい計理士のほうが司法書士のほうに食い込んでおるかという点なんでございますが、何かその点についての資料はございませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/108
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109・村教三
○衆議院專門員(村教三君) 宮城委員にお詫びしなければなりませんのでございますが、実は資料につきましては、この前に案が五月の七日、八日頃でありますが、一回相当詳しい大部のものを附けましたものを提案理由と一緒に参議院の事務局のほうへお送りを申上げたのでありますが、そのうち原案が変つたものですから提案理由もすつかむ変つたのであります。それで私どもといたしましては法案と提案理由だけ変えて頂きまして、あとの資料のほうはそのまま使つて頂きたいという気持で私どもおつた次第でありまして、それがお手許に行つていないとしますれば、私どもも申訳ない次第と思つておりますが、一応は前の案に附随して差上げましたものはお手許に行つたのでありましようが、あとから差上げました法案については実は資料は何も附いていなかつたような実情でございます。只今その報酬の問題でございまするが、実は私ども事務局といたしましても何とか資料を得たい。殊に関係方面におきましても、数字的な材料がないかというようなお話でございましたが、如何せん只今法務府の民事局のほうへもお願いしたのでございますが、全般的な司法書士の件数が何百万件である。全部の金額は何件であるという程度でございまして、こうした商業登記に関連した微妙な間を調査する材料は法務府にお願いいたしましても、手に入れる余地はなかつたのでございます。併しながらいずれも計理士会のほうの常任理事のかたの御意向も聞き、又司法書士の連合会のかたの御意向も聞きまして、大体大雑把な見当は付けました次第でありますが、それは今この参考人としてそれぞれ司法書士のかた、計理士会のかたの御説明になつた程度でございまして、これを寝付ける公の数字は遂に私ども手に入れることがきなかつたのでありますが、殊に実収入という点になつて参りますると、それぞれ税務等の関係がありますものか、とても困難でありまして、何分にも御期待に副うことができなかつた次第であります。大体宮城先生のおつしやつておられましたあの二割、三割とか、それから又田舎におきましては八割とかというような数字、それから司法書士連合会長が申しておりますああした数字が手に入りました数字でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/109
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110・北川定務
○衆議院議員(北川定務君) 只今宮城委員らの御質疑で、計理士がサービスとして登記事務をやつておる、地方に行つてはその登記事務の方が主であつて、而も計理士事務が従になつておるというような所もあるというような参考人陳述について腑に落ちない点があると仰せでございまするが、私らもさように考えるのでございます。この現行法からついたしましても、正当業務に附随する行為でありまして、どこまでも計理士は計理事務を処理するのがその業務の範囲ごございまして、これが計理事務が従となるに至りましては、正にこれは司法書士法違反の行為であると思うのであります。元来この司法書士や、計理士や土地家屋調査士、行政書士などはそれぞれその冒頭において業務の範囲を厳格に規定しておるのでありまして、その各業務の間には截然としたところの区別があることになつておりまして、これらのいずれの法律を見ましても正当業務に附随して行う場合も認めているという法律はないのでございまして、先ほど村専門員も申しましたごとく、この司法書士法だけにこの規定を浅して置くというのはこの立法の体裁からしましても、又業務の範囲をはつきりさせるという点からしましても、削除するのが適当だと考えて立法いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/110
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111・羽仁五郎
○羽仁五郎君 委員長ちよつと質問したいのですが……。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/111
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112・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) この問題は後に廻わしたいと思います。本案に対する質疑は続行することにいたしまして、次に日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社及び有限会社の株式及び持分の譲渡の制限等に関する法律案を議題に供します。御質疑のあるおかたは御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/112
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113・伊藤修
○伊藤修君 先般第四条の、「設立の登記」という文字の解釈についての答弁が保留されておるのでありますから、これに対する御答弁をお伺いしたいと思います。なお実際にその事務の主管に当つておられます法務府の民事局第六課長の長谷川君の御説明を詳細にお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/113
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114・長谷川信蔵
○説明員(長谷川信蔵君) 大体この商法百八十八条の設立の登記という場合は、社債の登記、それらのいろいろまあありますが、そういつた登記と同様な意味において、設立の登記という一つの種類というふうに考えております。従つてこの設立の登記の登記する事項は列記されてございますがその列記されておる事項は設立の登記として登記される事項であつて一つの総括的に考えておるのであります。従つて列えば存立時期或いは解散の事由というようなものを設立当初規定しなかつた、定款に規定しなかつた、従つて登記もなかつたのでありまして、その後定款を変更いたしましてそういつた事項を規定したという場合に、登記の申請は変更の登記、設立の登記の変更の登記というふうに観念しておるわけであります。従つて実は今度の法案は頂載しておらんのでありまして、ただ今見た程度でありますが、設立の登記についてはこれこれの事項をも登記しなければならないといたしますれば、設立の登記の登記事項が又一つ殖えたというふうに観念されるのではないかと私はそのように考えております。なお立法例といたしましては、保険業法十三条それから千五条でありまするが、十五条に登記設立の場合の登記事項を殖やした規定がございますが、その場合におきましては変更の登記の株式会社の当該規定の準用等は全然省いております。従つてこの立法的にも私が観念しているようなことを裏付けられておるのではないかと私はそのように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/114
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115・伊藤修
○伊藤修君 今法案がお手許に参りましたようですが、第四条の「設立の登記」という文字のこの表現によりまして、すでに設立されておつて、そうして例えばこの法案の目的とするような株式譲渡の制限の事項を定款によつて改めて定めて行く、そうすると従来の登記事項の変更を生ずるわけですから、そうすると変更登記の申請をするというふうに我々は了解するのでずが、その手続として変更登記の申請をしなくちやならんだろうと思うのですが、ここに第四条で設立の登記、こういう表現でそういう変更登記が賄えるかどうかということをお伺いするわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/115
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116・長谷川信蔵
○説明員(長谷川信蔵君) どうも説明がまずいもので甚だ恐縮でありましたが、結論を申上げればそのように読めるのではないかと、私立法の衝に当つたわけじやありませんが、読めるのじやないかと思います。先ほど例に挙げました保険業法の第十五条の表現をいたしますと、「会社ハ第十三条及商法第百八十八柔第二項二掲グル事項ヲ登記スルコトヲ要ス」というふうな表現をいたしておりますが、表現の仕方は違つておりますけれども、やはり同じふうに読めるのではないかと考えるわけであります。大体この設立の登記と言つております場合には先ほども申上げましたように一括的に考えております。たまたま或る登記事項が設立の際なかつたとしましても、その具体的手続を申上げますと、その裏を空白、斜線を施して空白にしております。そうしてその後新たに生じたという場合は変更の登記というふうに処理しておるわけであります。まあこの四条の規定そのものから「設立の登記にあつては」という表現でいいかどうかという問題になりますと、これは立法技術の問題でありますが、私はやはり設立の登記を先ほど申しますように一括的に考えておりまして、その設立の登記とされておる百八十八条第二項に掲げる事項にこの事項が一項加わつたのだというふうな解釈は十分とれるのではないか、このように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/116
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117・伊藤修
○伊藤修君 だから設立する場合において全部登記すれば問題ないのですが、そうでなくて、すでに設立された後においてその設立登記のときに登記しなくちやならん事項が後に定款によつて定められた場合において、いわゆる設立の登記というだけの表現で変更登記までも賄えるかというのです。実際問題としてはいわゆるそういう場合においては設立の登記事項の変更登記申請、こういうことを言わなくちやならんのじやないのですか。ただ漫然設立の登記だけの文字だけでそういう点まで賄えるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/117
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118・長谷川信蔵
○説明員(長谷川信蔵君) 先ほども例に挙げましたように、現在すでに現行会社法におきましては、譲渡制限の規定があるのでありまして、これは設立の際必らずしも譲渡制限をしないで、設立の登記をし、成立した後に定款変更によりまして、譲渡制限の規定を入れたという場合におきましても、やはりその変更の登記、その変更の登記というのは、やはり観念的には設立の登記の変更になるというふうに考えまして、現実にそのように手続も処理いたしております。それと同様に考えられるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/118
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119・伊藤修
○伊藤修君 これは修正してその点を明らかにすれば一番私は国民に対して親切だと思うのですが、いわゆるこういう簡潔な文字ではいわゆる設立の基本登記のように見えるのです。あなたの今の御説明を伺つておつてもいわゆる設立登記の変更登記、こういうふうな表現を用いていらつしやるのですが、そこまで表現をしないというと、新設の場合の登記のみを指しておつて、後の変更登記を含まないがごとく解釈ざれるのですね、その点を本条の解釈としてはその点変更登記をも含むのだということをはつきり後の人の解釈のために速記に写して頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/119
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120・長谷川信蔵
○説明員(長谷川信蔵君) この設立の登記事項にこの一項が加わつたのだ、こう四条が読める、こう考えます。従つてその他の変更があつた場合は、商法第百八十八乗、第三項で準用いたします合名会社に関する規定であるとか、六十七条の規定がここへ適用される。設立の登記の一つの登記事項だというふうに四条を解釈しております。従つてその余の変更等につきましては、商法の規定がすべて適用されるのだとこのように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/120
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121・羽仁五郎
○羽仁五郎君 本法案に対する提案者に対して伺いたいのでありますが、この日刊新聞の発行を目的とする株式会社有限会社に対して、特に他の株式会社有限会社とは取扱を異にする理由として御説明になつているのは、この新聞紙の特殊な性質ということであると承知をいたしておりますが、即ち言葉を換えて言えば、新聞が言論の公器であるというふうな御説明であります。ところでこの新聞が言論の自由を代表し、その意味における公器であるということについては如何なる要件をお考えになられているのでありますか。この点について、最近の日本及び世界の民主主義の国における新聞の言論の自由及び新聞の公器としての性質として先ず問題になつて来る問題が一つあると思うのでありますが、それは新聞が本当に言論の自由を発揮し、新聞の公器としての性質を発揮するためには新聞においても編集権というものと、それから経営権というものと、それからその読者というものと、この三つの要因がバランスをとらなければ新聞がそういう意味において言論の自由の使令を発揮し、公器というふうに言うことはできない、若しこの新聞において編集権なり読者なりの発言というものが全然認められないとするならば、これは他の株式会社なり、有限会社と全く同じ性質のものでありまして、これを特に取扱を異にして、この株式譲渡の制限乃至禁止をお認めになるということは条理が立たないというように考えられるのでありますが、これらの点即ち今先ず第一に伺いたいのはこの新聞を特に特別にいわゆる公器として言論の自由の機関としてお扱いになるその要件を何とお考えになつておいでになるのか、そうして若しそれを今私が申上げたように、その経営権というものが、他の株式会社なり有限会社なりにおいて認められておる経営権の場合と異なつて、新聞の場合には経営権とそれから編集権、それから読者のこの新聞に対する影響力、この三つのものがバランスをとることが必要であるというふうにお考えになつておられるのかどうか、この点を先ず伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/121
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122・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 新聞の公器である特殊性から本法を設けたいと考えているのでありますが、その公共性、公器性という特殊な関係をはつきりいたしますために、ここに私どもが考えておりますのは、第一条に書いておりますように「一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞」かような条件でこの新聞の公共性をはつきりさしたいと考えているのであります。勿論この新聞の経営権と編集関係でありますが、資本関係から来る編集に及ぼす圧力といつたようなものに対して重大な警戒をせなければ言論の自由は保たれない、新聞の伝統も保持できない、報道の性格も又、期することができないと考えまして、この資本系統から来る圧力を警戒するというような考え方が本法の大きな趣旨であることを御承知おきを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/122
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123・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今のお答えでございますと、私の申上げたような、この新聞において経営権とそれから編集権とそれから読者のこれに対する影響力という三つのものがバランスをとらなければならないということはお認めにならないのでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/123
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124・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) その点はお説のように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/124
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125・羽仁五郎
○羽仁五郎君 お認めになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/125
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126・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) はあ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/126
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127・羽仁五郎
○羽仁五郎君 これは大きな問題でありまして、最近イギリスでもこの新聞の問題について、議会なり或いは一般言論界なりで激烈なる討論を捲き起しております。日本では残念ながら只今のところでは新聞における編集権と或いは読者の影響力と、こういうものは全く認められておりません、事実におきまして……。従つて只今のお答えのようにこの三つのものがバランスをとるという御趣旨であるならば、現在における日本の新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞その他のいずれの新聞においても経営権だけを認めておるのでありまして、編集権というものは全く認めておらないのであります。これは事実であります。これはその証拠を提出せよということであるならばその書類を直ちに差出しますが、事実において編集権を全く認めておりません。そうして経営者が編集者の解雇その他自由自在にこれをやつているのであります。即ち他の株式会社及び有限会社におけると全く同じように経営権がすべてを決済いたしまして、編集権というものは全く認めていないのです。従いまして今お答えのようであるならば、その提案の御趣旨とそれからこの本案というものとは全く矛盾しておりますから、本案というものは成立しないという結果になりますが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/127
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128・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) お説によりまと、現在においては経営権が非常に大きな力を持つておつて、編集権は認められておらないと言われるのでありますが、そういう弊害が現在においてすらあるといたしますならば、経営権、資本の力というこの圧力が編集関係に及ぼす影響をでき得る限り我々は警戒してかからなければならんと考えております。そういう事態におきましては、より以上資本の動き、特に株式会社の株主の関係というものが或る程度まで制限をされておるという形でなければ現在の新聞の伝統はより以上危険にさらされると思うのであります。お説のようなこの経営権と編集関係がさような事態にありとするならば、より以上本法の制定を急いでやる、又必要性が多いと言わなければならんと考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/128
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129・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今のお答えでありますが、事実上におきまして、然らば第二に伺いたいのは現在の日本の有力なる日刊新聞社の資本の構成というものが、これは三つの場合を想定してお答えを頂きたいと思うのでありますが、第一には封建主義的な、同族的な、例えば……、例えばやめて置きますが、殆んど特定の少数の個人の非常に影響力の大きいそういう資本構成をとつておるというふうに御覧になりますか。即ち第一には、まあ一言に言えば封建的な資本構成であります。それから第二にはもつとずつと進んだ独占資本の資本構成をとつているというふうにお考えになりますか、それとも第三の即ちその新聞社の株というものが決して少数の個人の手に集中されていないで、その社員に極めて平均的に所有されておつて、即ち第一の目的のような新聞社の経営というものに対して単に経営者だけでなく、編集者や読者の意思というものが反映し得るようなそういう最も民主的な資本構成を、資本のストリユクツールを持つておるというふうにお考えでありますか、いずれでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/129
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130・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 現在の日刊新聞社の株主の関係でありますが、私どもが調査をいたしました範囲内において、又専門員、調査員が各地において調査をいたしました結果を総合いたしますと、その形はいろいろになつております。相当大きな株主があつてその会社の総株の三、四割以上も持つているというのもあるし、又相当たくさんに分れているというのもありますが、大体におきまして全体を眺めて一貫した見られ方は、従業員、社員というものが株主であつて、社外に株の流れることを全部嫌つておつた形から定款におきましても社内株に制限をするとか、或いはそういう趣旨を以て譲渡制限をいたしておりますから、今の日刊新聞の株主はおおむね社内株であるということは申上げることができると思います。又株主の関係が読者のほうから株主が多くあつて、読者と株主、こういう形における新聞の経営は極めて少いと考えております。従つて日本における新聞の論調、新聞の伝統につきましては、読者は自由な選択権を持つておる。読者から新聞社の論調を動かすというような形、読者から編集を動かすというような形は殆んどとられておらんのであつて、読者のほうは現存する新聞に対して自由な選択権を持つて臨んでおるというような形にあるのであると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/130
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131・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今のお答えを伺いますと、御調査を大部なすつておるようでありますが、それで大変仕合せでありますが、今私の伺いました第一点と第二点、即ち第一点は現在日本の新聞社において日刊新聞発行を目的とする株式会社及び有限会社におきましてその経営の上において経営権と編集権と、それから読者からの影響というものがバランスがとれているかどうか、それとも編集権を全然認めていないかどうかということに関する資料を拝見さして頂きたいというふうにお願いいたします。それから第二の点、即ち現在の日本の日刊新聞発行を目的とする株式会社及び有限会社の資本が封建的な構成をとつているんじやないか、それとも極めて民主的な構成をとつているか、即ち極く少数のかたがその株の大部分を持つておられて、そうしてそのかたが経営権を持つてすべてを支配されて、編集というものを認めていないかという点についての資料も見せて頂きたい。これらの資料を拝見いたしませんと、第一に新聞を特に言論の自由の公器として他の一般の株式会社及び有限会社と別に特殊の取扱をするという理由がないと思いますので、それらの資料を拝見さして頂きたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/131
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132・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) お手許の資料に載つておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/132
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133・小木貞一
○衆議院専門員(小木貞一君) 簡単にまとめたのですが、それが資本構成調査表昭和二十五年六月一日現在というのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/133
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134・羽仁五郎
○羽仁五郎君 私が只今伺いましたのは、第一には現在の有力な日刊新聞社が経営権と編集権と、少くとも編集権だけでも結構ですが、編集者が経営において経営権と編集権とが対等な意義を持つて、そしてこの新聞社が普通一般の株式会社及び有限会社等の経営とは異つて言論の自由を発揮しているというふうに私どもは判断をして、本法案によつて特殊の取扱を受けて差支えないというふうに判断し得る材料がおありになつたら見せて頂きたいというのであります。それから第二の資本構成については、ここに拝見をいたします日刊新聞社資本構成調査表というものを拝見しますと、先ず第一に朝日新聞でありますが、この新日新聞の主要株主、これは朝日信用購買組合というのが五万八千余株、上野精一君が四万一千株、村山於藤君三万五千株、村山長挙君が三万一千株、それから報知新聞社では岡田彦七郎君が一万九千味、佐々木嘉助君が一万七千株、毎日新聞でありますと、本田親男君が二千五百株というようなふうに大体においてこの新聞社の株式が極めて少数のかたの手の中に集中されている。而もそれが封建的な同族的乃至特殊の縁故関係に独占されているという資料にはなるようでありますが、そういうふうに見ると、これを特に先に申上げたような意味で日本の新聞社は極めて民主的に経営されている、言論の自由の公器として認めて、商法の中で特に他の一般の株式会社及び有限会社と全くこの点において異るものとして特殊な取扱をするということができないように思うが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/134
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135・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 主なる日刊新聞の実例でありますが、大体編集と資本、大株主、重役というものとの間においては切離して考えられておるようであります。併し今日の大新聞の社長その他の重役は編集から出て行つた人がその衝に当つておられるのであつて、編集の権限は非常に尊重されており、新聞経営は行われておると御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/135
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136・羽仁五郎
○羽仁五郎君 一昨年でありましたか、昨年でありましたか、新聞記者に対する大量的な解雇が行われたことがございますが、当時の日本政府の見解、又占領軍の見解によりますと、新聞記者を雇用するとか解雇するとかいうことは、その新聞社の経営者の権限に属することであるというような見解が発表されたように私は記憶いたしております。そういう御見解でありますと、経営者、即ち只今拝見いたしました資料がすべての資料であるといたしますれば、極く少数のかたがその新聞社の株の大部分を所有しておられ、そのかたが新聞記者の、従つて編集者、記者などの解雇ということも経営権の唯一支配の下に行なつておられるというように理解せざるを得ないと考えるのであります。私は実はそう考えたくない。日本の新聞、朝日、毎日、読売、東京その他の大新聞が経営権と編集権と相並んで尊重しておられるというふうに考えたい。そういうふうでありますならば青んでこの法案に賛成したいのであります。併しながら昨年なり一昨年のいわゆるレツド・パージという場合に、日本の政府、又日本占領軍の当局から発表されましたのに、どうも経営者が首を切るのに何の文句があるかということで、折角働いておられる新聞記者や編集者の地位というものが何ら守られていないのじやないか。それで提案者はよく御承知でありましようが、衆議院において立派な活動をしておられたというところの新聞記者が誤解に基いてそうして経営者の支配的な処置によりまして、再び国会にその姿を見ることができないようになつた、こういう点があるのに、つまりこれは他の一般の株式会社や有限会社においてならばそういうこともあるわけで、経営者がすべてを決定なさるということは当然です。従つてこの株式の譲渡制限、或いは禁止ということは認めないという商法の建前、その点において現在の新聞社が他の株式会社、有限会社と殆んど異るところがないのじやないかという意味で、私としては朝日、毎日、読売などの新聞社から、いやそうでない、我々の社においては経営権と編集権とを、少しとも経営権だけを認めて、編集権なり新聞記者たちの記者としての地位というものを全く認めないで、解雇、雇用その他経営者の一存でどんどんやれるというふうにはやつていない、編集者、記者のほうの考え方というものも尊重しておる。それで一つの新聞社がいわゆる営利的な経営だけでなく、言論の自由、或いはその公器という点もそういう点において認めているのだということの資料をここへ直ちに出して頂ければ、私は直ちにこの法案に賛成したいのであります。直ちでなくて明日でも結構でありますから、どうか提案者のほうから少くとも朝日、毎日、読売、東京等の有力新聞に対して、これこれの点が一般株式会社、有限会社と異つて、経営権だけを主張するのでなく、編集考及び記者の立場というものをも相当に尊重しているという材料をお取り頂きまして、お示し下さるようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/136
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137・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 現在の日刊新聞のうち主な大新聞が、今お話のように編集権を尊重して経営いたしておるというこの形は、私どもが調査いたします際にもいろいろな言葉で聞かされて参つたのでありますが、先年のレツド・パージのような場合におきましても、経営権に基いて斬捨て御免をやつたというわけではないようであつて、それにはそれぞれの解雇の基準があつて、そうせなければ新聞の公正を保つことができないと考えた結果、経営権と編集の関係をそれぞれ考慮をしてあの結論が出たようであります。あの事実をとらえて直ちに編集権は認めておらない、経営権がすべての大きな力を持つていると解釈することは大人げないのではないかと考えております。私どもの考えております事柄とあなたのお尋ねとは全く同じ趣旨であり、御意見のごとく日刊新聞は今後も経営と編集とは共に円満に尊重し合うて進むべきであると考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/137
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138・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の点につきまして、最近イギリスで起つております場合を見ますと、英国においてもこの経営権とそれから編集権というものが公平なバランスをとつていないということが世論として深く憂慮されているのであります。即ち英国においてさえもこの経営権というものがすべてを支配している、編集権というものは殆んど認められていない。そうして世論の認める優秀な新聞記者がいろいろな圧迫によつてその職を失い、これは事実我々もその名を知つておるような有名な新聞社の有名な編集者が、経営権の過大な支配のために馘首されているという事実が英国民の心を深く傷めているのであります。日本においても日本の新聞が英国よりも進んでおれば嬉れしいのでありますが、残念ながらそうでないと思うのであります。只今の状態では聊か安心しかねるのであります。提案者の御答弁に言うように、日本は英国より進んでおるのならば喜ぶのでありますが、事実はそうでないのであります。従いましてお願いしておりますような、これは余りお手数を要しないと思いますので、朝日、毎日、読売、東京或いは共同通信、この五つぐらいで結構でありますから、経営権だけで万事解決していない、編集権というものを相当に認めている、これをただ気持の上だけではなく、正規の何というのですか、法律というわけじやないでしようが、契約といいますか、規約といいますか、そういつたものの中で認められているという資料を是非お取り下さつてお示し願いたいということを重ねてお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/138
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139・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 只今のお説私ども同感でありますが、朝日新聞の定款によりますと、株主総会は編集には容喙しないということを明らかにいたしておりまして、そうして大株主の株主権の行使に制限を加えまして、小株主の二十分の一以上の権限を行使できないというふうにして大株主の力をしぼつております。こういうふうなことで大株主が編集に大きな圧力を加えることを制限いたしているのが現状であるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/139
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140・羽仁五郎
○羽仁五郎君 たびたび申して恐縮でありますけれども、朝日、毎日、読売、東京、共同通信社、その他が経済権一本槍で押し通していない、編集権というものを認めている。新興記者の言論の自由というものを束縛していないということは私も実は信じたいのでありますが、只今申上げましたように、英国などにおいてもこれがなかなか信じられないという状況でありますし、日本においては昨年か一昨年か、さまざまの機会に経営権というものがすべてを支配するのであつて、今言つたような新聞記者の言論の自由を守るという意味における編集権というふうなものは特に認められていないのだという見解の発表もございましたし、従いましてもう一度重ねて甚だ恐縮でありますが、それらの大新聞社がそういう意味において決して経営権たけで、経営権の唯一支配というものを行なつていない。編集権、或いは新聞証言の言論の自由というものを守るに足る規定を持つているという確証を是非お示しを願いたい。この確証を得ませんと本案を審議することはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/140
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141・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 共同は社団法人でありますから、従つて定款その他についてはつきりしておりませんが、お手許に差上げてあります定款中制限条項例文というのがございますが、これを御覧頂きますと、編集権の尊重のために株主権の一部に制限を加えておることがはつきりいたします。御覧をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/141
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142・羽仁五郎
○羽仁五郎君 どの点でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/142
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143・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 4の議決権の制限というところに、Aに、「但其所有株式数本会社株式数ノ二十分ノ一ヲ超ユル場合ハ超過株式ニ付テハ議決権ヲ行使スルコトヲ得ス」これが朝日です。B「株主の議決権は拾株までは壱株に付壱個、拾壱株以上弐拾株までは拾壱個、弐拾壱株以上は弐拾株及び共の端数に付壱個とす」これは島根でありますが、こうして大株主の株主権の制限をいたしております。それからD「本会社ノ株式ハ同一株主ニシテ総株式数の四分ノ一以上ヲ保有スルコトヲ得ズ」こうして大株主を制限いたしております。
それから6決議事項の制限「株主総会は新聞紙の編集と記事論説に干渉することは出来ない」これは毎日であります。これは朝日も同様の規定をいたしております。ここらで御承知を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/143
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144・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今お示しの資料だけで私の伺つていることが満足し得るというように考えられないことは甚だ残念に思うのであります。でそれは例えばこの4にありますような、議決権の制限が行われる株式会社乃至有限会社があれば、皆それらの株式会社なり有限会社は株式の譲渡制限なり禁止なりをなすことができるというふうにはまさかお考えにならないと思うのであります。それから決議事項の制限に、「株主総会は新聞紙の編集と記事論説に干渉することは出来ない」毎日の場合でありますが、これを以て、こういう規定があるにもかかわらず実際上において優秀なる新聞記者が他の何らの理由でなく、つまり理由不明にして解雇せられるというような事実があるのでありますから、これではそれらの点についてのはつきりした新聞社を特に一般の株式会社なり有限会社と別個の取扱をするに足るだけの根拠とするには足らないように思いますので、もう少し資料を見せて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/144
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145・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) 只今私どもの手許にある資料は今申上げた程度でありますが、御調のような編集権の尊重をする、そのために経営権どの関係をもう少し明らかにしようするならば、別の方法によりまして、別の法律を作るという形においてその目的は達せられるのでありまして、私どもがこの法律によつてやりたいと思いまするのは、今日の新聞の伝統を保つ、今日の資本の形から知らぬうちに動かされて、その資本の圧力から新聞の伝統が壊れる、報道の正確が保たれない、言論の自由が圧迫されるというようなことがあつてはならないと考えて、ここにこの提案をいたしておるのでありますが、これを若しこの法律によつて只今申上げた形が十分でないにいたしましても、羽仁さんのおつしやつていらつしやる編集権の尊重は、単に株主の株主権、株式の譲渡の自由を認めたところで、より以上危険があるわけでありまして、むしろ今日の形におけるこの編集とそうして経営との関係が相当うまく行つておると考えているのでありますが、これに若し非難すべき点があるならば、私は日本の読者が自由にそれを選択する、自由に批判をする権利を読者が持つているのであるから、今日の形においてこれを保持することが新聞の公正を保ち得ることになるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/145
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146・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の御説明は残念ながら納得し得ないので、重ねてお伺いいたしますが、第一の経営権、新聞社は特に他の株式会社乃至有限会社と異つて経営権の過大なる支配というものをしないということについて別個の法律があればよろしいのだというふうにおつしやいますが、そういうふうにどうも了解できないのであります。現在の新聞社を別個に扱い得るか得ないかということによつて、この法律ができるかできないかでありますから、だからその点において今の新聞社というものは他の株式会社や有限会社と少しも違わないのだ。事実そういうふうに言うことを私は甚だ悲しむのでありますが、今日の新聞記者諸君を御覧になりまして、これが他の会社の社員諸君と非常に異るかどうか、私はまだ弱年でありますが、先輩は過去における新聞記者というものをよく御承知だろうと思う。これは一般株式会社、有限会社の社員とは全く異る言論の自由を使命とし、何人にも掣肘されないで社会の木鐸を以て任じて健筆を振つていた。併し現在の朝日、毎日、読売等の新聞記者を御覧になりますと、議会に派遣されておるかたがたを御覧になりまして、果してこれが他の株式会社、有限会社の社員とは全く性質を異にする取扱を受けるに必要にして十分なほどの質的差違を持つているかどうかということをお考えになると、これは重大な問題であります。で、我々は必ずしもそう断定するのではないのでありまして、或いはそうではないかも知れない。従つてそうではないという確証をお示し下されば、私案はこの法案に喜んで賛成したいと思つているものなのでありますから、どうかそういう資料を惜まれないで、朝日、毎日、読売、東京その他の各社が喜んでそういう資料を出されると思いますから、惜まれないでお出しを願いたいということをもう一度君願いするのであります。
それから次に、読者が新聞を選択するということについての提案者の御説明は、実に高邁なる御識見でありまして、深く敬意を表します。併しながら現状におきまして、朝日、読売、毎日等の大新聞が巨大なる資本と完備した輪転機その他の設備を持ち、且今おつしやいますように国民多年のこの新聞紙に対する愛情というものを万一にも利用しておるとするならば、到底新らしい新聞が発生して国民が自由に今おつしやいますような意味で新聞を選択するというようなことができないのじやないか。私も実は朝日新聞、毎日新聞、読売新聞などは長年、それこそお祖父さんの代からの信頼というものを持つていた。併しそれらの新聞が過去二十年間に亘つて我々を欺いて、そうしてなすべからざる戦争を支持し、破れつある戦争を勝利と報道して国民を今日に導いたところを以て見れば、今日の日本の朝日、毎日、読売その他の諸新聞が国民の新聞に対する信頼、さつきもおつしやつたような長年の伝統、信頼というものを裏切つていた事実が最近の事実としてあるのでありますから、従つて今日不幸にしてなおそういうことが続けられやしないか。朝日新聞に対する国民の信頼というものが却つて裏切られて再び国民の不幸を招きはしないか。皆朝日に書いてあることは本当だと思うのです。丁度戦争中、まさか朝日は嘘を書かないだろうとこういうふうに思つた。併し当時期日がどうしてこんなことになつたかと言えば、こんなことを詳しく御説明申上げることは釈迦に説法でありまつしようけれども、紙が欲しい、紙を手に入れるためには軍部の言うことを聞かなければならない。古野伊之助さんのような新聞界の先輩が遂にサーベルの前に膝を屈して、そうして遂に言論の自由というものを失つたという事実があるのでありますから、従いまして、お説のような国民の良識によつて新聞を自由に撰ぶということが最近まで日本になかつたのであります。又現在もそれが生じているというふうには考えられませんので、どうか繰返しお願いして甚だ恐縮でありますが、現在の新聞が決して経営権一点張りでやつておらない、編集権を十分尊重している、これについてはこういう難訓を提出するという、その資料を惜しまれないで御提出下さるように懇願をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/146
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147・左藤義詮
○左藤義詮君 議事進行について……、羽仁さんの御要求、羽仁さん自身は御満足ができないようでありまするが、私どもといたしましては、先ほどの提案者の御説明で大体了承しておりますので、その点については後刻資料を御提出願つて、若しさような心配がありますれば、又別途立案の方法もあると思いまするのですが、大分会期も切迫して、この法案に対する論議も尽されて参りましたので、この際質疑を打切つて討論採決せられんことの動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/147
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148・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の動機に私反対なのであります。と申しますのは、この法案は商法に対する一般的な影響というものも実に重大なものでありますし、それから第二に、現在の新聞が決して経営棒だけによつて支配されておらないという資料は、私が納得しないだけでなく、戦争中にその経営権の一点張りであるために軍部の支配に屈した、その程度の経営権、そういう種類の経営権と同じものが今日残つているのであります。従つて数年前にその軍部の支配に屈服した経営権が今日如何なる支配にも屈服しないということは、私はどなたがお考えになつてもできないと思う。これはただ新聞社の社長なり何なり、村山さんなり何なりというかたは過去において、大正年代などにはそういう圧迫に対して随分抵抗されたかたであります。我々も非常に尊敬しておる。そういう右翼に縛られても蹴られても飽くまで頑張つたというように個人的にはなかなか節操があり、新聞の自由を守られるかたなのですが、併しその新聞の構成が経営権だけで万事を決定することになつておれば、遂に紙を得るために新聞の節操を失うという事実が今日も同じようにして続いておるのでありますから、私が満足しないばかりでなく、誰が見ても満足しないのではないかと思う。誰が見ても満足しない程度の資料で本法案を可決せられるということは、私はこの委員会としても、又参議院としても、或いは名誉ではないのではないかというふうに心配いたしますので、私はこれ以上いろいろ申上げるということを差控えますので、今日でも明日でもその程度の材料をお出し願つて、そこで喜こんで賛成をしたいというふうに思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/148
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149・左藤義詮
○左藤義詮君 軍閥の専制の悪夢を御心配になりますが、そのようなことを再び繰返さないように、我々は新らしい憲法の下に一切のものが皆生れ変つてやつておるのでありまして、私は現在この法律といたしましてはこれで心配がつないものと信じます。先ほどの私の動議の御採決を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/149
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150・伊藤修
○伊藤修君 決を採る前にちよつと申上げたいと思います。今羽仁さんからいろいろ御要求になつた点は至極御尤もだとと思いますが、これは私はそう申しては悪いが、提案者の議員立法としての扱い方は非常にどつか欠けておるところがあるのではないかと思うのです。もつと資料を十分お出し下さつて、先般から再々申上げておるごとく、参議院の各委員会の審議に資するように前以てお手当を願いたいと思います。又資料は十分お出し願うことが好ましいことだと思うのであります。又審議に相当の時日をかして頂くということもお考え合せ願いたいと思います。かように会期が切迫して、今羽仁さんの仰せの御尤もの趣旨を仮にここで貫けば、本案に対しまして、遂には商法の施行を受ける現在の新聞社のあり方というものが相当の変貌を来すということが予想されるのですから、そういう結果的重大性を考えましてこの際今羽仁さんの御要求の資料については本日の審議には間に会いませんけれども、少くとも会期中に出して頂くように、一つここで重ねてお願いしておきます。そうして本案の進行を図つて頂きたいと、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/150
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151・押谷富三
○衆議院議員(押谷富三君) この法律案につきましては、審議過程におきまして手違いがあつたことは、私どもも遺憾に存じておるところでありまして、当初は改正商法の実施延期という大きな狙いからその目的が達せられるものという想定の下に、この法案を考えておりまして、そうなればゆつくり数カ月かかつて審議してもなお尽し得るものであると考えておつたのでありますが、改正商法の実施が七月一日ということに確定をいたしたものですから、而もその確定が極く最近に至つてきまりましたために、この法案の審議を急拠やらなければならぬという事情に迫つたのであります。それがために参議院方面に向つて資料の提出でありますとか、或いは本案の提出に対する御了解を得る手続きにおいて、非常に手落ちのあつたことを遺憾に考えております。今後とも十分注意をいたしまして、かようなことのないように進みたいと思つております。資料を急いで取揃えましてお手許まで出しますから、どうぞよろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/151
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152・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/152
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153・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/153
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154・羽仁五郎
○羽仁五郎君 実際この過去の誤りを繰返さないということは顧る大事なことで、我々国会が果して民主主義を守れるかどうか、再びこの議事殿堂が国会以外の人々の手によつて占領されるようなことはないかどうか、それを我我が我々の自力だけで守るということはできない。どうしても言論の自由によつて守らなければならない。二・二六事件当時にしても言論機関がその使命を果すことができたならばああした惨事を招かなかつたでしよう。従つて八月十五日を導かなかつたかも知れない。それが過去において実に悲惨に失敗している。その悲惨を顧ることが我我の常に念頭を去らない、忘れてはならないことです。従いまして国会自身が深い決意を持つことは勿論ですが、併し新聞社がそういう力に屈しないためには、単に株式の譲渡制限とか、禁止とかいう程度では駄目なのでありまして、それだけの特権を商法において認めんがためにはその新聞社の中において経営権だけで万事を決定しないで、新聞の編集者、記者は事実何物をも恐れず言論の自由を発揮し得るように……忽ちに首を切られてしまう、そうして切られた新聞記者はもはや立入ることもできない、実に無惨な切られ方をしていることは御承知の通りです。ああいうことをすれば新聞社は恐怖のためにその報道の義務を行うことができない。先月の人間という雑誌に東京新聞の文芸部の記者が首を切られて帰つて奥さんに俺は首を切られたと言つた。それを聞いた奥さんがお乳がとまつてしまつた。実際そういうふうな不意討ちに、まじめに熱心に仕事をしている新聞記者が首切られれば奥さんの乳もとまつてしまう。そういう状況なんです。新聞記者を不安にさらしてどうして言論の自由が守れますか、どうしても国会が飽くまで民主主義を守ることができるかはその点に関係することでありますので、もはや申上げませんが、どうかこの際この法律案を通過せられます際に、朝日、読売、毎日等の大新聞がこの点について確実なる保証を我々に示されますよう是非ともお願いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/154
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155・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 他に御質疑がなければ本案に対する質疑は終了いたしたものと認めてこれより採決に入ります。討論は便宜これを省略し、直ちに採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/155
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156・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 御異議がないと認めましてこれより採決に入ります。本案に御賛成のおかたの御挙手を願います。
〔挙手者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/156
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157・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 多数、よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容につきましては、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/157
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158・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 御異議がないと認めます。
それから本案につきましてそれぞれ御賛成のかたの御署名を願います。
多数意見者署名
岡部 常 宮城 タマヨ
左藤 義詮 山田 佐一
北村 一男発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/158
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159・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 次に住民登録法案を議題に供します。本案に対し御質疑のあるかたは御質疑を願います。
〔「質疑なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/159
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160・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/160
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161・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 御異議ないものと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見がございましたら、討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/161
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162・伊藤修
○伊藤修君 私はこの際本案に対しまして修正の意見を附したいと思います。
住民登録法案の一部を次のように修正する。
目次中「第二十六条」を「第二十五条」に、「第二十七条」を「第二十六条」に改める。
第四条第二項を削る。第十条第二項中「第四条第二項の規定による記載又は」を削る。
第二十二条第二項但書を削る。
第二十四条第一項但書中第二十二条第二項但書に規定する事項に変更を生じた場合、一を削る。
第三十一条第一項中「第四条第一項」を「第四条」に改める。
第三十三条中「第三十一条」を「第三十条」に改める。
第二十五条を削り、第二十六条を第二十五条とし、以下順次一条ずつ繰り上げる。
この修正の理由は質疑中に十分申上げたことでありますから、この際省略いたしたいと思います。ただこの修正案の内容が非常にたくさんあるように見受けますけれども、これは第四条の第二項を削つた関係上、あとの条文の整理をいたしただけでありまして、本案の内容には何ら関係がないのでありますから、この点を附して申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/162
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163・羽仁五郎
○羽仁五郎君 只今の修正案について私は賛成をいたすものであります。なお実はもつと強い修正をして頂きたいというふうに考えているのでありますけれども、これはやはり現在のこのイギリスの議会で国勢調査に関する問題が問題にされています。事実これはこの際是非述べておかなければならないと思うのでありますが、皆さんもよく御承知のように、旧約聖書の中にダビデが人民の数を数えるということをやつたために、パレスチナに疫病が起つたということが書いてあります。即もこの行政上の便宜ということを以て個人の自由、或いは秘密というものを侵すことがあると、その結果は実に恐るべきものがあるということが歴史的に明らかにされておるのであります。ところが最近戦争とか、或いは全体主義とか、国家主義とか、そういう風潮の中で、この個人の私をも侵して調査をなすというふうな弊風が生じておる。これは厳に戒めなければならないことであつて、従つて英国などにおいては、国勢調査の目的は統計に限るものであつて、その統計以外にこれを絶対に用いてはならない。個人のコンフイデンスというものは、飽くまで個人の秘密というものは尊重しなけりやならん。従つて公務員がこれを洩らしたような場合には二カ年に及ぶような刑罰を科している。こういうふうに各個人の自由、或いはコンライデンスというものを尊重するという観念が不幸にして日本にはまだ確立していないのであります。その意味からこの住民登録法というようなものが非常に軽々しく若し施行されることがあると、これは実際ダビデのように賢明なる王が人民を数えようとしたために、パレスチナに疫病が流行するというような恐るべき結果が起るということを十分に考えられて、本法案の施行については、今申上げましたように決して個人の自由、又個人の秘密、これを侵さないというようにして頂くものと確信をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/163
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164・須藤五郎
○須藤五郎君 只今修正案に対しまして羽仁議員から賛成討論をなすつたようでありますが、私はなおこの修正だけでは賛成することはできません。簡単に反対の理由を申述べたいと存じます。
只今羽仁委員がおつしやつたように、この二項の削除によりまして、その点の虞れはなくなつたと思うのでありますが、なお私たちの立場から申しますと、この二十九条、三十条、三十一条、三十二、三十三というこの条項におきまして、我々の基本的人権が踏みにじられておると、そういうように考えられるのであります。提案者は私の質問に対しまして、尋ねられた場合黙つておれば、それは積極的な拒否とならない、処断されない、いわゆる現行犯として逮捕される虞れはないが、そういうことは申上げることができません、そういう書類はお見せすることができませんというふうに言えば、現行犯として逮捕され、なお五万円の罰金に処せられるというようなそういう御答弁であつたと思うのであります。
私たちは黙つておることと、そういうことは言えませんということと、その間に何ら区別をすることができない。又恐らく人民大衆はそういう区別をすることができなくて、いつかはこの条文によつて五万円の罰金刑を科せられるというそういう事態がたびたび起つて来るだろうと思うのであります。私たちは言論の自由を憲法において認められて、なお刑法においてすらも黙秘権が認められておるのに、こういう問題でそれが認められない。ただ言えないと言つて拒否しただけで現行犯に問われるようでは、いわゆるこれではますます我々日本人は黙りこくつて、ものを言うことができなくなる。即ち唇寒し秋の国というそういう状態が日本に来るのではないか、そういう心配が強くするわけなんであります。ですから私はそういう立場からこの条項が全部削除されなければこの法案に賛成することはできません。簡単に反対の意思を表明したいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/164
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165・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 他に御発言はございませんか……他に御意見もございませんから、討論は終局したものと認めて御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/165
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166・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 御異議がないものと認めます。それではこれより採決に入ります。
住民登録法案について採決いたします。先ず討論中にありました伊藤君の修正案を議題に供します。伊藤君提出の修正案に賛成のかたの御挙手を願います。
〔挙手者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/166
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167・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 多数でございます。よつて伊藤君提出の修正案は可決されました。
次に只今採決されました伊藤君の修正にかかる部分を除いて、本法案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の諸君の御挙手を願います。
〔挙手者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/167
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168・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 多数と認めます。よつて住民登録法案は多数を以て修正可決すべきものと決定いたしました。なお本会議おにける委員長の口頭報告の内容につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/168
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169・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 御異議ないと認めます。本案についてそれぞれ賛成のかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
左藤 義詮 宮城 タマヨ
岡部 常 山田 佐一
北村 一男 齋 武雄
伊藤 修 羽仁 五郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/169
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170・鈴木安孝
○委員長(鈴木安孝君) 本日はこれで散会いたします。
午後五時十八分散会
出席者は左の通り。
委員長 鈴木 安孝君
理事
伊藤 修君
宮城タマヨ君
委員
北村 一男君
左藤 義詮君
山田 佐一君
齋 武雄君
岡部 常君
中山 福藏君
羽仁 五郎君
須藤 五郎君
衆議院議員
北川 定務君
押谷 富三君
事務局側
常任委員会専門
員 長谷川 宏君
衆議院事務局側
常任委員会専門
員 村 教三君
常任委員会専門
員 小木 貞一君
衆議院法制局側
参 事
(第二部長) 福原 忠男君
説明員
民事法務長官総
務室主幹 平賀 健太君
法務府民事局第
六課長 長谷川 信蔵君
参考人
東京土地家屋調
査士会副会長 大友 万君
日本計理士会常
任理事 住田 金作君
日本司法書士連
合会理事長 佐藤 半蔵君
東京法務局長 鈴木信次郎君
第一東京弁護士
会所属弁護士 志方 篤君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015206X02319510531/170
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