1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月二十七日(火曜日)
午前十時五十分開議
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議事日程 第三十号
昭和二十六年三月二十七日
午前十時開議
第一 漁船法の一部を改正する法律案(秋山俊一郎君外三名発議)(委員長報告)
第二 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第三 外国為替資金特別会計法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 緊要物資輸入基金特別会計法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 農業共済再保險特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 国家行政組織法の一部を改正する法律案(内閣拠出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 大蔵省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/0
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/1
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際、日程に追加して、電気事業再編成の実施に関する決議案(西出隆男君ほか六名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認ます。本決議案につきましては西田隆男君ほか六名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/3
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。西田隆男君。
〔西田隆男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/4
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005・西田隆男
○西田隆男君 只今上程になりました電気事業再編成の実施に関する決議案について、提案者の一人としてその趣旨の弁明をいたします。
先ず決議案文を朗読いたします。
電気事業再編成の実施に関する決議
電気事業の再編成はわが国経済の前途を左右し、産業の興隆と民生の安定に至大な影響を及ぼす重大な問題である。従つてその実施に当つては公益事業委員会は公益的見地より関係当事者の利害を公正に調整するとともに国民の前にいささかの疑惑をも残してはならない。
しかるに、本院が十回にわたり関係人の出席を求めて調査した結果、本問題に関する公益事業委員会の措置は役員人事、出資比率、未開発電源の帰属等の処理に妥当を欠く点ありと認められるのみならず、同委員会の運営必ずしも明朗ならず、これがため徒らに事態を紛糾せしめ、将来の電気事業の運営に暗影を投ずる虞れあることは洵に遺憾である。
依つて、本院は公益事業委員会が速やかに従来の態度を改め、決定指令において公正妥当な措置を講じ、本院の期待に副うべく善処せんことを強く要望する。
右決議する。
御承知のごとく電力再編成の問題は、日本の唯一の電気事業者である日発、配電の間においてすら、意見の一致を見るに至らなかつた問題であり、論議を盡し、討議を重ねて、多数決によつて決定するといたしましても、なかなか至難な問題なのであります。然るにこれらの論議を盡さず、討議を避け、突如として昨年十一月二十四日ポツダム政令を以て強行公布されました電気事業再編成令及び公共事業令に基いて、現在の日発、九配電会社を解散し、従来の国家管理的色彩を拂拭し、発送配電を一貫した九地域別の新会社を設立し、以て電気事業の運営を民主的に行わしめんとするものであり、公益事業委員会がこの重大な電気事業再編成の実施に当ることとなつておるのであります。今更申上げるまでもなく、電気事業は我が国経済の確立及び民生の安定にとつては極めて重要なる基礎産業であります。従つてその再編成が適正且つ妥当に実施せられるか否かは、国民の福祉にかかわる非常に重要な問題であります。本院はかかる見地から再編成の実施に重大なる関心を持ち、世論の動向を考慮しつつ、電力問題に関する特別委員会において、二月以降今日まで十回に亘り電力委員会を開き、公益事業委員会委員、証人、参考人等の出席を求めて愼重に審議を重ねて参つたのであります。その審議の結果として、去る三月一日公益事業委員会が発表いたしました指令案の決定は、新会社の役員の人事、株式交付比率及び清算費等の問題の処理に適正妥当を欠く点のあることを認めざるを得なかつたのであります。かくては電気事業将来の運営に甚大なる支障を来たし、延いては産業の興隆、民生の安定に重大なる障害を来たすことが予見されるのであります。
先ず役員の人事について申上げます。役員の人事は、電気事業再編成の趣旨を十分に生かして、国民待望の電源の開発、サービスの向上、経理の改善、資本の調達等の責任を完全に果し得る有為の人材を起用すべきであり、而も人の和に特段の注意が拂われていなければならないのであります。然るに公益事業委員会の新会社の人事は、その首脳たるべき会長、社長の両者のいずれが実際の首長たるかについて、松本委員長と松永委員長代理との間においてすら見解の相違があり、そのために折角有為の人材を求め得ないのみか、日発小坂総裁との間にも紛争を起し、日発側の予定された役員はその就任を拒否するの態度に出で、電産労組又ストあえて辞せずとの決意を示し、又特定の役員を告発するなど、事態の紛糾を招いておりまする現実は、関係当事者に強く反省を促すと共に、公益事業委員会の電気事業の重要性に対する認識の時代悪党のズレの大きさのためであり、殊に新会社の役員数を平均一社二十数名の多数に決定いたしましたことは、如何に人事問題に当惑した結果とは言え、国民の期待に反するも又甚だしと言わなければなりません。
次に出資比率について申上げます。解散すべき日発及び九配電会社の株主の財産権を公平且つ平等に保護し、特に多数の小株主の保護に万全を期すべきものであるにもかかわらず、株主権の保護に多々欠けておる点のあることであります。新会社の株式交付について、委員会は日発の主張に対し、時間的余裕なしとして、帳簿価格を基礎として一対一の交付比率を決定いたしました。その一対一の代償として日先側が要求いたしました特別配当金一株につき二十五円に対しては、資産含みの対価としてではなく、日発株主が新九会社の株式を分割交付される不利益の補償として一株につき十円を交付するという裁定を行いました。日先株主を不平等に取扱つたのであります。更に新会社の株券を額面五百円として、これによつて生ずる八万七千人の端株主を電気事業の投資着たる地位から脱落せしめて、将来の希望を失わせ、而も未だに端株の整理方針を明示していないのは、憲法上認められておる所有権を不当に侵害し、端株主の保護を全く顧みざるものと言わなければなりません。その他、日発の貯蔵品の讓渡、清算費用の決定等の根拠につきにましても、我々の納得しがたいものがあるのであります。
以上のほか、工事中及び未開発電源の帰属問題についても、電力委員会における富山県知事の県民を代表しての声涙共に下る悲痛なる陳述に対しても何らの考慮も拂われていないのは、誠に遺憾に堪えません。
要するに公益事業委員会は、電気事業者、電気投資家及び電力消費者たる国民の利益を公益的立場において調整し、以て国民の福祉を増進すべき使命を持つ機関なのであります。然るに電力再編成の実施に当つて同委員会のとつた措置は、以上御説明いたしました通り、若し現在の指令案を強行いたしますならば、今後の運営において国民の協力と納得を収め得られるものなりや否やについて多大の疑問を残すものと言わなければなりません。よろしく公益事業委員会は、その面目に囚われることなく、従来の態度を改め、委員会本来の職能を反省してその運営を明朗にし、以て国民の輿望と信頼に応え得る用意がなくてはならないと思うのであります。
よつて本院は、聽聞会も終了いたしました現在、公益事業委員会は国民の代表たる国会の意のあるところを明察して、決定指令において公正且つ妥当なる措置を講じ、本院の期待に副うべく善処せられんことを強く要望して決議案の趣旨弁明を終ります。(拍手、「公益事業委員会の責任者はどうした、呼べ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/5
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006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。栗山良夫君。
〔「公益事業委員会の責任者が来ないことがあるか」と呼ぶ者あり〕
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/6
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007・栗山良夫
○栗山良夫君 只今提案に相成りました電気事業再編成の実施に関する決議案につきまして、我が日本の社会党は全面的に、積極的に、且つ強力に賛成の意を明らかにいたすものであります。
本日この重要なる会議に、公益事業委員会から一人も出席に相成つていないことは、極めて遺憾であると申さなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)如何なる事情があるかは存じませんけれども、本院は決して醉狂で決議案を上程いたしておるのではございません。紛糾に紛糾を重ねたこの重要問題も、参議院における十数回に亘りまするところの会議において公益委員会の諸君の発言は、聽聞会の結果によりまして善処をいたしたいという含みある発言が最後にはなされたのであります。そこで私どもは大いにこれに期待をいたしまして、昨日は電力特別委員会におきまして、子の具体的善処の内容を知るべく、公益委員会の出席を求めたのでありますが、遂に昨日の委員今にも山出席せられなかつたのであります。然るにその具体的な内容は今朝の新聞に一齊に報道せられているのであります。かくのごときは公益委員会が国会を軽視しておるものと見なくてはならないのであります。ここに私は、更に本院が強い決意を以ちましてこの決議を決定せられ、公益委員会の猛反省を促されたいことを要望してやまないものであります。
以下具体的に賛成の理由を申述べまするが、その前に一言、私は吉田内閣及び自由党に対しまして一大苦言を呈せざるを得ないのであります。御案内の通りに、電力再編成問題につきましては、終戦後の我が国経済の民主化のために、集中排除法の実施によりまして、公益に奉仕する電気事業の新らしい姿を発見するために、幾多の議論が激しく展開されたのであります。なかんずく反省せらるべきは、松永電力再編成審議会の結論といたしまして、いわゆる松永私案がそのまま第七国会に提出せられまするや、甲論乙駁容易に結論を得ないで流産と相成つたことであります。このことは、公益事業といたしまして、将来の電気事業のあり方について国会が愼重に審議をいたすべきことを国民が卒直に表明せられたことにほかならないのであります。然るに吉田内閣及び自由党は、この国民輿論を集約する政治力を失い、電力事業再編成議会と称せられましたところの第九国会の劈頭において、極めて便宜的に、国会の講論を封殺すべく、未成熟の松永私案をポツダム政令による強権を以て断を下したのであります。今日(「脱線するなよ」と呼ぶ者あり)黙つて聞き給え。公益事業委員会の性格が曖昧であり、あたかも第三権力機関のごとき振舞を呈し、このためにかくまで事態を紛糾に導いた責任は、挙げて吉田内閣及び(ノーノー」と呼ぶ者あり)自由党がこれを負わなくてはならぬと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も電力事業の将来の運営に一大暗影を投じたこの事態の収拾に関しまして、吉田首相以下関係閣僚及び自由党が、傍観的態度を以ちまして、何ら積極的打開の努力を拂つていないことは、誠に遺憾千万であると言わなくてはならぬのであります。(「違う違う、何を言つてるんだ」と呼ぶ者あり)さて、只今、(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)黙つて聞き給え。君は……。(笑声)御説明相成りましたる決議案文にも明瞭なるごとく、今日まで公益委員会がとつて参りましたる態度は、みずから好んで紛糾を招致した誹りを免れないのであります。(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)公益事業委員会の中心人物は……(「本論」と呼ぶ者あり)議長発言を整理して下さい。 (笑声、「時間がない、時間が」「本論に入れ」と呼ぶ者あり)みずから好んで公益事業委員会の中心入物は、曾つて日発及び九配電会社の設立に当り、当時軍部官僚の軍国主義的(「何を言つてる、何を」と呼ぶ者あり)産業乗取りの野望に対しまして強力に反対した人々であります。この人々が今日、新時代の趨勢を理解し得ないで、曾つての私的独占企業の復元に狂奔せられておりますることは笑止の至りであります。かくのごときはまさに暴に酬ゆるに暴を以てせんとするところの封建的思想の現われでありまして、民主主義とはおよそ縁遠い所在であると言わなくてはならぬのであります。(「笑止千万」と呼ぶ者あり)公共事業令におきましては、初代の委員は国会の同意を要しないこととしておりまするが、飽くまでもその精神は、公共事業令第七條に明記されておりまするごとく、国会の同意を得て内閣総理大臣が任命することでなくてはなりません。公益委員の諸君及び吉田総理大臣がこの精神を把握いたしまして、国会に対して責任を負う、即ち国民に対して責任を負う気持の一片だに有しておられましたならば、今日のごとき事態の紛糾は避け得られたものであると確信をして疑わないのであります。(拍手)この理由によりまして、国会は、現委員を任命いたしましたる政府及び公益委員の諸君に対して厳重なる反省を促すものであります。又反省の度合如何によりましては、あえてこれを糺弾するのにやぶさかでないのであります。(拍手)
更に、只今紛糾の中心となつておりまする問題は、新会社の役員人事の一点に盡きると申して過言でございません。無論、事業の運営は人にあるのでありまするから、これに議論が集中いたしますることは当然でありまするが、世論が示しておりまするごとく、今回の人事は松永委員の家族会社設立の野望であると極論する向きもありまするほどに、松永一辺倒の人事と称して過言でないのであります。電力事業の分断に賛成いたしたる諸君といえども、人事がかくのごとく一部の人々に壟断せられることまでは賛成せられたわけはないと思うのであります。殊に松永委員と因縁浅からぬ関東地区の新会社の社長に予定されておる御仁は、曾て電力事業経営者会議においても、常に異を立てて関東独善を振り廻し、その協調を破つた人であり又電気産業労働組合が中央労働委員会に提訴いたしましたるごとく、労使対等の立場において事業の発展に協力すべき労働組合の御用化専念し、かずかずの不当労働行為を行なつた人であると言われているのであります。このことは私が指摘するのみではございません。昨年五月の新潟における電気産業労働組合の全国大会におきまして、GHQ労働課のプラツテイ氏は、その祝辞の中において力強く、「関東配電労働組合の現在の存在は果して労働組合であるかないか検討を要する。この組合が組合員全部のために本当の仕事をしているかどうか、諸君は十分に検討せられたい。この組合の問題については外部の力が非常な圧力を加えていることを見逃すことはできません。私がこの大会においてお願いいたしたいことは、諸君の手によつてこの関東地区の組合員を元の電産に引戻すように努力して頂きたい。諸君が特別の役員を選び、そのために特別の基金を積んで努力して頂きたい。諸君はこの関東地区の組合が御用化されて、御用組合ができるまで待つている手はないと存じます」と、極めて力強く電産労働組合を激励されたのであります。而もこの後、執拗に御用化工作が行われておりますために、関東の組合員は泣く泣く御用組合に加入しつつある状況であります。従いまして、若し公益委員会がこのような不徳の人を含み且つ一辺倒の人事を強行いたしまするならば、人事の紛糾は、広く、長く、深く電気事業の内部に食い入り、大なる禍根を残すものであると言わなければなりません。松本委員長は、事業運営の要諦は和衷協同の精神に則る人の和を得る人事でなくてはならぬと力説されておるのであります。如何に優秀な個人でありましようとも、時代感覚の鋭さの上に築かれる人の和を欠く人事は落第であります。公益委員会はあらゆる行きがかりを捨て、電気事業百年の計を立てるために、小異を捨てて大同に就かれんことを要求するものであります。
次に一段と強調しなければなりませんことは、電気事業再編成令第一條にありまするところの、再編成の目的が公共の利益のために行われなければならぬということであります。今日、人事問題以上に国民が期待し、又聞かんとし、知らんとしておりますることは、果して電気料金がどうなるか、電力の融通は果して円滑に行い得るか、電源の開発は如何に進められるかということであります。然るに公益委員会は人事問題のみに没入いたしまして、国民が重大関心を寄せておるこの種の問題の解決に極めて不熱心であることは、私どもといたしまして全く了承いたしかねるのであります。殊に公益委員会が仮指令案で明らかにいたしました新会社の収益計算計画書のごときは、全く実現不可能の空論に過ぎないのであります。電力の損失率が三〇%を割ることは、我が国今日の電気事業の実情からいたしまして不可能に近いのでございますが、それにもかかわらず、これを二八・四%として電力の配分計画を樹立しておるのであります。而もこの計算におきまして、河川の出水率を六カ年平均の一〇%増しと仮想いたしまして、なお且つ年間八十億円の赤字、一割の電気料金の値上げを必至といたしておるのであります。併しながら平年に対しまして一割の渇水を生じ且つ損失率が三〇%を上廻るがごとき場合におきましては、恐らく五割以上の電気料金の値上げは必至であります。電気に関する国民生活安定上極めて憂慮すべきものがございます。公益委員会が徒らに人事の問題の紛糾を求めながら、国民生活及び産業活動に至大の関係を有するこの種の問題の研究をおろそかにしておりますることは、何といたしましても、その本来の公益事業委員会の責務を忘れておるものではないかと断ぜざるを得ないのであります。
與えられた時間が十分ございませんので、詳細に且つ具体的に意見を述べる自由を持ちませんが、私は只今申上げました基本的理由によりまして、公益事業委員会の猛反省と善処とを促しまするために、本決議案に全幅的に賛成いたすことを強調いたすものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 須藤五郎君。
〔須藤五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/8
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009・須藤五郎
○須藤五郎君 私は日本共産党を代表しまして、この決議案に賛成の意を表するものであります。
参議院電力特別委員会は、我が国の将来に重大なる関係ある電力再編成に関し、非常なる注意を以て論議を進めつつあつたのでありますが、昨年第九国会劈頭ポ政令によりまして思いもよらざる解決を見るに至つたのであります。その後、公益事業委員会が発足し、その処理に当ることになつたのでありますが、我々の見るところ、電力再編成をめぐつて種々取沙汰されたところの電力界の暗雲は、公正であるべき公益事業委員会に蔽いかぶさり、国民の前に多くの疑惑を残すこととなつたことは、我々の大いに遺憾とするところであります。そもそも電力再編成は何のために強行されたのであるか。国民に安価なる電力を豊富に供給せんがためであつたか。それとも再編成によつて一部の内外独占資本家どもを利し、我が国電力を挙げて危險極まる戦争準備へ奉仕させようとするのか。今日電力界に現われておりますところの動きを見ますと、残念ながら後者と断ぜざるを得ないのであります。それは今回とられた人事の面に最も露骨に現われておるのであります。吉田一門の白洲、麻生両君を新会社の首脳部として外資導入を図り、軍事基地提供論を唱え、分断や御用組合政策に活躍した高井君を担ぎ出し、過去において日本電気事業を挙げて侵略戦争に動員した輩が大量に復活しておるのであります。今日提出されたる決議案の内容から見まして、電力問題の基本に触れることはやめておきますが、公益事業委員会のとつた出資比率のごときは実に乱暴極まるものであります。日発の資本金は三十億円、九配電の資本金は合計四十二億円でありますが、両社の資産を再評価いたしますと、日発は二千二百七十億円、配電は千三百億円となり、その比率は一・七四倍となるのであります。これを一対一で合併することに第一無理があるのみならず、日発の株主は持株を九つに分断される結果、日発の小株主に対して大きな損害を加える結果となるのであります。合併に際し、百株以下の株主は本人の意思に反し株主の資格を奪われ、再評価によれば一株三千五百円余りの価値ある株を僅か株価にプラス十円という値でさばかれてしまうのであります。この整理された端株の行方はどうなるか。証券会社に引取られ、やがては外国資本によつて安く買い叩かれ、外国の手にその支配権を委ねるものであります。日発の職員を初めとする小株主の犠牲によつて大資本家の腹を肥やす、これが今回とられようとしている合併比率の実体であり、端株整理の実相であります。この整理によりまして、日発株主の五二%、八万七千人余りの株主はその資格を失うこととなるのであります。なお、電気料金でありますが、公益事業委員諸君は人事問題その他に関し異常な熱意を示されておるようでありますが、電気代を少しでも安くするように考慮を拂つたかどうか。国民にとつてはこの点が何より重大なことであります。然るに公益事業委員諸君は、二百名を超す厖大な重役を作る熱意はあつても、国民の負担を軽減せんとする努力は何らしておらないのであります。その証拠には、電力特別委員会において公益事業委員会の某委員は、資産再評価の曉には電力料金は少くも数倍高くなるものと思われるということを言つておるのであります。これは実に恥を知らないことだと思うのであります。これでは何のための電力再編成だと叫ばざるを得ないのであります。電産労働組合においては三十日より長期事務ストを宣言しております。これは今回とられた公益事業委員会の措置に対し人民の不満を代表するものと思うのであります。これら一連の事実は、電力編成に当つて我が党が幾度も警告を発した再編成の本質が、公益事業委員会の独裁を通じて現われたものであります。私はこの際、公益事業委員諸君が大いに反省して、本来の使命達成のため公正なる道を歩み、人民の利益を第一として行動されんことを強く要求し、本決議案に賛成するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/9
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010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 石坂豊一君。
〔石坂豊一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/10
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011・石坂豊一
○石坂豊一君 私は、我が党を代表いたしまして、本決議案に賛成の意を表するものであります。(拍手、「我が党とは何党ですか」と呼ぶ者あり)これより簡單にその趣旨を弁明いたしたいと思います。
そもそも電気事業再編成は、再編成令第一條に示されておるがごとく、電気事業の国家管理を廃止しまして、専ら公共の利益のためにこれを分割するものであります。これが実施に当つては、先ず以て国民大衆の利益を考慮して最も公正妥正に行わるべきものであるのであります。従つて実施の衝に当るべき公益事業委員会は、電気及びガスの事業者と使用者との間に立つて、使用者の利益を確保すると共に、事業の健全なる発達を図り、以て公共の福祉を増進することに努力する当然の責任を負うものであります。なお、この公益事業委員の最初の任命は、公共事業令附則第八によりまして、両院の同意を経ることなく政府が任命したのであります。従つて政府及び公益委員の責任を重からしめるものであつて、いよいよその行動に愼重を要する道義的責任をも附加えるべきものであります。この観点に立つて今回の再編成処理の経過を見ますときに、遺憾ながら国民の納得できない面が現われておるのでありまして、国会として本決議をなさざるを得ない状態に立至つたのは誠に遺憾千万であります。我が参議院電力特別委員会は、本問題の重要性に鑑みまして、数次に亘り公益委員及び公述人より詳細に経過々聽取して参つたのでありますが、これらの人々の陳述を聞けば聞くほど問題の処理について疑惑が生じて参つたのであります。今回の再編成がポツダム政令によつて施行せられ、国会の審議が行われていないこと、電気事業再編成が極めて大枠のみを押えて細目を押えていない、こと、更に再編成の取扱の基本法規である過度経済力集中排除法が強力な権限を付與しておる事実等は、これによつて公益事業委員会の公明正大なる行政を要請したものであつて、決して独善的処理を行わしめる便宜に出たものでないことは、只今私が冒頭に申述べた公益事業委員会の本質に照して明瞭であります。然るに株式比率その他につき紛争を巻き起しておることは皆様御存じの通りで、遺憾に存ずる次第であります。私は株式比率の問題は他の論者に讓りまして、ここには人事問題と電源帰属について申述べたいと思うのであります。
人事問題については、その決定如何が新会社の運営に至大な影響を與えることは申すまでもありません。四時雪をとどめるところの深山幽谷より不夜城のごとき都会に至るまで、十五万人に及ぶ多数の従業員がおのおのその職域を守り、楽しんで事に当るのと、不平不満を抱き、徒らに時を稼ぐのとは、国民生活と経済再建に如何に重大なる関係があるかは私の申述べる必要はありません。そこで問題は首脳部人事であります。現在の配電会社と地域こそ同一でありまするが、仕事の量において質において、又国民待望の電源開発にも関與する点において、新会社が重大なる使命を担うものでありまするから、これに堪え得るところの首脳者たる社長には、よほど人材を持つて来なければならんということは論を待たないのであります。然るところ、この社長に九会社中七つの会社までが配電会社の首脳を据えることであるのでありまして、これによつて配電偏重の声が高まるのは無理からぬことと思うのであります。同じく公益事業委員会の人事措置にいたしましても、かの再編成により権限の縮小したところの支局長のごときは、通産局電力部長の半数しか採用していないのと対比して見ますると、誠に奇異の感に堪えないのであります。更に又役員数の多きに過ぎること、新役員の顔触れ中に公益委員と個人的の繋がりを持つ人物を無遠慮にも起用してある等に対して、言論機関が口を揃えて非難し、且つ世人をしてひんしゆくせしむるがごときことあるのは、誠に我々は不可解に存ずるのであります。殊に人選の手続にいたしましても、例を東京にとつて見ますると、当初東京電力社長に疑せられた某氏に」対しては、無資格なる第三者を介して形式的に一二度打診せしめて簡單にこれを斥けてしまい、次の候補者に対しては委員会において熱烈に十数回に亘つて面接するなど、いささかこれに対しては偏頗にして公明を欠く点が認められるのであります。その他これに類する扱いが東北、九州に及んでおることを認めざるを得ないのであります。
次に電源帰属に関する問題でございます。公益事業委員会が真に国民の利益を守る立場を自覚しておるならば、又正しき同情があるならば、各地よりの要望を十分に聞き取つて、電力量と消費量とを数字的検討の結果明らかにその状態を示して、態度を明確にすべきにかかわらず、單に指定事業者のみの意見を取入れて、協議が成立したということに藉口して、調定機関たる責務を解せざる態度をとることは、誠に我々は遺憾に存ずるのであります。その適例は北陸地区にあるのであります。御存じのごとく、かの地一帶は地形上水力電源の特色に富んでおりまして、従つて工業も振興しつつあり、これに伴つて相当の電力量を割当すべきは当然のことであるのであります。然るに需用を遥かに下廻るというために、大口、小口の使用者は申すに及ばず、地元公人、私人、老若男女の熱烈血を吐くごとき懇望を以て陳情に努めたのでありまするが、一切これに耳をかさず、技術上至つて明白なる遠距離送電のロスをも介意せず、生木を裂くがごとく、赤子の手を捻じり上げるごとく、冷酷にもあえてこれを他の地域に分属せしめたるごとき、不公平極まる処置と断ぜざるを得ない。のみならず工事中の発電帰属についても、地域は北陸に属するにもかかわらず開発電気はこれを他地域に移すという、いやが上にも打撃をこうむらしむるがごときは、独立の事業体制を確立するという再編成令の本旨と目的に背反し、将来に紛争を残すことは我々の恐るるところであります。果然かの地北陸においては昨今不平不満の声が各地各階層に現われまして、知事を初め地元市民より続々我ら国会議員の手許に打電し来たる実情であります。
これを要するに、再編成に対する公益事業委員会は、発足以来、書夜兼行不断の努力を拂いつつあることは、衆目の見るところで感謝する次第でありまするが、そのとられたる処置には遺憾の点多く、このことは延いては公益事業委員会が本来の任務である事業と国民との利害の調整に当つても問題を引き起す虞れあることを懸念し、この際、一は以て公益委員の独裁感を戒め、一は以て諸氏が就任の初めに誓われたる憲法擁護と民主主義的運営に当らるべき責務に顧みまして、当国会の忠言を誠実に受入れ、過まちを改むるに憚るところなく、国民を納得せしむる態度に出られんことを要望するがために、あえて本決議に全幅の賛意を表する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 結城安次君。
〔結城安次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/12
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013・結城安次
○結城安次君 私は緑風会を代表いたしまして本決議案に賛成いたすものであります。
同僚議員のかたがたから種々御意見もお述べになりましたので、私は極めて簡單に申上げます。電気事業の再編成が非常に困難な仕事であるということは皆さんの御承知の通りで、この再編成の衝に当りました公益事業委員会委員のかたがたの御苦心に対しては多大の敬意を表しまするが、併しそれが如何に困難な仕事であつたといたしましても、又時間がなかつたというようなお話もありましたが、併し再編成の過程におきましては、国民の権利を侵害し、或いは再編成の本旨にもとるようなことがあつてはならないということは当然のことであります。いろいろ決議案の内容といたしまして、電源問題、人事問題、出資問題とありますが、同僚議員縷々お述べになりましたので、私は極めて簡單に出資問題について申上げたいと存じます。出費比率と申しますと、新会社の株主となるかたに交付する株式の比率の問題と、割当て得ざる端株処理による多数に上る失権株についてであります。株式の交付率は日発、配電ともに一対一となつておりまするが、日発が九会社に分れるということから、その不利益を償うために、一株につき十円の特別配当金を渡すということに裁定されておりまするが、併し自発の主張といたしましては、指定会社の解散及び新会社の設立に当りましては、株式交付比率は実体価格によるべきものである、配電一に対して、実体価値の比率によれば日発は一・七四になる。だから若し総資本金額の増加ができないのならば、その代案として交付せらるべき特別配当金は二十五円が至当で、これは恩惠的のものでもなく、不利益を補償するものでもなく、当然に主張すべき権利であるというように申しております。再編成は勿論電気事業再編成令によつて行われておるのでありますが、その手続は集排法に準拠しております。集排法律十二條によりますれば、「再編成計画が債権者、社債権者及び株主を公正且つ公平に取り扱つていない場合には、これを承認してはならない。」と規定しております。而して公益事業委員会の裁定に対して不服である者は異議の申立をなすことができることになつておりますけれども、再編成によつて旧会社全部を解散いたしまして、新会社に殆んど旧会社の全資産が出資されておりまするので、旧会社はただ單に清算事務を扱うということに過ぎないのであります。仮に異議の申立が成立いたしたといたしましても、一体誰がその結果について責任を負うのか、誰が損害賠償の責任者であるかということが、頗る不明確なのであります。問題となつておりまする人事問題、又電源帰属問題、或いは未開発の電源問題、これらは株主総会或いは公益事業委員会の勧告によつて将来変更することも又可能であります。併し出資関係におきましては、一たび決定いたしましたならば、もはや救済する途はないと申上げても過言ではないかと存じます。かくのごとき多数株主、先ほども申されました通り、八、九万に上る多数の株主に重大な影響のある事柄が、事、頗る困難であるとは申しますけれども、従来の会社合併の際に多数の先例となつておりまするような各種の要素を斟酌するということなく、ただ單に簿価によつて、帳簿価格によつてきめたという簡單な理由で決定されましたことは、誠に遺憾千万であります。更に新会社株式の額面を新商法の実施を予期しまして五百円といたしましたために、株主の失権数を非常に増しております。殊に日発の株主は九つの会社に分けられるために、二重に失権者の数を増加しておりますることなどは、余りにも小株主の利益を軽視したのではないかという誹りを免れないのではないかと思われるのであります。
人事問題、電源問題は、すでにほかの同僚から申上げておりまするから、私は何も申上げませんが、結論といたしまして、特に公益事業委員会に希望いたしたいのは、我が国再建の途上最も重要な電気事業の今後の円満なる遂行を希望いたすために、公益事業委員会は本院の意向を十分に尊重せられまして、電気事業の将来に禍根を残さないよう善処せられんことを強く要望いたしまして、本決議案に賛成いたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/13
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014・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 佐々木良作君。
〔佐々木良作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/14
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015・佐々木良作
○佐々木良作君 自由党から共産党まで全議員の諸君が賛成されたこの決議案に、私も衷心から賛成申上げます。
すでに同僚諸君から言われましたように、すべての問題は、具体的な内容の問題よりも、この問題の中心にあるところの五人の公益事業委員会のメンバーが、従来決してうまく仕事をしておらなかつたというところにすべてがかかつておると思います。従つて、又この共産党から自由党まで、すべての会派を通じて、恐らく全会一致で以て決議されるのであろうところのこの決議が持つところの意味は、私は極めて重大だと思う。我々は口を開けば国会の権威と申します。若しこの全会一致を以て上げられるところのこの決議案を、公益事業委員会が蹂躪して、そうして我々が予期するような結果を来たさしめなかつた場合に、私どもは十分な覚悟があるはずであることを、皆さんと共に私は約束したいと思うわけです。それであるのにもかかわらず、現在行われつつあるこの交渉は、私は相当困難だと思います。今日の新聞によりますと、公益事業委員会から何らかの提案がされて、そうして、それを日発側が断わつたということになつておるらしい。併しながら事情を聞いて見ますと、これはまだなかなか重大なる問題を私は含んでおると思う。なぜならば、公益事業委員会は、従来のいわゆる独善的なと言いますか、或いは薄暗いと言うか、そういう態度を決してはつきりとは改められてはいないと思うからであります。昨日示された内容の中にも含まれておりまするように、例えば目先が主張しておつたところの清算費用を、四億というのを七億というふうに、日発が主張しておつた通りに七億数千万円に殖やすと、こういう言葉が使われておる。併しながら、殖やすのだが、その殖えた分の三億は、実はあの指令案では特別配当金というふうになつておる。日発株主の損害を填補する内容に充てろということを言つておる。具体的に言えば、形式的には清算費用を日発が言う通りに七億にしてやるが、本当はその三億はそのまま五円ずつのプラス・アルフアの内容にして、そうしてプラス・アルフアの内容が十五円だということを意味すると、こういう交渉が行われておるということであります。私は、公益事業委員会が従来の立場を一擲いたしまして、そうして十円というプレミアム、プレミアムではなくて、プラス・アルフアの内容がおかしいというのであるならば、それをはつきり改めればよろしい。そうして十五円としたらどうだというように切り出すような態度であるならば、この交渉は私は案外うまく行くかも知れんと思うのです。併しながら、名目を、一応日発が言う通りにするような恰好で清算費用云々ということを言つて、実際はですよ、お前の責任で五円ずつ殖やしてやればいいじやないか、こういうような形式的な態度をとつておる限り、この一週間しかないあとの交渉は、私は極めて困難だと思います。その意味におきまして、今日の決議は極めて重要な意味を将来に持つことを私は皆さんに申上げたいと考えるわけです。
それから栗山君からも申されましたけれども、この公益事業委員会がやつておる現在の仕事のほかに、公益事業委員会が最も中心的にやらなければならんのは、五月一日以降電力の全国融通をどうしてやるか、うまいこと間違えずに全国の電気を配分してやれるかということです。そのことは栗山君もちよつと触れましたけれども、今のところ、諸君、驚くなかれ、五月一日に発足する予定になつておるにかかわらず、九つの会社が突如としてできた場合に、まだその九つの地域のどこからどこの、融通の契約の話ができていない。逆に言うならば、むしろこの契約は不可能な状況になつておる。すでに一カ月ぐらい前から関係者が集まつて、新らしい会社ができた場合に、余り大きく電気の多い所と少い所があつてはならないという需給契約の相談をしておるが、すでに一、二週間ぐらい前にその相談が実質上決裂したような恰好になつておる。私はこういう状態で以てこの公益事業委員会の再編成の仕事が進められておることを極めて心から心配するわけです。一方におきまして、新らしい会社の設立準備が今のような不手際で以てともかく二進も三進も行かん状態になつておる。そうして一方におきましては、仮に強引に会社ができても東京から大阪に電気が流れない状態になつておる。東京から大阪には電気が流れはせぬけれども、真中から、中部日本の一番電源地帶の真中から関東向けと、関西向けとこの両方に電気がうまく流れぬことには、日本の産業は困る。この流れ方が、今すぐ流れぬ状態になつておる。需給契約ができていない。需給契約の骨組さえもできていない。こういう状態で新らしい会社が発足して、そうしてその使命を全からしめるところの仕事ができるかどうか。私は本当に心配で、しようがないわけです。そういう状態である際に、まだ何だかその面目に、面子に囚われて、はつきりと十分やるなら十分やるということならいいのに、まだ何だか清算費用とか何とか、けち臭いことを言いながらこの仕事をしようとしておる。そうして、その上になお、それで以て私は同じようなことを感じるのは、昨日公益事業委員会で日発の総裁か何か呼んだそうですが、そうして行つたそのあとに日発総裁から断わつたそうです。恐らく断わるだろうと思つたらしいので、この会見があつた直後、新聞記者諸君と公益委員が会見したそうだ。その際に、こういう状態で、ものが言われておる。これはどういう話で呼んだのだという言い方の記者諸君の質問に対して、呼んだというよりも、何か日発の連中が話をしたいということであつたので、そんならばと来てもらつたまでだ、こういう言い方がされておるそうです。諸君、こういう一番高い所で以て利害当事者の関係を調節しなければならん任務の公益委員会が、何だか初めから一定の者を敵対感情で以て相手にして、そうして今のような恰好で仕事が進められる。これはまあ年寄の冷水と言うか、年寄の一徹と言うか、そんな感じで見るならば止むを得ないとしても、こういうことで現在の政治の仕事ができるはずがないと私は思うのであります。
アメリカから帰つたおみやげ話に、今度、最近におきましてアメリカは、戰時といいますか、戰時経済の動員措置が非常に強引に有力に進められつつあるが、その一つの例として、国防動員委員会の長官のウイルソンが仕事をする場合に、この委員会には民間の業者が入ることになつておる。そうしてその業者が入つて一つの会合がやられますと、その日の会合の様子が、一から十までの会合の様子が、その日に各州に一遍に記録となつてはつきりすぐわかるようになつておるそうです。それであるのにもかかわらず、そういう恰好で、一つの会合を持たれれば、それが全国民にわかるような内容で進められるのが最も民主的なやり方であると思う。それだのに、今のような仕事が進められる場合に、すでに十二月から発足しておるところの公益委員会の中におきまして、たつた一つの、諸君、記録さえない。そうして一対一の何だか原則が作られたと言うけれども、どういう経緯で、どういう内容で、どういう討論が行われて一対一の原則がきまつたのか、或いは誰々に重役を交渉したと言うけれども、本当に交渉したのか、交渉せなかつたのか、或いは誰々が重役を断わつたと言うけれども、断わつたのか、断わらなかつたのか、どの記録にも何にもないのです。こういうやみくものやり方が私は方法として許されるわけはないと思う。私は決して今、株式比率の一対一が悪いの悪くないのという原則に戻ろうとしない。又重役人事が誰が悪いの悪くないのというこの具体的な問題に戻ろうとしない。併しながらどういういきさつで、将来、どういういきさつで、どういう理窟できめられたのかということが、一切不明な状態のままで、こういう重大な問題が決定せられてはならない。新らしく生れ変つた日本の、終戰後の日本におきまして、こういう状態が決して私はあつてはならないと思う。
日本発送電会社そのものができる際に、日発ができる際に、この議事堂におきましてこの重要な議論が続けられたはずだ。その際に資産比率の問題というものは相当重要な問題だ。そうしてあのサーベルががちやついて、そうして我々の、ものも言えないような状態であつたときでさえも、この国会のこの建物の中で、一つの法案として十分にその内容が練られ、そうして一つの原則があらゆる討論を通じて出され、基準が設定されて、いきさつがすべての前に明らかになつて、あの総動員みたいな日本発送電会社ができたのです。従つて又そのときの資産評価も、一つの基準によつてやられたのです。あのときでさえも、ああいうふうにやられたのであるにもかかわらず、終戰後の民主主義日本に生れ変つたこの際に、たつた五人のわけのわからぬ人がどういういきさつで、どういう人をきめられたのかわからないようなやり方できめられたことは、私は日本の恥辱であると思う。日本の恥辱だけでなく、こういう状態が続けられる限り、世界に対して独立を声明することは不可能だと思う。そういう意味におきまして、この決議が、満場一致でここで上げられるところのこの決議が、来たるべき決定指令において是正されることを要求しておるこの決議が、果して来たるべき指定指令で要求しておるものを滿たさなかつた場合におきますところの公益事業委員会の責任を、完全に私どもこの国会において問うことを、十分問うことをはつきりと確認した上で、私はこの決議案に心から賛成したいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/15
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016・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了しました。討論は終局したものと認めます。
これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/16
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017・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本決議案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、漁船法の一部を改正する法律案(秋山俊一郎君ほか三名発議)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。水産委員長木下辰雄君。
〔木下辰雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/18
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019・木下辰雄
○木下辰雄君 只今議題となりました漁船法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議の経過並びにその結果について御報告申上げます。
本法律案は秋山俊一郎君ほか三名の提案であります。提案の理由とその内容について簡單に御説明申上げます。漁船法は第七国会において成立いたしまして、昭和二十五年五月十三日法律第百七十八号を以て公布され、同年八月十二日施行になつたのでありまするが、その後の運用の実績に徴しまして改正を要する点が二三あるのであります。
先ずその第一点は、漁船の建造、改造等の工事完成後に認定を行うことにいたしたことであります。現行法によりますと、漁船の建造及び改造の許可には、漁業の種類であるとか総トン数とかその他いろいろの條件が必要となつております。併しながら、今までの経験によりますと、建造された漁船がこれらの條件に合致しない場合が多々あるのであります。かようなわけで、農林大臣が合計総トン数の最高限度を定め、その性能の基準を確保して、漁業の調整及び取締の完全を期する上に、甚だしき支障を来たすのであります。それで新たに規定を設けてこの種の違反の絶滅を期そうとするのであります。
第二点は漁船の登録票の検認の制度を設けたことであります。漁船が登録された後、その登録事項に変更を生じたときは、変更の登録をしなければならぬこととなつておりますが、その申請を怠つたり、或いは故意にしない者が多いために、漁船原簿に現われたものと漁船の実態とが相違しておる場合が多いのであります。これを確実に合致させるために、新たに都道府県知事が三年ごとに漁船とその登録集について検認を行うことといたしたのであります。
改正の第三点は登録手数料を都道府県の收入とすることにいたしたことであります。従来は登録手数料は国の收入として、実務を取扱う都道府県に対しては平衡交付金によつて還元しておつたのでありまするが、地方財政確保の見地からかように改めた次第であります。
以上の三点が改正の主要なるものであります。
委員会におきましては、かねて委員各位の一致した主張でもあり、立案に当つても十分に研究いたした事項でありまするので、余り質疑もなく、討論を省略し、採決の結果、全員一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/20
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021・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程第二、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案(衆議院提出)、日程第三、外国為替資金特別会計法案、日程第四、緊要物資輸入基金特別会計法案、日程第五、農業共済再保險特別会計法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)、以上四案を一括して議題とすることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/22
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023・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長小串清一君。
〔小串清一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/23
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024・小串清一
○小串清一君 只今上程せられました旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
本案は、財団法人日本製鉄共済組合の年金受給者のうち、官業共済組合時代からの在職者で、民営後受給資格の発生した者の年金の国庫負担につき特別の措置を講じようとするものであります。即ちこの組合の年金受給者のうち、官業共済組合時代の退職者に対しましては、先に年金額の改定に伴い必要となる責任準備金の増額分に相当する金額を国が同組合に交付する措置が講ぜられたのでありますが、官業共済組合時代からの在職者で民営後受給資格の発生した者には何らの顧慮がなされなかつたのであります。併しこの措置を官業共済組合時代の退職者のみに限定いたしますことは、官業移管の経緯に照して、その理由が極めて薄弱であるばかりでなく、公平の観念にも反しますので、受給事由の発生が官業共済組合時代であると民営後であるとを問わず、年金額増加分のうち、官業共済組合時代の在職に相当する部分の二分の一を国庫負担とすることとし、この国庫負担額を年金額改定の翌年度において四分して交付することとしようとするものであります。
なおこの法律の施行期日は本年の五月一日でありますが、本年一月一日から適用することとし、現行法の規定によつて交付した金額は改正法の規定により昭和二十五年度及び二十六年度に交付すべき金額の全額とみなすこととなつたのであります。
本案の審議の詳細につきましては、速記録によつて御承知を願いたいと存じます。かくして質疑を終了いたし、討論に入り、愛知委員から賛成の意見が述べられ、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次は、只今議題となつております外国為替資金特別会計法案の委員会における審議の経過並びに結果について御報告を申上げます。
本案は、政府の行う外国為替等の売買及びこれに伴う取引を円滑にするために、外国為替特別会計法を廃止して、新たに外国為替資金を置きまして外国為替等の売買に運用することとし、その運営に関する経理を一般会計と区分して行うため、外国為替資金特別会計を設置いたそうとするものであります。本特別会計は内閣総理大臣が管理いたし、その運営は外国為替管理委員会が行うこととし、その歳入としては、外国為替等の売買に伴つて生ずる利益、外国為替資金の運営に基く收益金、借入金の借入及び融通証券の発行による收入金、決算上の不足補填のための一般会計からの補填金を以てし、事務取扱費、事務委託費、外国為替資金の運営に要する経費、借入金及び融通証券の償還金、融通証券の発行及び償還に関する経費及び外国為替等の売買に伴つて生ずる損失の補填金等の経費を以て歳出といたしますと共に、特別会計に必要な措置を規定いたそうとするものであります。
本案の審議に当りましては、いわゆるインベントリー・フアイナンスの問題、外国貿易の趨勢に伴う為替資金の動き、外銀ユーザンスと日銀ユーザンスとの相違点等につき熱心なる質疑が行われ、これに対し政府からも、本会計が貿易の円滑なる進行を図るため必要なるゆえんを懇切丁寧に説明がありましたが、その詳細につきましては速記録によつて御了承をお願いいたしたいと存じます。
かくて質疑を終局し、討論に入り、油井委員より、経済の正常化が回復しつつある今日、一般会計から五百億円を繰入れることよりは、税負担の軽減等の緊要措置が優先的に考慮さるべきであり、本特別会計法自体には異議はないが、その運営について十分愼重を期されたいとの希望を付した賛成意見が述べられ、次いで吉田委員より、インベントリー・フアイナンスを行うことは本質的に欠陷があり、この結果、中小企業者乃至勤労階級に対してのみ一方的な犠牲が強要されることとなるとの反対意見が述べられ、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次は緊要物資輸入基金特別会計法案の委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
本案は、最近の輸入事情に鑑み、緊要物資で政府でなければ輸入できないものの輸入及び売拂を円滑に行う目的を以て緊要物資輸入基金を置き、一般会計からの繰入金を以てこれに充てることとし、その運用に関する経理を一般会計と区分して行うために、緊要物資輸入基金特別会計を設置いたそうとするものであります。この会計において、物資の取得及び売拂は基金の運用として行うこととし、この会計の歳入歳出は、基金の運用によつて生じた利益の組入金の利子、借入金の借入及び融通証券の発行による收入金、決算上の不足補填のための一般会計からの補填金等を以てその歳入とし、事務取切費、借入金及び融通証券の償還金、一時借入金、借入金及び融通証券の利子融通証券の発行及び償還に関する経費並びに基金の運用によつて生じた損失の補填金等を以てその歳出といたそうとすると共に、
〔議長退席、副議長着席〕
この特別会計の決算上の剰余金及び不足の処理、予算及び決算の作成、提出の手続等、特別会計として必要なる措置を規定いたそうとするものであります。なお、本特別会計の創設に際し、貿易特別会計はこれを廃止し、その廃止に伴う必要な措置を併せて規定いたそうとするものであります。
本案審議の詳細なる経過は速記録によつて御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
最後に、農業共済再保險特別会計法の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過並びにその結果について御報告を申上げます。
本案は、異常災害の発生によつて再保險金の支拂が増加し、そのため支拂財源に不足が生じました場合の措置といたしまして、従来より一般会計からこの不足分を補填するため繰入を行なつて参りましたが、今後においても異常災害の発生が予想されますので、本特別会計に新たに再保險金支拂基金勘定を設けまして農作物の共済及び蚕繭共済に関する異常災害の発生したときの再保險金の支拂基金として一般会計より繰入金をなして置き、農業勘定において再保險金の支拂財源に不足が生じました場合には、再保險金支拂勘定から補填することができることとし、農業勘定における再保險金の支拂の円滑化を図ろうとするものであります。又、本特別会計の農業勘定及び家畜勘定において一時支拂上現金の不足を生じたときは、再保險金支拂基金勘定に属する現金を以て繰替使用をすることができることとし、農業勘定及び家畜勘定における支拂の円滑化を図ろうとするものであります。
本案審議に当り、各委員と政府委員との問に熱心なる質疑応答が交されたのでありますが、その詳細は速記録によることを御承知願います。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て、原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/24
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025・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。吉田法晴君。
〔吉田法晴君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/25
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026・吉田法晴
○吉田法晴君 私は、只今議題となりました外国為替資金特別会計法案につきまして、日本社会党を代表して反対討論をなすものであります。
反対の主要点は、この法案による外国為替資金が一般会計から繰込まれる繰入金を以て充てられる点に関連し、具体的には、この法律によつて昭和二十六年度五百億を繰入れることについてであります。
その第一の理由は、外国為替資金として五百億を繰入れることはインフレ対策としては的を外れたものであるという点であります。この外為特別会計へのインベントリー・フアイナンス五百億の繰入は、昭和二十六年度予算の中で最も彈力性のあるものの一つとして、貿易インフレを財政面から抑圧する手段として採用せられるものであります。併し予定された外貨受取超過額は七千八百万ドル、昨年下半期の実績は二億六千六百万ドル、これは朝鮮事変勃発後の輸出超過及び貿易外受取超過の結果であります。そして二月の輸入信用状は三億ドル近くまで達したと伝えられております。かくして本年二月末日、銀券発行高は三千九百九十七億円、昨年同期に比して八百七十九億円余の増、明らかに輸出インフレであります。輸出の増加に比して輸入がこれに伴わず、物資の減少に加えて、思惑、投機が行われ、軍拡傾向による国際物価の高騰の波が為替レートの固定化のためにそのまま日本経済に及んで、生産財の業者仲間相場が、この三月で朝鮮動乱後七割四分、消費財でも四割五分と上昇いたしました。この物価高、インフレ、外貨受取超過は、輸入の促進とこれによる生産の確保によつて相殺されねばなりません。或いは又為替レートの変更も考え得られる一つの対策であろうかとも言う向きもあるのであります。併し安い原料で作つた安い生産品を輸出して、高い原料を買わねばならなくなつている現状であります。二十四日の日本経済新聞に掲載せられたパウル・アインチツヒ氏の所論は、再軍備と原料不足が各国の輸出に漸次制限を加えつつある傾向を指し示しております。日米経済協力態勢によつて希望の原材料は輸入できると希望せられておりますけれども、事態はしかく簡單ではないようであります。ともあれ、今後考えられるインフレの真の原因は、世界的に統制され割当てられて輸入せられる貴重な物資が、国民経済の拡大再生産のために使われず、経済外の、軍需的消費のために使用せられる危險性にあるのであります。鈴木武雄教授は、このことを本院の予算委員会の公述において、「若し、言うところの資本蓄積が平和的な方向において行われるのでありますならば、過渡的には国民生活水準が犠牲にされましても、やがて国民所得は増加して、結局国民生活水準の回復乃至向上をもたらすものと言えるのでありますが、若し非生産的な軍需的方向における資本蓄積が強化され、そのために国民生活水準が犠牲にされる場合には、それは過渡的な犠牲とは言えないのであります。」と述べておられるのであります。金融政策として外為特別会計へのインベントリー・フアイナンス五百億繰入反対は、衆議院における公述人として出席された資本家代表である第一物産水上副社長、日産協堀越常務理事が、ひとしく述べられておるところであります。ひとしく日本銀行が外為の持つておるドルを買う方法を対案として提出しておられるのであります。
反対の理由の第二は、五百億のインベントリーは勤労者の犠牲においてなされるからであります。物価騰貴の傾向にあるとき、賃金給與を物価に遅れて上げながら、基礎控除を比例的に引上げないで置くならば、池田蔵相のいわゆる税法上の減税は事実上の増税になることは、この壇上でも所得税法の一部改正反対討論で証明せられたところであります。都留教授も衆議院の予算委員会の公聴会で、数字を挙げて論証せられておるところであります。他方、法人税や高額所得者の所得税は著しく軽減し、法人の市町村民税のごとき千円前後のものとし、朝鮮事変後の糸へん、金へん景気にもかかわらず、超過所得には課税せず、勤労大衆への大衆課税によつて集めたその税金の中から五百億を外為特別会計へ繰入れようというのでありますから、このことは逆に言いますならば、それだけ勤労大衆の負担の増加であり、国民生活水準の引下げであります。日本社会党は勤労者の政党として、かかる法案には断乎反対せざるを得ないのは言うまでもありません。
反対の理由の第三は、かかる勤労者の税金からなる五百億は勤労者のために使用せらるべきものであると信ずるからであります。我が党は、昭和二十六年度予算案について、千三百八十六億に上る組替を要求しようといたしております。若しこの五百億の外為特別会計への繰入れをやめることができますならば、給與ベースを引上げるための七十三億五千万円、日教組算式によります平衡交付金の増額二百二十四億円、農業関係経費の増額八十億円、金詰りの中小企業のために国民金融公庫の資本金を百五十億に引上げるための五十五億円の追加、失業応急事業費、失業保險費、合せて五十四億五千万円、合計四百八十七億円を支出して、残余十三億は社会保障費の増加等に廻すことができるのであります。
我が日本社会党は、以上の理由によつて外国為替資金特別会計法案に反対し、この外為特別会計へ一般会計より五百億を繰入れることについて反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/26
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027・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 油井賢太郎君。
〔油井賢太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/27
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028・油井賢太郎
○油井賢太郎君 私は国民民主党を代表いたしまして、今回提案されました外国為替資金特別会計法案には賛成をいたすものであります。
併しながら、この法案を仔細に見ますというと、いわゆる外国為替特別会計から、昭和二十六年度において、繰越として今まで持つておつた資産をすべてこの資金特別会計のほうへ繰入れ、そのほかに第三條に規定するところのいわゆる一般会計からする五百億を繰入れるということになるのであります。法案自体は、只今吉田君から御説明がありましたが、漠然といたしておりまして、一般会計から繰入れることができるというだけの規定でありますので、この法案自体に反対する理由というものは存在しないのであります。併しながら、法律となりました以上は、その法律が生きるも死ぬも、すべて運営次第によつて変つて参るのであります。今回この法案が成立されるということを前提として現内閣がとられたいわゆるインベントリー・フアイナンスの五百億繰入れ、これに対しては、我々国民民主党は、予算委員会等におきましても絶対反対の意思表示をいたしておるのであります。その詳細は予算委員会等よりいずれ改めて発表がありますが、先刻吉田委員から申述べられたのと大同小異でありますから、私は省略をいたします。
併しながら、ここに皆様方に特に御注意願いたい点は、運営の機関というものは外国為替管理委員会にあります。この外為管理委員会のいわゆるドル予算の発表、外貨予算の発表というものが、我々大蔵委員会に対してどういう形でなされたかということを申上げたい。二十二日の日に、私は一週間ほど前から外貨予算の全貌を明白にしてもらいたいということを申入れしておつたのに対しまして、外為委員会の大久保委員から四半期ごとのドル予算の発表があつたのであります。それも速記をとめまして、いわゆる速記なしで以て我々のほうへ数字だけを述べられたのであります。ところが一日置いて二十四日の日本経済新聞にはどういうことが出ておつたか。毎月の出入りというものが明細に出ておつたのであります。これを見て私どもは誠に遺憾に堪えなかつた。驚いたのであります。国会にすら発表するのに遠慮しがちなこういう数字を、なぜ新聞には堂々と発表されておるか。これはいわゆる国会の審議権の一つの無視されておる具体化ではないかとさえ思われたのであります。こういう委員会によつて運営されること自体が、国民にとつて大きな、この外国為替資金特別会計法の運営について検討を要する点ではないかと思うのであります。而も大蔵省或いは安本等におきまして、外為委員会不要論さえ唱えられておるに至つては何をか言わんやであります。こういう点につきまして、今後この法案が通過いたしましたとしても、現内閣は嚴重なる批判と反省によつて、この運営の正確化を図らなければ、国民に大きな非難と又損害を與えるものではないかと思うのであります。大体二十六年度のこの外国為替に要するところの資金の出入りというものは、輸出入とも十億といわれております。いわゆる三百六十円にしましても三千六百億であります。こういう会計が国民の前に秘密のうちに何か運営されるような観念を與えるにおいては、国民の現内閣に対する批判というものは大きくならざるを得ないのであります。(拍手)どうぞこの点につきまして議員の皆様方も、今後嚴重なる監視を以て、この法案の実施を図られるような監視をされることを切に要望いたしまして、賛成するものであります。(「反対なんだろう」「そんな心配な法律に何のために賛成するのか」と呼ぶ者あり、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/28
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029・三木治朗
○副議長(三木治朗君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
先ず旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/29
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030・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/30
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031・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に外国為替資金特別会計法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/31
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032・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/32
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033・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に緊急物資輸入基金特別会計法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/33
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034・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/34
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035・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に農業共済再保險特別会計法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/35
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036・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/36
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037・三木治朗
○副議長(三木治朗君) この際、日程第六、国家行政組織法の一部を改正する法律案、日程第七、大蔵省設置法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)、以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/37
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038・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/38
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039・河井彌八
○河井彌八君 只今議題となりました両案の内閣委員会における審査の経過並びに結果を報告申上げます。
先ず国家行政組織法の一部を改正する法律案について申述べます。
この法律案は、国家行政組織法附則の第二十四條の二の規定を一部改正せんとするものでありまして、即ち同條におきましては、府、省又は本部の官房又は局に置かれておる部と、外局たる庁に置かれておる局、これは通商産業省の資源庁に置かれておる局だけでありますが、その局をば、昭和二十六年五月三十一日まで置くことができ、そして、これらの部と局とは本年五月三十一日限り廃止されるものとする旨を定めておるのでありますが、この改正法律案におきましては、これらの部と局とをなお一年間、即ち昭和二十七年五月三十一日まで置き得るようにしようとするものであります。
これらの部と局とは、政府が昭和二十四年に行いました行政整理の際には、何分にも大規模な機構改革でありましたがため、当時、政府がこの改革案を実行するに当りまして、従来置かれておりましたこれらの部と局とを第七條の原則の規定通りに整理することは困難であるという事情がありましたので、近い将来更に全般的に機構改革を行う際にこの部と局を如何に処置するかという問題も併せて解決したいという趣旨から、その存続期間を一年に限られておつたのでありますが、昨年の第七国会におきましても全面的な行政機構改革が実現せられなかつたがために、更に一年間延長しなければならぬという実情に迫られまして、昭和二十六年五月三十一日まで存続するということになつておるのであります。これが現行法であります。今日におきましてどうかと申しますると、政府は予期せられておつた行政機構改革を未だに行うことができないような事情にありますので、更に一年間延長したいというのがこの改正法律案の理由となつておるのであります。
内閣委員会におきましては、五回に亘つて委員会を開きまして、愼重に本法律案を審査いたしたのでありますが、その結果、次のような点が明らかになつたのであります。即ち政府は昨年の第七国会におきまして、この第二十四條の二の改正法律案を提出いたしました際には、一年内に行政機構全体に亘つて十分な検討を行なつて、根本的な行政機構改革を実行したいと考えておるから、その際にこの部と局との存廃措置をも併せて解決したいとの所信を、当時委員会で明らかにいたしておつたのでありますが、近時の急激な国際情勢の推移、殊に待望の講和の時期も近ずいておるというような今日の情勢に鑑みまして、今早急に行政機構の改革を行うことは時宜に適しない。即ち近く講和が成立し、我が国の自立の態勢が整つたときにおいて根本的な改革を行うべきものである。従つてこの部と局との問題も、その際、併せてこれを解決するのが適当と思うという政府の所信が明らかにせられたのであります。委員会におきましては愼重審議の結果、政府が近い将来、根本的な行政整理を断行する旨のこの言明を信頼いたしまして、本案即ちこの第二十四條の二の規定を改正せんとする本法律案の趣旨は、現下の事情の下におきましては止むを得ざる措置であると了解いたしたのであります。
次に、内閣委員会においては、内閣委員全員協議の結果、更にこの国家行政組織法の一部を改正する法律案に対して修正を加える必要を認めたのであります。これは昨日竹下委員から発議されたのであります。先ず修正案を御紹介いたしまして、次に修正案の要旨と理由とを御報告申上げます。先ず修正案の内容はどうかと申しますと、
国家行政組織法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第二十四條の二の改正規定の前に次の改正規定を加える。
第八條に次の一項を加える。
3 国会閉会中において、緊急の必要があるときは、第一項の規定及び前項中地方自治法第百五十六條第四項前段に関する部分の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、各行政機関に第一項の審議会又は協議会を置くことができる。この場合においては、内閣は、当該政令公布後最初に召集される国会にその審議会又は協議会の設置に関する法律案を提出しなければならない。国会においてその法律案による法律が不成立になつた場合には、内閣は、すみやかに、当該政令を廃止する措置を講じなければならない。
こういう修正をいたそうとするのであります。
内閣委員会におきましては一昨年の十一月以来、行政機構の整備につきまして継続調査の歩を進めて参つたのでありまするが、その一つは、国家行政組織法第八條に規定せられておりまする審議会及び協議会についてであります。同條には、府、省、庁などの各行政機関には、特に必要がある場合においては、法律の定めるところにより、審議会及び協議会を置くことができる旨を規定しているのであります。然るにこの規定があるにもかかわらず、法律の規定によらずして、單に閣議決定とか或いは省議決定とかの形で以て審議会などが置かれているものがつぎつぎに現われて来ておるのである。委員会における政府委員の答弁によりますると、現在置かれているところの審議会及び協議会の総数は二百三十六あるということであります。そうして、そのうちで、法律の規定によらずに閣議或いは省議決定等によつて行われておりまするものが三十三あるということであるのであります。第八條の規定が国家行政組織法中に嚴として存在しておりまする以上、只今申述べたような法律の規定に基かない審議会等が置かれておるということは、法律上から見ますれば或いは無効ともいうべきものでありましよう。又政府がこの法律の規定を全く無視したようにも見えるのでありまして、誠に遺憾と言わなければならぬのであります。併しながら又他方から考えてみますると、政府の立場におきましても、国会の閉会中に、政府が、昨今のごとき時局の急激な進展に伴いまして、各種の政策を立てようとする緊急の必要がある場合においては、国会の開会を待つことができずして、早急に審議会又は協議会を設ける必要のある場合の起ることも十分考えられます。それ故に、かような場合におきましては、先に挙げました第八條の規定にかかわらず、政令の定めるところによつて各行政機関に審議会又は協議会を置くことができるという便法を講じまして、その場合には、政府は、その政令の公布の後に最初に召集される国会に、その審議会又は協議会の設置に関する法律案を提出しなければならない、若し国会でその法律案による法律が成立しなかつた場合には、政府は速かにその政令を廃止する措置を講じなければならないということにいたしまして、かくいたしまして、一方においては国家行政組織法の審議会及び協議会に関する原則的な規定の精神を飽くまでも尊重いたすと同時に、法律によらずして審議会や協議会が濫設せられるのを防止いたしますと同時に、他方におきましては、国会閉会中におきましても、政府が緊急の必要がありと認める場合においては審議会及び協議会を設置し得る途を開くこととしたのであります。これが只今読み上げました修正案の要旨であります。
そこで政府におきましては、この修正案は審議会等に対する政府の方針と全く一致するものであつて、その成立を希望するということを明らかにいたしたのであります。
次にこの修正案が成立いたしましたときにも、なお残る問題がある。それは先に申述べました、法律の規定によらずして、現に置かれておるところの三十三の審議会等をば如何に処置するかという問題であります。内閣委員会においてはこの点についても愼重なる審議を加えたのでありまするが、先ず委員の質疑に対しまして、政府は結局かようなことを申したのであります。即ち法律の規定によらない審議会等について、特に存置の必要があると認められるものは、速かに法律によるように措置いたす、併しその他のものは全部これを廃止するということを言明いたしたのであります。なお、更に政府は、一般方針として、近く審議会及び協議会については一大整理を断行して、現在存している審議会及び協議会、即ち二百三十六の審議会及び協議会のうちで必要ないものを約七十をば廃止する意向であるということを明らかにいたしたのであります。
委員会におきましては、この政府の言明を信頼いたしまして、そうしてこの修正案について先ず採決いたしましたところが、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。次いで又修正部分を除く原案を採決いたしましたところが、これ又全会一致を以て可決すべきものと議決いたした次第であります。
次に大蔵省設置法の一部を改正する法律案について御報告を申上げます。
この法案は、委員会を開くこと予備審査と共に三回であります。昨日全会一致を以て可決すべきものと議決いたしました。
この案の提出理由及び法律案の内容について簡單に申上げますと、昨年五月に大蔵省の機構等に関して大蔵省設置法の改正が行われたのでありますが、その後、事務の配分等につきまして若干の改正が加えられる必要ができたのでありまして、ここに提案せられた次第であります。その改正点の主なものは五つあるのであります。その第一は、主計局に国の会計事務職員の研修事務を行わせることであります。第二点は、従来主税局において取扱つておりました大蔵省所管の税外の諸収入の事務をば、主税局から大臣官房の所管事務を移すことであります。第三点は、管財局における物納の動産の管理処分について、その適用範囲を財産税と相続税のほかに所得税にも拡げることを規定している点であります。これらは内部の所掌事務の移管或いは当然の事柄によるところの改正であります。第四点は、国税庁の総務部を廃止して、次長及び徴收部を設けようというのであります。第五には、国税庁監察官を現在の六十名から百二十名に増員しようとするのであります。この五つの点でありまして、この改正法の施行期日をば二十六年の四月一日とするという趣意であります。
内閣委員会において本案の審査の結果明らかになつたことを簡單に申上げますると、第一点の主計局に国の会計事務職員の研修事務を行わせようと申す点は、すでに昭和二十四年度から予算を整えておりまして、実際に施行しておるのであります。この点は設置法に規定されていないのでありまするから、これを設置法に明確に規定しようというわけであります。その研修の方法はどうかと申しますると、一カ月乃至二カ月の期間を限つて、主として国の会計事務職員二百名乃至三百名を集めまして、会計法とか財政法の法律、或いは会計実務、或いは憲法、商法等の基礎法規について講習を行うというのであります。大体その総人員は五万人を目途としておるわけであります。又これと伴いまして、テキストによつて通信研修をも行おうとしておりまして、年々二万名を目途としておるということであります。昭和二十四年度の実績を申しますると、二百名ずつ三カ月の講習を二回行いましたということで、その予算は八百九十一万円であつたということであります。
第二点の大蔵省所管の税外収入の管理事務をば主税局から大臣官房に移す点につきましては、その理由といたしまして、雑收入の管理事務をば大臣官房において行うことは行政事務運営上においての通常の形でありまして、各省においてもこのように処理しておるのでありますから、大蔵省におきましても、従来便宜的な取扱をしておるのを改めまして、本来の姿に移そうというわけであります。
第三点である管財局における物納の動産の管理処分について適用範囲をば財産税と相続税のみに限らないで所得税にまで拡充するという点は、すでに昭和二十五年法律第七十五号においてこの制度ができておるのでありまするから、これに即応して字句の整理をしようとするものであります。
第四点といたしまして、総務部を廃止して徴收部を設けること、それから次長を置くということ、これについて説明いたしますれば、総務部を廃止し、そうして徴收部を設けることは、その理由は、徴税事務が極めて重要となつておる現状に鑑みまして、その組織を強化して事務能率を向上させるためにこれを設けようというのであります。総務部を廃止する理由は、部を殖やさない方針であるから総務部を廃止しまするが、それによつて支障はないという説明であります。次に次長を設けることについては、直税部、間税部、徴收部及び調査査察部の四つの部の総合調整その他複雑なる税務行政を監督するためには、長官一人では十分でないから、これを補佐する次長が必要であるという説明であります。
第五点といたしまして、国税庁監察官は長官直属の機関として、税務職員が收賄等の非行があつた場合においてその監察を行うものでありまして、或る程度の司法警察権を行わせることなつております。その数を六十名から百二十名に増加いたしました理由は、悪質税務官吏を取締つて国民の信頼に応えるためにこの程度の増員が必要であるということでありました。そうして国税庁の監察官の税務職員総数に対する比率は五百人に対して一人の割合であるということでありました。
以上が政府の説明によつて明らかになつた主な点であります。
委員会においてはいろいろ質疑を行なつたのでありますが、法律の結果等によつて当然なすべき事柄については、さした問題がありませんが、国税庁内の機構改革及び人員の増加につきましては相当意見があつたのであります。主なるものを申上げますと、総務部を廃止して徴收部を設けることによつて徴税を十分行い得る自信があるか。又現状を見るときに、税務署は比較的徴收し易い所からは租税を必要以上に取るけれども、取りにくい、いわば大口の納税者層からは取つてはいないのではないか。即ち徴税において甚だ不公平であると思う。或いは又権力を利用して民間業者から饗応を受けるがごとき不心得な税務官もおるのではないか。従つて今日税務職員に対する怨嗟の声は高いのであるというようなことを述べまして、これらの点について解消せられるかどうかという質問があつたのであります。これに対しまして政府の答弁は、昭和二十四年度から二十五年度に繰越された滞納金額は一千二百五十八億円であります。又本年一月までの滞納金額も九百七十八億円である。件数にいたしますと七百万件に達しておる。そうして、これらの滞納整理について一万八千人の税務職員を充てておるのでありまするから、この際、本庁に徴收部を設ける必要ができたわけであるが、徴收方法を改善いたし、又税務職員を訓練することによつて、漸次この徴收成績を挙げ、且つ又負担の公平を図ることができると思うという確信を述べての答えであつたのであります。なお、納税者の申告ということも最近には漸次よくなつて、信頼し得るようになつて来ておる。昨年の更正決定は四百十八万件であつたが、今年度は昨年の件数の十分の一以下に減る見込である、十分の一以下になるのであるということでありました。この点につきましても、将来なお更によくなつて行くであろうということを申述べて、滞納はそんなに多くはないようになるであろうということでありました。更に又、悪質な滞納或いは脱税というようなことは、調査査察部におきましてどしどし摘発しておりますから、十分成績を挙げ得るものと思う。ただ税務職員の中には悪質の所業をして国民の信頼に反するがごとき者が往々にして、あることは誠に遺憾千万であるが、これが対策といたしましては嚴重に処分して税務職員全体の戒めとしているというのであります。そうして国税庁監察官の数を六十名から百二十名に増員しようというのもこの趣意からいたすという説明でありました。
又、委員側からは、次長を設けることは、いわゆる屋上屋を重ねることになるのではないかという質問があつたのであります。これに対しまして政府の答弁は、国税庁の機構は極めて大きくなつておるのでありまして、本庁定員も当初の五百三十名より昨年度には七百三十名に上つておる。而して更に今回の改正によりまして長官直属の監察官が六十名から百二十名に増加するのである。このように機構が大きくなつておるところの本庁内部の各部の総合調整や複雑な事務の統轄は、長官一人では困難でありまするから、これを補佐する次長が必要であるという答弁でありました。更に又委員会側から、国税庁監察官は税務職員に対して、いわば丁度検事のごとき態度をとつて、例えば一片の投書或いは聞き込み等によつて税務職員を被告扱いにするなどによつて税務署内の空気を乱す嫌いがあるのではないか。監察官の人選はどのような方法によつて行われておるのであるかという質問もあつたのであります。これに対しまして政府側の答弁は、国税庁の監察官は、その仕事の性質上、監察以外の仕事はしないで、專門的に税務職員の非行の監察を行なつておる。だからその人選には大変注意は拂つておりまして、各国税局から適任者として推薦せられたる者をば本庁において愼重に審査して選任をいたしておるのであるという説明でありました。そうして、その審査の基準はどこに置くかと言えば、全体として人を見る明のある者、監察事務について能力のある者という点に重きを置いておるということでありました。大体かような質疑応答が行われたのであります。
委員会におきましてはこのように慎重審議の結果、政府の説明の趣旨を十分了解いたしまして、かようにいたしまして、討論を省略いたして採決の結果、本法案は全会一致を以て可決すべきものと議決いたした次第であります。
これを以て報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/39
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040・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず国家行政組織法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/40
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041・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/41
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042・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に大蔵省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/42
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043・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三分散会
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○本日の会議に付した事件
一、電気事業再編成の実施に関する決議案
一、日程第一 漁船法の一部を改正する法律案
一、日程第二 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案
一、日程第三 外国為替資金特別会計法案
一、日程第四 緊要物資輸入基金特別会計法案
一、日程第五 農業共済再保險特別会計法の一部を改正する法律案
一、日程第六 国家行政組織法の一部を改正する法律案
一、日程第七 大蔵省設置法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X03119510327/43
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