1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十月二十六日(金曜日)
午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 夏堀源三郎君
理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君
理事 西村 直己君 理事 内藤 友明君
淺香 忠雄君 大上 司君
島村 一郎君 三宅 則義君
荒木萬壽夫君 松尾トシ子君
中野 四郎君 有田 二郎君
佐久間 徹君 苫米地英俊君
宮幡 靖君 宮腰 喜助君
深澤 義守君
出席政府委員
法務府事務官
(法制意見第二
局長) 林 修二君
大蔵事務官
(主税局長) 平田敬一郎君
大蔵事務官
(管財局長) 内田 常雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(管財局外国財
産課長) 佐々木庸一君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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十月二十五日
児童用乗物に対する物品税撤廃の請願(島村一
郎君紹介)(第二二八号)
陶磁器製品に対する物品税撤廃の請願(早稻田
柳右エ門君紹介)(第二二九号)
公務員の新退職給與制度確立に関する請願(水
谷昇君紹介)(第三八六号)
未復員者給與法の一部改正に関する請願(石原
登君紹介)(第二八七号)
未復員者給與法の適用患者に対する療養期間延
長に関する請願(宮幡靖君紹介)(第二八八
号)
補助貨幣に蜜ばちの図案採用に関する請願(水
野彦治郎君紹介)(第二八九号)
水あめ、ぶどう糖に対する物品税撤廃の請願(
池見茂隆君紹介)(第二九〇号)
同(椎熊三郎君紹介)(第二九一号)
たばこ小売人の利益率引上げに関する請願外一
件(橋本登美三郎君紹介)(第二九二号)
同外三件(辻寛一君紹介)(第二九三号)
同(水谷昇君紹介)(第三九四号)
同(江崎真澄君紹介)(第二九五号)
同(塩田賀四郎君紹介)(第二九六号)
同(早稻田柳右エ門君外二名紹介)(第二九七
号)
同外三十二件(早稻田柳右エ門君紹介)(第二
九八号)
同(青木孝義君紹介)(第二九九号)
旧陸軍共済組合員に年金交付に関する請願(松
永佛骨君紹介)(第三〇五号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
連合国財産補償法案(内閣提出第五号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/0
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001・夏堀源三郎
○夏堀委員長 これより会議を開きます。
連合国財産補償法案を議題といたしまして、前会に引続き質疑を継続いたします。
なおこの際、昨日の委員会におきまして、内藤委員より、本法律案と平和條約第十五條との法律的関係について、法務府当局に対し説明を求められております。林政府委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/1
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002・林修二
○林政府委員 実は私昨日の内藤委員の御質問を直接伺つておりませんので、一応ただいま大蔵当局から伺いましたところで御答弁申し上げますけれども、あるいは御質問の趣旨を取違えておる点もあるかもしれませんが、その点はまた後ほど御質問に対してお答えすることにして、一応お答えいたします。
この第十五條にございます通りに、連合国財産が被害を受けましたことに対して、日本政府は一定の補償をいたすことに相なつております。その補償の内容は、従来のたとえばイタリア條約等の例を見ますると、相当具体的にその補償の仕方を條約中に規定いたしておるわけであります。日本のこの平和條約につきましては、そのイタリア條約で條約中に規定いたした事項を——
これのいきさつは大蔵当局からも御説明があつたと存じますが、この條約中に規定せずして別に日本政府が、その内容によつて、連合国側で認めたところによつて法案をつくれば、これによつてその補償の内容を條約上の問題としてやる、こういうことで條約そのものの條文から補償の條項は落されたわけであります。そのかわりに、この條約に書いてあります通りに、連合国側と日本国政府とで一応協議いたしました内容に従つた補償を別に出す、こういうことに相なつておるわけであります。その内容につきましては、この七月十三日に日本国の内閣が決定したこの補償法案の定める條件によつてやる、こういうことに相なつております。従つてこの條約全体として、考えますると、七月十三日に閣議決定をいたしました連合国財産補償法案、こういうものが條約の一部をなしておる、こう考えざるを得ないと思うのであります。これを具体化いたしましたのが、今国会で御審議を願つております連合国財産補償法案でございます。そういう意味におきまして、この法案は條約の一部をなしております。従いましてその條約がかりに、ただいま国会へ出ておりまして、国会で御承認を願い、それに基いて日本政府が批准をいたしまして、この條約が発効いたしますれば、この條約の内容として、この補償法の内容のままが條約の内容になるわけで、確定いたすわけであります。そういう意味におきましては、條約上の義務としてただいま御審議を願つております法案が、條約上の内容になつておる関係で、この法案は立法権の制約と申しますか、制約ではございませんが、実質的に條約と一体として御審議を願うべきものである、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/2
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003・内藤友明
○内藤(友)委員 私がお尋ねしたのと大分違うようであります。私はそういうことをお尋ねしたのではないのであります。それではあらためてお尋ね申し上げますが、ただいまのお言葉からすると、連合国財産補償法案というこの法律は、平和條約の一部である、こういう御説明なのですが、一部であるということは何を根拠にしておつしやるのでありますか。まずそれからひとつお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/3
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004・林修二
○林政府委員 この平和條約の第十五條の(a)項にございます通りに、「日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件」こういう、ふうに書いてございます。従いましてこの七月十三日に決定した云々、この内容を具体的に法律の形——ここでは法案の形にしておりますが、法律の形にいたそうということで、ただいま国会で御審議を願つておるわけであります。そういうふうにいたしまして、その内容と今度の法案は大体同じものでございます。そういう意味におきましては、この條約で引用しております関係上、條約の実質的な一部をなしておる、こういう考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/4
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005・内藤友明
○内藤(友)委員 どうもいよいよわからなくなるのであります。それでは平和條約の十五條の(a)の一番末尾に書いてあります「定める條件よりも不利でない條件」という言葉がありますが、そうすると、あなたの今おつしやるこの法律案は、條約の一部だという答弁ではありませんね。幅のあるものですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/5
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006・林修二
○林政府委員 今おつしやいます通りに、これが最低線であるという意味でありまして、これよりもちろん日本国側として相手方を有利に取扱うことは、條約上認めておるわけであります。こういう意味において幅はございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/6
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007・内藤友明
○内藤(友)委員 それではわかりました。幅のあるということがわかつたのであります。従つて私が当初お尋ねいたしました、これは平和條約のうらに書くべきものを、こういう形式をとつたのであるという、その根拠がどこにあるかというお尋ねに対して、あなたのお答えは、これはそうでないということになつたと私は了承するのであります。そこでこれはきのうもお尋ねいたしたのでありますが、平和條約が締結されて、その後にこの補償法案というものができたのでありますならば、これは條約と国内法とどれが優先するかということは、これは政府にも一つの方針があるし、また学者の間にもこれは定まつた一つの見解があるのであります。ところがまだ條約はどうなるかわかりません。これから連合国財産補償法案という法律も、修正になるか否決になるか、どうなるかわかりません。こういうときに、今お答えになりましたことからいたしますと、どうしてもこの補償法案というものの審議が、この條約を審議するというそのことによつて、制限を受けるということになつて来ると私は思うのであります。そうしますと、法律を審議する立法府が、この條約の審議ということの制限を受けるのかどうか。制限を受けるということであるならば、これはどういうことになるか存じませんけれども、そこに問題がまた一つ出て来るのではないかと私は思うのであります。その点について政府の見解を、ひとつはつきりとお示しおきいただきたい。と申しますのは、これからこの平和條約の條項に従つて、国内のいろいろな権利義務に関する法律が数多く出て来ると思います。そのたびごとにこういう問題が起きるのではないかと思いますので、これは一応この際はつきりしておく必要がある。ことに私がお尋ねしたいのは、この平和條約案というものは今度初めてお出しになつたものでありまして、第十一臨時国会のときはこれはお示しにならなかつた。そこで全権を派遣するということを国会は一応定めたのであります。そうしますと、私は政府のこういう問題に対する取扱いについて、まことに欠くるものがあるのじやないかと思うのであります。これは公の話ではございませんけれども、昨日、私の方から全権に出ました苫米地さんに、十五條の末尾にこういうことを書いてあるが、あなたは連合国財産補償法というのを見たことがあるか。見たことはないと言う。これは内輪話で、何も公のことではないのでありますが、そうなりますと、そこに問題が出て来ることだと思うのでありまして、この際この法律を審議する当初におきまして、これからいろいろなこういう問題もあろうと思うのでありますから、ひとつはつきりと政府の態度を、もし何なら法務総裁からでもけつこうでありますが、それはこうなんだという見解を、ひとつ明確にしておいていただきたいというのが、きのう私がお尋ねした心持だつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/7
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008・内田常雄
○内田(常)政府委員 林政府委員からいろいろとお答えいたしましたが、なお内藤委員の御質問に対して、林政府委員の説明を補足いたしまして、私がありのままにお答えを申し上げたいと思います。
ただいま御質問なさいました点は、前回から引続きまして、要するに内藤委員の質問は四点になると思います。第一点は、條約とこの法律案の一体性の問題で、はたして一体的のものであるか、分離すべきものであるかどうかということのようであります。これにつきましては、私が昨日御説明申し上げましたように、実質的に申し上げまして、この連合国財産の補償は、本来ならば條約自体の中に、日本の法律をまたずして規定さるべき形において、折衝をなされた。これは御承知のように、イタリアの平和條約なり、ルーマニア、ブルガリアの條約、あるいはさかのぼつてヴェルサイユ條約みなしかりで、相当長く條約の中に連合国財産補償の規定があつたのであります。最初わが国の場合もそうであつたのを、昨日申し述べたように、できるだけ條約を簡單にして、連合国の足並をそろえて、條約の成立を早期にもたらすという趣旨のもとに、條約自体においてはその原則を掲げて、実施細目は別に日本の法律の形によるという分離の方法がとられたのであります。しかし條約の十五條も、これは御承知の通り二回にわたつて修正が行われております。第一回に発表されましたのは、本年の七月十三日、講和條約草案というものが発表された。それに続いて七月二十日に修正されました。最後にだんだんサンフランシスコの会議も迫りました八月十五日に、最後の確定版ができまして、そのときには日本との平和条約案ということで、「草」の字がとれまして、その他の中身も最終的に確定いたしました。最初の七月十三日及び七月二十日までの改正案におきましては、十五條は私の御説明を裏書きするとでも申しましようか、こういうふうになつております。元の案を読み上げます。第十五條の(a)項の前段は、連合国財産の返還に関することを規定し、後段は、その補償のことを規定しておるのであります。後段から読みますと、「この財産は」この財産というのは連合国財産のことでありますが、「所定の期間内に返還を申請しない財産は、日本国政府がその定めるところに従つて処分することができる。この財産が千九百四十一年十二月七日に日本国に所在し、且つ、返還することができず又は損傷若しくは損害を受けている場合には、千九百五十一年何月何日に日本国の国会が制定した法律第〇〇号に従つて補償される。」こういう書き方になつております。すなわちこの平和條約が調印される以前に、日本の内閣及び国会が協力して、すでに連合国財産補償法というものを制定して、法律番号を付して公布する。この法律番号を付して公布したものを、条約がつかまえて引用して、補償は日本国がきめた法律第〇〇号によつてなされる。こういうことを書くような手配が第一段階においてなされました。これは一つの方法であつたと思いますが、これに対しましては、どの国もいまだ署名しないというのに、署名されない條約の原則を受けて、日本国の内閣及び国会が補償法だけ先につくつて公布するということは、これは條約の一体性を強調する余りに、法律的にも疑義があるということで、三回目の八月十五日の最終條約案におきましては、現在の第十五條にありますように、日本国が法律を先に公布するのではなしに、「この財産が千九百四十一年十二月七日に日本国に所在し、且つ、返還することができず、又は戦争の結果として損傷若しくは損害を受けている場合には、日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件で補償される。」こういうふうに、この條約が批准されて効力を発生するまでの間に、この條約の批准意思と一体として日本国の内閣及び国会は補償法を制定する、こういうふうに論理的にも條約の成立と法律の成立とを合せたわけであります。これをもつていたしましても、この條約と法律とは実質的にも、つまり交渉の経緯における実質的にも、かつまた法律論理的にも一体性を持つている。こう申し得ると私は存じます。
それから御質問の第二点でありまして、国会の審議権の問題ですが、お話のある通りであります。たといこの法律案が條約第十五條にうたわれてあるものであつても、條約と法律とは別である。立法権はもつぱら国会に属するのだから、従つて條約をかりに承認しても、法律を承認しないということは形式的には合いはせぬか。また修正することも可能じやないか。こういうような御議論であり、ことに條約は昨日衆議院の委員会では可決せられたようであります。まだ国会全体の意思として成立しておらぬのだから、その以前にこの法律について議会が制定の意思を確定せしむることは適当でない、こういうようなお説であります。一応お説の通りにうかがわれますが、條約をつくる国家の意思と法律をつくる国家の意思というものは、この場合まつたく同じでありまして、この條約は国会の承認を待つものでありまして、国会によつて承認さるべきものでありまして、しかしてこの條約の中に先ほども読みましたように、連合国財産補償法というものを、日本国の意思として内閣及び国会が協力してつくるということを條約の中にうたつておる。そうであるならば、條約を承認するその承認意思をもつて、同じ国会がこの法律を完成せられるという、同じ意思でなければならぬものであると私は存じます。形式的には條約と法律は別でありまして、條約を承認する、承認に関する憲法の條項と立法に関する憲法の條項、これまた條項を異にしておりますから、これは二つであるべきでありますが、この場合におきましては、国会の意思としては條約に対して働く意思も、この法律の制定に対して働く意思も同じであるべきだ。形式的にこれを別にわけまして、かりにこの法律を修正することができるといたしましても、この條約にありますように、日本国内閣が国会に提出する法律よりも、不利でない條件で補償すると書いてありますから、形式的には修正できます。それは連合国人に有利に修正することは形式的には可能であるが、実質的には昨日も申しましたように、日本国は連合国に対して賠償の責任、その他いろいろな財政負担が重なるわけでありますから、この十五條の法律修正余地を、かりに連合国人に有利に修正するという国会の意志の働きは、まず適当ではなかろう、かように存じて参ると、結局は一体になるのではなかろうか。
それから第三番目も、これも條約と法律の関係で、今後條約が批准された後いろいろな法律が出るだろう。その際の先例にもなるというお話でありますが、それはこれもごもつともであります。しかし條約は国際法規であると同時に、国内法規として国民に対しても働くことはもちろんであります。従つて條項によりましては條約を定めただけで、あらためて国内法として焼き直さない場合もありますけれども、通常国民の権利義務に関係することは、さらに條約を敷衍して国内法をつくる場合が多いと思います。しかしその場合の法律は、條約で確定した事項を国民に対してさらに明確ならしめて、国内手続を完備せしむるという意味で法律にする場合でありますが、今回のここで言う法律はその場合とはいささか趣を異にいたしまして、本来條約で書くべきものを先般来申しますように、法律の形としてまとめて公布するという趣旨であつて、この法律をつくるということは、條約それ自体の定めるところになつておりますから、従つて今後平和條約あるいはその他の国際條約に関連して、国内法規を敷衍してつくるという場合とは違うものと、考えてよいのではないかと思います。
それから第四番目の、第十一国会における政府の法律案に関する取扱いの点でありますが、あるいはまた全権がはたしてこの法律を知つて、あの條約に調印したかどうかということでありますが、これは第十一国会における総理大臣の演説の速記を、お読みくださればわかると思います。総理大臣の演説の中におきましても、この点に言及いたしております。しかも私が先ほど申しましたように、最初は法律の形として出すことを予定しておつたけれども、取扱上疑義があるから、條約としては今後こういう法律をつくるということを條約の中に約束しておつて、この法律を、国会で完成するという趣旨のことを、総理自身が第十一国会の演説で言つております。これは私も読んでおります。
それから全権の問題でありますが、全権委員は多数あられたことでありますけれども、みなそれぞれ條約を十分勉強されておる。特に苫米地民主党最高委員長は、西村條約局長についてずいぶん長い時間勉強されたということを承つております。その際十五條についても十分御勉強になり、十五條には今後法律をつくるということをちやんと書かれておつたはずでありますから、これは苫米地さんも御承知であつたことと存じます。以上四点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/8
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009・内藤友明
○内藤(友)委員 内田さんの御答弁を聞きまして考えられますことは二つあります。
その一つは、ただいま今までの経過をお話になりましたが、こういう経過だから條約の中に入れるべきものをこの法律にしたのだ。それは経過論なんです。それはまさにそうでしよう。今までの取扱いからそうなつたでしよう。ところがそれはあなた方がおわかりでやつていらつしやるのであつて、国民はちつとも知らない。だから私どもの手に渡りましたのはこれなんでありまして、もしそういう経過論であるならば公式の国会に対して、先ほどの私の第二点としてお尋ねしたのは、国会が責任を負うかどうかという問題であります。政府と国会が責任があるというお言葉をお使いになりましたが、それは政府は責任があるかもしれぬが、国会の責任というものはこれからあるのであつて、今のところ私はないのではないかと思うのであります。その二つの点は、今あなたの御親切なお答えを聞いて私は感じたのであります。
そこで結論といたしまして、條、約にお前たちは賛成するのだから、この法律案には当然賛成しなければならぬのだというふうな、立法府の審議権の拘束は当然なのだという御見解を、政府は持つておられるのかどうか。この一点だけを伺つておきます。審議権の拘束はどうなるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/9
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010・内田常雄
○内田(常)政府委員 内藤さんのお話は、それはお前たちだけ経過を知つておるが、国民あるいは国会議員は知らぬということは、この一点は先ほども触れました総理の第十一回国会における演説の一部を御参照願いたい。第二点には、八月二十八日に大蔵省がこの経緯並びに内容を発表いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/10
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011・内藤友明
○内藤(友)委員 国会に発表しましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/11
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012・内田常雄
○内田(常)政府委員 国会は済んだ後で、総理の演説から引続いてそれを難行した意味において、まだ全権委員の調印前に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/12
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013・内藤友明
○内藤(友)委員 国会に発表されなければ、それは公的なものとはいえないのである。内々どんな場合であつても、内緒事はいいんだ。しかし公にそうい、りようなことを国会に対して言われたというのが問題になるので、だからその点が国会は責任を負うか負わないかの問題です。私はむしろ連合国財産補償法というものは、政令でお出しになつた方がいいんじやないかと思う。政府の責任において国会が責任を負わぬというふうな形がいいんじやないかというのが、その次に私がお尋ねしたいことになるのでありますが…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/13
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014・林修二
○林政府委員 今お尋ねの点でございますが、これは先ほど内田政府委員からるる御説明いたしました通りに、この條約の実質的な一部をなしておるわけでありまして、條約の御審議を経て條約をこの国会が御承認に相なりました場合には、当然国会とされてもこの法案を同時にと申しますか、同時に御成立になります。べき立場にあるのだろうと考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/14
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015・内藤友明
○内藤(友)委員 それでは最後に一つ、さつきのお尋ねでございますが、條約によりまして立法府の審議権の制限はするのですか。しないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/15
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016・林修二
○林政府委員 憲法第九十八條を見ますと、日本国が締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。これは憲法にございます。従いまして日本国といたしまして、国会の御承認を得て正式に成立いたしました国際條約は、日本国全体を拘束いたすと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/16
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017・内藤友明
○内藤(友)委員 私はそういうことをお尋ねしているのじやない。承認をを得た條約であるならば私もその言に従いますが、実はまだ得ておらない。この條約はまだ審議の途中なんです。そこで私がお尋ねしたいのは、何といいますか、全権というものはこれは外務大臣の監督下にある人なのでありまして、苫米地さんが行かれようと。だれが行かれようと、これは政府の責任なんです。だから政府が責任を負わなければならぬ。その責任を持つて判を押して来た條約というものは、国会の審議権というものを制限するのかしないのか。私はその條文に当てはまらぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/17
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018・林修二
○林政府委員 御承知のように平和條約はサンフンシスコで署名されましたけれども、批准條項がついておりまして、国会の御承認を得て初めて確定いたすものであります。まだ條約としては現在有効に成立いたしておりませんで、今そう御審議を願つておる。その條約が御承認願えますれば、当然この十五條の内容を含んで承認になるものと考えておるのでございます。この連合国財産補償法が先に飛び出して成立するということは、もちろん考えられませんけれども、條約が成立いたしますれば、当然に国会の意思はこの法案を御承認になる、成立させる意思であろうと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/18
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019・内藤友明
○内藤(友)委員 どうも私がお尋ねしたことにはつきりお答えがないから、もう一ぺんお尋ねする。その調印なさつた條約はまだ途中なんでございまして、これは本物ではない。つまりまだ政府の責任にあるのですから、そういう政府の責任にあるというものが、立法府の審議権を制限するのかしないのか。
それからもう一つお尋ねしたいのは、ここに「連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件」ということがありますが、これはだれが判断するのですか。その不利でない條件というものさしは、だれがそのものさしを持つのか。問題はそこにもあると思うのであります。この二つの点、制限するのかしないのか。不利でないというのは法的にだれが判断するのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/19
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020・林修二
○林政府委員 最初のお尋ねの点は、ただいま何回も御答弁いたしましたけれども、要するにこの條約を御承認になる意思と、この連合国財産補償法を御審議なさいます意思は、同じものであろうと私は考えております。
第二の、不利でないという点は、この補償法案が條約の一応の最低限度として、これが連合国と日本国とが合意した一つの極限の点でありまして、不利でないというのはこちら側として判断し得る点であろうと思います。これよりさらに有利なものは、これは相手方に有利ですから、日本国としてはその意思があれば、與えても條約違反ではありません。国会としてももちろんできることであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/20
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021・内藤友明
○内藤(友)委員 その有利であるとか不利であるとかいうのはだれがきめるのかというのです。われわれとしては連合国の人が有利だと思つているけれども、連合国の人はそれを不利だ、こういう言葉が出て来ると、だれがそれの最後の判断をするのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/21
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022・林修二
○林政府委員 日本の国会といたしまして連合国側に有利であると判断して御修正になりました場合に、連合国側がこれに不利であるという苦情をもしも持ちます場合には、平和條約の第二十二條によつて、国際司法裁判所に連合国側としては提訴いたすであろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/22
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023・内藤友明
○内藤(友)委員 もう一つ最後にはつきりしておきたい。立法府の審議権を制限するかどうか。これだけのお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/23
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024・林修二
○林政府委員 先ほど内田政府委員からお答えいたしました通りに、條約と法律とは別々の形式で、国会の御審議を願つておるわけであります。何回か申し上げました通りに、この法案は條約の一つの内容をなしておるものでありまして、そういう意味におきまして、実質的に国会の意思が分裂するということはないのではないか、かように考えるわけでございます。
もう一つは、この平和條約が有効に成立いたしますれば、憲法九十八條第二項によりまして、日本国といたしましては、全体的にこの條約を履行する責任を持ちます。そういう意味におきまして、連合国側財産の補償法案が條約の内容をなしておる以上、これに基いて成立せられるべき法律の不利でないという意味の條約上の義務は、負うことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/24
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025・内藤友明
○内藤(友)委員 どうも私のお尋ねが悪いのか、御返事がないので困るのですが、私は政府が責任を負うのか、国会が責任を負うのか、それを最後にお伺いしなければならぬ。今の段階は、全権が行つて判を押して来た。これは政府の責任である。政府のせられた仕事が国会までその責任を一緒にかついで行かなければならぬかというのが、私の心配なのであります。それがいわゆる私のお尋ねする制限するのかしないのかということで、その御返事を承りたいというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/25
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026・林修二
○林政府委員 私のお答えが悪いせいか、御納得が行かないのは遺憾でありますが、今御審議を願つておりますこの條約が御承認願えますれば、これは連合国財産補償法案の内容を含んだものとして、條約を御承認を願うわけであります。その意味におきましては、その承認と連合国財産補償法案の審議と、違う意思が国会におありになるということは、私どもには考えられないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/26
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027・内藤友明
○内藤(友)委員 現に一緒に審議しておる。それを審議するということを制限するかどうかという問題なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/27
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028・内田常雄
○内田(常)政府委員 内藤さんはたいへんよくおわかりであるにもかかわらず、いろいろな立場から無理な御質問をなさつておられるのであります。林政府委員と私はまつたく同じ見解でありますが、簡單に申しますと、これは條約と別であります。従つて法律については国会は自由な修正ができるといたしまして、不利である修正をしたといたしますと、それは條約の一部を承認しない結果になります。つまりこの法律案の内容を含んだのが十五條でありますから、その内容を否認して修正されるといたしますと、條約の一部を承認しないことになる。しかるに同じ国会が條約全体を承認するといたしますと、林政府委員がるる説明されましたように、国会の意思が倹約に関連して分裂するという結果になりまして、従つてそこから御判断くだされば、この法律案に対する国会の権能についても、おのずから明らかになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/28
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029・内藤友明
○内藤(友)委員 つまり政府の責任というものと国会の責任というものを私は心配する。政府がやつて来たから国会が当然負わなければならぬ責任なんだ、こういう御説明だからそれは納得できません。私のお尋ねする最後のものはこういうことです。私は、国会がこれを否決したら、当然政府がかぶとを脱いで引下らなければならぬということになるのですが、何も国会は責任がない。だからそういう意味で、もしあなた方の話が正しいとするなら、なぜこの法律を政令でおやりならなかつたか。国会に責任を持たせる必要はないじやないかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/29
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030・内田常雄
○内田(常)政府委員 お答えいたします。前段につきましては内藤さんの申される通りでありますが、政府の責任と国会の責任あるは権能はわかれております。條約を締結するのは憲法第十三條で内閣の責任でありますが。それを国会の承認を求めなければならないことが書いてありまして、これを批准するためには、結局政府の條約署名権と国会の承認権が一体となりまして、條約が成立することに相なります。しかりしこうして内閣がこの法律案を提出することは、これも憲法法第七十二條で認められておるのでありまして、従つて條、約と一体をなすこの法律案を内閣が国会に提出いたしますことも、政府の責任及び権限の範囲内であります。残るところは、條約を承認するという国会の責任、権限と、法律案に賛成してこれを成立せしめるという国会の責任と権限が残るわけでありますが、それは私が先ほど申し上げましたように、この條約と法律の関係におきましては、国会のその二つの権限及び責任は、分裂することはできないものであると存じます。従いまして、政府はこの條約に対します意思と、法律に対します意思とを一致させたものといたしまして、国会に承認及び賛成を求めておりますから、内閣といたしましては、国会がこの二つの責任及び権限をやはり一体としてお認めくださつて、すみやかに御賛成及び御承認くださることを期待いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/30
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031・淺香忠雄
○淺香委員 昨日から政府委員の答弁を聞いておりますと、今度の連合国の財産補償法案は賠償の一種だというふうに、しばしばそういう言葉がありましたが、これは賠償の一種と考えまして間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/31
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032・内田常雄
○内田(常)政府委員 昨日も同じような御趣旨の御質問がございましたが、狭義においては賠償ではございません。賠償とは、平和條約に基く敗戦国の義務でありまして、これは他の條約におきましても、賠償に関する規定と、戦勝国の財産の損傷に対する補償の規定がわかれております。日本との平和條約におきましても、賠償の関係は、連合国における日本の財産の接収を受けること、それと、東亜諸地域に対する技術賠償、作業賠償等はこれは一本に規定してありまして、その両方は賠償の一種と言えるかもしれませんが、連合国財産の補償の方は、條をわけまして第十四條の方に取扱つております。きわめて広い意味において、敗戦国の負担という意味におきましては、ごく通俗的には国の負担と申しますか、賠償と申しますか、それの一環をなすとは考えられますが、狭義においては違うと考えてよいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/32
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033・淺香忠雄
○淺香委員 昨日ほかの委員からの質問に対するあなたの答弁では、賠償の一つとみなしていいというような答弁を私承つた記憶があるのですが、今の表明では、そうではないというのですが、ほかの賠償の総額——これは第一種とよく世間で言うておりますが、どういう物件をどの程度引渡すか、あるいはまた第二種賠償といわれておるところの、中立国にある日本人の、あるいは日本国が持つておる財産の処理、こういうものがいまだ具体化しておりませんので、国民として非常に賠償問題に対しては大きな不安を持つておると思うのです。今のお話では、これと一体ではないというお話でありますが、この法案によつて、連合国人の財産補償を切り離して急がなければならぬというその理由も、切り離してということで、ある程度わかるような気がいたしますが、特にこれを急がれるところの根本理由をひとつ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/33
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034・内田常雄
○内田(常)政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、私の言葉の用い方が適当でなかつたかと存じますが、私の気持としては、昨日御答弁申し上げました意味も、きわめて広い意味においての敗戦国の負担、あるいはきわめて広い意味においての賠償という意味では、あるいは入るかもしれませんけれども、狭義においては別個のものであるということを申し上げたつもりでございます。なおこれを狭義においては別個のものであるとした場合に、平和條約第十五條、十六條、十七條等の負担関係がきまらない先にこれだけを急ぐのは、その理由といたしましては、第一には、この十五條関係の連合国人財産の損失補償というものは、これは狭義の賠償と違いまして、直接迎合国人個人の財産の補填であるという点と、もう一つの実質的理由は、この補償は、この議案の中にもしばしば出て参りますように、やはり連合国財産を戰争中の敵産管理その他から解除して相手の主人に返還する。その返還された状態が損失を與えたものであつたならば、それを補填する、こういうことになつておりまして、返還の方につきましては、すでに平和條約をまたないで、終戦直後から、連合国最高司令官からの覚書によりまして、連合国財産の返還に関する政令という、いわゆるポツダム政令がございまして、返還を始めております。大体私の記憶では、六〇%くらいまでは返還が済んで来ておるはずであります。しかしその返還たるや、損害を受けた現状において返還をいたしており、また全部損害を受けて返還するものが全体の十分の一だとか、あるいはゼロだとかいうものは、返還しないままになつております。かくのごとくして、連合国個人の間の権利関係が、あるものは完全な返還を受け、あるものは八割の返還を受け、あるものはゼロの返還しか受けていないということで、非常に不公平、不均一になつておるので踊りまして、その関係上、これを補填するという趣旨におきまして、池の賠償関係が、具体的に固まらない前からやること、これもまた他の平和條約におきまして、特にわけて取扱つている理由であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/34
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035・淺香忠雄
○淺香委員 もう一点伺いますが、過去の平和條約、たとえば、ヴェルサイユ條約あるいはイタリア、ブルガリア、ルーマニア、こういう敗戦国が戦勝国に支拂つた補償内容、それと、わが国が支払わんとするところの今度の補償内容、その点について、さきに敗戦国が戰勝国に支拂つた補償内容とを対比する場合、どういう点に相違があるか。あれば、その相違点を聞かしていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/35
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036・内田常雄
○内田(常)政府委員 若干相違がございまして、これは見方によりますが、私どもこれに携わりまして労力をいたした者から見ると、イタリア、ブルガリア、ルーマニア等に比べまして、わが国の今回の解決の方が有利にでき上つているように思います。その第一点は、イタリア平和條約、これはブルガリア、ルーマニアとほとんど同じでありますが、連合国財産の返還にいたしましても、補償にいたしましても、これは條約上、敗戦国であるイタリアの当然の義務である。イタリア自身がその財産を探し出し、また損害額を調査して、連合国人の請求をまたず、自発的に返還及び補填しなければならないという書き方及び仕組みになつておりますが、わが国の場合は、一部は平和條約の中にうたわれ、一部はこの法律案の中にありますように、返還についても、補償についても、連合国人の一定期限内の請求をまつて、初めて日本政府が返還及び補償をする。その一定期限内に申請がないものは、返還すべき財産であつても、日本政府がかつてに処分する。また補償請求権は放棄されたものとみなされるというふうになつております。イタリアの場合には、イタリア政府が一定の期限内にみずからその返還債務、補償債務を実行しない場合に、さらにその上それを一般連合国人に長い期間の請求期間を認めておりますから、わが国の場合の方が日本政府のわずらいなしに、また終局的には短かい期間に、かなり立場をよく解決できる場合もあり得る、そういうことが第一点であります。
それから第二点は、これは非常に大きい点だと思いますが、他の諸国の場合は割譲地域とか、あるいは信託統治下に置かれたような地域のもとにある連合国財産につきましても、その返還及び補償を義務ずけられております。たとえばイタリアにつきましては、割譲地域はもちろんのこと、トリエステ等にある連合国財産につきましても、小さくなつたイタリア自身がこれを返還し、補償するということを義務ずけられておりますけれども、わが国の場合は、この平和條約によつて主権が回復された地域についてのみ財産を返還し、またそのものにかかる損害を補償すればよいということになつております。なおこれは正直に申しまして、私どもの努力が非常に足らなかつたので申訳ないと思いますが、イタリアの場合はいろいろな損失額を計算して、各個人についで損失額の三分の二までを、補償すればよいということになつておりますが、日本の場合は、私ども自身努力をいたしましたけれども、その規定は認められませんでした。そこでそれにかえまして、先日も申し上げましたように、損害額と要補償額をわけて考えます。損害額からいろいろな控除をして、それから何分か差引いたものル補償するという規定を設けましたり、またこれはイタリア、ブルガリア等にはないのでありますが、連合国人であつてもすべて補償はしない。連合国人のうち逮捕、監禁、抑留とか、財産の留置とかいうものをやつた狭い、局限された者だけに対して補償をいたすとか、あるいはまた被害の原因を局限するというような、間接の方法をとりまして、結局において補償する金額を狭めるように、法律の中に盛り込むことに成功いたしております。
従いまして第三点につきましては、三分の二主義がいいのか、あるいは損害額、要補償額というものをわけて考え、いろいろな原因とか、資格者とかいうものを限定して考えるのがいいか、これはにわかに判断がつきませんが、必ずしもイタリアに溜められた特典が、わが国の方では全然認められなかつたとは、考えなくてもいいのではないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/36
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037・淺香忠雄
○淺香委員 非常に詳細なお答えをいただきましたが、その答弁の最後に、イタリアの平和條約で損害補填に対して必要額の三分の二を支拂うというお話がありましたが、今度の日本が連合国に補填しようとする内容は、さきにイタリアが三分の二の補償を支拂つたのに対して、今度日本では全額舞わなければならぬ。その理由については抽象的ないろいろなお話がありましたが、いま少しく、何というか、底を流れておつた根本的な理由が何かあれば承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/37
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038・内田常雄
○内田(常)政府委員 これはどうもはたして根本的な理由かどうか、私も断定がつかないのであります。また三分の二主義と——これは自分を弁護して申すわけではありませんが、先ほど来申しましたように、いろいろな限定でカバーをとつておるわけでありますが、ただこの理由として外務省を通じて伝えられたところによりますと、イタリアは敗戦国でありますけれども、途中におきまして例のバドリオ政権ができて、連合国に協力してドイツに当つた。その点をイタリアが強調せられて、そこで三分の一という控除が形の上で認められた。わが国はその形がないから、ほかの形で、損失額と要補償額とを違えるとか、その他の原因とか、資格者の限定という形で與えるほかはないということで、結局においてはイタリアよりも損をさせない。先ほど申しました第一点及び第二点を合せまして、損をさせないという形になつたようにお考えくださつてよいのではないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/38
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039・淺香忠雄
○淺香委員 よくわかりましたが、今度の條約は御承知の通り、和解と信頼の條約であります。過去の敗戦国が結んだ平和條約に対して、今度は非常に恵まれた有利な條件であつた。こういうことが一応いわれているのでありますが、賠償の問題は、私ども聞き及ぶのに、すべて打切りの原則を立てられておる。その主張がそのまま通りそうであつたのに、いろいろな事情のために遂に今度のような第二種類の賠償を日本に課すようになつた。ここに国民としていささか割切れぬものがあるのであります。第二種類の賠償といわれておりますところの、中立国にあるところの日本及び日本国民の財産まで、万国赤十字社に渡さなければならぬ義務を負わせた。さらに今回の連合国側の戦闘行為によつて受けた損害まで、ここに補償しなければならぬ。さらにイタリアの條約は、ただいまのお話で理由を承りましたが、非常に寛大なものであつたといわれている。そのイタリアが連合国人に対するところの補償は三分の二であつたのに、今回日本が戦勝国に支払わなければならぬものは、全額支払わなければならぬというような——主観的にながめました場合に、今度のこの法案に対しましても、率直に言えば、国民感情として割切れぬものがあろうと私は思うのであります。そこで政府側の方から国民が大体こう考えているということに立脚して、この疑点となるような点をいま少し結論的に納得の行くように聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/39
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040・内田常雄
○内田(常)政府委員 和解と信頼の條約であると私ども存じておりますが、他面賠償とか外国財産あるいは中立国における財産の接収、あるいは日本国内における連合国人財産の補償というような、幾多の痛い点は残つておるのであります。しかしながら他面総理がしばしば申されおりますように、わが国もこれから新しく出発して国際場裡に乗り出して行く際に、直接日本国にあつた連合国人の財産で被害を受けたもの、あるいは近隣において日本国軍隊に蹂躙されて損害をこうむつたもの、あるいは中立国における財産の処分の措置等の規定に見られますように、捕虜等に與えた苦難の救済、敗戦国として最小限度履行すべきものは履行して、列国との関係をも調整し、近隣諸国との将来の友好への礎石にするという最小限度のことは、いかに寛大である和解の條約であつても、さらにまた今までの外債の償還処理、その他はむしろ進んでやるべきではなかろうかというような気持が、政府全体にあるようでありまして、私どもはそういう考えのわく内におきまして、連合国財産の補償につきましても、初めからこれを踏み倒して一銭も拂わぬというような條約なり、法律案の内容にすることもいかがかと思われます。ただイタリアその他の以前の例から比べまして、日本の為替、財政負担との調整ということも考えなければなりませんから、当事者といたしましては、一つのわく内でできるだけ努力をいたし、公正なものといたしたつもりであります。なおイタリアの三分の二ということに対してわが国にそういう規定がないということにつきましては、先般来諄々と申し述べましたように、総合点数といたしましては、私はイタリアの三分の二主義よりも、この法律の補償額による方が、はるかに日本の財政に対する影響なり、あるいは今後の賠償を実施する場合の取扱い等につきまして、有利な点が他の面で多々ある。総合点数としてはどうもこちらの方がいいようにも考えられます。何とぞ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/40
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041・西村直己
○西村(直)委員 委員長にお願いしたいのであります。これは百億を限度として法案はできておるようでありますし、全体の計画は二百七十億です。今回の平和條約、あるいは安全保障條約を通しまして、賠償の問題、防衛分担金の問題、外債利拂いの問題、続いて連合国財産の補償の問題がありますが、連合国財産の補償については、二年なり二年半なりのうちに返されるわけであります。ただ他の財政との関連があると思いますので、百億という会計年度をきめた以上は、おそらくそこにある一定の方針をもつてきめたのだと思いますから、大蔵大臣からこれらを関連した財政計画の見通しを、適宜なる機会に伺いたいと思いますので、委員長を通しまして、その申入れをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/41
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042・夏堀源三郎
○夏堀委員長 了承いたしました。
本日はこれをもつて散会いたします。
午前十一時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X00419511026/42
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